Starry sky Christmas
氷月・望(Villain Carminus・f16824)は、とてもよく知っているのだ。
共に在る唯一無二の|共犯者《ヴィラン》であり、恋人である彼が。
何でも、例えどんなものを着たって、最高に似合うということを。
そして月待・楪(Villan・Twilight・f16731)も、それはもうよくわかっている。
隣を許せる唯一の共犯者で恋人である彼が、たまにアホであるし、時折自分が驚くことをしてくるということを。
……いや、楪も一応知ってはいたのだ。
くるりと首に巻いている、黒にワンポイントの赤い狐の刺繍がされたマフラーが、望の赤に黒猫の刺繍がされたものとお揃いであることは。
だがそれは、クリスマスマーケットにデートに赴いた当日であった。
互いの格好を見た瞬間、楪は思わずまず、瞳を大きく見開いてしまって。
それから望の顔を見れば、その目論見にようやく気付いて。
驚きと恥ずかしさから顔が少し熱くなる感覚をおぼえながらも、ぷいと思わずそっぽを向いてしまう。
そう――望は今日のデートのために、こっそりと計画していたのである。
マフラーだけでなくコートまで、ふたり同じデザインの。
お揃い恋人コーデでの、クリスマスデートを!
そんなふたりのコートは、色違いのダブルブレストコートで。
大き目のラペルと袖に通った太めのベルトが同じ色をした、洒落た色やデザイン。
ありふれたものではなく、そんなふと目につくようなコートだから尚のこと、お揃い感が協調されているようで、楪は恥ずかしくなってしまうし。
そんな楪とのお揃いコーデでのデートに、上機嫌な笑顔をにこにこ宿す望は。
改めて、まじまじと彼を見つめつつも思うのだった。
――やはり何を着ても最高に似合う、って。
愛おしさ余って、コートでも猫耳でも、なんだって似合うと思っているくらいである。
でも、そう改めて見つめる格好良い恋人の姿を見れば、惚れ直すし。
予想外のお揃いと知れば、驚いて赤くなって、そわりと何気に落ち着かずそっぽを向いちゃうような、そんな反応が可愛いのだ。
今回のポイントは、マフラーのことを先に知らせておいたことがなかなかの策士ぶりで、楪の驚きに拍車をかけていて。
つまるところ――文句なしの、望のクリスマスサプライズ、大成功である!
楪にとっては完全に予想外の不意打ちで、まんまとしてやられたことに、さらに顔を赤くしてしまうし。ちらりとようやく彼へ視線へ向ければ、自分とお揃いコーデのその姿を見てまた妙に擽ったくなって、恥ずかしくなってしまうし。にこにこしているその顔はやはりアホではと思うのだけれど。
でも、予想外のお揃いに恥ずかしくなりながらも、クリスマスデートは勿論楽しみたいと思っている楪であるし。
楪を驚かせたかったからすごく満足している望だけれど、でも、それとクリスマスデートは話がまた別だから。
彼の手を取って、ぎゅっと指を絡めて、手と手を繋ぐ望と。
何気にしっかりぎゅぎゅっと、楪も彼と恋人繋ぎをしながらも。
いざ、デートに繰り出すのは、賑やかなクリスマスマーケット。
「……で? まずは何からするんだ?」
まだ顔が赤いまま、手を惹かれつつもそう訊ねる楪と。
彼がひとりで何かを選ぶことが苦手だということを知っている望は、くるりと周囲を見回して。
「やっぱりまずは、ド定番な感じのものを食べ歩きとか?」
「定番……? なんか人型のクッキーみたいなやつとかか?」
「そうそう、ゆずそれ! なんだっけ、レープクーヘン!」
というわけで、早速。
レープクーヘンを売っているヒュッテへと足を運んでみれば。
再び楪は、思わず瞳を瞬かせて顔を赤くしてしまう。
ずらりと屋台に並ぶのは、カラフルなハート型のレープクーヘンであったのだから。
サイズも色々あるが、中には直径30cmほどの巨大なものもあって。
「あっ、ゆず、見て! このハートのおっきいやつ、首にかけて歩いてる人もいる! ゆずにもこれ、絶対似合うと思……」
「嫌だが?」
即却下されて、一度は、デスヨネーと引き下がった望だけれど。
「このハートの中、何て書いてあるんだろ? 愛してる、大好き、だって!」
「もっと嫌だが? そんなにそれ首にかけたけりゃ、ひづがひとりでかけてろ」
「いやいや、ひとりでかけても寂しいだけだし!?」
「……ふたりならいいのか? お前は」
本当にアホでは、なんて改めて思いながらも。
でも、カラフルなハートのそれを、ちらり。
「…………まぁ食うだけなら、何のカタチでも変わんねーだろ」
ハートしかこの屋台にはないようだから、仕方なく楪もひとつ、手にしたけれど。
「! じゃあ、レープクーヘンをふたつ……あっ」
購入した瞬間、ばきっと秒で割れるハート。
「当たり前だろ、割らないと食えねーし」
「いや、そうだけど……」
そんな割れたハートを少し複雑な視線で見つつも、でもやっぱり望は思うのだった。
首にハートをかけてもゆずには似合うに違いないと、そう愛おしさ余りながら。
それから、見た目は少し恥ずかしくなるものの、味はとても美味しくて。
次に望が見つけてふと立ち寄ったのは、飲み物のヒュッテ。
「ゆずの分も買ってきた」
「ん、なかなか気が利く……って、またお揃いか?」
そんな望が手にふたつもっているのは、クリスマスマーケット定番の飲み物。
サンタブーツマグのグリューネルワイン。
「これ、かわい過ぎない? あ、嫌だった?」
「……別に嫌じゃねーし」
そして望はサンタブーツマグをふたつ持ったまま、こんな提案を。
「あ、そうだ。記念写真一枚撮らねえ?」
「まぁ、一枚くらいなら……またその写真も、俺にも寄越せよ?」
というわけで。
星の様に煌めくクリスマスの風景を背景に――はい、ポーズ!
サンタブーツマグふたつを片手にもって、反対の手で恋人繋ぎをしたまま、上機嫌な笑顔の望と。ちょっぴり顔が赤いまま目を逸らしつつも、しっかり手は握っている楪のふたりに向けられたカメラのシャッターが、ぱしゃりっ。
そして記念撮影を終えれば、まだまだふたりで一緒にぐるり。
賑やかで美味しそうなヒュッテを巡る、クリスマスデートを目一杯楽しむつもり。
今年のクリスマスデートのとっておきの一枚も、ばっちり撮れたのだから。
成功
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