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あの子を助けてあげて

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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●ハジマリ
 当てもなく彷徨っていた。
 誰かがいるような気がして、何かに会えるような気がして。
 それからずっとずっと。探しているつもりだったけど、その何かがずっとわからなかったから。
 私の彷徨は意味のないものだった。

 声が、聞こえたの。
 とても久しぶりに聞いた気がするから思わず飛んで行ってしまった。
 だから、私は、その人たちを――××した。





 間違いない。アレに勝てるわけがない。
 それだけは素人の僕でもよくわかった。だから逃げた。キートもマノも一緒だった。
 3人で手を繋いで一緒に――でも、逃げられなかった。
 目の前にはぶよぶよと気味悪く蠢く粘性の生き物。
 そいつらが僕らの行先を塞いでいた。
 後ろからは剣を持った紫色の少女が段々と距離を詰めている。
 このままでは、殺されてしまう。みんなみんな、死んでしまう。
 誰か、助けて――


●グリモアベース
「見えました。予知です。アルダワ魔法学園、学園迷宮で、トラブル発生。迷宮探索中の、生徒が、襲われます」
 緋打・よみぢ(色のない世界から・f10970)が君たちに告げる。
 襲われている生徒は3人組。3人ともまだ学園に入ったばかりで迷宮探索も初めてである。
 対処できないほど強い敵も出てこない、比較的安全なルートを進んでいたはずだが運悪く予想外の強敵に遭遇してしまった、とのことだ。
「その上、マースライムが、集まって、逃走不可。このままでは、恐らく……」
 続けようとしたよみぢが口ごもる。皆まで言われなくとも、襲われた生徒たちの末路は想像に難くない。
 しかし、まだそれは予知の段階だ。猟兵たちの介入で結末はいくらでも変えることができる。
「状況を、説明します。最も強力な個体、紫髪の少女。名称不明、ですが、ワタシと似たような存在、のような」
 よみぢの直感では彼女はミレナリィドールのようだ。動きは到底正気があるとは思えないが。
 その少女が3人組の生徒を追いかけている。生徒たちは少女から逃げて迷宮の外へ脱出しようとしているがその進路を遮るようにマースライムが群がっている。まずはマースライムを倒し、生徒の保護をするべきだろう。
 少女との戦いは生徒を保護してからになる。

「マースライムは、強酸性の体液を射出、サメへ変形し噛みつき、全身で対象を丸のみ、以上3パターン、確認されます」
 一体一体の強さはたいしたことはないが、この攻撃に生徒たちが巻き込まれないように注意して欲しいとも付け加える。
「少女は、装備した大剣、または暗い色の炎による攻撃が、確認されました」
 実力は未知数。兎に角目に映った対象を攻撃しているようで、マースライムも進路を妨害するなら躊躇わず焼き潰している。
 少なくともマースライムを倒している間は少女の存在を気にする必要はなさそうだ。

 説明を終えてからよみぢは視線を落とす。
「巻き込まれた3人、心配です。が、あの少女も、心配です」
 当てもなく迷宮を彷徨っていたところを、本当に偶然に生徒たちの前に現れたように見えたらしい。
「何を思って、あの場にいたのでしょうね?」
 特に答えを求めるわけでもなく、ポツリと呟いた。


樫木間黒
 反動でシリアスを書きたくなった樫木真黒です。
 本来はコメディ調にする予定でしたが変更したのはフラグメントガチャが原因です。
 以下章ごとの補足説明をば。


●第1章
 マースライムとの集団戦です。
 OPにある通り生徒を保護しつつの戦いになります。
 プレイングに生徒対応の要素を盛り込むとモアベター。

●第2章
 紫炎の少女とのボス戦です。
 これ以上語ることがあるとすればそれはシナリオの中でしょう。

●第3章
 日常です。生徒を無事に助け出すことができたなら彼らとの交流になるでしょう。
 食堂でお食事です。
 一応よみぢが呼べたりします。


 それではプレイングお待ちしております。
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第1章 集団戦 『マースライム』

POW   :    酸弾銃
【弾丸のように飛ばした体の一部】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を強酸の水たまりに変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD   :    シャークバイト
自身の身体部位ひとつを【サメ】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ   :    捕食
【全身】から【触れたものを飲み込む物理攻撃】を放ち、【窒息】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:天都 深杜

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●差し伸べられる手
 猟兵たちは迷宮へ踏み込む。目に映るのはマースライムの大群とその中で身動きが取れずに固まっている三人の子供だった。
 その内二人は各々の武器を持ってマースライムをなんとかしようとしている。が、手元が覚束ず床をガツンと叩くばかりである。
 最後尾でフードを被ってる子供は武器すら持てずにひどく焦った様子で後方を見ていた。

 漸く前を向き、助けが来たことに気づくとパクパクと口を動かす。
「……あ、あの! 俺、キートです! こっちはレシケ……」
 剣を持った少年が震えて言葉の出ない友人の代わりに声を張る。
「わ、わたしはマノ、です……。三人とも無事、ですけど……“アイツ”が……」
 槍を持った少女が続ける。平時であれば気の強い少女なのだろう。その顔は後ろから迫ってくる敵に怯え、恐怖に彩られている。
 彼らが振り向いたその視線の先、まだ遠くではあるものの紫色の少女がゆっくりと距離を詰めていた。
個体識別・零零壱号
アレがマースライムか。緑色でドロドロしててあんまり美味しくなさそう…。
「かばう」で子供たちをフォローしながらマースライムと戦おうかな。
大丈夫だよー、ワタシ怖くないよー。キミたちを助けに来たんだよー。

バウンドボディで手足や尻尾を伸ばして、スライムを攻撃したり子供達に迫った攻撃を受け止めたりするよ。


ロワ・イグ
追い付けたらサイキックオーラで割り込みます
「よく頑張ったね、誰もはぐれなかったの、あなた達のお陰だよ」

微笑んで見せて敵へ振り替えると、真剣な表情になります
凄い数…この迷宮にいそうもない強敵…
3人を守るためには自分達だけで難しいかもしれません

散弾銃に対してオーラペイントを放ち大熊を顕現させ防いでいきます
シャークバイトや補食にはサイキックオーラで迎撃し痺れさせようとします
もし上手くいっても痺れさせるだけで止めはさせません
新入生の3人に勇気を出して攻撃をしてもらいたいです

「敵は凄く強くて恐ろしいけど、勇気を出して!皆で力を合わせれば戦える!」

強い敵は今後も現れます、その時挫けないためにも勇気を持って


紗桐・靜音
彷徨う少女……。どんな子か気になるけど、今は生徒の皆を助ける。

確か、マースライムが進路を塞いでいるんだっけ。
私達とは反対側に生徒が居る筈だから、先ずはマースライムの注意をこっちに誘き寄せるわ。

「皆、今助ける」

群れの中で一番生徒に近い、或いは生徒を襲おうとしているマースライムにUC「炎舞「狐火」を一つだけ放つわ。

誘き寄せたら引き続き狐火で焼き払う。もし複数が一斉に此方に来たら……好都合だけど、その時は無理をしないで他の猟兵さんと協力する。誤操作しない様に、戦闘中は狐火を一つずつ攻撃に使用するわ。

上手く数を減らせたら、生徒側に走り寄って守るように立つ。

「皆、離れないで」

何かあっても対応出来る様に。


在波・理彩
連携、アドリブお任せ

[心情]
スライム相手とは斬りがいがなさそうですが未来ある生徒を見捨てるのも寝覚めが悪いわね
紫髪の少女とやらも気になりますし人助けとしゃれこみましょう

[行動]
まずは生徒達を助けましょう
すでに逃げているようですし彼らの退路上にいるスライムを斬ればいいわね
サムライブレイドの錆びにしてあげますわ

スライム相手にはユーベルコードを使いましょう
あまり当たりたくない攻撃ばかりですが私が避けて生徒に当たるようでは本末転倒ですからね
これを使っておけば生徒を庇って攻撃に当たっても多少は耐えることが出来るはずですわ
当たりすぎてスライムまみれになるのはごめんですけど…



(彷徨う少女……)
 紗桐・靜音(神楽電舞・f08197)があの少女のことを気にならないと言えば嘘になる。しかし今は目の前の生徒たちを救うため、陽動の狐火を一つだけ放った。
「皆、今助ける」
 靜音の狙い通り炎は生徒の傍にいたスライムだけを焼いた。狐火の魔力に反応し多くのマースライムが靜音を目がけて殺到していく。
「多い、でも、好都合」
 いい具合に生徒たちが通れる道が開いてきた。
 靜音に近づくマースライムを在波・理彩(紅時雨・f15564)がその刀で切り裂く。流動体ゆえ手応えは薄いが、力強く切り込むとその体は避けて形を保てず床に飛び散った。
「やはり斬りがいがないですね」
 ぼやくが未来ある生徒を見捨てるわけにはいかないのは百も承知。『巫覡載霊の舞』で己の姿を神霊体に変えて、薙刀で広範囲のマースライムを纏めて吹き飛ばす。
 その横で靜音の狐火が一体一体、確実にマースライムを焼き尽くしていった。

 群れが手薄になった頃、生徒たちのすぐ傍で突如粘度の高い液体が盛り上がる。
 一瞬、敵かと思い恐れおののくがその液体はマースライムよりもはっきりと形を持った人影に姿を変える。
 彼女はマースライムではなく、ブラックタールの個体識別・零零壱号(正体不明・f15475)。
「大丈夫だよー、ワタシ怖くないよー」
 間延びした調子で声をかける零零壱号に生徒たちは安堵した表情を見せた。
 すかさずマースライムとの間に割って入るようにロワ・イグ(駆ける和み星・f15270)も生徒たちの傍に駆け寄る。
「よく頑張ったね、誰もはぐれなかったの、あなた達のお陰だよ」
 サイキックオーラで飛び掛かって来たサメ型スライムを弾き飛ばし、眩い笑みを向ける。
 それに釣られるように生徒たちの震えが治まる。
「ワタシが守るからねー。安心しなさーい」
 そう言うと零零壱号は生徒の周囲を取り囲むように変化した。彼女の体はバウンドボディ、伸縮自在に伸びるのだ。
 ロワはペイントオーラでポップカラーの熊を呼び出し、酸弾の盾にする。
 二人の尽力により生徒たちには傷一つない。敵を殲滅しつつ、生徒を安全圏まで連れ出すようにゆっくりと後退し始めた。

 靜音と理彩も合流し、四人でマースライムの掃討と生徒の護衛に当たる。
「皆、離れないで」
「私の体も盾になりますの」
 神霊体となった理彩が酸弾から身を挺して庇う。酸が触れた皮膚が痛みと熱を伴い溶けだした。
「く、う……」
 これでも負傷を軽減しているがさすがに数が多い。そして何より、スライムの粘液が触れるのはあまりいい気分ではない。
 靜音の狐火も僅かとなり、「電」と銘打たれた薙刀を振るってマースライムを食い止める。

 理彩の隙間を埋めるように零零壱号が遮る。マースライムは接触した零零壱号を取り込もうとするが――逆にマースライムを飲み込むように変形した零零壱号に丸ごと呑み込まれた。
「あー……」
 伸縮性はまだ残してあるが、人の姿に戻った零零壱号は咀嚼するように口元を動かす。
「まっず」
 げーと舌を出して苦々しさを顔に表す。
「……選り好みしない方がよろしいのではないでしょうか?」
 とは言うものの、人間である理彩にはあのスライムを食べるとは思いもよらなかったようで、声も所在なさげだ。
「うーん……そうだねー。子供たちの命がかかっているもんねー」
 まずさを堪えて零零壱号は捕食を続ける。取り囲むスライムの数は続々と減っていった。


「はーーーーっ!」
 ロワのサイキックオーラがサメの牙を弾き、飛び込んできたマースライムを感電させる。しかし、ある目的のためトドメは刺していない。
「あなた達!」
 明朗な声が生徒たちに麻痺したスライムを倒すように呼び掛ける。当然、生徒たちは不安そうな色を浮かべるが、レシケと呼ばれた少年は前を、ロワを見ていた。
「敵は凄く強くて恐ろしいけど、勇気を出して! 皆で力を合わせれば戦える!」
 今回の遭遇は不幸な事故だ。しかしこの事故でこれからの未来ある子供たちの勇気が砕けて欲しくない。そしてこれからも、彼らがアルダワ学園の生徒であるならまた強い敵と戦うこともあるだろう。その時も挫けてしまわないように、その一心で呼びかける。
 その言葉に、恐る恐ると生徒たちが顔を上げた。傍らに靜音が立つ。
「私たちが、いる」
 何があっても必ず守るから、その気持ちを込めて告げる。

 三人は目配せをして、感電したマースライムの向かって駆け出した。
 剣と槍で切り裂き、動きを止める。そして魔法の火が射抜きマースライムの体を蒸発させた。

 それを見るロワの顔は、初めて敵を倒せて喜ぶ三人の顔と同じくらい眩いものであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

御門・結華
ご主人様であるユウヤと一緒に参加。アドリブやアレンジ歓迎。

私と同じ姿のオブリビオン。同型機(しまい)または、私の失った過去?
いずれにせよ、今やるべき事を為します。

ユウヤに一言かけ【ダッシュ】
「マスター、生徒たちをお願いします」
同じ姿で声掛けて生徒達を混乱させたくないですから

『火のエレメント』が輝き【精霊憑依】を使用。
紅蓮の炎を纏い【武器改造】【防具改造】で変化します。
同じ姿の彼女を見つめたあと、スライムたちに向き直る。
「貴方達の相手は私です」
大剣を【怪力】で振るい、炎の【属性攻撃】【2回攻撃】で纏めて【なぎ払い】ます。
敵の攻撃は【見切り】回避したり、炎の【オーラ防御】で消し飛ばす。
「邪魔です」


ユウヤ・シュバルツ
結華と一緒に参加。アドリブやアレンジ歓迎!

いつになく感情的に見える結華を気にかけ
「大丈夫か?」
「そうか、わかった」
【風霊召喚】を使用し、シルフの少女を呼び出し一緒に生徒達に誘導をするぜ!
「生徒たちの方は任せてくれ。避難が終わったら、すぐ戦線に戻るからな」


生徒達を安心させ避難を。
「もう大丈夫だ!助けに来たぜ。こっちだ!」
一目、結華そっくりの宿敵の姿を確認し
「確かに似てるな。ただオブリビオン特有の禍々しさはあるが」
シルフの少女が怯えるのを見て、頭を撫で
「大丈夫だ。オレ達もいる」

避難が完了後は『風霊銃』による風【属性攻撃】で【クイックドロウ】【援護射撃】を行うぜ!
「またせたな、結華。一気に行くぜ!」


ラウル・オッペンハイマー
想定外の事態に抜き差しならない状況…えぇ、これは実によくある事です。
であれば、元講師として道を示すのは当然でしょう。

宜しい。では講義の前の準備運動としましょう。
火力は劣るものの、手数で勝るウィザードミサイルでマースライムを牽制。
ミサイルは攻撃と敵の攻撃を撃ち落とす防御にも使う。
同時に退路も確保出来るよう防戦重視で行動。
前に出るだけが戦いではないですよ。時にはスキを突いて逃げるのも立派な戦闘です。

鬼ごっこは得意ではないですが…えぇ、子供の我儘に付き合うのも大人の度量というものでしょう。
なのでその前に、おじゃま虫には退散して頂かなければなりませんね。



 御門・結華(色褪せた精霊人形・f01731)は遠くに見える紫髪の少女を視認すると、思わず目を見開く。
 それは色こそ違えど自分と同じ姿をした少女。動揺が隠せず表情に出てしまう。
(同型機(しまい)? 私の失った過去?)
 結華のマスターであるユウヤ・シュバルツ(人間のシーフ・f01546)は異変に気づき声をかける。
「大丈夫か?」
 マスターの声が現実に引き戻す。そうだ。少女が何者であれ、今はやるべきことをしなければならない。
「ええ、大丈夫です。マスター、生徒たちをお願いします」
 結華は目にも留まらぬ速さでマースライムの群れへと走り出す。同じ見た目では話しかけた生徒を混乱させてしまうだろうと思ってのことだ。
 ユウヤもわかったと返した。そして相棒である風の精霊を呼び出し、生徒たちに駆け寄る。
「任せてくれ。避難が終わったら、すぐ戦線に戻るからな」

「想定外の事態に抜き差しならない状況……えぇ、これは実によくある事です」
 ラウル・オッペンハイマー(人間のウィザード・f04249)が丁寧に、よく言い聞かせるように告げる。
 彼は元アルダワ学園の講師、故にトラブルに巻き込まれた生徒を見てつい教師としての癖が出てしまうのだ。
 そして紫髪の少女、マースライムの順に一瞥する。
「鬼ごっこは得意ではないですが……えぇ、子供の我儘に付き合うのも大人の度量というものでしょう」
 だが、その前にお邪魔虫は退散してもらおう。ラウルはウィザードロッドを取り出し、構えた。

 結華の持つ赤い宝石が輝く。
「――精霊よ、我が身に宿れ」
 詠唱、そして『精霊憑依』により火の精霊纏った結華の体が赤く輝いた。同時に大剣が、体が火の粉を纏い、防具が火のように赤いドレスへと変わる。
「貴方達の相手は私です」
 身の丈に及ぶ大剣を振るい、手早くマースライムを焼いて、潰していく。
「では講義の前の準備運動としましょう」
 一方、ラウルはウィザードロッドを振るった。振った後から魔法陣が展開し、そこから数十本の炎の矢がマースライムへと降り注ぐ。
 威力自体は弱く決定打はない。しかし炎の矢に機先を潰されたマースライムは、攻撃すらできずにその場で狼狽えるしかなかった。
 その隙を狙い、結華の炎が唸りを上げて焼き払う。

「もう大丈夫だ!助けに来たぜ。こっちだ!」
 マースライムを抑えてもらっている間にユウヤが避難を促す。
 戦っている猟兵も狙っていたのだろう、ちょうどよくマースライムの波が消えて逃げられるように道が出来ている。
「生徒諸君、今です」
 杖を構えながら生徒たちに振り向いたラウルが告げる。
「前に出るだけが戦いではないですよ。時にはスキを突いて逃げるのも立派な戦闘です」
 このような想定外の状況に陥った場合は特に、と付け加える。生徒たちには敵を倒せて昂る気持ちもあったであろう、しかしユウヤとラウルの呼びかけに従って各々了承を口にして安全圏へ離脱していった。
 その場から離れるユウヤと生徒たちに向かって酸弾が放たれるが、結華の炎が、ラウルの矢がそれを相殺した。

 途中、ユウヤは振り返って紫髪の少女の方を見た。確かにオブリビオン特有の禍々しさはあるものの、その少女の姿は行動を共にするミレナリィドールの少女と瓜二つだった。
 ふと視線をシルフに向けると彼女も怯えた様子を見せている。そのシルフの頭をポンと撫でる。
「大丈夫だ。オレ達もいる」
 安心させるように微笑みかけた。
 暫く走っているとマースライムの追撃もなくなり、迷宮の入り口に辿り着いた。敵が近づいている気配もない。ここに来ればもう安全だろう。
 生徒たちにそのことを告げると気が抜けたのか三人ともその場に崩れ落ちる。
 それを見届け、一言断ってから風霊銃を構えて走り出した。

「またせたな、結華。一気に行くぜ!」
 マースライムの群れへと高速で風の弾丸が次々と放たれる。
「ええ、マスター」
 銃弾に動きを封じられたマースライムへ、炎の大剣が踊り狂う。

「数も増えない……もうそろそろでしょうか」
 ラウルの観察通り、マースライムが増える様子がない。今いる分で最後のようだ。ならば、と『ウィザード・ミサイル』を唱えて一気に磔にする。

 焼かれ、撃ち抜かれ、斬られ……次々とマースライムの体が霧散して消えていく。
 そしてその場に残るのは猟兵たちと少女だけになった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『紫炎の少女』

POW   :    おまえはちがう
単純で重い【禍々しい炎を纏った大剣】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    うっとうしい
自身に【禍々しい炎のオーラ】をまとい、高速移動と【斬撃による闇色の炎】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    まとめてきえろ
レベル×1個の【火の精霊の力を利用して生み出された闇色】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。

イラスト:しきと

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は御門・結華です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●アナタハダアレ?
 マースライムも、生徒たちもこの場にはいない。
 故に少女は狙いを猟兵たちに変えた。

 華奢な体。不釣り合いなほどの大きな剣。身にまとうはとても冷たい色をした、闇の炎。
 向けられるのは殺意と呼ぶには無機質な、純粋な暴力衝動。
「じゃま……」
 大剣の切っ先が猟兵たちを捉えた。

 戦闘、開始。
個体識別・零零壱号
「どう見ても、話し合いで解決しましょうって感じではないよね
本当に見境ないみたいだし、取り合えず大人しくなって貰おうかな」

炎を使った攻撃、厄介だね
だから、その力を少し利用させて貰うよ
【怪力】【捨て身の一撃】で彼女を一瞬押さえ込んでから、竜の頭部のような尻尾で彼女に噛み付いてエネルギーを捕食、UC【捕食者の極意】を発動
属性をコピーして炎への耐性付与を試みるよ
「炎なのに、なんだか冷たい。不思議な感じだね」
ワタシも闇の炎を纏って攻撃、大剣の攻撃に対してワタシは尻尾で応じるよ

「誰かを探してるのかなー?でも違うなら殺してしまえって、なんかおかしくないかな?」


ロワ・イグ
まだ力のない子供達を追い回して
どうしてそんなことをするの?
あなたも、声も、気持ちも届かない、オブリビオンなの?

今まで何度も戦闘を経験し
その際何度も争う理由や意味を問うてきました
種族の壁や言語の壁からなる争いもありました
けれど、どちらでもない、違和感を感じます
今まで感じた、痛いほどの敵意や怒り、猟兵に向ける憎しみ
それが感じられません

話をするため捕らえようとします
空に飛んで、上からオーラペイントで大熊を降ろして
仲間の盾を勤めます
飛んでくる攻撃をオーラで防ぎ
少女を囲むように移動し大蛙を描きます
大蛙を数匹で取り囲めたら、長い舌を伸ばして手足を押さえます
話をし分かり合えない場合、仲間と攻撃を合わせます


紗桐・靜音
もう此処には猟兵と少女しかいない。

「これで、全力で戦える」

再び「炎舞「狐火」」を使用するわ。
今度は一気に複数を操作して攻撃。

「貴女も、同じ力を持つのね」

少女の闇の火を見て少し驚くけど、どっちが強いか試す。もしかすると、私の狐火の方が数で不利かもしれない。

少女の闇の火に当てる様に狐火を操作して、攻撃を相殺するわ。
勿論、それだけじゃ勝てないから……。

再び最大まで狐火を出した所で。

「狐火よ、重なれ」

真の姿になると同時に、狐火を合成して一つにする。
見た目は変わらないけど、今の私は狐耳と二尾の狐尻尾がある。

「狐火よ、我が舞と共に、眼前の者を燃やして」

強化した狐火を少女に向けて放つ。
少しは効いた、かな。


在波・理彩
連携、アドリブ歓迎

[心情]
この殺気、殺る気満々ですわね、受けてたちましょう。彼女が何者にせよ暴れている以上まずは無力化をしなくてはね。
スライムと違って手応えがありそうですわ。

[行動]
彼女の無力化にはあの大剣が障害になりますわね…。
あれを折りにいきましょう。
剣は剣で少々興味が惹かれますが首や腕を落とすわけにもいきませんからね。

相手の攻撃を避けつつ斬擊に合わせて(剣刃一閃)を放ちます。
その方が剣だけを狙いやすいですし相手の技の威力も利用できますしね。

狙いを悟られぬようそれとなく首を狙う素振りを見せておきましょう。
「何者か知りませんがあなたはここで果てます。その首もらい受けますわ。」



「どう見ても、話し合いで解決しましょうって感じではないよね」
 零零壱号が紫髪の少女を見てそう言った。
「この殺気、殺る気満々ですわね、受けてたちましょう」
 理彩は刀を構え少女を見据える。
 靜音は一旦少女から目を逸らし辺りを見渡す。
「これで、全力で戦える」
 靜音の周囲に狐火が舞った。

 ロワは思わず真っ先に飛び出した。ロワはこれまで何度も戦い、その度に敵に戦う意義を説いてきた。
 しかし、目の前にいる者は今まで見てきた相手と違う。種族、言語、思想の壁を感じることは少なくなかったが、紫髪の少女はそのどれでもない――それすらない、感情が感じられない違和感。だから、それを問いただしたい。
 胸に秘めた思惑を叶えるため、オーラペイントで熊を描き盾とすべく先行させた。

 紫髪の少女が手を翳すと、禍々しい火炎が数十個も少女から離れ、猟兵を目がけて飛び掛かる。
 ロワの熊がまず前に立ちふさがり、靜音が『炎舞「狐火」』により生み出した炎が迎え撃つ。
 熊と狐火に打ち消された黒炎は爆炎を残して霧散する。
 しかし少女は炎を呼ぶ手を止めず続け様に攻撃を続ける。
「貴女も、同じ力を持つのね」
 靜音が独り言ちる。威力は相殺できる程度に互角、しかし数は少女の方が勝る。そう分析しながら靜音は新たな炎を生み出した。

 黒炎が防がれている間、熱を恐れず前に飛び出す猟兵がいた。
 零零壱号はその体に炎を浴びながらも、傷を厭わず少女との距離を詰める。
「取り合えず大人しくなって貰おうかな」
 両腕で少女を抱え込み、竜のような尻尾が少女に齧り付いた。
 そこを狙い、ロワが大蛙を何体も描き取り囲ませる。大蛙の舌が拘束具となり、さらに強固に少女の動きを押さえつけた。
 少女は拘束を解こうと、まず炎を零零壱号に集中させたが彼女は痛がる様子を見せない。
「ごめん、もう食べちゃったから」
 『捕食者の極意』により少女の炎耐性をコピーした零零壱号はケロリとした顔で少女を抑え込み続ける。
「でも、炎なのに、なんだか冷たい。不思議な感じだね」
「あなたは、あと……」
 睨みつけ、次は大蛙に炎を向けようとするがそれは零零壱号の放った黒炎に遮られる。
「お願い、聞いて!」
 紫髪の少女の前にロワが立つ。攻撃せずに拘束したのは全て彼女と話をするため。武器を構えず少女を正面に捉えて口を開く。
「まだ力のない子供達を追い回して……どうしてそんなことをするの? あなたも、声も、気持ちも届かない、オブリビオンなの?」
「誰かを探してるのかなー? でも違うなら殺してしまえって、なんかおかしくないかな?」
 零零壱号も合わせるように言葉を投げかける。
「かつどうには、まりょくがひつよう」
 少女の言葉が口を紡ぐ。しかしそれは大変冷たいもので、

「もう、いいでしょう?」

 少女の体から勢いを増して、炎が吹きあがる。背筋が凍るほどの冷たい、しかし異様な熱気。そして溢れんばかりの力の気配。
 拘束の下から大剣を振り払い、大蛙を、零零壱号を消し飛ばさんとする。大蛙は弾き飛ばされた先から絵の具に戻るが、零零壱号は尻尾で剣を辛うじて止めて被害を抑えた。

「……話して分かり合えないなら!」
 これ以上対話を求めても悪戯に味方の被害を増やすだけだ。ロワは覚悟を決め、拳を構えた。

「何者か知りませんがあなたはここで果てます。その首もらい受けますわ」
 理彩がその背後から忍び寄り、刀を少女の首筋目がけて振るう。反応した少女は大剣で刀を迎え撃った。
 武具の衝突に光が散り、金属音の後すぐさま二人は互いに距離を取る。
「やはり、スライムと違って手応えがありそうですわ」
「……うっとおしい」
 少女の周囲から再び炎が禍々しく巻き上がる。先ほどより威力も、速さも増した一閃。
 それに対し、変わらず理彩は首を狙い刀を振るう。少女の構えは理彩の剣筋を防ぐには些か大振りであり、繊細さにかける。
 故に首への攻撃をその剣で防がざるを得ない。加えてロワのオーラ、零零壱号の尻尾と炎が邪魔して思うように動けない。
 そして、理彩の刀が大剣を強かに打ち付ける。この一撃はただの打ち合いではない。

「――“剣刃一閃”」

 ピシッ、音を立てて少女の大剣に罅が入る。
(……狙い通り、真っ二つとは行きませんでしたか)
 理彩はまず、少女の動きを封じようとした。首狙いの攻撃は全てダミー。首への攻撃を塞ぐなら剣で対処しなければならない。その枷を利用して剣を破壊しようとした。結果、破壊までは及ばなかったが――その後に追い打ちをかけるように少女目がけて極大の炎が襲い掛かる。


「狐火よ、重なれ」
 靜音の頭部と背後に狐の如き耳と尻尾が出現する。それに合わせるかのように、狐火が一つに収束し巨大な爆炎を生み出す。
 狐の姿が靜音の真の姿。そして一つに束ねた炎を、少女に向かって撃ちだす。
「狐火よ、我が舞と共に、眼前の者を燃やして」
 主の言葉に従い、狐火は少女を燃やさんとただ前へと動く。

 爆炎を打ち消さんと、少女は大剣に闇の炎を纏い切り裂こうとする。しかし罅の入った剣は炎を塞ぎきれず、剣を跳ね除けて少女を焼いた。
 文字として表すには余りにも甲高い悲鳴を上げて炎に飲み込まれる。

「少しは効いた、かな」
 人の姿に戻った靜音が煤けた体で立ち上がろうとする少女を見て独り言ちた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

御門・結華
マスターであるユウヤと一緒に参加。アドリブやアレンジ歓迎します。

火の精霊を憑依した状態で紫炎の少女と相対します。
「……あなたは何者ですか?なぜ、私と同じ姿を」
攻撃をして来たら【ミレナリオ・リフレクション】が発動します。まるで鏡合わせのように同じ動きで斬撃を放ち、紅蓮と闇色の炎がぶつかり合います。
「っ!やはり、同じ技を」
相手は周囲の魔力を喰らい強化したオブリビオン、対して結華は自分の精霊力のみ。そして、何より迷いが形勢を傾ける。
(私がいつか彼女のように周りを傷付けるようにならないと言えるのか……私が記憶を取り戻したら)

吹き飛ばされた結華を守るように立ち向かったユウヤを見て
「自分を、信じる……」


ユウヤ・シュバルツ
アドリブやアレンジ歓迎!結華と参加だ!

結華が突撃するのを見て
「結華!?」
傍らの精霊に語り掛けながら、風霊銃を手に【援護射撃】の用意を。
「シルフ、元々結華の契約精霊だったよな?そっくりさんについて何かわかんねぇか?」

結華が吹き飛ばされるのを見て【風精憑依】しながら【ダッシュ】で割り込む。
「あぶねぇ!」
結華を庇いウィンドセイバーで【武器受け】
「わりぃな、これ以上はやらせねぇぜ」
【見切り】【残像】【2回攻撃】で結華の立ち上がる【時間稼ぎ】
「お前の力は一人だけの力じゃない。精霊たちと一緒に戦ってるんだ」
「だから、あんな風に無理やり精霊の力を使うようなことはしない!」
「精霊たちを、自分自身を信じろ!」



 炎の精霊、イフリートを憑依した姿で結華は少女と対峙する。
 見れば見るほど結華と少女の姿はそっくりだ。色以外はまるで生き写しの双子のように。
「……あなたは何者ですか?なぜ、私と同じ姿を」
「だれ? どうして……わたしとおなじすがたをしているの?」
 少女はまるで録音した音声をリピートしたかのように、同じ声で返す。
 一瞬、少女の顔に殺意以外の別の感情が灯ったようにも見えた、がすぐに冷たい目で大剣を振りかざす。


「結華!?」
 行動を共にする少女が突撃する様に、ユウヤは驚きの声を上げる。
 ワンテンポ遅れながらも風霊銃を構えて風の精霊、シルフを纏う。
「シルフ、元々結華の契約精霊だったよな? そっくりさんについて何かわかんねぇか?」
 傍ら、精霊に問いかけるが少女の正体について明確な答えは得られない。ただ――見た目、そして紫髪の少女から感じ取れる精霊の気配から結華の同型と思うのが自然だろう、ということだ。
 だが紫髪の少女と結華が全く同じには見えない。紫髪の少女は完全に暴走しており、見境なく魔力を吸い取っている。
 きっと炎が暗い紫をしているのも無理矢理吸収した精霊の力を使っているからだろうと。シルフは精霊がかわいそうだとも零した。
「そっくりさん……結華の姉妹みたいなもんか」
 感動の再会とは冗談でも言えそうにないが。


「おまえは、だれだ……? きえろ」
 結華は少女の大剣を『ミレナリオ・リフレクション』で打ち返す。色以外同じ剣、同じ炎、同じ斬撃が鏡に映したかのように相克し、消える。
 返す刀で結華も切り付ける。が、少女も結華と同じ様に切り結び紅蓮と闇色の炎の衝突する。
「っ! やはり、同じ技を」
 数合打ち合うが二人の技量は全く同じであり決着の気配がない。
 それどころが打ち合いの度に結華が押されているのだ。

 既に紫炎を纏う少女はその肌を、自らのものではない異端の炎で焼かれている。その手に持つ大剣も炎で繋がなければ壊れてしまったいただろう。
 にもかかわらず、結華は少女を倒すことができない。
 その理由を結華は自覚していた。第一に、自分は契約した精霊の力しか借りれないが対峙する少女は精霊どころか無差別に吸収した魔力を行使している。負傷が無ければそもそもの力差で既に押し負けていただろう。
 第二、それは結華の問題。彼女の中にヘドロのようにこびりつく迷い。目の前で無差別に、例え子供であろうと視界に入るなら殺そうと暴走する姿。それは未来の自分かもしれない。
 今は亡い記憶を取り戻した時の未来の自分の――

 その逡巡が結華の小さな体を宙に飛ばす。しかし地面に叩きつけられるより速く、別の何かに受け止められた。
 結華は自分を受け止めた彼を見て思う。
 そうだ、自分は怖いのだ。記憶を取り戻した時に傍にいる人を傷つけてしまわないかと。

「あぶねぇ!」

 負荷を厭わずユウヤは風の精霊を纏い、走り抜け、結華の体を受け止める。
 代わりにウィンドセイバーで無防備な結華の体があったはずの場所で、紫髪の少女の大剣と打ち合った。
「わりぃな、これ以上はやらせねぇぜ」
 呆気に取られている結華に時間は稼ぐと目配せで伝え、ウィンドセイバーと風霊銃で牽制する。
 力では少女の方が上だが、速さと手数ではユウヤが優れる。
「結華、お前の力は一人だけの力じゃない。精霊たちと一緒に戦ってるんだ」
 炎を風の弾丸で打ち消しながら言う。
「だから、あんな風に無理やり精霊の力を使うようなことはしない!」
 大剣がユウヤを叩き潰すように打ち下ろされる。しかしその場にユウヤはいない。斬ったのは彼の残像だ。
 攻撃を凌ぎながらまた告げる。
「精霊たちを、自分自身を信じろ!」
「自分を、信じる……」

 ゆらり、力なく垂れ下がった手を何とか持ち上げる。床に落とした大剣を掴み、杖代わりにして立ち上がる。
 そしてユウヤと少女の間に割り込み、紅蓮の一閃を叩きこんだ。
 後押しするように風霊銃の弾丸が少女の大剣を射抜く。罅はまた音を立てて大きくなっている。

「私は、私を信じる! だからあなたのようにはならない。あなたには負けない……!」

 結華の剣が、少女ごと剣を切り裂いた。破片と共に大剣が崩れる。
 そして少女の体もまた冷たい迷宮の床の上に倒れ、二度と動かなかった。







 体が動かない。だからもう私はお終い。
 最期の最期で何か思い出せたような気がするの。
 だから、届かないけど言いたいことを。

 私のことを少しだけでも気にかけてくれてありがとう。
 それと私のようになっちゃだめよ。私のようにならなかったあなたが羨ましいわ。

 意味があったとしたら、私はあなたたちに会うための迷い続けていたのかもね?

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 日常 『学園名物 学食風景』

POW   :    学食を作る側、もしくは売る側にまわる

SPD   :    誰よりも早く売り切れ必死の一品を買いに行く

WIZ   :    仲良く誰かと一緒にお昼

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

紗桐・靜音
学食でお昼ご飯。いつも一人でご飯を食べてるけど……折角だから、グリモア猟兵さんのお話も聞いてみたい。
緋打・よみぢ(f10970)さんを誘ってみるわ。無理そうなら我慢。


「あれも、これも美味しそう」

美味しそうなのを食べてる学生が沢山いて、その度に目移りしてしまうわ。

そんな折にもし、助かった三人の学生達とお話する機会があったら、怪我とか無いか確認しつつ、何かお薦めのメニューがあれば、聞いてみたい。

その後、もしお誘いが叶っていたら、よみじさんとお話しながらご飯にするわ。私じゃ、余り会話は弾まないと思うけど。だから、基本的に聞き手に回る。

(プレ内容に関わらず、よみじさん主体で構いません)


個体識別・零零壱号
「激マズスライムの口直ししたいなー。あーもー、まだ口の中がニガ酸っぱい!」
一緒に戦った人達と一緒にご飯食べようかな。
デッカイお皿にありとあらゆる料理を山の様に(標高1m)積み重ねたスペシャル定食を作って貰うよ。
食べきれるか?ふっふっふ、愚問だよ。
グールドライバー+フードファイターの食欲を舐めてはいけない。
あ、他の人の料理も美味しそうだったら、自分のお皿の一品と交換してみようかな。


ユウヤ・シュバルツ
結華と一緒に参加だ!アドリブやアレンジ歓迎するぜ!

自分の姿が混乱させないか心配する結華の頭を撫でて
「大丈夫だ。精霊憑依している状態でもなきゃ、気付きやしねぇって」
「それより、早く食っちまおうぜ?」

「そんな気にしねぇでもいいのに。大変な時はお互い様だろ?」
「大事な相棒の助けになるなら、こんなのは苦労のうちに入らねぇよ」

消えていった、彼女の姉妹について
「アイツ、もっと早く見つけていれば助けられたのかなぁ?」
「そうか、笑っていたのか……」

急にシルフの少女が現れ、引っ張られ
「お、おっ!?急になんだよ。ちょ、上に乗っかるなって!」
「オレ達がしんみりとしてるから、心配してきてくれたのか?」
「ありがとな」


御門・結華
主人様であるユウヤと一緒に参加。アドリブやアレンジは歓迎します。

「……この姿で学園を歩いて大丈夫でしょうか?」
ユウヤからの返事に
「確かにそうですね」

「今回は本当にありがとうございました」
「マスターのおかげです」

彼女が消えゆく様子を思い出し
「あの子は最期に笑っていました」
「だから、マスターが気に病むことはありません」

シルフの少女に連れられるユウヤを寂しく見ていると手持ちの『風のエレメント』が輝くのに気づき
「……契約が戻ってる!?」
ユウヤに乗っかりながら結華に向かって微笑む精霊を見つめ
「ありがとう」

マスター達を追いかけようとすると、誰かからありがとうと囁かれたような気がして振り返るが誰も居ない。



●アルダワランチタイム
 戦いが終わり、お昼時。靜音は普段一人で学食を食べるが今日は違う。目の前にいるのは銀髪のグリモア猟兵、よみぢ。その横には迷宮で助けた三人の学生、零零壱号、ユウヤと結華もいる。緊張の糸が切れた学生たちの腹の音が空腹を訴えたのを皮切りに、その場にいた猟兵たちも含めて昼食を共にすることになったのだ。
 よみぢを誘ったのは靜音だ。よみぢに食事の必要はないとのことだが、グリモア猟兵の話を聞いてみたいと告げたため、彼女も昼食の席に座る運びとなった。ちなみに靜音が頼んだのはオムライス定食。生徒の様子を確かめに声をかけた時、マノという少女の頼んだメニューが美味しそうと思ったからだ。靜音にとって色々な料理に目移りして決めかねていた時にお薦めメニューを教えてもらったのは幸いなことだった。
「あの、ワタシで、いいのですか?」
 自信なさげによみぢが口を開く。
「いいの」
 靜音はそう言うが、暫くよみぢは所在なさげに目をきょろきょろと動かしていた。自身の口下手を自覚して受け身に回った靜音だが、よみぢも口下手な方ではあるらしい。何度か目の前にあるお子様ランチの旗を視線が通り過ぎてから漸く口を開いた。
「グリモア猟兵、といっても、特別な、気分は、ありません。事件、観測。ですが、解決、できません」
「少し、意外ね」
 予知したり、転移したりと便利そうだとは思ったが、確かに実際に解決するのは他の猟兵頼りとなる。そのことを心苦しく思っていると感じ取れた。
「戦う、自信ありません。だから、皆さんを、見てると、羨ましくも、あります」
「でも、予知がないと始まらない。そう、思うわ」
 靜音がよみぢを見据えて言う。そして顔を三人の生徒に向けた。
「あなたも、あの子たちを助けた一人よ」
「そう、ですか……ですね」
 よみぢも釣られて生徒たちをぼうっと見ていた。自分が、いや自分たちが守り切ったものを噛み締めるように。
 靜音もまたオムライスを口に運ぶ。守り切った者を、その結果を深く刻み込むように。

 食堂に真っ先に乗り込んだのは零零壱号だ。何せ、彼女の口にはマズいと評したマースライムの食感がまだずっと残っているのだ。
「あーもー、まだ口の中がニガ酸っぱい! とりあえずプレートいっぱいくださーい!」
 と言って食事を所望した彼女の昼食は凄まじかった。同行する猟兵たちも、周りにいる生徒も皆、ついつい彼女のプレートに目が行ってしまう。なんとあらゆる料理が雑多に1mの高さに積み上げられている。零零壱号曰く『スペシャル定食』と名付けられたそれは単なる大食いでは済まされないほどの超ボリュームだった。
「すっげー……」
「これ、本当に食べられるんですか?」
「カロリーうっわ……」
 思わず唖然とするキート。頼りなく零零壱号の尋ねかけるレシケ。女性ゆえについどこまで体を太らせるか想像してしまうマノ。そんな三人に自信満々に零零壱号は答える。
「ふっふっふ、愚問だよ。グールドライバー+フードファイターの食欲を舐めてはいけない!」
 つまり全部食べきれるということだ。そして有言実行と言わんがばかりにハイスペースで食品を口に放り込む。三人はそれを呆然と見ていたが、自分たちの手が止まっていることに気づいてパクパクと食べ始める。ついつい早食いになってしまったキートが思いっきり咽ていた。
「ふっふー、普通の人間なら早食いでもよく噛んで食べないと」
 ついつい微笑ましく思って見ていると、横からの視線に気づく。視線の正体は靜音だ。靜音は零零壱号ではなくスペシャル定食の方を見ていた。
「もしかして、ちょっと食べたい?」
「ええ、これ、美味しそうで」
 遠慮がちに指をさす靜音。その先にあるのはエビフライだ。
「じゃあ、そっちのオムライス一口と交換で!」
 あまり表情には出てないが、靜音が嬉しそうに頷く。取引完了のサインだった。

 賑やかな食事風景に反して結華は浮かない顔だ。
「……この姿で学園を歩いて大丈夫でしょうか?」
 まだ紫炎の少女と同じ外見である自分が混乱させないか心配にしているようだ。そんな結華の頭をユウヤは優しく撫でる。
「大丈夫だ。精霊憑依している状態でもなきゃ、気付きやしねぇって」
「確かにそうですね」
 結華の表情から憂いが取り除かれた。それを見たユウヤは笑って見せ、
「それより、早く食っちまおうぜ?」
 流石にあそこまで早くは食えないけどなと、スペシャル定食を見る見るうちに平らげていく零零壱号の姿を見ながら冗談めかして言った。

「今回は本当にありがとうございました。決着をつけられたのはマスターのおかげです」
 食事の途中、畏まった口調で結華が話し出した。
「そんな気にしねぇでもいいのに。大変な時はお互い様だろ? 大事な相棒の助けになるなら、こんなのは苦労のうちに入らねぇよ」
「……はい」
 またありがとうございます、と言いかけて口を閉じる。なんてことない、という表情を向ける主人に応えるように。
 笑顔を向けるユウヤ、だが少し考え始め俯きながらこう言った。
「アイツ、もっと早く見つけていれば助けられたのかなぁ?」
 名前のない、結華とよく似ていた少女。もし取り返しのつかないほど暴走する前に会っていれば――その出会いは違ったものになったかもしれない。
 しかし、少女の最期を見た結華にはわかるものがある。彼女の最期は決して最悪なだけのものではないことを。
「あの子は最期に笑っていました」
 笑顔の真意は想像するしかない。だがその想像が都合のいいものだとしても、結華には当たっているような気がした。
「だから、マスターが気に病むことはありません」
「そうか、笑っていたのか……」
 ユウヤはその表情を複雑に変える。笑っているような、泣いているような、そんな顔を。溢れる感情を飲み込むように食事を続ける。結華もそれに合わせて食べ続けた。
 二人が食べ終わった頃に、突如シルフが現れてユウヤの頭の上に乗っかった。
「お、おっ!? 急になんだよ。ちょ、上に乗っかるなって!」
 シルフはユウヤを引っ張っている。ユウヤには、その顔が「そんな顔しないでよ」と言っているように見えた。
「……オレ達がしんみりとしてるから、心配してきてくれたのか? ……ありがとな」
 そして二人の様子を見ていた結華は自らの持つ風のエレメントに異変が起きていることに気づく。
「……契約が戻ってる!?」
 なんと、ユウヤとシルフが契約して光を失ったはずの宝石が再び輝いているのだ。結華は咄嗟にシルフを見る。シルフはユウヤの頭の上で視線が合ったことに気づくとふっと微笑んだ。
「……ありがとう」


 そして他の猟兵たちも食事を終える。
「ごちそうさま」
「ごちそうさま、でした」
「完食したよー! これで口の中元通りー」
 空っぽになったプレートを見て三人の生徒が目を輝かせて零零壱号を見ていた。その視線に零零壱号はドヤ顔で答える。

「さて、そろそろ行くか……って引っ張んなって!」
 シルフに急かされるユウヤの後を追おうとする結華。ふと、誰かに呼びかけられたような気がした。振り返るとそこには誰もいない。でも、確かに聞こえたのだ。

 「ありがとう」と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月28日
宿敵 『紫炎の少女』 を撃破!


挿絵イラスト