凝性ヘクセンミニアトゥアー
●ミニチュア
「作って!」
「作って作って作ってー!」
それはけたたましい声のようにも聞こえたかも知れないが、シャナ・コリガン(どこまでも白く・f44820)にとっては微笑ましい声に思えてならなかった。
厄介になっている村の子供たち。
彼らが執心しているのは、お菓子の家だった。
確かにシャナはレプリカ作りの妖精である。
しかし、彼らが所望しているのはお菓子の家。
別の世界ではヘクセンハウスとも言うらしいが、きっと彼らの言っているのは、語り聞かせた童話のほうだろう。
簡単に作って、と言えるのは童心故であろう。
「しかしですね、材料がどうしたって足りません。大きな家ですからね、お菓子の家は」
シャナの言葉に子供らは少し不満げであった。
わからないでもない。
お菓子の家と言えば、子供らの憧れであろう。
「屋根はケーキなんでしょ!」
「壁はパンだし、窓は砂糖だって聞いたよ! ガラスは飴だって!」
「ですが、それは悪い魔女の罠ですよ?」
「それでもやっぱり作ってほしい! ねえ、一度でいいからぁ!」
そんな言葉にシャナは困ってしまった。
作ろうと思えば作れる。
だが、本当の家と同じサイズを作るとなると……現実問題なのは、やはり材料だ。
いっそのことユーベルコードで、と思ったが、それはなんだか違う気がする。
「小さなものでよければ」
「むー、わかったよ! きっとだよ!」
「楽しみにしているね!」
子供らを説き伏せてシャナは、息を吐き出す。
安請け合いではないが、厄介な約束をしてしまったものだ。
「まあ、お菓子の家だけですから、そう手間ではないでしょう」
だが、シャナは自分という妖精のことを彼女が思う以上に理解はしていなかった。
そう、彼女は凝り性である。
お菓子の家のディティールにこだわり始めるのは当然のこと。
土台となるスポンジ生地や、となれば植木の緑の葉を多世界の『日本』なる土地より持ち込んだ抹茶なるものを混ぜたチョコレートで表現し、さらには道や、田園といったものまで際限し始めたのだ。
もうそれは、ミニチュアであるものの、一つの村を再現したものであった。
あまりの凝り性具合に、きっと子供らは目を丸くするだろう。
思っていたのと大分規模が違う。
材料が足りないとは一体なんだったのか。
そう思わせるほどの大作を作り上げ、シャナは困惑する子供らに向けて一言告げた。
「凝っちゃいました……テヘ――☆」
成功
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