6
その闇の先に隠されたものは

#サイキックハーツ

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サイキックハーツ


0





 ――グリモアベースの片隅で。
「……何と言うか……こういう形で出会う事になるとは思わなかったな」
 そう北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)が微苦笑と共に軽く頭を横に振りながら閉ざしていた双眸をゆっくりと開いていく。
 開かれた双眸を蒼穹に輝かせながら、優希斗は何時の間にか集まっていた猟兵達の方を見て、皆、と静かに声を掛けた。
「サイキックハーツで、嘗て全世界のご当地怪人達の頂点に君臨していた『大首領グローバルジャスティス』がとある研究を進めていた施設の1つが見つかったよ」
『大首領グローバルジャスティス』が既にダークネス強化改造施設を隠していて、それが発見されている事件は幾つか予知されているのは猟兵達も知るところだろう。
 優希斗が見つけたのもそう言った強化施設の1つの様だが……。
「……正直、言いづらいんだけれどね。どうやら、俺が視る事が出来たその強化改造施設は、元々は、グローバルジャスティスが求めていた、全『ダークネス』の理想の世界を体現する為の実験に使われていた施設らしい」
 その全『ダークネス』が望むであろう能力とは。
「まあ……皆は、大体知っていると思うけれど、生殖能力だね」
 そう……本来、ダークネスは生殖能力を持たぬ存在。
 それ故に、闇堕ちさせる事でしか殖やす事が出来なかったのだが……グローバルジャスティスの掲げていた理想は、正しくそのダークネス達の夢を体現する為の手段の1つであった。
「で、そのダークネスに生殖能力を持たせる為の研究を行いながら、並行してダークネスを強化改造する能力も持った嘗ての秘密施設の1つにオブリビオンが潜んでいる、と言う話なんだ」
 ――その潜んでいるオブリビオンの名は……。
「……ホワイト・ビヘイビア。元々は、ノーライフキングの元老の一人だった存在だ」
 その優希斗の言の葉に。
 それぞれの表情を浮かべる猟兵達を一瞥してから、優希斗がそっと息をついて話を続ける。
「具体的なその場所なんだけれども……表向きは崩壊が進み、ゴミと落書きだらけになった社会人研修施設の廃墟となっている」
 元々は闇堕ちについての研究が行われていたと言う噂のあるその場所だが、それがダークネスに生殖能力を与える研究を行っていた施設の1つとしての性質も持っていたのであれば、成程、その実験体としてダークネスを生み落とす事が出来る施設としての性質を持っていたとしても、おかしな話ではない。
「そこで皆にはこの廃墟に向かって、一先ず中の調査をして欲しい。その廃墟の中で調べることが出来るのは……監禁部屋・道場・大会議室の三カ所になると思う」
 その三カ所を探索すれば、実際の研究施設に繋がる道がある可能性が高く、その奥に進んでいけば……。
「その中にいるであろう、ホワイト・ビヘイビアが使うことの出来る能力を1つ付与されて強化されたオブリビオン達と遭遇する事になる筈だ」
 であれば今度はその相手を迎撃し、更に奥に進めば。
「恐らく、ホワイト・ビヘイビアと出会う事になるだろう。当然だけれど……放っておくのが危険だと判断するのは決しておかしな話ではない、と俺は思っている」
 だからこそ、止めなければいけない。
「ともあれ、元々はノーライフキングの元老の一人だったんだ。強敵であろうことは容易に想像が難くない。其れでも俺は皆に頼むしかない」
 ――この施設に潜入して、ホワイト・ビヘイビアを撃破して欲しいと。
 そして……出来る事であれば。
「皆には誰一人欠ける事無く無事に帰って来て欲しい。……頼んだよ、皆」
 その、優希斗の祈る様な言の葉と共に。
 ――グリモアベースに蒼穹の風が吹き荒れて……猟兵達が姿を消した。


長野聖夜
 ――そこに託されていた夢の果ては。
 いつも大変お世話になっております。
 長野聖夜です。
 と言う訳で、サイキックハーツシナリオを1本お送り致します。
 内容は、オープニングの通りです。
 その為、第1章では施設が密かに用意されていた元々、闇堕ち者を増やす研究がされていたと言うとある元曰く研修施設について、調査をして頂く事になります。
 第1章のプレイング及び受付期間は、オープニング公開後、タグ及び、MSページにてお知らせいたしますので、ご確認いただけますよう、お願い申し上げます。

 ――それでは、良き結末を。
118




第1章 冒険 『曰く付きの研修施設』

POW   :    監禁部屋を調べる

SPD   :    道場を調べる

WIZ   :    大会議場を調べる

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

館野・敬輔
【一応WIZ】
可能ならソロ希望(指定UCの都合)
アドリブ大歓迎

話を聞く限り、過去の遺産の調査という趣が強そうだが
オブリビオンが隠れているとなれば見過ごせないのも事実か

さて困ったぞ
俺は基本的に戦闘要員だから、調査は苦手だ
見つかるとまずい道を隠しやすいのは監禁部屋だけど、一方で隠し場所としてはある意味分かりやすすぎる
この3か所以外の可能性もないとは言えない

…リスクはあるが、少女たちの力を借りよう
人目につきづらい壁際に腰掛けて壁にもたれかかり、黒剣を壁に立てかけて指定UC発動
魂の少女たちと意識を深く同調させてから魂を研修施設内に飛ばし
監禁部屋や道場、大会議場も含めた全ての部屋に、隠された道らしきものがないか探して回らせよう

ざっくりしすぎだから見つかるとは思っていないけど
指定された3ヶ所以外に道が隠れている可能性がないと確認できれば、それで十分
結果は全猟兵に共有するよ

…生殖能力を持たせるための研究、か
研究自体はうまくいかなかったようだけど
もし、実用化していたら…その先はあまり考えたくないかもな




(「……話を聞く限り、過去の遺産の調査と言う趣が強そうだが……」)
 ――予知で指示されたその曰く付きの研修施設に。
 先行して辿り着いた館野・敬輔が胸中で誰に共なく独り言ちていた。
「……とは言え、オブリビオンが隠れていると言うのであれば、見過ごせないのも事実ではあるな」
 そう軽く頭を横に振りながら、敬輔は思わず困ったぞ、と言う様に眉根を寄せている。
 理由は……まあ、単純だ。
「基本、俺は戦闘要員だから……調査は苦手なんだよな……」
 そんな敬輔の独り言にクスクスと漣の様に、黒剣の中にいる『少女』達が笑っている様に感じるのは敬輔の気のせいだろうか。
 まあ、そんな『彼女』達も基本的には戦闘要員なのだけれども……。
「……でも、『君達』の力に頼らないと調査が捗らないからな」
 只、その技には『同調』による『代償』も伴う。
 それこそ他の猟兵達に見られたら、何が起きたと余計な心配をかける様な、そんな代償が。
(「取り敢えず、状況を纏めてみようか」)
 今回、調査が可能と明言されている場所は……。
「『監禁部屋』、『道場』、『大会議場』の3カ所だな……」
 この中で見つかるとまずい道を隠しやすいのは監禁部屋ではあるが……。
「ただ、隠し場所としては分かりやすすぎるし……何よりもこの3カ所以外の可能性も無いとは言えないか」
 ともすれば此処で集団生活をして連帯感を高めよう、みたいな合宿型セミナーが開かれていた可能性もある。
 そうなると食堂等の集団で生活が出来るであろう場所があっても、真面目な話、おかしくはない。
 ――と言う訳で。
 そっと人目の付かぬ死角に腰かけて、その壁にもたれかかった敬輔が、自らの黒剣を壁に立てかけ、赤と青のヘテロクロミアを静かに瞑り。
「……僕の代わりに、探し出してきて。……頼んだよ、『皆』」
 そう、黒剣の中で先程迄囁き笑いあっていたかの様だった『少女』達に呼びかけた―刹那。
 現れたのは、透明色に変化した人型の靄の少女達。
 その少女達と自らの意識と感情を同調させて……肉体に宿る意識を消失させた敬輔が、施設の全ての部屋に少女達を飛ばす。
 中心は監禁部屋や道場、大会議場ではあるが……それ以外に食堂や浴場にも『少女』達の網を張り巡らせると。
(「……うっ」)
『少女』達が感じたゴミからの悪臭は勿論、セミナーの後にでも使われていたのであろうか、浴場の黴臭さや、食堂を覆う様な腐臭に胸糞悪くなるものを覚える敬輔。
 それでもざっくりと調査を進めるべく、壁等を軽く叩いたりして見たが、どうにも芳しい結果は出ない。
 只、浴場を支配する黴臭さや食堂から漂う悪臭に訝しみを感じて、念の為にとその辺りを念入りに『少女』達に調査して貰った結果。
(「……やはり特別な道は、最初に示された3個所以外には無さそうだな」)
 何処かに隠されているのか、それとも隠し部屋を開く為に何らかの条件が必要になるのかまでは、はっきりとは分からないけれども。
 そう少女達の判断を共有した所で、敬輔の肉体に意識が戻ってくる。
「……取り敢えず、ざっくりと眺める様に見ただけだから、特別な道は見つからなかったけれども……」
 ――それでも、大会議室と道場、監禁部屋以外に何らかの特別な通路が隠されている可能性は無い。
 そう判断できる程度には調査が捗った所で、一先ず今は満足するべきだろう。
 そう結論付けた敬輔が、サバイバル仕様スマートフォンを胸から取り出して、事前情報を予め調査し、後から来るであろう仲間の猟兵達へとメールを送りながら、そっと静かに息を吐いた。
「……生殖能力を持たせるための研究か」
 ――研究自体は、上手く行かなかった様だけれども。
「それでも、もし、実用化していたら……その先はあまり考えたくないな」
 と、此処で。
 生殖能力、とは異なる話ではあるが……|異世界《サムライエンパイア》で起きた事件が敬輔の脳裏を過った。
 それは……『偽神』と呼ばれる人為的なオブリビオンフォーミュラを産みだそうとする実験の事だ。
 結局その事件は自分達の手で阻止することが出来たのだが……。
「……まさか、な」
 僅かにちらついた可能性が杞憂である事を祈る様に、敬輔が静かに頭を横に振った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウィリアム・バークリー
ダークネスの秘密研究施設ですか。響きからして嫌ですね。そもそも人の来ないところに作ればいいことなのに。
んー、件の建物の工事をした建設業者から図面でも取り寄せられたら楽なんですが、そんな権限無いですしね。それに……とっくに口封じされてそうでもあります。

仕方ない。地道に調べましょう。
研究施設はさすがに地下かな。
大会議室を当たってみましょう。
Wizard Eyeをいくつか精製。床から天井まで、丁寧に見て行きます。開閉した跡などないか慎重に。
後は定番の、壁を叩いて音の違いを探るくらいかな。テーブルなんかも怪しく思えます。これがずれたりしませんかね?

まあ、最後は人海戦術で何とかなるでしょう。


フェル・オオヤマ
pow

・心境
小諸城や五稜郭といい大首領は日本各地に|改造施設《置き土産》を遺して…数年後こうなるのを予測していた?
生殖能力かぁ
今を生きるダークネスにとっては垂涎モノかもしれないけど…|復活ダークネス《オブリビオン》が悪用するなら止めねば!

・調査
スマホで連絡を取りつつ調査をします
研修施設に監禁部屋…悪趣味だねぇ

怪しい施設ってのは地下にあるってのがお約束だから…地下に繋がる階段とか隠されて無いかな?
床や壁を調べて怪しい所があればノックします
あからさまに怪しい物があれば敵が待ち構えている可能性も踏まえて
一度連絡を取ってから行動します

【偵察/世界知識/怪力】の技能を使用

他キャラとの連携・アドリブ歓迎


彩瑠・姫桜
【二桜】
あお(f06218)と
調査って一人じゃ心許ないから

パパは今回来てないと思うわ
数日内にサイハ世界でも妹(f11313)が生まれるから
ママを放ってこっちに来てたら流石に殴るし
(とはいえ父の世界のことだから途中参戦しそうな気もする)
…お父さん子じゃないわ(むぅ)

>調査
気は進まないけど、あえて「監禁部屋」へ

「ダークネスに生殖能力を持たせる為の研究」ってことは
倫理に反する改造解剖もしてることになるのかしらね
被験対象者の搬送の効率考えると
他の場所よりも経路があるような気がするから

万が一調査時点で奇襲されたら
"桜縁"での[自動防御]、UCで自己強化
ドラゴンランスで[串刺し、カウンター]応戦するわ


榎木・葵桜
【二桜】
姫ちゃん(f04489)と

この世界の依頼で私頼ってくるの珍しいね?
(そういえば姫ちゃんのお父さんもいないねときょろきょろ)
そっかー、なんだか感慨深いねそういうの!
でも、姫ちゃんちょっと寂しいでしょ?
何気にお父さん子だもんねー?
(反応を楽しげに眺め)

>調査
監禁部屋へ
設置されている設備は隅々まで丁寧に調べるよ
一応UCで田中さん召喚して
危なそうなとこは先に見てもらうね
フロアの性質上
隠す必要はなさそうな気はするけど
見えない仕掛け通路とかないかは気をつけておくよ

可能なら他のフロアの調査班とも連絡取り合って
共通で怪しそうなとこあれば深掘りしたいし
危険生じたら相互で駆けつけられるようにしておきたいな


司・千尋
アドリブ、他者との絡み可

ダークネス達の夢ねぇ…
モノである俺には理解できないけど、ヒトとあまり変わらないんだろうな


からくり人形の宵、暁、熒惑と手分けして研究施設の手掛かりを探す

道場が広くても探すのは通路だし、隠せる場所なんて限られてるよな…
よくあるパターンだと壁とか床あたりか?
流石に天井に通路はないだろうし…

どんな小さな手掛かりでも見逃さないよう気をつけながら探す

隙間風が吹いてたり、叩くと音が違ってたりするんだっけ?
何かだんだん楽しくなってきたから見つからなくてもガッカリはしないけど
ゴミが多くてウンザリするな…


他の猟兵の邪魔はしないようにする
何か手伝えそうなら協力しようかな


クローネ・マックローネ
NGなし、絡みOK、アドリブ歓迎
【SPD判定】
真剣口調で話すよ

ホワイト・ビヘイビア…
先代…『白の王セイメイ』から『不滅の兜』を受け継いだノーライフキング、か
そういえばセイメイは『生殖型ゾンビ』なんてのを作ってたっけ
|末代《いま》のホワイト・ビヘイビアも、|ダークネスの生殖能力獲得《そっち方面》に関心があったりするのかな?

主に道場の調査を行うよ

ご当地怪人のサイキックハーツ『グローバルジャスティス』の研究施設…
ドーター・マリアという成功例もいる訳だし、強化改造したダークネスで施設を守りながらそっち方面の研究を進める、という事も可能なのかも
…|彼女《マリア》に|歳の離れた《今更過ぎる》兄弟姉妹ができる、というのは阻止したいところだね
強化改造技術だけが目当ての可能性もあるけど…どうあれ、始末する事にかわりはないね

UCは『ワタシの情報収集結界』
このUCで広範囲の【情報収集】を行うよ
必要ならゴミの【清掃】や瓦礫の【運搬】もできるようにしておくね
集めた情報を整理して、研究施設への道を見つけ出すよ


神宮時・蒼
…何とも、懐かしい、名前が、ちらほら、と。此の世界の、ボクの、記憶に、特に、根深く、残って、います、ね。
…ダークネス、でさえも、理想を、追い求める。…まるで、ヒトの、よう、ですね…

【WIZ】
とりあえず、大きな部屋を調べましょう
運が良ければ、当時の資料など残っているかもしれません
…まあ、気分の、良い物では、なさそう、ですが。
資料を見て、何かあれば【瞬間記憶】で覚えておきます
【第六感】が囁けば、其方も拝見

…嘗ての、研究は、失敗、しましたが。…仮に、成功、していたら、彼らは、やはり、武力の為、生殖を、繰り返した、のでしょうか
…今更、考えても、意味の、無い、事では、あります、けれど。


椎那・紗里亜
ホワイト・ビヘイビアが動き始めている……
と言うことは、他のクリスタル・ミラビリスも動き始める可能性があると言うことですね。
厄介なことではありますが、粛々と対応するしかありませんね。

スーツにメガネ姿の職員風の様相。
必要があれば照明を所持。
調査するのは大会議室。
先ずは出入りがあった形跡がないか、隅々までよく観察しながら歩きます。
違和感のあるところは八卦方棍でコツコツ叩いて確認。
秘密の通路といえば定番の床下、プロジェクターのスクリーン裏、
演台の下などは念入りにチェック。慎重かつ効率よく進めます。

ダークネスに完全生殖を行わせる訳には行きません。
必ず釈滅…… いえ、骸の海に還っていただきましょう。


レイ・アステネス
アドリブ、絡み可

ホワイト・ビヘイビアか…
懐かしい名前だな

復活したオブリビオンが生前の続きをやろうとするなら、今迄わからなかった事がわかるようになるのだろうか…


とは言え、私が最初にやる事はゴミ掃除かな
秘密施設に出入りしているなら
其処だけゴミを動かしたり何かしら違和感がありそうなものだが…

落書きも何か意味があるのか勘繰ってしまうな
オブリビオンも議事録を取ったりするのだろうか等考えながら道を探す
他の人と同じ場所を探すのは効率が悪そうならまだ探してない場所を優先しよう
手伝いが必要な人がいれば協力する


研究内容の資料とか残っているなら読んでみたいが…
流石にこんな分かりやすい場所には無いか


火神・臨音
強化改造施設・・・
優希斗から概要と用途を聞いただけでもゾッとするな
此処がまた使われるとなると厄介事が増える、確実に仕留めて
あいつを安心させねぇと

調査する場所は道場
護符に破魔と浄化の力を付与し、床や壁等不審な場所へと貼り付けて反応を確認する
施設へ繋がる可能性高いのは床と予測、多めに符を貼り付ける
同じ場所を捜索する仲間とは逐一情報交換し、此方の認識に齟齬があれば合わせる

施設に繋がる道が判明後
移動の際は万が一の事態に備え殿を務める

さぁて、鬼が出るか蛇が出るか
ここから先は悪意の群れとのご対面だ
・・・皆、無茶だけはするなよ
【鞘の返り血に触れて瞑目、主へ祈るは皆への加護】

アドリブ、他の猟兵との連携歓迎


有城・雄哉
【一応SPD】
他者絡みアドリブ大歓迎

研修施設の体をなした研究施設か
研究内容が闇堕ちであれ、ダークネスに生殖能力を持たせる目的であれ…見逃すわけにはいかない
中にいるであろうホワイト・ビヘイビアともども、完全にぶっ潰す

調査を始める前に、地元の役所に赴いて施設の概要を調べたい
調べたいのは所有している会社と廃墟となった経緯、そして施設自体の見取り図だ
会社はダミーの可能性が高いからあまり重要な情報にならないだろうけど
廃墟となった経緯と見取り図は、この後の調査で有効活用できるかもしれない
もちろん、得た情報は共有する

で、現地での調査だけど
ゴミと落書きは不法侵入者が多数いたことの証だろうけど
隠された道があるとは知られていないはずだから
不法侵入者に簡単に見つけられないよう隠されているかもな
…あるいは不法侵入者すら入るのが憚られるような部屋にあるかも?

ま、どっちみちゴミは片付けながら調べることになるから
あえて道場に行って、ゴミを片付けつつ壁や床を調べてみようか
壁や床板、畳ももちろん剥がして捜索する




「……件の建物の工事をした建設業者から図面でも取り寄せられたら楽ですけれど、そんな権限はぼく達にはありませんから、難しいと思っていたのですがね……」
 ――その施設の目前に辿り着き、地元にあった役所に保管されていた施設自体の見取り図のコピーを捲って。
 慨嘆する様に空を見上げるウィリアム・バークリーの言の葉に、市役所に保管されていた施設の見取り図のコピーを貰った有城・雄哉が軽く頭を振る。
「まあ……この研修施設を所有していた会社については、ほぼ空振りではあったけれども……一応、僕達|灼滅者《・・・》は、英雄って事になるからな……」
 ――それに、今回は。
 そうそっと嘆息を零しつつ、さりげなく掛けている眼鏡のゴミを拭き取っているスーツ姿で、職員風の様相をしている女性――実は|この世界《サイキックハーツ》では、それなりに顔が知られている――。
「……|椎那先輩《法学者》も一緒にいるから、それなりに顔が利くって言うのがね……」
「ふふ……雄哉さんにそう言って貰えるとESP法創設後も、その第一人者として活躍して来た甲斐があったと思えますね」
 そう雄哉の嘆息とも感嘆とも取れる言の葉を聞いた椎那・紗里亜が穏やかな微笑を称えるのを見て、ウィリアムがパチパチと瞬きをするのを見て。
「バークリーは、私や有城の様な灼滅者と会う事が多いだろうから、あまり実感が沸かないかもしれないが。灼滅者の中には、椎那の様に|今の時代《・・・・》を担うべく活躍している者もいるからな。特権、と言う程ではないが、顔が利く時もある、と言う事だ」
 そのレイ・アステネスの説明に、成程、とウィリアムが静かに首肯する。
 そんなレイ達の話を聞きながらそれにしても、と紗里亜が静かに息を吐く。
「ホワイト・ビヘイビアが復活ダークネスとして動き始めているなんて……」
 その紗里亜の嘆息に。
「……先代……『白の王セイメイ』から『不滅の兜』を受け継いだノーライフキングだからね。他の元老達が本格的に動き出す可能性は十分あるだろうね」
 そう短い嘆息と共に軽く頭を横に振るのは、クローネ・マックローネだ。
 一方で、その興味は……。
(「……|末代《いま》のホワイト・ビヘイビアも、|ダークネスの生殖能力《そっち方面》に関心があったりするのかな?」)
 そう胸中で呟くクローネの方を微かに驚いた様に目を見開き、尋ねる様にするのはウィリアム。
「セイメイ……ですか?」
 そのウィリアムの問いかけに。
「そう。『白の王セイメイ』。『生殖型ゾンビ』と言う存在を作り出した、そんな相手だね。まあ、|ワタシ《・・・》の記憶が正しいのであれば、グローバルジャスティスが望んだダークネスへの生殖能力と、白の王セイメイの生殖型ゾンビとは、性質が全く異なっているそうだけれども」
 そのクローネの朧げな記憶を頼りながらの呟きに。
「……グローバルジャスティスの所持していたスーパーコンピューターに残っていた記録ですね」
 紗里亜が補足する様に説明するのを聞きながら、赤と琥珀の色彩異なる双眸を持つヤドリガミの少女は、何処か茫洋とした眼差しで、嘗ての事を想い出そうとするかの様に視線を虚空に彷徨わせていた。
(「……何とも、懐かしい、名前が、ちらほら、と」)
 そう内心で呟いた神宮時・蒼が軽く頭を横に振り、思わず、と言う様に言の葉を漏らす。
「……白の王セイメイも、その名前も、此の世界の、ボクの、記憶に、特に、根深く、残って、います、ね」
 その蒼の言の葉に。
「そう言えば……蒼さんとホワイト・ビヘイビア? との関係については、私のパパも、少し気にしていたわね」
 何度か|この世界《サイキックハーツ》でも、共に戦った経験のある彩瑠・姫桜のその言葉に、蒼が、コクコク、と小さく頷きを繰り返すのを見て。
「……そう言えば蒼さんは、確か……」
 紗里亜がクローネの不滅の兜への言及とその時、自分達に『人類管理者』としての地位と共に、|それ《・・》を与えてきた|人物《ダークネス》――ホワイト・ビヘイビアに終止符を打った|灼滅者《・・・》の事を思い出し、成程、と誰に共なく呟いた。
(「……となると蒼さんも、もしかして……」)
 後輩の|異世界《・・・》の娘達……或いは、それとよく似た存在、という事になるのであろうか。
 そんな事を脳裏に浮かべている紗里亜の様子に、特に頓着した様子を見せる事無く。
 そう言えば、と榎木・葵桜がキョロキョロと周囲を見回し、そう言えば、とやや大きめの藍色の瞳をぱちくりと瞬かせた。
「姫ちゃんのお父さん、いないんだ。姫ちゃんが|この世界《サイキックハーツ》の依頼で、私頼ってくるのも珍しいしね?」
 そう問いかける葵桜のその言葉に。
「まあ、調査って一人じゃ心許ないし、パパも数日内に|この世界《・・・・》の、私の妹が生まれるだろうからね。其れを放ってきたら、流石に殴るわよ」
 そうやや目を逸らしつつ、何処となく寂しそうに唇を尖らせている姫桜の様子に、にぱー、と悪戯っぽい笑みを浮かべる葵桜。
「そっかー、なんだか感慨深いね、そう言うの! あっ、でも姫ちゃんやっぱりちょっと寂しいんだね? 何気にお父さん子だもんねー?」
「ちっ……違うわよ、あお。私……お父さん子じゃ、ないわ」
 そう少しだけむすっ、とした感じで告げる姫桜のそれに葵桜が笑顔で分かっている、と言う様に頷くその間に。
「……姫桜さん達の話を聞いていると、色々と感慨深いものがありますね……。私の後輩も、|異世界《・・・》の自分の大きくなった娘の話をしていた時には、同じ様な表情を浮かべていましたから」
 そう眼鏡の奥の眼差しを柔和にしながら告げる紗里亜のそれを聞きながらも。
「うーん、モノの俺には正直理解できないな、ダークネス達の夢ってのは。まあ……彩瑠達、ヒトの様子を見ていると、あんまり変わらないんだろうな、とは何となく感じるんだが」
 司・千尋が軽く肩を竦めて呟くのを見て、火神・臨音が、自らの指に嵌めたDays Of Promiseを無意識に弄りながら、軽く頭を横に振った。
「最愛の人がいて、その人と一緒に新しい命を、想いを後世に継がせていきたいって気持ちは、やっぱり強いぜ、千尋」
 そう結詞のヤドリガミである千尋を諭す様に告げる、大太刀のヤドリガミたる臨音のそれに、ふーん、と軽く相槌を打つ千尋。
 |ヤドリガミ《同族》であってもこれ程までに物事に対する認識に差異があるのは、やはり個々の経験の差か。
(「思えば……神宮時の奴もそうだしな」)
 そう同道している氷晶石と琥珀のブローチの|ヤドリガミ《同族》にして、千尋と同じく、自身を1人の『モノ』と認識している蒼を見て、千尋が納得するその間に、それにしても、と臨音が軽く米神を押さえていた。
「強化改造施設……か。彼奴から概要と用途を聞いただけだが……それだけでもゾッとするな」
「本当にその通りでござるな、臨音殿」
 そう背を震わせる様にした臨音の言の葉に、最もだ、と言う様に首肯をしたのは、殿を務める様に歩いていた武蔵坂学園高校制服に身を包んだ、フェル・オオヤマだ。
 衣替えは未だ少し先の話なので、武蔵坂学園高校冬服を着ているフェルだが……。
(「今日は少し暖かいから、夏服の方が良かったでござるかな?」)
 等と内心で思いつつ、自身の戦いの経験を反芻し、ポツリ、ポツリ、と言葉を続けた。
「拙者が知っているだけでも、小諸城や五稜郭の様に日本各地に大首領は、|改造施設《置き土産》を遺していたのでござる。……まさかとは思うが、大首領は数年後にこうなる可能性をも予測していたのでござろうか……?」
 そのフェルの問いかける様なそれを聞いて。
「本来であれば、|ワタシ《灼滅者》達が此処迄台頭して、|この世界《サイキックハーツ》の影からの支配者と言う立場を奪われると迄は考えていなかった。つまり自分達の悲願が、理想が達成されるまでに、自分達が滅ぼされるなんて思っていなかったってことじゃないかな、とワタシは思うよ、フェルさん」
 そうクローネが補足する様に告げるのに、ふむ、とフェルが頷き。
「生殖能力、でござるかぁ……今を生きるダークネスにとっては、垂涎モノなのかも知れないでござるなぁ……。その理想、1つの『道』を大首領は示していたのでござるから……さぞや、ご当地怪人達には支持されていたのでござろうなぁ……」
 そう雄哉の方をちらりと見やりながらも呟くフェルのその言葉に。
「……ダークネス、でさえも、理想を、追い求めて、いた、のですね。……まるで、ヒトの、様、に……」
 思う所があるのであろう。
 赤と琥珀色のヘテロクロミアに微かに戸惑う様な灯を灯して呟く蒼の呟きを聞きながら。
「それでも、ダークネスが僕達から理不尽に沢山のものを奪った事実は変わらない」
 そう雄哉がその青い瞳に昏い炎をちらつかせるのをちらりと眼の端に捉えつつ、レイが軽く頭を横に振る。
「まあ、|復活ダークネス《オブリビオン》が生前の続きをやろうとするのであれば、今まで分からなかったことが分かる可能性はある。調査してみる価値があるのは確かだろうな」
 そうその青い瞳に微かに興味を称えて纏める様に告げるレイのそれに。
「そうですね。それに……他のクリスタル・ミラビリスが本格的に動き出す可能性がある以上、その鏑矢になりかねない今回の件にも粛々と対応する必要はありますね」
 そう紗里亜が決意を示すのを聞きながら、やれやれ、とウィリアムが頭を横に振りながら。
「『ダークネスの秘密研究施設』。……響きからして嫌な所ですから、ぼく達が調査しない理由も無いですよね」
 そうしみじみと呟くウィリアムのそれに、反論する者は、誰もいなかった。


 ――と、此処で。
「……3組に分かれるのが一番早いだろうね」
 先行していた猟兵から情報を受け取った雄哉が、そう提案をする。
「だな。確かにそれが一番状況としては手っ取り早そうだ」
 その雄哉の提案に同意を示したのは、同じく先行した猟兵からのメールを、高性能スマートフォンで受け取っていた千尋だ。
「提示されていた三カ所以外には怪しい場所が無いって話だったわね、確か。それなら3組に分かれてそれぞれを重点的に探索するのは悪くないと思うわ」
 雄哉と千尋の提案に、姫桜がそう首肯するのを聞いて、では、とウィリアムが静かに頷く。
「彼からの情報がありますからね。ぼくは大会議室の方を当たってみますけれど……姫桜さん達は、如何しますか?」
 そのウィリアムの問いかけに。
「あからさま過ぎるし、正直あまり気は進まないけれど、敢えて『監禁部屋』に行ってみようかと思うわ。……あおも一緒にね」
 そう姫桜が応えるのを聞いて、ならば、とフェルが手を上げる。
「拙者も、姫桜殿達に同行させて貰うでござるよ。万が一に備えて、戦力的にも分かれていた方が良いでござるし、スマホを用意している者が一緒の方が、何かと都合も良いでござろう」
 そうフェルが自らの手元のスマートフォンを見せてくるのに。
「それじゃあ、宜しくお願いしますねー、フェルさん」
 そう葵桜が笑顔でフェルに握手を求めるのに、勿論でござる、と言う様に握手を返し、雄哉達が回収した見取り図で調査した監禁部屋に向かって行くのを見送りながら。
「ウィリアムさんが大会議室、フェルさんが監禁部屋ならば……ワタシは、道場を中心に調査した方が良さそうかな。これでもワタシ、情報収集の心得がそれなりにあるし、愛用スマホにもフェルさんの番号なら入れてあるから、連絡も滞りなく進めることが出来るからね」
 そう呟き口の端に笑みを浮かべるクローネのそれに。
「……では、ボクは、大きな、部屋……、大会議室を、バークリー様達と、調べて、みます。……もしかしたら」
 その蒼の提案を聞いてそうだな、とレイが首肯する。
「そういう場所であれば、何か研究内容の資料等が残っている可能性もあるからな。……流石に、そんなに分かりやすい場所には無いと思うが」
「そうですね。でも、蒼さんやレイさんが資料を探すのであれば、私がそれ以外の色々な場所を隅々まで調べるお手伝いをしますよ」
 そうレイと蒼の調査場所で調査してみる何かを聞いた紗里亜が穏やかな表情でそう折衷案を出した所で。
「ウィリアムと蒼、レイに紗里亜が大会議室で、姫桜とフェル、後葵桜の3人が既に監禁部屋に行っているならば……少なくとも俺は、クローネに協力して、道場に行く方が良いな」 
 そう纏めた臨音のそれを聞いて、因みに、と雄哉が軽く言葉を引き取った。
「僕も道場に行くつもりだよ。……僕はそう言う場所の方が性に合っているだろうし。……ゴミ掃除も自然、していく事になるだろうけれども」
「そうか。因みに、俺も其方に行くつもりだ。……ついでに言えば、|宵・暁・熒惑《からくり人形達》もいるから、情報の共有はやりやすいしな」
 そう口の端に笑みを浮かべる千尋のそれに、じゃあ、とクローネが静かに首肯する。
「ワタシと、雄哉さん、千尋さんに、臨音さんの4人が道場か。人数的には、3、4、4で、少し姫桜さん達の所がやや手薄になりそうだけれど……」
 そのクローネの確認の様な言の葉に。
「其れは大丈夫みたいだよ?」
 そう生真面目な口調でクローネの愛用スマホに、通信を入れてきたのはフェル。
 フェルからの通信に気が付いたクローネがハンズフリーに愛用スマホを切り替えながら
「何か良い手があったの、フェルさん?」
 そう電話越しにフェルに問いかけると。
「葵桜さんが『田中さん』と呼ぶ古代の戦士の霊を召喚しているからね。人数としては、丁度いい塩梅かな」
「了解。それじゃあ、そっちはフェルさん達に任せるよ」
 そのフェルの回答を聞いたクローネが納得した、と言う様に首肯を返すのに、了解でござる、とフェルからの回答を得てから、コホン、と1つ息をつき。
「それじゃあ、ワタシ達も行こうか。|彼女《マリア》に|歳の離れた《今更過ぎる》兄弟姉妹が出来る、と言うのは阻止したいしね」
 そのクローネの締めくくる様な言の葉に。
「ああ……全くだな」
 心底同意する様に雄哉が首肯したのに頷きを返し、臨音達は道場へと向かって行った。


「……しかし、酷い量のゴミだな、こりゃ」
 道場に向かう、その通路で。
 鼻をつまむ仕草をしつつ調査を進めていた千尋が皮肉気に肩を竦めて見せる。
 そんな千尋の様子を見ながら、雄哉が周囲のゴミを片付けつつ、嘆息を零した。
「……ゴミと落書きは、不法侵入者が多数いたことの証明だと思うけれども……彼等が、隠された道があるとは、この見取り図を見る限りでも知らされていないだろうな」
 そう市役所でコピーして来たこの研修施設の見取り図のコピーを眺めながら、雄哉がそっと息をつく。
 因みにこの見取り図はウィリアムと姫桜に、既に雄哉の手で渡し済だ。
 故に、それぞれの目的地で迷う、という事は無いだろう、と雄哉は思う。
「そう言えば、雄哉。お前が聞いたって言う、此処が廃墟になった経緯って何なんだ?」
 そんな雄哉の方を気がかりそうに見やりながら。
 破魔と浄化の力を付与した七曜五行ノ力封ジシ護符を張り付けて探索を行い、加えて雄哉のゴミ掃除の手伝いをしながらの臨音の問いかけに。
「……数年前、資金繰りが上手く行かなくなって閉鎖する事になってそれきり、らしい」
 ――とは言え。
「此処でセミナーを開いていた会社自体が、どうにもダミーだったらしくて、詳しい情報はあまりはっきりしないんだよな。バベルの鎖の効果が消えて、情報伝播されないと言うリスクが消えた今でも、破産手続きの様な合法的な手段できちんと法的には処置されているみたいだから、それ以降、此処がどうなっていても気にしない人の方が多かった……って事なんだろうね」
 そう呟き嘆息する雄哉のそれに。
「……ヒトの噂なんて、案外そんなものなんだな。まあ、そこで何が行われていたのか興味のある奴自体が、少数だったって事か? 俺にはよく分からないが」
 そう肩を竦めながら流石にないよな? と内心で思いつつ、千尋が熒惑を天井に貼り付かせると、外風の影響か何かだろうか。天井が軋む様な変な音を立てた。
「……おや?」
 そう興味深げに千尋が笑みを浮かべた所で。
 情報収集結界を展開していたクローネが軽く肩を竦めて見せた。
「いや、流石に外風に屋根が軋んでいるだけだね、是は。……ネズミみたいな不衛生な小動物の気配はあるけれど……」
 そう呟きながら、目前のゴミを清掃するクローネ。
 そんな風に彼方此方を調べていくのが楽しくなってきたのか、口元に笑みを浮かべた儘、調査を続ける千尋をちらりと眼の端に捉えながら。
 雄哉が道場の壁をトントン、と細かく叩き――見取り図通りであれば壊しても良い部分がある筈――を壊してまで中を調べてみるが。
「……駄目だな、壁の方には何もなさそうだ」
 そう嘆息する雄哉に此方もだ、と床下に注力を注いでいた臨音が同じく頭を横に振った。
「……一番地下施設がありそうだと当たりを付けていたのは、床下なんだが……どうにも護符の反応が普通過ぎるな」
 そう臨音が呟きながら、自らの破魔と浄化の力を付与した護符が、ゴミや不浄物を文字通り『浄化』させていく様を見て、そう軽く頭を横に振る間に。
「まあ、彩瑠やバークリー達が如何しているのか、序に見に行かせておくか」
 そう何気ない口調で呟いて。
 千尋が宵と暁を残り2箇所の探索場所へと向かわせるのであった。


 ――一方、その頃。
「まあ、先ずやる事があるとすれば、ゴミ掃除だな」
 そう呟いて、枳棘を箒代わりに周囲のゴミを片付け始めたのは、レイだ。
 そうやってゴミを片付けながらも、その青色の瞳を細めて油断なくゴミや落書きを漁っているその理由は……。
(「其処だけゴミが掃除されていたり、周囲のゴミに比べて、明らかに新しいゴミすらある可能性があるしな」)
 まあ、ホワイト・ビヘイビアが此処の研究施設を利用し始めたとして、必要なゴミが出る可能性に関しては、何とも言えない所があるが。
 そんなレイの近くをふわふわ漂う様に協力しているのは、千尋が放った暁と言う名の人形。
 その人形が照らし出してくれる周囲を見ながら。
「流石に電気はもう通っていないですよね。……照明、持ってきておいて正解だったかもしれません」
 そう呟き、此処最近、この大会議場に出入りがあったかどうかの痕跡を紗里亜が注意深く観察を続けている。
 レイが見つけてくれたゴミの中で、比較的最近の物と思しきゴミがあれば、八卦方棍でコツコツと叩いて、きちんと確認。
 八方位の紋を刻み術法的強化を施され、その一振りが風を裂き、その一撃は経脈を絶つと言われるその棍に叩かれて、何らかの呪的防御が施されている可能性もある、その通路が隠し通せるとは思わない。
 そう紗里亜が内心で思いながら、既にボロボロと化しているプロジェクターのスクリーン裏などを確認しているその間に。
「……もしかしたら、当時の、資料等、残って、いたり、するの、でしょうか……?」
 そうポツリと呟き色彩異なる双眸を細めて瓦礫やゴミの中に紙の書類の様な、何かが残っていないかどうかを蒼が具に確認していた。
「研究施設が隠されているとすれば、流石に地下でしょうね」
 そんな蒼の様子をちらりと見やりながら。
 Wizard Eyeを複数用意して、大会議場の床から天井までを丁寧に確認していくのはウィリアム。
 浮遊する、掌大の透明な眼球が、上から下まで嘗め回す様に見つめていくその間に、ウィリアムが軽く壁を叩いて、状況を確認していたその時だった。
「……?」
 蒼の首筋が、何かむず痒く感じる様なそれを感じ取ったのは。
 それは、蒼の第六感。
 奇しくもその蒼の第六感が働いたのは。
「……椎那様」
 その蒼の問いかけに。
 違和感を感じつつ八卦方棍の切っ先で引っ掻きまわす様に、演台の下の辺りを叩いて確認していた紗里亜が。
「どうしましたか? 蒼さん」
 そう優しく問いかけるのを聞いて、蒼がその赤と琥珀のヘテロクロミアを細めて、その演台を、何とはなしに見つめている。
「……その宴台、何か、ありそうな、そんな気が、しまして……」
 その蒼の言の葉に。
「……成程な。確かに周囲に書かれていたのと同じ様な落書きの一部が、其の台には刻み込まれている様だ」
 蒼と紗里亜の会話を聞いて、それまでゴミ漁りと落書きの観察を行っていたレイがそう興味深げに呟き、紗里亜が近くにいる、その台へと近づいてくる。
「壁や天井、床下には特別な何かは無さそうですね。これは外れ……かな?」
 そう微かに小首を傾げながらも、レイ達の様子に気が付いたウィリアムが興味深げに紗里亜達が集まった宴台へと歩いていくウィリアム。
 宴台の内側にアイテムポケットの様なESPの気配を感じ取り、これは、と思わずレイが呻きながら肩を竦めた。
「こうもあからさまだと却って罠の可能性を感じてしまうな。……いや、少し違うか」
 そう呟きながら、その演台に触れるよりも前に。
 先程から自分達を照らし出してくれていた千尋の暁が演台に触れて、ビリビリとその身を震わせている。
 けれども程なくして暁が魔力を逆流させる様にすることで、その痺れが止まっていったのを見て……。
「物理的ではありますけれど、取り敢えず罠は無事に解除された様ですね」
 そう嘆息したウィリアムが取り敢えず、と言う様に恐らく封をされていたのであろう、その書類を取り出した。
「……この資料、気分の、良い物では、なさそう、ですけれど……」
「同感だ。だが、司の人形が解除してくれた罠の先にあった資料だ。この際、見ない訳にも行くまい」
 蒼の呟きに相槌を打ちつつも、レイが諭す様に言の葉を紡ぎ、残された資料を捲る。
 資料を捲っていくと、そこには、多くの闇堕ちした|女性《・・》の記録と、そして……。
「……失敗の烙印ばかり、だな」
 そう嘆息するレイのそれに、その胸にまるで黒い澱んだ火が灯り、同時に自らの内側から沸々と煮えたぎる様な何かが沸いてくるのを感じながら、蒼が、そう、ですね……と静かに首肯した。
 一方で、紗里亜はその研究資料の意味を今までに得てきた知識と合わせて、1つの結論を見出していた。
「……是は、多分生殖型ゾンビとダークネス達に生殖能力を与える事……その違いについての研究を行う為の資料の様ですね……」
 その紗里亜の呟きに。
「……どうやら、その様だな。生殖によって生まれたダークネスの成功例は、ドーター・マリア以外には無い事は変わらずの様だが……」
 けれども、生殖能力の研究を行っている以上、生殖型ゾンビを生み出すには如何したら良いのかの比較検討、研究も並行して行う事は極自然な事。
 そのデータをスーパーコンピューターに転送し、情報を共有していたのだとすれば、此処がそう言う施設であった事の理解も容易い。
 尚、生殖型ゾンビは体内にサイキックエナジーが貯蔵されており、殺害した相手にサイキックエナジーを与えて、生殖型ゾンビ化する能力を持つ特殊な個体達の事だ。
 その一方で、ダークネスと人の間に生まれ落ちた唯一の成功例は、アフリカンパンサーから生み落とされた、ドーター・マリア一人のみであり、その時に使われた超機械『ダークネス生殖化装置』を再現する事は出来ないか、と様々な非道な実験が行われていた記録も、この中からは読み取れた。
「……ですが、嘗ての、研究は、失敗、しているの、ですよね……」
 自らの胸に浮かび上がってくる黒い澱みの様な灯を飲み込む様にしながら呟く蒼のそれに。
「……そうだな。もし、成功していたら、そもそも私達|灼滅者《・・・》が、サイキックアブソーバーによる予知及び、|灼滅者《・・・》の大量発生を受けていたとしても、勝利出来ていたかどうかは分からない」
 そうレイが説明するのを聞いて、蒼は顎に指を置く様にして、やはり、と小さく言の葉を紡ぐ。
「……武力の為、生殖を、繰り返した、のでしょうか? ……全ては、自分達が、永遠に、世界を、支配し続ける、その為に……?」
 ――それとも……?
 今更考えても意味の無い事であろうことは分かっている。
 けれども、考え続けなければならない事なのではないかと、無意識に蒼は感じていた。
「……そうですね。もしこの研究が成功して、ダークネスの完全生殖が可能になってしまえば、今、私達に好意的になってくれているダークネス達でさえも、何らかの行動を起こしてくる可能性もあるでしょう。それは、私達が望む世界からかけ離れてしまう事になります」
 ――だからこそ。
「この完全生殖が成功できる様になる研究を中断させる為にも、ホワイト・ビヘイビアは必ず灼滅……いえ、骸の海に還って頂かないといけませんね」
 告げる紗里亜のそれに、レイが静かに首肯し、ウィリアムや蒼も、そうですね、と静かに首肯した。


「でも、改めて聞くと、研修施設に監禁部屋ってのは……悪趣味だねぇ」
 ――先行して向かった監禁部屋の方で。
 漂ってくる鼻を衝く嫌な臭いに顔を顰めながら、軽口を叩く様に言の葉を紡ぐはフェル。
 それで思いっきり空気を吸い込んでしまい、うっ、と一瞬こみ上げてきそうになるものを堪えながら、そうね、と此方も生理的反応であろう。
 目尻に涙を浮かべながら、姫桜がフェルに同意している。
「……『『ダークネス』に生殖能力を持たせる為の研究』って事は、当然、倫理に反する改造解剖もしている事になるのかしらね」
「そうだね。そう言う事は普通に起きていたと思うよ、姫ちゃん」
 その姫桜の言葉にそう応えながら、甲冑武者の古代の戦士、田中さん(本名不明)を召喚した周囲の警戒を依頼する葵桜。
 葵桜の依頼を受けた田中さんが、監禁部屋の個室の様になっているトイレの方へと向かわせている。
 が……周囲に散乱するゴミの散乱や何処からともなく漂う甘酸っぱい様な匂いが、鼻について仕方がない。
「……でもまあ、姫桜さんが言う様な実験が行われていたとしても、多分、その為の設備も改造施設の中にありそうね」
 そう呟きながら、フェルが背の竜翼を羽ばたかせて周囲のゴミを吹き飛ばし。
 それから地面の方を早速叩き始めるのを見ながら、姫桜はフェルが吹き散らしたゴミを乗り越えて、東側の壁を叩き、何か違和感がないか、確認をしていく。
「被験対象者の搬送の効率を考えると、他の場所よりも経路がある様な気はするのよね……」
「まあ、そうだね姫ちゃん。後、こういうフロアの性質上、隠す必要は無さそうな気がするけれども……」
 と、葵桜が姫桜に同意した所で。
(「……いや、隠す必要は、あるかも」)
 此処に来る前に、役所に行って雄哉が調査した嘗て、此処で行われていたセミナー等の記録を共有していた事を思い出し、葵桜が一人納得した様に首肯する。
 元々、此処ではセミナーが行われていた。
 そんな場所に監禁部屋が置かれていたので、そこが実験施設と考えるのが妥当な気もするが……。
(「此処を借り切っていたダミー会社が、実は宗教活動まがいのセミナーとかを行っていたのだとしたら、『教育』の為にこの場所を使うとか、そう言う可能性もあるね」)
 となると……だ。
「まあ、こう言う時に怪しい施設のある場所のお約束は……」
 そうフェルが呟きながら。
 自らの竜翼を羽ばたかせて散らかったゴミを吹き飛ばして晒させた床を蹴ったり、叩いたりしてノックをすると。
「……?」
 ふと、まるで空洞の様な乾いた音が、床のとある一箇所で鳴り響いた。
「フェルさん?」
 壁を一通り叩いていた姫桜が、そんなフェルの様子に気が付き、其方を振り返る。
 共同便所でもあったのであろう西奥にあったその場所から戻ってきた田中さんと、葵桜もまた、怪訝そうにフェルを見て。
「何か見つかりましたか?」
「……まあ、ビンゴって感じだね」
 その葵桜の問いかけにフェルが首肯し。
 ――徐に、紅玉の嵌め込まれた銀色の刀身持つ、紅炎の剣を抜剣し、自らの怪力と魔力を籠めて、その白銀の平を地面に叩きつけた時。
 ――ガァン!
 と鈍い音と共に、床板が破損、その先に地下へと続く階段が見えていた。
「……本当は音を立てずに開けられれば良かったんだけれど……取り外しできる感じじゃなかったんだよね」
 恐らく、何らかの結界の様なものが張り巡らされていたのであろう。
 こうなってくると、やや乱暴ではあるが、魔力を籠めた長剣をハンマー代わりに叩きつけてでも破壊して進む事の方が最善となる。
「まあ、思い切りましたね、それは。……田中さん、今の内に少し先行して貰って良いかな?」
 そう葵桜からの依頼を受けて。
 田中さんがその階段を注意深く降りていく様子を見ながら、姫桜が取り敢えず、と少し諦めた様に頭を横に振った。
「ええと……そこにいるのは、千尋さんの人形の、宵よね? 悪いけれど、皆に『地下施設の入り口を発見したから、監禁部屋に集合』の旨、伝えて貰えるかしら?」
 その姫桜の言の葉を。
「ああ、任せておけ、彩瑠」
 そう宵と意識をリンクしていた千尋の声が宵から聞こえた事に、姫桜が一瞬、その青い瞳を驚愕に彩らせたが。
 気にする事無く颯爽とその場を去り、仲間達を呼び集める事を、千尋のからくり人形達はやってのけたのであった。


「音が聞こえた時は何事かと思ったけれど……まあ、呪的防御が仕掛けられていた形跡があるから、フェルさんの判断が最適解だったみたいだね」
 そう道場から監禁施設へと雄哉達と共に移動して来たクローネが、自らの情報収集結界でフェルが文字通り叩き壊した床の残骸を念の為に索敵しながらうん、と首肯を1つ。
「……最後は人海戦術で……とは考えていましたが、一番わかりやすい所にあるものなのですね」
 そう続いたウィリアムの言の葉に、紗里亜もそうですね、と静かに首肯する。
「この様子だと恐らく、一般的な当時の『人間』や、異空間の扉やアイテムポケットの様なものを知らない方々には分からない情報が隠されていたと言う感じになりますね。……私達が、大会議室で手に入れた資料みたいにですけれども」
 その紗里亜の言の葉に。
「……恐らく、そういう、事、だと、思います……」
 念のためにと瞬間記憶でその資料の内容を覚えてきた蒼が色彩異なる双眸を瞬かせながら首肯するその間に。
「取り敢えず階段の先には通路が続いていて、その先に扉があるところまでは見つけてきたよー。……でも、それ以上になると、多分、戦闘になりそうだったから、田中さんは引き返して来たけれど」
 そう葵桜が戻ってきた田中さんから情報を受け取り、説明をするのを聞いて。
「ならば、戦闘態勢を整えてから向かった方が良さそうだな。……あまり時間は掛けられないだろうが」
 そう静かに首肯したレイのそれに、そうだね、と雄哉が首肯した。
 そのまま最前線へと向かう様に進み始める雄哉の後を追う様にフェル達が続くのを見やりながら。
「万が一の後ろからの奇襲に備えて、俺が殿を務めるぜ」
 そう告げた臨音のそれに促される様にウィリアム達が、雄哉達に続いて先に向かって行ったのを見送りつつ。
「さぁて、鬼が出るか、蛇が出るか……」
 そう独りごとの様に呟きながら、そっと、自らの本体である大太刀――火神ノ社ノ御神刀
を納める朱の鞘に付いた返り血をそっと触れて瞑目する。
(「……皆、無茶だけはするなよ。主よ、皆の事を、見守ってくれ……」)
 ――その、静かな祈りと共に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『拳獣王』

POW   :    拳獣王咆哮
【心臓を破裂させる咆哮】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    重撃拳
【鋼より重く速い拳】で近接攻撃し、与えたダメージに比例して対象の防御力と状態異常耐性も削減する。
WIZ   :    野獣撃
【拳】が命中した敵から剥ぎ取った部位を喰らう事で、敵の弱点に対応した形状の【爪や牙を持つ野獣形態】に変身する。

イラスト:させぼのまり

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ――ガシャン!
 先頭を歩いていた猟兵が、地下階段を下りてその扉を叩き壊した、その瞬間だった。
『グルルルルルルルル……っ!』
 血に飢えた獣の如き殺戮の光を瞳に宿した少女達がその先に姿を現したのは。
 自らの『力』を求めたその果てに『知性』を失った少女達の|胎内《・・》から、まるで溢れて来るかの様に漏れているのは『白色』のサイキックエナジー。
 大会議室にあった資料と、目前で起きている理性を失った獣の如き少女達の姿から、彼女達に何が起きているのかを、想像する事は難くないであろう。
 ――そのサイキックエナジーの力で自分達の『種』を殖やしていく。
 それとも――彼女達は既に誰かに番わされ、身籠った後なのであろうか。
 だが、番われているのであれば、殖えたダークネス達によって、|今の世界《サイキックハーツ》への再侵攻が行われていてもおかしくない。
 ――実験が未完だった、と言うべきなのか。
 それとも……猟兵達の1人が感じた『嫌な予感』が当たったのか。
 真実は定かではないけれども……分かる事は、1つ。
『グルルルルルルルッ……!』
|胎内《・・》に宿した白色のサイキックエナジーを守る為にも、彼女達は自分達の力を使う事を厭わない、という事だ。
 ――生殖能力についての研究がなされていた、ダークネス強化改造施設。
 再びこの世界に蒔かれようとしている新たなる災いの種を此処で阻止する為に、猟兵達は少女達と対峙する。
 ――目前の、『母』になり得るかも知れないアンブレイカブルの少女達に、其々に想いを馳せながら。

 **********************
 第2章の敵は『白色のサイキックエナジー』をその身に宿した少女のアンブレイカブル達となります。
 1.彼女達は、下記UCの効果を、全てのUCに乗せて使用する事が出来ると判定します。
 UC名: 白き死よ来たれ
 効果:攻撃が命中した対象に【白色のサイキックエナジー】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【濃縮サイキックエナジー】による追加攻撃を与え続ける。
 
 2.地下施設の入り口にあたるこの戦場はやや狭い為、レベル×●体を召喚する系統のユーベルコードを使用することが出来ません。

 3.また、キャバリアを初めとした乗り物に搭乗する事も出来ないと判定します。
 
 4.彼女達は、自らの身に宿した『白色のサイキックエナジー』を本能的に守ろうとしております。そこにある本能とは『闘争心』と『母性』です。

 ――それでは、最善の結末を。
ウィリアム・バークリー
聞いた話では、『ホワイト・ビヘイビア』という元老は“陰陽師”安倍晴明の後継者だそうですね。
となると、研究も引き継いだということでしょうか。身籠もったオブリビオンとは、依媛を思い起こさせる……。

「オーラ防御」「霊的防護」で咆哮に耐え、「全力魔法」氷の「属性攻撃」「凍結攻撃」「捕縛」のFreezing Coffinを振るいましょう。氷の棺の中で、眠っていてください。後で、終わらせてあげます。
白兵戦に持ち込まれないよう、前衛の後方で中距離の位置取りを確保。そこで氷の鎖を振るって、一人でも多く氷棺に封じていきましょう。

こうして迎撃に駆り出されるということは、彼女たちはおそらく失敗作。完全体がいますか?


火神・臨音
目の前の少女達の唸り声を聴いて想うは、親として守ろうとする覚悟
その一方で研究の治験体として受けた実験での苦痛故の「たすけて!」の呻き
さぞ辛かっただろうな
解放するぜ、少しだけ堪えてくれ

初手は浄化と水の属性載せた護符のばら撒き
相手の攻撃に備え距離を取りつつ、剣風による衝撃波にも浄化と水属性を付与
近接格闘に持ち込むのは弱体化した時のみとする

UC詠唱は穏やか且つ聞こえぬ程の声量で
焔が祓い清めるのは苦しい想いをした彼女達の魂と虐げられた尊厳
俺の主の元で苦痛なく穏やかに眠れる様祈りと願いを乗せて

元老に向け静かに告げるは宣戦布告
てめぇの企みは此処で終わりだ
きっちり落とし前つけて貰うぜ

アドリブ、連携歓迎


フェル・オオヤマ
・心境
生まれてくる命は祝福されてあるべき物だけど…
目の前のそれはこの世界に解き放ってはならない物!
だから…貴女達には悪いけど禍根はここで断ち切るよ!

・戦闘
オーバーロードを発動!
ホワイト・ビヘイビアとの戦いも控えてるしここで躊躇えば徒に消耗してしまう…!
[紅炎の剣]とビームシールドとマインドリングを装備

この攻撃の源泉は…|胎《そこ》か!
彼女達の『母性』を逆手に取らせてもらうよ!
[我竜・火竜猟斬撃]を発動!
腹部を狙おうとしたらそこにガードを固めてくると読んで
シールドバッシュを仕掛けます
シールドバッシュから竜脚での蹴り!そして地獄の炎を纏わせた紅炎の剣の攻撃で確実に仕留めるよう試みます
【焼却/浄化/闘争心/急所突き/追撃/呪詛耐性】の技能を使用

敵の攻撃からは基本的には回避
回避が難しい場合や味方が狙われた場合は庇います
敵が咆哮を放つ時に可能であればマインドリングからダガーを生成・投擲し妨害を試みます
【盾受け/かばう/オーラ防御/激痛耐性/カウンター/先制攻撃】を使用

他キャラとの連携・アドリブ歓迎


レイ・アステネス
アドリブ、連携可

理性がない状態では『種』を殖やしたとしても成功とは言えない気がするが


攻撃は指定UCと装備武器を使う
連携や仲間の攻撃等の隙を消すように意識して行動
数を減らす事を最優先で確実に止めを刺すようにする
必要なら声かけ等も行う
極力敵の攻撃に当たらないように気を付けたいが、狭いし混戦になってしまうか
仲間が孤立しないよう援護優先で回復や牽制攻撃も行う
敵の数が多いのは厄介だが本能で動くなら多少の誘導は出来そうか


攻撃しても敵にダメージを与えられない場合は行動阻害を狙う
敵を観察して行動を予測し邪魔をするように動く


防御は冬青に任せるが
自分で対処出来そうな場合は回避や片喰で受け流す
回避が無理なら防御する


神宮時・蒼
……これは、なんとも…。…実験は、成功、していた、という、事、でしょうか…。
…ダークネス、にも、母性、が、ある、の、ですね。…母になる、と言う、事は、モノの、ボクには、よく、分からない、感情、では、ありますが。
…けれど、ごめん、なさい。…其れを、表に、出す事は、出来ない、の、です。

【WIZ】
【魔力溜め】で【結界術】を強化して展開
相手の攻撃は【見切り】と【受け流し】で対処しましょう
…手負いの、獣程、恐ろしい、ものは、ない、と、言い、ます、し
攻撃の軌道は【弾幕】を放って邪魔しましょう
【毒使い】で遅効性の神経毒を仕込んで動きを阻害するのも有りでしょうか
隙を見せたならば【無月残影ノ舞】を放ちましょう

…どうにも、此の世界の、記憶に、引っ張られ、過ぎている、気が、します、ね。
―此れは、ボクであって、ボクの、記憶、では、ないのに。
…此の世界の、ボクの、ように、|腕を異形化《鬼神変》したり、|神秘の歌声《ディーヴァズメロディ》は、ありませんが。
…せめて、貴方が、安らかに、眠れる、ように―。


椎那・紗里亜
懐かしい顔ぶれとの積もる話はまた後で。
今は先へ進みましょう。

スーツから拳法着に瞬間着替え。
拳獣王の間合いに踏み込みます。
彼女らの攻撃はダメージを受けないよう柔らかく受け流し。
他の拳獣王から同時に攻撃を受けないように歩法で立ち位置を調整します。
気を練りながら咆哮に備え、咆哮の瞬間震脚と共にUCを発動。
空を打って生み出される衝撃波で相殺。
そのまま密着、掌底から発頸を打ち込みます。

「母」になるものを灼滅する心痛はありますが、
母になった友人を見て理解しました。
守りたいもののためなら全てを賭ける覚悟を。
彼女らが宿したものを守りたいのなら、
その覚悟を受け止めて倒します。
こんなことを企む者への怒りを込めて。


司・千尋
連携、アドリブ可

自らの『力』を求めた結果だっていうなら同情の余地はないんじゃねぇの?
遣り難いっていうなら何が敵だったら良かったんだ?


攻防は基本的に『子虚烏有』を使う
範囲外なら位置調整
近接・投擲等の武器も使い
早業や範囲攻撃、2回攻撃など手数で補う
攻撃手が足りているか敵に押され気味なら防御優先
無理なら敵の数を減らす事に注力

『白色のサイキックエナジー』を守るなら其れを狙えば良さそうだけど
卑怯だってキレる奴が稀にいるけど意味わからないよな
ヒトって難しい


防御は細かく分割した鳥威を複数展開し防ぐ
割れてもすぐ次を展開
オーラ防御も鳥威に重ねて使用し耐久力を強化
回避や迎撃する時間を稼ぐ
間に合わない時は双睛を使用


彩瑠・姫桜
【二桜】
(多分こういう敵が出てくるとは、
優希斗さんの話から何となく想像はできていたし
ある程度覚悟も決めていた
にも関わらず、思考に反して身体が強張っているのが自分でもよくわかる

少女達が宿す光が「子」なのかなどわからない
けれど「母」の顔をする少女達を目の当たりにすると
武器を構えて傷つけることは、どうしてもできなくて)

(遅れて参戦してきた父の言葉に、
こっちの母と妹のことを知れば思わず溢れた涙を拭った
向けられた言葉には頷き、素直に従うことにして)

…あおも、ごめん、頼らせてもらうわ

(これ以上仲間の足手纏いにならないように
前に出て戦えない代わりに
今の自分ができる精一杯をやってみせるのだ)

■戦闘
仲間とは常に連携
臨機応変対応意識

回復>防御

中衛
前衛含めできるだけ多数の仲間の回復ができる立ち位置を意識

>回復
仲間の負傷状況に応じ適宜UC使用

>防御
"桜縁"の[自動防御、武器受け]を使用し前衛メンバーを[かばう]

>他
目を逸らさずに敵の動きや状態については観察
戦闘に活用できそうな情報あれば適宜声掛け等で全体共有行う


榎木・葵桜
【二桜】
優希斗さんも言ってたから、まぁ予想はついてたけど
確かに対峙するとキツいところだよね

私も弟妹いるからお腹の子を愛おしむお母さんの気持ちは一応わかる
とはいえ、それはそれこれはこれってね
私はこの辺割り切ってるから平気だけど
姫ちゃんはそうもいかないんでしょ?

姫ちゃんのそういうとこ大好きだけど
改めて厳しく言っとく
下手な動き方して全体の足を引っ張らないで
あと、こういうのわかってたから私頼ったんでしょ?
なら話は簡単
その状態で姫ちゃんができる最善を尽くすんだよ

>戦闘
真の姿解放(姿変わらず)
UCで田中さん召喚
今回は威力より手数を増やす方向で頑張ってみるね

攻撃特化
"胡蝶楽刀"使用
近接なら[なぎ払い]
遠隔なら[衝撃波]と[範囲攻撃]併用し
敵の体力を削っていくよ

敵のサイキックエナジーの攻撃は
直撃避けたいから[第六感]も駆使した[見切り]で対応
必要に応じて田中さんの炎や私の[衝撃波]を仕掛けて相殺を試みるね

仲間との連携は常に意識
敵の攻撃の癖や立ち回り方については観察して
気がついた点は声掛けで皆と連携するよ


彩瑠・さくらえ
遅ればせだね
…しかし毎度ながら色々考えさせられる戦いだねぇ(苦笑)

うん、産まれたよ
(母子共に無事だと嬉しそうに笑み)
だから来たんだ
うちのママも君のこと気にしてたからね

(敵味方関係なく感情移入してしまう娘に
先日幻影を介し見たトラウマを重ねさせてはならない
並行世界の娘もこの世界の妻や娘達と同様に
自分にとっては守りたい存在なのだから)

言っただろう
全部背負う必要はないって
ここにある罪は特にそういう類のものだ
仮に誰かが背負う必要があるなら
僕含めそういう覚悟を決めた人間が背負えばいいんだ

>少女達
(情報から得た『研究』内容は気分の良いものではないが
表情には出さずに)
「母」は強し、だね
その点においては敬意を払うよ
けれど、だからこそ、ここで終わらせなければね

>戦闘
真の姿(闇堕ち姿)解放

防御>攻撃

防御
前衛
中・後衛の守り優先
UC+[見切り、かばう、武器受け、オーラ防御、受け流し]併用

攻撃
トラウメンヴァッフェ使用
敵との距離応じて形状変更
遠→リングスラッシャー風に[投擲]
近→オーラのように両手や足に纏わせ[格闘]


クローネ・マックローネ
NGなし、絡みOK、アドリブ歓迎
【SPD判定】
真剣口調で話すよ

あれが…いや、彼女達が…ここの研究成果なんだね
『母は強し』とは言うけれど、妊婦に戦闘をさせちゃあ駄目でしょうが…
あれがちゃんとした|子供《ダークネス》として生まれ、成長し、また子を成せるのか、気にはなるけれど…
|過去《オブリビオン》に|明日《みらい》を与える気はないんだ
悪いけど、母親共々|灼滅《ころ》してあげる

彼女達については『|母《てき》』として躊躇いなく攻撃するよ

ワタシも色々混ざっているし、色々経験してるからさ
わかるんだよ、母親の気持ちは
…だからこそ
|生殖能力付与技術《これ》は今の世に出ちゃ駄目なんだよ

UCは『ワタシのソロモンの雷』
召喚したソロモンの悪魔が放つ【電撃】魔法で、その胎内に宿す|白色のサイキックエナジー《いのち》ごと攻撃するよ
ワタシ自身はネクロオーブによる【エネルギー弾】等の遠距離攻撃主体で攻めるね
味方との【連携攻撃】や【援護射撃】を意識して動くよ
敵の攻撃は【第六感/見切り/身かわし/空中機動】で避けるね


館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

…嫌な予感が的中したか!
まるで我が子を守ろうとするこの状況…サムライエンパイアの「陰陽師『安倍晴明』」の実験と酷似しすぎだろう!?
世界こそ異なるし、状況も異なるが…放置しておいていい類ではないぞ

彼女たちはすでにオブリビオンだ
心を鬼にして…倒すしかない
胎内の白色のサイキックエナジーごと、この世から消し去ってやる

予め、黒剣に「武器に魔法を纏う」で闇属性…負の生命力をまとわせておく
濃縮サイキックエナジーによる追加攻撃対策として、漆黒の「オーラ防御」を全身に展開
敵の拳の挙動を「視力、戦闘知識、見切り」で見極め全力で回避する
至近距離で回避したら、反撃の「2回攻撃、怪力」+指定UCの18連撃(※味方斬りNG)を…あえて腹に叩き込む
無意識に腹を守ろうとするだろうが、構わずサイキックエナジーごと切り刻む

…彼女たちはおそらく実験の犠牲者なんだろう
子を守ろうと必死になる…それ自体は理解できる
本当なら助けたいけど…もう彼女たちはオブリビオンだ
だから…俺は容赦なく斬る
…ごめんな


有城・雄哉
【POW】
アドリブ連携大歓迎

…この状況、は…っ!!
ホワイト・ビヘイビアの名を聞いた時から嫌な予感はしていたが
これではまるで…白の王セイメイの所業そのものじゃないか!
しかもここで行われていたのがダークネスによる生殖能力の研究なら
例え彼女たちを正気に戻す目があったとしても…救うことはできない

…ダメだ
かつて生殖者ゾンビと化した高校生を倒した時の苦い記憶が蘇って
感情のうねりが抑えられない
彼女たちを救えない悔しさとダークネスへの憎悪
そして先代ホワイト・ビヘイビアたる白の王セイメイへの怒りが綯い交ぜになって…理性的な判断が出来そうにない
全部倒すしかないことに変わりはない、けど…

拳獣王咆哮は心臓を破裂させるというが
俺は人造灼滅者で肉体はダークネスだから心臓がない
とは言え、心臓の代わりに等しい霊子強化ガラスを破壊されたら即死だから
咆哮自体を阻止したいところ
念の為漆黒の「オーラ防御」を全身に展開した上で命中率低下の相殺も兼ねて密着し
指定UCで3倍撃にした拳を口内に叩き込み咆哮そのものを阻止したい




 ――その目前の少女達と、その|胎《・》に宿る白色のサイキックエナジーを守る様に身構える少女達を見て。
「……嫌な予感が的中したか!」
 そう殿を務めていた火神・臨音の後ろから、思わず、と言う様な叫び声が上がる。 
 咄嗟に背後を臨音が見やったそこにいたのは……。
「敬輔!? そうか、雄哉達が言っていた先行していた猟兵ってお前の事だったか……」
 そう納得した様に呟く臨音と共に、最前線で少女たちの姿を最初に目撃した有城・雄哉達を追う様に走りながら、敬輔が、ああ、と小さく首肯する。
「丁度外から……」
「遅ればせながら、参上したよ。事情は大体、敬輔さんから聞いている。……毎度ながら色々と考えさせられる戦いになるね」
 そう敬輔の後ろから。
 共に前線へと向かうべく疾駆する敬輔と共に苦笑を零しながら姿を現したのは、彩瑠・さくらえ。
 そのさくらえ達が後方から駆ける音と、話し声が聞こえていたのであろうか。
 雄哉が扉を開くと同時に、散開する様に隊列を整えた、その中の1人であった彩瑠・姫桜がさくらえや敬輔の方を振り返り、思わず、と言う様に息を飲む。
「……パ、パパ……!? |この世界《サイキックハーツ》のママと妹は……」
 そう思わず、息を飲む姫桜の問いに。
「うん、無事に産まれたよ。母娘共々、無事にね」
 そう安堵と共に嬉しそうに微笑むさくらえの姿を見て、勝気な表情を見せていた姫桜が無き笑いの様な表情を浮かべて無意識に胸を撫で下ろす。
「……そうでしたか。さくらえさんのお子様も、この時期に……」
 そうそっと言の葉を小さく紡いだのは、目前の少女達の姿を見るや否や、スーツから一瞬で、八卦翠風――拳法着姿に着替えた椎那・紗里亜だ。
 その紗里亜の感慨深げなそれを聞いて。
「ESP諮問会議以来……位にもしかしたらなるのかな? 久しぶりだね、紗里亜さん」
 そうさくらえが懐かしそうに目を眇めつつ紗里亜に短く挨拶するのを聞きながら、積もる話はまた後で、と言う様に紗里亜が飛ばしてくるアイコンタクトに首肯する。
 そう……それよりも、今は……。
「……優希斗さんも言っていたから、まぁ、予想はついていたんだけれどさ」
 その目前の自らの胎の子を守る母の表情を見せて、自分達に敵意と殺意と闘争本能を剥き出しにしている少女達を見て。
 この施設で行われていた|研究《・・》についてを予知していたグリモア猟兵の事を脳裏に浮かべながら、その藍色の瞳を細めた榎木・葵桜が思わず息を零した。
「それでも、やっぱり実際に対峙するとキツいところではあるよね」
 その葵桜の言の葉に。
「そうか?」
 そう、何処となく不思議そうな表情を浮かべて、葵桜に問いかけたのは、司・千尋。
「彼奴等が自分の意思で『力』を求めた結果、ああなったんだって言うなら、キツいと言うか、事実以外の何者でもないから、同情の余地も何もないんじゃないのか?」
 その千尋の呟きに。
「確かに目の前の彼女達が自らの意志でって言うだけなら同情の余地はないんだけれどな……」
 そうギリリ、と少女達の『たすけて!』と言う声を――或いはそれは幻聴かも知れないが――少女達の唸りから感じる臨音が軽く頭を横に振り。
「……僕みたいに、自分で望んでその道を選んだのならば、どれだけ良かった事か……! でも……|あの時《・・・》そっくりの状況という事は……!」
 そう雄哉が血も滲まんばかりの表情で唇を強く噛み締める様子を見て、千尋が成程、と呟き。
「……もしかして、|灼滅者《・・・》達は、無理矢理、こう言う事になった奴等と戦った事があるのか?」
 そう何気なく問いかけたのに。
「……そう、みたい、ですね……」
 自らの中に流れ込んでくる|同位体《・・・》の記憶から流れ込んでくる情報を精査して。
 呻く様に赤と琥珀の色彩異なる双眸に何処となく悲哀を感じさせる光を宿した神宮時・蒼の呟きに。
「……蒼さんの言う通りだね。しかもあの時の|ワタシ《灼滅者》達の|一部《・・》は……」
 自らの持つ漆黒の解体ナイフ、ダークネス・ユサーパーから何かを訴えかけられる様な、奇妙な酩酊感を覚えながら、クローネ・マックローネが同意していた。
「確か……此方の世界では、『ホワイト・ビヘイビア』と言う元老は“陰陽師”安倍晴明の後継者だと聞いたことがありますが……」
 そのクローネや雄哉の言葉に含むところがあったのに気が付いたのであろうか。
 そうウィリアム・バークリーが問いかけるのを聞いて、クローネが正確には、と軽く頭を横に振った。
「生殖型ゾンビを量産する計画を作っていた|闇《ダークネス》の名前は、『白の王・セイメイ』だね」
「……どちらにせよセイメイ……|晴明《・・》って名前なのか。本当に彼女達が我が子を守ろうとするこの状況は……|あの時《サムライエンパイア》の『安倍晴明』の実験と酷似が過ぎる……!?」
 そのクローネの言葉に被せる様に微かに頷きつつも、ギリリ、と唇を噛み締める様にしたのは敬輔。
「……ふむ。どうやら館野やバークリーと、私達の間では『|晴明《セイメイ》』と言う相手に対するそれは、微妙にニュアンスが違う様だな」
 その敬輔やウィリアム、雄哉とクローネの話を聞きながら。
 中後衛とでも言うべき立ち位置を確保しながら思考を続けつつそう問いを投げかけたのは、レイ・アステネス。
「……つまり、|この世界《サイキックハーツ》では、安倍晴明は、『セイメイ』と呼ばれていたと……?」
 そのレイの纏めに確認する様にウィリアムが問いかけるその間にも。
「……|私の故郷《ケルベロスブレイド》と、|異世界《ケルベロスディバイド》では、太陽神アポロンと、十二剣神『太陽神スーパーアポロン』は明確に全く違う存在だったけれども……安倍晴明と『白の王・セイメイ』は……」
 そう思わず、と言う様に呟いていたフェル・オオヤマが無意識に気遣う様に見やるのは雄哉とダークネス・ユサーパーが不可思議な輝きを発しているクローネ。
(「……雄哉さん、クローネさんがこの相手に引っかかる何かがある……? それとも……この状況に? それは……?」)
 そう胸中でフェルが呟くその間にも。
『グルルルルルルルルルルッ……!』
 子を守る『母』として今すぐにでも突進してきそうな少女達の姿を見た姫桜は……。
(「……優希斗さんの話から何となく私も、想像できていたし……」)
 その覚悟も決めていた――その筈、なのに。
 身体が強張り、その腕に嵌め込まれた銀の腕輪……『桜鏡』の鏡面が動揺で激しく揺れ動いているのがよくわかる。
(「この少女達が宿す光は……」)
『子』なのか、それとも別の何かなのかは、分からないけれども。
 それでも、彼女達の姿を見ていると……。
 ――刹那。
『グルルルルルルルルルルッ!』
 その姫桜の動揺を本能的に、まるで見抜いていたかの様に。
 |唯一《・・》、無防備を晒していた姫桜に向かって、少女達の1人がその拳に白色のサイキックエナジーを纏って振り下ろしてきた。
「……!」
 その少女の一挙一動に、目を見開き、身動きが取れずに、少女を凝視する姫桜と少女のその間に。
「姫ちゃん!」
 鋭く、叱咤する様な叫びと共に。
 真の姿を発動させて、誰よりも早く動いた葵桜が胡蝶楽刀の柄でその拳を受け止める。
 リンリン! と言う魔除けの鈴の音が鳴り響くと同時にその姿を野獣の如き姿に変えてその牙を以て葵桜と姫桜を纏めて噛み砕こうとした――刹那。
「……駄目だよ、それは……さくらえさん!」
 その叫びと、共に。
 此処で躊躇をすれば徒に消耗してしまうが故に、彼女達をその|白色のサイキックエナジー《いのち》ごと断つ覚悟を定めたフェルが、青き流星を思わせる海色のドレスアーマーを纏い、その紅蓮の竜翼を羽ばたかせ、両義宿手【寂滅護】によるバッシュを、その|胎《・》に叩き込み。
「ああ、任されたよ」
 その時には今までに重ねてきたその罪も、その想いも……何もかもを封じたスレイヤーカードを解放、想鏡を展開したさくらえが姫桜と少女の間に割って入っていた。
 ――その、漆黒の影の様な……。
「……サイ!?」
 そう思わぬ雄哉の絶叫の様な声を聞きながら――だ。
「……全く、姫桜や皆に僕は言ったよね? ……全部背負う必要はないって」
 反射的にフェルに制止の声を上げようとしていた姫桜に向けて、そう忠告の様にさくらえが告げるのに。
「……そう、ですね」
 そんなさくらえの姿を色彩異なる双眸に映し出しながら。
 そう小さく、祈る様に、蔦が絡んだ、不思議な色彩の光虚ろう嘆きの刃を一閃し、其の鎌の刃に咲いた茉莉花の花に呪詛を纏わせて弾幕を放ちながら小さく蒼が相槌を打つ。
「やれやれ。まっ……自分から求めたんじゃなくて、無理矢理何もかも奪われた相手とは遣り難いって言うならば、未だ分からないでもないが……ならば、何が敵ならば、良いんだろうな」
 そう皮肉気な口調で肩を竦めて見せつつ。
 分からないと言う様にしつつもフェルが素早く離脱する動きに合わせる様に、自らの右腕の周囲に腕輪の様に展開した1440本の幾何学模様を刀身に描き出された光剣の一部を解き放ち、その胎を貫き少女の1人に千尋が止めを刺すのを見やりながら。
「……姫ちゃん」
 田中さんを再召喚した葵桜が、先手を切って仲間を守るべく襲って来た少女に止めを刺した千尋達の姿を見ながら、ちらりと肩越しに姫桜を振り返る。
「私もさ、姫ちゃんと同じで、弟妹がいるからお腹の子を愛おしむお母さんの気持ちは、一応、分かるんだ」
「……あお」
 震える様な、そんな声音で。
 覚悟を決めていた筈なのに、身体が思考に反して、身体が強張っている事を理解していた姫桜の囁きに、でもね、と葵桜が続ける。
「それはそれ、これはこれなんだよ。だって、彼女達は、もう……」
「……|オブリビオン《・・・・・・》、だからな」
 その葵桜の言葉を引き取る様に。
 血の滲む様な口調で黒剣を抜剣、その青と赤のヘテロクロミアに憎悪と憤怒と覚悟の光を宿した敬輔が小さくそう話し。
「それに……もし、この子達が|過去《オブリビオン》ではなく、生殖能力を持つ|闇《ダークネス》なのだとしても……」
 敬輔の言葉を受けて、自らの目前に漆黒の魔法陣を描き出したクローネが淡々と話を続ければ。
「……例え、彼女達を正気に戻す必要があったとしても……救う事は……出来ないんだ……!」
 荒れ狂う竜巻の様な、様々な感情の渦に飲み込まれかけながら、血の滲む様な口調で雄哉が絶叫する。
 その脳裏を過るのは――嘗て、|生殖型ゾンビ《・・・・・・》と化し、|灼滅《ころ》す事でしか救うことが出来なかった高校生達。
 ――つまり、その意味するところは……。
「割り切れるか、割り切れないか。私は、クローネちゃんやフェルさんみたいに割り切っているから平気だけれど……姫ちゃんは、そうもいかないんでしょ?」
 その葵桜の糾弾の様なそれに。
 姫桜がさくらえの背で俯き、無意識に歯を食い縛る。
 ――その瞳から、ポタリ、ポタリと白い水滴を零しながら。
 さくらえの背に守られる様にしている姫桜を見て、ウィリアムが軽く頭を横に振った。
(「やはり姫桜さんも、ぼくと同様に、あの時の依媛の事を、思い出してしまう様ですね」)
 あの時、姫桜は最後まで依媛を攻撃することが出来なかった。
『敵』にどの様な情を、想いを抱くのか、そしてその度合いがどの位のものなのか。
 それは個々によって、大きく違う。
 そしてそれを抱えながらも尚、戦える力を持つ者もいれば、そこに常に思い悩み思わず、立ち止まってしまう者もいるのであろう。
 ――でも……いや、だからこそ、だろうか。
「此処にある罪を、仮に誰かが背負う必要があるのならば」
 それが慰めになるのかどうかは分からないけれども。
 サイの姿と化したさくらえが、粛々とその言葉を続けた。
「|僕含め《・・・》、そう言う覚悟を決めた人間が背負えば良いんだよ、姫桜。だから……」
「……改めて厳しく言っとくけど。下手な動きして、全体の足を引っ張らないで」
 そのさくらえの言葉を引き取り、厳しい口調で葵桜が断言しつつも……それから少しだけ口調を和らげて言葉を続けた。
「……こういう事になるって分かってたから、私に頼ったんでしょ? だったら尚更。その状態で姫ちゃんが出来る最善を尽くせばいい。只、それだけの話だよ」
 その葵桜の言の葉に。
 瞳に浮かんだ涙をそっと拭った姫桜が、その目に浮かんだ涙を拭い、ごめん、と小さく呟いた、その時。
「……彩瑠様。……お下がり、下さい……」
 その言の葉と、共に。
 赤と琥珀色の色彩異なる双眸持つ、嘗ては自分を只の『物』としてしか見ていなかった|氷晶石と琥珀のブローチのヤドリガミ《少女》の声が姫桜の耳朶を打っていた。
 気付いて思わず姫桜が其方を振り返れば、その手の宵に咲く茉莉花を一閃し、白と漆黒の呪詛を撒き散らしながら蒼がたどたどしく言葉を続けている。
「……ボクは、モノ、です。……彩瑠様達の、様な、ヒトの、心を、守ると、誓った、1人の、『モノ』です。……ですので、此処は……」
 ――『ボク』に、お任せ、下さい。
 その蒼の静かな決意を籠めた言の葉に。
「……ごめんなさい、皆。あおも、本当に、ありがとう」
 そう姫桜が溢れる涙と共に。
 ――解き放った数多の白燐蟲からなる閃光が、戦いの始まりの合図となった。


「……理性が無い、獣の様な状態のオブリビオンか。……その様な状態の『種』が殖えたとしてもダークネスと言う種を殖やすと言う目的は、とても成功とはいえないと思うがな」
 その言の葉と、共に。
 姫桜の迸らせた白燐蟲の閃光を背に受けたレイが、トン、と地面に枳棘の柄を叩きつけると。
 ――カッ!
 と裁きの光条が、肉薄してきていた少女達の瞳を焼き、その動きを僅かに鈍らせる。
 今、この戦場にいる猟兵は、敬輔やさくらえも含めて13名と葵桜の召喚した田中さん――と呼ばれていた、武者甲冑の戦士が1体の合計14名。
 今の所、戦場の広さ的には、この位の人数で戦うのであれば支障は無さそうだが……。
(「マックローネがよく使う、100人以上を召喚する手を使う訳には行かない程度には狭い戦場であれば、立ち回りを意識していかないと同士討ちとなる可能性もあるな」)
 幸いなのは目前の少女達が、人類や、ダークネスの強みである『知性』が無く、自らの本能の赴く儘に自分達を攻撃してきているという事実。
 只……問題があるとすれば、正しく後退した姫桜の様に、少女達の|胎《・》から放出される白色のサイキックエナジー……|その波動《いのち》が、彼女達に『母』としての意識を強く芽生えさせているという事か。
「……私の親友が、『母』となりました」
 そんなレイの胸中に気付いているのか、いないのか。
 さりげなく憲法着――八卦翠風の裾を風に靡かせながら、レイの裁きの光条にその目を晦まされた少女に肉薄した紗里亜がそっと呟く。
「……椎那先輩の……親友……」
 その紗里亜の何気ない告白が目前の少女達と、そして……あの時の記憶とをフラッシュバックさせた雄哉の中に渦巻く感情として、怒涛の様に荒れ狂う。
 その感情の奔流に飲み込まれながら憎悪ニ身ヲ焦ガス現身ノ影業と鏖殺の気を綯い交ぜにした漆黒のオーラを全身に張り巡らした雄哉が、力任せに今にも咆哮を上げんとする少女の口腔内にその拳を鋼鉄化させて、突き込み、容赦なくその頭部を粉砕。
 その雄哉の様子を、赤茶色の瞳に微かに気づかわしげに見やりつつ、紗里亜も目前の少女へと気を練りつつ熟練の歩法で肉薄しながら、静かに続けた。
「だからこそ、理解できました。子を想う『母』の気持ちはこれ程迄に強いものなのだと」
 ――それこそ……守りたいものの為なら、全てを賭ける覚悟を持つのだという事に。
 けれども……それが、理解できているからこそ。
「……あなた達をこの先に進ませる訳には行かないのです」
 そう、静かに紗里亜が告げると共に。
『グルアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』
 少女の1人が、その心臓をも破裂させる咆哮を戦場全体に向けて解き放つその様子を見て。
「……流石に好きにやらせる訳には行かないか。神宮時」
 その言の葉と、共に。
 仮初の肉体故に――その仮初の肉体に何処迄ヒトの器官の特徴を再現しているのかは分からないが――恐らく持たぬであろう心臓を守る様に無数の鳥威を展開する千尋。
 無数の鳥威は、『ヒト』である敬輔や、紗里亜、レイに詠唱を開始したウィリアム達を重点的に守る様に展開し。
「……手負いの、獣程、恐ろしい、ものは、ない、と、言い、ます、から……ね」
 そう小さく呟いた蒼が、その手の白鎌宵に咲く茉莉花から、赤と青の幽世蝶――天へ祈る幽霊花を、その刃に咲く茉莉花の花から戦場に向かって飛び立たせていた。
 ――其の愁いを、優しく、切ない、哀しみに染めて。
 そんな彼岸の如き、赤と青の鱗粉が戦場にばらまかれ、千尋の鳥威の上から展開された焦げ茶色の結界と重なり合い、咆哮の勢いを削いだところに。
「……はっ!」
 紗里亜が覚悟の呼気を発すると同時に震脚し、練り上げた気――それは、少女の咆哮に纏われた白色のサイキックエナジーと同じサイキックエナジー……を放射。
 放たれたそれが咆哮で振動する空でぶつけてその動きを相殺しながら、タン、とすかさず大地を蹴り、チャイナドレスが風に靡き少女の懐に潜り込んで発勁を……。
『グルルァァァァァァァァァァァァァァァッ!』
 叩き込むよりも疾く、鋼より重い拳に白色のサイキックエナジーを纏った少女が、紗里亜を側面から叩き潰そうした……その時。
「危ないっ!」
 そう叫んだフェルが咄嗟に紗里亜の側面に割り込み、自らの【寂滅護】を展開して、その攻撃を受け止め。
「……さぞ、辛かっただろう。でも、もう少しだけ……堪えてくれ」
 そう祈る様な手向けの言葉を向けて。
 臨音が周囲に七曜五行ノ力封ジシ護符から浄化と水属性の護符を展開しながら、自らの本体でもある、火神ノ社ノ御神刀に同様の浄化と水属性を纏わせて、一閃。
 轟、と大気を切り裂く刀風と化したその刃が、その質量と加速を持った拳面を叩き割った所に。
「……くそ!」
 咆哮と共に臨音が受け止めた少女の腹部目掛けて、その右の青の瞳を輝かせた敬輔が、刀身が赤黒く光り輝く黒剣を振るう。
 全部で18連撃となる斬撃の内、刺突から始まり、脇からの左右の払い上げが、その少女の|胎《・》を狙い……。
『っ!』
 咄嗟にその|胎《・》を自らの空いていた左手で守る様に身を丸め込んだ少女に左右からの袈裟の斬撃が振り下ろされ、少女の体をズタズタに切り刻んでいた。
 その生身の体をまるで切り捨てたかの様な……血生臭く、手に嫌が応にでも伝わってくる感触に思わず敬輔が表情を歪める。
「くっ……! なまじ、子を守ろうとするその気持ちが理解できるから……!」
 それを逆手にとって、逆に彼女達を切り刻む事しか出来ない自分に、何とも言えない嫌気が差す。
 ――けれども。
「……アナタ達の様な……此処での研究の成果……。そんなアナタ方が生み出すそれが、本当にちゃんとした|子供《ダークネス》として生まれ、成長し、また子を成せるのかは気になるけれども……」
 ――それでも。
「悪いんだけれどね、|過去《オブリビオン》に|明日《未来》を与える気はないんだ」
 ――だから。
 そのクローネの静かな決意に呼応する様に。
 ダークネス・ユサーパーが淡く黒光を放つのを見ながらも、クローネが召喚したソロモンの悪魔が、自らの全身から雷矢を解き放つ。
 そのソロモンの悪魔を制御する様に、クローネの『ネクロオーブ』が漆黒の輝きを欲し、ソロモンの悪魔の雷を支え、少女達が胎内に宿す|白色のサイキックエナジー《いのち》ごと、少女達を撃ち抜き。
「それが、私達が今できる、貴女達への償いなのでしょう」
 クローネの召喚したソロモンの悪魔の雷光に射抜かれて。
 よろけ、その目から絶望と悲哀の涙と共に、咆哮しようとする少女に肉薄した紗里亜がその鳩尾に、発勁を解き放ち、止めを刺しているのを見て。
「色々混ざっているワタシから生まれた|解体ナイフ《ダークネス・ユサーパー》が、|あの時《・・・》の事をまるで思い出すかの様に、黒い輝きを噴出するとはね……」
 思わずそう呟いたクローネがネクロオーブから放出された呪力を刃に纏わせて、漆黒の弾丸の様に一斉に撃ち出した。
 ソロモンの悪魔の雷に上乗せする様にクローネが撃ち出した漆黒の弾丸が雷光の矢と共に弾幕と化して、紗里亜を狙っていた少女達を撃ち抜き、どう、とその場に頽れさせていく。
『グ……グルルルルルルルルルルッ!』
 それでも、自分達の|胎《・》の子供を守る様に尚も立ち上がる彼女達の姿に。
「……自らの胎内に宿した子供の為に、自らの命を賭けて戦い続ける……。その姿は本当に、あの時、ぼく達が対峙した依媛を彷彿とさせますね……」
 其の呟きと、共に。
 ウィリアムが何時の間にか正面に描き出していた青と白と緑色の綯い交ぜになった魔法陣が周辺の大気……の中に凝縮されている水分をその魔法陣の前面に収束させていた。
 そんな自らの目前に収束していく水分に、力を与える様に、懐から宝石『フロストライト』を取り出したウィリアムが、ふっ、と『フロストライト』に息を吐きつけ、永遠に溢れ続ける霜を魔法陣に吹き付け明滅させながら。
「ですが、もしあなた達が身籠っているのがオブリビオンだと言うのであれば、尚の事、此処から出す訳には行きません」
 ――だから。
「氷の棺の中で、お眠り下さい。……Freezing Coffin!」
 その叫びと、共に。
 ウィリアムが156個の鎖の環を持つ氷の鎖を解き放つ。
 数珠状と化したその鎖が、荒れ狂う白色のサイキックエナジーを纏いながら、鋼より重く速いその拳を絡め取り……複数人の少女達を纏めて、氷の棺の中に閉じ込めた。


 ――その瞬間を狙って。
「……悪いね。ウィリアムさんや紗里亜さんの言う通り、君達を此処から出す訳には行かないんだ。君達の能力は、その強さは……それだけで、|今《・》の|この世界《サイキックハーツ》を狂わせてしまうから。だから此処で、終わらせなければならない」
 ――その罪を、業を背負うのは、その覚悟を持つ者だけで良い。
 敵味方関係なく感情移入してしまう|娘《姫桜》の様な人間に、その覚悟を背負わせる必要なんてないのだから。
 その自らの誓いを胸に『サイ』の姿と化したさくらえが天に掲げたのは、想鏡。
 ――其の玻璃に映るは己の深淵。誓うは一つ。過去も、今も、罪も、闇も――全てを受け止める覚悟と共に解き放たれるは玻璃色の結界。
 展開されたサイの姿と化したさくらえの解き放った玻璃色の結界に守られた雄哉が。
「あああああああああああっ!」
 咆哮と共に、自らの拳を鋼鉄の様に硬化させ、その拳面に漆黒のオーラを纏って正拳突きを叩き込む。
 解き放たれた雄哉の拳が、ウィリアムの氷の棺の中で凍てついた少女達の1人を粉微塵に粉砕し、瓦礫の様に地上にばらまかれた氷塊を雄哉が容赦なく踏みつけるその間に。
「……そこだよ!」
 ウィリアムの氷の棺を力尽くで破壊して、自らの|胎《・》の子を守る様にその拳を雄哉に向けて振り上げた少女の前に、葵桜が割り込み、胡蝶楽刀を一閃。
 リンリン、と魔除けの鈴が鳴り響くのに合わせる様に放たれた衝撃の波が、氷の棺に纏めて縛り上げられた少女達を避けて肉薄して来た少女達の|胎《・》を打ち据え。
「……あまりいい気分はしないけれど……田中さん、お願い!」
 続けてバサリ、と左手に握った桜舞花を振るい、田中さんにすかさず葵桜が指示を下したその瞬間。
 田中さんがそれに首肯する様に自らの持つ槍を一閃。
 そこから放たれた炎が、葵桜が纏めて薙ぎ払い、咄嗟に自らの|胎《・》を守ろうとした少女達に着弾、その全身を炎に包み込んだところに。
「……ごめん、なさい」
 さくらえと同じく、其の罪の全てを背負って生きていくと|あの時《・・・》に決断した蒼が、宵に咲く茉莉花を一閃した。
 振るわれた白き大鎌の一閃が纏うは、漆黒の呪詛。
 その呪詛に蝕まれた|胎《・》に宿った赤子のサイキックエナジーを奪われていく事に絶望の嘆きを上げる。
 ――その嘆きは。
「……泡沫の、如く」
 そう小さく、囁く様に呟く蒼の放った呪詛に蝕まれる少女達に向けて。
「……生まれてくる命は祝福されてあるべきものだけど……!」
 ――でもね。
「……目前のあなた達のそれは、この世界の解き放ってはならない|もの《・・》なんだ!」
 ――だから。
「貴女達には、悪いけれど、その禍根、此処で断ち切らせて貰う!」
 その叫びと、共に。
 竜翼を羽ばたかせて空中を旋回しながらフェルが、姫桜が再び解き放った閃光に背を押される様に、肉薄しながらシールドバッシュ。
 続けざまに青いドレスアーマーの中にその軌跡を隠される様にしていた竜化した脚による回し蹴り。
 ふわり、とドレスアーマーが風で捲れ上がるのも構わず放たれたそれが狙うは、蒼の解き放った呪詛に嘆きと怨嗟の悲鳴を上げる少女の首。
 その首に蹴りを叩きつけて容赦なく地に伏せさせた所にその柄に赤い宝玉の嵌め込まれた獄炎の炎纏う銀刃による刺突で、その防御事、少女の|胎《・》を貫き、全身を地獄の炎で炙り、焼き尽くしていく。
「……くっ……!」
 その少女の絶望と怨嗟の表情を間近に見たフェルが思わず一瞬その表情を歪ませつつも、胸に兆した無意識の懸念と共に見たのは……。
「うああああああああっ!」
 ごちゃごちゃになった感情をどの様に発散させればいいのか分からぬ儘に、何時の間にかその瞳を金色に変えながら、己が拳を『少女』に叩きつけて粉砕していた雄哉。
 この場にいる『彼女』達を1人残らず|灼滅《ころ》さなくてはいけないことは分かっている。
 そして、それに姫桜の様に躊躇を抱く者がいることも分かっている。
 けれども、雄哉のその表情は、姫桜の『少女』達の想いに共感してしまい、武器を少女達に振るえなくなってしまったそれや、苦しみながらも覚悟を決めて戦っている敬輔達とは、何処か在り様が違っている様にフェルには思えた。
(「でも、それって……まさか……ね」)
 或いはそれは、彼から聞いた事のある|彼女《・・》の事とも関係があるのだろうか。
 そうフェルが逡巡するその間にも。
 真正面から少女達に対峙している雄哉の黒いオーラに触発されたか、少女達が本能のままに|胎《・》の子供達を守る様にその拳を叩きつけようとするのを見て。
「……いかんな」
 その状況に気が付いたレイが咄嗟に裁きの光条を解放。
 裁きの矢と化した光条のそれが、雄哉を取り囲んだ少女達を貫いたその瞬間を狙って。
 ――数十本の触れたモノの存在を消失させる刀身に刻み込まれた光剣が少女達の胎を容赦なく貫き、その存在を、サイキックエナジー事消失させた。
「有城、一旦後退するんだ」
 千尋の光剣によって消失した少女達の姿を見届けたレイが、更なる混戦に突入してしまう可能性を懸念して、そう雄哉に呼びかけるが。
「くっ……! おおおおおおおおっ!」
 周囲の脅威が、気が付けば排除されていた、という事実に気が付いていないのか、引き続き少女達に向けて拳を叩きつける雄哉。
「……まずいな」
 思わず、と言う様にそう小さく呟いたレイが自らの腰に巻いた冬青を展開。
 展開された帯が、雄哉に真正面からぶつかろうとしていたアンブレイカブル特有の闘争本能と自らの|胎《・》の子を守らんと欲する母性本能に振り回される様に咆哮を上げようとするのを締め上げてそれを相殺。
 そこに雄哉が3倍になった漆黒のオーラを纏った拳を叩きつける様に解き放ち、その少女の頭を粉々に粉砕する。
「……敵がアンブレイカブルである以上、ストリートファイターの有城が彼女達の闘争本能に刺激される可能性をきちんと頭に入れておくべきだったか」
 そのレイの呟きに。
「それなら、僕が行くよ。レイさん、|娘《姫桜》達の事を、頼む」
 そう応えたさくらえがサイの姿の儘にトラウメンヴァッフェを実体を持たないサイキックエナジーの光輪の如き影に変形させて投擲し。
 ヒュンヒュンヒュン……と空を切って舞う漆黒の影輪が、雄哉を狙った少女達を切り刻んだところに。
「そこだな」
 そう呟きながら、千尋が未だ自らの右腕の周りをクルクルと回転していた光剣を数十本解き放ち、さくらえの影輪に切り刻まれた少女達の|胎《・》を貫きその存在を消失させてから。
「しかしなぁ……」
 思わず、と言う様に、千尋は、軽く頭を横に振っていた。
「どうした、司」
 その千尋のぼやきを耳にしたレイが、幾度目かの裁きの光条を解き放つ。
 それは、前線を支えている紗里亜やフェル達の傷を癒すと同時に、少女達の体を的確に射抜き、着実にダメージを与えていた。
 その少女達の|胎《・》の命にクローネの召喚したソロモンの悪魔の雷光が突き立ち、確実に止めを刺す様子を見ながら、千尋がそっと息を吐く。
「こう言っちゃぁ、なんだが……。お前達が、『白色のサイキックエナジー』を俺と一緒で狙ってくれているのには助かっているぜ」
 ちらりと姫桜を肩越しに見やりながら微苦笑を零して呟く千尋のそれに。
「成程……何か、思う所があるのかな?」
 ソロモンの悪魔の雷光で少女達を貫かせながらも尚、自らのダークネス・ユサーパーの心揺さぶられる様な漆黒の波動の意味を解析しつつ問いかけるクローネのそれに、千尋がだってよ、と軽く肩を竦めた。
「ああいう手を使うと、卑怯だってキレる奴が稀にいるんだよ。敵の弱点を狙うってのは戦いじゃ常識だろ? 態々弱点を狙わない理由も無いのになんでキレられるのか、どうにもモノの俺にはよく分からないんだ」
 その千尋の応えを聞いて。
「……そう、ですね。……正直に、言えば、母になる、と言う、事は、司様と、同じく、モノ、である、ボクにも、よく、分からない、感情、では、あります……」
 そう蒼が微かに首肯しながら、姫桜が解き放った閃光に押される様に、宵に咲く茉莉花を一閃。
 振るわれた漆黒の呪詛が、時間と共に、彼女達の|胎《・》の中にいる、子供と思しき者達と、その白色のサイキックエナジーと感覚を汚染して良く呪いを帯びて、泣き叫ぶ様な声を張り上げている。
 泣いている……哭いている……?
 その少女達の、人によっては身も張り裂けてしまいそうな悲鳴を正面から受け止め、流す様にしながらクローネがまあ、と軽く頭を横に振った。
「蒼さんや千尋さんは|モノ《ヤドリガミ》と言う種だから、尚の事、『母親』がどういうものなのか、子を得た『母』達がどんな気持ちなのかを想像するのが難しいのかもしれないね」
 ――彼女達の本体の『作り手』がどの様な想いを籠めて千尋や蒼を作ったのかの起源を、クローネは知らない。
 でも……。
「逆に|死者《灼滅者/ダークネス》の魂を大量に取り込んだワタシにはあの子達の気持ちはある程度分かるんだよね」
 ソロモンの悪魔に雷光を叩き込ませながら、そう静かに息を吐くクローネのそれに。
「……マックローネ様……」
 蒼が静かに色彩異なる双眸をクローネへと向けて来るのに、でもね、とクローネが微苦笑を零した。
「だからこそ……|灼滅《ころ》してあげる必要があるんだ。|生殖付与技術《これ》を今の世に出させちゃ駄目だと|ワタシ《灼滅者/ダークネス》の記憶が確信と共に言っているのだから、尚更ね」
 そう、蒼の前で唇に微かに笑みを広げて。
 くるりと踵を返すと同時にネクロオーブに封じられた魔力を纏った|解体ナイフ《ダークネス・ユサーパー》から再びソロモンの悪魔の解き放つ雷光と重ね合わせる様に、漆黒のエネルギー弾を連射するクローネ。
 その弾丸とソロモンの悪魔の雷撃に撃ち抜かれて麻痺した『少女』達に敬輔が肉薄しつつその右の青の瞳を輝かせて捻りを加えながら袈裟に刃を振り下ろし、続けて風車の如く黒剣を回転させて、纏めて敵を薙ぎ払う。
 その赤黒く光り輝く刀身持つ黒剣の刀身に漆黒の生命力を纏わせて、サイキックエナジー……彼女達の生きる為の『希望』とでも言うべきそれを容赦なく喰らい、吸収させながら。
「……くっ……!」
 その目も眩まんばかりの眩い生命の光とでも言うべき白色のサイキックエナジーを喰らう度に、自らの心の中の何かが軋む様な音を無意識に立てるのに、敬輔は微かに呻いていた。
 ――でも……相手がオブリビオンであるのならば、絶対に、この技術を外に出させる訳にはいいかない。
 だから……。
「……この世から消し去ってやる……!」
 そう軋む様に唇を噛み締めながら連撃を叩きつける敬輔。
 そんな敬輔に白色のサイキックエナジーをその拳に纏わせながら高速の突きを本能の儘に叩き込もうとする少女達に向けて。
「させませんよ」
 ウィリアムが156の氷の鎖の環で編み上げられた氷の鎖を解き放ち、敬輔を襲わんとした少女の腕を締め上げて、そこから見る見る内に少女をその白色のサイキックエナジー事、凍てつかせていく。
 そのまま氷の棺に閉じ込められて、眠る様に動きを止めた少女に敬輔の横薙ぎの一閃が放たれ、その|胎《・》に宿る命事、彼女の存在を断ち。
「おおおおおおおおっ!」
 更に目前の少女達の姿に理性を失いかけている雄哉に咆哮を叩きつけようとする少女の前に。
「やらせないよ」
 さくらえが素早くその周囲に玻璃色の結界を張り巡らせ、心臓を破裂させる咆哮から彼の身を守りつつ。
 トラウメンヴァッフェを自らの赤く血塗られた両腕に漆黒のオーラの如く纏わせて振るっていた。
 悪夢――|影《シャドウ》の力を得たサイの両拳で振るわれたその双撃が、蒼の解き放った呪詛に絡めとられて悲鳴を上げていた少女達の胎――白色のサイキックエナジーの源を打ち据え、呪詛と麻痺に蝕まれた彼女達を絶望の淵へと落とし込んでいく。
「……!」
 その|父《さくらえ》の様子を凝視して、思わず声を張り上げようとする姫桜だったが。
「此処で、さくらえを止める意味はないぜ、彩瑠。……ヒトの事は、俺にはよく分からないが」
 そう姫桜を一瞥した千尋が呟きと同時に、自らの右手の周囲を浮遊している幾何学文様の描き出された光剣を再び発射。
 発射されたそれがさくらえの拳によってその|胎《・》を殴られ、嗚咽していた少女の体を貫いたその瞬間に肉薄した葵桜が胡蝶楽刀を大地に擦過させて発生させた衝撃の波を叩きつけて止めを刺すのを横目に捉えながら。
「……そうですね。正直な所、気持ち的にはこんな状態の彼女達を灼滅する事に対する心痛はありますが……ですが、『母性』と言う名の本能のままに全てを賭す覚悟を持つ彼女達の弱点を狙わないのは……それは、ある意味では、私達の驕りにしか過ぎないのかもしれません」
 そう千尋の言葉を耳にした紗里亜が静かに頭を横に振りながらも誰に共なく小さく呟き、千尋が光剣で貫き消滅させた少女の反対側から姿を現した少女の鳩尾に掌底を叩きつけ……。
「はっ!」
 叫びと共にサイキックエナジーで練られた勁を発して、その少女を吹き飛ばした。
 そんな紗里亜の囁く様な、何かを確認するかの様な呟きに。
「……そうだな。命を賭す覚悟無くしては、得ることが出来ないものと言うのは確かにある」
 そうレイが何かを思い出したかの様に小さく首肯しながら、片喰を蔓の如き形状に変形させて撓らせて少女達を打ち据え、さくらえや雄哉を援護。
 更に敬輔の隣に滑り込む様に蝶の様に舞いながら肉薄した葵桜がリンリン、と魔除けの鈴を鳴らしながら胡蝶楽刀を一閃し、彼女達のサイキックエナジーの源たる|胎《・》を切り裂き、田中さんがそれに追随して槍を振るい、そこに纏われた炎で少女達を纏めて焼き払う。
 自分達の急所……もっとも守るべき弱点を狙われ、それを守る様に身を捻らせた所を田中さんの炎に焼き払われ、のたうち回る少女達の様子を見た姫桜がその両手を強く、強く握りしめた。
 ――私には、あんな風に戦う事は、出来ない。
 だから、今できる精一杯――後方からの援護で皆の足手纏いにならない様に立ち回る……それしかないのだ。
 そう笑う膝をなんとか立たせながらも、その青き量の瞳から涙をこぼす姫桜の震える姿を、気遣う様にちらりと見やりながら、臨音が腰を深く落として大太刀を翻すと。
 円形の輪の様に水と浄化属性纏った己が本体から解き放たれた剣閃が、自らの目前に迫っていた蒼の解き放った呪詛にその身を蝕まれていた少女の上半身と下半身を泣き別れにするのを見届けて。
「……待ってろ、今、楽にしてやる」
 そう小さく呟く様に誓う様に囁いた臨音が、静かな覚悟と共に詠唱を開始。
「……紅玉の輝きが変じし……」
 ――その、少女達の虐げられた尊厳を、その心に刻み込まれた苦しい想いを。
 せめて浄化して安らかに眠れる様に……。
 そんな臨音の声なき静かな詠唱を中断させるべく、少女達がその爪を突き立てんと臨音に迫るが。
「……まっ、お前はそう言う奴だよな……火神」
 やれやれと言う様に嘆息した千尋が臨音の周囲に鳥威を展開、続けて雄哉を守る様に位置取りを取っていたさくらえが玻璃色の結界の範囲を拡大し、臨音の身を守るその間に。
「不変不滅の炎の舞よ……彼女達の心を祓い、清めたまえ」
 そんな、静かな祈りを籠めて。
 臨音が解き放ったのは、145の悪意を灼き、悲しみを祓い清める紅玉の欠片型の炎。
 それはウィリアムの氷の棺を縛り上げる鎖や、クローネの召喚したソロモンの悪魔から放たれた雷光によって動きを止めていた残存のその|胎《・》に白色のサイキックエナジーを身籠った少女達を、そのサイキックエナジーごと、浄化せんと灼き祓い。
「……せめて、貴女達が、安らかに、眠れ、ます様に――」
 そう小さく祈る様に囁いた蒼が、臨音の悪意を灼き、悲しみを祓い清める紅玉型の焔に合わせる様に、宵に咲く茉莉花から、彼岸の如き、赤と青の幽世蝶を解き放った。
 その蒼の、赤と青の幽世蝶の鱗粉に籠められた黄泉――彼岸への路へと誘う呪詛に飲み込まれ永遠の眠りに落ちて行こうとする少女達を。
「まっ……こいつで終いだな」
 そう告げた千尋が解き放った存在自体を消失させる幾何学文様の光剣がその|胎《・》に宿る|白色のサイキックエナジー《いのち》ごと貫き、少女達を一人残らず灼滅した。


「……一先ず、肉体的には激しい消耗は無く、倒すことは出来たって考えていいのかな?」
 ――バサリ、バサリ、と。
 竜翼を羽ばたかせてゆっくりと大地に降り立ち、静かに頭を横に振りながら、碧いドレスアーマー姿から、武蔵坂学園高校制服姿に戻ったフェルの問いかけに。
「そうだな、オオヤマ。彼女達の撃破は無事に完了した、とみていいだろう」
 そう冷静にレイが何処か雄哉達を安心させる様な冷静な声音で言葉を紡ぐのを耳にして、雄哉が思わずはっ、と我に返る。
「……僕は……くっ!」
|あの時《・・・》の記憶のフラッシュバックに掴まれて一時的に喪失していた理性と共に金色の瞳を青色に戻しながら、無意識に心臓の代わりに等しい霊子強化ガラスのある部分をそっと抑える雄哉。
(「全部倒さなければいけなかったことに変わりは無かったのだけれど……」)
 嘗ての|記憶《トラウマ》とよく似たこの様な形の敵との対峙を、まざまざと見せつけられることになる――なんて。
 葵桜と同様、そんな嫌な予感はし、十分覚悟していた筈にも関わらず、瘡蓋に覆われていた傷口を抉られた様な感覚と共に、己が闘争衝動に一時的に身を委ねてしまった雄哉の悔恨をさくらえが横目で確認しつつ。
「……|彼女《・・》の事だね」
 そうそっと確認する様に呟いたさくらえのそれに、雄哉が淡々と首肯した。
「……あの事件、ですか……」
 そのさくらえと雄哉のやり取りに、思い当たる節があったのであろう。
 紗里亜がその脳裏に自らの親友の事を思い浮かべながら静かに息を吐くのを見て、フェルが微かにはっ、とした表情になり。
「……やはり|彼女《・・》の事が、未だ、拭い難い瑕疵として残っている|仲間《灼滅者》達……か」
 ダークネス・ユサーパーの漆黒の輝きに思い当たる節があったのであろう。
 恐らくその時に雄哉や紗里亜の親友が見る事になったのであろう光景がクローネの脳裏に過り、そっと自らの手の漆黒の解体ナイフを握りしめた。
 そんなクローネ達の様子を何とはなしに捉えていた蒼は、何時の間にかその色彩異なる双眸をそっと瞑り、自らの胸に自らの手を当てていた。
 ――ボクは……モノです。
 だから、『母』になるという事が如何言う事なのか、正直、未だ尚、よく分からない。
 けれども……どうしてだろう。
 ああして、灼滅した筈の彼女達の姿に、深い哀切の念を抱いてしまうのは。
 それとも――此は。
(「……此の世界の、記憶に、引っ張られ、過ぎている、気が、します、ね……」)
 ――それは|この世界《サイキックハーツ》の|同位体《灼滅者》の記憶。
 でも、その|ボク《・・》の持つ|此れ《記憶》は――。
「……|ボクのもの《・・・・・》、であって、|ボク《モノ》の、記憶、では、ないのに……」
 その蒼の誰に共なく囁く様に紡がれた言の葉に。
「……蒼さん。如何しましたか?」
 その蒼の様子に気が付いた紗里亜が優しく問いかけてくる声に気が付いた蒼はいえ、と小さく頭を横に振り、閉ざしていた双眸をそっと開き。
「……ボクは、此の世界の、|同位体《ボク》や、さくらえ様の、様に、|腕を異形化《鬼神変》させたり、|神秘の歌声《ディーヴァズ・メロディ》を、奏でる、事も、ありませんし、出来ません……」
 ――それでも。
「……彼女達が、最期は、安らかに、眠れる様に、と……。……まるで、彼女達の、事を、初めから、知っていた、かの様に、願わずには、いられない、のです……」
 そう祈る様に、囁きかけた蒼のそれを聞いて。
「そうだね。ワタシも時々、ワタシが何者なのか分からなくなることがあるよ」
 そう静かに蒼の肩を叩く様にしながらそう告げたのは、ダークネス・ユサーパーを自らの内に戻したクローネ。
「多分、沢山の死者達の想いを背負って来たからだろうね。だから、ワタシはワタシが誰なのか、どうしてそうなのか……そういう記憶を全部一度失った事すらある。まあ……|二つの世界《サイキックハーツとケルベロスディバイド》が見つかってから、漸く其々からの記憶が統合されるて1つの『形』にすることが出来たから、今、|ワタシ《・・・》は此処にいるけれども」
 ――ただ、その経験が、あるからこそ。
「蒼さんのその迷いは、決して不思議な事じゃないとワタシは思うよ」
 そうクローネが蒼に言葉を紡ぐのを耳にしながら。
「……こうして迎撃に彼女達が駆り出されたという事は、彼女達は恐らく失敗作だったのでしょうかね」
 そう何気なく話を逸らす様に告げるウィリアムのそれに、レイが雄哉にちらりと視線を送りつつ、如何だろうな、と静かに頭を横に振った。
「理性を持たぬ獣と化してしまった段階で、成功とはいえないものだろうな、とは私も思っているが……そもそも生殖型ゾンビについては未だしも、生殖に成功して殖えたダークネスの例は1つしかない。となると恐らくこの少女達が|胎《・》の中に取り込んでいたサイキックエナジーは……」
「……セイメイの生殖型ゾンビの研究の方が近い……か」
 その口調に憎悪を滲ませながらの雄哉の問いに、レイが静かに嘆息しつつ、そうだな、とそっと首肯する。
「或いは……俺達が|異世界《サムライエンパイア》で見た事のある、『偽神降臨の邪法』の方か……」
 そう敬輔が表情を引き締めながら呟くそれに、ビクリ、と肩を震わせる姫桜。
 その姫桜の様子をちらりとさくらえが見やりながら、いずれにせよと言の葉を紡ぐ。
「進まなければ、分からない事もある。……そう言う事だね」
 そのさくらえの結論に。
「そうですね。……彼女達をあの様な目に合わせた|首謀者《ホワイト・ビヘイビア》を必ず倒しましょう」
 そう確かな誓いと決意と共に同意した紗里亜の言葉を聞きながら、臨音が自らの本体を納める鞘に付いた血をそっとなぞり。
「……てめぇの企みは此処で終わりだ。きっちり落とし前付けて貰うぜ」
 ――元老、ホワイト・ビヘイビア。
 その臨音の誓いの籠められた静かな宣戦布告を聞きながら。
 猟兵達は更なる奥へとその足を進めていったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ホワイト・ビヘイビア』

POW   :    白き死よ来たれ
攻撃が命中した対象に【白色のサイキックエナジー】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【濃縮サイキックエナジー】による追加攻撃を与え続ける。
SPD   :    マスター・オブ・サイキックエナジー
全身を【超濃度サイキックエナジー】装甲で覆い、身長・武器サイズ・攻撃力・防御力3倍の【偉大なる元老】に変身する。腕や脚の増加も可能。
WIZ   :    白業陣
レベル÷10体の【歴代ホワイト・ビヘイビア】を召喚する。次に使用するユーベルコードを半分の威力と命中率で模倣して消える。

イラスト:まさゆみ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ――その施設の更に奥に向かった所で。
「……皮肉な話ですよね」
 ……ポツリ、と。
 現れた猟兵達の姿を見た、ホワイト・ビヘイビアが静かに嘆息を一つ漏らす。
「先代の遺した|罪《・》を……生殖型ゾンビの研究を、この様な形で私が引き継がなければ、|旧・人類管理者《ダークネス》達にこれ以上の未来は無い、という事実は……」
 ――嘆息とも、諦念ともとれる嘆息と、共に。
 そう告げるホワイト・ビヘイビアの様子に、猟兵達はそれぞれの表情を浮かべていた。
「……まあ、|彼女達《・・・》が喪われてしまった以上、これ以上の成果を得ることは出来ないでしょう。ならば……せめて」
 ――旧・人類管理者として、あなた方を打ち倒す位の気概を見せねばなりませんね。
「それが……未来を求めた私が背負うべき|業《カルマ》なのですから」
 そこまで告げたところで。
 1つ静かに息を吐き、ホワイト・ビヘイビアが1つだけ、お伺いさせて頂きます、と呟く。
「|人類《エスパー》達の管理者として、今、此の世界に存在しているあなた達は……この先に、何を求めるのですか? その|管理者《・・・》となる覚悟の先にあるものが何であるのかを理解した上で、あなた達は|未来《・・》を求めているのですか?」
 ――その先に、どの様な『絶望』が待ち受けているのか……。
「それを承知の上で、あなた方は、私に挑んでいるのでしょうか?」
 ――その、|あなた《・・・》達の覚悟の程を。
「……試させて頂きますよ、猟兵達」
 その、ホワイト・ビヘイビアの何処か悲し気な言の葉と共に。
 ――猟兵達は其々の表情を浮かべて、ホワイト・ビヘイビアと対峙するのだった。

 *********************
 第3章に関しては、下記ルールを適用致します。
 1.猟兵達が先制を取る事は出来ません。
 2.ホワイト・ビヘイビアの問いかけに対して、ある程度の答えを出す事は、プレイングボーナスになり得る可能性がございます。
 3.このシナリオのホワイト・ビヘイビアは、無効・吸収・反射等の『これさえ使えば絶対勝てる』系のUCや装備アイテムを無効化します。
 逆に言えば、真正面からきちんと正対する事が、今回のシナリオではより良い結果を生み出す可能性が高いです。
 4.ホワイト・ビヘイビアの後ろには、今回の事件の発端となった装置がございますが、是はホワイト・ビヘイビア撃破後に破壊する事が可能となります。今回の事件の発端となった装置を人質にとる……と言う様なプレイングは意味がありません。
 ――それでは、最善の結末を。
フェル・オオヤマ
・心境及び問答
灼滅者が掴み取った|明日《未来》を少しでも明るく照らせれるようにしたいから私は戦う
この世界の未来の事はこの世界に生きる人が決める事である

だけどね…人として生きる上での喜びそして生命を侮辱するような研究
人を家畜と扱うが如き傲慢さ
お前のその反吐が出る所業は私の逆鱗に触れたッ!

あの槍だけじゃなくお前の研究や所業もまた誰かに悲しみや消えない罪を押し付け背負わせる物だ
そんな物はこの世界の|明日《未来》を生きる人にとって不要!よって私達がお前を灼滅する!

・戦闘
オーバーロード発動!
誰一人欠けず全員で帰還するよ!

[紅炎の剣]とビームシールドを装備
[我竜戦術・紅炎の剣]を発動します
歴代ホワイト・ビヘイビアの集団には灼焔弾と櫻火伐刀
本体相手には焔竜斬と紅焔突き
と使い分けながら戦います

敵の攻撃には基本的には回避優先
味方が狙われた時や回避が難しい場合は庇ったりします

【焼却/2回攻撃/追撃/急所突き/闘争心/連携攻撃/かばう/盾受け/受け流し/激痛耐性/カウンター】

他キャラとの連携・アドリブ歓迎


火神・臨音
ふつふつ湧き上がる怒りの念
されど表には出さず冷静に彼女からの問いに答える

主はいつか灼滅者は居なくなり、エスパーとダークネス達だけの世界になる事は分かっていた
何時か自分達が居なくなったら、それから先は皆が人々を守り共に生きて欲しい
そう社で保護され、共存の道を望んだ奴らへと優しく呼びかけ未来を託した

頬伝う涙が指輪に落ち、歩みを始めると同時に静かに真の姿を取り

亡き主に代わって、俺がここで覚悟を示す!

破邪と火属性を付与した符の投擲、同属性を纏わせた大太刀での斬撃メインに攻撃
翼飛行で距離とって剣風による
衝撃波も絡め立ち回る
攻撃はオーラ防御と激痛耐性で耐える

UC詠唱は怒りを込めつつも静かに
顕現させた大太刀を空いた手で握って二刀流にシフト
最後の一撃は同じ太刀筋で上段から叩きつける様に斬撃を

状況終了後、装置破壊完了を終え現場を去る前に手向けるのは紫の竜胆の花束
鞘の返り血を撫ててから手を合わせ思い出す花言葉
【あなたの悲しみに寄り添う】
「たすけて」と泣いていた彼女達が穏やかに眠れる様に


アドリブ、連携歓迎


館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

ホワイト・ビヘイビア
貴様は俺たちが|人類《エスパー》達の管理者、と言ったな
オブリビオン…いや、あえてここはダークネスと呼ぼう
ダークネスたる貴様の認識はそうかもしれないが
少なくとも、異世界の民である俺にはその意識は全くない

|人類《エスパー》達が未来を求める限り
そして過去に囚われるダークネスがいる限り
俺はこの剣をとり戦い続ける
これが|故郷《ダークセイヴァー》で吸血鬼に虐げられてきている俺の答えであり…覚悟だ

ところで、2章で倒した少女たちの魂は黒剣に入っているだろうか?
入っていたら、(演出で)彼女たちの魂を纏い、意を読み取ってみたい
…何が起こるかは未知数だけどな

漆黒の「オーラ防御」を纏いつつ、小細工なしで真正面から接近し
「2回攻撃、怪力」+指定UCの18連撃(味方斬りなし)で徹底的に切り刻む
偉大なる元老に変身した場合は
身を屈めながら死角に回り込み、足や腕を斬り落とす勢いで切りつけよう
斬り落とせなくても装甲が削れればそれでいい
装甲が消滅したら、全員で連携して総攻撃だ!


司・千尋
連携、アドリブ可

この世界は全員罪とか業とか言うんだな…流行ってるのか?

生きてるなら未来を求めるのは当然だし、ヒトもオブリビオンも変わらないんだな


攻撃は基本的に『翠色冷光』を使用
回避されても弾道をある程度操作し追尾させる
近接や投擲等の武器も使い
早業、範囲攻撃、2回攻撃など手数で補う


敵の攻撃は可能なら回避か迎撃する
難しければ防御

防御は細かく分割した鳥威を複数展開し防ぐ
割れてもすぐ次を展開
オーラ防御も鳥威に重ねて使用し耐久力を強化
回避や迎撃する時間を稼ぐ
間に合わない時は双睛を使用


管理ねぇ…
モノじゃないんだから管理しなくてもどうにかなるんじゃねぇの?
どんな未来でも自分で選べるんだから羨ましい話だけどな


レイ・アステネス
アドリブ、連携可

まるで君が管理者なら『絶望』を回避できるような言い方だな

折角だからこの先に何があるのか教えてもらおうか
予測が出来れば対応も可能だろう
何が起きても諦める事はない


攻撃は指定UCと装備武器を使う
連携や仲間の攻撃等の隙を消すように意識して行動
必要なら声かけ等も行う


攻撃しても敵にダメージを与えられない場合は行動阻害を狙う
敵を観察して行動を予測し邪魔をするように動く
枳棘の光で精神攻撃も試そう
難しい場合は回復や防御に専念


防御は冬青に任せるが
自分で対処出来そうな場合は回避や片喰で受け流す
回避が無理なら防御する


戦闘後は破壊する前に装置を調べたいが…
引き継いだ研究はどこまで進んでいたのだろうか


クローネ・マックローネ
NGなし、絡みOK、アドリブ歓迎
【WIZ判定】
真剣口調で話すよ

今度はその兜ごと消えてもらうよ、|歴代最速で灼滅された元老《ホワイト・ビヘイビア》

管理者とは、支配者の言い換えと言ってもいい
つまり|人類《エスパー》の管理者とは、人類の支配者…嘗てのダークネス達そのもの
いずれ|灼滅者《スレイヤー》達が|新たなる支配者に《そう》成り果てるという可能性は、全く否定できないね
勿論、承知しているよ
…でも、そうならない可能性だって、確かに存在する筈だよ
どんな絶望だって、皆で乗り越えてきたんだから
「己の闇を恐れよ。されど恐れるな、その力」
この言葉を胸に…|灼滅者《ワタシ達》はこれからも|歩み続ける《生きる》んだ!

UCは『ワタシの屍王ちゃん』
攻撃しながら【体表の外骨格化と肉体の水晶化】によって味方を強化するよ
ワタシ自身の攻撃はネクロオーブから放つ【エネルギー弾】と【怪力/功夫/硬化】による体術で行うね
味方との【連携攻撃】や【援護射撃】を意識して動くよ
敵の攻撃は【第六感/見切り/身かわし/空中機動】で避けるね


神宮時・蒼
…嗚呼、懐かしさ、すら、感じ、ますね。
…貴方は、胎蔵界戦争の、ホワイト・ビヘイビア、其の人、なのでしょうか
…いえ、今のボクには、関係、ありません、でした、ね

【WIZ】
記憶に刻まれているとはいえ、相手は強力な事に変わりありません
【魔力溜め】【限界突破】で【結界術】を強化し、備えましょう
【見切り】や【受け流し】、【第六感】さえも駆使して攻撃は貰わぬように
歴代のビヘイビアは【範囲攻撃】【全力魔法】で一掃します
……数が、多いのは、厄介、です、ので……

本体には【魔力溜め】と【多重詠唱】で【冬花庇護ノ舞】を【弾幕】を放ちます

……業。あの時も、そう言って、いましたね
…此の世界の、ボクは、業を、背負うと、言いました。
…悪逆非道を、管理する、業を。
…ボクには、同じ、事は、出来ません。ボクは、モノ、ですから。
…けれど、此の身も、一度は、絶望を、乗り越えた、身。
―僕たちが、摘み取った、未来の、責任は、ヒトの、未来を、護る、という、形で、負いましょう


彩瑠・姫桜
【二桜】
臨機応変・仲間との連携意識

回復>防御

基本はUCで回復支援、"桜縁"[武器受け、自動防御]で防御
気になる点あれば声掛け


(この世界のことは資料と父親の話を介してしかわからないけれど
「管理」なんて考え方をするから
あの少女達みたいな存在ができてしまったんじゃないの?という言葉は飲み込む)

…猟兵であろうとなかろうと人は人
管理したりされたりするなんて発想がそもそもおかしいと思うのだけど

人だから目の前のことばかりで、
先々まで物事を考えられなくて…ということは
確かにあるのでしょうし
貴女の憂う「絶望」に見舞われることもあるとは思うわ

でもそれも全部ひっくるめて受け止める
(さきほどの少女達を倒すような戦い方をすることはできない
けれど、そんな自分の弱さから直面する絶望があるとするなら、それも含めて)
私は強くはないけれどその覚悟はあるわ

人だって、言うほどそんなに弱くはない
「管理」なんかじゃなく対等の立場で互いに信じて
力を合わせて未来に向き合っていくの

(私だってそんな力を皆や親から与えてもらったのだから)


榎木・葵桜
【二桜】
真の姿解放(姿変わらず)
臨機応変・仲間との連携意識

UCで田中さん召喚+攻撃特化

白業陣で召喚された歴代ホワイト・ビヘイビアの数を減らすことを優先に動く
余力がありそうなら敵本体の体力を削っていくね

"胡蝶楽刀"使用
田中さんの炎に[なぎ払い]と[衝撃波]と[範囲攻撃]併用
敵からの攻撃は[第六感、見切り]で回避試みる


「管理者」ね
過去、貴女は過去文字通りの「管理者」だったんだっけ?

私、こっちのお母さん(f44147)に
サイハ世界のこと聞かないようにしてたんだけど結構色々あるっぽいね

貴女の言葉借りれば
貴女達を倒す力ある私達は事実上「管理者」にはなるんだろうけど
でもなんか「管理」って傲慢で嫌な感じ

ともあれ、色々ひっくるめて言うなら
未来を憂う必要はないって、私は思うよ
絶望はあるかもだけど、そればっかりじゃないもん

変化に混乱はつきものだし、この先も色々あるとは思うよ
でも|灼滅者の皆さん《こっちの人達》も|私達《猟兵》も考えてる
ルールの見直し含めて、常に皆で向き合い続けて先に進んでいけばいいんだから


彩瑠・さくらえ
必要な場合のみ真の姿(闇堕ち姿)解放
仲間との連携と臨機応変対応意識


前衛
防御>攻撃

防御:UC+[見切り、かばう、武器受け、オーラ防御、受け流し]併用

攻撃:遠近で使い分け
近→"叶鏡"
遠→"涅槃"


かつて人類から死ぬ権利を奪い
今なお人類に死の権利を与えようとする君達を倒す
それを「人類の生死を管理する」というなら
確かに僕ら|灼滅者《猟兵》は「人類達の管理者」なんだろう

とはいえ
君の言い方は、まるでこの世界の未来には絶望しかないように聞こえる
生きていくことが絶望に満ちていると決めつけているけれど
そんなことはないよ

これまでも絶望は確かにあった
これからの未来だって何かしらはあるんだろう

けれど
決して、絶望だけじゃないんだ
世界は同じくらいたくさんの希望と幸福に満ちているんだ

覚悟はある
誰に責められようとも
全て背負うって決めているからね

この世界に僕と妻のところに来てくれた子供達に
絶望の未来を歩ませるつもりなんて毛頭ない

待ち受ける絶望を跳ね除ける力を
希望を、幸せを掴み取れる力を
胸を張って生きていける力を与えていくよ


椎那・紗里亜
「覚悟、ですか」
静かに瞑目。
全人類がエスパー化し、肉体的に人々は無敵になりました。
世界は平和になりましたが、ただ胡坐をかいていたのではやがて失われるのが世の定め。常に自らを省み続けなければなりません。
人類の管理者を奢るつもりはありませんが、私たち灼滅者が持つ力や責任を軽視するつもりもありません。いずれ灼滅者がいなくなった時、エスパーが自ら世界を護るための道標を作ることが今の私たちの役目。

「ESP法前文。全人類がエスパーとなるに至ったこの新たな歴史に際し、われらは恒久の平和を念願し、その維持のために、全人類一人一人が獲得し得たESP能力を活かし、協調し、たゆまない努力を続けることを誓う」
続けて条文を読み上げます。一語一句、全てそらで覚えています。

ESP法はエスパーとなった人類を縛るものではなく、平和な世界を保ち続けるための道標。一生をかけ、法を通して世界と向き合う覚悟です。

八卦光翼を展開。ホワイトビヘイビアの攻撃を光の翼で打ち払います。
素早く距離を詰め、八卦方棍の渾身の一撃を突き込みます。


有城・雄哉
【POW】
アドリブ連携大歓迎

…貴様が|復活ダークネス《オブリビオン》として蘇り
|先代《白の王セイメイ》の研究を継がなければ
俺たちに見つかることもなかったかもな
ヒトの命を弄び、弄り、尊厳すら穢すような研究さえしなければ…!

俺は|人類《エスパー》達の管理者であるつもりはない
むしろ、最初から「世界は|人類《エスパー》達に委ねるべき」との考えだ
…将来、灼滅者そのものがこの世からいなくなる可能性は大いにある
だから、今のうちから少しずつ|人類《エスパー》達に権限を委譲していくべきだ

俺も人造灼滅者、肉体はダークネス
未来はないのは百も承知
だからこそ、ダークネスとして貴様を討つ!

指定UC発動
濃密な漆黒のオーラを纏い嘲笑を浮かべたダークネス形態に変身
白色のサイキックエナジー対策に漆黒の「オーラ防御」を重ね
「グラップル」で全てを粉砕するつもりで真正面から殴る
攻撃は挙動を全て「見切り」回避

戦闘終了後、装置はもちろん破壊
演出で【閃光百烈拳】発動し、至近距離から拳で徹底的に殴り続ける
…こんな研究、二度とさせるか!




 ――そのホワイト・ビヘイビアの姿を見て。
「……嗚呼、懐かしさ、すら、感じ、ますね」
 その放たれている気配に赤と琥珀色の色彩異なる双眸を思わず眇めて、そう、ポツリと呟くのは、神宮時・蒼。
 ――それは、記憶。
 この世界の|同位体《ボク》から流れ込んでくる記憶。
 その蒼の様子を見て、ホワイト・ビヘイビアは、成程、と言う様に静かにその兜の奥にあるのであろう、瞳を光らせる。
「……やはり、あなた達猟兵の中には、嘗て私が戦った|灼滅者《・・・》達も混ざっている様ですね。……あの時と姿は違う様ですが」
「ああ、その通りだよ、|歴代最速で灼滅された元老《ホワイト・ビヘイビア》」
 その深紅の瞳を細めて、唇にそう言葉を乗せたのは、クローネ・マックローネ。
「今度は、|その兜《・・・》ごと消えて貰う為に、ワタシ達は此処に来た。|あれ《・・》は数多の情報を|ワタシ《灼滅者》達に齎してくれたけれども、闇堕ちを誘発する危険な代物だ」
『……そうですか。ですがそれも含めて、あなた方は覚悟と共に、私を灼滅したのではありませんか? 私達を灼滅するという事は、其の後を継ぎ、あなた達|灼滅者《・・・》が次代の人類管理者となる事と同義です。その覚悟も無く私を灼滅したのであれば、それは全てを背負う覚悟が足りなかったと……そう言うしかないでしょう。なれば私は、あなた達に問わなければなりません』
 |人類《エスパー》達の管理者として、今、この世界に存在しているあなた達は……この先に、何を求めるのですか? その|管理者《・・・》となる覚悟の先にあるものが何であるのかを理解した上で、あなた達は|未来《・・》を求めているのですか? と。
 そのホワイト・ビヘイビアの問いかけを聞きながら。
(「……この世界の事は、資料と|さくらえ《パパ》の話を介してしか分からないけれど、『管理』なんて考え方をするから、あの少女みたいな存在が出来てしまったんじゃないの?」)
 内心でそう彩瑠・姫桜が呟きつつ、そっと自らの右腕に嵌め込まれた玻璃鏡の嵌め込まれた銀の腕輪――桜鏡をそっと掴む。
 その鏡面が、姫桜のその辛うじて口に出す事を堪えた心理を映し出すかの様に、漣の様に揺れているのを目撃されずに済んだのは幸いであろうか。
 そう内心で姫桜が思考を巡らすその間に。
「覚悟、ですか」
 彼女の言葉の意味を、この場にいる誰よりも恐らく一番理解しているのであろう。
 |法学者《・・・》として、この世界を守護する道を選んだ椎那・紗里亜が、静かにホワイト・ビヘイビアの言葉を反芻し、静かに瞑目する。
 その紗里亜の様子を横目にしながら。
「確か、貴女達元老は、文字通りの『管理者』だったんだっけ?」
 そう藍色の瞳を、おや、と言う様に瞬かせつつ確認を口にしたのは、榎木・葵桜だ。
 その葵桜の確認を聞いて、姫桜の父親である、|この世界《・・・・》の彩瑠・さくらえも、その赤い瞳に微かに険しい光を宿した様子を見て。
(「……私、こっちの|お母さん《・・・・・》に、|この世界《・・・・》の事、何も聞かない様にしていたんだけれど……灼滅者達にも、どうにも色々あるみたいだね……」)
 そう内心で葵桜が結論付け、さて、どうするか、と続く言葉を探すその間に。
「まるで君が管理者ならば、『絶望』を回避できる様な言い方だな、ホワイト・ビヘイビア」
 そう微苦笑と共に確認の問いを投げかけたのは、レイ・アステネス。
 そのレイの問いに、ホワイト・ビヘイビアが静かに首肯する。
「少なくとも私達は嘗て、人類に文明を与え、人類に豊かな世界を供給し、その上でサイキックエナジーの量を調整する事で、一定のダークネスと人類の間の秩序を保ち続けておりました。この事は、あなた方もよくご存知の筈です。各国政府上層部や、巨大な権力を持っていた権力者達と、私達は折り合いをつけ、この世界に1つの秩序を保ち続けていたと言う事も」
 そのホワイト・ビヘイビアの回を聞いて。
「……確かに、そうだったな。あの時は上層部の方が俺達に信を置いているという事が判明していた」
 ――何故ならば。
「……貴様達オブリ……いや、|ダークネス《・・・・・》がそう言った秩序を作っていたからだ。その結果として、俺達灼滅者もその恩恵に与れる程にね」
 嘗て、フィレンツェでのグローバルジャスティスとの戦いの折、驚く程スムーズに輸送機等を政府関係者が手配してくれた時の事を思い出した有城・雄哉が、そう思わず嘆息を零しながら告げるのに、その通りです、と静かにホワイト・ビヘイビアが首肯する。
『そう言った、嘗て人類管理者と呼ばれた私達が作り出し、管理していた世界の次代を担うものとして、あなた達は私達を灼滅する選択をした。即ちそれは、今を生きる|全人類《エスパー》達をあなた達の管理下に置くと言う『罪』を、その生命の全てに対する『業』を背負う覚悟があったからだと……そう、判断していたのですが』
 そのホワイト・ビヘイビアの意外そうな糾弾に。
「……この世界の奴等って、全員罪とか、業とか言うんだな。……流行っているのか?」
 そう怪訝そうに目を瞬いた司・千尋がそう軽い調子で肩を竦める。
 そんな千尋の問いかけには、思わずさくらえが苦笑を零していた。
「そう言う人達ばかりじゃないけれど、少なくとも僕達は嘗て、人類から死ぬ権利を奪っている」
 そのさくらえの苦笑伴う言葉を聞いて。
「……そうなのか?」
 そう怪訝そうに眉根を寄せる千尋のそれに、うん、とさくらえが静かに首肯した。
「あの時はそれが最善だと多くの人達が判断した。でも、そうやって人が自由に死ぬ権利を奪ったと言う事実は……」
「……僕達にとっては、決して拭えぬ罪だ」
 さくらえの話を後押しするかの様に。
 雄哉がその黒の瞳に光を滾らせながら告げるのに、千尋が心底不思議そうな表情を浮かべていた。
「でも、そいつらはヒトとして生きてるんだろ? モノの俺から見たら、生きたいって言うのがヒトなのであれば、その権利を保証したって事だから、そこまで背負う必要が無いんじゃないかって気がするんだが」
「だが、生きることを望んでいない人達から、俺達が、望むも、望まざるも関わらず、その生きる権利を奪った過去は決して変わらない」
 ――例え、それが最善であったとしても。
 それまでは、人々には、死ぬ事、生きる事、どちらか好きな方を選ぶ自由があり、権利があった。
 だが……エスパー化された人類は、『|サイキック《ユーベルコード》』か寿命でしか死ぬことが出来なくなったのだ。
 ――そして、そうなる可能性を。
「俺達は、一般人達の意見を聞く事も無く選択し、そして今のこの世界の人類……エスパーを生み出した。そう言う意味では、俺達|灼滅者《・・・》全てが、『罪人』だとも言えるんだ、司さん」
 そうそっと嘆息しつつ説明をする雄哉のそれに、ふむ、と軽く鼻を鳴らす千尋。
 ――と、そこで。
「ホワイト・ビヘイビア」
 以前、『死にたがり』のエスパー達の事件とぶつかり、その時の決して雄哉達が引けぬ理由を思い返していた館野・敬輔が、やや割って入る様に言葉を紡ぐ。
 その敬輔の口調に纏われている気配に気が付き、成程、と千尋が静かに首肯した。
(「……俺にはヒトの事はよく分からないが……その件に関しては、これ以上話を聞いても平行線になりそうって事か」)
 そう内心で嘆息する千尋にアイコンタクトで肯定を返しつつ、敬輔が続けた。
「貴様は|俺《猟兵》達が、|人類《エスパー》達の管理者と言ったな。オブリビオン……いや、敢えて此処は雄哉さんと同様、|ダークネス《・・・・・》と呼ぼうか」
 その敬輔の確認に。
『その通りですよ、|猟兵《イェーガー》達。力ある者達が力弱き者達を管理し、正しい世界の在り方を作る……それこそが、|人類管理者《・・・・・》たる私達を灼滅したあなた方|力ある者《・・・・》が背負わなければならぬ|業《カルマ》であり、その覚悟があなた達にはあるのか? と問うています』
 そう首肯するホワイト・ビヘイビアの返答を聞いて。
「……成程な。俺達が|灼滅者《・・・》と同格か、それ以上の力があるからこそ……俺達|異世界《・・・》からの来訪者にも、新たなる|人類管理者《・・・・・》としての責があると……そう言いたいのか」
 そう敬輔が確認するのを聞いて。
『ええ、その通りですよ、|猟兵《イェーガー》。それは|力あるもの《・・・・・》が果たすべき|業《カルマ》だと、何度でも言わせて頂きましょう』
 そう、ホワイト・ビヘイビアが相槌を打ってくるのに。
 だが、と敬輔が軽く頭を横に振った。
「ダークネスたる貴様の認識はそうなのかも知れないが、少なくとも、異世界の民である俺にはその意識は全くない。……貴様が先程の様な非道な実験……|復活ダークネス《オブリビオン》を作り出す様な実験をしていたのであれば、尚更だ。あれは、貴様の今の主張と甚だしく矛盾するもの……そうじゃないのか?」
 その敬輔の疑念を聞いて。
『果たして、そうでしょうか?』
 そう淡々と問いかける様に、ダークネスにして、オブリビオンたるホワイト・ビヘイビアがそう続けた。
『先程、私は、人類管理者と言う立場は、|力ある者《・・・・》が果たすべき責だと言いました。ですが、あなた達はその責任も覚悟もあると告げたにも関わらず、それを否定するかの様に行動を起こしている。……なれば、再び私達が人類管理者……|力ある者《・・・》として全人類を正しい世界へと導く為には、生殖型ゾンビ等のダークネスの繁殖能力について再び研究し、実験し、その数を殖やすしかありませんでした。それが……|現在《いま》の世に戻って来た私が、望むと望まざるとに関わらず、果たさねばならぬ義務でしたから。故に……』
「……|復活ダークネス《オブリビオン》として蘇り、|先代《白の王セイメイ》の研究を引き継いだ。だが……そんな研究を継がなければ、俺達が貴様を見つける事も無かったかもしれないな。そう……ヒトの命を弄び、弄り、尊厳すら穢す様な研究さえしなければな……!」
 その雄哉の言葉に静かに首肯する様に。
 自らの裡から沸々と湧き上がってくる怒りを抜く様に、敢えて軽く肩で息を吐いた火神・臨音が、自らの本体である火神ノ社ノ御神刀が納められた、自らの主の返り血が付いた鞘をそっとなぞった。
「……つまり、お前も生き残りたいと言う意志の為に、嘗て俺の|主《・》達が止めた生殖型ゾンビの研究を行っていたんだな」
 その臨音の粛々とした問いかけに。
『……そうですね。これでも旧とは言え、私も嘗ては人類管理者だった者……敗れこそしましたが、|力ある者《・・・・》に変わりはありません。であればこそ、人類管理者としての|業《カルマ》を背負う覚悟と共に、この研究を行いました』
 そう淡々とした口調で告げるホワイト・ビヘイビアを見て、臨音がギリリ、と唇を強く噛み締め、言葉を紡ぐ。
「……俺の主はな、|灼滅者《・・・》だった。主は……分かっていたんだ。何時か|この世界《・・・・》から|灼滅者《・・・》は居なくなり、エスパーとダークネス達だけの世界になるって事がな」
「……えっ……?!」
 その臨音の言の葉に、思わず息を飲んでしまったのは、姫桜。
 一方、その通りでしょうね、と静かにホワイト・ビヘイビアは同意していた。
『それもまた、あなた達が求めた|未来《・・》の先にある絶望です。それでは絶対的に新たなる人類管理者の数が少なくなった時、人類の希望は失われ、絶望へと誘われてゆく事でしょう。故に、私はダークネスに生殖能力を与え、再び実権を取り戻す必要があった』
 そのホワイト・ビヘイビアの説明に。
「それが、君が言うこの私達の未来の先に待つ『絶望』であり、君がその技術を確立する事が出来れば、その『絶望』を回避できると言う考えの基という事か。そう予測しているから、それに対処する為に、今、この様な実験を行っていると」
 そう成程、と言う様に首肯するレイの説明ホワイト・ビヘイビアが頷くが、それでも姫桜の頭上には沢山の“?″が浮かんでいた。
(「|さくらえ《パパ》達が居なくなる? それって……」)
 疑問と、焦燥の間で惑う姫桜の様子に気が付いたのだろう。
「……灼滅者は元々、定命の|人間《・・》からしか生まれることが無い。つまりこれから先、|灼滅者《・・・》達の子供として生まれてくる存在は、ほぼ例外なく皆エスパーになると言われている……からだね」
 ホワイト・ビヘイビアの説明に相槌を打ちつつ姫桜に向けて、補足説明を行うクローネのそれに臨音もまた首肯しながら、だから、と続けた。
「だから俺の主は|ダークネス《・・・・・》に……人類との共存を望んだ|ダークネス《・・・・・》達にこう告げていたんだ。『何時か自分が居なくなったら、それから先は|皆《・》が人類を守り、共に生きて欲しい』ってな」
 でも、その主は……。
 ――ポタリ。
 臨音の紫の瞳から滴り落ちるは、涙。
 零れ落ちた涙が、その指を飾るDaysOfPromiseに落ち、キラリと眩いダイヤの輝きを映して消えていく。
 そうしながら歩みを寄せる臨音を警戒しつつ、ホワイト・ビヘイビアが淡泊に呟いている。
『……共存ですか。人類管理者として私達が彼等が滅びぬ様に行動を起こし、人類を管理している状況も、人類とダークネスの共存と言える筈ですが』
 そんな、何気ないホワイト・ビヘイビアの呟きに。
 眩暈を起こしかねない程の怒りに頭をガツンと殴られた感触を覚えながら、違う、と臨音が鋭く頭を横に振り、そんなのは、と咆哮しながら、その背に三対の不死鳥の如き炎の翼を現出させつつ。
「そんなのは、俺達の……俺の|主《・》の望んだ共存の在り方じゃない! 俺の|主《・》は、ダークネスと人類が手を取り合って生きて|未来《・・》を繋いでいく事……それを心から望んでいた! だから――そう言った俺達に寄り添ってくれる|ダークネス《・・・・・》達にその手を差し伸べていたんだ!」
 血反吐を吐かんばかりの怒号を聞いて。
 ビクリ、と雄哉が一瞬肩を竦め、表情を強張らせるその間に。
「……そうだね。それが、|灼滅者《・・・》が掴み取った|明日《未来》。その|灼滅者《・・・》の|皆《・》の願いに興味を持ち、共存……共に戦ってくれている、ダークネスだっている」
 フェル・オオヤマが、そんな雄哉の方を一瞥し、それから静かに過去に想いを馳せる様にその銀の瞳を細めながら言葉を続ける。
 そんなフェルの脳裏を過るのは、以前、|この世界《サイキックハーツ》で共に戦ったことのあるダークネスと呼ばれる『種』の猟兵達。
 彼等は――彼女等は、|過去《・・》に属する|復活ダークネス《・・・・・・》と自分達が|異なる者《・・・・》と認識していた様に思える。
 そんな彼等――彼女等が望んだ|もの《・・》、それは――。
「|灼滅者《・・・》の皆がやっとの思いで手に入れることが出来たその先の世界だ。……私も、敬輔さんと同じ。|異世界《ケルベロスブレイド》の人間である私には、この世界の未来を決める権利も無いし――お前の言う|力ある者《・・・・》として新たなる人類管理者になれだなんて言われる筋合いもない。……この世界の未来の事は、|この世界《・・・・》に生きる|皆《全人類》が、決めることだから」
 ――けれども。
「お前は……人として生きる上での喜びや、その生命そのものを侮辱する様な研究……反吐が出る様なその所業を、人類管理者とか言う御大層な言葉を掲げて正当化した! それが……私の逆鱗に触れたんだっ!」
 そう血を吐く様な雄叫びと共に。
 武蔵坂学園高校制服から青いドレスアーマー姿へとみるみる姿を変えていくフェルの様子を見ながら、紗里亜がそうですね、と小さく頭を横に振る。
「……ホワイト・ビヘイビア。確かにあなたの言う通り、私達|灼滅者《・・・》は|この世界《サイキックハーツ》において、『不可侵権』と呼ばれる存在になりました」
 その過程で様々な事象が重なり、結果として全人類がエスパー化し、肉体的に人々が無敵になり、世界は平和になった。
 ――けれどもその平和をもし自分達が望まなければ、再び争いは絶える事なく起こっていたであろう。
 ――そう言う意味では……。
「……人類の管理者と驕るつもりはありませんが……一方でそんな私達、灼滅者が持つ力や責任の重さの軽視に繋げてはいけないと言う事も理解しているつもりです。……臨音さんが言って下さった通り、私達灼滅者はいずれいなくなるのだとしても」
 ――けれども。
「……そんな時、|人類《エスパー》が希望絶やす事無く自ら世界を守る為の道標を作る事が、今の|私たち《・・・》の役目です」
 その、紗里亜の粛然とした誓いを聞いて。
『……希望の道標として必要とされているのが、人類やダークネスの繁殖のバランスを保ち、人々に幸福な生活をある程度享受して貰う事でしょう。それを何故、あなた達は否定するのですか? それが無ければ、貴女方、|灼滅者《・・・》達がこれ以上殖える事も出来ず、|全人類《・・・》にやがて疎まれ、闇の歴史として葬り去られ、忘れられてしまう絶望の可能性すらあると言うのに……』
 そう慨嘆する様に告げるホワイト・ビヘイビアを見て。
「……まっ、結局のところ、生存競争ってやつなんじゃねぇの? そう言う意味では、ヒトも、お前達オブリビオンも変わらないって訳だ」
 そうやれやれ、という様に口の端に皮肉気な笑みを浮かべて、肩を竦めて見せる千尋のそれに。
「……そもそも俺は、最初から|人類《エスパー》達の管理者であるつもりはない。最初から『世界は|人類《エスパー》達に委ねるべき』だと思っている」
 そう淡々と言の葉を紡ぐ雄哉のそれに、そうだね、とさくらえが静かに首肯した。
「確かに、現時点では、僕達|灼滅者《猟兵》は、『人類の生死を管理する』という意味では『人類達の管理者』なんだろうけれどね」
 そう諦めた様にその事実を口に出して確認するさくらえのそれを聞いて。
「……違うわ、パパ」
 未だ、完全に理解は追いついていないけれども。
 其れでも言わなければならないと言う想いに急かされた姫桜が静かに頭を横に振り、きっ、と青い瞳を鋭く細めて、ホワイト・ビヘイビアを睨みつけた。
「……猟兵であろうと、なかろうと、人は人なのよ。そんな人が人であるにも関わらず、人が人を管理したり、されたりするなんて発想がそもそもおかしい筈よ」
 その姫桜の言の葉に。
「うん……姫ちゃんの言う通りだと、私も思うよ」
 そう静かに首肯しながら、胡蝶楽刀を構えて魔除けの鈴をりんりん、と鳴らして、葵桜が続ける。
「貴女の言葉を借りれば、貴女達を倒す力がある以上、私達は事実上『管理者』側になるって事なんだろうけれども……その『管理』って言葉自体が、傲慢で嫌な感じだよね」
 その葵桜の嫌悪を滲ませた表情から伝わってくるものが1つの真実であることを理解しながらも。
「でもね、葵桜さん。忘れちゃいけないよ。……少なくとも、|この世界《サイキックハーツ》においては、ホワイト・ビヘイビアが言っている事の全てが間違っている訳じゃないって事はね」
 そう共感を示しつつも、軽く頭を横に振って説明を加えたのは……。
「……クローネちゃん。如何言う事?」
 そう静かに先を促す葵桜のそれにクローネがつまり、と言葉を続けた。
「彼女の言っている管理者と言う言葉は、『支配者』の言い換えでもあるんだ。そう言う意味では|人類《エスパー》の管理者とは、人類の支配者……嘗てのダークネス達そのものだったと言って良い。そして、人類の支配者であったダークネス達の上位存在として|灼滅者《スレイヤー》達に君臨して欲しいと願っていた人物はいる」
 ――その者の名は、緒方・時雄。
 その人物の名を口に出した時、雄哉やさくらえ、紗里亜が一瞬ビクリ、と身を震わせた様に見えたのは、恐らく葵桜の気のせいではないであろう。
 レイは泰然としているが、その人物の名を知らぬ筈もない。
 その人物は、超機械サイキックアブソーバーの創造主の1人、なのだから。
「そして、経緯はどうあれ、|灼滅者《スレイヤー》達は、ある意味では、その人物の願い通りに行動し、それ以上の成果を収めることが出来た。そして、|灼滅者《スレイヤー》達自身が権力を持つことを制限する事も無く、全てを|灼滅者《スレイヤー》個々の判断に委ねると言う方針をダークネス達との戦いの後に決めた」
 ――故に。
「ワタシ達がその事実をきちんと認識し、その上でこの力を行使しなければ、いずれ|灼滅者《スレイヤー》達が|新たなる支配者《そう》成り果てる可能性があると言う事実は、残念ながら、誰にも否定できないんだ」
 ――そして、もし|新たなる支配者《そう》成り果てた|灼滅者《スレイヤー》達が、もし何の準備も無く消失したら。
「人々の希望は失われ、その先に待ち受けるのは絶望だろうね。だから彼女は、ワタシ達に問うているんだ。嘗て、人類管理者だった彼女達亡き後、其の後釜となる|灼滅者《・・・》達が、その義務を怠れば、その先にあるのは絶望だと。その絶望の先にあるのは――」
 ――絶望による滅亡だと。
 けれども……。
「――そうならない可能性の芽は、既に積み重ねられてきている。……そうだよね、紗里亜さん」
 そのクローネの問いかけに。
 紗里亜が静かに首肯して、その芽の1つとなりうる|それ《・・》を諳んじた。 
「|ESP法《・・・・》前文。全人類がエスパーとなるに至ったこの新たな歴史に際し、|われら《・・・》は恒久の平和を念願し、その維持のために、全人類一人、一人が獲得し得たESP能力を|活かし《・・・》、|強調し《・・・》、|たゆまない努力《・・・・・・・》を続ける事を誓う」
 ――ESP法。
 それは8年半程前に、世界にエスパーが生まれ、そして……これからも生まれて来るエスパー達と、自分達がどう向き合っていくのかを決めた世界初の|エスパー《・・・・》達の為に誂えられた国際法。
 その|全人類《・・・》の為に誂えられた『法の支配』を明文化したそれに作られた条文を朗々と紗里亜が読み上げるのを聞きながら、クローネが続けた。
「ワタシ達は、どんな絶望だって、皆で乗り越えてきた。その為の礎は既に作られ始めている。だからこそ、|灼滅者《ワタシ》達は、これからも|歩み続ける《生きる》んだ!」
 ――『己の闇を恐れよ。されど恐れるな、その力!』
「この言葉を胸にね……!」
 そのクローネの言の葉と、共に。
「……だから、貴様は消えろ、|ダークネス《・・・・・》! 俺達が少しずつ|人類《エスパー》達に権限を委譲しようとしているそれを……|未来《・・》の無い俺達が託そうとしている願いを、想いを……|貴様《・・》の都合で塗り替えさせるものか!」
 叫ぶと同時に雄哉が巨大な体躯の男と化し、全身に漆黒のオーラを纏い。
 その口の端に嘲笑を浮かべる青い瞳と髪――ダークネスへと|堕ちる《・・・》のを見て。
「……有城、闇堕ちしたか」
 先の戦いから、正直な所、少しばかり嫌な予感はしていた。
 だが、一方で、誰かが恐らくそうするであろう可能性はあるともレイは思っていた。
 ――だからこそ。
「一気に片を付けるぞ」
 そう呟いたレイが闇堕ちし、闇の炎を迸らせた雄哉のそれに合わせる様に裁きの光条を解き放ったのが。

 ――この戦いの開始の合図となったのだった。


『……成程。どうやら、これ以上の話は不可能な様ですね』
 何処か諦念を感じさせる呟きと共に。
 自らの全身を超濃度サイキックエナジーの装甲で覆い、『偉大なる元老』と化したホワイト・ビヘイビアの背後には数十体の『歴代ホワイト・ビヘイビア』
 ――その中には……そう。
「……! 安倍晴明……?! でも、先程レイさんやクローネさんは白の王セイメイと……!」
 その姿を現したホワイト・ビヘイビアの内の1体に交じった1体の見覚えのある顔を見出した敬輔が、思わず、という様に息を飲む。
 ――と、その時。
「お前達は……この件だけでなく、あの槍の研究や先程の様な所業をまた繰り返すつもりなのか!? ……ふざけるな! そんなもの、この世界の|明日《未来》を生きる人には絶対に不要だ! 必ず……誰一人欠けさせる事無く、私達は|日常《・・》に帰る!」
 その竜の雄叫びの如き、血を吐く様な咆哮と共に。
 青いドレスアーマー姿への変身を完了したフェルが、その手に絵に紅の宝玉嵌め込まれた銀の刀身持つ『紅炎の剣』を構え。
 その左手に、理想と真実の盾――両義宿手【寂滅護】を顕現させて、上空から竜翼を羽ばたかせて肉薄する。
 その紅炎の剣の切っ先から迸るは灼焔弾。
 全てを焼き払う獄炎の焔の力籠められし灼焔の弾丸が解き放たれるのを、歴代ホワイト・ビヘイビアの一人が受け止め、偉大なる元老と化したホワイト・ビヘイビアがその腕を無造作に振るう。
 その振るわれた腕から解き放たれたのは、戦場全体を一閃せんばかりの眩い白色のサイキックエナジー纏いし、衝撃の波。
 その衝撃の波を見て。
「……まっ、ヒトやオブリビオンが生きて、未来を求める所は変わらないのは分かるんだがよ……それでも、モノとしての俺がやるべきことは変わらねぇんよな……神宮時」
 その言の葉と、共に。
 千尋が無数の鳥威を展開し、その鳥威の表面に焦げ茶色の結界を張り巡らして、その白色のサイキックエナジー纏った衝撃の波の威力を減殺しようとしたところに。
「……そう、ですね。……今の、ボクには、関係の無い、方、なの、です、が……」
 ――それでも。
「ボクは、モノ、です。だから、この世界の、……|彼女《ボク》、と、同じ、事は、出来ません、が。……それでも、ボクは、護る、と、決め、ました」
 ――『ヒト』を。
 その、小さな囁きと共に。
 氷晶石と琥珀のブローチ――財と長寿を与える祝福の品として作られながら、とある悲劇によって、持つ者に『呪物』として扱われる絶望を経たが……。
(「……彩瑠様達、の、様な……」)
 数多の人々と、何よりも、カクリヨファンタズムに現れたまぼろしの橋で、死した自らの作り主とその愛する者達に、その胸に暖かな灯を灯してくれた心在るヒトを護る願いを託されたヤドリガミの少女が、その手に宵に咲く茉莉花を構えた。
 茉莉花の花と蔦が絡んだ、その大鎌の茉莉花に止まるは、赤と青の幽世蝶。
 その愁いは、優しく、切なく、哀しみに染まる――天へ祈る幽霊花たるそれが、赤と青の鱗粉をその蝶の羽をパタパタと羽ばたかせて地上へと口吻の様に落としていく。
 落とされた赤と青の鱗粉の如きそれが千尋の鳥威と焦げ茶色の結界と重なり合い、周囲の仲間達を守る結界と化して、その白色のサイキックエナジーとぶつかりその威力を削ぐ、その間に。
「……雄哉さん……全く、本当に君は……」
 仕方ない、と何処か諦念の嘆息を漏らしたさくらえが静かに頭を横に振りながら、己が想鏡――その玻璃に己が深淵を映せしそれ――を掲げていた。
 ――それは、覚悟。
 過去も今も罪も闇も、全てを受け止め向き合う覚悟を現した玻璃鏡。
 解き放たれた玻璃色の結界が巨大化したホワイト・ビヘイビアに肉薄していた雄哉と紗里亜、臨音や敬輔を守る結界となって、千尋と蒼の結界によって威力を削がれた白色のサイキックエナジーを雲散霧消させるその間に。
「馬鹿野郎、雄哉! 誰もそんな結末は望んでねえ! フェルと同じだ! 俺も……誰一人欠ける事無く皆で帰る事の出来る世界を護るために……今は戦う!」
 その言の葉と、共に。
 臨音が展開していた三対の不死鳥の如き炎の羽をばさり、と羽ばたかせると同時に無数の火属性の護符を解放。
 そこから降り注いだ炎がフェルの解き放った獄炎の炎と融合し、全てを灼き尽くす浄化の獄炎と化して戦場を駆け抜け、セイメイを含めた歴代のホワイト・ビヘイビアに火傷を負わせるその間に。
「ESP法は、灼滅者、エスパー、どちらからでも既定の手順に則れば修正が出来るとする」
 要約するとそう言う意味になる条文の1つを諳んじつつ、八卦翠風を風に靡かせながら、己が全身に纏うサイキックエナジーで気を練ったオーラを解放する紗里亜。
 バサリ! と羽ばたく様な音と共に美しい翡翠色をした気――八卦光翼を展開した紗里亜が肉薄しながら、自らの気を練り上げるその間に。
「|人類《エスパー》達が未来を求める限り……そして、貴様の様に過去に囚われるダークネスが居る限り、俺はこの剣を取り戦い続ける――それが、俺の|故郷《ダークセイヴァー》で吸血鬼に虐げられてきている俺の答えであり……覚悟だ」
 ――だから、それを示す為にも。
「終わらせるぞ……|皆《・》!」
 そう決意を滲ませた誓いを口にしながら。
 敬輔が自らの黒剣に吸収させた――白色のサイキックエナジーが凄まじいエネルギーと化して、その赤黒く光り輝く刀身に白光を纏わせていた。
 それは……聖でもなく、邪でもなく。
 ただ――純粋なる『力』の籠められた『魂』の、サイキックエナジーの残滓。
 自らの右の青の瞳を輝かせながらその残滓の光から発せられる波動に悔しげに歯軋りをした敬輔が、その刃を真正面から振るう。
 狙うは――足や腕。
 躊躇なく放たれた18の斬撃がその防御力をも3倍と化しているホワイト・ビヘイビアを切り刻もうとするが、腕や足を切断するには至らない。
『あなた方の覚悟とは、この程度のものですか?』
 そう微かな嘲笑と共に、己が白色のサイキックエナジーを纏わせて、手刀を敬輔に叩きつけようとする、ホワイト・ビヘイビアの懐に滑空して潜り込みながら。
「この一撃……」
 その言の葉と、共に。
 己が本体『火神ノ社ノ御神刀』に破邪の炎を纏わせた臨音が、切り上げの要領で其方を振り上げながら、左手の中に。
「……てめぇが防ぎきる保証は一切出来ないけれどな!」
 静かに燃え上がる烈火の如き怒りを乗せた滾々と浄化の水湧き出す水晶の刀身の大太刀を出現させ、逆袈裟に一閃。
 下段からの火神ノ社ノ御神刀の跳ね上げと、水晶の大太刀の逆袈裟の振り下ろしの一撃が、その自らの濃縮した白色のサイキックエナジーをまるで擦り抜ける様に一閃される。
『……何……っ!?』
 敬輔の18連撃と臨音の二閃で、大きくその身を傾がされ、装甲を穿たれ、思わぬ驚愕の声を上げるホワイト・ビヘイビアの右翼から。
「ESPを使おうとも使わなくとも、既存の法を犯した者は、犯罪者とする」
 頭の中にそらで入っている要約するとそう言う意味になる次のESP法の条文を続けて口遊んだ紗里亜がその右脇腹に向けて、サイキックエナジーで練り上げられた気を籠めた八卦方棍を突き出した。
 ――その一振りは、風を裂き。
 ――その一撃は、経脈を絶つ。
 そう称される八卦方棍に練り込まれた気を発勁と共に、3倍にして叩き込む。
 叩き込まれた凄まじい量のサイキックエナジーによる発勁の一撃に思わず、という様によろけるホワイト・ビヘイビアに向けて。
「闇に沈め」
 そう嘲弄する様に告げた雄哉が3倍化した己が漆黒のオーラを纏った拳を、紗里亜の反対側……左翼から闇の炎を纏わせつつ叩きつけた。
 己が力が否応なしに増したその漆黒のオーラと闇の炎纏ったダークネスと化した雄哉の一撃が問答無用で、ホワイト・ビヘイビアの左脇腹に風穴を開けた所に。
「……管理ねぇ……」
 そう先程迄の会話の応酬を思い出して呟きつつ、千尋がその指先から高威力の青い光弾を後方から解き放つ。
 撃ち出された光弾は、その気配に気が付いた雄哉が咄嗟に左に移動したその脇を掠める様に通り抜け、雄哉が風穴を開けた左脇腹へと着弾し……。
『がっ!』
 思わず、という様に己がエネルギーである白色のサイキックエナジーを揺らがせるホワイト・ビヘイビアを強かに撃ち抜いていた。
 その様子を見て続けざまに、サイキックエナジーを蝕む毒を刀身に塗った烏喙を投擲してその左脇腹に突き立て、ホワイト・ビヘイビアの体を蝕み内側から苦しめながら、千尋が続けた。
「……ヒトは、俺達みたいなモノじゃないんだから、管理しなくてもどうにかなる……つうか、既に何とかしようとしているヒトが沢山いるからどうにでもなりそうなのによ。何で、態々そんなことしようとするんだろうな?」
 そう千尋が分かり切っていると言わんばかりに、つまならそうに言うそれを聞いて。
「全く持ってその通りだと思うよ、千尋さん。だからこそ……ワタシ達は未来を求めて戦っているんだ」
 そう千尋の言葉に同意を示したクローネのネクロオーブが漆黒の光を解き放ち、召喚されたのは|屍王《ノーライフキング》。
 ――嘗て、個体ではダークネス最強と言われていた……目前のホワイト・ビヘイビアの|同族《・・》だ。
 その|屍王《ノーライフキング》が解き放つは、水晶の嵐。
 クローネの体の半分を水晶化させ、その背に水晶の翼を生やさせた、嘗てのクローネの中の|灼滅者《・・・》が灼滅したとされる屍王が解き放つ其れが、ホワイト・ビヘイビアと彼女の召喚した数十体の先代達……フェルに灼かれてよろけていた者達に突き刺さり、その身を水晶の折へと閉じ込めていった――そこに。
「……業、ですか。……あの時も、貴女は、そう言って、いましたね」
 そう、まるで、何かを懐かしむかの様に。
 そう静かに囁きかける様な蒼が構えた白き大鎌の茉莉花の周囲に新たに咲き誇るは、柊の花。
 茉莉花の上に咲き誇った柊の花を守る様に、茂ったその鋭利なる葉叢達は。
「……邪を祓う……」
 旋風となりて、クローネの屍王の水晶の嵐と共に、ホワイト・ビヘイビアの呼び出した先代達を次々に薙ぎ払っていく。
 それは、フェルの解き放った灼焔弾の弾幕で焼き払われた所に一閃された桜の花弁の如き火花を散らながらの櫻火伐刀の刀閃に薙ぎ払われた先代ホワイト・ビヘイビア達を一息に吹き飛ばし。
 同時に小さく咲き誇る冬花――『保護』の花言葉持つ柊の花が、フェルの刃にカウンターで解き放たれた地獄の炎で火傷を負った仲間達の傷を癒していく。
 その威力が普段、自分が想像していたよりも遥かに大きくなっている事に気が付いた蒼は、思わずその赤と琥珀のヘテロクロミアをぱちくりと瞬かせるが、程なくして。
(「……これは、マックローネ様の、力の、結果、ですね」)
 そう気が付き、ちらりと自らの宵に咲く茉莉花を構える|水晶化《・・・》した仮初の肉体を見つめて、1つ頷いている。
 その水晶化した部分が、|同位体《彼女》の記憶を刺激し、その記憶が流れ込んでくるのを感じて、蒼が赤と琥珀色の色彩異なる双眸に小さな灯を宿して、淡々と続けた。
「……この世界の、ボクは、業を、背負うと、言いました」
 ――それは。
「……悪逆非道を、管理する、業です」
 それを証明するかの様に、この世界の蒼の|同位体《・・・》もまた、さくらえや葵桜の母と同じ選択を、当時選んでいた。
『灼滅者に、国家規模の権力を持たせない』と言う方針を。
『不可侵権』と呼ばれる権限を持つ|灼滅者《・・・》達に何処までの権力を持つ職に就く事を許容するのか。
 結局のところ、多数派によって灼滅者個人が権力を持つ事に制限を持たせない方針が可決されたが、少なくとも|彼女《・・》は、その事の危険性を自分なりに考えていたらしい。
 でも、そんな権力に、『法の支配』による制御を以て、|人類《エスパー》達にこの世界を委ねる事を選んだのが、恐らく……。
(「……椎那様、なの、でしょう、ね……」)
 あの時、雄哉や臨音がいう主達と共に、『灼滅者に10万人以上の大規模組織を動かす権力を持たせない』と言う最も少数派の選択を選んだ彼女なりの。
 ――それは偶然か、それとも必然か。
 その真相は定かではないが……。
「……ボクには、同じ、事は、出来ません。……けれども」
 ――|僕達《・・》が、掴み取った、未来の、責任は……。
「……|ヒト《・・》の未来を、護る、という、形で、負う事は、出来ます」
 ――だから。
「貴女に、未来を憂いてもらう必要なんてないんだと、私は思うよ」
 その蒼の誓いに被せる様に己の想いを口にしながら。
 召喚した田中さんの炎を纏った槍による薙ぎ払いに連携する様に、魔除けの鈴を鳴らしながら下段から跳ね上げる様に胡蝶楽刀を振り上げたのは……。
「あお!」
 そう思わず、という様に呼びかけながら、姫桜が“桜縁”を解き放つ。
 そのダイダロスベルトが、葵桜の死角から迫っていた濃縮サイキックエナジー……ホワイト・ビヘイビアが残した攻撃の残滓とぶつかり合い、その威力を相殺するのを肌で感じ取りながら、|葵桜《あお》は続けた。
「絶望はあるかも知れないけれど、そればっかりじゃないんだから。変化に混乱はつきものだし、この先も色々あるのは間違いないと思うから」
 けれども、例えば、あの紗里亜と言う|灼滅者《・・・》の様に。
「|灼滅者の皆さん《こっちの人達》の中にはきちんとその事について考えている人もいるし、|私達《猟兵》も考えている」
 ――そう。
 この世界で初めて、新人類とでも言うべき、エスパー達の為に作られ、今でも尚、改憲を続けられていると言う、ESP法の基本理念の様な想いを、祈りを胸にして。
「新しくなっていく世界のルールの見直しをきちんとしている人がいて、常に|皆《・》で向き合い続けて先に進んでいこうとする人達が居る。だから……それ自体が私の、貴女への|答え《・・》なんだ」
 そう葵桜が言の葉を紡いだ――刹那。
「私達は、貴女の憂う『絶望』に見舞われることがあったとしても、それも全部ひっくるめて受け止める。そう……決めているの」
(「先程の少女達を倒す様な戦い方をすることは、私には出来ないけれども……」)
 そう先の少女達……母として、子を守らんとした彼女達の姿を脳裏に思い浮かべながら、姫桜が軽く頭を横に振り。
「それでも……そんな自分の弱さに直面して絶望して……そこからまたあお達と一緒に立ち上がって、何度でもそれに立ち向かう覚悟は……そんなに強くない私にもあるんだから!」
 ――それが、|ヒト《・・》だ。
 蒼には、それが分かっている。
 その強さを、優しさを、彼女に心の灯を灯したヒト|達《・》を護るために戦う|モノ《・・》と自らを定義してしまっている少女の様な仲間もいる。
 ――そう言った|ヒト《・・》達とも、私達は。
「互いに支え合っていけるのよ」
 ――故に、人は。
「人は、貴女が言う程そんなに弱くないのよ。だから、きっと……」
 ――『管理』なんかじゃなくて、対等の立場で互いに信じて、力を合わせて未来に向き合っていける!
 その確かな決意の籠った言葉を叫びと力に変えながら。
 姫桜は、自らの全身から数多の白燐蟲からなる閃光を放出した。


 ――白燐蟲の閃光に、その背を押される様に。
「……滅べ! |俺《ダークネス》の手で、己が理想を否定された|ダークネス《・・・・・》!」
 そう嘲笑を浮かべた雄哉が、自らの両手に漆黒のオーラと共に『闇の炎』を纏わせ、真正面から腰を深く落として、正拳の2連打を叩き込む。
 腰を深く落としたそこから叩き込まれた闇の炎纏った正拳による一打目が、敬輔と臨音の斬撃で大きく破壊された超濃密サイキックエナジーのオーラを破壊し、その腹部に風穴を開け。
『ぐはっ……?!』
 続いたもう一撃を鳩尾に叩き込まれて全身に罅を入れながらも尚、ホワイト・ビヘイビアが白色のサイキックエナジー纏った足で膝蹴りを雄哉に叩き込もうとしたその時には。
「……隙ありだよ!」
 ホワイト・ビヘイビアの頭上へと一気に飛翔していたフェルが、その兜の面頬に向かって、銀色の刀身を獄炎の炎を這わせてその刀身を紅蓮に染め上げて、急所突きを繰り出していた。
 フェルに咄嗟に気が付いた先代ホワイト・ビヘイビア……既にセイメイは消滅しているが……の1人が傷だらけになりながらそんなフェルを覆うべく黒い炎を展開するが。
「全く……お前等って、見ていて飽きないよな。次から次へと手の内変えて、徹底的に俺達を倒しに来るんだからよ」
 そう何処か愉快そうに口の端に皮肉気な笑窪を刻んで。
 千尋が無数の鳥威を蜘蛛の巣の様に束ねてフェルの前面に展開、その闇の炎を食い止めようとする。
 その鳥威の蜘蛛の巣の結界を闇の炎で浸食するべく歴代のホワイト・ビヘイビアが、現在のホワイト・ビヘイビアが撒き散らした白色のサイキックエナジーを纏わせその出力を上げようとしたが。
「……オオヤマ達がそう動くであろう事は、予想していた。だから私には、君達の邪魔をする余裕がある」
 その言の葉と、共に。
 レイがカン、と大地を枳棘での棒尾で叩くと同時に、その先柄から、呪詛纏う裁きの光条を解放。
 解放された裁きの光条が、精神を蝕む呪詛と化して、歴代ホワイト・ビヘイビアに着弾、更に巨大化したホワイト・ビヘイビア本体の精神を浸食し、僅かにその身を傾がせた所に。
「させないわよ!」
 叫んだ姫桜が、赤目に桜色をした蛇を思わせるダイダロスベルト――桜縁を再び射出。
 射出された赤目の桜色の蛇が、数多の白燐蟲を纏って、千尋の鳥威の蜘蛛の巣に絡み付いた闇の炎を外側から絡め取り、周囲からのサイキックエナジーを遮断。
 そうして消失した闇の炎の様子を見て、驚愕の表情を浮かべていた歴代ホワイト・ビヘイビア達にクローネの召喚した屍王が吹き荒れさせた、破片化した水晶が突き立ち、歴代ホワイト・ビヘイビアを纏めて水晶の棺の中に閉じ込め灼滅するその間に。
「今だよ、敬輔さん、臨音さん、フェルさん」
 クローネが先の戦い、そしてフェルの『槍の研究』と言う言葉にまるで呼応するかの様に漆黒の輝きを放っていたダークネス・ユサーパーの引金を引いていた。
 吐き出された漆黒の弾丸が水晶化して弾幕と化し、ホワイト・ビヘイビアの追撃を緩めたその瞬間、彼女の兜の隙間に突き立ったのは……。
『ぐっ……?!』
 ――フェルが生み出した紅蓮の炎纏った、紅炎の剣の紅蓮の刀身。
 そこから地獄の炎が迸り、体内から見る見るホワイト・ビヘイビアの体を灼き祓うその様子を見て、3対の不死鳥の翼を羽ばたかせた臨音が二刀をまるで翼を広げるかの如く構え。
「……彼女達の想いを踏み躙ったあんたを、|俺達《・・》は絶対に許さない!」
 慟哭の様に叫ぶと共に、空中で水晶の刀身持つ大太刀と、自らの本体……火神ノ社ノ御神刀を一閃し。
「……消えろ、ダークネス! この世界の|人類《・・》達は、嘗ての様に貴様達に管理・支配される時代等望んではいない!」
 臨音が解き放った巨大な浄化の水籠められし水晶と浄化の焔が重ね合わされた紫の水晶の斬撃波にその腕を切り裂かれたホワイト・ビヘイビアの死角に回った敬輔が叫びと共に再び右の青い瞳を激しく光り輝かせた。
 ――『たすけて』
 それは、臨音が幻聴かも知れないが、と言いながらも聞いたと言うあの『少女』達の魂の残滓からその想い。
 その『彼女』達の想いの残滓を黒剣で食らっていた敬輔が、渾身の力を籠めて自らの寿命も顧みず、再び18連撃を解き放つ。
 放たれた18の斬撃と刺突の綯い交ぜになったそれが、ホワイト・ビヘイビアの四肢を切り裂き、その動きを止めた所に。
「私達は、これからも前に進んでいく。この世界にあるのは絶望ばかりじゃないって証明する為にも!」
 田中さん! と甲冑姿の古代の戦士に呼びかけながら、リンリンと胡蝶楽刀を鳴らしながらその刃を捻れる様な動きで加速させた葵桜が振り下ろし。
 その力で周囲の大気を断って鎌鼬を生み出してホワイト・ビヘイビアを切り刻むその間に、田中さんが疾風の如く突き出した槍が、ホワイト・ビヘイビアの胸部を穿つ様に貫き。
 ――ピシリ、と。
 水晶が砕け散る様な音を耳にした所に、弾幕を張りながら肉薄していたクローネが接近し。
「はっ!」
 叫びと共に、硬化した掌底にネクロオーブから放たれた漆黒の魔力を纏わせて叩きつけ。
「『ESPを故意に悪い事に使うのは犯罪である。然れども、善悪の判断が出来ぬ者や、正常な判断が不可能な高齢者によるESPトラブルは罪に問わない』」
 同時に紗里亜が、要約すると、『ESP犯罪を罪に問うが、それが善意或いは、責任能力が無いと判断されれば、その罪を問わぬ』と言う事を明記した条文を諳んじながら、水晶化した八卦方棍に練り込んだサイキックエナジーと共に、ホワイト・ビヘイビアの体に頸を叩き込んだ。
 その頸の発により、ホワイト・ビヘイビアの体に叩き込まれたサイキックエナジーが、千尋がホワイト・ビヘイビアの体内に巡らせていた毒と混ざり合ってその内側からホワイト・ビヘイビアを爆発させて、巨大な風穴を開け、ホワイト・ビヘイビアを重傷に追い込んだ所に。
 立て続けに蒼が撃ち出した無数の鋭利な葉が旋風と化して彼女を切り刻み、畳みかける様に千尋が指から放った光弾が着弾し、ホワイト・ビヘイビアの体力をごっそりと削り取っていった。
『……ぐっ……まさか……この様な形で、再び歴代最速で灼滅されるなどと言う不名誉を……』
 受けることになるとは、と何処か自嘲気味に呻くホワイト・ビヘイビアに向けて。
「……覚悟はある。例え、誰に責められようとも、全てを背負うって決める覚悟は」
 ――だって……。
「この世界に……僕と妻の所に来てくれた|子供達《・・・》に、絶望の未来を歩ませるつもりなんて、毛頭ないから」
 その誓いと、共に。
 肉薄したさくらえが、叶鏡を螺旋状の軌跡と共に刺突を繰り出していた。
 ――其の玻璃に宿すは己の深淵。
 誓うは一つ。罪を認め、闇を恐れず、望む未来へ突き進む事。
 その誓いと願いを映し出した螺旋状の回転と共に解き放たれた叶鏡の刺突が……。
「待ち受ける絶望を跳ね除ける力を、希望を、幸せを掴み取れる力を与えて――生きていくよ」
 そう告げると共に、超濃度で巨大化していたホワイト・ビヘイビアの喉元を貫き、止めを刺すと、ほぼ同時に。
「だから、もうこんな装置はいらないんだ……!」
 さくらえに灼滅され、消え逝くホワイト・ビヘイビアに一瞥をくれることも無く、肉薄した雄哉が大気を手刀で斬り裂き、生み出した闇の炎を漆黒のバトルオーラと共に纏わせて問答無用で、ホワイト・ビヘイビアの背後にあった装置を焼きながら閃光百裂拳を叩き込み。
「終わりだ……! もう、こんな悲劇、二度と俺達が繰り返させたりはしない!」
 続いて3対の不死鳥の如き翼で戦場を滑空した臨音が2本の大太刀による浄化の斬撃を解き放ち、跡形もなく装置を叩き斬った。


 ――跡形もなく焼き尽くされ、斬り裂かれて崩壊していく、その研究装置を見て。
「……ふむ。流石にこの状況では、引き継いだ研究の情報を得ることは出来ないか」
 ならば仕方ない、という様に微苦笑を零しながら理解の嘆息を零すは、レイ。
 この先、同じ様な事件が起きた時への対応策として、研究の成果を知っておいた方が良いのでは……とも思っていたのだが、どうやらそうは簡単にはいかないらしい。
 そうレイが考えながら、チラリと気遣う様に、闇堕ち形態を解除した、雄哉を見て、一言何かを告げようとしたその刹那だった。
 ――ゴスッ!
 と上空から雄哉の頭に鉄拳が振り下ろされたのは。
「うわっ!」
 思わぬ上空からの拳骨に防御態勢を取る事も出来ずにその痛みに顔を顰める雄哉が思わず空を見上げれば。
 雄哉の隣に竜翼で注意深くホバリングしながら着地したフェルが、怒った様な表情を浮かべて、雄哉を睨みつけている。
「……|闇堕ち《あんなこと》して、皆で、不帰れなくなっていたら、私は絶対に許さなかったからね?」
 そのフェルの何処となく有無を言わせぬ威圧の籠った説教を聞いて、雄哉が一瞬息を飲んだところに。
「全くだな」
 そう臨音が雄哉の左隣……フェルと反対側に着地すると同時に、ガス、と雄哉の脛に蹴りを叩きつけていた。
「~っ!」
 サイキックではない為ダメージは無いが、容赦なき痛みを感じるその一撃を受けて、思わず内心で呻く雄哉。
(「そっ、そりゃ、皆に何も言わずに闇堕ちの道を選んだ僕が悪い一面は否定しないけれどさ……」)
 ――何故、これ程までに理不尽な目に遭わなければいけない。
 そう内心で呟く雄哉に微かに同情の視線を送りながら、まあ、とクローネがそっと息をつきつつ、もしかして、と問いかける。
「フェルさんも、臨音さんも、|富士の迷宮《・・・・・》の事件で堕ちた|彼女《・・》の顛末を知っていたりするのかい?」
 そのクローネの問いかけに、臨音とフェルがクローネの方を向き、無表情に同時に首肯。
 それが確かな肯定である事を認めたクローネが、それじゃあ、と諦めた様に肩を竦めた。
「……その位の罰で済んだんだから、良い方じゃないかな、雄哉さん」
 |その事件《・・・・》の顛末を知っているのであろうクローネの言葉に、雄哉がうっ、と思わず顔を顰める。
(「しかも僕の目の前で起きた事だもんな……。そりゃ、同じ様な状況を知っているのであろう、火神さんや、オオヤマさんが怒るのは仕方ないか……」)
 そう取り敢えず腹の中で溜息と共に彼等の怒りを受け止めて息をつく雄哉の様子を見ながら、クローネがそっと自らの胸に納めたダークネス・ユサーパーに手を置いた所で。
「……これで、ホワイト・ビヘイビアは、倒せた、という、こと、なので、しょうか?」
 その様子を怪訝そうに見ていた蒼が赤と琥珀のヘテロクロミアを瞬かせる様を見て、そうだね、とさくらえが小さく首肯した。
「でも、もしかしたら、今回の件……また何か違う形で、顔を覗かせる可能性があるかも知れないね」
 そう呟くさくらえの懸念を聞いて、そうですね、と小さく紗里亜が首肯を返した。
「ホワイト・ビヘイビアがここまで本格的に動いたのです。次に、別の元老達が本格的な行動に移る可能性がある事は否定できません。或いは、今回の様な認知戦を、|復活ダークネス《オブリビオン》が仕掛けてきたら、それはそれで厳しい戦いになりそうです」
 ――ホワイト・ビヘイビアの言葉は、全てが否定出来るものではない。
 その事実を利用する|復活ダークネス《オブリビオン》が出てくる可能性は、残念ながら否定できない。
 未来は何時だって不鮮明で、ホワイト・ビヘイビアの言う通り、その先に数多の絶望が待ち受けているであろう事もまた、十分予測して然るべきものなのだから。
 ――けれども。
「大丈夫だよ。私達は、常に皆で向き合い続けて先に進んでいっているんだから」
 そう告げた葵桜の口調に漂う確固たる決意を聞いて、そうですね、と紗里亜が葵桜に嘗て共に戦った|仲間《灼滅者》の面影を無意識に映しながら、小さく首肯するその間に。
 雄哉から離れた臨音が、破壊した装置の方に近寄って、懐から静かに竜胆の花束を取り出した。
 ――その花言葉は。
「……あなたの、悲しみに、寄り添う、でした、か……」
 その竜胆の花言葉に気が付いた蒼がそっとそう呟くのを聞いて、ああ、と臨音が首肯する。
 ――無意識に、左手で自らの本体である大太刀を納めた鞘に付いた、返り血を撫でながら。
「救うことが出来なかったあの子達が、せめて、穏やかに眠れる様にってな……」
「……そう、ですね。……ボクも、祈り、ましょう」
 その臨音の言葉に頷き、色彩異なる双眸をそっと瞑った蒼と共に。
 臨音が、犠牲になった『彼女』達に向けて、黙祷と祈りを、静かに捧げるのを見て。

 ――敬輔の黒剣が先の戦いで食らった、少女達のサイキックエナジーが、無彩色の光と化して、天へと昇っていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2025年04月29日


挿絵イラスト