ダーティ・ゲイズコレクターたちは、分かたれない
ダーティ・ゲイズコレクター
下記の内容でバレンタインノベルの作成をお願いします!アレンジ・改変、問題ありません!大歓迎です!
●シチュエーション
デビルキングワールドに住む幼馴染「エクサイト」とワルな感じの繁華街のカフェテラスで楽しくお茶会するダーティ。
バレンタインということでお互いに手作りチョコを披露しあう。
ダーティが作ったのは蝙蝠のような形をしたチョコレートで、ビターでほろ苦い甘さのチョコレート。
「エクサイト」が作ったのはドクロマークのチョコレートで、蕩けるような甘さのミルクチョコレート。
交換し合いながらお互いのチョコレートを味わっていると「エクサイト」が面白いチョコレートを売っていたから
思わず買ってしまった、とそのチョコレートを取り出す。
それはバレンタインには似つかわしくない、ハートにギザギザ模様が描かれていて、失恋とか別れを連想しそうな
中々攻めたデザインのチョコレートだった。
●プレイング
ここのお店に来るのは久しぶりですね!エクサイトちゃん!前よりも賑やかになっている気がします!
見晴らしもいいですし人が多くなってもゆったりとくつろげる雰囲気があるからかもしれませんね!
こうして「エクサイト」ちゃんと優雅にお茶をしながら街中を走る現金輸送車と強盗団を眺める……とびっきりの休日ですね!
ふふふ……もちろんわかっていますとも!じゃーん!ダーティ特製、超ワルな人生甘くないぜチョコレート!
だいぶカッコいいチョコレートになったかなと自負しています!「エクサイト」ちゃんは?どんなのをご用意されたんですか?
わぁ!凄くカワイイ……名前もなんだか蕩けるような蠱惑的な響きではないですか!美味しそう……じゅるり
はっいけない!私としたことがはしたない!家に持って帰るまで我慢…!え?「エクサイト」ちゃんも我慢できない感じですか?
じゃ、じゃあここで食べちゃいましょうか!カフェテラスだけど持ち込みしちゃうなんてワルですね!もちろん店員さんは了承済みなのでご安心ください!
ん~!おいひ~!期待を裏切らない素晴らしいチョコレートれふぅ~!美味しさの蜜に沈んでいきそうな……危険ですぅ~!
んえ?面白いチョコ?気になります!是非とも見たいです!
おぉ~これは中々……攻めたデザインですね~!おや?メモも同封されてる……どれどれ、えーっと、両端を掴んで同時に左右に引っ張るとギザギザ部分できれいに別れます。おススメの食べ方です。
モテない恨みつらみをお菓子作りへと昇華させた私の渾身の作品をどうぞご堪能ください……なるほど、ワルですね~!
では早速言われたとおりに割ってみましょう!仲良く半分こできると思えば、素晴らしいチョコだと思いませんか?
●バレンタイン・チョコ
繁華街のカフェテラスの穏やかな時間とは裏腹にテラスの向こう側では、穏やかさとは無縁のような音が鳴り響いている。
デビルキングワールドの街並みは、いつもどこか騒々しい。
騒ぎに事欠かない世界でもあった。
ともあれ、そんな世界にあってもアフタヌーンティーという風習は存在するのだろう。
テラス席に注ぐ陽の光と騒動の音。
なんだかとってもミスマッチであったが、デビルキングワールドの住人たちにとっては、子供の笑い声程度の認識でしかなかった。
少なくとも、ダーティ・ゲイズコレクター(Look at me・f31927)と、その幼馴染にでもあり、仕立て屋『エクサイト・テーラー』の主人でもある『エクサイト』はまるで動じていなかった。
ワルたるもの、騒々しい程度、春の微風としか思わないものである。
手にしたティーカップの紅茶がさざ波を刻んでも、一向に構わないのだ。
「ここのお店に来るのは久しぶりですね!『エクサイト』ちゃん! 前よりも賑やかになっている気がします!」
どかんどすん。
いや、賑やかって言うより、と普通の友人なら言ったかもしれないが、『エクサイト』もまたデビルキングワールドの住人。
そうだね~となんだかのんびりな具合である。
見晴らしの良いテラス席は、街の様子が見えるし、行き交う人々を眺めるのもそう悪いことではない。
それになにより、風が心地よい。
かと思えば、現金輸送車が疾走し、暴風みたいな風を生み出している。
今日も元気に銀行強盗。
ワルの道も銀行強盗からというやつである。
最高にクールである。
「とびっきりの休日ですね!」
そうだね~と『エクサイト』は頷いた。
「で、ダーティちゃん~」
「ふふふ……もちろんわかっていますとも!」
ダーティは悪い笑みを浮かべた。
にやり、と薄ら暗い仄かな闇を湛えた顔は、『エクサイト』も同様だった。
ワルな雰囲気がテラス席に満ちる。
「じゃーん!」
二人が同時に己の持っていた手提げ袋から取り出したのは、一つの箱だった。
ラッピングされた箱。
どこかファンシーで可愛らしい。
「おまたせしました! ダーティ特製、超ワルな人生甘くないぜチョコレート!」
「わあ~蝙蝠の形してる~かっこいい~」
「そうでしょう、そうでしょうとも。ビターでほろ苦なテイストのチョコレートですよ! 人生甘くないぜ、と掛けているんです!」
ダーティは、むふん、と自慢げに胸を張る。
そして、『エクサイト』が差し出した箱を見つめた。
そこにあったのは、ドクロ型……いや、ドクロマーク。
海賊船の旗のシンボルのような形をしたチョコレートだった。
「わたしのは~蕩けるような甘さのミルクチョコレートだよ~」
「わあ! これもかっこいいです!『エクサイト』ちゃんの器用さがにじみ出ていますね!」
二人は互いの作ったチョコレートを交換するために、今日こうして出かけてきたのだ。
なら、せっかくだしお茶でもしようよ、という段取りになるのは当然の帰結でもあった。
「じゅるり……」
『エクサイト』の作ったチョコレートが醸し出す蕩けるような甘い香りにダーティはもうよだれが止まらなかった。
蠱惑的なデザインに香り。
全てが『エクサイト』という職人技によって作り出されているのだ。
当然、垂涎の逸品であることは言うまでもない。
「はっ! いけない! 私としたことが、はしたない! 家に持って帰るまで我慢……!」
「ダーティちゃん~ごめん~わたし我慢できないかも~」
「んえっ!?『エクサイト』ちゃんもですか!?」
「うん~だって、ダーティちゃん特製なんでしょ~? そりゃあ、我慢出来ないよ~」
「……そですうね! では、ここで食べちゃいましょうか!」
しかし、飲食店に持ち込みなど悪行である。
無許可で持ち込み飲食物を貪るなど、許されることではない。
だがしかし!
そうしかし!
ここデビルキングワールドでは、ワルこそクールなこと。
であれば、持ち込み飲食などクールなことなのだ!
「い、いちおう~店員さんにお断り入れてからのほうがいいよね~」
「そ、それはそうですね!」
ワルに徹しきれないところも、二人らしいところであった。
二人は、店員に持ち込みを食べていいかを断ってから、いざ、実食と互いに交換したチョコレートを頬張る。
「んっ! これは~!」
「おいひ~! 期待を裏切らない素晴らしいチョコレートれふぅ~!」
ダーティの目はメロメロになっていた。
蕩けるような甘さ。
美味しさの蜜に沈んでいくようにさえ思える甘さ。甘さが次々とダーティの手を取って、チョコレートの湖へと引きずり込んでいくようであった。
それはあまりにも蠱惑的な甘さ。
身も心も、それこそ骨の髄まで蕩け落とすような甘味の奔流にダーティは身悶えするようであった。
「……はぁ、はぁ……これは、危険ですぅ~!」
「だ、ダーティちゃんのも~すごいよぉ~! ビターなのに甘さが後から追いかけてきて壁ドンするみたいで~とっても、とってもすごいよ~!」
『エクサイト』も『エクサイト』で、やっぱりダーティのチョコレートに身悶えしていた。
ぎゅっと肩を抱いて、ほぅ、と恍惚とした表情を浮かべている。
そんな二人が互いのチョコを堪能していると、『エクサイト』がさらに手提げ袋をガサゴソとやり始めた。
「ん? どうしたんです、『エクサイト』ちゃん」
「ん~とね~面白いチョコをね~買ったんだよ~ダーティちゃん、気になるかも~って思って~」
「気になります! ぜひとも!」
「だよね~」
そう言って『エクサイト』が示したのは、一つのチョコレート。
それもハート型である。
ただ、それだけなら普通のチョコレートであると言えただろう。
だが、問題は形ではない。
そのハート型の中心に稲妻走るようにキザギザが掘られているのだ。
「お、おお~これはなかなか……攻めたデザインですね~!」
「でしょ~ほら、みて~メモにね~?」
「なになに……えーと、両端を掴んで左右に引っ張ると、ギザギザ部分で綺麗に別れます。オススメの食べ方です……と?」
あまりにもバレンタインに似つかわしくない。
まるで恋人が別離することを暗喩しているようでもあったし、失恋を連想させるような文言である。
なんていうか、普通に売れると思って発売したのだろうか、とさえ訝しんでしまう。
「モテない恨みつらみをお菓子作りへと昇華させたパティシエさんなんだって~」
おかしいね、と『エクサイト』は笑う。
逆にパティシエなんてモテモテな気がしないでもない。
こういう恨みつらみを表に出しちゃうところがモテない原因なんじゃないかな、と思わなくもない。
「なるほど、ワルですね~」
「やってみちゃう~?」
それは友人同士でも別離を齎すかもしれない。
だが、二人の考えは違ったようだ。
「フフフ、パティシエさんには悪いですが、逆に考えれば『仲良くはんぶんこできる』ということでもあります」
「んね~そうだよね~」
そう言って二人は両端を掴んで引っ張る。
ギザギザ部分がひび割れるようにして綺麗に真っ二つ。
けれど、二人は笑う。
だって、半分になったんじゃあなくて。
「これで二つになりました! さあ、食べましょう!」
そう、互いに分け合って食べる、別離とは無縁の無敵の二人の証明だったのだから――。
成功
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