ヴェーダは熾盛する炎の如く、ハイドラの影
●異形の人造竜騎
それは苔生す鋼鉄の塊であった。
だが異形である。
腕なのか、それとも首なのか。判然としないのは、装甲に生した苔のためであろう。シルエットだけ見ても、それが如何なる全体図なのかを想像させない。
しかし、だからこそ人の目を引くのかもしれない。
少なくとも桐嶋・水之江(機巧の魔女・f15226)の知的好奇心をくすぐるには充分すぎるものであった。
「あちらはシャリスさんのお知り合い?」
「あれは」
シャリス・ルミエール(聖杯の乙女・f44837)は頭を振った。
鋼鉄の人造竜騎にして異形。
「私と『アリコーン』がこの場に訪れた時には、すでにあった人造竜騎です」
「誰かが乗り捨てて行ったのかしら?」
「わかりません。ですが」
「まあ、どっちにしろ興味あるわよね。当然というか俄然というか」
「お気をつけください。その機体からは邪な気配を感じるのです」
「そう? 私には何も感じないけれど。というか、むしろ私の天災センサーがビンギンなのだけれど」
「てんさいせんさー? それがなにかはわかりませんが、『アリコーン』も警戒して近づくことをしなかったのです。それに」
シャリスは水之江を止めようとした。
だが、水之江は事、学術的な、それこそ技術的な事に関しての好奇心は人一倍であった。
好奇心は猫を殺す、とも言うが、この超天災級博士にとっては、あまり意味のない慣用句であった。
好奇心が殺すのは猫だけでしょう?
人まで殺される謂れはないもの。
そんな具合のことを水之江は言うだろうし、迫る厄災など己が振り払えばいいのだ。
天災が厄災に負ける理由がどこにある? ない。
「これはどう見ても多頭タイプの人造竜騎よね? ハイドラキャバリアってやつかしら、いわゆる」
「ハイドラキャバリア!?」
シャリスは目を見開く。
それを理解していながら何故、水之江は近づくのか彼女には理解できなかった。
ハイドラキャバリアは、まごうこと無き人造竜騎である。
搭乗者の魂が穢れる危険性を有している危険な人造竜騎として知られているのだ。本来ならば、ハイドラキャバリアを用いる騎士には多くの制約が存在する。
使用すること事態が危険なのだ。
当然のことである。
しかし、水之江は構わなかった。
危険かどうかを端から見てわかるのならば、調査も何もないのである。
「コクピットはどこかしら……っと。もしかしてこの穴?」
多頭の異形は、どこがコクピットブロックなのかわからなかった。
当然である。
多頭は上半身を構成するパーツの殆どを占めているし、下半身もまた奇妙な腕部めいたもので構成されている。
おおよそ、人造竜騎、という言葉から最もかけ離れた造形をしていると言ってもいい。
そんなハイドラキャバリアの残骸の中心部らしき部位に大穴が空いているのだ。
「ふむ。高熱での一撃ってところね。ビーム? 至近距離からの一撃よね。装甲自体は強固みたいだけれど、超高熱の熱線砲かしら?」
水之江は苔むした傷跡を指で拭って痕跡から見識を深めていく。
尋常ならざる熱線の一撃であったのだろう。
「ふーん? 逆に言えば、これだけの熱量を受けてよくもまあ、他の部位が無事だったわね。むしろ、出力を一点に絞らなければ撃ち抜けなかった、と見るべきかしら」
「あの……触らないほうが……」
「中身は、っと何もないわね」
よっこいしょ、と水之江は躊躇いなくコクピットブロックだったであろう穴へと身をくぐらせる。まるで躊躇いがないことにシャリスは目を見開く。
先程からシャリスは得体のしれない不安が己の喉元を掴んでいるように思えてならなかったのだ。
そんな穴に水之江が入り込めば、一層不安になってしまう。
「あの……?」
水之江に呼びかけても返事がない。
彼女の背中はすぐに見えなくなってしまった。
不安になってシャリスは意を決して穴を覗き込む。せめて返事をしてください、と文句を言うつもりだった。
だが、シャリスは見た。
それは深い虚。
真っ暗だとわかる穴の奥から、とてつもなく悍ましい怨念が彼女の体を押しのけるように噴出したようにおもえたのだ。
「ひっ……! こ、これは……!」
悲鳴が上がる。
後退りしてなお、それでも彼女の背筋には薄ら寒いものが走っている。
全身が警告している。
これ以上踏み込むな、と。
踏み込めば穢れるだけでは済まない、取り返しのつかないことが起こってしまうと理解できてしまうのだ。
周囲の精霊たちが騒ぎ出すのがわかる。
「――」
「え、ええ……わかっています。この人造竜騎は、起こしてはならないと……! 触れてはならないものだと……!」
冷や汗が止まらない。
喉が張り付く。
動悸が早まる。
寄る辺のない不安が己の体の中を彷徨うようであった。
「水之江様、もう、戻りましょう……水之江様――!」
●善性
人は人と。
妖精は妖精と。
百獣族は百獣族と。
同じ世界に存在していながら、交わるのは同じ種族のみ。
――などという事が長く続くわけがない。
知性を宿す生命体が同じ世界にあるのならば、当然交わる。ある種の必然であった。
生命はより善きを目指す。
交わり、己の後進に可能性を齎さんとする。
それが進化だというのならば、正しくその通りなのだろう。
より善きを目指すという願望こそが、進化を推し進めさせる。
それが神のもたらした摂理であるというのならば、人はそれを愛と呼ぶのだろう。
だが、神は語らない。
愛を語らない。
あるのは摂理のみ。
あるところに一人の人間の男がいた。
当然ながら、人間は百獣族に列せられない種族である。
一言でいうのならば脆弱そのもの。
だが、精霊の森に迷い込むこともあったのだ。
男の運命は、無論、彷徨い続け森の一部として朽ちるところにあっただろう。
だが、森深くの湖に住まう妖精は彷徨う男を哀れんだ。
それは優しさから来るものであったことだろう。
男の心細さや不安、言いようのない哀しみに妖精族の女は情を抱いたのかもしれない。
精霊の導きを与え、湖に導く。
優しさというのが、人の憂いに寄り添うものであったのならば、妖精族は誠に優しさを抱くものだったのだろう。
「なんという美しさなのだろう」
男の言葉は湖の美しさに向けられたものだったのかもしれない。
だが、違う。
男は湖の妖精に心奪われた。
美しい。
人は悪性を宿して生まれるもの。
それ故に善性の美しさに惹かれる。あのようにありたい。あのように美しく生きたい。その願いは当然であったし、また理性を上回る狂気でもあった。
故に男は真摯に言葉を紡ぐことしかできなかった。
それしか出来なかったとも言えるが、それが最大の誠意だと男は思ったのだ。
美しい妖精に捧げられるものなど何一つない。
元より人間は脆弱な存在である。
妖精族に勝るものはないのだ。そんな存在が高みにあるものに捧げられるものなど、唯の一つしかない。
「心を捧げよう。二心なく、ただ一つの心を貴女に」
その言葉に絆されなかったと言えば、嘘になる。
湖の妖精は、徐々にであるが心を開くようになる。いや、惹かれていくというのが正しいのだろう。
心惹かれたのならば、生まれるのは一つである。
即ち愛。
神はそれを愛とは呼ばない。
愛を語らぬのだから当然である。
しかし、強きものと弱きものとが交わりの果に生み出すのが愛だというのならば、正しくそれは。
「『クインリィ』――そう名付けよう」
「多く幸せが続きますように」
それは祈りにも似た願いであった。
生まれた我が子の行く末を願う親としての当然であったし、愛であった。
だが、幸せとは不幸せの地続きである。
幸せが訪れたのならば、不幸せもまた得るのが世の常である。
元より、道ならぬ交わりだったのだ。
人と妖精の間に生まれた子は、人外の美貌を持つ。
その美貌は、美しさを求める人の凶暴性を暴き諍いを生む『忌み子』そのもの。
愛は争いの火種にしかならぬ。
故に百獣族は、この火種を消さねばならぬ。
「何故、他種族が交わることを禁忌としているのか。人よ、理解せよ。未だ百獣族に列せられることを許されぬのは、汝らが脆弱だからではない。汝らの中にある凶暴性が、生まれ落ちたときより持ち得る悪性が常に善性を上回ることがないからだ。そして、妖精族との人の間に生まれたものは」
「何故だ。何故あの子が殺されなければならない。生まれたことが咎であるというのならば、貴様たちも同様であろう!」
「悪性そのものたる人間よ。その怒りこそが証明している」
「この怒りが正当ではないと!」
「道理を理解せず、感情のみで覆せると思うが故である。その怒りは正しくない」
「正しくない!? 我が子を殺されて怒らぬ親のどこに正しさがある! この怒りをも否定するのか、お前たちは!」
「然り」
力なき者の語る道理こそ、滑稽である。
突き立てられた剣。
赤く濡れる刀身。
愛は時として絶望へと魂を突き飛ばす。
運命だというのならば、受け入れられただろうか?
「これもまた定め。受け入れよ」
力持つ者の傲慢を呪う。
脆弱故に何も出来ぬ人間を呪う。
男は我が子を殺された怒りに赤髪を燃え上がらせる。
湖の妖精が愛した髪の色は、もうそこにはなかった。我が子と同じ髪色も、永遠に失われてしまった。
呪う。
呪うしかない。
人間の身として生まれた己の力の無さを呪い続ける。
生涯己を男は許せぬだろう。だが、それは同時に百獣族に対しても同様だった。
許せるわけがない。
奪われ続けて、何故押し黙らねばならぬ。
それは湖の妖精も同様だった。
涙は枯れ果てた。
尽きぬ湖が干上がるようなものだった。
「この怨み、憎しみ……忘れようとして、忘れられるものではない」
「――誓いましょう、復讐を」
そこにもはや愛はなかった。
あるのは憎しみだけだった。
愛が深ければ深いほどに絶望に叩き落される衝撃は凄まじいものである。
その深さが憎しみを色濃いものにするだろう。
魂を捧げる。
復讐こそが奪われたものに残された手段である。
果たすまで死ねない。
死ねるものではない。
「百獣族よ、これがお前たちが生み出した『怪物』だ。お前たちは唯一人として残らず『怪物』に食い殺されるのだ」
それは怨念返しであった。
永劫に続く復讐の連鎖の始まりだった。
誰が最初にいい出したことなのかわからない。判然ともしない。だが、そんなことはどうでもいいのだ。
殺された者がいて、奪われた者がいて、奪った者がいる。
その純然たる事実のみが、人の凶暴性に焚べられたのだ。燃え盛るのは道理である。
昌盛せぬ怒りなどあろうものか。
「愛しき人よ」
「私の呪いを『クインリィ』に捧げる。この人造竜騎に宿り、無念を晴らすがいい」
世界は祝福に満ちていたはずだ。
どこまでも広がる可能性があの子の前には広がっているはずだった。
その美しさは、多くの愛を得るに至るはずだった。
すべてが、そのはずだった、で締めくくられる残酷さに泉の妖精は我が身を切り裂かれる思いであった。
許されざる大罪を犯したのは、果たしてどちらが先だったのか。
そんなことは関係ない。
道理も、理屈もいらない。
あるのは感情だけだ。
身を投げる湖の妖精を人間の男は見送ることしかできなかった。
流れ落ちるは血涙。
涙はとうに枯れ果てた。
なら、その眦からこぼれ落ちるのは血潮。
ただの血潮ではない。
怒りと憎しみによって真赤に染まる髪よりも色濃き血。この血に百獣族は贖わなければならない。
生命に贖えるものは生命のみ。
「大切なものを奪われた絶望を味あわせてやる」
ならば、奪う。
奪い尽くす。
消えることのない復讐の炎は、愛しきものを失った男の胸にこそ宿る。
殺し殲す。
異形の人造竜騎は、その憎悪と呪いによって駆る者の魂を穢す。
だが、男にとって、それは心地よい痛みであった。
己を許せない。
何も守れず、何一つ成し得なかった己に成し得るものが、唯一つだけあるのだ。
それは、百獣族を滅ぼすことのみ。
殲滅。
鏖殺。
ただ一人と手残してはおけない。
「この子だけは! この子だけは……!」
悲痛なる声が聞こえる。
「お母さん、いやだ、やだぁ!!」
哀切なる声が聞こえる。
女子供たちの悲鳴は、確かに人間の凶暴性に冷水を浴びせるものであったかもしれない。
「悍ましき人造竜騎! その悪しき連鎖は此処で断ち切らせて頂く!」
振るわれる斬撃が『ハイドラ・クインリィ』の多頭の一つを寸断する。
だが、即座に再生し、一気に獣騎の体躯を締め上げる。
「ぐっ……ばかなっ! これだけの力がどこに……! に、逃げよ! 我が子らよ! 此処は――」
砕ける音とひしゃげる音が聞こえる。
絶望の声が心地よく聞こえた。
「そうだ。力がないから奪われる。力なく、全てを奪われる絶望を魂に刻め、百獣族!!」
「させはせぬ! 斯様な暴虐、許されるものか!」
「赦す赦さないではない。果たすか、果たさないか。ただそれだけだ!!」
何度、首を落とされようとも再生し続ける。
その姿はまさに悪鬼羅刹の如く。
復讐だけが身を駆り立てる。
己と同じ絶望を、己と同じ哀しみを、全ての百獣族に与えなければならない。
そうでなければ、失われた者たちが報われない。
そうだ。
己は、失われてしまったものを追い求めているのだ。そして、それはもう二度と己の手の内には戻らないものだ。
だからこそ。
「お前たちは滅ぼす。たとえ、魂魄が回帰してこの世界に戻るのだとしても、赦されぬ大罪を犯したのは、他ならぬお前たちだ……!!」
怒りばかりが心を支配していく。
どこまでも、どこまでも追い立てる。
殺し殲す。
それだけのために、百日、何年に及ぶ虐殺が続いたのかはわからない。
時の流れなど男にとってはどうでもいいことだった。
気がついたときには、もうどこにも百獣族はいなかった。
悔いることもない。
あるのはただの虚しさだけだった。
眼の前に広がる美しい湖も、己のぽっかりと空いた胸の虚を埋めてはくれなかった。
そこには、あの日見た美しい湖の妖精の姿はない。
共に生きたいと思ったあの日の願いも失われてしまった。
神の語らぬところの愛すらも、もはや男にとっては虚実でしかない。
「……一体、なんのために生まれてきたのだろうな。もはや、百獣族はどこにもいない。なら、この復讐は」
終わったというのだろうか。
「ひどく、疲れた……何もしたくない。何も目にしたくない。何も聞きたくない。何も、感じたくない」
ぐるり、と『ハイドラ・クインリィ』の首の一つがもたげ、コクピットブロックに口付けるようにして押し付けられる。
眼の前に広がる炎熱の輝き。
装甲を撃ち抜くには、出力を最大まで引き上げて一点で破壊せねばならない。
できるだけ傷をつけたくない。
この駆体は、愛する者の血と肉と魂を持って完成したものだから。
男は、躊躇いなく炎熱の中に消える。
憎しみと哀しみごと――。
●悪性
「なんだかよくわかんないわね。結局、コクピットブロックだけ丸ごと焼き切られているし」
水之江は穿たれた穴の奥がただ撃ち抜かれているだけだということを知って、がっかりしたようだった。
彼女は穴から戻り、シャリスが青ざめているのを認め首を傾げる。
「どうしたの、シャリスちゃん。顔面蒼白でお化けでも見たような顔をしちゃって」
「み、水之江様は、大丈夫なのですか?」
「なにが?」
ピンピンしているけれど、と年齢にそぐわぬ瑞々しい体を示すように水之江は両手を広げる。
「ん? これ、何かしら? 読める?」
「『クインリィ』に……捧げる……?」
シャリスは、更に喉元からせり上がる物を感じただろう。
言いようのない哀しみや、怨み、憎しみ。
そうしたものが一気に己の臓腑から駆け上がってくるようだった。
口元を抑え、シャリスは水之江に背を向ける。
抑えなければ、湧き上がる感情に胃の内包物をぶちまけてしまいそうだった。
そんなシャリスのもとに水之江が穴から這い上がって、見下ろす。
「どうしたのかしら? それにしても『クインリィ』……じゃあ、ハイドラキャバリアだから、『ハイドラ・クインリィ』ね」
うん、と水之江は一つ呟いてユーベルコードにその瞳を輝かせた。
瞬間、苔生すハイドラキャバリアの姿が消える。
そう、彼女のユーベルコードによって照射された光が、人造竜騎の駆体を回収したのだ。
「……な、何してるんですか!?」
「何って、廃品回収よ。リサイクルしてあげようと思って」
元より、似たようなものでしょ、と『アリコーン』のこと言っているのだとシャリスは理解して憤慨する。
「な、なんてことを! いけません! あんなの普通じゃない……!」
「普通じゃないって苔むしてるから? 汚れなんて落とせばいいじゃない」
「そういことじゃあないです! あれはなにかとてつもなく恐ろしい想いがこもった人造竜騎で……! 見てください、精霊たちも脅えています!」
「私には見えないし、わからないんだけど」
「それでもです!」
キンキンと喚く声に水之江は顔をしかめる。
彼女の言うところが本当だったのだとして、なおさらではないかと思ったのだ。
「私が回収するべきね」
「なんでですか!?」
「そんな怪しいものを放置していたら大変でしょう?」
「主がいるかも知れませんよ?」
シャリスは水之江に一欠の情を期待したが、するだけ無駄である。
「苔生す位の間打ち捨てられてた人造竜騎に? UDCアースでも落とし物の保持期間は半年くらいでしょ」
「だからといって勝手に持ち帰ってしまうのは!」
騎士道精神に反する!
だが、水之江はそれこそ鼻で笑う。
「私、騎士じゃないもの」
「そ、そんな……」
「いえーい、これで私も人造竜騎をゲット。修理は大変かもしれないけれど、技術体系を知るには良い機会でしょ。むしろ、だからこそ挑戦する価値があるというものよ!」
水之江は上機嫌であった。
新しい技術を知ることは楽しいことであるし、それを吸収すれば、もしやもすれば新たな商機が生まれるかも知れない。
そんな水之江にシャリスアは嫌な予感を覚える。
いや、それだけではない。
「精霊たちが……静まり返っている」
不気味なほどに。
それはあるべきところに収まっていたものが、再び動き出したということに、恐れを成すかのようであった――。
●巡る
『それ』は待っていた。
いや、眠っていたというのが正しいのだろう。
怒りと憎しみと怨み、そして哀しみの連鎖は、奪うものと奪われるものとがいなくなれば断ち切られるものである――というのならば、それはあまりにも楽観がすぎるものである。
消えない。
そう、決して憎悪と怨念は消えない。
断ち切られない。
どれだけ人が強き意志と悔恨でもって贖罪の騎士道で律するのだとしても。
純然たる過去がある。
それは過去より現れる。
赤き獣騎がそうであったように。
一度目は微睡むように。
そして、此度は二度目。
ならば、もはや彷徨う者はもうどこにも居ない。
自らを目覚めさせることのできる者がいる。
終わったはずの復讐は、嘗て奪ったものが、奪われる者に回った後にこそ目覚める。
生命に贖えるのは、生命だけ。
そして、奪われた者は奪い返すために蘇る。
そこに正当性があるのだとしても、関係などない。
滅ぼす。
例え、死んでも滅ぼす。
今ににじみ出るのならば、過去の化身であろうと滅ぼす。
再燃する復讐は、やはり怨念の連鎖など断ち切れぬのだということを証明するように赤く昌盛するのだった――。
成功
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