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星たち歌う、聖夜の空の下で

#ブルーアルカディア #ノベル #猟兵達のクリスマス2024

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エアン・エルフォード



モモカ・エルフォード




 歩く風景も、いっそうキラキラと煌めきを纏って。
 行き交う人達の足取りも心なしか、わくわくと浮足立つ季節。
 並ぶ店々にも沢山の飾りが揺れるツリーがピカピカ、楽しい定番の曲が聞こえる中。
 心躍るような赤や緑の彩りや、キュートなサンタさんたちの姿がたくさん。
 そんな、クリスマス色に溢れた街で、今日は楽しいお買い物。
 色々な店を回っては、あれはどうかな、こっちも気になる、でもそれも素敵……だなんて、いっぱい目移りしちゃいながらも。
 あれにこれにと手にとっては、一緒に頭を悩ませるこんな時間も、とても楽しいから。
 頑張って厳選はしたのだけれど、でもやはりエアン・エルフォード(Windermere・f34543)の片手は、プレゼントの包みでいっぱいに。
 そしてお目当てのものや見つけたお気に入りのものをお買い物し終えれば、モモカ・エルフォード(お昼ね羽根まくら・f34544)は、ひょこりと覗いてみる。
「お外、雪が降っているかしら?」
 薄っすらと白くなっている店の窓から、改めて外の風景を。
 エアンもふと、呟かれた声につられて視線を窓のむこうの空へと向けつつも。
「寒いけど、降ってはいないようだね」 
 でも白く雲っているのは雪が降っているからではなくて、今いる店の中があたたかいからで。
 飾られたクリスマスリースのベルをシャラリと鳴らし、店のドアを開けば。
 賑やかな声と光が溢れるクリスマスの街へと、モモカをごく自然にエスコート。
 大騒ぎは苦手で穏やかほのぼのとした時間が好きだけれど、でも、賑やかで楽しい雰囲気は好きだから。
 彼と並んで冬の街並みへと再び踏み出したモモカの足は、うきうきと軽やかで。
 ひゅるりと吹き抜ける冬の風は、普通だったら身が縮んじゃうくらい冷たいけれど……でも、へっちゃら。
 だって今日のモモカは、あったかいカシミヤのコートに手袋もしっかりと嵌めて、防寒もおめかしもばっちりなのだから。
 でも、手袋は片っぽだけ。ふわり大きな愛しの旦那様の手が熱をくれるから。
 そして夜色のリボンとシュシュが飾る、編み込んだ甘いローズブラウンの波打つ髪をふわふわ靡かせる妻と、手を繋いでいるエアンも。
 今日は黒いコートにくるりとストールを巻いた、お洒落な冬の装い。
 それに、ふたりだけではなくて。
 青とピンクのリボンをそれぞれ着けた姉弟猫たちだって、一緒。
 そう――今日は家族みんな一緒の、楽しいクリスマスのお出かけなのだから。
 そうして皆で歩く街並みには、レトロでお洒落な街灯が燈り、クリスマスイルミネーションの光がたくさんキラキラと眩いくらいに輝いているけれど。
 モモカは空を見上げ、白い息をのぼらせながらも、ロンドンブルートパーズの瞳にも数多の煌めきを映し出す。
「雪は降っていないけど……えあんさん、お星様がすごく綺麗よ?」
 聖夜を彩るように瞬く、数え切れないくらいの星たちの輝きを。
 そしてエアンも、妻とお揃いの青い瞳で、彼女の視線を追いかけてみれば。
 見つめる先の光と瞬きに、思わず向けた双眸を細める。
 ……雪降るクリスマスもロマンチックだが星空もなかなか美しい、って。
 雪のかわりに今にも降ってきそうなほどたくさんの、満天の星たちを目にして。
 だから、紡いで持ちかけるのは、こんな提案。
「せっかくだし、少し遠回りして帰ろうか」
「お散歩、いいわね!」
 そんな名案に、勿論モモカも大賛成!
 そして――そう、家族で散歩だ、なんて。
 彼女の声にこくりとエアンが頷けば、にゃーんと鳴いた仔猫たちも、賛成のよう。
 そして尻尾をふりふり、そわそわしている猫たちを、ふたりでそれぞれ、ひょいと抱えてから。
「ちょびっと遠回りして帰ろうね♪」
 ――うふふ……あったかいの。
 刹那感じる、ふわふわぽかぽかな心地良いぬくもりに、モモカはほっこり笑み零す。
 モモカのコートの中で、ちょこんと良い子におすまし顔しているのはそう、ピンクのリボンをつけたお姉さん猫。
 いや、ふわふわであったかいのは、モモカの懐だけではなくて。
 エアンのストールの隙間からぴょこりと顔を覗かせているのは、青いリボンの弟猫。
 そして勿論、モモカの手を取って、手と手をしっかりと優しく繋いでから。
 皆で仲良く遠回り――煌めきいっぱいの聖夜をもう少し、お散歩して帰ることに。
 冬の夜は確かに凍えるほどで、澄んだ空には冷えた空気がピンと張り巡らされていて。お喋りするたびに、息が真っ白くなるほどに寒い夜なのだけれど。
 でもやっぱりモモカは、ぜんぜん平気。
 だって、あったくてお洒落な冬の装いに加えて、ふわふわぽかぽかな懐の仔猫の体温と。それに何より、繋いだ旦那さまの手の温もりが包んでくれているのだから。
 そしてエアンも皆と楽しく歩きながら、冬の夜空に瞬く星を見て思う……とても幸せそうな輝きだと。
 けれどすぐに、こう思いなおすのだった。
(「……いや、幸せなのは俺だな」)
 吐く息は白いけれど、でも同じく胸元の仔猫の温もりと、繋いだ手から伝わる大切な人の存在。そしてそれを目一杯感じている今の自分の心は、あたたかな幸せに満ち溢れているのだから。
 でも、ふと――モモカはひとち、気になってしまう。
 それは、包み込むように自分の手を握ってくれている旦那さまの手。
 だから、すぐ隣を歩く彼の顔をじいと見つめて。
「ん? どうした?」
「ももはぬくぬくだけど、えあんさんのお手手が」
 ……冷えちゃわない?? なんて。
 見上げる視線に気づいて首を傾げる彼へとそう返していれば。
 次の瞬間、ピコーンと閃いて――スポッ!
 自分のコートの大きなポッケに、繋いだままの手をイン!
 そんな突然導かれたポケットの中、ふわりと不意打ちのぬくもりに包まれれば。
 エアンは一瞬、ぱちりと瞳を瞬かせるも……くっ、あはは! って。
 そう思わず、笑ってしまう。
 ピコーンと名案が閃いた後の妻の行動は、いつもわりと突然で。
 でもそれがまた、やっぱり面白く楽しくて。
「これで、えあんさんもぬくぬく?」
「そうだね、俺もぬくぬくだよ」
 向けられる視線と言葉に、ふわりと微笑みを返す。
「ゆっくりお散歩できるわね♪」
 歌うように数多の星が瞬く、聖夜の空の下――そう、えっへん満足気な、愛しくて可愛い妻の笑みに。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2025年03月28日


挿絵イラスト