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ハロウィンは猫と共に

#UDCアース #ノベル #猟兵達のハロウィン2024

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#猟兵達のハロウィン2024


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フール・アルアリア



ナルニア・ネーネリア



雨倉・桜木




 ナルニア・ネーネリア(GoGo★キャッツ・f41802)は二匹の猫である。正確に言えば、どちらかが猫で、どちらかが|霊鬼《グリム》なのだが、どっちも猫、いいね?
 さて、そんな二匹の猫が自由気ままに訪れているのはハロウィンで盛り上がるUDCアース、猫といえどTPOに則って――否、知っているか? 猫は猫というだけで可愛いのに、そこにハロウィンっぽい恰好をすると可愛さが跳ね上がるということを。勿論ナルニアとネーネリアは賢い猫なのでそれを知っていた。
 可愛さを十二分に利用し|人間《下僕》から美味しいものをたんまり頂こうじゃないか――というわけで、ナルニアは小さな魔女帽子を頭にちょこんと被り、首輪には蝙蝠のチャーム、肩にはケープを纏って猫の魔女に。ネーネリアはハロウィン仕様のシルクハット、首輪には南瓜のチャーム、背には悪魔の羽を背負って猫の悪魔にという完璧なハロウィンキャットとしてお散歩を楽しんでいた。
 時折、|人間《下僕》の黄色い悲鳴とシャッター音、それと引き換えに猫用のおやつを貰ったりして、ハロウィンも悪く無いなんて二匹は頷き合っていたのだ、あの二人に出会うまでは。
「えっ?」
「あれっ?」
「にゃ?」
「なぅ?」
 重なった四つの声はまるで見事な四重奏のようだったけれど、発した彼らの顔は『えっ? 知ってる顔だけど、あれっ? ひょっとして? いやいやまさか、いやでもやっぱりそうだよね?』みたいな顔であった。
 そのうちの一人、雨倉・桜木(花残華・f35324)はこちらもハロウィンだしとキョンシーのコスプレである。極度の寒がりである彼は、理想の暖房器具を求めて家電屋を巡っている途中。もう一人のフール・アルアリア(No.0・f35766)は自身の瞳の色に合わせたピンクを基調としたアリス風のコスプレで趣味のゲーセン巡りをしていた途中、ばったりと出くわしたのだ。
 誰と? そう、猫であるナルニアとネーネリアに!
「実在してたんだね……ナルニアちゃん、ネーネリアちゃん! あと桜木さん」
「非現実的存在じゃなかったんだね、ナルニアくん、ネーネリアくん! あとフールくん」
 感極まったようなフールと桜木を見上げ、ナルニアとネーネリアは瞬時に察する。あ、こいつら猫を吸うタイプの猫好きだ……! と。そういう気配に、猫は敏感であるのは賢明な猫好きの皆さんは御承知であると思う。勿論、そのあと猫がどんな行動をするのかも。
「あっ! ナルニアちゃん、ネーネリアちゃん!」
「待って、ナルニアくん、ネーネリアくん! せめてひと撫で!」
 そう、これは戦略的撤退とばかりに、脱兎として二人の前から逃げ出したのである。
「こんなチャンス、二度とないかもしれないのに……!」
「わかるよ、いつもは夢の中でしか会えなかったからね」
 現実ではあったことのない、猟兵としての同僚。不思議なシンパシーを感じていた相手、そして――猫!
「撫でなきゃ帰れない、そう思わない?」
「思うね」
 フールの言葉に桜木が即答する。そう……ナルニアとネーネリアが感じ取った『こいつらヤベー』は正しかったのだ。
「でもあの子達、妙に賢いから難しいかな?」
「こんなこともあろうかと、ぼくは常にこれを持ち歩いている!」
 これ、と桜木がキョンシー衣装の袖から取り出したのはニャール、しかもプレミア仕様の豪華ニャール。
「これは……! うちの|ごましお《猫》が一発で陥落した豪華ニャール!」
「ふふ……うちの|キュウダイくん《猫の姿をした悪魔》もこれには目がないからね」
 猫の下僕は常に猫の好物を袖の中に忍ばせておくものだよ、という桜木の言葉にフールがなるほど、と頷いている。
「僕も今度から持ち歩こうかな、ニャール」
「これ、かさばらないからいいよね」
 袖の中に、鞄の中に、ポケットに、いつでも猫に貢げるように――!
「自分の猫が一番可愛いとは思うけどね、それはそれ、これはこれ」
「猫は猫というだけで全て可愛いから仕方ないよねー!」
 うんうん、仕方ない仕方ない。他の猫を愛でて、家に帰って自分の猫に『触ったのか……自分以外の猫に……』という挙動をされたとしても。
「じゃ、ナルニアくんとネーネリアくんを探しに行こうか」
「行こう行こう、そして絶対にもふらせてもらおう!」
 普通であれば、逃げてしまった猫を探すのは難しい。けれど桜木とフールは己が持つ猟兵としての力をフルに発揮し、あれよあれよという間に二匹の姿を見つけ出したのだ。
「見つけたよ!」
「「フギャー!」」
 桜木の見つけたという声に悲鳴のような鳴声を上げ、二匹が再び逃げようと踵を返した瞬間を狙いフールが立ち塞がる。前門のフール、後門の桜木であった。
「ナルニアくん、ネーネリアくん、少しぼくらの話を聞いてほしいんだよ」
「そうだよ、悪いようにはしないから!」
 完全に悪役のセリフだったが、ナルニアとネーネリアはいざとなったらユーベルコードを使ってでも逃げればいいかと二人の言い分を聞くことにした。
「ぼくらもタダで撫でさせて欲しいなんてケチなことは言わない。これと引き換えでどうだい?」
 チラッと桜木が見せたのは豪華ニャール、それも幻の味と言われた超高級まぐろ味である。
「にゃ……!」
「にゃん……!」
 にゃんだって!? みたいな動きで二匹が振り返った先、桜木の手には確かにニャールがあり、ナルニアとネーネリアは顔を見合わせた。
 抗えるか……この豪華ニャールの誘惑に! とばかりに桜木がニャールの封を切る。途端、二匹の鼻先を擽ったのはなんとも美味しそうな匂い。
「にゃーん」
「んにゃーご」
 まぁ、この豪華ニャールが報酬なら? 撫でさせてやってもいいかな? と二匹がにゃごにゃごと会話を終え、よきに計らえとでもいうように二人の前で寝転がった。これが|人間《下僕》へのサービスである。
「んんんん」
「あああああ」
 猫の可愛さの前に人語は溶けるもの、それに違わず桜木とフールも意味を成さない単音を羅列しながら夢にまで見た――実際夢で見ていたのだが――ナルニアとネーネリアの毛並みを堪能したのである。
「思った通りの滑らかな手触り、どれだけ撫でても飽きることのない毛並み……っ」
「この腕の中にずっしりと感じる重み……幸せの重み……」
 しかも、ただでさえ可愛い二匹が、なんと! 本日に限って! ハロウィンのコスプレをして!! 猫好きにとって、出血大サービス以外の何ものでもない。
「あー……最高……っ」
「ありがとうハロウィン、ありがとうお猫様……」
 人間の奇行など飽きる程見てきたナルニアとネーネリアだけれど、同僚が自分達を吸う姿はさすがににゃーん、の虚無顔である。それでも、報酬の豪華ニャールの受け取りは忘れない。だって猫だもの。
「はぁ……ありがとう……今日という日の奇跡に感謝だよ」
「今度は夢で逢った時にも吸わせてほしいな」
 別れ際の二人の言葉は意図的に無視し、ニャールを堪能した二匹はすたこらさっさとハロウィンで賑わう街に消えたのであった。
 余談ではあるが、その後家に帰った二人が愛猫から凄まじいまでの猫パンチと詫びニャールを要求されたのは言うまでもない話である。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年11月13日


挿絵イラスト