ニャンダフル・オールデイズ
●取り立てて言うべきことではないけれど
そう、猫にとって人の暦というものはあまり意味がない。
数字というものがどれだけ便利なのかを訥々と語られたところで、猫には意味がない。いや、正確に言うなら興味がない。
しかしながら、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)を主として、その屋敷に住まう猫、猫又である『玉福』にとっては、あれはあれでよいものだと思う。
季節の移り変わりというものは、自らの肌感覚でもって感じ取るものだ。
ヒゲがぴくぴく揺れる。
「うむ、今日もきっと寒いであろう」
にゃあ、と実際は鳴いているのだけれど、此度は格別な日である。
そう、2月22日。
にゃんにゃんにゃんで、にゃんという日にゃのでしょう!
ここまで言って察しの悪い人間はいないであろう。
猫の日である。
とは言え、『玉福』には関係ない。
「寒いか否か。それくらいなものである。最近はめっきり寒くなってきている。日頃の巡回も、ぴゃっと言ってぴゃっと帰ってくるのがマストである」
というわけで、さっと飛び出す。
物事というのものは、先送りにすればするほどにしんどくなるものだ。
故にやらなければならないことは、できるだけ早く終わらせることにしているのだ。
柔らかであるけれど、俊敏な動き。
己が祖先の在りし日の勇姿を思えば、これくらいのことができなくては猫ではない。
後ろを見やれば、こんな寒い日には全く持って役に立たないひんやりした空気を纏う幽霊『夏夢』がついてきている。
「はや、っは、や、いです~」
「にゃんじゃくものめ」
この程度のこと、と思うが致し方あるまい。
己の俊敏さについてこれないのは、ある意味当然であった。
であれば。
いや、言っても詮無きこと。
「ひぃ、ひぃ……」
息を切らす気配がある。
なんとも不憫なことである。
「にゃあ」
先日にもらった魚クッキーは中々だった。
なら、少しくらい猫吸いなる行為を許してやらんことない、と言うと『夏夢』は光り輝いた。
眩しいにゃ。
「ありがとうございます! ここでいいですか!」
「いいわけ無いにゃ。炬燵に潜ってから」
「はい!」
吾輩にとっては些事であるが、まあ、飼い主としてはちゃんと餌も与えねばならない。
時にはこうして飴もやらねばな。
さあ、寒空の下にいるのは充分だ。
さっさといくぞ、と吾輩は冬毛散らして屋敷の炬燵へとまっしぐらなのだ――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴