【人狼演習】howling for the moon
●注意
当依頼は、PBWアライアンス『コイネガウ』からのシナリオです。
PBWアライアンス『コイネガウ』の詳細を以下でご確認お願いします。
公式サイト:(https://koinegau.net/)
公式総合旅団:(https://tw6.jp/club?club_id=4737)
NEOの世界観:(https://tw6.jp/club/thread?thread_id=134478&mode=last50)
●cry for the moon
「こんにちは、学園からの依頼です」
アレクサンドラ・ヒュンディン(狗孤鈍狼・f25572)が集まった面々に挨拶する。
「本日は、皆様に期末試験を受けていただきます」
学期の最後に待ち受けるその時期の総括にして、その名の通りの最後の試練。学生であれば緊張せずにはいられないことだろう。
「ですが、今回の試験は学園で行うのではありません。「NEO本島」に在る「NEO州立学園」で行います。そこである人狼……クルースニクの集団に交じりまして、交流を行っていただきます」
ガルル王女がそうであるように、NEOではクルースニク、人狼は代表的な一派である。それと文化的交流を行うことで社会科系の単位とするような試験を行うという話だ。
「会場となるのは人狼の町です。文明レベルは普通にあるのですが、動物的な感覚も大切にするという考え方もある所でして……」
自分たちは耳と尻尾がついただけの人間ではない。誇り高き狼の群れである。それを忘れないよう生きる人狼集団だという。
「ですので、皆様には『遠吠え』を試験として課させていただきます。もちろん、ただ大声を上げるだけではだめです。ちゃんとメッセージが伝わるように吠えてください。例えば……」
そう言うとアレクサンドラは薄い胸に大きく息を吸い込み。
「グゥゥゥオォォォォォォォォォォォォォーーーーーーン!!!!」
突然の遠吠え。レベルにして80くらいのそれは周囲に響き渡り、遠くにいた動物さえ逃げださせた。
「技能としての遠吠えを覚えろ、とは言いません。吠え声にメッセージを乗せる方法は他にもあるはずです。覇気や殺気、お誘いに慰め、勇者のカリスマやプリンセス力など……自分に出来る様々な意味や感情を乗せて吠えてください……ちなみに今のは、恐怖を与える、です……」
元々遠吠えは狼や犬が仲間に情報を知らせるためのものである。込められる意味も狩りの合図や仲間への救援要請、時にはストレス解消など多岐にわたる。
そして、彼らは狼であり人なのだ。込めるメッセージも相応に高度で複雑でなければならない。高度な知恵と複雑な心は人の証。それを乗せられてこそ人狼の遠吠えなのだ。
「纏めますと、人狼の町にしばらくステイして生活様式を学び、最後に遠吠えを披露していただくという形になります。試験官は、現地の人狼の人達が行います。あと、私も、呼ばれれば手伝います」
アレクサンドラも人狼である。過剰な肩入れは出来ないが、生活の手伝いや簡単な練習相手くらいならさせられるだろう。
「ところで、遠吠えと言えば月に吠えるイメージがありますが……cry for the moonは『手に入らないものを望む』という意味もあるそうです……単位がcry for the moonになって負け犬の遠吠えにならないように……どうかきちんと、試験を頑張ってください……」
最後に嫌な事を付け加えつつ、アレクサンドラは試験の説明を終えるのであった。
鳴声海矢
注:このシナリオは、コイネガウ暦20X5年1月における「期末試験」の物語です。
NEO州立学園の3箇所の試験場をクリアすると新しい「種族とジョブ」の報酬が出ます。
各MSによるシナリオはどれも内容が独立している為、重複参加に制限はありません。
注2:試験と報酬の一覧表は以下です。
ナイン高橋MS:【家庭演習】。お色気。種族「堕天使」解禁。
岡崎三号MS:【警備演習】。戦闘。ジョブ「バハムートキャバリア」解禁。
鳴声海矢MS:【人狼演習】。日常。種族「クルースニク」解禁。
こんにちは、鳴声海矢です。今回はコイネガウNEOで期末試験の遠吠えをしていただきます。
舞台のなるのはNEOにあるクルースニクや人狼の町。中身はバリバリ近代化されていますが、外見は木や石づくりの家などやや前時代的なヨーロッパの田舎町です。
そこで数日ホームステイして現地人と交流し、最後には試験として遠吠えをしていただきます。
どのような人とどんな交流をするかは自由です。生活、風俗など文化的な話の他、種族や出身上狩人気質なので武闘派な話にも応じてくれます。
遠吠えはメッセージ伝達手段なので、ただ大声を出せばいいわけではありません。またあくまで遠吠えなので、言葉を喋るのもダメです。技能を組み合わせたり装備やUC、HCを活用するなどし、何かしらメッセージを込めた吠え声をあげてください。
一応の能力値行動を以下に示しますが、特に気にせず自由にやってください。
POW:クルースニクたちの生活を肌で感じる。/自分の気迫や主張を込めて吠える。
SPD:希島や自分の出身世界の情報を教える。/伝えるべき情報を無駄なく吠える。
WIZ:引いた視点からクルースニクたちを観察する。/相手の心を震わせるように吠える。
それでは、プレイングをお待ちしています。
第1章 日常
『プレイング』
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POW : 肉体や気合で挑戦できる行動
SPD : 速さや技量で挑戦できる行動
WIZ : 魔力や賢さで挑戦できる行動
イラスト:JunMistral
👑11
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
NEOの某所。中世風の趣を残したそこは、|人狼《クルースニク》たちの町であった。
その町の広場にいる少年。彼は天を仰ぐと、大きく息を吸い込んだ。
「ウオォォォォォォ!!」
大きな吠え声。それを聞きつけたかのように辺りからは同年代の子供たちが集まってくる。いかにも元気そうなその手に握られているのは、しかし最新の携帯ゲーム機だ。
そのまま通信対戦で騒ぎながら遊ぶ子供たち。やがてしばし時が経つと、少し離れた場所で家の窓が開き、ふくよかな女性が顔を出した。
「オォォーー!!」
その女性が声をあげる。それが耳に届いた子供たちが一瞬ぴくっと反応するが、すぐ知らないふりをしてゲームを続ける。
「グルォォォォォォォ!!!」
しばし電気コンロの前で赤いスープをかき混ぜていた女性が、今度はさらに大きな吠え声を出す。それが聞こえた子供たちは、怯えた様子で今度こそゲームをやめて解散し各々の家に帰っていった。
またさらに日が落ちれば男たちが終業の合図の歓声を上げ、酒場の主が高く鳴いて開店を報せる。
近代技術の敷かれたこの町なら、メッセージアプリ一つで通じる伝言。だがその一つに伝統の遠吠えを用いることが狼としての彼らの誇りであり文化なのだ。
この古きと新しきの混じる町でNEOの文化の一つを学び、身に着けるのが今回学園から課された試験である。ステイ先については学園側が斡旋してくれるし、情報屋からも頼めばサポートはあるだろう。
さあ彼らの生活にしばし交じり、そしてその伝統技術を学び披露しようではないか。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
「状況を考えますと、私では相性が悪いですねぇ。
幸い交戦では有りませんし、ここは【涵輔】でお呼びした『信徒』に代役願いましょう」
.
.
.
ということで呼ばれました、狼獣人の『信徒』の「エマリン」ですっ。
歳は16で、『使徒』の皆様とは比較にならないですが、それでも相当な豊満体型だと思いますっ。
宜しくお願いしますっ!
あたしなら同族ですから、文化面にもついて行き易いと思いますっ。
『女神様の教団』に関わる集落は飲食物とかは豊富ですが、外との交流は少ないので、色々と珍しい経験が出来そうで楽しみですっ。
最後は集落の皆さんと、この役目を下さった『使徒』様への『感謝』を込めて吠えますねっ!
NEO某所にあるクルースニクの町。そこへのホームステイ試験の話を夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)も聞いたのだが。
「状況を考えますと、私では相性が悪いですねぇ。幸い交戦では有りませんし、ここは【涵輔】でお呼びした『信徒』に代役願いましょう」
として、自身ではなく代わりの者を手配。それを|情報屋《グリモア猟兵》経由で学園に紹介し、町へと送り込んだのであった。
「ということで呼ばれました、狼獣人の『信徒』の「エマリン」ですっ。歳は16で、『使徒』の皆様とは比較にならないですが、それでも相当な豊満体型だと思いますっ。宜しくお願いしますっ!」
元気に挨拶する狼の少女。比較的おとなしい『使徒』と違い、その性格は大分活発なようだ。
そして何より目を引くのは、その圧倒的な胸部。使徒とは比較にならないとは言ってもそれは比較対象があまりにも大きすぎるだけ。さらに獣人の特性として毛皮を用いれば胸部に服を着なくても問題なくなることもあり、平常時の解放度はより高いとすら言えた。
「はい、よろしくね」
「よろしくお願いします」
「おねがいしまーす!」
ステイ先のクルースニクたちが答える。母親らしき中年の女性に、エマリンと同年代くらいの少女と10歳になる前くらいの少年の姉弟。ちなみに母と姉の胸部はしっかりと盛り上がった相当なものである。
「あたしなら同族ですから、文化面にもついて行き易いと思いますっ」
クルースニクと狼獣人、世界が違うだけでほぼ同じような種族と言っていい。それ故に自分が選ばれたことも分かっているエマリンは、期待に応えるべくやる気を見せる。
「そうだねぇ、じゃあうちの仕事を手伝いつつ色々見ていってもらおうか。プルルス、見せてやりな」
「はーい」
プルルスと呼ばれた娘に連れられ、エマリンは外へと向かった。
「うちはこういうのをやってるの」
紹介されたのは、大きな羊牧場。一見するといかにも中近世のヨーロッパという感じだが、門の鍵は電子制御で柵の各所にはきちんと監視カメラがあるし、羊の管理もタブレットとマイクロチップで行っている。
「『女神様の教団』に関わる集落は飲食物とかは豊富ですが、外との交流は少ないので、色々と珍しい経験が出来そうで楽しみですっ」
「そうなんだ。じゃ、とりあえず餌の時間だから……オォォーー!」
プルルスが高い吠え声をあげると、羊たちは次々と一か所に集まり始めた。
「笛とかでやるより分かりやすいしね」
「なるほど、勉強になります!」
狼の遠吠えが聞こえたら普通は羊を逃がすものだが、それを集合の合図に使う。さっそくここの文化の一端を見つつ、エマリンは羊の給餌を見物した。
さらにそこから毛刈りや掃除、干し草作りなど様々な作業を時には手伝いつつ見学する。
「草って結構重いんですね!」
「大量に運ぶ時は流石に機械つかうよ」
そうして一日が過ぎていくが、ふと真剣な表情になってプルルスが尋ねる。
「ねぇ、確か猟兵……でしょ? 血とかって平気?」
急に問われる物騒な質問。厳密には猟兵ではないのだが、エマリンも召喚されれば戦列に加わることもある。大丈夫だと答えれば、プルルスは牧場の外れ、目立たない場所にある小屋へ彼女を案内した。
そこにいたのはぐったりとした羊。気絶しているらしいその羊の前で、プルルスが手を開き爪を長く硬質に変化させる。
そしてその手を一気に振り抜くと、羊の首が飛んだ。
「下手に機械や道具使うより、これが一番『楽』なの」
それがどういう意味かはエマリンにも分かる。手ずから羊を仕留める狼の習性と、その際の『楽』を考える知恵。ある意味ここにこそこの町の本質があるのだと、エマリンは処理を続けるプルルスを見て思った。
そして夜になれば食事の時間。供されるのはジンギスカンにペコリーノチーズなどの地産地消の料理。
「食欲大丈夫かと思ったけど……」
「おいしいです!」
それを凄まじい勢いで遠慮なく食べていくエマリン。彼女も豊穣の関係者である。食べて身にすることこそ食材への敬意であり、己のアイデンティティであるのだ。
「ルベル、野菜も取りな!」
「ピーマンきらいー」
弟の方がごねるのは肉食動物だから……ではなく単なる子供ゆえのわがままだろう。
そしてその後は姉弟と一緒に入浴。姉とエマリンの胸を無遠慮に見比べ、さらに手を伸ばして触ろうとし拳骨を落とされる少年だが、純粋に姉より大きい人が珍しいだけだろう。
その後はそのまま三人で一緒に就寝し、初日はこうして幕を閉じた。
こうして主にプルルスに案内されつつステイ期間は過ぎ、あっという間に最終日。この日は試験の本題である、『遠吠え』の披露の日だ。
「集落の皆さんと、この役目を下さった『使徒』様への『感謝』を込めて吠えますねっ!」
ステイ先の家族を始めとする住人たちの前で、エマリンはその豊かな胸に大きく息を吸い込む。
「オォォーーーーーーーーーーーーーーン!!」
高く、優しく広がる吠え声。
「オォォーーーーーーー!!」
それに応えるようプルルスが吠え、拍手が起こる。
「また来てね」
大きな胸を寄せ合ってのハグを躱し、試験は終了。合格の結果を持って、エマリンは使徒の元へと戻るのであった。
大成功
🔵🔵🔵
シモーヌ・イルネージュ
今回の期末試験は楽勝だな。
ガルル王女のことは氏族が違うから聞いたことはないけど、
同じ人狼、クルースニクだから問題ないだろ。
自分がどんな大物を倒したかの話は、みんな本当に好きだな。
アタシの村でもそうなんだけど、アレは同じ武勇伝になりがちなんだよな(苦笑)。
日々の生活とか鍛錬なんかは同じだけど、
場所が違うといろいろなところが微妙に違うもんだな。
アクセサリーとか味付けも少し違うし。面白い。
遠吠えは懐かしいね。最近は吠える機会も無かったから。
さて、なんと吠えるべきか。
【怪力】【根性】【気合】【瞬間強化】【吹き飛ばし】で力強く戦意高揚になるように吠えよう。
今回のホームステイは学園から課された試験である。当然学生は相応に覚悟して臨む必要があるのだが、シモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)は実にリラックスした状態であった。
「今回の期末試験は楽勝だな。ガルル王女のことは氏族が違うから聞いたことはないけど、同じ人狼、クルースニクだから問題ないだろ」
シモーヌもまた種族はクルースニク。出身が違う故にガルル王女とのかかわりはないが、種族が同じなら基礎となる所は同じ。特に生物の基礎、本能に根差したような部分は共通項も多いだろうと、シモーヌは今回の試験を旅行のようなつもりで受けていた。
「よう、あんたがうちに居候するってやつかい」
そんなシモーヌを受け入れたのは、野性味あふれる屈強な男性。筋骨隆々の体に傷ついた肌はいかにも肉体労働の男、という感じの風貌だ。
彼の仕事は猟師。それも単なる動物じゃなくモンスターに片足を突っ込んだような、巨大かつ獰猛な野生生物を狩ることを生業としている者。
早速彼の生活を見せてもらうということで、町の外縁にある同業者の集会場へとシモーヌは連れていかれた。
「話があった奴だ。これからしばらく俺のところにいることになる。仕事にも付き合わせるからよろしくな」
「シモーヌだ。よろしく」
シモーヌが挨拶すると、ステイ先の男と同じく荒々しい男たちが拍手や歓声を持って出迎える。まさに力溢れる男の世界だが、若い女のホームステイ先にいかにもな男性をあてがうのはどうかという疑問も浮かぶところ。学園の特性からして望んでもいないのにいらない気を利かせてしまったのでは……
「あ? 下らねぇことでも考えてんのか? 生憎だがガキにゃ興味ねぇよ」
「女に興味ねぇ、の間違いじゃないのか?」
そんな状況を知ってか知らずか、男たちがそう言って笑う。仲間の茶化しはともかく彼がシモーヌをそういう目で全く見ていないのは確かなようだし、その方が本業的にも色々やりやすいというものだ。
ともあれ、男たちに従いシモーヌは町の裏にある大きな山へと入っていった。
その奥で現れたのは、人を軽く超える大きさのイノシシ。
「ウオォォォォ!!」
それが前に出ると同時に、男が遠吠えを上げた。それを合図にして仲間たちは一気に外へ散開する。
その前で男が担いでいた銃を抜き、弾丸を発射する。それは通常の弾ではなく氷の魔力を纏った属性弾で、イノシシの顔面を捉えて顔を凍り付かせた。
さらにそれで怯んだ所に、同じような弾丸が周囲から一斉に打ちかけられる。それは怯んだイノシシの四肢に着弾し、そこを氷漬けにして地に縫い留めた。
「お前もできるんだろ、やれ!」
「了解!」
シモーヌが【フロストファング】を使い、氷の剣をイノシシの眉間に突き立てる。イノシシはそのままどうと倒れ、狩りの終わりを告げた。
獲物を持って下山し、その日の宴会。そこでは客人のシモーヌに聞かせるべく今日に限ら抜かりの話にはなるが。
「今日のとは比べ物にならないイノシシと丸二日やりあってな……」
「あの大鳥に持ち上げられた時は死んだと思ったぜ」
その内容は危険と苦労、そして獲物の大きさの自慢ばかり。
「自分がどんな大物を倒したかの話は、みんな本当に好きだな。アタシの村でもそうなんだけど、アレは同じ武勇伝になりがちなんだよな」
狩りのステータスは最終的には獲物の質と量。やはりそこは変わらないのだと、シモーヌは苦笑しながら狩人たちの話を聞いた。
そして翌日。狩り以外の習慣を学ぼうと男の生活を学ぶ。
「日々の生活とか鍛錬なんかは同じだけど、場所が違うといろいろなところが微妙に違うもんだな。アクセサリーとか味付けも少し違うし。面白い」
種族は同じなのだから、体の構造や必要な栄養は自然と似通ってくる。しかしそうではない所、例えば彼らはアクセサリーは邪魔にならないよう小型で体に密着するものを好み、また髪を染める感覚で毛皮の染色を行う者もいた。
肉に関しても、臭みは抜くのではなく大量のスパイスで上書きするタイプの調理が主流で、彼らの男飯は実にスパイシーなものが多かった。
そんな彼らの文化を見学したり時に真似したりしつつ、シモーヌは日々を過ごしていった。
そして最終日。初日に入った山へ再び男と共に入る。シモーヌの『試験』はここで行う予定であった。
「遠吠えは懐かしいね。最近は吠える機会も無かったから。さて、なんと吠えるべきか」
未だ試験の内容を決めかねる彼女の前に、初日のイノシシよりはるかに巨大な熊が現れた。歴戦の狩人である男も固唾をのむ前で、シモーヌはこれぞ天意とばかりに吠えるべき声を決めた。
「グアオォォォォォォォォォ!!」
山すら揺るがす力強い声。声に力が宿るほどの気合は、熊を後退させ逆に狩人たちには戦う意思を身体に漲らせた。
その力が宿ったかの如き銃弾が、男たちの銃から放たれる。熊は巨大な前腕でそれをばしばしはたき落としていくが、一撃事に冷気が熊を蝕みその動きを鈍らせていく。
そして最後。シモーヌが前に出て、熊に最後の【フロストファング】を叩き込んだ。
熊が倒れ、それが狩りの成功と試験の合格の合図となる。
それを祝う男たちとシモーヌの遠吠えが、山から町まで響くのであった。
大成功
🔵🔵🔵
スピナッツ・ヴァルキュリーズ
ふぅむ? 今期の日本(秋葉原解放学園)の期末試験は、NEOで受験するのよね!?
希島の学園生達も来ているみたいけど、スピナも人狼さんになって演習するのよ☆
シャウトなら任せてっ!!
スピナもアキバじゃアイドルだから、よく歌うのよ?
ロックで、ソウルで、パトスで、アキバ系人狼ソングを歌ってみよー!!
HCは「ユーベルコード」だけど、「ホープコード」と読み替え歌うのよ。
あぅううううう♪ ジャパン・アズ・ナンバー・ワンっ♪
クールに、ジャパンで、アキバな、ロックん、ロールぅ、なのよぉおおおおお♪
ふぅ、全力で出し切った感じ?
NEOで学んだ人狼咆えの演習は、アキバでも活かすのよ☆
アドリブ、連携歓迎。NG無し。
今回の試験を主催しているNEO州立学園は希島学園と提携関係にあり、それ故今回の試験は希島の単位をNEOで取るという形で行われている。そして希島と繋がりがあるのはNEOだけではない。
「ふぅむ? 今期の日本(秋葉原解放学園)の期末試験は、NEOで受験するのよね!? 希島の学園生達も来ているみたいけど、スピナも人狼さんになって演習するのよ☆」
スピナッツ・ヴァルキュリーズ(日本・秋葉原解放自治区・サブカル派の戦場アイドル・f42543)の属する秋葉原解放学園も、同様に希島学園やNEOと単位を共有していた。
というわけで今回ステイするのは酒場の二階。元々は男たちが一日の疲れを癒す場所だったが、今では昼営業したり客層も女性や子供が訪れるなど時代に合わせ営業方針を変更していた。
それでも、やはり夜になると酔客が多くなる。そして酔っぱらえば歌い出す者が出始めるのも世界共通のこと。
取り出すのはギターやカスタネット。フラメンコ調のものが多くテンションが上がるようなものや、その中に哀調を感じさせるもの。
「これは熱情? それとも弾丸パーティタイム!?」
文化としての馴染みはスピナッツには薄いが、一方であらゆる文化をつまみ食いしているアキバ系。探せば大体のものはどこかで触れたことはある。
さらに今度は男たちが楽器を置き、声を張り上げだす。メインに歌うのは恰幅の良い中年男だが、豊かな体を基盤にした声量は酒場全体に響き渡るもの。こちらは歌自体もスピナッツの知っているものであり、彼女がこの酒場にステイしている者と聞いて日本人でも知っていそうな歌を選んだのだろう。
「恐れ見よ! カンツォーネならギャングが踊るやつも知ってるよー!」
さらに一人が酒場の端に置いてあったピアノを高速で叩きだす。
「バイオリンなんて洒落たものは持ってないから、地声で勘弁だぜ」
引きながら男がハミングをしだす。高く喉から響くそれは、鳴き声とも唸り声とも違う綺麗な声。高速と低速の差が極めて大きいそれは、あるいは文化の恩恵を十分に受けつつ狼の本能を忘れぬこの町の両極性に合ったものなのかもしれない。
「王宮もこいつを禁止したりはもうしねぇだろ」
「そもそも王女様がこんな田舎の飲み屋なんざ来るかよ」
影響力がありすぎて王宮が禁じたと言われる音楽も、スピナッツにはやはり馴染みはないが新鮮で聞きほれるもの。
さらに続いては高音で高速のファルセット。雄大な山々に響き内容まで伝わりそうなその声は、遠くの仲間への情報伝達……つまり狼の遠吠えと全く同じ役割を期限とする歌声だ。
「すっごい声量だね! どうやって出してるの? 教えておじいさん!」
「せめておじさんっつってくれ!」
彼らが演奏するのは全てヨーロッパの国の民族音楽。しかし、発祥の国はいずれも違う。ヨーロッパ各国が一度崩壊した上混ざりあったNEOは、皮肉にも旧来の欧州が目指しては挫折を繰り返した『ヨーロッパという国』と言えるものだ。
彼らの歌を聞き、やはりスピナッツも試験の答えは歌で出そうと考える。
「シャウトなら任せてっ!! スピナもアキバじゃアイドルだから、よく歌うのよ?」
マイクを持って、スピナッツはステージに上がった。
「ロックで、ソウルで、パトスで、アキバ系人狼ソングを歌ってみよー!!」
歌うのは日本式アイドルソング。ロックの様でもありポップスの様でもあり、しかしどのジャンルにも属さない音楽。
「あぅううううう♪ ジャパン・アズ・ナンバー・ワンっ♪ クールに、ジャパンで、アキバな、ロックん、ロールぅ、なのよぉおおおおお♪」
それを中身がない、頭が悪いと貶す者もいるだろう。だが字を読んで頭で理解するものではなく、耳で聞いて心で味わう音楽に賢ぶった屁理屈はいらない。高揚できるか。全てはそこなのだ。
【ユーベルコード】……もとい【ホープコード】が心に響き、酒よりも男たちを癒していく。だが元気になった荒くれ共がやることと言えば当然相応に荒々しく。
「お、何だ何だ俺たちに喧嘩うってんのかぁ?」
「よし、|人狼《クルースニク》の吠え声見せて……いや聞かせてやろうじゃねぇか!」
物騒な言葉を使いながらも男たちは楽し気な笑顔で男たちは舞台に上がる。
「ウオォォォォォォォォ!!」
「あぅううううううううん♪」
日本式アイドル声に欧州式男の叫びで対バン。この絶叫こそが『ここ』の音楽なのだ。我が祖国こそナンバーワン、そこを主張する絶叫が欧州の片田舎に響き渡った。
「ふぅ、全力で出し切った感じ? NEOで学んだ人狼咆えの演習は、アキバでも活かすのよ☆」
様々な声と音の使い方を学んだスピナッツ。この声を日本に持って帰り、課題の提出とするのであった。
大成功
🔵🔵🔵
リン・ベルナット
アドリブとか大歓迎だよ!
全く知らない文化に触れるのって楽しいよね!試験でもあるし頑張って交流するよ!
といっても、私自身遠吠えなんてしたこともないからなぁ…うーん…閃いた!こういう時こそ交流だね!
外から観察するだけじゃなくて実際に触れあえばなにかつかめることもあるはず!
ということでホームステイ中は人狼さんたちといっぱい交流して人狼さんへの理解を深めていくね。
人狼さんは身体能力が高そうだから走るのとかも得意そうだし競走や追いかけっことかそういう方面で交流しようかな?私も走るのは得意だしね!
最終日になったらいよいよ本番!
「念入りな準備運動」をしたらホームステイの感謝の気持を込めた遠吠えを披露するよ!
所変われば品変わるというように、文化というのは場所によって大きく異なるものだ。当り前だと思っていたことが他所に行けば全く認知されていない、あるいは逆の意味を持っているようなこともよくあることだ。
「全く知らない文化に触れるのって楽しいよね! 試験でもあるし頑張って交流するよ!」
そんな異文化に臆することなく、リン・ベルナット(スポーツヒーロー・f17042)はホームステイへと臨む。
しかし、リンは生粋の人間、さらに鍛え抜かれてはいるが|本来は異能を持たないはずの体《ヴィジランテのアスリート》。歴戦の猟兵ではあるものの、特殊な状況との縁はやや少ないとも言える出自だ。
「といっても、私自身遠吠えなんてしたこともないからなぁ……うーん……」
もちろん遠吠えなどした経験もなく、狼と日常的に触れ合うような環境に慣れているわけでもない。
「閃いた! こういう時こそ交流だね! 外から観察するだけじゃなくて実際に触れあえばなにかつかめることもあるはず!」
だからこその異文化交流。リンは躊躇なくクルースニクの町へと飛び込んでいき、現地人と交流を深めることにした。
ステイ先は小さな子供のいる一家。まだ7、8歳程度の男の子は、家にやって来たリンに目を輝かせる。
「ねえねえ、遊ぼう! 早く早く!」
まさに子犬のようにリンの周りを駆け回ってる少年。足に縋りついて手を引っ張りしきりに外へ連れ出そうとする彼について、リンは町の公園へと向かった。
「ワオォーーーー!!」
公園につくと子供が大きく声を上げる。それを聞きつけた同年代の子供たちが集まってきて、リンを取り囲んだ。
「この人ね、僕のうちに来た人! あしがすごいんだよ!」
リンの脚に捕まったまま言う少年。それを聞いて、他の子供たちも無遠慮にリンの足を触り始めた。
「ほんとだ、すごい!」
「じゃあおいかけっこしよ! よーいどん!」
言うだけ言ってリンの返事も待たずに駆け出す子供たち。その勢いに圧倒されつつも、リンも彼らの遊びに乗って子供たちを追いかけ始めた。
「人狼は身体能力が高そうだから走るのとかも得意そうだし競走や追いかけっことかそういう方面で交流しようかな? 私も走るのは得意だしね!」
元々
「よーし、捕まえちゃうからね!」
流石に大人と子供では基礎能力が違う。一人の子供にあっという間に追いついて手を伸ばすが、その周囲から他の子供たちが飛び掛かって来た。
「わっ!?」
思わず手を引っ込めると、その隙に子供は逃げてしまう。さらにかかって来た子もそれぞれ別の方向に逃げだし、一度に捕まらないように分かれていた。
明らかに群れとしての連携が取れている動き。知識や経験でなく本能でやっているだろうそれを見て、リンはがぜんやる気になる。
「よーし、そっちがそのつもりなら……」
リンは低く構え、正面を走っていく子供に狙いを定める。
「こうだっ!」
そこから一気に飛び出し、その子供へ駆け寄った。一瞬で詰めた距離に子供は反応できず、救出も間に合わずにその子はリンの腕に捕らわれる。
「うわー! てれぽーと!?」
リンの瞬発力をまるで捉えられなかった子供が腕の中でじたばたと暴れる。そうして一人一人捕まえて、そのままゲームセットへと持ち込んだ。
「ふー、疲れた!」
汗を拭いて一息つくリン。その周りで、子供たちはまだ駆け回る。
「次はかけっこしよ!」
「ボール投げもしよ!」
息も切らさず次をねだる子供たち。狼の走力は基本的に高いが、その中でも特に持久力に優れている。短距離専門の自分とはまた違う方向性を持つその特性に、アスリートしても学ぶところがあるかもしれないとリンは思うのであった。
そうして毎日広場で駆け回る数日間。子供と戯れる彼女の姿はちょっとした名物となり、見物に来る大人も現れ始めたほどだ。
そして迎えた最終日、リンは【念入りな準備運動】をしたうえで、ステイ先の家族に向かい合う。
そして大きな胸に思い切り息を吸い込んで。
「ウオォォォォォォォォォォォォォォォン!!」
上げる声はホームステイの感謝の気持ち。子供たちの無尽蔵の体力を相手に駆け回った日々は、確実に自分の鍛錬にもなった。
その声を合図に、毎日遊んでいた子供たちが駆け寄ってくる。遠吠えは全員に何かを伝える合図。子供たちにとっては、それは遊びの終わりと別れの合図でもあった。
「また、またあそんでくれるよね?」
リンに縋りつき涙目でいうステイ先の子供。リンはその頭を撫で、優しく頷くのであった。
こうしてクルースニクの町へのホームステイは終了。日程を終えた者たちが町を出て、中央市街へ戻るバスへと乗り込む。
『ワオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!』
そのバスを、空に響く遠吠えが震わせた。既に研修を終えた学園生には理解できる、それは町全員からの送別の合図。
NEO、クルースニクの文化を希島の学生たちは確とその身に刻み、今回の期末試験は終了となったのであった。
大成功
🔵🔵🔵