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ティタニウム・マキアの篝火

#サイバーザナドゥ #ノベル #猟兵達のハロウィン2024 #巨大企業群『ティタニウム・マキア』

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ステラ・タタリクス




●セーフハウス
 秋、それは食欲の季節。
 もっと他にもあるだろ、と誰かは言うかもしれないが、問答無用である。
 食欲とは生きることに直結する欲望である。
 生物は食さねば生命活動を維持できない。
 それはサイバーザナドゥ世界であっても変わらぬことである。
 しかしながら、骸の海に汚染され続け、緩やかな滅びへと向かう世界にあっては、生きるために倫理観を捨て去り、生身の肉体を機械化義体に置き換えねばならない。
 そうなれば、食事は最低限で済む。いや、済まされてしまう。
 食欲が多く占めていた熱量は、他の欲望に取って代わられるだろう。

 電脳空間もまた、その一端であると言えるだろう。
 亜麻色の髪の青年『メリサ』は嫌な予感を覚えてサイバースペースのポータルから身を起こす。
「……」
 嫌な予感と言っても、確信があるわけではない。
 身を起こして周囲を見回す。
 気の所為だったのか?
 声に出さずに立ち上がろうとした瞬間、背にかかる重みに、ああ、やっぱりという顔になってしまう。
「『メリサ』様、食欲の秋ですね」
「そうね、そうだね、そうだろうね」
 気のない返事である。
 だが、亜麻色の髪の青年『メリサ』に背後から強襲じみた抱擁を決めたステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は笑むばかりである。
「あっ、もしかして私を食べたいということですか。なんてダ・イ・タ・ン♪」
 はーと、じゃないが。
 と『メリサ』は思ったが言葉を紡ぐことはなかった。
 余計なことを言えば、更に面倒なことになるのは経験則から理解していたことだった。

「もう少し早ければ、ポータルの中でお休みの『メリサ』様にメイドの|検診《献身》できましたのに」
「絶対にノーだっての! なんでそうなるのかなぁ、あんたは!」
「それとも結婚します?」
「話聞いてた?」
「私は……いつでもきゃーーー!!」
 はぁと、じゃないが。
「……本当に何いってんの?」
「いえ、まずは私がどれだけできるメイドであるのかをご理解いただけたらと! まずはこちら! 媚薬なしの天然素材料理をご賞味くださいませ!」
「いま、媚薬って言った?」
「いいえ? 媚薬なしです。はっ、もしかして、私に媚薬を!? そしてあんなことやそんなことやこんなことを!?」
「おもむろにボタンを外すのやめてもらっていいかなぁ!?」
「逆にはちみつ好きだったりします?」
「ねぇ、なんでそうやって話を急展開するの? なんで?」
「それはそれとしてこんな有料メイド、娶ってしまえばいいと思うのですが? どうしてでしょう?」
「そういう予定はないんで」
『メリサ』は立ち上がり、ぐいぐい来るステラの顔面を手のひらで抑え込む。
 塩対応も此処まで来ると辛いのではないかと思うのだが、ステラはちょっとなんか上気していた。やばい。

「やはり障害は『ケートス』様と『オルニーテス』様ですかね? 私はハーレムでもいいのですが」
「碌でもないこと言うじゃん!」
「そうでしょうか?」
 はてな? みたいな顔をするステラに『メリサ』はげんなりした顔でソファに腰を下ろしてため息を吐く。
 だが、当然のようにステラは横隣に座ってくる。
「……今度は何」
「いえ、『メリサ』様に一つお尋ねしたいことがありまして」
「一つね」
「ええ、『プロメテウスX』、という言葉にお心あたりはございませんか?」
 いきなりの話題転換である。
 が、『メリサ』は掌に顎を乗せて頷く。

「知ってるけれど」
「そのパイロットについては」
「それも知ってる。けど、それを知ってどうすんのさ、あんたは」
「いえ、答えがいただけないならハグしてもらおうと思っておりました」
「あっぶなぁ!! 後出し条件出すのやめてもらっていいかなぁ!?」
「私的には後者でもよかったと申しますか、むしろ、後者がよかったと申しますか」
「本当に! よかったぁ!!」
 ギリギリだった、と言わんばかりである。
「それで、『プロメテウスX』だっけ? その機体についてだけなら、いざ知らず。そのパイロットのことまで知りたいっていうのは」
 何故なのか。
 その問いかけにステラは頷く。

「唐突だよな」
「ええ、ですが知りたいと思うのです。『フュンフ・エイル』駆る『熾盛』に対抗すべく生み出された『怪物』的キャバリア『プロメテウスX』……誰が乗っていたのか、何故、と」
「あれは破壊されたし、分かたれた」
 それに、と『メリサ』は言う。
「いくら『怪物』でも、勝てない相手がいるんだよ。英雄譚にて怪物が必ず敗北するように。であるのなら」
 彼は言う。
「すでにあんたらも出会ったことがあるはずだと思うんだ。俺の口から言うのは、違う気がするけれど」
 猟兵であるのならば、と彼は付け加えた。
 はい、おしまいと言わんばかりに『メリサ』は立ち上がる。
「あれ、この流れ、次は私を召し上がるのでは?」
「あがりませんけどぉ!?」
 そんな『メリサ』の絶叫がセーフハウスに響いた――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年11月30日


挿絵イラスト