●
「……まあ、放っておくわけにはいかないわよね」
エリス・シルフィード(金色の巫女・f10648)が、見えた光景を確認して溜息を一つ。
「と言うわけで皆、アックス&ウィザーズの世界の村がオブリビオンに襲われているので助けに……と言うよりは迎撃に向かって欲しいの。竜退治。まあ、よくある話よね」
とは言え、そう単純な話でもないのだが。
「どうもこの村、元々自警団があったみたいなの。それなりに大きな力を持った自警団がね」
その自警団達は、自らの手で侵略者を迎え撃つべく戦場に向かった様だ。
最も、その結果は……。
「大敗北。自警団は全滅して……その慚愧の念がオブリビオン化しちゃったのよね」
そして彼等は猟兵達の前に立ち塞がる。
まるで、その竜を倒せるのかを試すかの様に。
「まあ、そんな事情があるから、今回は自警団の人達を納得させるだけの実力を示して力尽くで突破してこの村を襲う竜の所に向かうのが最善になるわ。……どんなに言葉を尽くしても、それで相手を納得させるのは果てしなく難しいものね」
最も、その事を踏まえた上で声は届く可能性はある。
もし、声が届くのであれば……其々に想いを叩き付けるのは、意外な効果を生み出すかも知れない。
「まあ、その辺りの判断は現場に向かう皆に任せるわ。残念だけれど、私はゲートの維持だけで手一杯だから」
因みにこの村は温暖な地域にある事も手伝ってか、花見をするには最適な時期らしい。
「戦いの後のどんちゃん騒ぎって良いものよね。……それだけって訳にはいかないとも思うけれど。因みに皆が誘ってくれたら、その時は私も一曲弾いてみようかな、と思っているから。先ずは、村の平和を取り戻すために、皆、宜しく頼んだわよ♪」
ポロン、と手元の春風のライラをエリスが弾くと同時にゲートが開かれたのを確認するや否や、猟兵達はグリモアベースを後にした。
●
――とある、高原。
初春特有の何処か生暖かい風に晒されるその場所に辿り着くや否や、猟兵達が目にしたもの。
それは……首無しの騎士達の群れ。
『貴様達に……奴を倒せるだけの力はあるのか?』
思念だけで、その首無し騎士達は自分達の思いを一方的に伝えてくる。
『なれば……その力、証明して見せよ。我等が故郷を奪う怪物より……村人達を守るために』
静かにそう告げるやいなや、首無し騎士達はゆっくりと猟兵達との間合いを詰めてくる。
――この村に生きる者達、全てがオブリビオンと言う脅威に飲まれない為にも。
猟兵達は、武器を手に取り果敢に騎士達に挑んでいく。
――自らの力を証明するために。
そして……命ある人々の未来を守るために。
長野聖夜
――騎士達の怨念を晴らす儀式の行方は。
いつも大変お世話になっております。
長野聖夜です。
と言うわけで、アックス&ウイザーズのとある村を襲う竜と、それを守るために戦いそして散っていった無念の込められた騎士達の魂と、皆さんには戦って頂きます。
因みに、騎士達に対しては、一応声掛けも可能です(とは言え、それで成功判定になるほど甘くはありませんが)が、基本的には純戦判定になります。
尚、第3章は花見です。
もし、お誘い頂ければ第3章のみ、エリス・シルフィード(金色の巫女・f10648)も同行が可能ですので、気になる方がいらっしゃれば、お気軽にお声掛け下さい。
――それでは、良き戦いを。
第1章 集団戦
『宵闇の騎士団』
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POW : 闇討ち
【自身以外に意識】を向けた対象に、【死角からの不意打ち】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD : 追討ち
【周囲に潜ませていた多数の伏兵】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
WIZ : 返討ち
いま戦っている対象に有効な【武器を持った多数の援軍】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
イラスト:暁せんべい
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ウィリアム・バークリー
その信念から安らげなかった騎士達に「優しさ」からの「祈り」を捧げながら、「覚悟」を決めてスチームエンジンとトリニティ・エンハンスで攻撃力を強化。
ぼくらはあなた方を越えていきます。だからもう、安心して眠ってください。
基本的に後衛から、「高速詠唱」による氷の「属性攻撃」「範囲攻撃」「鎧無視攻撃」「全力魔法」を。
春の吹雪だと甘く見ないでくださいね。
後衛という位置から戦場全体を見渡し、伏兵や援軍が現れたら即座に氷魔法攻撃を放ちます。
戦線が前進したらぼくも前に出て、氷「属性攻撃」「鎧無視攻撃」のルーンスラッシュで敵群の指揮官とおぼしい個体を切り払います。
相手の反撃は「武器受け」「見切り」で食い止めます。
奇鳥・カイト
けっ、慚愧の念だかしらねぇが
所詮は負け犬ってことだろ
それを今でもネチネチと、見苦しいってもんだぜ
死んだ奴等は潔く眠ってな
よーやく糸も用意出来たんでな
本領発揮──とまでは行かないが、それなりにやらせてもらうぜ
ま、蹴りや拳を使わねえってわけじゃねぇ。そっちも積極的に使わせてもらうぜ、糸使いだけどな
糸を拳に巻きゃテーピング代わりにも多少はなるしな
周囲に敵が多くなりゃ【空蝉】を使用し─ジッパヒトカラゲ─っつーんだったか? それにしてやるよ
魂のない人形にゃお似合いだ
フン、死者は静かにしてるもんだぜ
──テメェ等をやった奴を俺らが始末することでも祈ってな
【連携、アドリブ歓迎】
トゥリース・リグル
連携・アドリブ歓迎。
腕試し、というわけですか。
要望とあらば、お見せするしかありませんね。
【錬成カミヤドリ】で複製した複数のダガーで【先制攻撃】として【範囲攻撃】を行う
その後は複製ダガーで【範囲攻撃】を行い効率的に排除
僕自身は【ダッシュ】で動き回りながらすれ違いざまに【シーブス・ギャンビット】で攻撃します
上記の攻撃の際は【鎧無視攻撃】で効率的にダメージを与えるようにする
相手からの攻撃は【見切り+フェイント+第六感】で察知、状況に応じて【ジャンプ】【スライディング】【ダッシュ】の何れかで効率的な回避を試みる
彩瑠・姫桜
故郷や村人達の未来を大切に想う貴方達の想いは、私も共感できるわ
目的が竜退治で、強かったはずの貴方達だってかなわなかったというなら
自分達よりも強い者に託したいという気持ちはわかるもの
だからその気持ちに応える意味でここは全力で行かせてもらうわね
力の証明というなら、それこそ積極的に前に出なくちゃね
戦う事はいつだって怖いけどそうも言ってられないもの
騎士でもあるしある程度は私なりに【礼儀作法】も意識はするけど
でも、騎士なら闇討ちはないんじゃないの?
闇討ちには【第六感】【情報収集】で気がつけるようにして
敵の攻撃は【武器受け】で対応するわ
攻撃は【双竜演舞・串刺しの技】で【串刺し】するわね
絡み・アドリブ大歓迎
ロワ・イグ
とっても大切だったんだね、故郷も、皆も…
オブリビオンになるくらいに
もしかしたらいつか自分もそうなってしまうかも
だからこそ
今まで守り続けてくれて、ありがとう
あなた達の大切なもの
私達に託して…想いでいっぱいになる前に
人を襲うようになってほしくない
安心してもらえるように、全力で戦います
攻撃をあまり受けないように戦おうとします
皆が安心して見送れるように…
翼で空に向かい、オーラペイントで死角の背を鷹に守ってもらいます
支援に徹し、仲間が死角攻撃や囲まれたら
ペイントで大熊を降らせカバーします
もし弓等で狙われる場合、堪えられなくなる前に
サイキックオーラで突撃します
相手を怯ませることに集中し仲間に攻撃を任せます
荒谷・つかさ
彼我の実力差、戦力差を見誤ったが故の悲劇ね……
まあ、後から言っても仕方ないか。
その無念、私達が晴らしてあげるわ。
実力を見たいなら、存分に見せてあげる。
敵群に対し、素手で無造作に近づいていく。
先頭の一体の武器の射程ギリギリまで到達したら「残像」を残す程の速度で一気に踏み込み、「怪力」と「グラップル」技能を活かし掴みかかるわ。
掴めてさえしまえばこちらのもの。
力任せに担ぎ上げ、【鬼神剛腕砲】で別の敵に向けて投げつけるわよ。
死角から襲ってくる相手は、「属性攻撃」の応用で纏っている風の流れを感じて察知し、担いでる敵で「武器受け」、或いは素手なら柔術による「早業」で攻撃を反らして対処するわね。
●
(「とっても大切だったんだね、故郷も、皆も……オブリビオンになるくらいに」)
叩き付けられてくる思念を正面から受け止めながらロワ・イグはとりとめも無くそんな思索に耽ると同時に、もしも自分が彼等と同じ立場だったとしたら、と思い、じわり、と嫌な汗が背筋を伝っていくのを感じた。
「もしかしたら、いつか私も……」
「どうかしたの?
ロワの様子に気がついたか、彩瑠・姫桜が問いかける。
「えっ、と姫桜さんですね。その、私何となくいつか私もあの人達と同じ様に、オブリビオンになっちゃうんじゃないかって……」
「……そう言うこともあるかも知れないわね。故郷や村人達の未来を大切に思っているのならば、尚更」
(「あの騎士達の想いには、共感できるものね」)
ロワに相槌を打ちつつ、姫桜は思った事を訥々と続けた。
「本来の目的であった竜退治。強い自分達でさえ叶わなかったのだから、自分達よりも強い相手に託したいと言うのも、しっくりくるし」
それは、先達ての戦いの時の様な初対面の筈の敵に訳もなく悲しい気持ちにされたあの時よりも、遙かに想像の範疇にある理解であり、感情。
姫桜の言葉にロワが何故か少しだけほっ、とした様に胸を撫で下ろす様をチラリと見ながら、荒谷・つかさが誰に共無く呟いた。
「今更言っても仕方の無いことだけれど。彼我の実力差、戦力差を見誤ったが故の悲劇ね……」
「そうですね。でも、その悲劇を経験したからこそ、僕達を腕試ししているのでしょうね」
つかさの呟きにそう返したのは、トゥリース・リグルだ。
「けっ……おセンチだな」
突き放す様に呟いたのは、奇鳥・カイト。
姫桜が微かにそれに眉を釣り上げる。
「カイトさん」
軽く横目で睨む姫桜とは異なり、涼しい顔でカイトの言葉を受け流し、まあ、と呟くつかさ。
「姫桜さんやロワさんの事をそう割り切ってしまえばそれまでね。でも、本当にそれだけだったら、この戦場に来る必要も無いわよね」
「……けっ」
つかさの指摘に顰めっ面になりつつ目を逸らすカイト。
その手では、無意識に胸元に飾られている母の形見である十字架を弄っている。
そんなつかさ達の様子を見ながら、ウィリアム・バークリーは素早くその場で十字を切っていた。
(「その信念から安らげなかった騎士達に、どうか安らぎと慈悲を」)
それはウィリアムなりの優しさであり、同時に騎士達と対峙する覚悟を示す祈り。
その祈りの意味を感じたか、ロワも又、小声で祈りの言葉を捧げる。
「さて、そろそろ行きましょうか、皆さん」
「ええ、そうですね。ぼくらはあなた方を越えていきます。だからもう、安心して眠ってください!」
トゥリースの呼びかけに応じて、ウィリアムが頷きながら、青と桜色の魔法陣をルーンソード『スプラッシュ』の先端で描き出したのを合図に、猟兵達は其々に行動を開始した。
●
「さて……それでは行きますよ」
トゥリースが叫びながら、自らの手を上空へと翳す。
生み出されたのは、21本の”Trees”と刻まれた古い改造ダガー。
自らの名と同じ銘を持つ自らの分身とも言うべき21本の改造ダガーを、念動力で操り、前線に出てきていた騎士達の鎧の隙間を貫き、或いは、鎧事その身を斬り、或いはその武器を持つ手に突き刺さる。
トゥリースによる先制の一手で、崩れ落ちた騎士達の屍を踏み越えて、此方への進軍の速度を緩めぬ騎士達。
その騎士達の合間を縫う様に用意される目に見えぬほどに細い糸。
(「……ったく、慚愧の念だが何だか知んねぇが未練がましいんだよ。どんなに飾っても所詮は負け犬ってことだろうに」)
それは、目前の騎士達の思念にそんな感情を叩き付けるカイトの張り巡らした、WILD CASE。
周囲の地形に沿って張り巡らせられた目に見えぬその糸は、まるでバターをナイフで斬るかの様に、騎士達の体を斬り、或いは締め上げる。
「死んだ奴等は潔く眠ってな」
漸く用意が出来た糸、WILD CASE。
これでそれなりに本領を発揮出来るとカイトの心は少しだけ愉快だった。
『なるほど、そう来たか。だが、この程度で我等を押し留めることは出来ぬ……!』
テレパシーが脳内に響き渡ると同時に、カイトの死角から姿を現し、手にしたハンマーで躍りかかる騎士達の群れ。
けれどもカイトと騎士達の群れの間に……。
「今まで守り続けてくれて、ありがとう」
囁きかける様に告げながら一対の翼を広げ、自らのサイキックを流して構成した光のヴェールによる結界を張りながらロワが立ちはだかり、更に……。
「……Freeze!」
ウィリアムが一声と共にルーンソード『スプラッシュ』をその場で振り下ろし、春風に乗った礫を放つ。
放たれたそれは多数の伏兵となっていた騎士達の鎧を叩き、或いは穿っていた。
「つかささん! 姫桜さん!」
「その無念、私達が晴らしてあげるわ」
『眠れよ怨念、今宵はお前が串刺しよ!』
ウィリアムの呼びかけに応じて、つかさが悠然とした足取りで、姫桜が疾風迅雷の如き速度でカイトとロワを囲う騎士達の群れへと突進する。
疾風の如き速さで見る見る内に距離を詰め、纏めてカイト達の周囲の騎士達を貫いたのは、姫桜だ。
双竜演舞・串刺しの技……黒き竜の波動を纏いし……いや元々本体は猫の様な外見の竜なのだが……schwarzと白き竜の波動を纏う……尚、此方の本体は蛇の様な外見の竜である……Weißを同時に突き出し竜を象りしオーラで騎士達の群れをまるでお団子の様に一纏めに串刺しにしていた。
「まっ、私達の力を見たいって言うなら存分に見せてあげないとね」
本当は、戦うのはいつでも怖いけれど。
しかし、戦うことでこの騎士達の無念を晴らすことが出来るのであれば、その恐怖も乗り越えられる。
「……けっ、礼は言わねぇぞ」
「ありがとうございます」
目の前で敵を串刺しにされ、窮地を救われたカイトがポツリと漏らし、ロワは素直に一礼した。
(「あっちには姫桜さんがいるなら私は此方の群れね」)
其方は任せた、と姫桜へとアイコンタクトを流しつかさは目的地を変更、右翼の群れへと悠然と立ち向かう。
騎士達の群れを囮に、死角から騎士の一体が奇襲を掛けた。
「つかささん!」
トゥリースが気がつき、複数の騎士達の群れを、身を屈めながら伏兵として彼方此方に潜む騎士達を自らの本体でもある”トゥリース”で貫きながら呼びかける。
「東、草むらに敵影! トゥリースさんは其方をお願いします!」
十重二十重に召喚した青と桜色の混ざった魔法陣から氷の礫を扇状に掃射しながら騎士達を打ちのめすウィリアムの呼びかけに、トゥリースが微かに困惑の表情を浮かべるが。
「大丈夫よ」
そうつかさ本人が告げ、そして自分の背後から奇襲を掛けようとしていた騎士の伸びきった鎚を両手で掴み取る。
何か嫌な予感を感じたか、咄嗟に鎚を捨て後退しようとする騎士だったが、その時にはつかさの両手は、伸びきっていた騎士の腕を掴み取り、そのまま怪力で軽々と持ち上げそして……。
――タン。
残像を残すほどの凄まじい速度と共に騎士を抱え上げたまま、騎士の群れへと突っ込んでいった。
「……凄い……」
手早く”トゥリース”で草むらに潜んでいた騎士達を刺し貫いて止めを刺したトゥリースは、目前の光景に感嘆とも、唖然とも取れる声音を上げ一つ息をついている。
「相変わらずですね……つかささんは」
氷の礫で姫桜達を援護していたウィリアムも毎度毎度の光景ではあるが、と思いつつ溜息を一つ。
「実力を見たいなら、存分に見せてあげる……音速越えて、飛んでけぇ!」
叫びながら抱え上げた騎士を力任せに騎士達の群れに向けて投擲するつかさ。
騎士同士がぶつかり合い、ガシャンと、鈍い音と共に鎧が崩れその場に倒れ込ムのを尻目に、ちぎっては投げ、ちぎっては投げ、と言わんばかりの勢いでまるで曲芸の様にポイ、ポイ、と騎士を掴み取っては投げつけ相討ちにさせるつかさの力業に、トゥリースが微苦笑を零す。
「無茶苦茶やりますね」
呟きながら、手早く”トゥリース”で残存戦力の急所を貫き、最前線を崩すトゥリース。
と、その時……。
――ヒュン。
「!」
不意に首筋に嫌な予感が走り、トゥリースは咄嗟に束縛を否定する脚で自らにブレーキを掛け、そのまま地面を蹴ってバク転を一つ。
その目前に小さくも鏃の様に鋭い石が突き刺さるのを見て、なるほど、と呻きを一つ漏らす。
『斯様な戦い方、驚嘆に値する……だが、次の攻撃を貴様達は凌げるか?」
テレパシーと共に、後衛から飛んでくる無数の石礫。
恐らく投石器でも使っているのであろうその攻撃は、直撃すれば致命傷は免れぬ。
(「此処に来て、手を変えてきましたか。力尽くで、とは聞いていましたが、ただ力任せに倒すだけでは力を示すことにはならないのですね」)
内心でそう思いつつひらり、ひらり、と華麗に舞う様に投石を躱すトゥリース。
「トゥリースさん、合わせて下さい!」
後方からのウィリアムの声の意味を理解し、トゥリースが投石を躱しながら、再び手を上空へと翳し、21本の”トゥリース”を召喚。
ウィリアムも又、ルーンソード『スプラッシュ』で水と桜色の魔法陣を召喚している。
「……Blizzard!」
「行って下さいね!」
ルーンソード『スプラッシュ』を振り下ろすと共に、青と桜色の魔法陣から凍り付いた桜の花弁の群れが暴風に乗って氷の矢の様に解き放たれ、それに紛れ込む様に21本の”トゥリース”が矢となって群れを突っ切る。
氷の矢と吹雪は、囮であり、同時に今、正につかさが突っ込もうとしている群れ達への牽制を兼ね、そして21本の”トゥリース”達は……。
『……くっ。我等を潰してくるか』
後方で召喚されていた猟兵達の近距離戦に対抗するための戦力……この場合は投石器部隊……を貫いていた。
つかさとトゥリースの戦う戦場が大きく後退している様子を見たウィリアムがよし、と頷きを一つ。
一方で、姫桜が突っ込んでいた群れも又、つかさが今、正に突っ込もうとしている戦線までの後退を余儀なくされようとしている。
それは即ち、自分達が押していることの証左であった。
「ぼくも前線に加勢した方が良さそうですね」
呟きウィリアムは自らのルーンソード『スプラッシュ』を一撫でし、そしてトゥリース達と合流するべく、風の精霊を召喚し、自らの速度を高めて雄叫びを上げて駆けていった。
●
「あなた達の大切なもの……私達に託して……」
琥珀色のサイキックオーラを巨大な障壁へと練り上げて、騎士達の群れの攻撃を防ぎながら、鎮める様に、宥める様にそう告げたのは、天空で浮遊していたロワ。
「おっと、お前等に俺を捕まえることは出来ねぇよ」
姫桜の加勢により、カイトは一対一の状況を容易く作り上げていた。
周囲の至る所に展開したWILD CASEで、近くの敵を引き寄せ、自分と位置を無慈悲に入れ替える。
そこに騎士達の鎚が一斉に襲いかかり、哀れ犠牲となった騎士は破片のみと存在となって消えていく。
『我等の同士討ちを誘うか。だが奴の周囲にはその様な壁は無いぞ』
「ケッ……別に幾らでも利用できるものは周囲にあるだろうが。例えば……」
呟きながら、WILD CASEで近くの石を巻き取りそれを放射するカイト。
扇状にばらまかれた石礫が、騎士達の動きを僅かな間妨げる。
その間に姫桜が騎士達の群れに飛び込み、二槍で一纏めに串刺しにしていた。
「……地面の石ころ、とかな」
「カイトさん、騎士達を一箇所に纏めてくれるかしら?」
姫桜の呼びかけにやれやれ、と軽く肩を竦めながらWILD CASEを腕に巻き付け敵に接近して裏拳を叩き込むカイト。
そうしてカイトが目前の騎士に集中している時に、カイトの死角から騎士が飛びかかるが、その時にはオーラペイントで鷹を描き出したロワが死角からの攻撃を塞ぐべく鷹に命じていた。
「お願い、皆を守ってね!」
ロワが告げながら再びオーラペイントを走らせ大熊を描き出す。
描き出された大熊が地面に着地し、それが姫桜を背後から鎚で潰そうとした騎士の攻撃を受け止める盾となった。
「ありがとう、ロワさん」
姫桜が礼を述べながらschwarzを横薙ぎに振るい、後ろから迫ってきていた騎士を牽制する。
そして次の瞬間、その騎士はカイトに膝蹴りを叩き込まれて地面に倒れ込んでいた。
その様を見ながら、全く……と呆れた様に溜息をつく姫桜。
「騎士なんだから、闇討ちは無いんじゃ無いの?」
『我等はただ試しているだけの事。貴様達が如何なる戦いであっても対応できるだけの力を備えているのかをな。……行くぞ』
テレパシーで思念を飛ばしてきた騎士達の思念に新たな音が混ざっているのを感じ、チリチリと首筋が熱を持った様に疼く姫桜。
こういう時、敵は大概厄介な次手を打ってくるものだ。
戦うのは何時だって怖いのに、そう言う感覚はしっかりと磨かれてしまっている事に、複雑な感情を抱きながら姫桜が思わず溜息を一つ。
否……戦いに対して臆病な感情を抱いているからこそ、防衛本能が磨かれている可能性も十二分にある訳だが。
だから、姫桜は迫ってくる群れ全体に向けてWILD CASEを解き放ち、それに触れた瞬間、その騎士の各部位を破壊しているカイトの前に踊る様に立って、二槍を十字に構えて次に備えた。
「……なんだよ?」
「来るわよ、警戒して」
姫桜の呟きと共に後衛の群れから無数の矢が雨あられと降り注ぐ。
「人を襲うようになって欲しくないんです……!」
ロワがオーラペイントを走らせて大熊を、更に続けて鷹を描き出してそれらの絵に命を吹き込む。
命を吹き込まれた鷹が自分の前で壁となって矢を抑え、更に大熊が、姫桜達を守るべくまるで大地に根付く大木の様に姫桜達を庇ってくれていた。
そうして時間を稼ぐ間に集中して、サイキックを練り上げ、巨大な琥珀色の障壁を再び作り出し、矢の群れを受け止める。
けれども、矢による攻撃は想定以上で、このままでは前進は愚か、一旦後退して体勢を立て直す必要もありそうな状況であった。
「姫桜さん、カイト君!」
「なんだよ、ロワ!」
「どうかしたの?!」
カイトと姫桜の呼びかけに力強く一つ頷くロワ。
そうしながら、現在、障壁として展開しているサイキックオーラを収束させ、自らに琥珀色のオーラを纏わせる。
「私に続いて!」
告げ、矢が飛んでくる方向に向かって突進するロワ。
それは、自らを盾にするかの様な、そんな様子で。
(「……想いでいっぱいになる前に」)
そう心で呼びかけながら、その矢を最大限に展開しているサイキックオーラで受け止めながら突進の速度を緩めぬロワ。
『貴様……まさか……』
騎士達のテレパシーを感じ取り、ロワが叫んだ。
「私は、貴方達に人を襲うようになって欲しくないんです! だから、全力で戦います!」
破れかけ、肩に突き刺さる矢の痛みに顔を顰めながら敵の群れに突っ込んだロワ。
矢を射かけてきていた騎士達は、ロワの突撃に足並みを乱され、前線の騎士達もそれに浮き足立つ。
その隙を見逃す姫桜では無い。
「今行くわよ、ロワさん!」
叫びながら、敵の群れの中央に真っ先に飛び込み二槍を暴風の如く振う姫桜。
ダッシュによる加速が上乗せされた二竜の刺突は、さながら騎士達に突き刺さる捌きの雷の様。
――双竜演舞・串刺しの技。
そう名付けられたユーベルコードによって周囲30m以内の騎士達が串刺しにされるが、それで追撃の手を緩める程、騎士達も愚かでは無い。
それは、牽制として突進したロワを襲おうとする騎士達も同様だった。
周囲に潜んでいた伏兵と共に、姫桜とロワを薙ぎ倒そうとする騎士達。
……だが。
「……そんなんだから、お前等は負けて、しかもネチネチしてるって言ってんだよ!」
叫びながらカイトがグイッ、と先程拳にテーピング代わりに巻いていたWILD CASEを引く。
――次の瞬間、カイトの周囲20m以内……それは、姫桜とロワを襲おうとしていた騎士達が不意打ちを食らわせるべくいた射程範囲内だ……にいた騎士達にいつの間に仕掛けたのであろうか、WILD CASEが絡まり、そして纏めて締めあげる。
その様子をカイトは目を細めて見つめていた。
「そんなお前等は――あー、ジッパヒトカラゲっつーんだったか? ―― それにしてやるよ!」
呟きながら、もう一度手に巻いたWILD CASEをくいっ、と引くカイト。
糸が引かれる事により、WILD CASEは締めあげている騎士達を切り裂く刃となり、そのまま騎士達を切り刻んで纏めて消滅させる。
「……魂のない人形にゃ、お似合いだ」
カイトのその言葉は、まるで鎮魂曲の様に風に乗って流れて消えた。
●
「……皆さん、一気に行きますよ! 『断ち切れ、『スプラッシュ』!』」
後方から、ウィリアムの声が飛ぶ。
その剣に氷属性を乗せて、全てを凍てつかせる氷剣と化した刃が目前の騎士を斬り裂いていた。
「来ないなら、此方から行くわよ」
半ば威圧する様に告げながらつかさが近くの騎士を両手で掴んで振り上げてそのままブンブン振り回す。
振り回される騎士は遠心力で加速していき、此方に向かって突撃しようとしてきた騎士達とぶつかるのを避けるため、少しだけ遠巻きにその様子を眺めていた。
だが、その数秒の隙が命取り。
「隙ありですよ」
つかさが作った騎士達の動揺によるその隙をついて21本の”トゥリース”と、トゥリースが針の様に騎士達を貫けば。
「……フン、死者は静かにしてるもんだぜ」
カイトの拳とWILD CASEが騎士達を締め上げ、その次には斬り裂いている。
「皆さん、どうか安心して私達を見送って下さい……」
姫桜達が突撃する隙を作ったロワが息をついて疲労した体の疲れを癒しながらそう囁きかけて、騎士達を唸らせ。
「あの村人達は、貴方達の代わりに私達が守るわ! だから!」
姫桜がロワを背に庇いながら、近付く愚かな騎士達二槍の餌食とした。
既に、戦いの趨勢は決していた。
故に、その声は幾度目かのテレパシーを繋げてくる。
『我等を此処まで追い詰めるか……見事だ』
それを一番最初に聞いたのは、ウィリアム。
故に彼は悟った。
今、彼の目前にいる者が、この騎士達の隊長なのだと。
――だから。
再び凍てつく吹雪をルーンソード『スプラッシュ』に纏わせ、氷剣と化したその刃を、ウィリアムは袈裟に振るった。
「貴方達を此処で解放します! 『断ち切れ、『スプラッシュ』!』」
……『祈り』と、共に。
どう、と騎士が倒れ……しん、とした静けさが、辺り一面に広がって行くのだった。
●
『貴様達になら……任せられるな……』
それは、最初にこの地に着いた時と同じ声。
幾度か聞いたその声を、姫桜達はもう一度聞いている。
「ええ、貴方達の代わりに、私達がその竜を退治するわ」
「ですので……どうか安心して、お眠りになって下さい」
ロワの囁きに思念は笑う。
『……ならば、せめて。我等の力も、共に戦わせてくれ。元はと言えば、此度の戦、我等が始めたもの。故に……たとえ、任せられる者がおろうとも、我等にはそれを見届ける責任がある』
「……良いわ。それなら、私達と一緒に来なさい」
端的に告げるつかさに思念は大地を震わせんばかりの笑い声を上げ、そしてその体を光と成して弾けて、消える。
その光がつかさ達に吸い込まれる様に入り込み、其々の真の力を引き出していた。
「……なるほど。これが、貴方達の力だったのですね」
トゥリースが呟き、周囲の仲間達を見回す。
「行きましょう、皆さん」
それに頷き、ウィリアムが告げた時。
――コォォォォォォォ。
草原の置くから竜のものと思しき声が聞こえた。
その声を聞き取り……猟兵達が其方に歩き始めた丁度、その時。
殿を務めていたカイトが自らに宿った力を感じ取って軽く十字架を握りしめ、それからフン、と鼻息を一つ。
彼の瞳は、先程思念を送り届けてきた、騎士の骸のあった場所を見やっている。
「変な騒ぎを起こすこと無く大人しく寝てるんだぜ──テメェ等をやった奴を俺らが始末することでも祈ってな」
そう告げてカイトは、仲間達と共に歩みを進める。
――もう、その場所を、二度と振り返る事もなく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
第2章 ボス戦
『合金竜オレイカルコス』
|
POW : 合金武装の尾
単純で重い【合金によって武器化された尾】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 例え、屍になろうとも金属は死なず
自身が戦闘で瀕死になると【完全合金製のドラゴン】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
WIZ : 合金錬成武具の吐息
【合金で錬成した大量の武器によるブレス】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
イラスト:クロジ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ガングラン・ガーフィールド」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
――草原、奥。
『コォォォォォォ! コォォォォォォ!』
猟兵達が向かったその場所に、その竜は存在していた。
それは、合金の鱗をした巨体を持った竜。
合金によって作られたその鱗を通すことの出来る武器など早々無いだろう。
成程、通りでそれなりに力を持っていた筈の自警団が倒せなかった訳だ。
――ズシン、ズシン。
猟兵達の胸中など慮る様子も無く、竜は一歩、一歩、此方へと近付いてくる。
かの竜は、明らかに自分達を敵視していた。
『コォォォォォォォォ! コォォォォォォォ!』
周囲の草木が、大気が咆哮で振動した。
――さあ、猟兵達よ。
かの合金竜との決戦の時は来た。
かの竜を討ち滅ぼせねば、あの騎士団達の無念は水泡に帰し、また彼等が守るべきであった場所は滅ぼされるであろう。
――健闘を、祈る。
ウィリアム・バークリー
真打ち登場ですね。
斃れた自警団の方々と共に悪竜を討ちます!
交戦が始まる前にスチームエンジンとトリニティ・エンハンスで防御力上昇。
いかにも硬そうな竜ですね。でも物理耐性のある相手ほど、魔法が効く!
「高速詠唱」で、氷の「属性攻撃」「全力魔法」「鎧無視攻撃」。雹が竜鱗を無視して、内部へ打撃を伝えます。
搦め手が得意な方の為にも、一手講じます。
氷魔法で空気中の水分を凝縮凍結して、宙に浮く氷の盾を無数生成。「念動力」と風の精霊の力で、疎密を付けて戦場全体に展開します。
皆さん、攻撃を防ぐ盾や跳ね回る足場等、好きに使ってください!
「鎧無視攻撃」と氷の盾の補充に従事しますが、ぼくを襲えばルーンスラッシュで反撃!
彩瑠・姫桜
確かに、ずいぶんと硬そうな鱗の竜よね
でも、私達は託されたんだから
村を守るためにも、自警団の人達の無念を晴らす意味でも
ここで負けるわけにも退くわけにもいかないのよ
合金の鱗があると攻撃が通りづらいかもしれないから
まずは【血統覚醒】で戦闘力を上げるわね
その後は戦いながら竜の動きを観察して【情報収集】しながら弱点を探してみるわ
例えば背中の鱗は固くともお腹の部分は案外柔らかいかもしれないし
どんな生物だって目は弱いと思うのよね
弱点の把握や隙が生じる動きがあれば【串刺し】にして【目潰し】を試みる
体力減らすのが先決だから攻撃できた箇所は追撃して【傷口をえぐる】わ
攻撃は可能な限り【武器受け】し、反撃を試みるわね
ロワ・イグ
普段なら絶望してしまいそうな強力な敵
策も勝算も浮かばないけれど
負けるわけにはいかない。皆の想いを護るために
向かってくる竜へ、宿した光を手に、騎士の方達を描きます
オーラによる痺れも、もしかしたら竜に通じないかもしれません
攻撃から皆を護ろうとして何度飛ばされようと、何度潰されようと
力のある限り立ち向かいます
「…力では敵わなかった…でも、皆の想いは…まだ負けてないッ!」
飛ばされながらグラフィティスプラッシュを大地に散布し
機を待っていました
宿した光の思念を通し、皆に伝えます
尾を叩きつける刹那…飛んでッ!
大地の色から一斉に鷹を飛翔させ、皆を宙に回避させます
狙うは生じる隙へ、…皆の想いを一つに……討つッ!
トゥリース・リグル
連携アドリブ歓迎
やれやれ、重い期待を寄せられてしまいました
これは、何としてでも応えなければなりませんね
【錬成カミヤドリ】で複製ダガーを精製、【鎧無視攻撃】で【先制攻撃】を行う
その隙に僕自身が【ダッシュ】で接近、【シーブズ・ギャンビット】を【鎧無視攻撃】で薄いところを狙って【2回攻撃】
速さが足りなければ、一旦距離を取って羽織ってるコートやスカート、ウェストポーチ、膝当て等を取って身軽になる
スパッツとシャツ、ブーツとかなり薄手ですが当たらなければいいだけです
相手からの攻撃は【見切り+フェイント+第六感】で察知、状況に応じて【ジャンプ】【スライディング】【ダッシュ】の何れかで効率的な回避を試みる
●
「やれやれ、重い期待を寄せられてしまいましたね」
「その為に、私達を試したんじゃ無いかしらね?」
トゥリース・リグルの呟きに返事を返したのは、彩瑠・姫桜。
普段は黒いその瞳が、深紅へと染め上げられ犬歯が伸びていく。
その目は鋭く細められ竜の姿を目に留める様に細めていた。
(「確かに、ずいぶんと硬そうな鱗の竜よね」)
故に情報収集は欠かせない、と心から思う。
「そうですね。ならばなんとしてでも応えなければなりませんね」
(「今の内、ですね」)
トゥリースが呟きながら、”トゥリース”を半身になって構える間に、ウィリアム・バークリーは自らのルーンソード『スプラッシュ』にスチームエンジンを取り付け、更に周囲の風の精霊達に呼びかけ、全てを受け流す風の盾を周囲に展開。
(「普段なら絶望してしまいそうな強力な敵」)
『コォォォォォォォ! コォォォォォォ!」
目前の竜の叫びに微かにその身を強張らせながら、ロワ・イグはきっ、とした眼差しで竜を見つめ返している。
そう。
普段であれば、その存在に胸を塞がれ身動きできなくなってしまうだろう。
(「正直、策も勝算も浮かばないけれど」)
でも……今は。
ロワは自分の中に宿っていると感じられる『光』を手に集める。
「負けられないんだよね。皆の想いを護るために」
「はい、その通りです。行きましょう、皆さん」
『コォォォォォォォ! コォォォォォォォォ!』
ロワの呟きにそう返したトゥリースの言葉と、竜の咆哮が重なり合う。
――それが戦いの鐘として、周囲へと響き渡るのだった。
●
竜の咆哮と共に、その口から合金によって錬成された大量の武器が吐き出される。
それは剣であり、短剣であり、槍であり、矢であり、斧でもあるもの。
アックス&ウイザーズの世界では特によく見られるであろう古今東西にある様々な形状の武器がまるで群れた魚の様に猟兵達を滅ぼさんと襲ってくる。
「真打ち登場ですね。 斃れた自警団の方々と共に悪竜を討ちます!」
勢いづけるためにウィリアムが咆哮に負けじと叫び返しながら、両手で素早く魔法陣を描きだし……。
「……Freeze!」
氷の礫が先程得た光と溶け込んで混ざり合い、眩い煌めきを帯びながら竜のブレスとぶつかり合って、爆ぜた。
もうもうと周囲を覆うは霧。
その霧に紛れ込む様に、姫桜とトゥリースが同時に戦場を駆ける。
姫桜達の前にまるで壁の様に立ち塞がるは、光り輝く騎士達の群れ。
「騎士さん達……お願い、皆を守って下さい!」
それは光を絵の具にロワが自らのサイキックを練り上げ作り出したオーラペイントで描き出し、新たな命を吹き込んだ英霊達の絵画だった。
ロワ自身は、琥珀色の障壁を展開、ウィリアムが相殺しきれなかった刃達を受け止める光の結界でその身を守っている。
最初の一撃だけで、微かに琥珀色の障壁に罅が入った。
それだけで……竜がどれ程強力な存在なのかを改めて実感させられながら。
『慄け咎人、今宵はお前が串刺しよ!』
騎士達の盾の向こうで、長髪を風によって後ろへ流しながら漆黒の槍schwarzと純白の槍Weißを構えた姫桜が突進。
タン、と地面を蹴り常時よりも遙かに上がった身体能力で天を駆け、schwarzを竜の背に突き刺そうとするが、きん、と鈍い音が周囲に響き、刺し貫くこと叶わず体表面に傷を付けることしか出来ていなかった。
(「背中は、固いって訳ね!」)
自分の背にまたがった猟兵を振り落とすべく全身を震わせながらその金属製の尾を扇状に振るう竜。
巨体と膂力に物を言わせたその振り解きに容易く姫桜は背中から弾き飛ばされるが、トゥリースはその尾の軌跡を読みながら21本の”トゥリース”を召喚。
「先手を打ってきたのは貴方でしたか。ですが、それならば僕は後の先と行きましょう……!」
告げながらその手から解き放たれ空中を浮遊する21本の”トゥリース”を、思念で操り、竜の全身を刺し貫くべく解き放つトゥリース。
背、前足、尾、腹、後足、顔……何処か一箇所でも刺し貫ければと思いつつ放たれたそれの何本かを先の尾による薙ぎ払いは叩き落としている。
だが、それを囮に数本の”トゥリース”が、前足を斬り裂く。
その間にトゥリース本人は、尾が放たれた瞬間に大地を束縛を否定する脚で蹴って跳躍、更にその尾そのものを足場にして更に、タン、と跳んで加速させ、竜の懐に潜り込み、竜の腹部へと”トゥリース”を突き立てた。
突き立てられた刃を這う様に光が脈打つ様に走り、その腹部に確かな一撃を与えている。
(「成程。腹部の方が比較的柔らかいって訳ね」)
空中でくるりと猫の様にしなやかな動きで一回転し、Weißを竜の尾に突き刺しその様子を観察する姫桜。
「今ですよ、姫桜さん!」
トゥリースの呼びかけに応じて、姫桜も又、尾を蹴って跳躍し、常人離れした速さで竜の腹部に向けて二槍を突き出す。
黒と白の光を纏った二槍がその腹部に突き立てられ、今度は先程よりは遙かに確かな手応えを感じた。
(「でも……致命傷じゃないわね」)
内心で呟きながら距離を取る姫桜とトゥリースに向けて、竜がその巨大な口を開き、無数の武器のブレスを吐き出す。
(「この速度にも追いすがってきますか……!」)
バク転し、その攻撃を避けようとするトゥリースだったが、その速度を上回る速さで迫り来る武器に、思わず目を見張ったその時。
「そうはさせません……Ice Wall!」
自らの周囲に青と桜色の混ざり合った魔法陣を展開したウィリアムが左手を振るって命じると共に、円形でそれなりに大きな氷の塊が周囲に展開。
その意図を理解したトゥリースが放たれた氷の塊の影に身を潜めて無数の武器をやり過ごし、姫桜はそれらの氷の塊を竜とは反対側に蹴って飛んで衝撃を押し殺す様にしながら、二槍を十字に構えてそれらの武器を受け止める。
「皆を守ります!」
武器を受け止め、何とか態勢を立て直そうとした姫桜の前にロワが立ち、琥珀色の結界を展開してその威力を更に減殺。
(「まだ……まだだね……!」)
周囲の大地に飛び散っている塗料を見ながら、ロワが息を一つつく。
(「あの速度にも追いついてくるのですね……それなら……!」)
氷の塊の影でトゥリースが内心で呟き同時に、バサリ、と一瞬その身を翻す。
ほぼ同時にそれまでトゥリースの身を纏っていたコートが風に乗って中へと飛び、更にスカートやウェストポーチ、膝当てがポトリ、と地面に落ちた。
スパッツとタンクトップのセットである明かり無き漆黒の衣と耳で煌めく涙石の耳飾り、そして束縛を否定する脚と”トゥリース”、そしてブーツと、軽装になったトゥリースが氷の塊から飛び出しながら微笑する。
「まだまだ戦いは……」
「これからよ!」
軽装になる事で、韋駄天の様な速度を得たトゥリースと姫桜、そして何か狙いを定めるかの様に祈り、目を細めるロワが再び竜へと突進した。
●
「好きな様に使って下さい!」
ウィリアムが叫びながら、ひゅっ、と左手を振り下ろす。
集中する事で維持を続けていた5つの青と桜の魔法陣の内、2つからは氷の礫が飛び交って、竜を凍てつかせ、残りの3つの魔法陣からは氷の塊が呼び出され、それらが次々に空中や、姫桜達の盾になるべく展開。
「……力では敵わなかった……でも、皆の想いは……まだ負けてないッ!」
ロワが力強く叫びながらオーラペイントで何体もの騎士達の絵を描き出していく。
ぶつけられた氷の礫が霜の様に張り付いて竜の身を凍てつかせ、竜が少しだけ苦しげな呻きを上げる。
(「物理防御力が高いのであれば、その分魔法は効き目が高い筈……!」)
そんなウィリアムの願いが神に届いたのかどうかは定かでは無いが、確かに竜の体を凍てつかせるだけの効果はあった。
……トゥリースの刃に斬り裂かれた前足がその傷口から入り込んだ氷によって凍てつき、竜の動きを阻害する程に。
「さて、ここからが正念場ですね」
(「ロワさんも何か考えている様ですし……」)
巨大な尾を振るいながらブレスを吐き出す竜の攻撃の間隙を拭うべく氷の塊と騎士達を盾にしながら、スライディングで一気にその懐に潜り込むついてでにその腹部に蹴打を与えながら、”トゥリース”をその腹部に突き立てるトゥリース。
「そ……れっ……!」
そのまま勢いをつけて地面から立ち上がりながら、その腹部に突き立てた”トゥリース”で下腹部から上腹部にかけてを斬り上げていく。
肉と骨代わりの貴金属を断ち切っていく確かな手応えが、トゥリースの全身に染み込んでいく。
『ゴァァァァァァァァ!』
トゥリースが感じた手応えを証明するかの様に、竜が絶叫にも似た悲鳴を上げた。
それは、この戦いの中で竜が初めて作った大きな隙。
姫桜がウィリアムの用意した氷の塊を空中での足場にして三角跳びを行いながら、犬歯が剥き出しになっている口元に何処か酷薄そうにも見える笑み。
(「本当は戦うのは怖いけれど……」)
けれども、こんな風に笑うことも出来るものなのだ、と頭の冷静な部分が姫桜のその一面を指摘。
或いはそれは、これから成そうとしているそれを正当化する為に敢えて強気になるために笑みを浮かべているのかも知れないけれど。
「どんな生物だって、目は弱いでしょ!」
叫びながら、schwarzで左目を、Weißで右目を串刺しにする姫桜。
両目を同時に貫かれ、脳にまで至るその突きに竜が咆哮。
『ガルァァァァァァァァァァ!』
故にそれは、生物としての防衛本能とでも呼ぶべき動作であろう。
合金によって作られた巨大な尾を竜は滅茶苦茶に振り回し、姫桜とトゥリースを薙ぎ払おうとした。
それは、本体ががら空きになる事を意味している。
――だから。
「その機をずっと待っていました……!」
薙ぎ払うべく振るわれた巨大な尾を叩き付けられて、編み上げたサイキックオーラによる琥珀色の結界が悲鳴を上げ、パリン、と音を立てて粉微塵に砕けると同時に、その光が竜の身に注がれる。
それは……竜の体を一瞬だが硬直させるだけの痺れを与えた。
(「皆さん……お願いします……!」)
祈る様に両手で包み込む様にロワが握りしめたのは、光。
――あの騎士達によって託された念であり……力。
同時に大地を塗り潰した騎士達を描き出していた塗料の全てが光り輝き……。
「……飛んでっ!」
ロワの祈りの言葉と共に塗料がそれまで騎士達として描かれ続けてきた大地の色の無数の光の鷹の群れを呼び出し、一斉に竜へと襲いかかり、又、同時に危機に晒されていたトゥリースと姫桜、そしてウィリアムを乗せて空中へと飛翔する。
無数の鷹の群れの嘴にその身を貫かれ竜が更なる悲鳴を上げているところで、ロワが叫んだ。
「狙うは生じる隙へっ! ……皆の想いを一つに……討ちましょうッ!」
「断ち切れ、『スプラッシュ』!」
ロワの叫びに応じる様にウィリアムが飛翔した鷹と一体化した様に竜へと突進。
そうしながら、ルーンソード『スプラッシュ』に氷の精霊を纏わせ、全てを凍てつかせる唯一無二の氷の魔法剣を作り出して鋭い刺突を放つ。
振るわれた氷の細剣が姫桜が先程与えた背中の刺し傷に吸い込まれる様に突き刺さり、内側から竜の体を凍てつかせていく。
『ガ……ガルァァァァァァッ?!』
「決着を着けましょうか」
トゥリースが続けざまに正しく韋駄天の様に氷の足場と飛翔した鷹の群れの間を疾駆しながら、21本の”トゥリース”を召喚し、その全てをウィリアムによって穿たれ、広がった刺し傷に解き放つ。
解き放たれたその全てが竜の身に突き刺さり、目を潰され、内側から凍てつかされていた竜は既に瀕死の重傷を負っていた。
まだ負けるわけには行かぬとばかりに暴れようとする竜だったが。
「遅いわっ! 騎士達の想い、私達の想い、その身で受け取りなさいっ!」
鷹を操って滑空し、自らの速度と二槍を加速させた姫桜が叫ぶ。
その二槍は傷口が広がり、そして死の間際にあった竜の背を貫き、そのまま黒と白の光を炸裂させた。
そう……自らの二槍に宿った、騎士達の想いを糧に。
英霊と言うべきその騎士達の村を守りたいという想いは……ロワ達によって確かな力となった。
瀕死になった時、生み出される完全合金製のドラゴン……この形態へと姿を変える暇を与えずに……止めを刺せる程の一撃に。
――故に。
『グルァァァァァァァァ!』
慟哭の雄叫びを上げながら、グズグズと音を立てて竜が地に伏せ、ただの錆び付いた貴金属へと姿を変えていく。
そして貴金属の紛い物となった竜の死体は灰となり……風に乗って消えていく。
――かくて勝利の女神は、猟兵達に微笑みかけたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『桜で一杯、花見で二杯』
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POW : みんなで一緒にご飯を食べよう
SPD : 桜を見て優雅に過ごそう
WIZ : 歌や躍りで楽しもう
👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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――戦いは、こうして終わりを告げた。
その実感があるのか無いのか分からぬ猟兵達だったが、はっきりと分かっていることはあった。
それは、竜の死体が灰となり、風に乗って消えていったと言うこと。
それの意味するところは即ち、この戦いの勝者が猟兵達であることだった。
……さて、これからどうするか。
そんな事を猟兵達が考えていた時。
「何だ、何だ? こっちの方から凄い音がしたぞ?」
朴訥そうな印象を与える青年が何人かの村の若者達を引き連れて、此方へとやって来る。
どうやら先の戦いの音は、守るべき村にまで響いており、何が起きているのか心配したのか、村人達が様子を見に来たらしい。
猟兵達の姿を見た村人達は一様に驚いた表情をしつつも、何処かほっ、とした様に胸を撫で下ろした。
「この辺りは、竜の住処だった筈なんだが……その竜がもういない。もしかしてアンタ達が……?」
村人の疑問に猟兵達が頷きかけると、村人は笑顔になって一礼し、折角だから村によって欲しいと自分達の希望を告げる。
「村は今、花見の時期でなぁ。もし宜しければ、楽しんでいってくれないか? まあ、流石に未成年にお酒は出せないけどな」
――さあ、猟兵達よ。
これから先、どの様な事が起こるかは分からないけれど。
今は、この与えられた休息を享受するが良い。
それは、君達の戦いの結果勝ちうることの出来た……確かな報酬なのだから。
ウィリアム・バークリー
いつにない強敵でした。
いつもと違う術式の使い方をしたから、ちょっと神経が疲れてふらつき気味です。
いけない。村の方々を心配させないように、しっかり立って歩かなくちゃ。
それじゃあ、村へお邪魔します。自警団の方々が最後まで守り通そうとした土地へ。
道の両側は沢山の小さな花が咲いて、まるでお花畑みたいですね。
あ、向こうに見える花霞が目指す場所ですか?
宴の準備が出来ているのは、先に一報を届けた方がいるのかな?
まあ、歓待してくれるというなら受けましょう。
もちろん、村の皆さんも一緒ですよ。
ぼくが言うのもなんですが、硬くならないでください。ぼくらは為すべき事をしただけです。
もちろん喜んでもらえるならなによりで。
奇鳥・カイト
なんとかなったみてーだな
あ?今までどこにいたかって?
オイオイ、見てねぇのかよ。俺の戦いぶりをよ
じゅーおーむじん、はちめんろっぴの大活躍だったじゃねーか
ま、今は休むとしようや
束の間の休息だ、ゆっくりとする
メリハリってやつが大事だからな
食いモン食って、花でも見てよ
気楽に過ごそーや
陽の当たるとこは勘弁だがな、離れておくか
ま、あれだな。戦いなんて面倒なモン、好んでしたくなんざねえよ
それにわざわざ自分から疲れに行くなんてな、やってらんねーよ
俺は俺のしたい事をするだけだ
──人助けがしたいって意味じゃねぇぞ、本当だかんな
適当に食っちゃべります
個人的には夜の方が好きです、夜桜に夜空など
【交流・アドリブ歓迎】
荒谷・つかさ
(※2章中は何かあった時のため、念のために村の守りについていたということで)
おかえりなさい。
大事なかったようで何よりね。
(村人と共に出迎える)
帰ってきた皆を労いつつ、花見に参加するわ。
といっても、私は万一のための控えだったし、主に料理の配膳やお酌をして回るわね。
暫くしたら、なるべく村を一望できる位置で【怨霊降霊・迷晴往生】を発動。
犠牲になった騎士たちの弔いをするわ。
この世界の流儀がわからないから私流になるけれど。
(付近の大岩を持ってきて、表面に騎士団の事を刻む)
蛮勇ではあったけれど、貴方達の犠牲が私達を呼び寄せた。
……貴方達の想いは、村を守ったわ。
そう呟いて完成した慰霊碑に酒をかけ、慰めるわ。
ロワ・イグ
こんなに眩しい光景が…
皆さんの気持ち…今なら分かりそうです
皆不安だったかもしれません
でも、今はこんなにも晴れています
嬉しくなってお花見に混ざります
エリスさんや一緒に戦った皆さんを見かけたら
手を降って呼んでみます
エリスさんには感謝したいです
悲しい未来をこんなにも、眩しくさせてくれたことに
子供のように子供達と一緒にはしゃいじゃいましょう
歌ったり回ったり、木登りをして桜を降らせたり
皆と楽しさや嬉しさを共有したいです
桜をいっぱい集めて桜の枕を作って皆で囲って寝転んでみたいです
お花見の後、密かに騎士さん達のお墓へ参ります
皆さんと、私達の願い、叶えましたね
ありがとう。安らかに、お休みなさい
桜の花冠を添えて
彩瑠・理恵
姉さん(f04489)と参加です。
姉さんにお花見に誘われて来ました。
竜ですか、そうですね。リエが殺しがいがあったかもと嘆いてますね。
まぁ機会があればということで。
はい。家族でお花見はいいですよね。
本当は家族5人全員で楽しめれば一番なんですけど、仕方ないですよね。
その分、私達が楽しんで色々お話しましょう。
えぇ、もちろんアルコールは厳禁です。
名物料理、異世界ですし何があるんでしょうね。ちょっと楽しみです。
あ、私も一緒に料理しますよ。姉さんと一緒に料理するのは、それだけで嬉しいですしね。
えへへ、姉さんの作るものならなんでもいいですよ。でも、姉さんには私が作ったものを食べて欲しいです。
アドリブ歓迎
彩瑠・姫桜
理恵(f11313)と
あの竜ならリエも満足できたかも?だけど
共闘のお誘いはまたの機会に、かしらね
今回は理恵と一緒に一足早いお花見したいなって
こういうのは、やっぱり大切な家族と見たいし(照れて視線そらしつつ)
一緒に思いっきり楽しんで、帰ったらママとパパにお土産話しましょうね?
私も理恵も未成年だからお酒は飲めないけど
村の名物料理あるならご馳走になりたいわよね
可能なら村の人にお願いして、一緒に料理させてもらうわ
ママに教えてもらった料理の腕はこういう時に使うものだと思うしね
理恵も一緒に料理する?
もしくは食べたいものある?
も、もちろんよ
理恵の料理は凄く美味しいもの(やっぱり照れて)
*絡み・アドリブ大歓迎
●
「なんとかなったみてーだな」
村人達の間からヒョコッ、と顔を出した奇鳥・カイト。
普段とは違う術の使い方をした影響もあり、クラリと目眩を感じて倒れかかるウィリアム・バークリーに肩を貸しながら、彩瑠・姫桜が首を傾げている。
「カイトさん、何処に行ってたの?」
「あっ? 今まで何処にいたかって?」
姫桜の問いかけに、ヤレヤレ、と肩を竦めるカイト。
「オイオイ、見てねぇのかよ。俺の戦いぶりをよ。じゅーおーむじん、はちめんろっぴの大活躍だったじゃねーか」
「そうだったかな?」
ロワ・イグも又、軽く首を傾げるが悪びれた様子も無くそーよ、そーよと頷くカイトに、姫桜が思わず溜息を一つ。
「……私も上手く戦えなかった事があったから、深くは聞かないけれどね」
「そんな事よりも、早く村に戻ろうぜ。待っている奴もいるんだからよ」
「……待っている人、ですか?」
カイトの言葉にウィリアムが怪訝そうに問いかけると、代表として声を掛けてきた青年が頷いた。
そこまで話をした所でそう言えば、と思い出した様にウィリアムが呟く。
「つかささんが万が一に備えて村に残ってくれていたんでしたね。それじゃあ、折角ですので村にお邪魔させて頂きますね」
「お邪魔なんてとんでもない。アンタ達は村の恩人だ。是非、楽しんで行ってくれ。既に宴の用意も出来ているんだ」
「そ、そうね。ま、まあ折角だし、行ってあげても良いわよ」
村を救った恩人などと言われて思わず照れくさくなったか目を逸らす姫桜の様子に、ウィリアムが笑い、さて、と、と一つ呟き改めて自分の足で立ち上がる。
「さあ、行きましょうか。自警団の方々が最後まで守り通そうとした土地に」
ウィリアムの言葉に村人と共に歩き出す。
……そんな中で、戦いが終わり、静けさに満ちたこの土地の中央で、ロワはふと空を見上げ、深呼吸を一つ。
――先程まで周囲を覆っていた澱んだ気配は感じられず澄み切った黄昏時の空が、顔を覗かせていた。
「……綺麗」
あの人達はきっと、村だけじゃ無くてこの美しい土地そのものを守りたかったのかも知れません……。
そう思い、村に咲いているであろう桜に想いを馳せて胸に期待を抱きながら、カイト達に続いてロワも又、その場を後にした。
●
「おかえりなさい。大事なかったようで何よりね」
村人に先導されて村に入ろうとした時、普段よりも幾分柔らかく感じる荒谷・つかさがウィリアム達に呼びかける。
「俺達に掛かりゃぁ、ざっとこんなもんよ」
「まっ……そう言うことにしといてあげるわ」
つかさにカイトが答えるのを見て呆れた様に溜息をつくはエリス・シルフィード。
「姉さん、お帰りなさい」
その隣に立つ漆黒の髪を大きな白いリボンで飾った少女の呼びかけに姫桜の顔がぱっ、と明るくなるが自分の仕草が何となく子供っぽく感じたのか、頬を赤らめながら慌てて誤魔化す様にコホン、と咳払い。
「理恵も来てくれたのね」
「はい、姉さんが誘ってくれましたから」
まるで全て分かっていると言わんばかりの彩瑠・理恵の穏やかな笑みに姫桜がプイっ、とそっぽを向いた。
「エリスさ~ん!」
「誘ってくれて、ありがとうね」
手を振りながら弾んだ声音を上げるロワに、天使の様な笑みを浮かべるエリス。
花が零れ落ちた様なその笑顔に、ロワがそっと胸を撫で下ろした。
「ま、ゆっくり休むとしようや」
「アンタ達、こっちだよ」
したり顔で頷くカイトに同意する様に朴訥そうな印象の若者に呼びかけられ、とっぷりと日の暮れた夜道を歩くウィリアム達。
村人に案内される道の左右に夕闇の中でも美しくその姿を晒す花達を見て、ほぅ、と感心する様にウィリアムが唸りを一つ。
「まるでお花畑みたいですね」
「そうか? この花は、俺達の誇りなんだ」
「誇りですか?」
嬉しそうに胸を張って笑う青年にロワが問いかけると、ああ、と村人が頷きを一つ。
「この村にある花々は、皆、俺達村人が毎日交代で面倒を見ている。その俺達の努力の結晶体が……」
「あ、向こうに見える花霞、なんですか?」
問いかけるウィリアムにああ、と若者が照れくさそうに鼻を擦った。
間近に行き、目前に咲き誇った満開の桜の花を見て、わぁ……! とロワが思わず歓声を上げる。
(「こんなに眩しい光景が……!」)
あの黄昏時の空、この満開の桜。
そして周囲に咲く丹念に育てられた美しい花々。
きっと、これらの細やかな幸福を守るために、彼等は命を賭して戦ったのだろう。
(「皆さんの気持ち……今なら分かりそうです」)
彼等は、不安だったのかも知れない。
この花達と自分達の故郷が失われることが。
「皆、準備は良いかしら?」
つかさが、宴会の会場となっているこの場所にいた人々に呼びかける。
「勿論! いつでも準備は良いでさぁ!」
村人の一人がそう告げながら、ジュー、ジューと美味しそうな音と共に焼き串を回していた。
「手回しが良いですね」
「これでも皆の事、信じてたもの。私は万が一の為の控えだったし、この位はね」
ぐぅ、と盛大に胃を鳴らしながらさらりと言ってのけるつかさ。
とは言え、この焼肉達の香ばしい匂いには早々に白旗を振りたくなりそうだ。
「まっ、束の間の休息だ、ゆっくりしようぜ」
カイトがさらりと告げるのに、エリスが思わず、と言った様子で溜息を一つつく。
――かくて黄昏時の花見は、始まりの鐘を鳴らすのだった。
●
――モグモグモグモグ……ゴックン。
「人生、何事もメリハリってやつ大事なんだよ」
村人達によって焼かれた肉の串焼きを食べながら、カイトが堂々と言ってのける。
「ええ、そうですね」
ウィリアムも又、村人に勧められるままにアップルジュースと串焼きを食べながら首を縦に振る。
因みにつかさは、配膳と料理の手伝いを担っていた。
焼き肉担当故当然かも知れないが、料理の腕は勿論、村人から借り受けた白いエプロン姿で姫桜達の間を走り回るその姿は、中々様になっていた。
「そんなに手強い竜だったんですね」
この村に伝わる特製のタレを染み込ませ、そして絶妙の焼き加減で焼くと言うこの村の名物料理でもある焼き串を上品な仕草で食べながら、姫桜の武勇伝を聞いてフム、と頷く理恵。
「あの竜ならリエも満足できたかも? って思うけれど」
ハフハフと口の中で転がして空気を入れて冷ましながら焼肉を堪能する姫桜にそうですね、と同意する様に理恵が頷いた。
「リエが殺しがいがあったかもと嘆いてますね」
そのまま、つかさが用意してくれた野菜のお浸しに手を付ける理恵。
さっぱりとした味付けのされたそのお浸しは、ガッツリくる肉の串焼きを頬張る間に食べるには、丁度良い箸休めだ。
「共闘のお誘いはまたの機会に、かしらね」
「そうですね。まぁ機会があればということで」
「姫桜さ~ん! 理恵ちゃ~ん!」
弾んだ声音で呼びかけられて其方を振り向いてみると、一先ずの食事を終え、お腹一杯になった子供達と楽しそうに遊んでいるロワが手を振る姿が見える。
満開の桜の木によじ登り、わさわさと木を揺らして桜の花弁を地面に降らせ、子供達をキャッキャと楽しませるその姿は、まるで童心に返ったかの様。
そんなロワの姿を目の端に止めながら、フフ、と理恵が微笑みを一つ。
「姉さん、お花見に誘って頂いてありがとうございました」
理恵がペコリ、と一礼するのに、何言っているのよ、と姫桜がぼやく。
「だってこういうのは、やっぱり大切な家族と見たいじゃない?」
そう言って照れくさそうに顔を赤らめ、誤魔化す様に満開の桜を見上げる姫桜。
風に揺られて、花弁が少し零れて料理の香りと共に鼻腔を擽る。
まるで全て分かっていると言わんばかりに微笑みながら理恵がはい、と頷いた。
「家族でお花見はいいですよね」
(「本当は家族5人全員で楽しめれば一番なんですけど。そこは仕方ないですよね」)
これは、自分達猟兵が与えられた報酬。
流石に此処に他の家族を招いてお花見……というわけには行かない。
「だから今日は一緒に思いっきり楽しんで、帰ったらママとパパにお土産話しましょうね?」
「はい。私達が楽しんで色々お話しましょう」
姫桜の言葉に笑みを浮かべて首肯する理恵であった。
●
夜の帳が少しずつ落ち始めた頃。
カイトが夜の中でも一際美しく輝く満開の桜を見つめ、ほぅ、と息を一つつく。
膨れたお腹を一撫でしつつ、その手に握られるはオレンジジュース。
「ま、あれだな。戦いなんて面倒なモン、好んでしたくなんざねえよ」
「まあ、そうかも知れないわね」
その隣にエリスが座り、同じ様に夜桜を見上げている。
村人達の熱気に当てられて、少し火照った頬を撫でていく風が、心地よい。
「それにわざわざ自分から疲れに行くなんてな、やってらんねーよ」
オレンジジュースを煽り愚痴るカイトを見ながら、じゃあ、とそれまで桜を沢山集めて作った桜の枕を子供達と一緒に囲って寝転んでいたロワが体を起こした。
お腹も一杯、沢山遊んだ。もうお眠の時間の子供達の中には母親に伴われて既に家に帰り始めている者もいる。
「どうして、カイト君は戦っているのかな?」
騎士達との戦いの時の事を言っているのだろう。
ロワの問いかけに、別に、と何となく目を逸らし、息をつくカイト。
「俺は俺のしたい事をするだけだ」
「ふ~ん……」
カイトの答えにエリスが唸った時、ふと、何やら美味しそうな匂いがロワ達の鼻腔を擽っていった。
振り向けば、そこにいたのは何やら料理を持っている姫桜と理恵。
「皆さん、良かったらこれ、食べて貰えませんか?」
「良いんですか?」
村人達の歓待を受け、少し休むべくロワが子供達と一緒に作った桜の枕を頭に敷いて横になっていたウィリアムが問いかけると、ええ、と姫桜が照れくさそうに頷いた。
「折角、ママに教えてもらった料理なんだもの。お裾分けくらいはね」
「ふふ……つかささんの和食も良いですけれど、姉さんの料理も、結構美味しいんですよ?」
「んじゃま、一つ」
姫桜の手に合った料理をひょい、とつまみ、パクリ、と口の中に放り込むカイト。
暫しの咀嚼をした所で、成程と頷きを一つ。
「結構イケんじゃん、これ」
ウィリアムやロワ、エリスも其々に料理を手に取り、口を付ける。
成程、確かにこれは美味だ。
「あら? 何か良い匂いがするわね」
それまで給仕や、料理の手伝いで走り回っていた所が少し落ち着き、一息ついていたつかさが匂いに釣られてやって来る。
それはまるで、何処かへ出かける前に腹拵えをしようとしている表情にも見えた。
「あっ、つかささんもどう? 理恵の作った料理、とっても美味しいわよ」
「ふふ、それを言うなら姉さんの料理も凄く美味しいです」
「ちょっ、ちょっと理恵……」
理恵の用意した料理を姫桜がつかさに勧めると、理恵も又姫桜の料理をつかさに勧める。
自分の料理を褒められたのは嬉しいのだが、照れ臭さの方が上回ってしまったか、朱色に染まりっぱなしの頬を誤魔化す様に撫でながら、そっと目を桜の木へと向ける姫桜。
「そうね。それじゃあ、頂くわ」
つかさが頷き、そのまま姫桜と理恵が用意した料理を掴み取ってパクン、と口にして暫し咀嚼して飲み込み、頷きを一つ。
「村の名物だった肉の串焼きも良かったけれど……これも中々美味しいわね。ご馳走様」
「ふふ、ありがとうございますつかささん。つかささんの作ったお浸しも美味しかったです」
「……べ、別に褒められて嬉しくなんか無いんだからね。でも……あ、ありがと」
ペコリ、と一礼する理恵と恥ずかしそうに消え入りそうな声で御礼の言葉を述べる姫桜。
穏やかな空気が周囲を包み込んだ所で、そう言えばとエリスが口にする。
「カイトさん、あなたさっきやりたい事をやるって言ってたわね。あなたのやりたい事って何なのかしら?」
「……あなた、そんな事言ったの?」
姫桜が思わず、と言った様子で問いかけると、カイトが何故か気まずげに目を逸らした。
「それは……」
言葉を濁すカイトに、姫桜がそう……と小さく呟く。
「カイトさん。前に私、聞いたわよね? あなたは戦うのが怖く無いかって」
「……覚えてねぇよ、そんなの」
誤魔化す様に答えるカイトに姫桜が溜息を一つ。
「まあ、覚えて無くても良いわ。ただ、また聞きたくなったの。あなたは戦うのが怖くないのかしらって」
「姫桜さん……」
ウィリアムの呟き。
何時の間にか、つかさはロワと共に姿を消していた。
「怖くねぇよ。ただ……俺はやりたい事をやりたい様にやる。ただ、それだけだ」
そこまで呟いたところで別に……と付け足すカイト。
「──人助けがしたいって意味じゃねぇぞ」
「ふふ……カイトさんって、まるで姉さんみたいですね」
「ちょ、ちょっと理恵……!」
不器用なカイトの様子を見て微笑を浮かべた理恵の発言に、姫桜が頬を真っ赤に染めて目を逸らす。
ウィリアムが桜の枕に横になったまま微笑を零し、エリスが天使の様な微笑みを浮かべた。
「まあ、自分がやりたい事を、やりたい時にやるのが一番よね」
そう告げてパタパタと手を振り、その場を後にするエリスを見て、姫桜達は互いに互いの顔を見合わせ、それからまだ残っていた食事をしながら夜桜を眺めるのだった。
●
――村を一望できる丘の上。
此処が村の共同墓地なのだ、と村人から話を聞いたロワは、カイト達の話の途中でこっそりとその場を抜け出し、其方へと足を向け、そして『彼女』を見つけていた。
それは、大岩の前で静かに黙想するつかさの姿。
つかさの周囲には何やら念らしきものが纏わり付いている。
恐らく、自分達に力を貸してくれたあの騎士達の霊だろう。
(「この世界の流儀がわからないから私流になるけれど」)
内心でそう思いながら、つかさが自らの胸に手を当て集中を行う。
……昼の戦いの後自分達に力を貸そう、共に最後を見届けようと自分の周囲に集まっていた騎士達の怨霊を彼女は全身で感じ取る。
その霊達に一つ頷き、つかさは目前の大岩に暁で自警団の事を刻み込みながら、一息にそれを諳んじた。
『無念を抱く迷える魂よ、我が元へ集え……お前たちの怒りも悲しみも、全て私が受け止め、晴らして見せよう!』
――風に乗って此方へと飛んできた桜の花弁達が、風に乗って大岩に集まり、岩を撫でていく。
同時に、自らの周囲に纏わり付いていた怨霊達のざわめきが小さくなっていき……程なくして、静かになった。
この村を守る霊として、彼等の魂は、あの出来事と共に、この大岩に刻みつけられたのだ。
それはさながら……土地神の如き有様だった。
最も……この世界に土地神と言う概念や存在が在るかどうかは分からないけれど。
けれど、はっきりとこの場で今、口に出して言えることはある。
「蛮勇ではあったけれど、貴方達の犠牲が私達を呼び寄せた。……貴方達の想いは、村を守ったわ」
告げながら、つかさが完成させた慰霊碑に恐らく会場から貰ってきていたのであろうお酒を掛けていく。
トクトクトク……と言う音が、静謐な空気の漂うこの場所を、穏やかに駆けていった。
その一部始終を息もつかせぬ想いで見つめていたロワが囁く様に呼びかける。
「つかささん」
「あら、ロワさん。あなたも?」
つかさの問いかけに、はい、と頷きつかさの作った慰霊碑に近付き、祈りを捧げるロワ。
「皆さんと、私達の願い、叶えましたね」
ポロン、とまるで春風を思い起こさせる優しくて温かい音色が風に乗って運ばれてくる。
ロワが振り向けば、そこには春風のライラを携えたエリスが微笑んで立っていた。
「エリスさん……」
「これでも、約束は守るほうなのよ。最初に言ったでしょ。皆が誘ってくれたら一曲弾いてみようかなって」
軽口を叩いた後、エリスがライラを奏でながら静かに歌を歌い始める。
――それは、彷徨う魂達に安らぎを与える鎮魂曲。
それを聞きながら、ロワは微笑み、そして小さく祈りの言葉を捧げた。
「ありがとう。安らかに、お休みなさい」
(「それと……エリスさんに感謝を」)
それは、あんなに悲しい未来をこんなにも、眩しくさせてくれた事。
祈りと鎮魂曲が終わり、一つ息をついたところで、エリスが天使の様な笑みをロワ達に向けていた。
「ロワさん、つかささん。勿論、他の皆もだけど……あなた達がいたから、この村と自警団の人達は平穏を得ることが出来たの。私には何も出来なかった……だから、私も皆に深く感謝しているの。でも、こういうことは、これからもまた起きるわ。だから……その時はまた、宜しくね」
「ええ。その時は手を貸すわ」
「宜しくお願いしますね、エリスさん」
エリスの微笑みに、つかさとロワが静かに首肯する。
――風の海を泳いできた花弁が……そっとロワ達の間を通り抜けていった。
大成功
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