ピルグリメイジの姫君
●ミラージュ
バハムートキャバリア、港を持つ湾岸の城塞都市。
その中心部に聳える塔の頂きへと水流が駆け上がっていく。
夜の帳落ち、夜の帳には星明かりが明滅する。
「であえ、であえ! 姫が!『ヒヤルムスリムル』姫が拐かされんとしているのだぞ!!」
口角泡を飛ばす勢いで城塞都市の重臣の一人が叫ぶ。
しかし、衛兵たちは悉くが塔に駆け上がっていった水に触れた瞬間、その身に宿した力を奪われていく。
ばたばたと倒れる衛兵に重臣は呻く。
「馬鹿な……! 精鋭たる兵がこうも容易く……! これが『獣騎マーメイド』の力だとでもいうのか……!」
その視線の先には水流が渦を巻く光景であった。
塔の天頂にて集まった水が形をなしていく。
その姿は体高5mの鋼鉄の巨人……だが、その姿はどこか神秘的であった。
「聞くが良い。人間たちよ。我が名は百獣族が一人、マーメイドの『フィーア』。汝らの祖先によって滅ぼされし百獣族である。汝らの姫君は私が預かる。姫君を返してほしくば、『聖なる決闘』を受けよ」
その言葉に重臣は額から汗が噴出する。
そう、それはかつて在りし百獣族における常套手段であった。
『聖なる決闘』は申し込みによって相手が受けるものである。
時には正当な理由があれば代理を立てることや、また決闘の可否を申し付けることのできるものであった。
しかし、だ。
『相手の姫君を攫う』とおいう手段は、常套手段でありながら、姫君の心臓や従者が決して決闘の申込みを断れないがために『最上級の挑戦状』であるとされていた。
故にこの港を持つ湾岸の城塞都市に対して、決闘を申し込んだのだ。
「これは栄誉である。我が『フィーア』の名にかけて、汝らは強者とみなされたのだ。知っているぞ、『轟響』の二つ名を持つき氏が守護しているのだろう。其奴を姫君奪還のために寄越すがいい! 妾はまっている。これより海上を往く先にある小島にてな!」
そう言って、『獣騎マーメイド』は、その身を再び水流に変えると拐かした姫君、『ヒヤルムスリムル』姫を抱えて湾岸へと飛び込み、海を滑るようにして彼方へと消えゆくのだ。
その方角には確かに小島があった。
しかし、今は誰も住んでいないどころか、立ち寄ることもない辺鄙な場所だ。
かつて、海竜神のために設けられた小さな神殿の残骸があるばかりだ。
そこに百獣族が『ヒヤルムスリムル』姫を攫って立て籠もるなど、あってはならない事態であった。
しかも悪いことに、この港を持つ湾岸の城塞都市を守護していた円卓の騎士『スルーズル』は巡礼へと旅立ってしまった。
今、この状況に立向ることのできる……それこそ彼に匹敵する騎士がいないのだ――。
●バハムートキャバリア
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。バハムートキャバリア、その港を持つ湾岸の城塞都市の姫君が百獣族にさらわれてしまうという事件が予知されました」
彼女はピンチです! と叫んでいた。
姫と来れば、古今東西、様々な物語において攫われる宿命を持っているものである。
それはバハムートキャバリアにおいても同様であった。
「本来ならば、この城塞都市には凄腕の円卓の騎士……『轟響』の二つ名を持つ騎士の方がいらっしゃったようなのですが、どうやら不在のご様子。しかも、バハムートキャバリアにおいて『姫君を攫う』ことは『最上級の挑戦状』であるそうなのです」
なんで?
猟兵たちの疑問を感じ取ったナイアルテは頷く。
「姫君を攫うことで、その親類縁者、そして従者たちはこの決闘の申込みを決して断れないがために、最上のものと考えられているのです」
つまり、決闘の申込みの意思表示として姫君は攫われた、と?
そうなのである。
なんとも時代錯誤な、というか、傍迷惑な決闘の申し込み方であろうか。
まだ姫を己の嫁にしたいという欲望に忠実な魔王とかの方がしっくりくる理由である。
「攫われた姫君には、一切の危害も加えていないようです。なぜなら、あくまで決闘を申し込み手段ですからね。更に言えば、攫われた『ヒヤルムスリムル』姫は高貴な御方。百獣族にとっても人間とは言え、それは変わらないようです。最大の礼儀と厚遇を持って海原に浮かぶ小島の崩れた神殿の残骸に閉じ込めているのです」
そういうところまでテンプレートなんだな、と猟兵たちは思ったことだろう。
ともあれ、姫君に何か危害が加えられていない、というのは喜ばしいことであった。
ならば、と頷く。
それが騎士道精神に則ったおこないであるというのならば、こちらも正々堂々と姫君を救い出すために真正面から聖なる決闘を挑み、彼女奪還するほかないだろう。
「そのとおりです!」
ナイアルテはちょっとワクワクしているようだった。
何故なら、彼女はテンプレートが好きだからだ。
古典的と言われても何も問題ない。
様式美とは、最も美しい形だから、そうなっているのだ。なら、古典もまた同様である。真に美しく、真に優れているから色褪せることなく後世に伝わっているのだ。
「『ヒヤルムスリムル』姫を奪還しましょう!」
そう言ってナイアルテは猟兵たちを送り出すのだった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
バハムートキャバリアにて、最上級の挑戦状と名高き『姫君を攫って決闘を申し込む』百獣族が現れました。
港を持つ湾岸の城塞都市の姫である『ヒヤルムスリムル』姫は『獣騎マーメイド』に攫われてしまいました。
本来ならば、この城塞都市を守護していた騎士がいるのですが、彼は(勝手に)巡礼の旅にでてしまって不在なのです。
このピンチに皆さんの力が必要なのです。
※全ての百獣族(獣騎)は、例えスライムのような異形種族でも、会話によるコミュニケーションが可能です。彼らはいにしえの聖なる決闘に則り、正々堂々と戦いを挑んできます。
●第一章
姫が攫われたのは、海原に浮かぶ小島です。
はるか昔には、この小島は海竜神を祀る神殿があったそうですが、今は朽ちて残骸が残るばかりです。
ここに姫は閉じ込められているのですが、小島に近づくには周囲に待ち受ける百獣族の軍勢、『獣騎インプ』たちが待ち受けています。
彼らは姫を救出せんとする勇者を阻む者でありますが、その力を試し、資格の有無を見極めるために戦いを仕掛けてきます。
●第二章
ボス戦です。
見事軍勢を打ち破って力を示した皆さんの前に姫を攫った百獣族である『獣騎マーメイドイ』が現れます。
彼女は皆さんに聖なる決闘を挑んでくるでしょう。
この決闘を正視、姫を奪還しましょう。
●第三章
日常です。
小島での聖なる決闘を終えた皆さんは、姫を無事に城塞都市に送り届けるでしょう。
姫を救出した皆さんを城塞都市の人々はお祭り騒ぎで喜ぶことでしょう。
当然、皆さんは英雄として主賓です。
また、巡礼の旅に出ていた騎士もタイミング悪く戻ってきたりするかもしれません。
それでは、姫君はいつだってピンチであるもの、と証明するみたいに攫われる『ヒヤルムスリムル』姫を救出するために立ち向かう皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『獣騎インプ』
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POW : インプスラッシュ
【爪や尻尾 】の薙ぎ払い・斬り上げ・兜割り・【刺突】が同じ敵に全て命中したら、その敵に必殺の【スーパーインプギロチンアタック】を発動する。
SPD : インプボム
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【翼ユニット 】から【魔力爆弾の爆撃】を放つ。
WIZ : インプブラスト
【胸部発射ユニット 】から【魔力による超高熱のビーム】を放ち、敵及び周辺地形を爆発炎上させる。寿命を削ると、威力と範囲を増加可能。
イラスト:V-7
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
海原に浮かぶ小島。
その小島には小さな遺跡の残骸があった。
石造りの祭壇の上に『ヒヤルムスリムル』姫はいた。
「……わ、わわわわたしは、たべても、た、たべても、美味しくないと、おもいます……!」
舌足らずというか、噛みまくっているのは動揺しているからか。
そんな彼女に『獣騎マーメイド』は微笑んだ。
「食べはしない。妾が望むのは聖なる決闘。汝には迷惑をかけた非礼を詫びさせていただこう。だが、これが聖なる決闘である以上、そして汝が姫である以上、これは避け得ぬこと。どうか受け入れることだな」
「……で、でも、『スルーズル』様は、今、巡礼の旅に出て、おられるのですよ!」
「ふっ、聖なる決闘を先延ばしにする方便だな」
彼女が示す先には、海原。
そこにひしめくは、軍勢たる『獣騎インプ』たち。
彼らが臨戦態勢に入った、ということはつまり、そういうことだ。。
敵が来た、ということ。
否、勇者が来た、ということなのだ。
「やぁやぁ、遠からば寄って聞くが良い。我らは『獣騎インプ』。汝ら、『ヒヤルムスリムル』姫を救わんとする勇者であることは認めるところである。だがしかし、我らが主は強者との決闘を望まれている! ならば、まずは我らがお相手いたそう! いざ、尋常に勝負!」
その宣言と共に猟兵たちに『獣騎インプ』たちは真正面から決闘を挑むのだった――。
シル・ウィンディア
わぁ、凄い沢山のお出迎えだね。
名乗りを上げられたら、こちらも返さないとね。
わたしは、シル・ウィンディア。
異界の精霊術士であり、鋼の騎兵、レゼール・ブルー・リーゼを駆るものだよ。
いざ、尋常に勝負っ!!
あ、先に言うけど、わたしの本職は魔法使いだから。
だから、剣も使うけど魔法がメインからね?
先に言っておこっと。
スラスターとロングビームライフルの推力器で推力移動で空中機動を行って空中戦を。
ビットは使わず、右手のロングビームライフルを敵陣の真ん中に撃って、そのまますれ違いざまにビームセイバーで一閃っ!
接近戦を行いつつUCの詠唱を開始。
詠唱が終わったら
エレメンタル・ファランクスでまとめて撃ち抜くよ!
海原に飛ぶは、『獣騎インプ』の軍勢。
これは小島の廃神殿にて攫われた姫君『ヒヤルムスリムル』を幽閉している『獣騎マーメイド』の軍勢である。
彼らはしかし、姫君を攫うという所業をなして起きながら、邪悪ではなかった。
堂々と名乗りを上げ、姫奪還のためにやってきた勇者たる猟兵たちを出迎えていたのだ。
「我ら『獣騎インプ』。汝の勇気をたたえ、その力を試す者である!」
その堂々たる佇まい。
清廉と呼ぶにふさわしい高潔なる騎士道精神。
宿した心にシル・ウィンディア(青き流星の魔女・f03964)は、同じく海原に飛ぶキャバリア『レゼール・ブルー・リーゼ』のコクピットの中で感嘆の声を上げた。
「わぁ、すごい沢山のお出迎えだね」
「然り。汝ら勇者を出迎えるのに一騎のみとは無作法、無礼というもの」
「そこまで買ってくれているのは、ありがたいけれど。でも、名乗りを挙げられたら、こちらも返さないとね」
シルは礼儀を持って相対すると言わんばかりに青いキャバリア『レゼール・ブルー・リーゼ』のコクピットハッチを開け放ち、己が姿を『獣騎インプ』にさらす。
「わたしは、シル・ウィンディア。異界の精霊術士であり、鋼の騎兵、レゼール・ブルー・リーゼを駆るものだよ。いざ、尋常に勝負っ!!」
「面を見せるとは、何たる豪胆。されど、その勇猛さは確かである! ならば、その意気に答えねば、騎士の名折れ! いざ!」
互いにユーベルコードの輝きをアイセンサーに灯す。
「あ、先に言うけど、わたしの本職は魔法使いだから。だから、剣も使うけど、魔法がメインだからね?」
「問題なし! その力の全てを持って戦うのならば、全力であるということ。そこに何の誹りがあろうか! 謗られるべきは、自らの力を出し惜しみし、全力たる相対者を侮ることよ! なれば、その宣言こそが気高き心の発露より発せられたものであると我らは判断するのだ! 故に、受けよ! 我が全力を!」
『獣騎インプ』たちの胸部が展開し、砲口が現れる。
湛えられるは生命力を変換した熱量。
そう、それは膨大な魔力を発射するユーベルコードであった。
「インプブラスト!!」
軍勢から一斉に放たれる熱線。
凄まじい熱量を伴った魔力砲撃は『レゼール・ブルー・リーゼ』を射抜かんと四方から迫る。
「すごい熱量……一体どれだけの魔力を……!」
シルは一気に火線の中をかいくぐるようにして飛ぶ。
掠めただけで、青い装甲が炙られるようにして剥離していく。
強烈すぎる。
直撃を受けたらどうなるかなど言うまでもないだろう。
ビームセイバーの一閃を『獣騎インプ』は、その鋼鉄の腕で受け止める。
火花が散り、互いの視線が交錯する。
「まだだ! まだ全力ではないだろう!」
「……そうだよ! だから、受けてよね! わたしの全力!」
煌めくユーベルコードの光と共に魔法陣が展開する。
「闇夜を照らす炎よ、命育む水よ、悠久を舞う風よ、母なる大地よ…。我が手に集いて、全てを撃ち抜きし光となれっ!! エレメンタル・ファランクス!」
解き放たれるは、四つの属性を宿した魔力砲撃。
魔法陣から放出される魔力は、それそのものが光条の一撃となってほとばしり、『獣騎インプ』たちの体躯を撃ち抜く。
狙うは、胸部の砲口。
叩き込まれた魔力は、その内部にて誘爆を引き起こすように彼らの体躯を爆散させ、その苛烈なる爆風の中を青い『レゼール・ブルー・リーゼ』が飛翔し、小島の廃神殿へと踏み込むようにして敵陣の中を切り裂く――。
大成功
🔵🔵🔵
イウェイン・レオデグランス
筆頭騎士が巡礼中に姫が攫われるたぁ
この都市も運が無いというべきか、はたまた
(猟兵が察知したという意味では運があるのか、等と言外に思い)
此処に居合わせたのも何かの縁だ
手を貸すのは、まあ、必然か
(なお、筆頭騎士が勝手に巡礼に出てる事については,
自分も勝手に“出奔”しているのであまり人の事は言えない)
こちとら、速さと空中戦にはちょっとばかり拘りがあるんでな
上回れるかは兎も角、タメ位は張れるだろうよ
|カドワラデル《愛機》に搭乗
|獣竜《飛翔》形態に変形、並行起動したUCで回避力を上げ、狂飆翼剣で攻撃を叩き込む
(攻撃を叩き込んだ獣機を見やり)
――で。
この|狂飆《きょうひょう》は、其方のお眼鏡にかなったか?
港を持つ湾岸んの城塞都市。
その城塞都市にて姫君が百獣族に攫われたとの報を聞きつけたイウェイン・レオデグランス(狂飆の騎士・f44938)は嘆息すると同時に、これは鶏が先か卵が先かという問題にも似たようなものだと思った。
「筆頭騎士が巡礼中に姫が攫われるたぁ、この都市も運がないというべきか、はたまた」
そう、猟兵が予知したことをある意味で運が良いと表現するべきか。
それ加えて、この城塞都市の筆頭たる『轟響』たる二つ名を持つ騎士が出奔しているという事実は、彼にとっては耳が痛い所である。それを咎めるつもりもないが、なんだか『轟響』たるッ騎士を糾弾されるのは己をも刺されているような気分になってしまうのだ。
言外に含めた思いを飲み込んでイウェインは海原へと踏み出す。
これが運というのならば、数奇なる運命であるとも言えただろう。
「此処に居合わせたのも何かの縁だ。手を貸すのは、まあ必然か」
自身もまた出奔している身。
とやかく言えた義理ではないが、こうして誰かの助けになるというのならば、むしろ意味のあることであった。
「『カドワラデル』……イウェイン・レオデグランス、いざ」
グリフォンキャバリア『カドワラデル』が飛翔する。
獣竜へと変形し、一気に海原を切り裂くようにして姫君が攫われたる小島へと飛ぶ。
その姿を認めた『獣騎インプ』たちが、その疾風……否、旋風の如きキャバリアの前に立ちふさがる。
「待たれよ。これより先は、勇者たる者しか通さぬ」
「そうかい」
イウェインは特別思うところはなかった。
目の前に障害として『獣騎インプ』が立ちふさがるというのならば、これを排するまでである。
吹き荒れる風のように『カドワラデル』が空中を疾駆し『獣騎インプ』の翼から放たれる魔力爆弾の爆撃を躱す。
炸裂する爆風。
空中で爆ぜる爆弾の衝撃は、以下にグリフォンキャバリアとて体勢を崩すものであったことだろう。
だが、イウェインは巧みな操縦でもって『カドワラデル』の体勢を崩すことなく爆風の中を突っ切るのだ。
「な、なんと……! この爆撃の中を迂回するのではなく、直進、だと!?」
「こっちのほうが近いんでね」
ユーベルコードに煌めく『カドワラデル』の艦首たる獣竜の首。
いななくようにして更に加速した『カドワラデル』が宙を舞うようにして空へ飛ぶ。
『獣騎インプ』の頭上遥か高みより見下ろすイウェインは『カドワラデル』の広げた翼……その剣と成す一撃を持って、その鋼鉄の体躯を袈裟懸けに切り裂く。
「ぐ、おおおっ!?」
「くっ、なんたる疾き剣か!」
よろめく『獣騎インプ』。
彼らを取り巻く旋風のように『カドワラデル』が飛び回り、その剣翼でもって斬撃を見舞い続けるのだ。
「――で」
イウェインは笑むでもなく、ただ告げる。
「この|狂飆《きょうひょう》は、其方らのお眼鏡にかなったか?」
それはきっと、言うまでもないことであっただろう――。
大成功
🔵🔵🔵
鐘射寺・大殺
成る程、此度の百獣族の挑戦は、
姫の身柄を賭けた決闘か。あいわかった!決闘を受ける騎士が留守なのであれば、我輩が代わりになってやらねばのう。
【魔王の鎧装】を使用し、身の丈三倍の甲冑形態へと変身する。
「グワハハハ!魔王大殺見参!!!」
魔剣オメガと名刀神竜の二刀を以て相手いたそう!《武器に魔法を纏う》強化を施し、《覇気》《威厳》《精神の余裕》を見せて堂々と構え、インプを正面から迎え撃つ。腕を4~6本に増やし、爪と尾の一撃を《ジャストガード》《なぎ払い》で弾き、《アクセルコンボ》で反撃だ!魔剣オメガを《ぶん回し》、名刀神竜を振り下ろして《一刀両断》に切り捨てる。フハハハ、これが悪魔の王の力よ!!
百獣族はオブリビオンとして蘇ってなお、騎士道に拘り続ける者たちであった。
彼らにとって聖なる決闘というものは、何事においても不可侵であり、また重要なものであったのだ。
例え、彼らを過去、女子どもに至るまで虐殺しつくした人間の末裔が相手であったとしても、聖なる決闘の勝敗で敗北したのならば、それこそが神の決定であると従うのだ。
そこには愛憎を超越したものがあると言えるだろう。
だからこそ、此度の事件を引き起こした『獣騎マーメイド』は決闘の挑戦状として最大級の作法である『姫君の誘拐』を行ったのだ。
なんとも古風なことである。
「成る程、此度の百獣族の挑戦は、姫の身柄を賭けた決闘か!」
鐘射寺・大殺(砕魂の魔王・f36145)は、成る程、成る程、成る程と三度頷いた。
手にしているのは、先代魔王より譲り受けた大剣『オメガ』と魔界の刀匠が鍛えた一品『名刀・神竜』である。
「あいわかった! 決闘を受けるべき騎士が留守であるのならば、我輩が代わりになってやらねばのう」
手にした『名刀・神竜』を大殺は掲げる。
その刀身がユーベルコードの輝きを放った瞬間、彼の体躯は無数の装甲で覆われていく。
次第にその体躯は彼の身の丈三倍……即ち、百獣族が変形して至る獣騎と同じ背丈へと変貌する。
「グワハハハ! 魔王大殺、見参!!!」
海原に立つ彼の勇姿に『獣騎インプ』たちは呼応する。
「名乗るか。であれば、我らも名乗ろう。我らは『獣騎インプ』! 勇気ある者と見受けるが!」
「フハハハハ! 我輩は勇者ではなく、魔王よ! そして見やれ、これぞ常勝腐敗の王者の姿! さあ、正々堂々と死合うとしようではないか!!」
「ま、魔王……!?」
「その通りよ! 我が父より受け継ぎし魔剣『オメガ』と『名刀・神竜』を以て、お相手いたそう!」
膨れ上がる覇気。
その威厳に『獣騎インプ』たちは理解した。
確かに勇気ある者だけが強者ではないのならば、勇気なき強者もまた必然である。
「ならば、正々堂々!」
「応、来るが良い!!」
互いの視線が耕作した瞬間、『獣騎インプ』が踏み込む。
それに対して、大殺は真正面から迎え撃ち、装甲から飛び出した複数の腕でもって『獣騎インプ』の攻撃を受け止めるのだ。
爪による薙ぎ払い、尾による刺突。
それら全てを、その衝撃の起こりを潰すように押さえつけているのだ。
「なに……!?」
「フハハハ! これぞ、魔王の鎧装(デビルキング・アーマーメント)よ! 我輩の腕は二本程度ではないのでな! さあ、受けるが良い! 加速するぞ!!」
受け止めきった大殺は、装甲より生えた腕部でもって魔剣と名刀を振るう。
斬撃は鋼鉄の体躯を切り裂き、十字の傷跡を『獣騎インプ』の胸へと刻む。
「ぐっ、く!」
「ふ、さあ、次だ! 次はどいつなのだ? 恐れおののくがいい! 我輩の技量! 我輩の力! これこそが悪魔の王の力よ!! 恐れぬのならば、かかってくるが良い!」
大殺はそう笑い、迫る『獣騎インプ』の軍勢との大立ち回りを演じ、魔界の鍛冶職人が鍛えし巨大甲冑の力を示しては大暴れを海原にて見せるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
防人・拓也
リベレーションゼロに搭乗。
初めて来る世界だな。確か射撃武器は好まれない場所だったな。なら、丁度いい。修行の成果を見せる時だ。
仙術魔力を自然界から取り入れる為に目を閉じて集中。『モーショントレース&マジックリンクシステム』により、機体と自身の動きが同調し、機体全体に仙術魔力が溜まっていく。
十分に溜まったら戦闘開始。仙術魔力を取り入れたおかげで身体能力も向上している。反応もいつも以上に出来るだろう。
基本的に単発のパンチやキックで攻撃。敵に囲まれたら怒涛のパンチラッシュで突破。
敵の攻撃は避けるかビームシールドで防御、又は攻撃で相殺。
身体が軽い。機体もいつも以上に動けている気がする。
アドリブ・連携可。
人は鋼の咎を抱く。
人造竜騎は塊根と憎悪の空を飛ぶ。
それがバハムートキャバリアと呼ばれる世界である。
かつて在りし惨劇を人は己が祖先が引き起こした罪を懺悔し、騎士道に邁進することで、滅ぼした百獣族への鎮魂としてきた。
だが、百獣族とて過去になれば、骸の海より染み出すオブリビオンへと変貌する。
過去の堆積たる圧力に歪みながらも、彼らが抱くのは真の騎士道。
心に騎士道ある限り、過去の化身と成り果ててなお、彼らはかつて在りし道を邁進し続ける。
聖なる決闘。
それこそが彼らの求めるものである。
汎ゆる事柄の決定を運命づける戦いである。
「初めて来る世界だな」
防人・拓也(奇跡の復活を遂げた原初の魔眼の開眼者・f23769)は己が乗騎である『リベレーションゼロ』にコクピットの中で広がる海原を見やる。
このさきにあるという小島に百獣族に攫われた姫君が囚われているのだという。
だが、その道を阻むように『獣騎インプ』の大群が居並ぶ。
「新たなる勇者か。であれば、我らが、その勇気に見合う力があるのかを見定める。相違ないな?」
その言葉に拓也は頷く。
「こちらも修行の成果を見せる時だ」
「ならば、名乗ろう。我らは百獣族『獣騎インプ』……ほう、徒手空拳か」
「射撃武器は好まれないのだおる? なら、ちょうどいいと思った」
互いの瞳が、アイセンサーがユーベルコードに煌めく。
「勇気が光輝く翠色の仙魔疾走(ブレイブグリーン・マジックドライブ)!」
『リベレーションゼロ』に仙術魔力が満たされていく。
互いに海原の直上。
海面を切り裂く互いの踏み込み。
揺れる波の上で互いの拳が激突する。
ひしゃげることなく、鋼鉄の拳が火花を散らす。
「湧き上がれ、勇気!」
「練磨されているのは、内功というやつか。練り上げられた魔力を駆体にまとわせる、そういうからくりであるのなら!」
五体全てが武装。
それは『獣騎インプ』も変わらぬところであった。
振るわれる拳に蹴撃。そして、尾。
あらゆる部位が攻撃の手段として『リベレーションゼロ』へと襲いかかる。
「速い」
「五体を武器とするのが己だけだと思ったか!」
空中で激突する互いの攻撃。
弾かれる『獣騎インプ』の拳。相反する衝撃に寄って互いに決定打に至らぬのだ。
「身体が軽い。機体が反応する。これならばいつも以上に動ける! ならば、太陽のごとく光り輝け! 打ち込め、覚悟の意志を!」
怒涛の如き攻撃。
嵐のような殴打の応酬は、風斬り、空を斬り、鋼鉄すらも切り裂く。
加速していく攻撃に『獣騎インプ』は次第についていくことができなくなっただろう。
「お、オオオオッ!」
「これが、勇気が光輝く翠色の仙魔疾走!!」
振るわれた拳の一打が『獣騎インプ』の頭部を打ち据え、ひしゃげさせる。
崩れ落ちた鋼鉄の体躯が海中に没し、拓也はみなぎる魔力と共に小島へと向かうのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ファルシータ・フィラ
まったく……この世界はわたくしを萌え殺す気ですか!!
伝え聞いた!! 姫の様子が!!
姫が! 嚙み過ぎて! 神!!
祭壇の上とかに居たら間違いなく崇めますわ!!
わたくし、昂って参りましたが!?
今回の推しはヒヤルムスリムル姫に決まりですわ!!
騎士として助けるのではありません
その生き様を守る為にわたくしは命を懸けるのです!!
というわけで、『ティタニア』!!
ファルシータ・フィラ、参りますわ!
【チェンジリング】で攻めに攻めて押し通る!
飛翔形態の飛竜で回避しつつ、ファータ・バラージで反撃ですわ!
それにしても、百獣族の因縁はどこに終着するのでしょうね?
ヒヤルムスリムル姫とマーメイドのフィーア様
その邂逅に意味が?
「まったく……この世界はわたくしを萌え殺す気ですか!!」
ファルシータ・フィラ(アレキサンドライト・f44730)はそう叫んだ。
言っていることは、ただの言いがかりである。
しかし、彼女は身悶えしていた。
港を持つ湾岸の城塞都市。
伝え聞くところに寄ると、この都市の姫君が百獣族に攫われたのだという。
姫君の誘拐は、バハムートキャバリアにおいては絶対に断ることのできない決闘の挑戦状である。
そのため、最上級の挑戦であるとも言われる。
問題は、その攫われた姫君である。
ファルシータにとおって、『ヒヤルムスリムル』姫の仕草の一つ一つがツボであった。どんだけツボがあるのかわからない。108じゃないですかね。
「姫が! 姫の! 尊みが! 噛み過ぎて! 神!!」
何言っているのかさっぱりわからない。
「祭壇の上とかにいたら間違いなく崇めますわ!!」
怖い。
当の本人が聞いていたのならば、きっと羞恥のあまりに消え入るほどにか細い声で抗議の声を上げただろう。きっとその様子もファルシータにとってはツボなのかもしれないが。
どちらにしたって、ファルシータは推しを推すことをやめられない。
「わたくし、昂って参りましたが!?」
「ほう、であれば、その昂り、戦働きに焚べることができるか、人間よ」
『獣騎インプ』は、海上にありてファルシータの乗騎である『ティタニア』の前に立ちふさがっていた。
海上を急がねばならぬ身であるが、しかし『獣騎インプ』は姫君を攫った百獣族の軍勢である。
その一騎が今まさにファルシータの駆る『ティタニア』の進路を塞いでいるのだ。
「当然! 今回の推しは『ヒヤルムスリムル』姫に決まりなのですわ!! 騎士として姫君を助けるのではありません」
「ほう、騎士であるのに、そうではないと。その心は如何に!」
「その生き様を守る為に、わたくしは生命を懸けるのです!!」
「生命! ならば、その矜持! どこまで真か試してしんぜよう!『獣騎インプ』、参る!!」
瞬間、互いの鋼鉄の駆体が変形する。
『獣騎インプ』は翼を広げ飛翔し、『ティタニア』はチェンジリングによって飛翔形態のまま迫る爆撃を空中で躱す。
爆風が荒ぶ。
凄まじい衝撃が機体を揺らす。
だが、ファルウシータは『ティタニア』を駆り、高度な空中戦を繰り広げるのだ。
放たれる散弾が『獣騎インプ』から放たれる爆弾を撃ち抜き、爆散させる。
その爆風に煽られながら『ティタニア』は空中を飛ぶ。
「撃ち落とすか! だが!」
迫る『獣騎インプ』。
さが、刹那、『ティタニア』の機体が騎士形態へと変形し交錯する。
一瞬の交差。
だが、それで充分だった。
「……見事」
崩れ落ちるようにして『獣騎インプ』の鋼鉄の駆体が両断され、海中へと没していく。
その姿を見送ってファルシータは小島へと視線を向ける。
「百獣族の因縁はどこに執着するのでしょうね?」
姫君たる『ヒヤルムスリムル』。
百獣族『獣騎マーメイド』の『フィーア』。
この邂逅にも意味があるというのならば、何を意味するところなのか。
答えはまだでない。
生まれた波はいずれどこかの岸へと到達するだろう。それがいつのなのか、まだわからないけれど――。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の!
香りがしまぁぁぁぁすっ!!
今回はフィーア様……フィーア・ヒヤルムスリムル様
幻影の二つ名を持つ憂国学徒兵のひとり
……やはり、クロキャの憂国学徒兵とこの世界の皆様は
ヌル様以外にも関係がある気がしてなりませんね
というところでルクス様
相手はマーメイドであってセイレーンではありません
歌で対決しようとしない
姫がしんでしまいます
んーなんとなくここは
フォル!いらっしゃい!(鳥型キャバリア呼び寄せ
さて、残念ながら名乗る名を持たない程度のメイドですので
このまま真正面から行かせてもらいましょう!
ルクス様は支援を……演奏するのぉ?!
ええい、【ファム・ファタール】突撃行きます!
ルクス・アルブス
【ステルク】
エイルさんの香り、するんですか!?
今回は『フィーア』さん回だと思ってたんですが!
ま、まぁ、ステラさんが嗅ぎ分けたならするんだとは思うのですが……。
とりあえず今回はマーメイドとかなんとかいってますし、
歌と演奏の対決……え?違うんです?
あー……歌うのってセイレーンでしたか。
正々堂々音楽対決にはならないのは残念ですが、
わたしは演奏しますよー♪
って!?ステラさん!?
なんでフォルさん呼ぶんですか!?
このパターンは、いつもの……はわわわわわー!?
なんでフォルさんは反射的に咥えていくんですかー!
今回バンジーの必要ないですよね!?
支援なら後ろからでいいじゃないですか!
絶対離さないでくださいよー!?
鋼鉄の咎による連鎖。
それを運命と呼ぶのならば。
「|『エイル』様《主人様》の! 香りがしまぁぁぁぁすっ!!」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)はぶち抜いていた。
何をって、シリアスな空気を、である。
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)がシリアスアレルギーだからではない。
単純に彼女の並々ならぬセンサーというか嗅覚というか、説明しがたい何かが反応を示しているのだと言う。
今の雄叫びは、そのセンサーが反応した、ということなのだろう。
毎度おなじみ、メイドの雄叫びでござぁまぁす。
「『エイル』さんの香り、するんですか!?」
ルクスは思った。
今回はそういうんじゃないと思っていたのだ。だがまあ、ステラが嗅ぎ分けたっていうのならばそうなんだろうな、と納得していた。納得するんだ。
「『フィーア』様……『フィーア・ヒヤルムスリムル』様。『幻影』の二つ名を持つ『憂国学徒兵』の一人……やはり、この世界、クロムキャバリアの『憂国学徒兵』の皆様は」
ステラは思い描く。
一つの事実である。
「『ヌル・ラーズグリーズ』様以外にも関係がある気がしてなりませんね」
「そうなんですね。とりあえず、今回はマーメイドとかなんとかいってますし、歌と演奏の対決……」
「いえ、マーメイドであってセイレーンではありません」
「何か違いがあるんですか? え? 違うんです?」
「そりゃ、違いますよ。歌で対決しようとしない。囚われの姫が死んでしまいます」
「そんなことないですよ! それに正々堂々音楽対決にならないのは残念ですが、わたしは演奏しますよー♪」
「しないでください!」
本気でステラは止めようとした。
だが、ルクスの瞳は爛々と輝いていた。
歌と演奏。
それは火に油を注ぐようなもんである。
いや、この場合生み出されるは破壊だけであるところがステラにはなんともしがたい問題であった。止める? 無理無理。
「んーなんとなくここは。フォル! いらっしゃい!」
その言葉にステラのサイキックキャバリア『フォルティス・フォルトゥーナ』が飛来する。
「人造竜騎か。であれば、名乗るがいい!」
『獣騎インプ』は、その姿を認めて己が拳を突きつける。
だが、ステラは頭を振る。
「残念ながら名乗る名を持たない程度のメイドですので」
「あの! なんでフォルさんを呼ぶんですか!? も、もしかして、このパターンはいつもの……」
イエスイエス、イエスである。
わし、とルクスの体を掴む鋼鉄の嘴。
ふわっと浮かび上がる重力の感覚にステラの臓腑は震えた。
「はわわわわわわわー!? な、なんでいつもフォルさんは反射的に咥えてくるんですかー!? 今回バンジーの必要ないですよね!?」
「支援のために、ですから」
「なら、後方待機でいいじゃないですか。支援ってそういうものですよ!?」
「時間がありませんから、真正面からいかせてもらいましょう!」
「ぜ、絶対話さないでくださいよー!?」
「何をごちゃごちゃと……」
「フォル! あなたの速度で全て蹴散らしなさい!」
それはユーベルコードの輝きと共に炸裂する音速の突撃。
『獣騎インプ』であろうと、なんであろうと蹴散らす音速に至るソニックブームと共に海を割る鋼鉄の鏃と化すユーベルコードであった。
「突撃、いきます!」
「ひゃわわわわわっー!?」
ルクスの悲鳴と共に『フォルティス・フォルトゥーナ』は『獣騎インプ』たちを蹴散らし、一気に小島へと迫るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
サージェ・ライト
【理緒サージェ】
お呼びとあらば参じヒィッ?!
今日の理緒さんは阿修羅すら超える存在!?
これって騎士道精神的にはどうなんでしょうか!?
まぁ真正面から攻撃してるからいいのかなー
クノイチそんなに万能じゃないんですが!?
理緒さん落ち着きましょうステイステイ
そう、相手の話をよく聞いて……聞いてないー!?
ああ、もう!!
かもんっ!『ファントムシリカ』っ!
シリカさん!
地上に降りて『エンジェライトスラスター』展開っ
まっすぐどーん!といきつつ、
ファントムクォーツユニットで幻影を生み出してかく乱!!
後は【疾風怒濤】手数重視で!
「手数こそ正義!参ります!」
そういえば幻影ってアスアスのフィーアさんの二つ名でしたよね?
菫宮・理緒
【理緒サージェ】
『フィーア』さんの香りがしまぁぁぁぁっす!
(【ネルトリンゲン】で出撃、名乗りの途中で【M.P.M.S】全力ぶっぱ)
卑怯?
わたしの噛み姫攫っておいてなに言ってるのかな?
いますぐそこを通さないと、次は消すよ?
決闘ならわたしがしてあげるから、噛み姫返して。いますぐ。なう!
え、なにサージェさん?
そのツッコミ今必要?生身でカタパルト射出体験してみる?
クノイチだから平気だよね。たぶん。
だいじょーぶ。わたしは冷静だから。
頭にきすぎて冷静になるって、たまによくあるよね!
で、なんだっけ?
遠かったら寄ってこい、だっけ?
おっけー。このまま【ネルトリンゲン】で轢き潰す。
サージェさんサポートよろしくね。
それはいつものことであった。
いつものように名乗り口上でもって己が戦場に来たことを知らしめるためのものであった。
そう、クノイチであっても口上というのは大切である。
ちょっとクノイチ観というものが、あれなのかなって思わないでもない。だがしかし、クノイチといってもゲームの中のクノイチである。
本物の、正真正銘なるハニトラばんばんかけるようなびっくり諜報員ではないのだ。
だから、目立っても仕方ない。
だがしかし、である。
そんないつものように前口上でもって己のクノイチ具合をアッピールしようっていうサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)の目論見は、なんていうか、予想外の方向からキャンセルされた。
「お呼びとあらば参じ――」
「『フィーア』さんの香りがしまぁぁぁぁっす!」
「ヒィッ!?」
うぇ!? とサージェは目を回すようであった。
そう、彼女の前口上をキャンセルしたのは、珍しくも菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)の雄叫びであった。
キャラが違う気がするのは気の所為だろうか。気の所為ではないが気にしたら負けってやつかっもしれない。
空中空母『ネルトリンゲン』の艦橋のシートに座る彼女は思いっきり叫んでいた。
それはそれは思いっきり叫んでいた。
わんわんわんと反響する雄叫びは海原に新たなる波を刻むものであったし、『獣騎インプ』たちは何事だと目を丸くしていた。
サージェも同様であった。
「な、なんだ!? 一体何だ、今の雄叫びは!?」
困惑する彼らをよそにサージェは頷いた。
わかる。
「今日の理緒さんは阿修羅すら超える存在!? これって騎士道精神的にはどうなんでしょうか!? 飛び道具は卑怯っていいません?」
ばかすか『ネルトリンゲン』から放たれるミサイルランチャーの砲火。
飛び道具はちょっとね、というのがバハムートキャバリアである。そんな中で理緒は構わず『ネルトリンゲン』からミサイルランチャーに点火させては、雨あられと打ちまくっているのだ。
「卑怯? わたしの噛み姫攫っておいてなに言っているのかな?」
「えぇ……」
「いますぐそこを通さないと、次は消すよ? いい? 決闘ならわたしがしてあげるから、噛み姫返して。いますぐ。なう!」
「な、何を言っている? か、噛み姫?『ヒヤルムスリムル』姫のことを言っているのか!?」
「そうだよ! はやく、できるだけ速やかに! ばいなう!」
「お、落ち着いて理緒さん。ステイステイ。人の話を聞きましょう。よく聞いて……」
「え、なにサージェさん? そのツッコミ今必要? 生身でカタパルト射出体験してみる? 今ならミサイルランチャー、空いているよ? クノイチだから平気だよね。たぶん」
「く、クノイチなんだと思ってるんですか!?」
多分、芸人位の感じである。
体張ってなんぼ、位の感じの。
「だいじょーぶ。わたしは冷静だから。シールド展開しているし、狙いなんていいから、化かすか撃って」
バハムートキャバリアにおける決闘の作法なんてなんのそのである。
理緒の目はハイライトがいないようだった。
「頭にっきすぎて冷静になるって、たまによくあるよね!」
「やばぁ」
サージェは『ファントムシリカ』に避難して、一気に海上へと躍り出る。
スラスターの展開に寄ってサージェは、君子危うきに近寄らずと言わんばかりに『ネルトリンゲン』から離れる。
背を向けた仲間にぶち込むことはないだろうと判断してのことであった。
「い、一体なんなんだ、あの空に浮かぶ船は!? むちゃくちゃではないか!」
「ええ、そう思います。ですが」
「で、なんだっけ? 遠かったら寄ってこい、だっけ? おっけー。このまま『ネルトリンゲン』で轢き潰す」
理緒の声が空より降り注ぐ。
大丈夫か? やっていることは悪役のそれっぽいが!
「だいじょうぶだいじょうぶ」
「こわ」
「り、理緒さん、お、落ちついてください! て、敵なら私がささっとやりますから! そ、そういうわけで」
「お、応!」
「手数こそ正義! 参ります!」
サージェは怒りのあまり大魔王になったかのような暴虐を繰り広げんとする理緒の凶行を押し留めるために、そのユーベルコードで持って『獣騎インプ』との高速戦闘を繰り広げたのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
皇・銀静
機神搭乗
ふん…風習とは便利なものだな
人を浚って殺しあいを強要とか笑える騎士道だ
だが…殺しあいが出来るのは健全でもある
「サイキックハーツ世界はできないもんね☆」
どちらにせよ…叩き潰すとしようか
「主ー☆名乗りをしないとだよ☆」
ち…殺しあいなのに試合のつもりか
…銀静だ
骸の海への手土産に覚えておけ
【戦闘知識】
敵群の位置と動きを捕捉
陣形を解析
【空中戦・念動力・弾幕・二回攻撃・切断・功夫・リミットブレイク】
飛び回りながら攻撃を回避して
UC発動
槍の神同時発動
拳による蹂躙
魔剣による斬撃
槍による刺突
真空波で飛んでるのは落とし
可能な限り複数の敵に叩き込む
全く…姫を助けるとか柄でもない
「そうかな?主らしいよ☆」
聖なる決闘。
それはバハムートキャバリアにおける意思決定権でもあると言えるだろう。
他者と他者とが存在するから争いが生まれる。
まったく同一であったのならば、争いは生まれない。
争いが生まれる原因の根底にあるのものは、どこまで行っても己と他者との違いでしかない。
違うから争う。
「ふん……風習とは便利なものだな」
皇・銀静(陰月・f43999)は吐き捨てるようだった。
姫君を攫って、断られぬ決闘を申し込む。
それは彼にとっては、いびつなカタチであった。
言ってしまえば、それは殺し合いの強要とも言えるだろう。
「笑える騎士道だ」
「我らが決闘を嘲るか。ならあば、許してはおけぬ」
迫るは軍勢。
『獣騎インプ』たちは、銀静の言葉に怒りを漲らせているようだった。
「だが……殺し合いが出来るのは健全でもある」
『サイキックハーツ世界ではできないもんね☆』
己が乗騎の言葉に銀静は頷く。
死を克服した世界に、殺し合いは発生しない。
が、ユーベルコードであれば相手を殺せる、という現状はまた異なる意味を持ち得るものであったことだろう。
「どちらにせよ……叩き潰すとしようか」
『主ー☆ 名乗りをしないとだよっ☆』
「ち……殺し合いなのに試合のつもりか」
「命をかけた決闘を嘲りながら、それを言うか。己を殺す者の名を知らずして、如何にして剣を交える。それは生命を奪うことへの呵責すらないということだ。そのような者が名乗るなど!」
「……銀静だ。骸の海への手土産に覚えておけ」
「不要ぬ。我らが聖なる決闘を嘲笑した報いは、受けて頂く。ただそれのみよ!」
鋼鉄の体躯が震え、『獣騎インプ』たちが一斉に銀静へと迫る。
相対するは、邪気を纏った風。
機体に満ちる力は、ユーベルコード。
裏白虎門開門(ウラビャッコモン)によって放たれた風は、真空波となって『獣騎インプ』たちに視えぬ拳として放たれる。
「ぬぅっ!? なんだ、視えぬ衝撃が!」
「視えない、か。だろうな。だからこそ、だ」
銀静は踏み込む。
己が拳をトレースする機体の鋼鉄の拳が『獣騎インプ』の体躯を捉える。
一撃、一撃、その拳が打ち出される度に『獣騎インプ』は視えぬ拳に打ちのめされるようにして、距離を詰めることなく海中へと没していく。
「面妖な手段を!」
「全く……姫を助けるとか柄っでもない」
『そうかな? 主らしいよ☆』
「同意はしない」
その言葉と友に銀静は海原にて、迫りくる『獣騎インプ』の大群を相手取り、その力を発揮するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
浚われたお姫様を助けるとか故郷でもお伽噺だぞこれ
「勇者やっちゃう御主人サマ☆」
いや…これ単なる誘拐だろ
と言うか風習とかいかれてるっての
つー訳で…誘拐幇助とかそういうのでおめーら逮捕だこのやろー
「名乗り名乗り☆あ、メルクリウスだぞ☆」
カシムさんだ!しくよろ!
【戦闘知識・視力・情報収集】
敵群の位置と動きと構造を把握
悪いがヒヤス…んぐ!?(噛んだ)
【空中戦・念動力・弾幕・属性攻撃】
飛び回りながら念動光弾を乱射
その動きを止めて
UC発動
石化弾の弾幕を展開してその動きを停止させる
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
鎌剣で切り刻み武装は強奪
不殺徹底
力を試すのにいちいち命なんぞかけてんなばっきゃろーが
攫われた姫君。
それを奪還せんとする騎士。
それはいわば、はじまりはじまりで幕を開ける御伽噺であった。
「いや本当にな!」
『勇者やっちゃう? 御主人サマ☆』
その言葉に、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は頭を振る。
「いや……これもう単なる誘拐だろ。というか、これが最大級の挑戦とかイカれてるっての」
そう、これこそが聖なる決闘における最大級の挑戦状なのだ。
身内を攫われた者に決闘を断る理由はない。
不退転の覚悟で迫る者に、どれほどの力が宿るかなど言うまでもない。
そんな強者との決闘を望む百獣族が少ないわけがない。
少なくとも、『獣騎マーメイド』はそうであったのだ。
「ったく、誘拐幇助とかそういうので、おめーら逮捕だこのやろー」
「聖なる決闘である。そのための挑戦状。姫君には申し訳ないことをしたが、これもまた決闘の作法というもの。甘んじて受け入れて頂くほかない」
「おーおー居直りやがってよぉ! ったく!」
『ご主人サマ、名乗り名乗り☆ あ、メルクリウスだぞ☆』
「カシムさんだ! しくよろ!」
「ふざけた態度だが、名乗られたのならば、名乗らねばならぬ。『獣騎インプ』。いざ!」
解き放たれる魔力。
その胸部からせり出した砲口が一瞬にして赤熱し、魔力の熱線をっ解き放つ。
「っと、おお!?」
海を割るような熱線の勢いにカシムは呻く。
「威力はすげーみてーだな! だが、悪いがヒヤ……ンんぐっ!?」
噛んだ。
名前が、ちょっと言い辛いのだろう。わからないでもない。
が、それで動きは止められない。
ユーベルコードに輝く瞳。
「躱せるかよ、竜眼魔弾(リュウガンマダン)!」
超高速で放たれる魔法のミサイル。
それは触れれば石化をもたらす属性を込められたミサイルであり、『獣騎インプ』たちを襲う。
凄まじいまでの弾幕に『獣騎インプ』たちは宙を舞うようにして躱していく。
「大口を叩くだけはあるが! 隙だらけだぜ!」
放たれる鎌剣の斬撃。
その剣閃は『獣騎インプ』たちの胸部砲口や翼、腕を寸断し、海中へと叩き落とす。
「が、力を試すのにいちいち命なんぞかけてんな、ばっきゃろーが」
価値観の相違である。
彼にとっての命とはそういうものではない。
が、それは百獣族にとってもそうだ。
どこまで行っても違う存在なのだ。
価値観も違えば、育ってきた環境も違う。
文化も違う。思想も違う。世界も違う。
あらゆるものが違うからこそ、カシムの心は他者との軋轢を生み出す。
例え、それがどうしようもなく埋まらぬ溝であったとしても、己が信念と呼ぶのならば、それを押し通す道には生まれた傷より流れる血潮が河となってなお、進まねばならぬのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『獣騎マーメイド』
|
POW : 人魚獣騎
レベルm半径内を【魔法の海】で覆い、[魔法の海]に触れた敵から【魔法力】【魔法抵抗力】【潜水能力】を吸収する。
SPD : ディープマーメイド
体高5mの【高速潜行形態】に変形する。レベルm半径内に【水】と【魚】の精霊を放ち、敵にダメージ、味方に回復を与える。
WIZ : マーメイドスピア
レベルmまで伸縮する【水の刃】で対象を捕縛し、望めば【棘状と鋸状に変化した水】による継続ダメージを与える。
イラスト:三友 茶治
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ヘルゲ・ルンドグレン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『獣騎インプ』の軍勢を退けた猟兵たちは、一気に小島へと迫る。
遠目に見ても、小さな島だ。
その上にはかつては神殿があったであろう名残たる廃墟があった。
崩れた支柱。
砕けた石畳。
いずれもが、物悲しさを思わせるものであった。
その一際高い場所……草木がはびこる中にあって、未だ祭壇のように聳える支柱に一人の女性が座していた。
彼女こそが攫われた姫君『ヒヤルムスリムル』である。
その眼前に待ち構えるようにして立つのが百獣族『獣騎マーメイド』たる『フィーア』であった。
「よくぞ来た、勇者よ。歓迎しよう。我が名は『獣騎マーメイド』が一騎、『フィーア』。姫君を救いたくば、妾と決闘は避け得ぬ。死力を尽くして戦うことこそ、決闘。であれば」
構えるは、三叉槍。
手繰るは、水流。
煌めくは、ユーベルコードの輝き。
「いざ、尋常に勝負」
廃神殿を背に始まる聖なる決闘。
その火蓋が今、切って落とされた――。
鐘射寺・大殺
むう、奴がヒヤルムスリムル姫を拐ったという百獣族か。まさに伝説に聞く人魚のようだのう。
それでは望み通り、聖なる決闘を始めるか。
む、戦場が海水で満ちていく。成る程、水中戦で我輩らを葬るのが目的か!だが水中は奴の独壇場、無理に合わせてやる必要もあるまい。ワイバーンの有栖川ジュリエットに騎乗し、水面近くを飛行しながらの《空中戦》だ。これなら互いに攻撃せざるをえない状況のため、一方的な展開になることはあるまい。とはいえ、奴の三叉槍や水魔法には警戒せねばならぬ。
こちらは【魔王の雷】を降らせてマーメイドを牽制しつつ、《騎乗突撃》を仕掛ける!名刀神竜と魔剣オメガを振るい、《斬撃波》による遠距離攻撃も行うぞ。
百獣族は変形することによって、その身を鋼鉄の巨人へと変貌せしめる。
『ヒヤルムスリムル』姫を拐かした百獣族『獣騎マーメイド』、『フィーア』の姿は、まさしく伝説に聞く所の人魚そのものであった。
身に纏う水がうねるようにして廃神殿の周囲へと広がっていく。
小島であっても容易く海中に没するかのような大量の海水を手繰る力によって、周囲は彼女の領域と化す。
「むう、やつがそうなのか?」
鐘射寺・大殺(砕魂の魔王・f36145)は思わず呻く。
彼が知る人魚伝説そのものであったように思えたからだ。
鋼鉄の体躯も人魚を模している。
「疑うか。であれば、名乗ろう。我が名は『獣騎マーメイド』、『フィーア』である。今よりこの領域は海中。そして、この海中にありて、妾は無敵足り得るのだ。さあ、名乗るがよい。己が名を、妾に屠られる者の名を教えよ」
「フハハハ! なるほど! ならば、望み通り、聖なる決闘の開始を我が名と共にはじめさせてもらおうか! 我が名は鐘射寺・大殺。暗黒剣の悪魔の魔王にして魔剣士よ! 平伏せ、人魚よ!!」
手繰る水の力によって大殺の体躯は海中に没する。
「威勢はよいようだが!」
「なるほどな! 水中戦で我輩らを屠るのが目的か!」
大殺は正しく理解していた。
この海中にあっては、『獣騎マーメイド』の独壇場。
無敵と言っても過言ではない。
だがしかし、だ。大殺は海面に手を伸ばす。
その手を掴むのは、黒鱗黒翼の竜『有栖川ジェリエット』であった。
ツンデレ気質が滲み出るような一睨みに大殺はむしろ笑って返した。
「恩に着るぞ、ジェリエット!」
「海面に逃れたか。だが、それでどうなるというわけでもあるまい!」
迫るは『獣騎マーメイド』が手繰る海水。
まるで竜巻のように水流がうねり、大殺と『有栖川ジュリエット』を襲う。
背に乗った大殺は、その瞳をユーベルコードに輝かせる。。
「このままやられっぱなしでは魔王の名が廃るのでな! 見よ、これこそが天をも支配する、我輩の権能! とくと目に焼き付けるがいい!!」
『獣騎マーメイド』が海水を操るのならば、大殺は天を操る。
「暗雲……だと?」
「そうとも。暗雲は雨を運び、風を荒ばせる。そして!」
権能。
大殺が突き上げた魔剣と名刀が交差した瞬間、空が吠えるように雷鳴を轟かせた。
それは魔界の黒き稲妻である。
ほとばしる稲妻は、一気に『獣騎マーメイド』の体躯を打ち据え、その動きを止める。
「ぐっ……なんたることか。天候すら操るだと!?」
「そうとも、これこそが我輩の権能が一つ! 貴様とて容易く逃れるものではない!」
振るわれる斬撃が『獣騎マーメイド』の手にした三叉槍と打ち合わされ、火花を散らす。
軋むような音が響き、互いの力が拮抗していることがわかるだろう。
弾くようにして大殺が『獣騎マーメイド』を吹き飛ばし、『有栖川ジェリエット』の背に飛び乗る。
「距離を離して……どうなる!」
「こうするのだ!」
二振りの魔剣と名刀。
その振るう一撃は斬撃波となって十字に走り、『獣騎マーメイド』を打ち据える。
戦いの火花は苛烈さを知らしめるようであったし、その戦いは聖なる決闘にふさわしい一進一退。
互いに切り結ぶ姿は、空と海とを分かつものであった。
一歩も譲らぬ戦い。
その行く末は、戦いの始まりを飾るのにふさわしいものであった――。
大成功
🔵🔵🔵
イウェイン・レオデグランス
攫われし美姫と共に廃神殿にて待ち受ける麗しき人魚騎、とでも吟遊詩人なら謳うんだろうな
無学の身にゃあ良く判らんが
(等と嘯きつつ、|人造竜騎《カドワラデル》を騎士形態に変形しつつ島へ降り立つ)
(なお、城付きであったからには言うほど無学な訳でもない)
お望みの轟響の騎士で無いが、御相手仕ろう
(内心では陸戦空中戦寄りの愛機とはあまり相性が良くないなと思いながら、狂飆剣を構える)
流石に潜行する相手を狙い穿つのは厳しいが、数撃てば当たるだろう、よ!
(UCを起動。騎士形態のまま、多段攻撃で召喚される精霊への攻撃に巻き込む形で攻撃)
お前さんらも此方の過去の行いに思う事もあるだろうが此れも決闘の結果だ
悪く思うなよ
英雄は謳わない。
だが吟遊詩人は謳う。
英雄の歌を。
麗しの姫君は賊に攫われ、勇気ある者を待つ。
廃された神殿は物寂しく、されど満ちるは海水。こんこんと湧き出す泉の如く、それは『獣騎マーメイド』の力の源であった。
「クッ、クククッ! やはり勇者であったか。我が軍勢である『獣騎インプ』を退けた手前、見事。であれば、この『獣騎マーメイド』が一騎、『フィーア』が相手取るに相応しき者であるのは自明!」
『フィーア』と名乗る『獣騎マーメイド』は、その力を手繰るように海水をを無数の魚の如き魔法の弾丸へと変貌させた。
「なるほどな。まさしく吟遊詩人共の好きそうな題材だ」
攫われし美姫と廃神殿。その主たる麗しき人魚騎。
共に麗しき者。
救うべき者と立ちふさがる者。
そして、立ち向かうは勇者。
「柄じゃあないが」
加えて言うなら浅学無学の身。
それは嘯くような声であったが、イウェイン・レオデグランス(狂飆の騎士・f44938)は己が乗騎、グリフォンキャバリア『カドワラデル』を騎士形態へと変形させ、島へと降り立つ。
人造竜騎の体高であっても膝上まで浸水した小島。
もはや海に浮かぶのは、廃神殿の遺構のみである。
「ほう、大空を飛ぶ獣竜かと想いきや、妾の領域に立つとは見上げたことであるが?」
「お前さんのお望みである『轟響』の騎士ではないことをまずは詫びようと思ってな」
「ふっ、律儀な奴よ。だが、その潔さ、妾は好ましく思う」
浮かぶ魚を模した魔法の弾丸。
未だ宙を駆け抜け、『カドワラデル』を撃ち抜かぬのは、『獣騎マーメイド』の矜持が伺えることであった。
「望みの騎士でなくとも構わぬと?」
「妾の軍勢を打ち破って、此処に立つ以上、勇者であることに変わりあるまい。であれば、何が不服なものか。改めて名乗ろう、騎士よ。我が名は『フィーア』、『獣騎マーメイド』の『フィーア』である」
「イウェイン・レオデグランス、お相手仕ろう」
「ならば、いざ!」
イウェインは『カドワラデル』のコクピットの中で相性が良くないと理解していた。
そう、『獣騎マーメイド』は水辺での無類なる強さを誇る百獣族である。
周囲は海水ばかり。
であれば、当然此方には分が悪い。
海中に潜航されたのならば、手出しが出来ぬ。
だが、己を潔いと言った『獣騎マーメイド』もまた潔い者であった。
宙を飛ぶ魚の形をした魔力の弾丸が一斉に『カドワラデル』を襲う。
四方八方から迫る弾幕をイウェインは手にした剣で弾き続ける。圧倒的な手数であった。そう、それこそが『カドワラデル』の騎士形態の力。
手数の多さは、その技量に直結する。
「なんと!」
「流石に凄まじい数だよ。無類のと言える。だがよ……お前さんもまた潔い騎士だ。その点においては好ましく思う。此方の過去の行いに憤りながらも聖なる決闘を挑む点もな。だが、悪く思うなよ」
これが、とイウェインはつぶやき、海中より飛び出した『獣騎マーメイド』を捉える。
手にした剣の一閃。
僅かな、それこそ刹那に満たぬ瞬間においてなお、彼の剣の一撃は『獣騎マーメイド』を捉え、その鋼鉄の体躯へと叩き込まれる。
砕けた鎧。
その破片のさなかにイウェインは、その鋭い眼光をもって、一瞬を制するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シル・ウィンディア
お姫様を救いに来た騎士…。
ってわけじゃないけど、困っている人がいるからここに来たよ。
フィーアさん、まずはお出迎えありがとう。
そして、名乗らせてもらうよ。
わたしは、シル・ウィンディア。
異界の精霊術士であり、鋼の騎兵を駆るもの。
いざ、尋常に勝負っ!!
とはいえ、相手のステージでは戦えないよなぁ…。
ただでさえ、ブルー・リーゼは空戦型だから。
よし、ここはひとつこれで行くか。
推力移動で加速しての空中機動を行うよ。
多重詠唱で魔力溜めとUCの詠唱を同時進行で行いつつ一気に接近してビームセイバーで一閃!
斬り抜けた後は、振り向きざまに全力魔法のヘキサドライブ・エレメンタル・ブラスト!
わたしの全力遠慮せずもってけ!
「お姫様を救いに来た騎士……ってわけじゃないけど、困っている人がいるからここに来たよ」
シル・ウィンディア(青き流星の魔女・f03964)は、青き己の乗騎である『レゼール・ブルー・リーゼ』を駆り、『獣騎マーメイド』の前に辿り着く。
軍勢との戦いは苛烈であった。
だが、シルは消耗していても構わず、この場に立っていただろう。
なぜなら、彼女の語る言葉の通りであったからだ。
オブリビオンと化した百獣族。
その憎悪、怨恨は言うまでもないことである。
その怒りもわかる。
だが、世界を過去の化身に明け渡すことはできない。
過去と今、どちらが大切かなのではない。
オブリビオンが今をすりつぶして未来の可能性を途絶えさせてしまうことが重要なのだ。
「だから、止めさせてもらうよ」
「義心にて助太刀する、というわけか。ならば、その心のありようもまた騎士であろう。姿形が重要なのではない。その心こそが騎士道の核となるのならば、そなたもまた騎士であろうことに疑うところはない」
『獣騎マーメイド』は、シルを目の前にして手にした三叉槍を構えた。
彼女を騎士として認めたのだ。
「だが、義心あれど勇気なくば、その矜持も貫き通すことはできまい。そして、力なくば、勇気はただの蛮勇に堕落するのみ。なればこそ、妾は、百獣族が一騎として名乗ろう。『フィーア』、『獣騎マーメイド』の一騎よ」
「お出迎えありがとう。名乗らせてもらうよ。わたしは、シル・ウィンディア。異界の精霊術師であり、鋼の騎兵を駆るもの。いざ」
「尋常に」
「勝負っ!!」
互いの瞳がユーベルコードに輝く。
この戦場は『獣騎マーメイド』にとってはホームであろう。
海水が満ちた場にあって、彼女の力は十全である。三叉槍を差し向けた瞬間、海水がまるで鞭のようにしなって『レゼール・ブルー・リーゼ』へと迫るのだ。
「くっ……さすがは」
空戦型であるからこそ、このユーベルコードの一撃をなんとか躱すことができた。
しかし、しなるような水流は追撃するように空中にて『レゼール・ブルー・リーゼ』に追いすがる。
詠唱を続ける。
躱し続けながら詠唱を続けることは、シルの呼吸をひどく乱すものであった。
更に加速する。
推力による加速度Gが肺を圧迫する。
多重詠唱を重ねているからこそ、余計に彼女の心肺に負荷が掛かっている。だが、それでも溜め込まれた魔力がモニターに示されている。
「逃げてばかりではな!」
「ここっ!」
振るうビームセイバーの一閃が水流を切り裂く。
だが、切り裂いても水流は勢いを取り戻して『レゼール・ブルー・リーゼ』に迫る。
「っ!」
「水の流れを断ち切ったところで!」
「そうだね。だから……闇夜を照らす炎よ、命育む水よ、悠久を舞う風よ、母なる大地よ、暁と宵を告げる光と闇よ…。六芒星に集いて全てを撃ち抜きし力となれっ!」
魔法陣が展開する。
迫る水流の先には『獣騎マーメイド』。
ほとばしる6つの属性を複合させた巨大な魔力砲撃が一気に解き放たれる。
「ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラストッ!!」
奔る魔力が水流を蒸発させながら『獣騎マーメイド』へと迫る。
「わたしの全力、遠慮せずにもってけ!」
その魔力砲撃の一撃は苛烈。
蒸発する水流が膨れ上がり、海面を吹き飛ばすかのような威力を示すように穿つのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【理緒サージェ】
『マーメイド』?『フィーア』?
たしかに『フィーア』さんはマーメイドくらい可愛いけど、わたしの前でその名を騙るとは……!
決闘したいというなら受けて立つよ!
そしてそちらが三叉槍に水流とユーベルコードなら!
アイテム
→装備
・サージェ EQP
・『希』 EQP
『ちょっとおねーちゃん!アイテム扱いとかひどくない!?』
よしこれで準備おっけい!(あえてスルー)
【偽りの丘】を発動したら……。
サージェ&ファントムシリカ砲発射!(カタパルトからずどーん)
足止めよろしく!
かーらーのー!
『希』ちゃんアタック!(アサルトラムでどかーん)
ネルトリンゲンの質量はどうだー。
噛み姫返してくれる気になったかな?
サージェ・ライト
【理緒サージェ】
うーむ、大昔(?)のアニメに出てきそうな水のロボ!!
ですが、ヒヤルムスリムル姫を助けるためには
戦いを避けて通れなさそうです
理緒さん……ヒィッ?!
どうしてここでキレました!?
このせかいのフィーアさんはぁ、めのまえのマーメイドだとおもうんですけどぉ?
アッハイダマリマス
これは後方で待機しているのが一番安全……あるぇ!?
私とシリカさん装備アイテム!?
装備アイテムですらなかった?!(何故か射出されて
ええい、シリカさぎにゃぁぁぁぁぁぁぁ?!
これでファントムシリカが壊れても、私悪くないですよね!?
ともあれ、加速しているならそれもりようして
【電光石火】で勝負です!
うちの理緒さんがすみません!
魔力砲撃の一撃。
その衝撃に海面が穿たれるようにして蒸発している。
濛々と広がっていく水蒸気。
そのさなかに双眼が煌めく。
『獣騎マーメイド』であった。猟兵のユーベルコードは凄まじい。
だが、彼女はなんとか海中に逃れることで砲撃の一撃を減衰させていた。それでも装甲が焦げ付くのは防ぎ得ぬようであった。
「ふ、ふ……」
彼女は笑っていた。
これが強者との戦い。肌がひりつくような緊張感。
聖なる決闘にふさわしい戦いであると彼女は感じているようだった。それは歓喜の感情だった。
ただ殺され尽くされるだけの戦いではない。
今でも、過去の人間の所業に理解を示すことはできない。
が、今は違う。
この戦いは彼女がかつて望んだものだ。
猟兵たちは戦場の不利を意に介さない。理解しても立ち向かってくる。喜ばしいことだ。
「ならばこそ、この『獣騎マーメイド』が一騎『フィーア』は、示そう。汝らの勇猛さを讃え、妾の力を示そう!」
その言葉に、ぴくりと眉根を寄せる猟兵がいた。
そう、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)である。
「『マーメイド』?『フィーア』? 確かに『フィーア』さんはマーメイドくらい可愛いけれど、わたしの前でその名を騙るとは……!」
「ヒィッ?! ど、どうしてここでキレました!?」
理緒が急にキレているのでサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)はビクっとしてしまった。
唐突が過ぎると彼女のは思った。
確かに?
『獣騎マーメイド』のデザインが、大昔? のアニメにでてきそうなロボしてんなぁとか思ったりもした。
だが、囚われの『ヒヤルムスリムル』姫を救出するためには戦いは避けては通れない。
ならばこそ、この水辺での戦いは苛烈なるものになるであろうと考えていたのだ。
どう攻略すべきか、とか。色々考えていたのだ。
だが、理緒がキレた。
どこに逆鱗があったのかとサージェは思った。
「あのぉ、この世界の『フィーア』さんはぁ、めのまえのマーメイドだとお、おもうんですけどぉ?」
にこ、と理緒は底冷えするような顔をで微笑んだ。
「アッハイダマリマス」
サージェはこれ以上刺激してはならないと後方に、つつ、と下がる。
「聖なる決闘において、激情はつきものであるが、それに流されるようでは敗北を得るのと同義であるぞ」
「道理道義、この際結構だよ。決闘したいというのなら受けて立つよ!」
「その意気や良し。であれば!」
『獣騎マーメイド』の三叉槍が水流をたぐり、ユーベルコードの煌きと共に理緒たちを襲う。
だが、理緒は慌てなかった。
空中空母である『ネルトリンゲン』に座していたのもある。
そして、彼女はなんかこう、ぱぱっとコンソールを作動させる。
「アイテムを装備してっ、と」
『ちょっとおねーちゃん! アイテム扱いとかひどくない!?』
サポートAI『希』の抗議の声が聞こえる。
が、理緒はスルーした。
「あるぇ!? なんで私とシリカさんも装備アイテムに!?」
いつのまにかサージェの駆る『ファントムシリカ』は、『ネルトリンゲン』に格納されて展開したカタパルトの上に立たされていた。
「な、なにを!?」
「サージェ&『ファントムシリカ』砲は発射!」
「砲!?」
ネルトリンゲンのカタパルトから射出される『ファントムシリカ』とサージェ。模応なんでもありである。
「ぎにゃぁああああ!? し、シリカさん!? 爪でバリってやるのは、私じゃあなくて理緒さんじゃあにゃああああっ!?」
凄まじい加速度G。
サージェの顔は美少女がしてはいけない感じの顔になっていた。
「これで壊れても私悪くないですからね!?」
「足止めよろしくね!」
『獣騎マーメイド』に肉薄する『ファントムシリカ』。
サージェはもう腹を括った。
「ええい! 加速してるのなら、それも利用して! 電光石火(イカズチノゴトキスルドイザンゲキ)! 勝負です!」
「面白い戦い方だ。だが!」
三叉槍で受け止める『獣騎マーメイド』。
「ほんと、うちの理緒さんがすみません!」
「よい! これぞ全力を尽くす聖なる決闘である!」
「器が大きい!」
そんな二人の頭上に影が落ちる。
それは『ネルトリンゲン』であった。
「かーらーのー!『希』ちゃんアタック!」
艦首に備えられたアサルトラムの切っ先が二人の頭上に注ぐ。。
大質量の一撃。
鉄槌の一撃は、サージェを巻き込んで『獣騎マーメイド』に振り落とされる。
「ぎーにゃぁぁぁ!?」
二人の悲鳴と共に盛大な水柱が立ち上る。
それは、理緒の慈悲なき鉄槌。
そう、すべては。
「噛み姫返してね――!」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
はっ!?
え?準備……?
演奏ですか?それとももうごはんですか?
だいじょうぶですよ?
ちょっと意識が明後日いってたとかないですから!
演奏の準備はいつでも万端です!
あ、でももうちょっとゆっくり飛んでもらえると嬉しいなー、とk……。
あああああああ!?
多少のダメージって、わたし生身なんですがー!?
いくら勇者でも当たったらさすがにぴんちがあぶないですからー!
こ、こうなったら、自己防衛しかありません!?
【皇帝賛歌】で防御しつつ、ステラさんの攻撃の間を凌ぎます!
あー、もう!
なんでマーメイドなんですか!セイレーンで来てくださいよー!
それだったら審判ステラさんで、しっかり音楽対決できましたのに!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
(引き続き、フォルに乗りつつ)
無事辿り着けたようですね
これで貴女様と戦う資格は得られたでしょうか、フィーア様
フィーア……四番目、あなたは何の4番目なのです?
それに幻影を使ったりしないのですか?
そもそも、何故ヒヤルムスリムル姫様を狙ったのです?
他にも都市も王族も在るでしょうに
おっと、私としたことが質問ばかりで失礼しました
尋常に勝負というのは嫌いではありません
ルクス様準備はいいですか?
いえ、お食事や睡眠の準備ではなく……
ともあれ支援をよろしくお願いします!
フォル!いきますよ!
まっすぐ突っ切って多少のダメージは無視!
マーメイド様を捉えたら
【アン・ナンジュ・パス】!!
全力で、喰らいなさい!
盛大なる水柱。
巨大質量に寄る鉄槌の如き一撃に『獣騎マーメイド』は海中より飛び出す。
猟兵の戦い方は千差万別。
それは理解するところであった。一貫性などない。法則性などあってないようなものである。
全てがユーベルコードに付随するものであるがゆえに、『獣騎マーメイド』はその鋼鉄の駆体に消耗の痕を刻まれ続けていた。
だが、笑う。
歓喜に満ちていた。
喜ばずしてどうする。
これが聖なる決闘。望んでいた戦いなのだ。
「さすがは勇者であると言える。この力、やはり体感せねば理解できるものではあるまい」
「私達を勇者、と。これで貴女様と戦う資格は得られたと?」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は羽撃く鋼鉄の鳥『フォルティス・フォルトゥーナ』のコクピットの中で『獣騎マーメイド』を見つめる。
「『フィーア』様。フィーア……四番目、あなたは何の四番目なのです?」
「序列であるよ。わからぬか? 数字が示すのはいつだって、そういうものだ。量を測る、距離を測る、物を測る。数字とはいつだってそうであろう?」
「であれば、そもそも何故『ヒヤルムスリムル』姫様を狙ったのです? 他にも都市も王族も在るでしょうに」
「言うまでもない。もとより、あの城塞都市こそが我らが住居であったからだ。滅ぼされて、奪われたとあれば、当然舞い戻るのが筋というものであろう。あの姫君には申し訳ないとは思うが、これもまた聖なる決闘のため。彼女も委細承知してくれている。で、もうよいか?」
三叉槍を構える『獣騎マーメイド』。
その姿にステラは頷く。
「質問ばかりで失礼しいました」
「よい。ならば、尋常に勝負」
「ええ、嫌いではありません。ルクス様、準備はいいですか?」
「はっ!?」
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は『フォルティス・フォルトゥーナ』の嘴の先に咥えられたままであった。
「じゅ、準備……? 演奏ですか? それとももうごはんですか?」
「何を寝簿得ているのですか。お食事もスミンの準備でもなく」
いや、演奏でもないな、とステラは思った。
「ともあれ、支援をよろしくお願いします!」
ぶるぶるっとルクスは頭をふる。
ちょっと意識が彼方に言ってしまっていただけである。
「演奏の準備はいつでも万端です!」
「フォル、いきますよ!」
「あの! でもですね、ちょっとゆっくり飛んでもらえると嬉しいなー、とか……」
ルクスは思った。
そう、今自分は艦首とも言うべき『フォルティス・フォルトゥーナ』の嘴の先に咥えられているのだ。
であれば?
「ああああああ!?」
凄まじい風が、圧力が!
ルクスの顔にのしかかるようだった。
怖い。怖すぎる。
しっかり咥えられているから落下の心配はない。そんな問題ではない。
「い、いくら勇者でもあたったら流石にぴんちがあぶないですからー!」
「申し訳ございません。かまっている余裕がございません!」
空中での高速機動マニューバは、そんじょそこらの遊園地のジェットコースターの比ではなかった。
とんでもない加速。
とんでもない急旋回。
胃が、内臓が、ピンチである。また、内臓がひっくり返るようなマニューバであれば、当然乙女の尊厳もピンチである。
「あーもう! なんでマーメイドなんですか! セイレーンで来てくださいよー! それだったら、審判ステラさんで、しっかり音楽対決できましたのに!」
「それはすまないな。だが、妾は歌うよりは、槍を振るうほうが性に合っているのでな!」
迫る『獣騎マーメイド』。
魔力の弾丸が『フォルティス・フォルトゥーナ』へと襲いかかり、水流が渦を巻くようにして鞭のように迫る。
包囲攻撃からの予測不可能なる水流による殴打。
その苛烈なる攻撃をルクスは、『フォルティス・フォルトゥーナ』の嘴の先で皇帝讃歌(コウテイサンカ)によって、防ぎきっていた。
「支援、ありがとうございます! であれば、まっすぐ参ります! さあ、天使が通りますよ。死の天使かもしれませんがね!」
煌めくユーベルコード。
加速した『フォルティス・フォルトゥーナ』。
「ああああっ!?」
ルクスの悲鳴がこだまする。
だが、この弾幕の如き包囲攻撃を突っ切るためには無視しなければならない。
「全力で、喰らいなさい!」
放たれる全武装。
その最大火力の一撃は、戦場の空と海とを揺るがした――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
防人・拓也
リベレーションゼロに搭乗。
「奴の土俵は水中か。流石に空中から攻撃するのは困難だ。ならば、俺も水中に行くしかない」
仙術魔力を取り込みながら、水中に潜む敵を探す。この水中にも仙術魔力が存在する。感じろ…水中の仙術魔力が奴の行動で乱れる場所を…。
「…見つけたぞ。探知できたら勝機はこちらにありだ!」
敵の攻撃を回避かビームシールドで凌ぎつつ、蒼玉色の仙術魔力を纏った機体の右手を握りしめて構える。
「水を利用した仙魔疾走!|蒼玉の仙魔疾走《サファイアブルー・マジックドライブ》!!」
右手を敵に向かって突き出し、蒼玉色に輝く大水流の水中衝撃波を放つ。水中衝撃波と仙術魔力で砕かれろ!
アドリブ・連携可。
周囲を見やれば、全て海水。
『獣騎マーメイド』の独壇場であることは言うまでもない。
聖なる決闘において、その戦場を選定することもまた戦いの一つであったことだろう。故に『獣騎マーメイド』はこの小島を決闘の地に選んだのだ。
「奴の土俵というわけか」
防人・拓也(奇跡の復活を遂げた原初の魔眼の開眼者・f23769)は、『リベレーションゼロ』のコクピットで状況を理解する。
攻撃の基点となる海水に周囲が囲まれ、なおかつ『獣騎マーメイド』は海中の中を自在に駆け抜けることができる。
正直に行って分が悪いというしかない。
空戦に乗ってくるとも思えない。
であれば、空中から海中を攻撃するのは得策とは言えなかった。
むしろ、此方の位置を敵に知らせることになり、窮地に立たされるのは自分であると拓也は理解したことだろう。
「ならば……俺も水中に行くしかあるまい」
意を決する、というほどでもなかった。
海中が敵の独壇場であろうとも、その海中にて敵を打ち倒せねば、もとより意味がない。
そして、己の仙術魔力は海中であっても敵の位置を知ることができる。。
「ほう、妾の領域にあえて踏み込んでくるか」
「そうでもしなければ、君の姿を捉えることはできないからな」
「その胆力、見事なものだ。だが、悪手よ」
海中にあれば、確かに『獣騎マーメイド』の姿を認識することはできる。
だが、海中を自在に、それこそ空を飛ぶようにして駆け抜ける『獣騎マーメイド』は圧倒的だった。
まるで水中を飛ぶ鳥だ。
「……水を利用する仙魔疾走!」
ユーベルコードに『リベレーションゼロ』のアイセンサーが煌めく。
そう、水中に存在する仙術魔力による探知によって、拓也は凄まじい速度で駆け抜ける『獣騎マーメイド』の姿を捉えていた。
来る、とわかっているのならば対処できる。
海中であっても『リベレーションゼロ』は駆動する。
「……なに?」
「これが、蒼玉の仙魔疾走(サファイアブルー・マジックドライブ)!!」
機体より発露する仙術魔力が海水に満ちていく。
満ちた魔力を手繰るようにして、海中にあって『リベレーションゼロ』のマニュピレーターの掌から大水流の水中衝撃波がほとばしる。
「砕かれろ!」
放たれた衝撃波が『獣騎マーメイド』の体躯を打ち据える。
強烈な水流は水圧となって『獣騎マーメイド』の鋼鉄の装甲をひしゃげさせるだろう。
「馬鹿な……海中にあって、妾を捉えるばかりか、打ち据える、だと?」
「何も海中での戦いを得手としているのが自分だけだとは思わないことだな。俺にもできることはある」
そう言って拓也は、己が機体より発露する仙術魔力と共に海中より『獣騎マーメイド』を吹き飛ばすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
機神搭乗
フィーア…フィーア…またすごい覚えのある名前がきやがったな
と言うかお出かけ中に誘拐とかリサーチぐらいしておけやぁ!
あ、僕は最強無敵の(自称)天才魔術盗賊のカシムさんだ!しくよろ!
「界導神機「メルクリウス」だぞ☆」
ヒヤリュム(がっ…口抑え)…~!
ヒヤルムスリムル(ゆっくり)姫は返して貰うぞ!後で素敵お礼を貰う為に!
【戦闘知識・視力・情報収集・念動力】
敵の動きと能力を把握
念動力を広げ常に位置を捕捉
【空中戦・弾丸・属性攻撃・電撃】
UC発動
超絶速度で飛び回り電撃弾を乱射して蹂躙
【二回攻撃・切断】
………不殺徹底…は諦めた
鎌剣での連続斬撃
この馬鹿野郎どもが…
(生きる事こそ必死だった過去がよぎる)
『獣騎マーメイド』が名乗る名は『フィーア』。
その名にカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は聞き覚えがないと言えば嘘になった。
むしろ、聞き覚えしかなかった。
「どういうことだ?『フィーア』? またすごい覚えの在る名前が来やがったな」
いや、というかとカシムは頭を振った。
囚われの姫君『ヒヤルムスリムル』の警護は城塞都市にあっては厳重であったはずだ。
だが、その警護を食い破ることができたのは、『獣騎マーメイド』の力が強大であっtからであろう。
「ったく、これから毎度毎度攫われることになるんじゃあないだろうな、ヒヤリュムがっ……くっ~~~っ!!」
思いっきり舌を噛んでしまったカシムは口元を抑えて、『メルクリウス』のコクピットの中で悶えた。
「……『ヒヤルムスリムル』姫は返してもらうぞ! 後で素敵なお礼を貰う為に!」
『だめ~☆ あ、界導神機『メルクリウス』だぞ☆』
「最強無敵の(自称)天才魔術盗賊のカシムさんだ! しくよろ!」
「騒々しいな。だが、最強無敵を誇るのならば、その武勇を示してもらおうか!」
『獣騎マーメイド』の構えた三叉槍より放たれる水流が鞭のようにしなり、『メルクリウス』を襲う。
その動きは有機的だった。
鞭のようにしなりながらも、大蛇のように『メルクリウス』を追うのだ。
「っと、これは……」
『速さでは振り切れないねっ☆』
「だがよっ!」
空中で『メルクリウス』の機体が回転する。
振り切れなくとも躱せないわけではない。あくまで敵の機動が己を襲うものであったのならば、そのさきを読み切って機体を翻せばいいのだ。
「ちょこまかと……!」
「……不殺徹底……は諦めた。それが通じる相手じゃあねぇってこともな。だが!」
「不殺? 殺さずを、と言うのならば、そなたらは問題を履き違えているぞ。相対する敵を殺さずというのならば、もとより争いの原因をいち早く止めることが、不殺の最たることではないのか。起こってしまった争いを止めることと、生命の奪い合いを止めることは同義ではない」
「死ぬ生命は戻らねぇだろうが!」
「であればこそだ。争いが起こる前に止めてこそ、真の不殺ではないか? 起こってからでは遅い。時間は巻き戻せない。不可逆であるのならばこそ、生命が失われることを厭うのならば、争いに発展した物事を即座に止めるが肝要。それは時として、首長の首一つ断つことで、数百数千の生命が救われるとは!」
「思わねぇよ! どいつの生命だって、生命は同じだろうが!」
鎌剣の斬撃がほとばしる。
それは互いに譲れぬもののための剣戟であった。
「この馬鹿野郎どもが……!」
生きることはもがくことだった。
必死だった。
だから生命は尊いものだと思える。
だが、そうでないものもいる。
生きた環境が違うというのならば、そうなのだろう。だが、それでもオブリビオンというのならば。
討たねばならない。
その覚悟と共にカシムは鎌剣を振るうのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
皇・銀静
神機搭乗
ああ
僕は銀静だ
「グリームニルだよ☆」
一つ聞きたいんだが…お前らにとって人の大切な者を誘拐するのは普通の事なのか?
もしも普通ではなく悪しき事と言うのであれば
…そうか…やはりこの世界は歪んでる
「聖戦ってそういうものだよ☆」
【戦闘知識】
敵の能力や動きの癖を解析
【属性攻撃・念動力・空中戦】
UC発動
超高速で飛び回りながら電撃と念動光弾を乱射
【二回攻撃・切断】
これは戦艦を切り裂く刃
ならば!
その海さえも切り裂いてやろう!
「ある導き手は拳で海をも割ったらしいよ☆十個のルール作ったりもしたって☆」
槍の神同時発動
次元の刃で海ごと切り裂いてやる!
何度と切り裂き
…姫はちゃんと巻き込まない
何か言い残す事は?
「僕は銀静だ」
『グリームニルだよ☆』
その言葉に『獣騎マーメイド』は振り返る。
戦場において、名乗りを上げることは聖なる決闘においては当然の作法であった。
故に彼女もまた名乗りを上げる。
「『獣騎マーメイド』が一騎、『フィーア』。正々堂々たる振る舞いである。であれば……」
いざ、と三叉槍を構えた『獣騎マーメイド』に銀静は手で制する。
「一つ聞きたんだが……」
「何ゆえか」
「疑問だ。ただ一つの、だ」
「であれば、問われよ」
その言葉に銀静は頷く。
「お前らにとって人の大切なものを誘拐するのは普通のことなのか?」
「いいや、最大級の挑戦状である。敬意でもある。大切なものとは、己が生命を賭してでも守りたいものである。であれば、その意志を真正面から受け止める聖なる決闘こそ、真の強者との戦いにおいては必要な作法であろう」
銀静が求めた答えとは違った。
普通でもなく、悪しきことでもなく。
最大級の作法である、と。
誰だってそうだ。
己のうちにか外にかはこの際問うまいが、大切なものをもっている。
ときにそれは自分の生命であったり、誰かの生命であったりもするだろう。それを担保にして決闘を挑むということは、己が大切なものを奪われる可能性を秘めたものであるからだ。
「……そうか……」
納得した、と銀静は頷く。
「であれば、どの道、相争うのは避けられぬ、ということだな」
「然り。これは聖なる決闘。この決着を以て全てを決するがゆえに」
海水によって覆われていく戦場。
この戦場にあって『獣騎マーメイド』の力の上昇は凄まじいものであった。
ここまで猟兵たちとの戦いを繰り広げて消耗しているにも関わらず、その力の重圧は『グリームニル』の体躯を揺らすものであった。
「四門解放……!」
「来るか!」
「これは戦艦を切り裂く刃。ならば! その海さえも切り裂いてやろう!」
『ある導き手は拳で海をも割ったらしいよ☆十個のルール作ったりもしたって☆』
蒼き覇気が機体を覆っていく。
その五体。
徒手空拳たる鋼鉄の拳。
その掌が手刀へと変わる時、天頂を示す蒼き覇気がほとばしる。
「次元の刃で海ごと切り裂いてやる!」
振るわれる斬撃。
それは蒼き光とともにほとばしり、戦場に満たされた海水を悉く斬り伏せる。
「くっ!」
同にそれは『獣騎マーメイド』の装甲をも切り裂くものであった。
いかなるものでも切り裂くもの。
それがユーベルコード、 極・戦艦斬り(ゴクセンカンギリ)の力である。
「何か言い残すことがあれば聞いておこう」
「ふっ、聖なる決闘に挑んでいるのだ。残す言葉など、ない!」
あくまで、これは決闘である。
後に残すことなど後悔一つない。
戦うために生きて、戦いに死ぬのだ。
これのどこに残すものなどあろうか。力を振り絞るようにして『獣騎マーメイド』は水流をたぐり、迫る蒼き光と激突する。
「……」
振るわれる斬撃は『獣騎マーメイド』の装甲を引き裂き、その駆体を軋ませた――。
大成功
🔵🔵🔵
ファルシータ・フィラ
姫様!見つけた!!(ガン見
あ、ちょっとお待ちくださいませフィーア様
いえいえ、ただ遠くからひたすら推すだけですので……!
祭壇に居るという事は神で確定なのでは?
拝み倒したい、この衝動!
ふぅ、お待たせしました
姫様成分補充しましたので、ここからのわたくしはクールに戦いますわ
え?もう遅い?そんなぁ
『ティタニア』!騎士形態!
人魚を相手取るには妖精ではか弱いかもしれませんが
この槍でお相手しましょう
ファルシータ、参りますわ!
素の力ではやはり押し負けそうですわね
ではこれでどうですか!
【フェアリー・スピア】!
たとえ、魔法の海に浸されようとも
妖精の光で突き抜けてみせましょう
多少のダメージなど!
この一撃にかけますわ!
ファルシータ・フィラ(アレキサンドライト・f44730)は猟兵と『獣騎マーメイド』との戦いが繰り広げられる中、海中に浸された廃神殿という最高のロケーションを余すことなく堪能していた。
いや、戦え、と誰かが思ったかも知れない。
が、ファルシータは廃神殿に囚われた姫君『ヒヤルムスリムル』を認めて、ガン見していた。もしも彼女の手にカメラというものがあったのならば、シャッターを切る音を途切れさせることはなかっただろう。
それくらいに彼女は興奮しきりであった。
「あ、あああの……?」
困惑する『ヒヤルムスリムル』姫。
当然である。
「何を、している」
『獣騎マーメイド』は猟兵との戦いで疲弊し、消耗している。が、ファルシータは、そんな彼女に好機と見て畳み掛けることはなかった。
逆にそれが彼女の逆鱗にふれるようであった。
「あ、ちょっとお待ちくださいませ『フィーア』様!」
「何をしている、と聞いているのだが」
「いえいえいえ、ただ遠くからひたすら推すだけですので……祭壇にいるということは神確定なのでは? と拝み倒したい、この衝動を抑えきれなかったのです!」
「ふらちな」
「そんな!」
とんでもない! とファルシータは頭を振る。
「ですが、いえ。おまたせしてしまっていることは事実。姫様成分補充しましたので、ここからのわたくしはクールに戦いますわ」
「それは無理な話であろう」
「えっ、そんなぁ」
「……ふ、最後に締まらぬが」
『獣騎マーメイド』はファルシータの態度に諦めたようだった。
であれば、己が力を振るうのみ。
どんな相手であろうと手を抜かない。それが聖なる決闘なのだ。
「ならば、最後にわたくしでよかったと思っていただきましょう!『ティタニア』!」
グリフォンキャバリアが人型へと変貌する。
構えるはシールドランス。
背に追う羽よりほとばしるは魔法の妖精光。
ユーベルコードに輝くアイセンサーと共にファルシータは、『獣騎マーメイド』と相対する。
「この槍でお相手いたしましょう! ファルシータ、参りますわ!」
「来い……!」
周囲を満たすは海水。
だが、ファルシータは『ティタニア』と共に直進を選んだ。
なりふりかまっていられないのではない。
この海水の中で『獣騎マーメイド』の攻撃を躱すほどの速度は出せない。そして、相手の機動に合わせる推力も得られない。
であれば、直進突撃でもって海水の抵抗をぶち抜くしかないのだ。
「海中で妾を貫かんとするか!」
「妖精の一刺し。見た目で判断すると痛い目を見ますわよ!!」
「やってみせろ!」
互いの実力差は明白である。
しかし、これに打ち勝てねば聖なる決闘を制することはできない。
意地がある。
全力で推す、ということはそういうことだ。
「例え、魔法の海に浸されようとも!」
「その一念のみにて妾を貫く……かっ!」
海水を撃ち抜くような一射となったフェアリー・スピアの一撃が『獣騎マーメイド』の体躯を貫く。
鋼鉄の体は、力を失い海水へと還る。
ファルシータは、聖なる決闘を望んだ『獣騎マーメイド』、その『フィーア』を制し、廃神殿に囚われた姫君を救出し、城塞都市へと舞い戻るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『賑やかな城下町』
|
POW : 食べ歩きや買い物を楽しむ
SPD : 町の人々と噂話に興じる
WIZ : 吟遊詩人の歌を聞く
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
聖なる決闘により、『獣騎マーメイド』より囚われし姫君の救出は相成った。
城塞都市に送り届けられた『ヒヤルムスリムル』姫に人々は沸き立つ。
新たなる英雄の凱旋。
これに人々は歓待せねばと大張り切りである。
「……如何なる騒ぎかと思えば、なるほど!」
その光景に一人の騎士が得心が言ったと言わんばかりに力強く頷いた。
「勇気ある者たちが姫を救出してくれたこと、真に感謝の念に絶えない! 我が名は『スルーズル』! あなた方の活躍、誠に感謝する!!」
盛大な祭りの声に負けぬ程の声量。
『轟響』の二つ名を持つ騎士『スルーズル』は、囚われの姫君を救出した猟兵たちを褒め称え、城塞都市を上げてのお祭り騒ぎに笑むのだった――。
イウェイン・レオデグランス
おうおう、賑やかな事で
都市が賑やかなのは良い事なんだが、主役に祭り上げられるのは他の|奴ら《猟兵達》に任せたい所だな
……しかし、『轟響』っつうのは、そういう意味あいかい
(そもそも居合わせたから手を貸したに過ぎず、勇気だなんだと言われてもな とか
無駄に熱そうなスルーズルは絡まれたら面倒な手合いだな とか思いつつ、喧騒の中心から逃れて酒でも飲んで過ごす心算で)
※以下注釈
本人は喧騒から逃げたい姿勢ですが、遠慮なく絡ませて頂いてOK
絡まれたら観念して当たり障りなく対応(内心面倒くさいと思っていようが顔には出さない)
元は城仕えなので礼儀礼節も弁えており、遍歴もそれなりにしているので市井のノリにも溶け込む
百獣族との戦いから帰還したイウェイン・レオデグランス(狂飆の騎士・f44938)は港を持つ湾岸の城塞都市の様相に相好を崩すでもなく、息を吐き出した。。
「おうおう、賑やかなことで」
確かに都市が賑やかなことは喜ばしいことだ。
姫君の奪還が相成ったというのも、当然。
だがしかし、イウェインにとって、自らが主役のように祭り上げられるのは勘弁願いたい所だった。
「まあ、俺一人いなくとも他の連中がいるだろう」
ならば、と彼はフードを被り直した。
人々の熱気から避けるようにして路地裏に滑り込む。
「さて、もとより野良だ。次は何処へ……」
「何処へ往かれるのか!」
びく、とイウェインは喧騒から離れた路地裏にて己の背に投げかけられた声に身を固くした。
「反応した、というところを見ると! あなたが『ヒヤルムスリムル』姫救出に赴かれた騎士の一人であろう!!」
やかましい声だと、イウェインは思った。
が、それを顔に出すほどに礼儀というものを知らぬ身ではない。
振り返ると、そこには若々しく壮健なる騎士の姿があった。
「……救出、とは言っても己一人で成したことではないゆえ。僅かな働きに大手を振って応える訳には参りますまい」
あくまで礼儀は忘れない。
さりとて、慇懃無礼にならぬようにと心がける事ができるのがイウェインという騎士である。
浅学無学というのは、ただの謙遜でしかない。
「いいや! 此度の決闘の手柄は、馳せ参じることのできなかった者であれば、卿の言う通りであろうが! あなたは参戦なさった! であれば!!」
「察するに」
イウェインは手で騎士を制する。
声がデカイ。
いや、まさか。
「あなた様は、『轟響』との二つ名をお持ちの、筆頭騎士、では?」
「俺の二つ名をご存知か! いやはや、此度の決闘に参じることのできなかった身としては、その言葉も些か恥じ入りるばかりだ!!」
「……」
うわ、とイウェインは思ったかもしれない。
無駄に熱血である。
正直に行って面倒な手合だ。
こっちのペースなどお構いなしに自身のペースに他人を引きずり込んでくる。こういう相手をするのは疲れるとイウェインは思った。
正直に言うと、適当な理由をつけて、此の場を辞したい。
「いえ、勇名かねがね。では俺はこれで。急ぎますので」
「巡礼か! だが! こうして人々は勇者を歓待したいと言っている! であればな!!」
がし、とものすごい力でイウェインの肩を掴む『スルーズル』。
振りほどけない。
万力とも言うべき力にイウェインは、諦めるしかなかった。
「名を伺ってもよいか!」
「イウェイン・レオデグランス……」
「レオデグランス卿! であれば、さあ、こちらへ! 勝利の美酒というやつだ! さあさあ!」
「いや、俺はもっと静かな場所で……」
「こういう時はあれだな! 無礼講!! そういうやつだな!!」
「ちょ」
その強引な誘いをイウェインは振りほどくことはできず、お祭り騒ぎの城塞都市にて、浴びるように酒を飲まされることになるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ファルシータ・フィラ
まさか、抱えて帰ってきたのはわたくし……!?
今回ずっと顔がこんな調子ですが!!
戦闘の時は真面目でしたたぶん!
推しを推すだけの変態がお身体に触れた事お許しくださいませヒヤルムスリムル姫様
お詫びに靴を舐めろと言われれば舐めますし椅子に成れと言われれば成りますし
むしろうつ伏せでもいいので貴女様の床になりたい!!
おっと、わたくしとした事が距離を詰め過ぎました反省
3mくらい距離を取りまして……あ、姫様の声が聞こえない
噛んでる事だけはわかりますが萌え!
そこのスルーズル様!わたくしを拘束してくださいませ!
このままでは愛が溢れて姫様に土下座して逆に不敬になりそう!!
立ってお話する為にお力を貸してくださいませ!
ファルシータ・フィラ(アレキサンドライト・f44730)の顔はずっとだらしなかった。
なんていうか、こう間が抜けたような顔をしているというか、恍惚としているというか。まあ、どうしたって緩んだ顔をしていた。
戦いは終わり、無事に攫われた姫君である『ヒヤルムスリムル』を救出したのだ。
ファルシータは、彼女を抱きかかえて港を持つ湾岸の城塞都市に帰還するという栄誉を賜っていた。
役得というのならば、きっとこういう事を言うのだろうな、と彼女はずぅっと顔が、緩みっぱなしであった。
「た、戦いの時は、あ、あんなに雄々しかったのに」
そうか?
そうかな?
そうだったかも、と思わないでもない。
『ヒヤルムスリムル』姫は、雄々しきグリフォンキャバリア『ティタニア』の掌から降り立つ。
「た、たた大義でありました。騎士よ」
「いえ! 推しを推すだけの変態がお体に触れたこと、お許しくださいませ『ヒヤルムスリムル』姫様」
「えっ!?」
「あ、いえ、この栄誉に預かること、誠喜ばしく!」
ファルシータは誤魔化した。
いやまあ、なんていうか、体に触れた無礼を詫びろというのならば、靴を舐める勢いであったし、椅子になれっていうのならば喜んで四つん這いになるところでる。
いやむしろ、うつ伏せでもいいので『ヒヤルムスリムル』姫の歩む道のカーペットになりたいとすらファルシータは思っていた。
正直言ってやばいし、そこまで求めていない。
「さ、どうぞ! このわたくしめを敷物にしてください! 真下からご尊顔を見上げる栄誉を頂けたら!!」
「え、えええ……」
「はっ、わたくしとしたことが、距離を詰めすぎました反省」
しゅばっ、とファルシータは『ヒヤルムスリムル』姫から離れて膝をつく。
「あ、あの……そ、そんなに、は、離れなくても……」
確かに。
声が聞こえなくなってしまった。
だが、噛んでいることだけは気配でわかる。
「萌え!」
「も、もえ?」
「ああ、そこはかとなく萌えですわ! 推し甲斐があるってものですわ! 攫いたくなるのもわかると申しますか、致し方ないといいますか!! ああ、この溢れ出るリビドー! 止まりませんわ! かくなる上は! そこの『スルーズル』様! 私を拘束してくださいませ!」
「ふむ! よくわからんが!」
『轟響』の二つ名を持つ騎士は、相わかったと言わんばかりにファルシータを拘束する。
「うわっ、思った以上に力強いですわ! ですが、このままでは愛が溢れて姫様に土下座して逆に不敬になりそうなのを未然に防いでくださっていること、心強く!」
「まったくわからんが! だがしかし! これでよいというのならばな! うむ! 淑女たるあなたを拘束しておこう!」
「助かりますわ、『スルーズル』卿……!」
「あ、あの、せめて、立って……」
「はいっ! たちまぁす!!」
ファルシータは『スルーズル』の拘束を振りほどいて直立不動の構えを取った。
もう何がなんだかわからないという顔の『ヒヤルムスリムル』姫。そして、剛の者である己を振り払うファルシータの膂力に『スルーズル』は、素晴らしいな、と頷くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シル・ウィンディア
お姫様も助けられたし、めでたしめでたし。
…しかし、このお祭りのノリはすごいなぁ~。
ま、大切なお姫様の救出がなったんだから仕方ないか。
せっかくだからわたしも楽しませてもらうよ。
お酒は飲めないから、りんごジュースと甘いものがあればうれしいな。
ケーキとかあればばっちりなんだけど…。
なくても、名物料理とかそういうのがあれば堪能しちゃうよ。
武勇伝を聞かれたら、まぁ、今回の戦いのことを伝えるよ。
しかし、フィーナさん強かったなぁ。
強くて礼儀正しいのは見習わなければね。
祭りから抜けて、愛機のもとに向かうよ。
今回も無茶させちゃったね。
でも、いつもありがと。
そういってねぎらって機体を拭いてあげるね。
こうしてお姫様は勇者に救い出されましたとさ。
めでたしめでたし。
そう締めくくられるのが物語であったのならば、めでたしめでたしの先は如何なる道行きになるだろうか。
それをシル・ウィンディア(青き流星の魔女・f03964)は改めて目の当たりにしていた。
港を持つ湾岸の城塞都市。
その市街地は騒々しいくらいのお祭り騒ぎであった。
聖なる決闘。
姫君の誘拐という最大級の挑戦状に勝利を収めたことが喜ばしいのだろう。
人間は確かに過去、大罪を犯した。
だが、それは過去のこと。
今を生きる者たちは、その懺悔のために鎮魂を行い続けている。人の営みが続く限り、それは終わり無き懺悔であったことだろう。
だが、聖なる決闘を正しく全うしたことで百獣族の魂は慰撫され、人々は喜びに満ちた顔で互いに笑い合っている。
「……しかし、このお祭りのノリはすごいなぁ~」
シルはそれでも驚いていた。
「ま、大切なお姫様の救出がなったなんだから、仕方ないか」
そんなシルと青いキャバリア『レゼール・ブルー・リーゼ』の元に『ヒヤルムスリムル』姫が従者を連れてやってくる。
「あ、青き人造竜騎の、ききき、騎士とお見受けいたします。わ、私は『ヒヤルムスリムル』。あなたに助けて頂いた者です」
うやうやしい態度。
しかしなんだろう、ところどころ見え隠れするおどおどした態度にシルは微笑む。
「囚われのお姫様がいるとあれば、助太刀しんないのは義に悖るでしょ。わたしもお祭り、楽しませてもらっているよ」
そう言ってシルは果実の汁を割ったものを注がれた杯を示して見せる。
その様子に『ヒヤルムスリムル』姫は、ホッとしたようだった。
「あ、ありがとうございます。あ、甘いものはお好きですか? こちら、褒賞とは言いませんが、焼き菓子などです」
「ケーキとかあればバッチリなんだけど……焼き菓子?」
「ケーキをご所望ですか? あ、はい、私の、しゅ、趣味なんです」
「へぇ! お姫様でもお菓子を作ったりするんだね!」
「て、手習い程度、へ、下手の横好き、ですけれど……ご、ご賞味ください」
そう言って『ヒヤルムスリムル』姫とシルは僅かな時間であれど歓談を楽しんだ。
ひとしきりご馳走を堪能してシルはお祭り騒ぎの喧騒から離れる。
充分に楽しんだ。
思い出すのは、百獣族の『獣騎マーメイド』、『フィーア』であった。
彼女は強かった。
そして礼儀正しくもあった。
あれが誇りある百獣族の騎士の在り方なのだろう。
見上げる先にあるのは、青いキャバリア『レゼール・ブルー・リーゼ』。
「今回も無茶させちゃったね」
触れる装甲。
青い装甲に傷のつかぬ部分はなかった。一つ一つが共に戦った証でもあった。
「でも、いつもありがと」
労う言葉と共にシルは青い装甲の汚れを拭う。
機体に報いることができるのならば、自分にはこれくらいだとシルは思ったかも知れない。けれど、たった一つのことから始めなければ、大きなことはなしえない。
そんなシルの思いに応えるように『レゼール・ブルー・リーゼ』は、祭りの明かりに照らされた青い装甲を煌めかせるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
皇・銀静
銀盗
…戦いが終わったなら歓待を楽しむとするか
…ってお前もいたのかクズ小僧の青二才が
「腐れ叡智皇もいるね☆相変わらずのアホ面だね☆」
カシムの独白に
(ぐびっと酒を飲みながら)
クズ小僧の割にはまともな感性してるじゃないか
どのような形であれ殺し合い…命のやり合いってのは逃れられない
それでもある程度の方向性…聖なる決闘…ルール…殺し合いこそ誉
生きる事と…生き残る事に…死の脅威を感じる事は無くしてはいけないしなくせないもんだ
この世界も…そうやって秩序を保ったんだろ
そいつがなくなるってのは…危険なんだ
「そっか☆サイキックハーツ世界は…」
ともあれ…彼奴は満足して骸の海に還っただろ
姫も無事に帰ったんだからな
カシム・ディーン
銀盗
……(ズィーズルや姫もいるかもしれない
「ご主人サマー?元気ないね…?」
…彼奴の言ってた事を考えてな
…一を殺し千を救う
百獣族が…自らの一族の為に…その信念の為に戦ってきたとするならば
……自らの種族の未来を得る為とするならば
…そいつは…この世界の人類の祖先も同じだったんじゃねーかと思ってな
「とんでもない非道な事をしたのに?」
……止まるわけにはいかなかったんだろ
一人でも残せば…復讐の刃となってそれこそ人類も殺られてただろ(名物料理を貪りながら
僕は…こえーよ
殺し合いなんぞ怖いのにどいつもこいつも躊躇いねーのがな
銀静に
ちっ…おめーなんぞに言われたくないわ陰キャ野郎
(酒飲めないのでむしゃむしゃ
港を持つ湾岸の城塞都市は活気に満ち溢れていたし、喜びに満ちていた。
誰も彼もが聖なる決闘の果てに囚われの姫君の救出が成功したことを喜んでいるようだった。
それはいい。
喜ばしいことだろう。
誰も彼もが笑顔である。
祭りの様相を呈する大騒ぎの中、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は沈黙を守っていた。
『ご主人サマー? 元気ないね……?』
銀髪の少女『メルシー』の言葉にカシムは頷くこともなく、されど否定することもなく物憂げな視線を向けた。
「……彼奴の言っていたことを考えててな」
『一を殺し千を救うってやつー?』
「ああ、百獣族が……自らの一族のために……その信念の為にたたかってきたとするならば、自らの種族の未来を得る為とするならば」
カシムは考える。
聖なる決闘に参加するためには獣騎に変形できなければならない。
しかし、人間は獣騎へと変身することは許されていなかった。
それは言い換えれば、人間は種族として認められていなかった、ということになる。未成熟であったためか、それとも秘する凶暴性故か。
いずれかなのか、それとも異なる要因なのかはわからない。
だが。
「未来をえたいと思うのは、この世界の人類の祖先も同じだったんじゃねーか」
『妖精族の人たちが哀れに思って人造竜騎鍛造を手助けしたっていうんなら、そうなんじゃないかなー。その結果、非道を働いたっていうのなら、皮肉だけどー』
「……止まるわけにはいかなかったんだろ。止まれなかったとも言えるかもしれねーが」
なぜなら、殺し尽くすなんて尋常ではないことだ。
ただの一人の生き残りすら許さないほどの徹底した鏖殺。
それがどれだけのものかなどカシムには想像しかできない。
一人残せば、必ず、その一人が復讐の刃を手にする。
そうなった時。
「……僕は……こえーよ」
「ふん、グズ小僧の割りにはまともな感性してるじゃないか」
カシムは振り返る。
祭りの喧騒に背を向けるようにしていた彼の背に皇・銀静(陰月・f43999)は不躾な視線を向けていた。
「街の連中が歓待してくれているのに、こんなところで一人か」
「名物料理に舌鼓打ってんだわ。おめーなんぞに言われたくないわ、陰キャ野郎」
カシムの毒づく言葉に銀静は肩を竦めることもなく、息を吐き出す。
手にした杯には酒が満ちている。
「クズ小僧の青二才、品性のない煽り文句だな?」
『腐れ叡智皇もいるね☆ 相変わらずのアホ面だね☆』
二人の少女がバチバチと視線をぶつけ合っている最中、銀静とカシムもまた相対する。
敵ではないが、気を許したつもりはないとでも言いたげな雰囲気だった。
「まあ、どのような形であれ殺し合い……生命のやり合いってのは逃れられない」
「だから、黙って見てろってのか?」
「いいや。ある程度の方向性……この場合は聖なる決闘か。ルール……殺し合いこそ誉という異常性を肯定するためのものが必要だ」
「生きること以上に大切なことなんてねーだろ」
「もしそうなのならば、有史以来続く人間の営みの中で、栄誉なんて言葉は生まれていない。生きる事は常に死の影に怯えることだ。死なぬ、ということは、即ち生きていないのと同義だ。死なぬ屍などに意味などない。であればこそ、この世界も死の恐怖に打ち勝つための方策として、栄誉を用いたと言っても過言ではないし、秩序を保つための聖なる決闘なんてものがあったんだろう」
銀静は杯を煽る。
「そいつがなくなるってのは……危険なんだ」
「誰だって死にたくない。なのに、死から逃れることが、克服することが悪いことみてーにいうじゃねーか」
カシムの言葉に銀静は笑うでもなく眉根を下げる。
「誰も死からは逃れられない。例外はない。ともあれ……彼奴は満足して躯の海に還っただろ」
「だからって」
「姫も無事に帰ったんだ」
なら、とこの喜びに満ちる光景も否定するのかと銀静は言うようだった。
カシムは何も言えず、苛立つように口に名物料理を詰め込みながら、いかり肩で銀静に背を向ける。
もう何も言うことはない。
そういうように追いかける『メルシー』と共に銀静からカシムは遠ざかっていく。
どちらにも正しさはある。
全てが正しいことなどない。
立場や周囲の状況や、時勢に影響されるのが正しさなら、絶えず変化し続けるのが『今』というものだ――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
防人・拓也
…人々の声からして、姫様は民達に慕われているようで何よりだ。
人々が他の猟兵達に気をとられている間に、俺はクールに去るぜ。
と去ろうした矢先にスルーズルに見つかり、群衆のところへ連行される。
丁度、人々は姫様が目撃した俺の技の事を話していたようだ。
あ~…俺が利用したのは仙術魔力というもので、簡単に言えば自然に存在する魔力なんだ。例えば地面や空気、水など身近なものに存在する。それらを利用した技が『仙魔疾走』だ。多分、姫様が間近で見たのは水を利用した『蒼玉色の仙魔疾走』だ。
だが、仙術魔力は強力な分、扱いが難しい。扱い方を間違えれば使い手が命を落とす事もある。使う側も勇気が必要なものだ。
アドリブ・連携可。
喜びの声が響いている。
喝采の声。
港を持つ湾岸の城塞都市に帰還した囚われの姫君『ヒヤルムスリムル』の姿に人々が声を上げているのだ。
「余程慕われている姫君だったんだな」
防人・拓也(奇跡の復活を遂げた原初の魔眼の開眼者・f23769)は、そんな姫君奪還のための戦い、その一助となれたことを喜ばしく思っていた。
また同時に安堵もしていた。
これだけの大騒ぎを起こしてしまう人々だ。
すでに市街地はお祭り騒ぎである。
あちこちで人々が聖なる決闘を制したことへの喜びを体全体で表現している。
歌えば、踊る。
踊れば、酒が振る舞われる。
酒が振る舞われれば、大騒ぎ。
そういう図式であった。
「さて、俺はこの隙に……」
戻ろう。
どうも拓也は祭り上げられることに忌避感を持っているようだった。碌なことにならないとこれまでの経験が言っているのかも知れない。
英雄などとおだてられて本気になれるほど、己は達観してもいなければ、楽観もしていない。
英雄の末路というのは、いつだって悲惨なものだ。
多くの抒情詩がそれをを証明している。
そんなものになるつもりなど拓也にはなかった。状況が、人がそれを許さないのだとしても、己は英雄になるつもりで戦ったわけではないのだ。
そろり、と城塞都市を後にしようとした瞬間、その肩が掴まれる。
「一度あることは二度あるようだな!!」
耳がキーンとするほどの大声。
轟き響くような声だった。
「うわっ!? な、なんだ!?」
「いやなに! 御身、此度の姫君救出に赴かれた勇者とお見受けしてな!! 立ち去ろうという気配であったので、失礼かと思ったが! お声がけさえせていただいたのだ!!」
キーンとまた耳に響く。
え、まさか『轟響』と二つ名を持つ騎士『スルーズル』とは、こいつのことなのかと拓也は思った。
『轟響』ってまさか、本当に声がデカイってことだけでついた二つ名なのか?
「いや、俺は」
「あいや、みなまで言わずとも!『ヒヤルムスリムル』姫の語れる所の人相と似通っているように思えていたのでな! あなたの人造竜騎と相違わぬようであるし!!」
示すのは『リベレーションゼロ』。
帰還しようとして降着状態にしていたのが仇となった。
「……あ~……ええと」
「何やら、不可思議な技を使われると聞き及んでな! 後学のために! どうか! と!!」
まいったな、と拓也は頬をかく。
語るまで離してもらえないやつではないか、これ?
「俺が利用したのは、仙術魔術というもので、簡単に言えば自然に存在する魔力なんだ」
「なるほど! わからん!!」
「嘘だろ。いや、ほら、例えば地面や空気、水など身近なものに存在しているんだ。それを利用した技が、『仙魔疾走』だ」
「……! やっぱりわからん!!」
拓也は思った。
かなりかいつまんで説明したつもりだったが、これでもか、と。
自分の説明が下手なのか? と思わないでもなかったが、もしかしたら特別『スルーズル』の覚えが悪い可能性もある。
「兎にも角にも! 扱いが難しい! ということだけはわかった! それに、それにはリスクが伴うのではないか! であれば、あなたが勇気あるものだということだけは、俺も理解できる!!」
耳がキーンとする。
「そ、そうか……」
なら、これで、と拓也は帰ろうとする。
が、『スルーズル』は、にこし、と笑う。
「まだまだわからぬところがあるのだが!!」
「もう勘弁してくれ――!」
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
序列……?
え?なんかまた『エイル』さんの正妻戦争がらみですか?
英雄さんは色を好むっていいますけど、
『エイル』さんそういうたいぷじゃないと思いますし、もう3人くらいいるんですからよくないです?
ですです!
雰囲気は祝勝会っぽいですし、シリアスは甘いもので中和……え!?
ステラさんが演奏許可を!?
いやなにいってるんですか勇者の本気を甘く見ないでください。
相殺なんてさせるわけないじゃないですか。
許可が出たんです。
ここだけじゃなく、三十六世界に遍く響くほどの演奏をお届けしますよ!
ステラさんの歌にも負けませんー!
って、宿命?
伝説の間違いですよね?
そう、伝説のライブはいまからはじまるんですからね!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
終わりましたか
ヒヤルムスリムル姫様がご無事で何よりです
……フィーア様は『序列』と言っていました
序列……種族内なのか、あるいは|聖なる決闘《トーナメント》の話なのか
そうなるとアイン様の立ち位置がよくわからなりますね?
まぁ考えるのはまた今度に
ルクス様がシリアスで死にそうですし
ほら、演奏しましょう
祝いの席なのでちょっとはっちゃけても良いですよ
私は全力で相殺しますが(マイク用意)
ええい!私は綺麗な音しか聞く気はありません!
では歌声で姫様をお迎えしましょうか
今回、またひとつ宿命が邂逅したのでしょう
スルーズル様の出番は……この世界の『ドライ』様のお名前はまたどこかで聞くことになるのでしょうか?
戦い終えて、一息つく者たちがいる。
しかし、一つの戦いが終われどもまた新たな戦いの火種がくすぶるのが世界というものであったことだろう。
だが、今は喜びに浸ってもよいはずだ。
港を持つ湾岸の城塞都市。
その市街地は今、『ヒヤルムスリムル』姫奪還の報に湧いていた。
誰もが喜びと安堵とに身を震わせているようだった。
「ようやく、終わったと言えますね」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は、そんな喧騒の中にて息を吐き出す。
己が乗騎である『フォルティス・フォルトゥーナ』のコクピットで考える。
嘴の先には、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)がぷらんぷらんとしている。
いい加減下ろしてくれないかなーって思っているようだった。
「『フィーア』様は『序列』と言っていました」
「『序列』……?」
「ええ、確かに。それは種族内のことを示すのか、あるいは|聖なる決闘《トーナメント》の話なのか。
ステラにはわからなかった。
彼女が思う数字を名に冠する者たち。
そして、百獣族。
その関連性というものがステラにはわからなくなってきてしまっていた。
「え?なんかまた『エイル』さんの正妻戦争がらみですか?」
ステラの言葉にルクスはぷらんぷらんしながら口にする。
「英雄さんは色を好むっていいいますけど、『エイル』さんそういうたいぷじゃないとおもいますし、もう三人くらいいるんですからよくないです?」
ぺっ、と嘴から開放されたルクスは華麗に着地する。
「そうですね。これ以上はルクス様がシリアスで死にそうですし。ほら、演奏しましょう」
「そうですよ! 雰囲気は祝勝会っぽいですし、シリアスは甘いもので中和……え!?」
ルクスは目をひん剥いた。
驚愕に染まる顔。
え、今?
「ステラさんが演奏許可を!?」
「祝いの席なのではっちゃけてもよいですよ。ちょっとだけなら」
ルクスはぶるぶると体を震わせていた。
感激に震えていたのだ。
まさかの許可!
ええ、本当に?!
「大丈夫です。私の全力で相殺しますが」
手にしたマイク。
「いや何言ってるんですか勇者の本気を甘く見ないでください。相殺なんてさせるわけないじゃないいですか」
「ええい! 私は綺麗な音しか聞く気はhありません!」
「なんでですか! わたしの演奏が綺麗ではないとでもいいたげじゃないですか!」
「そうですけど!?」
互いに言い合う姿は、周囲の人々からすれば、よい余興であったことだろう。
なんだなんだと人が集まってくるではないか。
「いいでしょう! ここだけじゃあなく、三十六世界に遍く響くほどの演奏をお届けしますよ! ステラさんの歌にも負けませんー!」
ステラは思う。
また一つの宿命が邂逅したのならば、またもう一つの宿命もまた巡りくるだあろうと。
であれば、まずは!
この勇者ライブを乗り切らねばならない。
「宿命を紡ぐことこそ、私の責務!」
「宿命? 伝説の間違いですよね? そう、伝説のライブはいまからはじまるんですから!」
「そうじゃないでしょう!」
二人の演奏と歌声は、不協和音を越えていく。
多分、きっと――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鐘射寺・大殺
大勝利である!!くくく、我輩としたことが、つい柄にもなく勇者の真似事などしてしまったわ。だが感謝されるというのは悪くない気分だのう。
城塞都市の住民総出でお出迎えか、働いた甲斐があったというものよ。では早速、王宮に出向いて挨拶といくか。姫君や騎士殿には、《貴人のカリスマ》《宮廷作法》を以て応対しよう。
「スルーズル殿、此度の巡礼の旅はうまくいったかのう?」
「ヒヤルムスリムル姫、ご無事で何より!民も皆、帰還を喜んでおる」
晩餐会に誘われたら、勿論参加する!
宴の料理は海の幸か、どれも素晴らしく美味い。
それでは、マーメイドと戦った我輩の武勇伝を存分に語ってやるかのう!
「まずは手下のインプ共を……」
百獣族『獣騎マーメイド』との戦いを制した鐘射寺・大殺(砕魂の魔王・f36145)はご機嫌であった。
「大勝利である!!」
「それでそれで!?」
「くくく、『獣騎マーメイド』は強敵であった。だが、奴の三叉槍の技の冴えわたるを我輩はな……」
そう彼の周りに集まった子供らに語る。
百獣族は過去より蘇ったオブリビオンである。
遥か昔に人間の祖先が犯した大罪を贖わせんと迫る者たちである。
だがしかし、誇り高い騎士であることも変わりはない。
故に大殺は、城塞都市へと帰還を果たすと子供らに囲われていた。
彼の纏う雰囲気が子供らには親しみやすいものであったからかもしれない。とは言え、大殺は魔王を名乗る者。
今回やったことといえば、まるで勇者である。
真似事であるが、と大殺は思うがしかし彼の行いは事実勇者のそれであった。
「すっげー!」
「姫様を取り戻してくれてありがとう!」
「くくく、我輩にかかれば簡単なことよ!」
確かに魔王として勇者のような振る舞いをすることは、なんとも癪に障る。が、子供らの視線と感謝の言葉は彼の心に温かいものをにじませるものであった。
「悪くはない気分だのう」
「もし、あなた様は此度の戦いにおいて参じて頂いた騎士とお見受けいたしますが」
子供らに語っていた大殺の前に兵士たちが集まってきている。
彼らの姿を認め大殺は大仰に頷いてみせた。
「然り! 我輩こそは砕魂王国の魔王よ! フハハハ!」
「さ、さいたま……? 無知なる無礼をお許しください、勇者よ。ですが、どうかご同行願えませぬか。領主がご挨拶をと」
「ふむ。こちらからで向け、と」
「姫様救出の恩義に呼びつけること、何事かとお叱りを受けるのは当然のことかと思われますが」
「よい! 上に立つ者、そうそうに動くわけにはいかぬという道理も理解しておる! 無礼などとは言わぬわ! フハハハ! では行こうか!」
大殺は兵士に連れられて領主の館へと向かう。
そこはすでに多くの人々が集まる広場であった。恐らく、城塞都市の中にあっても有力な者たちが一同に会しているのだろう。
そこには見慣れぬ騎士の姿もあった。
「おお! あなたが姫救出に向かわれた勇者のお一人か! 此度は、俺が巡礼に出ていたばかりに申し訳ない! どうか平に容赦して頂きたい!!」
やかましい程に張り上げられた声。
その男の様子に大殺は、あれが、かの『轟響』の二つ名を持つ騎士『スルーズル』であると理解する。
「其方が『スルーズル』殿か」
「その通りである! 誠、感謝の念に絶えぬ!!」
「いやなに、巡礼の旅も騎士の責務。うまくいったかのう?」
「お恥ずかしながら! ぜんぜん! さっぱり!!」
ガハハ、と笑う『スルーズル』に大殺は大いに気に入ることだろう。
自らの失敗を恥じることはすれど、隠し立てごまかすことはない。そして他者の功績を妬むでもなく腐すでもなく、真正面から認めて褒める。快男児というのならば、こういう男を言うのだろう。
「『ヒヤルムスリムル』姫もご無事か。余程慕われているのだろう。民の喜びようを見ていればわかる」
「ああ! そこでだ、大殺殿! この後、晩餐会を催すことになっている! どうがご出席願いたい!!」
「勿論!」
「そうか! ありがたい! 皆、あなたの武勇を聞きたくてウズウズしているようだ! かくいう俺もだが!!」
その言葉に大殺は笑う。
ならば、息を吸い込む。語って聞かせよう。此度に戦いの顛末を。
「まずは、手下のインプを……――」
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【理緒サージェ】
『フィーア』さーん!
怖かったね?怖かったよね?
もうだいじょうぶ。わたしが護って上げるからね!
(だきだきすりすりりおりお)
え?『ヒヤルムスリムル』?細かいことは気にしちゃダメ!
噛んでくれればこれすべて『フィーア』さん!
ということで……。
さぁ噛んで、いま噛んで、すぐ噛んで、わたしを噛んへぶっ!?
いたいの。
取り乱しました!(敬礼
ふぃー……いや『ヒヤルムスリムル』姫、だっけ。
なにはともあれ無事で良かったよー。
せっかくだし、あの大声騎士さん撒いてデート行かない?
ほらサージェさん、抜け道見つけて?
こういうの得意でしょ。クノイチだし。
『希』ちゃんはホログラムで姫の偽装しておいて、ねー♪
サージェ・ライト
【理緒サージェ】
おお、今日の理緒さんは荒ぶっておられる……
やっと平和が戻ってきた気がします
この世界でりおりおは通じるのか?
フィーアさんの概念とは……!!?
あ、そろそろ姫様が限界ですね
というわけでちぇすとー!(ハリセン)
ふぅ
はじめましてでしょうか、ヒヤルムスリムル姫様
どこかで会った気がするのはこちらだけかもしれませんが
理緒さんがりおりおするのは宿命なのでご容赦ください
えー、こういう時だけクノイチ頼りになるとかー
仕方ありませんねえ
【VR忍術】愛の逃避行を応援する術!
説明しましょう!そのままです
なんか煙幕とかで良い感じにブラインドしますので
その間にどうぞー
さて、私はお食事楽しみましょうかねー
「『フィーア』さーん!」
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)はダッシュしていた。ダッシュ・アンド・ダッシュであった。アンドのアンドは、安堵のアンドである。意味がわからんが、そういうことである。
彼女は『ヒヤルムスリムル』姫へと抱きついていた。
無礼千万である。
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)はそうした理緒の振る舞いを見て、ちょっとヒヤヒヤしていた。
打首にされたりしない? 大丈夫?
大丈夫である。
これでも姫君奪還のために戦った勇者である。
そんな勇者をハグごときで打首にするか? そんな末世じゃあるまいし。……大丈夫だよね?
「怖かったね? 怖かったよね? もうだいじょうぶ。わたしが護ってあげるからね!」
「あ、あああの、私、『ヒヤルムスリムル』という名前が……」
怖いというのなら、今の理緒のほうが怖いのではないかとサージェは思ったが、荒ぶっておられますなぁという言葉で濁しておいた。
このほうが平和であるからだ。
というか、とサージェは思う。
抱きついてハグして、すりすりして、りおりおするのは、この世界のやんごとなき身分の方に対する不敬にならないのかな? なったらやばいな、と思っていた。
「細かいことは気にしちゃダメ!」
「いや、細かくはないでしょう、名前ですよ?」
「噛んでくれれば、これすべて『フィーア』さん!」
「それは無茶ではないですかね!?『フィーア』さん概念とは……!!?」
初めて聞く概念ですね。
イェペディアになければ、ないですね。
「ということで……さぁ噛んで。今噛んで。すぐ噛んで。わたしを噛んへぶっ!?」」
「ちぇすと!」
サージェの手にしたハリセンが『ヒヤルムスリムル』姫に迫る理緒の後頭部を叩く。
なんだろうね。
この漫才感というか、コント感というか。
何を一体見せられてるんだ、我々は……という顔の城塞都市の領主と有力者たち。
そう、今まさにサージェたちは城塞都市の上層部とも言うべき有力者たちの社交場へと来ていたのだ。
だが、始まったのは理緒のりおりおである。
あまりにも唐突であったし、二人が姫君奪還の立役者であることを差し引いて何も言えなくなっているのが有力者たちであった。
「いたいの」
「ふぅ。というわけで、どうにかこう、そのこれで手打ちしていただけますかね。どうにもこの、えっと、理緒さんは『ヒヤルムスリムル』姫と初めて会った気がしないみたいでしてぇ、そのぉ、理緒さんがりおりおするのは宿命なのでご勘弁をといいますかぁ」
「取り乱しました! あんまりにも姫様がおきれいだったので、つい!」
「それで通ります?」
その言葉に領主は盛大に笑う。
あ、これは許されるやつだな、とサージェは思ったし、理緒も思った。
だが。
「いや! 流石に不敬が過ぎるのでは!!」
『轟響』の二つ名を持つ騎士『スルーズル』であった。
理緒たちからすれば、肝心なときに居なかったくせに……と思ったかも知れないが、彼は彼で真っ直ぐな男だ。
領主がなにか沙汰を出す前に助け舟を出そうとしたのだろう。
不敬は不敬。
だが、これを褒賞としては、と彼は切り出すつもりだったのだ。
「うえっ!?」
悲しいかな。
互いのやり取りを上手に汲み取るには、まだ彼らは関係性が構築できていない。
「や、やばいよ、サージェさん!」
「では、ひとまずは『ヒヤルムスリムル』姫を離しては?」
「それはやだ。ほら、サージェさん、抜け道見つけて? こういうの得意でしょ。クノイチだし」
「えー、こういう時だけクノイチ頼りになるとかー仕方ありませんねぇ」
サージェはもう理緒にとっての青いたぬき型ロボットかなにかなのか。
いずれにせよ、『ヒヤルムスリムル』は状況が飲み込めていない。
「え、あの、え、ええ?」
「じゃあ、行きますか! VR忍術(イメージスルノハカッコイイワタシ)、愛の逃避行を応援する術!」
「なんだそれは!!」
「説明しましょう! そのままです! なんか煙幕とか良い感じにブラインドしての逃避行です!」
「え、なん、えええっ!?」
「さ、行くよ、デートに! あの大声騎士さんを撒いてね!」
「ちょ、まっ!」
二人はそのまま市街地へと飛び出す。
また再び姫君が拐かされたとの大騒ぎは、騒々しくも華やかな祭りの様相を見せる城塞都市に響き渡るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵