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甘いお菓子が食べたくて

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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「みんな、大変よ。大事件よ……」
 絶望的な表情でモニカ・ラメール(甘く絡めるカラメリゼ・f14455)は告げる。
 お皿に乗ったあんころ餅をつつきながら――。

「みんなはサムライエンパイアにある『茶屋』っていう所に行ったことあるかしら……あむ。私は、無かったから……もぐ、美味しいと評判のお店に行ってみたのよ……こくん」
 茶屋、ジャパニーズティールームである。茶や甘味、休憩場所を提供する店だ。料理を提供する場合もある。
 それはそれとして食べるか話すかどっちかにして欲しい。
「あむ、あむあむ。もぐもぐ……」
 ごめんなさい食べるのは後にして話続けてください。しょんぼりするモニカ。
「そのお店はダイフク? っていうお菓子が人気なんですって。わたし、とっても楽しみにしてたのよ。それなのにね? 今は閉店中だって言うの……」
 悲しそうに話を続けるモニカ。
 帰っていいだろうか、そう思い始めた猟兵達。
 オブリビオンの関係しない事件……いや、そもそも事件なのだろうか、これは……ならば、自分たち猟兵の出る幕ではない。そういって立ち上がろうとした時、
「理由を聞いたら、『ススワタリ』っていう妖怪が現れて店の中が煤だらけでとても店を開けられる状態じゃないっていうの。だからその『ススワタリ』達を退治してお店が綺麗になるまではお店はお休みらしいの……」
 とモニカが言う。なんだ、やっぱりオブリビオンじゃないかと猟兵達は座りなおす。
 まぁ、どちらかというと清掃業者の出番な気もしないではないが、それはそれである。

「それだけじゃないのよ、『ススワタリ』を倒した後にまた別のオブリビオンが現れるの。わたしが予知したのはこっちね。そのオブリビオンは白い尻尾の生えた女の子の姿をしているのだけれど、その子は他のお客さんが食べる分のお菓子まで全部食べちゃうの! それも何度注意してもやめてくれないの、酷いわよね!?」
 なるほど酷い。確認するけど君じゃないよね? と問う猟兵。モニカに尻尾は無いけど、一応。これに心外そうにモニカは応える。
「違うわよ。わたし、1回注意されたらやめるもの! ほ、ほんとよ?」
 できれば1回目もやめてあげてください。

 話がぐだぐだになってきたので要点を掻い摘んで話し始める。
 今回の目的は茶屋を荒らすオブリビオンを追い払って店を営業できる状態にする事、そして店を開いた後、やってくるオブリビオンの蛮行(モニカ談)を阻止する事。
 それらが成し遂げられれば、その日はお店を貸し切りにして好きなだけ飲み食いしていいと店主と話がついている事。さっき食べてたあんころ餅はその際お土産にもらった物である事等を話した。

「とっても良い店主さんだったわ! ぜったいに助けてあげるのよ!」
 かくして、猟兵達は送り出されるのであった。


スマイリー
 甘いお菓子は好きですか?
 私はとっても大好きです。

 どうも皆さま初めまして、新人マスターのスマイリーです。
 此度の依頼はサムライエンパイアでの大掃除と妖怪退治、基本的な情報はオープニングに書いてある通りです。
 強いて補足するのであれば、『ススワタリ』は強い相手ではありません。ただ、店の中と場所が場所なので戦い方は気を付ける必要はあるでしょう。そしてそもそも倒す事そのものが目的でもありません。

 煤を払って綺麗にして、楽しい食事を邪魔する厄介者にはお引き取り願って、その後は茶屋で一服という流れになります。
 3章ではモニカが同行して……もとい、我先に茶屋に向かって甘味に舌鼓を打っています。
 御用の方はお申しつけくださいませ。

 なお、お察しかもしれませんが今回の依頼は初回という事もあって難易度も甘々となっております。激甘です。どれくらいかというと、評価無しになるようなプレイングじゃない限り問答無用で大成功になるレベルです。
 つまり4人ご参加いただいた時点で次の章に進みます。それ以上の場合は適当なところで切って次の章に進みます。そんな感じです。
 基本的にはのんびりやっていければと思っております。

 それではご興味を持っていただけましたらどうぞご笑味ください。
 おいしいお菓子がございます。お茶も沸かしてございます。
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第1章 集団戦 『ススワタリ』

POW   :    まっくろくろすけの通り道
【対象が煤だらけになる集団無差別体当たり 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    かつての住処
【ススワタリがかつて住んでいた巨大な屋敷 】の霊を召喚する。これは【扉から射出した大量のミニススワタリ達】や【窓から射出した巨大ススワタリ】で攻撃する能力を持つ。
WIZ   :    煤だらけ
【対象に煤が付くフンワリあたっく 】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を煤で黒く塗りつぶし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:灰色月夜

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 さぁさやってきましたサムライエンパイアは江戸の町、将軍様のお膝元。
 舞台は大通りにあります一件の茶屋、大福が人気の店での名もずばり『大福茶屋』
 大きな福を願ってと店主が付けたその名前。しかして今は不運に見舞われ店を仕舞っている有様です。
 店先の品書きを見れば、甘味のみならず蕎麦や寿司といった食事も楽しめる模様。
 しかし、それも店が開いていればのお話です。
 待ち受けた店主と思しき旦那と一つ二つ言葉を交わし、店の中へと入って見れば、どこもかしこも煤だらけ。なるほどこれでは食事どころではない。食事処であるというのに。
 そんな彼らの気配を察し、現れましたるはその元凶。まっくろくろすけがわんさかと。
 お前達も煤に塗れさせてやろうかと敵意をむき出しにしております。
 江戸の平和を守るために、楽しい食事に花を咲かせるために。妖怪退治と参りましょう。
 それでは第一幕、『ススワタリ』編のはじまり、はじまり。
メルガシェラ・トヴェナク
まあ、お行儀が悪いですね。
そんなに暴れてはいけませんよ。食べられてしまいます。

【POW】
皮膚からにじみ出すように現れた捕食性ナノマシンの群れが、煤ごと包み込むようにススワタリを覆い、食べ始める。

暴れなかったら食べられない、というわけでもないのが、この世の面白いところですね。



 黒に染まった店内に、まず足を踏み入れた色は白。

 メルガシェラ・トヴェナク(白き暴食・f13880)にススワタリ達の敵意の籠った視線が向けられる。
 それを見止めたメルガシェラは可愛らしくニコニコと微笑みを浮かべ、つかつかと歩を進めていく。
 白と黒、方や笑みを浮かべて方や敵を持って睨み付ける、どこまでも対照的なその二者の距離はだんだん近づいて。

 どこもかしこも煤に塗れた店内、少し歩くだけでも煤が舞い黒く染まりそうなものなのに、不思議と少女は真っ白なままで。それどころか、メルガシェラの通った場所は雪がれた様に煤が落ちていく。
 それに怒りを覚えたかは解らないが、自分たちの領域に踏み込んだ者に対する制裁を行おうと、壁や天井に張り付いていたススワタリ達がメルガシェラに向かって躍りかかる。

「まあ」

 と、メルガシェラはほんの少し驚いたような声をあげ、その声ごとススワタリ達に飲み込まれた。
 かに、見えた。

「お行儀が悪いんですね。そんなに暴れてはいけませんよ?」

 黒い渦に飲まれたメルガシェラ、しかしその実どうだろう。
 彼女はそこに数秒前と何ら変わらぬ姿で立っていて、彼女を襲ったはずのススワタリ達は見る影もない。

「でないと、食べられてしまいます」

 こんな風にと、変わらずニコニコと笑みをたたえたまま。
 先ほど変わらぬ姿、と表したとおメルガシェラ自身には何の変化も見られない。
 ただ1点、明らかにそれまでと違うモノがそこにある。それは彼女の周囲の煤をススワタリごと包み込む極小の機械装置、メルガシェラが内包するするナノマシンだ。
 1つ1つは細菌よりもさらに小さいそれは、しかして無数に集まる事で自身とは比較にならないほどに大きなものを捕食する。
 店に1歩踏み入れた時から彼女の白銀の髪にも陶器の様に白い肌にも身に纏う衣装にも、1点の汚れもついていないのはその為だ。

「まぁ、とはいっても」

 その光景を目の当たりにし、警戒を強めて隙を伺うススワタリ達をメルガシェラは見渡して。
 そしてニッコリと笑みを深める。無垢で無邪気なその微笑みは、しかして敵対者の生存を許さない。

「暴れなかったら食べられない、というわけでもないのがこの世の面白いところですね?」

 その内包するナノマシンを周囲へと展開する。有機物だろうと無機物だろうと構わず喰らい、消化するそれは一斉に放たれ――。

「と、いけないですね」

 ススワタリや煤だけならばいいが、店内の床几や座卓といった家具の類までもが綺麗さっぱり掃除されてはたまらない。危うくそれらを捕食しかけたナノマシン達を操り、しつこい汚れ達だけを標的とする。

「危ない所でした。この後には料理や甘味も待っているんですから、お店を荒らす訳にもいかないですね」

 装飾の無事を確認するメルガシェラ。うん、大丈夫。どこも欠けていないとほっと一息。
 なら、余計な物まで食べてしまわないように注意はしつつ。

「まずは、あなた達を食べてしまいましょう」

 美味しい料理の前に、まずはこの前菜を楽しんで。
 とは言え意外と広い店内、沢山食べられるのはいいものの、やはり時間は掛かりそうだ。
 変わらぬ笑みで、そんな事を考えながらメルガシェラの食事は進む。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リュヌ・ミミティック
・心情
ん、おー? これ、は、ひど、いねー?
お引き取り、ねが、って、綺麗、綺麗、しよ、ね!

・戦闘
狐乃雨なら、汚れも少しは綺麗にならないかなー…
ススワタリ目掛けて飛ばしちゃうね!
「ん、おーお引き取り、ねが、う、よー!」
逃げる個体はおわないよ!

・行動
猫憑き季月とダフィットと、一緒に雑巾でお掃除もしたいな!
「ん、ん。猫憑き季月、ダフィット、綺麗、綺麗、し、よー!」
他にも誰かいたら、一緒に綺麗綺麗するよー!
高い所は無理だけど、低い所ならお任せあれ、だよ!


ハルピュイア・フォスター
アドリブや絡みはOK
【POW】
まずはモニカさんから貰った(【迷彩6】と【目立たない6】を使い冒頭でこっそり奪った)あんころ餅をもぐもぐ食べながら行動開始
まだ注意されてないから…わたしはやめない…よ…?

頑張った後の御飯付きは嬉しいです…どしどし食b…退治しよう…。
でも室内なので動きづらいのが嫌…なので武器の零刀(未完)は今回は両手ナイフに変貌させ攻撃

【Lost memory】を使用して色々とぐたぐたになる前に能力封じ(相手の弱点;範囲内のみと無差別で対象を選べない)
反撃されたら【武器受け2】と【残像5】で回避

きっと色々と壊したらモニカさんと愉快な仲間達に怒られる…よね?



「ん、おー? これ、は、ひど、いねー?」
「あらら、本当だね……もぐもぐ」

 店内に入ってまず目にした惨状にリュヌ・ミミティック(妖狐の竜騎士・f02038)は目を丸くし、それに続くハルピュイア・フォスター(天獄の凶鳥・f01741)も、何やらもぐもぐしながらそれに同意する。
 リュヌはハルピュイアの手にあるそれに見覚えがあった。そう、自分たちをここに送り出したグリモア猟兵、モニカが説明中にお預けを食らったあんころ餅である。その持ち前の高度な技能を駆使して【貰って】いたのだ。
 それに気づいたリュヌはじとっとハルピュイアを見つめ、その視線に気づいたハルピュイアがさっと目を反らす。

「ま、まだ注意されてないから、わたしはやめない……よ……?」
「ん、駄目だ、よ。怒られ、る、よ?」
「うぅ、はい……」

 注意されてしまった、自分より年下の子に。いっそこの子にも分けて共犯に……はい、嘘ですごめんなさい。何やらどこかで無くなったあんころ餅に気づいた少女の悲鳴が聞こえた気はするが、きっと気のせい。

「さ、さて。それじゃお掃除始めようか。これだけ汚れてるし、ちょっと気合いれていかないとね」

 と話を反らし、もとい気を取り直して。早い所行動を開始しなければいつまでたっても御飯にありつけない。そう、嬉しい事に今日は頑張った後には御飯付きなのだ。どしどし食b、退治しなければ。リュヌもそれに同意するように、

「ん、おー! 綺麗、綺麗、しよ、ね!」

 と掛け声。と、そんな所に白い捕食者から逃れてきたススワタリ達が集まってくる。
 彼らは新たな闖入者を見つけると威嚇するように睨み付け、飛び掛かってきた。

「ん!」
「おっと」

 しかしその直線的な体当たりは2人に難なく避けられて、そのまま床にべちゃりと落ちて、せっかく綺麗になっていた床が再び煤で塗りつぶされた。

「ん、汚し、ちゃ、駄目、だ、よ!」

 一般人ならばともかく、猟兵である2人にとってススワタリ達は正直の所脅威ではない。脅威ではないが、これではいつまでたっても掃除が終わらない。それならまずは、

「このススワタリからどうにかしないとね」
「ん、おー! お引き取り、ねが、う、よー!」

 と戦闘態勢に入る2人。動き辛さを嫌ったハルピュイアは手にした零刀(未完)を両手ナイフに変貌させて、室内でも取り回しやすいように。長物を振り回したりしてうっかり何か壊しでもしたら怒られかねない。もうすでに1人怒らせているかもしれないけれど。

(……謝ったら許してくれるかな、モニカさん。御飯抜きとか言わないよね……?)

 内心、怒ると怖い誰かを思い出しながら。
 そんな事を考えている間にも相手は動く。体当たりを回避された事から、直接狙うよりもあっちにこっちに飛び回って汚れを広げる事を選んだススワタリ達。その内の1匹がハルピュイア目掛けて飛び掛かった。回避してはまた床が汚されるので今度はそれをナイフで払って受け止める。
 するとボフン、と音を立ててススワタリが弾けて結局煤が飛び散った。避けても払っても汚れるならば、

「ぐだぐだになる前に、動きを封じましょうか。さぁ――」

『あなたの前に立ちはだかるのは誰?』

 ユーベルコード【Lost memory】を発動する。その無差別な攻撃の弱点は、その1体1体の小ささ故にそこまで範囲が広くない事と、対象が選べない事にある。これだけ動き回りながら、まだ綺麗になった部分が残っているように。
 途端、ススワタリ達の動きがピタリ、と停止する。出現した、先ほど逃げて来た原因である白い捕食者の記憶によって。そして動きが止まったならば、

「ん、おー。お狐様、が、通る、よ!」

 リュヌが放った【狐乃雨】、狐の形の水の矢が汚れ諸共洗い流す。これはたまらないと一目散に逃げ出すススワタリ達、追撃しようとハルピュイアがナイフを構えるが、

「ん、逃げる、なら、おわな、い、よ」

 とリュヌが言うので、ここはそれに倣っておく事にする。まぁ、ナイフで斬ったらまた汚れが飛び散るものね、と。さて、とりあえず付近のススワタリ達は散らしたけれど、見渡せば周囲は今度は水だらけ。煤も流れているとはいえ、これだけでは水を撒き散らしただけである。なのでここからは、

「ん、ん。猫憑き季月、ダフィット、綺麗、綺麗、し、よー!」

 手にした猫の縫い包みと白いドラゴンにも手伝ってもらって、雑巾がけのお時間です。
 壁に床に天井に、汚れた場所はいっぱいあるけど、リュヌはまだまだ小さい男の子。背伸びをしても高い所は無理である。

「じゃぁ、高い所はわたしが拭くね」
「ん、おー。低い、所、は、お任せ、あれ、だよ!」

 しかしそこでハルピュイアのフォロー体質が光る。出来ない事は出来る誰かに お願いすればいいのだ。という事でリュヌは床や座卓を拭いて、ハルピュイアは壁を中心にリュヌの手の届かなそうな所を拭いていく。

「ん、おー。雑巾、が、まっく、ろ」

 床を拭いていた雑巾をひっくり返してみれば、拭き取った煤で真っ黒になっている。
 掃除もしっかりやれば楽しいもので、頑張った分だけ綺麗になっていくのが嬉しくなってくる。
 汚れを寄せ付けない力はリュヌにはないので、一緒に自身の白い髪や衣服は汚れていくけど、それすら何だかちょっぴり楽しくて。
 それに今日は頑張れば大好きな甘いお菓子が待っているというのだから、更にやりがいがあるというもの。
 流石にそこまでは楽しめないハルピュイアはこの後お風呂入りに行こうかなぁ、なんて考えながら掃除を進めて、

「リュヌさん、ちょっと手伝ってもらっていいかな」

 と、楽し気なリュヌへと声をかける。その声に振り向いたリュヌにちょっと手伝ってもらえないかとハルピュイア。リュヌよりは背が高いとはいえ、ハルピュイアもそこまで長身な訳ではない。やっぱり手が届く高さに限界はある。
 そこでリュヌを抱えて、そのリュヌに拭いてもらって手の届く範囲を広げようと考えたのだ。

「ん、ん。いい、よ!」

 リュヌもこれを快諾、嬉しそうに抱きかかえられて天井付近の汚れを拭き取って。
 かくして掃除は進み、ようやく終わりも見えてきた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アーサー・ツヴァイク
※協力アドリブ大歓迎

茶屋を汚して人々から甘味を奪うとは…許゛せ゛ん゛!゛
真っ黒な煤は、全部お掃除してやるぜ!!

つーわけで【ウェポン・アーカイブ】で掃除道具を召喚するぜ! 高いところのの煤は「はたき」で床に落とし、床の煤を「ほうき」で集めて「ちりとり」に入れてごみ箱に。邪魔するススワタリとかいう奴は「はたき」や「ほうき」で叩き落してやるぜ! 相手は煤だからな…剣や銃よりこっちの方が効果ありそうじゃん?
邪魔なオブリビオンを蹴散らしたら掃除の続きだ。細かい汚れは「ぞうきん」とかで綺麗に拭いてやるぜ!


荒・烏鵠
ここにな、折り紙があるじゃろ?
これをな、こうして(折って)こうして(二つ組み合わせて)じゃじゃーん、折り紙で出来た掃除機ー!
こいつをUCで本物に変えましてェ、妖力を充填しますればー……動くんだな、コレが。

ヨーカイバスターズだオラァ!おとなしく吸われなァ!!

全部終わったら掃除道具借りて店内掃除しまっせー。掃除機?折り紙に戻したよ。ウルセーかンな、あれ。
こちとら仮にも食堂経営者だ、机の裏まで布巾かけちゃらァ。



「茶屋を汚して人々から甘味を奪うとは……許せん!」

 鎧装騎兵アーサー・ツヴァイク(ドーンブレイカー・f03446)
 正義の味方である彼には許せない事がある。邪悪なる魑魅魍魎の魔の手が力なき人々を脅かす事だ。そしてついでに言うと、彼は甘い物が大好きだ。それもとんでもない甘党だ。具体的に言うとアルダワ魔法学園で大量に倒した蜜ぷにたちから得たシロップを持ち歩く程に甘党だ。別にだからという訳ではないが、ともかく彼はこの甘味を提供する場所を脅かす悪が! 許せないのだ!

 ……と、1人燃えてる後ろでは荒・烏鵠(古い狐・f14500)を中心に何やら和気あいあいとした空気が繰り広げられている。UDCアースで個人の食堂を経営する烏鵠にとって、食事も提供する茶屋の脅威を他人事とは思えなかったのだろう。それはともかく、

「ここにな、折り紙があるじゃろ?」

 綺麗になった座卓と床几でが烏鵠がしばし休憩中の少年少女と1対3で向かい合って座っている。そしてその手には2枚の折り紙。

「これをな? こう折るじゃろ? そんでこう組み合わせるじゃろ?」

 そんな光景をふんふん、と興味深そうに眺める少年少女達。

「すると、じゃじゃーん。折り紙で出来た掃除機ー!」

 得意げにできた折り紙の掃除機を掲げる烏鵠。それを見ておおー、パチパチパチ。と少年少女。でも何で折り紙? と首を傾げられて、

「こいつをユーベルコードで本物に変えましてェ」

 自身が振れが物体を変化させるユーベルコード、【十三術式:九羽狐】を発動する。妖狐にとってはたしなみとも言えるその妖術、それは当然烏鵠にとっても得意とする所。そして彼の場合はさらに、

「妖力を充填しますればー……動くんだな、コレが」

 ギュィィイイイイン! と大きな音を立てて動き出す掃除機。おおーーーという歓声。その掃除機を手に立ち上がり、アーサーに視線を移せば、どうやら彼も戦闘準備を始めた所。

「【Select…CALL ACTION!】今日はこいつを使うぜ!」

 そんな声とともに彼の右手に現れたのは、持ち手のついた棒とその先にふかふかの毛が付いた――。

「なんだそれ、『はたき』か?」

 と、いつの間にか横に立っていた烏鵠に、おう、と頷くアーサー。

「ほら、相手は煤だからな。剣や銃よりこっちの方が効果ありそうじゃん?」
「あー、確かになァ」

 そう、アーサーが召還したのは『はたき』である。より詳しく言うなら毛ばたきである。という訳で準備の整った2人。片や掃除機、片や毛ばたきを手に大福茶屋に残された最後の一角、厨房へと歩を進め、

「ヨーカイバスターズだオラァ! おとなしく吸われなァ!!」
「真っ黒な煤は、全部お掃除してやるぜ!!」

 ばぁーん、と勢いよく厨房に乗り込む。厨房に待ち受けるのは、最後まで残ったススワタリ達。捕食され洗い流され数を減らした彼らにとって、この厨房は最後の砦である。これ以上は後が無いが故に、彼らも本気だ。故に――。

 最後の大技、かつて自分たちが住んでいた巨大(ススワタリ基準)な屋敷の霊を召還する。その館は古びてはいるものの格式の高さが窺い知れる立派な造り。その館を中心に布陣し、2人の猟兵を迎え撃つ構え。

「「――上等!!」」

 その覚悟を見て取って、アーサー、否。ドーンブレイカーと烏鵠も闘志を燃やす。かくして、この大福茶屋におけるススワタリと猟兵の最後の戦いの火蓋が切られた。
 先に動いたのはススワタリ達、2人の闘志に呼応するかの様に、館の扉から大量のミニススワタリを呼び出し射出する!

「それがどうしたァ!」

 その悉くを烏鵠の掃除機が吸い込めば、今度は窓から巨大なススワタリが飛び出し、横合いから襲い掛かる! しかし猟兵は1人ではない。それを、

「そうはさせるか!」

 と、ドーンブレイカーがぱしーんとはたき落とす。それでも負けじとススワタリ、今度は小さいのから大きいのまで纏めて飛び出し、縦横無尽に飛び回る!

「うおおおお! 高い所のは俺がはたいてやるぜえええ!」
「そしたら飛び散ったンはオレサマが吸い取ったらァ!」

 パタパタパタ! ギュィィィイイイン! と天井からはたき落とされ掃除機に飲み込まれていくススワタリ。しかし数が数なので吸い込み切れず残ったススワタリが床へと落ちる。そこですかさず、

「床に落ちたのは『ほうき』で集めて『ちりとり』でゴミ箱行きだああああ!!」
「ついでにその館ン中も綺麗にしちゃらァアア!!」

 サッサッサッ!! ギュイィィィィイイイイイイン!! と、『はたき』を『ほうき』と『ちりとり』に持ち替えて館から飛び出した分を掃除するドーンブレイカーと、未だ館の中にまだ控える分を掃除する烏鵠とで別れ、それぞれススワタリ達を掃除していく。激闘に次ぐ激闘、元来そう強いわけではないススワタリも自分たちの縄張りを守るために懸命に奮闘する。しかし、その勇猛も果敢なくじりじりとその数を減じていき、そして――。

「これで!」
「最後ォ!」

 ついに最後の1体がはたき落とされ、掃除機に吸い込まれる。同時に出現した館もさらさらと解ける様に消え去った。かくて大福茶屋を脅かす存在は討ち倒され、この地に平和が訪れた――。



 ――とはいかないのが今回の依頼。

「そんじゃ店内掃除しまっせー。あ、掃除用具貸して貰える?」
「ん? さっきの掃除機は?」
「折り紙に戻したよ。ウルセーかンな、アレ」
「あー、確かになー。わかった」

 ほら、と【ウェポン・アーカイブ】で『ほうき』と『ぞうきん』と『バケツ』を召還して手渡し。便利なユーベルコードである。

「おう、あんがとさん。こちとら仮にも食堂経営者だ、机の裏まで布巾かけちゃらァ」
「んじゃ俺は天井だな、この中で一番背高いし」
「おう、任せるわ」

 うーし、そんじゃ始めっかーとアーサーと烏鵠。
 少年少女も頑張っていたがやっぱり天井は難しかったし、目につく部分は綺麗に掃除されていたものの、座卓の裏側等には見落としがあった様だ。しかしそこは流石の成人男性2人組。しかも1人は食堂経営者だ、衛生管理には余念がない。そんな2人がそろえば、高い所もついつい見落としがちな部分もバッチリである。

「天井後に回すと結局床に汚れが落ちるんだよなー」
「まー仕方ないわな、どっちにしろ天井にもススワタリが固まってたからナ」

 天井の煤をパタパタとアーサー、落ちた煤を箒で纏めていく烏鵠、実は行間で倒されていたススワタリ達。

「『ちりとり』頼むわ」
「おーう」

 と【ウェポン・アーカイブ】で召還した『ちりとり』を手渡したり、

「細かい汚れは『ぞうきん』で綺麗に拭いてやるぜ!」
「隅から隅まできっちりなァ!」

 なんてやり取りをしながら、1刻2刻と時間は進み――ついに、

「うっし、こんなもんだろ!」
「おー、これだけ綺麗になれば十分だナ」

 いえーい、とハイタッチする2人。後ろで真似する少年少女達。
 そこには見事に綺麗になった茶屋の姿。使った掃除道具も片付けて、後は暖簾をかけるだけである。

 かくして、大福茶屋に平和が訪れた。しかしそれがひと時の安息であることは、自分たちを送り出したグリモア猟兵が予知している。
 猟兵たちに礼を言って、料理の仕込みに入った店主を横目に彼らは一度店を出る。いずれ訪れる次なる相手を待ち受ける為に――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『妖狐』小町』

POW   :    妖狐の蒼炎
【青白い狐火】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    クイックフォックスファイア
レベル分の1秒で【狐火】を発射できる。
WIZ   :    コード転写
対象のユーベルコードを防御すると、それを【巻物に転写し】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。

イラスト:茅花

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠暁・碧です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 その妖狐が、まだただの狐だった頃。彼女は自分が賢い存在だと思っていた。

 長い生で妖狐となり、人に化ける力を得が彼女は人里へと潜り込む。そこで最初で知った事は、己が無知だという事だった。それはそれは、苦い記憶である。野生に身を置いていたのだから当然ではあるのだが、この世には知らぬ事ばかり。
 転じて、知らぬ事を知るというのはとても甘美な事だった。文字を覚えた彼女は、ひたすらに書を読み耽った。そして――。
 
 頭を使うと、甘い物が欲しくなるのだと知った。

 そう、彼女もまた甘味を愛する1人なのだ。甘いお菓子を口に含んだ瞬間のなんと素敵な事か、これほどまでに幸福な時間は無い。甘い物を欲するのはあらゆる生命に刻まれた本能なのだと言っても過言ではない……過言かな、過言かもしれない。ちょっと反省。
 ともかく、日長1日書を読んで疲れたならば甘いお菓子を堪能する。妖狐となって以降はそんな暮らしを送っていた。それはオブリビオンとして蘇った今も変わらず。だというのに――。

「まさか、行きつけの茶屋がススワタリのせいで閉店中なんて……」

 そう、彼女もススワタリのせいで甘味にありつけなくなった被害者の1人だったのだ。楽しみにしていた甘味をお預けされるその辛さといったらない。

「まったく、よりにもよって大福茶屋が被害にあうなんて……って、あら?」

 何の気なしに歩を進めて件の茶屋の近くを通りかかった時、暖簾こそかけられて居ないもの店が開いているのを目撃する。そしてそこに立ちはだかる幾人かの人の姿。
 それを目にした瞬間、『敵』だと理解した。それは自分達に刻まれた本能だ、今度は間違い無い。

「そう、つまり――私の甘味を奪うつもりね……!」

 そう、彼らは自分のお楽しみを邪魔する『敵』だ――!

「私の大福を奪う気なら、許さないわ――!」

 あれ、すっごく美味しいんだから!

 それでは妖怪退治の第二幕、『妖狐小町』編のはじまり、はじまり。
リュヌ・ミミティック
・心情
ん、おー…小町さん、だー……
ん…また、君、と戦う、の、は、哀しい、け、ど、終わりに、しよ、ね

・行動
「ん、おー…独り占め、だめ、だ、よー!
皆、楽し、み、にして、る、んだ、か、ら、ねー!」
一応、説得はしよう
言葉が通じればそれにこしたことはないもの
「ん、お金、払って、適度、に、おいし、く、たべ、よー?」
言いくるめで納得してくれないかなぁ

・戦闘
話しが通じないのなら、しょうがない…
「ん、おーダフィット、猫憑き季月、いく、よー!」
他の猟兵と一緒に狐乃火焔を使いつつ、ダフィットと猫憑き季月も使って戦うよ
猫憑き季月を前に出して、囮にもなっちゃうね!


ハルピュイア・フォスター
アドリブや絡みはOK【SPD】

さてと掃除の後のご褒美の大福を食べて妖狐さんを待とう
もし盗られたら【迷彩6】と【目立たない6】を使い奪い返し、遠くにいる際はフック付きワイヤーに装着した羽根型投げナイフを大福を狙い刺してでも取り返す

妖狐さんは酷いですね…人のお菓子まで食べちゃうのは…。
食べ物の恨みは怖いですよ…わたしはもう怒られたのでもう大丈夫…ですよね…きっと…。

基本は【ダッシュ5】を使いヒット&アウェイで攻撃
隙があれば【Last memory】と【鎧無視攻撃5】を合わせて使用し【暗殺100】しよう
反撃されたら【武器受け2】と【残像5】で回避

さてっとわたしはモニカさんが来る前に隠れようっと…。


アーサー・ツヴァイク
※引き続きアドリブ協力大歓迎

奴もまた、甘味を愛する者か…!
だが『同志』とはいえ、こちらに敵意を向ける以上は戦うだけだ!

敵は炎使いのようだな。ならばバスターホーンの【盾受け】と、バトルスーツの【火炎耐性】で防御するか。炎に弱い味方がいるなら、前面に立ってかばうぜ!
相手の攻撃の切れ目を【見切り】、チャンスが来たら【ダッシュ】で接近! 全力で近づいたところで、暴れ回ったお仕置きへの…鉄拳制裁だ!

…もしこいつが、ただの客として振る舞うだけであれば…見逃す。
だがもしオブリビオンとしての本能が勝り、最期まで戦おうと言うならば…俺は容赦なく倒すぜ!



「あー! 私の大福! 返しなさいよ!」
「なっ、今度はちゃんと私のです……」

 やって来た小町は、ハルピュイアの手にある大福を指さして言う。
 それは時は少々遡り、猟兵達が1度店を出た直後の事。

「兄さん方、これからもう一仕事あるって話だったけれど、ちっとは時間があるんだろう? なら、とりあえずこれでもつまんどくれ」

 と、店主が猟兵達に大福を振る舞ってくれていたのだ。しっとりときめ細かく舌触りの良い餅と、その中にたっぷりと包み込まれた少々甘さが控えめの餡。それらが合わさり、上品さを醸し出すと共につい次を求めてしまう魔性の味わい。
 それを有り難くいただく猟兵達だたったが、ハルピュイアは【貰って】来たあんころ餅もあった事からまだ食べ終わっていなかったのだ。

「だから早めに食べておけば……いや、そもそもあんころ餅を獲ってなけれ、ば……!」

 言い合いを続ける小町とハルピュイア。そんなハルピュイアの横から歩み出たアーサーと小町との間に視線が交わされた、その瞬間。先ほど感じたオブリビオンとしての本能とは全く別の所で、2人は確信する。人間だとか妖狐だとか。猟兵だとかオブリビオンだとか。そんな事は関係ない、1つの思い。そう、

 目の前の妖狐 / 目の前の男性
 奴もまた―― / 彼もまた――

『『甘味を愛する者――!』』

 その存在が、『同志』である事を――!
 しかし、たとえそうであったとしても今は敵同士。戦わなければならない。と、決意を固める2人の横目に、リュヌは1人哀し気な顔で小町を見つめる。

「ん、おー……。小町さん、だー……」

 そう、リュヌは以前、別の依頼で小町と戦った経験がある。

「……? 誰、貴方。私を知っているの?」

 しかし、相手はオブリビオン。骸の海に捨てられた存在が舞い戻った者。
 それは小町そのものではないし、同じ姿のオブリビオンと出会っていたとしても、そこに連続性は無い。ここに居る小町とリュヌが以前戦った小町は別人だと言える。

「ん……また、君、と戦う、の、は、哀しい、け、ど、終わりに、しよ、ね」

 けれど、たとえそれが別人だとしても、リュヌはその面影を、あの憎しみに染まった瞳を、あの涙を無碍にはできない。

「って、それより今はその大福よ! いいから早く返しなさい!」

 ……当の本人はそれよりも自分の(ではない)大福を奪った相手に怒り心頭と言った様子だが。小町は自分の(ではない)大福を取り返すべく、ハルピュイアへと向かって高速で狐火を連射する!

「! 危ない!」
「わ、わ……」

 咄嗟に庇うように間に立ったドーンブレイカー、そのバトルスーツとバスターホーンで大部分を防ぐ事には成功するが、何分数が多い。ハルピュイア自身も回避し武器で受け手と対応するが、その猛攻についにその大福はハルピュイアの手を離れ――。

「取ったーっ!」
「あああーーーー!!?」

 そんなハルピュイアの珍しい絶叫とともに、狐火に紛れて接近していた小町の手へと渡ってしまう。

「妖狐さんは酷いですね……人のお菓子まで取っちゃうのは……。食べ物の恨みは怖いですよ……?」

 うぅー、と恨めしそうに小町を睨むハルピュイア、得意げにフフンと笑う小町、それお前が言う……? な雰囲気の猟兵達。

「知らないわ、そんなの! 大福茶屋の甘味は全部私が食べるのよ! それに、甘味にとってもそれを愛する者に食べられる方が幸せに決まってるじゃない! 違うかしら!? 『同志』!」

 と、ドーンブレイカーを指さしながら言う小町。しかし、

「いいや、違うな『同志』! 甘味とは、それを愛する者のみならず多くの人を幸福にするものだ! それを1人独占するなど許されることじゃない! それにお前にも解るはずだ、楽しみにしていた甘味を奪われるあの辛さが……!」
「ん、おー……独り占め、だめ、だ、よー! 皆、楽し、み、にして、る、んだ、か、ら、ねー!」

 と、ドーンブレイカーと、この2人ほど突き抜けていないにしても甘いお菓子が大好きなリュヌは言う。

「ん、お金、払って、適度、に、おいし、く、たべ、よー?」
「残念ね、全部食べるのが私にとっての『適度』よ! それに、言っておくけど私、ちゃんとお金は払ってるわよ? 人里では物を手に入れるのにお金が要るっていう事は私知ってるもの!」

 ほら! と懐から巾着を取り出す小町。その中にはぎっしりと。

「ん、おー? 小石?」

 そう、小石が詰まっていた。それに気づいた小町はハッとした表情で、その小石を妖術で小判へと変化させる。

「いや、贋金じゃねーか!」
「仕方ないじゃない、私お金なんて持ってないもの! うぅ……! ばれてしまったものは仕方ないわ。こうなったら、貴方達を倒して口封じしちゃうんだから!」

 と、再度狐火を放とうとする小町。どうやら、話し合いはここまでの様だ。
 ここからは、戦いの時間だ。そして、という事は、

「――油断大敵ですよ?」

 この会話に紛れ、技能を駆使して小町の意識の外へと消えて隙を伺っていたハルピュイアにとって、絶好の瞬間である、という事だ。

「取った」
「っ、くぅ……!?」

 小町も咄嗟に反応するが、完全に虚を突いて放たれたそのナイフ、零刀(未完)による一閃は小町の身を捉え、

「返してもらいますね、私の大福」
「ああああーーーーー!!!??」

 小町に対して浅くない傷を残すと同時に、奪われた大福を取り返した。

「よくも、よくも私の(ではない)大福を……!」
「言ったでしょう、食べ物の怨みは恐ろしいと……。それに今度はちゃんと私の(これは正しい)大福です」

 何はともあれ、先手を取った猟兵達。何か物理的なダメージより大福取られた事の方が効いている気がしないでもないが、ともかく。初撃に成功したハルピュイアはすぐさま距離を取ろうと仲間の元へと駆け寄る。その姿を小町が放つ高速の狐火が追うが、そこに割って入ったドーンブレイカーとリュヌ、そしてリュヌの手にあった猫憑き季月とダフィットがその全てを防ぎきる。

「ん、話し、が、通じ、ない、な、ら、しょう、が、ない……。ん、おー。ダイット、猫憑き季月、いく、よー!」
「あぁ、『同志』とは言え、こちらに敵意を向ける以上は戦うだけだ!」
「こっちこそ……例え『同志』であっても手加減なんてしてあげないわ!」

 とは言え、思わぬダメージを受けてしまった小町には焦りがある。数でも負けているし、ここは広範囲を纏めて攻撃しようと考える。

「まとめて、燃えちゃいなさい!」
「ん、おー。そう、は!」
「させん!」

 と、視界を埋め尽くさんばかりの蒼炎が小町の周囲を薙ぎ払う! が、それを前に出たドーンブレイカーとリュヌが後方に抜けないように受け止め、その中をダフィットと猫憑き季月が縫うように前に出る。

「ん、おー……たっぷ、りと、遊ん、で、おい、で!」

 そして小町が蒼炎を撃ち切った隙を狙って攻撃させ、自身も【狐乃火焔】で、20の狐の形の炎で援護する。だが、

「甘い、わよ……!」

 小町はダフィットと猫憑き季月の攻撃を寸での所で避けて、そして手にした巻物で防ぎ、さらにリュヌが放った【狐乃火焔】の一部を巻物へと転写する。しかし、

「妖狐さんも甘いですよ? ……あなたの夢を、いただきます」

 と、呟き、それらの攻撃すらも布石として再度背後を取ったハルピュイアが今度は完全なる死角から更に鋭さを増した斬撃、【Last memory】を放つ。

「っ、ぁ………っ!」
「駄目じゃないですか……油断して気を抜いちゃ……ね?」

 その鋭い痛みに声にならない悲鳴を上げる小町。無論、小町に油断などない。ただ、彼らのその連携が小町を上回っていたという、それだけの話。しかし、まだその目から闘志は消えていない。

「まだ、よ……!」

 お返しとばかりに先ほど防いだリュヌの炎、【狐乃火焔】を巻物から呼び出す。呼び出された大量の炎の狐は、それぞれ猟兵達の元へと放たれる。事無く。むしろ1つ所へと集まり、巨大な姿へと変貌し、纏めて周囲を薙ぎ払う!

「ん、おー……!」
「ぐっ!?」
「ッ……!」

 死に物狂いの攻撃に後ずさる猟兵達。その抵抗に驚愕する猟兵達の中、1人リュヌは別の事に驚いていた。彼の使う【狐乃火焔】は、確かに複数を合体させることで強化する使い方はある。しかし、今回それを見せてはいない。にも関わらず小町はそれを使って来た。
 繰り返しになるが、オブリビオンである小町に連続性は無い。目の前の小町と、かつて戦った小町は別人であるはずだ。しかし、そこに僅かな繋がりは有るのかもしれない。

「ふー……! 私はまだ、やれるわ!」

 息を切らしながらもしっかりと立ち上がる小町。しかし、反撃を受けながらも【狐乃火焔】が消えた事を、攻撃の手が止んだ事を逃さない男がいる。ドーンブレイカーだ。彼はその機に一気に駆け寄り、その拳を振り上げる!

「【Select…BURN ACTION!】この手に宿る太陽の力……受けてみやがれえええええ!!!!」
「っ……!」

 その気迫に思わず身構える小町。そして……。

「いっっっ!? たぁ……!!!???」

 その頭に、ゴツン! という鈍い音を立てて拳骨が振り落とされる。鉄拳制裁である。
 え、何、何が起きたのっていうかあたま痛ったい……! と目を白黒させる小町。何が起きたのか理解できていないらしいが、何の事は無い。他者と関わり生きる者ならば子供であっても知っている事。

「今のは、暴れまわった事と、そして何より人の甘味を奪った事へのお仕置きだ!」

 そう、悪い事をすれば怒られるという、それだけの事。しかし、ただの狐であった頃から、そして妖狐となって人里に潜り込んでからも、オブリビオンとなった今でも、独りで居た小町は、ただそれだけの事を知らなかったのだ。無論、知識として知ってはいただろう。しかし、実際に彼女を怒ってくれる存在は居なかったのだ。故に、今に至るまで彼女は怒られる悲しさと言う物を知らなかった。
 小町に有ったのはただ自身の知らない事知りたいという欲求と、『甘いお菓子が食べたくて』という、それだけの思い。それだけでしかなかったからこそ、彼女は『こう』なのだ。

「お前がただの客として振る舞うだけであれば……許す。だがもし最後まで戦おうと言うならば、人の甘味を奪い続けると言うならば……俺は容赦なく倒す!」
「ん、ん。独り占め、止め、て、皆で、食べ、よ、ね?」

 と、2人の猟兵の厳しい言葉と伸ばした手によって選択を迫られ、小町は揺らぐ。

「私は、私、は……!」

 彼女が何を選ぶにせよ、決着の時は近い。



 なお、思わぬ流れ弾に耳が痛いハルピュイアは、

(私はもう怒られたから大丈夫……ですよね、きっと……これが終わったら、モニカさんが来る前に隠れようっと……)

 とか思っていた。果たして彼女の運命やいかに。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

荒・烏鵠
どうやら相手も変化の術は持ってる様子。ならコピーされても問題なかろ。

【WIZ】
お店の人にお麩を一個もらってUCで大福に変化。同族のよしみだって大福を渡し、一口食べたところでUCを解く。
ざーんねんっ、そいつはただのお麩だぜ!
あー? 何キレてんだ。ニセの金でホンモノの大福が買えるわけねーだろアホタレ。

同族よ、人間を騙すンはオレたちのお家芸だが、そーゆーのは一線を越えちゃあいけねーのよ。人間は金がなきゃ飯も服も寝床も手に入らねー不便な生きモンなんだ。そこで嘘吐くのはイタズラたァ呼べねーだろォ。

タダで欲しいってんなら人間手助けすんのがオススメだ。お礼にって貰えたりするぜ? その方が味も良くなるしなァ。



 頭を押さえて蹲る小町の元に、烏鵠がつかつかと歩み寄る。

「まーまー、あんまり苛めてやンなよ。そんなに大福が食べたいんならほれ、オレサマの分をやるよ」

 と、しゃがみ目線を合わせて小町へと大福を差し出す。若干涙目になりながら小町はそれを見やり、次いで烏鵠へと戸惑いと訝しみの混ざった視線を向ける。

「いい、の……?」
「同族のよしみだ、遠慮すんなよ」

 だから、ほれ。と再度。怒られるのも初めてな小町にとって、その後の優しさもまた、初めての事だった。

「……礼は、言わないわよ」
「おう、言わなくていいぜ」

 どことなく嬉しそうに大福を受け取った小町は、それを一口頬張り――。

「それ、大福じゃねーからナ」
「~~~~!!???」

 頬張った瞬間にお麩へと変化したそれに愕然とする。

「ざーんねんっ、そいつはただのお麩だぜ!」
「なっ、あ、貴方! 騙したのね!?

 そう、それは大福ではなく店主から貰ってきたお麩を【十三術式:九羽狐】で変化させた物だ。怒る小町を一通りけたけたと笑った後、烏鵠はそれまでの飄々とした態度から真面目な表情へと切り替える。

「あー? 何キレてんだ。ニセの金でホンモノの大福が買えるわけねーだろアホタレ」
「っ……!」

 そんな烏鵠の雰囲気の変化に怯む小町。そんな小町に、烏鵠は続ける。

「同族よ、人間を騙すンはオレたちのお家芸だが、そーゆーのは一線を越えちゃあいけねーのよ」

 恐らく、小町を囲む猟兵の中で彼女の事を、彼女が『こう』な理由を最も理解しているのは烏鵠だろう。
 答えは、独りの小町とそれを囲む猟兵達というその構図にこそある。そう、殆どの場合において誰かと協力して事に臨む猟兵達と違って、彼女は『孤独』なのだ。そしてそれが、恐い事である事も、寂しい事である事も解っていないのだ。

 彼女を怒ってくれる者が居なかったという事はつまり。
 彼女には、頭を撫でてくれる誰かが居なかったという事だ。

「人間は金がなきゃ飯も服も寝床も手に入らねー不便な生きモンなんだ。そこで嘘吐くのはイタズラたァ呼べねーだろォ」

 そんな烏鵠の言葉を俯きながら聞いていた小町。彼女は肩を震わせながら言う、

「だっ、て。仕方ないじゃない……! 私、どうやったらお金が貰えるのかなんて知らないんだもの。こういうやり方しか、知らないんだもの!」

 と、今にも泣きだしそうな声で。
 そして烏鵠を見上げて睨み付けようとした彼女の頭に、ポン、と烏鵠の手が乗せられる。
「わ……!?」
「タダで欲しいってんなら人間手助けすんのがオススメだ。お礼にって貰えたりするぜ? その方が味も良くなるしなァ」

 だから、もう人の物を取んのは止めな、と頭を撫でながら烏鵠は続ける。
 小町は知らなかった。自身の頭を撫でる、その手の感触を、そのぬくもりを、心に沸き上がる暖かい感情を。

 その身に刻まれたオブリビオンとしての本能は、未だに目の前の存在への敵意を叫んでいる。しかし、だというのに。
 小町はもうこれ以上、彼らと戦う気にはなれなかった。

「……解った、わよ。もう、甘味を独り占めするのも止めるし、偽物のお金を使うのも止めるわ。それでいいんでしょう!?」

 心に芽生えたくすぐったさを誤魔化す様に、烏鵠の手を振り払ってその場から走り去る。先ほどとはまた違った理由で頭を押さえながら。
 確かに彼らと戦う気にはもうなれない。かといって、彼らに敵意を抱く本能まで消えた訳でもない。このまま一緒に居ては、いつその本能に呑まれるかも解らない。また、彼らを傷つけてしまうかもしれない。

 それは、嫌だった。

 だから、これ以上何かが起きる前に、何かをしてしまう前に彼女は立ち去る事にしたのだ。
 決して、少し朱に染まった頬を見られたくなかった訳ではない。

 ともすれば、この結末を『甘い』と断ずる者も居るだろう。
 だが、たまにはそんな甘さも有っていいのではないだろうか。
 それにそもそも、今回依頼された事はオブリビオンを倒す事ではない。
 甘味を独り占めする厄介者を止める事なのだ。ならば、今回の結末はこれでいい。
 立ち去った小町がこれから人に害を為さない保証は確かにない。
 けれど、改心した彼女が人の助けとなる可能性を否定しきる材料もまたない。
 ならば、そんな甘い結末を今は期待しよう。

 かくして、大福茶屋の危険は去った。



 と、ここでお話を終わっても良いですが、悪い事をした者が怒られる様に、頑張った物にはご褒美があるのも世の常なれば。
 さぁ、これにて仕事はお仕舞。後は思う存分飲んで食べてを楽しむお時間です。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『お茶屋で一服』

POW   :    屋台そばや握り寿司など、たっぷりとお食事を味わいます。

SPD   :    周辺の散策や、ちょっとしたパフォーマンスなどで楽しみます。

WIZ   :    お団子や抹茶など、甘味をゆっくり味わいます。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 煤も厄介事も綺麗さっぱりなくなった大福茶屋。しかし店を開くのはまた明日から。
 今日の所はその功労者達を美味しい料理と甘いお菓子でお出迎え。
 料理を楽しむならば、品書きには寿司に蕎麦に天ぷらに、鰻のかば焼きを始めとした魚の焼き物や吸い物漬物等の様々な品が並んでいる。
 甘味を求めるならば、やはり目につくのはその豊富な大福の種類。よもぎ大福や豆大福、塩大福に栗大福に梅大福等々。しかし一番人気は先ほども味わった餡子を包んだだけの『大福』の様だ。もちろん、あんころ餅等他のお菓子も取り揃えている。
 なんならそれらを手に街へと繰り出し、街並みや催し事を楽しむのも良い。
 花も咲き始めたこの時期、見れば花を肴に一杯やってる集団と、そんな集団に舞踊を披露している芸妓の姿もある。

 ただ、何を楽しむにも急いだ方がいい。茶屋の中には既に1人の少女の姿がある。
 お預けされたあんころ餅の分までと、次々に料理や甘味を食べ進めていくその姿。
 さぁ急げ、自分の分が無くなる前に。
荒・烏鵠
大福二つくださいな。桜餡と普通の餡子を一つずつ。お代もちゃんと払うぜ。支払中にこーっそり大福屋サンの懐に、氷砂糖が入った折り紙封筒を入れていく。スリの逆だな。一般人相手だし、盗みと物を隠すの合わせ技でなんとかなンだろ。
マ、目の前で同族がアホやったわけだし、これくらいはナ。
あいつも散々無銭飲食やらかしたくさいが、この時代なら黒くない砂糖ってイイ値段だろ? だからこれでトントンってことで一つ、な?

あとは外出て花見だ花見! 桜がキレイに見える場所でのんびり大福いただくぜー。その後は芸妓さんトコとか乱入して笛吹いたりして楽しむ。年のはに、春の来たらばかくしこそ、梅をかざして楽しく飲まめ、って奴サ。



「大福屋サン、大福二つくださいな。桜餡と普通の餡子を一つずつナ。外で花見でもしながら食べたいんで包んでもらえる?」

 と、店に入って待ち構える店主に注文する烏鵠。

「はいはい、ちいっと待ってくださいね……と、はいお待ち」
「はい、ありがとさん。あ、これお代ね」

 と包みを受け取り、代わりにそのお代を差し出す烏鵠。しかし店主はそれに手を振り、

「いえいえ、今日は私のおごりですんでお代は結構ですよ。味わって貰えりゃ十分です」
「いやいやいや、そう言わずに貰ってくださいよ。目の前で同族がアホやったわけだし、その詫びみたいなモンなんで」

 と、片手で店主の肩を組み、もう一方の手でお代を押し付ける。そのどさくさに、こっそりと店主の懐に氷砂糖のたっぷり入った折り紙封筒を忍ばせながら。

「まぁ、そう言うんでしたら……。それでは、有り難く頂戴しますね」
「えぇ、そうしてくだせぇ。そんじゃ大福は美味しくいただきますわ」

 と、組んでいた肩を離して手をひらひらと。あとは折り紙封筒に気付かれない内に退散する事にしよう。あの様子じゃ、気付いたら封筒は押し返されそうだ。

(あいつも散々無銭飲食やらかしたくさいが、この時代なら黒くない砂糖ってイイ値段だろ? だからこれでトントンってことで一つ、な?)

 と、心ばかりの贈り物を有り難く頂戴して貰った所で店の外に出る。

「さって、そんじゃ花見だ花見!」

 どこが綺麗に見えるかなっと、周囲を見渡す。あのお花見集団、大きな桜の木の下に設けられた宴会所は確かに絶好の花見ポイントらしい。そこに混ざるのも楽しそうだが、大福を食べる間位はゆっくりしたい。
 それならばとそこから少し離れた川っぺりに腰かけ、その人の営みと桜を両方楽しむことにする。そしてもらった包みを広げれば、そこには紅白の鮮やかな2つの大福。

「ん。さっきも食ったけどやっぱ美味いナ、この大福。茶も貰ってくるんだったか」

 失敗した、と呟きながらまずは普通の餡の方を平らげる。その視線の先には楽しそうに飲めや歌えやと大騒ぎしている人間達。自身の愛する、人間達。

「あいつもあン中に入って行けてりゃ、ああはならなかったろォに」

 まったく、アホな奴だ。まぁ、それは今後に期待だ。オブリビオンとは言え、シャーマンズゴーストの様に人に味方する者も居る。あの同族がそうなるかは解らないが、そう期待する位はいいだろう。
 などと思いながら桜餡の入った大福を一口。あぁ、やっぱり美味い。

「こりゃ、あのアホも目の付け所に関しちゃは褒めてやるべきだナ」

 と、大福を食べ終わった所で立ち上がる。

「んじゃ、あの集団とこにお邪魔すっかね。芸妓さんと笛吹いたりすンのも楽しかろ。

 年のはに 春の来たらばかくしこそ 梅をかざして 楽しく飲まめ

 って奴サ。あれは桜だけどナ」

 それはこれから毎年、春が来る度に梅を愛でて楽しく酒をのもう、という歌。
 これからもその楽しい日々が続くようにと願った歌。

 願わくは人の手のぬくもりを知ったあの妖狐が、その輪の中に加わる事を。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リュヌ・ミミティック
【リノルル】で参加
ユトにぃとレシャねぇと、三人で和菓子を食べるよ!

「ん、おー。ユトにぃ、レシャねぇ、僕、がんば、ったー!」
2人に、撫で撫でしてもらって、あとは大福全種類、ひとつずつ、食べるよー!
「ん、おー猫憑き季月と、ダフィットも、ねー」
(猫憑き季月は気分だけ味合わせるつもり)
「ん、ん、2人の、おいし、そー」
大丈夫なら交換だー!
ふふん(尻尾ふりふり)いっぱい、美味しい、うれし、うれし、ねー!
あ、勿論お代は払うよ、安心してね!
三人で一緒に過ごせるの、とってもとっても、嬉しいね


ユト・リーィング
【リノルル】で参加
リュヌ→リュン坊
オレーシャ→お嬢
と呼ぶ

リュン坊頑張ったんだってな、お疲れさん。
よしよし、と頭を撫でる
団子の代金は俺の奢りだからゆっくり食べろよ?
2人をあったかく見守りながら自分ももぐもぐと団子を楽しむ。
いやぁ、やっぱり春は団子だよなぁ。


オレーシャ・アルヴィア
【リノルル】で参加
リュヌ→リュン(または私の盾) ユト→ユト様(または私の剣) と呼ぶ

よく頑張りましたね、私の盾。
ご褒美はいつものがいいかしら?(ねだられればハグをして猫憑き李月と、ダフィットも労うようになでなでする。)
私の剣と盾のやり取りが、かわいすぎて尊い。

あら、ユト様?おまんじゅうというものもあるのですね。
大福はリュンちゃんがいっぱい頼んでいるみたいだから、食べ比べには事欠かなそうね。
お仕事のあとで、たくさん入るでしょうけれど、食べすぎには注意してね。
三人でお茶と和菓子を和やかに楽しむ。

甘味でみんなを和やかにしてくれる素敵なお店ね。
ふふ。次くるときはお食事にくるのも楽しそうね。



 大福茶屋の外でリュヌは1人、人を待っていた。それは兄、姉と慕う大好きな2人。
 今日はいっぱい頑張ったから、いっぱいいっぱい褒めてもらえる。そんな期待を胸いっぱいに、今か今かと待ちわびる。そこへ、

「よぉ、リュン坊。待たせちまったか?」
「外で待っててくれたのね。ありがとう、私の盾」

 と、優し気な声がかかる。ユト・リーィング(蒼き鎧の剣豪妖狐・f00959)とオレーシャ・アルヴィア(オラトリオの聖者・f04602)の2人だ。

「ん、おー! だいじょ、ぶ! それ、じゃ、お店、はい、ろー!」

 到着した2人の間に入って両手をそれぞれ2人と繋ぎ、店の中へと向かうリュヌ。
 ユトとオレーシャの2人はそんなリュヌを愛おしそうに眺めながら店内へと入った。
 そして店員さん……先ほどまでリュヌと一緒に戦っていた少女に店の奥にある多人数の席へと案内された3人は並んで床几に腰を掛ける。リュヌが真ん中で、その両隣にユトとオレーシャだ。
 席に着いた3人にお品書きとお絞りが渡される。

「へぇ、随分と色んな品が有るんだな」
「本当ね、お料理もだけど甘味の種類がいっぱい。どれを頼むか迷うわね」

 お品書きを眺め、何を頼むか思案する2人と違い、リュヌは既に何を頼むか決めていた様で、店員さんへと注文を伝える。

「ん、ん。大福、全部、おねが、い!」

 そう、お品書きの甘味の項にずらっと並んだ大福の数々。その全種類を1つずつ。うきうきと甘いお菓子の到着に思いを馳せるリュヌをくすくすと笑いながら眺めつつ、ユトとオレーシャも頼む品を選ぶ。

「なら俺はそうだな、饅頭も良いが……団子を貰おうかな。餡子とみたらしで頼む」
「あら、ユト様? おまんじゅう、というものもあるのですね。それなら私はそれにしようかしら」

 思い思いの注文を受け、店員さんが忙しそうに厨房へ注文を伝えに向かう。
 はて、今日は貸し切りという事だったが随分忙しそうだ、と見渡せば何やら凄い勢いで料理と甘味を食べる少女の姿。どうやら店主はその注文量に応えるために厨房に籠っているらしい。これは品が出てくるまで少しかかるかもしれない。

「あぁ、そうだ。リュン坊、頑張ったんだってな、お疲れさん」

 ユトがそう言いながら頭を撫でれば、リュヌは嬉しそうに目を細める。

「ん、おー。ユトにぃ、レシャねぇ、僕、がんば、ったー!」

 と、尻尾をブンブン振り回しそうな程に喜ぶリュヌ。そんな可愛らしい2人のやりとりをを尊く見守っていたオレーシャに、何かを期待するような目でオレーシャへと視線が向けられる。そんな視線をオレーシャは笑顔で受け止めて、

「よく頑張りましたね、私の盾。ご褒美はいつものがいいかしら?」

 と、腕を広げればそこにリュヌが飛び込む。それを優しく受け止め、ぎゅっとハグをする。

「猫憑き李月とダフィットもお疲れ様」

 と、リュヌが手にした縫い包みと槍も一緒に撫でて今度はそんな様子をユトが微笑ましそうに眺めている。
 大好きな2人に存分に甘えられてとても上機嫌なリュヌ。お掃除も戦いも大変だったが、頑張った甲斐があると言う物だ。

 そこに起用に複数の盆を持った店員が現れ、注文の品を置いていく。
 沢山の大福に、何本かずつ入った団子の皿が2つ、いくつかのお饅頭。それが所狭しと並べられた。

「ん、おー猫憑き季月と、ダフィットも、ねー」

 リュヌは向かい側の開いていた床几に猫憑き李月とダフィットを座らせる。と言ってもその2人は食べられないので気分だけ。気分だけだけど、皆で囲んだ方がもっと楽しいし美味しくなると言う物。

「えぇ、本当に美味しそうね。でもリュンちゃん? お仕事のあとで、たくさん入るでしょうけれど、食べすぎには注意してね?」
「代金は俺のおごりだからゆっくり食べろよ?」

「ん、おー! 気を、つけ、る!」

 はーい、と答える様にびしっと手を挙げながら応えるリュヌ。と、言った所で3人揃って、いただきます。
 と、各々甘味へと手を伸ばす。両手で持った大福をぱくり、と一口美味しそうに頬張りながらも、リュヌは2人の頼んだ甘味にも興味津々と言った様子。

「ん、ん、2人の、おいし、そー」

 何か言いたげに2人を見上げるリュヌ。それを察したオレーシャが饅頭を食べていた手を止め、

「リュンちゃんが頼んだ大福がいっぱいあるから、食べ比べには事欠かなそうね。私のお饅頭を1つあげるから、リュンちゃんの大福も1つ頂戴?」
「ん、おー! いい、よ!」

 と提案。待ってましたと言わんばかりにリュヌは大福を1つ渡し、代わりに貰った饅頭を嬉しそうに食べる。オレーシャも受け取った大福を食べてみる。

「ん、お饅頭、も、おいし、ね!」
「あら、これは……お塩を使っているのかしら。甘くて、塩味も効いてて不思議な味ね。でもとっても美味しいわね」

 オレーシャに渡ったのは塩大福だった様だ。オレーシャの言う通り、仄かな塩味が甘さを引き立てるその味わい。そんなやり取りをあたたかく見ていたユトも、自分の団子を楽しんでいた。

「あぁ、本当に美味いな。いやぁ、やっぱり春は団子だよなぁ」

 うんうん、と頷きながら食べていると、その団子を持った手を横からくいくいと引っ張られた。リュヌだ。

「ん、交換、だめ?」
「あぁ、勿論いいぞ。ほら」

 と、みたらしの餡子を1本差し出す。餡子だと大福と被るだろうという配慮だ。それを受け取ったリュヌから渡されたのはどうやら甘酸っぱい梅の甘露煮が入った梅大福の様だ。

「お、これは梅が入ってるのか。中々珍しいな。うん、美味い」
「ん、いっぱい、美味しい、うれし、うれし、ねー!」

 今度こそ尻尾をふりふりしながら甘いタレの絡まる団子を食べるリュヌ。
 ふと、そんな姿を見守っていた2人の視線が交わる。

「ユト様? 私にもお団子を貰えるかしら?」
「あぁ。勿論だぜ、お嬢」

 と、こちらでも甘味の交換会。その後もゆっくりと甘味とお茶を楽しむ3人。とても和やかな空間に、心なしか猫憑き季月とダフィットも楽しそうに見えるという物。

「ん、三人で、一緒に、過ごせ、る、の、とっても、とっても、うれし、ね!」

 甘える様に、両脇の2人の腕に抱きつくリュヌ。リュヌと、その仲間が頑張ったから得られたこの光景。尊い尊い幸せな時間。オブリビオンと戦いの日々を送る猟兵達にとって、だからこそ大事にすべきこの日常の時間。

「甘味でみんなを和やかにしてくれる素敵なお店ね。ふふ。次来る時はお食事に来るのも楽しそうね」
「あぁ、良いな。今度また3人で来ような」
「ん、おー! また、こ、よー!」

 けれど、楽しい時間も終わりは来るもので、沢山あった甘味もそろそろお仕舞。空のお皿が増えていく。そして、

「「「ごちそうさまでした」」」

 最後の1口を食べ終わる。それじゃお会計をしようと店員を呼べば、そこは流石に店主が厨房から姿を現した。

「先ほどの兄さんにも言ったんですが、今日の所はお代は結構ですよ」
「いや、リュン坊はともかく俺達は仕事してないからな。それにこの茶屋も大変だったらしいし、その見舞いと思って貰ってくれ」
「その分、また今度来た時に美味しいお料理を楽しみにしていますね」

 ユトが差し出したお代を観念したかのように受け取る店主。

「まったく、敵いませんねぇ。おごりのはずが店の手伝いまでして貰っちまって、このままじゃ私の立つ瀬がないってもんです。はい、解りました。それじゃ次にお越しの際には腕によりをかけて料理を作らせていただきますんで」

 参った参った、と笑って帰り支度を済ませた3人を見送る店主。

「ん、それ、じゃ、かえ、ろー!」

 リュヌがユトとオレーシャの手を握れば、2人はその手を優しく握り返す。そしてそのまま並んで大福茶屋を後にした。

 3人で、一緒に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ハルピュイア・フォスター
アドリブや絡みはOK

わたしだけ何もなく甘い結末の余韻に浸る訳にはいかない…です。
その結果、配膳や洗い物、売り子などなど【残像5】や【ダッシュ5】を使い大福茶屋での奉仕活動
ご褒美は無し(なのにお土産用の大福は何処かに隠し確保済…見つからないはず…。)

今回はわたしも(今は)反省してます…次からは(盗られた事にも気付かれない様に)気を付けたいと思います。

もし小町さんがお客さんとして来たら【優しさ10】で対応、嫌みを言われたら【殺気5】と【恐怖を与える5】で対抗


アーサー・ツヴァイク
※アドリブ絡み大歓迎
【WIZ】で甘味を楽しもうかな

…オブリビオンが全部アレ位聞き分けが良ければ、俺らの仕事も楽になるんだがなぁ。ま、今回が特例だったってことかね。
たまには大福位甘いお話も悪くはないよな。つーわけで茶屋のおっちゃん、俺にも大福一つね!

うむ…一仕事した後の甘味は最高だな! ただ食べるだけじゃなく、しっかりと働いて楽しんでこそだ。
持ち帰りとかできる? 旅団の仲間たち用に何個かお土産に買ってこうかな…



 3人を見送り、彼らの使っていた食器を片付けた店員、ハルピュイアは心の中で一つ安堵の息を吐く。

「これで少しは楽になりますね……」

 なぜ彼女が店の手伝いをしているのか、それは小町が立ち去った直後まで再度時を遡る。

「……オブリビオンが全部アレ位聞き分けが良ければ、俺らの仕事も楽になるんだがなぁ」

 立ち去る小町の背を見届け、そんな風に呟くアーサー。彼もまた、これまで多くのオブリビオンと戦って来た1人だ。思い出されるのはかつて戦って来た強敵難敵達。

「ま、今回が特例だったってことかな。さて、そんじゃ早速茶屋に入って、報告とご褒美と行くか」

 見えなくなった小町の背から仲間達へと視線を戻すと、そこには何やら思案しているハルピュイアの姿。彼女はうん、と一つ頷くと、

「わたしはご褒美は無し、です……」
「何……!? どうした、何か悪い物でも食べたか!?」

 何かを決意したかの様にそう宣言するハルピュイアに驚愕の視線を向けるアーサー。これにハルピュイアは心外そうに応える。

「失礼な、大福しか……大福とあんころ餅しか食べてないです。妖狐さん……小町さん、ちゃんと反省してたじゃないですか」
「あぁ、そうだな。ちと甘いのかもしれないが、たまにはそんな、大福位甘いお話も悪くはないよな」

 うんうん、と頷くアーサー。敵であるオブリビオンを倒さずに改心させる、そんな甘いお話。それはそうそう有るものではない。そして、だからこそハルピュイアは思う。

「オブリビオンである小町さんが反省したのに、わたしだけ何もなく甘い結末の余韻に浸る訳にはいかない……です」

 そう告げるハルピュイアにおぉ、と感嘆の声をあげるアーサー。正直に見直した。

「そう、来る時モニカさんのあんころ餅を貰って……いえ、盗って来ましたから。今回はわたしも反省してます……」

 今は。

「だから、次からは気を付けたいと思います」

 盗られた事にも気付かれない様に。

「そういう訳で、わたしはご褒美は無し、です」

 事前に隠して確保済みのお土産用の大福以外は

 心なしか聞こえてくるそんな副音声に、やっぱ見直すの早かったかもしんない。
 そう思いなおすアーサーであった。

「それだけじゃないです。配膳や洗い物に売り子、奉仕活動もします」
「おぉ、そりゃ偉いな。ならやっぱり見直して良かったわ」

 ぐっと意気込むハルピュイアだったが、そんなアーサーの言葉に首をかしげる。

「いや、あれ見てそう言えるのは素直に偉いと思うぜ」
「あれ……?」

 と、アーサーの視線を追ってみればそこには、

「んー! これが大福ね! あんころ餅も美味しかったけれど、これもとっても美味しいわ!」
「お料理もあるのよね、やっぱりサムライエンパイアなら寿司と天ぷらよね!」
「おそば? それも美味しそうね、お願いするわ!」

 と、大福全種どころか料理まで含めて全品制覇する勢いのグリモア猟兵の姿と、慌ただしくそれに応える店主の姿。
 ……早まったかもしれない。そう、後悔し始めたハルピュイアを他所に、

「あ、茶屋のおっちゃん、俺も大福一つね!」

 1人さっさと茶屋に入って席に着くアーサー。運ばれてきた大福を一口食べて、

「うむ……一仕事した後の甘味は最高だな! ただ食べるだけじゃなく、しっかりと働いて楽しんでこそだ」
「そうですよね、働いた後の甘味は良いですよね……。ところで、一緒に戦ったよしみでもうひと働きする気ないです……? 甘味がもっと美味しくなりますよ?」

 宣言した以上、奉仕活動はする。するけど、せめて道連れを……そんな思いで縋るような視線を向けられたアーサーは、それに笑顔で応える。

「ないかな!」
「ですよね……」

 がっくりとうなだれるハルピュイアだった。
 かくして、時間は冒頭へと戻る。

「さて、もうひと頑張りですね」

 3人分の食器を片付けたハルピュイアはそのまま出来上がった料理をグリモア猟兵の元へ運び、代わりに空いた皿を厨房へと運ぶ。そろそろ洗い物が溜まってきたが、その皿を洗う為の水がない。
 このこの時代、というかこの世界。当然蛇口を捻れば水が出るとはいかないので外に出て井戸から水を汲んでこなくてはいけない。戦闘慣れした猟兵といえど女性の身には少々堪える。まだ肌寒い季節だし、気付けば日も暮れてきている。
 そんな中での水汲みはちょっと億劫だなぁ、などと思っていると、

「ほら、水汲んできたぞ」

 と、水の入った桶を持ったアーサーが入ってくる。手伝う気がないとは言ったが、まぁしっかり反省はしているようだしこれ位はしても良いだろうと気を回していたのだ。

「ありがとうございます……」
「良いって良いって。力仕事なら得意だからな」

 予想外の手助けに一瞬呆気にとられるも、礼を言うハルピュイアに、にっと笑って返すアーサー。

「そういやここって持ち帰りとかできんのかな?」
「できるみたいですよ、さっき大福包んでましたし」
「お、んじゃ旅団の仲間たち用に何個かお土産に買ってこうかな……」

 などと話していると、店先でから、と戸が開く音がする。今日は貸し切りのはず……? と思って厨房を出ると、そこには、

「げ」
「あ」
「お」

 ハルピュイアとアーサーを見て嫌そうな顔をする妖狐――、先ほど戦った小町の姿。

「何でまだ居るのよ、貴方達……。お仕事は終わったんでしょ? 早く帰りなさいよ」
「それは、こっちの台詞です……。やっぱり気が変わって甘味を狙いに来たんです?」

 バチバチと殺気交じりの視線を交わす小町とハルピュイア、このまま戦いの続きとなるか――と思ったが、そんな事は無く。
 どちらからともなく、殺気を霧散させ、ふふっと笑みを零す。

「傷、大丈夫ですか? 結構深く斬っちゃいましたけど……」
「あー、そういやバッサリいってたな……治してやろうか」
「平気よ、あれ位……嘘、まだ痛むわね。でも良いわ、悪いのは私だもの。それを忘れない様に、しばらくこの傷は残しておくわ」

 そう、穏やかに笑いながら言う小町。

「……膿んだら後が酷いですよ。治療位はしておくべきです。アーサーさん、救急箱とか無いか聞いてきてくれないですか? 後、ちょっと休憩貰えないかと」
「わかった、ちょっと待ってくれ」

 小町が何かを言う前に動き出す2人。何か言いたげだったが、結局は好意を素直に受け取る事にした様だ。

「それで、結局貴方は何をしてるの? 厨房から出てきたみたいだったけど」
「わたしは……わたしも人のお菓子を盗って来たのでその反省中です……」
「あら。何よ、私に色々言っておいて貴方達も悪い事してるんじゃない。それじゃ、貴方もゴツンってされたの?」
「いえ、それはされてないです」
「何でよー!? 貴方もされなさいよ! あれ痛かったんだから! あ、『同志』! この子にもゴツンってしなさいよゴツンって!」

 不公平よー! ハルピュイアを指さしながら、と救急箱を手に戻って来たアーサーにその痛さを思い出したのかちょっと涙目な小町が言う。

「いや、あれお仕置きだから。あと休憩は良いってよ」
「この子も人のお菓子盗ってるじゃない!」
「わたしは反省して奉仕活動中だからいいんです……」

 むーっ! と尚も食い下がる小町を無視して治療の準備を始めるハルピュイア。

「良いから、傷見せてください。アーサーさんは見ないでくださいね」
「おう、解ってる」

 さぁ、と身を乗り出すハルピュイアと、ひらひらと手を振って背を向けるアーサー。
 しぶしぶと言った様子で背を向け、着物を肌蹴る小町。

「それで、小町さんの方は何をしに来たんですか?」
「……貴方と同じよ。あの同族にも言われたし、今まで迷惑かけちゃってたから手伝わせてもらいに来たの。貴方達の鉢合わせないように時間置いたのに、なんで居るのよ……」

 むすっとしながらも大人しく治療を受ける小町。

「私、やっぱり貴方達は嫌い……ううん。私じゃなくて、私の本能ね。多分、これはどうしようもない物。私がどう思おうと関係なく、私は貴方達に敵意を向けちゃうの。でも、私は……」

 思い悩む小町。そう、猟兵達に敵意を向けるのはオブリビオンとしての本能だ。それに抗い続けるというのがどれほど困難な事か。そんな小町を、その敵意の対象たる猟兵達は、

「まぁ、オブリビオンってそういうものらしいからな」
「ですね」

 割とさらっと流した。

「ちょっと軽くないかしら!? 人がしんみりしてるのに!」

 むーーっ!! とむくれる小町。

「んな事言われても、俺達猟兵だし……」
「オブリビオンが事件を起こすなら倒すだけですし……」

 なぁ、ねぇ、と頷き合う2人。オブリビオンの起こす事件をグリモア猟兵が予知すれば、その対処に当たるのが猟兵の仕事。しかし、それはつまり、だ。

「お前がこの先事件を起こさないなら、俺達と顔を合わせる必要もないって事だ、『同志』」
「あ……」

 そういう事だ。小町が、このオブリビオンが本当に改心したならば、この先猟兵が差し向けられる事も無いだろう。もっとも、

「事件起こすなら次は容赦しないですけど」
「何で貴方はこの流れでそういう事言うのよー!」

 もーーー! と、大福茶屋にそんな声が木霊した。



 その茶屋の名前は『大福茶屋』
 大きな福を願って付けられたその名前。そんな名前の通り、その茶屋はその後も長く繁盛したそうで。
 そんな茶屋には、可愛らしい狐耳を生やした看板娘が居たとか居なかったとか。

 さて、長くお付き合いいただきましたが、そろそろこのお話もお仕舞です。
 それでは最後はこんな言葉で締めくくりましょう。

 めでたし、めでたし

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月25日


挿絵イラスト