料理対決! メイドVSシェフ
バルタン・ノーヴェ
ふたりのバレンタイン2025で納品されたピンナップのノベル化を発注させていただきます。
全体的にアドリブ・アレンジ歓迎です。よろしければよろしくお願いいたします。
タイトル:料理対決! メイドVSシェフ (※変更してもらってもOK!)
場所:ゴッドゲームオンライン
状況:バルタン・ノーヴェとその宿敵シェフ・ナカジマが、GGO内でのバレンタインイベントで料理対決クッキングバトル。
挿絵予定のイラスト: https://tw6.jp/gallery/?id=205682
概要:バレンタインイベントの一幕。プレイヤーがシェフ・ナカジマに料理勝負(テーマはチョコレート)を挑むという催しで、バルタンがチャレンジする。
勝っても負けてもナカジマの作ったチョコを食べられる企画なので挑戦者や観衆は多い。
白熱した料理対決、レッツファイト!
甲乙つけがたく引き分けで健闘をたたえ合う、というのが穏やかな着地点だとイメージしていますが、審査員の好みもあるので勝敗の行方はおまかせします。
【バルタン・ノーヴェ】
いつものサイボーグメイド。
GGO開通後にシェフ・ナカジマと超級料理人として接点ができ、交友関係を構築している。
バグったときに殴りに行ったらナカジマのデータが全損(宿敵撃破)する予感があるので、その時には他の猟兵に頼っている様子。
台詞イメージ「HAHAHA! 負けマセンヨ、シェフ・ナカジマ!」「正々堂々勝負デース!」
【シェフ・ナカジマ】
ゴッドゲームオンラインのNPCで、タヌキをモチーフにした獣人型の超級料理人。
大柄(2m前後)で穏やか、いつも笑顔でもふもふで、普段はプレイヤーにお使いクエストを発注してその報酬に料理のレシピや激レア素材を供給するクライアント系のキャラ。
最近ちょくちょくバグプロトコルに侵されている。
今回はバグプロトコルに侵されてない姿で、バレンタインイベントに際してバルタンを挑戦者として迎えて料理対決で場を盛り上げている。
今回のイベントでは、ナカジマは挑戦者の料理技能に合わせて作るため(装備枠を調整すれば)料理技能が1000レベルを超えるバルタンを前にすると凄まじい『本気』を出してくる。
台詞イメージ「悔いのない勝負をしようねぇ」「さあ、これが今日のメニューだよぉ」
●バレンタイン
ゲームの世界であるゴッドゲームオンラインにおいて、バレンタインデーに託つけて行われるイベントがある、というのは最早常識であった。
むしろ、イベントをしない、という選択肢など存在しない。
「そういうわけで、本日も張り切って参りましょう!」
ノンプレイヤーキャラクターの宣誓がフィールドに響き渡る。
その声にイベントクエストを観戦しているゲームプレイヤーたちの歓声が轟々と唸りを上げる。
イベントが大盛りあがりであることを知らしめるようでもあったことだろう。
「この私に料理勝負を挑んでくるとは、その意気や良し、だよぉ」
のんびりとした口調。
もふもふとした大柄の体躯。
それは『シェフ・ナカジマ』と呼ばれる狸の獣人めいたノンプレイヤーキャラクターであった。
彼はゴッドゲームオンラインでも名の知れ渡ったノンプレイヤーキャラクターだ。
主にお使いクエストと呼ばれるクエストにおいて、その依頼主として紹介されることが多い。
彼が依頼主となったクエストの報酬は、基本的に料理のレシピである。
稀にであるがレア食材を供給してくれることもある。
そんなわけで、ゴッドゲームオンラインの初心者ゲームプレイヤーが多く彼と接する機会を得ていたのだ。
「HAHAHAHA! 負けマセンヨ、『シェフ・ナカジマ』!」
だが、その本質を猟兵であるバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は知っている。
そう、『シェフ・ナカジマ』はバグプロトコルである。
とは言っても、今回は違う。
正真正銘の、ノンプレイヤーキャラクター、狸獣人の料理の鉄人『シェフ・ナカジマ』なのだ。
「悔いのない勝負をしようねぇ」
「無論デース! 正々堂々勝負デース!」
そう、このバレンタインデークエストは『シェフ・ナカジマ』が依頼主となるお使いクエストとは趣が僅かに異なる。
今回は、『シェフ・ナカジマ』との対決なのだ。
それも料理対決。
なかなかないことである。
ダララララ、とドラムロールが始まり、対峙した両者の間に特設セットが地面よりせり上がっていく。
壮大なBGMが流れ出し、また同時に特設セットには膨大な食材が溢れ出す。
新鮮な野菜。
数多の鮮魚、精肉。香辛料。
そんな多くの食材を滑るようにしたカメラワークと共に、フレームに飛び込むのがバルタンと『シェフ・ナカジマ』だる。
「私の記憶が確かなら」
司会のノンプレイヤーキャラクターがマイクを手にして、赤パプリカを丸のまま、かじる。
小刻みよい音が響き、食材の新鮮さをアピールするようであった。
「今回の対決者、バルタン・ノーヴェ氏と『シェフ・ナカジマ』氏のお二人は、ゴッドゲームオンライン開通時以来の仲。互いに超級料理人として切磋琢磨した日々。修行は辛くとも、互いに高め合うことができたのは、認め合っていたからこそ」
そんな記憶があったのだろうか?
いや、あったに違いない。
料理の腕前を磨くのとは全く関係のない修行の映像が流れ出す。
巨大な岩を山の頂きまで運ぶバルタン。
滝に打たれながら瞑想する『シェフ・ナカジマ』。
巨岩を指一本で穿つバルタン。
バタフライ泳法でもって川を遡っていく『シェフ・ナカジマ』。
どう考えても料理人として関係のない修行であることは言うまでもない。だがしかしである。
このような苛烈を極めるような修行があればこそ、今の二人の超級料理人としての今があるのだ。本当か?
「互いを好敵手と書いて、ライバルと呼んでいたのでしょう! 今宵、ここに宿命の二人の決着が付きます!」
司会の言葉に会場に詰めかけたゲームプレイヤーたちは歓声を上げ、手を叩く。
盛り上がる会場の空気にバルタンと『シェフ・ナカジマ』は笑む。
どう考えても料理対決の雰囲気ではない。
が、どこまで行っても料理対決なのである。
「それでは、今回の食材は~?」
だららら、とまたドラムロールが始まる。
特設セットのモニターに示されるのは、今回の食材……そう、即ち!
「チョコレート!」
分かっていたことである。
しかし、観客の誰もが『知ってた』みたいな顔はしない。誰もがどよめき、驚愕の表情を浮かべている。
お約束というか、空気を読んだとも言える。
むしろ、こういう場において『知ってた』みたいな態度こそが空気を冷めさせるものであると誰もが知っていたのだ。
だって、これはお祭りなのだ。
イベントクエストというお祭り。
であるからこそ、この場に集ったゲームプレイヤーたちは全員が心得ていたのだ。
「おおおお~っ!」
「フッ、チョコレートデスカ! 食材としては申し分なしデース!」
「甘いお菓子だねぇ。任せておいてよぉ」
二人は視線を互いに向ける。
緩やかな雰囲気ではあったが、両者の間には火花が散っているようであった。
「それでは両者、構えて!」
構えて?
ちょっと観客たちは一瞬冷静になったが、いや、ここは乗るべきだと感じ取ったのだろう。
「3!」
「2!」
「1!」
誰からともなくカウントコールが始まる。
膨れ上がる熱気が最高潮に達した瞬間。
「クッキング・オン!!」
調理開始を告げるコールが響き渡る。
バルタンと『シェフ・ナカジマ』は即座に動いていた。
「あーっと、両者一斉に動き出しました! まずは、食材の調達からでしょうか!」
二人が食材が並べ立てられたキッチンへと走る。
いや、どう考えてもチョコレート勝負なのだ。
精肉やら魚介などは必要ないだろう。
というか、セットなのでそこから使わねばならないという理由はないはずである。
だがしかし、二人の目は煌めいていた。
共につぶらな瞳。
キラリと視線を豊富な食材の中に走らせる。
二人が手を伸ばした瞬間、セットに配された食材が凄まじい衝撃と共に宙に舞う。
散る豚肉。
舞う鶏肉。
弾ける牛肉。
いずれもが、チョコレート勝負には一切必要のない食材であった。
「HAHAHAHA! 腕がなまってはいないようデスネ、『シェフ・ナカジマ』!」
「君の方こそ、さらに磨きが掛かったねぇ」
空中で交錯する二人。
いや、絶対普通に食材に手を伸ばしたほうが早いし、何も空中で格闘をしなくってもよかったはずだ。
だがしかし、二人は地面に着地し、唇の端から血を僅かに滴らせた。
「両者、スタートから激しい唾競り合いー!!」
司会もこれがクッキングバトルだということをすっかり忘れているのではないかというほどに白熱した実況を開始する。
普通の料理対決に格闘要素などあろうはずもない。
だが、忘れていやしないだろうか?
これは超級料理人同士の対決。
であれば、格闘の一つや二つするというもの。
無論、これはこのイベントクエストにおけるノンプレイヤーキャラクターである『シェフ・ナカジマ』が対決するプレイヤーの料理スキル似合わせて可変的に難易度を調整しているために起こり得る現象なのだ。
つまり。
「ごくっ……あの対戦者のプレイヤー……それだけの料理スキルを保有してるって、ことか」
「ああ、一体どれだけ料理スキルにポイントぶっこめば、こんなことになるのか想像もつかないぜ……」
「流石は皇帝より『超級』の称号を授かりしジョブ……!『料理の超人』は、格闘の一つや二つこなせないわけがないってことか……!」
要らぬ誤解がゲームプレイヤーの間で浸透している。
がしかし、二人の戦いは更に加速していく。
拳が打ち込まれれば嵐を呼ぶ。
蹴撃が激突すれば稲妻が走る。
互いの肉体がぶつかれば炎が立ち上る。
まさに百花繚乱の如き、料理対決は見守るゲームプレイヤーたちにとって、一つのエンターテイメントへと昇華していくものであったことだろう。
「一体、どっちが勝つんだ……!」
「まるきりわからないぜ!」
「でも、見ろ!」
指差すゲームプレイヤー。
その指先の先には、同時に調理を終えた二人が、がくりと膝をつく姿。
「ハァ、ハァ、ハァ……ッ、相変わらずの技の冴えデース、『シェフ・ナカジマ』!」
「ふぅ……やはり幾度見ても、君の腕前と発想には驚きを隠せないよぉ」
バルタンと『シェフ・ナカジマ』は額に珠のような汗を浮かべながら、互いに不敵に笑む。
その眼前には、あの格闘戦の最中に何がどうなって、そうなったのかさっぱりわからない見事なチョコレート作品が生み出されていた。
片や、塔の如き絢爛たるチョコレートケーキ。
豪奢な装いは、見るものを魅了し、その彩りで惹きつけるものであったことだろう。
そう、それは正しくハレの日に相応しいチョコレートケーキ。
薔薇の細工、ホイップ、どれもが高水準であることは最早語るべくもないだろう。アートとインテリジェンスの融合が、その塔の高さを誇っているようだった。
片や、滑らかで均一、基本を完璧に抑えた土台たるチョコレートケーキの上にバレンタインデーであることを主張するようなハート型クッキーとフレッシュさを宝石のような煌きでもって示す、ストロベリー・アンド・ラズベリー・ウィズ・ブルーベリー!
金箔とナッツの黄金色が眩しく、また添えられたクッキーもまたプレートの上で芸術作品の額縁のように主役を引き立たせている。
「こ、これが超級! 二人の超級料理人のたどり着いたチョコレートの極地!」
甲乙つけがたい出来栄え!
誰が見ても、どちらが、とは言えないものだった。
審査委員たちも困り果てているようであった。
どちらかを決めねばならない。
だが、二人は互いに笑む。
わかっていたことだ。
「これはぁ」
「ええ、引き分けデース!」
互いを認め合うからこそ出された結論であった。
けれど、これでいいのだ。互いに認めあい、高め合う。
これまでもそうであったように、これからも変わらぬことなのだと示すように、二つのチョコレートケーキは、二人の友情と同じように輝くのだった――。。
成功
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