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【敵の姿】|馬恋隊祭《バレンタインデイ》
●正しくは【ばれんたいんさい】
「のうのう、知っておるか?アナグラにはこんなお祭りがあるのいうのじゃ!」
閉じられたままの双眸の裏には果たして何がうつっているのか、まるで視えているかのように、訪れたフクロウたちの方へとくるり振り向いて。壱妃はてててと小走りに走り寄る。
少女の姿形はその心も少女のままにするのか、何やらすこぅしばかりはしゃいだ様子で話し出す。
曰く、アナグラのとある集落には小さな小さな地底湖があり、其処には小さな社が建立されているという。奉るは神馬――瑠璃色の湖面と同じ瞳を持った、黒曜の毛並みの神馬たちを奉っているという。
馬はかねてより、耳が敏く脚の速い動物であることから、罪をももれなく聴いて速やかにその罪を運び去る祓料の王であり、また、天を翔け神へと願いを届けてくれる、いわば常世と現世をつなぐ存在であり、神聖な乗り物であると口伝されている。
此度の地底湖で奉られている神馬たちも例外なく、願いを綴った紙を湖に沈めて祈ることで、願いを天へと届けてくれるという。特に――。
「恋の願いをよぉく聞き届けてくれるというのじゃ!いいのう、いいのう!」
なるほど、はしゃいでいたのは|コイバナ《・・・・》だったから、らしい。
「その神馬たちはのう、どうにも賑やかな雰囲気を好むらしくてのう?お祭りが賑わえば賑わうほどに、願いをかなえてくれるらしいのじゃ。折角じゃから参加してみてはどうじゃ?」
地底湖へ続く道は様々な出店が立ち並び、社の前では奉納の演舞が披露されるという。
「年始の此の頃、今年一年で叶えたい願いを綴るのもよいじゃろうな」
秘めた想いを綴るのも、一年の平穏を願うのもよし。はたまた出店で買い食いしたり、射的や輪投げで景品を狩り尽くすなどしてお祭りを全力で楽しむのもよし。
鍾乳洞の天にはいくつもの鉱石が煌き、湖面に星をうつす。地底でありながら天も地も星空で彩られる、自然が織りなす神秘的な風景を心ゆくまでたのしむのもいいだろう。
「なにはともあれ、たまには息抜きもよいじゃろうて」
壱妃はそう笑って、フクロウたちを見送る。
ちゃっかりその背中に、お土産よろしゅう~、とおねだりするのも忘れずに。
なるーん
新年、あけましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いします。
さて、本業があついことになっておりますので予定変更しまして。
のんびりお遊びシナリオになります。岩手県龍泉湖をイメージして頂ければ。
同時期公開(予定)のUDCシナリオの元になったお祭りがこれです。
どうしてああなったのか…。
とにかくこちらが本家本元、のんびりした雰囲気をお楽しみください。
また、このシナリオは最初に戦うボスを決めるシナリオになります。
このシナリオでは【1】【2】【3】のすべてが集計対象となります。
プレイングにて相手にしたい対象を記載してください。
なお、このシナリオは『ボスとは一切の関係がありません』。
【1】儀間鷲・誉麗(のりまわし・ほまれ)
【2】虎屋・獅鉛(とらや・しえん)
【3】軒・ミヂカ(のき・―)
よろしくお願いします。
第1章 日常
『プレイング』
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POW : 肉体や気合で挑戦できる行動
SPD : 速さや技量で挑戦できる行動
WIZ : 魔力や賢さで挑戦できる行動
イラスト:ヒトリデデキルモン
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
蔵務・夏蓮
【1】
鍾乳洞、という訪れたことのない場所に関心をもってお祭りへ
正確には、鍾乳洞と、そこにあるという地底湖に
奉られている神馬たちは、願い事を天に届けてくれるというけれど
特に届けてくれるという恋の願いは、まったくもって縁がない
恋に落ちるよりも、水に落ちる確率のほうがずっと高いでしょう
叶えたい願い、と考え込む。ずっと叶えたかった願いは、故郷で潰えてしまったし
……ふっと、故郷を出てから出会った方々のことが思い浮かんで
月並み、といえばそうなのだけれど、紛れもない今の私の願い事
「出会った方々の平穏」という願いを綴り、湖へ沈めましょう
そうして祈れば、地底湖の景色を静かに眺めて
……大地の底にも、空はあるのね
●平穏を切に、
「鍾乳洞、初めて来たけれど」
蔵務・夏蓮(眩む鳥・f43565)が此処へ赴いたのは、純粋な好奇心から。
訪れたことのない場所への関心は、足取りを軽くさせる。
アナグラそのものが地中であれど、此処はまた特別、変わった趣きのよう。
固いはずの岩壁はしとど濡れたような質感。
壁伝いにほのり灯される灯りは、今にも闇に呑まれてしまいそうなほど頼りなく。
恐る恐ると洞窟へ一歩踏み入れれば、冬の寒さとはまた別の、ひやりとした湿度ある空気が伝わってきた。
「人はいるのね。不思議なところ」
祭事だから当然なれど、人の声で賑わう中でも静謐とした雰囲気を感じて、夏蓮は思わずと呟いた。
――不思議なこと。
例えばあの屋敷での出来事は、あの部屋での出来事は、不思議だったけれど不気味さが伴うものだった。
ただ、不思議なだけ、ということに些細な安堵を覚える。
「此処では足元にだけ気を付ければいいわね」
うっかり踏み外したり、滑って転んだりして落水してしまわぬよう、夏蓮は足元にだけ注意を払う。
――背中を押して湖に突き落とすような存在は、きっと此処にはいないだろうから。
社の手前までは、人がすれ違うことができる程に道幅は充分に幅広かった。
流石に表のものよりは随分と小ぶりなれど、様々な出店が並ぶくらいだ。
途中、祭事を執り行う巫女たちから、祈りを綴る紙を買う。
黒毛の馬が描かれた青みを帯びた紙は、少し筆圧を誤れば破けてしまいそう。
どうやら水によくとけるよう特別に織られたもののようで、渡された鉛筆の先はくるり丸かった。
「特に届けてくれるという恋の願いは、まったくもって縁がないわね」
鉛筆を構えて、己の中の叶えたい願い、というものをよくよぉくと考える。
ひとつだけはっきりしていることは、恋の願いがない、ということだけ。
赤い社の周りをぐるりと囲う青く澄んだ地底湖は、鉱石の輝きが星のように煌く洞窟の空は――今は遠い故郷でみた青い空を、夜空を思わせる。
(ずっと叶えたかった願いは、故郷で潰えてしまったし)
細い溜め息は潰えた願いへの落胆と、そして自らへの嘲笑も少しだけ。
自ら紺碧の海に背を向けて飛び立ったくせに、今だ願いひとつもすぐ見当たらぬ有り様は、まるで迷子の渡り鳥。
定まらぬ針路の中をやみくもに飛び交っているだけ――だと、思ったけれど。
ふと、故郷を出てから出会った人たちのことが思い浮かんだ。
ああ、自分にもあったのだ。月並み、かもしれないけれど叶ってほしい願いはあった。
紛れもない、夏蓮の中にある、願い。
(「出会った方々が平穏でありますように」)
――想いを込めて、丁寧に丁寧に綴る。
それこそ紺碧、蒼穹、碧く蒼い湖の中、ぽかり浮かぶように朱塗りの小さな鳥居がひとつと、社がひとつ。
社へ続く道は細く、人一人がやっと。
流石に祭事中は転落事故防止のため、関係者以外は立ち入り禁止のようで、巫女たちが参加者たちを誘導していた。
誘導に従うまま湖の畔から社に向けて、夏蓮はそっと紙を流す。手を合わせて切に、切に祈る最中。
(あなたの願いは、とても素敵だね)
――幼さの残る声が、馬の嘶きに混ざって夏蓮の耳に届いた。
そっと瞼を開けた先の視界、水面にナニカが歩いているような不自然な波紋が広がる。
目の前には、黒曜の毛並みの馬が一頭。否、一柱。星空の煌きを抱く青い瞳には夏蓮がうつる。
馬の表情など夏蓮にはわからないけれど、微笑んでいることだけは何となくわかった。
(あれ、あなたはぼくたちが視えるんだね?嬉しいなぁ)
尻尾はご機嫌に高々。夏蓮は周囲を見渡すが、確かに馬の声に反応しているのは自分ひとりのようだった。
よく見れば、景色に混ざってしまうくらいにはうっすらと、他の人の紙を覗き込む馬たちが何柱も。
(あなたたちはこうして願いを届けているの?)
(そうだよ。ぼくたちは他の人を想う、あたたかい想いが大好きなんだ。恋は勿論、あなたのようなお願いも、だよ。あなたの願いも、ぼくたちがしっかり届けるね。またね)
優しいあなたにも幸がありますように――高らかな嘶きは、宙を駆ける蹄の音は、静謐な空気を震わせる。
鍾乳洞の天から空へと駆けていく馬たちの後ろ姿を見送りながら、夏蓮は星空を見上げた。
「大地の底にも、空はあるのね」
そうだよ、と。この大地の天も、陽光眩しい蒼穹の空へと繋がっているんだよ、と。
まるでそう語りかけてくるように、星々は力強く、優しく瞬いた。
大成功
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