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【SecretTale】忘却の先

#シークレット・テイル

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#シークレット・テイル


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●サクッと前回
 |侵略者《インベーダー》・ミメーシス。その存在がフェルゼンに憑依した個体だけでなく、アビスリンク家執事長であるマルクス・ウル・トイフェルもミメーシスだと判明した。
 彼はフェルゼンに憑依した個体とは違い、200年前にやってきた個体。そのためエルグランデは今回2度目のミメーシスの侵略となる。
 しかしミメーシスは200年前には順調に侵略していたにも関わらず、|何故か《・・・》撤退した。自分達が侵略行為を続けている間、何かを理由に母たる存在はエルグランデから撤退したそうだ。
 その理由については現状は不明。200年前に『撤退せざるを得ない理由』があったと推測が立てられているが、マルクスもその理由については思い浮かばないそうだ。

 そして場面は変わり、エーミール・アーベントロートについて。
 彼は既に戦意喪失状態ではあるが、エミーリア・アーベントロートに近づくと頭痛を引き起こす症状を持っている。
 《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》の研究結果によるものかと思われたが、実際にはそうではなく。彼の頭の中にはコントラ・ソールによって作られた呪詛が埋め込まれていた。
 これにより彼のエルドレットに対する憎悪が強く引き出され、それに付随してエミーリアへの嫌悪感と頭痛を引き起こされていることが判明。
 『エミーリアはエルドレットが作り出したコピーチルドレン』という理由から怒りを抱いているようだ。

 最後に、スヴェンの記憶について。
 これは彼の伴侶であるザビーネ・シェン・ヴェレットによって忘却させられたことが判明。
 コントラ・ソール《|忘却《オルビド》》によって忘れさせ、彼が『今回の事件を引き起こした張本人』だと判明して自害しないようにしていたことが理由だ。
 これに関しては《|忘却《オルビド》》の力により、いつでもスヴェンに返すことが出来る。今はまだ返さないほうがいいとザビーネは考えている様子だが、はたしてどうなるか。

●まるっと今回
 そして、現在。コントラ・ソール《|忘却《オルビド》》による忘却事件は、もう一つ起きていたことが判明する。
 記憶喪失の異世界の少女アルム・アルファード。彼女の記憶喪失は《|忘却《オルビド》》によって奪われているものだと判明した。
 ゲートをくぐり抜けた際に《|忘却《オルビド》》の力が付与され、彼女自身の記憶に蓋がされた……というのが真相らしいが、その《|忘却《オルビド》》の使用者が『ザビーネ・シェン・ヴェレット』になっていることが一つの疑問となっている。
 もちろん、ザビーネ本人は司令官システムの奥底で眠りについていたため、アルムがエルグランデにやって来た瞬間に力を使うことは出来ない。

 そして、何より1番大事なのはコントラ・ソールの使用者形跡は簡単には変えられないという点。
 たとえ他人のコントラ・ソールを利用できる《|模倣《コピー》》や《|盗賊《シーフ》》で使用したとしても、もともとの所持者ではなく《|模倣《コピー》》や《|盗賊《シーフ》》の使用者が形跡として残る。
 ザビーネが使っていないはずなのに、ザビーネが使っていると形跡が残っている。これはある種の異変なのだ。

「……腑に落ちませんね」

 マリネロの街の海岸で、ルナールが小さく呟く。
 何故アルムがこの世界に来たのか。何故《|忘却《オルビド》》の使用者がザビーネになっているのか。
 何故、何故、何故、何故。降り積もる『何故』の言葉だけがルナールの頭の中を支配してしまう。

「まあ、確かにな。ザビィが寝ている間に使った、とかでもなさそうだし」

 同じくゲートとその周辺を調査していたエルドレットが呟く。
 念の為に自分の目で確かめたいからとマリネロの街にやってきたのはいいが、ゲートに仕掛けられたカラクリがどうにも解けずに頭を悩ませていた。
 答えを導き出す《|解答者《アンサー》》を使って1度はカラクリの答えを見つけたが、ある条件が設定されなければ難しいという理由で却下されているほど、このカラクリは難しいようだ。

「と、なると。猟兵の皆様方に頼む必要がありますか?」
「そうだな。視点を変え、俺達では見つけられない情報を見つける可能性がある」
「彼らはコントラ・ソールとは違う力を持ちますからね。私の《|観察眼《ディサーニング》》でも見つけられない部分を見つけてくれるでしょう」
「だなぁ。じゃ、ちょっとゲート開いて待ってみるかね」

 そう言うとエルドレットは一言二言、司令官システムの内部にいる者に声をかけてゲートを開く。
 上空に空間に真っ黒な穴が開いたかと思えば、はらりと落ちるは不可思議な花びらばかり。その先につながっている場所については、ここからでは見えないようだ。

「どこに、どう繋がってるんだか……」

 ぽっかりと開いた黒い穴。それは未だ残る中央諸島上空の大穴にも似ているな、とエルドレットは笑っていた。


御影イズミ
 閲覧ありがとうございます、御影イズミです。
 自作PBW「シークレット・テイル」のシナリオ、第12章。
 今回はマリネロの街の海岸にある《ゲート》について調査します。
 初めての参加でも「ここ気になるなぁ」等で調査が可能となってますので気楽にご参加ください。

 シークレットテイルHP:https://www.secret-tale.com/

 場所はマリネロの街の海岸。
 上空には小さなゲートが開いており、そこからは白い花びらが落ちてきています。
 空を飛べるようになればゲートの先の世界を見ることが出来ますが、推奨はされません。(理由は断章にて記載)

 また今回同行のNPCは『ルナール』『エルドレット』となります。
 エルドレットが同行しているため、司令官システムのメンバーと会話をつなぐことも可能です。
 そのため今作では司令官システムのメンバーとの会話のみでもOKです。

 皆様の素敵なプレイング、お待ち致しております。
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第1章 日常 『プレイング』

POW   :    肉体や気合で挑戦できる行動

SPD   :    速さや技量で挑戦できる行動

WIZ   :    魔力や賢さで挑戦できる行動

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Mission-12
 シナリオのクリア条件
 ゲート調査&状況調査(どちらかだけでOK)

 ゲート調査 フラグメント内容
 POW:ゲート周囲の状況調査
 SPD:海岸全体の調査
 WIZ:魔術的にいろいろ確認




●エルドレットの『恐怖』
「…………」

 空から落ちてくる花びらを見て、エルドレットの表情はあまり良くなかった。
 花そのものが悪い、というわけではない。落ちてきているという状況が悪いわけではない。
 ただ、昔のことを思い出してしまう。それだけのこと。

「……先生?」

 そんなエルドレットの様子にルナールが声をかけた時には、いつもと変わらない表情のエルドレットがいる。
 普段通りの、天真爛漫な司令官。そんな様子のエルドレット・アーベントロート。
 だけど彼はこの状況を、白い花びらが埋め尽くされる状況をただ一言だけで告げた。

 ――ちょっと、怖い。


●花びらの正体
「そういえば、既にこの花についてはジャックから情報がありましたね」

 落ちてくる花びらを1つつまんで、ルナールが思い出す。アルムが落ちてきたときのことを。
 彼女は空から落ちてくる状態だったが、運良くマリネロの街の人々によって助けられた。当時からアルムは記憶喪失だったが、今思えば《|忘却《オルビド》》によって記憶に蓋をされて落ちてきたと考えれば納得がいく。

 そしてこのゲートの近辺にはある花の花粉が微量に残っていることが判明していた。
 ジャック・アルファード曰く、この花は|呪いの花《カースリリー》と呼ばれ、彼の世界でいう魔物のような存在『闇の種族』はこの花を嫌っている。まあ、教えてくれた本人もこの現場に来て花粉だけでひどい症状になっていたが。
 この花はアルムの故郷にしか存在しない花。そのため必然的にアルムの故郷の土地に繋がっていることは窺えるだろう。

 今もなお開かれているゲート。しかしエルドレットは入らないようにと忠告を促す。
 ザビーネが使ったと判定をくだされている、記憶を忘却させるコントラ・ソール《|忘却《オルビド》》。その力がまだゲート内をくぐり抜ける者に作用する状態だからと。
 《|忘却《オルビド》》は『いつ』『どこ』『どんなタイミング』と指定した範囲の記憶を忘却させることが出来る。そのためエルドレットは今は入るのは危険だと告げた。

「忘却の範囲が何処から何処まで指定されているかがわかっていないんでな。入るにしても、準備が必要だ」
「それこそ……|コントラ・ソール以外の力を使って《・・・・・・・・・・・・・・・・》準備しないと、な?」

 何か含みのあるような言い方をするエルドレット。
 さて、どのように調査を進めるか……。
響納・リズ
残念ながら、無効化する力は持っていないので、生まれながらの光で自身とアーティアを随時癒しつつ、ゲートの周辺を出来る範囲で調査いたしましょう。(アーティアに乗って調査)
可能であれば、カメラを持ち込み、ゲートの外側から内部が見えないか、もし見えるのであれば、それをカメラに収めて、ゲートの先がどこなのかを突き止めたいです。
また、外で見る範囲で分かることも調べて、報告しましょう。

「私ができることは、これくらいしかないですが、それでもお役に立てれれば……嬉しいですわ。フェルゼン様のことも心配ではありますが……」
少し不甲斐ない自分を想い、辛そうな表情を浮かべつつ、協力してくれるアーティアの頭を撫でます。



●Case.1 向こうの世界
 白い花びらが広がるマリネロの街の海岸にて、響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)がエルドレットとルナールと合流。これまでの情報をまとめ、ここから何をするかを考えた。
 アルムが取ってきたゲートは空高くに浮いており、地上からは黒い穴が虚空に出来上がっているという情報しか見つけることが出来ない。
「と、なると……この子に乗って調査したほうが良いですね」
 そう呟くと、リズはペットのグリフォン・アーティアを呼び寄せる。彼は偶然助けたグリフォンだが、思った以上にリズに懐いているため守護者として一緒に戦ってくれる。
 そんなアーティアの背に乗ると、彼女は空を飛んで虚空に開いたゲートの周囲をぐるぐると確認。白い花びらが吐き出される地点をじっと見つめる。
 ゲートは繋がっている世界の先を隠すように、真っ黒に塗りつぶされている。しかしじっと見続ければ確認できるようで、アーティアに空中で待機してもらってリズはゲートの先をじっと見つめる。
 黒い世界から流れ込む白の花びら。やがてゲートは『リズが興味を示している』と判断したのか、じわじわとその先に広がる世界を見せるように光景を映し出した。

「わあ……!」
 目にも鮮やかな、白い百合のような花が咲き乱れている光景。ゲートは花畑の中央に作られているようで、もっと遠い先には山や高い壁に囲まれた城が存在しているのがわかる。アルムやジャックの故郷の世界はどうやら西洋風の世界のようだ。
 更に向こうの世界は少し風が強く吹いているようで、花が大きく揺れて花びらを飛ばしている。同時に花粉も少し飛んでいるようで、向こうの世界は白と黄色の彩りが少し強くなっていた。
「こんな綺麗な世界があるなんて……。もう少しだけ、見ていたいですわね」
 あまりにも美しい光景。目に焼き付けるために、そして情報を見つけるためにゲートの先を見張っているリズ。近づきすぎればゲートに吸い込まれ、《|忘却《オルビド》》の力を受けて向こうの世界に飛んでしまう可能性が高いため、慎重にアーティアに近づいてもらったのだが……唐突にリズの耳に声が届けられた。


  ――近づくな。
  ――この世界は、|私とあの子《・・・・・》が使うのだから。


 何処からともなく聞こえてきた声。それはルナールに似ているような声で発せられており、リズは思わず辺りを見渡してから、もう一度ゲートの先の世界を見る。
 するといつの間にか、花畑の中央に表情は見えないが誰かがいるのが見えた。その人物は何かの力で顔を隠しているようで、誰なのか特定するに至れない。
「あ、あなたは……??」
『…………』
 相手が誰なのかはわからないが、もう一度声を掛けるリズ。近づくな、と言ったのは《|忘却《オルビド》》の影響を知っているからなのか? と問いかけても、その答えが返ってくることはなかった。
 むしろ相手にとってリズは敵でしかないようで、手を振りかざすと唐突に炎を作り出してリズへと向けて射出する。
「っ!?」
 間一髪、リズはアーティアを上昇させてその炎を回避。ゲートの先にいた人物はその一撃を放ったあとは姿を消したのか、もう一度確認しても何処にもいない。
 またゲートの先から炎が出たことで、エルドレットとルナールも何が起こったのか把握した様子だ。エルドレットはすぐさま司令官システムを通じて箱庭世界の管理者であるベルトア・ウル・アビスリンクへ連絡をいれ、状況を確認してもらうことになった。


●Case.2 未来
「つまり、顔が見えないやつがいて……」
「その人物は、世界を使うと言っていたと」
 地上に下りたリズはアーティアを休ませつつ、エルドレットとルナールに報告していた。
 2人もリズが受けた炎は見ていたため、誰かいた、というのは理解している。けれど実際に姿を見たわけでもなければ言葉を聞いたわけでもないため、リズの情報が頼りになる。
 とはいえ、リズ自身も情報が少ない。声の主がルナールに似ていたこと、けれどフェルゼンではないことは確実にわかっているぐらいで、それ以上の情報はない。
「フェルゼン様だったら、既に姿を表していると思うんです。だから……」
「だから、他の奴がいるってことになるか。……うーん、難儀」
 エルドレットが眉根を寄せて色々と考える。そのうちルナールが実際にゲートの方に見に行けば良いんじゃないか? と閃きを見せたが、ルナールは首を横に振った。無理だと。
「あいにく私は父と同じで高所が苦手でして。リズ殿が上がった高さだと失神します」
「それは……無理はさせられませんわね」
「親子揃って大変だな。と言っても俺でも魔眼形式は持ってないしなぁ……」
 エルドレット曰く、司令官システムはあらゆるコントラ・ソールを持っていても、魔眼形式のものは所持できない。これは目の角膜に直接コントラ・ソールが練り込まれてるもので、非情に再現が難しく今も成立しない能力なのだそうだ。
 そのため、《|観察眼《ディサーニング》》の魔眼を持つルナールには直接ゲートの先を見てもらわなければならないが、その本人は高所に行くと失神してしまうため魔眼の力を発揮できず。前途多難な状態となっていた。

「もどかしいですが、今はこの情報を持ち帰っただけでも良しとしたほうがいいのかもしれませんわ」
 少し不甲斐ない自分を想い、辛そうな表情を浮かべたリズ。こうしている間にもフェルゼンがどこで、何をしているのかと頭の中で考えてアーティアの頭を撫でる。
 彼が生きていること、それだけが気がかり。そんなリズの様子にエルドレットが同じようにアーティアの背を撫でると、一言だけ呟いた。
「……アイツに情を抱くのは、あまりおすすめ出来ないかもしれない」
「……?」
 その言葉の意味をリズは理解できなかった。|今はまだ《・・・・》。
 ただ、エルドレットの表情はあまりにも苦しそうだ。まるでその先の、フェルゼンの未来を知っているかのような表情。未来を知っているからこそ、そこへ至れないかもしれないという苦しみの表情。
 未来を予知できる《|預言者《プロフェータ》》のコントラ・ソールを持っているからこそ、彼はもう既にフェルゼンがどうなるかを見ているのだろう。
 だけど、リズは首を横に振った。フェルゼンの未来がどうであれ、確定していない|未来《モノ》で悲観するわけにはいかない。まだ変えることが出来るのならば、手を伸ばすだけだと。

「私は、フェルゼン様も、皆様も、必ずお救いしたいと思っています」
 決意がみなぎるリズの紫の瞳には、やってみせる、という表情を浮かべていた。



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 ・ゲートの先には誰かがいるようです。
 →長く見続けていると攻撃される模様。
 →現時点で正体不明となっていますが、声はルナールにそっくりのようです。
 →「この世界は私とあの子が使うのだから」の言葉を残しています。

 ・現在、上記の人物について管理者ベルトアから連絡待ちとなります。
 →連絡はシナリオ中に聞くことが出来ます。

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大成功 🔵​🔵​🔵​

黒木・摩那
前から花粉症?を発生させていた花びらの出所はゲートの先にある、ということですか。
まだ入るには早いということですが、世界情勢はまったなし。
悠長に構えている場合ではありませんし、相手は来るなと言っても、それがどちらの危険のためかも分かりません。もしかすると救助が必要なのか、それとも単に排他的なのか。二人だけの世界を作るのは構わないのですが、結果それで世界が不安定化してしまってはよろしく無いです。

ここは相手の出方を見るためにも攻撃上等で進入を図るべきかと考えます。
強行偵察します。待っていては状況は動きません。
忘却の力の影響も掴まないとです。

マジカルボード『アキレウス』でゲートにGo!です。



●Case.3 行ってみなきゃわからない!
「なるほど。前から花粉症……? らしきものを発生させていた花びらの出所はゲートの先にある、ということですか」
 マリネロの街の海岸へとやってきた黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)はいそいそとマジカルボード『アキレウス』を準備し始める。
「えっ、何? なんで?」
 その様子にエルドレットが焦りを見せた。ゲートに飛び込んだとしても《|忘却《オルビド》》のコントラ・ソールが残っている限り、たとえ猟兵である摩那といえどもその影響は受けてしまうだろう。
 しかし摩那はエルドレットの焦りを気にすることなく、アキレウスの調子を整えてから空を舞い、エルドレットの阻止を聞く前にゲートへと突入した。

 ゲートの先へと入ると、一瞬だけ身体が蜘蛛の糸のように絡め取られたかのような感覚に陥る。頭の中もぼんやりと、薄い霧がかかるような感覚があった。
 だが摩那のユーベルコード『フリーダムブレイズ』によって発生した燃え盛る炎のオーラがそれらを反射し、更に《|忘却《オルビド》》による忘却も反射していく。
(……?)
 ただ、それとは別に。摩那は少しだけ生命力を奪われる感覚を味わった。コントラ・ソールのような力で吸われたようなものではなく、まるで|人の指で掴んで《・・・・・・・》奪い取ったような感覚。
 スマートグラス『ガリレオ』でチェックしても、この感覚だけはコントラ・ソールによるものではないことが判明している。ゲートそのものが生み出した機構のようで、生命力の消費を止められる手法はないようだ。
 幸いなことに生命力を奪われる感覚はそこまでガッツリというわけでもなく、2本の指でつまんで抜き取った程度の感覚。心配するには値しないようだ。

 その後、摩那は無事にゲートの奥の世界へと到達。アキレウスで花を傷つけないようにゆっくりと降りつつ、まずは自分の身に起こったことを確認した。
「力の影響は……」
 ぐっと拳を握り、《|忘却《オルビド》》の影響がないかをチェックしていく摩那。
 ユーベルコードによって全て反射されたものの、確かに脳に霧がかかった手応えはあったし、なんなら妨害を受けている感覚もあった。
 つまりゲートに貼り付けられている《|忘却《オルビド》》は現在も生きており、ユーベルコードによる対策がなければ通ることは叶わないといった状態。完全に解除するには持ち主に解除させるか、消却用のコントラ・ソールやユーベルコードを用意する等しなければならないようだ。
 それが知れただけでも、十分な収穫ではある。だが摩那はもう少し、|こちらの世界《・・・・・・》を少し調べてみることにした。

「救助が必要なのか、それとも単に排他的なのか……」
 キョロキョロと辺りを見渡してみても、先に見えた人物はいない。大きく風に揺られる白い百合のような花が一面に咲き誇るだけで、人の姿は何処にもなかった。
 ただ、花が多少折れている部分もあることから、誰かがいたという事実は残されている。その人物が誰だったのかまでは摩那には特定できないが、事実が残っていることだけ確認できたことは幸いなこと。
「あとは……」
 念の為、マリネロの街で確認できた花粉と同系統のものかどうかをスマートグラス『ガリレオ』でチェックして、確実に同じものであると情報を収集。もう一度ユーベルコードを用いてマリネロの街へと戻り、エルドレットやルナールに報告をしておいた。


●Case.4 違和感
「……ということで、以上が私の集めた情報になります」
「はえー、良かったぁ……すごいね、レディ」
 戻ってきた摩那にホッと胸をなでおろしたエルドレット。最高司令官とはいえ、客人である摩那に何かあったらと思うと気が気でなかった様子。
 すぐさま摩那に集めてもらった情報を司令官システムに回し、他の演算を後回しにしてゲートとゲート先の世界についての情報を精査してもらった。

 今回通ったゲートには、コントラ・ソール《|忘却《オルビド》》以外にも複雑に絡み合った形でコントラ・ソールが張り巡らされており、それが摩那の身体を一瞬だけ絡め取ったのだと判定が下った。
 進行妨害の《|妨害《サボタージュ》》、精神力を奪う《|簒奪者《ウーサーパー》》、対象への認識変更の《|意地悪《マルドーソ》》。観察に長けているルナールでも、判明できたのはこの3つが限度のようだ。
「……私が見えるのはこのぐらいでしょう。複雑なのでこれ以上は無理です」
「いろいろ入ってるんですねぇ。全部反射しましたけど」
「猟兵さんって結構規格外よな……」
 全部反射したと聞いて驚愕するエルドレット。コントラ・ソールで同じことを再現するならば、複数使用でなければ難しいか、専用のコントラ・ソールがないと難しいという。
 コントラ・ソールはそれそのものとの相性はあるが、外世界からの力には弱い。エルグランデという世界だからこそ効果が発揮されるものであり、他の世界に持ち込むと多少は弱体化するのだ。

「あと何か、身体に異変とかある?」
「そうですね……」
 少しだけ身体を動かし、不調がないかを確認していく摩那。入るときとは変わらず、特に怪我をしているわけでもないためエルドレットには通常通りと答える。
 ただ、ゲートに入ったときの別の違和感があったことだけは報告しておいた。生命力を指2本でつまみ、奪われるような感覚があったことを。
「ああ、それはゲートを通るときに必ず起きる現象だね」
「通るときに必ず……?」
「そう。|何故か《・・・》このエルグランデにゲートを繋ぐと、生命というか、何かが抜けていく感覚がほんの僅かにあるんだ」
 ルナール曰く、ゲートからの干渉で生命力を奪われる感覚があることは珍しいことではないらしい。たとえ外からやって来る者でも、ゲートという輪を通れば誰しもが必ず起こることだと。
 ただ、猟兵がそうして奪われる報告があったのは今回が初めてなのだそうだ。これまではなんともなかったところを見ると、猟兵は除外されていたか、あるいは……。
「仲間と認められたから、とか……?」
「ふむ……それだと面白いんだが」
 摩那の言葉に、少々苦笑を漏らした様子のルナール。
 どうやら彼はゲートについて、何か事情を知っているようだ……。


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 ・ゲートの先の世界は平和なものでした。
 →今回は既に調査済みとなります。
 →以降の調査は、一旦は特に何もありません。

 ・ゲートを通る時『生命力をわずかに奪われる』ことが判明しました。
 →行動に支障は一切ありません。
 →例えるならば指2本でつままれて奪われる程度です。

 ・ゲートには複数のコントラ・ソールが仕掛けられていることが判明しました。
 →《|妨害《サボタージュ》》、《|簒奪者《ウーサーパー》》、《|意地悪《マルドーソ》》まで判明しています。
 →その他は依然として不明です。

 ・ルナールはゲートに関して何か知っているようです。
 →以降のプレイングで話を聞くことが可能となりました。

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大成功 🔵​🔵​🔵​

唯嗣・たから
たから、お空に向かう手段ないから、状況調査、する。海岸に何か手がかり、ないかな。花弁は、フード被って直接、触らないようにする。あんまり触らない方が、いいかなって。

そうだ、ルナールさん、一緒にお散歩しよ。そろそろ陽射しも、暑いから、アイス食べながら。たから、いちごアイス食べる。たからたちだけだと、人手が足りない、クロたちもお願い。ルナールさんから、お話を聞きつつ、海岸に何かないかお散歩するよ。ルナールさん、ゲートについて、教えてね。

あとね、貝殻、拾う!掘ってみたりしたら、なんか見つかるかな。お山、作ってみようかな…?



●Case.5 落とし物
「たから、お空に向かう手段、ない……」
 しょんぼりと空を見上げ、ゲートがあるであろう場所をじっと見つめる唯嗣・たから(忌来迎・f35900)。ゲートの先の世界へ向かうには空を飛ぶ手段が必要のため、現状そこへ到達する手段のないたからにはどうしようもなかった。
 その代わりにマリネロの街で買ったいちごアイスを食べつつ、ルナールと散歩をしながら海岸を歩いてみようと提案。今日は暑さの強い日、故にアイス食べながら涼もうよと。
「ふむ。確かにまだ海岸付近は探していなかったし、良いタイミングかもしれないね」
「でしょ。ルナールさん、アイス、なにがいい?」
「私もいちごアイスでいいよ。先生はどうしますか?」
「あー、じゃあ俺チョコ頼むー。バニラチョコあったらそっち」
「はーい」
 マリネロの街に戻ってアイスを購入し、ルナールと共にゆっくりと海岸を歩いてみるたから。口の中に甘酸っぱい風味が広がり、ひんやりとしたなめらかな口触りが喉を通って、身体を少しずつ冷やしてくれていた。

 そんな中でマリネロの海岸をゆっくりと歩いてみると、空から降り注ぐ白い花びら以外にも様々なものが落ちているようで、海岸に似つかわしくないものがいくつかチラホラと落ちていた。
 壊れた機械の部品、文字が読めないメモ、このあたりには生えていない巨木の枝、クリスタルの破片……そのどれもがマリネロの街に存在するものではなく、別の世界から落ちてきたもののようだ。
「お宝、いっぱい!」
「ふむ。確かに見方によってはそう見えるか」
 いくつも転がる不思議な物品の中から、キラキラ輝くクリスタルの破片に目を輝かせたたから。しゃがんで砂を掘り返して破片を拾い集めていく。
 彼女は目についた破片を少しずつ集め、手の中で握りしめる。やがてそれは不思議な力で自動的に結着して一つのクリスタルとなっており、気づいた時にはたからの掌の上で輝き続けていた。
「きれい、だけど、なんだろ……」
「どうしたんだい?」
「ううん……」
 言葉で言い表せない感情がたからの中に渦巻く。クリスタルの破片を集めたのは良いものの、何故かこのクリスタルを『アルムに返さなきゃ』という気持ちになっているようだ。
「ふむ……アルム嬢にか……」
「アルムさん、今、どこ?」
「確か彼女はセクレト機関の方にいたはず。先生に伝えて、返せる手筈を整えておこうか」
「うん!」
 クリスタルを手に持ってエルドレットのもとへと戻るたから。おっきなお宝を見つけた! と報告すると、エルドレットは眉根を寄せてクリスタルに視線を向けるが……どうやら彼にはクリスタルが見えていないようだ。
 ここにあるよ、とたからが伝えても彼は首を傾げるばかり。司令官システムのメンバー……特にマリネロの街を空から見張っているエスクロに声をかけて見てもらっても、エスクロにも見えていないのだという。
『エルドレットの機体不良の可能性も考えたけど、俺の方からでも見えてない。どうなってんだ?』
「でも、ルナールさんには、見えてる?」
「ああ、見えているよ。だが先生が見えないというのも妙だな……」
 ルナールがいくつかの事例を考えてみるものの、内部的な不具合があれば司令官補佐であるヴォルフや燦斗やエミーリアが物理チェックを行うし、物理的な不具合があればエルドレットの機体は一時的に停止するはずだから、クリスタルが見えないのは不具合という形ではないと判断を下す。
 たからはそれならとエルドレットの手の上にクリスタルを乗せてみるが、感覚もなければ見えるようになるわけでもなく、たからとルナールから見ればクリスタルはエルドレットの手の上に乗ったままという摩訶不思議な状態を作り出していた。
「うーん。たからも、わかんない!」
 わからないことは、一旦わからないままでいい。
 アルムに返すことが出来るようになれば、エルドレットに見えているかどうかなんて関係ないのだから。


●Case.6 ゲートとはなにか
 クリスタルの返却手続きのため、アルムを呼び出せるようにしてもらったたから。
 あとは他にも何か落ちてないかを確認しつつ、ルナールにこの世界の『ゲート』について詳しく聞いてみることに。

 ゲートと呼んでいるそれは、ルナールやエルドレット曰く『通路』。世界と世界をつなぐためのパイプの役割を果たしており、エルグランデではセクレト機関のみが扱える技術として通っている。
 セクレト機関の役割はエルグランデという世界を守る他、異世界へ渡航する者を抑えたり、異世界からの侵略を防いだり、その他異世界の技術を解析するなど様々な分野にわたって異世界を研究している施設でもある。
 またゲートの影響によって移動系のコントラ・ソールは発現することはなく、テレポート関係もすべてゲートで作られた通路を通っていると解釈されている。
「故に、この世界は|侵略者《インベーダー》から目をつけられやすい。簡単に自分の行きたい他の世界へと通ることが出来るのだからね」
「……たしかに!」
 たからはルナールの説明を聞いて、いろんな世界に行けるという素晴らしい環境であると同時に、すっごく危ない世界であることも理解を示した。この世界を通じることでたからのいた世界にも、そしてアルム達の世界にも、その他いろんな世界にも移動ができるというのだから。

 そして現在、セクレト機関が目下危険視しているのはミメーシスという|侵略者《インベーダー》がこの世界を奪うことにより、他世界への侵略の危険性が広がる可能性がある、という点だ。
 フェルゼンに取り憑いているミメーシスが手引したことにより、情報はすべて本体である『母』へ届けられたとみて間違いない。あとはその『母』が降臨するかどうかの瀬戸際ではあるのだが……。
「……おそらくフェルゼンは、ゲートを利用して何かをしようとしている。そのためにこのゲートを開いた可能性が高い」
 上空に開いたゲートは本来であればすぐさまセクレト機関によって閉じられ消えてなくなる。だがマリネロの街の海岸に開いたゲートは今もなお残り続けており、貼り付けられたコントラ・ソールもそのまま残り続けたまま。
 人が巻き込まれる可能性は少ないものの、それでも今も残り続けているというのもおかしな話だ。セクレト機関側での調査も済んだことだし、そろそろ閉じられるはずだが……。

 ここでふと、たからがあることを呟いた。
「じゃあ、おかあさんの、ミメーシスは、どこから、くるの?」
 ――『母』と呼ばれたミメーシスは、いったい何処から来るのか。
 ここまでの流れから考えると、自然とゲートから飛んできそうなものだが、あいにくとマリネロの街に残ったゲートはアルム達の世界に繋がっており『母』と呼ばれたミメーシスとは繋がりがない。

「何処からって、そりゃ……」
 ルナールはたからの問いかけによって、その答えを見つけた。
 フェルゼンがミメーシスに身体を奪われた当時、どのようにして彼は身体を奪われたのかを思い出したのだ。
 ――『母』と呼ばれたミメーシスは、空から降ってくるのだと!

「……待てよ。ということはこのゲートは……」
 もう一度、ゲートに視線を向けたルナール。続けてたからも視線を向ける。
 今も変わらず向こうの世界を開けたままのゲート。コントラ・ソールがいくつも張り付いて、剥がされていないままのもの。
 そのゲートがもし、|空から来たものを飲み込む《・・・・・・・・・・・・》ものだとしたら?
「向こうの世界に、おかあさん、送っちゃう?」
「……可能性は……ある……」
 その事実に気づいた時、ルナールは口元を手で覆い隠し色々と呟く。もしそれが現実に叶うとすればミメーシスといえどもコントラ・ソールに抗うことは出来ず、《|妨害《サボタージュ》》で行動を妨害し、《|簒奪者《ウーサーパー》》で力を奪い、《|意地悪《マルドーソ》》で自身の目的を失わせ、《|忘却《オルビド》》で記憶を失わせすべてを失わせることが出来る。

 だけどルナールはただ一つ。どうしても、フェルゼン1人では起こすことの出来ない不可能な事象があると告げた。
「……ゲートの維持は、どうしたってアイツだけでは無理なはずだ……!」

 ゲートの維持が出来るのは、セクレト機関の中でも司令官システムだけ。
 その事実だけは、どうしても覆らない。

 ――|何か《・・》を模倣しない限りは。

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 ・海岸の砂浜の中に『クリスタル』が埋まっていました。
 →いくつもの破片となっていましたが、集めたことで一つに戻りました。
 →このクリスタルは『司令官システムメンバー』には見えていません。
 →なお、アルムに返さなければならないようです。
 →このため、マリネロの街にアルムとジャックを呼び出すことが出来ます。

 ・ゲートについての情報が開示されます。
 →基本的には『世界と世界をつなぐ通路』だと考えてください。
 →エルグランデで使う場合は街と街をつなぐ通路としても使えます。

 ・マリネロの海岸にあるゲートは今も開いたままです。
 →フェルゼンが何かのために残している可能性が出てきました。
 →ただし、彼1人では絶対に維持は出来ません。

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●Case.? ????

「――フェルゼン。どうやらバレたようだよ?」
 蝋燭の灯火だけが明るく照らす何処かで、誰かが声を掛ける。
 ルナールの声に似ているその声に対し、フェルゼンはしばらく沈黙を貫く。
 やがて口を開いた時には、誰が気づいたのかと問いかけていた。
「たからさんと、キーゼル」
「……そう、ですか。聡い子だ」
 小さな呟きとともに、フェルゼンは溜息を吐き出す。
 その答えに辿り着いたのが猟兵と一緒にいた弟だったからか、なんだか、緊張の糸がほぐれたようで。

「ご報告、ありがとうございます。…………伯父様」
 声をかけてきた人物――己の伯父たる人物に礼を述べたフェルゼン。
 暗がりの中、蝋燭の向こうにいる人物は小さく笑って、フェルゼンに向けて『気にするな』と答えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バルタン・ノーヴェ
アドリブ歓迎

エーミール殿の状態、アルム殿の奪われた記憶、開きっぱのゲート。
Hum...情報が複雑になって来てマスネー?
ミメーシスの意図or思惑も一枚ロック(岩)ではナッシング?
こちら側のメンバーも、何やら自分自身が信用できないパターンも見受けられて、うーん。
……考えるのは難しいので、とにかく現地で回りマショー!
レッツゴー!

とはいえ、リズ殿と摩那殿がいろいろと調査されておられるので。ゲート調査はフィニッシュな雰囲気。
たから殿のクリスタル集めも完了しているっぽいので……。
やってくるアルム殿の警備員・監視員的なポジションで滞在しマスカナ!
時間的猶予があるなら、バルタンズに臨時拠点を建築させマショー!


ナルニア・ネーネリア
二匹一組の猫たち
猫たちは猫たちなので猫らしくあれば大体おまかせ
言葉は通じるけど返事はにゃー、何故なら猫なので

猫たちは犬並みに賢い
返却すべきものがあるなら返却すべき
持ち主っぽい人間を呼ぶことにしよう
※アルムさんとジャックさんのことです

猫たちの祖先は砂漠出身である
ゲート周辺とか魔術的にいろいろ確認とか猫たちにはできない
何故ならただの猫たちなので
キラキラしたものを返却後は海岸に連れ出してあれこれ見せて反応を伺おう
別に猫たちが砂浜ひゃっはーしたい訳じゃない
したい…訳…では…砂浜にゃーひゃっはー!
穴を掘れ!岩場の魚を捕れ!
よくわからないものを拾っても此れは猫たちのものにゃ!
欲しいなら美味いものを寄越せ!



●Case.7 アルムという人間
「うにゃ~」
「にゃー」
「わわわー、猫ちゃん待って~」
 セクレト機関からぐいぐいと引っ張って連れてこられたアルムと、彼女を連れてきているナルニア・ネーネリア(GoGo★キャッツ・f41802)。2匹の猫に囲まれてしまっては用事がわからなくてもついてきてしまうのが人間の性だ。
「いーきーたーくーなーいー」
「いーきーマーショーウー」
 そんな中ジャックを引きずって連れてきているバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)。右腕の力だけが強いジャックと、そもそもの|力《POW》が強いバルタンでは後者のほうが強く、散歩に行きたくない犬のようにジャックがズルズルと引きずられていた。そもそも呪いの花と呼ばれるジャック特攻があるので行きたくないのは仕方ないのだが、アルムが行くならジャックも連れてくるしか無い。
 ゲートを使いセクレト機関本部とマリネロの街を繋ぎ、すぐさま街から海岸へと移動。道中危険がないかをバルタンが確認しながら、3人と2匹は海岸へと辿り着いた。

 今回見つかったクリスタル。それがアルムに返さなければならないものであると感じられたため、アルムは呼び出された。
 しかしアルム1人では危険だからとベルディが進言。ジャックの付き添いは些か不満ではあったが、後ほど合流することを告げてジャックと共に行動させることになったのだ。
「ベルディ殿はどちらに?」
「機関本部。あとから来るって」
 エルドレットの《|創造主《クリエイター》》を使い防護服を作って貰ったジャックは改めてアルムと共にマリネロの街の海岸を見渡し、砂に埋れたいろいろなものを見ていく。
 現状、アルム達の世界から流れ着いているのは白い花の花弁と、先程集まった一つのクリスタルのみ。それ以外は今より以前に別の世界から落ちてきたもののようだ。
 それらが気になっているのか、ネーネリアが先んじて砂場を掘り返す。猫というのは恐ろしいもので、自分達が掘り返したものはそれは自分達の物だからと埋められているものを探す犬のように懸命に掘り進めていた。
「それで、クリスタルはどちらに……?」
「ここに。受け取る覚悟はあるかい?」
 ルナールの手に収められているクリスタルは光を浴びて虹色の光を返す。まるで持ち主がそこにいるからと共鳴しているかのように輝いており、バルタンもその輝きには不思議なものを見出している。アルムに返してほしいと叫んでいるかのようにも見えるだろう。
 最初はアルムも受け取るかどうか悩んだ。けれどジャックとバルタンが後押ししてくれたおかげで、彼女はその手にクリスタルを握ることを決意していた。

 ルナールからアルムへとクリスタルが渡された瞬間、辺りが白い光に包まれる。唐突な出来事にナルニアもネーネリアも驚いて岩陰に隠れ、エルドレットとジャックは手で顔を覆い、ルナールとバルタンが光を目に焼き付ける。
 その光はおよそ30秒ほど続き、時間が経てば少しずつ薄れゆく。やがて光が収まった時にはアルムはきょろきょろと辺りを見渡しており……いち早くジャックへと抱きついて、声を上げた。
「|イズミ兄ちゃん《・・・・・・・》! やっぱり来てくれたんだ~~!!」
 これまでのよそよそしいアルムは何処へやら。まるで大好きな兄に抱きつくような仕草に、エルドレットもルナールもぽかんとした様子で見ている。イズミと呼ばれたジャックも手慣れた様子でアルムをいなしては、彼女を落ち着けさせるように動いていた。
「ハテ?? イズミ殿とは……」
「ああ、俺のこと。ワケあって、向こうの世界では本名では動けねぇからよ」
「なるほど」
 バルタンの疑問にサクっと答えたジャック。もともと魔物のような存在として扱われている『ジャック・アルファード』の名前は自分達の世界では使うことが出来ず、代わりに『イズミ・キサラギ』の名で向こうの世界で活動しているという。
 だからこそ記憶がなかったアルムは活動名であるイズミの名で呼ぶことがなかった。しかし今はその名で呼ぶということは、はっきりと彼女の記憶が戻ったと見て間違いないとジャックは告げた。
「にゃ~」
「猫ちゃんたちもありがとね~」
 とてとてと近づいたナルニアに対し、ゆっくりと撫でたアルム。こちらの世界に来てからの記憶も残っているのか、猟兵達とのやりとりも全て覚えているようだ。
 自分が何故エルグランデに来てしまったのか。アルムのやるべきこととは何なのか。それらが全て明かされることになる。


●Case.8 アルムが来た理由
「あたし、ある人に『ヴェレット家の天体球を守れ』って言われてたんです」
「ある人??」
「天体球とはなんデスカ??」
 ジャックとバルタンから同時に疑問の声が上がる。一体誰がアルムに謎アイテムを守れと言ったのか。そもそもその謎アイテムは何なのか。いろいろな疑問が膨れ上がっていた。
 が、天体球について知っているルナールが真っ先に声を上げた。天体球はスヴェンが使っていたエルグランデを中心とし、数百光年先の星を全て記載した球体であり……リアルタイムでエルグランデの空の外を確認できる唯一のアイテムだと。
 ただ、その存在はスヴェンを始めとしたヴェレット家の人間にしか知られていない。例外的にエルドレットはヴェレット邸に家庭教師として訪れたことがあるためその存在は知っているが、実物を見たことはないのだという。
「しかしそうすると、守れと仰ったのはフェルゼン殿ということになりマセンカ??」
「なる。が、アイツはおそらくアルム殿を呼ぶ時点でミメーシスを我々に見つけてほしいと告げていたんだろうな」
「うにゃ~~」
「けど、アルムの記憶が消えた状態で世界に来たから遠回りになった。……ってことか」
 合間に鳴いたネーネリアを撫でつつ、ジャックが考察を重ねた。フェルゼンが事を運ぼうとした瞬間には乗っ取っていたミメーシスが《|忘却《オルビド》》をゲートに重ねており、そこからアルムの記憶に蓋がされてしまったのだろう。
 幸いにもクリスタルの欠片にアルムの記憶が入っていたため、彼女の記憶は元に戻り今に至る。どうやら『記憶』という形の残らないものが残っているという状態が異常と検知されたため、司令官システム側ではクリスタルが見えなかったようだ。
 しかしその記憶を固形で残しておいたおかげで、ミメーシスに乗っ取られたフェルゼンのことや、ミメーシスそのものが悪であるということをしっかり思い出せた。これからは自分を救ってくれた世界やセクレト機関のために、アルムも共に戦ってくれるそうだ。

「ふむ。となれば、彼女に天体球を預けておいたほうが良さそうですね、先生」
「だなぁ。ゼル、取りに行ってくれる? 俺場所知らなくて」
「すぐにでも。……遠いのでゲート開いてほしいです」
 アルムの目的がヴェレット邸にある天体球と知った今、アルム自身に天体球を預けるのが一番だと判断した司令官エルドレットとそのシステムを司る者達。本来ならばセクレト機関本部においておくのが一番なのだが、そうするとスヴェンの高速詠唱が無限に止まらなくなるので、絶対にやらないと判断がくだされた。
 すぐさまルナールがゲートを使ってヴィル・アルミュールへと向かい、己の実家から天体球を持ち出してアルムへと預ける。手のひらサイズの小さな球体だが、その中にはエルグランデという星やその他の星を内包したものだ。
「うにゃー」
 そんなすごいものがあるのか。と言いたげなネーネリアはジャックに尻尾付近を撫でられたまま、砂をほりほり。目新しいお宝がないかを探して回っているが特に見つかる気配はない。
「……そういえばこの猫ちゃん達も猟兵さん……なんだよね?」
「ハイ、そうデスネ。猫なので自由気ままデスガ!」
「にゃーん!」
 そうだぞと言うようにナルニアがバルタンの言葉に同調する。猫は猫なので、自由気ままに生きる。そう、エルドレットにお魚ほしいとねだって今この場で釣りをさせるぐらいには。
「俺、一応偉い人なんだけどなー」
「にゃーん」
 猫よりえらいものはない。なんて言われそうな雰囲気がしばらく続き、エルドレットの釣りは数十分ほど続いていた。


●Case.9 もしもの時
「あ、そうだエルドレット殿。少々お耳を拝借」
「ん?」
 こそこそと、バルタンがエルドレットにある提案をした。それはこの海岸に臨時拠点を築くのはどうだろうか、と。
 ゲートの位置が空から来るものを飲み込む可能性があるのなら、このゲートに母なるミメーシスを呼ぶ形になる。そのためにフェルゼンがここに現れてなにか再び細工をする可能性があるため、見張り用の拠点を作るのはありではないか、と。
「にゃー」
 ナルニアもまるで賛成だと告げるように、エルドレットの足元で鳴いた。集めた物品を隠しておく場所を確保しておきたいというのが猫の心理だが、エルドレットもバルタンもそれに気づくことはない。この2人に拠点を気づいてもらうことで猫が見つけたお宝を隠しておくのだ。
「確かに街からここに来るまではちょいと大変だし、街からここを見張るのも大変だからアリだな。嬢ちゃん、建築のツテはあるのか?」
「HAHAHA! こう言うときこそ、バルタンズの出番デース!」
「「「バルバルバルバルー!!」」」
 ユーベルコード『|秘密のバルタンズ《シークレット・サービス》』は100体を超えるミニ・バルタンが呼び出され、十分な時間があれば城や街を築く。今現在は戦闘行動が起きていないため、暇だと判断したミニ・バルタンが材料を集めて小さな小屋を作り出そうとしている様子を見せている。
 そうと決まれば釣りをやってる場合じゃない。エルドレットとジャックでマリネロの街に現存する建築材を集めてまわり、アルムとルナールで建築図を作成、バルタンとミニ・バルタン達がせっせと建築していく。ナルニアとネーネリアは貰ったお魚をゆっくり食べながら、隠し場所の完成を待っていた。

 やがて時間が経てば小さな小屋ではあるが、簡易的な拠点が完成。見張り小屋と言っても遜色ない大きさであり、人が1人休めるほどの広さを誇っている。
 すぐさまナルニアとネーネリアは掘って見つけたガラクタを小屋に集め、自分達のテリトリーを作ってガラクタを積み上げる。集まったガラクタは錆びた歯車や綺麗な石など様々だが、どれも実用的なものではない。
「ここに直接つながるゲートを作っておいて、と……」
 そしてエルドレットが誰でもすぐにでも来ることが出来るようにゲートを作成し、緊急時以外開かないように固定しておいた。これで海岸でなにか起こればすぐに駆けつける事が可能となり、猟兵たちも参戦しやすくなった。
 ゲートを通る際に妙な感覚に陥るが、大きく削れるものではない。その正体は未だ猟兵達には不明なものではあるが、ごく少量の生命力を奪われるだけの動作なので大して気にするものではないのだ。

「……まあ、もしもの時は|あの子《・・・》がちゃんと返すでしょ」
 ぽつりと小さく、エルドレットが呟いた。
 まるで生命力を奪っているのが誰なのかを知っているかのように。


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 ・クリスタルが使用され、アルムの記憶が戻りました。
 →NPC『アルム』『ジャック』の情報が更新されます。

 ・アルムが守るべきものの正体が判明しました。
 →ヴェレット邸に存在していた『天体球』と呼ばれるものを守りに来たようです。
 →エルグランデとその周囲の天体が映る不思議なアイテムとなっています。

 ・マリネロの海岸に緊急時の小屋が建てられました。
 →何かあればこの小屋へゲートを開くことが可能です。

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  『忘却の先』 complete!

     Next Stage →


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●Case.? 終わりの始まり

 セクレト機関本部、同時刻。
 司令官室にて、燦斗が何やら眉根を寄せて考え込んでいた。
 彼はエルドレットに指令を貰っている。父らしくもないと思ったが、エルドレットが現場に向かう以上そこへ行けるのは必然的に燦斗のみになってしまうからで、仕方ないと呟きながらもその時を待った。

「……そろそろ、ですかね」
 時計を確認して、呟いて。1人席を立ってある場所へと向かう。
 それは司令官補佐の中でも燦斗しか知らない、司令官システムの中枢とも呼べる場所。
 ――あらゆるコントラ・ソールの初期所持者達の脳を集めた場所だ。

 キョロキョロと、稼働している脳と休眠中の脳の様子を確認する燦斗。
 培養液に漬けられた脳が1つずつケースの中で佇む中、名札を1つずつ確認していた燦斗はある事実に気づいた。
 十数年ほど、ここに訪れてなかったからこそ気づかなかった事実。動いているはずの|彼《・》が、存在しないという事実。
「……|アステリ・ラス・ヴェレットが無い《・・・・・・・・・・・・・・・・》?!」

 |世界介入《エルドレット》も、|簒奪者《ナターシャ》も、|呪術師《スヴェン》も、|忘却《ザビーネ》も、|蒐集者《エスクロ》も、|全開放《アードラー》も、|過去視《アレンハインツ》も、|解析者《マリアネラ》も、全ての脳がこの場所に存在しているのに。
 脳が集められている場所には|解答者《アステリ》が存在しておらず、しかしアステリは司令官システムの一部として動いているという事実が発覚した。

「……どういう、ことだ……?」
 燦斗が考える。何度も何度も、繰り返しその答えに辿り着くために。
 けれどそれよりも前に、スヴェンとアードラーの声が施設内……否、世界全体に鳴り響いた。

 ――『ミメーシス、襲来』と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2025年06月29日


挿絵イラスト