居候、疑問を呈する
●居候
食客として、いや、格好つけるのはやめておくとして。
居候であるからには、三杯目はそっと出し……なんて川柳に謳われるような身分になったのは、ふしぎなただのへびであるところの己の境遇を示してはいなかった。
なにせ、ふしぎな生物である己――織部・藍紫(シアン・f45212)は、人間の形にもなることができる。
「これがまあ、不便不便。二本足に腕二つあったとてや」
はぁ、とため息を吐き出す。
蛇の身のままであるのならば、食事というものは人間が言うところの周期で言うのならば、週二でいいのだ。
だが、人間はそうはいかない。
日に三度の飯を食わねばならないのだという。
しかも、やれビタミンやらカルシウムやらなんちゃらかんちゃら言う栄養素まで必須なのだという。
やたら面倒である。
しかしまあ、人間の形になれるとは言っても、基本は元の姿と一緒である。
ガワだけ取り繕ったような状態であるから、それもそのはずである。
「しかしまあ、人間っていろんな物食べられるなぁ。いや、いろんな物を食おうっちゅー執念みたいなものを感じるわ。腕が二つあるからか? カトラリー? 食器? まあ、なんやけったいな道具を諸々つこうて、大変やわ」
面倒くさくない?
そればかりか、煮るだの茹でるだの焼くだの、はたまたカビをどうにかこうにかして発酵までさせるという話である。
「確かにな。うん、気に入っとるよ、あのほれ、鶏とえらい辛い多年草のなんちゅーたか、あれ。ああ、そうそう、玉ねぎな。それのサラダゆうのは美味しいわ。え、なに。サラダはソルト、塩? それが語源? いや、やかましっちゅーねん」
いらんいらんと、藍紫は手を振った。
そんな知識を言われたところである。
「ちゅーか、なんで蛇が人になったのを、すんなりに受け入れとんのかっちゅーのが一番かわからんのよ……マジで」
己が居候している家の者達は総じて、そういうところにおおらかなものたちばかりだ。
当初は、へびの生態に詳しいだけかと思っていたが、どうやらそうではないらしい。いや、逆にそもそも生態に明るいのならば、人間になっている時点でおどろ木ももの木さんしょの木というやつである。
しかし、そういったことはなく、当たり前のように受け入れられてしまっている。
「この現状が、人間よーわからんちゅーのの、最たる例やんな。いや、本当にマジでわからん。解る人おる――?」
成功
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