「サイバーザナドゥにいる竜神親分『碎輝』のところに行ってほしい」
単刀直入に切り出したのはグリモア猟兵の嶺・シイナ(怪奇人間の文豪・f44464)である。……何故かちょっとげっそりしているのだが。
「|知り合いのグリモア猟兵《ばかども》がまだハロウィンとか言ったり、『無限に成長する性質の竜神、是非研究したいですね』とか言い出すから……止めるの大変だった。
あいつら、怪談とか妖怪とか好きすぎるから……はあ……」
どうやら苦労している様子である。
それはさておき。
「キャンピーくんの行方も気になるところだけど、まずは先の戦争で僕たちを手助けしてくれたひとたちの帰還を成し遂げていく。少しずつ、帰還できたひとも増えてる。はず」
何故そこで自信がないのか。
「碎輝は無限成長の影響でとんでもない強さになってる。まあ、先の戦争あたりに猟兵になった僕よりは、みんなの方が詳しかったりすると思うけど。まずはそれをこてんぱんにして成長を止めて。
これは本人申告なんだけど、戦う相手が正々堂々としている気持ちのいいやつだと、成長速度が緩やかになるみたい。だから、まあ、正義の味方とか、ヒーローとか、そんな感じで、倫理観のあるかっこいい振る舞いで戦うといいかも」
僕は無理、とシイナは瞑目する。シイナは文豪。妄念と呼べるほど、彼女の全てを支配する強烈な情念は、あまり綺麗に昇華できるものではないのだ。
「幸いにして、僕はグリモアの力を持っている。猟兵という超弩級戦力になったところで、得手不得手がなくなるわけではないし……でも、不得手なことでもこういう形で間接的に力になれるのなら、よかったのかな」
ぱらぱらと文庫本をめくりながら、そう呟くシイナ。
「碎輝の成長が止まったら、成長で得た力を発散させるのに、『|決闘ごっこ《カクリヨバトリズム》』をしてほしい。その後に行う帰還の宴共々、普段カクリヨではできないようなことがサイバーザナドゥでならできると思うから、楽しんできてほしい」
楽しむのは大事っていうのは、間違いじゃないと思うから、とシイナは述べる。
「それに、碎輝はその性質も込み込みで、カクリヨから出るなんて、なかなかない経験だと思うし……せっかくの機会で、恩返しも兼ねるなら、碎輝にも思い切り楽しんでほしいよね。
僕からは以上。みんな、よろしく」
シイナはぱたん、と本を閉じた。
九JACK
九JACKです。
今回はバトルが一章のみなので、二章三章の募集期間はかなり短めだと思います。タグとマスターページをご確認ください。
第一章は竜神親分の「碎輝」とのバトルです。かっこいい主人公みたいなプレイングにするととてもよいです。
二章は「猟兵品評会」、三章は「サイバーパンクの四季折々」です。
簡素になりますが、楽しんでください。
第1章 ボス戦
『竜神親分『碎輝』成長電流形態』
|
POW : 成長電流
【黄金竜】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【状態から次第に強くなっていく電流】を放ち続ける。
SPD : 黄金竜神
【体に雷を纏う】事で【無限に成長を続ける黄金竜の姿】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 超電竜撃滅衝
自身が装備する【槍】から【無限に成長する巨竜型の雷電】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【麻痺】の状態異常を与える。
イラスト:108
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●回想(全然本編に影響がない幕間)
白いヘビを連れた少女が、竜神親分『碎輝』の元に現れたのは、一日前のこと。
白いヘビは少女の髪から分離して現れたため、碎輝は「もしかしてこいつ、妖怪なのかな」なんて思ったりもした。着物に詰襟を合わせた格好は、新しい妖怪が着ていてもおかしくないし、カクリヨには竜神の使いとされる「ヘビの使い魔」というのも存在する。
白いヘビを従えているということは、たいそう高貴なご身分の御仁なのやもしれぬ、だなんてよぎる程度には、碎輝は呑気な思考をしていた……というか、カクリヨに帰るために奔走して、そこそこの時間が経っていたため、脳が退屈を感じていたのかもしれない。
「あの、ええと」
碎輝からの視線を受けた少女——グリモア猟兵の嶺・シイナは、思わず声を詰まらせた。緊張したというか……あまりにきらきらした目で見られるものなので、不慣れな感覚への当惑と期待を向けられる意味がわからないことへの混乱がそうさせた。
普段はグリモア猟兵として大勢に話しかけるようにしているが、シイナは実はコミュ障で、特に|一対一《タイマン》は大の苦手だった。初対面の相手は特に。
「はじめまして。僕は、猟兵」
「カクリヨの妖怪か?」
「いや……一応人間……っていうのは語弊か。怪奇人間って呼ばれてる種族で、色々あって、僕はヘビに変身したりできる……ということで、妖怪じゃ、ない」
碎輝の質問に、なるほどな、とシイナは得心する。碎輝は無限成長という特性故に、長らく封印されていたというし、先の戦争をきっかけにカクリヨから離れてからも長い。故郷の同胞かもしれない存在に、懐かしさや親しみを覚えるのは無理もないことだろう。
「あなたをカクリヨに戻せるように協力したい。……ちなみに、人間たちの暦では、もうすぐ辰年が終わる」
「うん?」
だから、と一呼吸置いて、シイナは用意していた言葉を、なるべく願いを込めて口にした。
「竜神親分のあなたが故郷に戻らぬ状態で、この年を見送るのは、嫌だから。……帰ろう」
「あはは! それもそうだな」
「……これを、言いたかっただけ。たぶん、もう一踏ん張りだから」
「ああ、よろしく頼むぜ、猟兵!」
彼は竜神。神の名を冠する。シイナは神を信じるつもりはないが……少年のように爽やかに、快活に笑う碎輝のことなら、信じてもいいのかもしれない、と少し緊張を解く。
「僕、カクリヨの妖怪だったら、もっと普通に幸せになれた?」
——口にしてみたけど、馬鹿馬鹿しいな。
今のシイナを形成するのは辛くとも、苦しくとも、今までのシイナが歩んできた寸分違いのない過去があるから。
人に歴史ありという言葉がある通り、人生は一種の|歴史《イティハーサ》なのかもしれない。
勝つ必要も、負ける必要もない。過ぎ去った事象を過ぎ去ったと受け入れ、歩を進める。それが正しい命の在り方と信じる。
「あ、シイナちゃんおかえり」
「戻られたんですね、おかえりなさい。竜神親分さんには会えましたか?」
「うん」
そう、人生とはきっと、短い過去の繰り返し。幾度回顧してもかまわない。ただ歩み出す方向は定められた「前」と決まっている。それだけ。
振り返っていい。立ち止まっていい。疲れたら休んでいい。けれどいつか、帰るんだ、あるべき場所へ。
あなたが幸せなら、あなたを受け入れてくれる人がきっと言ってくれる。あたたかな「おかえり」を。
あの竜神にも、きっとみんなが言うだろう。——その声を、一刻も早く、聞かせてあげたい。
だからシイナは|文庫本《グリモア》を開いた。
不思議媒体・『ドラゴングレン』
【アドリブ・連携OK】
【理解】!王道にして正義!
バトル!友情!真っ向勝負!正義のヒーローとライバルの頂上決戦!
テレビウムとして優れたアニメみたいなリアルの体験をここに提供いたします!
主人公のような戦いを行うに相応しいはまさに私の神アニメの|主人公《ドラゴングレン》!今回の特別な舞台で彼に戦ってもらいましょう!
赤と銀の灼熱の竜騎士と相対する電撃の黄金竜!音速の相手にも槍を構え炎の矢となって正面から斬り込んでいくことです!
「理解、理解、理解なのです!」
合成女性音声が、少し興奮を孕んだ上擦りで叫ぶ。そう叫んでいたのは不思議媒体・『ドラゴングレン』(新作アニメの宣伝者・f40745)というテレビウム。自作のアニメーション「ドラゴングレン」がやがていつか必ず神作品になると信じて、宣伝の旅を続けている、健気なテレビウムだ。
興奮しきりのテレビウムは、雷を纏い、黄金竜の姿となった碎輝にまくし立てる。
「【理解】! 王道にして正義!
バトル! 友情! 真っ向勝負! 正義のヒーローとライバルの頂上決戦!
テレビウムとして優れたアニメみたいなリアルの体験をここに提供いたします!
主人公のような戦いを行うに相応しいはまさに私の神アニメの|主人公《ドラゴングレン》! 今回の特別な舞台で彼に戦ってもらいましょう!」
「お、おう」
興奮と実況特有の早口を見て、少し圧倒される碎輝をよそに、テレビウムは【|DXドラゴングレン1/1スケール《デラックスドラゴングレン》】を顕現させる。
赤と銀をベースに仕上げられた端麗な竜騎士。要所要所に癖を詰め込んだ拘りの見られるデザインの『ドラゴングレン』は、槍にめらぁ、と炎を纏わせ、碎輝と相対する。
碎輝の纏う黄金の雷電がばちりと弾ける。『ドラゴングレン』の炎と碎輝の雷電。そのコントラストはテレビ映えし、テレビウムの|画面《かお》の中でも生き生きと映し出される。
「先制攻撃を放つのは、我らがドラゴングレン!! 炎を纏う槍を一つ払うと、碎輝に向かって思い切り、突き刺したぁ!!」
「ぬっ」
碎輝も己の雷槍で応戦。ぶつかり合う二つの槍。激突するたびに紅蓮と黄金が瞬く。
がぃん、がぃん、というリアリティーある戦闘音。ドラゴングレンの動きの精度は、戦隊ヒーローのロボットたちの動きに勝るとも劣らない。かち合う二つの槍。やりとりの狭間で、碎輝は笑みを浮かべ、その動きを洗練させていく。
もっと強く。未だ訪れぬ己の限界を目指し、越え、更なる高みへ。……それは純粋に戦闘を楽しむ行為となり、碎輝の成長曲線を緩やかなものにしていく。
だが、二人の戦い、一種武術における「舞」のような厳かさを伴ったやりとりは、激しさを纏いつつ、竜神のありあまる雷の力を散らし、無害な形に昇華される。
碎輝の成長曲線がなだらかになっていくのを目で見ることはできない。が、時折火花入り乱れ、咲き誇る様は美しく、愛おしい。
テレビウムが注いだだけの愛情で、この主人公もまた、無限成長していくのかもしれない。
「これはどうだ!!」
「まだまだ! ドラゴングレンの活躍は、ここからです!!」
|主人公《ヒーロー》たちの活躍はまだ広がったばかり。
刻んでいく。歴史に、思い出に。形として残るように。
大成功
🔵🔵🔵
ティモシー・レンツ(サポート)
基本は『ポンコツ占い師』または『本体を偽るヤドリガミ』です。
カミヤドリも魔法のカードも、「Lv依存の枚数」でしか出ません。(基本的に数え間違えて、実際より少なく宣言します)
戦闘についてはそれなりですが、戦闘以外は若干ポンコツ風味です。(本体はLv組で出せない、UCの枚数宣言や集団戦は数え間違える、UCを使わない占いは言わずもがな)
ヤドリガミの「本体が無事なら再生する」特性を忘れて、なるべく負傷を避けつつ戦います。
オブリビオンに止めを刺すためであれば、猟兵としての責任感が勝り、相討ち覚悟で突撃します。
でも負傷やフレンドファイヤ、代償は避けたいお年頃。
アラタマ・ミコト(サポート)
|荒魂鎮神命《あらたましずむるのかみのみこと》でございます。
此度は妖討伐の任を受け馳せ参じてございます。
極楽浄土より持ち帰りし法具の力を開放いたします。
活路は切り開きませたでございましょうか?
響納・リズ(サポート)
「ごきげんよう、皆様。どうぞ、よろしくお願いいたしますわ」
おしとやかな雰囲気で、敵であろうとも相手を想い、寄り添うような考えを持っています(ただし、相手が極悪人であれば、問答無用で倒します)。
基本、判定や戦いにおいてはWIZを使用し、その時の状況によって、スキルを使用します。
戦いでは、主に白薔薇の嵐を使い、救援がメインの時は回復系のUCを使用します。
自分よりも年下の子や可愛らしい動物には、保護したい意欲が高く、綺麗なモノやぬいぐるみを見ると、ついつい、そっちに向かってしまうことも。
どちらかというと、そっと陰で皆さんを支える立場を取ろうとします。
アドリブ、絡みは大歓迎で、エッチなのはNGです
城田・紗希(サポート)
基本的には考えるより行動するタイプ。
でもウィザードミサイルや斬撃の軌跡ぐらいは考える。…脳筋じゃナイデスヨ?
暗器は隠しすぎたので、UC発動時にどこから何が出てくるか、術者も把握していない。
逆恨みで怒ってる?…気のせいデスヨ。UCの逆恨みじゃアルマイシ。
ちゃんと説明は聞いてマシタヨ?(地の文と目を合わせない)
戦闘は、範囲系ユーベルコードなら集中砲火、単体攻撃なら可能な限りの連続使用。
必要に応じて、カウンターでタイミングをずらしたり、鎧破壊で次の人を有利にしておく。
……防御?なんかこう、勘で!(第六感)
耐性……は、なんか色々!(覚えてない)
「興は乗ってきたか? お前たちの力はこんなもんじゃないだろ、猟兵!!」
ヒロイックはヒロイックでも、方向性の違うヒロイックな展開だったからか、碎輝は楽しみつつも【無限成長】をなだらかにしているようで、|強敵《猟兵》との戦いを前に、口元に笑みを閃かせる。
猟兵たちを煽り、その戦意を自分に向けるため——ひいては自分を止めてもらうために、碎輝は全力を尽くす。黄金竜に変化し、【成長電流】を放った。
ぴりぴりとした静電気くらいの衝撃がもたらされる。今はまだ静電気程度で済んでいる電流だが、碎輝の放った電流は、時を経れば経るほど凶悪なものへ変化していくのだ。
「みなさん、空中戦に適したユーベルコードや技能を持つ方は碎輝様に接近して攻撃を! 雷撃耐性のある方も前に出てください。援護します!!」
高らかにそんな指示を飛ばしたのは響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)である。ユーベルコード【|戦神のご加護を《ゴッド・ブレス・ユー》】による援護のために、誰もに届くよう、声を張っていた。
具体的な指示はここまで、彼女のユーベルコードで大切なのは「共感」だ。
今回の任務の目的は、碎輝をカクリヨに帰すこと。消えたキャンピーくんの行方や、他の者たちの帰還状況など、気になることは山ほどある。だが、今は。
「碎輝様を全力で|殴る《止める》ことが、今私たちにできる最大の恩返しですわ! 臆せず、挑みましょう」
リズの言葉を受けた猟兵たちに、光のオーラによる加護がついた。
「お淑やかそうな顔で、なかなか気合いの入ったことを言うじゃないですか」
城田・紗希(人間の探索者・f01927)もまた、リズのユーベルコードの効果を受けた一人である。光のオーラを受け、身体中に力が満ちていくのを感じながら、紗希は紅時雨をすらりと抜く。選んだ理由? なんとなくだ。
が、進むには先程放たれた強さを増していく雷撃が厄介である。紗希は雷撃耐性があるから平気だが、全員が全員、耐性持ちというわけではないだろう。
それに、今回の碎輝は、そもそも既に成長が進んだ状態。成長速度が緩やかになろうと、既に強くなってしまった分は強いままだ。そもそもの雷撃が、最初から強いのである。
「回復はあらたまちゃんに任せるのです」
そう言って進み出たのは即神仏の少女、アラタマ・ミコト(極楽浄土にて俗世に塗れし即身仏・f42935)だ。口振りからするに、回復系のユーベルコードを持っているようだが……リズは何かの予感に、ミコトを止める。
「いえ、回復より、今は攻撃に専念しましょう。碎輝様は耐久や体力も上がっているはずです」
「……なるほど。ぼす戦においては地道なひーるも重要ですが、地道な攻撃によるだめーじの蓄積も大事……勝利条件がぼすの|耐久と体力《えいちぴー》を削りきることなのは常です。……では、あらたまちゃんもぼすのえいちぴーを削るのです!」
相手は黄金の|竜《どらごん》、れああいてむどろっぷも大いに期待できるのです、と何かよくわからないことを口走りながら、ミコトは神器・天叢雲剣を出現させ、【神器解放】を展開する。無限複製される剣による攻撃。無限には無限をぶつけるのが最適解というわけだ。
それなら、とちょっとぽやんとした頼りなさげな青年が前に出る。ティモシー・レンツ(ヤドリガミのポンコツ占い師・f15854)というヤドリガミは何か手があるようだった。
「竜神親分さんのユーベルコードは、僕が相殺を試みます。そうすれば、雷撃耐性がない人でも、前に出られるようになるはず」
「相殺って、簡単に言いますけど、大丈夫なんですか?」
疑うわけではないが、紗希の口からはどうしてもそんな不安が零れた。ティモシーは自信満々! ……というわけではなく、苦笑いを返す。
「できれば、打ち消したいユーベルコードを一回見ておけると、より確実かと」
「なるほど」
それなら雷撃耐性のある自分が攻撃を誘発するために前に出よう、と紗希は碎輝に向けて地面を蹴った。
碎輝はミコトの神器による攻撃を、得物である槍で弾いて対処していた。雷を纏い、身体強化もしているらしい。
多数の猟兵や範囲攻撃などを相手取りつつ、碎輝は槍から新たなユーベルコードを放つ。
【超電竜撃滅衝】により、巨竜型の雷電が降臨する。やば、と紗希は碎輝に向かって突進した。
がちん、と紅時雨が碎輝の槍の柄にぶつかった。碎輝が意表を衝かれた様子で紗希を見る。
「一人で突っ込んでくるとはやるじゃねえか。そういうの、好きだぜ!」
「でしょうね!」
闇討ちは碎輝の成長を加速させるだけで逆効果。それはわかっているから、正面から挑むしかない。碎輝の気を逸らしてユーベルコードによる被害を抑えるのが目的だから、紗希の行動は間違っていないのだ。間違っていないが……
無限成長がそこそこ進んだ状態からの開戦であったため、碎輝は見た目からして隆々としており、力強さが感じ取れる。(これ、一人で相対して大丈夫そ?)と思わず胸の内で問いかけてしまったくらいだ。
が、ええい、ままよ、と紗希は紅時雨で打ち込み続ける。受け流しや見切り、第六感を駆使して回避を。一人でトドメを刺すのは無理でも、他の猟兵が加勢できるよう、ティモシーが碎輝のユーベルコード相殺を確実に成功させられるよう、時間稼ぎと攻撃の誘発をするのが、今の紗希のミッションである。
リズが与えてくれた光のオーラで、継戦能力も高まっており、紗希は碎輝に追い縋ることができていた。
そんな紗希と打ち合う碎輝をじっと見つめ、ティモシーは呼吸を整える。使用するユーベルコード【|UDC神拳:逆位相キャンセリング《ギャクイソウニヨルソウサイ》】はタイミングも合わせた方が、より対象ユーベルコードの効果を相殺できるはず。
そうして、見ていると、碎輝の槍の穂先に、雷電が集まり始める。【超電竜撃滅衝】の予兆!
「この波長……見切った!」
麻痺状態を撒き散らす巨竜型雷電にティモシーは【|UDC神拳:逆位相キャンセリング《ギャクイソウニヨルソウサイ》】をぶつけた。
雷電が崩れ去り、碎輝は目を見開く。広範囲の麻痺付与の心配がなくなり、雷撃耐性のない猟兵も、武器を構え、突撃する。
神器解放で攻撃を続けていたミコトもダイカタナを構えて突撃してくる。
紗希も、今なら通ると信じて、【|狙いすました斬撃《キリクチハコチラ》】を放った。
多くの刃と、ユーベルコードが、碎輝に届き——
「ぐ、効いたぜ……!」
全てを受けた碎輝は、意識を失った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
第2章 冒険
『猟兵品評会』
|
POW : ボディをアピール
SPD : テクニックをアピール
WIZ : メンタルをアピール
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●こういうのもある意味バトルと言える
「ふいー……」
意識を取り戻した碎輝。猟兵たちはほっと胸を撫で下ろす。大丈夫だとわかってはいるが、やはり戦闘は力が入ってしまうので、殺ってはいけない相手の気絶は冷や冷やするのだ。
無限成長は止まったようだ、が。まだ溜まってしまった力は残っており、このままカクリヨに戻ると、カタストロフを起こしかねない。
……というのも、グリモア猟兵から既に聞いていたので、一同は碎輝と話し合い、「|決闘ごっこ《カクリヨバトリズム》」をすることに。
まあ、鬼ごっこみたいな認識だったのだが、碎輝はちょっと違う方向性のものをやってみたいらしい。
選ばれたのが「猟兵品評会」だった。
猟兵たちは碎輝を二度見する。「品評会」……人に優劣をはっきりつけるタイプのことは、遊びといえど、真っ直ぐな性根をした碎輝には似合わない気がしたが……
「要は、お互いのいいとこ見つけて褒めちぎるやつだろ? そういうのなら、いつだってやりたいぜ。お前たちは俺の帰還を手伝うのを『恩返し』っていうけどさ、それなら俺だって、カクリヨの危機を救ってくれた恩も返し足りてねえし、こうして帰還を手伝ってくれることの恩返しだってしたいぜ?」
とても純粋な善意に胸を押さえて呻く猟兵の姿も見られた。さすが、黄金竜の姿を持つ竜神。眩しすぎる。
恩返しがずっとぐるぐる巡って、終わらないように思えるが、こういう温かな感謝の循環なんて、終わらなくてもいいのだ。
「つーわけで、やろうぜ! |猟兵品評会《みんなのいいとこさがし》!!」
というわけで、「品評会」とは言うが、難しく考えず、互いの素敵なところを褒め合えばOK。もちろん、自分の自慢となる部分のPRも大歓迎。碎輝のことも褒めて、楽しい品評会にしよう。
城田・紗希(サポート)
基本的には考えるより行動するタイプ。
でもウィザードミサイルや斬撃の軌跡ぐらいは考える。…脳筋じゃナイデスヨ?
15歳ナノデ、エッチとグロは(R15的な理由で)だめです。
暗器は隠しすぎたので、UC発動時にどこから何が出てくるか、術者も把握していない。……慌てた子守りロボットじゃナイデスヨ?
UCによっては暗器サイズじゃない物が出る……ほんとに猫型ロボットじゃナイデスヨ??
UCは必須じゃないので、外しても問題ありません。
鍵開けと罠外しは日課レベル、必要ならありあわせの素材でレプリカも作る。
UCの応用で魔力探知したり、召喚存在に探索を命じたり、色々。
あまり汚れる場所には行きたくないお年頃。
料理は人並み。
ギュスターヴ・ベルトラン(サポート)
|C’est du soutien, ok.《サポートだな、了解》
一人称:オレ
二人称:相手の名前+さん呼び、敵相手の時のみ呼び捨て
口調:粗野で柄が悪い
■行動
信心深いため戦う前に【祈り】を捧げる事を忘れない
敵の主義主張は聞き、それを受けて行動する。行動原理を理解しないまま行動はしない
連携相手がいるならば相手のフォローへ、居ないなら全力で敵をシバきに行く
戦場によっては屋内でも空が飛べるタイプの魔導バイクを乗り回す
「公序良俗に反することはしてねえぞ」と言うし実際にそうするタイプ
■攻撃
主武器:リングスラッシャーと影業、魔導書
近距離攻撃が不得意なので敵とは距離を取って戦う
アドリブ連帯歓迎
「『猟兵品評会』と書いて『みんなのいいとこさがし』と読ませるあたり、さすが竜神親分さんですわー」
碎輝の快活な笑顔の眩しさに、目を細めていたのは城田・紗希(人間の探索者・f01927)であった。碎輝のこういうところが最弱でも「竜神親分」として親しまれていたり、カタストロフを起こすかもしれない存在だとしても、封印のみで留められていたり、などの対応に繋がっているのだろう。
そうしみじみしていた紗希が、ふと表情を戻すと、どういう偶然なのか、碎輝とばっちり目が合ってしまう。
「よし、最初はお前! 名前は?」
「へ!? はい、城田・紗希です!!」
咄嗟に元気よく返してしまう。お、元気がいいな、と碎輝は嬉しそうだ。
紗希は時間差で状況を理解し始めた。これは流れ的に、私が一番手になるやつだ!!
しかし、一番手というのは緊張するものだが、かなりでかいメリットがある。それは「一番手で終わってしまえば、あとは|終了《フリー》」ということだ。さくさく済ませてしまうのは、ハッキリ言って「アリ」だ。
「私のアピールポイント……? 私は、えーと、とにかく色々できます!!」
大体の猟兵が、ユーベルコードのおかげでとにかく色々できるため、会場がどっと湧く。けれど、馬鹿にするようなものではなく、緊張が解けて和んだような、温かな笑いである。
しかし、落ち込むまではいかずとも、紗希は悩んだ。改めて聞かれると、自分のいいところってなんだ?
「じゃあ、オレも行かせてもらおうか」
そう立ち上がったのは、ギュスターヴ・ベルトラン(我が信仰、依然揺るぎなく・f44004)。黒いカソックにロザリオとストラを身につけており、神を信仰しているのであろうことが伺えたが……サングラスにより、敬虔さは壊滅的な状態である。
「オレの自慢は、永劫変わることのない信心深さだな」
「だうと!!」
紗希は叫んだ。間髪入れず。叫んでしまった。
無理もないといえば無理もない。
「サングラスが!! 柄悪すぎる!!」
「それはそう」
どこかの誰かも思わず同意する。
ギュスターヴが「そんなあ!?」と嘆くが、確かに、サングラスは柄が悪いし、見た目年齢の底上げ効果もある。あとはサングラスのデザインが悪いのだと思う。たぶん、おそらく、きっと。
「サングラスは最近かけ始めたばっかなんだよ!! そのうち似合うような貫禄ある男になるんだぜ!?」
「その意気やよしだな」
ギュスターヴの|宣言《ゆめ》に、碎輝は満足げだ。
「貫禄とか似合うとか、そういう問題じゃないんだよ。サングラスというアイテムの柄の悪さで、神の使いとしての神聖さが損なわれてるんだって!」
「ぐっ……じゃあ、サングラスなくなったら文句はねえか!?」
「取ってみてよ!!」
売り言葉に買い言葉のような形になったが、紗希の言葉に、ギュスターヴはサングラスを外す。元々自身のユーベルコードの影響で目が眩むからかけ始めたもの。ユーベルコードを使っていない今なら、外してもあまり支障はあるまい。
そうして、ギュスターヴがサングラスを取る……
「!?!?!? 思ったより、ベビーフェイス……!!」
衝撃のあまり、紗希は吹き飛んだ。碎輝は「面白いやつらだなー」と猟兵たちを眺めている。
サングラスの柄の悪さからは考えられないほどの柔和で穏やかなギュスターヴの顔立ちに衝撃を覚えたのは、紗希だけではないはずだ。ギャップの破壊力は時に原子崩壊時に発生する力よりも強大である。
「顔の良さで、人は死ぬ……」
「それって褒めてるか?」
すちゃ、とサングラスをかけ直したギュスターヴが紗希に問う。「私じゃなかったら死んでたよ」と宣う紗希にすかさず「今死んでたろーが」とツッコむあたり、人と合わせるのが上手いらしいギュスターヴという男であった。
そんな二人のやりとりを楽しそうに眺めていた碎輝がまとめのように口にする。
「やっぱ、連携プレーが上手いよな。戦いもそうだけどさ。こういう日常のふとした会話のやりとりが、面白おかしくすたすた進むのって、必ずしも、誰にでもできるってわけじゃないだろ? そういうとこすげえな。紗希も、ギュスターヴも」
「あはは、親分さんってば褒め上手ですね~」
少し本気で照れつつ、紗希は冗談めかして、手をひらひらと振る。
「あなたのそういうとこ、きっとみんな大好きですよ」
と、紗希が同意を求めるよう、猟兵たちを見れば、猟兵たちはてらいのない笑顔を返した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
キノ・コバルトリュフ
マーツータケ、キノコセラピーはいかがかな?
かぐわしいキノコは香りマツタケ、味シメジ!!
美味しそうなキノコ香りはみんなを元気にさせちゃうよ!
ナメコ!?なんだか、目が血走ってるね。
キノは食べても……おいしいけど食べちゃダメだからー。
「キーノー、キーノー♪ マーツータケ♪」
何やら歌いながら前に出てきた少女がいた。その頭は文字通りの「キノコ頭」で、ゲームにでも出てきそうなキノコの傘を被っている。
愛らしいワンピースに、いい香りが漂っているような気がする杖。彼女の名はキノ・コバルトリュフ(|キノコつむり《🍄🍄🍄🍄🍄》の星霊術士・f39074)、星霊術士である。
「お、いい匂いがするな!」
「気づいた? 気づいちゃった?」
碎輝の言葉に、キノは目を輝かせ、歌うように紹介を始める。
「キノコセラピーはいかがかな?
かぐわしいキノコは香りマツタケ、味シメジ!! 美味しそうなキノコ香りはみんなを元気にさせちゃうよ! そんなキノコを提供するのが、キノのキノコセラピーだよ!」
キノコも色々あっていいよねー、傘がふっくらしたキノコ、大きく広がるキノコ、たくさん群がるキノコ、個性的で派手派手なキノコ、等々、尽きることないキノコの魅力を、キノは並べ立てていく。
聞いているうちに、さっきからしていたキノコの香りがより芳しく、強くなっているような気がして、周りのみんなはだんだんだんだん、キノコが食べたいような気持ちになってくる。
キノコの傘を頭につけたキノのことも、なんだかキラキラした感じに見えてくる。この子のこと、よく知らないけれど、なんだか既にとっても大好きなような気がするぞ?
——食べちゃいたいくらい!!
「ナメコ!? なんだか、目が血走ってるね」
ちょっと焦った様子のキノが、ゆらゆら近づいてきた猟兵たちを「ステイステイ」とする。
「キノは食べても……おいしいけど食べちゃダメだからー」
キノ・コバルトリュフ、猟兵に食われる!? ——となりかけたところで、碎輝が首を傾げる。
「香りマツタケ、味シメジ? 新し親分は『香りマイタケ、味トリュフ』って言ってた気がするぞ?」
さすが新し物好きである、とここにいない耳を触ってはいけないタイプの妖怪親分に思いを馳せる猟兵も多数いたとかいないとか。
「香りマツタケ、味シメジ! 最近は改変も多いからね。正しいのはこれだから、覚えて帰ってね!」
「おう、ありがとな!」
これぞまさしく、キノコ品評会!
……あれ? キノコの品評会だったっけ?
まあ、|碎輝《主役》が満足そうなので、無問題無問題。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『サイバーパンクの四季折々』
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POW : 四季折々の食べ物を楽しむ
SPD : 四季折々の催し物を楽しむ
WIZ : 四季折々の風景を楽しむ
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
陰日向・千明(サポート)
「いやぁ、それ、スマホでなんとかできませんかねぇ……」
◆口調
・一人称は「うち」、二人称は「あんた」、くだけた敬語をつかう
◆性質・特技
・インドア派で凝り性
・雨女
◆行動傾向
・特権階級者の車に轢かれた怨念をいだく女子高生の悪霊
・利己主義にして個人主義。その世界の秩序や慣習にとらわれない傾向にある。照れくさがってアンニュイぶるが、実は情に篤い
・神器化したスマホで霊界通信サービス「天孫(あまそん)」にさまざまな道具を注文して、あらゆる苦難を乗り越える
・地元を鎮守する竜神の力で受肉した影響か、行く先々で雨が降る
・アニメやゲームをこよなく愛し、ネットミームにも精通している
ギュスターヴ・ベルトラン(サポート)
|C’est du soutien, je comprends.《サポートだね、わかったよ》
一人称:ぼく
二人称:相手の名前+さん呼び、敵相手の時のみ呼び捨て
口調:おっとりしてる喋り方
■行動
非戦闘時は穏やかでのんびりしてる
信心深いため何らかの行動の前に【祈り】を捧げる事は忘れない
人の主義主張は聞き、それを受けて行動する。行動原理を理解しないままの行動はしない
楽しむ事は楽しみ、悲しむ時は悲しむ素直な性質
「公序良俗に反することはしないよ」と言うし実際にそうするタイプ
お菓子や甘味を好む珈琲党(ブラック派)
普段は質素倹約を心がけているので、明るく華やかなモノを見るとテンションが上がる
猫も好きだよ!
ティモシー・レンツ(サポート)
基本は『ポンコツ占い師』または『本体を偽るヤドリガミ』です。
カミヤドリも魔法のカードも、「Lv依存の枚数」でしか出ません。(基本的に数え間違えて、実際より少なく宣言します)
戦闘についてはそれなりですが、戦闘以外は若干ポンコツ風味です。(本体はLv組で出せない、UCの枚数宣言や集団戦は数え間違える、UCを使わない占いは言わずもがな)
探しものは疑似妖精(UC使用時)か占い(外れる)で頑張りますが、多くの場合は有効活用を思いつけずにマンパワーで探します。
猟兵としての体力は、可もなく不可もなく。
UCは「使用しない」描写でも問題ありません。
絵心?えっと、今日は置いてきちゃったかなー(言い訳)
●宴もたけなわ
「んー、宴か。今は冬だが、ここなら、季節感を無視したものでも、ある程度再現できるんだよな?」
という碎輝の確認と要望を元に、選ばれたのは……紅葉舞う秋祭り。
「季節感無視というには、慎ましやかな感じっすね」
ひらひらと紅葉の舞う電脳空間を見回しながらそう呟いたのは陰日向・千明(きさらぎ市の悪霊・f35116)。晴れ空を不思議そうな目で見上げている。
「どうした?」
碎輝が不思議そうで、ちょっとどこか嬉しそうな千明の様子に声をかけると、千明はすい、と振り向き、告げた。
「うち、雨女なんすよ。どこに行っても、何をしてても、何かと雨に見舞われて。風景を楽しむ系のやつって、雨でもいとをかしってことはありますけど、降ってないとこで見るのは久しぶりなんで、やっぱいいなーって」
「なるほどな。俺は季節を気にしてたが、天候も無視できるんだもんな。すげーよな」
雨に浚われない紅葉は、風の向くまま、気の向くままに、ゆらゆら、ひらひらと舞い落ちて、空を揺蕩うその様は美麗に感じられた。歌でも一句詠みたくなるくらいだ。
「それにしても、なんで紅葉にしたんすか? 祭りっていうんなら、夏祭りでもよかったでしょうし、カクリヨっぽいってんなら、桜もアリだったと思うっすけど」
「あはは、まず、夏にすると季節感狂ったまま帰ることになりそうだったし、最近の夏って滅茶苦茶暑いイメージがあるから、あんまり、な」
「あー、わかるっす……」
「桜は……まあ、あの戦争に遺恨はねえけど、宴や祝い事に使うのはまだ違うかなって。別に使ってもはいいんだろうけどさ、カクリヨに戻ってからでも桜は見られるし、時期的に今年の紅葉を見逃したのがでかい動機だな」
「紅葉、綺麗ですもんね」
近くで話を聞いていたらしいティモシー・レンツ(ヤドリガミのポンコツ占い師・f15854)が輪に加わる。その手には串を打った秋刀魚の塩焼きがある。
「秋は食べ物も色々旬を迎えて美味しいですし、景色も綺麗ですし、本当、いい季節ですよ」
「それ、美味いのか?」
「サイバーザナドゥはプリントフードがメインですけど、|電脳空間《ここ》でなら、ある程度のものの味覚再現ができるそうですよ! 人間の技術力ってすごいなあ」
他にもきのこごはんやらお団子やらがあるらしい。
「秋といえばやっぱ米だもんなあ。だんごはみたらしか?」
「はい。あと、くるみやあんこ、ごまあんもあるって言ってました!」
「よーし、食べに行こうぜ」
碎輝は千明とティモシーを伴って、だんご屋に向かう。
その途中にいた、ギュスターヴ・ベルトラン(我が信仰、依然揺るぎなく・f44004)も誘って歩いていく。
「サングラスは外したんだな」
「電脳空間だからね。光も適正な加減になっているから、必要ないんだよ」
おっとりした口調でそう語るギュスターヴは、電脳空間で再現された美しい景色や秋祭りらしい出店を見るたびに目を輝かせていた。
祭りには、食べ物以外にも魅力的な催し事が存在する。水草の据えられた水槽の中を泳ぐ小さな金魚たち。そこに紅葉がひとひら揺蕩う様は雅であった。色とりどりの水風船も鮮やかで、見ているだけで楽しい。
「秋は米の季節——ああ、収穫祭があるからね。秋に食べ物が美味しいのは、秋に獲れる作物が多いからなんだ。それは万国共通のようだね」
「食べるものや料理の文化が違うようでいて、そういうとこは同じなのか」
「そういうとこが同じだから、ハロウィンとかクリスマスとかの季節イベントも万国共通になったんでしょうね」
千明のまとめに「なるほど」という碎輝とティモシーの声が重なる。ギュスターヴはにこにこと頷いていた。
だんご屋に着き、思い思いの注文をすると、ホットドリンクのサービスもついてきた。
「んー、甘味に珈琲は最高だね!」
「だんごにブラックコーヒー……! 今時っぽい和洋折衷スタンスっすね。とはいえ、緑茶もテッパンなだけあって美味しい」
「お団子美味しい~♪」
「んまー!!」
だんごに舌鼓を打ち、祭りの様子を楽しみ、紅葉の美しさに感銘を受けながら、和やかなひとときを過ごす。
電脳空間での体験を「本物」と表現するのを憚る人物も存在するだろうが、碎輝はこういう体験もいいな、と思う。
「カクリヨに帰ったら、今度はカクリヨでここでのことを再現してみようぜ!」
そういう約束もできるから。
成功
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