モフィンクス・ウォー~モフの初夢大作戦
幻武・極
【モフィンクスの冒険】
第9話 モフィンクス・ウォー?オチ編
アルダワの大迷宮でのんびりモフモフと過ごしていたモフィンクス達は何の因果か偶然か?
次の新年の戦争が無いという極秘情報を入手してしまいました。
ここは我々の出番とばかりに、かなーりすごーくとてつもなーく重い腰を上げ戦争の準備を始めるのでした。
…………しかし、モフィンクス達のやる気は年を越すことが出来ずに、結局のんびりだらだらと新年を過ごしたのでした。
モフィンクス達は結局のんびりだらだらと過ごしたのですが、どういう訳かグリモア猟兵に予知されてしまいます。
とはいえ、無害なので猟兵達を派遣する必要もありません。
新年の初夢ならぬ初予知をジャックしたモフィンクス達なのでした。
新年あけましておめでとうございます。
今年もモフィンクスの冒険をよろしくお願いします。
新年初のモフィンクスの冒険は昨年末の『モフィンクス・ウォー?予兆編』の続きというかオチ編になります。
グリモア猟兵の初予知に視えてしまったのだから、オープニング風に語ってみたり、視えたのだから行けるのだろうということで現地に行ってみてモフィンクス達と交流してみたりとご自由にノベルにしてください。
今回は執筆していたら長くなってしまったMS様の為に3000文字まで用意してありますが、区切りのいいところで区切っていただいて構いません。
オムニバス形式で続けていくノベル企画になりますので、納品後にタグで#モフィンクスの冒険 と今回は#モフィンクス・ウォー とタグを付けてください。
それでは、どうぞよろしくお願いします。
●warning?
「皆さん、新年明けましておめでとうございます。イヴです!」
時は二〇二五年一月一日。
イヴ・エルフィンストーン(灼滅者の魔法使い・f43984)は、新年早々彼女に呼び出された灼滅者……否、猟兵たちを見回して、やけにワクワクした表情で挨拶をした。
「イヴちゃん、どうしたの? おれこの時期の呼び出しってすっごいイヤな予感するんだけど」
初詣行きたかったなあ、という落胆は隠せないながら、哀川・龍(f43986)は呼ばれたら来てしまうのだ。だってこのシーズンといえば、ねえ。昔からね、伝統のアレですよ。ね、歴戦のみなさん。
「そうなんです。イヴ、なんとこのたび……予知を見てしまいました!」
「何だと!?」
見えない机をガタッとやる勢いで驚愕しているのは元エクスブレインの鷹神・豊(f43985)である。
長年解説を担当してきた豊からすると「それは俺の専売特許だろ」という感覚だったが、残念、今はもうここにいる全員グリモア猟兵。なんの因果か全員予知できるし、優先権はない。
「でも豊さん、新年恒例のアレほぼ毎年サボってたじゃん」
「俺がサボっていた訳ではない。ダークネス共がサボっていたのだ」
彼は年中行事を大切にするダークネス一派と縁が深かったのだろう。もしくは、年末年始は世を忍ぶ仮の本業が多忙なタイプのダークネスかもしれない。そういうのもいる。
「オブリビオンの皆さんは働き者みたいですね。ではさっそく、イヴが予知をお伝えいたします……!」
~アルダワ魔法学園・モフの壁〜
モフ~ン。モフ、モフッ……モフモフ、モフフフフ。
モ~フッ、モフモフモフンッ。モフ?
モフ、モフモフモフッ!
モッフ~ン! フモッフ!
モフッ、モフモフ。モッフモフモフ。
モフ……モ……zzz……モフッ!
モフ~ン……モフゥ……モ…………
「……以上になります!」
「モフィンクスとやらが何を訴えたいのかまるで分からんではないか!」
豊、本日二度目のエア机叩き。
戦争ボスが予兆で何言ってるのかわからん、第六猟兵あるある。公式へのリスペクトが過ぎていた。
ここに動物と話す技能を持った猟兵がいてくれたらなあ。でも元日だし、寝てるかもしれないし帰省中かもだし、身内以外は呼びづらい……三人がそう悩んでいた時だった。
「あはは、困ってるね灼滅者! 僕動物語わかるよ!」
「げえっ、天童!」
元六六六人衆の天童・司狼(f44414)がどっからか来た。詳細なエピソードは割愛するが、元はイヴたち武蔵坂学園と敵対していたダークネスだ。
「んー、なんか『今年の年始はどこの勢力も動かないって聞いたから、満を持して我が戦争を起こすのである。準備も万端である。でも、年が明けてみたら超眠くなってきた……寒いしもうやめとこっか。ね、いいよね?』的な事言ってる。わかるなー」
三人は脱力した。つまり、天童の発言が本当なら、今年の正月は特に何も起きないらしい。だが豊は首を横に振った。
「いや、数々の前例もあるし、こいつの通訳を鵜呑みにしてはならん。現地まで検証に赴くべきだろう」
「えー?! 嘘つくワケないでしょ、僕ら今六六六人衆のイメージアップ活動してるんだよ。元上位の奴らが死んでもやらかし続けてるからさ、シャバの下っ端にしわ寄せが来てんの。超迷惑」
「そうなんですか!?」
恐るべし、ダークネス縦社会。
「いえ、でもイヴも行ったほうがいいと思います。いえ、決してモフィンクスさんと遊びたいのではないのです」
「異世界の珍獣……! ぶっちゃけ見たすぎる!」
豊だけは大真面目だったが、イヴと龍はもはや建前を投げ捨てにかかっていた。
そう、最近は戦闘がない事件も起きるし、視えちゃったから転送できてしまう。
という訳でいざ行かん、アルダワへ!
●モフの壁
さて、モフの壁を埋めつくさんばかりに集まったモフィンクス達だが、天童の言った通り計画は完全に頓挫していた。祭りは準備してる時が一番楽しい。
「モフ~ン」
ごろり。
「モフゥ」
ごろごろ。
めいめいに寝たり、寝返りをうったり、アクビをしたり、まあとにかく寝ていた。普段以上にだらけきっていた。みかんを食べたり、お餅を食べたり、こたつガジェットに埋まったりしながら、ひたすらぐうたらする。
お正月の健全な楽しみ方ってやつを全世界に見せつけていた。その平和ぶりときたらもう、三十六世界を超えてルートの向こうとか、最終人類史あたりにまで影響していたかもしれない。
邪魔ではあったが、迷宮はここで行き止まりだ。特になんの害もなかった。
「いらっしゃいました、モフィンクスさんです! なんて可愛らしいのでしょうか」
「すごい、見たことないもふもふが……なんかすごいいる! なにこれやばすぎ」
イヴと龍がそのまったり具合につられ、モフだまりに駆けよっていく一方で、豊と天童は結構気まずい思いをしていた。かたや仕事が生き甲斐の堅物、かたや動物嫌いの殺人鬼だ。あけおめ戦争なら恐らく役に立った連中だが、この空間では置物と化す以外ない。
「ねぇ鷹神君、あれオブリビオンでしょ? ほっといていいのかな」
「野暮な事を言うな天童。正月だぞ」
豊達は床を埋めつくすモフィンクス達を避けつつ、一応モフの壁を探索した。すると出るわ出るわ、一応戦争的なものをおっ始めようとしてはいた痕跡が。
鏡餅になりきるための台座やら、アルダワ語で「ねーむどもふぃんくす」と書かれた書き初めっぽい名札やら、岩盤浴用の災魔ウェア一式やら、いったい何を企んでいたのか不明なものばかりであるが。
元エクスブレインとして豊は一応悩み、戦況を分析し、考察し……結論を出した。
「……全容は理解した。この災魔は怠惰であり、無害だ」
「だろうね、殺気とか全然感じないし。あーなんか僕も眠くなってきた……帰る時は一応起こしてね~」
モフィンクスのアクビが彼の不眠不休と眠り耐性に勝ったのか、天童までモフの群れに混じってごろ寝し始めた。元ガチのネームドとは思えない順応性である。
「見てください哀川さん、この子寝ながらお餅を食べようとしています」
「え、いやそれはやばいって。喉につまるから、餅!」
彼らとは違い、モフへまっしぐらだったイヴと龍は、モフィンクスとの戯れを楽しんでいた。寝顔を眺めたり、もちもちボディを触ってみたり、持ってきたお煎餅や甘栗などのお正月っぽいおやつを与えてみたり、もう甘やかし放題だ。
え、転送を担当したグリモア猟兵は戦闘しちゃいけない?
これは日常だからいいんだ。
龍は寝ぼけて餅を飲んでしまったモフィンクスをひっくり返し、慌てて背中を叩いた。嗚呼、背中も魅惑のもちもちもっふり触感――至福である。
「モフペッ」
「ちゃんと吐き出してくれて良かったですね」
「まったくもう、おじいちゃんじゃないんだから」
イヴと龍が笑いあっていたその時……天から何者かの声が聴こえた。
――モフッ、モフッ(よくぞ我を助けた……実は今欲しい物を言ってみるがよい)。
「今欲しいもの!? えーっと、最新のコンバイン!」
「イヴはアルダワの紅茶が飲みたいです!」
「無い。強いて言えば俗欲に惑わされん心だ」
「睡眠薬」
…………。
しかし、応答は特にない。
「聞いてみただけ、ではない!!」
「豊さんキレないで、新春スペシャルだから!」
そんなこんなで、二〇二五年のお正月は平和に過ぎていったのだった。謹賀新年!
成功
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