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初心者だって怖くない!

#ゴッドゲームオンライン

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#ゴッドゲームオンライン


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●どうして迂闊に開けるのか
 ゴッドゲームオンラインにも、チュートリアルというものがある。あるったらある。それも割としっかりしたものが。
 そのチュートリアルの最後に「まずはこのクエストから挑戦してみたらどうかしら?」という軽いノリでNPCから紹介されるのが「初心者クエスト」である。そして、その中の一つ「ゴブリン討伐」を受注すると、「ゴブリンの洞窟」へ向かうことになる。そのまんまである。
 「ゴブリンの洞窟」は、ほぼ一本道のダンジョン。道中には初心者のため「薬草」が入った宝箱が2つ置かれ、最奥にゴブリンの群れがいるだけの味気ない構造で、初心者以外が訪れる事はまずない。だが、そこである事件が起きる。
「な……なんだこりゃ!?宝箱だらけだ!」
 戦士、盗賊、僧侶、魔法使いという王道パーティーを組んだ初心者4人が、洞窟を少し進んだ所で、眼前の光景に思わず足を止めた。というのも、本来2つしか置かれていないはずの宝箱が、無数に配置されていたからだ。中には進路を塞ぐようにしている箱もあり、どう見ても設定通りに置かれたものではないのだが、それが逆に好奇心を刺激する。
「なんかのバグか?」
「バクには違いないでしょうが、中身が使えるか試す価値はあるのでは?」
「よーし!試しに開けてみよーよ!」
「う、迂闊に触らないほうが……」
 僧侶エマの制止も聞かず、戦士ヨシノブ、魔法使いぺぺ、盗賊ニーナは舌なめずりしながら、それぞれ近くの箱を開けた。と、その途端、箱が生き物のように動き出し、長く鋭い歯を剥き出しにして、3人に襲いかかった。
「ぐあああああ!」
「こ、これは……ミミック!?」
「不味い、体力が……」
 低レベルではまず耐えられない高威力の噛みつきを受け、倒れた3人は瞬く間にミミックに飲み込まれてしまった。腰が抜けて座り込む僧侶の周りで、他の宝箱も次々と口を開く。そう、ここにある全ての宝箱は、この洞窟を訪れたものを食い殺さんとするバグ・ミミックが擬態した姿なのだ。
 どうすることもできない数のミミックに追い詰められ、恐怖に震えながら、僧侶は涙声で呟いた。
「どうしてこんな……。初心者向けって聞いたのに……」

●初心者狩りはやめるんだ!
「どんな遊びだろうと、誰でも最初は初心者。初心者クエストってのは、皆が楽しく遊ぶために必要なものなんだ!それなのに、初心者狩りなんて……あたいは許さないんだぜ!」
 鬼鉄・スイ(無邪気な竜人・f37425)が珍しく怒っている。遊ぶことが大好きな彼女は、ズルをする奴が許せないのである。怒りに任せ、上空へ向かって火の息を吐く程だ。危ないからやめなさい。
「ゴッドゲーム・オンラインで、バグプロトコルが悪さをする予知をみたぜ。皆にはそれを止めてきてほしいんだぜ」
 スイの説明によると、バグプロトコルは「初心者クエスト」の内容を改変し、罠にかかったプレイヤーから遺伝子番号を奪うつもりなのだという。
「低レベルじゃ到底勝てない敵や罠を配置して、狩りやすい初心者プレイヤーをボコボコにしてるんだ!」
 まあ、バグプロトコルの常套手段というか、やりそうなことではある。なんにせよ、これから4人の冒険者がその毒牙にかかるというのなら、それを阻止するのが猟兵の使命だ。
 今回改変される内容は3つ。1つは宝箱の大量設置。中身は全てミミックで、プレイヤーが開けようとしたり、奥に進もうとすると襲いかかってくる。
 それを抜けると第2の難関が待ち構える。2つ目は理不尽な爆発。プレイヤーが通路を通ろうとすると、文字通り何の脈絡もなく、1本しかない通路が突如として爆ぜる。トラップとかそんなちゃちな物ではなく、それはもう唐突に爆破される。この爆発で通路が崩れたりはしないが、巻き込まれれば大ダメージを受けるだろう。幸い、爆発は再度発生するまでにかなりの時間を必要とするので、一度切り抜ければ問題ない。
 3つ目は武装ゴブリン。「もうそれ、中身ゴブリンじゃなくてよくない?」と言ってやりたくなるような銃火器で武装したバグ・ゴブリンが、本来ボスを務めるはずだったノーマルゴブリンの周りに「いや、俺たちもこいつらの仲間ですけど?」という顔でしれっと群れをなしている。武装ゴブリンを倒し、本来のゴブリンと新米プレイヤーが戦えるようにしてあげよう。
「どれも猟兵の敵じゃねぇな!」
 スイは自信満々だが、一般プレイヤーであれば、高レベルでも屠られるであろうバグばかりだ。油断してはならない。
「これからバグプロトコルに襲われる4人のプレイヤーに協力して、なんとかクエストを達成させてやってくれ。頼んだぜ!」
 スイが持つグリモアが光を放ち、猟兵達をこれから事件が起こる現場へと運ぶ。
 さあ、卑劣なバグプロトコルから初心者クエストを解放し、4人の新米プレイヤーをゴッドゲーム・オンラインの世界へ送り出そう。猟兵がいれば、初心者だって怖くない!……はず。


ハグれもん
 お久しぶりです。もしくは初めまして。ハグれもんと申します。
 敵は雑魚狩りバグ・プロトコルです。ピエロではないので、それ程警戒しなくても大丈夫です。
 今回の依頼は、4人の新米プレイヤーを守りながらバグ・プロトコルを突破し、彼らに通常のゴブリンを退治させ、クエストを達成させるというものです。
 第一章は集団戦です。群がるミミックを倒して進みましょう。敵が新米プレイヤーを狙ってくることもあるので、気をつけてください。
 第二章は冒険です。爆発する地点は分からないので、事前に何らかの能力で察知するもよし、分からないまま爆発した瞬間に対処するもよし。それ以外でももちろんOKです。新米プレイヤーも守ってあげましょう。
 第三章は集団戦です。アーミー気取りのゴブリン集団を倒してください。猟兵からすると大したことない攻撃も、新米プレイヤーには脅威です。しっかり守ってあげましょう。新米プレイヤーが通常のゴブリンを退治したら、クエスト達成です。
 皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『マルノミミック』

POW   :    マルノミミックの連続攻撃!
【装備アイテムを溶かし強制的に外す唾液】で装甲を破り、【麻痺毒液の付いた舌】でダウンさせ、【対象を丸呑みして体内でアイテム化する事】でとどめを刺す連続攻撃を行う。
SPD   :    マルノミミックのアイテム化丸呑み攻撃!
【捕食】と【逃亡阻止】と【錬金術】と【化術】と【武器改造】と【肉体改造】と【データ攻撃】を組み合わせた独自の技能「【アイテム化丸呑み攻撃】」を使用する。技能レベルは「自分のレベル×10」。
WIZ   :    マルノミミックはレア宝箱に変身した!
【レアアイテムが確実に手に入る豪華な宝箱】に変身する。隠密力・速度・【麻痺毒液の付いた舌や牙、丸呑み攻撃】の攻撃力が上昇し、自身を目撃した全員に【警戒心の喪失や箱を開ける事への興味・執着】の感情を与える。

イラスト:V-7

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

カトリーヌ・クレマン
わたしたちが全部攻撃して倒したら彼らの成長にならないからスーパーライフベリーで怪我したら回復するなど基本は彼らの援護に回るわ。
強い人がアイテムや経験値だけあげるようなプレイで促成栽培した初心者プレイヤーはすぐ飽きてゲームをやめてしまうのよ。
実際、ノンプレイヤーキャラクターとしてそういうプレイヤーをいっぱい見てきたから。
彼ら自身が苦戦しながらでも自分の手で戦い、勝利することが一番だから。
彼らでは手に負えない敵が出たら攻性植物を出したり彼らの前に出て竹槍で攻撃するなど、あくまでも彼らが主役、という前提で行くわね。



 カトリーヌ・クレマン(名も無き村娘・f42145)は、転移してすぐに目的の4人組を見つけ出した。
 どうやら、4人はこれから洞窟に入る、というところらしい。それを物陰からこっそりと観察しながら、カトリーヌは考える。
「さて、どうやってお手伝いしましょう」
 4人が襲われる所に颯爽と登場し、バグプロトコルを殲滅、なんてこともできなくはない。しかし、カトリーヌには、ゴッドゲーム・オンラインのNPCとしてある信念があった。
 それは、あくまでも主役はプレイヤーである、というもの。
「彼ら自身が、苦戦しながらでも自分で戦い、勝利しないと。大変だけど、それが一番この世界を楽しめるのよね」
 強い人がアイテムや経験値を初心者に譲り渡す攻略法を責めるつもりはないが、そういったプレイで促成栽培されたプレイヤーは、すぐ飽きてゲーム自体をやめてしまうことも多い。大事なのは素早く攻略することではなく、自分で攻略する楽しさを、彼ら自身に見いだしてもらうことだ。
「ここはひとまず、支援に徹することにしましょう」
 そう決めて、カトリーヌは洞窟内部へと進もうとする4人の後ろに立ち、少し明るめの声を意識して声をかけた。
「こんにちは!あなたたち、ゴブリンの洞窟を攻略するの?」
「う、うわっ!?びっくりした〜」
 4人が一斉に振り向き、戦士ヨシノブが悲鳴のような声を上げた。他の3人も目を丸くして固まっている。ちょっと驚かせすぎたかもしれない。
「驚かせちゃってごめんなさいね。わたしはカトリーヌ。この『ゴブリンの洞窟』を攻略するプレイヤーを手助けしているのよ。よろしくね」
「なあんだ、ただのNPCか〜。びっくりしたぜ」
「クエスト専用のNPCでしょうか」
「な、仲間になってくれるのかな?なら、いいことだよね」
「こういうNPCってさー、意外と後のストーリーでも登場したりするし、ここは仲良くしとこうよ」
 4人はそれぞれ安堵の表情を浮かべ、カトリーヌをパーティーに加えるという方向で話がまとまり始める。カトリーヌとしては、思った以上にトントン拍子で受け入れられて肩透かしを食らった気分だが、なにせカトリーヌは本当にNPCなのである。疑えという方が無理な話だ。
「わたしは、皆さんの回復やサポートを行います。それ以外の部分は、お任せするわね。」
「オッケー、分かった!よーし、予想外の仲間が増えたけど、改めてゴブリン狩りの始まりだー!」
 ヨシノブが声高らかに宣言し、パーティーはぞろぞろと洞窟の中に入って行った。カトリーヌはその一番後ろをついて行く。

 しばらく進むと、話に聞いていた通り、無数の宝箱が乱雑に配置されている場所にたどり着いた。
「こ、こりゃスゲェ。宝箱だらけだ」
「なにかのバグでしょうか……?」
「ど、どうしよう?」
「面白そうだし、とりあえず開けてみよっか?」
 ろくに警戒もせず、迂闊に開けようとする4人。当然、カトリーヌはそれにストップをかけた。
「ダメですよー!皆さん、今迂闊に宝箱を開けようとしましたね?」
「え、ダメなの?」
「ダメです!宝箱は危険がいっぱいなんですよ。罠が仕掛けられていたり、モンスターが化けていたりすることもあります。例えば、ほら、こんな風に!」
 盗賊ニーナが開けようとしていた宝箱を、カトリーヌは持ってきた竹槍で引っ叩いた。もちろん、ミミックだということは知っているので、力を込めて思いっきり。
「グギャオオオオーン!?」
「凄い……ホントにミミックだった……」
 ぺしゃんこに潰れたミミックを見て震えるニーナに、カトリーヌは学校の先生のように言い聞かせる。
「ニーナさん、あなたは盗賊なんですから、こういう時は慎重に宝箱を調べてくださいね。」
「は〜い」
「宝箱は盗賊の腕の見せ所、ですよ!……さて、今回はチュートリアルのようなものなのでお話してしまいますが、実は皆さんの前にあるこの宝箱。なんとこれらは全部ミミックです!」
「え、ええー!?」
 突然のカミングアウトに、僧侶エマが腰を抜かした。ついでに、急に正体をバラされたミミックたちも、驚きから思わず口を開き、その鋭い歯を露わにしてしまった。パーティー全員の目が、ミミックたちに集まる。
 驚いて腰を抜かした僧侶が立ち上がるのを手伝いつつ、カトリーヌは全員に告げた。
「皆さんには、このミミックを退治してもらいます!」
「無理ですよ!」
 魔法使いぺぺが悲鳴のような声で反論するが、ニーナは力強く断言する。
「あなたたちならできます!……とはいっても、この数を普通に相手していたら、流石に難しいかもしれません。そういう時は、これを使います……【スーパーライフベリー】!」
 カトリーヌが地面に種のような物を植えると、そこから攻性植物が発生し、蔦のようなものでミミックの何匹かを捕らえた。植物はそのまま力を込め、ミミック達を粉々に粉砕していく。
「これがスキルです!皆さんもそれぞれスキルを持っています。それを使えば、敵の数が多くても、簡単にやっつけることができますよ」
 本当は、カトリーヌのこれはユーベルコードなのだが、そんなことを彼らに言う必要はない。
「スゲーぜ、カトリーヌさん!そのまま全部倒してくれよ!」
「あ、わたしはそろそろMPが尽きそうなので、後ろで待機してますね」
「なんで!?」
「もう2、3匹しか残っていませんから、皆さんでもやれるはずです。大丈夫、わたしも回復ぐらいはお手伝いしますから」
「ちえっ……しょうがない、俺たちもやってやるぜ!」
 ミミックに突撃していくヨシノブに、他の3人も続く。4人の連携はなかなかのもので、途中カトリーヌが気づかれない程度に回復してあげるだけで、レベルが高いはずのミミックたちと互角の勝負を繰り広げていた。
「頑張ってください。あくまでもあなたたちが主役、ですからね」
 見守るカトリーヌの前で、ヨシノブが放った斬撃が、最後のミミックを真っ二つに両断する。見事ミミックを倒した新米パーティーたちは、その初めての勝利に、自らの手で勝ち取った者特有の歓声を上げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御形・菘
どう見ても妾キワモノ系だし、レア物収集家を名乗っておこう
新米が行く洞窟に凄いブツなど無い…とは限らん、ひょっとして激レアドロップする可能性がある! かもしれんだろう?
独自にGGO楽しんでるノリのキャラで接触だ

てなわけで…ミミックに化けた宝箱も無警戒っぽく開ける!
あちゃー! 外れであったか!
お主らは宝箱を開ける前に警戒をせんといかんぞ?
はっはっは、丸呑みされそうになりながらなら、実に説得力が高かろう!

オーラを一気に展開、ミミックには殺気の圧を、新米にはアガる激励を叩き込む!
妾の心をガッカリさせたミミック許すまじ、左腕でボコり倒すとしよう!
新米諸君も頑張れ! …と言いつつピンチの時には割って入ろう



 御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)は、その豪快そうな見た目から誤解されやすいが、実際はかなり段取りの良い人物である。そうでもなければ、登録者を多数抱える動画配信者など長く続かない。今回の『配信』についてもそれは同様で、件の4人よりも先に洞窟に到着し、機材などの準備を整えていた。しかし、配信の流れを確認しているとき、菘は一つ問題があることに気が付いた。
「この格好では、普通のプレイヤー……には見えんよな。」
 当初の予定では、親切で頼りがいのあるベテランプレイヤーを演じ、新米プレイヤーを導きながら敵を派手に蹴散らすことで、視聴者数を稼ぐ方針だった。
 しかしよく考えてみると、今の菘は『蛇神闇装』に身を包み、まさしく世界を統べる邪神然とした格好をしている。猟兵の見た目は、猟兵以外の者の目には不自然でないように映るが、それでも高価そうな服を着ているとか、どういう系統のファッションをしているか程度のことは伝わる。
「どう見てもキワモノ系であろう、妾。むしろダンジョンの奥の方にいそうな感じの。」
 それは、そう。仮にそうでなくても、あえて邪悪そうな見た目の装備を集めて着込んだ、強いこだわりを持つ重課金プレイヤーぐらいには見えるかもしれない。少なくとも、親切で頼りがいのあるプレイヤーという感じではない。
「……仕方ない。レア物収集家、という路線で接触するか。こう、独自にGGOを楽しんでいる感じの。」
どのように4人組と接触するかを決めた菘は、『天地通眼』を起動し、いつものポーズを決めた後、自信たっぷりの声で視聴者に向けて挨拶を始める。
「はーっはっはっは!妾、推っ参!お主ら、元気にしておったか?今日は特別企画『妾がGGOで新米どもとボコってみた』ということで、このGGOの新米プレイヤー4人と一緒に、ここらで悪さをしている奴らを叩きのめしていくぞ!……といっても、実はその4人にはまだアポを取っておらん。まあ、世界の支配者たる妾の提案を断るものがいるはずもないのだから、一切問題はないとは思うが……と、来たか。よし、これから接触するので、お主ら視聴者は妾の交渉術をその目にしかと焼き付けるがいい」
 菘が振り返ると、遠くから件の4人組がこちらへ向かって歩いてきているのが見えた。しかし、菘と目が合った途端、先頭を歩いていたヨシノブの表情が凍りつく。
「お、おい、ペペ……なんかやばそうなのが洞窟の前にいねえか?」
「落ち着いてください、ヨシノブ。あの人はモンスターではなくプレイヤーですよ」
「変わった装備してるよねー。かなりレアな装備なんじゃない?」
「に、ニーナさん、じろじろ見たら失礼ですよ……」
 4人に奇異の目を向けられるのを気にも留めず、菘は堂々とした態度で4人に近づくと、にやりと笑ってヨシノブに話しかけた。
「初めまして、だな。妾の名は御形・菘。お主がこのパーティーのリーダーか?」
「あ、ああ。そうだぜ」
「それは僥倖。妾はレアアイテム収集家でな。この洞窟に激レアアイテムがあるかもしれんと思い、調査をしているところだ。お主らが良ければ、一緒に行動しないか?」
「あんたが?この洞窟に?」
 ヨシノブが訝しげな表情を浮かべた。後ろの3人も同様だ。
「どれくらいのレベルなのかは知らないけど……見た感じ、あんたに役立ちそうなアイテムがこの洞窟にあるとは思えないぜ」
「分かっとらんな。新米が行く洞窟にすごいブツなど無い……などと考えておるのだろう。しかし、そうとは限らん。ひょっとしたら、一定レベル以上で訪れたら手に入るアイテム、なんて物もあるかもしれんだろう?案外、こういう上級者が見向きもせんようなところにこそ、レアアイテムが隠れているのかもしれん。……まあ、お主らの戦力を期待しての提案ではない。単純に人手があった方が、アイテムを見つけやすいかと思っただけだ。嫌なら断ってもよいぞ」
「いやまあ、あんたみたいに強そうな人がついてきてくれるのは、俺たちにとっては願ったり叶ったりだけど……」
「おお!そうか。それはよかった。ならば、こんな入り口で話してないで、さっさと進むぞ。アイテムはともかく、時間は待ってはくれんからな」
 戸惑う4人を急かすように、菘は洞窟へ入っていく。ファンサービスに、『天地通眼』へウインクするのを忘れずに。
 一方そのころ、配信コメント欄は『ほぼむりやりじゃねーか!』『さすが御形様』などのコメントで大いに賑わっていた。

「ほーう、すごい数の宝箱であるな!こういう時は……とりあえず開けるに限る!」
「ちょ!?菘さん!?」
 目の前には無数の宝箱。驚くニーナの声を聞き流し、菘は勢いよく宝箱の一つを開き、のぞき込む。当然、中身はミミックなので、菘は頭から豪快にミミックに齧りつかれた。
「あちゃー!外れであったか!」
 箱の中からくぐもった声が響く。頭部をかじりつかれた菘は、端から見ると蛇と箱が合体した世にも奇妙な化け物になっていた。
「お主らは宝箱を開ける前に警戒をせんといかんぞ?この感じだと、周りにある宝箱も間違いなくミミックであろうからな」
「言ってる場合ですか!」
「は、早く助けないと!」
「はっはっはっ、大混乱であるな。こうして目の前で丸呑みにされそうになったとあれば、実に説得力が高かろう!」
「やかましい!」
「そうかっかするな、ヨシノブ。妾がこんな時の備えをしていないと思うか?こういう時はこうするのだ。……フンッ!」
 菘はユーべルコード【極寒から灼熱まで】を発動する。菘の体から発せられるオーラを受けたミミックは、身を震わせるほどの殺気と、覆せない圧倒的実力差を感じ取り、戦意を喪失したかのように菘から離れていく。
「このように、この程度の奴ら、妾はどうとでも対処できる。ついでに、お主らにもバフをかけておいた。なんとなく、力が湧いてくるような気がせんか?」
「そ、そういえば……」
「なんだか、今なら何でもできそうな気がするー!」
 実際は、菘は彼らのやる気や行動意欲を弄っただけなのだが、思い込みというは大事なのだ。やる気があれば、多少の実力差があっても、何とかなる……かもしれない。
(ピンチの時には割って入ればよいか)
「というわけで、新米諸君もがんばれ!妾は、先ほど無礼を働いたこの愚か者に鉄槌を下すこととする」
 菘は震えるミミックたちの中から、先ほど齧りついてきた個体を見つけ出すと、左腕によるラッシュを叩き込む。
「妾の心をがっかりさせた罪は重い!ミミック許すまじ!己が罪深さを思い知るがいい!」
 菘の剛腕により、噛り付いてきたミミック、そしてついでにその周りにいたミミックたちはボコボコに叩きのめされた。4人の方も2体のミミックを仕留めたようで、喜びの声を上げている。
「さあ、こ奴らは雑魚に過ぎん!ダンジョン攻略はこれからだぞ、新米諸君!」
 ボコしたミミックを放り投げ、菘は動画映えするように、その左腕を高くつきあげて4人に呼び掛けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クゥ・クラウ
この世界に初めて来た。
……ゲームはよくわからないけど、問題ないと思う。たぶん

「危険だから、帰ってほしい」
一般人を巻き込むのは本意では無いから、冒険者を呼び止めるけど……迷惑プレイヤーじゃないわ。運営に通報するのはヤメテほしい。
『まあ、こう言われて引き返すゲーマーもいないだろうね』
AIのジョン・ドゥに苦笑されてしまう。
「バグのせいでキャラクターが死んでしまうと……ひどいことになるわ」
それでも進むなら、彼らに同行する。

箱を見つけたら動く前に攻撃をしかける。
UC【光成武装】。杖に光の刃を生やしてなぎ払う
『宝箱は冒険者にとって大事なものだ。いきなり攻撃するのは良くないな』
……やっぱり、よくわからないわ



「ここが、ゴッドゲームオンライン……」
 頬を撫でる風の感触に、クゥ・クラウ(レプリカントのクロムキャバリア・f36345)は不思議そうに目を瞬く。彼女は、木漏れ日の差し込む静かな森の中に立っていた。どこからか鳥の鳴く声がする。周囲の木の葉が音を立てて揺れる。今にも何かと鉢合わせてしまうのではないか、そう思わせるような風景を前に、クゥは慌てるような様子もなく、ゆるりとあたりを見回した。感情のない機械のように、はたまた状況を呑み込めないでいる子供のように。
「初めて来たけど、変な感じ」
 ここがゲームの世界だとあらかじめ聞いていなければ、そうと見抜くことはできなかっただろう。現実と何ら変わらないように錯覚させる、この究極のゲームの完成度に舌を巻く。猟兵は生身の状態で出現するので、そのせいで余計に現実との境が曖昧になりそうになる。
 しかし、それはクゥにとって好都合なことでもあった。
「ゲームのことはよく分からないけど、これなら問題ないと思う。……たぶん」
 現実と変わらないのであれば、現実と同じように振舞えばいい。要は普段通りの自分でいればいいのだ。
 やるべきことは分かっている。行くべき道もなんとなく分かる。目的地が、ここからそう遠く離れていないことも。ならば何も恐れることはない。
 クゥは確かな足取りで、森の中を歩きだした。未知の世界を、一歩一歩踏みしめるように。

 万事順調なはずだった。少なくとも、森を出て『ゴブリンの洞窟』にたどり着くところまでは。しかし、件の新米プレイヤー四人組との接触は、クゥが思っていたほど簡単には進まなかった。
「……危険だから、帰ってほしい」
 洞窟の入り口、先へ進もうとする4人の前に行く手を阻むように立ちはだかり、クゥはそう警告した。この警告は、バグプロトコルとの戦闘に一般のプレイヤーを巻き込みたくないという、彼女なりの優しさの表れではあるのだが、悲しいかな、致命的なまでに言葉が足りていなかった。
「な、なんだあんたは!?」
 戦士ヨシノブに少し大げさなくらい驚かれ、クゥはようやく何かを間違えていることに気が付いた。見れば、彼の後ろにいるほかの三人も、おそらく驚愕によるものなのだろうが、目を見開いて固まってしまっている。
『まあ、そんな風に言われて引き返す奴はいないだろうね』
「……そう思ってたなら、もっと早く言って」
『そう言われてもね。君が何を話そうとしているかなんて、僕には分からないさ』
 サポートAI『ジョン・ドゥ』に苦笑され、クゥは無表情で考えこむ。そのまま少し考えてみたが、この自分以上に人間臭いAIの言うことに矛盾や齟齬を見つけられず、言い返すことは無駄だと判断した。
 重要なのは任務を達成することだ。無駄なことはする必要がない。
「ワタシはクゥ・クラウ。このゲームのバグの調査をしているの。ここには、この洞窟でバグが発生しているって聞いて来たわ。」
 クゥは言葉を選びながら、4人への説明を始めた。これも任務のため、と自分に言い聞かせながら、慣れない嘘を紡いでいく。
「この先に進むのはお勧めしない。バグによって倒されたキャラクターは、それがプレイヤーであれ、NPCであれ……ひどいことになるわ」
「な、なんであんたがそんなこと知ってんだよ」
「秘密」
「はあ!?なんだよ、それ。……おい、行こうぜ、皆」
 短気なヨシノブは、クゥを無視して先に進もうとしたが、盗賊ニーナがそれを止めた。
「待ちなよ、ヨシノブ。この人が嘘を言ってるって決まったわけじゃないじゃん。そんなことしたって、この人には何の得もないんだしさ」
「この洞窟の宝を独り占めしようとしてるのかもしれないぜ?あとは、新人に嫌がらせしようとしてるとか」
「あのさー、私たちでも挑めるようなダンジョンに、ろくな宝があるわけないでしょ。嫌がらせにしても、やるんだったらこんな通せんぼじゃなくて、もっと直接攻撃したりしてくるもんでしょ、普通」
 呆れたようなニーナの言葉に、魔法使いペペも頷く。
「僕たちのような新米なんて、手の込んだ方法なんか使わずとも、どうとでもなるでしょうからね。とはいえ、こちらのクゥさんが怪しい人物というのは否定しませんが」
「と、とりあえずついてきてもらったらどうかな。クゥさん強そうだし、私たちも引き返すわけにはいかないでしょ……?」
 僧侶エマの提案に、ヨシノブ、ニーナ、ペペの三人が頷き、期待を込めた目でクゥを見つめた。
「駄目って言いたいところだけど、聞きそうにないね。……仕方ない。先に進むのなら、私もついていく」

 5人が洞窟を進んでいくと、通路にこれでもかとばかりに配置された無数の宝箱に遭遇した。
「な、なによこれ……?」
「なあ、これがあんたの言っていたバグってやつか?」
「……先手必勝」
 動揺するニーナとヨシノブの問いには答えず、クゥは大きく前へ踏み出し、容赦なくユーベルコードを発動する。
「収束、形成……光よ、刃となりて切り裂け」
 【光成武装】で砲杖・レグルスの先端に光の刃を造り出したクゥは、誰もが驚いて動けない中、回るような大きな動きで軽やかに一閃、周囲の宝箱を薙ぎ払った。
「グギャアアアア!」
 まさかいきなり切りかかられるとは思っていなかったのか、ミミックたちは断末魔の悲鳴を最後に、ろくに抵抗をすることもできずに消滅していった。
「ミミック!?」
「お、俺たちのお宝が~!」
 宝箱の正体に目を見開く3人と、涙をこぼすヨシノブ。その姿を見て、クゥは首を傾げた。
「なぜヨシノブは泣いているの?彼では勝てないであろうミミックを倒した。ここは喜ぶべき」
『宝箱は冒険者にとって大事なものだ。いきなり攻撃したのが良くなかったんだろう』
「どういうこと?……やっぱり、よくわからないわ」
 納得はいかないが、考えていても答えは見つかりそうにない。クゥは頭を振って、疑問を外へ押し出した。ひとまず最初の難関は突破したのだ。あとは、洞窟の先へ進めばいい。分からないことを考えるのは、そのあとだ。
「……終わった。さあ、次へ行きましょう」
 元に戻ったレグルスを一振りし、クゥは4人へそう呼びかけるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティナ・ルウ
ティナ、ヨシノブたちてつだう。
ヨシノブたち、まだよわいからティナがまもる。
ミミックにおそわれそうなったらティナがかばう。
ヨシノブたちにティナのうしろからたたかうよういう。
ティナもよわいころはそうやってまもってもらってた。
ヨシノブたちがつよくなったら、ティナみたいにだれかをまもってあげて。
もし、ヨシノブたちがケガしたらティナがなめてなおす。
(アドリブ連携大歓迎です。どんどん動かしてください)



 ゴブリンの洞窟の入り口に到着した時、盗賊ニーナの耳がその音をとらえた。
「……何か、来る?」
 彼女は振り返った。この洞窟に至るまでに、鬱蒼とした森を突っ切ってきたのだが、その森から何かが走って来る。そんな気がしたのだ。
「皆、戦闘態勢!」
 ニーナは警告したが、仲間たちが振り返るよりも、その存在の方がはるかに速かった。
 木々をすり抜けるようにして、一つの影が飛び出してきた。野獣のような動きを見せたそれは、驚いたことに可憐な少女だった。狐のような耳と尻尾を持ち、異様に露出度の高い服装をしている。見た目と動きのギャップが大きすぎて、脳がおかしくなりそうだった。
「な、なんだぁ、こいつは!?」
 軽やかに大地へ着地した少女に、ヨシノブが驚き……だけではないだろうが、顔を真っ赤にしながら叫ぶ。少女は自信満々に立ち上がると、さわやかな笑みで名乗りを上げる。
「ティナ。ヨシノブたち、たすけにきた」
 なんだかおかしなことになってきたぞ。そう苦虫を嚙み潰したような顔をしたニーナをよそに、現れた少女ティナ・ルウ(人狐・f19073)は、言葉足らずにそう宣言するのだった。

「ティナ、ヨシノブたちをまもる」
 ティナはヨシノブたちに後ろをついてくるように指示し、ゴブリンの洞窟を意気揚々と進んでいく。この洞窟は一本道なので、迷う心配はない。
 初心者たちは最初は指示を聞いてくれなかったが、試しにティナが片手でヨシノブを持ち上げてみせると、途端におとなしくなってついてきてくれた。やはり力の誇示というのは、群れをまとめるうえで必要な行為なのだ。群れのボスになったような気分になって、ティナはなんだか嬉しくなった。
「と、ところでティナさん。私たちを守るって、ここにどんな危険があるんです?ここは初心者向けのダンジョンで……」
「もうすぐわかる」
 僧侶エマの質問を遮って、ティナはそれだけ告げた。言葉で説明するのは得意ではない。見てもらった方が早いだろう。
 タイミングよく、一行は件の宝箱が置かれているエリアに足を踏み入れた。
「何だこりゃ。宝箱だらけじゃねえか」
「ヨシノブ、迂闊に近寄らない方が……」
 ペペの忠告も聞かず近づいたヨシノブに、宝箱がその邪悪な正体を現した。ミミックに嚙みつかれ、ヨシノブが情けない悲鳴を上げる。
「うわああああ!」
「だいじょうぶ」
 驚いて動けずにいる一行の中でただ一人、ティナは素早い動きでヨシノブに近寄ると、力を込めてミミックを引きはがし、洞窟の壁に思い切り叩きつけた。
「ギャゲッ!」
 断末魔の悲鳴を上げたミミックが消滅するが、ティナは油断しない。見れば、ほかの宝箱も次々とその口を開き、大きな牙をむき出しにしていた。
「みんな、わたしのうしろに」
 それだけ告げ、ティナはミミックの群れに突進した。蹴り飛ばし、つかんで大地に叩きつけ、力を込めて殴りつける。見た目に似合わぬ獣の動きで、ティナは次々とミミックを粉砕していった。
 ミミックを全て片付けると、息も絶え絶えのヨシノブが仲間たちに看病されていた。エマが回復呪文をかけているが、どうやら回復力が足りないらしい。
「どうしましょう……」
「ポーションとか、持ってくればよかったね」
「だいじょうぶ。ティナにまかせる」
「……ちょ、ティナさん?」
 ティナが舌を出し、ヨシノブの傷口を舐めると、不思議なことにみるみる傷口が塞がっていった。
「す、すげえ。ティナさん、ありがとうございます!」
 感激したヨシノブが涙を流しながら言う。
「ん。ティナもよわいころ、こうやってまもってもらってた。ヨシノブたちも、いつかこうやってだれかをまもってあげて」
「はい!頑張ります!」
「心意気はいいと思うんだけど、ヨシノブは傷を舐めたりしないでいいからね」
「当たり前だろ!」
 すっかりいつもの調子に戻ったヨシノブを見て、ニーナが茶化す。一行に笑顔が溢れた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『ボンバー・バグ!』

POW   :    体力で耐える! 

SPD   :    素早さで先制攻撃だ!

WIZ   :    対爆弾用の準備だ!

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

クゥ・クラウ
……ダメージ覚悟で、ワタシだけで突破するしかない?
『その前に彼らを頼ろうじゃないか。お互いこのダンジョンを攻略する仲間だろう?』
AIのジョン・ドゥが言う。彼らは保護対象とだけ考えていたけれど……

爆発範囲外から遠距離攻撃で罠を発動させることができれば、再発動する前に先に進むことができる

「力を、貸してほしい」
盗賊の能力で、爆発の範囲や発動条件などの情報は得られないかしら?
範囲外でも衝撃や瓦礫が飛んでくるかもしれない。戦士のアナタは皆を守ってほしい。
魔法使いと僧侶の二人は防御魔法をお願い

UC【鎧殻召喚】。鎧で身を固め、防御UP。プレイヤーたちの前に立つ。
砲杖から光線を撃ち、遠距離から罠の発動を試みる



 奥へと続く通路を眺めながら、クゥ・クラウ(レプリカントのクロムキャバリア・f36345)はこの先に待ち構えている脅威について考えていた。
「爆発……正直、どう対処すればいいか分からない……ダメージ覚悟で、ワタシだけで突破するしかない?」
『それでいけるかもしれないが、バグの影響が及ぶ範囲が分からない以上、確証はないね』
 ジョン・ドゥが言う。このAIは妙に人間臭いが、それでもこんな時の判断は的確だ。
『僕たちだけで答えを出すのもいいが、その前に彼らを頼ろうじゃないか。お互い、このダンジョンの攻略を目指す仲間だろう?』
 彼らというのは、もちろんクゥの後ろにいる初心者4人のことだ。
「彼らは保護対象よ」
『かもしれない。だが、何もできない置物でもない。違うかい?」
 クゥは言葉に詰まった。確かに彼らは初心者ではあるが、役立たずというわけでは決してない。
 彼女が後ろを振り返ると、4人はそれぞれ不安そうな表情を浮かべていた。クゥとジョンの話を聞いていたのかもしれない。この先何が起こるかは知らずとも、爆発、などの単語が聞こえれば、不安にもなる。
 彼らだけでこの先を突破するのは絶対に無理だ。クゥも、たった1人で全員を守り切るのは難しい。しかし、全員で協力すれば、何とかなるかもしれない。
「……皆」
 クゥが声をかけると、新米たちの方がびくりと震えた。
「この先には、ある危険が待ち構えている。正直、ワタシだけでは、皆を守り切れないかもしれない。だから、力を貸してほしい」
 4人が頷くのを確認すると、クゥは一番力を貸してほしい人物に目を合わせた。
「……まずは、ニーナ」
「え!?わ、私ぃ!?」
 突如指名を受けた盗賊は、素っ頓狂な声を上げた。

「そーいうことなら、安全圏なんて探りようがないし、作っちゃった方が早いよ」
 これから起こるバグについて説明されたニーナは、指をぱちりと鳴らしながら言った。とるべき行動が見えてきたのか、彼女の顔からは、先ほどまでの不安そうな表情が消えていた。
「少なくとも、今いるところは安全だし、ここで防御を固めよう。ペペ、魔法で穴を掘って、塹壕みたいなの作れないかな?」
「穴を掘る魔法自体はありますが、全員隠れられるよう深く掘るとなると、僕の魔力が足りませんね」
「そっか。うーん、じゃあエマと一緒に、全員に防御魔法をかけてよ。できれば、物理と炎属性、両方に対する耐性を付与してくれるといいかな」
「それぐらいなら、できると思います」
「が、頑張ります……!」
 ニーナの指示に、ペペとエマが頷く。
「それで、クゥさんには、皆を守るよう動いてもらいたいんですけど……」
「ワタシには、自分の防御力を高める能力がある。瓦礫が飛んでくるかもしれないから、壁役は任せて」
「助かります!」
「お、俺にはなんかないのか、ニーナ」
「あんたはクゥさんの横で盾構えてて、ヨシノブ。簡単に吹き飛ばされないでよ」
「俺だけ雑じゃないか!?」
 クゥは舌を巻いた。ダンジョン探索に優れた盗賊だから、という理由で、ニーナにこの爆発罠ともいえるバグへの対処法を尋ねたのだが、彼女がパーティをまとめ上げる能力に優れているのは予想外だった。
「あとは、私たちの先を行くカナリヤが必要だね。えーっと……あ、いたいた」
 ニーナは壁の方へ歩いていくと、しゃがみこんで何かを拾い上げた。気になったクゥがのぞき込むと、ニーナの手にはでっぷりとしたトカゲが握られていた。
「洞窟トカゲ。名前の通り、こういう洞窟の中で保護色を利用して隠れてたりするんだ。驚かせると、結構素早く走るんだよね。こいつに先を行かせよう」
 ニーナが、トカゲを通路の先へ放り投げる。臆病なトカゲは、パーティとは反対の方へ一心不乱に走り出した。
「来るよ!みんな構えて!」
「【レジスタンス・ファイア】」
「プ、【プロテクション】!」
「……【鎧殻召喚】」
 クゥがユーベルコードを発動すると同時に、防御魔法が飛ぶ。ヨシノブは盾を構えていた。
 一拍遅れて、轟音とともにすさまじい爆風が5人を襲った。しかし、ユーベルコードと防御魔法のおかげで、熱くはないしダメージもあまりない。クゥは、飛んできた瓦礫の中で特に大きいものを、砲杖から放つ光線で撃ち落とし、被害を最小限に抑えた。細かな瓦礫は、ヨシノブが盾で弾いていた。
 爆発はほんの一瞬のことだったが、5人にははるかに長い時間のように感じられた。爆風が収まり、飛んできた瓦礫すべてに対処したところで、ヨシノブが涙を流しながら叫んだ。
「すげえ!俺たち、あの爆発を生き残ったんだ!皆、マジですげえ、すげーよ!」
「あー、もう!すごいすごい五月蠅い!変なところで感極まるな!」
 暴走気味のヨシノブの頭を、ニーナが小突いた。エマは胸をなでおろし、ペペは全員が無事であることに、満足そうに笑っている。クゥの目には、4人はなかなかバランスの取れたパーティーのように映った。
「……行こう。また爆発が起こっても困るし、この先に倒すべき敵がいるのだから」
「はい!」
 クゥが呼び掛けると、初心者4人は揃って元気よく返事をするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御形・菘
ふ~む、これはどこからどう見てもトラップ通路!
なんてな、妾には違いなんて分からんから予知情報をそのまま使わせてもらうぞ

さて新米諸君、一本道での罠をどう発見して切り抜ける?
パーティを組んでおるのだから、対策は複数用意しておく方が良いぞ
なんせ罠なんて、冒険してたらいくらでもあるのだからな!

はっはっは、お主らには妾が最高にバエる方法を示してやろう
つまり…覚悟をキメて盛大に突っ込む!
はーはっはっは! いわゆる漢解除だ!
いや、きっちり各種オーラを全身に纏いガードはしてるがな?
妾的には一択だが、まあ新米諸君にはちゃんと対策考えておけという警告になるであろう
ほれ、早く通り抜けんと罠が復活するかもしれんぞ~?



「ふ~む、これはどこからどう見てもトラップ通路!」
 洞窟の奥へと続く一本道を進む途中で、御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)は突然立ち止まり、腕を組みながら突然そんなことを言い出した。当然であるが、今もこっそり生配信中である。
 驚いたのは盗賊のニーナだ。
「そうなんですか?」
「うむ。間違いない」
「私は全然気づきませんでしたけど……菘さんは、やっぱりすごいんですね。ベテランの勘ってやつですか?私も盗賊として、もっと頑張んないとなぁ」
(ぐっ、なんだか罪悪感……ごめんね、ニーナさん。分からなくて当然よ。私だって、本当は違いなんて全然分かんないわ)
 菘は心の中で呟く。彼女は、爆発が起こる正確な位置はともかく、大体の場所は事前に得ていた情報で知っていた。
 菘はブンブンと頭を振って気を取り直すと、いつもの不敵な笑みを浮かべ、指を一本立てて初心者たちに問いかけた。
「さて新米諸君、一本道での罠をどう発見して切り抜ける?」
 菘の質問に、4人は顔を見合わせる。
「そりゃあ……俺たちのパーティーにはニーナがいるから、盗賊のスキルで見つけてもらえばいいんじゃねえすか?」
「甘い!甘いぞヨシノブ。その考えでは、ニーナが行動できないときや、彼女が罠を見落としてしまったとき、お主たちは罠に対して完全に無防備になってしまうぞ。適材適所という考えはもっともだが、パーティを組んでいるのだから、対策を複数用意し、ある程度はお互いをカバーできるようにならねばな」
 力説する菘に、ヨシノブは「な、なるほど?」などと、分かっているんだかいないんだか、曖昧な返事をした。それを見て、菘はあることを思いついた。
「そうだ、ヨシノブ。今のお主には真似できんだろうが、将来のお主の役に立つであろう方法を、妾が特別に伝授してやろう」
「え、マジっすか!?」
「はっはっは、当然だ。噓を言っても仕方あるまい!妾がこれから教えるのは、皆の注目を一身に集めるであろう最高にバエる方法だ。いつかお前が高レベルになったとき、仲間を守るのに役立つだろう」
「バエる、っすか?」
「そうだ!動画映えは大事だぞ。漫然と行動するだけでは、見どころというのはなかなか作れない。妾はいつもそれを意識しておってな……とにかく、覚悟をキメて、盛大に突っ込むのがポイントだ。お主はこれから妾がすることを、しっかりとその目に焼き付けておくがいい!」
 ヨシノブにそれだけ言い残すと、菘は突然、一目散に洞窟の奥へ向かって走り出した。
「……え?え?あの、菘さん!?」
 エマが驚きと不安の入り混じった声を上げ、ついていくために走り出そうとする。が、圧倒的に優れた身体能力を誇る菘は、見る見るうちに4人から遠ざかり、爆発が起こっても決して彼らには危険がないだけの距離を広げた。
「はーっはっはっは!その方法とは、すなわち!」
 走りながら、菘は自信たっぷりに高らかに宣言する。
「いわゆる漢解除だ!」
「対策でもなんでもねえ!!」
 遠くからヨシノブの律儀なツッコミが聞こえたと同時に、菘の目の前で閃光が迸り、轟音とともに通路が爆破される。すさまじい爆風が巻き起こり、初心者たちは防御姿勢をとって、離れたところで自分の身を守るので精一杯だった。
 爆発による煙が徐々に晴れ、視界が戻ってきた4人は、傷だらけの菘がいるのではと、いてもたってもいられず走り出した。
 しかし、無傷。菘は爆発地点の中心で、両手を腰に当て、これまた動画映えを意識したように威風堂々と立っていた。彼女は無策で突っ込んだというわけでは決してなく、全身に『四元五行』、『八元八凱門』などを利用したオーラを身にまとい、防御していたのだ。
 無論、爆発の威力は並大抵ではなく、通常であれば菘のオーラ防御でも無傷とはいかなかっただろうが、ユーベルコード『ライブストリーミング・フィールド』が、漢解除を含めたあらゆる『動画映え』を意識した行動を強化し、『煙の中から現れる格好いい菘』の存在を可能とした。
「よし!漢解除としては満点の出来であっただろう。参考になったか?」
「なるか!まあ、なんだ……無事で何よりだぜ」
「こりゃ、ヨシノブじゃあ、レベルが上がったって無理そうだね」
「に、ニーナさん、そんな風に言ったら、ヨシノブさんがかわいそうです。」
 ヨシノブ、ニーナ、エマがそんなことを言いながら菘に駆け寄る後ろで、これまでずっと黙っていたペペが口を開いた。
「あの……これは確かに罠を解除はできますが、最初に話していた事前に罠を発見するという方法としては不十分なのでは?」
 ええい、勘のいい小僧め。
「……ほれ、そんなことはどうでもいいから急げ、急げ。早く通り抜けんと罠が復活するかもしれんぞ~?」
 何やら風向きが変わってきたのを敏感に感じ取った菘は、初心者たちを急かしながら、とりあえず話を有耶無耶にしてしまうことに決めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カトリーヌ・クレマン
ニーナさんにトラップの解除を任せてわたしはヤドリギの織姫で彼女たちが怪我をしない様に守るわ。
本当ならトラップ解除のコツとかを教えられればいいのだけど、わたしはファーマー系ジョブでトラップの解除は素人だから。
本来ここは初心者用ダンジョンらしいから、トラップの難易度が上がっていない事を祈るわ。
ニーナさんにあなたは本職のシーフなんだから、この位のトラップは簡単に解除できるはず、と自信や勇気を持つように応援するわ。
万一の時はわたしが必ず守るから安心して頑張ってね。



「うーん、どうしようかしら」
 洞窟を進む途中で突然立ち止まり、カトリーヌ・クレマン(名も無き村娘・f42145)は顎に手を当ててそう呟いた。本来、考え事をするのに不要なそんな仕草をしてしまうのは、彼女がプレイヤーに観察されるのが前提のNPCだからだろうか。
「どうしたんですか、カトリーヌさん?」
 そんな分かりやすさのかいあってか、ペペが問いかけてきた。
「実はね、この先でちょっとしたバグが発生しているって話があるの」
「バグ、ですか。あまり穏便にはいかなそうですね」
 通路で待ち構えるバグについて、カトリーヌが4人に説明すると、新人たちは顔を見合わせた。
「突然発生する爆発ですか……」
「どうする?俺が突っ込んで対処するか?」
「いやー、厳しいんじゃない?ヨシノブは体力多いけど、あくまでも私たちの中ではって話だし」
「に、ニーナさんの言うとおりだと思います。危ないですよ。……か、カトリーヌさん、どうしましょうか」
 エマに不安げな顔を向けられ、カトリーヌは言葉に詰まる。正直に言えば、やりようはいくらでもある。しかし、彼女は猟兵であると同時にこのゲームのNPCである。できる限り、プレイヤーの力で困難を突破してほしいという思いがあった。
「そうね……恐らくだけどこのバグは、もともと存在しないはずのトラップが通路に設置されている、というものだと思うの。もしそうであれば、ニーナさんのトラップ解除能力を応用すれば突破できるかもしれないわ」
「それはそうかもしれないけど、話が本当なら、仮にそのトラップがあったとしても目には見えないんだよね?失敗したら私、やられちゃうんじゃない?」
 当のニーナから疑問を投げかけられる。さすがに嫌だったか、とカトリーヌは彼女の様子をうかがったが、どうやらそういう訳でもなく、単に確認しているといった様子だ。
「そこは私の能力でニーナさんを守るから大丈夫よ。最悪でも、少しダメージを受ける程度で済むはずだし、その傷も回復できるから問題ないわ」
「ふうん……オッケー、じゃ、それでいこう。いいよね、ヨシノブ」
「俺はいいと思うが、お前はいいのか?」
「うん。カトリーヌさんを信じるよ。どっちみち、彼女の助けがないと、突破は難しいだろうしね」
 カトリーヌは、あまり説得をしなくてもニーナが快諾してくれたことに胸をなでおろした。どうやら、彼女はかなり肝の座った性格らしい。
「それじゃ、カトリーヌさん、お願い」
「分かったわ。……彼女を守って、【ヤドリギの織姫】」
 カトリーヌのユーベルコードによって地面から発生したヤドリギが、ローブのようにニーナの全身を包み込んだ。植物の見た目ゆえに脆そうに見えるが、超常の力で編まれたローブはすさまじい防御力を誇る。
「……すごいね、コレ。なんだかちょっと強くなった気分だよ」
「これで大丈夫だとは思うけど、油断はしないでね。無傷で済むのが一番よ」
「りょーかい、行ってくるよ」
 ニーナは笑顔でそう言うと、ゆっくりと一人通路を進んでいった。そして、一行から離れたところで立ち止まると、慎重に跪く。
「あった!くそっ、なんだいこのトラップ、完全に透明だ。これ、解除できるかな……あっ!!」
 解除に失敗したことを悟ったニーナが飛びのこうとした瞬間、まばゆい閃光とともに、すさまじい威力の爆発が彼女を飲み込んだ。
「ニーナ!」
「駄目よ!」
 ヨシノブやペペが飛び出そうとするのをカトリーヌは押しとどめた。彼らまで爆発に巻き込まれたら、本末転倒だ。
「け、けど、ニーナが!」
「……なんだよ、うるさいなぁ」
 ヨシノブが叫ぶ中、煙の中から声が響いた。そして、砂利を踏みしめるような音とともに、ニーナが姿を現す。驚いたことに、ほとんど無傷のようだ。
「ヨシノブさぁ、リーダーなんだし、もっと落ち着きなよ。まあ、ちょっと嬉しかったけどね。……あ、カトリーヌさん!すごいね、さっきのローブ。爆発したときは一瞬死んだかと思ったけど、全然ダメージを受けなかったよ」
「本当によかったわ。無事で何よりよ」
「う、うおおおおお!ニーナ!マジでよかったぜ!」
 ヨシノブに抱き着かれ、うっとおしそうに引きはがそうとするニーナを、ペペが笑顔でなだめる。エマは、安心からか涙すら浮かべていた。そんな姿を微笑ましげに眺めた後、カトリーヌは4人に告げた。
「さあ、安心するのはまだ早いわ。早く行きましょう。ダンジョンの最深部はもうすぐよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『ゴブリン・アーミー』

POW   :    アンチヒューマンライト
【対物ライフルから放たれる弾丸】に【|遺伝子番号《ジーンアカウント》剥奪】のルーンを宿して攻撃する。対象が何らかの強化を得ていた場合、それも解除する。
SPD   :    アサルトゴブリン
【手榴弾】で装甲を破り、【アサルトライフルによる連射】でダウンさせ、【コンバットナイフでの急所へのめった刺し】でとどめを刺す連続攻撃を行う。
WIZ   :    ジェノサイドゴブリン
敵1体を指定する。レベル秒後にレベル×1体の【ゴブリン・アーミー】が出現し、指定の敵だけを【アサルトライフルによる銃撃】と【コンバットナイフによるめった刺し】で攻撃する。

イラスト:滄。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

クゥ・クラウ
プレイヤーたちの本来の世界は厳しく管理されているという。
彼らにとって今この時間は、とても特別で大切なものなのかもしれない。

『予想以上に厄介な相手だ。あの銃はプレイヤーとって致命的だよ』
AIのジョン・ドゥが言う。それなら、
「あれはワタシの標的。アナタたちはアナタたちの戦いを、がんばって。……先に行くわ」
少しだけ口元に笑みを浮かべるわ。彼らのゲームを楽しむ様子に影響を受けたのかも。

光翼を起動。背に翼を展開し、ノーマルのゴブリンを飛び越える。
UC【光成武装】。攻撃回数重視。杖の先に槍のように光の刃を形成して、アーミーの一体を頭上から襲撃。間髪入れず次を狙う。
派手に立ち回って敵の目を自分に集めるわ。



 洞窟最深部、ボスエリアの手前で、クゥ・クラウ(レプリカントのクロムキャバリア・f36345)達は休息をとっていた。交代で見張りをしており、今はヨシノブとニーナが警戒にあたっている。
「……楽しめてる?」
 クゥは無表情のまま、ひどく曖昧な質問をペペとエマに投げかけた。
 これでも彼女は、新人たちがこのゲームを楽しめているかというところを、かなり気にしていた。このゲームのプレイヤーたちは、現実では統制機構によって行動を厳しく管理されていると聞く。そんな彼らにとって、このゲームは唯一自由を謳歌できる場所で、こうして遊んでいられる時間は何よりも特別で大切なものなのかもしれない。バグのせいとはいえ、その楽しみが奪われてしまうことは、とても残酷なことではないかと、クゥは思ったのだ。
 だからこそ、クゥなりに彼らを心配していたのだが、普段から気遣いというものが苦手な彼女は、どんな言葉を彼らにかければいいか分からなかった。それで、熟考を重ねた結果、絞り出したのが先の質問だったというわけだ。
「このゲームを、ということですか?ええ、もちろん楽しめていますよ」
「く、クゥさんのおかげですよ」
 ペペはかけている眼鏡をクイと上げ、エマは屈託のない笑顔を浮かべて答えた。言葉にしていない部分まで察してくれるこの二人が会話の相手であったことは、クゥにとって幸運だった。もしこの場にいたのがヨシノブであれば「ああ?楽しめてるって……何がだよ?」などと言い出して、まったく会話が前に進まなかったことは間違いない。
「私は、ドジでおっちょこちょいだから……リアルだと、統制機構に決められたことですら、うまくできないことも多いんです。そんな私でも、クゥさんが手伝ってくれたから、ここまで来ることができました。わ、私は……このパーティーの一員として、普段の自分ではとてもできないような冒険をしていることが、すごく楽しいんです」
 顔を真っ赤にしながら、恥ずかしそうにエマはそう語った。
「だ、だからクゥさん、最後まで一緒に頑張りましょう!」
「……うん、分かったわ」
 相変わらず無表情のまま、何でもないことのようにクゥは頷いた。しかし、その目に宿る鈍い光は、実に真剣そのものだった。

 洞窟最深部は、これまでよりひときわ広い空間になっている。プレイヤーがボスと戦いやすいようにするための配慮だろうが、こういった構造はいかにもゲームらしいとクゥは思った。
 そんな最深部で待ち構えていたのは、通常のゴブリンより上質な剣と盾で武装し、丈夫な兜を被ったボスゴブリンたち……と、それをいとも容易く凌駕する性能の現代的な武装に身を包んだバグゴブリンたちである。その手に持ったコンバットナイフといい、アサルトライフルといい、世界観やこのダンジョンの雰囲気からこれでもかと浮きまくっている。
「なんか……明らかに変じゃね?あいつら」
 考えたことがすぐ口から出る男、ヨシノブの疑問に答えたのは、予想だにしていない人物であった。
「ゴブゴブ。変じゃないゴブ。これはゴブリンの間では実にスタンダードな兵装ゴブ」
 当の本人、バグゴブリンである。
「おめーら喋れんのかい!てか、なんだそのとってつけたような語尾は!」
「そんな嘘じゃ、ヨシノブでも騙されないよ!」
「『でも』ってどういう意味だ!?ニーナァ!」
 ふざけた敵(とニーナ)の態度に、ヒートアップしていくヨシノブだったが、そんな隙を邪悪なバグが見逃すはずがない。例えどれだけふざけた態度をとっていても、だ。
「……危ない!」
 クゥはとっさに飛び出して、ヨシノブを突き飛ばす。バグゴブリンの銃撃が、ヨシノブが先ほどまで立っていた場所の近くの壁に穴をあけた。
「油断しないで」
「く、クゥさん、ありがとうございます」
『あのゴブリン、予想以上に厄介な相手になりそうだ。あの銃は、ヨシノブ君たちにとっては致命的だよ』
 AIのジョン・ドゥは、いつも冷静に状況を観察している。
「それなら」クゥはいつものように答える。「撃たせなければいい。……こっちから行く」
 クゥは光翼を起動した。背に光り輝く翼を展開し、飛び上がろうとしたとき、エマがクゥに向かって叫んだ。
「待ってください!わ、私も手伝います!」
「……あれはワタシの標的。アナタたちにはアナタたちにふさわしい戦いがある」
 ボスゴブリンの方を指で指し示し、クゥは少しだけ口元に笑みを浮かべた。
「頑張って。……邪魔する奴らは、ワタシが何とかするから」
 それだけ言い残して、クゥは高く飛び上がった。そして、空中で一回転すると、ユーベルコード【光成武装】で杖の先に光の刃を形成し、槍のように構えてゴブリンへと突撃した。その姿は、放たれた一本の巨大な矢のようであった。ボスゴブリンを飛び越え、そのままバグゴブリンの一匹を刺し貫くと、流れるような動きで杖を振るい、すぐ側にいたもう一匹の喉元を切り裂いた。
「な、馬鹿な!オレたちが、こんな簡単に……」
 驚愕の表情を浮かべる最後のバグゴブリンに、クゥは冷ややかな視線を向ける。
「さっきまでの語尾は、どうしたの?」
「チッ!うるせえ!これでもくら……」
「遅い」
 アサルトライフルを構えたゴブリンの脳天に、クゥが杖ごと投擲した光の刃が突き刺さった。最後まで言い切ることなく事切れたバグゴブリンは、その場で光の粒となって消滅した。
「クゥさん!」
「……終わった。そっちはどう?」
「こ、こっちも無事、討伐完了です!クゥさんのおかげですよ!」
 笑顔を見せるエマに対して、クゥも思わずつられて微笑む。
「そんなことは……」
「ありますよ!クゥさんのおかげで、私たち、全然怖くありませんでした」
「……そう」
 クゥの薄い反応に、心配そうな表情を浮かべたエマを救ったのは、ジョン・ドゥの一言だった。
『すまないね、諸君。彼女は感情表現が苦手なんだ。特に今は……照れているんだよ』
 エマの顔に笑顔が戻る。それを見たクゥは、しばらくは余計なことを言うAI端末の電源を切ってやることを心に決めながら、恥ずかしそうに頬を掻いてそっぽを向くのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御形・菘
雑魚モンスターと言えばやっぱりゴブリン!
なんだかんだで妾は文明レベル高めの世界出身なのでな、割と楽しみにしておったのだが…
世界観はとっても大切! 空気読めん者には鉄槌を下さんとなあ!

てなわけで変な武装しておるボスは妾の獲物だ
お主らは取り巻きを相手してくれ、できるであろう?
はっはっは、もし無理そうなら妾を呼ぶがよい!

強化を解除してくるタイプの攻撃か
なるほどそれは厄介! だが構わん、妾は元々最強なのだ!
空高く飛び上がり…全身を使い捻りを加え、さあ尾の一撃で叩き潰されるがよい!

カッコ良く派手な技を選んだのは、初心者たちを奮い立たせる意図だ
銃弾は左腕で受けるて防ぐぞ、攻撃に腕を使わんのも念のためだな



「雑魚モンスターといえば、やっぱりゴブリン!」
 洞窟最深部、広い空間にたむろするゴブリンたちを見て、御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)は腕を組みながら頷いた。
「実は妾、このゲームのゴブリンに会うのが、割と楽しみだったのだ」
「え、なんでっすか?」
 敵を前に警戒しながら、訝し気に問うヨシノブに、菘はゴブリンたちを顎で示して答える。
「ほれ、あんな風に、いかにも野蛮人といった相手と会うなど、ゲームでもなければできんであろう?」
「あー、まあ、確かに?」
「でも、その割には現代的な武装をしてるのも混じってるんですけど」
 ニーナが指さす先には、何食わぬ顔で群れに紛れ込むバグゴブリンたちの姿があった。通常のゴブリンとは違い、アサルトライフルとコンバットナイフで武装した姿は、このゲームでは明らかに浮きまくっている。
「そう、そうなのだ。許せんよなあ、あ奴ら!世界観はとっても大切なのだぞ!妾が己のイメージを維持するために、いったいどれだけの対価を支払っていると思っているのだ!」
「何の話!?」
「ともかく、空気を読めん者には鉄槌を下さねばならぬ!あの変な武装をしておるゴブリンどもは妾の獲物だ」菘は全身にオーラを纏い、不敵な笑みを浮かべた。「お主らは取り巻きの相手をしてくれ。できるであろう?」
「……ったく、どっちが野蛮人なのか分かんねえな。まあいいや、任せてくださいよ!」
「はっはっは、もし無理そうなら、遠慮なく助けを求めるがよい!では、行くぞ!」
 地面を強く蹴り、菘が空中へと飛び上がる。通常のゴブリンたちの上を飛び越え、バグゴブリンに肉薄するつもりだったが、流石に敵も甘くはない。ユーベルコード【アンチヒューマンライト】で強化したアサルトライフルで、菘に銃弾の雨を浴びせてきたのだ。
 菘は防御しようとしたが、弾丸が触れた瞬間、彼女が纏っていたオーラが雲散霧消する。
「ほう、強化を解除してくる攻撃か。なるほどそれは厄介!」菘はとっさに左腕で銃弾を弾きながら笑う。「だが、それだけで妾を止めることはできぬ!」
 弾幕が薄くなった一瞬の隙を狙い、菘は全身を大きく捻るように動かした。彼女の尾が鞭の如く大きくしなり、薙ぎ払うようにバグゴブリンたちの体を打ち据える。周辺の地形すら破壊できる威力を持つ菘の大技【楽土裁断】を受けたバグゴブリンたちは、まるで木の葉のように簡単に吹き飛び、断末魔の悲鳴を上げながら光の粒子となって爆散した。
「小細工など使わずとも、妾は元より最強なのだ!……ヨシノブ、こっちは片付いたぞ!そっちはどうだ?」
「あと少しっす!……よし、これでとどめだぁ!」
 ヨシノブが体を捻り、大きな動きで横に薙ぐように斬撃を繰り出す。彼の一撃で、最後に残っていたゴブリンもどうとその場に倒れ、ほかのゴブリンと同じように消滅した。
「む、その動きは!」
「へへっ。さっきの菘さんの技、カッコよかったから参考にしてみたんだ。どうかな」
 菘は目を丸くした。ヨシノブの動きはなかなかのものだった。あの一瞬で、まさかここまで動きを真似できるようになるとは。彼には意外と才能があるのかもしれない。
「なかなか悪くない。妾の技をそこまで身に着けるとは。やるではないか!」
「うっす!ありがとうございます!」
 菘は、照れくさそうにしているヨシノブの肩を、バンバンと叩いて褒めてやった。このパーティーなら、今後もうまくやっていけるだろう。
「さあ、お主ら、ドロップアイテムを手に入れたら、引き上げるぞ。帰るまでがダンジョン攻略だからな!」
「了解!」
 洞窟の中に、初心者パーティーの笑い声が響く。菘の活躍により、彼らは無事クエストを終えることができたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カトリーヌ・クレマン
明らかに別物のゴブリンが混ざってるわね。
確かに元々色々な種類のゴブリンがいる世界だけれど、ここまであからさまだと言い逃れはできないわね。
こいつらをヨシノブたちに近づけるとまずいから傭兵雇用で呼び出したランツクネヒトと一緒(竹槍や攻性植物でランツクネヒトを援護する様な形)に武装ゴブリンの迎撃に回って武装ゴブリンをヨシノブたちに近づけないようにするわ。
わたしとランツクネヒトにさらに攻性植物とこちらの人数を増やして集団で攻撃して的を絞らせないようにして集中攻撃を防ぐようにするわ。



「明らかに別物のゴブリンが混じってるわね」
 洞窟の最深部にて、ゴブリンの群れを発見したカトリーヌ・クレマン(名も無き村娘・f42145)は、その中でもひときわ異質な武装に身を包んだゴブリンたちを警戒していた。この異様なバグゴブリンたちは、通常のゴブリンの後ろに隠れるようにして、アサルトライフルを弄びながらニヤニヤと卑しい笑みを振りまいている。
「カトリーヌさん、あのゴブリンたちはいったい……?」
「バグよ。あの銃で武装しているゴブリンたちがそう。ゴブリンは元々いろいろな種類がいるけど、あんな武装をしているエネミーが初心者向けダンジョンにいるのは、明らかにおかしいもの」
「バグって……それじゃあ、俺たちはどうしたらいいんだ?」
「普通に戦ったらいいわ」
 頭を抱えるヨシノブに、カトリーヌは優しく告げる。
「あの変なゴブリンたちの相手はわたしがするから、気にしなくて大丈夫よ」
「そ、そんなの……カトリーヌさんに悪いですよ。私たちも手伝います」
 心配そうに言うエマに、カトリーヌは首を振る。
「いいえ。あのゴブリンたちは明らかに危険よ。初心者であるあなたたちに危ない真似はさせられないわ。それに……このゲームのNPCの一人として、ゲーム内の異常をプレイヤーに対処させるわけにはいきませんもの」
 カトリーヌは竹槍を構えると、初心者たちに微笑みを向けた。
「さあ、行きましょう。あなたたちは、普通のゴブリンの方をお願いね」

 ゴブリンの群れの前に飛びだしたカトリーヌは、竹槍で彼らをけん制しつつ、懐からトリリオンを取り出し、ユーベルコードを発動した。
「【傭兵雇用】」
 カトリーヌの手からトリリオンが掻き消えると同時に、バグゴブリンたちの背後に長槍と鎧で武装した大柄な男が5人現れた。彼女のユーベルコードによって召喚された傭兵、ランツクネヒトたちだ。ちなみにこの能力では、一人の傭兵を召喚するのに200G相当のトリリオンがかかる。つまり今回は1000G相当だ。いったいどこにそんな金を隠し持っていたのか、と思われるかもしれないが、NPCが見た目からは想像もつかない大金をインベントリにしまっていることなど、ゲームではお約束である。
 突然の傭兵の出現に、驚いたゴブリンたちの行動は二つに分かれた。通常のゴブリンは、一瞬で勝てないことを悟り、傭兵とカトリーヌを避けるようにして出口へと逃げ出し、そこで待ち構えていたヨシノブたちと衝突した。一方で、バグゴブリンたちは傭兵たちとの距離が近すぎて、逃げ出すことができなかった。バグゴブリンは、逃げ出したゴブリンたちに向かって舌打ちをしつつ、傭兵たちを一掃しようとアサルトライフルを構えた。
「させないわ!」
 それを予見していたカトリーヌが地面に種をまくと、彼女自慢の攻性植物が見る間に成長し、その蔦でゴブリンたちの武器を絡めとり奪い取った。丸腰になったゴブリンたちは急いで逃げ出そうとしたが、ランツクネヒトがそれを許すはずもない。
 背中から槍に貫かれたバグゴブリンたちは、情けない悲鳴を上げながら光の粒になって消滅した。
「ふう、やれやれね。これに懲りたら、初心者を侮ったらだめよ?もちろん、村娘も、ね。……さてと、向こうはどうなったかしら」
 額の汗を拭いながら、カトリーヌはヨシノブたちを心配して振り向いた。しかし、それはまったくの杞憂であった。すでにゴブリンたちを倒し終えていたヨシノブたちは、笑顔でカトリーヌに手を振ってくる。
「流石っす、カトリーヌさん!」
「こっちも終わりましたよー」
「な、何とかなりました……!」
「とはいえ、少々危なかったですがね。僕らもまだまだ精進が必要です」
 四人はそれぞれ、満足げに笑っている。カトリーヌが安堵していると、ヨシノブが場をまとめるように大きな声で言った。
「よっし、それじゃあレベルも上がったことだし、さっさとドロップ品とかを回収して帰ろうぜ!」
「さんせー」
「わ、分かりました」
「それがいいでしょうね」
「その前に、わたし、皆さんに聞いておきたいことがあるの」
 不思議そうな顔を向けてくる4人に、カトリーヌはおずおずと尋ねた。それは、NPCとして彼女がどうしても聞いておきたいことだった。
「あの、想定外のバグはあったけど……皆、今回のクエストは楽しめた?」
「「「「もちろん!」」」」
 4人の揃った声にたまらなく嬉しくなって、カトリーヌは心の底から笑顔を浮かべた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

音駆螺・鬱詐偽(サポート)
世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さん
ただいま参上。
・・・って、どうしてこんな恥ずかしいセリフを言わないといけないのよ。
うう、これも番組の為なのね。



自身の命綱である番組の為、多少の苦難や困難は仕方なく行います。
むしろ持ち前の不運によりおいしい場面を呼び込んでくれるかと思います。
ただし、ネガティブとはいえアイドルですのでマイナスイメージとなる仕事はすべて却下でお願いします。
ユーベルコードや技能はご自由に使わせてください。
どうぞ、当番組のネガティブアイドルをお役立てください。
                      プロデューサーより



「世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さん、ただいま参上。……うう、なんでゴブリンなんかと戦わないといけないのよ。私、これでもアイドルなのよ」
 音駆螺・鬱詐偽(帰ってきたネガティブアイドル・f25431)は、文句を言いながらジトっとした視線をゴブリンたちに向けた。ちなみに今回彼女が出演している番組は、「ゲームの世界に行ってみよう!ネガティブアイドル冒険譚」という何とも言えないタイトルのマイナー番組で、彼女の活躍は別世界のお茶の間で赤裸々に放送される予定だ。鬱々とした洞窟の中で、番組で決められた通りに律儀にポーズを決める姿は参上というより惨状だが、これでも彼女は真面目にやっているのである。
「だいたいなによ、あのゴブリン。なんで銃なんか持ってるのよ。卑怯じゃない!」
 アサルトライフルで武装したバグゴブリンを指さし、鬱詐偽はさらに不満を募らせる。
 とはいえ、おっしゃることはごもっともである。もっと言えば「俺たちも普通のゴブリンですけど?」という顔でしれっと群れに混ざっているのが癪に障る。
「そんなものに頼って初心者狩りなんて、バグプロトコルって結構意気地なしなのね」
 だが、鬱詐偽が迂闊に放った余計な一言が、バグゴブリンたちの逆鱗に触れた!
「イウジャネーカ、ジョウチャン!」
「オレタチガイクジナシカドウカ、ソノカラダニオモイシラセテヤルゼ!」
 激高したバグゴブリンたちが群れから飛び出してきて、鬱詐偽に対して銃口を向ける。ちなみに、通常のゴブリンたちは鬱詐偽の言っている意味がよく分からなかったため、何をするでもなくその場にとどまり、普通に初心者パーティーたちとぶつかった。結果的に、鬱詐偽はたった一言で、バグゴブリンたちを通常のゴブリンたちから引きはがすことに成功したのである。ネガティブアイドル、すごい。
「ぴゃあああああ!」
 が、銃口を向けられた当の本人はそれどころではなかった。
「ちょ、ちょっと、なんでそんなに怒ってるのよ!?怖い、怖い!蜂の巣にされちゃう!!」
 恐怖に支配された鬱詐偽は、情けなく震えながらその場に蹲った。
 おお、万事休す。ネガティブアイドル鬱詐偽の、来世での活躍にご期待ください。
 と、誰が見てもそうなる状況だったし、鬱詐偽自身も次の瞬間には自分が挽肉になっていることをこれっぽっちも疑わなかった。しかし、実際にはそうはならなかったのである。
 どこからか、狼の遠吠えが聞こえてくる。
 突如、鬱詐偽の背後に黒い靄が立ち上り、その中から狼のような姿をした影の獣バロックレギオンが飛び出し、身の毛もよだつような咆哮を上げた。鬱詐偽のユーベルコード【リアライズ・バロック】が、その恐怖心から殺戮の獣を呼び出したのである。
「ナ、ナンダァ!?コイツハ!」
 バグゴブリンたちは驚きの声を上げながら、一斉にアサルトライフルを獣に向け、射撃を開始する。
 しかし、弾丸はバロックレギオンに命中した瞬間に、その影の体に取り込まれたかのように消失した。獣はまるで何事もなかったかのように、平然とその爪と牙でゴブリンたちを引き裂いていく。
「ギ、ギャアアアアア!」
 ゴブリンたちの悲鳴がやんだころ、鬱詐偽が恐る恐る顔を上げると、バグゴブリンと恐ろしい獣は影も形もなくなっていた。代わりにそこにいたのは、通常のゴブリンたちを倒し終えた初心者パーティーたちだ。
「う、鬱詐偽さん、ありがとうございます!おかげで、クエストをクリアすることができました!」
 僧侶エマに満面の笑みでお礼を言われたが、鬱詐偽は何が起こったのかもいまいち理解していなかった。しかし、ネガティブアイドルの勘が、ここが決め時だと彼女の脳裏にささやく。
 その勘に任せてびしっとポーズを決め、鬱詐偽は自信たっぷりといった風に答えた。
「ま、まあね!これが、ネガティブアイドルの力よ!」
 おー!という初心者たちの歓声と、無邪気に向けられる笑顔にばつが悪くなりながら、鬱詐偽はせめて番組が視聴率を稼げることを祈るのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2025年04月21日


挿絵イラスト