天涙の煌めきに祈りを
くらいよ。
たすけて。
小さな手が、暗闇に伸びる。
こわいよ。
たすけて。
幼い泣き声が、廃墟に響く。
くらいよ。こわいよ。
たすけて。たすけて。
泣いて、縋って、求め続けて――
あぁ、とっても……、
とっても……ねむたいな……。
蹲って溢れた雫が毎夜、無人の地をただ濡らす。
●
「街をひとつ、救って欲しいのじゃよ」
集う猟兵達の前に立つ、ティル・|レーヴェ《エアルオウルズ》(福音の蕾・f07995)が徐に口を開いた。正確には、嘗て『街』だった場所に向かって欲しい、と彼女は言う。
「バグプロトコルによって破壊され、寄り付くプレイヤーも生活するNPCもいなくなってしまった場所……通称バグシティ、此処もそのひとつ」
そう地図を示しながら、彼女は話を続ける。
曰く、夜の長い地域にある嘗てのこの街は、夜に関するイベントが良く催されており、この時期になるとクリスマスに因んだイベントで賑わっていたという。
「じゃが、多くのバグシティ同様、此処も破壊されて今では廃墟同然。そうして、とあるバグプロトコルの屯する地になっている……の、じゃがな」
言葉尻を濁した彼女は僅かに眉を下げ、そうして再び君たちを見つめ、言う。
「そのバグプロトコルというのが、赤ん坊らしき姿を持つ亡霊なのじゃよ」
短い昼が終わり、長い夜が訪れると現れるそのバグプロトコルの群れは全て、赤子の亡霊の姿をしているという。くらいよ、こわいよ、と泣き。たすけて、と手を伸ばし。泣き疲れてはその場のものを道連れにねむる、赤子の霊たち。
「唯々救いを求めているのかもしれぬ。今は形無き街で、嘗て煌いていた夜のあかりを、あたたかさを。この地に救いを求めて、集ったのかもしれぬ。けれども、今の儘では――ただ、害為す存在であり続けてしまう」
それに、浮かばれぬまま無人の地を彷徨う霊の嘆きは、赤子の泣声は……あまりに。
痛ましげに眉を顰めた彼女は、一度伏せた瞼を持ち上げて、君たちを見る。
「|其方《そなた》らならば、その悲しみを終わらせることができよう」
どうか、集うバグプロトコルを――悲しき赤子たちを、真に眠らせてきて欲しい、と。彼女は深く頭を下げた。
そうして、下げた頭を緩やかに持ち上げた彼女は、それから、と言葉を続けた。
「赤子の亡霊たちを全て鎮めた後は、かの地の復興も願いたい」
街の復興、と聞くと大変そうに思うが、ここはゲームの世界。対応したシステムの力により、必要素材等を用意すれば一瞬で建造物やアイテム類を作り出すことが可能なのだ。
「ほほ、便利な世界じゃの。そうしてこの地の近くには、『雨の星』というレアアイテムが獲れる場所があってな。其れを使うことによって、この地の建造物を生成、修復することが叶うのよぅ」
故に、復興のためには『雨の星』を探し出す必要がある。
「『雨の星』は、雨の日にだけ天から稀に落ちてくるアイテムでな、淡く青く光る故、暗い夜の方が見つけやすい。雨はシステム上定期的に降るのじゃが、雨が苦手な者は止んでいる時にでも、落ちている其れを見つけることが可能じゃろう」
レアアイテムであるが故、システムの都合上、『このエリアで取得出来るのはひとりひとつ』。別のエリアでは制限が異なるだろうが、ここではそうなのだと彼女は手帳を手に語った。
「『雨の星』を入手したら街に戻り、復興したい場所で『雨の星』を両の手に包んで祈ればいい。祈る内容は何でも構わぬよ。祈りに応えて『雨の星』の光が増し、あたりを包み――その場所が復興するという」
そう告げながら、彼女は嘗て街であった頃の地図を皆の前に広げて見せた。
中央には大きな噴水広場があり、人々が集まるのに最適で、高い釣り鐘塔のある大きな教会も街のシンボル。教会の運営する孤児院もあったよう。
木製やレンガ造りの家屋や店の並ぶ街並みは、あたたかくもどこかメルヘンチック。商店街には様々な店が並び、子どもたちの駆けまわる広場や、あたたかい季節にはボートが楽しめて冬には厚い氷のはる大きな池もあったらしい。
その他にもイベントが定期的に開かれていた街とあって、それなりの大きさ、施設が並んでいたようだ。
「特にクリスマスイベントは毎年好評で、事前からイルミネーションで煌めく街は、きららかで賑わっていたそうじゃよ」
丁度今はそのイベント前の時期に重なるから、形を取り戻した煌めく街を皆で楽しむといいと彼女は語る。復興中の街での買い物や住人との交流は街の発展にも繋がるだろうし、純粋にその地を楽しむ姿も新たな人を招く呼び水になるだろう。それに……、
「あたたかで、きららかで。そんな街の賑やかな夜が戻れば――今は嘆く子らも、天からその温もりを味わえるやもしれぬ」
それは未だ、判らないけれど。
「色々と頼んでしまうが、いずれも其方らなら、良き形と成してくれると信じておるよ」
どうか、よろしく頼む、と。秘色の髪と鈴蘭を揺らし再び頭を下げた彼女によって、君達はかの地へと送られたのだった。
四ツ葉
初めまして、またはこんにちは。四ツ葉(よつば)と申します。
此の度は当オープニングをご覧頂き、有難うございます。
未熟者ではございますが、今回も精一杯、皆様の日々を彩るお手伝いが出来ましたら幸いです。
それでは、以下説明となります。
●シナリオ概要
★各章について。
(日常章の能力値による選択肢は参考まで、行動はご自由にどうぞ! 戦闘章は指定UCの能力値によって相手の使用技が決まります)
第1章:集団戦『ネームレスベイビーズ』
夜になると現れる、赤ん坊らしき姿を持つ亡霊タイプのモンスターです。救いを求めるように彷徨う彼らを、倒す事によって苦しみから解放し、天へと導いてあげて下さい。
第2章:冒険『雨の星をさがして』
街の復興に必要なレアアイテム『雨の星』を探して下さい。入手できるのは、ひとりひとつです。
街の跡に持ち帰った『雨の星』を手に祈る事で、そこに在った建物などが復興します。使用した『雨の星』は、宿す光と力を失いますが、淡い青き宝石として手元に残ります。
オープニングに記載されているもの以外にも、街の雰囲気に合ったものでしたら自由に指定可能です(余程で無ければ大丈夫ですが、あまりにそぐわない場合には不採用の可能性がございます。ご了承下さい)。
皆さんの力で、冬に煌めく街を甦らせて下さい。
第3章:日常『煌めく街灯り』
復興したクリスマス前の煌めく街をお楽しみ下さい。存在する施設や店などは前章の結果を受けて変化しますので、復興した街の詳細は章冒頭に追加する予定です。
復興したお店で買い物をしたり、住民のお願いなんかを叶えてあげると、復興が進み今後の発展に繋がるかもしれません。
未成年者の飲酒喫煙や他者への迷惑行為など、いつもの禁止事項に注意下されば、自由に過ごして頂いて大丈夫です。思い思いのお時間を楽しんで頂ければ幸いです。
3章のみ、お声がけがあれば、案内役のティルが顔を出しますが、声が掛からずともどこかでこの地を満喫していることでしょう。
●プレイングについて
OP及び各章公開後、MSページ及びタグにて、受付開始日をお知らせ致します。
受付前に頂いたものは、お返しとなりますのでご注意ください。
受付の〆についても、同様にご連絡差し上げますので、お手数をおかけいたしますが、プレイング送信前にご確認下さい。
有難くも想定より多く目に留めて頂けた場合、採用出来ない方が生じる可能性もございます。
決して筆が早い方ではありませんので、全員描写の確約は出来ませんことを念頭に置いて、ご参加頂ければ幸いです。
また、その場合は先着順ではなく、筆走る方から順に、執筆可能期間内で出来る限りの描写、となりますので、ご了承頂けますよう、お願い申し上げます。
●その他
・同行者がいる場合は【相手の名前(呼称可)とID(f○○○○○)】又は【グループ名】のご記入お願いします。キャパの関係上、今回は1グループ最大『2名様』まででお願い致します。また、記載無い場合ご一緒出来ない可能性があります。
・逆に、絶対に一人がいい。他人と組んでの描写は避けたい、と言う方は【絡み×】等分かるように記載して頂ければ、単独描写とさせて頂きます。記載ない場合は、組んだり組まなかったりです。
・グループ参加時は、返却日〆の日程が揃う様、AM8:31をボーダーに提出日を合わせて頂ければ大変助かります。
では、此処まで確認有難うございました。
皆様どうぞ、宜しくお願い致します。
第1章 集団戦
『ネームレスベイビーズ』
|
POW : たすけて
【飛ばした手】が命中した部位にレベル×1個の【呪詛を込めた掴み痕】を刻み、その部位の使用と回復が困難な状態にする。
SPD : ねむたいな
【眠りに就く】動作で、自身と敵1体に【眠り】の状態異常を与える。自身が[眠り]で受けた不利益を敵も必ず受ける。
WIZ : くらいよ、こわいよ
レベルm半径内に【泣き声】を放ち、命中した敵から【気力や精神力】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
イラスト:イツクシ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ルシエラ・アクアリンド
声が聴こえるのなら手を伸ばしたい
遠い昔から変わらない私が在る理由
幼いシエラを安全そうな箇所へ
肩から下ろし少し待って、それと貴女も祈ってあげてねと声を掛け
聖獣である彼女にならそれで充分
スピリットのライは古い付き合いだもの
言われずともだろうな
自分が倒れる羽目になっては元も子無い
白い魔導書にて対応
身軽さ生かし、空中機動を利用し攻撃は躱す方向で
万一の暗闇には光の羽根で対処
優しい風に、羽根に包まれて眠りの先へ導ける様に
精神攻撃と全力魔力を込めたUCを発動
少し狡いけれど出来れば記憶を主に奪い
大丈夫だよと、くらいのもこわいのももうおしまいだよ
と伝えたい
創造された世界だろうと生まれたその思いは本物と思えるから
●
星影も見えぬ昏き夜。暗闇に包まれた『街』であった場所へと足を踏み入れて、ルシエラ・アクアリンド(蒼穹・f38959)は静かに目を伏せた。届くのは、街に響く赤子の泣声。まだ少し遠いその聲に耳傾けて、ルシエラは静かに思う。
――声が聴こえるのなら、手を伸ばしたい。
そう、それは、遠い昔から変わらない『私が在る理由』。胸に当てた手を軽く握り、彼女は己を見つめている幼き仔竜の桃華獣へと、柔らかな視線を向けた。
「シエラ、少しここで待っていて」
優しく声を掛けながら肩から下ろした仔へと告げる。此処ならば崩れた瓦礫が通りからの死角になってくれるだろう。周囲の安全を確認し、澄んだ瞳に視線を合わせ重ねて声を掛けた。
「それと、貴女も祈ってあげてね」
彼女の言葉に、シエラは是を示すよう翼をはためかせる。愛らしくも確と返る彼女の意思に、笑みを深めたルシエラは屈んでいた身を起こす。止まぬ泣き声に向き合うべく、踵を返し前を見据えたルシエラの隣に、自然と鷹のスピリット――ライが並び飛ぶ。古い付き合いの彼には、言葉なくとも分かるのだろう。交わす視線に馴染みの頼もしさを覚えつつ、頷き一つ、ルシエラは『街』の中へと駆けこんだ。
一歩奥へ踏み入れば、崩れた街中には多くの赤子のような亡霊が蠢いている。何かを探すように彷徨うように、おぼつかぬ動きで移動しては、手と思しき部位を伸ばし虚空を掴んで泣く。
『くらいよ、こわいよ』
暗闇の街に響くのは泣声ばかりだけれど、其処に赤子の霊の思いが乗る。裡へ、裡へと伝わってくる。恐怖と悲しみが、折り重なってルシエラの心に響き……引きずられそうになる感覚を、首を振り、払い除けた。
止まず届く声には手を伸ばしたい。けれども、自分が倒れる羽目になっては元も子無いとも知っている。白き魔導書を握ったルシエラが軽やかに地を蹴り跳ねた。
『くらいよ、こわいよ』
泣き続けながら取り囲むように集った霊達を飛び越えた彼女は、空中で頁を手繰り魔導書へと全力で魔力を籠めた。力強くしかし優しく、風が吹く。ふわり、ルシエラの青き髪を揺らしたそれは、書の生んだ光の羽を舞わせ往く。ふわりと溢れた羽が、彼女とその周りの亡霊たちを明るく照らし漆黒の闇が光の羽に払われてゆく。
――優しい風に、羽根に包まれて眠りの先へ導ける様に。
どうか、と願うルシエラの想いと共に、風が羽が、赤子の霊達を抱き包んでゆく。少し狡いことかもしれない。そう思いながらも、風に籠めた力は短期の記憶を奪うもの。すこしでも、今だけでも――、だって。
「創造された世界だろうと、生まれたその思いは本物と思えるから」
きらきらと光る羽を、地上から赤子たちが見上げている。泣くことをやめて、柔い風に包まれて。見上げた向こう、光の先でルシエラが微笑んだ。
「大丈夫だよ。くらいのもこわいのも、もうおしまいだよ」
光へか、その言葉へか、微笑む彼女自身に向けてだろうか。小さな小さな手がいくつも伸びて……そうして、風と光に還っていく。消える瞬間、穏やかな眠りにつく様に見えた赤子たちを思い、宙より降りたルシエラは、夜の空を静かに見上げた。
大成功
🔵🔵🔵
ギュスターヴ・ベルトラン
赤ん坊ってのは、元気に泣くのが一番だが…この泣き声は違う
胸の奥を軋ませるような、哀しみと痛みを伴った声だ
今回は助けを求める存在が相手だ
蝋燭に火を灯し、祈りを捧げると同時に、気力や精神力が削られないように狂気耐性と霊的防護を高める
…傷ついた存在はきっとこの明かりに気付く
暗かった、怖かったと訴えて泣くだろう
だからUCで世界を光に満ちたものへ変える
もう怯えて泣く必要はない
主の助けは、必ずある
浄化と神聖攻撃を乗せたHYMNEで攻撃する
…きらきらと眩く光る円刃を、この赤ん坊たちはどう思うんだろうな
ただ、害するモノだけではなく…昏い絶望を切り裂く、|光《愛》を呼ぶものと思ってくれたらいいんだがな
●
夜の闇が支配する嘗て『街』であった場所。赤子の泣声が響くその街の入り口に立ち、ギュスターヴ・ベルトラン(我が信仰、依然揺るぎなく・f44004)は、静か瞼を伏せて暫しその声を聴いた後、瞳隠す儘ほつりと零した。
「赤ん坊ってのは、元気に泣くのが一番だが……」
――この泣き声は、違う。
「胸の奥を軋ませるような、哀しみと痛みを伴った声だ」
眉を顰め、そう紡いだ彼は伏せた瞼を持ち上げて、真っ直ぐと暗き『街』の中を見据え、止まず、絶えず街中に響き渡る泣声の主たちを想う。
「今回は、助けを求める存在が相手だ」
それならば、と。ギュスターヴは蝋燭に火を灯し、祈りを捧げた。それと同時に、気力や精神力が削られないように狂気耐性と霊的防護を高め、街の奥へと進んでゆく。
かつ、こつ、夜の闇にギュスターヴの靴音が響き、その手に持った灯りが揺らめく。
――……傷ついた存在はきっとこの明かりに気付く。
それは、確信めいた思い。案の定、彼の持つ灯りに気付いた赤子たちが、あちらこちらから彼のもとに向かって集まってくる。
『くらいよ、こわいよ』
『くらいよ、こわいよ』
闇に響く泣声の中に純粋な恐怖と哀しみを乗せて、赤子たちが寄ってくる。重なりゆく泣声に、くらかった、こわかった、そんな訴えるような響きを乗せて、彼の持つ灯りに向かい縋るその様は想像した通りでいて、それ以上に胸を締め付けるような感覚をギュスターヴに与えてゆく。暗く深い感情が、泣き声に乗り裡に裡に積もってゆくようで――だからこそ。
「世界を光に満ちたものへ変えてやろう」
紡いだギュスターヴの瞳は、慈愛に満ちた光が宿って見えた。手にした灯りを掲げ、語りかけるようにして彼は言う。
「もう怯えて泣く必要はない」
――主の助けは、必ずある。
向かい来る赤子たちを真直ぐと見つめ、ギュスターヴは『光あれ』と紡ぐ。光とは即ち、愛。紡がれゆく言の葉が響く範囲、彼の今いる場が光と正常な空気に包まれてゆく。暗い闇が取り払われて、くらいよと泣く赤子たちが光る世界を眩げに見上げ目を細めた。そんな赤子たちの上を、ギュスターヴの対の手が操る光る円刃――HYMNEが舞う。
――……きらきらと眩く光る円刃を、この赤ん坊たちはどう思うんだろうな。
そう思いながら彼の操るきららかな光の円が、眩き世界に見入る赤子の亡霊たちを確実にとらえてゆく。ひとり、ふたり。光に還る赤子を見つめ、彼は思う。彼らを還すこの光の円刃が、ただ、害するモノだけではなく、
「昏い絶望を切り裂く、|光《愛》を呼ぶものと思ってくれたら、いいんだがな」
どうかそう在って欲しい。願う儘、煌めく世界の中舞う光の環は、彼の目の前に在る最後の赤子を還し送る。彼が最後に見たのは、濡れ羽色した赤子の瞳に映った――光。
願いは、想いは、届いたろうか。彼らは愛を、感じることが出来ただろうか。静寂の戻る夜の中、見上げた空に答えはないが、唯一つ確かなことは。今はもう、胸の奥を軋ませるような、哀しみと痛みを伴ったあの泣声は、聞こえないという事。
大成功
🔵🔵🔵
スミス・ガランティア
バグ……と呼ばれるものであれ、子供が泣いているのを見るのは辛いな。
【優しさ】を以て対処しよう。
彼ら彼女らに【待雪草の宴】を。
この花は贈ると相手の死を願ってしまう花だけど……慰めの意味も持つ。
どうか、最期に可憐な花を見てその心安らかにあれ。
泣き声に対しては、【気合い】で乗り越えよう。受け止めなければいけないからね。
どうか、彼らにも生まれ変わりがありますように。そしてその時は幸せでありますように、と【祈り】ながら……彼らを葬ろう。
●
赤子の泣声が響く壊れた街。宵闇の中、其処へと足を踏み入れた、スミス・ガランティア(春望む氷雪のおうさま・f17217)は、青き眸を僅かに細め、街中で赤子の亡霊たちが手を伸ばす様を見つめた。
「バグ……と呼ばれるものであれ、子供が泣いているのを見るのは辛いな」
悲しげな声を響かせて暗闇の中を彷徨う様は、ゲーム内のバグだと知っていても裡が締め付けられる思いがする。其れがたとえ、システムやデータ上の存在であったとしても、スミスの想いに変わりはない。
「泣く子には、優しさを以て対処しなくてはね」
穏やかな声音でそう告げれば、彼の存在に気付き集まってくる赤子の亡霊たちへと向きなおる。
『くらいよ、こわいよ』
『くらいよ、こわいよ』
闇の中重なり響く泣声には怯えた思いが乗り、縋るような音はどこか冷え冷えと裡に届く。己が内側まで冷え往きそうな其れに気合いで耐えながら、スミスは泣声の主たちから目を逸らさずに立つ。そう、彼らの泣声を受け止めると決めたのだから。
『くらいよ、こわいよ』
泣き声に乗り届く想いを受け止めながら、スミスは手にした六花の杖を数多の花弁に変えてゆく。それは、|待雪草《スノードロップ》の花弁。真白の花弁がまるで踊るかのように宙を舞う。華やかでいて、清廉な、そんな花弁の舞を赤子たちはひと時泣き声を止め、見上げている。
――この花は贈ると相手の死を願ってしまう花だけど……
花に籠められた言の葉を想う。けれども、この花の持つ意味がそれだけではないことは、スミスもよく知っている。そう、慰めの意味も持っていることを。
「どうか、最期に可憐な花を見て、その心安らかにあれ」
終わらせなければいけない。赤子たちの泣声も、亡霊として此処に在ることも。だからこそ、最後は安らかであって欲しい。スミスの願いを乗せて、想いを乗せて、白が舞う。ひらりはらりと舞う花弁が、無垢に見上げる赤子亡霊たちを、真に眠らせてゆく。
光を伴い還りゆく赤子たちに、止まぬ花を降らせ舞わせてスミスは祈る。この世界にそういう形があるかは分からない。けれども、願わくば――
「どうか、彼らにも生まれ変わりがありますように」
――そしてその時は、幸せでありますように。
願い、祈り、真白の花弁が彼の出逢った赤子の全てを『慰め』終えた時、元の六花の姿をとった大杖を地に置いて、スミスは今一度静かに祈る。泣き声の響かなくなった街で、彼ら彼女らの安寧といつかの幸せを。
大成功
🔵🔵🔵
レルヒェ・アルエット
旅仲間のノヴァ(f32296)と
通称バグシティとも呼ばれているところ
訪れるのが何だか懐かしくも思えるのは
不思議な心地ではあるけれど
猟兵としても此の世界の一員としても
頑張るとしようかな
データが赤子で亡霊の姿で
うーん…さすがはバグプロトコルの群れ
害為す存在であり続けてしまうのは
頂けないから片付けて仕舞おうね
手持ちの魔導書から群れに向けて光の矢を発射し
命中させれば召喚ドラゴンでの追撃つきだから
多数を手早く倒すには持ってこいかなとも思って
呪詛を込められた攻撃は厄介そうでもあるけれど
わたしは残念ながらバグを始末するのが仕事なのでね
…解放するのが助けになるかは
まだちょっと分からないところではあるけども
ノヴァ・フォルモント
レルヒェ(f42081)と
ゲームの中の世界ではあるものの
嘗てそこに居た人々
そして沢山の想いがあったのは確かだ
救えるべき場所があるのなら、見過ごすわけにはいかないな
赤子の亡霊…いや、あれがバグプロトコルか
闇夜の中で救いを求める声
彼らに意思があるのかは分からないが
今はただ、安らかに眠らせてあげるのが良いだろう
レルヒェが攻撃の準備を始めたら
自身も三日月の竪琴を抱えて、そっと弦を爪弾く
哀しい泣き声を打ち消すように音色を響かせて
夜の廃墟に光り輝く星の雨を降らせよう
真っ暗闇でなければ、もうこわくはないだろうか
落ち着かせ眠らせたのなら
バグという呪縛から解放してあげようか
●
夜の闇に包まれた、壊れた街。バグプロトコルによって破壊された、通称バグシティとも呼ばれているところ。旅仲間のノヴァ・フォルモント(月蝕・f32296)と共にこの地に立った、レルヒェ・アルエット(告天子・f42081)は、目の前の街を見つめ、思う。
――訪れるのが何だか懐かしくも思えるのは、不思議な心地ではあるけれど。
そう、この世界で生まれ、ダンジョンの守護についている自分が、『懐かしい』と感じる程に、この世界の『外』で過ごしていた時間を、自身に積み重ねてきたものの存在を実感し、ふと胸に手を当てたレルヒェの隣で、ノヴァも目の前の街を見つめ、思う。
――ゲームの中の世界ではあるものの。
「嘗てそこに居た人々、そして沢山の想いがあったのは確かだ」
紡がれるノヴァの声に、レルヒェの視線が彼を向く。
「救えるべき場所があるのなら、見過ごすわけにはいかないな」
「わたしも、猟兵としても此の世界の一員としても、頑張るとしようかな」
視線を合わせ頷きあったふたりは、夜の闇に泣声響く街の中へと駆けこんだ。
街の中に響き渡る赤子の泣声、たすけて、と手を伸ばす亡霊たちの姿。そうして、壊れた街に屯するその群れの数。目のまえの光景に、レルヒェとノヴァは其々に目を細めた。
「データが赤子で亡霊の姿で、うーん……さすがはバグプロトコルの群れ」
「赤子の亡霊……いや、あれがバグプロトコルか」
この世界でデータやバグとして在るあの赤子の亡霊たちが、他の世界のように意志があるのかはわからない。泣き声も、伸ばす手も、その全てが計算されて作られたものなのかもしれない。けれども、この耳に届く闇夜の中で救いを求める声は――そして、其れを受けて裡から湧き上がる自分の想いは、確かに『在る』ものだから。
「今はただ、安らかに眠らせてあげるのが良いだろう」
そう紡いだノヴァへとレルヒェも頷いて前を向く。この0と1の世界で生まれ生きてきたレルヒェには、データとしての存在も、バグへの対処もその身に馴染むもの。この感覚も、どこか懐かしいと思いながら、己の魔導書を手繰る。
「害為す存在であり続けてしまうのは頂けないから、片付けて仕舞おうね」
慣れた手つきでレルヒェが魔導書から呼び出すのは光の矢。ぽう、と燈る鋭き矢が闇を裂くように翔け、ふたりに手を伸ばし寄ってくる赤子の亡霊を貫くと同時、レルヒェの傍に控えていた召還ドラゴンがその隙をつくようにして高速で追撃を行った。
光と龍の連撃を受け、瞬く間に天へと還っていった赤子の霊と、戻るドラゴンを傍らに再び書を捲るレルヒェを見つめ、ノヴァもまたその手に三日月の竪琴を抱え、そっと弦を爪弾いた。この地に響く哀しい泣き声を打ち消すように奏でられる音色は、ノヴァの籠める魔力によって夜の廃墟に光り輝く星の雨を降らせてゆく。きらりきらりと空より降る星の雨が、レルヒェの放つ光の矢と共に周囲を明るく照らしゆき、彼らに対峙する赤子たち其々に『眠り』を齎した。
「真っ暗闇でなければ、もうこわくはないだろうか」
ほつりと零れたノヴァの言葉に、レルヒェの青い瞳が向く。そうならいいと願う旅仲間の彼の想いを聞きながら、レルヒェの放つ光の矢を受け倒れた亡霊が、光とともに還る。ふわりと立ち昇る光を見つめ、その往く先に思いを馳せた。
――……解放するのが助けになるかは、まだちょっと分からないところではあるけども。
そう、このデータの世界で、その先がどうなるのかは。けれども――、其処で思考を一度止めたレルヒェの呼び出した矢が、唄うノヴァへと手を伸ばした赤子の亡霊へと放たれた。
「わたしは残念ながら、バグを始末するのが仕事なのでね」
共に戦う旅仲間へと呪詛を与えさせはしないと、目の前のバグを見逃すわけにもいかないのだと。紡ぐ言の葉と籠る思いを表すように真っすぐに飛んだ光の軌跡を、すぐさま追ったドラゴンが、ノヴァに指先触れること叶わなかった亡霊を光と変えた。
「ありがとう、レルヒェ」
告げた礼に笑みと頷きで返した彼に背を預け、残る赤子たちに対峙する。辺りを満たす泣き声も随分やんできた。伸ばし這い寄る手も減ってきた。残る子達も落ち着かせ眠らせたなら。
――バグという呪縛から解放してあげようか。
この地からの解放が彼らの救いたるかは分からずとも、バグからの解放は少なからずも、彼らの先に繋がる筈だ。そうして、この街の――この世界の先に繋がる其れにも、そう、きっと。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
劉・久遠
バグプロトコルとはいえ、二児の父として泣いとる赤子は放っとけへんね
それが害になるなら尚更な
猟兵として油断はせんが出来る限り寄り添ぅてやりたいな
怖がる赤子をあやす歌声で子守歌を【歌唱・音響攻撃】
ねんねしよなーとインカムやドローンで広範囲に聴かせ
出来るだけ痛い・怖い思いもせんよう眠っとる間に【除霊】しましょ
泣く子には「どしたん?」「大丈夫、ちゃんと傍におるよ」と返事
UCにはUCで抵抗、意地でも起きますよ
親っていうんは子が眠りにつくまで起きて見守るもんやからね
ボクはこの子らの親やないけど、泣き疲れて寂しく眠るよりはええやろ
ちゃんと最後の一人まで見届けるさかい、人のぬくもり感じて還りな
どうかええ夢を。
●
暗い夜の街に響く赤子の泣声。遠く近く響く其れを耳に受けながら、劉・久遠(迷宮組曲・f44175)は、羽織る上着に軽く手をかけた。
「バグプロトコルとはいえ、二児の父として泣いとる赤子は放っとけへんね」
――それが害になるなら尚更な。
伏目がちに流した視線は建物の影へと向けられて、その向こうに蠢く赤子の霊の影を捉えた。ゆらり、ゆら、うつらうつらと夢と現の挟間を彷徨うように揺れながら、陰から霊の群れが久遠に向かって集まってくる。
『ねむたいな』
『ねむたいな』
くらり、ゆらりと揺れては一緒に寝ようと言わんばかりに手を伸ばし、空を切ったその手で身を抱き蹲りながら、ほろりと雫を零して眠りにつく赤子の様は、其れを見る久遠をも眠りに誘うような力が働く。くらりと視界が揺れかけて――、
「……わるいなぁ。ボクにソレは効かんよ」
伏目で紡いだ口許は僅かに弧を描き、その直後、赤子たちから向けられた眠りの力が、久遠の仕込んだ術式によって、跳ねて返った。
「子を寝かしつけるのは大人の役目や、意地でも起きますよ」
子に寝かしつけられてたら、あかんやろ? なんて、明かした瞳で赤子を見つめ、軽く紡ぎ添えてもみせながら、眠りの力を退けた久遠はその手に銀月思わせるギターを抱く。インカムの位置を整えたなら、奏で歌うは怖がる赤子をあやす子守歌。
――猟兵として油断はせんが、出来る限り寄り添ぅてやりたいからな。
歌いながら赤子たちに向けた視線は、あたたかなもの。ひとりでも多くの子らにと、インカムやドローンの力も駆使して広範囲へと子守唄を響かせながら、子らへと唄う。紡ぐ音色は柔らかに。包み込むよな歌声は、ねむたいと紡ぐ赤子を夢の世界に誘ってゆく。
「そうそう、そのままねんねしよなー」
歌の合間に語り掛けながら、未だ眠らず屯する赤子たちにも歩み寄る。ぐずる子も、余すことなく心寄り添い語りかけて。
「どしたん? 大丈夫、ちゃんと傍におるよ」
ねんねん、ねんねん、ひとりやないよ。寂しぃんも哀しぃんも、怖いんもぜぇんぶ、置いていき。除霊をするその際も、出来るだけ痛い・怖い思いもせんように。そう、赤子たちを想う儘、久遠は歌い受け止め眠らせて。眠る子らに柔く笑う。
「親っていうんは、子が眠りにつくまで起きて見守るもんやからね」
――ボクはこの子らの親やないけど、泣き疲れて寂しく眠るよりはええやろ。
この一夜、彼らを還すこの瞬間は、親代わりとなれるよに。安らかな、あたたかな眠りに誘えるよに。久遠の子守歌は、止まず響く。ひとり、またひとり。眠る赤子を見守って、そうして真なる『眠り』に誘ってゆく。
「ちゃんと最後の一人まで見届けるさかい、人のぬくもり感じて還りな」
――どうか、ええ夢を。
大成功
🔵🔵🔵
都嘴・梓
【煙響】
…かわいそーなガキだねぇ
身に刺さる相棒の視線に笑ってヘラヘラ
…―んー、漣の思う通り世界が違えば俺はこうだったかも!
なぁんてね
やだぁ顔こわぁい
意地悪じゃないって
だって顔に書いてあるんだもん、しょーがないにゃーん
俺はまだ漣に自分の昔は全部話さない…ってか話せてない
哀れみも同情も心配もいらない…それはそれ、終わったこと
おふくろ好きすぎて俺をおふくろ代わりにした|クソ野郎《パパ》の話なんざ誰が喜んで聞くんだよ
んーで、このカワイソウなチビ共どーする相棒
俺任せ、ねぇ
…好き好んで食うわけじゃない
でも、腹から生まれたなら腹に戻してやればいい
生憎、俺は育めもしねぇ体だけど、
ねぇおチビ、あったかーい俺の腹が今なら空っぽだけど…どーする?
痛くしないよ
御伽話の牡蠣みたいに、俺がつるんと食べたげる
おいで
もう寂しくない、寝てる間にぜぇんぶ終わらせてあげるから
痛みは殺してUC
好きなだけ縋っていいよ
俺の相棒が音楽といちゃついててさみしー俺といちゃつこ?
なんておどけて見せる
えー、だぁって俺だけソロなんだもん!
一ノ瀬・漣
【煙響】
異世界とは言え、ゲームの中にも入れちゃうとか…
猟兵って本当、凄いよねぇ
アイスブレイク的に投げつつ様子窺う
この敵…幼い頃の梓に似てるだろうから
心の内がバレて驚き
冗談にもならない事言うから睨めつけ
…けど、梓の気持ちも分かる
家族亡くした頃のオレも同じだった
憐憫も同情も心配も要らない
だってそれって、他人事じゃん?
だからオレは、同じ目線で寄り添ってくれる音楽が支えだった
んー…梓に任せるよ
いつもみたく食べる?
苦笑混じりに尋ね
梓のしたいよーにして良いんじゃない?
オレにとっては、梓の気持ちが一番大事だし…
それに、きみが選んだ方法は彼らにとっての幸いでもあると思うよ
オレはそんな梓のサポート
オレ達にオーラ防御かけ先制攻撃UC
愛器爪弾き、優しい音色の楽器演奏と歌唱で眠りの鎮魂歌を
強化は防御
家族を失って独りが耐えきれず、たすけて、とオレも死に縋った
…けど、音楽が支えてくれた
だから…これ(オレの音楽)が
きみたちにとっての救いになれば
なぁに言ってんの
今の支えの梓は誰にもやる気ないから
音楽の方あげてるんじゃん
●
「……かわいそーなガキだねぇ」
暗い闇が支配する夜の街。どこか冷え冷えとした其処に響き渡る泣き声と、その主である赤子の亡霊たち。目の前の光景を前にして、都嘴・梓(|嘯笑罪《ぎしょうざい》・f42753)が、口にする。僅か細めて見つめる彼の様子を見て、隣立つ一ノ瀬・漣(Pour une infante défunte・f44080)も、ゆったりと口を開いた。
「異世界とは言え、ゲームの中にも入れちゃうとか、」
――……猟兵って本当、凄いよねぇ。
アイスブレイク的に相棒に投げた言の葉を追うように、漣の視線も梓へ向かう。様子を窺うように投げた其れは、裡を示すように真っ直ぐで。そんな身に刺さるような視線を受けて、へらりとわらった梓が軽く口を開いた。
「……んー、そーだねぇ」
――漣の思う通り、世界が違えば俺はこうだったかも!
なぁんてね。なんて、わらうまま、軽口めいてあっさりとそんなことを言うものだから。心の内がバレて驚くのも束の間、彼の紡ぐ冗談にもならない言の葉に、漣は梓を睨めつける。
「やだぁ、顔こわぁい。意地悪じゃないって」
にいと細めた瞳に相棒を映し、梓はわらう。笑って――表に出す言葉に、隠した。そう、まだ漣に自分の昔は全部話さない……いや、話せていない。哀れみも、同情も、心配もいらない……それはそれ、終わったことなのだから。それに、
――おふくろ好きすぎて、俺をおふくろ代わりにした|クソ野郎《パパ》の話なんざ、誰が喜んで聞くんだよ。
ハッと、内側でわらう。そう、そんなことは自分が一番わかってる。だからこそ、紡ぐのだ。裡を、昔を、今は未だ表に出さないように。にこりと笑って、かろい声で。
「だって顔に書いてあるんだもん、しょーがないにゃーん」
なんて。尚もお道化て紡ぐ相棒の様子を見つめて、思わず漣の眉根は潜まってゆくのだけれど……けれど。
――……梓の気持ちも分かる。家族亡くした頃のオレも同じだった。
目の前の相棒に、いつかの想いを重ねる。そう、あの時の自分だって、そうだった。憐憫も、同情も、心配も要らない。そう、わかるんだ。
――だってそれって、他人事じゃん?
だから自分は、同じ目線で寄り添ってくれる音楽が支えだった。きっと梓にも、今の彼にも漣にとっての『音楽』と同じものが必要なのだ。だからこそ、今は。それ以上を紡がず、彼の隣で前を見る。ただ、傍に在り同じものを見る。
「んーで、このカワイソウなチビ共どーする、相棒」
先に言葉を続けたのは梓だった。漆黒の街の中、蠢き手を伸ばし、届かぬそれを抱えて泣いて眠る赤子たち。
「んー……梓に任せるよ。いつもみたく食べる?」
「俺任せ、ねぇ」
苦笑交じりに尋ねた相棒に、んーと考えるようにして梓が見つめ返した。彼からの視線を受けながら、柔く瞼を伏せた漣が紡ぐ。
「梓のしたいよーにして良いんじゃない? オレにとっては、梓の気持ちが一番大事だし……それに、」
――きみが選んだ方法は、彼らにとっての幸いでもあると思うよ。
彼のしたいように、思うように。そう、寄り添うような言の葉が漣から齎される。背を押すような言の葉に、梓の視線が赤子たちに向く。
――……好き好んで食うわけじゃない。
けれども。腹から生まれたなら、腹に戻してやればいい。そう思うのだ。
――生憎、俺は育めもしねぇ体だけど、
そう、それでも。
真っ直ぐと向けた視線で赤子の亡霊たちを赤に映し、梓は一歩、前に出た。
「ねぇおチビ、あったかーい俺の腹が今なら空っぽだけど……どーする?」
この身で与えられるものがあるのなら。怯え嘆き彷徨う子らに、『行き場』を与えられるなら。そう歩みゆく彼を、サポートするように。往く彼の背を押すように、泣く赤子を包むように、愛器爪弾き、優しい音色の楽器演奏と歌唱で、漣は眠りの鎮魂歌を奏でゆく。漣の奏でる音楽の齎す護りの力が、ふたりを包む。
――家族を失って独りが耐えきれず、たすけて、とオレも死に縋った。
けれど、音楽が支えてくれた。だから……|オレの音楽《これ》が、きみたちにとっての救いになれば。そう、願うままに爪弾き歌う。想いの全てを、歌に、音に乗せて。目の前の哀しい子らに、穏やかな眠りを齎す音に。大切な相棒へ、確かな護りを齎す歌に。
耳に、背に、相棒の『音楽』を受けながら、梓の歩みは止まらない。
「痛くしないよ。御伽話の牡蠣みたいに、俺がつるんと食べたげる」
――だから、おいで。
受け止め受け入れる。そうして伸ばした梓の手に、『たすけて』と、赤子の伸ばす手が重なった。掴んだ其れを離さない、とばかりに握りしめてくる、ちいさな手が齎す見た目以上の痛みも呪詛も殺して、捕まえる。
「もう寂しくない、寝てる間にぜぇんぶ終わらせてあげるから」
ね、と向けた視線は、赤子から奏でる漣へと。そう、彼がきっと、いや、必ず。穏やかな眠りを齎してくれるから。夢を見るまま、あたたかい『内』へとおいで。好きなだけ縋っていいよ、と、言い聞かせるようにいつしか眠った赤子へと囁いて、言葉通りにつるりと飲み込んだあと。に、と笑った梓は相棒を振り返る。
「俺の相棒が音楽といちゃついててさみしー俺と、いちゃつこ?」
ねー、なんて、腹を擦ってお道化て見せた梓へと、爪弾く手は休まずに、歌をとめた漣が肩を竦めた。
「なぁに言ってんの」
「えー、だぁって俺だけソロなんだもん!」
そんなことを、お道化るままに続けて言うものだから。
「今の支えの梓は誰にもやる気ないから、音楽の方あげてるんじゃん」
そう、しっかりと伝えてみせるのだ。
嘗て自分を支えた『音楽』は共に在るけれど、今の支えは『何』なのか。伝えたからには、知らないとは言わせない。だから、ほら、きみはきみのやりたいことを。きみの今を、支えてあげるから。再び、爪弾き鳴らした愛器の音と歌に乗せて。夜に響け、届け。
|オレの音楽《これ》が、『きみたち』にとっての救いになれ、と。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
楊・暁
【朱雨】
たすけて、か…
そういや俺、そう思ったことはなかったな
妖狐軍でそんな甘ったれたこと言っても
誰も助けてくれる奴なんていねぇって分かってたし…
母国(日本)で死ぬまでは死ねねぇって
ただただ、我武者羅に生きてた
藍夜に急に抱きしめられるのすらもう、今は必然で
そのぬくもりを全身で受け止める
何度だって聞きてぇ声と言葉に、ほんの少しの苦笑と満面の歓びを
ありがとう
…藍夜は?
…そっか
微笑むとこじゃねぇんだろうけど
お前と共有できるのなら
辛い想いもしといて良かったとさえ思う
心ん中ではずっと、手ぇ伸ばしてたんだろうな
何を求めてるのかも分からずにさ
…俺の欲しいもんが愛情で
それを求めてたってことに気づかせてくれたのも
それを与えてくれたのも、藍夜だぞ?
一度、ぎゅっと手を繋ぎ
長引かせるのは気の毒だ
――藍夜、一気に行くぞ…!
真横に構えた愛刀を媒介にUC発動
雪の白に月光が反射して、暗闇に光を灯す
討つことでしか救えねぇなら、せめて明るくて綺麗な世界で…
例え仮初でも、お前等の求めたもん見せてってやりてぇ
それが俺なりの弔いだ
御簾森・藍夜
【朱雨】
ただ、今この瞬間この小さな体を離してはいけないと思った
強く心音を抱きしめて自分のコートの裡に入れて
何度も伝え続けた言葉を
“今まで無事で生きてくれてありがとう”
意地でも根性でも何でも
ただ生きて生き抜いた心音と逢えたことが俺は嬉しい
俺は—…どうなんだろう
きっとそういう気持ちはあった
寂しかった
だが、
心音と同じだ
悲鳴の上げ方を知らないから、上げられなかった
闇雲でも手を伸ばしたからこそ、心音と出会えた
この幸運に心から感謝しよう
冷えた小さな手を包み込みぎゅっと握る
熱を分け合うように、伝えられるように素手で
心音は情けに篤い
穿った目で見れば、最もか弱い赤子という存在を象る醜悪さは街を滅ぼした事実に表れている
それこそ猛獣の類ならば、
だが見目と言葉選びで誘う憐憫…
どうにも、俺は好いてやれそうにない
しかし心音が救いたいと望むなら俺がその力を増幅させるのみUC
―悪いな赤子。俺が立つ限り此処に暗闇は“無い”
本当は嘘だがハッタリも大事だろ
重ね呼んだ満月は遍くこの地を照らし、お前の頬滑る雨は淡く命を喰らう
●
暗き夜に泣く赤子。夜の街に響く泣き声に乗り届く想いに、楊・暁(うたかたの花・f36185)は、静か耳を傾け思う。
「たすけて、か……」
――そういや俺、そう思ったことはなかったな。
ふと視線を宙に向け、思い出すのは過去のこと。妖狐軍で、そんな甘ったれたことを言っても、誰も助けてくれる奴なんていないということも分かっていたし、|母国《日本》で死ぬまでは死ねない。ただただ、そう思って我武者羅に『生きて』いた。
ゆるりと視線戻す先、蠢く赤子の亡霊達をその瞳に映しながらも思考は過去に向けた儘の暁を、御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)の伸ばした腕が包み込む。
伸びた手は半ば反射的に、ただ、今この瞬間、この小さな体を離してはいけないと、藍夜は思った。想う儘、強く彼を抱きしめて、自分のコートの裡に入れて、何度も伝え続けた言葉を、今また紡ぐ。
「心音」
――今まで、無事で生きてくれてありがとう。
藍夜に急に抱きしめられるのすらもう、今は必然で。暁は彼からのぬくもりを全身で受け止める。ぬくもりと共に、耳に、身に、届き響くその言葉。何度だって聞きたい彼の声と言葉に、ほんの少しの苦笑と満面の歓びを咲かせて、告げる。
「ありがとう」
暁から返る言葉は短くも、音に、表情に、彼からの全てが籠っている。伝わる其れが、愛おしくて、堪らなくて。
「意地でも、根性でも、何でも。ただ生きて生き抜いた心音と逢えたことが、俺は嬉しい」
尚も重ねられる藍夜の声と想いを受けて、暁の顔は受けたぬくもりのまま、湧き上がるあたたかさのままに綻ぶ。そうして、じ、と見つめて――彼にも問うのだ。
「……藍夜は?」
「俺は、」
――……どうなんだろう。
腕の中から問い返された言の葉に、思わず少し瞬いて、思案気に藍夜は視線を持ち上げた。そうだな、と呟いて、静かに、思い馳せるよに瞼を伏せる。
「きっと、そういう気持ちはあった。……寂しかった。――だが、」
――心音と同じだ。悲鳴の上げ方を知らないから、上げられなかった。
ひとつ、ひとつ。自分の裡を確かめるように、思い起こすようにそう紡ぐ藍夜を腕の中から見上げ、暁は目を細めた。
「……そっか」
零れた音は、優しく響く。口許に浮かぶのは――微笑み。少し眉を下げながらも、確かな微笑を浮かべ、暁は想う。
――微笑むとこじゃ、ねぇんだろうけど。
けれど。
「お前と共有できるのなら、辛い想いもしといて良かったとさえ思う」
紡がれる暁の言葉に、目の前で綻ぶ彼の笑みに。藍夜の口許も自ずと綻び、ああ、と頷きと共に柔らかな視線が暁を捉えた。こうして互いを瞳に映し合い、ぬくもりを交わすことが出来るのは――そう。
「闇雲でも手を伸ばしたからこそ、心音と出会えた」
それは、今迄の何が一つでもかけていたら繋がらなかった、今。辛いことも、苦しことも、今に繋がるものであるならば。
――この幸運に、心から感謝しよう。
素手を晒した藍夜の手が、冷えた暁の小さな手を包み込み、ぎゅっと握る。熱を分け合うように、伝えられるように、しっかりと。彼からの其れを受けて、この手が、裡が、求めていたものを改めて知る。そう、きっと。
――心ん中ではずっと、手ぇ伸ばしてたんだろうな。
何を求めているかもわからずに。ずっと、ずっと、知らず伸ばして、求めていたもの。其れを教えてくれたのは、紛れもない彼なのだ。そのことが、こんなにも裡を満たし溢れさせてくれる。
「俺の欲しいもんが愛情で、それを求めてたってことに気づかせてくれたのも、それを与えてくれたのも、藍夜だぞ?」
知っていて欲しくて、いや、もう知っているのだとしても、何度でも伝えたくて。何度でも聞きたい彼の声、彼の言葉、其れを与えてくれる愛するひとに、自分からも送りたいから。包まれていた手を一度解いて、ぎゅっと繋ぎなおせば、前を向く。『たすけて』、と手を伸ばす赤子たちを、今一度まっすぐに見つめた。
「長引かせるのは、気の毒だ」
――藍夜、一気に行くぞ……!
真横に構えた愛刀を手に駆けだした暁と、その先の赤子の霊達を藍夜は見つめる。
――心音は、情けに篤い。
蠢く赤子の亡霊たち。彼らを映す藍夜の目は冷静だ。穿った目で見れば、最もか弱い赤子という存在を象る醜悪さは、街を滅ぼした事実に表れている。そう、静かに、そして僅か鋭く前を見据えた藍夜は思う。それこそ猛獣の類ならば、と。しかし、見目と言葉選びで誘う憐憫。
「……どうにも、俺は好いてやれそうにない」
僅か瞼伏せ、駆けだした暁には届かぬ声音で零しつつ、しかし、と。再び暁の背と先の亡霊たちを見る。
「心音が、救いたいと望むなら」
そう、彼がそう望むのならば、藍夜が取る道はただ一つ。彼の為すことの為、その力を増幅させるのみだ。
「悪いな赤子。俺が立つ限り、此処に暗闇は『無い』」
力ある言葉と共に具現するのは、藍夜の『夜』。月も星も見えぬ夜の空が、瞬く間に月光の美しい夜空へと変わりゆき、はらはらと月明りを帯びた狐雨を招く。
――本当は嘘だが、ハッタリも大事だろ。
裡にて紡いだ藍夜の呼んだ満月は遍くこの地を照らし、『たすけて』と赤子の伸ばす手と身を濡れそぼらせて、その頬滑る雨は――淡く命を喰らう。対して、煌々と降り注ぐ満月のあかりは、駈ける暁の身に加護を宿し、彼の愛刀を輝かせた。光を受けた暁の口許が僅か笑み、その力をも己が糧と変えながら、目の前の赤子を確と見据えて彼は告ぐ。
「お前の焦がれたもの、見せてやるよ」
招く吹雪は真白に夢を映すもの。赤子の望む幻を見せる雪の白に月光が反射して、暗闇に『光』を灯す。
「例え仮初でも、お前等の求めたもん見せてってやりてぇ」
赤子たちに見えている景色は分からない。其々に、望む世界が――暗くも怖くもない世界が見えているといい。そう、
――討つことでしか救えねぇなら、せめて、明るくて綺麗な世界で……。
願う想いは真っ直ぐに。赤子に想いを向けても重ねても、やるべきことは見失わない。今を生きる暁の傍には、自分だけの『夜』が添うのだから。だからこそ、迷いなく刀を握る、駈ける足に力を籠める。
「それが俺なりの弔いだ」
『たすけて』と、暁へと向けていた赤子の手が、不意に天へ向いた。その先に何が見えたのか。知る術はないけれど、光と昇る先も――その先も、どうかと願い、振り抜く切っ先で送る。
月明りと雪明り。眩き世界に包まれる中、ひとり、またひとりと赤子は光に――天に還りゆく。漆黒の街に響き渡った泣き声は、もうひとつも聞こえない。
静かに、優しく降る雨の音が、夜の街を満たし包んでいた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『雨の星をさがして』
|
POW : よく歩いて探す
SPD : 高いところから探す
WIZ : 誰かにたずねてみる
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
哀しき泣き声が止み、訪れるは静かな夜。
そこに、ほつり、ほつりと雨が降る。
雨雲に隠された天には月も星も見えはしないが、変わりに雨と――星が降る。
さあさあと、静かな雨音が辺りを支配し始める頃、空を見上げた君たちの目に、きらりと光るものが雨雲の中から降るのが見えた。
落ちる先は、街から散歩程度の距離にある森の中。『星抱きの森』と呼ばれるそこに、空から降りた『雨の星』は隠れているという。形や大きさは様々。掌に収まるまでの大きさと、淡く青い光を宿しているのは共通点。
落ちる場所が見つけやすいのは、『雨の星』が空から降る雨の最中。木々の茂らぬ森中の花畑や空からならば、落ちる最中の光が見つけやすいだろう。しかし、降る間に目星をつけて、止む頃に探しにゆくのもいいかもしれない。辺りが全て夜の帷に包まれる、長き夜のうちに探すのも見つけやすくはあるが、木々の茂った影地を探せば、短き昼に見つけることも叶うかもしれない。森を狩り場や住処とするNPCや猫達に、落ちた場所を問うのもいい。
探しに往く|時間《タイミング》は猟兵達に委ねられている。長く長く『街』の形を忘れた場所だ。此処に『街』が戻るのならば、少しの差などは小さき事。星を抱く森の中で、煌めく青を願いの星をどうか見つけて。そうして淡く光る星を手に、『街』の姿を皆の手で。
あなたの祈りで、星の光で、どうか、どうか――
スミス・ガランティア
さて、肝心の復興に必要なアイテムを探さなきゃなんだけど……さすがに我は夜と雨の間はパスかなあ。いくらキラキラ光るとはいえ視界が悪いからね。我に夜目が効く技能は無いし。
というわけで、短い昼に森の中を探索しようと思うよ。木陰の中も見やすいかもだけど、雨と一緒に落ちるとの事だからどこかの水溜まりの中にでも落ちてないかも探してみようかな。
見つかったら一つ取って教会の孤児院跡に向かおうか。
子供達の居場所が元通りになって、笑顔で溢れるよう【祈って】復興させるよ。
●
そぼ降る雨音を聞きながら、スミス・ガランティア(春望む氷雪のおうさま・f17217)は、雨を凌ぎつつ空を見る。
――さて、肝心の復興に必要なアイテムを探さなきゃなんだけど……。
雨足は決して強いものではないけれど、しとしとと降る雨は視界を遮り、夜の闇は足元を隠す。
「さすがに、我は夜と雨の間はパスかなあ」
ぽそりと呟いたスミスは、視線を空へ向けながら、うん、と一つ頷いた。
「いくらキラキラ光るとはいえ、視界が悪いからね」
我に夜目が効く|技能《ちから》は無いし、と、自らの持つ手段に思い馳せ、自分に合った道を選ぶ。無理をして急ぐこともないのだ、自らに合う選択を取るのもまた大切なこと。この雨が止むまで、長き夜が明けるまで、静かに思い待つのもいいものだから。キラリと時折光る雨の向こうを見つめてスミスは時が来るのを待った。
そうして、短くも晴れやかな昼の時間。この地に太陽が顔を出した頃、スミスは森へと歩み出す。雨と夜露に濡れた草木を避けながら、歩む先は木々の深い場所。陰になるところを眺めながらも、探す目印はもうひとつ。
「雨と一緒に落ちるとの事だから、」
――どこかの水溜まりの中にでも、落ちてないかな。
陽の光に煌めく場所よりも、少し陰に隠れた水溜りを眺めつつ、往くスミスの目が淡く燈る青をみとめた。
「そんなところに居たんだね」
穏やかに笑んだ青色に、青の燈火が映り込む。伸ばしたてのひらが水溜りから掬うように、小さくも煌めく『雨の星』を迎えた。
大事そうに小さな星を手にしたスミスが向かうのは教会の孤児院跡。両の手で包んだ星に祈るのは、あたたかくも純粋な願い。
――子供達の居場所が元通りになって、笑顔で溢れるよう。
柔く瞼伏せ祈るスミスの掌の中、『雨の星』の光が増して、溢れて。辺りを覆う眩さに、一度開いた目を細めたスミスの眼前。小さな広場を備えた孤児院が、優しき白を湛え姿を現した。陽を受けて白壁と青屋根を煌めかせた其処は、いつか来る子達の笑顔を待っている。
大成功
🔵🔵🔵
御簾森・藍夜
【朱雨】
傘を差して心音と
天候操作で雨を止ませることも出来るだろうが、趣がないだろう
雨の夜の星ならば、
心音、聞こえないか。星に当たる雨の音
と傘の裡でそっと囁いてみる
何?抱きしめたままだと聞こえにくい?
…いいじゃないか、俺の心臓の音なんて、お前からすれば聞きなれた風景みたいなもんだろう?
そう笑ったら膨れられたがかわいいもの
雨の中、傘の裡で聞こえる声とは最も美しい声なのだというから、敢えて“お願い”と囁いて
雨夜の星とは何色だろうか
太陽めいた色か
それとも色なき透明か
はたまた全てを綯交ぜにしたプリズムか…
“救うこと”の出来る心音の見つけた星なら、救い足り得るだろう
そして言っておいてなんだが…雨夜の星に当たる雨音ととはどんなものだろう
細やかな音だろうか
草を撫でる風の音とも傘に当たる雨音とも違う
俺の大切だけが見つけられる音
震える狐耳が愛らしくて
心音が真剣なのは承知の上でその耳に口付けを
…怒っても可愛い
見たかった星の輝きは幻想的
街の復興をするなら、商店街にするか?
帰って来るなら、食と娯楽は入り用だろう
楊・暁
【朱雨】
傘の裡で共に
幼子たちへの慈雨みてぇな雨を
止まさずにいてくれる藍夜が愛おしい
囁きに耳をぴくり
…くっついてたら、お前の鼓動の音で聞き辛ぇだろ
うっ…そりゃあまぁ、そうだけど…
付き合い始めなら恥ずかしくて否定してた
けど今は…認めざるを得ねぇほど
同じ刻を同じ想いで過ごしてきたから
照れ隠しつつ耳澄ますも、また抱きしめられて
ばっ…ばか…!集中できねぇだろ…!
藍夜の視点や感性は俺にはねぇもんばっかりで
教えてくれるたびに俺の世界が広がってく
鼓動に合わせて聞こえる音は、知ってるようで初めての音
音楽の授業で聞いた…えーと…ウィンドチャイム?みてぇな…
いや、ちょっと違うか…
“綺麗”って言葉に音がつくなら、きっとこの音なんだろう
急な口付けに驚いて、反射的に耳震わせ
なっ…もう!藍夜…!
軽く睨めつけても懲りやしねぇのは知ってるから
耳と目凝らして探した星を互いの掌へ
あとは街の復興だな
商店街か…いいな
なんか、|鎌倉の商店街《夙夜の常連》のこと思い出した
俺達のこの星で
あんな賑やかな雰囲気が、ちょっとでも戻るといいな
●
そぼ降る雨の中、御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)の差す一つ傘の下、楊・暁(うたかたの花・f36185)は、並んで『星抱きの森』の中を往く。探し物のことを考えたなら、視界を遮る雨を止ませることも、天候操作の力で出来はした、けれど。
「それだと、趣がないだろう」
――雨の夜の星ならば、
なんて、微笑んで告げる藍夜を見上げ、傘の下から見える雨の雫を暁は見る。雨音は止まず、絶えず。けれどそれは――どこか優しくて。
――幼子たちへの慈雨みてぇな雨を、止まさずにいてくれる藍夜が愛おしい。
優しい雨、そして其れを其の儘にしてくれる愛しひとの心に、暁の胸がじんと熱くなる。温もりの増す裡を抱き、じっと雨を見つめる暁の耳元にそうっと唇寄せた藍夜が囁く。
「心音、聞こえないか。星に当たる雨の音」
傘の中というふたりの場所で、密かごとのよに告げられたそれは、暁の耳を裡を擽って、ぴくりと柔いそこが跳ねる。
「……! ……くっついてたら、お前の鼓動の音で、聞き辛ぇだろ」
いつしかいつものように、すっぽりと収まった藍夜の腕の中、跳ねた耳を僅か下げながら、赤みを増した頬が覗く。そんな彼の姿が愛おしくて、思わず笑みを深めた藍夜は尚も彼の耳元で囁き告げる。
「何? 抱きしめたままだと聞こえにくい? ……いいじゃないか、俺の心臓の音なんて、」
――お前からすれば、聞きなれた風景みたいなもんだろう?
うっそりと告げられる彼の言葉も響きも、尚も擽ったくはあるけれど……、付き合い始めなら恥ずかしくて否定してたであろうその言の葉は、今は認めざるを得ない程。だって、そう、それだけ同じ刻を、同じ想いで過ごしてきたのだから。
「うっ……そりゃあまぁ、そうだけど……」
認めながらも、ぷくっと膨れた朱混じる頬を隠しながら顔を背けた暁の、その様すらもかわいくて――かわいくて。抱きしめる手に、力を籠めずにはいられない。
「ばっ……ばか……! 集中できねぇだろ……!」
雨の星を探さなくては、と、照れ隠しも帯びてもぞもぞと動く暁に、逃がさないとばかりにその力を緩めぬ儘に、藍夜は想う。
――雨の中、傘の裡で聞こえる声とは最も美しい声なのだというから、
だから、どうか。この響きが甘く、愛しく、あいするひとに届きますよう。今は、だって、腕の中のかわいいひとを、逃がしたくないから。だから。
「心音。……『お願い』」
大好きな、唯一の音で響く願いをはらう術など、暁は持ちはしない。藍夜からの『お願い』に、身じろぐことをやめて、大人しく内へとおさまった。そんな暁へと、満足げに笑んだ藍夜は、語り続ける。
「雨夜の星とは、何色だろうか」
太陽めいた色か、それとも色なき透明か、はたまた全てを綯交ぜにしたプリズムか……。そんな風に語る藍夜の言葉に耳澄まし、耳傾けて、届くそれに心を寄せる。藍夜の視点や感性は、暁にはないものばかりで、そう、いつだって。
――教えてくれるたびに、俺の世界が広がってく。
そうして、広がる世界で、感性で、暁は静かに耳を澄ませた。彼の鼓動からもっと先その先へ。星を求めて集中し始めた暁を見守りながら、藍夜は目を細める。
――『救うこと』の出来る心音の見つけた星なら、救い足り得るだろう。
それは、自分ではなく彼だからこそと想いながら、穏やかに見つめて、ふと。
「そして、言っておいてなんだが……雨夜の星に当たる雨音ととは、どんなものだろう」
自分たちの常居る世界ではおそらく耳にしない音。細やかな音だろうか、草を撫でる風の音とも傘に当たる雨音とも、きっと違う。そんな思い馳せながら、小首を傾げて見せた藍夜へと少し視線を向けた暁が、耳を澄ませながらに紡ぐ。この耳に届く音。大切な彼の鼓動に合わせて聞こえる音は、知っているようで初めての音だった。
「音楽の授業で聞いた……えーと……。ウィンドチャイム? みてぇな……」
零れた藍夜の問いに向け、自分の感じた其れを懸命に言の葉にする。耳を澄ませて、改めて聞いて、いや、ちょっと違うか……なんて、首を傾げて見せながら、訥々と暁が紡ぎ出す。
「なんていうか……」
――『綺麗』って言葉に音がつくなら、きっとこの音なんだろうって。
伝えようとする、暁の様も、言の葉も。そうして彼の耳にだから届いているであろう、その音も。ああ、こんなにも愛おしい。そうきっと、この雨の中響く星の音は、
――俺の大切だけが、見つけられる音。
その音を追い、震える狐耳が愛らしくて。彼が真剣なのは承知の上で――それでも堪らず、その耳に口付けを贈る。急な口付けに驚いて、反射的に耳震わせた暁が、ぴんと尾も跳ねさせた。
「なっ、……もう! 藍夜……!」
こっちは真剣なのに、と軽く睨めつけて抗議をしても、懲りはしないのは知ってるから、ぷん、と、わざとらしく顔を背けて耳と目凝らして『雨の星』を探しゆく。
――……怒っても可愛い。
口に出さなかっただけ偉いと思って欲しい、藍夜である。
そうして、少しばかりの時を経て、暁が探し出した『雨の星』はきらりと掌に収まった。彼の手でふたりの掌に贈られた星は、その輝きは何処までも幻想的で。燈る淡い青い光を見つめて、ふたりは笑み合う。
「あとは、街の復興だな」
「ふむ、街の復興をするなら、商店街にするか?」
「商店街か……いいな」
「帰って来るなら、食と娯楽は入り用だろう」
「ああ、それに、|鎌倉の商店街《夙夜の常連》のこと思い出した」
紡ぐ暁の言の葉に、共通の想い出を裡に描き、藍夜の表情も柔く綻ぶ。
「俺達のこの星で、あんな賑やかな雰囲気が、ちょっとでも戻るといいな」
頷き合ったふたりが森を抜け、戻る街にて捧げる祈りと共に、彼らの立つ地を包み込む眩いばかりの星の光。清廉でいて柔らかな、雨色の光がおさまった後には、長い煉瓦道に左右様々な店が並ぶだろう『商店街』が姿を現した。未だ空き地も多く、ふたりの星の光で形となった店の数は決して多くはないけれど――きっと、きっと、これから賑わってゆくだろう。
この心に宿る、自分達にとっての彼の地のように、いつか誰かの想い出を生む、此処だけの商店街が、そう、きっと。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ギュスターヴ・ベルトラン
星を探すために魔導バイクに跨り、森の上をゆっくり飛ぶよ
ちかりと瞬くモノを見つけたなら吹き飛ばさないように近づいて…|Voilà,《ほら、》 |je t'ai attrapé《捕まえた》!
復興する場所…そうだね、文房具屋さんが良いかな
空を飛んでる時に、神父様に教えてもらったことを思い出してたんだ
『雨の夜が寂しいのかい?…だったらその寂しい気持ちを日記に書いてごらん』
母に言えない不安な心を、友にさえ告げられぬ挫折の心も、全て紙の中に残すこと
それは翻って、主の愛を我々は何故信じることが出来るのかという答えにもなるからと
祈りは主との対話で、書き記すのは自分との対話
…信仰の難しさを抱えたまま、ただ祈るよ
●
さあさあと降る雨の中、夜の空を魔導バイクで翔けるのは、ギュスターヴ・ベルトラン(我が信仰、依然揺るぎなく・f44004)。『星抱きの森』の上空に着けば、その速度を落としてゆっくりと進みながら、降る雨の中、混ざりゆく星を探す。
「……、お!」
目を凝らすようにして、細めた先にみとめたのは、夜の空に淡く燈り、雨よりも僅か緩やかに降りゆく青。ちかりと瞬く其れを見つけたなら、バイクの起こす風で吹き飛ばしてしまうことの無いように、慎重に近づいてゆく。木々の海に煌めきの青が落ちてしまうその前に、と、大きく先へと伸ばしたギュスターヴのてのひらに、ふわり、それは降り立った。
「|Voilà,《ほら、》 |je t'ai attrapé《捕まえた》!」
パチン、と片目を弾いた彼の声音は、かろく夜の空に響いて溶けた。
宛ら、レディを、若しくは空より降りた天の子を抱くよに、ぽうと燈る青を柔くてのひらに受けて戻るギュスターヴは、空より降り立ち地を踏みしめて、街であった彼の地をくるりと見回した。出迎えたのは、自分が戻る前に誰かが形としたのであろう商店街。
「復興する場所…そうだね、」
ふむ、と少し考えるようにして――けれども、少し前にはその答えは決まっていた。
――文房具屋さんが良いかな。
そう紡いだ彼の声音は、心なしか柔らかで……どこか、懐かしさをも孕んでいた。それというのも、空を飛んでいる最中、いつの日にか神父様に教えてもらったことを、ギュスターヴは思い出していたから。瞼を伏せれば、つい先ほどのことのように思い出せる。神父様の表情も、あの言の葉も。
――『雨の夜が寂しいのかい? ……だったら、その寂しい気持ちを日記に書いてごらん』
穏やかな笑みで、寂しさを見せた自分へと、ゆっくりと語りかけるように紡ぐ神父様。そうして、教えてくれたのだ。母に言えない不安な心を、友にさえ告げられぬ挫折の心も、全て紙の中に残すことを。それは翻って、『主の愛を我々は何故信じることが出来るのか』という答えにもなるから、と。
「祈りは主との対話で、書き記すのは自分との対話」
音に乗せて紡いでみる。そうして音に乗せてみても、褪せぬ記憶と裡に刻まれていても……未だ、この裡は信仰の難しさを抱えたまま。ただ、それすらも儘でいいのだと彼はきっと笑むのだろう。だからこそ、抱えるままに、ただ祈る。其れが今のギュスターヴに出来ること。
そうして、両の手に『雨の星』を抱く儘、ギュスターヴの祈りが青き光に乗る。眩く輝いた光が収まる頃、目の前にはどこか素朴で、来る者を出迎えるような温かさを帯びた『文房具屋』が建っていた。
大成功
🔵🔵🔵
ノヴァ・フォルモント
レルヒェ(f42081)と
雨降る夜の時間に
この世界の雨は確かに天から降るものだが
不思議と肌に触れる感覚がしないのは
やはりゲームの世界だからなのだろうか
レルヒェにとってはこの感覚のほうが当たり前なのかな
最低限の光源をランタンで確保しつつ
森に隠れた星を探そう
いや、寧ろ足元より空を見上げるほうが早いかもしれない
淡く青い光を宿す星…確かに闇の中でなら目に留まりそうだね
二人で星を見つけたなら朽ちた街へと戻ろう
街の形を忘れた場所は無数にあれど
その全てを取り戻すのは難しいようだな
レルヒェならまず何処を元通りにしてみたいだろうか
噴水、花壇…なるほどね
人々が戻ってきたとしても
憩いの場がこのままではね
俺も賛成だよ
レルヒェ・アルエット
ノヴァ(f32296)と
雨降る夜の時間に
目は多い方が良いだろうから
星探し経験者なLorayも連れて
落ちてったのは森の辺りだったかな
暗闇だからこそ淡く青い光でも
見つけやすいって事あるだろうし
前は金平糖みたいに映ったけど
今回はどんな姿をしてるだろうね?
見つけた雨の星を手に、朽ちた街へ戻ろうか
大きな噴水広場があったらしいし
わたしは其れを思い浮かべていたよ
街での暮らしってそんなに知らないけれど
人々の憩いの場とかって
日常のシンボルを想わせて
ノヴァの同意も得られたならば
噴水と花壇を復興させようか
世界の雨もそうだけど
本物の空や花ではない物にせよ
ひとの心に残るものがあるなら
それで良いんじゃないかなとも思って
●
静かに雨降る夜の時間。『星抱きの森』を連れ立ち歩いているのは、ノヴァ・フォルモント(月蝕・f32296)と、レルヒェ・アルエット(告天子・f42081)。そうして、雨降る夜の時間に目は多い方が良いだろうから、と、星探しの経験者でもある召還ドラゴンの|Loreley《ローレライ》を連れての森歩き。
枝葉で森の外よりは遮られはするものの、さあささと音を立てて天より降る雨を見つめ、ノヴァは静かに手を伸ばした。
――この世界の雨は確かに天から降るものだが、
不思議と肌に触れる感覚がしないのは、やはりゲームの世界だからなのだろうか、と。掌に受けた0と1の世界の雨をそうっとなぞる。やはり、己の知る雨の感覚がしないと新鮮な心地を抱きつつ、Loreleyと共に、周囲を見回しながら一歩先を往くレルヒェを見つめる。
――レルヒェにとっては、この感覚のほうが当たり前なのかな。
なにせ彼はこの世界の出身だ。きっとそうなのであろうとも思いながら、彼の『当たり前』を肌で感じる――知ることのできる今を、味わいゆくよに噛み締めていた。
ノヴァの持つランタンで、最低限の光源を確保しながら二人と一体は深い森を往く。
「さあ、森に隠れた星を探そうか」
「落ちた星なら、足元を探す方がいいのかな」
「そうだね――いや、寧ろ足元より、空を見上げるほうが早いかもしれない」
なにせ、空から雨と共に降るのだから。そう、彼らが雨降る夜空を木々の隙間から見上げた時だ。きらりと煌めく青い光が、雨とは異なる速度で揺らめきながら降るのが見えた。
同時に、あ、と声を零したふたりが顔を見合わせ頷き合う。ふたり同時に見つけた青は、進む先、森の更に奥へと消えた。いっそう木々の茂る暗い地へと進むことにはなるのだが、
「暗闇だからこそ、淡く青い光でも見つけやすいって事あるだろうし」
さらりとそう告げるレルヒェに淡い笑み向けて頷いたノヴァが、行先へとランタンの明りを向ける。
「淡く青い光を宿す星……確かに、闇の中でなら目に留まりそうだね」
いこう、どちらともなくそう告げて、森の奥へと足を延ばす。
「前は金平糖みたいに映ったけど、今回はどんな姿をしてるだろうね?」
そんな、どこか期待を込めたよな、いつもよりも少し感情の乗ったレルヒェの声を耳にしながら。
森の深く、木々茂る暗所できらりと淡く光った『雨の星』。ふたり分の其れを見つけた彼らは、其々の手に青く光る星を手に、朽ちた街へと戻ってきた。いや、朽ちていた、というべきか。先に戻った猟兵達によって幾分か街の形を取り戻し始めたかの地に、眦を緩めながら、戻る己らを出迎えた商店街を抜け、彼らは街の中央へ出る。
其処より先は未だ瓦礫の残った廃墟然とした姿で、見回してみれば、街の形を忘れた場所は未だ無数にあった。
「ふむ、この街の『形を忘れた場所』、全てを取り戻すのは難しいようだな」
「うん、流石に広いからね」
ノヴァの言葉を受けて、レルヒェもまた、自分たちの立っている場所で視線を巡らせた。瓦礫ばかりで元の形を想像するのも難しくはあるが、今立つ広々とした空間が、ここが元は広場であったと伝えてくる。
「レルヒェなら、まず何処を元通りにしてみたいだろうか」
共にここまで歩んだ仲間へと、穏やかに問うノヴァの言葉にレルヒェは少しばかり思案して、そうだな、と口を開いた。
「大きな噴水広場があったらしいし、わたしは其れを思い浮かべていたよ」
――街での暮らしって、そんなに知らないけれど。
そんな風に前置きをしながらも、レルヒェは自分の知る『街』に思いを馳せる。
「人々の憩いの場とかって、日常のシンボルを想わせて。だから、」
――噴水と花壇を、復興させたらどうだろう。
ノヴァの同意を得られたならば。そう思いながらも口にしたレルヒェの提案を受けて、ノヴァは改めて周囲をくるりと見回した。
「噴水、花壇……なるほどね」
紡ぎながら、この地に戻るその景を想い描いてみる。人々が憩う、日常のシンボル。レルヒェの言葉が、描いた景にしっくりとおさまった気がした。
「ああ。人々が戻ってきたとしても、憩いの場がこのままではね」
――俺も、賛成だよ。
穏やかな笑みと頷きと共に返る同意に、レルヒェも柔く笑む。それじゃあ、と声を掛け合い、『雨の星』を手に彼らは祈る。祈りを受けた青き星が、その光を増して溢れさせ、あたりを眩さで覆ってゆく。思わず目を伏せる程の光が止む頃には、ふたりの目の前に、雨とは違う水音を立て、地より天に吹き上げる『噴水』と、その周囲を彩るような、夜の中に在っても色鮮やかな花々の揺れる『花壇』がそこに在った。
さあさあと音を立てる噴水に、夜風に揺れる花たち。そうして、形をひとつ思い出した街に、憩いの場に、目を細めるノヴァ。それらを眸に映し、レルヒェは想う。世界の雨もそうだけれど、本物の空や花ではない物にせよ、ひとの心に残るものがあるなら……、
――それで、良いんじゃないかな、とも思って。
小さく笑んだレルヒェは、噴水の前で己を振り返ったノヴァと、傍らのLoreleyと共に、暫しこの憩いの地で、この長い夜の空を見上げた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クロア・ルースフェル
【紺青】クオンと
レインコートを着て、一緒になって歌います
ああ楽しい、あなたと歌うと雨まで楽しくなっちゃう!
キタルファの片方に横座りで●騎乗、雨の空へ!
あたっ。なんか当たっ……コレですかね? ●幸運ですねぇ
わたし占いの館を復興しようと思ってて
ふむ。両方とも同じ広場ですケド……方向性バラバラくない?
(クオンの提案に)ソレイイ! スッゴいイイですね!
あ、じゃあ探すのは星のチャームにするっていかが
足湯の水底に、色とりどりの星が輝くのって、地上の夜空みたいできっと美しいですよ
ソレに、星ってクリスマスっぽくない?
(撫でられてご満悦)んふふ、一緒に考えたーってカンジ♪
広場で『雨の星』を両手に包んで●祈ります
劉・久遠
【紺青】
うちの子ら雨降るといつもこれ歌うんよ、と話しつつ
レインコート着て『あめふり』●歌唱しUC使用
双子星に各自騎乗して雨の夜空へ探しに行こか
クロアさんの幸運に笑いながら森で●宝探ししましょ
確かこの枝辺りに落ち……みーっけ♪
ふふ、キミらしいの選んだなぁ
ボクはその隣の足湯? が気になって……うん、ちぐはぐやんね
せやから祈る時に何か一つ要素を足せんかなぁと
例えば占い結果を聞いて足湯に来ると
『ラッキーアイテムを探すミニクエスト発生!』みたいな?
案外そんな理由でここにあったんかもな
わ、その案めっちゃ好き!
ええ子ええ子したろ♪
そしたら広場の一角で『雨の星』に祈りを
星みたいな笑顔煌めく街になりますように
●
降りゆく雨に備えて、レインコートを羽織った、劉・久遠(迷宮組曲・f44175)の元に、同じくレインコートを着た、クロア・ルースフェル(十字路の愚者・f10865)が、合流する。手を振り笑いあったふたりは、暗い夜の雨中に在りながら、どこか晴れやかと歩み出す。
ふんふふ~ん、とご機嫌に、有名な雨の歌を口ずさみながら歩む久遠に、クロアの興味深げな視線が向けられる。にこやかに笑むまま彼に顔を向けた久遠は言う。
「うちの子ら、雨降るといつもこれ歌うんよ」
「ああ、そうなんですね!」
それは良いことを聞いたとばかり明るく笑ったクロアは、再び歌い出した久遠と共に歌う。彼の歌声が重なることに笑みを深め、尚ご機嫌な旋律は楽しげな気を帯びて、きらりと輝く双子星を呼ぶ力と変わる。ふたりを招くよに、すい、と目の前で止まった星に、跳ねる心のままに騎乗して、浮いた心地で空へ往く。
「ああ楽しい、あなたと歌うと雨まで楽しくなっちゃう!」
ふわりと宙へと浮いた双子星の片方に横座りで騎乗していたクロアの声が、軽やかに跳ねる。星の上で踊れはしないが、心は声音は踊るよう。
「ふふ、それはええこっちゃ。ほな、雨の夜空へ探しに行こか」
「はい、そうしましょ――あたっ。なんか当たっ、」
早速探しに行こうかと、ふたりで先を見つめた矢先、クロアの額に何かがコツリと降って当たって……、掌に落ちたそれは、淡い青い輝ける――、
――……、コレ、ですかね?
きょとん、と。てのひらに青を受け止めて、片方の手でぶつかった額を軽く擦って問うクロアの幸運に、かろりと楽し気に笑った久遠が頷いた。
「あははっ、さっそく見つけて、キミはほんま幸運やなあ」
「ふふ、本当に、幸運ですねぇ」
くすくすと笑い合い、その幸運にあやかりたいなぁ、と、クロアのさする額を、己もまたさする真似した久遠は、口許に弧を描き雨の森の先を見る。ほな、宝探ししましょ、と、夜の森をすい、と翔けるふたつの星が軌跡を描く。翔けながら、空から降る煌めきに気付いたふたりが淡青の痕跡を追い、そうして……、
「確か、この枝辺りに落ち……みーっけ♪」
「やりましたね、クオン! 宝探し、成功です!」
ふたり手にした青き星光を見せ合い笑み合い、宝探しの成功を歓んだ。
そうして、『雨の星』を手にしたふたりが街に戻れば、出迎えたのは商店街と、花に満ちた噴水広場。少しずつ形になりゆく其処に、互いに笑みを浮かべながら、彼らは言葉を交わし合う。
「クロアさんは、何を復興しよと思てるん?」
問いかけた久遠の言葉に、よくぞ聞いてくれましたとばかりに笑みを浮かべ、クロアは語る。
「わたし、占いの館を復興しようと思ってて」
「占いの館かぁ。ふふ、キミらしいの選んだなぁ」
「そういうクオンは、何を?」
「ボクは、その隣の足湯? が、気になって……」
ふたりともが、事前に見た地図から今立つ広場にあった施設を想い描き、伝え合う。――が、しかし。
「ふむ。両方とも同じ広場ですケド……方向性バラバラくない?」
「……うん、ちぐはぐやんね」
同じ広場の施設を選ぶ息の合い方も、それでいてどこか向きが異なるようなちぐはぐさも、なんだか彼らのようである。――だからこそ。そう、合わない、ということなどありはしないのだ。
に、と笑った久遠がクロアに提案を投げかける。
「せやから、祈る時に何か一つ要素を足せんかなぁ、と」
「要素? と、いいますと?」
「例えば、占い結果を聞いて足湯に来ると、『ラッキーアイテムを探すミニクエスト発生!』、みたいな?」
ぴん、と指を立てて告げる久遠の言葉に、暫く言葉を呑み込んだクロアが、ふるふると身を震わせる。そっと様子を窺う久遠を前に、ぱっと顔をあげたクロアの瞳は星の石にも負けぬ程、きらきらと煌めいていた。
「ソレイイ! スッゴいイイですね!」
無邪気に喜ぶクロアの様に、久遠もまた笑みを深めて頷く。
「案外、そんな理由でここにあったんかもな」
「あ、じゃあ、探すのは星のチャームにするっていかが」
足湯の水底に色とりどりの星が輝くのって、地上の夜空みたいできっと美しいですよ。と、告げたクロアの案に、次は久遠の瞳が輝いた。
「わ、その案めっちゃ好き!」
「そうでしょう? ソレに、星ってクリスマスっぽくない?」
「ええわ、その案! ええ子ええ子したろ♪」
ご褒美だ、とばかりに、伸ばした手でクロアの頭を撫でる久遠と、其れを受けてご満悦なクロア。あたたかな空気がふたりを満たす。
「んふふ、一緒に考えたーってカンジ♪」
そう、これはふたりで考えた、とっておきのクエスト。街も、それも、形になりますようにとも願いつつ、ふたりは広場の一角で『雨の星』を手に、祈りを捧げる。
――星みたいな笑顔煌めく街になりますように。
祈りを受けた『雨の星』は、ふたりの手中で煌めいて、その光を増して溢れて――眩い其れが、辺りを満たす。そうして、ふたりが伏せた瞼を持ち上げた時には、目の前に星の意匠が印象的で、幻想的な『占いの館』と、その隣で柔らかに湯気を立たせ、足元に煌めき宿した『足湯』のふたつが、形となっていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
一ノ瀬・漣
【煙響】
夜に森へ
街へ一緒に遊びにいくことあっても
こういう自然の中ってのはあんまないよねぇ
あ、春になったらピクニックしようよ
ビールも持ってさ
静かな所で花見酒とか
いーねぇ昼から!
わ…!ねぇ、すごいよ梓!雨に混ざって星も降ってきてる!
この程度の雨なら、と傘もささず駆け出すけど、すぐ捕まって
梓の煙草の香りがするマフラーがほかほかで、顔も緩んじゃう
ふふ…あったかーい…
梓ー!見て見てめっちゃ綺麗ー!(手ぶんぶん
拓けた場所で星探し、なーんてロマンチックー
あ!はっけーん♪
きらり光る欠片見つけて掌に乗せ、梓へ見せ
これだよね?
なんか不思議な光…
うん。これ一つで復興できるってのも頷ける
えっ…!?大丈――…ふふ、あはは!
星の方から来てくれるなんて梓好かれてるじゃん
ちょっと妬いちゃいそう(くすくす
掌の星々に見入り
…ふふ、褒め言葉として受け取っとく
さてと…梓はどこ修復したい?
オレ?オレは…あの大きな橋!
…梓が世界とオレとの架け橋になってくれたっしょ?
だからさ
2人分の祈りを込めて
この橋が何処かへ続く路になりますように
都嘴・梓
【煙響】
だねぇ、あんまないよね
あー…あったかい時期で晴れてるならいいかも!
なぁに、昼から飲んじゃう?花見酒とかサイコー―…って、ちょっと?!漣っ、あぁもう!
傘も差さずに駆け出すというか、にこにこ出て行った漣を慌てて追いかけ怒ろうとして―…やーめた
楽しそうに笑ってる漣見たらどうでも良くなっちゃった
ん、そーだねぇ
楽しそーなのはいいけど…レーン、風邪ひかないでね?
つけていたマフラーで捕まえてぐるっと巻いて送り出す
自身も辺りを見回し空を見上げて、それこそ夢見たいな世界につい笑っちゃう
さっきは漣に酷いこと言っちゃったかな…
あー、
楽しそうに振り向く顔をみたら、なんだかとても眩しくて
レン、見つけるのはやーい!
ん、どーれ?…わ、ははすっげぇ
えー、普通に星なんだけど
…なんだろ、不思議だねぇ
漣の言葉に頷き進もうとして
んぇ、痛ってぇ…やばーい
見てレン、星だぁ
えへへ、あげるー
漣に星をひょいと渡しながら可愛い願いにウキウキしちゃう
レンは純粋だねぇ…
俺はー…どーしよ
ねーぇ、レンは直したいとこある?どこ?そこにしよ?
●
夜の森を、一ノ瀬・漣(Pour une infante défunte・f44080)と、都嘴・梓(|嘯笑罪《ぎしょうざい》・f42753)の、ふたりが並び往く。深く茂る木々が傘変わりとなり、枝葉弾く雨の音を聞きながら、揺れる木々を見て漣が口を開いた。
「街へ一緒に遊びにいくことあっても、こういう自然の中ってのはあんまないよねぇ」
「だねぇ、あんまないよね」
揺れる枝葉を見つめながら、あ、と手を鳴らした漣が木々に向けていた視線を梓に移す。
「春になったらピクニックしようよ」
「あー……あったかい時期で、晴れてるならいいかも!」
「ビールも持ってさ、静かな所で花見酒とか。いーねぇ、昼から!」
「なぁに、昼から飲んじゃう? 花見酒とかサイコー……、」
と、笑むように目を細めた梓が言い切るより早く、木々の途切れたその隙間から見えた空の景に、漣はぱちりと瞬いた。彼の瞳に映った其れを見るや否や、ぱっと瞳輝かせた漣は、言葉紡ぐが早いか軽やかに地を蹴った。
「わ……!」
「……って、ちょっと?! 漣っ、あぁもう!」
もっと近くで見たいとばかり、先に見える開けた場所へと駆けてゆく漣。自分の言葉を言いきる前に、雨中へ駆けだした彼に瞬いて、伸ばした手が空を切り慌てた梓も彼を追って地を蹴った。
さあさあと雨音はすれど、勢いはさほど強くない。この程度の雨なら、と、傘も差さず駆けだした――けれど、そんな身はあっという間に、追いついた梓に捕まってしまう。
「ねぇ、すごいよ梓! 雨に混ざって星も降ってきてる!」
捕まる手は、引き戻された身はその儘に、あいた手で空を指し笑う漣の様に、瞬く梓は息ひとつ。傘も差さずに、こちらの言葉にも気付かずに、にこにこと駆けだしていった漣のこと。ほんの一瞬前までは、勢いのまま怒ろうともしていたのだけれど……、
――楽しそうに笑ってる漣見たら、どうでも良くなっちゃった。
笑う漣につられて、吐息混じりの笑み一つ。そのまま自分の顔も緩むのを感じながら、梓は彼の指す先を見つめて目を細めた。
「ん、そーだねぇ。楽しそーなのはいいけど……レーン、風邪ひかないでね?」
雨夜は冷えるものだから。彼の身を案じつつ、つけていたマフラーで、尚も『捕まえた』とばかりに、漣をぐるりと巻いた。
彼の身に付けていたマフラーは、煙草の香りがして、彼の温もりもまだそこに在って、ほかほかで。浮かんだ笑顔が尚ゆるりと緩んでしまう。
「ふふ……あったかーい……」
「あったかくなった? なら、ほら。行ってらっしゃーい」
ほこほこと、己のことを包むマフラーを両手で抱え、ほにゃりと笑った漣を、梓は星雨の下に送り出す。危機と駆けだす漣の背を見送りながら、梓自身も辺りを見回し空を見上げて、それこそ夢見たいな世界につい笑みが零れた。そうして、夜の雨の中燥ぐ漣の背を見つめ、思う。
――さっきは、漣に酷いこと言っちゃったかな……。
「あー、」
自分の紡いだ言の葉を思い返して、思わず吐息混じりの声が零れる。一度空を仰いだ視線を戻したならば、楽し気な漣がこちらを振り向いて。
「梓ー! 見て見てめっちゃ綺麗ー!」
ぶんぶんと手を振りながら告げる彼が、その顔が。なんだかとても――眩しくて。
「拓けた場所で星探し、なーんてロマンチックー」
どこにあるかなーなんて、楽し気に続き紡いで見回した漣が、あ、と声を上げ、木々の隙間に駆けていったかと思ったら。
「梓、ほら、はっけーん♪」
きらりと光る欠片をそこで見つけて、掌に乗せた漣が次は梓の元へと駆けてくる。
「レン、見つけるのはやーい!」
「これだよね? なんか不思議な光……」
「ん、どーれ? ……わ、ははすっげぇ。えー、普通に星なんだけど」
「うん。これ一つで復興できるってのも頷ける」
「……なんだろ、不思議だねぇ」
漣の言葉に頷いた梓が進もうとして――、
――んぇ、痛ってぇ。
かつん、と、空から降ってきた硬いものが梓の額に当たって落ちた。
「えっ…!? 大丈――」
「……やばーい、見てレン、星だぁ」
落ちた其れは、きらきらと煌めいた淡い青。漣の持つ其れと同じ輝き放つ雨の星を、ひょいと摘まんで彼に見せる。
「……ふふ、あはは! 星の方から来てくれるなんて、梓好かれてるじゃん」
痛みの声上げた彼を心配したのも束の間、笑みと共にひらりと摘まんで見せてくれるその様にも、先に己が見つけた其れと同じ青い輝きにも、思わず笑みが零れてしまう。くすくすと零れ止まぬ笑みのまま、――ちょっと妬いちゃいそう、なんて紡ぐほどに。そんな漣の言葉に笑み浮べ、梓は手にした輝く星を漣へと差し出す。
「えへへ、あげるー」
ひょいと差し出し渡したそれが、彼のどんな可愛い願いに変わるのか、うきうきしてしまう自分がいる。そんな梓からの視線を受けながら、掌に乗せたふたつの星々に見入る漣。きらきらとした瞳を見ては、梓の目が細まって。
「レンは純粋だねぇ……」
「……ふふ、褒め言葉として受け取っとく」
向けられた言の葉に、かろく笑ってそう返し、さてと、と呟いた漣が、雨の星を見ていた視線を梓に向けた。
「梓はどこ修復したい?」
「俺はー……どーしよ」
向けられた問いにうーんと首を傾げた梓は、一度空に向けた目を漣に移して、にんまり笑って問いかえす。
――ねーぇ、レンは直したいとこある? どこ? そこにしよ?
にんまり笑う梓の笑みと、向け返された問いを受け、ぱちりと瞬いた漣は笑みで応える。
「オレ? オレは……あの大きな橋!」
見せて貰った地図に在った、大きな橋。其れを見た時から思っていたのだ。
「梓が、世界とオレとの架け橋になってくれたっしょ?」
――だからさ。
そう告げる漣の言葉も、表情も。手にしたふたつ分の星の光より眩く見えた。
漣の提案に是で返し、ふたりは『街』へと戻ってくる。幾つかの施設が形となって、街の姿を想い出しかけたその場所を、ふたりで並んで歩みゆく。商店街を抜け、広場を抜けて、そうして辿り着いた先には――、今は未だ水の流れない、向こう岸とを隔てた窪み。嘗ての姿を想いながら、ふたりは顔を見合わせる。
ふたり分の祈りを受けた『雨の星』は、その淡い青をひときわ輝かせて辺りを光で満ちさせる。眩い其れに目を伏せたふたりが、再び目をけたその先には、さらさらと清く清々しい音を立てゆく川のせせらぎと、その川を挟んだ此方と向こう側を繋ぐ、大きな橋が出来ていた。
目の前の景に、再び顔を見合わせたふたりは笑む。そうして、漣は想うのだ。どうか、どうか、この橋が。
――何処かへ続く路に、なりますように。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルシエラ・アクアリンド
【風雪】
開口一番の労いの言葉と何時もの穏やかな様子に「有難う」と返事して
リヴィの肩の小さなセラにも有難うねと一撫で
手伝って欲しい事に何時も快く応えてくれる彼には感謝しかない
まあ、今回は手伝いは勿論
雨の星が降るという現象に興味を持つだろうと思ったから声を掛けてみたのだけれど
何やら考えている様子に違ったかと問えば否定の意が帰ってきたので
一先ず疑問は置いておこう
雨に濡れるのもまた一興だと思い夜の森へと散策へ
細かい彼の気配りは有難いけれど「大丈夫だよ?」と言いたくなる様な扱いに
何だか胸が暖かくなると同時にくすぐったくて。
何時もの事といえばそれ迄だけどその暖かさに
言い様が無い笑いはどうやっても消しきれないのも仕方がないと思う
復興させる対象は孤児院とも迷ったけれど
子供達は勿論、大人も気軽に利用出来る、敷地に公園がある図書館の復興を
掌の上の小さな星に精一杯祈ろう
ふと大所帯かなと思い
「祈り、大きすぎるという事は無いよね?」と言えば
一瞬目を見張った後の年相応の笑いは少し珍しく
其れに免じ良しとする事にしよう
リヴィ・ローランザルツ
【風雪】
先に訪れていたルシエラさんに「お疲れ様でした」
復興からは手助けしたいし
正直珍しい光景も興味もある
セラも好奇心旺盛だから
口には出さないけれど
遠い幼い頃の記憶の中といい
偶然再会してからしてからといい他人優先な気質に思う所はあれど
そんな彼女が姉だという事実が嬉しいとも思う
その分俺が父に頼み弟だと隠している事に罪悪感もあるけれど
夜の森で『雨の星』を探す時には
彼女が歩きやすい道を選んで光を探す
独特の静けさを堪能し時折空を見上げて
昼間の澄んだ空は勿論夜の濃い空も好きだから
彼女も知っている事だけど
木を足場にさせて貰う時には出来るだけ傷付けない様にするのと
「失礼するな」と断る
耳に入る忍び笑いは予想通り
俺はこういう性格だから仕方がない
見つけた星は何時も見る夜空のそれ位
でも祈りを天に届けてくれるのに丁度良さげな大きさ
復興させる施設は彼女の望み通りに
一人ひとつという話だから必要あらば分けて祈りを
確認する様な言葉が彼女らしすぎて「大丈夫ですよ」と返しつつも
堪えられず出来るだけ小さく笑うのは許して欲しいな
●
「お疲れ様でした」
リヴィ・ローランザルツ(煌颯・f39603)が、この地に降り立ち開口一番に向けたのは、ルシエラ・アクアリンド(蒼穹・f38959)への、労いの言葉。向けられた言の葉と、何時もの穏やかな様子に柔い笑みを浮かべたルシエラも、其れに応える。
「有難う、リヴィ。セラも、有難うね」
リヴィの肩に乗る小鳥の桃華獣たるセラにも手を伸ばし撫ぜ、ルシエラは柔く目を細めた。この地に来てくれた彼を見ながら、ルシエラの心は温かくなる。そんな彼女の傍に共に在る、スピリットのライもまた、翼ひとつはためかせた。
「手伝って欲しい事にいつも快く応えてくれて、感謝しかないわ」
そう、己へ向けた感謝の気持ちを語り告げながらセラを撫ぜるルシエラを見て、リヴィは想う。遠い幼い頃の記憶の中といい、偶然再会してからしてからといい、他人優先な気質の彼女に思う所はあるけれど――そんな彼女が姉だという事実が、嬉しいとも思う。
――その分、俺が父に頼み、弟だと隠している事に罪悪感もあるけれど。
そんな、口には出さない彼の想いを知らぬまま、どこか思案気なリヴィに気付いたルシエラは、ぱちりとひとつ瞬いた。今回は、手伝いは勿論のこと、雨の星が降るという現象に興味を持つだろうと思って声を掛けたてみたのだけれど……目の前の彼はと言えば、真面目な顔をして何か考えている様子。
「この地の現象にも興味あるかと思ったんだけど……違った?」
向けられた問いに、思案を止めてルシエラに向き直ったリヴィは軽く頭を横に振り、紡ぐ。
「復興からは手助けもしたいし、正直、珍しい光景にも興味ありますから」
セラも好奇心旺盛だから、と肩の子を撫ぜながら告げるリヴィ。そんな彼の返答に安堵して、それならば何を考えていたのだろうと少し気にはなるけれど。
――ひとまず、疑問は置いておこう。
其れよりも今は、と。先に進むことを促して、ルシエラたちは森へ向け歩み出だした。
さあさあと降る雨の中。濡れるのもまた一興と、『雨の星』を探しつつ夜の森を散策気分で往くルシエラと、彼女の一歩前を往き、ルシエラが歩きやすい道を選びながら、淡い光を探して先導するリヴィ。後ろを歩む彼女が少しでも通りやすいように、そんな彼の細かい気配りは、ルシエラにも確と伝わっていて。そのひとつひとつと感じるたびに、「大丈夫だよ?」とも言いたくなってしまう。――けれど。そんな彼の扱いは、何だか胸が暖かくなると同時にくすぐったくて。言いそうになる言の葉は、柔い笑みの向こうに呑み込んだ。
一方、リヴィは道の確保に努めながらも、時折空を見上げながら、夜の森独特の静けさを堪能していた。彼女も知っていることだけれど、昼間の澄んだ空は勿論、夜の濃い空も好きだから。今こうして歩むこの空気も、しっかりと味わっていたい。
そうして暫く歩んだ先に、彼らを待っていたのは、少しばかり段差のある場所。丁良く生えていた木を足場にすれば難なく通れそうではあるが、少しでも木々を傷つけないように注意を払って、リヴィはそっと足をかける。と、同時。
「失礼するな」
足場と借りる木に声掛けて、とんと、爪先乗せた彼の様。自然にも気を配る彼の様子は、何時もの事といえばそれ迄だけど、その暖かさに言い様が無い笑いはどうやっても消しきれず、彼の背後からルシエラのくすりとした忍び笑いが聞こえてくる。そんな耳に届く笑い声も、リヴィにとっては予想通りで、いつものこと。それでいて、どこか擽ったい思いにもなりながら、
――俺は、こういう性格だから仕方がない。
そう、小さく笑って続くルシエラに手を貸すべく掌を差し出した。そうしてふたり、森を往く先、きらりと煌めく淡き青の星光纏った小ぶりの石を夜の闇の中見つけて得る。決して大きい其れではなくて、そう、それこそいつも見る夜空のそれくらいであったけれど――でも、だからこそ。祈りを天に届けてくれるのに、丁度良さげな大きさだとも思うのだ。
ふたり分の星の光を手に入れて、彼らは『街』へと戻ってきた。先に戻った猟兵達の力もあり、既に色々な施設が形となっている。そのことにも温かさを覚えて顔を緩ませながら、商店街の煉瓦道を往き、広場を抜けて、橋を渡って――そんな道のりの中、ふたりは言葉を変わす。
「ルシエラさんは、何を復興したいと思ってます?」
「ん、孤児院とも迷ったけれど……」
思案しながら、既に形となっている其処を見れば、ならばやはりこっちだと、描く其れを言の葉に乗せてリヴィへと告げる。
「子供達は勿論、大人も気軽に利用出来る、敷地に公園がある図書館の復興を」
「いいですね。ひとりひとつという話だから、公園か図書館、片方は俺が担いますよ」
告げては同意するよう頷いたリヴィに笑み向けて、足を止めたルシエラは掌の上の小さな星に精一杯祈ろう、と両の手を握って――ふと、
「祈り、大きすぎるという事は無いよね?」
と、確認するように、ぱっと隣振り返りリヴィに問う。だってほら、星はふたつなのに、自分にリヴィ、セラにライ。なんだかふと、大所帯に思えて。
そんな確認するような言葉が、そう、あまりに彼女らしすぎて。一瞬目を瞠ったリヴィは、そのまま耐えきれぬ小さな笑いを零しつつ、「大丈夫ですよ」と、応えた。リヴィから零れた笑いは暫し止まなかったけれど、彼の年相応に笑う姿は少し珍しくもあったから。
――其れに免じて、良しとする事にしよう。
「それじゃあ、改めて」
こほん、と一つ咳払い。気を取り直すようにふたり並んで小さな星に祈りを捧げる。傍に添う、セラとライもふたりに倣って祈っているよう。皆の祈りを受けて、ふたりの掌に収まった『雨の星』が輝きを増す。淡い青が、輝いて、溢れて。祈り伏せた瞼の向こうにもその光がわかる程に、一体を眩い星光が包んだかと思えば、光が止む先には、温かみがありつつも、多くの蔵書があると思わせる立派な木造の『図書館』と、その周囲に広々とした木々豊かな芝生の広場と、子供たちの遊べる遊具や憩うベンチなどが添えられた『公園』が姿を現した。
きっと、長い夜にも短い昼にも。大人にも、子どもにも、あたたかに寄り添う場所となるだろう。
そうして、『街』は集った猟兵達の力によって、忘れた形を一部取り戻していった。それでいて、皆の祈りを受けて再生する、ここから始まる新しい『街』にもなっていくだろう。今は未だ空いた場所も目につくが、それすらも、歩み始めの証。この『街』の止まった時は――ここから、動き出してゆく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『煌めく街灯り』
|
POW : イベントを楽しむ
SPD : のんびり街めぐり
WIZ : イルミネーションを眺める
イラスト:羽月ことり
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
嘗て其処は、バグプロトコルに破壊された『バグシティ』であった。
けれども、今宵からはもう違う。
いつかの日に比べれば未だ空いた土地は多いけれど、夜の闇にきらきらと煌めくイルミネーションが街中を彩る様は、壊される前の面影を抱きつつ――この『街』の、新しい門出を迎えていた。
街の外から来たものを出迎えるような、あたたかな木製の門を潜れば、様々な店舗の並ぶ煉瓦道の『商店街』が広がり、訪れた者を楽しませる。施設の復興と共に現れたNPC達が其々の店で呼び込む様は活気があるし、手伝いを願われることもあるかもしれない。冒険者を迎える定番の酒場から、装備品・装飾品を売るショップ、持ち歩きや食べ歩き用の料理を売る店に薬屋など、基本的な店は復興している様子。
また、開いている店の並びには、落ち着いて温かな雰囲気の『文房具屋』も見てとれた。色とりどりのインクやペンは勿論のこと、この店では、特に日記帳が豊富に取り揃えられている。来年の其れを、新たに新調してみるのもいいかもしれない。
買い物に飲食に、旅の疲れを癒した者が続く煉瓦道を先へと進めば、優しい水音を立てて吹き上げる『噴水』と、夜に在って鮮やかな花々の咲き誇る『花壇』を備えた『広場』に出る。屋根のない開けた地、空を見上げればきららかな星や月が君たちを見ているだろう。
そんな広場には、一息をつくためのベンチが並び、円形に開けたこの地の外周には、依頼の掛かれた張り紙の揺れる看板を始め、季節ごとに様々な限定クエストを発行するNPCや、限定ショップが出店の形で現れる。
現在はクリスマス前ということもあり、街中のイルミネーションのみで、限定の其れらは準備中とされているようだが、その中で、常設として構えられているのは、星めく意匠の印象的な『占いの館』と、その隣にあたたかな湯気を立ち昇らせた『足湯』の存在。
丁度今は、『占いの館』にて、『ラッキーアイテムを探すミニクエスト』が発行されている様子。店内の占い師から受注すれば、隣の『足湯』の中からひとつ、星のチャームが得られるというもの。あたたかな湯船の底、星海の如くきらきらと足元を彩る色とりどりの星を、浸した足の指先で拾いあげ、手に入れた其れが今回の『ラッキーアイテム』として配布される。
ゲームのクエスト報酬としてはランダムなものだが、猟兵達なら好みの物を狙うことも叶うだろう。勿論、元のクエストに添ってランダムに拾ってみるのもおつなもの。
広場をさらに奥へと進めば、大きな川が流れているのに気づくだろう。そうして、川の此方と向こうを繋ぐ『大きな橋』が掛かっている。耳に届くせせらぎを聞きながら橋を渡り、先へと進めば、広がるのは木々や芝生の豊かな『公園』。橋を超えた此方は、街の住民たちの生活圏なのだろうか、向こうよりも少し静かで、けれど子どもたちや人々の穏やかな息遣いを感じられる。
遊具で遊ぶ子供たち、ベンチで街灯のあかりを頼りに読書を楽しむ者もいる、公園の横に木製の大きな『図書館』が見えた。本を読む人はあそこで借りてきたのかもしれない。人々の集まる憩いの空間であるように感じる。
そうして公園脇の遊歩道を先に往けば、道が二股に分かれている。片方の広い路を往けば其方は住宅街のよう。もう片方の細い路に向かえば其処には、真白が夜に浮かびあがるよな、どこか幻想的な雰囲気を持つ大きな『教会』が建っていた。釣り鐘塔の上には、金色の大きな釣鐘も見える。教会の聖堂に踏み入れば、月明りを受けて中を彩るステンドグラスが印象的。
そんな街のシンボルとも言われていた教会の隣には、教会と同じく真白の壁で、青い屋根を持つ『孤児院』が建っていた。家無き子どもたちをあたたかに迎え入れ、抱くその孤児院の窓からはぬくもりある灯りが零れ、子どもたちの笑い声が聞こえてくる。
さあ、この街で君たちはどう過ごすだろう。
この『街』は新しい思い出を、ここから刻んでゆくのだ。
クロア・ルースフェル
【紺青】
商店街で『雨の星』の加工を頼めませんかね?
バングルが欲しくって
このお店のバイト? 確かに、加工の時間もいりますし
んふふふ、クリスマスの盛り上げ側にもなっちゃいましょう!
お嬢さん、綺麗な瞳ですね よければお手を
今日の服には金と、瞳のオレンジがよくお似合いですよ(美形営業)
おやご婦人、お一人ですか?
ああ……先立たれて……もしや、ご主人の指輪はご自宅に?
こちらのチェーン、差し上げます(クオンにしーっ)
指輪を通してネックレスにされてはいかがでしょう
メリークリスマス
おああどうしました!?
ソレはガンバりましたね、ありがとパッパ……!
もしかして完売?
やりましたね、クオン!(バングル着けてグータッチ)
劉・久遠
【紺青】
復興よし、お金の準備よし、二人の機嫌よーし!
さてどこから……ん、それ最高
青い宝石ついた銀のバングルなんてボクらみたいやん
装飾品店で加工してもらお♪
あ……しもた、ちと足りひん
(店主に不足分は店の手伝い願われ)
ええの? なら期待しとって
クロアさんはカリスマ美形店員?
ならボクは客寄せパッパやりましょ
店の前、他店に配慮しながらUCでXmas曲を奏で歌い
道行く人に『特別な日に特別な品を』と訴え呼び込もっか
『しーっ』にはこそっと笑いつつ協力したげよ
観客に手拍子寄越せとパフォーマンスしてバレんよう注目集め……うぁあ恥っず!
目立つん苦手やのにパパ頑張った褒めて……
お、完売? いぇーい♪(グータッチ)
●
夜に浮かび上がる綺羅らかな街並みを前にして、劉・久遠(迷宮組曲・f44175)と、クロア・ルースフェル(十字路の愚者・f10865)の笑顔も煌めく。
「復興よし、お金の準備よし、二人の機嫌よーし!」
ご機嫌な久遠の声が跳ねたならクロアも其れに倣って口遊む。そうして、機嫌よくふたり揃って踏み出すその前に。あ、と声を上げたクロアが久遠に提案をひとつ投げかけた。
「さてどこから……」
「ねえ、クオン。商店街で『雨の星』の加工を頼めませんかね?」
「『雨の星』の加工?」
「わたし、バングルが欲しくって」
「ん、それ最高! 青い宝石ついた銀のバングルなんてボクらみたいやん」
続く形状の提案に、久遠の表情も煌めいて、クロアの提案には全面同意。そうと決まれば、目指す先も自ずと定まり。
――よーし、ほな装飾品店で加工してもらお♪
軽やかな足取りで向かう先、分かりやすい看板に導かれ中に入れば、奥から厳つい顔つきの男店主が顔を出した。『雨の星』をバングルに加工したいと聞けば、少し思案した後に彼は金額を提示する。
「ふんふん、それくらいするんやね。ほな……あ」
「どうしました、クオン?」
「しもた……、ちと足りひん」
しまった、という顔をして、財布の中身とにらめっこをする久遠を見て、店主がならばと提案を持ちかける。曰く、自分が店先に立つと繊細なアクセサリー類が売れ難いのだという。代わりに販売を手伝ってくれるならば、それで不足分をカバーしてくれるそうだ。
「このお店のバイト? 確かに、加工の時間もいりますし」
「それでええの? なら期待しとって!」
「んふふふ、クリスマスの盛り上げ側にもなっちゃいましょう!」
笑い合って頷いて、店主の提案を快諾すれば、店先に即席の露店を設置して販売開始!
いつもの厳つい店主ではなく、其々に見目整ったふたりが立てば人々の目も引かれるもので。ひとりの女性が足を止め眺めるところに、すかさずクロアが歩み寄る。
「お嬢さん、綺麗な瞳ですね。よければお手を」
さり気無くも相手をリードするよな距離感で、クロアがその手を差し伸べる。
「今日の服には金と、瞳のオレンジがよくお似合いですよ」
穏やかな声音と甘いマスクに酔うように、まあ、と淡く頬を染めた彼女はそれなら、と勧められたアクセサリーを買ってゆく。自分の整った外見を理解してのクロアの営業に、隣の久遠がにんまり笑った。
「クロアさんはカリスマ美形店員?」
――ならボクは、客寄せパッパやりましょ!
得意を活かすというのなら、自分はこれだと構える愛用のギター。
盛り上げ、道ゆく人々の気を引きながら、されど他店のことにも配慮しての演奏は、久遠の人柄をも滲ませて、それがまた商店街全体を彩りゆく音に、歌に変わる。満ちゆくXmasソングに、道ゆく人達も心華やか浮かれ心地。そこに『特別な日に特別な品を』と、呼び込みの詞も合わされば、爪先も財布の紐も軽くなるよう。クロアの営業も相まって、装飾品の売れ行きも上がり調子。
そんな中、ふとクロアの瞳に止まったのはひとり、少し離れた場所から眺める婦人の姿。どこか淋しげな空気に気付いたならば、さり気無く近寄って声を掛けた。
――おやご婦人、お一人ですか?
穏やかに、そうっと問いかける彼の言葉に、ゆったりと彼女は頷き口を開いた。淋しげな瞳は、亡き夫を思ってのこと。共に過ごした思い出と――揃いの指輪を想い出していたのだと。
「ああ……先立たれて……もしや、ご主人の指輪はご自宅に?」
頷く彼女の姿に思案したクロアは、露店の机に置かれた細身のチェーンをするりと手にする。同時、隣で演奏をする久遠へと目配せひとつ、『しーっ』の合図。
彼からの合図に気付いた久遠も目配せ返し、小さく笑って協力体制。抱いたギターを抱えなおして、自らに注目が集まるように声を掛ける。
「さぁさぁ、今日も楽しんでいっとくれやす!」
気合を入れて常より技能の力をあげて、手拍子寄越せとパフォーマンスを交えながら、クロアの『内緒』がバレないように、周囲の注目を一身に集める。
そんな久遠の頑張りあって、クロアを見ているのは対話中の婦人ただ一人。にっこり笑ったクロアは声を潜めて彼女に告げる。
「こちらのチェーン、差し上げます。指輪を通してネックレスにされてはいかがでしょう」
ぱちりと瞬く婦人へとクリスマスだから、と背を押しその細い手に握らせた。
――メリークリスマス。
そうして、内緒のサンタミッションが成功した直後、丁度、久遠の渾身のパフォーマンスも終わりを迎えた。盛大な拍手と、その後、気分の上がった客たちの購入の列が途切れた頃――大きく息を吸った久遠が、突然地にしゃがみ込んだ。
「……うぁあ、恥っず!」
「おああ、どうしました!?」
実は目立つのが苦手な久遠。此度、懸命に乗り切ったその身を地に着けながら、案じるように視線を合わせたクロアへ紡ぐ。
「目立つん苦手やのにパパ頑張った。褒めて……」
「ソレはガンバりましたね、ありがとパッパ……!」
よしよしと、いつかの其れのお返しと久遠を撫ぜて労わって、ふと露店を見れば数多と並んだアクセサリーは、からっぽ! そのことに気付いたふたりは、互いに顔を見合わせて。
「もしかして完売?」
「お、完売?」
「やりましたね、クオン!」
「いぇーい♪」
そうして、売り上げの報告を終え店を出たふたりの手には、揃いの星抱くバングルがイルミネーションの光を受けて煌めいて。軽やかに揃う声音に合わせ、コツリと合わさった握り拳が高々と夜空に向けて掲げられた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ギュスターヴ・ベルトラン
折角だもの
行くしかない、文房具屋に…!
賑やかで明るい雰囲気も好きだけど、こういう静かで落ち着いた場所も好きなんだ
来年用の日記は…どうしようかな
見て回ってこれいいなと思ったのが、深いボルドーのレザーが表紙のやつとか、レザーカービングで猫が彫られたやつ…どちらも捨てがたいよね!
二冊両方買っちゃえと内なる心が誘惑してくるから、ちょっと落ち着かせるために店内を見て回ろう
あぁ、クリスマス前だからクリスマスカードがあるなぁ
これも何かしらの縁、という奴だよね?
知り合いに直接手渡すためのカードって言うのも良いかもしれないな
カードなら何枚買っても問題ないんじゃない?って内なる心が誘惑してくるけど…!
悩ましい…
●
夜の街を彩るイルミネーション。ちかちかと燈る賑やかな街並みを歩みながら、ギュスターヴ・ベルトラン(我が信仰、依然揺るぎなく・f44004)が目指すのは、そう。
「折角だもの。行くしかない、文房具屋に……!」
ぎゅ、と掌握りしめ、心なしか弾む爪先で店先に立つ。クリスマスらしい賑やかで明るい雰囲気も好きだけれど、自分はこういう静かで落ち着いた場所も好きなのだ。聖夜を前に華々しく着飾った街を歩んできた後で、改めて、自分の復興したそこに立てば、目の前には懐かしくもあたたかな佇まい。自分を迎えてくれるかのような文房具屋の扉を、ゆっくりと開いて、中へ。
店内には、木製家具の匂いと、インクや紙の香り。雑多でありながらその全てが調和するような、文具店特有の匂いに包まれて、ギュスターヴは店内を見て回る。
「来年用の日記は……どうしようかな」
自ずと惹かれるのは日記の並ぶ大きな棚。見やすく手に取りやすい位置に並べられた、日常使いのし易いものから、少し高いところに飾られた特別感を擽るような逸品まで。様々な顔をした日記帳が、迎えられるのを待つように並んでいる。くるりと一頻り見て回る中、ギュスターヴがいいなと思ったものは、深いボルドーのレザーが表紙の物と、レザーカービングで猫が彫られた物。どちらも其々に味があり、どちらかひとつとどうしても決めかねる。
――迷うなら、二冊両方買っちゃえ!
なんて。内なる心が誘惑してくるものだから――ちょっと心を落ち着かせるために、店内を見て回ることにした。煌めく星を思わすインク、星めく詞を乗せるにいい夜色の便箋、飴細工のような硝子ペン。そんな筆記具を抜けた先、丁度今の時期だからこその品に目が留まる。
「あぁ、クリスマス前だからクリスマスカードがあるなぁ」
大きなツリーに色とりどりのガーランド、真っ赤な苺を乗せたケーキに、愛嬌ある笑みを浮かべたジンジャーマン。愛らしいものから、シンプルで厳かな聖夜を感じるものまでと、あらゆるカードがギュスターヴを出迎える。とりどりなクリスマスの形を前にして、思わず口許が緩んで。
――これも何かしらの縁、という奴だよね?
ふと気になった一枚を手に取った。
「知り合いに直接手渡すためのカードって言うのも、良いかもしれないな」
ひらり、裏を返してみれば其方にも綺麗なエンボスの柄が光に透けて見えた。細やかな意匠に目を細める先、手にしたカード越しに他のカードも『僕も見て』と言わんばかりに並んでいる。
「ん、あっちの柄も気になるな……」
なんて、手を伸ばしてみれば、あれもこれも心惹かれて、送る相手の顔も浮かんで。
――カードなら、何枚買っても問題ないんじゃない?
なんて。再び顔出す内なる誘惑!
「悩ましい……」
きららかな聖夜を彩るカードに、新たな年の想い出を綴る日記帖。さてはて、悩めるギュスターヴの帰路に寄り添う品はいったいどれとなったのか。いったい幾つとなったのか。裡なる誘惑のその先は――?
その結末は、未来の彼のみぞ知る。
大成功
🔵🔵🔵
楊・暁
【朱雨】
いつものように手を繋いで
ああ…すっげぇきらきらしてる…
…うん。みんなに笑顔が戻ってきて、本当に良かった
んー…そうだな
じゃあ、折角来たんだし今日はふたりで楽しまねぇか?
|サンタ業《ケーキ販売》は散々したしな(苦笑
ここでしかできねぇこと、ねぇかな
…あ、藍夜、あれ…!
ミニクエストを見つけて指さし
街中で、には頷いて
ん、多分そうだろ
ふふ、クエスト受諾、っと…これで合ってんだよな?
はー…気持ちいいな…
なんかのんびりしちまうけど、クエストはこなさねぇと
折角だし、チャームの内容は運任せ
足先は器用だからさくっと取るぞ
藍夜、どうだ?取れた――ふふっ、あははっ
苦戦してんなぁ
お疲れ様、藍夜
楽しかったな
チャームも、今日の想い出に大事にしよう
大切に懐へ
パイグラタン…!?(耳をぴんと立て尻尾ぱたぱた
行きてぇ!行こう!
店行ったら速攻注文
他には甘い飲み物と…デザートも食いてぇな
グラタンははふはふ冷ましながら食って
藍夜にもあーんと匙出し
ふふ、あったかくて美味ぇな
食後のアフォガードも藍夜から貰って
ゆっくりと過ごすぞ
御簾森・藍夜
【朱雨】
寒いから心音の手を包むように繋いで散策
綺麗だな
全てが魔法のようだが、人の営みが戻ると温もりを感じずにはいられないな
俺達のリアルは…その、|ケーキ作りに追われた《恒例の苦行》だったが、ここではそれも無い
どうする心音、何かしたいことはあるか?
ここらしいグルメを味わうも良し
地域貢献も良し
…ふむ
そうだな、偶には羽を伸ばすクリスマスも楽しまないとな
ここでしか出来ないことといえば…そうか、クエストか
ミニ…つまり街中で完了できるものってことか?
ああ、足湯
…む
足は…俺はその、そんなに得意じゃ、ない
苦戦しつつもなんとか引き上げられたのはきっと縁のあるチャームのはず
軽くやってのける心音に内心舌を巻きつつ、実はギリギリクリアできたことにホッとしている
今日という日に手に入れたからこそ、余計に特別に見えてきた
こういうのも良いもんだ
そういえば心音、商店街のカフェでパイグラタンを宣伝していたが行ってみないか?
揃ってカフェへ行き、珈琲とデザートにアフォガードを
心音の匙に答えて口を開け、今度はデザートの時に俺から
●
空気の冷たい冬の宵。寒いからと、楊・暁(うたかたの花・f36185)の手を、御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)の掌がすっぽりと包み、いつものように手を繋いで街を往く。
「綺麗だな」
藍夜の口から零れ出た感想は、短くもとても素直な響きで、その聲につられて暁の瞳もまた、目の前のきらきらとした街並みへと向けられる。
「ああ……すっげぇきらきらしてる……」
「全てが魔法のようだが、人の営みが戻ると温もりを感じずにはいられないな」
「……うん。みんなに笑顔が戻ってきて、本当に良かった」
街を彩る光はきらきらと煌めいて、夜に浮かび上がる魔法のようにも見えるけれど、確かな人々の笑顔や息遣いを感じては、ふたりの心も温かく。そんな街の中に在るが故、ふと思い至るのはふたりの|現実《リアル》。
「俺達のリアルは……その、|ケーキ作りに追われた《恒例の苦行》だったが、ここではそれも無い」
ぽそりと零れた藍夜の言葉に、ぱちりと瞬いた暁の大きな瞳が真っ直ぐと向けられた。小さく笑ったふたりが顔を見合わせて、暁に視線を合わせた藍夜が問う。
「どうする心音、何かしたいことはあるか?」
「んー……そうだな」
「ここらしいグルメを味わうも良し、地域貢献も良し」
思案する暁へと、幾つか思い浮かぶものを提案してみる。もう一呼吸考える仕草をした暁が、一つ頷いた後に藍夜へ告げる。
「じゃあ、折角来たんだし今日はふたりで楽しまねぇか?」
――|サンタ業《ケーキ販売》は散々したしな。
なんて、もう一度ふたりのリアルに言及すれば、揃って浮かんだ苦笑もいつしか笑顔に変わる。
「……ふむ。そうだな、偶には羽を伸ばすクリスマスも楽しまないとな」
街の為に人の為に、そう過ごすクリスマスも悪くはないが、折角の季節ごと、自分達も楽しまなくては損である。
「ここでしかできねぇこと、ねぇかな」
「ここでしか出来ないことといえば……」
ふたりして、思案気に首を傾げたその時だ。暁の目にそれと判る印が目に留まる。そう、ゲームの世界だからこそ、分かる其れは――
「……あ、藍夜、あれ……!」
「そうか、クエストか」
暁の指差す先には、ミニクエストの受注先。何とも分かりやすい印が、それでいて違和感なく受け入れられるのはやはりゲームが故。しかし、よく見かけるものに比べて少しばかりささやかな。そう、それはミニクエストの証。
「ミニ……? つまり、街中で完了できるものってことか?」
「ん、多分そうだろ」
遠くからでもわかる其れに近づいてみれば、クエストの印は占いの館で点っている。テントめいた屋台のカーテンを潜り中に入れば、『如何にも』な占い師がふたりを迎える。顔を見合わせ、代表として暁が話しかければ、足湯に潜む星のチャームの説明が占い師からなされ、見えていた証がそこから消えた。
「ふふ、クエスト受諾、っと……これで合ってんだよな?」
己の知る現実世界とは少しばかり異なる様で、けれどもどこか何かで見たような。そんな体験もこの世界ならではで新鮮なもの。説明の通りにすぐ隣にある足湯へと赴いたなら、仄か漂う檜の香りと立ち昇る湯気にふたりは目を細めた。
靴箱に靴と靴下を収め、あたたかな湯に足を滑り込ませれば、じんわりと感じるあたたかさ。足から染み入るあたたかな癒しに、ふたりの表情はほわりと緩む。
「はー……気持ちいいな……。なんかのんびりしちまうけど、クエストはこなさねぇと」
「ああ、そうだったな。足湯で、か」
「俺、足先は器用だからさくっと取るぞ」
ふふふ、と、得意げな笑みを浮かべれば湯の中で起用に足動かして、こつんと当たった星のチャームを指先でひょい。暁の元にやってきたのは、宵色に星めく煌めき混じる星型チャーム。縁あって手の中に納まった煌めきを、目を細めて握り込んだなら、隣の彼の成果も気になるもので。
「藍夜、どうだ? 取れた――ふふっ、あははっ。苦戦してんなぁ」
思わず零れた笑い声は、藍夜があまりに真剣な顔で苦戦をしている姿が目に入ったから。
「……む。足は……俺はその、そんなに得意じゃ、ない」
だから、そんなに笑ってくれるな、と。聊かバツが悪そうに、けれどもそれを見せてもいいのは彼だからだなどと思ってしまうのもまた、何だか気恥ずかしくもあったりなどして。あくせく苦戦しながらも、ようやっと引き上げられたのは、淡水色に雪の結晶が内に浮かぶ星型チャーム。こうして苦労して引き上げたのだ、きっと縁のあるチャームだと、掌に迎えてみればなんだか感慨深くもある。
「お疲れ様、藍夜」
そう言って揺らす暁のチャームと並べて揺らしてみながら、軽くやってのけた彼に内心舌を巻きながら、ギリギリクリアできたことに実はホッとしていた藍夜であった。そうして、ひと心地着いた後、湯から上がり足湯を背にしたふたりは其々のチャームを手に顔を見合わせる。
「楽しかったな。チャームも、今日の想い出に大事にしよう」
「ああ、今日という日に手に入れたからこそ、余計に特別に見えてきた」
――こういうのも、良いもんだ。
そう紡ぐ藍夜の声が穏やかで。暁もまた心穏やかに、そうして、このチャームがいっそう大切に思えて、そうっと懐へと仕舞い込む。
「そういえば、心音」
「ん、なんだ? 藍夜」
「商店街のカフェで、パイグラタンを宣伝していたが行ってみないか?」
そうかけられた藍夜からの言葉を耳にするやいなや、暁の耳がピンと立って、尻尾がパタパタと揺れ動く。それは、もう、期待と喜びの表れだというのは語るまでもないことで。
「パイグラタン…!? 行きてぇ! 行こう!」
一分一秒も待ち遠しいとばかりに、駆けだしてしまいそうな暁の手を、己の手で包み込んだなら、逸る彼の気持ちに添うように、いつもよりも早い足取りで先ほど見かけた店へと並んで向かう。
目的のカフェはレンガ造りの落ち着いた店。キイと風に揺れた木製の看板が、年期と温かさを感じさせる。扉を開いて中に入れば、脇で暖炉の火が揺れる穏やかな店内が、ふたりを迎え入れた。席に着いたならば、楽しみは今すぐにと早速とパイグラタンを注文する暁と、その姿を微笑ましげに眺めながら、メニューを拡げている藍夜。
「他には、甘い飲み物と……デザートも食いてぇな」
「でしたら、ホットココアと、プディングは如何でしょう」
今ならツリーの形のチョコとジンジャーマンクッキーが添えてあると告げた店員の勧めを受けて、暁はそれをと追加した。
「俺は、珈琲とデザートにアフォガードを」
「はい、畏まりました」
少々お待ち下さいね、と奥へと下がった店員は、間もなく注文の品をテーブルへと届けに来た。目の前に置かれたあつあつのパイグラタンを前に、暁の瞳は常より一層輝いて。頂きますの一言を言いきるやいなや、さくりと飛び込ませたスプーンに、湯気立つパイグラタンを乗せて口へと運ぶ。はふはふと冷ましながらも、口に運べば口内に広がる芳ばしさとまろやかさ。思わず緩む口を其の儘に、この美味しさを、幸せを、目の前の彼にも分けたいと思う儘、スプーンですくって、はいあーん!
暁から差し出された匙に応え、口を開けた藍夜に贈るあたたかさは、想いと共に。
「ふふ、あったかくて美味ぇな」
幸せそうな暁の表情に、口に含んだパイグラタンよりもずっとずっとおあたたかさを裡に迎えて、藍夜は笑む。貰った其れのお返しは、デザートの時に自分から、と、抱きながら、暁の言葉に穏やかに頷いて。
贈り合い、伝えあい、ふたりで過ごす温かな夜はゆっくりと。想い出に刻まれる、穏やかなクリスマス前の時間は、こんなにも。そう、幸せな時間。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
一ノ瀬・漣
【煙響】
本当はこんなに綺麗な街だったんだね…
んじゃ、オレ達もじゃんじゃかお金落として経済潤しましょー♪
欲しいもの…んー…想い出?
ま、それはプライスレスだけど!
楽しげに笑って
梓、足湯があるんだって!(にま
足湯とくれば――お酒!(人差し指立てドヤ顔
クリスマスっぽいお酒売ってないかなー
お、いーねぇホットワイン!うん、赤にしよ!
わかるー。どっちも良いよねぇ…(しみじみ
そうそうサラミー!ふふ、さすが梓、完璧じゃん(くすくす
すごい!ほんとだブーツだ!これ持って帰れるかなぁ?
お酒とおつまみ持って足湯へゴー
さて――じゃあお疲れメリークリスマース♪(乾杯
酒とアテ楽しみながらのんびり浸かり
ん~~足湯効くぅ~~~~!
疲れもぱーっと吹っ飛んじゃうね
楽しくてついついお酒も進んでほろ酔いに
…ふふ、梓ぁ…
出逢ってくれてありがとー…
オレ…梓に見つけてもらえて本当、幸せだよー…
…こんな楽しい時間が過ごせるなんて
ちょっと前は思ってもみなかった
来年も再来年も、その次も…
ずっと一緒にこんな風に過ごせたらいいな
ん、ふふ、そーだね
都嘴・梓
【煙響】
ほんとだ、すっげー綺麗
これからもっと人が戻ってきて、もっともっと“生きてる”街になってくんだねぇ
珍しいなと思っていたら足湯でまったりお酒なんて可愛らしい提案に笑ってしまう
表情がころころ変わるようになったことが嬉しくて
クリスマスっぽい酒…あー、ホットワイン?
季節の果物にスパイス、蜂蜜で滋養も意識な赤とかどーよ
白も旨いけど、俺スパイス利かせた赤も好き
あとレンの好きなサラミにも赤合うっしょ?
じゃーん、クリスマスっぽくかわいーブーツのカップですってよレン様!
はぁい、今日はお疲れ様でーした!(乾杯
メリクリー…っと、へぇ結構旨いねコレ
あ゛~…足湯やばい超イイわ
摘まみのオリーブうめぇと呻き、
ホットワインの林檎をチーズと摘まんでうまぁいついでに漣の口にも突っ込んどく
街の賑わいを楽しみながら笑いあううち
漣の唐突な言葉に瞬き
…—俺こそ、ありがと
そんな風に思ってもらえて、すっげえ嬉しい
なぁにそんな先の話して…いつでも目一杯楽しも?
まだやってない面白いこと山程あるし、ずっと一緒なんてもう約束したじゃん
●
きらきらと光を纏う夜の街。その姿を眺めて、わぁ、と声を溢した一ノ瀬・漣(Pour une infante défunte・f44080)が、くるりとあたりを見回した。
「本当はこんなに綺麗な街だったんだね……」
壊され寂れた姿を知るが故、尚のこと、この煌めきが眩しくも感慨深いと、吐息を溢す漣の隣で、都嘴・梓(|嘯笑罪《ぎしょうざい》・f42753)も、眩しげに目を細めた。
――ほんとだ、すっげー綺麗。
「これからもっと人が戻ってきて、もっともっと“生きてる”街になってくんだねぇ」
今でも、数刻前の姿に比べれば『あたたかさ』を感じるものだけれど、きっと、もっとと思えば未来を思わず描きたくなる。眦軟くしながらこの地を見つめる梓に、漣も大きく一つ頷いて、くるりと身を彼へと向けながら両の手を広げて明るく語る。
「んじゃ、オレ達もじゃんじゃかお金落として、経済潤しましょー♪」
にっと笑う漣の言葉に、ぱちりと瞬いたのは梓。だって、その言葉が彼から紡がれるのは意外だったから。何とも珍しいものだと思っていたならば、両手を広げたまま動きがぴたりと止まる。
「経済潤すために、欲しいものをー……欲しい、もの……」
――んー……想い出?
なんて、首を傾げだす始末。
「ま、それはプライスレスだけど!」
と、自分で結論付けたなら、次にはからりと楽し気に笑って見せた。笑うまま、少し動かした視線がふと捉えたのは『足湯』の文字。
「あ! 梓、足湯があるんだって! 足湯とくれば――お酒!」
いいものを見つけたとばかりに、にまっと笑った漣が見つけた其れを示しつつ、矢継ぎ早と紡ぎ出す其れに、ピッと人差し指を立ててどや顔を披露する様に、梓の口からも思わず笑いが零れだす。
「足湯でまったりお酒なんて、可愛らしーこと!」
くすくすと梓から零れる笑みの理由は、言葉に変えた其れだけではなくて。そう、表情がころころ変わるようになったことが――嬉しくて。その歓びが更なる笑みへと変わるのだ。
「折角だし、クリスマスっぽいお酒売ってないかなー」
「クリスマスっぽい酒……あー、ホットワイン?」
「お、いーねぇホットワイン!」
「季節の果物にスパイス、蜂蜜で滋養も意識な赤とかどーよ」
「うん、赤にしよ!」
と、とんとん拍子に決まって行く。
「白も旨いけど、俺スパイス利かせた赤も好き」
「わかるー。どっちも良いよねぇ……」
「それに、レンの好きなサラミにも赤合うっしょ?」
「そうそうサラミー! ふふ、さすが梓、完璧じゃん」
そうと決まればと歩き出す先にも、ふたりのテンポのいい掛け合いは止まらない。しみじみと語り合って頷いたり、くすくすと笑い声を重ね合ったり。冬の寒さなんてなんのその、ふたりでいればあたたかい。――が、身を温める口実のホットワインはまた別物で。それはそれ、これはこれ、うきうきと商店街の酒場前までやってきたなら、季節柄と売り子が店先でホットワインを並べて売っているのが見えた。
「そうそう、これこれー」
先に通った時に見ていたのか、梓は卓に並ぶ赤色の器を隣の漣へと示して見せる。
「じゃーん、クリスマスっぽく、かわいーブーツのカップですってよレン様!」
これを見せたかったのだ、と。にかりと笑って、少しばかり調子よくブーツカップを示したならば、漣の瞳もきらりと光る。
「すごい! ほんとだブーツだ! これ持って帰れるかなぁ?」
可愛らしい見た目のカップに目を奪われて、思わず零れた言の葉に、売り子の娘はにこりと笑って、カップもお持ち帰りいただけますよとにこやかに告げる。手作りなのか、一つ一つ少しずつ個性の出る赤いブーツカップを、其々に選んで売り子へと差し出せば、あたたかなホットワインが注がれる。じんわりとカップ越しに伝わる熱もまたいいもので、両の手で抱えれば立ち昇るスパイスの香りとも相まって、なんだかホッとする心地。
「ふふ、あったか~い」
「ね! あったかい!」
にっこり笑みを交わし合い、売り子の娘に礼を告げればふたりで同じあたたかさを両手に抱いて向かう先は湯気立ち昇る足湯の席。
ほかほかと白い湯気も、仄かに香る檜の匂いも、冬の夜にあたたかさと癒しを添える。とぷりと足を浸したならば、じんわりと身に染みる湯の熱も心をほっこり溶かすよう。
「さて――じゃあ、お疲れメリークリスマース♪」
「はぁい、今日はお疲れ様でーした!」
ちょっと早いけど、メリクリーっと声を掛け、ふたりがブーツカップをカチリと合わせる。陶器のぶつかる少し優しい音が心地よく、口へ運べば濃厚な赤ワインの中に潜むスパイスの味わいが何とも癖になる。
「へぇ、結構旨いねコレ」
「うんうん。それに、おつまみにも絶対合う!」
「じゃあ、俺はコッチ……あ~摘まみのオリーブうめぇ」
「やっぱサラミも合うー!」
温かなワインに、道中買ってきたおつまみを合わせて、酒もアテも余すところなく楽しみながら、ほう、と一息。腰下ろす板に少しばかりカップを預けて足もとに意識を向ければ、先程よりもあたたまった足先に、心地よい熱がちゃぷりと揺れる。
「ん~~、足湯効くぅ~~~~!」
「あ゛~…足湯やばい超イイわ」
「疲れもぱーっと吹っ飛んじゃうね」
駆けまわった足に、頑張った身に、足先からの温もりは格段に効いてゆくもの。あたたかさも、香りも、なによりふたり共に過ごす時間が何よりも。心地よく身も心も解される。一度置いたカップを再び手に招いて、ワインの中に沈んだあたたかな林檎と摘みのチーズを口に運んだ梓はご満悦。
「うまぁい、ほら、漣も」
なんて言いながら、ついでにと言わんばかりに漣の口へと同じものをひょいと突っ込む。それを受けながら楽し気に会話を交わせば、互いの酒もついつい進んで、いつしか漣はほろ酔い気分。ふわふわとする心地の中、いつもよりもふうわりとした漣の声が湯気の中に響く。
「……ふふ、梓ぁ……、出逢ってくれてありがとー……」
――オレ……梓に見つけてもらえて本当、幸せだよー……。
湯に足浸す此処から、街の賑わいをも楽しみながら笑い合う中、漣から唐突に紡がれた言の葉に、梓はひとつふたつと瞬いて。ほろ酔いモードな漣に小さく笑みを浮かべて告げる。
「……――俺こそ、ありがと。そんな風に思ってもらえて、すっげえ嬉しい」
「……こんな楽しい時間が過ごせるなんて、ちょっと前は思ってもみなかった」
そう、ほんの少し前まで、こんな自分が未来に居るなんて考えもしなかったんだ。それを叶えてくれたのは、目の前の……だから、彼に真っすぐ視線を向けて、ふわふわと心地よいまま零す笑みと伝えるのだ。
「来年も再来年も、その次も……」
――ずっと一緒に、こんな風に過ごせたらいいな。
漣から零れた素直な願い。それを柔く受け止めながら、梓は笑って告げる。
「なぁに、そんな先の話して……いつでも、目一杯楽しも? まだやってない面白いこと山程あるし、」
――ずっと一緒なんて、もう約束したじゃん。
そうだろう、と。いつかの約束を確認するように。彼に確と刻まれるように、穏やかでありながらしかと伝えて見せる。
「ん、ふふ、そーだね」
確かに届いた言の葉に、再び交わされる約束に。喜びとどこか安堵を交えた笑み咲かせ、それなら、尚のこと。彼の言うとおりに今をもめいっぱいに楽しまなくては、と。残り少なくなったカップを再び合わせ鳴らして。あたたかく、ふわりと心の浮くような。かけがえのない『今』を、きみと。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
レルヒェ・アルエット
ノヴァ(f32296)と
街並みも取り戻せたようで良かったね
さて、と煉瓦道の商店街を眺めて
気になったのは『文房具屋』というところ
へぇ紙やインクの香りを
心地良いと感じることもあるんだね
色々眺めて目に付いたのは
ガラスペンと夜空色のインク瓶と
使う、使わないは置いといて…
いや実際手元にあるなら使わないのは損だろうから
ふふ、ノヴァ宛に手紙でも書いてみようかなぁなんて
星空に彩られてるステキな表紙の
日記帳をいっぱいにするのも良いけれど
旅路の話、偶にはわたし達にも聞かせてね?
其々の買い物を終えたなら
自分たちが祈った先の広場の様子も見てみようか
わたしが言うのも何だけど
緑や植物、自然に溢れる風景って
人々にとっても憩いになりやすいのかなと想って
取り戻すのは日常だったり生活だったり
繋がりの先、縁のようなもの
眺めるのも良きことだなぁと
見つけた今日の雨の星も
ある種の縁と呼ぶのであれば
わたし達のダンジョンにも連れ帰ろうか
其々の思い出を照らすひかり、
大切にね
ノヴァ・フォルモント
レルヒェ(f42081)と
煌めきを取り戻した街
戻ってきた人々を見守るように眺め
レルヒェと共に足を運んだのは文房具屋
紙やインクの新しい香りが心地好い
レルヒェ、何か気になるものは見つかったかい?
なるほど、ペンとインクか
俺が気になったのは、コレ
手にしたのは星空に彩られた日記帳
旅すがらふとした時に何か綴りたくなる時もあるんだ
今年はこの日記帳をいっぱいに出来るような旅路になると良いなってね
そうか、手紙…
ふふ、書いてもらえるのは嬉しいよ
俺も旅先で見聞きした景色をレルヒェに手紙で返そうかな
買い物を終えたなら、広場へと立ち寄ってみよう
自分たちの祈りで取り戻した場所を
様子を覗けば先程の静けさが嘘のように人々の笑顔が溢れていた
街の人々や訪れる者を繋げ
そして憩いの場でもある場所
取り戻した日常の光景に
言葉にはせずとも自然と表情が綻ぶ
…そういえば
手元に残って無造作に懐に仕舞っていたままの雨の星を
思い出すように取り出して
その青く煌めく星を懐かしむように見つめながら
今日の想い出と共に大切に持ち帰ろうか
●
煌めきを取り戻した街、ちかちかと灯る明かりに満ちた街並みと、戻ってきた人々の姿を見守るように眺め歩むノヴァ・フォルモント(月蝕・f32296)の隣。レルヒェ・アルエット(告天子・f42081)も、自らの歩む街を見つめながら口を開いた。
「街並みも取り戻せたようで良かったね」
行き交い談笑する人々の姿も目に留めて、煉瓦道の商店街を眺めたレルヒェがふと目を留めたのは、木の佇まいがあたたかさを感じるとある店。
「レルヒェ、気になるところがあったかい?」
「うん、あの『文房具屋』というところが気になるな」
「それじゃあ、行ってみようか」
頷きあって、爪先を其方に向ければ、重厚でありながらあたたかな木製の扉がふたりを迎え入れた。キイと、独特の音を立て開いた扉の向こう、一歩中へと踏み込んだならふわりと感じる紙とインクの香り。思わずすん、と鼻先を動かして、店内の空気を内へと取り込んだノヴァの目が細まる。
「紙やインクの新しい香りが心地好いね」
「へぇ、紙やインクの香りを心地良いと感じることもあるんだね」
ノヴァの零した言葉にぱちりと瞬いて、彼が語る感覚の新鮮さを思いながら、ふたりで店内をゆるりと巡る。文具店らしい筆記具は、羽ペンや万年筆を始めとし、煌めく硝子ペンや色付きのノートに羊皮紙なども置いてある。
くるりと視線移せば、手紙類のコーナーには、便箋やメッセージカード、シーリングスタンプにワックス、キャンドルも目を惹いた。多岐にわたる文具たちを眺めながら、ノヴァは同様に興味深げに視線を巡らせるレルヒェへと声を掛ける。
「レルヒェ、何か気になるものは見つかったかい?」
「うん、そこのガラスペンと、夜空色のインク瓶と」
指差し示して告げたレルヒェの言葉を追って視線を向ければ、其処には夜空色のインクを満たした、ころんとしたインク瓶と、店内の明りを受けてきらりと煌めきながら、澄んだ水めくクリアな硝子ペン。一見透明に見える硝子ペンは傾ければ極光の如く色を変え、繊細な意匠が目を惹きながら手に持てば馴染みがいい。
「なるほど、ペンとインクか」
「うん、使う、使わないは置いといて……」
なんて言葉も添えてはみるけれど、ふと思いなおして小さく笑う。
「いや、実際手元にあるなら使わないのは損だろうから。ふふ、」
――ノヴァ宛に、手紙でも書いてみようかなぁなんて。
そう、やんわりと眼を細めて隣の彼に告げたなら、ひとつ瞬いたノヴァが、穏やかな笑みで返す。
「そうか、手紙……ふふ、書いてもらえるのは嬉しいよ」
――俺も、旅先で見聞きした景色を、レルヒェに手紙で返そうかな。
そう返される言葉もあたたかくて、自分が彼へとペンを執る時間も、彼から返る其れに目を通す時間も今から楽しみに思えてくる。先よりも頬が緩む心地となりながら、そういう彼は何を、と問う。
「俺が気になったのは、コレ」
そう告げながら、そうっと手を伸ばしたノヴァが手繰るのは、星空に彩られた日記帳。深く静かな宵色に煌めく細かな星たちが描かれた表紙は、まるで先ほどまでいた天を切り取ったかのようで。
「日記帳?」
「うん、旅すがら、ふとした時に何か綴りたくなる時もあるんだ」
今は真白の中身を抱く、優しい星空の表紙をそうと指先で撫ぜる。少しばかり弾力のある表紙は厚みがあって、握る手に添い馴染むよう。
「今年は、この日記帳をいっぱいに出来るような旅路になると良いなってね」
これから綴られるであろう未来の日々を思い描くよに、その先に馳せるよに細められた目は優しい。そんなノヴァを見つめてレルヒェも口端に弧を描いて。
「星空に彩られてる、ステキな表紙の日記帳をいっぱいにするのも良いけれど」
――旅路の話、偶にはわたし達にも聞かせてね?
綴られる手紙の返事も楽しみだけれど、やっぱり本人の口から、彼の語り口で聴きたいのだと。少しばかり悪戯に、けれども心からの願いを紡いでみせた。
そうして、其々の買い物を終え、店を後にしたふたりは、自分たちの祈りで取り戻した場所の様子を見に行こうと、爪先を広場へと向ける。煌めくイルミネーションに照らされた煉瓦道、ふたりの足音が浮かれた夜の喧騒に紛れながらも確かに響いて。ふたりと同じ方向へと駆けてゆく子どもたちの姿も見えた。
そうして訪れた広場は――先ほどの静けさが嘘のように、人々の笑顔が溢れる場所となっていた。ベンチに座る恋人たちは仲睦ましげであるし、商店街で買ったであろう食べ物を片手に散策を楽しむ人もいる。外灯の明りを頼りに本を広げながら、そわそわと誰かを待っている人の姿も見えた。街の人々や訪れる者を繋げ、そして憩いの場でもある場所なのだと、その姿を見てノヴァは暖かか心地で目を細める。広場の人々と、そんな彼の様子も見ながらレルヒェは徐に口を開いた。
「わたしが言うのも何だけど、」
つい零れ出たというように、ほろりと紡いだレルヒェの視線は広場全体に向けられて。人々の笑顔や息遣いは勿論のこと、夜風に靡く花壇の花々、揺れては囁くように鳴る葉擦れの音、噴水の水音も心地よい。そう、街中で自然と人が共に在る姿をみて、殊更に想う。
「緑や植物、自然に溢れる風景って、人々にとっても憩いになりやすいのかなと想って」
取り戻すのは日常だったり生活だったり、繋がりの先、縁のようなものなのだ、と。そうして、
――それを眺めるのも、良きことだなぁと。
しみじみと、噛みしめるように続けた彼を見つめ、ノヴァも緩やかに頷いて、ふたりで改めて広場の景色を見渡す。そこに在る、取り戻した日常の光景に、言葉にはせずとも自然と表情が綻んだ。
「……そういえば」
はた、と思い出したよに、手元に残って無造作に懐に仕舞っていたままの雨の星を取り出して、ノヴァはその青く煌めく星を懐かしむように見つめながら、微笑み告げる。
「こうして手元に残った雨の星だ。今日の想い出と共に大切に持ち帰ろうか」
「そうだね。見つけた今日の雨の星も、ある種の縁と呼ぶのであれば、」
――わたし達のダンジョンにも連れ帰ろうか。
レルヒェもまた、仕舞っていた雨の星を掌へと迎えて。互いの青き石を寄せ合っては笑む。
「其々の思い出を照らすひかり、大切にね」
てのひらで包んだ小さな星は、彼らと共に。そうして、この街に灯った光はこの地の人々と共に。大切な思い出と縁を繋いでゆくだろう。これから先も、きっと、ずっと。
そんな灯りを、縁を、見守るように夜空の星々も煌めいて。ちか、ちか、と瞬く様は、楽し気なお喋りを交わすようにも見えた。
この地には、もう、哀しい泣声は響かない。
未だ空きの残る地も、いつかは形を取り戻すだろう。
長い長い夜に、短い昼に、先の未来に、これから多くの想い出が刻まれる街。
きららかで、あたたかで――それを取り戻したのは、紛れもない君たちだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵