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里帰り大作戦と星の架け橋、はじまりの|宇宙《そら》

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マシュマローネ・アラモード



ティタ・ノシュタリア




●滞在一日目:ノシュタリア両殿下とはじまりの場所
 星々が煌めく宙を行き、もうすぐ到着する今回の旅の目的地。
 そしてその王国のたゆまぬ歩みや発展を、マシュマローネ・アラモード(第一皇女『兎の皇女』・f38748)も聞き及んでいる。
(「ノシュタリア星域、これだけの広域を治める王家との交流は前例がございません」)
 星系内にいくつもの有人惑星を持つという、ノシュタリア王国。
 それらの惑星は、ノシュタリア王家が長い年月と情熱をもって開拓し、入植した賜物であり。
 赴く先はまさに、そのなかでも政や経済の中心となっている王都がある『惑星ノシュタリア』。
 マシュマローネにとって今回の訪問は、ラモード星第一皇女として、気が引き締まる思いで臨んでいるし。
 それに、何よりも。
(「ですが、ティタがお力添えしてくださるのです、ラモードの皇女として恥じぬように精一杯努めましょう」)
 案内してくれるティタ・ノシュタリア(夢を見る|宇宙《そら》・f38779)の存在が心強く、わくわくと楽しみな気持ちでいっぱいなのだ。
 そう――このノシュタリア王国への宙旅は、ティタにとっては久しぶりの里帰りで。
(「でもでも、これは――お母様にだけあらかじめ伝えて準備を進めた、電撃作戦なのですっ!」)
 ティタとノシュタリア王妃であるティタの母による、秘密の大作戦なのだから。
 いや、父であり現ノシュタリア王のヴィラール・ノシュタリアへのサプライズというよりは。
「お父様に先に知られてしまったら……王都全体での歓迎パレード? ううん、きっとそれ以上の度の過ぎた歓迎になるのでっ」
「モワ、普通に行ったらパレード以上の!」
 聞こえた言葉に……どういうことになるか気になりますが、なんてマシュマローネは思うも。
(「ティタの選択、正しいと思っておりますわ!」)
 でも信頼しているから、そのあたりは全てお任せ。
 というのも実は、名君と名高い王は、非常に子煩悩でもあって。
 きっと友を連れた自分の帰郷を知れば、これでもかと国をあげて全力で歓待するだろうことが、娘のティタにはよくわかっているから。
 だからまだ父には内緒だけれど、ノシュタリア星域に入れば開く王家用の通信回線で連絡を取り合うのは勿論。
「こちらティタ。とっても素敵なゲストといっしょに、旅から帰ってきました!」
(「お母様、王妃殿下とのお話でしょうか?」)
 そしてマシュマローネは、ティタがやり取りしている通信内容を聞きながら状況を察し、改めて思うのである。
(「モワ、流石、噂に違わぬ才媛の王妃様……! この|電撃作戦《サプライズ》もお力添えあってのことでしたのね!」)
 そしていよいよ、王家専用の発着場に船を降ろせば。
「ノシュタリアへようこそ。歓迎します、マシュマローネ殿下。それから……おかえりなさい、ティタ」
「……はいっ、ただいまっ!」
 ティタを出向かえるのは、ふんわり、やわらかい母の声。
 そしてティタの母・ノシュタリア王妃ソレイティナは、大切な客人であるマシュマローネにも柔和で美しいその笑みを向けて。
「ソレイティナ妃殿下、ご紹介に預かります、ラモード星、ラモード王国第一皇女、マシュマローネ・アラモードと申します、ティタ殿下とは御友人としてお付き合いいただいております……この度はご高配賜り、感謝しております」
 ラモード王国第一皇女として、きっちりと礼節を重んじ、挨拶を交わした後。
「そして、ティタの帰郷に優しく迎えていただいたことを嬉しく思います」
 同時にティタの友人としてもてなしてくれることに、感謝の意を告げるマシュマローネ。
 それからまず勿論向かうのは、王への謁見の場。
 仕掛けたサプライズを聞いた時はきっと、さぞびっくりしただろうって思うのだけれど。
「先程報告を受けた。よく戻ったな、ティタ。得るもののある旅だったか? ……いや、聞くまでもないか」
 玉座で待っていたノシュタリア王、ヴィラール・ノシュタリアは、マシュマローネがティタから聞いていた雰囲気とは少し違う……?
 優し気に見つめるエメラルドのような瞳の色は、確かに大好きな彼女のものと同じなのだけれど。
 眼前の王は、娘の帰還に度の過ぎた歓迎をしちゃうような風には見えない、名君である名高き王に相応しい威厳に溢れている。
 けれど、そうっとティタは内緒話の耳打ちを。
「よそいきのお父様ですっ」
 マシュマローネも、そんなノシュタリア国王、ヴィラール陛下に恭しく礼をして。
「国王陛下におかれましては、このような形での来訪をお赦し頂き感謝致します、ラモード王国、ルモード大王の名代として参りました、此度の機会が両国の友好の架け橋となれば幸いですわ」
「ラモード王国、そしてルモード大王のご高名は聞き及んでいる。是非、これから良き関係を築いていきたい」
 そう告げられれば良い感じに捉えてもらえたようで、朗らかに微笑して。
 マシュマローネはぱちりと目配せして、ティタにアイコンタクト。
 そんなふたりのやりとりを見聞きすれば……あなたにはお父様の過保護なところばっかりお話してた気がして、なんてティタは思い返すも。
 でも、公務モードなお父様を見てなんだかほっとしてたり――していたのだけれど。
 ふっと自分達を見つめるヴィラール王の表情が緩めば、こんな言葉が続けられるのだった。
「それに貴殿はティタの友人だ、本来ならば、国をあげての歓迎のパレードを行なって歓待すべきであるのだが……先程報告を受けたばかりでそのような準備も出来ず、すまない」
 そう聞けば、やっぱり彼はとても子煩悩なティタの父でもあって。
 思わずふたり顔を見合わせては、くすりと微笑みあっちゃう。
 そして謁見を終えたら、次はお待ちかね!
「マシュマローネっ。どうですか? ノシュタリアのお料理! お口に合いますか?」
 ……お母様がこっそり準備を進めてくれていた晩餐会! って。
 ティタはわくわく食事や会話を楽しみながらも、またそうっとこっそり、マシュマローネに耳打ちを。
「さっきはお父様、マシュマローネの手前あんなふうでしたけど……旅のお話、聞きたいはずなのでっ!」
 それを聞けば――それなら! と喜んで。
「先日は、ティタがラモード王国で大変世話になったようだが」
「マシュマローネが腕を振るってくれた、ラモードの名産品で作ってくれたとっておきのフルコースも、とっても美味しかったんです!」
「あら、それは素敵なおもてなしを受けたのね。次はでは、私達も一緒に作りましょう、ティタ」
「ラモード王国は、商業にも農業にも大変力をいれていて、大いに技術も進んでいると聞いているが」
「はい、惑星の玄関口として宇宙港が開かれている王都ルモードを中心に、商業都市の側面もありますが。農業技術や畜産にも力をいれていて、新種の植物の研究も日々おこなっておりますわ」
「ラモード料理や多国籍料理、フルーツもすごく美味しかったんですよ!」
「それは、機会を作って是非味わってみたいものだ」
 ラモード王国のこと、そしてティタとラモードで過ごした時のことを、ティタと一緒に話すマシュマローネ。
 興味津々自分やティタの話に耳を傾けている両陛下の姿を見れば、やはり緊張はしてしまうけれど。
 でも、王と王妃であるというだけでなく、ティタの父上と母上であるふたりに、きっと喜んでいただけると思うから。
「夜燈華はお星さまが地上に降りてきたみたいにきれいで! そして朝焼けと渡り鳥たちのつくる景色も美しくて……あ! あと、ダーラ皇女さまともいっぱいお話ができたんですっ」
「ダーラ皇女さま、ラモード王国の皇女様ね」
「5mも身長のある、とっても素敵なお姉様で! ピンクの虎さんのお話のことやその他もいっぱい、旅のお話を聞かせていただいたんです!」
「はい。姉の、虎の第十一皇女ですわ。それにティタがラモードを訪れた時期はちょうど、夜燈華の花の蜜も青い煌めきを宿す絶好の時期でしたし、朝焼けも一緒に見にいけて……自然豊かな惑星ラモードのことをティタにも沢山見て知ってもらえて、嬉しかったですわ」
 あんなことやこんなことがあったって、ティタの帰郷に合わせた素敵なお話がいっぱい出来たら、って。
 それから緊張しつつも楽しく会食していたのだけれど。
「マシュマローネ皇女は、ノシュタリアにはどれくらい滞在を? 間に合うのならば、やはり国を上げての祭りか、せめてパレードを……」
「国王陛下、そのお気持ちだけで……このように迎えていただきましただけでも、心から感激致しておりますわ」
「ふたりにも、滞在中の予定がもうありますから」
「そうか……」
「もう、お父様ったら……」
 やはりヴィラール王にはサプライズにしておいて、正解だったようです!
 そんな和気藹々、終始和やかで美味しいひとときもあっという間に過ぎれば――時刻は夜。
 けれどまだまだ、休むのは勿体ないし。
「ふふふ、マシュマローネっ。こっちこっち!」
 ティタがマシュマローネを連れてやってきたのはバルコニー。
 ここにあなたを連れてこようって、ティタは決めていたから。
 だって、この場所は――。
「いつもここでそらを眺めてたんです。いつかこのお星さまの海に飛び出すんだって」
 澄んだそらは、あの時と同じように、キラキラ輝くお星さまでいっぱいで。
 手すりに体を預けて、ぽつりと口を開いてそう紡いだ後、告げる。
 ……だから、ここが私の旅のはじまり、って。
 そして、一緒に旅をしてくれる、あなたと。
「ここからの眺めをマシュマローネといっしょに見たかったんです」
 その言葉が耳に届けば、ここが旅の始まり……と。
 マシュマローネは眼前のそらを、自然とより見入ってしまう。
 澄んだ空に浮かぶ星たちのこの夜景が、ティタの旅立ちの日と同じ景色と思うと。
 そして知りたいって、思ったから。
「憧れから旅に出たのですわね……どうでしょう? モワ、宇宙に憧れは見つけましたか?」
 マシュマローネはそう訊ねてみる。
 きっとまだ見ぬ多くのものがあると思いつつも、彼女のこれまで旅が良いものかを。
 そんな問いに、ティタはふと考えてみて。
「憧れ、ですか? そうですね……見つかりましたけど、その上で。まだ見つけてる途中です」
 もともと旅に出ることそのものに憧れていて。
 だからこの場所で、あの時に思っていたことは、叶ったのだ。
 でも、叶ったからこそ、色々なこと知ったからこそ、一緒に旅してきたからこそ。
「でも旅をすればするほど、どんどん見たいものもやりたいことも増えちゃいましたからっ」
 次からに次に、どきどきやわくわくも湧いてきちゃうし。
 ティタは、マシュマローネとここからの眺めを見たいと思う願いが叶った今だって、やっぱり思っちゃうから。
「……ふふふ、しあわせはいっぱい欲しくなっちゃうんですっ。よくばりですよねっ」
 それから、しばし、そのままお星さまをふたり並んで眺めた後。
 ひやりと冷たい夜風を感じれば、中へと彼女を促す。
「……冷えちゃいますねっ。あったかいお茶をいただいて、おやすみしましょうか」
「ええ、続きはまた今度」
 そしてティタにエスコートされつつ、マシュマローネはもう一度、ノシュタリアに輝く星たちを見上げて思うだった。
 ――また明日もノシュタリアを知り、ラモードと繋ぐ一つの輪となれるように、と。

●滞在二日目:庭園ピクニックと街歩き
 昨日の楽しかった時間は、まるで夢のようだったけれど。
 目が覚めた今日も、窓の外の晴れやかな風景はノシュタリア王国のもの。
 そして爽やかな1日のはじまりから、早速楽しんじゃいます!
 ティタが手にしているのはそう、中身が詰まったバスケット。
「今日は朝から庭園でピクニックです!」
 晴れやかな空の下、咲き誇る花々と、風が纏う仄か甘い花の香り。
 それに何より、弾むような声を笑顔で。
「ふふふ、広いので迷子にならないようにっ。ちゃんとついてきてくださいねっ!」
 そう心躍らせた足取りのティタに続くマシュマローネ。
(「今日は庭園と王都エルヴィールのご案内ですわね」)
 ノシュタリア王国滞在二日目に楽しむ予定なのは、庭園と王都エルヴィール。
 マシュマローネは今日の空のような青い瞳をくるりと巡らせてみれば、思わず感嘆の溜息を零す。
 広い庭園はまるで豊かな森のようで、それでいてきちんと整えられていて、整然とした庭になっていて。
 ティタに案内されるままに感心しきってしまう。
 見渡す限りのその美しさと広大さ。それに鳥や木々、水のせせらぎ――耳を澄ませば聞こえる、自然の中にある音。
 それでいて自然の調和の取れた庭造りは、見事としか言いようがないもの。
 いや、ティタは迷子にならないようにって、そう言ったものの。
(「実際はきちんと整備されているので迷うようなことはありませんが」)
 でも、広大な敷地にある森の遊歩道を歩きながら、自然の音に耳を傾けつつ……すごく張り切っているのだ。
 ――いつも私が案内してもらってばっかりだから、今度は案内できるのがうれしくって、と。
 そしてそれは、差し出された手に手を重ねたマシュマローネだって思っちゃう。
「モワ素敵な庭園ですわね? 遊歩道を抜けた先は何があるのでしょう?」
 ――ふふ、こうして手をひかれるのは珍しいかもしれません。
 なんて、そっと笑み零して。
 そうして五感を目一杯使って存分に楽しんで歩く、マシュマローネも気になっていたその先には。
「ふふふー。そろそろ着きますよっ!」
 ティタの声と同時に、ぱっと目の前の視界がひらければ。
 森から出た瞬間、マシュマローネの青の瞳にも鮮やかに咲き誇る。
「色とりどりのお花たちのお出迎え、本当に素敵な庭園ですわね」
 そこには、そう――色とりどりのお花でいっぱいの庭園!
 それからふたり、花に囲まれてひとやすみ。
 ピクニックのようなわくわくな気持ちでガーデンチェアーに座って。
 ティタが満を持して、持ってきたバスケットをぱかりと開けば。
「お願いして作ってもらいました!」
 その中には――なんとも香ばしい芳りのパイが!
 そんなバスケットの中身に、マシュマローネはぱちりと瞳を瞬かせつつも。
「モワ! こちらは妃殿下がお作りに?」
「はいっ、お母様の得意料理の、ミートパイです!」
「まぁ! これがティタにとっての御家庭の味なのですわね!」
 ティタがバスケットを大事そうに持っていたのも納得。
 そして一緒にいただくのは、彼女の思い出たくさん、美味しさいっぱいの味わい。
 それはティタにとって、あつあつの、よく知った味で。
 ゆるゆると頬を綻ばせて口にする姿を見つめながらも、マシュマローネもはむり。
 口にしてみれば、サクサクとしたパイからあふれる美味しいバターの香りと、中には旨味の広がるパティ。
 それらがふわっと口の中でとろけて、とても美味しいお味で……だからこそ、マシュマローネはこう思いを馳せるのだ。
 これがティタにとっての特別なら――きっと温かい時間を過ごされたと。
 そんな朝からとても充実した、美味しくて心温まる花咲くひとときを、ふたりで楽しんだのだけれど。
「ではでは! お昼からは王都をご案内しますねっ!」
 午後から散策に向かったのは、王都エルヴィール。
(「歴史ある街並みに、所々見受けられる先進的な技術の調和、私の想像を上回る都市計画のなされた街――」)
 それは、クラシカルとテクノロジーが織り成す共栄の風景。
 マシュマローネはそんな洗練された雰囲気に少しキョロキョロと、まるでおのぼりさんのように視線をあちこちに向けながら。
「景観を崩さないようにひっそりとテクノロジーが使われてるのですっ! たとえばほら、あの大きな時計塔とか! 電波塔だったり、ほかにもいろんな役割があったりっ!」
「モワ、なるほど……高い時計塔が電波塔を兼ねて居るのですね」
 観れば観るほど、あちこちに垣間見えるノスタルジーとテクノロジーへの好奇心で、マシュマローネが胸いっぱいになっていれば。
「あっ、姫様!!」
「姫様、おかえりなさい!」
 聞こえてきたのは、ノシュタリア王国に住む人々の声。
 そんな国民達にも、ティタは屈託なく返して。
「はーいっ、ただいまですっ!」
「姫様が好きそうな本、入荷しましたよー!」
「わ、ほんとですかっ!? とっておいてくださーいっ!」
 にこにこ、手を振りながらひとりずつに楽しくお返事する。
 きちんと国民の皆も、あまりお邪魔にならないようにと、遠くから声をかけてくれている心遣いがティタにはわかるし。
「モワ、ティタもこうしてみなさんに慕われているのですわね……ノシュタリア王国が、こうして明るい理由がとてもよくわかりますわ!」
 気がつくと、ティタへと向けられる声があちらこちらから聞こえてくるから。
 マシュマローネがうんうんと納得したように頷けば、ティタは嬉しそうに笑み咲かせる。
「ふふふ、よく街には遊びに行ってましたからっ。みなさんも慣れっこなんだと思いますっ」
 そんな姿を見遣り、マシュマローネは思うのだった。
 ……ティタの親しみのしやすさ、気のおけなさの理由はこうした下地もあるのかもしれません、と。
 彼女のルーツを知れることが、とても嬉しくて。
 そしてぽんっとひとつ手を打ったティタは、こんな問いを。
「……そうですっ! マシュマローネっ、喉が乾きませんか?」
 それから彼女を連れてやってきたのは。
「モワ? 喫茶店ですか? 是非是非!」
 街の雰囲気と同じく、クラシカルな雰囲気の喫茶店。
 だってここは、何といっても。
「こんにちは、マスターさんっ! お久しぶりですっ!」
「姫様、来てくださって嬉しいです。お連れ様も今日はご一緒なのですね?」
「はいっ、こちらは私のとっても素敵なゲスト、ラモード星第一皇女のマシュマローネですっ」 
「お馴染みのお店というわけですわね?」
 喫茶店のマスターに丁寧に挨拶をしながらも、マシュマローネはティタと共に店内に足を踏み入れて。
 訪れた喫茶店の雰囲気に、どこかクラシカルな落ち着きを感じつつも、一緒に楽しむことにしてみる。
 ティタと顔馴染みのマスターさんに、お友達という事で――少しお忍び風に。
 それから初老のマスターが微笑んだのを見て、席に座れば。
 ティタが注文するのは、いわゆる「いつもの」。
 でも今日は、いつもとは色々と違っていて。
「今日はー、ふふふ。クリームソーダをふたつ、テーブル席でっ!」
 いつもお決まりのカウンター席ではなくテーブル席で。
 そして、いつもみたいにクリームソーダをくださいって告げるけれど。
「……えへへっ、今日はテーブル席で、ふたつですっ」
 違うのはそう――今日は私とあなたのを、ふたつ分。
 そんなテーブル席で、ティタのイチオシのクリームソーダをわくわくと待ちながらも。
 マシュマローネがふと思い出しつつ口にするのは、桜花弁舞うあの時のこと。
「今日はテーブル席で、ティタのイチオシのクリームソーダで……ふふ、サクラミラージュで初めて会った時もこうして相席で、ご一緒しましたわね」
 しゅわりと運ばれてきたクリームソーダを見れば、少し思い出と一緒に。
 ……こうした落ち着ける雰囲気も、きっとティタが考えて下さったのかしら? なんて。

●滞在三日目:宙に浮かぶ最先端の都
 今日は惑星ノシュタリアを出て、向かうその場所は――私、初めて訪れます! と。
「モワ、今日は人工天体クラージュへの視察ですわね!」
 マシュマローネも初めてだという人工天体の都市・クラージュ。
 足を踏み入れれば早速、マシュマローネは大きく瞳を見開いて。
「お話に聞くだけで、このように実際に訪れると、圧倒されてしまいます、本当にすごいですわ!」
「エルヴィールがノシュタリア最古の都市であるなら、クラージュはノシュタリア最新の都市!」
 ティタは続けて紡ぐ――宇宙に浮かぶ、銀色の外壁を持つ惑星だと。
 そんなクラージュは、ノシュタリアの工業の多くを担う星で、そして何より。
「ノシュタリア星系でも唯一の、ひとの手で造った星!」
 だから、ノシュタリアのひとの手で作られたこの星は、ちょっぴり特別だという思い入れもあって。
「工業の中心とあって、宇宙船の造船所を見れば、技術力の高さを伺いしれます!」
「えへへ、ありがとうございますっ! そう言ってもらえると誇らしくなっちゃいますっ!」
 マシュマローネの言葉に、ぱっと笑みを宿しながらも。
 ティタはもうひとつ、えっへんと。
「私の……こほん、私のじゃないですね? 王家の船のひとつ、マシュマローネにもおなじみ、オーロラもここで作られたのですっ!」
 やって来た造船エリアで建造中の新しい船を横目に、ちょっぴり自慢げにそう告げれば。
「モワ! ティタのオーロラ号もここで造船されたのですわね!」
 マシュマローネは自分も知っているその船のことを思い返しつつ、こくりと頷いて返す。
「王家の所有する船ですものね、内装をひとつとっても快適でラグジュアリーな旅に相応しい船ですし、私もキッチンを使わせていただくと、とても技術の行き渡る良い船だと思いますから!」
 やはりあの心地良さや使い勝手の良さは、高い工業技術の賜物であると。
 そんな興味深く瞳を巡らせている彼女へと、ティタは笑み零しながらも訊ねてみる。
「ふふふ、居住区も見ていきますか?」
「居住区へ? モワ、ぜひぜひ!」
 ラモード王国の皇女として、確り視察もしたいし。
 何より、見るものや風景が、わくわく好奇心を擽られちゃうから。
「都市型の惑星を想像させるような、未来型の都市は先鋭的で、スマートな都市化が進んでいらっしゃるのですわね」
「ここは王都から離れてるのでっ。都市も近代的な作りとデザインになってるのですっ!」
 ティタと会話を交わしつつ、色々と教えて貰いながらも、クラージュの居住地へと移動すれば。
 そこはまた王都とは違った、スマートで洗練された雰囲気の街並みが。
 でも、そうでありながらも。
「環境に配慮した自然や緑地も、美意識や本星との考え方に差異が出ないような、良い意味で民の意識が統一されているのですわね」
 マシュマローネの言うように、緑もたくさん取り入れられていて。
 ティタは引き続き見て欲しいポイントを告げつつ案内しながらも。
「これがクラージュの街ですっ! ふふっ、どうでしょうっ!」
「人工天体の概要は、私の故郷、ラモードにもお伝えしたく思いますわ。きっと、兄弟姉妹でご興味を示すと思いますので!」
「ごきょうだいのお眼鏡にかなうでしょうかっ!」
 そう、そわりと訊ねてみる。
 そんな彼女の沢山いる兄姉達の中でも、建築に卓越した権能を有する第五皇子の猿のお兄様ことファシヴァか。
 それとも揃って興味を示すのは、共に新種の植物の研究をしている第十皇子の牛のお兄様アマルフィと第八皇女の猪のお姉様のラプラスかもしれないし。
 もしかしたら、第十一皇女の虎のお姉様のダーラの、面白くて不思議な旅の絵本のネタにもなるかも? なんて。
 マシュマローネはお兄様お姉様のことをひとりずつ思い浮かべつつも、こうティタへと笑んで返すのだった。
 ――ふふふ、年間を通じて使節を送るようになるかもしれませんわね! って。

●滞在四日目:歓待の星雫、白き鳥の眠る地
 再び惑星ノシュタリアに戻って、ぐっすり眠って一休みできたら。
 マシュマローネは今日も元気に案内してくれるティタを見つめ、そっと思う……ティタも本当に頑張りますわね、と。
 連日色々なところに連れていってくれて、沢山のわくわくや様々な出会いがあって、その密度も濃いから。
 でも同時に、すぐにこう思うのだ。
(「モワ、そうです、ノシュタリアの王女様ですもの」)
 ティタはノシュタリアの王女様であるし、それに。
 何よりもマシュマローネがすごいと思うのは、彼女の、一生懸命で全力で取り組む姿勢。
 ティタのそこは本当に尊敬するところだと常々思うのだ。
 でもティタ自身も、久しぶりの里帰りで王国中を巡るのは懐かしくて、ふたり一緒だともっと楽しいし。
 マシュマローネに見てもらいたいって思うところは、まだまだいっぱいあるのだから。
 そして勿論これから行くところも、そのひとつ。
「今日はノシュタリアでも屈指の名所、ル・シーニュへ!」
「ル・シーニュ! モワ、以前、拝聴した美しい針葉樹の森でしたわね!」
 その場所のことは、マシュマローネも聞いていた。
 ル・シーニュ――雪みたいにまっしろな針葉樹の森。
 美しい雪の降ったような真っ白い針葉樹の森は、神聖な気を帯びていて。
(「道ゆく方たちもその美しさに足を止めていらっしゃるようですわね」)
 さすがノシュタリアでも屈指の名所であるというこの地を訪れている観光客の姿も少なくはない。
 ティタはそんな人達に手を振りながらも。
 でも……自分達が目指すのは、密やかに伸びる森の道の先。
「私たちの目標は森のいちばん奥ですっ!」
 そしてその言葉通り、奥深くへと進めば――そこから先は王家の管理地。
 だから警備員に声を掛けて、閉ざされていた門を開けてもらって。
「ちょっとだけここのお話しますね。歩きながら聞いてくださいっ」
 マシュマローネは一礼をして、言われた通り歩きながらも。
 中へと案内してくれるティタから、こっそりと聞くのはこんなお話。
「初代ノシュタリア王さまにはお友達がいました。まっしろな翼を持つ大きな鳥さん」
 そして初代さま――初代ノシュタリア王・エルヴィールは、まだ何もなかったこの星に国を建てて。
 白き翼を持つ巨大な鳥は、ならばその国の行く末を見守ろうと。
「そうしてその鳥さんが、私たちを見守るために眠りについた場所が……この洞窟って言われてます」
 ティタが語るのはそう、ノシュタリアの建国にまつわる伝説。
 そしてマシュマローネは王国でよく目にしていたモチーフを思い出す。
「初代王、エルヴィール様と、友である白の鳥、伝説では国の創立に関わり、国章にもなったと……」
 そう――国章にも描かれている、白き鳥の姿を。
 それから洞窟のさらに奥へと歩みを進めながらも、聞いた伝説への思いを紡ぐマシュマローネ。
「今でもこの地は累代の王に守られ、安寧の地となっているのですわね……そうした幾星霜の想いと感謝を忘れない、なんとも理想とするところでありますわ」
 初代王エルヴィールから現ノシュタリア王ヴィラールに至る今まで、そして王女であるティタにも受け継がれている、王の友たる白き鳥の眠る地。
 洞窟内は照明もないというのに不思議と明るくて、凛としていて優しい、静謐な空気に満ちていて。
 マシュマローネも感じる――神秘が今も息づいていると。
 そしてティタは彼女を導く。すこし歩いたその先、ホールのように開けた空間に。
 刹那、マシュマローネはその光景に思わず息を飲んでしまう。
 まるでそれは聖なるアーティファクト、神聖な守護により護られた国の礎に相応しいと……畏敬の念を感じずにはいられないほどに。
「モワ……本当に聖なる、清浄な神気を感じます……!」
 その中心に座するのは、とてもとても大きな、まっしろなクリスタル。
 ティタはそれに見入る彼女を見つめ、エメラルドの煌めきを細めて紡ぐ。
「ふふふ、綺麗でしょう? これがさっきお話した鳥さんの……そうですね、御神体みたいなものでしょうか」
 それから、しばらく言葉も出ないほど静かに、その煌めきを眺めていれば。
 クリスタルからぽたりとふいにこぼれるは、一滴の雫。
 それが地面に落ちれば、ふたりは同時に瞳を見開いて、ぐるりと視線を巡らせる。
「……! これは?」
「わあっ……珍しいんですよっ、この現象っ!」
 落ちた雫が、ぱっと広がったかと思えば――きらきら、まるで星空のホールみたいにきらめいて。
 クリスタルから零れた雫がまるで反響するかのようにホールに伝播すると、放たれる数多の煌めきは、まるで星空のよう。
 そしてしばらく、その光景を瞳に映していたマシュマローネへと。
「もしかしたら、ふふふ。マシュマローネに『ようこそ』っておっしゃってるのかもしれませんっ」
 告げるのは、ティタのそんな声。
 そして、もしかしたら歓迎されているのかも、なんて聴けば。
 マシュマローネも、ラモード星の第一皇女として。
 自然と深く礼の姿勢をとり、歴代の王たちとこの地に眠る王の友に敬意を払う。
 永い時の先で会えた出会いの始まりに感謝と、この場に迎え入れていただけた事に――確りと礼をして。
 そしてティタは、そんな隣で礼をする彼女の姿にくすっとしてから、自分も同じように礼を尽くす。
 ノシュタリアの王女様として、ありったけの敬意を表して。
 それからそんな眼前の星空の如き光景を眺め、マシュマローネは強く感じる。
 まるでその煌めきたちは、自分達が憧れている|宇宙《そら》みたいでもあって。
 そしてその輝きに包まれているティタを見れば、彼女こそ祝福されているようで。
 珍しい現象、という事に収まらない――あたたかな存在がたしかに、ここにはあるということを。

●滞在五日目:わたしのとびっきりと、あなたとの秘密
 それは早朝――まだ鳥も鳴かない時刻であった。
 ふと夢の中に響くのは、とても聞き覚えのある――ティタの声?
 ずっと滞在中一緒に各地を回っているから、きっと彼女が夢に出てきたに違いない……なんて微睡んでいれば。
「……マシュマローネっ、マシュマローネっ」
 そうそっと声をかけられているのが、夢ではないことに気づいて。
「モワ? ティタ、どうなさいました?」
 突然の呼びかけに、ぱちりと目を覚ます。
 けれどまだ少しだけ夢見心地なマシュマローネに、ティタは満面の笑顔でこう告げる。
「えへへ、行きましょうっ! 『とびっきり』ですっ!」
「……『とびっきり』の場所?」
 それからさっと素早く支度をしてから、不思議そうに着いていけば、オーロラ号に乗り込んで。
 こっそりティタがオーロラを動かせば……惑星ノシュタリアを飛び出しちゃいました!?
「宮殿はちょっぴり騒ぎになっちゃうかもしれませんが、『お出かけしてきます』ってお手紙も置いてきましたし……あとで謝っておきますのでっ!」
 そんなティタの言葉を聞けば、マシュマローネはちょっとだけ心配もあったけれど。
(「そこはきっとみなさん慣れていらっしゃるでしょうし、流れに身を任せるのも良いでしょう」)
 ここはティタに任せて、マシュマローネは彼女を信じてついていくことを決めれば。
「これからご案内するところは、ノシュタリアの王女と、ラモードの皇女さまじゃなくって。ただのティタと、マシュマローネとしてっ!」
「モワ? 二つの国のプリンセスではなく、私とティタ、個人として?」
 告げられた言葉に、ぱちりと瞬きながら……一体、どちらまで? と聞きたい気持ちを抑えるマシュマローネ。
 だって、今はただ、ティタがお城を抜け出してまで『とびっきり』を自分に見せしたいという、その気持ちを汲みたいと思ったから。
 それに悪戯っぽく笑んで、こうも返してみせる――怒られるなら、私もですわね? って。
 だからティタの望む通り、ただのティタとマシュマローネとして。
「えぇ、どこまでもご一緒させていただきますわ!」
 ちょっぴりだけドキドキ、一緒にティタの言う『とびっきり』の場所へ!
 そして、そう返してくれるだろうと思っていたティタはマシュマローネに笑み返してから、とある座標をピピッと入力して。
 |宇宙《そら》を翔け、たどり着いたのは……航路からまったく外れた場所?
 そしてふわりと辿り着いたそこは、ちいさなちいさな。
 歩いてでも簡単に、すぐに一周できそうなくらい、ちいさな星であった。
 でも小さいのだけれど、なのに大気があって。
 だから、お花やちいさな植物の自生する、そんな不思議な星。
 ただ、それだけの星なのだけれど。
「……ここは?」
 まるで小さな花畑のような、不思議なお星様へと降り立ってから。
 マシュマローネが不思議そうに、視線を向けた彼女へと首を傾け訊ねれば。
 ティタの口から綴られるのは、幼い頃のこんな思い出話であった。
「……この星、ちっちゃい頃に私が見つけたんです」
 父にオーロラの操縦を教えてもらってすぐ、どきどきわくわく。
 おてんばな性分でもあるから、逸る気持ちのまま、ひとりで勝手に船を動かして。
 でもまだ習いたてで、ちゃんとした航路も設定できなくて。
 広い|宇宙《そら》を流れて、そしてたどり着いたのが――この、ちいさなちいさな星だったのだ。
「なんとかして航路に戻って、捜索の艦隊に連れ戻されて。大目玉でしたっけ」
 ……お父様に本気で叱られたのはあのときだけだったなぁ、なんて。
 あの子煩悩な王が……いや、子煩悩だからこその、大目玉だったのだろう。
 ちょっぴりおてんばなお姫様は、幼い頃から宇宙騎士の冒険譚を読んで、|宇宙《そら》を見上げていつだって夢を見ていた。
 初日にふたりで|宇宙《そら》を眺めたバルコニーが、旅の始まり。
 そして夢が叶って、一番最初の冒険の末に辿り着いたのが、この何もないちいさな星。
「ふふっ。なんでこれがとびっきり?って思うかもしれませんね」
 確かに、ここには何もないって、他の人はきっと思うだろう星なのだけれど、でも。
「……ここのことは、だれにもお話したことがないんです」
 ――ここは私だけの場所、私だけの秘密。
 それはさっきまでは、ティタひとりだけの秘密であったのだけれど。
 一緒に旅をしてくれる、大好きなあなただから。
「それを、あなたと共有したかったのです――」
 そう、あなたとだからこそ、ふたりの秘密にしたいって思ったから。
 そんな、こっそりと操縦してたどり着いたお星様。
 小さなプリンセスの大冒険で見つけた、特別なお星様。
「……この場所が私との秘密、ですか?」
 マシュマローネはくるりと、ちいさなお花畑のようなお星様の景色を見回してから。
 ティタと約束を交わし、心のうちで願うのだった。
「ふふふ、なら私も覚えておきます。今日が特別な日、特別な場所で、秘密を分かち合った場所として」
 ――いつかこの日の記憶を、あたたかな気持ちで語り合える日がきますように、と。
 広大なこの宇宙と、それからまだ見ぬいくつもの世界……それらをこれからも一緒に、たくさん識って。
 共有していきたいって、そう思うから。

●滞在最終日:|宇宙《そら》へ
 とても充実していて、そして何よりも楽しかった日々。
 ティタにとっては、久しぶりの里帰りだったのだけれど。
 オーロラの階段状のタラップを降ろしたら――お見送りはお父様とお母様!
 そう両親の姿をエメラルドの輝きに映すティタに、マシュマローネも瞳を細めて。
「正式に出立の許可があったのですわね!」
「ふふふ、お見送りいただけるのうれしいですっ! お父様にはないしょで飛び出した身でしたからっ」
 ちょっぴりおてんばな娘の夢を認めてくれて、今度は送り出してくれる。
 そのことが、ティタにはとても嬉しくて。
「モワ! それは念願叶いましたわね!」
「えへへっ、はいっ! 今度は公認ですっ!」
 これで堂々と、いってきます! ってそう言えるから。
 ……またおみやげのお話、持ってきますねー! なんて。
 手を振ろうとした、その時だった。
「――待て」
 ふと耳に聞こえたのは、そんな父の声。
 もしかして、オーロラでこっそり惑星ノシュタリアを飛び出しちゃったことを怒っているのか。
 それとも、見送りのパレードをやはり盛大にするべきだと言い出すのか。
 それか、まさか――。
「……むぅ、なんですか? やっぱり行かないでー、なんてお話なら聞きませんよ?」
 今更引き止められるなんてと、ぷくっとむくれてみるティタであったのだけれど。
「……まったくそう思っていないとは言わないが。なに、客人に土産も持たせず帰らせるわけにもいくまい?」
 ちらりと本音を垣間見せながらも、父は――いや、ノシュタリア王はマシュマローネへと目を向けて。
「マシュマローネ皇女。これを」
 この数日の思い出を振り返りながらも、いざ出発しようと思っていたマシュマローネは、ふと国王にそう呼び止められて。
 少し不安もあったのだけれど、でも、それもすぐに大丈夫だとわかったから。
 手渡されたのはそう、一通の手紙。
 いやむしろ、これはマシュマローネにとって。
「個人として仲が良いのは結構だが。国家間の友好となれば、それなりに手順というものが必要でな」
 とても大切な、私の悲願のひとつ。
 ノシュタリア王の署名がなされた、ラモード王へ向けた親書であった。
 だから、ぱっと輝かせた瞳で、親愛なるノシュタリア王へと固く約束を。
「国王陛下、こちらをラモード国王、大王ルモードに必ずお渡ししますわ! 両国の友好の架け橋となるよう、ラモード皇女マシュマローネ・アラモード、必ずお役目果たします」
 そんな力強い言葉を告げるマシュマローネも、そして親書を託した父もどこか満足そうに、笑んでいるのをみれば。
 ティタも同じ色の瞳を父へと向けて、笑顔を咲かせれば。
「えへへ、ありがとうございますっ、ありがとうございますっ! お父様っ!」
 ぽんぽんと、慈しむようにやさしく頭を撫でてくれる、大きくて優しい手の感触。
 マシュマローネは、いつか夢見た瞬間に一歩前進したことを確信しつつも。
 ティタと陛下――いや、家族としての柔らかな時間を見届けながら、この滞在期間中ずっと感じていたことを、改めて思う。
(「本当に愛されているから、ティタには特有のあたたかさや和やかな雰囲気を纏っていると」)
 ……そう改めて理解しました、って。
 でもあまり、いってきますまでが長くなったら、王が寂しくなっちゃったりするかもだから。
「ふふふ、マシュマローネっ。ではではっ!」
「モワ、えぇ、ティタ、参りましょうか」
 ふたりは顔を見合わせて、大きくこくりと頷き合う。
 帰ってくる場所、おかえりって待っていてくれて、あたたかく支えてくれる大切な人達が、自分達にはいるからこそ。
 プリンセス達はいざ、再び旅立つ。
 憧れを見つけに、次の夢を叶えに、見たいものもやりたいことも全部しあわせいっぱい欲張って。

 ――行きましょうっ! 旅の続きにっ!
 ――プリンセスとして、時に守護の騎士として、そして親愛なる友として!

 ふたりで未知なる|宇宙《そら》へ、出発!
 だってきっと、あなたと一緒なら……何処までだっていけるって、そう思うから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2025年02月01日


挿絵イラスト