ふたりのバレンタイン~互いに甘く幸せなお届け物を
晴れた青空が広がる今日は、絶好の冬のお出かけ日和。
まだ時間まで余裕もあるから、空気の澄んだ冬の街をスピネル・クローバルド(家族想いな女の子・f07667)はゆったりと歩いて。
(「今日は、竜さんと喫茶店で待ち合わせの日ですね」)
向かうのはそう、麻生・竜星(銀月の力を受け継いで・f07360)と約束をしているUDCアースの喫茶店。
でも今日の約束は、少しだけ特別なもの。
(「バレンタインデーですから、互いに自分の心を込めて用意した、とびきりのチョコレートを用意するという事にしていたのですよね」)
そう、季節はバレンタイン。
この時期は、街も甘やかな香りを纏っている気がして。
待ち合わせ場所の喫茶店へと足を踏み入れれば、くるりと巡らせたスピネルの赤い瞳も思わず輝いてしまう。
「わぁ……とても可愛らしくて、心が和む様な内装ですね」
白系を基調とした青い模様の壁紙の店内は、可愛らしい印象で。
飾られた沢山のスワッグがお洒落で、ナチュラルな彩りはほわりと心が落ち着く。
そして案内されたのは、ちょこんと可愛い兎さんが座った、冬の景色が望める窓の傍のテーブル席。
まだ待ち合わせ時間より少し早いから、スピネルはゆっくりと相手の到着を待つ。
待ち合わせをしている竜星は、旅団でいつも一緒に居てくれた人で。
しっかり者で、落ち着いた雰囲気を持った立派な方だと思っている相手。
そんな彼が来るまで、ふとお品書きへと目を向けてみれば、甘やかなバレンタイン限定メニューにわくわくしちゃう。
そしてそんな喫茶店に向かって、竜星も甘い香が漂う賑やかな街を歩きながら。
「うん、何とか間に合いそうだな」
腕時計を見つつ、待ち合わせの喫茶店がある通りを確認する。
そんな彼が鞄に潜ませているのは、お洒落な袋の中に入った手作りデザインチョコ。
(「喜んでもらえるといいけど……」)
そう思いながらも辿り着いた店のドアを開け、店内を見回して。
相手の姿を見つければ、軽く手を挙げて、彼女が座っている窓側の席へ。
今日の待ち合わせ相手であるスピネルとは、旅団を通しての長い付き合いになるが。
しっかり者の優しい団長という印象でもあり、だけどどこかホンワリもしていて。
ふっと微笑んでしまうところもある女性だと竜星は思っている。
それから、待たせたかな? と声をかけて座れば、思わず彼女の姿を見つめてしまう。
(「春の女神ってきっとこんな感じなんだろう……」)
若草色のリボンやフリルで飾られた装いのスピネルは、ふわり優しい春の彩りを纏っていて。
波打つ金髪を飾る花や、元々のおっとりとした彼女の空気感も相まって、まさに春の女神のよう。
そして向けられた言葉に、スピネルは穏やかに返して。
「私も来たばかりですし、まだ約束よりも少し早い時間ですから」
「あ、ごめんな。いつもとちょっと違うから見惚れてた」
彼女の雰囲気に思わず見惚れた竜星だけれど、耳に届いた声で我に返れば、宿すのはちょっぴり照れた笑顔。
「竜さんの今日のお姿も、お洒落な感じがして凄く素敵ですよ」
そんな彼に、スピネルもそうやって、微笑みを返してあげてから。
まずはふたり、互いに持ってきたものを取り出して差し出す。
「そうだ、これ。いつもありがとう」
「私の方も、チョコレートを用意しておきましたよ」
相手のために用意した、バレンタインチョコレートを。
そして微笑んでそれを受け取りながらも、竜星は藍の瞳を細める。
「ありがとう。素敵な色の包み紙だね、スピネルらしくて素敵だ」
彼女から貰ったチョコレートの包みは、若草色の包み紙に、黄色いリボンが結ばれたもの。
そんな春を思わせる色は、今日の装いにも取り入れているくらい、スピネルの大好きな色だから。
(「竜さんにも私のこのチョコレートに込めた思いが伝わったらいいなぁ」)
そう思いつつも、礼を告げながらも。
「竜さんも、チョコレートありがとうございますね」
彼から手渡された包みをみれば、ほわりと笑みが宿る。
「わぁ……綺麗な宇宙色の包み紙なのですね、とても竜さんらしいと思いますよ」
竜星から受け取ったバレンタインチョコを包んでいるのは、夜空が好きな彼らしい宇宙柄の包装紙。
そして選んだ黄色のリボンは、月のイメージだという。
漆黒の髪と藍の瞳は夜空のようで――でも、それもそのはず。
実は『夜空の月』は、彼の代名詞のようなものなのだから。
それから、チョコレートの交換こをしたら、メニューを開いて。
思い思いに頼んだ飲み物をお供に、のんびりとした談話を交わしながら。
優しい光に包まれた窓辺の席でふたり過ごすのは、楽しいバレンタインのひと時。
そんな彼女との時間は、何だかゆっくりと流れているような、そんな感覚を竜星は覚えつつも。
夜色湛える藍の瞳に、眼前の春色の彼女を映しながら――改めて確かめ合うのは、甘くて楽しい絆。
成功
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