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ヴェーダは導き入れる、キャレットの一端

#バハムートキャバリア #ノベル #ACE戦記外典 #潔斎者たち #エルネイジェ王国

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シャリス・ルミエール
シャリスの聖杯のお酒をメサイアが無理矢理飲むノベルをお願いします。

アレンジその他諸々お任せします。

●時間軸
シナリオ【ピルグリメイジの呪詛】の後です。

●メサイア、不合格判定
獣騎ワイバーンが倒された事でメサイアは約束通りにお酒を貰おうとします。
「終わりましたわ〜! 早くそちらのお聖杯のお酒をくださいまし〜!」
しかしシャリスは首を横に振りました。
「いけません」
「なんでですの!?」
メサイアは困惑しました。
「この聖杯より湧き出ずる神酒は、強く誇り高い真の騎士だけが味わうことを許されたもの。メサイア様……あなたの戦い振りはそれに相応しいとは言えません」
シャリスは聖杯の酒を求める者には実力と高潔なる精神を求めます。
そうして人々の心に酒の味わいと共に騎士道を根付かせ、忘れさせないようにする使命を帯びています。

●メサイア、泣く
「お酒……いただけませんの?」
メサイアは絶望してしまいました。
「ですが力はあるようですね。次に会う時までに正しい騎士の精神を身に付けてください。さすれば聖杯のお酒を振る舞いましょ……」
「ひどいですわ〜! わたくし頑張ったのにあんまりですわ〜!」
メサイアは泣き出しました。
「おワイバーンを倒したらお酒をくれると仰いましたのに! おシャリス様は嘘つきですわ〜! 騙されたわたくしとってもおかわいそうですわ〜!」
「ちょっと! やめてください! まるで私が悪いことをしてるみたいじゃないですか!」
しかしメサイアは泣き止みません。

●シャリス、折れる
「ああもう! 仕方ない人ですね! 一口だけ! 一口だけなら許しましょう!」
「いただけますの?」
メサイアは急に泣き止みました。
シャリスはこいつ……みたいになりました。
「まったく……今回だけですからね?」
シャリスは聖杯を渋々メサイアに渡します。
メサイアはさっそくお酒を飲みました。
「うんめぇですわ〜!」
「そうでしょう? 神々さえも羨んだ天上の味わい。かつては聖なる決闘に臨んだ数多の騎士達が愛した、文字通りの勝利の美酒なのです。もっと飲みたいのでしたら、心身を磨き……特に礼節を身に付けて騎士に相応しい精神を……」
得意気に語るシャリスを放ってメサイアは酒をぐびぐび飲み続けます。
「あー! だめー! 一口だけって言ったじゃないですか!」
「一口飲んだらもう止まんねぇのですわ〜!」
シャリスが聖杯を取り返そうとするもメサイアは離しません。

●メサイア、飲む
「ぷっは〜! うんめぇお酒でしたわ〜!」
メサイアは結局満足するまで飲んでしまいました。
「こんなの……聖杯に対する冒涜です……!」
シャリスは落胆しました。
「飲んでしまった以上、あなたは強く誇り高い騎士であらねばなりません。いいですか? 今後は聖杯のお酒を味わった騎士として、清く正しい振る舞いを心掛けてくださいね?」
「わたくしお姫様ですわ〜!」
シャリスはダメだこりゃってなりました。

●シャリス、新たな騎士を探す
「はぁ……では私はそろそろ行きますので」
「あら〜? どちらに行かれますの?」
「聖杯のお酒を味わうのに相応しい騎士の元へ。聖杯から湧き出る神酒で人々を騎士道に導く。それが私の使命なのです」
「お騎士様をお探しですの? わたくしお騎士様がたくさんいらっしゃる場所を知っておりますのよ?」
「それはキャメロット城ではなく?」
「おキャロット? わたくしニンジンもちゃんと食べれますのよ〜!」
シャリスは思いました。
姫というからには騎士の知人も多くいるのだろうと。
メサイアについて行けば新たな騎士に出会えそうだと考えました。
「ひょっとして、この出会いは聖杯のお導き……?」
だとしたら嫌だなって思いました。
「もしよろしければ、その騎士がたくさんいる場所までご案内をお願いできますか?」
「よろしいですわよ〜!」
メサイアはひとつ返事で承諾します。
「申し遅れましたが、改めて自己紹介を。私はシャリス・ルミエール。聖遺物の聖杯に選ばれし、聖杯の乙女です」
「わたくしメサイアですわ! エルネイジェのお姫様ですわ! 好きなものはお酒ですわ! こちらはヴリトラのヴリちゃんですわ!」
「|獣騎《バルバ》……ではないのですね?」
「お重機? ヴリちゃんはショベルカーではありませんのよ? おキャバリアですわ」
「因みにご案内いただける場所はどのような場所なのですか?」
「桐嶋技研ですわ〜! 王国だとお盗聴やおスパイだらけなのでそちらに集まってるのですわ〜!」
「キリシマギケン……?」
「早く行きますのよ〜!」
シャリスは聞き慣れない言葉に首を傾げながらメサイアに連れられて行きました。

だいたいこんな感じでお願いします。


メサイア・エルネイジェ
●合わせ人数
シャリス
メサイア
以上2名です

以下は執筆時の参考資料として扱ってください。

●シャリスについて
聖杯の妖精の聖杯の乙女です。
聖遺物の聖杯に選ばれました。

聖杯のお酒を強く誇り高い騎士に振る舞うことで、人々を正しい騎士道に導く使命を帯びています。
要は美味い酒を餌にして人々に騎士道を遵守させることです。
「聖杯の神酒は天上の味わい。これを求めんとする者よ、高潔なる精神を剣を以て示しなさい。さすれば聖杯の乙女が許しを与えるでしょう」

関節的にとは言え、妖精族のせいで起きてしまった無差別殺戮に悔恨の念を抱いています。
「過去は消せない。もう二度と過ちを繰り返さないよう、私は人々に聖杯が示す騎士道の導きを授けたいのです」
「戦いを捨てる事はできない。ならせめて、その戦いは正義と秩序に則ったものであるべきだと……」

●年齢
結構な年齢を生きています。
「百より先はもう覚えていません」
しかし精神年齢は必ずしも一致しません。

●聖杯について
聖遺物のひとつです。
至高の酒が湧き出てきます。
大昔には聖なる決闘の勝利者にのみ飲む事が許されたとされています。
その習わしが少し変化し、今では強く誇り高い騎士に振る舞われる酒となりました。
酒は強力な治癒や浄化の作用を秘めています。

●聖杯の巫女衣について
聖杯の酒に浸けて清められた衣です。
物凄く酒臭いです。

●アリコーンについて
シャリスのタイタニアキャバリアです。
聖杯の乙女を守護する使命を帯びています。
現在は大きな損傷を受けて、どこかの森深くに隠されています。
イラストが付くまでは登場させない(予定)ので気にしないでください。



●杯に満るは
 聖杯の乙女。
 それがシャリス・ルミエール(聖杯の乙女・f44837)。
 永き時を生きる彼女にとって、抱える聖杯は他に代えがたきものである。
 聖遺物が一つである聖杯を狙う者は多い。
 それは仕方のないことであった。
 時代が移ろえば、習わしは変化を迎える。嘗てを知らぬのならばなおさら。
 百獣族は人類の蛮行によって悉くが死に絶えた。
 聖なる決闘の勝者は決まれど、戴くべき王は裁定されぬ。
 であるのなば、シャリスの抱える聖杯は今や強く誇り高い騎士に振る舞われる至上の甘露となるだろう。

 そうした時代の移ろいを知ることができるのは、百を超えた頃より年を数えることをやめた彼女であればこそ。
 しかして、変わらぬものがある。
 そう、彼女の本分である。
 聖杯よりこぼれたる一雫。
 これによって、強く誇り高い騎士こそが至高であると示し、人々を正しき騎士道に導く使命である。
 天上の味わい。
 これを求めるものは多く、高潔なる精神でなくばただの一滴すらも得るに能わず。
 聖杯の乙女たるシャリスの許しなくば、例え聖杯を得たとしても味わうことはできないのだ。

 だが、オブリビオンとして復活した百獣族から己が謗られるのは仕方のないことであった。
 妖精族が人に憐憫の念をいだかなければ、起こらなかった凶事。
 人の凶暴性を見誤ってしまった己達の罪。
 変えようのない過去は、受け入れる他ない。
 消すことのできない過去をいだいき、贖罪のために生きる他ないのだ。
「過去は消せない。もう二度と過ちを繰り返さぬよう、私は人々に聖杯が示す騎士道の導きを授けたいのです」
 そう、人は戦いを捨てることはできない。
 他者と己とが存在する限り、戦いは常に起こり得る。
 なら、せめて、とシャリスは思うのだ。
 争いの中に正義と秩序とがあって欲しいと。
 そうしたものがあればこそ、人の内にある凶暴性もまた抑えることができるものであろうはずだからだ。

 そう、此度のように怒りに我を忘れた百獣族が呪いを騎士に掛けたこともまた、正しき騎士道あればこそ防げたことであろう。
 怒りを受け止め、清廉なる精神を持って相対すれば、百獣族もまた嘗ての騎士道を思い出すのだ。
 どれだけ怒りに塗れても、最期は、と。
 だからこそ、巨山の頂きにありてシャリスは祈る。
 再び眠りにつく百獣族の魂に安息が訪れるようにと。

「終わりましたわ~! 早くそちらの聖杯の中身をくださいまし~!」
 天には青空。
 こんなにも美しい青空はきっと、敗れし百獣族の魂を慰撫していることだろう。
 けれど、響くのはメサイア・エルネイジェ(暴竜皇女・f34656)のけたたましい声であった。
 今、シャリスは『ヴリトラ』と呼ばれる黒き機竜の腕にいだかれている。
 ずっと麓から巨山の頂きまでこんな調子であった。
 乙女の尊厳が幾度か危機を迎えたが、なんとか乗り切ることができたのは、シャリスの永きに渡る人生経験があればこそであろう。
 いや、まだちょっと危ない。峠を乗り切った程度であることをシャリスは承知していた。
 そう、むしろ、ここからが本番。
 酩酊してからが宴もたけなわというように、シャリスの戦いは、今、ここからはじまるのだ。
「いけません」
「なんでですの!?」
 シャリスは頭を振る。
 聖杯の雫を求めるメサイアの顔が驚愕に染まる。

「だ、だって、だって、あなた様がおっしゃったじゃないですの~! あのおワイバーンをぶっ飛ばせば、いただけると!」
 匂いからしてわかる。
 メサイアは酒愛ずる姫君である。
 匂いだけで、その聖杯の中身が極上であることがわかるのだ。
 エルネイジェ犬の鼻はごまかせても、メサイアの鼻はごまかせない。それほどまでに彼女の嗅覚は、たった一つの事柄に特化していたのだ。
 麻薬犬ならぬ美酒犬みたいなもんである。
 そして、メサイアはそのために今回の事件をがんばって解決するために百獣族をぶっ飛ばしたのだ。
 ガンポッドだめ、ミサイルだめ、ジェノサイドバスターだめ。
 あれもだめこれもだめ。
 次から次に出てくるNG武装。
 がんじがらめの中、メサイアは『ヴリトラ』と共に百獣族を打倒したのだ。
 それもこれも全部聖杯の雫のため!

 なのに、その主であるシャリスが、またもや、だめ、と言いだしたのだ。
 いくらなんでも困惑で済むわけがない。
「なんっで! ですの!?」
「この聖杯より湧き出る神酒は、強く誇り高い真の騎士だけが味わうことが許されたもの。あなた様のそれは、相応しいとは言えません」
「ガーンッ!」
 あ、口でガーンって言うんだ、とシャリスは思った。
 けれど、絆されはしない。
 そう、彼女が抱える聖杯は特別なもの。
 確かにメサイアは実力はある。
 が、高潔なる精神を有しているかと言われば、稚拙である。
 ハッキリ言って相応しくない。
 シャリスのジャッジは厳しいのである。
 それも、全ては正しき騎士道のため。
 人々の凶暴性を抑える騎士道を強固に根付かせるためには、己が手にした聖杯の雫が要なのだ。
 その使命を彼女は一時足りとて忘れたことはないのだ。

「……いただけませんの?」
 愕然としたメサイアは、足元が震えていた。
 膝も笑っていたようであるし、また肩も震えていた。
 手先がぶるぶるとし、また形の良い唇は戦慄いていた。
 もらえると思っていたものが、もらえないのだから、その反応も然るべきものであった。一言でいうなら絶望ってやつである。
「はい。差し上げられません。ですが、力はあるようですね。次に会う時までに正しい騎士の精神を身に着けてください。さすれば、聖杯の雫をお振る舞いいたいましょ……」
 シャリスは、メサイアにそろそろ『ヴリトラ』の腕からおろしてほしいな、と思った。
 ずーっとこんなかんじなのだ。
 下山するにせよ、何にせよ、ここでお別れというのならば、おろして欲しい。いや、さっきから何度か試みているのだが、なんかこううまく降りれないのだ。

「……ひどいですわ~! わたくし頑張ったのにあんまりですわ~!」
 おんおんとメサイアが泣きわめく。
 巨山の頂にこだまする成人皇女のギャン泣き、ガチ泣きである。
 それはもう滂沱の波も斯くやと言わんばかりに流れ続ける涙。水圧どうなってんだろうなって誰もが思うかも知れないが、幸いか不幸か、頂にはシャリスとメサイアしかいない。
 すでに他の猟兵達は下山を始めている頃合いであろう。
 しかし、こだまするメサイアのギャン泣きは、彼等の耳にも届いているかもしれない。
「おワイバーンを倒したらくれるとおっしゃいましたのに! おシャリス様は嘘つきですわ~! 騙されたわたくし、とってもおかわいそうですわ~!」
「ちょっと! やめてください!」
「だまされましたわ~! ただ働きですわ~! 空手形ですわ~! お詐欺ですわ~! くれると言ったけど上げるとは言ってないみたいな誤魔化しで、わたくし傷つきましたわ~!!」
「なんて人聞きの悪い言い方を!? まるで私が悪いことしているみたいじゃないですか!」
「え~ん! え~ん! ひどいですわ、悪党ですわ、非道ですわ、おシャリス様は、くれると言ったものをくれない約束を破る御方ですわ~!」
 どうせなら、指切りげんまん、嘘ついたらストゼロのーます、くらいやっておけばよかったですわ~! わ~! わ~! とメサイアの鳴き声が巨山から麓にまで伝播したかもしれない。

 そんな状況にあってはシャリスは追い詰められてしまう。
 このままでは聖杯の乙女たる自分が、嘘つき呼ばわりされてしまう。
 それは風評被害ってもんではないくらいに大変なことである。現代風に言うならば、炎上案件ってやつである。
 シャリスは選択を迫られていた。
 このまま突っぱねるか、それとも折れてメサイアを泣き止ませるか。
 どちらかである。
 突っぱねたら炎上。
 折れたら、それはそれで己のこれまでの道程を否定することになる。
 人々に正しき騎士道を根付かせる。
 その想いが欠けてしまうように思えたのだ。

 だが、今も眼の前で人目も憚らずにギャン泣きし続けるメサイアを捨て置くというのもまた、己が掲げる騎士道というものに反する行いであるようにもシャリスは思えた。
 なんだかんだ言っても人類が情に厚く、またその情故に暴走しやすいのと同じようにシャリスもまた徐々にメサイアの涙に絆されつつあったのだ。
「……うう」
 どうしよう。
 今もメサイアはわんわん泣き続けている。
 乙女の涙。
 それは如何なる騎士道物語においても騎士の胸を打つもの。
 シャリスは、なんとも言えない表情で眉根を寄せ、断固拒否の言葉をどうにか嚥下した。
 そう、ついに彼女は折れたのだ。
「ああもう! 仕方ない人ですね! 一口だけ! 一口だけなら許しましょう!」
「いただけますの?」
 さっきまでギャン泣きしていたメサイアはケロッと顔を明るくする。

 現金なもの、とかそういうレベルではない。
 あれだけ泣いていたのだから、瞼が腫れぼったくなっていても仕方ないはずである。だというのにメサイアは蛙よりもケロっとした顔でシャリスの両手を包むようにして掴んでいた。
 明るい笑顔。
 それだけ見たら、天真爛漫である。だが、その姫はただの酒愛ずる姫君である。
 シャリスは思った。
 この娘、もしかして嘘泣きしていたのか?
 いやでも、あの泣きようは本気であった。
 あれが嘘であったというのならば、人のことをシャリスはちょっと信じられなくなりそうだった。
 変わり身が速いというか、切り替えが早いっていうか。
 まあ、それもまた心の強さ、と好意的に解釈すれば、シャリスの思う強さの一端に触れていることにもなるのかもしれない。
 いや、無理矢理シャリスは自身に言い聞かせる。
 そう、自分は間違ってない。
 それに一口だけ、と約束したのだ。
 なら、彼女の約束を守るという意識を信じる他無いのだ。

「まったく……今回だけですからね?」
「わお、やった~ですわ~! 頂けるのですわね~!」
 渋々とシャリスは聖杯に雫を満たしてメサイアに手渡す。
 メサイアはシームレスに、それこそワンセコンドも満たぬ素早さでもって聖杯に口をつけて、その至上の甘露たるを舌に乗せる。
 味わい、口腔に広がる香りを楽しみ、喉を落ちていく熱と喉越しを知る。
 それはまさしく聞きしに勝るものであった。
 聞くのと味わうのとでは雲泥の差。
 知っているのと知っていないのとでは、天地の開きほどあろうかという認識が、ここに生まれたのだ。
 まさしく、天上の美酒。
 それが聖杯に満たされる雫。

 シャリスはメサイアがさぞや喜ぶだろうと思っていた。
 言葉で語れる味わいではないと思うが、しかし、それほどまでの味わいに感動して言葉も発せられないだろうと思ったのだ。
「うんめぇですわ~!」
 だが、メサイアは間髪入れずに叫ぶ。
 余韻。
 余韻を味わって、とシャリスは思った。が、まあ、わからんでもない。
 語彙力がなくなるのも仕方ないことである。
 いや、元から語彙はない。
「そうでしょう?」
 でもまあ、悪くない。
 それくらいの甘露なのである。
 神々さえも羨んだ天上の味わい。
「かつては聖なる決闘に挑んだ数多の騎士たちが愛した、文字通りの勝利の美酒なのです。よいですか、この一杯を心の糧としてですね、心身を磨き……特に礼節を身につけて騎士に相応しい精神を……」
 シャリスは得意げに語っていた。
 が、メサイアは構わず呑み続けていた。

 ――!?

 シャリスは目を丸くする。
 え、この人、まさか自分の話聞いてない? 一つも? え、今、さっき少しだけって言ったよね? あれ? 言ってない?
 困惑するシャリスを他所にメサイアは、喉を鳴らしまくっている。
 見惚れるほどの飲みっぷり。
 いや、感心している場合ではない。
「あー! だめー!一口だけって言ったじゃないですか!」
「一口飲んだら止まんねぇのですわ~!」
「離して……離し……ってぇ! いや、力強いですね!? 離してくださいってば!」
 だが、メサイアは止まらない。
 おでこをぐいーってやっても、ほっぺたをつねっても、全然止まらない。
 すんごい力で聖杯の縁に口をつけたまますすっているのだ。
 おおよそ、皇女のしていい顔ではなかった。
 が、止まらないのだ――!

●その後は
「ぷっは~! うんめぇのですわ~! 最高ですわ~!」
 結局、メサイアは自身が満足するまで聖杯を離さなかった。
 その隣ではシャリスが、息荒く聖杯をヒシと抱いて恨みがましい視線をメサイアに向けていた。
「こんなの……聖杯に対する冒涜です……!」
「美味しかったのですわ~! それって賛美ではございませんこと~?」
 けろっとしている。
 どこかのキャラクターくらいにケロっとしている。けろけろしている。
「飲んでしまった以上、あなたは強く誇り高い騎士であらねばなりません。いいでうsか? 今後は聖杯の雫を味わった騎士として、清く正しい振る舞いを心がけてくださいね?」
「わたくしお姫様ですわ~!」
 なので無理、みたいな顔をするメサイアにシャリスはがっくり項垂れる。

 が、落ち込んでいられないのが妖精族の辛いところである。
「はぁ……では、私はそろそろ行きますので」
「あら~? どちらに行かれますの? あちら? こちら? そちら?」
「あのですね、私は聖杯の雫を味わうに相応しい騎士の元へ向かい、人々を騎士道に導くという使命があるのです」
「あら~、お騎士様をお探しですの? わたくしお騎士様がたくさんいらっしゃる場所を知っておりますのよ?」
「はいはい、キャメロット城ですよね。知っておりますよ」
「おキャロット? わたくしニンジンもちゃんと食べれますのよ~!」
 いらないよ、とは言わないよ、とメサイアは胸を張る。
 シャリスは、そんなことで胸を張らないで欲しいと思った。曲がりなりにも聖杯に口づけた者なのだから。

 だが、シャリスはちょっと思った。
 ひょっとしたら、この出会いは聖杯の導きなのかもしれない。いや、普通にヤダ、と思った。
「でも、もしかしたら……あの、その騎士がたくさんいる場所までご案内をお願いできますか?」
「よろしいですわよ~! うぉん、わたくし、たっくさんの燃料を充填しまして、今すぐにでも動き出したい気持ちが溢れておりましてよ~!」
「それで、そのたくさんいる騎士とは、如何なる……」
「『黒騎士』『白騎士』、『青騎士』、よりどりみどりですわ~」
「あの?」
「その前に桐島技研ですわ~」
「キリシマギケン……?」
「早く行きますのよ~!」
 シャリスには聞き慣れない言葉がいくつかあったが、メサイアは構わず彼女を『ヴリトラ』の腕部に捕まらせたまま、巨山から飛び立つ。
 その急降下は凄まじく、シャリスはまた乙女の危機を乗り越えねばならないのだった――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年11月14日


挿絵イラスト