花粉死すべし、慈悲は無い
●UDC-P現る
「皆様ご足労いただきありがとうございます。UDC機関より調査協力の依頼です。」
UDC機関の制服に身を包んだドラゴニアンのエージェント、冬島・則子(竜神の婿殿・f42625)が依頼書を手に話を始めた。
「今回、グリモアが『UDC-P』の存在を捉えました。皆様には現場に赴いていただき、『UDC-P』の確保を行ってもらいたいのです。」
『UDC-P』とは『UnDefind Creatur-Peace』の略で、何らかの要因でオブリビオンとしての「破壊の意志」を持たなかったUDC怪物の総称だ。かつてはシャーマンズゴーストがこの名で呼ばれていたこともあった。UDC機関では猟兵たちの協力を得て、UDC-Pの研究が進められているのである。
グリモアが地図を映し出した。
「この山の中に『UDC-P』がいるものと思われますが、どうもこの山全体に認識阻害の結界が張られているらしく、グリモアをもってしても正確な場所まで特定することはできませんでした。そこで皆様にはこの山の中を歩き、『UDC-P』がいる場所を探してもらいたいのです。」
映像が切り替わる。
「その『UDC-P』はグリモアの予知内容から、同族の群れの中にいることが判明しています。下手に引き離そうとすると群れで抵抗してきますので、こちらも相応に戦う必要があります。」
そういえば、と別の猟兵から質問が飛ぶ。
「『UDC-P』と普通のUDC怪物はどう見分ければいいの?」
「それですが、現地に行けば一発で分かります。」
なにやら複雑そうな顔の則子。一体グリモアで何を見たのだろうか。
●焼く訳にもいかない
「確保した『UDC-P』は|こちら《UDC機関》で保護と調査を行うのですが、それに先立って皆様には対処マニュアルの作成をお願いします。というのも、UDC-Pは保護するにあたって何らかの難点を抱えており、猟兵ならともかく一般人には危険な存在です。もし対処マニュアルの作成に不安があるという方がいましたら、調査担当者を現地に派遣しますので協力してもらってください。可能であれば私も現地に向かいます。」
ここまで説明を終えた則子だったが、依頼書の一文を見て表情が険しくなる。
「あと、山火事を起こすと本当に面倒な事態になるので、炎系ユーベルコードの使用はお控えください。」
その言葉に何かを察する一部の猟兵。「私有地か……。」との声も聞こえる。
「それでは皆様、『UDC-P』の確保と対処マニュアルの作成のほど、よろしくお願いします。」
流れる水のようなグリモアが輝いた。
武炎鉄
こんにちわ、武炎鉄です。24作目の今回はちょっと懐かしめのシナリオフレームで遊んでみようということで、『UDC-P』保護シナリオです。お察しかもしれませんが、今回基本的に出オチです。
●第1章は山中を探索して『UDC-P』の居場所を探します。
●現地には認識阻害の結界が張られており、くしゃみや鼻水、目の痒みといった症状が出ます。対策を取りましょう。
●第2章はUDC怪物の群れの中にいる『UDC-P』を確保します。詳細は断章にて。
●第3章は『UDC-P対処マニュアル』の作成を行います。詳細は断章にて。
●第3章のみ、お声がけいただければ則子が同行します。
●その他連絡事項はタグでお知らせします。
第1章 冒険
『認識阻害の結界を打破せよ!』
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POW : ひたすら歩き回って探す
SPD : 違和感や不自然な点を見つける
WIZ : 魔術や魔法で隠された真実を暴く
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●黄色い粉の結界
グリモアの力によって、山中へと転移した猟兵たちはにわかに信じがたい光景を見た。大気中に浮かぶ黄色い粉末が遥か彼方まで広がり、視界を塞いでいるのだ。そして襲い掛かる目の痒み、鼻水、くしゃみのコンボ。機械系種族の猟兵には可動部に黄色い粉末が入り込み、滑らかな可動を妨げている。
グリモアが予知していた『認識阻害の結界』とはこれなのだろうか。だとしたら『認識阻害』の意味が変わってくるではないか。心の中でツッコミを入れながら、猟兵たちは山中を探索するのだった。
ネフラ・ノーヴァ
【宝石とワニ】
燃やすのが駄目なら切り倒そうか。ああ、駄目なのはわかっている、面倒そうだから言っただけだ。
風そのものを操る技があれば手っ取り早いが、そうだね、任意に燃焼させる葬送黒血で周囲の空間だけ燃焼させて認識阻害を払いのけようか。
牙印のマスク姿はホラー作品のキラーのようだね。サバイバーを見つけたら吊り上げるのかな?フフ。
山中であれば動物がいる。怪物からは逃れて来るだろうから、その元の方向を探ってみれば目当てに辿りつけよう。
黒田・牙印
「宝石とワニ」
・クシャミとかはないんだが、この季節になるとどうしても目と喉がなぁ……で、今回のは山? 私有地? あー、それってもしかしなくても杉山か?
ええい、請けたからには覚悟を決めるかぁ。
・認識阻害の結界って、要するに高濃度花粉だよな? そうなんだな!?
そうすっと、デカイ布を重ねてワニ用マスクを作って、ゴーグルも付けて……うむ、これで完璧。少し息苦しいのは仕方ない。
あと、目薬とうがい用の水もしっかり用意してネフラと杉山散策としゃれこむか。
ネフラ。そんな不審者を見るような目で笑わないでくれ……
・さて、お目当てのUDCーPはどこにいるのかねぇ? 山道から外れる足跡とかがないか注意して歩き回るか。
●ワニと宝石と花粉
「クシャミとかはないんだが、この季節になるとどうしても目と喉がなぁ……。」
そうぼやくのは黒田・牙印(黒ワニ・f31321)。これの発言だけ見ると、どこにでもいる花粉症の人のように聞こえるが、彼はワニのバイオモンスターである。流石のバイオモンスターも、花粉には弱かったようだ。
「燃やすのが駄目なら切り倒そうか。」
ネフラ・ノーヴァ(羊脂玉のクリスタリアン・f04313)が牙印に提案する。
「おい、止めとけって言われただろ?」
「ああ、駄目なのはわかっている、面倒そうだから言っただけだ。」
さて、グリモア猟兵の転移によって現地へ到着した2人。牙印は吻を覆う巨大なマスクに特注のゴーグルを装備し、さながらホラー映画の怪物のような姿だ。少し息苦しいのは要改良だろう。
山の中は鬱蒼とした森とそこに漂う黄色い粉末が広がっており、どこか薄暗い。
「うわぁ、杉山だぁ……。」
周囲の木々を見渡した牙印が絶望的な顔で呟く。
「大気を直接操れるならいいんだがな。」
上空に浮かぶ花粉を見ながら、ネフラが何やら考える。とはいえ、ネフラも牙印もそのような装備やユーベルコードは持ち合わせていない。
「この周りだけでも花粉を無効化できればいいんだが。」
牙印の一言にネフラが閃いた。
「確か今回、炎系ユーベルコードの使用を控えて欲しい理由は『山火事の可能性がある』だったろう?なら山火事を起こさないよう、この花粉だけを燃やせばいい。」
ネフラは指先に小さな傷を付けると、流れ出た『黒い血』をパッと振りまいた。そして地面に落ちる前に大気中に浮かぶ花粉だけを燃やす。燃焼することで発生した空気の流れにより、花粉が2人から遠ざかる。これはネフラのユーベルコード『|葬送黒血《ブラック・ブラッド・ブレイズ》』の応用だ。
「おっ、大分楽になった!サンキュー!」
喜ぶ牙印を見て、ネフラもまた少し笑った。
「さて、お目当てのUDC-Pはどこにいるのかねぇ?」
歩けども歩けども杉の木だらけの山中を注意深く観察しながら奥へと進む2人。
「見ろ、動物の痕跡だ。」
ネフラが見つけたのは、樹皮が不自然な形で剥ぎ取られた杉の木だ。所謂『熊剥ぎ』『鹿剥ぎ』と呼ばれるもので、周囲には同様の木が複数ある。
下を向いた牙印が足跡らしきものを見つけた。形から鹿のものだと思われるが、そこまで詳しくないので正確な種類はよく分からない。ネフラはそれよりも足跡の方向に注目した。
「この鹿、どうやら東側から逃げてきたようだな。」
「ということは、東側にUDC-Pがいる可能性が高いと?」
「そうなるだろうな。」
牙印が何かを閃いたようだ。
「ネフラ、ちょっとゴメンよ!」
いきなりネフラを抱きかかえた牙印が尾をぐるぐると回転させ始めた。
「筋肉と愛に不可能なし!」
尾の回転で空へと飛びあがる牙印。ユーベルコードの力に不可能は無いのだろうが、空を飛ぶワニというのはいささか信じ難いものがある。目撃者がいなかったのは幸か不幸か。恐らく幸運の部類だろう。
東の方角へ飛翔する2人は、山の一角に不自然な場所を見つけた。奥地にも関わらずそこだけ木が生えていないのだ。ここに『UDC-P』がいるのでは?2人は確認の為、降り立つことにした。
大成功
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ノアール・ブランシュ
へぷしょーい!花粉やないかい。
もー、それならそうと言ってよぉ!予知でコレ見えてたんやないのー!?言ってくれりゃマスクにゴーグルにと対花粉装備持ってきたのにさぁ。
何故持ってるかは聞くんじゃないぞ☆
転送されてから文句を言っても変わらんので、仕方ないからハンカチをマスク代わりにしながら探索してく。んー、空飛ぶ乗り物をゴドゲ(GGO)で買っておくんやったな~。ゴドゲ内でもあると便利さダンチなんやけど、冒険者は歩くのも経験て思ってたからなぁ、と今更後悔。
ロゼに喋ってもらう余裕もない(くしゃみするロゼは解釈違いやし)。マジへこむ~。
地道にUDC怪物の集団探そ。一見で判別つくなら集団見つけりゃ「勝ち」よな。
●花粉は電子を超えて
一方その頃。
「へぷしょーい!」
山中に派手なくしゃみがこだまする。声の主であるノアール・ブランシュ(ロゼといっしょ・f43525)はしょぼしょとした目をさすりながら一人ぼやく。
「花粉やないかい。」
プンプンといった様子でグリモア猟兵に対する不満をぼやくノアール。
「もー、それならそうと言ってよぉ!予知でコレ見えてたんやないのー!?言ってくれりゃマスクにゴーグルにと対花粉装備持ってきたのにさぁ。」
恐らく彼女の本体が花粉症なのだろう。|GGO《ゴッドゲームオンライン》のゲームプレイヤーは本来なら肉体を電子的なもので構築されており、花粉症とは無縁のはずである。それにそもそもデジタルデータで植物を生成しているGGOに花粉は存在しない。なので花粉症が存在するなら|統制機構《コントロール》側の話だろう。
仕方がないので、ポケットに入っていたハンカチを口と鼻に当て、即席のマスク代わりにしながら山中を捜索する。だが、軽装にも近いノアールの服装は案の定山歩きには不便であった。
「んー、空飛ぶ乗り物を|ゴドゲ《GGO》で買っておくんやったな~。」
広大なマップを持つGGOでは、ライドドラゴンのような騎獣から『お前これブルーアルカディアから仕入れただろ』と疑いたくなるようなセイルフローターまで、多様な『空飛ぶ乗り物』が販売されている。また、フェニックスのようにクエスト経由で入手できるものや、果ては極北の大天使のように『本来は乗れない筈だが、騎乗可能なバグが存在する』といった変わり種も存在している。
予算と機会さえあればいくらでも入手するチャンスはあったのだが、ノアールは『冒険者は歩くのも経験』ということで入手していなかったのだ。
ノアールがふと何かを思いついた。自身にユーベルコード『病魔召喚』を掛けてみたのだ。
「なる~。」
現れたのは巨大な蜜蜂の姿をした病魔だ。これならもしかして乗れるかもしれない。襲い掛かる病魔を早速ライトニングロッドで殴るノアール。
「とりま、あーしを乗せて飛んでくんない?」
しおらしくなった病魔が背中にノアールを乗せ、舞い上がった。暴力で病魔を従えるというのもなかなかぶっ飛んだ発想だが、彼女にはそれを具現化する能力と実力がある。
「ん?」
山の東側奥地に、やけに開けた部分がある。しかも花粉の濃度が一際濃い。もしかしたらここに『UDC-P』がいるのかもしれない。
「あっちに飛んで!」
ノアール(とロゼ)を乗せた蜜蜂型病魔は大人しく宿主の指示に従うのであった。
大成功
🔵🔵🔵
家綿・衣更着
アドリブ歓迎
衣更着、ただいま参じょ…へっくしょん!
(マフラーで鼻と口を隠し、忍者ゴーグル装備、UC『あやかしメダル「打綿狸の衣更着」』での結界術に、ついでに忍者バリアバングルも展開)
うう、目も鼻もきついっす。でも助けるべきUDC-Pがいるなら頑張るっすよ!
視界も悪いし山火事も怖いし…天候操作で雨降らせて花粉落ちないっすかね?
小型ニンジャタヌキロボットで遠隔偵察しつつ、自分も足で調査。
何かありそうなら化術で花粉に隠れるように迷彩し、打綿狸の忍者綿ブーツを使って空中浮遊、ゴーグルで視野拡大や熱視野を切り替えて空から観察して索敵っす。
この花粉がUDC由来なら、なんとしてもぶちのめさないとっすね
●帰ったらクリーニング必須
「衣更着、ただいま参じょ…へっくしょん!」
誰もいない山中に、家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)のくしゃみがこだまする。転送されていきなりこれというところに、花粉の強さを思い知らされる衣更着であった。
さて気を取り直し、マスクの代わりにマフラー、目には忍者ゴーグルを装着し、更にはその上からユーベルコードの力を付与したあやかしメダルと忍者バリアバングルで結界を張るという徹底した防御を施した衣更着。だが、それでも多少の花粉は貫通してくるらしい。
「うう、目も鼻もきついっす。でも助けるべきUDC-Pがいるなら頑張るっすよ!」
『小型ニンジャタヌキロボット』を先行させ、周囲の様子を調査させる。大きく成長した杉の木は地表への直射日光を遮り、大量の花粉も相まって昼間だというのに薄暗い。まさに視界不良である。
「視界も悪いし山火事も怖いっすね……。」
この状況で山火事が発生した場合、ただでさえ視界不良な所に大量の煙が発生してしまう。そうなれば猟兵と言えど無事ではいられない。だが、ここで衣更着があることを閃いた。
「火が駄目なら水はどうっすかね?」
護符を空に放ち、雨雲に変化させる。最初はポツポツと、時間が経つにつれ土砂降りの雨が地上に降り注ぐ。そして雨が止む頃には山中も大分洗い流されたのか、空中を漂う花粉も落ち着いたように見えた。
山中を慣れた足取りで進む衣更着。と、物音が聞こえたので咄嗟に化術で迷彩の如く周囲の景色に溶け込み、様子をうかがう。現れたのは野生の鹿だ。鹿は角を杉の木に擦り付け、また山中へと去っていった。鹿が去った後の杉の木を見てみると、樹皮が剥がれている。
「あー『鹿剥ぎ』っすね。あれ?この辺に鹿が住んでいるということは、もしかしたら……?」
衣更着は『小型ニンジャタヌキロボット』に鹿を追跡させると、自身は駆け上がるように空中を飛び、空から追跡を始めた。
忍者ゴーグルに映し出された映像を観測しながら、地上を見るとあることに気付いた。
「ん?あの場所、何か不自然っすね?」
山の東側奥地に、妙に開けた一角がある。鹿はどうやらその近辺に向かっているようだ。忍者ゴーグルの熱源探知機能を使いその場所を見てみると、複数の熱源反応が確認できた。もしやこれがUDC怪物の群れなのだろうか?
「この花粉がUDC由来なら、なんとしてもぶちのめさないとっすね!」
物騒なことを言いつつ、衣更着は空を駆けるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『春先の悪魔・シダーズ』
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POW : ミッション・ゼロエミッション
【青々とした見事な枝振り】を披露した指定の全対象に【カーボンオフの観点からこの木を保護したい】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD : ヘイフィーバー・フォーエバー
【全ての枝】から、戦場全体に「敵味方を識別する【大量のスギ花粉】」を放ち、ダメージと【花粉症】の状態異常を与える。
WIZ : お前も花粉症にしてやろうか
【あちこちの枝】を最大でレベルmまで伸ばして対象1体を捕縛し、【花粉症の諸症状】による汚染を与え続ける。
イラスト:みささぎ かなめ
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●『UDC-P』の憂鬱
山中の不自然に開けた一角へと辿り着いた猟兵たち。彼らはそこにUDC怪物の群れを確認した。杉の木のようなUDC怪物が動くと、ワサワサと黄色い花粉がその身体から溢れ出す。
「へーっくしゅん!」
山中に大きなくしゃみが響き渡る。声のする方を見れば、1体のUDC怪物がくしゃみを連発していた。鼻がないのに鼻水らしき液体が噴出したり、目を痒そうに擦ったりと、典型的な花粉症を発症している。あれが『UDC-P』なのだろう。
群れの仲間たちが不安げに『UDC-P』の体をさすったりしているが、彼らの出す花粉、そして自分自身から出される花粉が『UDC-P』を苦しめている。これは一刻も早い救助が必要だ。
猟兵たちの気配を感じ取ったUDC怪物が一斉に戦闘態勢に入った。彼らには申し訳ないが『UDC-P』を救い出すには戦うしかないのだ。
家綿・衣更着
アドリブ歓迎
|UDC怪物《アンディファインド・クリーチャー》。
|渾沌の諸相《undefined》。
渾沌とはすなわち骸の海。
「連想的にはUDC怪物って「過去から作られた不定の怪物」っすけど、いいのと悪いのがいるのはなんなのやらっす。
…うん、仲間思いっぽいからって現実逃避しちゃダメっすね。世界を滅ぼすオブリビオンは倒さないとっす」
ユーベルコード『幻影百鬼夜行』で敵を視界不良にしつつUDC-Pや自分を治療。
妖怪煙に隠れつつ、どろんはっぱを化術で大きなのこぎりに変えて敵をなぎはらい。
「(UDC-Pに)敵味方の識別から考えても、他の連中から敵認定されてるっすよ!
保護するからこっちおいでっす!」
●渾沌の山
『undefined』即ち『渾沌の諸相』。故にUDC怪物はしばしば『渾沌の怪物』と定義される。そしてその『渾沌』には善も悪も内包されている。
「連想的にはUDC怪物って『過去から作られた不定の怪物』っすけど、いいのと悪いのがいるのはなんなのやらっす。」
首を傾げる衣更着。とはいえ、シャーマンズゴーストやケルベロスディバイドにおけるビハインド、サイキックハーツにおける一部のダークネスといったオブリビオンに分類されていた種族が猟兵となったり、オブリビオンマシンを筆頭に猟兵に使役されているオブリビオンがいたりと、確かに『純粋な世界の敵』と呼べぬ者がいるのも事実である。
そして、目の前でくしゃみを連発する『UDC-P』もまた『世界の敵』とは呼び難い存在ではないのか。
「…うん、仲間思いっぽいからって現実逃避しちゃダメっすね。世界を滅ぼすオブリビオンは倒さないとっす。」
花粉にやられかけて思考がトリップしていた衣更着だったが、とりあえず我に返ると妖怪煙を周囲に放ち、UDC怪物の視界を塞いだ。そして忍者ゴーグルを熱源探知モードに切り替えると『UDC-P』を保護すべく一目散に走りだした。
妖怪煙からは幻の百鬼夜行が溢れ出し、UDC怪物へと向かっていく。
「シダー!」
「スギー!」
一方のUDC怪物たちは枝という枝から花粉を出し、百鬼夜行に向かって放つ。それは敵味方を識別する花粉であったが、衣更着や百鬼夜行のみならず同族であるはずの『UDC-P』にも襲い掛かる。
衣更着は頭の上のどろんはっぱを手に取ると、妖力を込め巨大な鋸へと変化させる。
「それっ!」
鋸を振るい、UDC怪物をなぎ払う。綺麗に切断された胴体からは年輪が現れた。……このUDC怪物、やっぱり木なのでは?
「へっくしょん!」
くしゃみの止まらない『UDC-P』だったが、妖怪煙の中から出現したティッシュを持った豆狸たちの手当により、花粉症の症状は幾分か改善されていた。
「あんた他の連中から敵認定されてるっすよ!保護するからこっちおいでっす!」
煙の向こうから手を差し伸べる衣更着。猟兵の言葉を信じるべきか、『UDC-P』の心は揺れていた。
大成功
🔵🔵🔵
ノアール・ブランシュ
いい奴らじゃん。
UDC怪物とかオブリビオンとか、居るだけで害になるというけれど
仲間想いは出来るだけ傷つけたくないなぁ。
んー…
よっし、駄目元で説得するかぁ!
やっほー、ノアールちゃんだぞ。
くしゃみしたり調子悪そうな仲間が心配なんやね。あーし、仲間想いは好きやから戦いたくないんよ、話を聞いてくれん?
その子(UDC-P)を連れて行かせてもらえんか。みんなに反応しちゃう体質みたいやから悲しいけどみんなと引き離さないとあかんねん。
理由を説明しても戦いを止めないというなら応戦するわぁ…
洗脳して無理やり言うこと聞かすのも選択肢に入れる!
病人を大切に思う友達って病人をとても勇気づけるから
極力奪いたくないんよね…
●友と呼ぶには悲しくて
猟兵から『UDC-P』を守るべく奮戦するUDC怪物たち。その様子を木の影から見ていたノアールはポツリと呟いた。
「いい奴らじゃん。」
形はどうあれ、仲間を守ろうという強い意思を感じられる。もしかしたら『大切な存在を守りたい』という願いはオブリビオンであれ、UDC怪物であれ本当の所は猟兵と大差ないのかもしれない。
「んー…よっし、駄目元で説得するかぁ!」
ダメで元々、運よく通じればそれに越したことはない。ノアールは木の影から躍り出ると、UDC怪物たちに呼びかけた。
「やっほー、ノアールちゃんだぞ。」
声に反応し、一斉に振り向くUDC怪物たち。それに向かってノアールは話を続ける。
「調子悪そうな仲間が心配なんやね。あーし、仲間想いは好きやから戦いたくないんよ、話を聞いてくれん?」
UDC怪物たちは顔を見合わせ何かを話し始めた。
「スギー?」
「シダシダ!」
どうやら『話だけは聞いてみよう』ということになったらしい。それに合わせ、一時的にUDC怪物たちの花粉の放射が止まる。彼らに守られるように奥に佇む『UDC-P』が不安げな顔でノアールを見守っている。
「その子を連れて行かせてもらえんか?」
一瞬、『嫌だ』と言いたげな顔に転じたUDC怪物たちだが、それでもノアールは言葉を続ける。
「みんなの花粉に反応しちゃう体質みたいやから、悲しいけどみんなと引き離さないとあかんねん。」
「スギィ……。」
「シダー……。」
UDC怪物たちも分かってはいるのだ。あの子が苦しんでいるのは自分たちの花粉のせいなのだと。今までずっとこの山の中でひっそりと暮らしていたのに、今年になっていきなり苦しみだしたのには何か理由があるはずなのだと。だが、離れ離れで暮らすことも耐えられない。仲間の絆とはそれほど固いのだ。
「スギー!」
1本のUDC怪物が枝をノアールに伸ばし、彼女を捕縛しようとする。
「コメン!」
ノアールは自身の背後にグリード・サインを展開すると、そこからカウンターの如く黒の光線を放った。黒の光線の直撃を受けたUDC怪物の枝がだらりと落ちる。
「シダダー……。」
「うん、病人を大切に思う友達って病人をとても勇気づけるから、極力奪いたくないんよね……。」
木の幹を撫でながら語り掛けるノアールを見ていた『UDC-P』は考えた。『自分が猟兵と共にここから出ていくことで、群れを守れるのではないか』と。
大成功
🔵🔵🔵
ネフラ・ノーヴァ
【宝石とワニ】
ふむ、花粉症のUDC-Pか。やはり燃やしてやった方が幸せなのではないかな。
ひとまず救出するとして、樹木相手に刺突は有効打とならない。
そして植物型の強さは大地と繋がっていてこそ。なればUC激流血海で奴らの足元を崩すとしよう。
血まみれとなれば花粉の飛散も収まり、牙印も存分に動き回れるようになるだろう。
血の海地獄のワニ付きだ、巻き込んだUDC-Pの救出と暴れまわりは任せよう。
カーボンオフといえば、化石として二酸化炭素を固定してしまうのは如何だろう。
このまま地中に沈めて永遠に保護するのがの最善だと思わないか?
黒田・牙印
【宝石とワニ】
あー、うん。俺も燃やすのが一番だとは思うんだ。でもなぁ……俺らと同じく花粉にやられてる子を巻き添えにしそうでなぁ。
ということで、次善の策として伐採&埋葬処理ということで。
ネフラが地面を血の海にしてくれるようだから、俺はそこを泳いで先ずはUDC-Pの方ヘ。この子も他のスギUDCと同じように足元が緩んで大変そうだが、そこは我慢してもらって担いで血の海の効果範囲へ運んでおこう。
さあ、後は伐採タイムだ。とはいえ、斧錨で力任せに叩き切って血の海に沈めていくだけだがな!
血の海内のを伐採し終わったら一度海から上がって状況確認。
必要ならUDC-Pをまた担いで運ぶとしようかね。
●地から離れ往く
「ふむ、花粉症の『UDC-P』か。」
上空から事態の推移を見ていたネフラが納得した表情を浮かべる。
「やはり燃やしてやった方が幸せなのではないかな。」
「あー、うん。俺も燃やすのが一番だとは思うんだ。」
ネフラを抱きかかえている牙印が純粋にイエスと言えぬ顔をして地上を見た。
「でもなぁ……俺らと同じく花粉にやられてる子を巻き添えにしそうでなぁ。」
仲間と猟兵の間で揺れている『UDC-P』の心情を憚ったのか、牙印が次善策を口にした。
「だから伐採して埋めるのがいいんじゃないかな。埋めたらいい感じの肥料になりそうだし。」
案を聞いたネフラも一理あるといった風情で地上を見た。
「確かに樹木相手に刺突は有効打とならない。そして植物型の強さは大地と繋がっていてこそ。」
『血棘の刺剣』を地上に向け構え、ユーベルコードの力を籠める。
「さあ、血に溺れ沈むがいい……!」
赤黒い、血の色のような大渦が地面に向かって放たれる。
「スギー!?」
「シダー!?」
上空から飛来した大渦がUDC怪物ごと地面に直撃する。それは周囲一帯の地面を血の海――比喩ではなく、文字通り液体としての血に満たされた海――に作り替えてしまうと、底無し沼のようにUDC怪物たちを沈み込ませた。
「よっと!」
牙印はネフラが血の海に巻き込まれないよう器用に木の上に乗せると、自身は血の海へと飛び込んだ。
「どこだ!」
血の海を泳ぎ『UDC-P』の姿を探す牙印。と、くしゃみが聞こえた。その声を頼りに全速力で泳ぐと、そこには仲間と共に、血の海に沈むまいと耐える『UDC-P』の姿があった。
「こっちへ来るんだ!」
『UDC-P』は少しの間、悩むそぶりを見せたが何かを決意したように仲間のUDC怪物に話しかけた。UDC怪物たちは驚き、そして悲しげな顔をすると、理解したように頷き、何かを惜しむように枝を振った。『UDC-P』もまた、枝を振り返すと牙印の背中に乗った。
「ああ、お別れか。」
UDC怪物の意外な側面を見た牙印は血の海のほとりに『UDC-P』を下ろすと、優しく語り掛けた。
「お前、ちょっと後ろ向いてな。何があっても振り向くんじゃないぞ。」
血の海に戻り『鋼の錨鎖』を振り回して、介錯する様に怪力を振るいUDC怪物たちを伐採していく牙印。そして『UDC-P』の元へと降り立ったネフラは『UDC-P』に問われた。
「スギー?」
仲間の様子が気になるのだろうか、そう感じ取ったネフラは答えた。
「ああ、また会えるさ。遠い未来で。」
それはきっと、樹木が化石に転じるほどの遠い未来の話なのだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『UDC-P対処マニュアル』
|
POW : UDC-Pの危険な難点に体力や気合、ユーベルコードで耐えながら対処法のヒントを探す
SPD : 超高速演算や鋭い観察眼によって、UDC-Pへの特性を導き出す
WIZ : UDC-Pと出来得る限りのコミュニケーションを図り、情報を集積する
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●『UDC-P』を移送せよ
『UDC-P』を連れ、UDC機関との合流地点へと向かった猟兵たち。そこには既に則子と輸送を担当するUDCエージェントやエンジニアたち、そして対UDC怪物用輸送車が待機していた。
「皆様お疲れ様です。無事『UDC-P』の確保に成功したようですね。ありがとうございます。」
猟兵たちをねぎらう則子の隣に、防護服を着こんだ人物が立っていた。
「申し遅れました。私本件の担当となりました、主任研究員の杉山と申します。」
身分証明書を提示し、頭を下げる杉山研究員。
「それでは支部への移送前に対処マニュアルの作成を行いましょう。」
家綿・衣更着
アドリブ歓迎
「改めて。おいらは狸妖怪の衣更着と申しまっす!」
UC『友達妖怪召喚』でユニコーンを呼び花粉症の治療っす
葉っぱに光合成を邪魔せず空気穴をあけた透明なビニールの袋をつけて花粉の飛散を防止。袋にたまった花粉は職員が定期的に掃除して枝の負担にならない方法を検討っす。
次にご飯や寝床について、植物と同じで杉を育てるような土壌と水と日光があればいいのか、それとは別にご飯食べたりするのか、寝る時は立ったままでいいのか、過ごしやすい気温など細かく確認っす。
一人だと寂しいだろうし新しい住処と元いた山にカメラ&モニターを設置し仲間と会話できないか、それを介して山側のUDCもコントロールできないか検討っす
黒田・牙印
「宝石とワニ」
・方針:WIZ
・一先ずは確保成功、と。お仲間のことはすまなかったな。
で、UDC-Pの対処マニュアルねぇ……こうしてコミュニケーションは取れるんだし、ちゃんとした名前も考えた方がいいか。
「スギコ」とかどうだろうかな、安直すぎるか?
・で、今後だけど、それこそコイツに危害を加えなきゃどこかの里山か植物園で詳細を観察しつつ人間との交流もいけるんじゃなかろうか。
コイツをどうこう、というよりは関わる人間が「とにかく危害を加えない。友好的に接して協力をしていく」がマニュアルの根幹になるだろうよ。
・さて、と。お前さん、ここでお別れだ。人間と仲良くやるんだぜ?
ネフラ・ノーヴァ
「宝石とワニ」
時に犠牲は避け得ぬもの。なれば残されたものは最大限活かすべきだろう。
ああ、名前を付けた方が番号などより呼びやすいね。
自身の花粉でも苦しんでしまうとなれば適切な剪定が必要だろう。
人の手を頼める植物園が保全場所に最適ではないかな。
仲間がいなければ寂しさに状態を悪くしてしまうかもしれないから、
動物なり近くに置いてやるのも良いだろう。
ところで杉山研究員は大層な防護服に身を包んでいるが、花粉症かな?
念のため顔を検めさせてもらっても良いだろうか。
うむ、大丈夫かな。UDC-Pに問題無きよう、お任せしよう。
●『UDC-P』対処マニュアル作成会議
『UDC-P』の周囲に集まった猟兵たちと則子、杉山主任研究員らのUDC機関職員。
「改めて。おいらは狸妖怪の衣更着と申しまっす!」
「こちらも改めまして、本件を担当いたします主任研究員の杉山と申します。」
「私はネフラ・ノーヴァ。こちらは黒田・牙印だ。よろしく頼む。」
簡単な自己紹介を済ませた後、まず口火を切ったのはネフラだ。
「杉山研究員、念のため顔を検めさせてもらっても良いだろうか。」
「分かりました。少々お待ちください。」
杉山は一度待機車両に戻ると、より顔が見えやすいタイプの防護服に着替えてきた。
「これでよろしいでしょうか?」
「ありがとう。手間を掛けさせてすまない。」
さて、対処マニュアルの作成は『UDC-P』発見と確保までの経緯を杉山主任研究員に報告するところから始まった。
「UDC怪物が同族である『UDC-P』に対し、友好的な行動をとる……過去の報告書では見られなかった事例ですね。」
報告の内容を聞いた則子が唸る。
「前例のない事案が発生したということは、何かしらの変化が起きた可能性があります。後日生息していた場所に職員を派遣し、調査を行いましょう。」
「それならついでに元居た場所にカメラとモニターを設置して、生き残りのUDC怪物と話ができるようにできないっすかね?それで山側のUDC怪物の監視と制御もできれば一石二鳥っす。」
杉山の案に衣更着が乗る。
「それは検討する価値がありますね。」
「しかし、あの状況で生き残ったUDC怪物はいたのだろうか?我々が戦った限りでは全滅したと思うのだが。」
ネフラが率直な疑問を伝える。
「山の違う場所に生き残りがいる可能性は否定できませんね。こちらも調査内容に含めましょう。」
則子がフォローに入った。
「ところでさ、コイツに名前付けないか?いつまでも『UDC-P』じゃ味気ないだろ?」
牙印の提案に一同が納得する。
「それもそうっすね。皆さん何かいい案は無いっすか?」
「この手の名づけは不得手でな……。」
ネフラが渋い顔を浮かべた。
「うーん……。」
杉山と則子の目線が宙を泳ぐ。
「『スギコ』ってのはどうだ?」
「そのまま過ぎないっすか?」
牙印の安直なネーミングに思わず突っ込む衣更着だったが、肝心の『UDC-P』は嬉しそうに体をゆすっていた。周囲に花粉が飛び散る。
「スギ~!」
「おっ、気に入ったか。」
続いての課題は施設へ移送するまでの花粉対策だ。輸送車両には一応換気設備が設けられているとはいえ、処理能力には限界がある。
「ここはシンプルに力業でいくっす!」
衣更着が護符を化術で巨大な透明ビニール袋に変化させ、スギコの上に被せた。
「なるほど、これなら光を遮らずスギコの様子も見える。それでいて花粉を防ぐことも可能だ。」
感心した様子のネフラ。だが牙印には気になる点があったようだ。
「でもスギコの花粉症はどうなる?余計酷くならないか?」
「そこも対策済みっす!出てこいユニコーン!」
妖怪煙の中からユニコーンが現れた。今回は負傷者運搬用の馬車を置いてきたようだ。ユニコーンは早速角でビニール袋に空気穴を開けると、そこから治癒の光をスギコに向けて放った。
「スギスギ~♪」
スギコの花粉症が大分和らいだようで、嬉しそうに体を揺らす。
「そういえば、スギコの輸送先となる施設はどんなところなんだ?」
ネフラが杉山に尋ねた。
「植物系UDC怪物やオブジェクトの研究を専門に行っている施設です。温室や試験農園などが完備されていまして、私含めて植物の知識と栽培技術を兼ね備えた職員が大勢在籍しています。」
「ってことは、枝を剪定してやることもできるか?」
大きく伸びた枝を見ながら、牙印が杉山に聞いた。
「スギコ本人…この場合『本樹』と呼ぶのが適切でしょうか。とにかく、スギコの了承が下りれば可能です。我々としてもUDC怪物の肉体サンプルが入手できれば、分析して何かしらの手を打つことができるかもしれません。」
そのためにはスギコと意思疎通できるかがカギですが、と杉山は付け加えた。
「俺たちが接した限りだと、こっちが言っていることは理解しているっぽいな。」
「うむ、言葉は話せないが身振り手振りで意思疎通はできるようだ。」
「後は食料の問題っすね。スギコがいた辺りは野生のシカがいたっすけど、あれがご飯だったっすか……?」
ブンブンと体を横に揺らすスギコ。どうやら否定の意思を示しているようだ。
「となると、やはり光合成でしょうか。」
則子の見解に、今度は体を縦に揺らすスギコ。今度は肯定の意思を示しているようだ。
「やっぱり木なんですね。」
杉山がポツリと呟いた。
無事輸送車両への搬入が完了し、スギコは杉山と共に研究施設へ向かうことになった。
「皆様ありがとうございました。いずれ機会があれば、またご協力願うことがあるかもしれません。その時は改めて宜しくお願いします。」
スギコも別れを惜しむように、猟兵たちに向かって枝を振る。
「またなー!」
「バイバイっす!」
「また会おう!」
猟兵たちもまた、スギコに向かって手を振っていた。それは輸送車両が見えなくなるまで続いた。
遠くの空に、名残のような花粉が漂っていた。
大成功
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