【大いなる災い】疾走する妖獣群
●鉄鎖なくとも
その日、広大な銀誓館学園にある空き教室の一つに猟兵たちは集まっていた。
「いつもと違う場所での説明になるけど、集まってくれて有難う。今回の事件は『大いなる災い』……超巨大妖獣兵器のオブリビオンにかかわるものだよ」
教室の教壇の前に立つクルースニクのグリモア猟兵、鈴鹿・小春(万彩の剣・f36941)は集まった猟兵を前にそう切り出した。
彼の説明によれば大いなる災いとは忘却期以前、平安時代の能力者集団である『平家』と『源氏』の戦いで平家が解き放ったとされる超巨大な妖獣兵器であり、かつての戦いでは伊豆沖で封印から解放された後に大量の妖獣を体内から放出して道中を破壊しながら源氏の本拠である鎌倉を目指し行軍していた厄介な『災い』であるとのこと。
「他にも天空の災いとか不滅の災い、あと僕も直に見たことはないけど永遠の災いってのもいるみたいだけどそっちはまた今度! それで、出現した大いなる災いは神奈川県蛭ヶ岳に出現して体内から無数の妖獣を放出しながら大移動するみたいなんだけど……今回の予知は大いなる危機になる前段階でグリモアエフェクトの効果で拾えてる。それもあって『過去の戦いの記録』と合わせることで被害を最小限に抑えつつ撃破する道筋が見えたんだ。その記録を持ってきてくれたのは銀誓館学園の使者……当時の戦争にも関わってた縁もある人、だね」
ちらちらと小春が教壇の横にある扉を見る。その裏に彼の言う協力者はいるのだろう。
「とまあ、長くお待たせするのもよくないし、文曲センパイお願いしまーす!」
そう小春が促せば、扉を開いて現れて高校生ぐらいの年頃に見える妖狐の少女が姿を現した。
「はじめまして、もしかするとお久しぶりの方もいるかもしれませんね。私は洪・文曲と申します」
どことなく怪しさのある文曲と名乗った少女は狐の耳をぴこぴこ動かしつつ、丁寧に挨拶した。
大陸妖狐として戦闘集団を率い大いなる災いとの戦いに介入し、そして銀誓館に捕らわれ、そしてありふれた人々のしあわせを認識して銀誓館へと本心から協力してくれるようになった彼女。
大いなる災いの復活による被害を抑えるべく、文曲は予知と総合して予測される移動経路の中から人里離れ被害を抑えられる地点を計算してくれたのだと、小春は説明する。
「今回の大いなる災いは出現地点から概ね山中を駆け回りつつ一直線に鎌倉へ向かってくるようですが、その道中で川になっている地点があり、そこで行軍速度が落ちるようです。ここで徹底的に叩き、周囲を取り囲む妖獣化オブリビオンを撃破して、まだ力を取り戻しきれていない大いなる災いを一気に倒し切るのが一番被害を抑えられるでしょう」
そう文曲が迎撃について説明し、そして実際に戦う妖獣化オブリビオンについての説明は小春が引き継ぐ。
「まず蹴散らさなきゃいけないのは『トロンプ・ルイユ』の群れだね。錯覚しちゃいそうな奇妙な見た目の馬っぽいオブリビオンで、凶暴性が増してて人里で戦えば被害が一気に広がってしまうからここで叩いて潰さないとまずいと思う。蹄で足も早いみたいだから突破されないように注意ね! それから他にも一頭だけ『ウェーカタシーサー』って大型の妖獣兵器もいて、こっちは当時の戦争にいた我鳴鬼の能力……『広範囲の敵を一定時間動けなくする咆哮』も持っててそれでこっちを妨害してくるみたいだから、大いなる災い本体に挑む前にこっち倒しておかないと多分大変なことになると思う。それから大いなる災い自身も妖獣召喚能力だけじゃなく強力な放電能力も持ってて、しかも地面から頭まで数十メートルあるでっかい相手だから戦い方は工夫したほうが良いかもね」
二人の説明は以上となり、小春が懐中時計のグリモアを手に浮かべて転送の準備を開始する。
「とっても厄介で強力な妖獣兵器だけども、早めに見つけられたから本調子にはまだ遠い状況だと思う。それでも結構敵の数はいるけど、猟兵の皆なら大いなる災いまで一気に押しきれるって、信じてる。それじゃ気合い入れていこう!」
そう前向きに小春は締め括り、そして狐の耳と尾を揺らしつつ、文曲がよろしくお願いしますと見送って。
そして、次の瞬間には猟兵達は大いなる災い率いる妖獣化オブリビオンの大群迫る山中の川辺へと転送されたのだった。
寅杜柳
オープニングをお読み頂き有難うございます。
懐かしの超巨大妖獣兵器。
第一章は『トロンプ・ルイユ』との集団戦になります。
凶暴性が高く目に付く生物や敵に容赦なく襲いかかってくるようです。
第二章は我鳴鬼の力を持つ『ウェーカタシーサー』との戦い、第三章は『大いなる災い』との決戦になります。
第二章以降はそれぞれ断章で状況説明を追加致しますので、そちらをご確認下さい。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 集団戦
『トロンプ・ルイユ』
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POW : 耐性反芻
噛み付きが命中した部位を捕食し、【その対象が放つ攻撃への耐性】を得る。
SPD : プシシェの触覚
攻撃が命中した対象に【生贄の模様】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【極彩色の闇から伸びる角のようなもの】による追加攻撃を与え続ける。
WIZ : 霊魂放浪
レベルm半径内に【流星のように翔ける霊魂の群れ】を放ち、命中した敵から【生命力】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
イラスト:猫の目からビーム
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
儀水・芽亜
文曲さんと親しかったのは先輩でしたね。私としては有名人のお一方という印象です。
さて、オブリビオンが鎌倉へやってくる前に殲滅しましょう。
ナイトメアライドで「騎乗」。蹄の扱いなら負けませんよ。山地ですから、「地形耐性」「足場習熟」を忘れずに。
一旦、敵の侵攻路の側面で待機し、先頭が通過したら、「騎乗突撃」「ランスチャージ」。敵群に混乱を引き起こしましょう。
一気に敵の群の中を突破して、馬首を巡らし、先程抜けたより後続に再度の突撃を。
敵の攻撃が当たる前に、速度で敵群をかき乱します。
攻撃は「見切り」「武器受け」ではね除けましょう。
本命はこの先。敵群の始末は後続の皆さん、お願いします。
それでは、いざ参る!
●混沌切り裂く鴇色の槍
巨大妖獣兵器とその身体より湧き出した妖獣型オブリビオンの群れが山中を疾走していく。
麒麟のような『大いなる災い』はその外見に相応しい速度、それ先行する形で奇怪な妖獣化オブリビオン『トロンプ・ルイユ』の大群も、草木生い茂る険しい山の地形もものともせず山を駆けて南東へと進軍していく。
目指す先にあるのは鎌倉、かつての『源氏』の本拠地であったその地を徹底的に破壊し尽くさんと駆ける妖獣達の行軍速度は凄まじく、大いなる災いから湧き出す無尽にも思える数もありまともに阻むことは困難であろう。
しかし妖獣達の進路上、山を流れる川に差し掛かったところで先頭を往くトロンプ・ルイユ達が速度を落とす。
それに合わせ後続の妖獣達と大いなる災いも減速して――そして、そのタイミングを予測し川の近くで待ち構えていた猟兵達は一斉に奇襲を仕掛けた。
妖獣達の侵攻ルート、そこから川の上流側に外れた位置で待ち伏せしているのは儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『|夢可有郷《ザナドゥ》』・f35644)。
(「そういえば文曲さんと親しかったのは先輩でしたね」)
芽亜が銀誓館学園で能力者として戦っていた時代、当時戦っていた能力者には文曲と仲が良かった能力者も多くいたことを思い出していた。
他にも武曲とも仲が良かったか、とそんな事を考えていた芽亜の視線の先、先頭を走る妖獣型オブリビオンの群れが速度を落としつつ川を越えようとする姿が見える。
――仕掛けるのは、今。
「さて、オブリビオンが鎌倉へやってくる前に殲滅しましょう」
ユーベルコード【ナイトメアライド】を起動、召喚した|白馬姿の来訪者《ナイトメア》へと騎乗した芽亜は、鴇色のアリスランス『ディヴァイン・ユニコーン』を構えて異形の馬の形をしたオブリビオンへと突撃を仕掛けていく。
「さあ、誰から《悪夢》の蹄にかかりたいのかしら?」
錯覚催す奇怪な妖獣型オブリビオンは側面からの奇襲に咄嗟に反応できない。
この険しい山中でも常とほぼ変わらぬ速度で仕掛ける事を可能にする芽亜の巧みな騎乗の技術もこの奇襲の成功に大きく寄与しており、白馬に乗った彼女の鴇色の突撃槍が一塊の極彩色の闇を貫き霧散させる。
そして強烈な一撃を喰らわせた芽亜は減速せず、生命力を共有し互いに強化された|白馬《ナイトメア》と共に群れのど真ん中を一気に駆け抜け妖獣型オブリビオンを次々に貫いて混乱に陥れていく。
ようやく迎撃態勢を整えたトロンプ・ルイユが嘶き上半身を持ち上げ、向かってくる芽亜へ生贄の模様を付与しようとする。
しかしその前脚の一撃を見切った芽亜は突撃槍を上手く構えると蹄を受け流し直撃を回避、そのまま反対側へと駆け抜けて即座に旋回すると、再び敵軍の中心へと飛び込んでいった。
彼女の狙いは敵群の攪乱、かき乱した後の始末は他の猟兵へ託す。
そう決めていた芽亜は妖獣型オブリビオンの群れの奥、数十メートルもの体高を誇る大いなる災いをちらりと見上げて。
「それでは、いざ参る!」
気合と共に芽亜は鴇色のアリスランスを振るい、トロンプ・ルイユの群れを打ち倒しながら大いなる災いを目指していく。
大成功
🔵🔵🔵
リカルド・マスケラス(サポート)
『正義のヒーローの登場っすよ~』
装着者の外見 オレンジの瞳 藍色の髪
基本は宇宙バイクに乗ったお面だが、現地のNPCから身体を借りることもある
NPCに憑依(ダメージはリカルドが請け負う)して戦わせたりも可能
接近戦で戦う場合は鎖鎌の【薙ぎ払い】と鎖分銅の【ロープワーク】による攻撃がメイン
遠距離戦では宇宙バイク内臓の武装で【薙ぎ払い】や【一斉発射】。キャバリアもあります
その他状況によって魔術的な【属性攻撃】や【破魔】等使用
猟兵や戦闘力のあるNPCには【跳梁白狐】で無敵状態を付与できる
また、無力なNPCが大人数いる場所での戦闘も彼らを【仮面憑きの舞闘会】で強化して戦わせつつ身を守らせることも可能。
●闇裂く希望の|仮面《マスカレイド》
白馬の機動力を活かして鴇色の槍を振るいトロンプ・ルイユの群れをかき乱す猟兵、混乱して四方へと逃れようとするオブリビオンの個体もいた。
流れる川の近くであるこの襲撃ポイントは比較的見通しはいいが少し離れれば深い山の中、茂る木々の間に飛び込まれてしまえば追跡するのは困難だろう。
しかし逃れようとした極彩の闇色の妖獣馬の首に長い鎖が巻きつくと、ぴんと伸びたそれに引っ張られて横転する。
「気づいた時にはもう遅いっすよ」
直後その死角から音もなく距離を詰めていく藍色の髪の目立つ白狐面の青年、リカルド・マスケラス(希望の|仮面《マスカレイド》・f12160)。
手品のような早業でダガーを袖口から抜いた彼はユーベルコード【忍法・忍び斬り】を起動すると、転倒したトロンプ・ルイユの首筋を鋭く切りつけてその命を刈り取る。
「まさに目にも止まらぬ、ってやつっすよ」
反撃どころか回避すら困難な状態の妖獣、元より優れた忍者の技の使い手であるリカルドの斬撃は十全にその威力を発揮して極彩色は滲み山の緑へと還っていく。
視界の悪い山中は忍者の得意とする戦場、この山中で妖獣の行軍を食い止め人的被害を出さぬようにするために、リカルドは静かに山を駆け群れから離れようとする妖獣を次々に仕留めていくのだった。
成功
🔵🔵🔴
キノ・コバルトリュフ
キノキノ、火力が足りないんだって?
だったら、焼き舞茸はいかが?
キノ!バルくんどんどん焼いていくよ!!
トリュフ!バルくん、いい焼き加減だね。
キノも奉納の舞いを頑張っちゃうよ!
マツタケ!!おいしく焼けたかな?
●闇は炎に祓われ
猟兵達の襲撃に陣をかき乱され、孤立した個体も逃さず仕留められている状況でトロンプ・ルイユの進軍は停止、減速しつつあったとはいえ後方の群れも完全に急停止はできずに川の手前に密集地帯が生じる。
疾走を止めた極彩色の闇の馬は所持する奇怪なカンテラから霊魂の群れを解き放った。
流星のように飛翔して敵対者の生命力を奪い取るオブリビオンの厄介なユーベルコード、その標的となったのは森の緑にそぐわぬ派手な色彩の巨大キノコ傘のピュアリィ、キノ・コバルトリュフ(|キノコつむり《🍄🍄🍄🍄🍄》の星霊術士・f39074)。
「キノキノ、火力が足りないんだって?」
しかし標的となったキノはいつも通りのマイペース、大木の陰に隠れ飛来する霊魂をやり過ごすとユーベルコードを起動する。
「だったら、焼き舞茸はいかが?」
召喚されるは星霊バルカンの『バルくん』、尾に焔を灯した黒猫姿の星霊はめんどくさそうに軽く鳴いて、そして山の悪路を走りトロンプ・ルイユの群れの周囲を旋回し始める。
「キノ! バルくんどんどん焼いていくよ!!」
同時にキノが奉納の舞を舞い始めれば、回転するバルくんの内側に業火の渦が召喚されて妖獣型オブリビオンを巻き込み高速で旋回し始める。
密集地帯に解き放たれた創世記の炎渦、抵抗すら無意味な強烈な炎熱は甚大な被害をトロンプ・ルイユの群れに与え、極彩色の闇は火に焼かれ跡形もなく消滅していく。
カンテラに囚われた霊魂すらも解放するように、清らかなる火焔は燃え上がりそしてキノの舞の終了と共に延焼することなく鎮火した。
「マツタケ!! おいしく焼けたかな?」
旋回を終えて戻ってきたバルくんを迎えながら上機嫌なキノ。
炎渦の外側にいてまだ大いなる災いを守る妖獣は少し残っているようだが、其方は他の猟兵が対応しているようだ。
そちらは任せる事にして、次の攻撃の為にキノはバルくんと共に道なき山の中を走り移動を開始するのだった。
大成功
🔵🔵🔵
酒井森・興和
狐の洪文曲…あの頃と変わらなかったな
症候群なのか妖狐の性質か
元気そうで何より
情報伝達も有難いしねえ
文曲の指定した地点で待機
山暮らしだし【悪路走破】で問題ない
【気配感知、集中力】で敵攻撃被弾を避ける
(敵に攻撃が通らぬのはマズいし
そうなると捨て身で行かねばならぬし)
反撃は【咄嗟の一撃】で鉄扇に【重量攻撃】をのせ叩き、返しで【切断】
僕は空中での戦闘のすべを持たないからねえ
一体を叩き【おびき寄せ、対空戦闘と投擲】を使い戦おう
UCの飛斬帽は数体を相手取れるだろう
弱った個体を見定めたら仕留め数を減らす
あの災いが本調子で無いうち鎮めないとな
我等の御山のある葛城や養女と暮らす陣ヶ峰へ来ないとも限らないからね…
●焼き払い、斬り裂いて
疾走する白馬に陣を乱され火焔の渦に妖獣型オブリビオンが焼却されていく中、文曲に指定された待ち伏せ地点で機を窺っていた酒井森・興和(朱纏・f37018)という鋏角衆も行動を開始する。
(「狐の洪文曲……あの頃と変わらなかったな」)
人の手のさして入っていない山の悪路を走りながら、そんな事を思案する興和。
運命の糸症候群で能力者として戦っていた当時の姿のままらしいが、七星将が不老であるように妖狐としての性質であの姿なのだと言われても納得はできてしまう。
ともあれ元気そうで何よりだ、そう考えながら彼は大いなる災いより生じた妖獣型オブリビオンの撃破にかかる。
忘却期以前に世界結界により封印された旧い鋏角衆であり、かつ今も現代社会から離れ山で暮らしている彼にとってはこの山の悪路もさしたる問題にはならない。
疾走する巨大な群れに追い縋りながら削るなら大変な戦いになっただろうが――文曲からの情報伝達に感謝しつつ、数を大きく減らし混乱するトロンプ・ルイユに向けて飛斬帽【丹霞】を構える。
「飛斬の笠を繰るは、我ら鋏角衆の得手とするところ」
ユーベルコード【追笠】を起動、回転を加え丹霞を投擲すれば摩擦熱と炎を纏った飛斬帽は次々にトロンプ・ルイユを備えた刃で切り裂き焦がしながら群れを貫いていく。
そしてそれで終わらない。飛斬帽は群れを突っ切った直後、興和と繋がった不可視の糸に引っ張られ軌道変更、再びトロンプ・ルイユの群れへと飛び込んでいく。
弱った個体を標的にして加速、次々に消滅させていく燃え上がる丹霞を操りながら怒り狂って向かってくるオブリビオンの気配を興和は察知する。
色をぐちゃぐちゃに混ぜたような闇、凝視していると錯覚で眩暈がしそうな奇怪なトロンプ・ルイユは明確に興和を敵と認識し、その跳躍力で木々を足場に跳ねつつ頭上から襲い掛かろうとしてくる。
だが旧き鋏角衆の研ぎ澄まされた集中力はその奇襲を完全に見切っていて、興和は咄嗟に閉じた鉄扇【火嶺】で頭上から喰らい付いてくる妖獣型オブリビオンを殴打し打ち払った。
一尺五寸の見かけよりも重いそれはまさしく鈍器、重量を乗せた一撃は空中のトロンプ・ルイユの体を弾き、そして興和は即座に追いかけ返す刀で鉄扇を開きながら鋭く水平に振るった。
開かれた鉄扇の縁は刃のように鋭く、一閃は極彩色の闇を切り裂いてオブリビオンは断末魔と共に消滅していく。
(「僕は空中での戦闘のすべを持たないからねえ」)
空中からの攻撃に警戒していた興和は上手く対処できたことに安堵しつつも周囲への警戒は怠らない。
仮に対処しきれず噛み付かれ身体の一部でも捕食されてしまえばその個体は興和の攻撃に対し耐性を得てしまう。
無効化までとはいかずとも固く削り難くなれば捨て身で戦うという選択も考慮する必要があるだろう。
ともあれここまでの戦いでトロンプ・ルイユの数は随分減っている。向こうが捨て身で興和に対して一斉攻撃を仕掛けてきたとしても丹霞の軌道操作で対応可能だろう。
堅実に着実に、奇怪なオブリビオンをすっかり消滅させた興和は少し離れた位置に見える木々よりも大きな大いなる災いを見上げる。
この大いなる災いの目的地は鎌倉、しかし仮に鎌倉を破壊した場合はその後どう動くかは不明だ。
もしかすると西へ――興和に縁深い葛城や陣ヶ峰の地へやって来ないとも限らない。
「あの災いが本調子で無いうち鎮めないとな」
そう決意を固めつつ、護衛の妖獣の群れを失った巨大妖獣兵器へと興和は向かっていった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ウェーカタシーサー』
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POW : 火気吸収
戦闘中に食べた【火気】の量と質に応じて【吸収した火気で全身を加熱し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : 火気放出
【吸収した火気を全身から放出した炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【自分の気が混じった】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ : 石像変化圧し潰し
単純で重い【石像に変化して圧し潰す】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
イラスト:白狼印けい
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ニャント・ナント」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●阻むは赤き妖獣兵器
奇怪な妖獣型オブリビオンの群れを蹴散らした猟兵達は、襲撃に対し警戒しているのか足を止めた大いなる災いに向かって山の悪路を駆けて距離を詰めていく。
もう少しで攻撃が届く――あと一歩の場所まで猟兵が接近した瞬間、獅子の咆哮が山に響き猟兵達の足が止まる。
直後猟兵達の前に現れたのは赤き妖獣兵器『ウェーカタシーサー』、かつて琉球王国で作られたとされるそれは大いなる災い程ではないにせよ先程まで交戦していたトロンプ・ルイユよりは巨大で襲撃者に殺意を向けている。
『我鳴鬼』の能力を付与されたこのウェーカタシーサーは通常の力に加え、その咆哮で猟兵達を行動不能にしてしまう。一定時間とはいえ大いなる災いとの交戦中に妨害されては危険に繋がるだろう。
大いなる災いが再び動き出す前にこの妖獣兵器を撃破せねばならない――決戦に万全の状態で臨むべく、猟兵達は赤き妖獣兵器との交戦を開始するのだった。
儀水・芽亜
我鳴鬼は、確か当時の戦場には三体いましたか。朧気に覚えています。
戦争という状況下で討滅するのは一苦労でしたけど、『大いなる災い』とは比べるべくもありません。速やかに討滅して、先へ進ませていただきます。
さて、ホロ・ディスプレイにルールを提示しましょう。『騒音厳禁』。騒音とは、あなたの声を指します。
これで、我鳴鬼の特性は封じました。後はただ、この裁断鋏で討滅するのみ。
何か言いたそうですが、歌曲使いならカウンターを持っていて当然。
さあ、死合いましょう。
火炎での自己強化ですか。それだけでも面倒な敵ではあります。
振り下ろされる爪牙を裁断鋏で「受け流し」、その毛皮に刃の傷を刻みましょう。
●その咆哮は許可されない
赤き妖獣兵器が殺気と共に吠え、己の身に宿す火気を火炎として周囲に放つ。
草木があっという間に焼け焦げて周囲の火気が強まって、それを喰らいウェーカタシーサーはその身をより赤く、加熱して戦闘能力を高めていく。
(「火炎での自己強化ですか。それだけでも面倒な敵ではあります」)
妖獣の炎を躱しながら儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『|夢可有郷《ザナドゥ》』・f35644)は十七年も前の朧げな記憶を振り返る。
(「我鳴鬼は、確か当時の戦場には三体いましたか」)
当時は文曲の配下であった『四葉』、『紅梅』、『向日葵』の三人の妖狐が自軍の各戦場に我鳴鬼を召喚していた。
戦闘で移動することはなかったが、対象数の限界なしに広範囲にマヒをばら撒き能力者の行動を封じていたその力は脅威であり、このウェーカタシーサーは移動しないという欠点もなくマヒの力だけを移植されているようだ。
オブリビオンとしての力量としても高い難敵、その上で大いなる災いが移動を再開する前に速やかに仕留めねばならないのだから時間はかけられない。
当時の戦争の状況下で討滅するのでも一苦労だった。しかしこの後に控える『大いなる災い』とは比べるべくもない。
「速やかに討滅して、先へ進ませていただきます」
静かに告げる芽亜に対し、たっぷり火気を喰らった妖獣が大きく息を吸う素振りを見せる。マヒの咆哮で猟兵達を足止めして攻勢に出るつもりなのだろう。
しかし、
「警告します。この周辺での騒音発生行為は禁じられています。直ちに音源を停止させなさい」
吼えようとするその直前、芽亜がユーベルコード【騒音禁止地域】を起動して空間にホロ・ディスプレイを展開、表示された騒音厳禁の警告にウェーカタシーサーは口を塞がれたかのように声なく空気だけをその大口から漏らす。
(「歌曲使いならカウンターを持っていて当然です」)
芽亜がこの場で定義した騒音、それはウェーカタシーサーの声。
発声を禁じられれば我鳴鬼の特性は封じられる――忌々し気に何か言いたげに妖獣が睨みつけるが冷ややかに芽亜は受け流し、裁断鋏『Gemeinde』を構える。
「さあ、死合いましょう」
誘うような芽亜の言葉に大型妖獣は怒り地を蹴ってその爪で直に引き裂かんと襲い掛かる。
迫りくる燃え上がる熱気、加熱された爪に裂かれれば一たまりもないだろう。しかし真っすぐ襲い掛かる妖獣の攻撃は備えていた芽亜には十分見切れる範疇。
二振りの軍刀を重ねたような裁断鋏の刀身を炎熱の爪に合わせてするりと受け流し、踊るように妖獣の側面に回り込んで鋭く鋏の刃で胴体を切りつけた。
毛皮を裂かれ内から吹き出した血を熱で蒸発させながら、ウェーカタシーサーは苦痛に反射的に飛び退き芽亜から距離を取った。
大成功
🔵🔵🔵
アラタマ・ミコト
これは好機/危機でございます!
荒魂鎮神命が御業【殲剣陣羽織】で対処いたします。
皆様方は……?
何でそんな物を使っているのかでございますか?
……極楽浄土ではこれも武器なのです!
「ゆにーくあいてむ」と言われるのです!!
●朱の妖獣兵器切り裂く神通力の刃
「これは好機/危機でございます!」
妖獣オブリビオンのマヒの咆哮、厄介なそれが大型の鋏型詠唱兵器を得物とする猟兵に封じられた好機をアラタマ・ミコト(極楽浄土にて俗世に塗れし即身仏・f42935)は見逃さない。
自前の火気を喰らい自己強化する能力はそのままだが最も厄介な力が封じられた今は、言ってみればボーナスタイム。できる限り大ダメージを叩き込んであの巨大妖獣兵器『大いなる災い』を守る番犬のような、このウェーカタシーサーを速やかに仕留めるべきだろう。
アラタマが起動するユーベルコードは【殲剣陣羽織】、彼女の纏う将軍鎧に密着した全ての武器――すなわち巨大刀や神剣の神器、光剣、念動力で刃を繋いだ鞭剣にシャベルが念動力の影響下に置かれ、妖獣が鋏の刃に切り裂かれ飛び退いた直後のタイミングで一斉に射出され襲いかかった。
回避直後の隙を狙われる形となったウェーカタシーサーは更に全身を火気で加熱、向かってくるアラタマの武器達を強化された爪で弾き飛ばそうとする。だが念動力の制御に置かれたアラタマの武具は迎撃をひらりと躱す――爪に弾き飛ばされても即座に方向転換して別の角度から再度妖獣兵器に襲いかかる。
鍛えられた大ぶりの刃の斬撃に巻き付く鞭剣の鋭い斬撃は朱色の妖獣の全身を切り裂き、そして止めとばかりに|遮邊瑠《シャベル》がシーサーの頭部を打ち据えた。
――なおこれらは極楽浄土では武器である、とのアラタマの言。
彼女の『ゆにーくあいてむ』の猛攻を受けたシーサーはダメージを負いながらもふらふらと立ち上がり、猟兵達に更に強烈な殺気を叩きつけるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
響納・リズ(サポート)
「ごきげんよう、皆様。どうぞ、よろしくお願いいたしますわ」
おしとやかな雰囲気で、敵であろうとも相手を想い、寄り添うような考えを持っています(ただし、相手が極悪人であれば、問答無用で倒します)。
基本、判定や戦いにおいてはWIZを使用し、その時の状況によって、スキルを使用します。
戦いでは、主に白薔薇の嵐を使い、救援がメインの時は回復系のUCを使用します。
自分よりも年下の子や可愛らしい動物には、保護したい意欲が高く、綺麗なモノやぬいぐるみを見ると、ついつい、そっちに向かってしまうことも。
どちらかというと、そっと陰で皆さんを支える立場を取ろうとします。
アドリブ、絡みは大歓迎で、エッチなのはNGです
●貴婦人は人を守るために
(「……急がないといけませんね」)
無数の刃に刻まれた朱色の妖獣兵器と相対しつつ、グリフォン『アーティア』の背に乗った響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)というオラトリオは山の木々を越えない高さを維持しつつ思考する。
その元凶は木々の向こうに見える、見上げるような高さの巨大妖獣兵器『大いなる災い』。疾走するかの妖獣兵器が川越えで減速するタイミングで奇襲を仕掛け、護衛する無数の妖獣型オブリビオンを撃破することでここまで接近することには成功しているのだが、ここでウェーカタシーサーに時間を稼がれれば移動を再開して一気に距離を取られてしまうだろう。
そうなれば人里へと至りその身から溢れ出す妖獣オブリビオンと共に悲惨な結末を齎してしまう――それは何としても避けねばならない。
「少々面倒なことになりますが、背に腹は変えられませんわね」
普段は支援に徹している彼女だが、大いなる災いを守るこの大型妖獣兵器を一気に畳み掛けるべくリズはユーベルコード【魔法力増強機関】を起動、膨れ上がった魔力を愛用の魔導杖『ルナティック・クリスタ』の月を象りし青のクリスタルに籠めた全力の水の魔法を妖獣に叩きつける。
アーティアに乗って空から仕掛けてくるリズに対しウェーカタシーサーは身に帯びた火気を火炎の弾丸として放ち迎撃するが、アーティアはその攻撃を器用に木々を盾にしつつ直撃を躱してリズを支援する。
業を煮やした妖獣兵器が跳躍、リズの頭上へと飛び上がるとその巨大な体を石像に変化させて圧し潰しにかかる。純粋に重い一撃、通常状態でまともにやりあえばその重量に押し切られぺしゃんこにされてしまうだろう。
だが、今のリズは魔力増幅によりすべての能力が6倍に増幅されている。その高まった魔力をありったけ注いで放つ全力の魔法を頭上の石像に叩きつけて落下軌道を逸らし、かつ稼いだ時間でアーティアが落下軌道から離脱し圧し潰しを回避する。
ウェーカタシーサーが変じた石像はそのまま地面に落下、地形を破壊し元の姿に戻り、そこを狙ったリズの水の全力魔法が突き刺さって苦痛の唸り声を上げる。
さらなる追撃を仕掛けようとするリズだったが、彼女の攻撃はここまで。ユーベルコードの起動から161秒経過したリズに、強烈な睡魔が襲いかかる。
「……後は頼みましたわ」
一時的な魔力増強の代償として訪れる一分間の昏睡、安全そのものは頼れるアーティアに委ねれば大丈夫だろう。
一分後に目覚めた時状況はどう変化しているか、あとを仲間たちに委ねつつリズは意識を手放した。
成功
🔵🔵🔴
酒井森・興和
火を喰う獣か
土蜘蛛を倣って習得した火術は使えない…ならば力押しで行こう
麻痺は厄介、咆哮も妨害しないとね
【火炎耐性】で敵の熱気を耐え敵UCの炎を【第六感と集中力、気配感知】で躱したい
周りが火でも【落ち着き、急所突き】を狙い飛斬帽、逆鱗を投げ舌や顎を【切断】
逆鱗は傷口周りを麻痺させる【毒使い、マヒ攻撃】
山の地形も敵の足の動きも【サバイバルと悪路走破】で捌き接近
火炎耐性があっても厳しいがそれは【覚悟】
UCの【怪力】で敵の尾を掴み振り上げ顔面から山の斜面へ叩き付ける
喉を潰せたら鳴かないだろうが一撃では無理だろう
今は次の敵UCが発動するまで攻撃に専念
持ち上げ背負い投げ、脚を持ち再び山に叩き付けていく
●妖獣兵器を振り回せ
茶の毛並みのグリフォンに乗った猟兵がウェーカタシーサーから離れていく。
全身傷だらけになったウェーカタシーサーはその大型の妖獣兵器としての体を震わせ周囲に殺気を放ちながら周囲の草木に延焼した火を再び喰らってその身を加熱する糧となす。
(「今はまだ咆哮は封じられているようだねぇ」)
トロンプ・ルイユの群れを蹴散らし大いなる災いの手前まで迫ってきた酒井森・興和(朱纏・f37018)は、接近を阻む妖獣兵器の様子を観察していた。
最初に仕掛けた猟兵の騒音禁止のルールはまだ機能している、厄介なマヒを齎す咆哮は現時点では使えないようだが時間が経てば解除されてしまう可能性もあるだろう。
大いなる災いの移動再開の可能性も踏まえて速やかに撃破する必要がある。が、
(「火を喰う獣か。土蜘蛛を倣って習得した火術は使えない……」)
本来は火を奉ずる土蜘蛛、それにはなれなかった鋏角衆の身ではあるが倣って習得した火術はこのウェーカタシーサーには通じない、どころかその火を喰らわれ強化されてしまう逆効果になりかねない。
となれば、
「……ならば力押しで行こう」
至ったのはシンプルな結論、傾斜の激しい山を一気に駆け下りて大型の妖獣兵器に攻撃を仕掛ける興和。斜面の悪路を苦も無く駆け下りてくる彼を察知したシーサーは全身を赤熱させ斜面を駆け上がり爪で引き裂かんと前足を振り上げる。
接近するだけで肌が焼けるような熱、耐えられなくはないが、赤熱した爪を直に喰らえば少々厳しいかもしれない。迫る危機にも覚悟を決めた彼の思考は落ち着いたもの、研ぎ澄まされた感覚で攻撃の軌跡を見切り体をずらして直撃を回避した興和は、同時に飛斬帽【丹霞】を妖獣の顔面めがけて投擲する。
ウェーカタシーサーは咄嗟に飛来する丹霞を頑丈な牙で受けて他所の方向に弾き飛ばした。しかし興和の攻撃はそれに留まらない。飛斬帽を投擲したその直後に朱塗りの逆鱗【朱纏】を飛斬帽の影に隠れるように時間差で投擲、迎撃直後の隙に突き刺さる形で妖獣に命中させることに成功したのだ。
その逆鱗で狙ったのは妖獣の首――咆哮を発するための喉。麻痺毒を帯びた逆鱗を喉元にまともに受けたシーサーは喉の周りが痺れて思うように機能しないのか息を荒げて弱々しい音が漏れるのみ。
その苦痛に意識が逸れた瞬間、興和は大型妖獣の背後に回り込みその尾を掴む。そして起動するユーベルコードは【びったんびったん】、尻尾を怪力で思い切り振り上げれば妖獣の巨体は宙に浮いてそのまま顔面から斜面へと叩きつけられる。衝撃にシーサーの喉から空気が漏れる、されど周囲にマヒを振りまく咆哮ではない。それを冷静に認識しながら興和は間髪入れず体を入れ替えると妖獣の尻尾から後肢へと持ち替える。そしてそのまま背負投げの形で持ち上げると、今度は背中から斜面へと全力で叩きつけた。
これまでに重なったダメージ、そして強烈な二度の衝撃に強大な妖獣兵器といえど耐えきれない。ぐったりと力なく倒れたウェーカタシーサーは取り込んだ熱気を周囲に放散しながらその姿を薄れさせ、そして消滅したのだった。
――厄介な護衛の妖獣兵器はここに倒れた。
「残るは……」
興和が見上げた先には苛立ちを隠さぬ麒麟によく似た姿形の巨大な大いなる災いの姿があった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『大いなる災い』
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POW : 雷鳴の刻印
攻撃が命中した対象に【癒えない稲妻型の傷跡】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【呪いを帯びた雷撃】による追加攻撃を与え続ける。
SPD : 群れなす災い
自身の【身体を覆う金色の装甲】を代償に、1〜12体の【金色に輝く麒麟型オブリビオン】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
WIZ : 破壊の電流
自身が装備する【角】から【放電】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【感電と機械使用不能】の状態異常を与える。
イラスト:高芭タカヨシ
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●決戦、大いなる災い
厄介な我鳴鬼の力を移植された護衛の妖獣兵器は倒れ、残るは本命である超巨大妖獣兵器『大いなる災い』のみとなった。
かつて銀誓館学園が交戦した際には大陸妖狐の妨害があったとはいえども、鉄鎖ドローミによる強烈な弱体化を与えた上でようやく勝利できた程に強力な『災い』である。グリモアエフェクトによる早期発見が出来ていなければ正攻法で打ち勝つのも難しかっただろう。
自身の行軍を妨害する猟兵達を敵と認識した大いなる災いはその角からバチバチと放電を開始して敵を焼き払わんと殺意を向けてくる。
これだけ巨大な存在が人里までたどり着けば――ましてや鎌倉まで到達されればどれだけの被害が出るだろう。
その恐ろしい未来を阻止できるのは、猟兵だけだ。
強大なる災いをまっすぐ見据え、猟兵達は嘶く大いなる災いに対し攻撃を開始するのだった。
キノ・コバルトリュフ
ナメコ!キノの足の早さを見せてあげるよ!!
どんな敵だってキノからは逃れることは出来ない、完璧な走りだよ!
マッシュルーム!あまりの早さに止まって見えるんだってね。
キノキノキノ!キノの爆走!キノコロードの前に敵なし!!
●キノコの爆走は止まらない
猟兵を敵と認識した超巨大妖獣兵器『大いなる災い』、黄金の装甲を纏う麒麟のようなオブリビオンは、その角より強烈な破壊の電流を周囲に放つ。
体高で50メートルを超える巨体に見合った広範囲を焼き尽くす雷撃は敵を感電させるのみならず機械の使用を封じる程に強烈で、現代社会の街で一度放たれれば大変な被害を齎し無辜の人々を感電死させたことだろう。
しかしその放たれた雷撃の間隙をすり抜けるように移動する毒々しいキノコ傘の猟兵が一人いた。
「ナメコ! キノの足の早さを見せてあげるよ!!」
キノ・コバルトリュフ(|キノコつむり《🍄🍄🍄🍄🍄》の星霊術士・f39074)というキノコつむりは一応機械的なものを持ってはいるが、基本的には星霊術等で戦うピュアリィだ。
山の悪路も気にせず雷撃の間をすり抜けていく彼女の姿勢はまるで地面から生えたキノコのよう、【爆走!キノコロード】のユーベルコードによってその姿勢を維持したまま――あまりの速さに止まってさえ見えるようなそれでの高速移動を可能にしているのだ。
「キノキノ! 足の早さじゃ負けないよ」
向かってくる猛毒の色彩に大いなる災いは角よりの雷を集中させる。だがキノは降り注ぐ雷を地面から生えた姿勢のまま険しい山を爆走し、無傷のまま完璧な走りで巨大オブリビオンの蹄近くまでたどり着く事に成功。そして菌糸を大いなる災いの前足に伸ばし絡みつかせていく。
菌糸による攻撃を受けた妖獣兵器の顔色が悪化してその覇気が弱まっていく。彼女の爆走に伴った攻撃には食中毒のおまけつき、倒れるまでではないにせよ毒キノコを食してしまったかのように大いなる災いは苦しみ悶えてしまう。
「キノキノキノ! キノの爆走! キノコロードの前に敵なし!!」
そんな苦しむ巨大妖獣兵器をよそに、キノは得意げに降り注ぐ雷を振り切りながら道なき山の悪路を爆走していくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ティナ・ルウ(サポート)
普段から四つ足で行動したり、敵に吠える、気に入った相手を舐めたりじゃれついたりするなど、行動はかなり獣に近いです。
会話はできますが、人の言葉を話すのはあまり得意ではありません。
(かなりたどたどしい話し方になります)
明るく好奇心旺盛な性格で喜怒哀楽がはっきりしており、あまり考えず、直感的に行動します。
戦闘では爪や牙を駆使し、身体能力を生かして獣のように戦います。
描写にNG等はありませんので、自由に動かして頂いて大丈夫です。
●黒狐はするりと飛び込んで
大いなる災いが食中毒にも似た毒の攻撃に苦しむ最中、わずかに生じた隙を見逃さず、強化人間のティナ・ルウ(人狐・f19073)は獣のような四足歩行で疾走、大いなる災いとの距離を詰めていく。
彼女が既に起動しているユーベルコードは【狐変身】、精神を集中してその全身を黒い毛並みの狐のそれへと変異させた彼女にとっては山の険しい地形も全く苦にならない。
日頃から獣に近い行動を取っているから全身を狐に変えても動作に支障はない。ただ眼前の災害の如き強大な敵に対する本能的な敵意で吠え掛かり喰らい付かんと襲い掛かる。
毒に冒されながら大いなる災いは接近するティナを視認、右の前脚を高く上げて雷弾ける蹄で踏み潰さんと勢いよく振り上げる。
純粋にサイズ差からくる強大な一撃、それだけではなくその一撃が刻み込むのは癒えぬ稲妻の刻印。それを刻みこまれたならば大いなる災いから遠く離れぬ限り呪いの電撃を受け続けることになる危険な攻撃だ。
万全の状態なら猟兵でも正攻法では厳しいほどの力量の大いなる災い、それが放つ呪いの電撃から逃れるにはどれだけ離れればならないだろう――そんな計算よりも早く、獣の本能は狐の身軽さを活かし一撃を回避する事を選択させる。
轟音が山に響き、衝撃で地面が振動する。しかしティナはその影響を受ける事はなかった。
木々の間を走り抜け蹄が振り下ろされる直前に急停止、進行方向を切り替え近くの樹に登り、そして前脚が振り下ろされた直後に麒麟の右の前脚に飛びついたのだ。
纏う黄金の装甲と肉の間の狭い隙間に滑り込んだティナは、改造手術で強化された爪と牙を大いなる災いに突き立て肉を引き裂き食い千切る。
装甲で覆われているから守られていない部分に比べて多少防御力は低いのか、前足を傷つけられた大いなる災いは乱雑にティナの潜り込んだ脚を何度も地面に叩きつけ振り落とそうとする。
しかしその間もティナは攻撃を止めない。必死に喰らい付き引き裂いて超巨大妖獣兵器の足に徹底的にダメージを与えていく。
そして体力の限界でティナが振り落とされ離脱した頃には、既に大いなる災いの足に即座の疾走が難しい程のダメージが刻まれていたのだった。
成功
🔵🔵🔴
儀水・芽亜
いよいよ『大いなる災い』の元まで辿り着きました。
あの戦争では戦場が移動していましたから、メディックの先輩はトラウマのようになっていましたね。その分まで私が叩きのめして進ぜましょう。
「全力魔法」破壊の「属性攻撃」「範囲攻撃」「音響攻撃」「衝撃波」「歌魔法」「歌唱」「楽器演奏(竪琴)」でブラストヴォイス。
召喚する眷属ごと、破壊の音色で叩き潰してくれます。
他の猟兵が来る前に片を付ける必要がありますからね。
眷属だけでも片付けて、『大いなる災い』もこの超振動で装甲を透過して本体にダメージを与えましょう。
音というのは、時に致命傷にもなり得るのですよ。それを実証してみせましょう。
●悪しき麒麟に響かせる絶唱
「いよいよ『大いなる災い』の元まで辿り着きました」
大いなる災いの前に辿り着いた儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『|夢可有郷《ザナドゥ》』・f35644)はその巨体を見上げ、呟く。
銀誓館学園が実際に大いなる災いと交戦した戦争では、戦場は伊豆半島の南端から北北東に縦断する形で時間経過と共に移動していた。
それまでの戦争になかった移動する巨大な敵という状況に、救護担当のポジション結社で対策を相談していた先輩はトラウマのようになっていたような、と芽亜は思い返しつつ。
「その分まで私が叩きのめして進ぜましょう」
その時、何かを振り払うように前脚を地面に叩きつけていた大いなる災いの動きが止まり、纏う金の装甲が解けるように消失していく。
そして入れ替わるように先のウェーカタシーサー程の大きさまでに縮めて全身を金色に輝かせたような麒麟型オブリビオンが大いなる災いの前に召喚される。
その数10体、装甲の大半を代償に戦力を召喚した大いなる災いは総身に力を籠めて全身の体表に雷気を弾けさせる。
配下に時間を稼がせて移動を再開しようとでもしているのだろうか。最早そう時間はかけられない。
首にかけたアリアデバイス『ムジカ・マキナ』とインカム『夢+夜』の調子を確認、簡素なデザインの竪琴『Playland In Sleeping』を小脇に抱え軽く弾く。
道具の具合は大丈夫、後はそれに見合う歌を歌い上げるだけ――、
「――コワレロ、世界!!」
芽亜が響かせる歌声は魂の力をありったけ込めた【ブラストヴォイス】、人間の声帯から出ているとは思えない程の絶唱は、高速で山を疾走してくる災いの眷属共を破壊の音色で叩き潰す。
音圧と衝撃波、魔力と魂を乗せた音を黄金の麒麟型オブリビオンは強引に突破して歌を止めさせようとするが、歌声に伴う衝撃波に押し返され中々接近する事が出来ない。
何より芽亜は自分で全ての眷属の片を付ける覚悟を決めていて、多少の妨害では歌を止める事はない。
その鬼気迫る歌声は当然のように大いなる災いにも届く。黄金の装甲を代償に麒麟型オブリビオンを召喚したからその守りは元より薄れており、超振動の歌声は巨大妖獣兵器の肉体に響き渡りダメージを刻み込んでいく。
実体のない音、それは時には致命傷にもなり得る――そのことを大いなる災い自身の体で実証させつつ、芽亜は歌を止めんと群がる麒麟型の眷属に破壊の音色を叩きつけ、その数を減らしていくのだった。
大成功
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酒井森・興和
学生の頃はあの巨大な敵にどう対処すれば…と途方に暮れたけどな
猟兵の有りようとは何だろうか…
まあゲンキンな事を言えば災いを止められる力は有難いな
僕の身内や知り合いが平穏に暮らせるのが一番大事なのだし
負傷は避けたいが生きて帰還できれば善しという【覚悟】で挑む
常時【重量攻撃と吹き飛ばし】活用し【対空戦闘】
飛斬帽を投げ挑発【陽動し切断】
敵UCが召喚され接近してくれば【集中力】高めて接敵の瞬間狙い【カウンター】として敵を三砂で叩き撃ちそれを起点にUC火纏行使
火を敵の体から空中、災いへと奔らせる
装甲を幾つも犠牲にさせ守りを削る
チャンス有れば災いへ三砂をハンマーの様に【投擲】
投げ撃ち火纏の炎を纏わりつかせる
●悪しき麒麟焼く土蜘蛛の火
破壊の歌声が響き始める、少し前。
「学生の頃はあの巨大な敵にどう対処すれば……と途方に暮れたけどな」
朱の妖獣兵器を突破して大いなる災いの前にやってきた酒井森・興和(朱纏・f37018)は、超巨大妖獣兵器を見上げ過去の戦いを思い返していた。
その時は妖狐の横槍があったとはいえ、鉄鎖ドローミによる弱体化に加え数千人の能力者でどうにか捻じ伏せた強敵だ。状況こそ随分異なるがその強敵を少人数でここまで追いつめる事を可能にする猟兵の在り様はどうなのだろう。
とはいえ、
(「まあゲンキンな事を言えば災いを止められる力は有難いな。僕の身内や知り合いが平穏に暮らせるのが一番大事なのだし」)
そう興和が前向きに考えていると、大いなる災いの黄金の装甲の大半が解けるように消失、代わりに麒麟が10体召喚される。
それに対抗するように別の猟兵が破壊の歌――フリッカースペードのアビリティに似た強烈な魂の歌声で迎撃、大いなる災いは其方に気を取られているようだ。
これは本体を狙う好機――負傷はできれば避けたいが生還できるならそれで善し、そう覚悟を決めている興和にとって見逃せない。
鋏角衆はツルハシ型の『三砂』を構え、召喚存在の麒麟型オブリビオンの集団を避けるように迂回しつつ大いなる災い本体へと妨害を受けず速やかに距離を詰めていく。
飛斬帽【丹霞】の射程に入った瞬間、大いなる災いの顔面目掛け投擲。全身に響き苛む破壊の歌声とは別方向からの奇襲に、大いなる災いを首を振ってその頑丈な角で弾き飛ばす。
弾かれた糸で丹霞を引っ張り手元に引き戻す、しかしその間に大いなる災いは新たに2体の黄金の麒麟型オブリビオンを召喚して興和に向けて放つ。
先の召喚と合わせて大いなる災いは全ての装甲を代償にした形となっており、その守りは限界まで弱まっている。この2体のオブリビオンに上手く対応しつつ本体に反撃を叩き込めば一気に押し切れると興和は判断、向かってくるその2体に意識を集中しつつ三砂を構える。
そして、角で興和を貫こうと突っ込んできた麒麟の攻撃が届く前に、先に間合いに入った側の頭部に興和はカウンターのツルハシを振り下ろす形で叩きつけると同時、ユーベルコード【火纏】を起動する。
「八相、烈火」
三砂を突き立てた麒麟の頭部から炎が溢れ出し、周囲に一気に拡散する。直接三砂を受けた麒麟は当然のこと、遅れて突っ込んできた麒麟は迸る高熱の炎に巻かれ標的を見失ったように明後日の方向へ迷走。
高熱の炎は空気を伝わりそのまま巨大妖獣兵器まで奔り抜けていく。全身に纏わりつく高熱は既に全ての黄金の装甲を喪っている大いなる災いの漆黒の体表を容赦なく焼いて、毒に重ねて呼吸困難となった強大なるオブリビオンに大きな隙が生じた。
「これで終いだよ」
更に興和は黄金の麒麟型オブリビオンから抜いた三砂を全力で投擲、高速で縦回転するツルハシは大いなる災いの漆黒の胴体に見事突き刺さる。
回転により撃ち下ろされる形で刺さったその直撃地点から再び火纏の高熱の炎が溢れ、巨大妖獣兵器の全身に高熱の炎を奔り抜けるように広がっていく。体に直接撃ち込まれ、そして放射状に広がっていく火炎を抑制する術は弱り切った大いなる災いにはなく。
――断末魔、力なく嘶いた大いなる災いは迸る炎の熱と圧力に耐えかねたかのように内側から自壊し、消滅していく。
そして引き連れていた妖獣型オブリビオンの群れも戦いの余波と大いなる災いの崩壊に連動するかのように消滅し、数分後には妖獣達が存在していた事自体が幻だったかのように静まり返った。
瑞獣を象った忌まわしくも強大なオブリビオンはここに潰え、勝利の報告と共に猟兵達はグリモアベースへと帰還したのだった。
大成功
🔵🔵🔵