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甘く溶け合う祝福を

#UDCアース #ノベル #猟兵達のバレンタイン2025

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#猟兵達のバレンタイン2025


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ベアータ・ベルトット



メルト・プティング




●LOVE HEART
 バレンタイン。それは大切な相手に想いの形を贈る日。
 今年も二人は気持ちを伝えるために贈り物を渡す。そこには今までと少し違う、大切な感情を込めて。

 メルトとベアータが互いに贈りあった今年のチョコレートは、図らずもお揃いのハート型。二人にとっての特別で、大好きだという気持ちを示す証でもある。
 メルトからの贈り物は、シンプルな手作りハート型チョコの詰め合わせ。
 それだけだとあまりにも物足りないという思いから、傍らにはトッピング用の生クリームが添えられている。
 ベアータからの贈り物は祝福を込めた生チョコレート。
 二人の愛と絆の象徴である薔薇をイメージしており、味付けは薔薇ジャムやローズリキュールを使っている。飾りのドライローズで彩られた一品はとても美しい。
「偶然にも同じハート型でしたね」
「恋人になったんだもの、当たり前よね」
「えへへ、当たり前……」
 お互いのチョコレートを確かめあい、当たり前という単語を聞いたメルトはふわふわとした気持ちを抱いていた。当然であることの尊さをよく知っているからだ。
「ベアータさんのチョコは、相変わらず素敵で凝っててすっごいのです」
「想いをこめて作った薔薇チョコだからね」
「乾燥した薔薇の花で彩るなんて、とっても素敵……」
「喜んでくれて良かったわ」
「形も彩りも含めて、愛されてるって実感が心地良いのです」
 メルトが何より嬉しいのは、今までと違ってストレートなハート型をベアータが選んでくれたこと。そこにドキドキしてキュンとしているようだ。
 幸せそうにしているメルトを見たベアータも双眸を柔く細めた。それに加えて、メルトが手作りしてくれた赤いハートのチョコレートを見れば頬も緩む。
 自分の贈り物に視線が向けられていることに気付き、メルトはそっと俯いた。
「ベアータさんのと比べると、やっぱりボクのチョコはちょっと……」
「メルトのは形もとっても綺麗じゃない!」
「いやだいぶ、見劣りする、ような」
「そんなことないわ。気合い入れて作るって言ってたもんね。よく頑張ったわね」
 戸惑うベアータはメルトに優しく手を伸ばし、頭を撫でてやった。
 思わずメルトの表情がへにゃりと緩み、自分からもすりすりとベアータの手に頭を軽く押し付ける。褒められながら撫でられて嬉しい反面、やはり悔しさや気恥ずかしさ、申し訳無さが立つ。
「いえ、気持ちの熱量は負けてませんが、やっぱり溶かして固めてが精一杯でしたし、トッピング用の生クリームは添えてみましたけど……はっ」
「どうかしたの?」
「トッピング! それだ!」
 ふとした瞬間、メルトの顔が何かを思いついた様子に変わった。
 ベアータの隣にトテトテと移動していったメルトは、自分の贈り物の箱からハートのチョコをひとつ摘んでから、口に軽く咥えてみせる。
「こちら、追加トッピングになっております……なーんちゃって♪」
「……!」
「ベアータさん、どうぞ」
 ハートを咥えたまま微笑むメルトは上目遣いだ。
 その姿を間近で見つめることになったベアータの思考はぐるぐると回る。
(……何でこんなに可愛いことを次々と思いつくのかしらこの娘? あぁもう、可愛すぎるわ。愛おしさで胸がつぶれそう……!)
 流石に思ったことをすべて口にはしなかったが、目の前にいる小悪魔的なメルトへの想いは止まらない。メルトもこれだとベアータが慌てるかもしれないと考えており、ふふ、と小さく笑っていた。
「……トッピングってことは、つまりはそういうことよね?」
「ベアータさん?」
「そっちがその気なら……頂くわ」
 目をゆっくりと細め、囁くような声を紡いだベアータ。
 彼女はメルトが何か反応する暇すら与えず、さっと距離を詰めた。
 メルトが咥えたチョコレートに口づけをしたベアータはよく理解している。メルトは押せば退いてしまうことや、時間を置けば恥ずかしがって逃げてしまうことを。
 そして――。

●MeltiBeata
 甘いひとときがそこから巡ってゆく。
 ひとつのハートを二人で分け合うようにベアータとメルトは口づけを続けた。
 お互いの口の中でとけていく――甘い、甘いキス。
 最初は驚いていたものの、メルトは箱をそっと自分の膝の上に乗せて、そのかわりにベアータの背に手を回した。抵抗なんてする気すらおきない。この感覚がもっと欲しいと感じた。
 そんなメルトを受け止める形でベアータも抱きしめ返した。
 まるで心の底まで溶け合うような心地。
 幸せな気持ちが体全体を満たしていき、遅れてくるのは痺れるような心地好さ。
 同じ感覚を二人で共有しているとあらわしても過言ではないほど。とけていくチョコレートの甘さを追うようにして、ベアータはメルトと額をこつんと合わせた。
 体の奥が熱い。
 今、この身に宿るこの熱は――きっと機関の作用などではない。
 これこそが大切な人を想う愛しさであり、『人間の愛』として間違いない。
 そう、祝福の味。
(世界で一番、大好きな味……愛してる)
 ベアータは溶け合う感覚を大切に思いながら、愛しい恋人を強く抱いた。
「ふ……ぁ……ベアータさん……」
 メルトは大好きなひとの名前を呼び、ゆっくりと口を離す。そのときにはハートのチョコレートは溶けてなくなっており、甘さを舌先に残すだけになっていた。
 暫し蕩けた表情をしていたメルトだったが、慌てて口許を押さえる。
「……い、いただかれてしまったのです」
「あら? ハートのチョコより真っ赤なお目目して」
 ベアータはメルトを覗き込み、ちいさく笑った。
 羞恥やキスの気持ち良さ、それ以外にもたくさんの感情で昂ってしまったメルトの瞳は鏡を見るまでもなく真っ赤。だらしない表情になってしまってのは自分でも分かっており、メルトの気持ちは更に照れに傾いていく。
 その様子もまた愛らしく、ベアータは先程と同じようにメルトを撫でた。
「ふふっ。最高のトッピングだったわ。ごちそうさま!」
「こちらこそ、ごちそう……さま……?」
「今まで食べたどのチョコよりも甘くて美味しかったわよ」
 戸惑うメルトにウインクをしてみせ、ベアータは満足そうに語る。するとメルトは両手を強く握った。
「うう、今回はボクの負けにしておきます」
「負けって……別に勝負してたつもりなんてないんだけど……?」
 首を傾げるベアータに対し、メルトは敗北感があるのだと伝える。
 小悪魔的な悪戯で勝てると思っていたところにキスの反撃があったからそう感じているのだろう。そこもまたメルトらしい部分だ。
「そうですけど……でも、つ、つぎは負けませんから……!」
「ま。メルトのその顔が景品ってことで、ありがたく受け取っておくわ。次も楽しみにしてるわね!」
「はい、お願いします。勝者が景品をもらえるなら……次は、もっと――」
「もっと?」
 メルトは決意を抱いた様子を見せた。
 その言葉の続きが紡がれなかったのでベアータが問うと、メルトは静かに笑む。
「これ以上の恋人……らしいことを、してもらう……かもですっ!」
「ちょっとメルト!?」
 宣言された言葉がとても大胆に思え、ベアータは少しだけ慌ててしまう。景品にしなくてもいいと告げるべきか、どういうことを考えているのか聞くべきか。
 迷って困りながらも、二人で過ごす時間は何より大切だった。

 二人のバレンタインのひとときを彩るのは、甘い、甘い――心からの愛おしさ。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2025年03月13日


挿絵イラスト