●めざせアスモンマスター
アスリートモンスター……縮めて『アスモン』。
アスリートアース内に生息する人間以外でのアスリートを興ずる生命体の総称であり、人間との関わりは古代バトリンピア時代まで遡ると言われている。
ある者はアスモン相手の競技で己自身を高め、ある者はアスモンを家族同然に慈しみ、ある者はアスモンの生態をヒントに新たなスポーツを見出した。
そして現代……人間とアスモンの関わりは新たな時代を迎えることになる。
その名も──『アスモンバトル』!
この競技はアスモンをスカウトしたアスリートが|指導者《トレーナー》となって自身のスポーツ競技で競わせたことから端を発し、今や流行のひとつとして新たなその他スポーツの芽が開きつつある。
種類は様々だが、アスモンと共にスポーツ競技を行うトレーナー兼アスリート、アスモンに騎乗してレースを繰り広げるアスモンレーサー、アスモンの驚異的な身体能力をもってして純粋に戦い合わせて指示を送るセコンドと大まかに区分される。
その中でも飛び抜けて絶大な人気を誇るのが、アスモン同士を戦わせ合わせて勝敗を決する『アスモンバトル』であり、世間では上記のアスモンスポーツ競技も『アスモンバトル』の一種であるという認識である。
だが、競技人口が広がるということはダークリーガーの参入も招くということでもあって、今とあるアスモンジムにその魔の手が迫りつつあった……!
●グリモアベースにて
「……って訳で、今アスリートアースではアスモンバトルが密かなブームなんだぜ!」
『めにゃ!』
『ギャース!』
興奮の色を隠さず目を輝かせながら『アスモンバトル』の解説をしたウィル・グラマン(電脳モンスターテイマー・f30811)に「落ち着け」と言わんばかりに、相棒であるスペモンのメラニャとギドンが嗜めるように鳴いた。
「おっ、悪りぃ悪りぃ。すんげー面白かったから、思い出すだけで興奮しちまったな! 勿論そんなことを自慢にお前らをグリベに呼んだんじゃなくて、ちゃんとしたダークリーガーに関する予知についてさ」
『めにゃあ……』
『ギャアス……』
バツが悪そうにニャハハと誤魔化し笑いをした主へ「まったく……」と言わんばかりに二匹はため息混じりに鳴くと、気を改めて今回の予知に付いてウィルは語りだす。
「さっき説明した通りにアスモンバトル自体が多種多様すぎて、色んなダークリーガーも手を出していてな。そんなかでも取り分け活動が盛んなのが、アスモンバトルの競技施設でもあってアスモンとトレーナーの実力を鍛えて試す場でもある『アスモンジム』の道場破り。普通の道場破りなら看板を奪うだけで済まされるだろうが、ダークリーガーの目的はジムの乗っ取りだ。なんせ負けた相手をダーク化させてしまうんだから、道場破りの行為自体は合法だとしても被害はシャレにならねぇってことだ」
現にいくつかのアスモンジムは乗っ取られ、ダークリーガーの専売であるスポーツ競技専用施設へと改造される被害は多数起きている。
それはまさしく破竹の勢いであったが、幸いなことに今回はウィルが新たな道場破りの予知を行ったことで未然に防げる可能性が出たという次第である。
「場所は、あーと……関東地方の外れの外れある|真新《まさら》ジムだったか? 関東主要都市に点在するアスモンジムはあらかた乗っ取り完了されて、郊外にあった真新ジムは後回しにされたって感じだな」
既にダークリーガーらによる道場破りは完了目前であった訳だが、ギリギリのところで予知が出来たという訳であった。
これもグリモア猟兵の予知に問題があったという訳でなく、マイナースポーツ故の認知度による問題からであって、たまたまアスモンバトルを知り得たウィルであったからこそ予知出来たという次第でもある。
「で、当然だがダークリーガーはアスモンバトルを挑んで来る。そうなるとオレ達も同じようにアスモンバトルで返り討ちにしてやらねぇと行けねぇが、アスモンなんて持ってる奴は居ねぇよな」
ウィルにはアスモンによく似たスペモンが居るが、当然ながらアスモンではないのでアスモンバトルに出れるかどうかは怪しい。
そうなると、現地でアスモンをスカウトしなければならない。
「まー、ジムの代表にはオレから説明すっからよ。上手く行けば真新ジムの所属アスモンを借りれるかもしれねぇし、自然豊かな場所でもあっから野良アスモンをスカウト出来る機会もあるかもだしな。習うより慣れよっつーし、まずは現地に行ってみよーぜ!」
まだ予知で視たダークリーガーによる道場破りまでは日にちがあるので、何とかなるだろうとウィルは余裕たっぷりにニャハハと笑う。
戦えるのはアスモンであって、猟兵に出来ることは指示とユーベルコードによる支援以外となる新たなスポーツ『アスモンバトル』。
果たしてどのような出会いが猟兵に待ち受けるかどうかの不安を晴らすかのようにウィルは自信に満ちた顔持ちでグリモアを展開し、電脳魔術によって真新ジムへと転送するのだった。
ノーマッド
ドーモ、ノーマッドです。
アスリートと言えばトレーナー要素が付き物と言うことで、本来であれば猟兵自身が競技を行うところを別の存在が主体となって、ダークリーガーも指示やサポートに徹すると言った趣旨のその他スポーツとなります。
イメージとしましては、カードデュエル派生系になるかな? と言ったところでまだ固まってない要素もありますが、いつものノリと勢いのアドリブを交えながらのシナリオ運営になるかもですが、よろしくお願いします。
第一章は【冒険】フラグメントとなります。
ダークリーガーとの試合前に今回のスポーツに慣れるべくルールを学ぶところからはじめ、ジム所属のアスモンを借りるなり野良アスモンをスカウトしてアスモンバトルのトレーニングをする流れになります。
この章でトレーニングに成功した猟兵は、第二章目で自動的にプレイングボーナスを得られます。
第二章は【ボス戦】フラグメントとなります。
いよいよ道場破りのダークリーガーとの|試合《アスモンバトル》です!
猟兵とダークリーガーはアスモンへの指示やユーベルコードなどでの支援のみで直接戦えませんが、アスモンバトルのルールに則って正々堂々勝利しましょう!
それでは皆様の白熱するアスモンバトルよりも熱いプレイングをお待ちしています。
第1章 冒険
『その他スポーツを練習しよう』
|
POW : 体当たりで果敢にチャレンジする
SPD : 器用にコツを掴みながら練習する
WIZ : ルールや戦術の理解を深める
イラスト:十姉妹
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「オッス! 未来のチャンピオン! 俺がこの|真新《まさら》ジムを取り仕切る|大木《おおき》・|成之《なりゆき》だ!」
まだ公式化されていない新興の競技だからか、『真新ジム』とでかでかと殴り書きされた看板が掲げられている建物は年季を感じさせる粗末な木造小屋であり、河川敷に掛かっている橋の下にそれがあった。
中は使い古されたトレーニング機材が壁際に並べらており、中央にはアスモンバトルを繰り広げる物なのだろうリングが据え付けられている。
大木・成之と名乗った快活で精悍な顔持ちの青年は、所属しているアスモンである『カラテクマ』と『ムエタイカンガルー』のトレーニングを切り上げて猟兵たちを出迎えた。
「そうか……遂に自然の豊かさだけが取り柄の真新ジムにも|道場破り《ダークリーガー》がな……」
噂は知っていたが、まさかこんな辺鄙な田舎のジムにも来ようとは。
グリモア猟兵の口からダークリーガーがジムの看板を狙った道場破りが来ると告げられると、成之は難しい顔をしながら腕を組んで考える。が、瞼が開けば瞳の奥には道場破りに対する闘志が炎となって激しく燃え上がっていた。
「面白ぇ、受けて立とうじゃねぇか! ……けど、うちで所属しているのはこいつらだけでもあるからな……」
『グルルル……』
『グゥオー、グゥオー』
カラテクマも腰に巻いた黒帯をキツく締め、ムエタイカンガルーはぴょんぴょんとリズムを取りながら上下にジャンプして応戦の意思を示している。
が、意欲だけでは挑戦者であるダークリーガーと手持ちのアスモンに勝てる保証などはなく、そもそも相手の選手どんな情報かは予知でも判明してない。
「そうなりゃ、あれしかないな……特訓だ!!」
道場破りが来るまではまだ日にちがある。
その日に向けてアスモンの特訓あるのみ!
「けど、助っ人の猟兵さんたちに貸し出すのは二匹しか居なくてな。もしあれだったら、橋を渡った先にある林や山を登ってみるといい。野生のアスモンがトレーニングしてればスカウトして選手に出来るからよ」
何でもこの辺にはカラテクマやムエタイカンガルーの他にも、レスリングアリクイや関取ゴリラなどのアスモンが生息しているとのこと。
野生のアスモンもスポーツに興じており、スポーツ勝負でこちらの実力を示すなり誘いや説得するなりして勧誘できるらしく、この真新ジムに所属しているアスモンも成之が勧誘してここに居る訳である。
「そう言えば、珍しいアスモンを連れているな……えっ、これはスペモンだって? ふーん、他の世界にもアスモンみたいのは居るんだな」
物珍しそうにグリモア猟兵が連れているスペモンを観察した成之だったが、よしっと何かを決めた顔持ちで突拍子もないことを言い出した。
「じゃあ、こうしよう。そいつらもこの世界ではアスモンということにしてしまおう。なぁに、トレーナーの指示に従ってアスモンバトルが出来ればどんな生き物だってアスモンさ。協会にはこっちから連絡して取り合うから、心行くまでジムでトレーニングしてくれよ!」
これはまさに僥倖。
真新ジムリーダーである成之がここまでしてくれるのであれば、猟兵が従えている他世界の生物もアスモンバトルに出場できる。
「そう言えば、猟兵ってアスモンみたいのも居たんだっけな。そっちはジム所属のアスモンとして登録すれば……まぁ、問題ないだろ。道場破りのダークリーガーが真新ジムに乗り込んでくるまでしっかり鍛えてくれよ!」
メディア・フィール
アドリブ・プレイング改変
他PCとの絡みOK
POW選択
「せっかくだから、ボクに会いそうなアスモンを探してみるよ」
というわけで、山の麓で出会ったのは――
「モルック・べこ? モルックをする牛?」
説明しよう! モルックとは北欧のほうのマイナー競技であり、木の棒を投げて同じく木のピンを倒し、50点ちょうどになるように点数を競うゲームだ!
山の麓にいた、農業牛をモチーフにしたような赤い|牛《べこ》は、仲間になりたそうな目でメディアを見てる!
「モルック・べこ。略してモルべこ。
なんか天の悪意を感じるんだけど……」
とはいえ、モルべこ自体は悪意のない、ただのアスモンだ。
かくしてこのアスモンを相棒に特訓の日々が始まる
──アスリートモンスターバトル、略してアスバト。
人類の歴史は家畜化した動物との歴史と言っても良いほど深く、闘犬や闘鶏を始めとした純粋に強さを競わせる以外にも、羊の毛刈り競争なり手入れが欠かせない蹄の削蹄技術を競う競技大会という動物のケアを人間が競技化させた物まで幅広い。
戦い合わせるアニマルスポーツにおいては、雄同士の縄張り争いや雌を奪い合う争いによって発生する野生の闘争心を利用したものが大半であるが、アスモンにおいては血で血を流す戦いではなく『スポーツ』で勝敗を決するといった他の動物に見られない特性を持っている。
同種同士では同種間のスポーツバトルを、他種であれば異種スポーツバトルを。
まさしくアスリートアースならではの生態系と言えよう。
そうか?
そうなの?
そうかも!
「そう言えば、ブルーアルカディアにも飛竜レースや闘竜なんてあったけ」
メディア・フィール(人間の|姫《おうじ》武闘勇者・f37585)が思い出すは、ありしの平和だった王国の記憶。
無限に広がる空に浮かぶ浮島では、古くからワイバーンやグリフォンなどの幻獣を手懐けて騎乗し、領土内に点在する島々の往来をしていた。
天使核技術によって飛行する飛空艇が市井にまで普及すれば自ずとそちらが主流となったが、それでも人々は共に歴史を歩んだ『友人』から決別することなく、今も昔と変わりなく共生している。
とは言え、当時のメディアは飛竜やグリフォンに騎乗するよりも超高速の機動力で空を翔け抜けるガンシップのレース競技の方が気に入ってたじゃじゃ馬っぷりであったので、今になって思えば空飛ぶ幻獣の稽古をちゃんと受けていたら……などと、少し後悔する。
「けど、アスモンはアスリートアースでしか出会えないし……せっかくだから、ボクに会いそうなアスモンを探してみるよ」
「そうか。じゃあ、こいつを持っていくといい」
成之がメディアに手渡したのは、手帳サイズの|電子機器《PDA》。
パカッと開けば中心に据えられた液晶ディスプレイ、カバーの裏には様々なボタンが設置されていて何ともガジェット感溢れるものである。
「これは?」
「アスモン電子図鑑。中には色んなアスモンの情報が記録されていて、駆け出しアスモントレーナーのスカウトを手助けしてくれるマストアイテムさ」
「へぇー。科学の力って凄いなぁ」
これさえあればどんなアスモンと遭遇してもアナライズ機能で、どんなマイナースポーツをやっているアスモンであろうとも一目瞭然という訳である。
などのやり取りを経て、メディアはアスモンをスカウトすべく|真新《まさら》ジム近郊の山へとトレーニングも兼ねたランニングがてら走り出す。
季節は冬から春の変わり目でまだ残雪が残っており、木々も常緑なものを除けば枝先に芽があるのが殆ど。
茂みも殆ど枯れていて歩きやすいが、生い茂ればその中からアスモンが飛び出して縄張りに踏み入った人間にスポーツバトルを仕掛けるのだとか。
アスモンを引き連れていればアスモン同士のスポーツバトルとなるが、そうでなければ自分自身でなんとかせねばならない。
「でも、そこから生まれる出会いもあるらしいけど……何か居るな?」
山の麓に差し掛かると、何処かで木と木がぶつかり合う音が聞こえている。
息を殺しながら足音を立てず、枝を踏んでバレないよう細心の注意を払いながら近寄ると……。
『べこ~べこ~』
なんかこう、ゆるきゃらと言うか……マスコットと言うか……。
東北地方のどこかで見た覚えのある、鮮やかな朱で彩られた赤毛の農業牛っぽい何かがボウリングのピンに見立てたように並べられた細い丸太に木の棒を投げている。
そんな気が抜けてしまう姿に呆気に取られているとあちらが気づいて重たげな頭を揺らしながらこちらを向いてくるが、手を振っている辺り友好的なアスモンなのだろう。
「そうだ。こういう時こそ、アスモン電子図鑑を……」
モルックアスモン モルック・べこ
タイプ:ノーマル
種族値:ちからB/たいりょくB/すばやさE/こんじょうC/かしこさD
説明しよう!
モルックとは北欧のほうのマイナー競技であり、木の棒を投げて同じく木のピンを倒して50点ちょうどになるように点数を競うゲームだ!
「な、なるほど……! 成長すれば、三ツ首になったり、額に一角が生えたり、ペガサスのような翼が生えたり、尻尾が九尾になったり……可能性に満ちたアスモンなのか!」
アスモンは人類との付き合いは深いが、その生態はまだ謎に包まれて完全に解明されていない。
アスモン電子図鑑で神獣めいたモルック・べこの姿に驚愕するメディアだったが、モルック・べこはそんなのをお構いなしに自分が手にしていた木の棒をメディアに手渡そうと差し出して来た。
「え、ボクもやっていいの?」
『べこ~♪』
そう言えば、アスモンは人間を試すとも聞いている。
これがスカウトのチャンスならば、なんとしても高得点を出したい。
「すぅーはぁー……えいっ!」
深く深呼吸し焦る気持ちを鎮めて精神を集中させ、メディアは並べられたモルックのピン目掛けて一投!
結果は満点までには行かなかったものの、かなりの高得点を叩き出せばモルック・べこは尊敬の眼差しでつぶらな瞳を輝かせながらメディアに拍手する。
『べこ~。べこべこ、べこ~♪』
「この感じ……スカウトしてくれってことかな?」
ぺこぺことお辞儀を繰り返しているのと声色からそんな感じをするが、ここでメディアはあることに気づく。
「スカウトしたアスモンにニックネームを付けてエントリーネームにする風習もあるって大木さんから聞いたっけ。モルック・べこだから……略してモルべこ。なんかなんか天の悪意を感じるんだけど……」
モルべこ、モルべこ……。
呼びやすさや語感を確認するためにメディアは繰り返して呟いてみるが、言葉に言い表せない悪意はたぶん気のせいだろう。そうかな。そうかも。
『べこべこ~♪』
「うーん……気に入ったのならこれでいいか。よし、モルべこ……キミに決めた!」
モルべこ自体は悪意のない、ただのアスモンだ。
例えまだどこか引っかかる点がある呼び名だろうとも、アスモントレーナーとなったメディアと相棒のアスモンであるモルべことの特訓の日々が今日から始まるのであった……!
大成功
🔵🔵🔵
家綿・衣更着
動物までスポーツしてるとはさすがアスリートアースっす
情報収集によると、古代バトリンピア時代って水や大地が汚染されてて、生き残った人たちのコロニー間の争いをスポーツで決着をつけてたんすね(出版部バトリンピアの概要)
その汚染で発生したミュータントアニマル(出版部バトリンピアの集団敵)の平和利用の試みがアスモンの起源なんすね!(独自解釈)
動物と話してやる気ある子を選び、UC『ステータスオープン』で素質見て…
古代バトリンピア種族「マスコット」が野生化したようなアスモン、
キグルミタヌキ!君に決めたっす!
化術とあやかしメダルの使い方教えて、バフとデバフを駆使したテクニカルな戦い方をトレーニングっす!
「なるほど……古代バトリンピア時代って水や大地が汚染されてて、生き残った人たちのコロニー間の争いをスポーツで決着をつけてたんすね」
|真新《まさら》ジムの一角に置かれてあったアスモンバトルのルールブックに記載されていた『人間とアスモンとの歴史』のページに、家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451は思わず唸ってしまう。
尤もこれも様々ある学説の一説にすぎないのだが、その中でも現時点において有力視されているものである。
その汚染で発生したミュータントアニマルの平和利用の試みがアスモンの起源という物騒なものであるが、そうであるならば動物までスポーツに興じる他の世界において見られない生態も納得が行くものであったと書を閉じた。
「色々と興味深いっすけど、まずは件のアスモンをスカウトしないとリングには立てないっす。けれども……」
衣更着は化けて人を驚かせたり人助けしたりするのをライフワークとしている狸の東方妖怪である。このアスリートアースにも妖怪と呼ばれるが存在し、人間社会に溶け込んでプロレス団体を立ち上げていたりとスポーツに興じているとは風の噂では聞いているが、アスモンも実は妖怪じみた何かなのでは? とも訝しむ。
ただ、そんな仮説はみごと崩れ、アスモンは動物の一種であると改めて思い知らされていた。
何故かって?
何故かと言われれば、眼の前に広がっている光景が如実に語っているからだ。
『むにゃむにゃ……ぽーん』
ばけだぬきアスモン キグルミタヌキ
タイプ:エスパー
種族値:ちからC/たいりょくC/すばやさD/こんじょうC/かしこさB
説明しよう!
キグルミタヌキとは、マスコットが野生化したような見た目な狸のアスモンである!
一見すると可愛らしいが、人間に他のアスモンに化けることを得意とし、化け勝負の競技を興じるぞ!!
「単純に狸のアスモンが居るかどうか確かめる程度で探してみたっすが、春の陽気に誘われたのか……みごとなたぬき団子を作ってお昼寝中みたいっすね……」
たぬきとは群れを成して生活する社会性の生き物。
妖怪とは言え自身もたぬきであれば、彼らが自然の何処でコロニーを作っているかの見当はすぐにつく。
予想は見事的中し、こうしてたぬきのアスモンと遭遇できたのだが……ご覧の通りぐっすりと寝ている。
アスモン電子図鑑によれば、キグルミタヌキは主に夜活動する夜行性型アスモンと記述されている。であれば彼らが起きるまで待つのも手であるが、警戒されて逃げられては元も子もないので今のうちにやれることはやっておくに越したことはない。
「起こさないように……ステータス・オープンっす」
当然ながらアスモンもそれぞれ個性や能力の差がある。
人間にも向き不向きがあるように、彼らにもアスモンバトルへの向き不向きというものがあるのだ。
それを厳選とも呼べるのであろうが、生憎ながら全部スカウトしてふるいがけするのは非効率であるし、何より弾かれたアスモンの心境は察するにあまるところがある。
であれば、このようにユーベルコードによって彼らの頭上で表示されているステータスウィンドウの情報を持ってすれば事は穏便に済ませれる、という訳である。
「けど、数が数だけあってブラクラしたみたいに折り重なってるっす……」
そこは根気が必要な作業以外の何物でもないので、まるで大量に送られた履歴書を選別する人事担当者の心境とはこんなものなのかもしれない。
そうこうしている内に日が傾きかけ、今まで暖かった春の陽気がだんだんと寒くなりつつある。そうすると夜行性のキグルミタヌキも一匹ずつあくびをしながら起きるのだが、ようやく素質に叶う一匹を見出した。
「そこのキグルミタヌキ! 君に決めたっす!」
『ぽーん?』
選ばれたキグルミタヌキからすれば、起きたら眼の前に居る同じたぬきにスカウトされたので何がなんだか要領を得ない様子で首を傾げるしかない。
「ああ、実はっすね……」
かくかくしかじか。
まるまるうまうま。
何故か世界共通であるたぬき語で事情を説明すれば、分かったと言わんばかりに腹太鼓をぽんぽこ叩いてスカウトされたキグルミタヌキは応える。
たぬきの腹太鼓には数多くの意味があるが、これは親愛を伝える仕草であるのでスカウトは成功したと言ったところだろう。
「じゃあ、早速で申し訳ないっすけどトレーニングっす。これはあやかしメダルと呼ばれる道具でっすね……」
『ぽんぽん……』
のんきそうだが流石は賢さの伸びが高いとアスモン電子図鑑で評されているキグルミタヌキだけあって、衣更着の教えをすぐ理解していく。
厳選しただけあって化術の飲み込みも早く、さながら妖怪忍者としての自分に弟子が出来たかのような趣もあって教える側の衣更着も熱が入り、どんどんと次なるステップとしてバフとデバフを駆使した高度なテクニカルな戦い方も教えてく。
そうして月夜のトレーニングが続き、刻々とダークリーガーが道場破りに訪れると予知された日は近づきつつあった……。
大成功
🔵🔵🔵
ビリー・ライジング
【ライジング兄妹】
アスモンバトルか……。
本当にアスリートアースは|何でもあり《バーリトゥード》だな。
とりあえず山中に向かって、野生のアスモンをスカウトしてみるか。
……なんだか山だというのに、妙に静かすぎるな。
待て、ミリィ。あそこのひらけた場所を見ろ……アレもアスモンか?
あれトレーニングというより、ただの「喧嘩」じゃねぇか?
いや、あいつ等にとっては喧嘩もスポーツ感覚なのか……。
ボロボロのところ悪いな。楽しい|喧嘩《トレーニング》だったか?
そんなにストレスためてるのなら、俺と一緒にこないか?
……「俺をスカウトするなら俺を倒してみろ」か、面白い。
|恐竜《ヤクザウルス》、絶対に俺の物にしてみせる!
ミリィ・ライジング
【ライジング兄妹】
最近のアスリートアースでは、そんな事も流行っているのね。
なんか周囲のアスモンたちがひらけた場所を見てる……?
(ひらけた場所の左右から野良アスモンが入場)
左:
ヤクザウルス(喧嘩アスモン)
目潰し、噛みつきなど何でもアリが得意なアスモン。
右:
パンクライオン(パンクラチオンアスモン)
今でいう総合格闘技を得意とするアスモン。
これって……野良アスモン同士の決闘?
決闘が終わったら、ライオンさんに駆け寄ってUCで治療。
大丈夫?凄い戦いだったね。
私、君の事が気に入っちゃったみたい。
私のパートナーになってほしいんだけど……ダメ?
|真新《まさら》ジムが置かれている真新町であるが、首都圏より南下&南下しての太平洋へせり出した半島先端に位置する小さな町である。
住民らが何も見どころがない真新だけあってまっさらな田舎街だと笑い話とするのが常であるが、悪く言えば辺鄙な田舎であるが海や山に囲まれた自然豊かさに恵まれていた。
アスモンが棲まう山間部と人間たちが住む町の緩衝地帯である今は枯れ草となっている草原地帯を歩けばすぐに林と森へと変わり、まだ冬が終わって春を迎えたばかりだというのに冬眠から目覚めたばかりのアスモンらによるだろう唸り声や振動が遠巻きに伝わってくる。
「アスモンバトルか……。本当にアスリートアースは|何でもあり《バーリトゥード》だな」
「それに最近のアスリートアースでは、そんな事も流行っているのね」
アスリートアースは何もかも競技にしてしまう世界であるが、人間と同等かそれ以上の知能を有する生物も同様に何もかも競技にしてしまう世界なのかもしれない。
そんな雑談を交わしながら、ビリー・ライジング(輝く黄金・f05930)とミリィ・ライジング(煌めく白銀・f05963)のライジング兄妹は互いにキャンプウェア姿となって、背中には大容量の登山用リュックを背負い、この山々に生息するアスモンたちが作ったのであろう獣道の登山道を登っていく。
一々山に登って降りてでは探索できる範囲は狭く、正規の登山ルートでは人間慣れしていなく用心深い野生のアスモンはまず見られない。
となれば、夜の寒さはまだ厳しいが、夏ほど暑くなく冬ほど寒くない初春キャンプがてら山で何泊するのも悪くはない。
「ミリィ、そこは滑りやすいから気をつけろよ」
日陰ではまだ溶け切っていない残雪もあり、山の地面も雪解けの水を吸ってか僅かにぬかるむ。日帰り登山も楽しめる程度の難易度な山ではあるが、当然ながら整備された登山コースでの話であって、ルートから逸れれば中々と起伏に富んでいて、思わず息が上がって吐く吐息がより白くなってしまう。
「分かってるわ、兄さん。けど、そろそろベースキャンプを張る場所を探した方が良いじゃないかしら……?」
いつの間にか日は高くなっている。
黙々と登っていたせいか確認していなかったが、腕時計に目をやれば時刻は昼を過ぎた辺りであった。
「そうだな。キャンプを張れそうなところで遅めの昼にするか」
「分かったわ。えぇと……その林道を進んだ先に平らな場所があるみたい」
文明の利器とは便利なものだ。
アスモン電子図鑑には地図機能やGPS機能も搭載され、細かく刻まれた等高線に自分たちの所在地であろうふたつの点が表示されている。
等高線とは、同じ高さの点が集まる曲線、およびそれらがある一定の間隔で連なった線のことで、等高線の違いにより地形を判断することができる。
具体的には、間隔が広いと傾斜が緩やかとなり、逆に間隔が狭いと傾斜が急となる。
つまり、感覚が広いところはキャンプ地として最適である可能性が高い訳だ。
しかし、あくまでも地図で分かるのは傾斜が急か緩やかな地形情報だけなので、実際に足を運んでこの目で確かめる必要性があるのだが。
「……変だな」
「変って?」
「……なんだか山だというのに、妙に静かすぎる」
登り始めた際には遠巻きに聞こえていた生命の息吹が感じられない。
いや、居るのだろが……何かに恐れて嵐が過ぎ去るのを隠れながらじっと待っている気配が薄っすらと肌で感じれるとも言えようか。
並の人間であれば危険と判断して引き返してしまうアトモスフィアであろうが、ふたりは猟兵だ。突発的に起きた世界の危機の可能性もあれば、この原因を確かねばならない。
「見て! 小さなアスモンが木の上に登ってるわ」
次第に山肌が平坦になって来て、ミリィが指さした先には小型のアスモンが木のてっぺん近くまで登ってしがみついている。
だが、木の下には何もおらず、このように木の上に登っているのは一匹や二匹では留まらず、何匹も同じように木があれば登っている様子であった。
「どいつらも同じ方向を向いてるみたいだが、あの先に何かあるということか……?」
まだ葉が生えていない木々の林を進んだ先にあったのは、ひらけた空間。
明らかに人為的な手が加えられた形跡もあり、木に登ったアスモンらが一同に眺める様はまるで……。
「もしかして、これ……闘技場かしら?」
「待て、ミリィ。あそこのひらけた場所を見ろ……アレもアスモンか?」
そんな憶測がミリィの脳裏をよぎると、今まで静かだった観客のアスモンらが一斉に騒ぎ立つ。
興奮に満ちた歓声にも似た鳴き声を浴びながら現れたのは、無数の生傷が身体中に走っている全高2メートルほどの小型肉食恐竜と、いかにもガラが悪そうなたてがみが特徴的な大型のライオン。
ライジング兄妹がすかさずアスモン電子図鑑でアナライズすれば……。
けんかアスモン ヤクザウルス
タイプ:あく、ドラゴン
種族値:ちからA/たいりょくC/すばやさB/こんじょうC/かしこさE
パンクラチオンアスモン パンクライオン
タイプ:かくとう
種族値:ちからB/たいりょくA/すばやさC/こんじょうB/かしこさD
電子図鑑の解説によれば、ヤクザウルスは目潰しや噛みつきなど何でもアリが得意なアスモンであり、パンクライオンは今でいう総合格闘技を得意とするアスモン。
2匹に共通しているのは、格闘技の競技を得意としている点。
つまり……。
「これって……野良アスモン同士の決闘?」
「あれトレーニングというより、ただの『喧嘩』じゃねぇか? いや、あいつ等にとっては喧嘩もスポーツ感覚なのか……」
アスモンも生き物である以上、雌を巡った争いなり縄張りを賭けた争いがある。
だが、彼らもまた人間同様にただの喧嘩もスポーツにしてしまうアスリートのモンスターだ。
これが仮に山の主の座を争った試合だとすれば、これほどのアスモンが観客として固唾をのんでいたのも理解できる。
だったらと……ビリーは震えた。
こいつをスカウト出来ればどれほど頼もしいか……と。
「ああ、ライオンさんが!?」
おそらくパンクライオンが今までの山の主だったのだろう。
周囲のアスモンらの鳴き声が「立ち上がって」「負けないで」などの感情に溢れ、パンクライオンは満身創痍の身体に鞭を打ちながら再び立ち上がろうとする。
だがしかし、どんな優れた競技者と言えども世代交代という命題がある。
「俺がこの山のニューリーダーだ」とでも叫んでるのか、勝利の雄叫びを山中に轟かせるヤクザウルス。
周りのアスモンらの反応を見る限り、ブーイングに似た鳴き声を投げられている。
でれあれば、力をもって新たな山の主であることを示すのみ。
これ以上は戦えば生命の危機に直結するパンクライオンに追い打ちをかけるべく、ヤクザウルスがヤクザスラングめいた空耳してしまう咆哮を上げる中……新たな挑戦者がこの試合に飛び込む。
「ボロボロのところ悪いな。楽しい|喧嘩《トレーニング》だったか? そんなにストレスためてるのなら、俺と一緒にこないか?」
『グルルル……!』
目を覆いたくなる惨劇を避けるべく、割り込んできた者の正体はビリー。
「お前はこの山の主で収まってる器ではない。世界に出て色んなアスモンと勝負を……」
だが、ヤクザウルスは聞く耳を持たず「ジャマスンナッコラー!」と言わんばかりに轟き叫ぶ。
「……『俺をスカウトするなら俺を倒してみろ』か、面白い。|恐竜《ヤクザウルス》、絶対に俺の物にしてみせる!」
「ああ、もう。兄さんったら目茶苦茶よ!?」
思わぬ挑戦者の登場で周囲のアスモンらが歓声を上げる中、ミリィは負傷したパンクライオンの元に駆け寄ると治療すべく、自身のユーベルコード『化身招来・鋼鉄の天使』で召喚した看護師の霊で傷を癒やしていた。
ビリーは双子でしっかり者の妹であるミリィの静止を振り切り、自身もまたユーベルコード『灼熱の牙』によって魔法剣より滾らせた炎を虎に変えながら暴竜との試合に挑む……!
●
●
●
「もう、ふたりとも! 夜になるまで喧嘩して……」
「いやぁ、つい熱くなって……な?」
『ギャァス……』
時は夜中。
何時までも試合を続けていたビリーへ流石に愛想が尽きたのか、ミリィは心配してたのが馬鹿馬鹿しく思えてしまってキャンプの設営や食事の準備をしていた訳であった。
申し訳なく頭を下げるビリーとスカウトされて舎弟になったヤクザウルスが頭を下げる中、「何やってるんだか」と治療を終えて傷が癒えたパンクライオンがふんと鼻息を鳴らす。
「大丈夫? 凄い戦いだったね。私、君の事が気に入っちゃったみたい。私のパートナーになってほしいんだけど……ダメ?」
ビリーとヤクザウルスが激しくバトってる中でこんなやり取りがあり、傷を癒やしてくれた恩義もあってかすっかりミリィに気を許した様子で、元山の主だけあって周りのアスモンらに命じてキャンプの設営や食事の準備などで手伝ってくれていた。
「しかし、まさか俺がこの山の主になるなんて……どうしよ」
「はぁ……兄さんのことだから、やっぱりそこまで考えてなかったのね」
流石にこの山に居続ける訳にも行かないので、アスモンの生活に介入してしまった手前その辺の対応も明日にやらねばである。
つまり、新たな山の主の座を賭けたトーナメントの開催。
これを聞いた山中のアスモンが自分にもチャンスが巡ってきたと言わんばかりに殺到するのが目に浮かんでしまう。
「まだダークリーガーとの試合まで日数があるから良いけど、ちゃんと後始末はやってよね。はい、おかわり」
「ごめんごめん。ちゃんとするからさ、許してくれよ。な? な?」
果たして明日はどんな大騒ぎな一日となるのだろうか。
そんなことを楽しげに話しながら、ふたりと二匹の小寒いながらも温かな夜が過ぎていくのであった……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ダーク応援団長『羅漢原・盤』』
|
POW : 虐殺チャンステーマ
自身の【発する応援歌】に【衝撃波】を宿し、攻撃力と吹き飛ばし力を最大9倍まで強化する(敗北や死の危機に比例する)。
SPD : 地獄エール交換
自身の攻撃ユーベルコードひとつを【エール】に宿し射出する。威力が2倍になるが、[エール]を迎撃して反射可能。
WIZ : 暗黒三三七拍子
【三三七拍子】の継続時間に比例して、自身の移動力・攻撃力・身体硬度・勝負勘が上昇する。
イラスト:なみはる
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠大宝寺・朱毘」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『たのもぉッ!!』
迎えた運命の日、張り裂けんばかりの大声と共に道場破りのダークリーガーが|真新《まさら》ジムの門戸を叩いた。
『俺の名は、羅漢原・盤! コイツは相棒のアスモン、バンリキー! 格闘技主体の|道場《ジム》があると聞きつけ、|道場破り《ジムバトル》を挑みに来たッ!!』
『バーンリキー!』
アスモンジムとは、アスモントレーナーの実力を鍛え、あるいは試すためのアスモンバトル施設である。
今は公式化されていないスポーツであるがまだ制度そのものはないが、行く行くは全国に点在するジムを管轄するジムリーダーと呼ばれる長とのアスモンバトルに勝利して実力を認めてもらうという形で『バッジ』を獲得し、それらを全部集めることでその地方ごとに開かれるリーグへの挑戦権を得るという形を構想している。
まだ形になっていないが、勝負に負けた相手をダーク化するダークリーガーにとってはまさにドンと構えているだけで挑戦者がやってくるという魅力的な制度であり、彼らが各地のアスモンジムを乗っ取っているのもこのような理由があってこそである。
彼、羅漢原・盤もまたそのひとりで、相棒であるバンカラアスモン『バンリキー』と共に格闘技系アスモン主体の真新ジムを活動拠点とすべく道場破りに挑んできたと言った次第である。
「わざわざ遠方からの挑戦はありがたいが、アスモンジムに挑戦するジムバトルの規約は知ってるな?」
『まず競技種目はジムが提示する競技に従うこと。そして、ジムリーダーとの勝負するにはジム所属のアスモントレーナーらを倒さねばならないこと、だ』
この真新ジムは田舎の田舎にあるため、まだマイナースポーツであるアスモンバトルは定着しておらず、ジムに所属している門下生はまだ居ない。
だが……今は違う!
「よろしい。では、客分であるが当ジムの門下生とのアスモンバトルに挑んで貰いたい。挑戦数は無限とし、ひとりでも勝利したのならばジムリーダーである俺との勝負だ!」
『いいぜ! 格闘技以外にも色んなスポーツで腕を鳴らしてきたコイツで看板を奪ってやるぞ。準備はいいな? バンリキー!』
『バンリキー!!』
バンカラアスモン バンリキー
タイプ:かくとう
種族値:ちからB/たいりょくB/すばやさD/こんじょうA/かしこさD
喧嘩に明け暮れてあまり知的でないと思われがちだが、表面の姿形に惑わされず真理を追求する美学と正義感にあふれ、人情に篤い。
アスモン電子図鑑による解説ではこのように記載されており、手持ちのアスモンは一体のみだが強力な相手であるのが予想される。
当然ながらアスモンバトルにおいてはトレーナーが行えるのは指示やアイテム使用などの後方支援のみで、盤のように応援する形でアスモンにユーベルコードを付与する行為はルールでは認められている。
この日のためにスカウトして鍛えたアスモンに全てを委ね、真新ジムの看板を賭けたアスモンバトルがここに開幕する!
メディア・フィール
プレイング改変・アドリブOK
他PCとの絡みOK
勝負はメディアの得意な格闘技…ではなく、モルべこの特技であるモルック勝負。
実はモルべこも、その頑丈さと力強さを兼ね合わせたその特性から、呑気な外見に反して格闘技も得意なのだが、メディアの素早く手数で勝負する方向性とはイマイチ合わない。それを考慮した結果、今回はモルックでの勝負のほうがより分があると判断したのだ。
「行け! モルべこ!」
『べこ~べこ~』
メディアの掛け声とは裏腹に、モルべこは呑気な声を上げながらモルックで勝負します。
投擲力だけならば敵のバンリキーも互角以上。しかし、モルックは50点ちょうどを目指すゲーム。そこに勝機があるかもしれません。
「先方のメディアとモルべこです、よろしくお願いします!! 行け! モルべこ!」
「べこ~べこ~」
この日に備えてトレーニングにトレーニングを重ねたモルックアスモン、モルべこがメディアの前に出る。
アスモンバトルとは、アスモン同士の競技バトル。
彼らをスカウトしたトレーナーである人間は、後方で指示や声援を送るセコンドを務めるのがルールである。
(相手のアスモン……バンリキーは格闘技を得意とするようだ。トレーニングを通して初めて知ったけど、モルべこも格闘技の適性はある。だけども、ボクが得意とする手数で勝負する戦い方とはイマイチ合わない……)
ゆるキャラめいた可愛らしい見た目でも、モルック用の木を倒して加工する術を持っているのだから力があるモルック・べこ。
その反面、素早さは牛らしくあまりないので、メディアが得意とする手数重視の格闘術は教えても適性はイマイチと言ったところだ。
であれば、ジムバトルにおけるルールである「仕掛けられた方が競技を指定できる」を活用してこちらの得意とする競技で勝負を仕掛けるしかない。
「競技はモルックだ!」
『モルックか……承知した。バンリキー、出来るな?』
『バンリキー!』
モルックもメジャーなスポーツではないが、どんな姿形のアスモンでも出来るスポーツであるモルックはアスモントレーナーであればある程度知られているのか、羅漢原・盤は承知して相棒のバンリキーに確認する。
バンリキーは当然だと言わんばかりに雄叫びを上げ、自身の身長に合ったモルック用の点棒となるピンを並べていく。
さてモルックなるスポーツであるが、そのルールは木の棒を投げて倒れたピンの数を競うというもの。
それだけを聞くとすべて倒して高得点を叩き出せば良いと受け止めらがちだが、1から12と書かれたピンを50点ピッタリとなるまで得点を出した方が勝ちとなるルールだ。
仮に50点を超えた場合は25点減点されゲームは継続されるのだが、モルックの奥深さはこれでは収まらない。
「先行はボクらだ、モルべこ!」
「べこ~!」
モルべこが投げた木の棒が高得点のピンを囲むように並べられた小さな点数のピンを数本倒すが、この場合は倒したピンの数が得点なる。
そして倒されて散らばったピンは倒された地点で再び立てられ、また倒せば得点の対象となる。
『高得点のピンを投げ倒せるようにしてくれたようだな!』
『バーンリキー!』
羅漢原チームのターンとなり、バンリキーが投げた木の棒は高得点のピンを1本のみを倒した。
この場合はピンに刻まれた数字が得点となり、メディアチームが得た得点よりも高い点数となって大きく目標の50点に近づいた。
(よし、予想通りの展開だ)
しかしながら、この流れはメディアが思い描いた展開通りである。
倒せば倒すだけピンは散らばり、転がった先で再び立てられる。
だがしかし、投げる側は移動することは出来ないので、散らばれば散らばるだけ相手の欲しい点のピンを遠ざけることが許されているのがモルックというスポーツであって、
『また外したかぁ……いや、出来る! お前なら出来るぞ、バンリキー!!』
先に高得点のピンを優先して狙っていた羅漢原チームだったが、絶対数の50を越えないようにとピタリと合うピンを狙おうとしたが時既に遅し。
倒したピンの数で点数を得ていたメディアチームによって欲しくなる点が遠ざけられており、中々ゴールイン出来ずにいた。
そしてだが、3回続けてミスを出したらば失格となるのもルールのひとつであり、そうなるとより小さな点を狙うか敢えて50点オーバーして25点減らして仕切り直すしかない。
このように戦略性がとても重要なスポーツであるのがモルックであり、スポーツ経験があれば有利という訳でもなくどんな姿形のアスモンでも競技できるスポーツなのだ。
盤の三三七拍子を受けて気を取り直したバンリキーが何とか失格を免れたが、そろそろこちらも決めねば難しくなる。
「モルべこ、サポートするよ!」
メディアの瞳の奥底に氷獄の炎が灯され、ユーベルコード『氷炎魔拳』によりモルべこの身体に冷気が纏われる。
「べこ~!」
モルべこが一投すれば冷気は木の棒を覆われると狙ったピンの手前で落ちる。が、既に木の棒は冷たく輝く氷の炎で覆われ、それをクッション代わりにして弾んだ木の棒がピンを倒す。
これによりメディアチームの点数が50点ちょうどとなり、ジムの看板を賭けたアスモンバトルの勝負にまず1勝したのであった。
大成功
🔵🔵🔵
家綿・衣更着
アドリブ歓迎
衣更着も化術で真新ジムトレーナーに、キグルミタヌキもカラテクマに|化術《きぐるみを着て》変身
「うっす!新人っすけどよろしくお願いしまっす!」
キグルミタヌキと挨拶
「まずは|強化《バフ》っすよ!」
はらだいこポコポコしながら気合を入れてもらう。
相手がユーベルコードを使うならこちらもUC『あやかしメダル「打綿狸の衣更着」』で結界を張りつつエールを撃ち返よう指示。
敵の攻撃は|空蝉の術《きぐるみを脱い》でやり過ごし、衣更着も正体を現す。
「こういうアスモンゆえ騙しは御免っす!そしてアスモンには相性があるっすよ!」
|エスパー頭突き《しねんのずつき》で攻撃指示
「対戦ありがとうございましたっす!」
『クソ、やられたか!』
先に点数を稼いだのが仇となったか、猟兵側の戦略により後半戦は苦戦することとなったモルックでの競技バトルが終わると、羅漢原・盤は悔しがりながらもいい勝負が出来たとばかりな達成感に満ちた顔で悔しがる。
『バンリキー……』
『言うな、バンリキー。これは俺の作戦ミスだ。お前が落ち込むことはない』
連戦とは言え初戦で敗北したことに落ち込む相棒のバンリキーを奮い立たせ、盤は再び立ち上がる。
「ダークリーガーと言えども中々の好漢っすね。流石はスポーツマンシップのアスリートアースだけはあるっす」
不撓不屈な盤の姿に控えていた衣更着は思わず唸ってしまう。
ダークリーガーはこの世界、アスリートアースにおけるオブリビオンである。
だが彼らもまた謎の組織『ダークリーグ』によってダーク化したアスリートなのだ。
その点において、まるで自身の世界『カクリヨファンタズム』で妖怪が骸魂に取り込まれてオブリビオンとなる現象とよく似ていると考えるが、いつもの考察癖はここまでにして自分の番が回ってくれば勝負のステージへと上がる。
「うっす! 新人っすけどよろしくお願いしまっす!」
「ぽー……がおー!」
世界の補正でたぬきの半獣な妖怪ではなく人間に置き換わっているだろうが、より完璧とするために衣更着が化けたのはアスモントレーナーの姿。
そして|真新《まさら》ジムのロゴが描かれた赤いキャップを被れば、誰が見てもこのジム所属のアスモントレーナーに見えるだろう。
『次鋒は、このジム所属のトレーナーにカラテクマ……だよな? まぁいい、相手に不足なし!!』
カラテクマに化けたキグルミタヌキがうっかり元の鳴き声を上げそうになったが、どうやらバレずにごまかせた模様。
尤も、この場合はカラテクマっぽいのが出たことで、バンリキーが得意とする異種アスモン格闘技戦が出来ると喜んだのもありそうなのだが。
「まずは|強化《バフ》っすよ! 戦いの腹太鼓っす!!」
ぽんぽこぽんぽこ♪
カラテクマに化けたキグルミタヌキが指示を受ければ、リズム良く腹を叩き鳴らし始めた。
一見すると微笑ましい光景だが、力を籠めて叩いているので当然ながらアスモンの体力を削る行為に他ならない。だが、これにより自身の闘争心が刺激されアスモンに秘められ屋潜在能力を引き出さてるのだ。
『先手で強化を掛けてきたか。ならば、こちらもそうするまでだ!』
元々初戦で敗北して気が落ち込んでいるバンリキーを奮い立たせるべく、こちらも何らかの|強化《バフ》を応援歌に乗せてやるつもりだった盤。
暗黒三三七拍子と共に地獄の底から発せられてジム全体を揺るがすほどの声量であるエールを発し、バンリキーを鼓舞する!
「応援団な姿は伊達ではない訳っすね。こっちのアスモンが怖気づいてしまいかねないっすから、守るぜトモダチ! おいらのあやかしメダル、ペタリっす!」
衣更着がキグルミタヌキへと投げるは、打綿狸の衣更着が描かれたあやかしメダル。
それが額に貼り付けば、悪意を持つものを退け対象を守る結界を張る結界によってキグルミタヌキに襲いかかるプレッシャーが跳ね返されよう。
『これでお互いの準備は完了だ! いけ、バンリキー!』
『バンリキー!!』
初戦の敗北で消沈していた闘争心が奮い立ったバンリキーが、カラテクマに化けたキグルミタヌキに掴みかかろうと突進!
本物のカラテクマに化けているとは言え、パワーは相手の方が上だ。
本来なら様子見をするところだったが、応援という強化を受けたバンリキーの気迫は想像を超えるものだったのだ。
「このまま正面でぶつかり合えばこちらが不利っす! 空蝉の術っすよ!!」
「ぽーん!」
戦いは常に状況が変わるもので、持ち前の賢さで臨機応変とキグルミタヌキは伝授されや打綿狸の術を繰り出した。
『捕った!』
掴めばこちらのもの。
そのまま地面に叩きつけられたカラテクマに化けたキグルミタヌキだったが、バンリキーの力技を受けたのは祟り縄で作られた藁人形であった。
『なんだと!?』
盤と相棒のバンリキーは驚きの色を隠せず困惑するが、それもそのはず一瞬のことであったのだ。
「緊急回避だったからこうするしかなかったっすけど、本来はこういうアスモンゆえ騙しは御免っす! そしてアスモンには相性があるっすよ!」
種明かしをした衣更着の言葉に、盤はもしやと上空を見上げる。
そこには元の姿に戻ったキグルミタヌキの姿があり、技を仕掛けて無防備となったバンリキーの頭目掛けて落下していた。
「|エスパー頭突き《しねんのずつき》っす!」
「ぽーん!」
キグルミタヌキとバンリキーの頭がぶつかり合えば、試合場に眩い閃光が迸る。
これはキグルミタヌキの超能力とも言えよう能力であり、思念のエネルギーが相手のアスモンに直接送る技だ。
それが脳が収められている頭であれば、どんな屈強なアスモンだろうともひとたまりもない。
『バンリキー!?』
どんな攻撃を受けても立ち上がる根性の持ち主であるバンリキーであっても、流石に堪えたのだろう。
激しい脳震盪を起こされれば立ち上がることもままならず、戦闘不能の一本とはならずとも技ありの判定を受けて結果はキグルミタヌキの勝利である。
「対戦ありがとうございましたっす!」
忍者の戦いに卑怯も反則もない。
だがしかし、バンリキーが見せた技の力強さを称えるに値するものであると衣更着はグルミタヌキと共に礼をするのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ミリィ・ライジング
これは一対一っぽいから、次は私が相手になるよ。
いけるよね? ライオンさん。
勝負はパンクラチオン……聞いた事ない?
簡単に言うと総合格闘技に近いんだけど、
起源は古代バトリンピアにまで遡るれっきとした競技よ?
(この情報は【世界知識・戦闘知識・情報収集】で得た)
パンクライオンは四足で立っているから、組み技や寝技が得意な特性。
【ダッシュ・ジャンプ・先制攻撃】で先手を取ってから、技に持ち込む。
同じかくとうタイプでも、経験の質量までは埋められないでしょ。
あ、まずい後ろに回り込まれた……パンクライオン!
私が教えた、とっておきよ! ヒップアタック!
『バンリキー、大丈夫か!?』
外部のダメージなら痛みに耐え慣れるが、内部のダメージとなれば内蔵を鍛えることは叶わないので激痛を伴う。
それが思考は元より身体の運動も司る脳となればなおさらで、セコンドを務めるアスモントレーナーの羅漢原・盤は駆け寄って相棒であるバンリキーの容態をチェックする。
『バ……ン、リキー!』
『そうか。だが、無理はするなよ!』
バンカラアスモンの名は伊達ではなく、まだ世界が二重三重に見える中でバンリキーは根性で立ち上がり継戦の意思を表明させる。
アスモンの状態を見極めて試合を止めるか止めないかの判断はアスモントレーナーが下す役割でもあるが、盤は相棒はまだ戦える状態であると見極めた上で試合の継続を表明した。
「なんだか可哀想なことをしている気になってきたけど……アスモンがまだやりたいって言ってるなら、だよね。いけるよね? ライオンさん」
「グルルル……」
動物愛護の精神では到底許される所業ではないだろうが、アスモンもまた自らの意思で人間にスカウトされてアスモンバトルの場に立っているアスリートアースの住人だ。
相棒とパンクライオンのたてがみを撫で上げ、低い唸り声に込められた試合に立つ意思を確かに受け取ったミリィは控えから出て、アスモンバトルのフィールドへ立った。
「これは一対一っぽいから、次は私が相手になるよ。勝負はパンクラチオン」
『パ、パンクラ……チオン?』
盤が頭の上にクエスチョンマークが浮かび上がるまでに首をかしげたが、無理もない。
パンクラチオンの起源は古代バトリンピア時代にまで遡る。
諸説は数多くあるが、英雄らの対決でレスリングとボクシングの両方を使用した結果、パンクラチオンが生まれた説が有力な物であった。
案した英雄がライオンに絞め技を掛けた逸話が絵画として描かれ今日まで伝わっていたが、これはパンクライオンとのトレーニングを描いたものであると近年の研究の結果、明らかとなった。
参考文献 明民書房刊『闇に葬られた歴史 −Don't Forget History-』
『あー……つまり、目つぶしと噛みつきは反則な総合格闘技って訳だな?』
「そうね。そう考えて貰えば助かるわ」
今やプロレスやボクシングなどの近代格闘技スポーツの影に隠れてしまったが、知る人ぞ知る古代格闘技スポーツ……それがパンクラチオンなのである!
『なら、簡単だ! 行けー行け行け、バンリキー!!』
格闘技とは古今東西、相手よりも早く機先を制するのが重要だ。
自らのユーベルコードである応援歌に衝撃波を宿させ、相手には向かい風とさせながらバンリキーの突進を後押しさせる。
「見え透いた手よ。パンクライオン!」
確かに人型のアスモンが相手であれば衝撃波が壁となっていただろうが、パンクライオンは四足歩行の獣タイプなアスモン。
二足歩行タイプに技をかける際には立ち上がるが、基本はこの姿勢であるため盤が発している応援歌によって生じる衝撃を物ともせずたてがみを靡かせながら突進する。
その姿はミリィからのスカウトに応じて後進に山の主の座を譲ったとは言え、王者の風格と威厳に満ちたものだった。
「いいわ、パンクライオン! このまま絞め落とすのよ!!」
力では若いバンリキーでは勝っていたが、熟年のベテラン選手とも言えるパンクライオンの方が一枚上手であったか。
若さに任せて突進して掴みかかろうとしたバンリキーよりも先に飛びかかり、羽交い締めとなってギリギリと首や関節を締め上げた。
『やはり得意としてる相手では簡単に行かないか。だが、お前はやれる! そして、誰よりも強い! 力の! 限り! バンリキー!!』
『バーン……リキー!!』
おお、なんたることか!
盤の応援歌を受けたバンリキーが首と関節を力の限り締めていたパンクライオンを腕を蛮力なる膂力で引き剥がすと、その勢いで降り投げる!
パンクライオンは受け身を取るように着地したので叩きつけられることはなかったが、その背後からは今度はこっちの番であるとバンリキーが伸し掛かるべく跳び上がった。
「あ、まずい後ろに回り込まれた……パンクライオン! 私が教えた、とっておきよ! ヒップアタック!」
このままでは経験の差で埋めれるものではなく、あるのは力によって捻じ伏せられる敗北のみ。
であれば、勝ち方などに拘って敗北するは二流三流のやること。
真の王者は如何なる危機に直面してもその困難を打ち破るのだ。
「ガォオン!」
パンクライオンが承ったとばかりに叫び声を上げ、指示を出したミリィの言葉を信じて新たな技を炸裂させる。
その名は『ヒップアタック』。
文字通り、どーんッ! とお尻による超高速かつ高威力の一撃を放つ必殺技だ。
その射程は短く使える場面は限りなく狭いが、この危機においては飛び掛ってくる相手を迎撃するカウンターとして最適かつ必中の一撃に相違ない。
『バンリキー!?』
靭やかな身体をバネにパンクライオンの鍛え上げられた尻の硬さは、まさに巨大なる鉄拳そのもの。
無防備な腹部に思いがけない一撃を食らったバンリキーは悲鳴をあげると共に、ヒップアタックの衝撃によって巨大な身体をジムの天井まで叩きつけられる。
あとは重力に任せて落下すると、どんなものだと言わんばかりにパンクライオンが勝利の雄叫びを上げたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ビリー・ライジング
俺の|相棒《ヤクザウルス》は|妹《ミリィ》の相棒ほど優しくないぜ。
覚悟しろよ……?
勝負は|何でもあり《バーリトゥード》の総合格闘技だ。
【大声】で相手がたじろいだら先手必勝、
【先制攻撃】の頭突きや【なぎ払い】の尻尾攻撃だ。
……やっぱりタイプ相性が悪いから、分が悪いな。
「ヤクザウルス、|何でもあり《バーリトゥード》だ!」
顔面目掛けての毒霧攻撃や【カウンター】のケンカキック。
反撃は【受け流し】からの噛みつき攻撃でトドメをさせ!
「悪いな、これが|相棒《ヤクザウルス》のやり方だ!」
「これで三敗……まだやるかい?」
何度でも挑戦しようと1勝でもすれば挑戦者の勝利となるアスモンジムの道場破りであったが、猟兵と彼らによって鍛えられたアスモンの壁は厚すぎた。
だが壁が厚ければ厚いほど破り甲斐があるというもので、次の対戦相手として登板したビリーからの問いに羅漢原・盤は首を縦に振ることはなかった。
『まだだ、まだやれる! こいつはまだ負けていない! そうだろ、バンリキー!!』
『バンリッキー!!』
1戦は平和的なスポーツ勝負とは言え、2戦も激しいアスモンバトルを繰り広げてまだやる気に満ちたバンリキーの叫びはまさしくフィジカルモンスター。
ならば、こちらも消耗した相手であると遠慮する必要はない。
「そうか。俺の|相棒《ヤクザウルス》は|妹《ミリィ》の相棒ほど優しくないぜ。覚悟しろよ……?」
「GRRRRR!」
アニキの言う通りだぜ、と言わんばかりに舎弟っぷりが板についたヤクザウルスが恫喝するヤクザめいた凄みを効かせた鳴き声で威嚇する! コワイ!!
『相手はヤクザウルスか。すると、対戦競技は……』
「ああ、そうさ。|何でもあり《バーリトゥード》の総合格闘技だ」
バーリトゥードとは、「何でもあり」を意味する最小限のルールのみに従って、打撃、寝技、投げ技、関節技等、反則行為でなければあらゆる技を使用できる総合格闘技。
禁止行為はそれぞれの地方や団体で異なるが苛烈な技の応酬で流血沙汰になりやすいため、時には死亡事故も発生する。
野性に満ちたアスモンならではの勝負とも言えようが、それを辞めるかどうかの判断を下すのがアスモントレーナーの役目であり、バンリキーの状態や意思を汲み取って盤は鷹揚と腕を組む。
『承った! いくぞ、バンリキー!』
ゴングが高らかに鳴らされ、それと同時にバーリトゥードの血生臭いイメージに添わせた応援歌『虐殺チャンステーマ』が高らかに唱和!
ここで立ち向かえ 拳闘士
痛み乗り越え 殴るんだ
紅き血潮と 蒼の魂を
炎と燃やして 攻め立てろ
『ヤレー! ヤレー! バンリキー!』
盤の応援歌がバンリキーの背中に浴びせられ、闘争心のボルテージがめきめきと上がっていく!
繰り出される拳と蹴りは妹の相棒とやり合っていたのとは比べ物にならないまで苛烈となり、恐竜型の体躯で仕掛ける技が限られるヤクザウルスを追い詰める!
(流石に体型の相性は人型のあっちが上で、分が悪いな)
ヤクザウルスは所謂、攻撃特化型のアスモン。
一方的に攻めている時は無類の強さを示すが、逆に噛みつきやひっかきに耐性を持った強固ながらも薄い鱗を打撃技で激しい衝撃を打たれれば尚更だ。
だが、相手も同様に攻めの一手に徹している今は守りは手薄となっている。
やるなら今だ!
「ヤクザウルス、|何でもあり《バーリトゥード》だ!」
「GARRRRGH!」
防戦一方であったヤクザウルスが怒りに満ちた唸り声を上げると同時に、牙と牙の隙間から如何にも毒々しい緑色の霧がバンリキーの顔に向けて吹き付けられる。
ナムサン、毒霧アタックだ!
これはビリーのユーベルコード『|罪深き暗黒の毒の剣《ポイズンブラックソード》』をヒントに考案された技であるが、それを口に含んでいるという都合で実際は猛毒の類ではない。
しかしながら、毒霧に含まれたワサビ成分によって視界を奪ったどころか鼻にツーンと来る刺激臭によって、バンリキーは思わず顔を掌で覆ってしまう。
当然ながら、ボディはガラ空きであった。
「チャンス到来だ、ヤクザウルス! やられたらやり返せ、倍返しだ!!」
「GARRRR!」
目が目がと、ヤクザウルスならではな悪どい手を受けて悶えるバンリキーの土手っ腹に繰り出されるは蹴手繰りのケンカキック!
みぞおち部分にクリーンヒットすれば如何に屈強なバンリキーと言えども容易く怯んでしまい、背中から倒れれば鍛え上げられた筋肉で生み出されるヘビー級の自重が加わってより激しく床に打ち付けられる。
激しい痛みに悶える叫びを上げたバンリキーであったが、獰猛なヤクザウルスの反撃はここで止まるはずもなく、勢いよく踏みつける追い打ちを叩き込む。
「盤、どうする。既にチェックメイトだ! まだやるって言うのなら……」
ぐりぐりと体重を乗せながら踵で踏みにじるヤクザウルスが大き裂けた口をゆっくりと開けば、鋭いナイフのような牙が鈍く光る。
今まさに戦闘不能に至らしめるトドメの噛みつきをバンリキーの首目掛けて与えようとした時、応援歌を止めて拳を強く握り締めていた盤が叫んだ。
『参った! 俺たちの降参だ! だから、これ以上は勘弁してくれ!!』
道場破りを挑んできての降参である。
それは意気揚々と乗り込んできたダークリーガーとして恥ずべきことなのだろうが、自分の意地を通した結果に唯一無二の相棒が負わなくても良い怪我を負ってしまう気持ちが勝っていたのだろう。
『……あれ? 俺、どうしてここに……?』
彼はまさに目の前が真っ暗になったも同然の思いだっただろうが、それが勝利に拘るダークリーガーの呪縛を解くに至るとは誰が想像し得たか。
「勝負あり、だな。盤と言ったな……君はダーク化していたんだよ。君とアスモンはなーんも悪くない」
審判を務めていた|真新《まさら》ジムの主である成之が静止すれば、あともうちょっとだったのにと悪態を吐きながらヤクザウルスは踏みつけていた脚をどかすして、すごすごとビリーの元へと戻る。
「よく我慢したヤクザウルス。お前にしちゃ上出来だ」
「GRRRRR……」
どうも腑に落ちないと言わんばかりに不満を隠さないヤクザウルスだったが、喧嘩の果てに負けを認めて杯を交わした兄貴のビリーからこう褒められれば照れ隠しで喉を鳴らすしかない。
『ああ、そうだ……思い出してきた。俺はジムを乗っ取ったダークリーガーを倒そうとして、負けて……』
「だろうな。ダークリーガーに負ければ誰もがダーク化してしまう。そこを誰も責めやしない……で、物は相談なんだが……うちのジムに所属しないか?」
まさかのスカウトに誰もが驚いただろう。
アスモンをスカウトするのではなく、アスモントレーナーをスカウトするだなんて。
『……押忍! よろこんでスカウトを受けるっす! 真新ジムでまっさらになって一から出直します!』
「真新ジムでまっさらに出直すか。これは一本取られたな!」
例えダーク化した選手であろうが、素質があればチームにスカウトする。
今日の敵は明日の味方とよく言ったもので、スポーツマンシップに満ちたアスリートアースにおいてはよくある光景である。
かくして、真新ジムに降り掛かったダークリーガーの道場破り騒動は雨降って地固まる形で幕を閉じたのであった。
大成功
🔵🔵🔵