3
リ・ヴァル帝国録~|再侵攻者《Reinvader》

#クロムキャバリア #【Q】 #地下帝国 #リ・ヴァル帝国

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#クロムキャバリア
🔒
#【Q】
🔒
#地下帝国
#リ・ヴァル帝国


0





 ――グリモアベースの片隅で。
「……成程。このタイミングで仕掛けてくるのか」
 そう、目を瞑っていた北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)がポツリと呟きそっとその双眸を開く。
 気が付けば蒼穹の輝きを伴う双眸を持った優希斗の周囲に猟兵達が集まっているのをみて、尋ねてきた。
「……皆。リ・ヴァル帝国って言う国が、クロムキャバリアにあるのは知っているかい?」
 ――リ・ヴァル帝国。
 その帝国の名前を聞いてそれぞれの表情を浮かべる猟兵達を見回しながら、優希斗が続ける。
「そのリ・ヴァル帝国のある地方にはね、自由都市ウェルディンと言うリ・ヴァル帝国のある南地方と、ロスト共和国と言う名の国のある北地方の堺になる都市があるんだが……」
 その自由都市ウェルディンを嘗てジルド帝国と名乗った地下帝国は襲撃して来た。
 その折に猟兵達が、自由都市に駐屯していたリ・ヴァル帝国の皇帝アロンダイトと彼の率いる軍隊や、多くの人々と共に撃退したと言うあらましを持つ地下帝国。
 ――そのジルド帝国が。
「新たな戦力を率いて、リ・ヴァル帝国に侵攻してくる事件が視えたよ」
 リ・ヴァル帝国は、その地下帝国に対しては、敵対行為を行い続けていた。
 それに対する逆襲戦として、リ・ヴァル帝国にジルド帝国が攻めてくる可能性が現実化したと言うのが今回の事件であろう。
 無論、それに対抗する戦力を、リ・ヴァル帝国が整えない筈も無いのだが……。
「……どうやら、リ・ヴァル帝国が交戦する為に用意していた兵器は現在、オーバーホール中らしいんだ」
 そのリ・ヴァル帝国で現在オーバーホール中の数多の機体は、或いは、リ・ヴァル帝国にとっての切り札になる可能性がある。
 まあ、猟兵達がそれを借り受けた事はないが、リ・ヴァル帝国の皇帝が、自らの理想の為に戦力を拡充し続けてきたのは事実。
 そして、その増加戦力として用意した、その機体全てが……。
「オーバーホール中のタイミングを狙って、ジルド帝国は逆襲も兼ねて、リ・ヴァル帝国に襲撃を掛けてきた。流石にこのジルド帝国の部隊をリ・ヴァル帝国だけで迎撃するのは無理がある」
 ――だから。
「皆に頼むんだ。リ・ヴァル帝国に協力して、ジルド帝国を撃退してくれってね」
 その優希斗の言の葉に。
 猟兵達がそれぞれの表情を浮かべるのを見て、優希斗が静かに首肯した。


「さて、ジルド帝国は地下帝国だ。そんな地下帝国にある彼等の使用する機体達は、生身を汚染する『有毒装甲』を有している」
 その『有毒装甲』を装備した敵部隊を迎撃するのが猟兵達の役目。
「その上で今回、ジルド帝国は前回の雪辱を晴らした上で自分達の目的を果たそうとしている。その為の一番槍として、部隊長クラスの機体を投入してくるんだけれど……」
 ――その機体は、どうやら特殊な武装を有しているらしい。
「まあ、具体的には不可視の自動浮遊光線兵器って所かな。敵の死角に入り込んでそこから強襲を掛けてくる、そんな武器だ。一番槍の隊長機自体は、真正面から殴り合うべく突進してくるから、其方に気を取られている間に攻撃をされる……そう言う厄介な戦術を駆使してくるって事だ」
 その武装に独自に対処しながらいかにして敵を撃破するのか。
 それが最初の関門を突破するのに重要な事なのだと優希斗は続けた。
「でも、敵は第二派を絶え間なく送ってくるから、リ・ヴァル帝国側がそれに対抗する為の機体のオーバーホールが間に合わない。此処をなんとか耐えしのげば、或いは、リ・ヴァル帝国側が隠しているその機体を、最後の敵相手に借り受けることが出来るかもしれないけれどね」
 ――いずれにせよ、だ。
「リ・ヴァル帝国からすれば、その機体群は最重要機密事項だ。こういう余程危険な状況でもない限り、それらの機体を貸してくれるという事はないと思っていい。これは逆に言えば、リ・ヴァル帝国が、何時か|殲禍炎剣《ホーリーグレイル》に対抗する為の戦力を用意している、その状況を見定める恰好の機会なのかもしれない」
 但し……と優希斗が言の葉を続けた。
「もしリ・ヴァル帝国がジルド帝国に敗れれば、その機体がジルド帝国の手に渡ってしまう事は確定している。そんな強力な兵器をジルド帝国にくれてやるリスクは避けたいんだ。だから皆、どうか、宜しく頼む」
 その優希斗の言の葉と共に。
 ――蒼穹の風が、グリモアベース内に吹き荒れて、猟兵達がその場から姿を消した。


長野聖夜
 ――その兵器が齎すものは。
 いつも大変お世話になっております。
 長野聖夜です。
 と言う訳で、クロムキャバリアシナリオをお送りいたします。
 このシナリオは下記拙著シリーズと一部設定を共有しております。
 勿論、今までのシナリオ未参加でも全く問題ございません。
 シリーズ名:リ・ヴァル帝国録シリーズ。
 尚、今回は、戦闘で共に戦ってくれる仲間の様なNPCは少なくとも第1章では登場しません。
 また、第1章中で皇帝への面会に行く等の行為も不可能ですので、ご了承ください。
 因みに、リ・ヴァル帝国の兵士達(キャバリア搭乗)は戦場におりますが、帝国へのジルド帝国の侵入を防ぐべく防壁となっている為、共闘すると言ったことも、第1章ではありません。
 その為、今回のシナリオでは下記がプレイングボーナスとなります。
 プレイングボーナス:敵が装備している特殊兵装及び、有毒装甲に対抗する。
 尚、第1章のボスが装備している兵器は、下記UC相当の能力として扱います。
 名称:フルオートマティック・インヴィジブルレーザー
 効果:【無数の不可視の死角を狙う光線】を放ち、自身から324半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
 このUCと、通常のUCのダブルユーベルコードで攻撃してくると言う判定になりますので、予めご了承下さい。
 尚、この追加兵装に関しては、無効・無敵等の『絶対に効かない』と言う系統のユーベルコードや複製・吸収・反射系のUCの対象になりませんので、予めご了承ください。
 プレイング受付期間はタグ及びマスターページにてお知らせいたします。

 ――それでは、良き戦いを。
118




第1章 ボス戦 『ジェネラル・キャバリア』

POW   :    キャッスルウォール
自身の身長の2倍の【後方からの攻撃を無効にするオーラの背後霊】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD   :    ジェネラルホース
【|機械馬《サイキックキャバリア》】を召喚する。騎乗すると【人馬一体】状態となり、【灼熱】属性とレベル×5km/hの移動力を得る。
WIZ   :    トラクションニール
【棘から電磁パルスを発振】【RXハルバード】による近接攻撃の軌跡上に【引力】を発生させ、レベルm半径内に存在する任意の全対象を引き寄せる。

イラスト:イプシロン

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は廿鸚・久枝です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ミハイル・グレヴィッチ
【SIRDとして行動】

巨神エリュシオンに搭乗して行動。
(エリシュオンの操縦席内で色々操縦系統を弄りつつ)ふん、乗り心地は悪くねぇな。ファーストクラスとまではいかねぇが、俺が今まで乗った|装甲先頭車両《AFV》に比べりゃ随分マシだ。
そんじゃ俺と|お前《エリシュオン》での初実戦だ。相手はジルド帝国の機体、遠慮はいらねぇ。ハデに行こうぜ。
敵は死角から攻撃してくるらしいが、何、対処は簡単だ。躱せない攻撃なら、それに耐られる防御力があればいい。エリシュオン、お前ならそれ位の防御は出来るだろう?

UCで防御力を上げ、敵の攻撃を受けながら同時に敵の目を引き付ける。こちらの装甲が上か、向こうの攻撃が上か。チキンレースだな。まぁ何時ものコトだが。
敵の攻撃を受けつつ、同時に敵を挑発。
おいおい、今のが御自慢の自動浮遊光線兵器とやらか?蚊に刺されたのかと思ったぜ。その程度のナマクラじゃ、|エリュシオン《コイツ》の装甲は抜けないぜ?

ま、俺の|相棒《ナバールニク》だったら、この程度の戦闘は難なくこなして貰わねぇとな。


ウィリアム・バークリー
ロスト共和国が落ち着いたと思ったら、今度は地底帝国ですか。面倒な相手には事欠きませんね。

いつものように薄膜状宇宙服で毒を遮断。これは最早必須。

『自動浮遊光線兵器』ですか、成る程成る程。
要するに、ぼくが戦場を塗り替えちゃえばいいわけですよね。『戦場のインフラ』をなめないでもらいましょう。

皆さん、少しの間耐えてください! 敵の不可視攻撃を処理します。
「認識阻害」で「闇にまぎれる」ようダークネスクロークにくるまり、「全力魔法」氷の「属性攻撃」「範囲攻撃」「凍結攻撃」「衝撃波」「天候操作」でDisater!
暴風雪と雹の嵐を合成し、戦場全体を包み込みます。敵の攻撃端末を残らず機能停止に追い込みますよ。


灯璃・ファルシュピーゲル
【SIRD】一員で密に連携

痺れを切らして手を出してきたかと思いましたが…この感じだと、内部情報の漏れ元も気になりますね…

薄膜状宇宙服で防毒措置し持参機で行動

指定UCで自機の小銃用に空中炸裂榴弾(時限作動型)と前方監視型赤外線装置とスコープを組み合わせた物を作成し銃に装填及び取り付けておきます
敵方が不可視だとしても、射撃時や嵐の中での急移動時にはどうしても、推進装置や砲口部の熱放散は止められないでしょうし、そこに空中炸裂榴弾を時限作動で炸裂させ迎撃します

戦闘は前衛少し後方で中衛狙撃手として、味方の前衛の死角を補うように、周囲監視しつつ戦闘、まずは浮遊砲台迎撃と味方への警告に注力する

アドリブ歓迎


梶浦・陽臣
●POW対応
●絡みあり
●SIRDとして参戦
「デカいな……クロムキャバリアじゃああれがスタンダードだっていうが、全くこの世界に来たことがない身としてはスケールの違いに圧倒されそうだ。」
「なので……俺も同じくらいのスケールで相手させてもらうぜ。」

大地属性の大魔錬剣を核にUC【大魔錬剣・魔剣巨神物質化】を発動。
超硬質の魔剣装甲と、両手足に魔剣巨神と同じ3倍の大きさになった【鉄甲魔拳】が装着されている。

魔剣巨神となり、両腕をクロスさせ防御態勢になった状態でジェネラル・キャバリアに向かって走り、近接戦を仕掛ける。
接近戦の際、【攻夫】の要領で相手の攻撃を【受け流し】しつつ、その【怪力】をもって相手に拳を突き立て、【部位破壊】を狙いつつ攻撃を仕掛ける。


ネリッサ・ハーディ
【SIRD】のメンバーと共に行動
帝国は新兵器を用意しているという話ですが…肝心な時にオーバーホール中では、話になりませんね。とはいえ、いずれにせよその戦力的空白を埋めなければなりません。それにここで我々猟兵が敵を撃退すれば、皇帝に恩を売る事ができるかもしれません。ここは全力で迎撃しましょう。
グイベル01より各員へ、迎撃態勢。|兵装使用自由《ウェポンズ・フリー》、|各個にて交戦《ファイア・アット・ウィル》。

後方にてUCにて戦況を確認し、味方にその情報を伝える。特に敵の不可視の攻撃を上空の夜鬼にて子細に観察、その対応策を見出す。
また念の為、帝国軍の通信をモニターし、各種動向や状況の確認を怠らない。


館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

…ジルド帝国、図ったようなタイミングで襲撃して来るな
普通なら、リ・ヴァル帝国内の深いところにジルド帝国の手の者がいて情報を流していると考えるべきだろうけど
優性思想に支配されているジルド帝国がそこまでするかという疑問もあるぞ
…でも、今は考えても答えは出ないか

無敵系UCを使用していても特殊兵装からは身を護れず、しかも有毒装甲つき…俺自身には対抗手段がないな
せめて誰かから毒マスクか対毒装備を借りた上で漆黒の「オーラ防御」を纏い、俺自身の「毒耐性」と併せて耐えよう
死角を狙う特殊兵装は、死角となり得る方角を確認しておく

指定UC発動
予め灼熱属性を打ち消すべく、「武器に魔法を纏う」で氷結属性を持つ絶対零度の氷を黒剣に纏わせておき
狙いを定めさせないよう高速でジグザグに走り回りながら敵ボスに肉薄しつつ
俺の死角となり得る方角に向けて「衝撃波」を乱射し「範囲攻撃」しながら特殊兵装を排除し
隙あらば敵ボスの関節目がけて「2回攻撃、怪力」で黒剣を叩き込み一気に冷却してやる!


森宮・陽太
【SPD】
アドリブ連携大歓迎
最初から真の姿解放(オーバーロード)

いや、オーバーホール中を狙うって出来すぎじゃね?
ジルド帝国にその常識が通用しないと言われたらそれまでだがよぉ…

キャバリアに搭乗していれば有毒装甲からは身を護れるが
リ・ヴァル帝国内にガヴェインを持ち込むわけにはいかねぇよなぁ
ガヴェイン、|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》に撃ち落されないギリギリの高度を飛翔しながら光学迷彩で姿を隠し待機、戦場の監視を頼む
何か奇妙な動きがあれば俺に知らせてくれ

有毒装甲対策はマスケラを簡易マスクとして装着し「毒耐性」で耐える
特殊兵装対策は、全猟兵でお互いの死角をカバーするよう動くのが最善手か
その上で味方へのバフ狙いで「高速詠唱、魔力溜め」+指定UCでマルバス召喚
常に戦場に黄水晶の雨を降らせ続け、少しでも有毒装甲の影響を弱めたい
あとは炎属性の「属性魔法」で二槍の穂先に獄炎を纏わせてヒートランス化した上で
死角に回りそうな特殊兵装や敵ボスを片っ端から二槍伸長「ランスチャージ、串刺し」で貫いてやろう


寺内・美月
アドリブ・連携歓迎
猟兵間通信網設置
SIRD共同
・武器として〖繊月〗と〖司霊〗を装備し、武装に統合された機能を用いて攻撃
└有毒装甲対策としては銀河帝国戦時に着用していた薄型宇宙服を改造した〖戦闘防護衣〗を着用
・当初は限界まで隠蔽しつつ、APを光線範囲外の半径400m以上2000m以下の正面ないし側面に陣取る
└遮蔽物の影等に設定(それまでは攻撃せず)するも、位置的に認識されそうなら上記条件で再選定
・光線兵器の破壊もしくは敵機のUC使用時にこちらも指定UCを発動、指定UCの効力による秒速約4000mの突撃を敢行する。敵機の戦闘力減殺を目的とするも、敵機が騎乗時は機械馬を潰して叩き落とし、電磁パルス発振時はその軌道に突っ込みハルバードを破壊(棘を破壊できるなら先んじて破壊)
└光線兵器が未破壊の場合でも攻撃を実施。その場合でも敵機の認識外から距離を一挙に詰めて攻撃するも、戦果の有無にかかわらず一撃離脱する
・状況外として【生命の躍動】により副官を帝国の駐留部隊に派遣し運用の調整を行う




 ――リ・ヴァル帝国正門前にて。
「ロスト共和国が落ち着いたと思ったら、今度は地下帝国ですか」
 自分達の背後にリ・ヴァル帝国の入り口があり、その周辺を帝国所有のクロムキャバリアが固めているのを確認しながら、ウィリアム・バークリーが小さく溜息を1つ吐く。
 その手を宝石『フロストライト』から漂う霜で満たし、己が掌中を氷の精霊達で満たしながら。
 ――すると。
「恐らく痺れを切らして出てきたのだと思いますが……」
 その身を薄膜状宇宙服で防毒措置も含めて纏いながら。
 最初に迫ってくるであろう指揮官級のキャバリアの出現を待つ様に、SJPzH.188 JagdSköllに搭乗し、その腕に持たせた専用銃『Mk 88 Bushmaster SOPⅢ』に装備されたスコープ越しに戦況を確認しながら、そうポツリと灯璃・ファルシュピーゲルが呟いている。
 その灯璃の呟きに。
「……如何した、灯璃さん。気になる事でもあったか?」
 そう灯璃が用意して来た防毒宇宙服を身に纏った館野・敬輔が問いかけるのに、ええ、と灯璃が1つ首肯した。
「館野さん。幾ら何でも今回の件、タイミングが良すぎると思いませんか?」
 そう告げる灯璃のそれに、確かにな、と背筋に冷汗を滲ませながら、そう共感を示したのは、森宮・陽太。
(「リ・ヴァル帝国内に流石にガヴェインを持ち込む訳には行かないよなぁ……。いや、まあ、政治的な諸々の理由も勿論だが……」)
 その陽太の冷汗を垂らしつつの、その翡翠色の瞳が見据える先にいるものは。
(「ふん、乗り心地は悪くねぇな。ファーストクラスとまでは行かねぇが、俺が今まで乗った|装甲戦闘車両《AFV》に比べりゃ、随分マシだ。……ってか、コイツ……」)
 自分が登場している機体を見て唖然としている陽太の様子に気が付きながらも、余裕の笑みを浮かべて煙草に火を点け、蔓延した煙が空気清浄機によって清められる様子を見やりつつ、ミハイル・グレヴィッチが思わず笑う。
「一服するには、丁度いい場所だな」
 そう呟くミハイルが搭乗している巨神の名前は、|エリュシオン《・・・・・・》。
 嘗てロスト共和国に存在していた巨神であり、リ・ヴァル帝国にあったガヴェインと同種で在りながら異なる機能を持った『巨神』
「……まさか、ミハイルが|巨神《エリュシオン》に乗ってくるとは思わなんだわ……。これ、国際問題に成り兼ねない気がするんだが……大丈夫なのか?」
 その陽太のある意味では最もな懸念を聞いて。
「まあ、なるようにしかならないでしょう。カイトさんから、|巨神《エリュシオン》の情報がアロンダイト皇帝に流れていれば、皇帝も何らかの形で動きを取ると思われますが……基本的にエリュシオンについては、|あの国《ロスト共和国》でも、最重要機密事項であり、他の周辺諸国にその情報が流れない様、細心の注意を払っていた筈ですし」
 冷静に状況を分析しながら反射的に軽く目頭を押さえつつ、そう応えたのは、ネリッサ・ハーディ。
(「いや……まあ、カイトさんがあの現場にいた以上、ミハイルさんとエリュシオンが契約する様子は見ていましたから……エリュシオンが猟兵と共にいると説明している可能性もありますね。では、そこに……」)
 何らかの意味があるのではないだろうかと思考を進める様にネリッサが一瞬言葉を途切れさせるのに陽太が軽く頭を横に振った。
「まっ、まあ、話を戻すが。正直、俺も灯璃の意見には賛成だな。少なくとも、帝国の機体のオーバーホール中をジルド帝国が狙うとか……出来過ぎにも程がある」
 そう微かに上ずった声で告げる陽太に、そうですね、と灯璃も相槌を打っている。
「内部からオーバーホール中と言う情報が漏れている可能性を疑うのが自然ですよね。とは言え、では、その内部情報を漏らしたのは、果たして誰なのか……」
 そう呟く灯璃のそれを聞きながら、うーん、と眉根を寄せた敬輔が頭を横に振った。
「確かに普通ならその通りだろうし、リ・ヴァル帝国内の深いところにジルド帝国の者がいて……と考えるのが自然だけれども、あのジルド帝国だぞ? 優性思想に支配されているジルド帝国がそこまでするかな? と俺は思うけれども……」
 敬輔の疑問は、一理ある。
 元々ジルド帝国は、吸血鬼達の地下帝国だ。
 彼等の求める『真なる永遠の平和』と言う名の優性思想を胸に抱いた高慢な者達が、果たしてスパイの様な『姑息』とでも呼ぶべき手段を使うのか。
 その敬輔の問いかけを聞きながら、一時的に言葉を途切れさせていたネリッサがいずれにせよ、と軽く頭を横に振り。
「帝国が用意しようとしていると思われる新兵器の話ですが……肝心な時にオーバーホール中では話にならないですね」
 そう静かに嘆息した所で。
「……その件、1つだけ気になるんですけれども……本当に、『新兵器』なんですかね?」
 そう怪訝の声を上げたのは、ウィリアムだった。
 そのウィリアムの問いかけに。
「……と言いますと?」
 少し疑問に思ったか、ネリッサが静かにウィリアムに先を促すと、いえ、とウィリアムが曖昧に小首を傾げて見せた。
「以前、ぼく達はリ・ヴァル帝国皇帝、アロンダイトと面会をしています。あの時、彼はぼく達に|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》に対する何らかの兵器を自分達が持っている事を示唆していた様に思えます。つまり……もしそれが、今回、オーバーホール中の兵器の事なのだとすれば……」
「……成程。自分達の勝算を高めるために用意している兵器だからこそ、緻密なメンテナンスが定期的に行われている、と言う事ですか」
 そのウィリアムの説明に、そう灯璃が一先ずの同意を示したその直後だった。
「……局長」
 正面の戦場から離れる様にして、薄型宇宙服を改造した【漆黒の戦闘防護衣】の上に羽織った漆黒の外套を軽く風に靡かせた寺内・美月がイヤーマフ型通信機を使ってネリッサに入れ。
「……コイツは……デカいな……」
 とキャバリアを目の当たりにした梶浦・陽臣が愉快そうに口の端に笑みを浮かべながら、静かに呟いたのは。
 全長5m程の鋼鉄の巨人の姿を検めて目の当たりにして、陽臣が軽く息を飲みつつ言葉を続けた。
「……クロムキャバリアじゃぁ、ああ言うのがスタンダードだって話は聞いていたが……この世界に来た経験がまだ浅い俺だと、スケールの違いに圧倒されちまいそうだぜ、全くよ」
「……おっ、珍しいな、陽臣。ビビったか?」
 そうからかう様にエリュシオンのコクピットの通信機越しにミハイルの声が聞こえた時。
 陽臣はまさか、と愉快そうに笑って肩を竦めて、だったら……と小さく息を吸った。
「……俺もミハイルのその機体や、あれと同じスケールで相手させて貰う……其れだけだぜ」
 そう陽臣が愉快気に宣言をした、その刹那。
 陽臣が真の魔剣の力で錬成した大地属性持つ、大魔錬剣を自らの魔剣核として起動させる様にそれを自らの体内に取り込んでいく。
 瞬間、それまでの3倍の大きさ……それはキャバリアの全長とほぼ同じだ……へと変化し、同時に自らの全身を全身を剣や刃の装飾が施された超硬質の魔剣装甲で覆い尽くしていく。
 それは、先日|異世界《サイキックハーツ》で変化した|魔剣巨神《デモンズゴーレム》の姿であったが、あの時と異なるのは……。
「……手甲と具足が……鋭利な刃物の様になっている?」
 その陽臣の姿を見たウィリアムが思わず、と言った様子で呟くのを聞きながら、ネリッサがすかさず空中に夜鬼を飛ばして。
「グイベル01より各員へ。各員、迎撃態勢|兵装自由使用、各個にて交戦《ウェポンズ・フリー、ファイア・アット・ウィル》」
 そう号令をかけるのを聞いて。
「ああ……こういう時は、こう言うんだったか? ……Yes.マム」
 少し怪訝そうにしながらもそう呟く陽臣の返事を聞きながら。
『Yes.マム』
 灯璃、美月と共に|ネリッサ《ボス》からの命令に首肯したミハイルが鮫の様に笑い、陽臣と共に前衛に向かう。
 その時には……その全身に白い靄を纏った敬輔も又、ミハイル達に追随する様に、ジェネラル・キャバリアに突進していた。


 ――その、自分に突進してくるミハイル……否、エリュシオンの姿を見て。
『……成程、そうか』
 ジェネラル・キャバリアに乗っていた一番槍の隊長が、軽く頭を振りながら小さく嗤う。
 其の嘲笑は敬輔達には見えてもいないし、通信回線を通してそれを聞いている筈もないけれども。
『屍鬼帝国の連中が言っていた『切り札』とやらはあの巨神か』
 其の呟きと共に、ジェネラル・キャバリアが咆哮し。
 同時に自らが騎乗する巨大な|機械馬《サイキックキャバリア》を召喚。
 すかさず騎乗しようとするジェネラル・キャバリアの隙をつく様に陽臣が交差させていた両腕に装備された鋭刃を突き立てようとした、その時。
 ――その死角となる、美月が隠れている遮蔽物の反対から、不可視の光線が迸った。
「陽臣さん、右です」
 その様子を見たネリッサが陽臣に指示を下すのに気が付き、陽臣が咄嗟に右に拳を突き出し、その手甲を焼かれるその間に。
『はっ!』
 気合一声、いつの間にか棘から電磁パルスを発振させるRXハルバードを突き出しつつ、自らの全身を灼熱属性で纏った超高速の突進を行うジェネラル。
 自身と同サイズの陽臣にも決して物怖じする事も無く吶喊してくるジェネラルの攻撃に。
「……おい、俺の新しい|相棒《ナバールニク》。此処は、お前の力を見せるところだぜ」
 そう口の端に鮫の笑みを浮かべた儘、ミハイルがそう告げると同時に。
「……ええ、その通りですね、契約者。……モード・アイギス」
 そう小さく呟くとほぼ同時に。
 不意にエリュシオンの全身を水色の巨大な結界が包み込み。
 それと同時に陽臣の死角から解き放たれた光線をいとも簡単に防ぎきっていた。
 そのエリュシオンの姿を見て。
『……成程』
 そう初めて回線をONにして、流れてきたのはジェネラルに乗ると思われる青年の声。
 その声に聞き覚えこそないが……只、優性思想を持つ者特有の傲岸且つ愉悦の混じったそんな気配が何処となく滲み出ているな、と敬輔は何となく思った。
『流石は、と言った所か。では、私はこう言わざるをえまい。……見せて貰おうか。屍鬼帝国の『切り札』の性能とやらを』
 そう続けざまにジェネラルから声が迸ると共に。
「……各員、散開しつつ、セールイ11及びエリュシオンを盾に柔軟かつ臨機応変に対応を」
 自分達の死角……上空に放った夜鬼の目からは辛うじて見て取る事の出来る各々の死角から無数の光線が迸るのに気が付いたネリッサが咄嗟に指示を下すのを聞きながら。
「……了解だ」
 其の呟きと、共に。
 全身をブラックスーツ姿に包み込み、その顔に無表情な白いマスケラを装備した陽太が淡々と呟きながら前傾姿勢になって疾駆しながら周囲を見やって。
 戦場を縦横無尽に撃ち抜かんとする不可視の光線がまるで蜘蛛の巣の様に展開されて自分達を圧し包み込む様にしているのに気が付き、成程、と小さく呻いた。
(「これは……厄介だな」)
 陽太……否、零として冷徹な思考を続けているのは、その死角から迫る不可視の光線による包囲網もさることながら。
 その光線を囮に肉薄してくるジェネラルの装甲に扱われている有毒装甲から人体を汚染する有毒がまるでガスの様に戦場に充満してくるその事実故だ。
 キャバリア――陽太|達《・》の場合は、ガヴェインではあるが――があれば、其の毒による汚染は最小限となるであろうが……。
(「問題なのは俺のマスケラや、ウィリアム達の薄膜状の耐毒宇宙服による遮断が、何処迄通用するのかだ」)
 エリュシオンに搭乗するミハイルと、自前の狙撃用キャバリアに搭乗する灯璃に関しては、まあ、問題はあるまい。
 だが、薄膜状の耐毒防護服で完全に有毒装甲の効果を遮断できるか……仮にしているとしても、その耐久限界は、キャバリアに比べて遥かに早いと考えるのが自然であろう。
 あの巨神……陽臣と言ったか? 
 彼の全身を覆う超硬質の魔剣装甲も、対毒にどこまで効果的なのかも定かではない。
 となるとあまり時間を掛け過ぎれば、陽太達の敗走は濃厚となり、そうはさせじと短期決戦に持ち込もうと思えば、今度は不可視の特殊兵装による連携攻撃が此方の動きを阻害してくる。
 ――であるならば……。
「皆さん」
 その陽太――零の冷静な思考に気が付いているのか。
 薄膜状の耐毒服に身を包み込み、己が掌中に氷の精霊達を収束させていたウィリアムの背後から迸った光線とその周囲の熱源反応に気が付き、咄嗟に灯璃が自らの機体のMk 88 Bushmaster SOPⅢに搭載した空中炸裂榴弾を爆発させ、撃ち落とされた特殊兵装の破片を。
 ぐるりとその場で前転して回避、右手に魔力を氷の精霊の魔力を収束させつつ左手の人差し指を上げて、白と緑と桜色が綯い交ぜになった強大な魔力を収束させる魔法陣を描き始めたウィリアムが続ける。
「『自動浮遊光線兵器』で、ぼく達の死角から攻撃してくると言うのであれば……皆さん、もう少し耐えて下さい! ……Elemental Power Critical……」
 ウィリアムが詠唱を続けながらそう呪を紡いで、魔法陣を描く左手に魔力を収束させた右手を重ね合わせてその魔力を増幅すると同時に。
 自らの纏うダークネスクロークに籠められた暗属性の力を解放し、灯璃が引き起こした爆発の花の中に紛れる様に姿を消し、敵の攻撃の対象から外れると、ほぼ同時に。
「……マルバス」
 そう淡々と呟いた陽太――零が左手に構えた改造型ダイモンデバイスの銃口を上空に向けて、引金を引いた。
 その銃口の先に描き出された魔法陣の中央に描かれていたのは、強壮なライオン。
 その強壮なライオンの肖像に、改造型ダイモンデバイスから撃ち出された銃弾が命を与え、戦場上空に咆哮する強壮な百獣の王が生み出され。
「ガォォォォォォォォォーッ!」
 その強壮なライオン――『マルバス』が、雄叫びと共に、黄水晶の雲で戦場全体を覆い。
 続けてその雲から降り注いだ黄水晶色の優しい雨が、有毒装甲から溢れる有毒を浄化する様に敬輔達の身を癒していった。


「行くぜ!」
 その陽太の黄水晶の雨による状態異常の回復と治療を受け、且つ人馬一体と化したジェネラルの有毒装甲が少しでも緩和されるのを直観しながら。
 陽臣がくぐもった笑声を上げた|魔剣巨神《デモンズゴーレム》が自らを覆った鉄甲魔拳に装備された無数の土色の鋭刃を、まるで羽を広げる様に振るう。
 振るわれたその拳に対応する様にRXハルバードを振るい、その攻撃を捌くジェネラルの背後に現れた背後霊がRXハルバードを振り下ろすが。
「ははっ。陽臣と同格サイズのキャバリアが持つハルバードの倍の質量の武器を振るってくるってか? だが……その程度で俺の|相棒《ナバールニク》が破壊できると思ったか?」
 そう鮫の様に笑ったミハイルの意思に応じたエリュシオンが背後霊の振り下ろしたRXハルバードを、両腕を交差させて受け止めた。
 そんなミハイルとエリュシオンの死角から、不可視の光線が集中してエリュシオンに浴びせられるが、その程度の光線では、エリュシオンは小動もしない。
「躱せない攻撃か。当たった所で、乗り手の俺に何の痛痒も感じさせることが出来ないんじゃ、只のガラクタだぜ? |ジェネラル《генерал》?」
 そうからかう様に、ジェネラルの名を持つキャバリアを挑発するミハイルのそれに、ジェネラル……その背後霊が憤怒を叩きつける様にハルバードを唐竹割に振り下ろすのを、XES-03アダマースを起動させて受け止め哄笑するミハイル。
 そのミハイルの哄笑に、更なる憤懣をジェネラルが掻き立てられるのを感じながら、ジェネラルの視界外にいる敬輔が小さく息をついていた。
「……此処は、近距離からの連撃が俺の最善手か。……いつもなら背面に回って斬るところだが……」
 ――だが、憤怒の儘に刃を如何に背後霊が振るおうとも、その背後霊からは、背後からの攻撃を無効にするオーラが迸っている。
 つまるところそれは、背後からの奇襲攻撃ではどうする事も出来ないという事と同義であり、それはある意味では敬輔や陽太の十八番を奪われているとほぼ同義。
 しかも、本来であれば、『少女』達の力で高速移動をする敬輔ですら、追いつくことが出来ない速度で戦場をジェネラルが疾駆してくると言うおまけつき。
(「何ともまあ……厄介な状況だよな、これ」)
 そう内心で独り言ちながら、黄水晶の雲に覆われる事で充満する有毒の威力が削がれている中を、漆黒のオーラ防御を張り巡らし、氷属性を赤黒く光り輝く黒剣の刀身に纏わせて大地に擦過させながらジグザグに駆けつつ、黒剣を振り上げる敬輔。
 三日月形に振り上げられたその凍てつく冷気纏った斬撃の波が、波状となって正面から相対する陽臣達を援護する様にジェネラルに届く、その状況を。
「……どうやら、俺の動きにまでは気が回っていない様だな」
 離れた所から観測し続けながら、美月がポツリと小さく呟いた。
 その美月の呟きを聞き取っていたのであろう。
「……カシワ71」
 そう、上空から、夜鬼の目で戦況を把握していたネリッサからの通信を、イヤーマフ型通信機で聞き取る美月。
 無論、美月が聞き取っている情報はそれだけではない。
 戦闘の直前に密かに裏から手を回して予め構築した猟兵間通信網から流れてくる情報から、最前線を張っているミハイルや陽臣はさておき敬輔が後背をつくことが出来ず、少しばかり手間取っていると言う状況は既に美月にも分かっていた。
(「……だからこそ、です」)
 そう美月が確信と共に、静かに首肯するのとほぼ同時に。
「……Liberate……Disaster!」
 その不可視の光線を解き放つ、特殊兵装そのものを凍てつかせる様に。
 ウィリアムが戦場全体を暴風雪と雹の荒れ狂う竜巻で、その機能そのものを狂わせ、自動浮遊光線兵器の殆どを停止に追いやったのは。
 ――その様は、正しく『戦場のインフラ』
 その『戦場のインフラ』が生み出したその隙を、美月が見逃す筈も無く。
「……第一次封印を解除。……カシワ71、いざ、参る」
 美月が、人を癒す蒼き宝玉が鞘に嵌め込まれた曇り一つない白き刃〖繊月〗と、鞘に人を呪う紅き宝玉の嵌め込まれた漆黒の刃〖司霊〗を抜刀し。
 その青き宝玉から迸る神気と、紅き宝玉から迸る殺気を具現化させ。
 自らの全身を神気と殺気で練り上げられた白と黒の極光で覆い、己が内から発した『生命の躍動』たる剛気と共に、秒速約4000mで肉薄し。
 白と黒の極光纏う斬撃を解き放ち、人馬一体のジェネラルの側面を激しく斬り裂いた。


『ぐっ……?!』
 それは、ジェネラルにとっては、完全な予想外。
 自動浮遊光線兵器によって自らの死角を消しながらミハイルの挑発に乗せられ、陽臣とミハイルに完全に集中してしまっていたジェネラルとそのパイロットにとっては完全なる奇襲と化したその斬撃。
 美月の|白《神気》と|黒《殺気》と生命の躍動纏ったその斬撃に、ジェネラルの背後霊が一瞬揺らぐ。
「……この瞬間なら!」
 その瞬間を狙って、降り注ぐ黄水晶の雨を受けた敬輔が咄嗟に懐に潜り込み、ジェネラルの登場する|機械馬《サイキックキャバリア》の四肢を凍てつく刃で叩き斬り。
「そっちに気を取られている暇はないぜ?」
 黄水晶の雲に覆われる事で、有毒属性が緩和された有毒装甲を拉げ、破壊する様に、陽臣が踏み込みと同時に、己が両腕を振るっていた。
 振るわれた大地属性纏う斬撃の波が驟雨の様にジェネラルの上半身を切り刻み、その首の駆動系にその刃を突き立てさせたその瞬間に。
「畳みかけさせて貰おう」
 マルバスに黄水晶の雲を召喚させてジェネラルに張り付かせ、其の有毒装甲の効果を最小限に抑えていた陽太――零が両手の二槍を螺旋状の軌跡を描かせながら伸張させていた。
 濃紺と淡紅色の螺旋を描いたその刺突は、美月の斬撃によって態勢を崩したジェネラルの両腕関節部に獄炎を纏ったまま突き立ち、轟、とその両腕の関節部を焼いている。
『ぐっ……!』 
 思わぬ勢いで炎上した両腕で握りしめていたRXハルバードを取り落としても、未だだ、と言わんばかりに辛うじてウィリアムの荒れ狂う吹雪を受けても尚、動かすことが出来そうな光線兵器の欠片で陽臣の死角を撃ち抜こうとするジェネラルであったが。
「甘いですね。バークリーさんの猛吹雪で戦場が雪に覆い尽くされている現状では、その様な動きは丸見えですよ」
 その言の葉と、共に。
 灯璃が時限式空中炸裂爆弾を戦場一体で爆発させ、残骸になりながらも、尚、役割を果たそうとする浮遊兵器を焼き払いながら、Mk 88 Bushmaster SOPⅢで|狙撃《スナイプ》。
 音も無く放たれた銃弾が、陽臣にその首筋に魔剣を突き立てられて火花を散らしている頭部のセンサーを正確に撃ち抜き、ぐらりとその機体を傾がせた。
『ぐっ……!』
 それでも尚、先程一瞬、その姿を消失させかけていた背後霊が存在を保ち、その手の巨大なRXハルバードを横薙ぎに一閃。
 両腕こそ失えど、人馬一体と化した己が本体と、背後霊の振るう灼熱属性纏う薙ぎ払いさえあれば、目前のミハイル達を纏めて焼き尽くすことが出来ると判断したが故の、その一閃。
 ――その筈だった……けれども。
「……そこだな」
 その時には、ヒット&アウェイの要領で大きく後方に飛んでいた美月が、大地を蹴って空中でトンボ返りを打って、反対の側面に移動し、重力に従って落下しながら、2本の白と黒の〖繊月〗と〖司霊〗を一閃。
 白と黒の極光纏う斬撃の波が、先程とは反対側からジェネラルの体を叩き斬る様にX字型の傷を刻みつけ、ボトリ、とその右腕を斬り落とした所に。
「凍てつけ!」
 畳みかける様に敬輔が赤黒く光り輝く刀身持つ黒剣に、ウィリアムが発動させたDisasterで生み落とされた雹を刃に纏わせて、絶対零度の斬撃の波を連射すると。
 連射されたそれが陽太の獄炎の炎に焼かれて熱されていたジェネラルの機体を一気に冷却し、見る見るうちに凍てつかせていった所に。
「はっ!」
 陽臣が、左の手甲に取り付けられた鋭刃をすかさず連撃の要領で叩き込んだ。
 まるで鍵爪による無限の斬撃の様にも思える無数の『気』を乗せたその攻撃が、熱されていた所を急速に冷やされた影響で、著しく弱体化していた有毒装甲を瞬く間に切り刻み、その内部の構造を曝け出していく。
『ぐっ……くそっ……! やむをえん、脱出を……!』
 そう呻く様な呟きをあげながら、素早く脱出装置のボタンを押すジェネラルのパイロット。
 その間にも陽臣の斬撃がジェネラルを斬り裂いていたが、既にこの時には、コクピットシートが跳躍する様にパイロットを跳ね飛ばし、ジェネラルの後方へと彼を飛ばしている。
 そうしてほぼ残骸と化していたジェネラルの様子を見て、何処か呆れた様に嘆息したミハイルが。
「やれやれ、思ったより呆気なかったじゃねぇか。……まっ、手前とのチキンレースは俺達の勝ちって訳だな」
 そう呟くのと、ほぼ同時に。
 ミハイルの乗る|巨神《エリュシオン》用のフォースセイバー【XES-03アダマース】が、ジェネラルの上半身と下半身を泣き別れにし、ジェネラル・キャバリアを完全に破壊したのだった。


「……おおおおおっ!」
 通信機越しに歓声が上がっている。
 それは、小型情報端末MPDA・MkⅢでネリッサが後方に駐屯しているリ・ヴァル帝国軍の情報を念のために、と拾っていたが故に聞こえてきた歓声だ。
「此方、カシワ71。局長、どうやらリ・ヴァル帝国軍の方での防衛部隊の運営は停滞することなく順調に進んでいる模様です。また、彼等がオーバーホール中の機体達の整備も又、順調との報告がありました」
 自らのトゥルパを念のためにリ・ヴァル帝国軍内に駐屯させ、より速やかな部隊運用の調整を行っていた美月からの報告を聞いて、そうですか、とネリッサが1つ頷く。
 ――その一方で。
「……やはり彼等はミハイルさんと契約をしていたエリュシオンの事を知っていた様ですね。……詳しい情報迄は持っていなかった様ですが、確か、エリュシオンの事を『切り札』と……呼んでいましたか」
 先程のジェネラル・キャバリアの発言を思い出した灯璃がそう呟いている。
 その灯璃の言の葉に、となると、とネリッサが軽く頭を横に振った。
「彼の言葉が真実であれば、ジルド帝国と屍鬼帝国の間の友好関係は、互いに『切り札』を所有していることは知っていても、それが具体的に『何』であるのかまでは分かっていなかった、という事でしょうね。……いや、互いに『切り札』とその名前位迄は明かされていたのかも知れませんが……」
 ともあれ、ジルド帝国や屍鬼帝国が決して一枚岩ではないという事の、これは重要な証左であろう。
 また、リ・ヴァル帝国軍が『エリュシオン』を後方から見ていても然程驚かない事から、ミハイルの搭乗する『エリュシオン』が、ロスト共和国の『巨神』であるという事には、どうやら気が付いていないらしい。
(「上層部やアロンダイト皇帝は恐らく気が付いているのかもしれませんが……」)
 ただ、自分達を敵と判断することなく、冷静に対応できる状況なのは、まあ、ありがたい話ではある。
 そうネリッサが内心で思うその間にも。
「ま、俺の|相棒《ナバールニク》だったら、この程度の戦闘は、難なくこなして貰わねぇと困るぜ?」
 そうからかう様にミハイルが自らの契約した|巨神《エリュシオン》に呼びかけるのに。
「ええ……この程度は当然です」
 そう流暢に応えるエリュシオンの声を聞いて、そうでなくちゃな、とミハイルが笑いながら、新しい煙草に火を点けた、その時。
「……まずいですね」
 不意に、美月がイヤーマフ型通信機越しに低い声で警告の声を発していた。
 その美月の言の葉に、ネリッサが応えるよりも先に。
「……成程な。この一番槍は囮でもあったか」
 そう呟いたのは、光学迷彩を行わせて|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》のギリギリ射程に入らない高度からガヴェインに上空偵察を行わせていた陽太――零。
「どういう事だよ、それ?」
 と陽臣が問いかけるのに。
「……まあつまり、ジルド帝国の部隊がぼく達にとっては嫌な動きをしているという事ですよ、陽臣さん」
 そうウィリアムがそっと諦めた様に嘆息するのを聞いた猟兵達は、続けて迫る敵戦力に応じるべく、休む間もなく次の行動に移るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『セピド・オブリビオン』

POW   :    強化魔法・|活性化《アクティベーション》
全身を【人造魔女のおぞましくも凄まじき魔力 】で覆い、自身の【躰に刻まれし呪詛が齎す膨大な魔力及び苦悶】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    破砕妖術・|轟爆獄渦《ヘルズメイルシュトローム》
【魔女の耐え難き苦悶と引き換えに轟爆獄渦 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    呪撒妖術・オブリビオンヴォイド
自身の【オブリビオンマシン 】から【骸の海】を放出し、戦場内全ての【射撃武器】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。

イラスト:そぎめぶき

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ――リ・ヴァル帝国、裏門
 ……ぞわぞわぞわぞわぞわ……。
 漆黒の瘴気の様な気配がリ・ヴァル帝国を包囲する様にじりじりと滲み寄ってくる。
 それは、明らかに人の理からも、明らかに異なる理を持つであろう者達が纏う気配。
 噴出された瘴気の様なそれの存在に、リ・ヴァル帝国軍正規兵達が、思わず、と言う様に息を飲んでいた。
「こ、こいつは……」
 兵卒の1人が、嘗て、味わった事のある深く昏く澱んだ気配が何であるのかに気が付き顔を青ざめさせながらもキャバリアのライフルを其方へと向ける。
「……オブリビオンか! 全軍、一斉に砲撃開始! 奴等を1機たりとも、帝国内に入れるな!」
「イェッサー! ……ってぇー!」
 裏門の守りを司っていた正規兵隊長からの号令が飛び、それに応じた兵士達が一斉に砲撃を開始するが。
「なっ……効いていない……だとっ!?」
 自分達の一斉砲撃を骸の海で丸呑みし、全くダメージを与えられず戦慄する兵士たちに向けて、指揮官が再び号令を下すよりも、先に。
 ――目前の虫の様なオブリビオンマシン達から、不意に苦悶を伴う怨嗟の声が聞こえて来る。
『コロス……コロス、コロス、コロス、コロス、コロス……!』
 呻く様な呪詛の声と共に、轟爆獄渦が連鎖する様に爆発し、リ・ヴァル帝国軍を1機残らず、全滅させようとした、その時。
 ――天から轟風と共に振り回された銀の旋風が、オブリビオンマシン達を纏めて貫き。
 ズン、と言う音と共に、オブリビオンマシンを屠る様にして戦場に舞い降りた銀のサイキック・キャバリアに乗る少年は、目前のオブリビオンマシン達を見て、思わず舌打ちを一つしていた。
「……ルーファスさんから連絡を貰って慌ててやってくれば既にこの状況かっ!?」
 いや、これは間に合った、と言うべきなのだろうか?
 いずれにせよ、リ・ヴァル帝国の正規兵達では、猟兵達より明らかに戦力が劣っている以上、この目前のオブリビオンマシン軍団に対抗できるとは到底思えない。
 況してや、敵が射撃武器を無効にし、且つ、その機体達の力の源となっているものは、恐らく……。
「……考えるのは後だね。……取り敢えず、出来る限り僕達が此処を抑えるしかないか。……アロンダイトが用意している兵器の修理が終わるまでは……」
 そう小さく呻く様に呟いて。
 銀のサイキック・キャバリア――『レーテ』と共に、リ・ヴァル帝国を守る様に姿を現したカイトが、そう小さく息を1つ吐いた。


 ――帝国、正門。
 猟兵達の目前に現れた、虫の様なオブリビオンマシン。
 それが纏う気配とそこから放出されている『骸の海』と、様々な負の想いが猟兵達を飲み込まんと、雪崩の様に襲い掛かってくる。
 そんな猟兵達が構築し、密かに繋いでいた、先程、歓声を上げていた通信機越しの先では怒号と混乱の声が響き渡っていた。
「新手出現! 直ぐに皇帝陛下に連絡を!」
「裏門に一機の銀のサイキック・キャバリア出現! 恐らく、|銀の英雄《・・・・》と確認! 現在、既存機は帝国を守るべく交戦中!」
 その兵士の報告を聞いて。
「……一体、何が起きているんだ……!?」
 上官であろう人物が呻く様に吐いて捨てながら頭を軽く横に振り、怒号を放つ。
『原因の追及は後だ! 整備班! 例のスーパーロボット部隊のオーバーホールはまだ終わらないのか!?』
 混迷を極め始めた、骸の海纏うオブリビオンマシン達の姿を見て。
 猟兵達が、出した答えは……。

 ***********
 *第2章は下記ルールで運用致します。
 1.敵は第1章の戦場であった正門と、反対側にある裏門の二方向から攻撃を仕掛けてきています。どちらを主戦場とするかを選ぶ為に、プレイングの冒頭に、1or2と記載して下さい。1は正門(1章と同じ戦場)、2は裏門(1章とは異なる戦場)と判定します。
 2.正門は現在、閉ざされた上で正規兵の搭乗するキャバリア達が守っている様です。
 尚、リ・ヴァル帝国の皇帝ですが、このシナリオでは正門の方に出撃してくる可能性がございます。
 皇帝は、下記UCを使用して、行動を行います。また、状況によっては皇帝が討ち取られる可能性もございます。
 使用UC名:黄金の獅子・シールドフォーム
 【黄金の獅子の刻まれた盾】を構えている間、同じ戦場内の「自身と同じ方向を向いている味方全員」の防御力を4倍にする。
 3.裏門の方は帝国正規兵達へのオブリビオンマシン達の襲撃から彼等を守る様に現れた銀のサイキック・キャバリアがおります。裏門で戦う場合、彼と協力をするのはプレイングボーナスとなります。     
 また、此方の人物も援護に行かない場合、死亡する可能性がございますので注意が必要です。
 銀のサイキック・キャバリアとその搭乗主は下記UC相当の能力を使用します。
 使用UC名:高速戦闘モード・テンペストランス
 効果:14000km/hで飛翔しながら、自身の【キャバリア】から【ランスによる乱舞又は、旋風攻撃】を放つ。

 4.このシナリオにおける、『魔女』に関してですが、これは吸血鬼の事ではありません。今回は、『起き上がり』に置き換えられている可能性もございます。

 5.裏門側でオブリビオンマシンと交戦中の機体のパイロットであるカイトとの会話は可能です。また、正門の皇帝とも会話は可能ではありますが、現状で何らかの情報を引き出すことは難しいです。出来る事があるとすれば、皇帝が保有していると思われるオーバーホール中のスーパーロボット第3章での貸与して貰えるかどうかの交渉位でしょう。

 6. このシナリオにおける、1と2ですが、此方はそれぞれ『戦場外』と判定します。つまり、『戦場全体』のUCは、最初に選んだ選択肢の戦場でしか、効果を発揮できません。
 また、『レベルm系以内』の条件を持つUCも、それぞれの戦場でしか効果を発揮しない、と判定します。

 7.直接会話が出来るのは、それぞれ、1or2の相手とだけとなります。その為、どちらと重点的に会話をしたいかどうかで選択が変わるかと存じ上げますので、予めその点、ご了承ください。

 8.尚、第1章で使用したUCの効果は無くなっていると判定します。その為、『第1章に使用したUCの効果を活用する』系統の能力は効果が無い、と判定します。

 9.第2章からの新しいお客様の参加は可能です。

 10.敵、オブリビオンマシンは『有毒装甲』持ちです。これに対抗する必要は、当然ながらあります。

 ――それでは、最善の結末を。
ウィリアム・バークリー
1

宇宙服が腐食される可能性……。確かにあり得る話です。それなら「オーラ防御」を張った上で、直接毒に働きかけましょう。
「凍結攻撃」「天候操作」「範囲攻撃」で戦場全域に霧氷を発生させます。
凍った霧の粒子が、毒素と結合して無害化してくれるはず。

その上で、「全力魔法」氷の「属性攻撃」「範囲攻撃」「凍結攻撃」「捕縛」でIce Blast!
地面から突き上げるこれなら、「射撃武器」の定義外ですからね。
「寒冷適応」で永久凍土に適応し、ユーベルコードで敵機の脚部を破壊していきましょう。脚を壊せば、その場で擱座させることも可能なはず。
今回はいつにも増して支援で動きます。
皆さん、敵機の始末をよろしくお願いしますよ!


ミハイル・グレヴィッチ
【SIRDとして行動】



やれやれ、敵さんも諦めが悪いな。ちったぁ戦術ってモンを考える頭はあるるらしいが…ま、相手が悪かったな。
エリュシオン、ここからは超過勤務ってヤツだ。わらわら出てきて鬱陶しいだろうが、さくっと片付けちまおうぜ。

UCを発動し状態異常抵抗率を上げ、敵の有毒装甲に対抗しつつ|一撃離脱《ヒット・アンド・アウェイ》で帝国軍を援護。また皇帝の機体が現れたら、万が一にも撃墜されない様援護を行う。

よぅ、|皇帝《ツァーリ》。こんな鉄火場にわざわざ現れるとは、相変わらずいい度胸してるぜ。背中は守ってやるから、|皇帝《ツァーリ》の威光とやらをしっかり見せてくれよ?

エリュシオンを|皇帝《ツァーリ》に知られる懸念もあるだろうが、何、帝国の連中も莫迦じゃねぇ。遅かれ早かれ連中にその存在を掴まれる。なら、とっとと使った方が後腐れがねぇ。それに猟兵が巨神を所有している、というのはいい牽制になる。少なくとも敵対しようとは思わねぇハズだ。連中に猟兵は利用価値がある、と思わせるのは損じゃねぇだろうからな。


ネリッサ・ハーディ
【SIRD】のメンバーと共に行動

【2】

敵は2方向から侵攻してきましたか。こちらも戦力を二手に分ける必要があります。表門は他の猟兵やSIRDメンバーに任せ、私は裏門に廻ります。
敵の有毒装甲の範囲外にて、UC夜鬼を飛ばして状況を帝国軍を含め味方に報告。特にカイトさんの周囲の敵情を重点的にチェック。同時に、帝国軍の無線を傍受し、表門の状況も把握する。また必要に応じて、UCの荒れ狂う火炎の王の使いを使用し、味方を援護。
カイトさんには、可能であれば帝国軍の新兵器に関する事を何か知ってないかを尋ねてみます。

…敵がこのタイミングで攻勢を仕掛けて来たのは、帝国の新兵器を狙って来た可能性は否定できませんね。


灯璃・ファルシュピーゲル
1に参戦
【SIRD】一員で密に連携
薄膜状宇宙服で防毒措置し持参機で行動

派手な陽動とは思ましたが、挟撃に来ましたか…
短期間で二正面を十分やれる戦力を用意したとなると、
地下帝国を支援した勢力も、だいぶ目立った動きしてそうですし、
調べたら、尻尾をつかみやすそうですね

敵は数を頼りに突破を図ろうとすると予想、まずは突撃破砕の為、
指定UCで、誘導型の燃料気化爆弾と精密爆弾搭載の無人爆撃機を連続召喚し
味方線より先で、敵の密集点に断続的に投下。
敵が連携・統制行動をとれない様に妨害を図り、味方防衛線の維持を支援します


同時に自身は中衛狙撃手として、味方部隊の死角を補うように、広域に監視しつつ
敵部隊の迂回奇襲等の予兆を認め次第、味方への警告しつつ、
敵の指揮・通信に携わっていそうな機体を優先目標に狙撃し排除するよう戦います

戦闘後は時間が作れれば、皇帝に接触し、
理想の為の貴重な戦力であるのは解るものの、
今使わなければ、そもそも守るべきものも守れない、
意味のない存在になってしまうのでは?と伝えてみます。

アドリブ歓迎


梶浦・陽臣
●POW対応
●絡みあり
●SIRDとして参戦
●正門に回る
「大物を囮に2正面作戦をやるたぁ、大盤振る舞いだな……さて、あの大軍をどうするかな。」
「あれも有毒装甲がある、と……よし、俺のやることは決まった。こっちも小細工を弄させてもらうか!」

UC【魔剣錬成】を発動。
まず空間属性の魔剣を使って、自身に『広域化』の状態異常を付与する。これで自身を中心に味方に状態異常を付与できるようにする。
次に、順番にエレメント属性の魔剣を生み出していく。
そこから味方に、火属性の魔剣で『攻撃激化』、水属性の魔剣で『防毒』、時属性の魔剣で『加速』の状態異常を付与していく。

付与が終われば、魔剣を持って敵に斬りかかりに行く。


寺内・美月
2
アドリブ・連携歓迎
猟兵間通信網設置
SIRD共同
「まぁ表門は防御態勢が整っていますし、ウチの武闘派がいるので大丈夫でしょう。問題は裏門ですね」
・帝国軍の案内役と共に裏門に向かう
└裏門に向かう前に寄り道し、〖統帥杖〗の権能を用いて門内の空き地という空き地に砲兵部隊や誘導弾部隊を分散展開する。敵の轟爆獄渦対策としてなるべく裏門から500m以上離れた場所に展開し、攻撃を受けたら各個の判断で離脱し、時間をおいて再展開する
└また敵の活性化による上空からの侵入に備え、高射旅団と対キャバリア砲兵旅団を自身の直轄として準備し、臨機応変に投入する
・裏門に到着次第〖フロンティヌス〗に搭乗し有毒対策を行う(〖戦闘防護服〗着用済み)
・指定UCを発動して上記部隊の射撃を行い敵の呪撒妖術を発動させる。此方は一週間以上射撃を継続できるだけの火力があるので、制限時間を超えて自滅させるか(最短10分で破る見積)、解除させて火力を以て破砕する
・付随して〖機甲騎兵〗を裏門到着時に展開し、カイト君の援護と白兵戦による駆逐を行う


烏丸・都留
SPD
アドリブ連携可
SIRDメンバー




「裏門支援が必要そうね……味方だから攻撃しないでね。」


と伝えながら朧蟲に召喚搭乗、UCにより装備等に雷光を纏い顕現。
機動力Lv倍化、攻撃回数9倍、及び味方攻撃時の回復支援。

敵からの攻撃の弱体化と味方の回復支援を行う。


対神霊/オブリビオン戦略呪操旗機:朧蟲:
全長14m、多面多臂像状の人形上半身のアラクネ型(蜘蛛部分はキバナオニグモ)
常時周囲のオブリビオンの発した力や凡ゆる汚染等を捕食浄化吸収し自身強化
事象改変結界による認識阻害や攻撃偏向等
同能力持ちの分体:通状サイズ多種蟲型、3億以上。
多臂には拡大した聖魔喰理扇とアイテールのメイスを装備。
攻防兵装等あり。


館野・敬輔

【POW】
アドリブ連携大歓迎

…なんだ、こいつら!?
オブリビオンキャバリアにしては、何だか違和感があるぞ?
しかも呪詛の声に苦悶が混ざっているってことは…パイロットは無理やり使役させられている?

…無謀だろうけど、パイロットの捕縛に挑戦してみるか
今回の襲撃に繋がる手掛かりにもなり得そうだ

有毒装甲対策は必要だが、今度は無敵UCを投入しやすい状況だ
指定UC発動しヴァンパイアに変身しつつ、「武器に魔法を纏う」で黒剣に獄炎を纏わせヒートソード化
主に関節や頭を狙って「衝撃波」で「範囲攻撃」したり、「怪力、2回攻撃」で黒剣で叩き斬ったりしよう
ただ、このUCは視界外からの攻撃に対しては無力なので
他猟兵と協力し、できるだけ背後を取られたり死角を作ったりしないようにする

問題はパイロットの正体だな
ヴァンパイアと化した俺を見て何か反応するかどうかは確認
隙あらばコックピットに取りつき黒剣で装甲を溶解させ怪力でこじ開け
パイロットと面通ししたら問答無用で拳を顔面にぶち込み無力化だ
我ながら乱暴だが…自死されるよりましだ


森宮・陽太

【SPD】
アドリブ連携大歓迎
引き続き真の姿解放

オブリビオンマシンの山を投入して来るとはな
だが、マシン内から聞こえるのは苦悶と怨嗟
…パイロットはマシンに精神を侵されている?

敵マシンは射撃無効だが近接は有効
一方で集団全体が有毒装甲持ちで、俺はキャバリアに乗っていない
ガヴェインを呼びたいところだが、エリュシオンがいる状況では色々誤解されそうだから呼べないな
ガヴェインには引き続き上空からの偵察と警告を頼む

少しでも有毒装甲の影響を緩和すべく
「高速詠唱、魔力溜め」+指定UCでマルバス召喚
マルバスには黄水晶の雨で主に味方の癒しを
俺自身は「ダッシュ、地形の利用」で戦場を駆け巡り
「ジャンプ」からの「ランスチャージ、串刺し」で二槍を関節に叩き込む
轟爆獄渦は翠の「オーラ防御」を展開し「火炎耐性」も併用して耐えるしかあるまい

カイトに聞きたい
皇帝が用意している兵器は何か、心当たりはあるか?

戦闘後、もしパイロットが捕縛されていたら観察しつつ
演出で【寵姫の瞳】使い尋問
…お前達は誰だ?
また、お前達の主は誰だ?




 ――リ・ヴァル帝国、正門側。
「正面攻撃の次は、2方向からの侵攻作戦、ですか」
 混乱と動揺を抑えきれないリ・ヴァル帝国の正規兵達の怒号伴う通信を、小型情報端末MPDA・MkⅢ越しに傍受しながら、ネリッサ・ハーディがポツリと呟く。
 そのネリッサの呟きに。
「いやはや、大物を囮に2正面作戦をやるたぁ、敵も大盤振る舞いだな……さて、局長、この状況、如何する?」
 そう笑って問いかけたのは、|魔剣巨神《デモンズゴーレム》形態を解除し、徐々に進軍してくる敵部隊を見つめた梶浦・陽臣。
「此方も、戦力を二手に分ける必要がありますね」
 そう冷静に状況把握に努めながら、そっと息をつきつつ呟くネリッサのそれに、そうですね、と持参した機体に乗り込んでいた灯璃・ファルシュピーゲルが通信機越しに頷き返しながら、小さく息を吐いた。
「……それにしても。派手な陽動とは思っておりましたが、此処で挟撃に来るとは……」
 それは即ち、この短期間で2正面作戦を十分やれるだけの戦力を用意したという事とほぼ同義だ。
 予め伏兵として配置されていた可能性もあるが、まあ、状況的にその可能性は低いだろう。
 そんな風に思考を進める灯璃の機体のモニターに。
「やれやれ、敵さんも諦めが悪いな」
 そう搭乗機|巨神《エリュシオン》のコクピットの中で、煙草を吹かしながらミハイル・グレヴィッチが肩を竦める姿を見せるのを見て、灯璃が微苦笑と共に、そうですね、と小さく首肯した。
「ですが、逆に言えばこれは好機でもありそうです。これだけの戦力を用意する為には、大分目立った動きもしているでしょうから、後日調べたら、尻尾を掴みやすそうですから」
「いずれにせよ、先ずは現状を解決する事が必要ですね」
 その灯璃の言の葉に同意の首肯を示しつつ、冷静にネリッサが告げるのを聞いて。
「ならば、俺達は裏門の方に回ろう」
 そうネリッサに告げたのは、館野・敬輔。
 周囲の白い靄を解除した敬輔の言の葉に、そうだな、と白いマスケラとブラックスーツ姿の森宮・陽太が淡々と首肯した。
「南側に『銀の英雄』が出現したと言う情報もある。恐らくカイトの事だろうが、あの少年だけでこの数を抑えきるのは不可能だろう」
「……ぼく達の後ろにいる一般兵達の銃撃は、全く効果が無い様ですしね」
 その陽太――零の冷静な指摘に同意する様に首肯したのは、ウィリアム・バークリー。
 自らの纏っていた薄膜状の宇宙服が破れかけそうになっているのを見て、そう言えば、とウィリアムが軽く頭を横に振る。
(「……あの有毒装甲にぼく達の宇宙服が腐食される可能性と言うのは……今まで、考えた事がありませんでしたね」)
 それは十分、あり得る話だ。
 であればこそ、宇宙服とそれを身に纏った自身の肉体を防護する為にも……。
 その内心の呟きと、共に。
 自らの宝石『フロストライト』――常に霜が降りている、冷気を放つ魔法石――に宿る氷の精霊達をオーラ状の結界へと変化させて自らの上に羽織る様に纏いながら。
「陽太さんと敬輔さんが裏門の方に回るならば、僕は此方に残りましょう。後は……」
 そのウィリアムの確認の様な呟きに。
「セールイ11、フクス08」
 そうネリッサが改めて呼びかけるのを聞いて、灯璃とミハイルが機体越しにネリッサの方を見る。
「そうですね。正門の方は私達が残ります」
「|皇帝《ツァーリ》もあの性格ならば、この戦況であれば、自ら出陣してくる可能性も高ぇしな。ならば、俺がこっちに残った方が、都合がいい。……|相棒《エリュシオン》が俺達猟兵の手元にある事実を|皇帝《ツァーリ》に見せてやりゃ、それだけでも俺達に利用価値があるって事の証明にもなるだろうしよ」
 そうロスト共和国の|巨神《・・》であったエリュシオンのコクピットの中で鮫の様に笑って告げるミハイルの言葉を聞いて。
「そうですね。では、私は局長と共に、裏門のカイト君達の援護へと向かいましょう」
 そう告げたのはカシワ71の|無線符牒《ラジオコール》持つ、寺内・美月。
 その手には何時の間にか霊兵統帥杖――黒曜石製の指揮杖が握りしめられ、先程迄抜刀していた双刀は既にそれぞれの鞘に納められていた。
 そんな美月の言の葉に。
「ええ、そうですね。では……グイベル01より、各員へ。直ちに作戦を開始して下さい」
 そうネリッサがすかさず合図を送って返すのを聞いて。
『Yes.マム』
 そう美月達、SIRD局員たちが頷き、それぞれに行動を始めた。


 美月がリ・ヴァル帝国の門を守る正規兵の1人に混乱する戦況の中で、裏門に回る旨を伝え、案内を求めた所。
「此方です!」
 渋るかと思われた兵士の1人が美月の応えに応じて、ネリッサ達を裏門前の戦場へと移動させていく。
 どうやら、キース大尉と言う人物の傘下だったその兵士は、目の前で起きている状況の危険さをよく承知している様だ。
(「まあ、プラントがオブリビオン化した時に、彼等に撤退する様に言った俺としては、その方が都合がいい訳だけれどもね」)
 その兵士の事情や懐かしい名を聞いて、内心で敬輔がそう思うその間に。
 ネリッサが素早く夜鬼を空中へと飛ばし、裏門側の戦況を確認した――その時には。
「……成程。先程の応えに貴女の声も混ざっていた様に聞こえた気がしたのは、気のせいではありませんでしたか……アルベ02」
 問いかけるネリッサの声を聞きながら、美月が戦場に辿り着くと同時に、霊兵統帥杖を構えつつ、霊軍総旗機『戦術支援サイキックキャバリア《フロンティヌス》』の目前に召喚。
 同時に《フロンティヌス》から降りてきたラダーを伝ってコクピットハッチを開いて中に乗り込み、《フロンティヌス》の瞳が煌めいた刹那。
「ごめんね、少し遅くなったわ、局長。アルベ02。支援が必要そうなので、参戦させて貰ったわ」
 そう言の葉を紡いだのは、対神霊/オブリビオン戦略呪操旗機『朧蟲』に雷光を迸らせて、既に行動を開始していた烏丸・都留だ。
 その都瑠の迸る雷光を受けたと思われる銀のサイキック・キャバリア……カイトの言う所のレーテの動きは……。
(「……既に俺の目でも捉える事が困難な程なのだが……耐Gとかは大丈夫なのだろうか?」)
 そう内心で陽太――零が呟いている間にも、カイトには勿論、今、この戦場に辿り着いた陽太達に向けて。
『コロス……コロスコロスコロスコロスコロス……!』
 耐え難き苦痛と反問の呻き声と共に、セプド・オブリビオン達の何体かが凄まじい爆発を津波の様に連続で発動させていた。
 その呪詛の念と共に解き放たれた爆発の渦が、敵味方問わず周囲に骸の海漂う戦場を容赦なく黒く、紅く染め上げていく。
「……何だこいつら!? と言うかこの爆発……!」
 ――その苦悶と怨嗟の声に鼓膜を激しく叩かれながら。
 自らの犬歯を伸張させ、見る見るうちにその瞳を真紅に染め上げ、表地が漆黒、裏地が紅のマントをバサリとその背に纏い、全身を漆黒のプレートメイルに包み込む事で、ヴァンパイア形態と化した敬輔が思わず呻いていた。
 不幸中の幸いなのは、未だこの爆発が正面から迫って来ていたという事だろう。
 この爆発がもし、側面や背面で起これば……有毒装甲から散布される毒の影響もあり、只では済まない。
 ――けれども。
「しかし、それ以上に気になるのは、このオブリビオンマシンから聞こえて来る……」
 その敬輔の言の葉に同意する様に。
「苦悶と怨嗟の声だな」
 白いマスケラで何処迄それを緩和できるか、と自問自答を行いつつ、改造型ダイモンデバイスの銃口を天空へと向け、無詠唱でその引き金を引いた陽太――零が応える。
 それへの免疫力を高める為にも、直ぐにあの悪魔を再召喚する必要がある。
 しかも、幸いにも先の戦いで装填していたのと同じ種類の魔力弾をその銃には装填した儘だ。
 故に、それを最速で使用する為に、銃口の先に浮かんだ魔法陣に強壮のライオンの悪魔を描き出し。
 ――そして。
「マルバス。少しでも毒の影響を緩和するべく、雨を降らせよ」
 その悪魔を再召喚した陽太――零の命令に応じる様に。
 姿を現した強壮のライオンの姿の悪魔――マルバスが、裏門側の戦場全体を覆いこむ様に黄水晶雲を召喚し、そこから黄水晶の雲の一部を分離させてオブリビオンマシン達に纏わりつかせ、同時に降り注ぐ黄水晶の雨で、特に完全に生身であるネリッサや自身を中心に雨を降り注がせていた。
 ――と、その時。
「君達、やはり来ていたか」
 超高速で攻撃を行っていたレーテの搭乗者……カイトからの念話がガヴェイン越しに、陽太――零へと届いた。
 念話――テレパシーで話しかけてきた、という事は……。
(「……カイトは知っているが、流石に俺が|此方側《リ・ヴァル帝国》の|巨神《ガヴェイン》と契約している事実は未だ話していないし、秘匿する様に、という事なのだろうな」)
 御伽話としてしか、本来は知られていない|巨神《ガヴェイン》の伝説。
 然れども、それが伝説ではなく真実だと判明すれば、|契約者《・・・》を狙って、自分達に強大な力を得ようとする不逞の輩が現れる可能性がある事の証左でもあるのだろう。
 カイトは勿論、あの時の戦いの事を思い出す限り、恐らく皇帝――アロンダイトも黙認してくれる可能性はあるが、用心に越したことはないのだ。
 だから……。
「ああ、その通りだ。……しかし、このオブリビオンマシンのパイロット達はマシンに精神を侵されているのか? この苦悶と怨嗟の声は、まるで……」
 念話ではなく、敢えて声に出して確かめる様に言葉を続ける陽太――零の言葉を。
「……パイロットが無理矢理使役されている様な……!」
 引き取る様に叫ぶ敬輔のそれに。
「……そうかも知れないね。レーテがあの機体のコクピットの中の熱反応を探知したら……異様に冷たい何かを感じたと教えてくれているけれども」
 ――その異様に冷たい何かとは……。
 それ以上を話すよりも先にカイトがレーテの持つランスを旋回させて、複数のセピドを纏めて薙ぐ様を見て。
「未だ確証は持てないけれど、一先ず、急いだほうが良さそうね。あっ……早々。その子達、私の朧蟲もだけれど、見た目オブリビオンっぽいけれど、味方だから攻撃はしないでね?」
 そう都瑠が、カイトに言い聞かせるかの様に淡々と告げるのとほぼ同時に。
 無数の『朧蟲』の蟲型の分体達に、原初の天空神アイテールのメイスを持たせて肉薄させ、カイト達の援護をする様に近接戦闘を開始し。
「そうですね。……とは言え、裏門を破壊される訳には行きません。……全軍砲撃開始」
 その骸の海によって射撃攻撃を無効にされることを承知しながら。
 裏門から500m以上離れた各空地の要所、要所に『フロンティスヌ』に搭乗した儘、霊兵統帥杖を天に掲げた時。
 美月が開門した門から、無数のミサイルランチャーを装備した砲兵部隊が姿を現し、一斉に多目的誘導ミサイルを発射し、セプド達への牽制射撃を開始した。


 ――一方その頃、正門側では。
「まっ……此処から先に行かせる訳には行かないよな」
 そう口の端に不敵な笑みを浮かべた陽臣が、自分達の目前で戦闘態勢を取り、その躰に刻み込まれた呪詛に含まれた膨大な魔力で全身を覆う。
『コロス、コロスコロスコロスコロスコロス……! アアアアアアアアアアアアアッ!』
 その絶望とも怨嗟ともつかぬ雄叫びと共に。
 超高速機動で肉薄してくるのを見て、ミハイルが口の端に鮫の様な笑みを益々深めた。
「良いねぇ、其の原始的な衝動。そう言う、蛮勇を勇気と履き違えている様な奴が戦場ではさっさと死ぬって事、その身を以て教えてやるぜ」
 と、ミハイルが呟くと、ほぼ同時に。
「まっ……有毒装甲があるなら尚更だ。こっちも小細工を弄させてもらうぜ!」
 そう陽臣が叫びと共に、自らの能力の核となる『真の魔剣』を意識して、自らの力を解放。
 ――瞬間、現れたのは、一本の『空間』属性持つ魔剣。
 自らの状態異常力の強化に心血を注いで作り出したその『空間魔錬剣』とでも呼ぶべき魔剣の力を以て自らの能力を『広域化』する状態異常とでも呼ぶべき力を発動させ。
「魔剣錬成!」
 続けて叫んで、時色の魔剣『時魔錬剣』を先ずは生み出し、圧倒的な速度で正門本陣に肉薄するのを追うミハイルとエリュシオンの『時』を加速させて反撃に転じさせると。
「……しかし、この気配は……『モード・アイギス』。タイプ……状態異常防御」
 加速したエリュシオンが小さく呻きながら自らの『モード・アイギス』の権能が1つ『状態異常抵抗率』を最大限にし、XES-03アダマースを振るっていた。
 振るわれた袈裟の一閃が海色の輝きと共に、広域を薙ぎ払う閃光の刃と化してセピド達を捉え、最大速度だと音速を容易く超える彼等を薙ぎ払っていた。
 その背の羽を断ち切られ、思わぬ落下を強いられるセプド達の様子を見て、ミハイルが嗤う。
「おいおい、如何した、如何した! 手前等の実力はその程度か?」
 そのミハイルの挑発じみた笑声がセプド――或いは、其のパイロット達の怨嗟を更に駆り立てたか。
 ミハイルの周囲に骸の海を展開したセプドの群れが超高速で肉薄しながら、その手の瘴気とも思える呪詛を纏った斧を唐竹割に四方八方から振り下ろす。
「へっ、そう来なくっちゃな! おい、エリュシオン。此処から先は超過勤務ってヤツだ。わらわら出てくるのが鬱陶しいだろうが、さくっと片付けちまうぜ?」
 先程のエリュシオンの僅かな違和感を感じるかの様な反応を思い出しつつ、ミハイルが鮫の様に笑ってそう告げた、その時には。
 既にその斧がミハイルに振り下ろされようとしていたが。
 ――その瞬間、であった。
「……やむを得ぬな」
 そう何処か玲瓏たる響きを纏わせながら。
 金色のサイキック・キャバリアが、獅子の紋章の描かれた豪奢な盾を構えて、ミハイルのエリュシオンを庇う様にその前に立ったのは。
 黄金の獅子を思わせる豪華な装飾の施されたその巨大な盾と、鋭角的なデザインでありながら、黄金色故か、何処か太陽の様な輝きを思わせる王者の威風を纏ったその機体の背を見て、思わずミハイルが笑って。
「よぅ、|皇帝《ツァーリ》。こんな鉄火場にわざわざ現れるとは、相変わらずいい度胸してやがるぜ」
 肩を竦めながら帝国臣民を、更にミハイルとその|相棒《エリュシオン》を守った金のサイキック・キャバリアの搭乗主……リ・ヴァル帝国『皇帝』アロンダイト・フォン・アークライトに通信機越しに告げると。
「……噂には聞いていたが、まさかこの様な形で|ロスト共和国《・・・・・・》の巨神と会う事になるとはな」
 そうアロンダイトが淡々と返してくるのを聞いて。
「皇帝陛下は、やはりミハイルさんの搭乗するその機体が、かの国の|巨神《・・》である事をご存知でしたか」
 そう灯璃が小さく息を吐いて確認する様に問いかけながら、自らの愛機の中でパチン、と指を鳴らすと。
 瞬間、ミハイルとアロンダイトの連携によって退けられた第一派の攻撃に合わせる様にその羽で上空から滑空してきていたセプド部隊の周囲で激しい爆発の花が咲いた。
 それは|殲禍炎剣《ホーリーグレイル》の射程圏外ギリギリの高度に召喚した大型爆撃機が投下した誘導型燃料気化爆弾。
 激しい爆風に晒されると同時に、大量の酸素を奪われる事で真空状態になった事で失速したセプド部隊の周囲で続けざまに精密な爆撃の花が咲く。
 失速し、その爆発から逃れる間もなく全てを焼き尽くされて消失していくセプド達を一瞥しながら、アロンダイトが淡々と首肯する。
「世間には御伽話として知られているこの地方の『災厄の巨神』と同様にな。『世界に災厄を齎す』事が出来る力を持つと言う伝承を持つ巨神がいる可能性は想定して然るべきだ。……ロスト共和国の聖湖の名の由来が、其の巨神からと言うのは、流石に想定してはいなかったが」
「そうでしょうね」
 そのアロンダイトの率直な感想に同意を示したのは、ミハイルではなく、『エリュシオン』自身だ。
 只、短くエリュシオンがそう一言を発する、それだけでも如何に『伝説の巨神』としてのエリュシオンの情報が秘匿されていたのかが灯璃には痛い程理解できた。
(「……例の件についても、恐らくアロンダイト皇帝には情報が入って来ていないでしょうしね」)
 そう胸中で独り言ちる灯璃の脳裏をちらりと過るのは、今はネリッサ達と共に裏門側から攻めてきているセピド部隊の迎撃を行っているカイトの姿。
 あの時の要請によって、果たしてロスト共和国は何処迄復旧されたのであろうと言う懸念は密かにあるが、現状では知る術も無い。
 ――と、その時。
『コロスコロスコロスコロスコロス……!』
 破壊された僚機達の姿を見て、更なる怨嗟に取り込まれたか。
 より一層の漆黒の呪詛を全身に纏わせたセピド達が灯璃の爆発に勝るとも劣らぬ地獄の如き爆炎の渦を巻き起こし、この辺り一帯及び、正門事、自分達を吹き飛ばそうとする姿を見た……その瞬間だった。
「間に合いましたか……Ice Blast!」
 空中に白と緑と桜色を綯い交ぜにした眩く光り輝く魔法陣を描き出していたウィリアムが戦場に自らの叫びを届かせると同時に、その眼前に書き出されていた魔法陣が霜色に明滅し、苦悶と怨嗟の雄叫びを上げようとするセピド部隊の足下から無数の鋭利な氷刃が突き出され、瞬く間にセピド部隊をその場に串刺しにして凍てつかせ。
「行くぜ!」
 咄嗟に双輪魔剣に搭乗し、其のアクセルを踏み抜いて疾駆する陽臣がウィリアムの氷刃に貫かれ、その内側から凍て付いていったセピド達の体を切り裂いたのは。
 轟! と双輪魔剣に宿された赤熱を伴う刃――即ち『火』魔錬剣で強化された魔剣がセピド・オブリビオンを焼き払い、そこから水飛沫の様に飛散する生体を汚染する毒を、刀身が水色の魔錬剣――『水』魔錬剣から放出された水で中和した所に。
 ウィリアムの解き放った氷刃の残滓が霧氷と化し、陽臣が受け止めた毒水の中の毒素と結合、無害な水へと変換すると同時に、戦場を永久凍土の戦場へと作り替えていく。
「攻め手が少し足りないかも知れませんね。ですが……セピド・オブリビオン達の足であっても、この永久凍土の前には凍てつく事でしょう。皆さん、事態収拾の為に、先ずは敵機の始末をお願いいたします!」
 そのウィリアムの言葉を聞いて。
「良いぜ、斬って、斬って、斬りまくってやる!」
 そう笑って返した陽臣が、自らの周囲に召喚した3本の魔錬剣の効果を拡大してミハイルや、灯璃達の火力と機動性を上げて戦力を増強させながら、自らも火錬魔剣から放出される熱を纏った双輪魔剣を駆って戦場を駆け巡り、炎熱した魔剣で、次々にセプド・オブリビオン部隊を切り裂いた。


 ――無数の蟲型の多種蟲型の、都瑠の搭乗する『朧蟲』の分体達。
「……まるで蝗の大群だよね、これ」
 思わず、と言う様にレーテのコクピット内で独り言ちたカイトがレーテのランスでセプド・オブリビオンの1機を貫き。
 その機体をエンジンをフルスロットルさせて持ち上げさせ、美月が統率する多目的誘導ミサイルを間断なく連射する砲兵部隊の射撃攻撃を無力化しつつも、僅かに足止めされていたセプド部隊の脚部に叩きつける様に振り回して敵部隊を無力化している様子を見ながら。
「……正直に言うと、その点は俺も同感だ。とは言え、戦いは数だとも言われているしな」
 敬輔がヴァンパイア形態に変身する時に纏った状態異常を防ぐ黒鎧で、有毒装甲の被害を最小限にしながら、思わず同意を示していた。
 都瑠の呼び出した『朧蟲』の分体達は、相手を認識する事さえできれば、どんな距離であったとしても攻撃出来ると謳われる原初の天空神アイテールのメイスを振るい、或いは払う事で、纏めてセプド部隊を叩き潰している。
(「……しかし、これ程までに反応速度が上がるとなると……」)
 そう内心で自らの召喚したマルバスから降り注ぐ黄水晶の雨が、都瑠の搭乗する『朧蟲』本体から発せられる雷光を通し、治療速度及び反応速度を更に加速しているのを感じながら、陽太――零が2本の槍を伸張させた。
 あまりの速度に質量を持っているかの様にセプド部隊に誤謬させる様な残像と共に放った濃紺と淡紅色の輝きと共に、螺旋を描きながら放たれた槍が、次々にセプド部隊の関節にある駆動系を貫き、その機能を停止させる。
 その状況を上空に飛ばした夜鬼の目でリアルタイムに把握しているネリッサが小さく息を吐き、成程、と1つ首肯した。
「……帝国正規兵部隊の通信を傍受しました。どうやら正門側では、アロンダイト皇帝自らが出陣した様ですね」 
 黄水晶の雨と都瑠の雷光で、自らを蝕まんと風に乗って舞い散る装甲から剥がれて飛来する人体に悪影響を与える毒に蝕まれる速度を辛うじて緩和させられながらそう、小型情報端末MPDA・MkⅢ越しにカイトに通信するネリッサ。
 ネリッサのその言葉を聞いて。
「……この状況で動かない皇帝ならば、民達が支持する筈がないだろうしね。……戦力が其方に過剰集中して、アロンダイトが出撃せずとも決着が付く状況とかならば、出撃して来なかったかも知れないけれど」
 恐らく、正門側の状況をある程度把握しているのであろう。
 そう呟きながらセプドの頭部を纏めて旋風を纏ったランスで横薙ぎに払って戦闘不能にさせつつ、敬輔の死角を補う様にレーテを移動させながらそう呟くカイト。
 そんなカイトの隙を衝いて怨嗟と苦悶の嘆きと共に無限にも等しい獄炎の爆発の波の如き|轟爆獄渦《ヘルズメイルシュトローム》を解き放とうとするセピド達を〖フロンティヌス〗のモニター越しに眺めつつ、美月が先程自分達を裏門へと案内してくれたキース大尉配下のリ・ヴァル帝国兵へと、〖フロンティヌス〗の通信回線をオープンにして。
「申し訳ありませんが、栄えある帝国軍人の貴方方にお願いがあります。裏門の防備に展開されているリ・ヴァル帝国正規兵射撃部隊に、あのオブリビオンマシンへの一斉砲撃を依頼できますか?」
 そう美月が呼びかけるのを聞いて、後方で門を守っていた兵達が、一瞬唖然とした様に目を見開いた。
「……奴等には我等の射撃が一切効かない。現に貴殿が呼び出した砲兵部隊による射撃はあのオブリビオンマシン達に効いていないではないか」
 思わず通信回線をオープンにした兵士の1人からの問いかけに美月がその通りです、と首肯しつつ、ですが、と言葉を続けた。
「あの様な無敵にも等しい行動には、『制限時間』と言う弱点があります。だからこそ、より弾幕を密にすれば、制限時間を超過するまでその場に敵部隊を釘付けに出来る筈です。……それと対空防御の方もより厳に」
 その美月の思わぬ応援要請を聞いて。
「……良かろう、私の現場指揮権限を発令する」
 その美月の言葉に割り込む様に。
 ネリッサが傍受していた裏門を防衛している帝国軍兵達の通信機越しに、指揮官――敬輔が聞いていればそれがキースだと気づいたであろう――男の号令が響いた。
「総員、一斉砲撃開始。標的……敵オブリビオンマシン! 弾幕を張り、敵を一切近づけぬように足止めせよ!」
 恐らく通信回線をオープンにして美月が援軍要請を出したのが、功を奏したのであろう。
 射撃武器を無力化されるのを承知の上で、命令を受諾した裏門を守る為に集結していた帝国正規軍が一斉にビーム射撃を開始し――更に。
「白兵戦部隊、前へ! 銀の英雄達に後れを取るな!」
 そのビームによる弾幕が無力化されるのを目にしながらも、更に自らの指揮下にある白兵部隊に指示を下す指令が響くと。
『了解!』
 すかさず白兵装備に身を固めた裏門側の防衛に回っていたキャバリア部隊が前進し、都瑠の呼び出した朧蟲の分体とセプド達が交戦する戦場に飛び込みたちまちの内に乱戦に入った。
 黄水晶の雲に覆われてその装甲の持つ有毒を緩和されているセピド部隊が、朧蟲の分体用に拡大された聖魔喰理扇の理を喰む捕食能力を以て、喰らわれるセピド部隊のコクピットを貫き、その機体を停止させていく。
 まるで堰を切る様に変わる戦況に気が付いた敬輔が、そっとサバイバル仕様スマートフォンを用いて、カイトへと通信を入れた。
「カイト。1機だけで良い。敵機を戦闘不能に出来ないか? 出来れば、敵機体のパイロットを捕虜にして、少しでも情報を掴みたい」
 その敬輔の依頼を受けて。
「……機体の鹵獲は不可能ではないだろうけれども……でも、あの中のパイロットが答えてくれるとは限らないよ敬輔さん。それでも良いかい?」
 そう問いかけるカイトの口調に籠められている沈痛な様子は、まるで……。
(「……この呪詛の声に混ざっている苦悶の理由……。カイトにはある程度予測が付いているのか?」)
 敬輔が内心でそう思いつつも。
「ああ、何とかできるかなら、頼む」
 そう返しながら抜剣していた赤黒く光り輝く刀身持つ黒剣をヒートソード化させ、セピド達の関節部を焼き切り、機能を停止させている様子を見て。
「……了解だよ、敬輔さん」
 覚悟を決めた様に応えたカイトがレーテにランスをプロペラの様に回転させながら、隼の如き速度で敵に肉薄。
 都留の雷光の援護により最大加速、時速14000kmを更に加速されたカイトが最早銀光にしか見えない程の速度で一瞬で肉薄し、少し離れた所から援護の為の骸の海を放出していたセピドの一機と擦れ違う。
 その一瞬で四肢は勿論、その頭部をも破壊されて只の達磨と化したセピドを見て、思わず目を瞬く敬輔。
(「そりゃ、時速14000kmで飛翔できるだけの機動力を142倍とかされたら……猟兵の目でも捉えることは不可能になりかねないのは重々承知だったけれど……」)
 ――そのあまりにも圧倒的な速度に内心で戦慄しつつ。
 敬輔が都瑠の雷光で強化された運動性を以て無数の残像を残しながらカイトが戦闘不能にしたセピドのコクピットに取り付き、ヒートソード化している黒剣でコクピットハッチを焼き切り、コクピットの中を覗いた瞬間……。
「……これは……」
 思わず息を飲んでいた。
 コクピットの中にいたのは、一言で言えば『腐食したゾンビ』としか形容のしようがない、全身を骸の海に汚染された、恐らくは『人間』
『コロス……! コロスコロス……!』
 そんなコクピットシートにベルトで固定されている――その姿すらも敬輔には、コクピットに磔にされている様にしか見えなかったが――が、虚ろな眼差しに憎悪と殺意をぎらつかせて、敬輔を見る。
「……此処までくると……」
 ――|故郷《ダークセイヴァー》の魂人達と、どちらの方が幸福なのだろう?
 そう思わず反射的に敬輔が嫌悪と疑念を抱いてしまう程に言葉には言い表すことが出来ない姿と化した『人間』の顔面に拳を叩き込む敬輔。
 拳を叩きつけるだけで、ゴキリッ、と首がありえない方向に曲がる音が鳴り響き、その男の息が途絶えるのを見て、敬輔がコクピットから素早く離脱したその瞬間には。
『あっ……アアアアアアアアアアアアアッ!』
 絶望と怨嗟と耐え難き苦悶の声を上げて、息が止まった筈のパイロットの男の絶叫が響き渡り、それが、彼の搭乗するセピド・オブリビオンの力を倍増させ、今までで最大の轟爆獄渦を……。
「……やっぱり、か」
 その時にはカイトのレーテのランスが、そのセピド・オブリビオンのコクピットを貫き、機体に完全に止めを刺していた。
 其のまま骸の海に飲まれる様にして存在が焼失されていくのを見て、敬輔が堪え切れずに、くそ、と呻いた。
「……これは……何度も何度も死んだ……殺された『起き上がり』達を再び蘇らせる技術を利用して作り出された人為的な『起き上がり』かよ……!」
 その永劫の地獄と苦悶の呻きを聞きながら敬輔が毒づく。
「……情報収集をするまでも無い相手だな。こいつらは『アダムカドモン』に齎された例の起き上がりの技術で作り上げられた、人間達の成れの果て……か」
 その陽太――零の呟きに。
「……こんな俺達人間にとっての生き地獄にしか過ぎない世界が『真なる永遠の平和』なんて……俺は絶対に認めない……!」
 そう、敬輔が思わずギュっ、ときつく拳を握りしめたその時には。
 都留の呼び出した分体による白兵型捕食攻撃と、美月の応援要請に応えて動き出した帝国軍白兵部隊、そしてカイトのレーテによって。
 ――裏門方面のセピド・オブリビオン部隊は、塵一つ残さず全滅させられていた。
 一先ずの状況終了を確認したネリッサが。
「……此方、グイベル01。現在、裏門側の敵部隊の殲滅を確認しました。其方はどの様な状況ですか、フクス08……?」
 そう表門側の方にいる灯璃へと連絡を取ったその時は――。


「これで……最後です!」
 その叫びと、共に。
 ウィリアムがセピド・オブリビオンの足下から無数の氷刃を解き放ち、次々にセピド・オブリビオン部隊を凍てつかせてその場に釘付けにしたところを。
「焼き尽くさせて貰うぜ!」
 双輪魔剣に搭乗し、『火』錬魔剣で自らとミハイル達の火力を強化した陽臣が、その鋭刃を振るって、セピド・オブリビオンを焼き尽くし。
 高高度から接近してこようとする敵部隊に向けては。
 ――パチン!
 と灯璃が指を鳴らすと同時に上空に召喚されていた大型無人爆撃機が燃料気化爆弾を投下してその周囲に爆発の花を咲かせてそれらの部隊を焼失させ。
「おら! 終わりだ!」
 最後にミハイルが|巨神《エリュシオン》を駆り、アロンダイトの金のサイキック・キャバリアを守りつつ、その手のXES-03アダマースで真っ二つに最後のセピド・オブリビオンに止めを刺した直後であった。
 ネリッサからの通信に気が付いた灯璃が素早く自機に取り付けていた通信機を手に取り、素早くモニターにネリッサの姿を映し出す。
「はい、此方フクス08です。局長、此方のセピド・オブリビオン部隊の全滅を確認しました。……しかし、このタイミングでジルド帝国が襲撃を仕掛けてきたとなると……」
 そう状況を報告した灯璃の言葉に、そうですね、とネリッサが同意の首肯を返し。
「……恐らくは、帝国の新兵器を狙って来たのでしょうね。其れがどの様な機体なのかは分かりませんが……」
 そう通信機越しに返答をしているその間に。
「……カイト」
 周囲の惨憺たる様子を無表情に見ながら、陽太――零が敢えて念波を用いて、カイトへと話しかけていた。
「……どうかしたのかい、陽太――いや、今は零さんだったか」
「どちらでも構わないが……カイト。他の者達に聞かれたくない可能性もあるから、お前に念話で聞くが……皇帝が用意している兵器が何か、心当たりはあるか?」
 そう陽太――零が念話で問いかけてくるのは、恐らく諸々の事情に配慮した結果であろう。
 内容次第では、カイト自身が不利益な立場になり得るし、そうでなくとも軍属ではないにせよ――或いはないからこそか――リ・ヴァル帝国から情報漏洩の重犯罪者として罪に問われる可能性が無いでは無かったからだ。
 そんな陽太――零の念話での問いかけに。
 カイトが小さく息を吐き、曖昧な表情を陽太――零の脳裏に映し出しながら、続けた。
「……正直に言えば、だ……。僕が知っていると言えば知っている様な気もするし、知らないと言えば知らないとも言える機体だ」
 その、カイトの念話での返答に。
「……何?」
 と陽太――零が微かに目を眇めて念話で返すと、カイトはそっと嘆息しつつ、念話を続ける。
「……説明が難しいんだよ、本当に。そうだな……『よく知っている』ものがあって、けれどもそれとは何かが違う……以前、ロスト共和国の方で一度遭遇した事がある|君達《・・》の仲間達が搭乗していた機体と言えば分かる……かな?」
 そのカイトの返答を聞いて。
 以前、ロスト共和国にガヴェインを待機させ、イーステル州に現れたオブリビオンマシン部隊を撃破した時の事を思い出し、まさかな、と陽太――零が小さく呻いた。
(「皇帝が隠しているスーパーロボットと言うのは……。だが……もしそうであれば、何故、|それ《・・》がこの世界にある?」)
 そう内心で陽太が呟くその間に。
「……成程な。そうか、奴等、ジルド帝国の者達が、我が国の兵器を狙っている可能性があると……そう貴様等は言いたいのだな?」
「はい、その通りです、皇帝陛下」
 灯璃は、アロンダイトとの間に、急ぎ回線を繋ぎ、ネリッサとの協議の内容を、アロンダイトへと伝えていた。
「それが、皇帝陛下の理想の為の貴重な戦力となるであろう事は、重々承知しております。ですが……此度の敵との戦いからも分かる様に、敵の戦力は強大です。恐らく、|例の組織《・・・・》も間違いなく一枚噛んでいるでしょう。であれば、今、その貴重な戦力を使わなければ、そもそも守るべきものも守れない、意味のない存在になってしまうのではないのではございませんでしょうか?」
「その為に、貴様等に我が国の切札を今回のみ貸与して欲しいと……そう言う事か」
 そのアロンダイトの沈思黙考しながらの確認に。
「はい、その通りです、皇帝陛下。また、私達も……」
「|巨神《エリュシオン》……ロスト共和国の巨神と契約した上で、お前達に協力して戦ったんだ。少なくともこの力で敵対するつもりはない俺達に対して其方のとっておきの戦力を貸し出す事は文字通り俺達に『貸し』を作る事にもなる筈だぜ。違うかい、|皇帝《ツァーリ》?」
 その灯璃の言の葉を後押しする様に。
 |巨神《エリュシオン》に搭乗したミハイルがそう言葉を重ねたのを聞いたアロンダイトは。
「……良かろう」
 そう短く呟き、それから整備班へと連絡を入れる。
「整備班! 班長の『モルガン』はどうしている?」
 その皇帝アロンダイトの通信を、小型情報端末MPDA・MkⅢで傍受したネリッサが微かにその眉を顰めていた。
(「モルガン……? 初めて出てくる名前ですが……その方が、リ・ヴァル帝国の新兵器を開発・整備した人物なのですか……?」)
 或いはそれは、コードネームの様なものかも知れないが……。
「はっ! 陛下、緊急のオーバーホールは完了しております! 乗り手を確実に選ぶことにはなりますが……それでも彼女達に機体を貸与、或いは戦力の一部として使用して頂く事は可能です!」
 そう若い|女性《・・》の声がキビキビと応えるのにうむ、とアロンダイトが鷹揚に首肯する様子を見せた声を聞いていた……その時。
「……地上を超高速で移動し、正門の方へと驀進してくる巨大戦艦の存在を確認した。……気を付けろ」
 そう上空で光学迷彩を自らに行いつつ、地上を監視していたガヴェインの警告を聞いた陽太が分かった、と静かに首肯した――その時。
「……何ですか、あの巨大な戦艦は……!?」
 思わず、と言う様に上がったウィリアムの叫びが、戦場に轟く巨大な車輪の回転音が完全に掻き消したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『万輪戦艦『ケルベロスホイール』』

POW   :    二連装バスターキャノン
【グラビティエネルギーチャージ】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【二連装バスターキャノンから戦略級破壊光線】で攻撃する。
SPD   :    突撃
【巨大車輪を全力回転させる事】によりレベル×100km/hで飛翔し、【全長(500m以上)】×【スピード】に比例した激突ダメージを与える。
WIZ   :    護衛キャバリア部隊出撃
召喚したレベル×1体の【量産型オブビリオンマシン】に【飛翔型車輪と射撃兵装】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。

イラスト:良之助

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアレフ・フールです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ――キュィィィィィィィィィィィィーン!
 凄まじく巨大な車輪音を上げながら姿を現したのは、全長500m以上の超弩級陸戦戦艦。
 そのあまりにも巨大な存在を目の当たりにしたアロンダイト皇帝が思わず、という様に目を眇めていた。
「……この様な巨大戦艦が存在していたか。正しく破壊の権化が現れたかの如く、だな」
 リ・ヴァル帝国の伝承にあったかの巨神ですら、巨大ではない。
 この巨大な超弩級陸戦戦艦の前では、一般的なキャバリア等、塵芥……まるで、象に挑む蟻の様な、そんな有様だ。
 ――我が国、我が民を守る為には、手段を選んではいられない。
 故にアロンダイト・フォン・アークライトは、通信機越しに地下の整備工場にずっと詰めていた整備班長『モルガン』に指示を下す。
「オーバーホールの終わった機体から出撃させよ。転送装置を使えば直ぐに輸送出切る筈だ。又、猟兵達へ、あれらの一時的な貸与を許可する」
 そう厳かな口調で告げたアロンダイトのそれに、通信のモニター越しに姿を現していた『モルガン』と呼ばれる整備班長がはっ、と敬礼を1つ。
 同時に素早く共に活動していた整備班達へと指示を下し、|緊急発進《スクランブル》の命令を下していた。
 ――そうして、正門の前に転送されてきたその機体達は、大きさこそ、キャバリアと変わらないが……。
 それでも、猟兵達には現れた機体を一目見て、それが如何な物なのかを何となく感じる。
 それは――2024年11月に発見された新たなる|異世界《・・・》、バハムートキャバリアで、|人造竜騎《キャバリア》と呼ばれる空の王者たる者達に極めて近い。
 成程、空を|殲禍炎剣《ホーリーグレイル》によって奪われた今、何時か『空を取り戻す』大義を果たす為に、空の王者とでも呼ぶべき|人造竜騎《キャバリア》を用意するのには一理ある、と言うべきなのかも知れない。
 ――そう言った想いを初めとして。
 様々な想いや表情を浮かべる猟兵達に対して、アロンダイトは微かに笑った。
「……どうやら貴様等にとっては既存技術の様だな。だが……現在、我が帝国で生産したこの機体は乗り手が限られており、しかもその力を最大限に発揮する事が難しいのだ」
 それでも、それに乗り手となった特殊訓練兵達もいる。
 そんな『空を夢見る』が故に自由に飛翔し、空を制することの出来るその兵器をアロンダイトは貸与してくれると言う。
 かの機体であれば、全長400mの超弩級戦艦を相手にするとしても、十分な戦力として利用できると判断しているのであろう。
 様々な思惑の籠められているであろう、アロンダイトからの申し出を受けた、猟兵達の選択は……。

 ***********
 第3章は下記ルールで運用されます。
 1.敵は絶対先制で下記UCを使用してきます。これで召喚されるオブリビオンマシンは、第2章で皆様と戦ったセプド・オブリビオンとなります。
 この絶対先制で使用されるUCは、反射・無効・複製系のUCや、それを使われる前よりも倒すと言った手段を取ることが出来ません。
 2.敵はダブルUCを使用してきます。ダブルUCの片方はWIZで固定となります。
 尚、WIZ指定のUCを猟兵が使用した場合、POWのUCと共に攻撃をしてきます。
 3.アロンダイト・カイト共にこのシナリオに参戦致します。どちらもこの戦場から撤退する事はありません。
 尚、どちらも何もしなければ死亡する可能性はございます。
 それぞれが使用するUCは下記となります。どちらに協力して貰うかどうかは、キャラクター名頭の数字をプレイング冒頭に入れて頂く事で判定致します。
 尚、この2人の効果を同時に使用する事は出来ませんが、後述する『借りることの出来る機体』とは、同時に使用する事が可能です。
 一.アロンダイト
 使用UC:黄金の獅子・シールドフォーム
 【黄金の獅子の刻まれた盾】を構えている間、同じ戦場内の「自身と同じ方向を向いている味方全員」の防御力を4倍にする。
 二.カイト
 使用UC名:高速戦闘モード・テンペストランス
 効果:14000km/hで飛翔しながら、自身の【キャバリア】から【ランスによる乱舞又は、一斉射撃攻撃】を放つ。
 4.第3章の超弩級戦艦も有毒装甲で作られております。その為、有毒装甲には対抗する手段をきちんと用意する必要がございます。
 5.第2章の判定の結果、|人造竜騎《キャバリア》相当の機体を貸与して貰う事が可能です。尚、キャバリア操縦系統のクラスが無くても、此方の機体群を使用する事が可能となりました。
 |人造竜騎《キャバリア》相当の為、バハムートキャバリア世界で設定されている|人造竜騎《キャバリア》の設定通り、これらの機体は「搭乗者のレベル×4km/hで飛翔可能」となります。
 又、貸与して貰い、その機体を使用する事を選んだ場合、3つのUCの内から好きなUCが使用可能です。
 機体を借り受けてどの能力を使用するのかはプレイング冒頭にそれぞれの能力名の頭にあるアルファベットを記入して頂く事で使用している、と判定します。
 因みに機体を借り受けてUCを使用する場合、3つのUCのいずれかの効果を受けることが出来、且つその3つのUCに下記1文が追記されていると判定します。
 共通追加効果:また、このUCを使用する際、他のUCを同時に1つだけ使用することが出来る。但し、この効果は重複しない。
 選択できる様になるUCは下記3つの内、何れか1つとなります。
 a.グリフォン・トランスフォーム
 回避力5倍の【飛翔】形態か、攻撃対象数5倍の【騎士】形態に変形し、レベル×100km/hで飛翔する。
 b.ブラッド・オブ・ハイドラ
自身の【|人造竜騎《キャバリア》の腕部】をX倍に増殖する。攻撃回数がX倍になるが、防御力・回避力・生命力がX分の1になる。
 c.麒麟伏雷剣
 【|人造竜騎《キャバリア》】での攻撃のたびに、指定秒数後に遅れて敵を攻撃・麻痺させる、追尾型の【潜伏する雷】を放つ。
 基本的に貸与される機体を使う事が不利になるという事はありません。

 ――それでは、最善の結末を。
ミハイル・グレヴィッチ
【SIRDとして行動】

また随分とハデなデカブツ持ち出して来たな。どうやらコイツが今日のパーティーのメインデッシュか。実に喰いでがありそうだ。こりゃ|対艦ミサイル《SSM》でも持って来てればよかったな。
さてエリュシオン、今度は一体どんな魔法を見せてくれるんだ?

まずはUCの戦女神の盾で状態異常抵抗率を上げて、敵の艦載キャバリアを迎撃。その際、|皇帝《ツァーリ》とカイトの機体が危険にならない様留意する。
まぁ、あの二人がそう簡単にやられるとは思えないが、念の為だ。それに、アイツらに恩を売っておいて損はねぇからな。
チャンスを見計らって、UCの冥界の槍を発動。デカブツにはデカブツなりの弱点って、ヤツがあってな。狙うは敵艦のウィークポイント、指揮系統が集まる|艦橋《ブリッジ》に該当する部分か、メインの機関部だ。そんじゃ|一撃必殺《ワン・ヒット・キル》、行ってみようか。

(UC冥界神の槍を発動させた後)やれやれ、|お前さん《エリュシオン》の中にゃ、か弱い|相棒《俺》が乗ってるんだ。もう少し加減してくれよ?


ウィリアム・バークリー
また随分無茶な。

有毒装甲は「オーラ防御」「天候操作」「凍結攻撃」で引き続き対処。

この戦艦の前では、ぼくの存在なんて蟻も同然でしょう。でも蟻にも矜恃はあるんです!

城門上にて「全力魔法」氷の「属性攻撃」「地形破壊」の魔導原理砲・改式で艦橋を「砲撃」します。

Spell Boostした術式OS『Winter』で、各UCを統合制御。

トリニティ・エンハンスで攻撃力強化。
スチームエンジン、影朧エンジン接続。
System:Infinite Circuit全力稼働。
Mode:Final Strike、攻撃力五倍・移動半減。
Idea Cannon Full Burst。

Elemental Cannon,Fire!


ネリッサ・ハーディ
【SIRD】のメンバーと共に行動
【a】

人造竜騎、ですか…恐らく、この技術は外部から持ち込まれたのは間違いないでしょう。問題は、何者が持ち込んだか、ですね。
色々調べる必要がありますが、まずは目の前の脅威を排除するのが先決ですね。ここは有難くお借りしましょうか。

人造竜騎に搭乗し、飛翔形態を選択。まずは、周囲の護衛の気を引き付けます。殲禍炎剣の標的にならない様注意しつつ飛翔と回避、それに攪乱目的のUCを展開、可能ならば敵の護衛を戦艦から引き離す。
まぁ私の操縦技量などたかが知れていますから、敵を仕留める事よりも回避力を生かした機動を展開した方が良いでしょう。まぁ簡単に言えば囮役、といったところですね。


梶浦・陽臣
●WIZ対応
●SIRDとして参戦
「でけぇ……キャバリアが人形サイズに見えるな。」
「あれだけの大物を仕留めるなら……俺も本気出すしかないな。」

胸に右腕を当て、『真の魔剣』を引き抜きUC【魔剣鎧召喚】を発動。
3分間の間、魔剣鎧を身に纏う。
飛行能力で飛びながら、相手からの攻撃は時間属性の力で加速したり、空間属性の力で空間跳躍を行うことで回避しながら近づく。
ケルベロスホイールの前輪部分にまで近づいたら、前輪と本体の接続部分に対して【怪力】を用いた【一刀両断】で、接続部分を破壊する。

破壊し終えれば、鎧の残り時間が続くまでケルベロスホイールに対して攻撃を続行する。


烏丸・都留
SPD
アドリブ連携可
SIRDメンバー

「相手の行動を阻害出来れば……」

無数の事象改変型結界(味方含む)で多重展開防御、ダメージ軽減
UC継続と装備に拠る超強化、回復支援等

朧蟲内で運用管理
アイテールのメイス等は親機で所持。
蟲型分体を下記ユニット群や味方の傍に配置する事で凡ゆる汚染等軽減、敵を捕食等

以下も無数に召喚
何れもCICユニットの即時配置転換能力で適宜入替

アンチ・アストラルマイン:霊子/量子系亜空間機雷、行動阻害。

以下1/10サイズで30m級、数万トンとして縮小召喚(能力質量比例)
ガードユニット:自身や味方を結界や重装甲で物理的防御や行動阻害等。
アサルトユニット:後方からエネルギー系貫通狙撃


カシム・ディーン
機神搭乗
よりによって彼奴かよー!?キャバリアサイズの基準ガン無視じゃねぇかぁ!
「戦艦だからねー☆」
兎に角ぶっ飛ばすぞ!

対先制
【情報収集・視力・戦闘知識】
カイトの能力と敵機の動きと敵軍の陣形を分析
情報共有
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体に付与
光学迷彩で存在を隠し水の障壁で熱源隠蔽

流石にあれは掠ってもいいレベルじゃねぇ…!
全力回避に努め
【念動力・弾幕・空中戦】
UC発動
超絶速度で飛び回りながら念動光弾を叩き込む
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
こちとらもっとでっけー奴を叩き潰した事もあるんだごらぁ!
てかそのデカさでその速さとかおかしいだろうがぁ!?

鎌剣で切り刻みつつエンジンとか武装の一部を強奪!


寺内・美月
アドリブ・連携歓迎
猟兵間通信網設置
SIRD共同
・防毒と護衛機部隊に関しては、前章より継続して同様の手段で対処しつつ、帝国軍とも密に連携し対処する
└ただし、前章においての戦闘で各砲兵部隊、高射旅団が暴露していることも考え、配置変換等により安全対策を行う
└先回は発動の機会がなかったが、引き続き万一の事態に備え【機甲騎兵】の発動を準備
・対護衛機部隊の戦闘準備が完了次第指定UC発動。空中での高速機動にて敵の砲撃を回避しつつ、砲台基部の破壊を目指す
・敵が突撃してくる場合には〖電磁投射砲〗を装備し、これをタイヤ部以外の正面から撃ち込む。打ち込むのは大質量物体(いわゆる質量×速度による衝撃力を重視)とする


館野・敬輔
【闇黒】
【POW】
アドリブ連携大歓迎

いや、これ…大きいんだが(茫然
…って茫然としている場合じゃない

図体は極めて大きいけど
頭に取りつけば内部への侵入チャンスがあるように見える
それならあえてキャバリアなしで機体に取りつく方が目立たないか?

…というわけで陽太さん、その機体に乗るなら頭上まで連れて行ってほしい
何、自分で借りればいいのでは、って?
操縦できる気がしないし(機械に縁のないダクセ民
それ以上に僕が自分で操縦したら途中で乗り捨てることになるから
皇帝の心象によろしくないのでは?

陽太さんが借りたキャバリアの肩に搭乗
先制攻撃は「第六感、見切り」を併用し攻撃の軌道を「視力」で見極め少しでも離れる方向に回避
量産型オブビリオンマシンは「武器に魔法を纏う」で炎を纏わせヒートソード化した黒剣で脚を斬り機動力を奪おう

先制を凌いだら指定UC発動
頭上に到達したら飛び降りつつ「怪力、2回攻撃」で頭をぶった切って船内に侵入
パイロットと遭遇したら顔面パンチで気絶させよう
…相手は吸血鬼姿と化した俺を見て何か反応するか?


森宮・陽太
a
【闇黒】
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎
引き続き真の姿解放(オーバーロード

絶対先制+ダブルUCという場面には何度も遭遇して来た
しかも図体が大きい機体ほど隙は生じやすい
…機体が大きければ良いわけではないと証明してみせよう
ガヴェイン、引き続き上空から迷彩を纏いつつ戦場全体の探知を頼む

ここはあえて敬輔の作戦に乗る
自分で操縦して頭上に行けと言いたいところだが
機械慣れしていない敬輔に無理強いはできないだろう

帝国から「|人造竜騎《キャバリア》相当の機体」を貸してもらい
肩に敬輔を乗せてから最大速度で上空へ飛翔
絶対先制は「第六感」を併用して感知し「見切り」ながら回避するしかない

凌いだら機体のUC【グリフォン・トランスフォーム】+指定UC発動
スパーダ、紅の短剣に雷の「属性攻撃」を纏わせ
「範囲攻撃、蹂躙」で関節や装甲の隙間を狙い撃ち動きを止めろ!
量産型マシンが妨害するようなら、纏めて落とせ!

俺はその間に回避力5倍の飛翔形態に変形し
ジグザグに飛翔しながら敵機の頭上へ向かう
敬輔が肩から飛び降りたら急ぎ離脱する


灯璃・ファルシュピーゲル
aを貸与願う
【SIRD】一員で密に連携戦闘

本来、侵攻拠点用なんでしょうが、
・・・もう、出し惜しみ出来ないといった感じでしょうかね?

出来れば、機体と同時にCBRNE化学防護衣を貸与願います。
紛争の多い地域なら備えは十分あるかなと。

武装は持参機体からも流用、まずは飛行形態で、飛び回りつつ、
味方の動きに合わせ、主砲や対空砲等が仲間を狙って出来た死角に回り込み、放熱部や砲身駆動部の隙間の脆弱な部分を、狙い精密狙撃(スナイパー・鎧砕き)し内部破壊して戦闘力を徐々に削ぐ様、味方と連携して戦います

ある程度、敵艦が鈍ってきたら、地形追従で低高度より接近し、味方の攻撃で損傷が大きくなってきた部分へ取りつき、騎士形態へ移行し敵直掩機体を迎撃。同時に至近射撃で装甲部の破壊を行い、制御系ラインがある場所を露出させたら、指定UCで管狐達を電子制御網へ送り込み、動力制御系統に潜り込ませ、機関部の放熱制御を暴走させて過熱による自滅を図ります。

大船は良いものですが、下手な船頭が前へ出せば事故に遭うだけですよ

アドリブ歓迎




 ――眼前の全長500m以上の超弩級戦艦を目の前にして。
「また随分と派手なデカブツ持ち出して来たな……」
 裏門側からやってくるネリッサ・ハーディ達の姿を|巨神《エリュシオン》のモニター越しに確認しながら、ミハイル・グレヴィッチが鮫の様な笑みを浮かべていた。
「本当にまた、随分無茶な話ですよね」
 その象と蟻の差と言う言葉ですらも生温いであろう圧倒的な体格差の、キャバリアと比べても小さな足で大地を蹴り、風の精霊達を呼び寄せて城門の上に着地、|魔導原理砲《イデア・キャノン》を召喚する魔法陣を自らの頭上に描き出しながら、ウィリアム・バークリーも嘆息を零しつつ。
 宇宙服の上から宝石『フロストライト』から放出した融ける事の無い霜と薄水色の結界を張り巡らせて、有毒装甲への対処の術としながら、召喚した|魔導原理砲《イデア・キャノン》のコンソールに素早く手を伸ばすその一方で。
「いや、これ……大きいんだが」
 先程の裏門迄響き渡るホイール音に飛び上がる様にして。
 大慌てで正門の方へと戻って来た館野・敬輔が、今にも目前に迫ろうとしているケルベロスホイールを見て、思わず呆然とするその間に。
「……くっ!」
 気が付けば、その背の翼の様なバーニアを加速させて前進したカイトが自らの銀のサイキック・キャバリア――レーテに装備している武装で一斉射撃せんとその砲口を巨大戦艦のカタパルトデッキから射出された数百機の量産型オブリビオンマシンへと向けた、その時だった。
「よりによって彼奴かよー!?キャバリアサイズの基準ガン無視じゃねぇかぁ! カイト、気を付けろ! 此奴から出撃してくるオブリビオンマシン達、骸の海纏って俺達の射撃無効とか滅茶苦茶やりかねねぇからな!?」
 ――不意に。
 上空からキラリ、と黄金色に光輪を輝かせながら。
 カイトの通信機越しに入ってきたその通信の主は……。
「メルシーちゃん、愛しのご主人様と一緒に只今、参上☆ よっろしくねー☆」
「おい、このポンコツ! 迂闊な挨拶して通信傍受されたらどーすんだ!? こちとら光学迷彩掛けているんだぞ!?」
 そうモニター越しに、自らの頭上に乗った鶏型のメルシーに叫び声を叩きつけながら、カイトの援護に回る様に自らの界導神機『メルクリウス』に搭乗したカシム・ディーンが姿を現している。
 そのカシムの助言に気が付いたカイトがはっ、とした表情を浮かべて。
「……レーテ!」
 叫びと共に、銀のランスを構えて加速しながら現れたオブリビオンマシン達を薙ぎ払うその後方から。
「各射撃部隊砲撃一斉開始! 敵の足をその場に釘付けにせよ!」
 その号令と共に。
 自らの愛機霊軍総旗機『戦術支援サイキックキャバリア《フロンティヌス》』に搭乗した寺内・美月が、霊兵統帥杖を掲げ、再配置し直した自らの直轄である砲戦・射撃部隊による一斉砲撃を開始させた。
 放たれた無数のミサイルを初めとした爆発の花を咲かせることで、量産型オブリビオンマシンへの弾幕を張って量産型オブリビオンマシン達の足止めをする、その間に。
「人造竜騎、ですか……」
 皇帝アロンダイト・フォン・アークライトの指示でカタパルトから姿を現した|人造竜騎《キャバリア》の姿を見て。
 思わず、と言う様に小さく呻く様に言の葉を紡いだのは、ネリッサ・ハーディ。
 そのネリッサの呟きに。
「……|異世界《バハムートキャバリア》で量産されているあの機体群達が、|この世界《クロムキャバリア》の国家の1つでスーパーロボット兼、秘密兵器として扱われているとは……流石に予測できませんでしたね」
 ――しかも。
「……目前に迫ってきているあの巨大戦艦……本来は侵攻拠点用の戦略兵器なのだと思いますが、それを持ち出してくるという事は……それだけ、出し惜しみ出来ない状況、という事なのでしょうかね?」
 相槌を打ちつつ、目前に迫る長大な戦艦の姿を確認しながらそう誰に共なく呟いたのは、灯璃・ファルシュピーゲル。
 一先ず、先程の交渉の結果として、彼等が秘密裏に用意していた|人造竜騎《・・・・》を借り受けることが出来る様になった。
 その中でも変形機構型を持つ機体……グリフォンキャバリアと思われる機体を借り受け、素早くその機体に火を入れ始める灯璃。
 ……一方で。
「でけぇ……な」
 その眼前の戦艦を見て。
 自分達の周囲に展開されているキャバリア達がまるで人形の様にしか思えない大きさに感じ、自身も蟻の様にしか彼等には思えないサイズである事を再認識した梶浦・陽臣もまた、何処か愉快そうにそう笑うのに。
「……図体が大きい機体程、隙は生じやすいのは間違いないがな」
 そう冷静な口調で言の葉を紡いだのは、灯璃やネリッサと共に、グリフォンキャバリアと思しき機体を借り受けた白いマスケラと全身を覆うブラックスーツに身を包んだ森宮・陽太だ。
 既に召喚されている数百体の量産型オブリビオンマシンにはカイトが、カシムと共に対応を始めている。
 だからこそ、こうしてリ・ヴァル帝国の兵器を借り受けることが出来る余裕が生じているのだと考えれば、カシムの攻撃は大きな意味があったと思える。
 もし、彼が来ていなければ……。
(「……カイトや皇帝が量産型オブリビオンマシンに追い込まれて、あの戦艦に即座に轢き殺されていた可能性も否定できないからな」)
 相手の圧倒的な速さを正直に言って少し見誤っていた、と言ってしまえばそれまでだが、其の反省点を今は密かに胸中に書き留めておくだけに留める陽太――零。
 その一方で……。
「……まあ、確かに、一番最初に放出される機体群だけは、阻害すること自体が間に合わないわよね」
 その言の葉と、共に。
 烏丸・都留が自らの対神霊/オブリビオン戦略呪操旗機・朧蟲と共に姿を現しながら、咄嗟に戦場にばらまく様に無数のアドバンスド・リフレクション・ハルを展開。
 無数に展開された多重展開結界により、量産型オブリビオンマシン達の射撃のダメージを少しでも軽減するべく無数の次元断裂を展開して防御へと回るその間に。
『……ってぇー!』
 怒号の様な咆哮と共に、万輪戦艦はその二連装バスターキャノンから戦略級破壊光線を出鱈目に発射しながら、キュィィィィィィィィィィィィーン! と巨大車輪を全力回転させて浮かび上がり圧倒的な加速を始めていた。
 その質量と加速を伴った激突ダメージは、城塞は愚か猟兵達でさえも一撃必殺で粉砕する事が出来るであろう。
 そんな巨大戦艦から再び吐き出される無数の量産型オブリビオンマシン達の群れが飛翔型車輪で浮遊して空を駆けて肉薄しようとするのに気が付いた都瑠が。
「……少しの間で構わない。足止めさせて貰うわよ」
 其の呟きと共に、無数の対神霊/UDC対応ステルス型アンチ・アストラルマインを展開。
 霊子/量子系亜空間機雷をばら撒き、今にも突進しようとしてくる戦艦の動きを僅かに食い止めるその間に。
「あれだけの大物を仕留めるなら……俺も本気を出すしかないだろうな」
 陽臣が装備された射撃兵装の砲口を自分達に向けて一斉射撃を開始しようとする量産型オブリビオンマシン達を見つめながら、静かに胸に右腕を当てると。
 ――まるで、そこに幻影が浮かび上がるかの様に。
 一本の魔剣――自らの使う全ての魔剣を生み出す核とでも言うべき1本の『真の魔剣』が召喚され――そして。
 ――ふわり、と。
 陽臣の体が空中に浮かび上がり、同時に全身を剣によって全身を覆い尽くされた魔剣鎧を纏い、ワープの様な光と共に一瞬姿を消して、その前輪と本体の接続部分に怪力と共に、魔剣の両断速度を加速させて一刀両断の必殺の一撃を解き放ったのは。
 その必殺の一撃は、都瑠がばら撒いたアンチ・アストラルマインで動きを鈍らされていた万輪戦艦の前輪と本体の接続部分の一部を切り裂き、完全にでこそないものの、その勢いを鈍らせることに成功させていた。
 そう……それは。
 ――3分だけだけれども、自らの全ての能力と技量を爆発的に上昇させ、時と空間を操る力を放つ、陽臣の技の中でも、『最強』に等しい力。
 前輪が傷つけられ僅かに軋む音を上げた事に本能的に危機を察したか、ヒット&アウェイの要領でその場を空間転移で離脱しようとする陽臣へと二連装バスターキャノンの砲口を向け、グラビティ―エネルギーを充填したバスターキャノンから、戦略級破壊光線を発射し、全てを焼き尽くさんとする万輪戦艦。
 その、例え猟兵と言えども一瞬で蒸発してしまうであろう光線の気配を察して。
「果たして、何処迄、凌げるのかしらね……?」
 呟いた都瑠が朧蟲から雷光を迸らせ、無数の事象改変型結界、アドバンスド・リフレクション・ハルと143体の対UDC/NBC対応自立戦略生体型ガードユニットを同時に展開。
 破壊戦略級光線の圧倒的な破壊力の空間を改竄して威力を削ぎ、同時にそれらを抑え込むべく無数のガードユニットによる防御を放つ。
 ごりっ、と自らの本体である戦艦の中枢が大きく削れる様な、或いは、自らの体が老朽化して寿命がごっそりと削り取られる感触を味わいながら、その戦略級破壊光線の威力を抑えた所で。
「エリュシオン、モード・アイギス」
 そうミハイルが言の葉を紡ぐのに呼応する様に|巨神《エリュシオン》が自らの状態異常抵抗率を大幅に上昇、黄金の獅子の紋章の描かれた巨大な盾を展開するアロンダイトを射線からずらそうとするが。
「……この兵器の光線で、我が帝国を撃ち抜かせる訳には行かぬ」
 そうキッパリと告げたアロンダイトが前に出る様に動き。
 その黄金獅子の紋章の刻まれた盾で都瑠の防御によって辛うじて威力の削がれた戦略級破壊光線を受け止める様子を見て、ミハイルが咄嗟に|相棒《エリュシオン》に指示を飛ばした。
「エリュシオン! |皇帝《ツァーリ》の死角を守れ!」
 その指示を受けた|巨神《エリュシオン》が、XES-03アダマースで辛うじてその光線を受け止め、その衝撃を感じながら思わずミハイルが肩を竦めていた。
「……そりゃそうだよな、|皇帝《ツァーリ》。アンタらみたいに場数を踏んで戦慣れしている奴等が、市民を守る為に自らの身を盾にしない筈もねぇか」
 そう納得した様に鼻をミハイルが鼻を鳴らすその間に。
「そこっ!」
 迸る雷光と周囲に展開された都瑠のガードユニット、そして143倍に加速されたカイトの解き放った銀のランスが旋風の刃を伴い、纏めてオブリビオンマシン部隊を薙ぎ払った所に。
 それを足止めする様に後続のオブリビオンマシン部隊が射撃兵装を以てカイトに射撃を集中させようとする姿を見て。
「……骸の海を纏った白兵部隊と、その後方に配属された射撃部隊による集中砲火……! させるかよ! メルクリウス、加速装置を起動しろ!」
 叫んだカシムがRX-B高機動ウィング『タラリア』の加速装置を起動、自らの身に纏った光水属性の光学迷彩で覆い隠した自らの機体をオブリビオンマシン射撃部隊の背面に回らせるとともに、BX鎌剣『ハルペー』を一閃した。
 超高速で放たれた光り輝く不死者をも冥府に送る力を持つとされる鎌剣の一閃が、目にも留まらぬ速さで先遣隊として召喚されていたセプド・オブリビオン部隊を纏めて薙ぎ払い、その機体を瞬く間に蒸発、消失させ、カイトの機動の自由を確保させているが。
 ――そのカイトに向かって、前輪と本体の駆動部分を陽臣に断ち切られた筈の飛翔中の万輪戦艦が、都瑠のアンチ・アストラルマインを振り切って万輪戦艦が突進する。
「っ!」
 一瞬カイトが息を飲みながらも、レーテに自らの意志を伝えつつ、アクセルを踏み込み、フルスロットル。
 銀の残滓と共に超超高速で空を舞う様に攻撃を躱すカイトのレーテの脚部の爪先を掠め、大いにレーテを振動させていた。
「ぐっ……!」
 脚部を破壊されなかったのは行幸以外の何者でもない。
 だが、その時には新たにハッチからその飛翔型車輪で出撃したオブリビオンマシン部隊が、万輪戦艦から何らかのシグナルを受け取ったのか、カイトへと一斉に射撃兵装を構えている。
「……くっ! 流石に統率は取れている。これでは、陽太さんに相談した作戦を実行する暇も無いか……!」
 そう呻く様に敬輔が呟き。
 陽太――零が借り受けたグリフォンキャバリアであろう|人造竜機《キャバリア》の肩を蹴ってオブリビオンマシン部隊と、カイト及びカシムが交戦する戦場に向かって跳躍しながらその刀身を赤黒く光り輝かせた刀身持つ黒剣に焔を纏わせヒートソード化させ……。
「食らえっ……!」
 呻く様な叫びと共にその敵陣に突っ込み、その刃を一閃させ、炎纏う黒剣の斬撃が、容赦なくその駆動系を断ち切る様に斬り裂き、何体かの機動力を奪っていた。
(「……もし……」)
 陽太――零の操るグリフォンキャバリアの機動力と、カイトの戦闘能力の両方を借りることが出来ていれば、敵戦艦の頭頂部に至る軌跡を確保、その頭上から侵入できた可能性はあるが、今はその様な事を言っている場合ではなさそうだった。
 ――何故ならば。
「……追加戦力が来ていますね」
 アロンダイトからグリフォンキャバリアを借り受けたネリッサがそう呟いていたから。
 ――そう。
 絶対に最初に召喚される量産型オブリビオンマシンへの対策にやや時間を取られるその間に、万輪戦艦が、追加の量産型オブリビオンマシン部隊を導入したのだ。
 故に、陽太――零の搭乗するグリフォンキャバリアの肩に再び敬輔が飛び乗る余裕はなく、やむなく敬輔がそのヒートソードと化した黒剣を振るってその量産型オブリビオンマシン達の駆動系を叩き斬るその間に、ネリッサが、飛翔形態を選択したその機体の鍵爪で、新たなオブリビオンマシン部隊をズタズタに斬り裂きながら、自らの小型情報端末MPDA・MkⅢに|荒れ狂う火炎の王の使い《ファミリア・オブ・レイディング・フレイム・キング》のキーコードを打ち込むが。
「……それでも、現状、余裕は正直無さそうですね。今回の|人造竜騎《キャバリア》が外部から持ち込まれ、何者が持ち込んだのか等を知りたいとも思いますが……」
 ――流石に目前の脅威の排除を優先しない訳には行くまい。
 そう判断したネリッサが、フォーマルハウトに住みし荒れ狂う火炎の王の使い魔を召喚するキーコードを立ち上げるよりも僅かに早く。
「……ディーンさん達の援護のお陰で何とか戦える余裕がありますが……これは中々に厄介ですね」
 其の呟きと、共に。
 ネリッサの搭乗した者と形式番号こそ違えど、性能的には同種のグリフォンキャバリアに搭乗した灯璃が、自前のキャバリア――SJPzH.188 JagdSköllに装備させていた狙撃銃、Mk 88 Bushmaster SOPⅢをその|人造竜騎《キャバリア》に換装させ、コクピットに吶喊で装備させたスコープから量産型オブリビオンマシン達を援護する様に対空砲火を厳にした万能戦艦の対空砲を|狙撃《スナイプ》。
 その砲身駆動部の隙間を撃ち抜き、敵戦艦の砲台の1つを潰した所で。
 ――そんな灯璃とネリッサを撃ち落とすべく無数のオブリビオンマシン部隊が飛翔型車輪で飛翔しながら射撃兵装を撃ち出してくるその間に。
 万能戦艦の新たなグラビティエネルギーチャージが始まったのだった。


 ――一方、その頃。
(「……『System "Winter",Run! I Have Authorized Control of Idea Cannon.』」)
 |魔導原理砲《イデア・キャノン》のコンソールに予め“Spell Boost”を用いて仕込んでおいたそれを確認したウィリアムが1つ首肯していた。
 起動した”Winter”は、己が追加装備やユーベルコードを最適化し、演算処理能力を効率化させ、且つ高速化させる為の、【魔術儀式を代替する高速自律詠唱】能力を追加する代物だ。
 最近発見された|異世界《バハムートキャバリア》の無限の命を有すると言う魔法使い達の能力によりその効率化の意味は大きくなったが……。
「それでもあの戦艦からすれば、蟻の様な存在にしか過ぎないであろうぼくが一撃を叩きつけるには、相応の時間を要するんですよね……」
 そうウィリアムが呟く間にも、|魔導原理砲《イデア・キャノン》の鍵でもあるルーンソード『スプラッシュ』に取り付けられた『スチームエンジン』が蒸気を上げて、|魔導原理砲《イデア・キャノン》の火力を増強させ、更に接続した影朧エンジンが唸りを上げ始めている。
 同時に火・水・風の魔力を自らの身に宿すトリニティ・エンハンスを起動させ、|魔導原理砲《イデア・キャノン》の攻撃力を増強させていくその間に、ガシャン! ガシャン! と音を立てて|魔導原理砲《イデア・キャノン》が見る見るうちにその姿をMode:Final Strike……『最終殲滅形態』へと変形。
 最大火力5倍、移動力半減と言う固定砲台と化した『最終殲滅形態』に変形した|魔導原理砲《イデア・キャノン》に搭載された魔導回路が、無限加速サーキットへと変わっていく。
 |魔導原理砲《イデア・キャノン》に装備させているそれらのユーベルコードの起動音が戦場に轟き、強化された基礎火力を15倍へと昇華させたそれらの精霊力が、|魔導原理砲《イデア・キャノン》最終殲滅形態の前に出現した多重砲塔の前に見る見る内に収束していく。
「精霊力充填率、75%。改式になったお陰で大分エネルギー充填速度の効率化は測られましたが……それでも、もう少しかかりますか……!」
 そうウィリアムが呻く様に呟いたのを通信機越しに拾った陽太――零は、そんなウィリアムに向かって肉薄してこようとする更に召喚された無数の量産型オブリビオンマシン部隊にウィリアムを攻撃させない様にするべく、飛行形態に変形させた|人造竜騎士《キャバリア》を飛翔型に変形させた状態で搭乗し、その瞬発力を以て戦場を疾駆させながら、変形した飛翔型の嘴部の先端に魔法陣を描き出させていた。
 その魔法陣の中に描き出されているその姿はその手に紅の剣を携えた、捻れた二つの角を持つ漆黒と紅の悪魔。
 ――その悪魔の名は。
「スパーダ! 纏めて焼き払え!」
 その叫びと、共に。
 陽太――零に命じられて召喚された悪魔『スパーダ』が咆哮と共に、1610本の紅の短剣を自らの周囲に展開、幾何学文様を描き出して複雑に飛翔しながら雷鳴纏った無数の短剣が解き放たれる。
 解き放たれた雷纏った紅蓮の短剣が、ウィリアムを射撃兵装で狙い撃ちにしようとしていた量産型オブリビオンマシンを次々に貫き、その装甲を穿ち、機能を停止させていくのに応じて。
 その存在に気が付いた量産型オブリビオンマシン達が、グリフォンキャバリアと陽太――零を射撃兵装で撃ち抜こうとした、その時だった。
「そこですね」
 その言の葉と、共に。
 アロンダイト直属の正門防衛部隊に自らの元帥杖で指揮する砲撃・射撃部隊と共に一斉砲撃による牽制攻撃を指示した美月が、自らの搭乗する【フロンティヌス】のコクピットから飛び出すと同時に、人を癒す蒼き宝玉嵌め込まれた白鞘に納められた白銀の刀身持つ神気解き放つ〖繊月〗と人を呪う紅き宝玉を黒鞘に嵌め込まれた漆黒の刀身持つ〖司霊〗を同時抜刀し、自らを白と黒の極光で覆い、飛翔したのは。
 それは……〖繊月〗から迸る神気と、〖司霊〗から迸る殺気を、自らの全身に纏った殺意と神々しさの綯い交ぜになったそんな姿。
 更に己が内から発せられる、生命の躍動たる剛気を迸らせながら高速移動して、陽太――零の方に集まったが故に切り拓かれる形になった道を飛翔しながら、斬撃を解き放つ。
 その美月の斬撃が、前車輪と、本体の接続部分に一太刀を入れた陽臣が空間属性で転移して肉薄して続けざまに放った一閃で確かに罅割れを起こさせていた、グラビティエネルギーチャージを行っていた二連装バスターキャノンの一門の砲口を叩き斬った。
 ……その直後。
 ――ゴトリ。
 その大質量の砲塔が、轟音と共に大地に叩きつけられて爆散し、地表を埋め尽くそうとしていた数十体のオブリビオンマシンを巻き込み、拉げ果てさせた。
「……今ね」
 そうしてバラバラになった量産型オブリビオンマシン達に向けて、自らの『朧蟲』の分体を解放し、撃破・悲撃破問わず量産型オブリビオンマシン達を捕食、有毒装甲による精神汚染を出来る限り遮る一方で。
「……それでも、未だ出てくる……。……ならば!」
 その叫びと共に。
 剥がれて、拉げた影響で溢れ、都瑠の分体でも捕食できない気体と化した有毒装甲から自らの身を守る様に咄嗟に敬輔がヴァンパイアに変身し……。
「……はっ!」
 叫びと共に、都瑠のサポートユニットによって加速された刃を振るい、捕食しきれなかった量産型オブリビオンマシン部隊の関節部にそれらを突き立て、その機能を停止させた所に。
 ――キュィィィィィィィィィィィィーン!
 鋭い音と共に巨躯の巨大車輪を回転させて、己が全長事、敬輔の側面から凄まじい速度で万車戦艦が肉薄してくる。
「……おい、敬輔! 横、やばいぞ!」
 気が付いたカシムが咄嗟に叫びながらメルクリウスの『タラリア』に悲鳴を上げさせんばかりの速度に急上昇させて空中を疾駆し肉薄しながら念動光弾を解き放つのに。
「させるかっ!」
 合わせる様に量産型オブリビオンマシン部隊を突破したカイトが自らのレーテを急上昇させて、レーテの装備するレールガン、及びその背にバックアップの様に装備されていた砲身を跳ね上げ、左腰部に装備していたビームライフルを構えて一斉掃射。
 カイトの撃ち出した電磁加速されたレール砲及び、無数のビームの光条とカシムが超高速で周囲を制圧する様に撃ち出した念動光弾による弾幕の嵐が万輪戦艦に着弾させ、敬輔への突撃を中断させるその間に。
「今ですね……お願いします」
 呟きと共に、ネリッサが先程撃ち込んだキーコードを起動させた。
 同時にネリッサの搭乗するグリフォンキャバリアの周囲に展開されたのは、149体の炎の精。
 それらが荒れ狂う炎の舞の如く踊る様に肉薄し、敬輔に突進しようとする万車戦艦のっ陽臣に切り刻まれた巨大車輪を焼き払うその間に。
「……さて、頼んだぜ、エリュシオン、串刺しにしてやれ!」
 その叫びと、共に。
 |巨神《エリュシオン》に搭乗していたミハイルが、都瑠の援護による自らの高速化、及び灯璃のグリフォンキャバリアの飛翔形態による攪乱で隙の出来た万車戦艦の裏側に回り込んでXES-03アダマースを振るった時。
 その背部に装備された高加速ブースターによる超加速と共に肉薄したエリュシオンの背面からの一撃が、万輪戦艦のメイン機関部の装甲を貫き、ぐりぐりと捻じ込まれる様に深々と突き込まれていった。
 ――そのミハイルの一撃によって装甲が破壊されてこじ開けられたメイン機関部を上空から機体に装備させたスコープを通して確認して。
「……|Lasst uns das Festival starten《さあ、お祭りをはじめましょう》」
 その言の葉と共に灯璃がパチン、と指を鳴らした刹那。
 ミハイルによって穿たれた外装から電子精霊の管狐達がその伝声制御網に悪戯を仕掛ける子供の様に雪崩れ込んで。
 管狐達が万輪戦艦全体を掌握するかの如く各機関部を過熱させ、機関部の放熱制御を暴走させた時。
 ――ビー! ビー! ビー!
 艦内で凄まじいエマージェンシー音が鳴り響き、艦橋にいる搭乗者達を混乱の極みに落とさせていた。
「……大船は良いものですが、下手な船頭が前へ出せば事故に遭うだけですよ」
 その灯璃の言の葉が、まるで全てを物語っているかの様に。


「……やれやれ、|お前さん《エリュシオン》の中にゃ、か弱い|相棒《俺》が乗ってるんだ。もう少し、加減してくれよ?」
 エリュシオン背部に搭載された高速ブースターを、都瑠の解き放った雷光で更に加速されて、とてつもないGの衝撃を受けたミハイルが笑いながらぼやいていると。
「……あなたの何処が弱いのか、理解に苦しむのですが……善処します」
 冗談とも何とも言えない様子で微妙に不満の籠った調子で音声を流す|巨神《エリュシオン》のそれに、ミハイルが冗談めかして肩を竦めていた。
 メインの機関部にXES-03アダマースの一撃を受け、そこから灯璃が送り込んだ電子管狐の精霊に動力制御系を暴走させて過熱される事で全身の血が沸騰しているかの様な、そんな状態に陥った万輪戦艦が悲鳴の様な巨大車輪音を立てながら、未だ残されていたもう片方のバスターキャノンから戦略級破壊光線を解き放とうとした、その時には。
「やらせるかよ!」
 時間属性を利用して自らの体を圧倒的に加速させて、空間属性を駆使して、その銃口の側面に姿を現した陽臣が、すかさず真の魔剣を唐竹割に振り下ろしていた。
 一刀両断のその一撃が、残されていた右の砲塔を破壊し、充填されていたグラビティエネルギーが奔流の様に溢れだして周囲を圧し潰す様にするのを見ながら、
「今ね」
 ミハイルの|一撃必殺《ワン・ヒット・キル》、及び灯璃のグリフォンキャバリアの離脱を援護する様に、都瑠がその背面に回り込ませていた無数の対UDC/NBC対応自立戦略生体型アサルトユニットαから貫通力のあるエネルギー弾が連射させている。
 解き放たれた無数のエネルギー弾がただでさえ、大幅にパワーダウンしているメイン機関部に注ぎ込まれる様に撃ち込まれるその間に。
「続けていくぜ、カイト!」
 叫んだカシムの念動光弾を連射しながら『メルクリウス』の機動力を限界値である3倍に引き上げ一気に肉薄すると同時に、鎌剣ハルペーを振るうと。
 その鎌の斬撃が前車輪上に設置されているランプを抉る様に剥ぎ取り、その部品を強奪するとほぼ同時に。
「はっ!」
 高速で飛翔したカイトのレーテが銀のランスを螺旋状の回転を纏わせながら突き出して、容赦なく万輪戦艦を貫いていた。
 対空砲火の銃撃が雨あられと超超高速で移動するカシムとカイトの機体を撃ち抜かんとするが、その時にはネリッサの呼び出した炎の精達がその銃弾に纏わりついて焼き払い。
「此処ですね」
 続けざまに、ネリッサの搭乗するグリフォンキャバリアがその爪を突き立て、その対空砲をバチリ、バチリと言う音と共に破砕したのである。
 そんなネリッサ達を狙うべく万輪戦艦は、量産型オブリビオンマシンを更に緊急発進させようとするが。
「……スパーダ」
 その時には陽太――零が呼び出した紅の悪魔が雷撃属性帯びた紅の短剣を解き放ち、量産型オブリビオンマシンを纏めて貫き。
「どうしましたか? 私達は此方ですよ」
 そう挑発する様に告げたネリッサが、灯璃と共に編隊を組んで肉薄する様にグリフォンキャバリアの翼を羽ばたかせながら、再び炎の精を撒き散らし、続けて灯璃の飛翔形態のグリフォンキャバリアから銃撃を放ち、都瑠が朧蟲に装備させたアイテールのメイスを振るっていた。
 ハッチから今にも飛び出そうとしていた量産型オブリビオンマシンが、灯璃の|狙撃《スナイプ》によって射抜かれ、都瑠のアイテールのメイスによって叩き潰され、動揺を見せたその時だ。
「……蟻には蟻の矜持があるって言う事を教えてやります! Elemental Power Converge……Release. Elemental Cannon Fire!」
 出力100%と化した極限のエネルギーの塊の暴力としか表現することの出来ない強烈なまでの火・氷・雷・土・光・闇の六大の互いに相反する精霊たちが収束された超強大な精霊弾が、リ・ヴァル帝国城門側から発射されたのは。
 それは、ウィリアムが精霊力の充填を完了させた|魔導原理砲《イデア・キャノン》の砲塔に浮かび上がった、積層型立体魔法陣による魔力収束式仮想砲塔に集った相反する精霊たちの力を強引に融合させ、其の反発力を利用した核爆発にも等しい一撃。
 その一撃が万輪戦艦の艦橋に直撃し……内側から灯璃の電子管狐によってその駆動系を狂わされ、混乱の極みに達していた戦艦クルー達事、万輪戦艦が、跡形もなく消失していった。


「……パイロットと遭遇するしない以前の問題だったか……」
 跡形もなくブリッジが吹き飛び、その衝撃からか消滅していく万輪戦艦の姿を見て、思わず、と言う様に敬輔が嘆息を零す。
「……まあ、こればかりは仕方ない……と言うしかないだろうな」
 そう呟く陽太――零の視界には、万輪戦艦の撃破を認めてそっと息をつく様にして着陸したカイトとメルクリウスに搭乗し、万輪戦艦の部品の一部を強奪したカシムの姿。
(「カシムはアロンダイトから貸与される機体こそ借りなかったが……その代わりにカイトに協力していたな」)
 味方全体に気を配る様に都瑠や灯璃が動いていた事を決して否定する事は出来ないけれども、只、それだけでは完全な成功を収める事が今回は出来なかったか、と陽太――零は内心で思う。
 例えば、ウィリアムのあの主砲による一撃も、もし、アロンダイトの黄金獅子の盾による援護防御を要請していれば、もっと早く確実に決めることが出来ていたかもしれないと言う可能性さえある以上……。
(「……流石に今回の戦い、完勝と言い切る事は出来ないな」)
 そう内心で陽太――零が呟いているのに気が付いているのか、いないのか。
「まあ……|皇帝《ツァーリ》とカイトは生き残り、帝国も無事だったんだ。取り敢えずは及第点だろうよ」
 そう|巨神《エリュシオン》の中で煙草を付けて一服しながらミハイルが軽く肩を竦めて見せている。
「……しかし、これらの|人造竜騎《キャバリア》の技術を持ち込んだのは、結局何者なのでしょうね?」
 そう自らが搭乗していたグリフォンキャバリアの性能を確認しながら、ネリッサがそっと息をつく。
(「一番可能性が高いのはアダムカドモンでしょうけれども……」)
 只、それは推測の域を出ないし、そもそもアダムカドモンがこれらの|人造竜騎《キャバリア》の技術をリ・ヴァル帝国に売るべき理由が判然としない。
 では誰が……とネリッサが考えているその間に。
「……貴様等には礼を言っておこう。今回は貴様等の助力のお陰で、我が国の民を守ることが出来た」
 そう朗々とした声音で淡々と礼を述べ、機体を返す様に要請してきたアロンダイトのそれに。
「いえ……私達こそ、機体をお借し頂き、ありがとうございました」
 そう反射的に灯璃が敬礼して、貸与されていたグリフォンキャバリアを返却するべく機体を着陸させてラダーを伝って地面に降りながら内心で思う。
(「私の|愛機《キャバリア》と何故か互換性があったという事は、やはり|人造竜騎《キャバリア》なのでしょうけれども……」)
 |人造竜騎《キャバリア》と|この世界《クロムキャバリア》のキャバリアは、何故か互換性があると言う事実がある。
 それ故にその考えは決して間違っていないのだが……だからと言って、確実に|人造竜騎《キャバリア》についてを尋ねても、現状でアロンダイトがその機体の出処を教えてくれるとは灯璃にも思えず、結局それ以上、何かを問う事もせず、一先ず機体を返却した。
 とは言え、ミハイルの言う通り、この戦いに勝利できたのは事実。
 ――その事実を今は喜ばしい事実として受け入れる事が、今出来る何よりの報酬であろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2025年04月06日


挿絵イラスト