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甘く楽しい|聖夜の宴《クリスマスパーティー》

#サイキックハーツ #ノベル #猟兵達のクリスマス2024

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結城・有栖



夜久・灯火




 校庭は白く染まり、中も外もイルミネーションで飾られた校舎ではあちこちでパーティーが開かれている。
 まだこの世界が『バベルの鎖』に覆われていた頃から変わらない、武蔵坂学園のクリスマスの光景。
「クリスマス、盛況ですね」
「この時期はどの世界も盛り上がってるけど、武蔵坂学園も盛り上がってるねー」
 他の世界と比べても遜色ないクリスマスの武蔵坂学園のある校舎の中を、結城・有栖(狼の旅人・f34711)と夜久・灯火(キマイラの電脳魔術士・f04331)が歩いていた。
「そう言えば、有栖ちゃん、知ってる?」
 どんなパーティーがあるのかと眺めながら広場を目指していると、灯火が何かを思い出して口を開いた。
「噂では、此処のクリスマスパーティーには、伝説のナノナノさまが目撃されるらしいよ」
「……伝説のナノナノさまですか」
 それを聞いた有栖が、ふと足を止める。
 灯火と、もう1人の有栖――もう当然の様に実体化しているオウガのオオカミさんも、つられて足を止めた。
「いっぱいいるネ?」
 そう。クリスマスの日の武蔵坂学園には、何処からか大量のナノナノが集まって来るのだ。
 それはまだナノナノが言語能力を有していない頃から、そう言うものだったらしい。
「伝説の、と言うからには、何か見た目でわかるんでしょうか?」
「それが困った事に、良く分からなかったんだよねー」
 有栖の問いに、灯火はあまり困ってなさそうに微笑みながら返す。
「だからもし見つけられたらラッキーかもね♪」
「パーティーを楽しんでたら、見かけるかもしれませんね」
「そう言うものカナ?」
 気にしても仕方ないと、3人はそのまま進んで校舎を抜けた。
 校舎の外。こちらも雪景色になった広場の中心にある巨木――伝説の樹は、有志によって飾り付けられ、頂きに星を抱いた煌びやかなクリスマスツリーへと変わっていた。
「大きなツリーも綺麗ですね」
「この大きさのクリスマスツリーは結構すごいかも」
 昔から変わらない武蔵坂のクリスマスの風物詩を、有栖も灯火もしばし感心したように見上げていた。

「どのパーティーに参加しましょうか」
「迷うねー」
「武蔵坂学園は規模も大きいしネ」
 クリスマスツリーを堪能し広場から校舎に戻った3人は、どのパーティーに向かうかと顔を見合わせていた。
 クリスマスらしくターキーがメインのパーティーや、ガッツリ行きたい人向けの焼肉パ、温まりたいなら鍋パ――と様々なパーティーが行われている。どれも楽しく美味しそうだが、身体は1つしかないし、時間と胃袋にも限界がある。
「私はこれかこっちかな」
「ボクもここは気になってた」
 そんな中、有栖と灯火が選んだのがあっさりと一致した。

 ――スイーツバイキングに。

 会場は、様々な甘い香りが混ざり漂っている。
 中央のテーブルの上には、武蔵坂の卒業生達が腕を振るった幾つものスイーツが並んでいた。
「クリスマスだけあって、ケーキが多いです?」
 ブッシュ・ド・ノエルに、真っ白なショートケーキ、モンブランにアイスケーキ。他にもクロカンブッシュやクグロフ、クリスマスプディングと言った世界のクリスマスの伝統菓子も並んでいた。中央には、チョコが滝の様に流れているフォンデュもある。
「美味しそうなケーキが一杯で目移りしちゃうね♪」
 最初はどれを――と選ぶ灯火の声が、心なしかいつもよりも弾んでいる。
「折角のクリスマスですし、ブッシュ・ド・ノエルを頂きましょうか」
「クリスマスの定番だヨネ。あ、私も同じのにするヨ」
 有栖とオオカミさんは、切り株を模したフランス伝統のロールケーキを選んだ。
「有栖ちゃん達はブッシュ・ド・ノエルか。じゃあボクはこっちにしよっと」
 灯火が選んだのは、大きなイチゴが載ったショートケーキである。これまた定番と言えば定番。
 それぞれにケーキを選んだら、適当に空いている席につく。
「それじゃあ――メリークリスマス」
「はい、メリークリスマス」
「メリークリスマスダヨ」
 ジンジャーエールで乾杯し、3人同時にケーキにフォークを入れる。
「……うん、甘酸っぱい苺とクリームがよく合うね♪」
「ブッシュ・ド・ノエルも、クリームがたっぷりで美味しいです」
「ふわふわダネ」
 ほど良く丁寧な甘さのケーキは、3人の皿の上からはあっと言う間に消えていた。
「……ナノナノさまもケーキを食べに来ているんでしょうか」
 ふと、頭上を見上げて有栖が呟く。このスイーツバイキングの会場も、天井辺りをナノナノ達が漂っている。この中に、伝説の――がいるのだろうか。
「スイーツを満喫してるかもネ」
「ならボク達も満喫しないと。次はモンブランにしてみようかな」
「……灯火さんのショートケーキも美味しそうでしたね」
 オオカミさんも灯火も有栖も、次の狙いはもう決まっているようだ。
 折角のバイキングなのだ。もっと堪能しないと。3人のクリスマスはまだまだ終わらない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2025年01月06日


挿絵イラスト