死神は『食』を調査する
「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「十二剣神『聖賢者トリスメギストス』が、ケルベロスディバイドの地球に配下を潜入させています」
デウスエクスの中には何らかの手段で比較的人類に近い外見を獲得可能な者や、そもそも元から人類そっくりの外見を持つ者が存在する。そうした人類への擬態能力を持つ配下を、トリスメギストスは人類社会に紛れ込ませ、次なる侵略の布石にしようとしていることが予知されたのだ。
「聖賢者トリスメギストスが送り込んだデウスエクスの名は『フィノーラ』。鎌で命を刈り取り、死者を一時的に蘇らせて使役する事ができます」
死神の如き能力を持つデウスエクスだが、見た目はほとんど人間の少女と変わりないため、現在は正体を隠して地球人になりすましている。どうやら彼女はトリスメギストスから、人類社会についての何らかのデータ収集を行うように命令を受けているようだ。
「そのデータ収集対象というのが、地球人の『食事』に関する事のようで、彼女は自分が潜伏している地域の飲食店やご当地グルメフェアなどによく姿を見せます」
不老不死の存在であるデウスエクスがなぜ人間の食事に興味を持ったのかは分からないが、トリスメギストスには考えがあるのだろう。彼の元に人類社会にまつわるデータが大量に献上されれば、いずれそれを利用した更に大規模な侵略作戦が展開されることは想像に難くない。
「フィノーラはデータ収集が完了次第、用済みになった人間達からグラビティ・チェインを奪って……つまり殺害して撤収するようにとも命令を受けています。それまでに彼女を発見・討伐しなくてはなりません」
人間社会の中で集団生活を送れるほど巧妙に潜伏しているフィノーラだが、猟兵の目から見れば「隠しきれない違和感」が何かしらあるため、判別は難しくない。とは言え周囲に多数の人間がいる状況でそれを晒し上げれば、最悪の場合敵がその場で無差別殺戮を始めようとすることも危惧される。
「まずはこちらの疑いの目を悟られないように、さりげなく目標をマークしつつ、日常を過ごしてください」
フィノーラは先述した通り人間の「食事」を調査しており、ちょうど現地ではグルメフェアが開催されているそうだ。地元のブランド肉や野菜をふんだんに使ったご当地料理の数々が振る舞われるそうなので、猟兵もここに参加すれば目標を発見できる可能性は高い。
「マークを続けていれば、フィノーラを群衆から引き離し、戦闘に持ち込むチャンスの糸口を掴めるはずです」
たまたま人気の少ない所に行ったタイミングなどを利用して、敵の誘導または一般人の避難を行い、人々に危害が及ばない形での戦闘に持ち込むのが作戦の第二段階だ。直接ぶつかるのもアリだが、データ収集という敵の目的を逆手に取れば、ギリギリまで荒事にならずに誘導できるかもしれない。
「こちらが|決戦配備《ポジション》の支援を受けられる、決戦都市の戦闘区域まで誘導するのが理想的です。データ収集のために潜伏していたとはいえ、目標の戦闘能力は低くありません」
擬態を解いて本気になったフィノーラの実力は、単独で猟兵たちと十分に渡り合えるレベル。冥府から死者を蘇らせる能力を駆使して、ネクロマンサーのように配下を召喚することもできる。追い詰めたと思って油断して、最後の最後で取り逃がさないよう注意されたい。
「人に紛れたデウスエクスを排除し、将来の禍根を断つために、皆様の力をお貸しください」
説明を終えたリミティアは手のひらにグリモアを浮かべ、ケルベロスディバイドの地方都市へと猟兵を送り出す。
聖賢者トリスメギストスの指揮のもと、新たな動きを見せ始めたデウスエクス。密やかに社会に潜伏する陰謀を、阻止することはできるのか。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
今回のシナリオはケルベロスディバイドにて、人間に擬態して社会に紛れ込んだデウスエクスを発見・討伐する依頼です。
1章は地方のグルメフェアに参加し、潜伏中のデウスエクスを捜索します。
こちらの捜索にデウスエクス側が気付くと、データ収集を切り上げてでも無差別殺戮を実行する恐れがあるので、目標を発見しても刺激しないよう、こちらも食事を楽しむふりをしつつマークを続けてください。
2章では目標を一般人から引き離し、戦闘に持ち込むためのチャンスが訪れます。
人気のない場所に移動するタイミングを利用して戦闘可能な場所まで追い立てる、または『食』のデータ収集という目的を利用して誘導する、一般人を避難させるなどの方法が考えられます。
誘導が上手くいけば、3章はデウスエクス『フィノーラ』との決戦です。
データ収集のために人間のフリをしてきましたが、本来戦闘力の低いデウスエクスではありません。ここで取り逃がせば再び別の地方に潜伏されるか、データを持ち帰られてしまうので、確実に撃破してください。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 日常
『ご当地うまいもの広場』
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POW : どんどん出てくる料理を沢山食べる
SPD : 地元ならではの珍味に挑戦する
WIZ : 料理の作り方を教えてもらう
イラスト:del
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
儀水・芽亜
『食』は定命の者の生命を繋ぐもの。“聖賢者”はそこに何かを見たのかもしれませんね。
ともあれ、デウスエクスの跳梁を放ってはおけません。
ご当地フェアの会場に行けばおのずと目標に出会えると。人混みに紛れ、「瞬間思考力」を駆使して軽く「偵察」したところ、彼女がそうですね。
「逃亡阻止」を意識しながら、私も「落ち着き」をもってご当地フェアを楽しみましょう。出来れば、私の「審美眼」を満たしてくださいね。
フィノーラが注意を向けている出店はどんなものでしょうか? 何かの共通点があるのでしょうか? それが分かれば、後刻の誘い出しに使えるかもしれません。しっかり覚えておきましょう。
戦いの前、食欲は湧かないですね。
「『食』は定命の者の生命を繋ぐもの。“聖賢者”はそこに何かを見たのかもしれませんね」
グラビティ・チェインさえあればいいデウスエクスと違って、人間は生きるために様々なものを必要とする。配下のデータ収集を通じて地球人の『食』を学んだ十二剣神が、どのような作戦を立てるのか。儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『|夢可有郷《ザナドゥ》』・f35644)も危機感を抱かずにはいられない。
「ともあれ、デウスエクスの跳梁を放ってはおけません」
ケルベロスやDIVIDEの目をすり抜けて、デウスエクスが人間社会に紛れ込んでいるというだけでも一大事だ。向こうが大々的な行動に移る前に発見すべく、芽亜はとある地方都市のご当地グルメフェアを訪れた。グリモアの予知によれば、死神『フィノーラ』はこの近辺に潜伏している。
(ここに行けばおのずと目標に出会えると)
人混みに紛れ、瞬間思考力を駆使して軽く偵察したところ、群衆の中からある人物が芽亜の目に留まる。澄んだ碧い瞳に白い髪、外国からの旅行者か留学生かと思わせる風貌の少女だ。一見しておかしな振る舞いはしていないが、猟兵の観察眼は誤魔化せない。
(彼女がそうですね)
細々とした所作や気配からくる微かな違和感から、あの少女こそが潜伏中のデウスエクスだと確信すれば、ひとまず遠巻きに対象を監視する。ここで慌てて接触や攻撃を試みれば市民が巻き添えになる。逃亡阻止を意識しながら、芽亜は落ち着きをもってご当地フェアを楽しむことにした。
(出来れば、私の審美眼を満たしてくださいね)
五感の何れかで常にターゲットを追えるようにしつつ、視線はフェアに出店された屋台を追う。ご当地のアピールも兼ねたこの催しでは、食材から現地のものに拘った郷土料理や、いわゆるB級グルメまで様々な料理が提供されている。芽亜のお眼鏡にかなう品もきっとあるだろう。
(フィノーラが注意を向けている出店はどんなものでしょうか? 何かの共通点があるのでしょうか?)
それが分かれば、後刻の誘い出しに使えるかもしれない。たとえ無作為に食べ歩きを楽しんでいるように見えても、標的が通った店や注文した料理の内容はしっかり覚えておく。今のところ怪しい動きを見せておらず、逆にそれが不気味なくらいだが――気を抜くわけにはいかない。
(戦いの前、食欲は湧かないですね)
自分も気になった料理を頼んで口に運んでみるが、この状況では流石にじっくりと味わう余裕はない。せっかくなら別の機会で訪れたかったと思いつつ、芽亜はデウスエクスの監視を続ける。ひとたび好機が訪れれば、すぐさま次の行動に移れるように。
大成功
🔵🔵🔵
イルミナ・フィロシェット
聖賢者などと名乗るからには、我々では及びもつかぬ遠大な企みを考えていてもおかしくはありません。
初めての任務とはなりますが、確とかの剣神の企みは挫きましょうとも。
ということにて件のグルメフェア会場へ。
街暮らしも長くなりましたが、それでも初めて見る食材や料理が多数。
持ち歩けるものを中心に色々買い求め、食していきましょう。
…どれも美味しいですね。もうちょっと頂きたいかもです…。
勿論任務遂行も抜かりなく。
次に食べるものを探す風を装って辺りを見回し、人々の動きを確認。
不審な動き…何かを観察するような挙動などを見せる存在があれば、それとなく監視しておくと致しましょう。
…今はまだ、仕掛ける時ではありません。
「聖賢者などと名乗るからには、我々では及びもつかぬ遠大な企みを考えていてもおかしくはありません」
デウスエクスが地球に襲来してから二十年以上が経過したが、人類はいまだ敵の動向や計画を把握しきれていない。
みすみす敵のトップに地球の情報を与え、新たな作戦を練らせるリスクを、イルミナ・フィロシェット(嘆きの泉・f44587)は正しく理解していた。
「初めての任務とはなりますが、確とかの剣神の企みは挫きましょうとも」
この星の守護者――ケルベロスとしての使命を胸に、彼女が向かったのは件のグルメフェア会場。『聖賢者トリスメギストス』が派遣したデウスエクスは、ここで地球人の『食』についてデータ収集を行っているらしい。現地に来ればなるほど、彼女の目からも気になる食品が沢山ある。
(街暮らしも長くなりましたが、それでも初めて見る食材や料理が多数ですね)
町興しを目的に開催されたグルメフェアでは、他所にはないご当地ならではの「うまいもの」が振る舞われている。
イルミナは持ち歩けるものを気になったものを中心に色々買い求め、食していく。森深き修道院で生まれ育った彼女にとっては、物珍しい料理ばかりだろう。
「……どれも美味しいですね。もうちょっと頂きたいかもです……」
「まいど!」「遠慮しないで食べてってよ!」
穏やかな微笑で、美味しそうに舌鼓を打ってくれるシャドウエルフのシスターに、地元の人々も好意的だ。あれこれとサービスもしてもらい、また来てよと声をかけられる。料理だけでなく人の心の温かさにも触れながら、イルミナは楽しい気持ちで会場を巡る。
「あちらの屋台も気になりますね……」
勿論、任務遂行も抜かりはない。次に食べるものを探す風を装いつつ、イルミナは辺りを見回して人々の動きを確認する。今回のターゲットであるデウスエクスは人間によく似た姿で社会に潜伏しているというが、まだ経験は浅いとはいえ、番犬の目は欺けない。
(……見つけました)
人混みに紛れて不審な動き――何かを観察するような挙動などを見せる存在を補足し、イルミナの視線が鋭くなる。
白い髪に白い衣装。やや目立つ容姿を除けば人間の少女のようだが、その挙動の節々にある違和感を彼女ははっきりと感じていた。
(……今はまだ、仕掛ける時ではありません)
デウスエクスの少女は今もデータ収集中なのか、朗らかな笑みを浮かべてグルメフェアを満喫しているかに見える。
ここで公然と正体を暴き立てられれば、彼女は任務遂行のために強硬手段を取るだろう。無関係な一般市民を戦闘に巻き込まないために、イルミナはそれとなくターゲットの監視を続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
摩津崎・灰闢
宙から侵略されているとは大変な世界ですね
侵略者の発見と目論見の阻止、承りました
敵に悟られないよう行動すべく
ラフな装いで向かいます
私も食への欲は強くないのですが
味を楽しむ事は出来るので何でも頂きますよ
積極的な呼び込みのある店に足を向け
料理名を見るに、そういうご当地怪人かヒーローが居そうですね
…いえ、何でもありません。ひとつ頂きます
笑顔で購入
ベンチに座り食事をしつつ、賑わいを眺めて標的探し
猟兵ならば違和感に気付けるとの事、
僅かでも殺気を抱いているなら簡単ではあるのですが…
何かしら妙な人物が居ればUCを用いて視る
…ああ、見つけました
引き続き他の料理を楽しみながら、
気取られないようマークを続けましょう
「宙から侵略されているとは大変な世界ですね」
地球に満ちるグラビティ・チェインを求めて、宇宙から侵略する不死の生命体「デウスエクス」。オブリビオンとは異なる脅威に晒されたこの世界について、摩津崎・灰闢(済度無相・f43898)は率直な感想を口にした。戦う相手が違っても、猟兵の力が求められているのは変わらないようだ。
「侵略者の発見と目論見の阻止、承りました」
命儚き者を守るのは当然の事。常日頃よりそう嘯く彼は潜伏中のデウスエクスを発見すべく、今回の任務に加わる。
まずは敵に悟られないよう行動すべく、ラフな装いで地方のグルメフェアへ。聖賢者に『食』のデータ収集を命じられた配下が調査を行うには、もってこいの場所だ。
「らっしゃい、らっしゃい! うちの串焼きは美味いよー!」
「ふむ。自信がおありのようで」
大勢の観光客や現地民で賑わうフェス会場は、どこもいい匂いで満ちている。積極的な呼び込みのある店に足を向けてみると、派手なのれんに「ふるさとの"おいしい"を守るぞ! クシヤッキン!」とキャッチコピーが踊っている。
「料理名を見るに、そういうご当地怪人かヒーローが居そうですね」
「うん? なんだって?」
「……いえ、何でもありません。ひとつ頂きます」
灰闢の故郷にはかつて、ご当地パワーを操る怪人やヒーローが、世界の命運をかけて戦っていた。サイキックハーツ大戦の終結により、怪人のほうは絶滅してしまったのだが。当時の事を思い出しつつ、彼は笑顔で串焼きを購入する。
(私も食への欲は強くないのですが、味を楽しむ事は出来るので何でも頂きますよ)
空いている広場のベンチに座り、買ったばかりの料理を食べる灰闢。その所作におかしな点はないが、本来これは彼にとって必要ない行為である。彼の正体はダークネス「六六六人衆」――かつて人類を支配していた闇の種族の一角。殺戮衝動を抱えた生粋の殺人鬼である。
「うん、美味しいですね。このタレが絶妙です」
のんびり食事を楽しみながらフェスの賑わいを眺めているようでいて、彼の目は先程からずっと標的を探している。
今回のターゲットは外見上は人間とほぼ見分けがつかないとのこと。これだけの人混みに紛れられれば、普通に見つけるのは難しいだろうが――。
(猟兵ならば違和感に気付けるとの事、僅かでも殺気を抱いているなら簡単ではあるのですが……)
何かしら妙な人物が居れば【見性看破】を用いて視るつもりだった灰闢。だが、狡い手段に頼るまでもなく、それはすぐに分かった。平和な食の祭典には似つかわしくない"死"の気配をまとった者。凡人の群れはごまかせても、六六六人衆の嗅覚は欺けない。
「……ああ、見つけました」
本性を隠してにこやかに笑い、必須でもない食事を味わうふりをする、少女の姿をした人外。自分の同類を見つけた灰闢は引き続き他の料理を楽しみながら、気取られないようマークを続ける。まだ仕掛けるつもりはないが、いつでも殺し合いに移行できるほどの自然体で――。
大成功
🔵🔵🔵
アンジェリカ・ディマンシュ
さて、聖賢者ですか……戦闘力だけではなく、戦略性を重んじる異端のデウスエクス
ならば、その視点を不明瞭にしてみましょうか
安定制御した暴走状態……デウスエクス化し、見た目は地球人のままオラトリオとダモクレスを複合した存在となった後、フィノーラらしき人影を遠くから横目で観察しながらブランド肉のケバブを食べ進めていきますわ
後はトルティーヤにジュース、シュラスコ等もいいかもしれませんわね
そうしてオラトリオとダモクレスの力を複合させて作った未来予測機能のあるスマホを用いて遠くから距離を取ってフィノーラを追跡しますわ
「さて、聖賢者ですか……戦闘力だけではなく、戦略性を重んじる異端のデウスエクス」
十二剣神はそれぞれが独自の戦略性をもって地球侵略を企てているが、その中でも『聖賢者トリスメギストス』には特異なものをアンジェリカ・ディマンシュ(ケルベロスブレイド命名者・f40793)は感じていた。彼の計画に正確な情報が足されれば、地球の危機はより深刻なものとなりうる。
「ならば、その視点を不明瞭にしてみましょうか」
彼女は自らを安定制御した暴走状態――矛盾を矛盾のまま実現することでデウスエクス化し、見た目は地球人のままオラトリオとダモクレスを複合した存在となった後、グルメフェスに紛れたデウスエクス『フィノーラ』らしき人影を遠くから横目で観察する。
(現状はあちらも情報収集に専念しているようですね)
目標が怪しい動きを見せれば即対応できるよう警戒しつつ、アンジェリカはブランド肉のケバブを食べ進めていく。
ご当地のうまいものを集めたフェスということで、広場に出店されている料理はどれもレベルが高い。任務でなければ普通に楽しんでいたところだ。
(後はトルティーヤにジュース、シュラスコ等もいいかもしれませんわね)
気になったものを適当に購入し、グルメフェスを満喫しているように見えるアンジェリカだが、もちろん調査は怠っていない。ケバブを持つほうとは反対の手に握られた彼女のスマートフォンは、画面上にターゲットの位置情報及び移動経路予測を表示していた。
(歯車は翼を広げ、時空の調律者にして存在しない魂を駆動させる進化の剣となる。つまりは、我は神の戦車として進撃する番犬である)
【翼は歯車仕掛けとなり戦車となる】により発現したアンジェリカの独自技能「クロックワーク・メルカバー」は、オラトリオとダモクレスというデウスエクス二種族の力を複合させたもの、その技術で開発されたスマホには未来予測機能が搭載されている。これがあれば直接視認できない遠くからでも目標の追跡は可能だ。
「さて、そろそろ動き出す頃合いでしょうか」
シュラスコをもぐもぐと口に運びつつ、距離を取ったままフィノーラの動向を追う、異世界のケルベロス。どんなに人間に似た姿だろうと、巧妙に社会に紛れ込んでも、数多のデウスエクスと戦ってきた彼女の目はごまかせない――。
大成功
🔵🔵🔵
日下部・香
地球に十二剣神の配下が潜んでるって、かなり危険だな。被害を出さないよう頑張らないと。
なぜこちらの食事のデータを集めようとしているのかはわからないけど……。
ウィッグとカラコンとメイクで【変装】してグルメフェアに参加しよう。私がケルベロスだって向こうに知られてたら、警戒させるかもしれないしな。別人に成りすましておいた方が無難だろう。一般人に見えるよう、歩き方とかも変えておこう(【普通を装う】【無防備を装う】)
会場では歩き回って目標のデウスエクスを探したい。怪しまれないよう、料理をいただきながらグルメフェアを楽しんでいる感じで行動するよ。
対象を見つけたら、付かず離れずでマークしつつ機をうかがおう。
「地球に十二剣神の配下が潜んでるって、かなり危険だな。被害を出さないよう頑張らないと」
今回のデウスエクスの任務がデータ収集だとしても、その気になればいつでも大量殺戮が可能であることには変わらない。事態の緊急性を理解した日下部・香(断裂の番犬・f40865)は、すぐさま予知で伝えられた地方都市に向かう。
「なぜこちらの食事のデータを集めようとしているのかはわからないけど……」
グラビティ・チェインで生存するデウスエクスには、通常の食事は必要ないはず。あえて地球人の「食」を調査するのには、こちらの知らない理由がありそうだが――今はそこまで調べている余裕はない。データ収集そのものを阻止するのが先決だ。
(私がケルベロスだって向こうに知られてたら、警戒させるかもしれないしな)
ここでは別人に成りすましておいたほうが無難だろうと、香はウィッグとカラコンとメイクで変装してグルメフェアに参加する。あくまで遊びに来たように無防備を装えば、どこにでもいる普通の女子高校生にしか見えない。これならデウスエクスも気付かないだろう。
「これ、おいしそうだな。ひとつ貰うよ」
「まいどあり!」
彼女はグルメフェアの会場を歩き回り、適当な出店で料理をいただきながら目標のデウスエクスを探す。怪しまれないようにフェアを楽しんでいる様子を見せているが、目線はそれとなく周囲に気を配っている。これだけ大勢の人々でごった返している中、たった一人のターゲットを探すのは容易ではないが――。
(……いた。あいつだ)
香が目を留めたのは、屋台で串焼き肉を買っている白いドレスの少女だった。やや人目をひく容姿ではあるものの、取り立てて妙なところはない普通の人間に見える。だがケルベロスとして培ってきた経験と直感が、彼女の素振りから微かな違和感を捉えたのだ。
(ここで仕掛けるのはまずいか。せめてもう少し人の少ない場所でないと)
対象を見つけても香はすぐには仕掛けず、付かず離れずでマークしつつ機を窺う。何も知らずにフェアを満喫している一般市民を、こちらの戦いに巻き込むわけにはいかない。練達の螺旋忍者にとっては目標の尾行もお手の物であり、白きデウスエクスはいまだ追われていることに気付かぬまま、食のデータ収集に勤しんでいた――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『決戦都市へ誘導せよ!』
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POW : 直接当たって砕けろ! 物理的に進行方向を変えたり、直接攻撃を加えておびき寄せたりします
SPD : 当たらなければどうということはない! うろちょろして囮に成ったり、敵の攻撃を避け続けておびき寄せます
WIZ : ここはスマートに行きましょう! 交渉を持ちかけて誘導したり、欺瞞工作で敵をおびき寄せます
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「ああ、おいしかった♪ "おいしい"って、こういうことなのね」
聖賢者トリスメギストスの指令により、人間社会に潜伏中のデウスエクス『フィノーラ』。
彼女は地球の「食」についてのデータを集めるため、地球人が「おいしい」と言うものが集まる場所を訪れ、食べ歩きという名の実地調査を行っている最中だった。
「さて、次はなにを食べようかしら?」
グルメフェアの料理はあらかた巡り終えたのか、フィノーラは調査対象を他所の店舗にまで広げようとしていた。
フェアの会場から出れば人通りも幾らか少なくなる。これまで監視を続けてきた猟兵たちにとっては、ようやく待ち望んだチャンスの到来だ。
ここから決戦都市の|決戦配備《ポジション》支援を受けられる場所までフィノーラを誘導し、戦闘に持ち込むのが理想だろう。
力ずくで追い立てるか、言葉巧みに誘導するか。様々な手段が考えられるが、一般市民への被害は避けたいところ。ターゲットの誘導よりも市民の避難誘導に回るのもひとつの手だろう。
いずれにせよ、ここでターゲットにデータを持ったまま逃げられる訳にはいかない。
チャンスの糸口を掴み取るべく、猟兵は直ちに行動を開始した。
儀水・芽亜
まずは戦闘場所として、近場の公園を確保しておきましょう。後から人が入ってこないよう、「結界術」で人払い。
さて、「コミュ力」「ブームの仕掛け人」で、目標と接触しましょう。
こんにちは、ご当地グルメフェアの来場者の方ですね。実はこの近辺の地元の味を、商店街で集まって屋台で出している公園があるんです。
熱心にご当地フェアを巡っておられた方にだけお声かけしています。いかがですか、この地に眠る、知られざる味にご興味はありませんか?
揚げたての唐揚げをのせた唐揚げカレーに、磯の香り立ち上るのり塩ラーメン、他にもまだまだありますよ。
お腹が許すのであれば、ぜひお越しください。こちら、ここから現地までの地図です。
「まずは戦闘場所を確保しておきましょう」
猟兵とデウスエクスが戦っても問題ない場所として、近場の公園に目をつけた芽亜は、後から人が入ってこないよう結界術で人払いを行う。見えない帳に覆われた公園からは人通りが消え、一般人は無意識にここを避けるようになる。
「さて、目標と接触しましょう」
準備が整ったところで改めて、彼女はデウスエクス『フィノーラ』と接触を図る。もちろん自分が猟兵であることは伏せて、話術と交渉で相手をここまで誘導するつもりだ。彼女のコミュ力とブームの仕掛け人としての才能があれば、不可能な事ではない。
「こんにちは、ご当地グルメフェアの来場者の方ですね」
「ええ、そうだけど。あなたは?」
話しかけられると、フィノーラは柔らかな微笑で応じる。表情から仕草まで人間そっくりで、これが元々の素なのか潜入任務のための演技なのかは分からない。こちらも不審に思われないように気をつけて、芽亜もまた笑顔で一般人を装う。
「実はこの近辺の地元の味を、商店街で集まって屋台で出している公園があるんです」
「まあ、ほんとう?」
もちろん実際にはそのような屋台はない。だが地球人の『食』のデータ収集を命じられたフィノーラには見過ごせない情報だろう。芽亜はこのイベントの運営スタッフであると名乗り、巧みな話術で相手の興味を引きつけようとする。
「熱心にご当地フェアを巡っておられた方にだけお声かけしています。いかがですか、この地に眠る、知られざる味にご興味はありませんか?」
「知られざる味……例えばどんなものがあるの?」
デウスエクスにも「あなただけに~」とか「知られざる~」といったセールストークの常套句は効果があるらしい。
ぐっと興味を惹かれたフィノーラは、もっと詳しい話を聞こうとする。こうなればあとはもう芽亜の思いのままだ。
「揚げたての唐揚げをのせた唐揚げカレーに、磯の香り立ち上るのり塩ラーメン、他にもまだまだありますよ」
「まあ、素敵♪」
彼女が語るメニューはどれもこれも魅力的。グルメフェアで相手が興味を示す出店や商品などをリサーチしておいた甲斐があった。多くの『食』のデータを集めた後なら、デウスエクスでもリアルに味を想像できるだろう。はしたなく涎を垂らしこそしないものの、フィノーラはこっそりお腹をさする。
「お腹が許すのであれば、ぜひお越しください。こちら、ここから現地までの地図です」
「ありがとう。是非行かれてもらうわ!」
即席で書いた地図を手渡し、次の客を探すふうを装ってその場を去る芽亜。あの反応なら間違いなく、フィノーラはこちらの誘導通り公園に向かうだろう。そこが食の祭りではなく戦いの舞台であるとも知らずに――芽亜は獲物が罠にかかるまで、こっそりと背後から尾行を行うのだった。
大成功
🔵🔵🔵
アンジェリカ・ディマンシュ
疑似へリオンデバイスを創造
そこから『貴人のカリスマ』の技能レベルを100…UCと同等に等しい状態で、秘かに運営の人々に干渉
デウスエクスが紛れ込んでいる事を明かし、観客に人知れず避難できる様にゲリライベントとして会場にいる人々の『誘導』を行う交渉を行いますわ
費用はわたくしとDIVIDEが提供しましょう
すぐさま、近くにいる音楽グループを手配して誘導しますわ
あくまでかのデウスエクスの目的は『食料的な兵站』
音楽には関心が向かないと推測できますわ
そう言って避難体制を構築し、『ゲリラライブ』への誘導を開始していく
「未だ剣と分かつものの番犬の世界は繋がらず。しかし今ここに分かつもので作られしその兵器を用いて、欠けた地球の嘲笑に反証しよう」
デウスエクスを戦闘可能なエリアに誘い出す猟兵がいる一方で、一般人の避難誘導を行い、周辺の安全確保に努める猟兵もいる。【未だ虹の橋架かざる世界での光】により疑似へリオンデバイスを創造したアンジェリカは、それを用いて密かにグルメフェア運営の人々に干渉する。
「落ち着いて聞いて下さいませ。この都市にデウスエクスが紛れ込んでいますわ」
「えっ……?!」
決戦都市の防衛網すらもすり抜けて敵に潜伏されていた事実を明かされれば、人々は少なからず動揺を見せる。だがヘリオンデバイスの機能で強化されたアンジェリカのカリスマ性によって、その混乱は最小限に抑えられた。彼女がここで真実を伝えたのは、いたずらに怯えさせるためではない。
「観客に人知れず避難できる様に、ゲリライベントとして誘導を行ってほしいのです」
アンジェリカの目的は会場にいる人々を安全な場所まで移動させること。万が一にも戦闘に巻き込まないよう、できれば別の区画まで移動させたい。そのためには別のイベントを新たにでっち上げるのが効果的だろうと判断したのだ。
「費用はわたくしとDIVIDEが提供しましょう」
彼女はすでに、この町の近くにいた音楽グループにイベントへの参加を手配していた。これほど急な案件にも関わらずオファーを受けて貰えたのは、特務機関DIVIDEとディマンシュ財団の豊富な資金力に加え、地球防衛の為という大義があればこそだろう。
「あくまでかのデウスエクスの目的は『食料的な兵站』。音楽には関心が向かないと推測できますわ」
「なるほど。そういう事でしたら、我々も力になりましょう!」
運営スタッフの全面協力もあって、アンジェリカの計画通りに避難体制は構築され、ゲリラライブへの誘導が開始される。まったく予定になかった話に人々は驚いている様子だが、それは不快感ではなくサプライズへの喜びが大きい。
「ライブだって!」「面白そう!」
グルメフェアで購入したご当地のうまいものを手に、ライブ会場に向かう人々。もちろんライブ自体も本当に実施するので、彼らはこのまま楽しい一日を過ごしてもらおう。大音量の音楽を浴びていれば、戦闘音も聞こえないだろう。
「なんだか騒がしいわね……? まっ、それよりも今はこっちね」
ゲリラライブの騒ぎはフィノーラの元にも聞こえてきたが、アンジェリカの予想通り彼女は興味を示さない。地球人の『食』のデータを収集するのが彼女の任務であり『音楽』などという文化は調査対象外なのだ。次なる美味を求める彼女の足取りは、ライブ会場とはまるで違う方角に向かっていた――。
大成功
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イルミナ・フィロシェット
見目は純粋に食を楽しんでいる少女と見えますが。
本質が分かっている以上、放っておくことはできません。
さて、次に向かう場所を探している様子であるなら今こそ好機。
戦うに適した場所へ誘導したい処です。
とはいえ私はあまり話術が得意なワケではありませんので…
標的の誘導は他の方にお任せし、市民の避難誘導に周りましょう。
誘導予定地付近の住民に声をかけ、これよりDIVIDEの作戦に基づきデウスエクスを誘導し討伐する旨を伝えます。
敵が住民を狙う可能性があるので、暫く避難しておいて欲しい、と。
ええ、勿論デウスエクスは討ちますとも。
其を確実なものとするため――どうか、ご協力願います。
(見目は純粋に食を楽しんでいる少女と見えますが)
正体を知ったうえで改めて観察しても、デウスエクス『フィノーラ』の擬態は見事なものだ。ケルベロスだからこそ気付けたものの、あの外見と振る舞いで人間社会に溶け込まれると一般人は警戒すらできないだろう。イルミナでさえ一瞬誤魔化されそうになるが――。
(本質が分かっている以上、放っておくことはできません)
データ収集任務が完了すれば、その瞬間デウスエクスは本性を現し、付近にいた人間を殺戮して引き上げるだろう。
あれらにとって地球はグラビティ・チェインを確保する贄。地球の民にとっては決して看過できない侵略者なのだ。
(さて、次に向かう場所を探している様子であるなら今こそ好機。戦うに適した場所へ誘導したい処です)
フィノーラは自分からグルメフェア会場の外に移動してくれたが、ここはまだ人気が多少ある。存分に戦える場所に目処はついているものの、どうやってそこまで誘い込むか。他の猟兵は言葉巧みに彼女を導くなりしているようだが。
(とはいえ私はあまり話術が得意なワケではありませんので……標的の誘導は他の方にお任せし、市民の避難誘導に周りましょう)
ここは適材適所ということで、イルミナは誘導予定地に先回り。付近の住民に声をかけ、これよりDIVIDEの作戦に基づきデウスエクスを誘導・討伐する旨を伝える。フェス会場ではパニックを招きかねない故伏せられていたが、ここに至っては秘匿の意味はあるまい。
「敵が住民を狙う可能性があるので、暫く避難しておいて欲しいのです」
「わ、わかりました!」「すぐに避難します!」
天災よりも日常的にデウスエクスの襲来が起こりうる世界だ。万が一の場合に備えての心構えはできていたようで、住民達は速やかに避難を始める。ひとまず近隣の避難所やシェルターに身を寄せるつもりのようだ。決戦都市にはそうした設備も整っている。
「だ、大丈夫なんですよね、この町は……?」
「ええ、勿論デウスエクスは討ちますとも」
当然ながら不安を隠しきれない住民もいる。そうした人々を安心させるために、イルミナは穏やかに淑やかに話す。
優しい微笑に秘められた決意は、猟兵としての使命感によるものか。決して争い事を好むたちではないが、戦となれば躊躇なく、全霊で以てデウスエクスを打ち滅ぼす覚悟が彼女にあった。
「其を確実なものとするため――どうか、ご協力願います」
「は……はいっ!」「どうか、ご武運を!」
イルミナの意志を感じ取った住民達は、それ以上言い争うことなく粛々と避難していく。このペースならフィノーラがやって来る前に近辺は無人となっているだろう。整えられた戦いの舞台にて、イルミナは静かに敵を待つのだった。
大成功
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日下部・香
引き続き、ケルベロスだとバレないよう別人に【変装】して行動しよう。【普通を装う】ことで一般人っぽく見えるようにしたい。敵を警戒させないために【無防備を装う】のも忘れずにな。
対象のデウスエクスに話しかけて、決戦配備の支援が受けられる場所まで誘導したい。
対象は「食」について調査中らしいし、「この辺りにおいしいものを出すところがあるんだけど一緒に行かない?」って誘えば乗ってくるかな。ついでに「友達と来る予定だったんだけど来られなくなっちゃって。でも、誰かと一緒に食べた方が『おいしい』でしょ」とか言っておけば、奴の興味を引けるかもしれない。
万一対象が暴れだしても、近くにいれば少しは対処しやすいだろう。
(人混みからは離れてくれたか。チャンスだな)
引き続き別人に変装したまま、香は『フィノーラ』の様子を窺う。|決戦配備《ポジション》の支援が受けられる場所まで誘導するには、こちらから接触を図る必要がある。その時にケルベロスだとバレてしまっては、ここまで努力したのが水の泡だ。
「ねえ、ちょっといいかな」
「あら。わたしに何か用かしら?」
普通を装うことで一般人っぽく見えるようにして、警戒させないために無防備を装うのも忘れずに。通りがかったふうに話しかけると、フィノーラは微笑で応じる。あちらも潜入調査の最中である以上、つれない対応を取って怪しまれるのは嫌なのだろう。
「この辺りにおいしいものを出すところがあるんだけど、一緒に行かない?」
「まあ。それはひょっとして、さっきのヒトも言っていた……」
いまだ「食」について調査中の対象にこう言えば、乗ってこないだろうかと考えての誘い。同じ作戦を取った猟兵と噛み合ったこともあって、フィノーラは興味を惹かれたようだ。グルメフェアでもかなりのデータを集めたようだが、調査を終了する予定はまだないらしい。
「友達と来る予定だったんだけど来られなくなっちゃって。でも、誰かと一緒に食べた方が『おいしい』でしょ」
突然話しかけた件を怪しまれないよう、適当な理由もでっち上げておく。特に「おいしい」という発言に関しては、フィノーラなら聞き捨てならないはずだ。人形のような少女の表情が、ぴくりと反応を示すのを香は見逃さなかった。
「おいしい……そう、そうよね。たぶん、そうだわ」
そもそもデウスエクスに通常の飲食は不要であり「誰かと食事を摂ることで食物の味が変わる」と聞いても、それが本当なのか分からない。フィノーラの調査内容を考慮すれば、この疑問を放置したまま聖賢者の元に帰還することはできない。
「ええ、それじゃあ一緒に食べに行きましょう?」
「そうこなくっちゃ」
あくまで平静を装いつつフィノーラが誘いに乗ってくれば、香は心の中で「よし」と拳を握った。後はこのまま対象を戦闘可能区域まで連れて行くだけだ。適当にこれから食べたい物の話などをしつつ、逸る気持ちを抑えて移動する。
(万一対象が暴れだしても、近くにいれば少しは対処しやすいだろう)
どんなに見た目は可愛らしくとも、相手は危険なデウスエクス。その事を常に忘れずに、警戒の糸を張り詰める香。
その上で、こちらの警戒心を悟られないという難事を成す。彼女の変装と偽装技術も、デウスエクスに劣らぬものと言えるだろう――。
大成功
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摩津崎・灰闢
巧みに扮していると思いきや、
気配でこうも見分けが付いてしまうとは…
私も気をつけなければなりませんね
一般人の避難対応は上手く行っているようですし
私は敵の誘導に加わります
戦場も目前でしょうし、敵を強引に釣る手段を取りましょう
敵の移動経路に先回りをして
私の存在を悟られないよう気配と殺気を完全に抑え
物陰に身を隠し待機
そして敵を視認次第、UCを用いた鏖殺の気を放つ
そう、貴女を害そうとする存在が此処にいますよ
どうか見失わず追ってきて下さい
殺気を全開にしながら戦場まで駆け抜ける
敵に発見されて敵攻撃が来た場合
技能『地形の利用』を生かし、建造物を利用して回避防御
影業での防御も交えつつ足を止めずに移動を継続します
「巧みに扮していると思いきや、気配でこうも見分けが付いてしまうとは……私も気をつけなければなりませんね」
外見上はほぼ完璧に人間に紛れ込んでいたデウスエクスを、思いの外あっさりと看破できた事。それはダークネスの自分も他人からは「異物」と見られている可能性と同じであり、より注意すべきだろうと灰闢は自戒する。他人のふり見て我がふり直せとは、まさにこんな時に使う言葉だろう。
「さて。一般人の避難対応は上手く行っているようですし、私は敵の誘導に加わりましょうか」
反省はこのくらいにして、灰闢は仕事に戻る。グルメフェアの会場を離れた『フィノーラ』は他の猟兵達の働きかけもあって、順調に群衆から遠ざけられている。このまま|決戦配備《ポジション》を受けられるエリアまで誘導できれば、あとは命を頂戴するだけだ。
(戦場も目前でしょうし、敵を強引に釣る手段を取りましょう)
灰闢は敵の移動経路に先回りすると、自身の存在を悟られないよう気配と殺気を完全に抑える。どのダークネスよりも殺しに長けた六六六人衆だからこそ、獲物を欺く術も心得ているわけだ。その状態で物陰に身を隠し待機すれば、誰も彼を発見できまい。
「この辺りにお店があるって話だったけど……」
ほどなくして通りの向こうから現れたのは、フェア会場でも見た白いドレスの少女。どうやらこの付近に料理店があると聞いて調査のためにやって来たようだ。それが猟兵達の撒いたエサだとも知らずに――まんまと網にかかった敵を視認次第、灰闢は【瞋恚刺戟】を用いた鏖殺の気を放つ。
「……ッ! この気配……!」
流石は手練れのデウスエクスと言うべきか、殺気を感じ取った瞬間のフィノーラの反応は速かった。どこからともなく大釜を出現させると、それを振りかぶりながら殺気が放たれた方角に向かう。調査の邪魔をする者であれば、ここで排除しなければならない。
(そう、貴女を害そうとする存在が此処にいますよ。どうか見失わず追ってきて下さい)
灰闢のユーベルコードには、鏖殺の気を当てた対象に「自身を害する存在を今すぐ排除したい」という衝動を付与する効果がある。これを利用して自らを釣り餌とした彼は、殺気を全開にしたまま駆け出す。背後から迫る敵の足音を聞きながら。
「逃さないわよ!」
ここまで露骨に気配を晒した相手を発見できぬほど、フィノーラも愚かではない。逃げる殺人鬼に死神の鎌が迫る。
灰闢は付近の電柱や建造物の壁を蹴ってそれを回避し、影業での防御も交えながら、足を止めずに移動を継続する。
「ようこそ、戦場へ」
彼が向かう先はデウスエクスを討つ為に用意された舞台。今回の作戦もいよいよ大詰めを迎えようとしていた――。
大成功
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第3章 ボス戦
『フィノーラ』
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POW : ギロチンフィニッシュ
【簒奪者の鎌】で対象の【首】を攻撃する。自身が対象に抱く【憐憫】の感情が強い程、[首]への命中率が上昇する。
SPD : 月の微笑み
【自身の足元】から、戦場全体に「敵味方を識別する【水面に投影された月】」を放ち、ダメージと【狂気】の状態異常を与える。
WIZ : 冥府の使い
【冥府の海】から【歴戦の戦士もしくは猟兵に近しい故人】を召喚する。[歴戦の戦士もしくは猟兵に近しい故人]に触れた対象は、過去の【トラウマ】をレベル倍に増幅される。
イラスト:弌月
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠マリアベラ・ロゼグイーダ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「ここにおいしいお店があるって聞いたけれど……どうやら騙されちゃったみたいね」
猟兵達の作戦によって、人気のない公園まで誘い込まれたデウスエクス『フィノーラ』。
付近の避難誘導はすでに完了しており、戦闘になっても住民を巻き込む恐れはない。そして、猟兵を支援する決戦都市の|決戦配備《ポジション》も、準備を完了していた。
「いつからバレていたのかしら? 恥ずかしいわ……でも、こうなったらもう正体を隠す必要もないわね」
口元に月のような微笑を浮かべ、白銀の大鎌を構えるフィノーラ。
どうやら観念して擬態するのは諦めたようだが、その態度はおとなしく敗北を受け入れる者のものではない。
「まだ食べられていない物があるのは残念だけど潮時ね。これまで集めたデータと、あなた達のグラビティ・チェインを手土産に持ち帰れば、トリスメギストス様も納得してくださるでしょう」
聖賢者より仰せつかった任務を、不完全ながらも最後まで遂行する。それがフィノーラの意志である。
彼女の本領は潜入調査よりも寧ろ戦闘。油断すれば猟兵達も彼女が使役する死者の仲間入りとなるだろう。
「さあ、踊りましょう?」
優雅な笑みを浮かべ、猟兵を死の舞踏に誘うフィノーラ。
地球人の『食』を学んできた死神との、決戦の舞台の幕が上がった。
儀水・芽亜
上手く口車に乗ってくれて幸いでしたよ。それでは、ここからは|闘争《ダンス》の時間です。
夜も月もナイトメアのしろしめすもの。「狂気耐性」があれば、この程度は何でもありません。
来なさい、ナイトメア!
ナイトメアライドでナイトメアに騎乗し、ナイトメアにも「狂気耐性」。
「騎乗突撃」でアリスランスの「ランスチャージ」! 大鎌を弾いて、胴体の真ん中に叩き込んで差し上げます。
地面を塗り替えた程度では、ナイトメアの脚は止まりませんよ。
一気に駆け抜けてUターン。今度は逆方向からランスで貫きに参ります。
そのまま「蹂躙」。
死神に現世をうろうろされても困るんですよ。さっさと|冥府の海《デスバレス》へお帰りくださいな。
「上手く口車に乗ってくれて幸いでしたよ」
未知なる食の誘惑に釣られて、まんまと戦場にやって来た『フィノーラ』に、芽亜はアリスランスの矛先を向ける。
ここまで来たらもう演技を続ける必要もない。収集されたデータを聖賢者の元に持ち帰られる前に仕留めなければ。
「それでは、ここからは|闘争《ダンス》の時間です」
「あら、悪くないわね。でも、私の舞に付いてこられるかしら?」
まんまと策にハマったフィノーラだが、まだ勝敗が決したわけではない。大鎌を携え【月の微笑み】を浮かべると、足元から戦場全体を覆うように水があふれ、水面に月が投影される。それは心ある者を狂気へと導く魔性の光だった。
「夜も月もナイトメアのしろしめすもの。狂気耐性があれば、この程度は何でもありません」
だが、芽亜は月光を浴びても心を乱された様子はなく、平然と水面の上に立っていた。夢を操る来訪者と共生する者――ナイトメア適合者である彼女に、それは恐るるに足らぬものだろう。歴戦の能力者としての経験が狂気を退ける。
「来なさい、ナイトメア!」
一声叫べば虚空より現れしは純白の駿馬。【ナイトメアライド】によりナイトメアに騎乗した彼女は、乗騎にも狂気耐性を付与したうえで騎乗突撃を仕掛ける。アリスランス「ディヴァイン・ユニコーン」の矛先は、真っ直ぐに死神へ向けられていた。
「地面を塗り替えた程度では、ナイトメアの脚は止まりませんよ」
「やるじゃないの……!」
水面に飛沫を上げて駆けてくる芽亜を、フィノーラは大鎌で迎え撃とうとする。三日月を描くが如き斬撃は、馬ごと騎手の首を刎ね飛ばさんと――だが芽亜は軽やかな槍さばきで刃を弾き、逆に相手の胴体の真ん中に槍を叩き込んだ。
「蹂躙して差し上げます」
「ぐっ……!!」
美しき鴇色のアリスランスがフィノーラの胸を穿ち、血しぶきが水面の月光を汚す。芽亜はそのまま一気に駆け抜けてUターンすると、今度は逆方向から貫きにかかる。これだけ激しい動きをしても落馬どころか槍の構えもブレない、まさに人馬一体の騎乗術だ。
「死神に現世をうろうろされても困るんですよ。さっさと|冥府の海《デスバレス》へお帰りくださいな」
「ッ……そうはいかない理由が、こっちにもあるのよ……!」
振り向く間もなく今度は真後ろから刺され、さらにナイトメアの蹄で蹴りつけられるフィノーラ。能力の相性が悪いのもあるが、まさか地球の民がここまで手強いとは思っていなかっただろう。そんな彼女を馬上より見下ろす芽亜の眼差しは冷たく、下す猛攻に容赦はない。死を司る者は死の世界へ、それが摂理というものだ――。
大成功
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アンジェリカ・ディマンシュ
さて、このUCを使いましょうか
全てのモザイクを晴らしたドリームイーターに変身
首を跳ねられない様にモザイクを完全に晴らしたドリームイーターとして覚醒
ドリームイーターとしての特性を音響魔法陣に
厳かに世界そのものを揺らし震動させる波動を放ち、簒奪者の鎌を空間ごと跳ね除けて行きます
元より、ドリームイーターのドリームエナジーはケルベロスも扱えるもの
それを、六番目の猟兵と化したわたくしが全てのモザイクを晴らしたドリームイーターとしてのドリームエナジーを用いて自己強化し、死神を圧倒して行きますわ
季節の魔力、クリスマス…氷雪よ、音響魔法陣により増幅し死神を凍てつかせなさい!
「さて、このユーベルコードを使いましょうか」
いよいよ口火を切られたデウスエクスとの戦いにあたって、アンジェリカは【完全なる夢は、全ての不明瞭が消え去った時に成る】を発動。己の肉体を変異させ、ケルベロスブレイド世界に存在するデウスエクス『ドリームイーター』に――それもモザイクを完全に晴らしたドリームイーターとして覚醒を遂げる。
「明晰夢を超える不明瞭無き理想と微睡みの光景は、いずれ全ての欠落を世界と人類から埋め合わせる事であろう」
「人間が、デウスエクスに……? ふん、そんなのただの見せかけよ!」
不可思議なる変身に驚くフィノーラだが、それで怖気づくような弱卒が今回の潜入任務を任されるはずもあるまい。
しょせんデウスエクスの力を模しただけなら、死の定めを持つ定命の存在には違いない。殺意ではなく憐憫の感情をもって、簒奪者の大鎌を振り上げる。
「死の安らぎを与えてあげるわ」
舞い踊るような所作で繰り出される【ギロチンフィニッシュ】。常人なら痛みを感じる暇もなく首を刎ねられよう。
だが、アンジェリカはドリームイーターとしての特性を音響魔法陣にセット。厳かに世界そのものを揺らし震動させる波動を放ち、簒奪者の鎌を空間ごと跳ね除けた。
「なにっ……その力は?!」
「元より、ドリームイーターのドリームエナジーはケルベロスも扱えるもの」
それも六番目の猟兵と化したアンジェリカが、全てのモザイクを晴らしたドリームイーターとしてドリームエナジーを用いればどうなるか。微笑と共にその一端を示した彼女は、さらにエナジーを自己強化にも利用し、反撃へ転じた。
「季節の魔力、クリスマス……氷雪よ、死神を凍てつかせなさい!」
今はちょうど冬も深まり、聖夜の足音が聞こえてくる時期である。そういった季節毎に満ちる特別な魔力をドリームエナジーで操り、さらに自身の音響魔法陣に増幅させることで、アンジェリカは戦場に凄まじい猛吹雪を顕現させた。
「こっ、こんなことが……きゃあああああーーーっ?!!」
完璧なる夢の魔力を前に、圧倒されるフィノーラ。大鎌を持つ手が、足が、胴体が、氷雪に覆われ凍りついていく。
ただデウスエクスの力を模倣しただけではない。ユーベルコードによってそれを我が物としたケルベロスの力は、この世界のデウスエクスの想像を超えていた――。
大成功
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日下部・香
こっちももう正体を隠す必要はないな。変装を解いて応戦しよう。
避難も完了、決戦配備も準備完了、万全だ! さっきグルメフェアで美味しいものも食べたしな。
敵は首を狙って攻撃してくると。当たったらひとたまりもないけど、狙う場所がわかれば防御しやすい。赤い首巻に螺旋の力を通して、防御力を【瞬間強化】しよう。
加えて、決戦配備・スナイパー要請! 援護射撃を頼む! 敵は憐憫の感情を抱くほど攻撃の命中率が上がるらしい。敵の感情は理解しがたいが、あまり感情を抱かせないよう気を逸らすことで対処できないだろうか。
隙を見て【魂断ノ剣】で攻撃しよう。できれば倒したいが、難しそうなら手を狙おう。武器を扱いづらくするためにな
「こっちももう正体を隠す必要はないな」
戦場への誘導が完了し、周辺に民間人がいないことも確認してから、香は変装を解いて『フィノーラ』に応戦する。
一般人の装いから一瞬で忍装束に着替えた彼女の首元には、真っ赤な長い首巻が風になびいている。そして左手に携えしは、幾多のデウスエクスを斬り伏せてきた「斬霊刀・常切」だ。
「避難も完了、決戦配備も準備完了、万全だ! さっきグルメフェアで美味しいものも食べたしな」
「あら。あなた達の言葉だと、そういうのを『最後の晩餐』と言うのだったかしら?」
対するフィノーラの表情にまだ焦りの色はない。猟兵の策に嵌まりはしたが、実力で切り抜ければ良いだけのこと。
怒りや殺意ではなく定命の者への憐憫の情を込めて、彼女は簒奪者の大鎌を振るう。痛みすら与えずに、一撃で首を刈り落とすつもりだ。
(当たったらひとたまりもないけど、狙う場所がわかれば防御しやすい)
香が装備する赤い首巻は、螺旋の力を通すと瞬間的に硬化して防御力を強化する。ただのオシャレだと思われたものが、ネックガードとなり【ギロチンフィニッシュ】を弾いた。これにはフィノーラも「まあ!」と驚きの顔を見せる。
「力加減を誤ったかしら。だったら、もう一度……」
「そうはいくか。援護射撃を頼む!」
フィノーラが大鎌を構え直す前に、香は|決戦配備《ポジション》・スナイパーを要請。付近のビル屋上で待機していた狙撃部隊が、敵に遠距離攻撃を仕掛ける。デウスエクス相手にただの人間の銃撃では大したダメージになるまいが、意表を突くことはできる。
「もうっ、なによ。鬱陶しいわね……」
大鎌をくるくると回転させてスナイパーの攻撃を弾くフィノーラ。弾が飛んできた方角を見ても射手は遥か遠くだ。
目の前の猟兵を無視して先に潰しに行くわけにもいかない、面倒な邪魔者。小蠅にたかられているような感覚が彼女を気を散らせる。
(敵は憐憫の感情を抱くほど攻撃の命中率が上がるらしい。敵の感情は理解しがたいが、あまり感情を抱かせないよう気を逸らすことで対処できないだろうか)
香の狙い通り、狙撃を意識しながら戦うフィノーラの動きは、初撃に比べて精彩を欠いていた。二度目の【ギロチンフィニッシュ】を無駄のない身のこなしで受け、今度はただ防ぐだけではなく前に踏み込む。長柄の大鎌は刃の内側に入ってしまえば、大きな隙になるはずだ。
「分ち、封じ、縛る。……断ち切る」
「しまっ……!」
焦るフィノーラの手元を狙って、香は【魂断ノ剣】を放つ。清浄なる霊力を纏った斬霊刀による一太刀は、斬られた相手の部位を一時的に使用不能にする。スッと抵抗もなく刃が体をすり抜けていくと、フィノーラの右手首の先から感覚が消えた。
「っ……やってくれたわね」
「さて。最後の晩餐になるのはどっちだろうな」
この一撃で敵を倒し切るのは難しいと踏んだ彼女は、武器を扱い辛くして敵の戦闘力を下げることを優先したのだ。
片手がその状態では、これまでのように十全に大鎌を振るうことはできまい。憐れみから苦虫を噛み潰したような顔になるフィノーラに、香は不敵な笑みを返した。
大成功
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幸・鳳琴
「ブレイド」では厳密に言うと死神は
デウスエクスとは異なる存在でした
こちらでは――いえ、考察は何時でも出来ますね
拳を振るうのが務めです、勝負!
ポジション効果はクラッシャーを要請、押してまいります!
培った功夫で近接戦を挑み
共に戦う仲間と連携を意識、死角を突くよう攻撃を重ねていきます
相手の鎌の動きには最大限注意
首を狙う動きには武器を間に入らせ致命打を避けますね
『食』は大きいもの
その点だけは同意です
ケルベロスはいつも美食を堪能できてますしね!
超会議の屋台の数々の味!応援してくださる人々のご馳走
思い出すだけで幸せですっ
そう言えばとても憐憫を感じられないでしょうか?
《幸家・醒龍》の一撃で粉砕を狙いますッ!
「『ブレイド』では厳密に言うと死神は、デウスエクスとは異なる存在でした。こちらでは――いえ、考察は何時でも出来ますね」
こことは違う世界で、別のデウスエクスから地球を守るために戦っていたケルベロスの一人、幸・鳳琴(精霊翼の龍拳士・f44998)は、そう言って『フィノーラ』と対峙する。自分の知っている死神と同種であれ別種であれ、か弱き人を脅かすのなら為すべき事は一つ。
「拳を振るうのが務めです、勝負!」
「ふん。返り討ちにするだけよ」
培った功夫を武器に挑まんとする鳳琴に対し、フィノーラは簒奪者の大鎌を構える。聖賢者トリスメギストスから仰せつかった地球の「食」の調査はまだ途中だが、ここを切り抜けてデータを持ち帰れば彼女の勝ちだ。その調査内容が今後のデウスエクスの作戦にどう影響を与えるか分からぬ以上、絶対に逃がすわけにはいかない。
「クラッシャーを要請、押してまいります!」
|決戦支援《ポジション》の効果により、決戦都市のあちこちに配備された砲台や戦闘ロボが火力支援を開始する。降り注ぐ砲火の向かう先はフィノーラただ一人であり、いかに不死不滅のデウスエクスと言えど、これには対処を要さずにいられまい。
「地球人も面白いものを作ったものね。個人的には『食』と同じくらい興味深いわ」
そう言いながらフィノーラは大鎌を振るって、砲弾やロボの攻撃を切り払う。その表情はまだ余裕が感じられるが、激しい攻撃の中で何かを見落としていないだろうか? 爆炎と黒煙に紛れて近付いてくる、ひとりの降魔拳士の事を。
「隙あり!」
「ぐっ……?!」
死神に接近戦を挑んだ鳳琴の拳が、死角から脇腹を抉るように突く。闘気の籠もった打撃はただの砲弾よりも重い。
共に戦う仲間との連携を意識し、全員で勝利を掴み取るのが定命の者のやり方だ。同じ戦場に立つ猟兵も、決戦都市を稼働させる一般人も、全員彼女の味方である。
「やるわね……!」
フィノーラも一撃では屈さず、反撃の【ギロチンフィニッシュ】を放つ。だが鳳琴も、生命を刈り取る死神の鎌には最大限注意を払っている。首を狙う動きを見れば拳を間に入らせ、超硬度のバトルガントレットを盾にして致命打を避けた。
「『食』は大きいもの。その点だけは同意です。ケルベロスはいつも美食を堪能できてますしね!」
鉄拳と大鎌で火花を散らしながら、鳳琴はフィノーラに語りかける。彼女のいた世界でもケルベロスは民衆の支持を受け、多くの支援を受けながら活動していた。その中には当然食事も――事あるごとに美味しい料理を振る舞ってもらったものだ。
「超会議の屋台の数々の味! 応援してくださる人々のご馳走、思い出すだけで幸せですっ」
「ふ……少しだけ、わかるわ」
この任務を引き受けるまでは「食のありがたみ」なんて言葉はデウスエクスには無縁だった。頻繁に食物を摂取しなければ生命維持できない地球人に憐憫の情すら抱いていた。だが、今のフィノーラは鳳琴の言葉に少しだけ同意した。「おいしい」というのは、案外悪くない。
「この一撃で、貴方の全てを貫きましょう――勝負です!」
フィノーラの「憐憫」と共に攻撃が緩んだ隙を突いて、鳳琴は【幸家・醒龍】の一撃で粉砕を狙う。拳に収束させた闘気が龍状の輝きとなり、踏み込みと共に渾身の力で叩き込む――単純だが、それゆえに力に満ちたユーベルコード。
「ッ……!!! 大した、ものね……!」
こればかりは死神の大鎌でも防ぎきれなかった。直接打撃を受けたフィノーラの左肩が、流し込まれた闘気によって砕ける。当初のような余裕を見せる暇はもはやない。任務完了の手土産よりも、ここから無事に生還できるかどうか。この戦いはすでにそういった域に入っていた。
大成功
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摩津崎・灰闢
ダンスのお誘い、喜んでお受けします
データを持ち帰らせるなとの依頼、
此処で果たしましょう
まずは月に惑わされないよう
狂気耐性と激痛耐性の護符を使用
更にUCも発動
死神も殺人鬼も同じようなものでしょうか。
殺しただけ糧を得ているのなら、貴女の方が誠実なのでしょうね
決戦配備はスナイパー
ポジションが援護とは面白いシステムです
敵の動く瞬間に狙撃しての牽制を依頼
殺気を濃く纏い認識阻害で攪乱
正確な位置を掴ませず、敵攻撃の命中率を下げ回避や刀で受け流す
積極的に間合いを詰め刀で攻撃
間合いを取られそうなら影業で足元を捕縛、
かつ援護の力も借りて隙をつくり、急所を突く
ただ食を楽しむだけなら良かったでしょうに。
お疲れ様でした
「ダンスのお誘い、喜んでお受けします」
死神と踊る機会などそうはあるまいと、慇懃無礼な態度で誘いに応じるのは灰闢。元よりここまで『フィノーラ』を連れ出したのはこちら側だ。ダンス会場の準備は整っている以上、あとはどちらかが命を落とすまで踊り明かすまで。
「データを持ち帰らせるなとの依頼、此処で果たしましょう」
「私の任務とは真逆ね。さて、果たせるのはどちらかしら」
新たなダンスパートナーの前でフィノーラは【月の微笑み】を見せ、自身の足元から透き通った水面を現出させる。
鏡の如き水面に投影されるのは月。いにしえからの言い伝え通り、月光は人の心を惑わせ、深い狂気へといざなう。
「"最期"までお相手願いますよ」
まずは月に惑わされないよう、灰闢は狂気耐性と激痛耐性の効果を仕込んだ「梵天呪符・流転」を使用。さらに【殺戮流儀】を発動し、限定的な不死となる。銘刀「天啓」を抜き放ち、その切っ先を死神に向ける六六六人衆の表情は、狂気よりも殺気に満ちていた。
「死神も殺人鬼も同じようなものでしょうか。殺しただけ糧を得ているのなら、貴女の方が誠実なのでしょうね」
「ふふ。確かに、一緒にされたくはないわ……ねッ!」
月光の狂気が効かないと分かれば、フィノーラは直接大鎌で斬りかかろうとする。ユーベルコード抜きでも実力は相当のものだろうが――灰闢のほうも抜かりはない。戦線に出てきた時点で、すでにスナイパーの|決戦配備《ポジション》を要請している。
「ポジションが援護とは面白いシステムです」
「ッ?!」
動きだす瞬間、フィノーラの足元に銃弾が撃ち込まれる。灰闢が依頼したのは狙撃による牽制だ。直接的なダメージに繋がらなくても、別方向に注意を散らせれば十分。さらに彼は殺気を濃く纏って認識阻害を起こし、敵を撹乱する。
「くっ……やり辛いわね……」
あまりの濃さにどす黒く可視化された鏖殺の気が、フィノーラに灰闢の正確な位置を掴ませない。無闇に鎌を振ったところで虚空を薙ぐか、あるいは刀で受け流されるだけだ。狙撃支援も活かして巧みに死神の攻撃を躱しつつ、殺人鬼は積極的に間合いを詰めていく。
「一旦距離を……」
「おや、つれないですね」
フィノーラが間合いを取ろうとすれば、灰闢は影業で足元を捕縛。サイキックエナジーで武装化された影が、蛇のように獲物の足に絡みつく。目標の動きが止まればスナイパーもここぞとばかりに援護射撃を仕掛け、防御の手数を削り取る。
「言ったでしょう? "最期"までお相手願いますよ、と」
「ッ、が……!!」
人間に援護されながら殺し合うのも面白いものだ。作り上げた隙を逃さずに、灰闢は刀でフィノーラの急所を突く。
死による救済を齎すと嘯いた刃の鋭さは、人間やダークネスだけではなくデウスエクスに通用するようで。穿たれた死神の胸からぱっと鮮血が吹き出した。
「ただ食を楽しむだけなら良かったでしょうに。お疲れ様でした」
ぐらり、と崩れ落ちていくフィノーラを前にして、灰闢はお別れの一言を。ただの物見遊山であればヒトならざる者同士邪魔立てすることも無かっただろうが、これは依頼だ。"善行"に勤しむ几帳面な殺人鬼が与えた傷は、死神に対しても致命的な深手であった――。
大成功
🔵🔵🔵
イルミナ・フィロシェット
ええ、あなたは見事に罠に嵌ったのです。
このまま何を為すこともなく、打ち倒されるが良いでしょう!
Ironcladを振るい近接戦を仕掛けます。
得物の重さを利した【重量攻撃】にて押し込みにかかりましょう。
攻撃の隙は、この身より噴出する地獄の炎で周囲へ【焼却】攻撃を行い補う方向で。
とはいえ敵は強力なデウスエクス。
此方の隙に攻撃を撃ち込むことは充分に可能でしょう。
ですが、私の最大の好機もまた其処に存在します。
敵の攻撃は首以外――致命とならず攻撃行動に支障を生じぬ位置で受け、直後に此方もUCを発動。
被弾によりを上乗せしたIroncladによる斬撃を打ち込み、地獄の炎の爆発を叩き込んでみせましょう。
「まさか、ここまでとはね……予想外だったわ」
「ええ、あなたは見事に罠に嵌ったのです」
猟兵の作戦で戦場に誘導され、そして今窮地に陥っている『フィノーラ』へと、イルミナは凛とした口調で告げる。
当初は力ずくで捻じ伏せられると思っていたのだろうが、舐められたものだ。猟兵とケルベロス――そしてこの世界の人類は甘くない。
「このまま何を為すこともなく、打ち倒されるが良いでしょう!」
「そういうわけには、いかないのよッ!」
何としても収集したデータを持ち帰る。それだけを目標にして、決死の抵抗を続けるフィノーラ。それに挑みかかるイルミナの手には「Ironclad」と名付けられた、大きく分厚く頑丈な鉄塊剣が握られている。シャドウエルフの細腕で豪快にそれを振り回す姿は、さっきまでの様子からは想像もつかない。
「参ります!」
得物の重さを利した重量攻撃にて、敵を押し込みにかかるイルミナ。死神の大鎌よりも巨大な鉄塊剣は、攻撃の威力も隙も大きくなる。彼女はスキンスーツの露出部から地獄の炎を噴出させ、焼却攻撃を適宜行うことで武器の隙を補っていた。
「甘いわよ!」
とはいえフィノーラはデウスエクス内でも強大な個体だ。大鎌のカーブを巧みに利用して鉄塊剣の重みを受け流し、円の動きで地獄の炎を振り払い、此方の隙に攻撃を撃ち込んでくる。聖賢者直々に指令を受ける程の猛者ともなれば、やはり一筋縄ではいかない。
「甘く見た事は謝るわ……だけど、勝つのは私よ」
静かな殺気の裏に定命の者への憐憫を潜ませ、会心の【ギロチンフィニッシュ】を放つフィノーラ。死神の名に恥じぬ必殺の一撃を、イルミナは首以外――致命とならず、攻撃行動に支障を生じぬ位置で強引に受ける。それができたのは、敵の行動を彼女が予想していたからだ。
「ですが、私の最大の好機もまた其処に存在します」
「なに……ッ?!」
致命傷ではないとはいえ、かなりの深手を負いながら、イルミナの瞳は闘志を増していた。その直後に彼女が発動したのは【鋭い牙のチリアット】。被弾後に当てることでダメージが大幅に増す、カウンター前提のユーベルコードだ。
「割り砕きます!」
「ッ……この、力はっ!?」
裂帛の気迫を込めて撃ち込まれた斬撃を、フィノーラはかろうじて大鎌で受けた。だが上乗せされた威力を押し返すことはできず、鎌ごと刃を体にめり込ませられる。すかさずイルミナは「Ironclad」に地獄の炎を流し込み、ゼロ距離で爆発を叩き込む。
「これで、終わりです!」
戦場に響き渡る轟音、そして爆炎。イルミナの全身全霊をかけた大技を受け、とうとう敵の耐久力も限界に達した。
獄炎にて焼け焦げた死神の少女は、折れた大鎌を持ったままがくりと膝をつき――そして、微かに笑みを浮かべた。
「任務失敗、ね……トリスメギストス様に申し訳ないわ……まあ、心躍る戦いができたし……『おいしかった』から、いいわ……」
そう言い遺して、デウスエクス『フィノーラ』は猟兵達の前から跡形もなく姿を消した。
不死不滅の種族がこれで完全に消滅することはないが、収集したデータを持ち帰ることは叶わないだろう。戦闘支援を行っていた決戦都市の住民から、猟兵達の勝利を称える歓声が聞こえてくる――。
かくして聖賢者が送り込んだ死神から、猟兵達は地球の『食』の情報を守り抜いた。
どんな策を巡らせてこようと、彼らがここにいる限り、地球上でデウスエクスの好き勝手が許される事はないのだ。
大成功
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