スノー・ホワイト・シチュー
バルタン・ノーヴェ
クリスマスノベルを発注させていただきます。
アドリブ歓迎です。よろしくお願いいたします。
場所:クロムキャバリア、適当な国家(指定なし)。戦禍の跡地を想定。
内容:バルタンがクリスマスボランティアの巡回をする一幕。
突然現れたバルタンがミニ・バルタンを動員して街を素早く清掃、負傷者の救護を行う。
広場でキッチンカーを展開して炊き出しをしてから、クールに去る起承転結をイメージしています。
クリスマスということでメイド服にサンタコスチュームを着用しています。
台詞例
「HAHAHA! メリークリスマス!」
「ハーイ、ワタシはバルタン・ノーヴェであります!!」
「イエス、ボランティア活動デスネー! ご安心くだサーイ、実際安全デスヨー!」
(ノベルに登場する画像はネコミミスク水サンタですが)
(こちらの画像になりますが。https://tw6.jp/gallery/?id=124259
●炊き出し
クロムキャバリアにおいて戦乱というものは常なるものである。
しかし、クリスマスはやってくる。
このような戦乱の日常にあってクリスマスなど、と言う者もいるだろう。
「HAHAHA! メリークリスマス!」
それは高らかに響く笑い声であった。
空気を読まないとも言えただろう。
そう、バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)である。
彼女はメイド服の上にサンタカラーのケープを纏って唐突に現れたのだ。
「な、なんだあんた……!?」
当然と言えば当然の反応である。
むしろ、そんな反応もできないほどに意気消沈している方が問題であるとも言えるだろう。
そういう意味では悪くない反応であった。
「ハーイ、ワタシはバルタン・ノーヴェであります!!」
テンション高い!
とてもじゃあないが、戦禍の痕におけるテンションではなかった。
「い、いや……名前もそうだが、聞きたいのはなんでこんなところにってことなんだが」
周囲を見回せば、キャバリアの残骸と崩れた建物ばかりである。
「それは勿論! イエス、ボランティア活動デスネー!」
「ぼ、ボランティア……?」
「イエス! 無償奉仕ともいいマース!」
その言葉に人々は訝しむ。いや、困惑している、というのが正しいのかもしれない。
なぜなら、この戦乱の世界において、そうしたボランティアというものはあまりにも縁遠いものであったからだ。
日々を生き抜くのに人々は必死であったし、誰かに何かをしてもらう、ということは常に裏があるのではないかと疑わねばならないことだったからだ。
だが、バルタンは、屈託なく笑っていた。
「そういうわけで、カモン! ミニ・バルタン!」
「バルバルバルバル!」
指を打ち鳴らした瞬間、バルタンの周囲から飛び出すのは、メイド服を来たミニ・バルタンの群れであった。
「わ、あっ!? な、なんだぁ!?」
「ち、小さなメイド!?」
「コイツら何を……!」
「HAHAHAHA! ご安心を! ミニ・バルタンによる市街地の清掃、負傷者の救護をおこないまマース!」
バルタンはミニ・バルタンたちに号令を飛ばし、迅速に戦火に傷ついた街中へと走らせる。
ミニ・バルタンたちは瓦礫を退け、負傷者を運び、次々と街の復興作業を行っているのだ。
「思ったよりも負傷者が多いデスネ!」
バルタンはミニ・バルタンたちから送られてくる情報を一つ一つ吟味する。
小国家同士の争いは絶えないものだ。
だが、ここまで市街地に被害が出る、ということは、激しい戦闘があったということでもある。
この小国家の現状がどのようなものであるかはバルタンには伺い知れない。
「デスガ、折角のクリスマスなのデース。背いっぱい祝いたいと思うのが人の心ってやつtデース!」
キッチンカーの中で格納方メイド用キッチンを展開する。
いつでもどこでも料理ができるように収納されているのだ。調理道具一式を取り出し、バルタンは考える。
クリスマスらしいもの。
何があるだろうか。
七面鳥、はそもそも食材が手に入りづらいだろう。
そして、小国家ということはそれぞれに文化があるはずだ。
そう思って見回す。
誰も彼もが暗い顔をしている。
寒さに震えている。
であれば。
「……」
バルタンは考える。
多くの世界を見てきた。多くの人々を見てきた。多くの文化を見てきた。
今、己にしかできないことはなんだろうか?
無論、戦火に見舞われた人々に笑顔になって欲しいという思いは変わらない。
だが、できることとできないことをバルタンは理解している。
「寒いよ、ママ……」
「おなかすいた……」
子供らの声が聞こえる。
争いはいつだって弱者を痛めつける。
いや、強者も弱者も関係ない。多くを平等に奪っていく。なら、バルタンは思うのだ。
争いに荒んだ心に暖かさを取り戻させるために必要なものはなにか、と。
「……決めマシタ! シチューを作りまショー! ホワイトシチューで心も体も暖かくデース!」
決めたのならば早かった。
食材をミニ・バルタンたちと刻み、湯を沸かす。
湯気が寒空の上に立ち上っていく。
誰も彼もが争いに疲れて項垂れていた。
だが、徐々に香りが彼らの面をあげさせる。
「何だ、この匂い……」
「……美味そう」
人々の声をバルタンは耳聡く聞いていた。
どんなときだってお腹は空く。であれば、お腹を満たしてから明日のことを考えればいいのだ。
そうやって生きているから、明日も歩いていける。
「おまたせしてマース! デスガ! 美味しいホワイトシチューはもうすぐデース!」
その言葉に一時の争いを忘れて人々は顔を上げる。
クリスマスの夜に、戦禍の炎は似合わない。
身を凍らせる雪もだ。
なら、とバルタンは微笑んで器を人々に手渡す。
真っ白な湯気を立てるホワイトシチュー。
今日という日を戦火に染めるのではなく、その湯気でせめて、と――。
成功
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