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きょうも骸の雨の降る

#サイバーザナドゥ #オブリビオン・ストリート #パニック!モンスターランド #武装医師団 #いつかハレバレ #巨大企業群「|篠突黎明《シノツクシノノメ》」 #シノノメ医工

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#巨大企業群「|篠突黎明《シノツクシノノメ》」
#シノノメ医工


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 サイバーザナドゥの東の辺境にある国で、もう一年も雨が降り続いている。
 温帯にあるこの国には、「ツユ」や「アキサメ」と呼ばれる奥ゆかしい雨季が存在する事が知られていたが、ここ一年はずっと降り止まず、住民達も以前から異常気象を訴えていた。
 殊に骸の雨が降る世界では、雨に含まれる有害物質が齎す汚染は深刻なもの。
 その異変が爆発的に生じたのは、数日前の事だった。
「助けてくれ! 銃で撃っても死なない奴が暴れている!」
「人間が魔獣のように叫びながら襲い掛かってくるんだ!」
 地下道のネズミが全身をケロイドにして死んでいる、なんてのは当たり前だった。
 屋外で風雨に晒された野良ネコが、狂暴な異形になったのは記憶に新しい。
 過日は畜牛が異常肥大して主人を押し潰すなんて悲惨な事故があったが、あれは、あれらは、そんな異常が「人間にも起こり得る」という前触れだったか判然らない。
「ここに居ては危険だ! 国境を超えて逃げよう!!」
「車に乗って脱出するんだ! 雨の降らない所まで!」
 昨日は知り合いだったかもしれぬ異形を振り切り、国境まで車をすっ飛ばす。
 而して多くの避難民を集めた国境は大渋滞となっていたが、彼等の目前、固く閉された鉄門が絶望を突き付けた。

『高濃度汚染レベルMAX。人体への影響が確認されました』
『感染の拡大を防ぐ為、この区域は封鎖されました』

 非常事態を訴えるサイレンが鳴り響く中、其々の通信端末が受信する政府の緊急通知には「待機」の指示。
 この国は「シノノメ医工」の健康推進計画の実験区域として庇護にあり、人々はこんな時こそ援助があると思ったのだが、埋込型の身体管理アプリに通知は無し。専用ネットワークも落ちている。
「ダメだ。シノノメ医工は俺達を見放した……」
「実験区域がこんなになったんだ。もう国ごと切り離すつもりだ」
 生身の人間では到底超えられない、高さ十メートルの大きな鉄扉を前に、人々が相次いで膝を折る。
 冷たい雨は猶も無情に、彼等の背中を打ち続けていた。


「|篠突黎明《シノツクシノノメ》のグループ企業『シノノメ医工』が、人工降雨機を使って骸の雨を長期間局地的に降らせ、その効果と影響を調べていたのだが、甚大な被害が出た所で本件を揉み消しに掛かった」
 恐ろしい生体実験が行われ、人命ごと抹消されようとしていると訴えるは、枢囹院・帷(夜帷の白薔薇・f00445)。
 メガコーポの暴走によって「骸の海」と呼ばれる有害物質が雨にも含まれるようになった訳だが、それを操作できるか実験し、更には人体の影響を調べていた――極めて非道な研究を知った彼女は、逸早く現地へ向かい、先ずはパニックにある人々を助けてやって欲しいと願い出る。
「現在、この国のあちこちで人間が過剰汚染し、制御できない力をぶつけている。皆には人々の救助や避難を手伝って貰うか、暴走した者達の制圧をお願いしたい」
 頗る腹立たしい事に、これだけ忌まわしい事故を起こした「シノノメ医工」から救援は来ない。
 連中は政府に働きかけて国境を封鎖し、実験結果を隠蔽しようとしている他、データだけは取りに来ると声色を落とした帷は、全て彼等の思い通りにさせる訳にはいかないと、集まった猟兵達に烱瞳を巡らす。
「万事を奇跡に導いた君達なら、連中にムチャクチャな記録を渡す事が出来るかもしれない」
 調査隊の到着時、人々の重度のケロイドが完治していたとか、人々が鉄門を破って逃げていたとか。
 連中が首を傾げ、或いは憮然とする表情が見たいと小気味よく頬笑んだ帷は、ぱちんと弾指するやグリモアを召喚する。
「――何、君達が行けば雨だって晴れるさ」
 そうだろう? と持ち上がる語尾が、精鋭に対する信頼を示していた。


夕狩こあら
 オープニングをご覧下さり、ありがとうございます。
 はじめまして、または、こんにちは。
 夕狩(ユーカリ)こあらと申します。

 こちらは、人工降雨機を使って「骸の雨」を操作し、人為的にオブリビオンを発生させんとするメガコーポの非人道的実験を打ち砕く、『オブリビオン・ストリート』シナリオ(難易度:普通)です。

●シナリオの舞台
 サイバーザナドゥの東の果てにある、とある国。
 大手医薬企業「シノノメ医工」と強固な連携関係にあり、今回の実験は政府が承認したと言われていますが、詳細を知らされていたかは不明で、知っていたとして拒めたか分かりません。

●シナリオ情報
 第一章『パニック! モンスターランド』(冒険)
 骸の雨が延々と降り続く街で、人々が次々にユーベルコードに目覚め、暴走しています。先ずはパニックに陥る一般人を救助・避難させ、オブリビオンと化す者達の無力化を図りましょう。
 サイコブレイカーなど猟兵として覚醒する者も居るかもしれませんので、暴走を止めるくらいでOKです。

 第二章『武装医師団』(集団戦)
 巨大企業群「|篠突黎明《シノツクシノノメ》」傘下の医療系企業「シノノメ医工」所属の医師団が、「オブリビオン・シーディング計画」のデータを取りに来ます。
 凄まじい院内権力闘争で培った能力を駆使し、「治療」と称して市民を粛清する彼等の姿は死神そのものです。

 第三章『いつかハレバレ』(日常)
 シノノメ医工が上空に飛ばしている人工降雨機を破壊し、有害物質を含む雲に覆われた暗い空を晴らします。それは一時かもしれませんが、人々に希望の光を見せる事ができるかもしれません。

●リプレイ描写について
 フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や【グループ名】をお書き下さい。呼び名があると助かります。
 また状況によりサポートさん方のご支援を頂いて物語を進めて参ります。

 以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
 皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
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第1章 冒険 『パニック! モンスターランド』

POW   :    オブリビオンにユーベルコードを叩きつけ、武力制圧する。

SPD   :    パニックにある人々を落ち着かせ、安全な場所へ避難させる。

WIZ   :    被害状況を詳しく調べ、発生原因を究明する。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

儀水・芽亜
いかにもサイバーザナドゥらしいお話ですね。「落ち着き」を持って対処しましょう。

雨除けの傘を差して現地へ。昔は日傘が手放せなかったものです。
さて、全周に対して一曲歌いましょう。
竪琴の「楽器演奏」「歌唱」「全力魔法」鎮静の「属性攻撃」「範囲攻撃」「落ち着き」「浄化」でアンチウォーヴォイス。
避難民の方も、望まず異形となられた方も、どうか気を静めてください。
全てはメガコーポの実験なのですから。互いに争い合えば、メガコーポの思う壺です。
とにかく、この雨を凌げる場所へ皆で移動しましょう。今後のことはそれからです。
メガコーポの実験は私たちが潰しますから、皆さんは大人しくしていてくださいね。



 |疇時《むかし》は日傘が手放せなかったものだが、世界を違えた今は雨傘に空を隔てて。
 蓋し片手が塞がるのは慣れていると、露先に滴る雨雫を眺めながら街にやってきた儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『|夢可有郷《ザナドゥ》』・f35644)は、蕭条たる雨の響きに紛れる獸聲を捉えるや、烱々と|黃金《きん》の佳瞳を研ぎ澄ませた。
「……望まず異形となられた方。あなたこそ戸惑っている筈です」
『ルォァァアア嗚呼!!』
「ですが、どうか気を靜めて下さい。人を傷付けては、自身が傷付きます」
 大通りを獸のように四つ脚で駛走する異形、その猛然たる突進を半身を退いて躱す。
 擦れ違いざま雲雀の囀聲を置いた芽亜は、次いで視線を建物の陰に射ると、麻酔銃を構えていた住民に射撃を留まるよう佳聲を投げた。
「互いに爭っては、メガコーポの思う壺です。先ずは雨を凌げる場所へ移動しましょう」
「ダメなんだ! あんな風になった親父を放っておいたら……っ」
「今後の事はそれからです。今は唯だ、落ち着いて――」
 無情な雨の音を縫って、淸澄なる音色が広がったのは此の時。
 小脇に抱えた竪琴に繊指を滑らせ、嫋やかに弦を彈いた芽亜は、忽ち広がる七彩のメロディに歌聲を乗せ、反戰の祈りと平和の歡びを兩者に届ける。
「全てはメガコーポの実験。爭いを望む彼等に対し、私達は偃武の心で平和を築くのです」
『……ォォ……ヲヲォ……』
「!! まるで眠るように……親父の動きが、止まった……」
 花唇を滑る音色が住民の恐怖心を和らげ、異形に対しては覺醒めたばかりのユーベルコードを封じる。
 その場で膝を折る異形に駆け寄る靑年、彼の背が濡れぬよう雨傘を傾けた芽亜は、付近のガソリンスタンドを指差して云った。
「私は街を巡って皆さんに避難を呼び掛けます。お父さんと一緒に|彼方《あちら》で待っていて下さい」
「あ、あんたも避難すべきだ! 街中ひどい事になってる」
 靑年が蒼白い顔で芽亜を呼び止めるが、既に踏み出していた麗人は振り向きざま佳聲をひとつ。
「……メガコーポの目論見は私達が潰しますから、皆さんは大人しくしていて下さいね」
 畢竟、こんな話は何度も聽いたし、何度も対処した。
 実験は勿論、雨雲も晴らしてみせると肩越しに烱瞳を注ぐ芽亜は、嘗て銀の雨降る時代を駆け拔けた一線級の能力者らしく、義気凛然として美しかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シモーヌ・イルネージュ
メガコーポの奴ら、相変わらずひどいことしてるな。無茶苦茶だろ。
このカタは後でじっくりと付けるとして。
今は無事な連中を助け出すのが先決だな。
そして、それは暴れてるのを静かにするのが一番だ。

武器まで使うと、手加減が難しいから素手でぶん殴っていこう。
UC【拳撃奏鳴】も使って手早く済ませよう。

ついでにサイバーアイも使って、制圧したのを簡単に調査。
骸の雨に濡れた結果ということだけど、それが脳や精神にまで影響するなんて、やばすぎだろ。
メガコーポのことだから、大方、変なブレンド混ぜてるか?



 この近くで雨を凌げる処と云えば、頑丈なキャノピーのあるガソリンスタンドか。
 多くの市民が集まる其處へ自らも避難しようと走っていた少女は、進路の先に立ち開かる男が片腕を天に掲げ、ゴロゴロと雷鳴を轟かせた瞬間に蒼褪める。
「いや……――!」
 目下に彼が腕を振り下ろせば、有り餘るエネルギーが電撃となって降り注ぐ筈であったが、颯と吹き渡る一陣の風が、男の狂氣を刈り取った。
「全く、メガコーポの奴らは酷いことしてるな」
『ぜァッ!!』
「相變わらず無茶苦茶だ」
 標的の側面に滑り込むや、身を低くして前掃腿ッ! 瑞々しい脚を鎌の如く旋して足払いする。
 男の軀が跳ね上がる中、さやと搖れる銀髪からアイスブルーの佳瞳を覗かせたシモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)は、華奢を|彈条《バネ》の如く伸ばしざま閃拳ッ! アッパー気味に頤を衝いた!!
『どぅえ!!』
「このまま走って」
「は、はいっ」
 凡そ|雷鳴《thunder》より|稲妻《lightning》が迅いとは云うたもの。
 男が曇雲を搔き混ぜるより先、雷光の如く駆けたシモーヌは輕快なフットワークで体勢を崩し、急所を攻められた男が勢いよく水溜りに飛び込む中、少女に道をあけてやる。
 喧嘩の仲裁ならその儘「頭冷してな」と雨に晒す処、これ以上汚染されては堪らぬと、むんずと男を摑んで屋根の下に運んだシモーヌは、先の少女が緊張して見守る中、この者を簡單に調べ始めた。
「骸の雨を浴び続けた結果、腦や精神にまで影響するなんて。やばすぎだろ」
 高性能義眼が映す視覺情報を、ここに來るまでに取得したデータと照合する。
 男の皮膚を爛れさせる汚染物質のうち、多くの成分が隣接地域の工場から排出される有害物質と一致する事を突き止めたシモーヌは、成程、人工降雨機が周辺に降る筈だった降雨をも取り込み、この國に局地集中させていると舌打ちする。
「メガコーポのことだから、大方、変なブレンドをしているかと思ったけど。言うならエスプレッソだな」
「濃いってこと?」
「噫、奴ら骸の雨を操作できないか、オブリビオンを蒔けないか試してる」
 降雨による人爲的オブリビオンの発生実験と、その軍用化――。
 この二つが叶えば、慥かに他のメガコーポより優位に立てると翠眉を顰めたシモーヌは、
「――この|始末《カタ》は後でじっくり付けてやる」
 と、メキリと拳を固めて告ぐのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

響納・リズ(サポート)
「皆様のお役に立てるよう、頑張りますわね」

移動時には、急ぐ要素があれば、サモン・アーティアを使って移動します。
洞窟など罠が予想される場所では、慎重に進み、万が一、けが人が出た場合は、回復UCにてすぐに癒します。
調査の際は、タロットを使っての失せもの探しや、礼儀作法を使っての交渉。聞き耳等を駆使して、情報を得ようとします。
交渉時は相手の機嫌を損ねないよう気遣いながら、気持ちよく話してくれるように進めます。

共同で進む際は、足手まといにならないよう、相手を補佐する形で参加したいと思います。

アドリブ、絡みは大歓迎で、エッチなのはNGです。



 |巨大企業群《メガコーポ》の暴走によって、この世界は「骸の海」と呼ばれる有害物質で汚染された。
 地球環境に壞滅的打撃を與えた彼等は、更には骸の雨を“操作”して、強制自発的にユーベルコードを覺醒させた「|改造生物《オブリビオン》」を生み出そうとしている――。
「……自然を脅かすのは勿論、生命を弄ぶなど決して許される事ではありません」
 シノノメ医工の非人道的実験を止めねばならぬと、固い決意を花顏に示すは響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)。
 続々とガソリンスタンドに集まる市民に聲を掛けて回った佳人は、繊麗の躯に祕める聖なる光を迸り、その柔かな光に觸れた者達の傷を癒し、恐怖に震える心を慰めていく。
「皆樣、どうか落ち着いて下さい。この雨は必ず止みます」
 神祕の力を翼に顕したリズは、唯だ生きて此の場に居るだけで人々を救い、癒やしを齎す聖者。
 櫻色の唇を滑る佳聲は金絲雀の如く、頬笑みは春の木洩日の如く、而して内より溢れる光は絶望にある者を温かく包み、彼女が紡ぐ言葉通りの希望を呉れる。
「皆様が人として生きること――其が慥かな反抗になります。聢と心を持って抗いましょう」
 シノノメ医工に有益なデータを渡さない。
 その爲には幾らでも力を行使し、人々を理不尽なオブリビオン化から守ろうと癒しの光を広げたリズは、自らの損耗を顧みず皆々に手を差し伸べるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

都嘴・梓
【煙響】

んー?
やだぁ!疑わないでよぉ!
ウチはクリーンが売りなのぉ!
まぁ俺に色々実験したがるけどね!開発のアホ共は!!
なんてお遊びも小声

―まぁ、レンに任せときゃ人間の方は大丈夫

ってぇワケでバケモノは俺の専門
制圧ねぇ
めんどくせーけどいきますかぁ

けーどぉ……んんー、
レンに目配せで手でガブガブの所作したら首振られたから食うのもってかフリもアウトだよねぇ
んあー、めんどくせー!…は、声に出さずにUC

犬を解き放って暴れる異形共を個に分けて囲んでから併用UCホールド・アップ!
はぁい!ケーサツてすよ!
手ェ上げて伏せろ!
伏せねぇのは伏せさせる!

抑えることには影縛りを使用しレンの応援に笑顔で応えてからサクサクお仕事


一ノ瀬・漣
【煙響】

なぁるほどー
何でもかんでもとりあえず手ぇつけてるんだね篠突黎明…
にしても人体実験とか胸くそ悪…
…|表向きのDefin∃Ёarth《梓ん所》は、清く正しく美しい製薬会社…だよね?
ふふ、冗談冗談

何これカオスじゃん…!
こういうときはやっぱ――コレでしょ!
楽器演奏と歌唱でUC
第一声から高音のロングトーンで一般人の注意を惹きつけ
情熱を込めたシャウトに“指示”を込めて、声を響かせる

もう大丈夫、心配はいらない
待ち望んだヒーローのお出ましだ
ここはもう彼等の晴れ舞台
観客席は用意済み、あとはそこから声援を送るだけ

梓、そっちはどう?
食べっ…!?NGNG!(首振り
オブリビオン化の人達はUCで眠らせ梓のフォロー



 取扱う事業は|粉末《パウダー》食品から人工降雨機、延いて核兵器まで。
 また人々の暮らしに関わること搖籠から墓場まで、|巨大企業群《メガコーポ》ともなると世界や個人に対する浸蝕は凄まじかろう。
「なぁるほどー。何でもかんでもとりあえず手ぇつけてるんだね、|篠突黎明《シノツクシノノメ》……」
「俺ン|地球《とこ》もさ、地方じゃ衣料品から娯樂まで全部担ってる企業があったっけ」
「いうぉん?」
「じょすこ」
 |瞥《チラ》と視線を結び合わせ、互いの地球事情を交換する二人。
 感覺としては総合商社が近いかと、幾許の言を交しつつ中心街にやって來た一ノ瀬・漣(Pour une infante défunte・f44080)と都嘴・梓(|嘯笑罪《ぎしょうざい》・f42753)は、驟雨の中にも響く獸聲と悲鳴を辿って|歩速《あし》を速める。
「……にしても人体実験とか胸くそ悪っ! 因みに梓ん所は、淸く正しく美しい製藥会社……だよね?」
「んー? やだぁ、疑わないでよぉ! ウチはクリーンが売りなのぉ!」
「ふふ、冗談冗談」
 梓が所属する対UDC組織『|Defin∃Ёarth《ディファインアース》』は、表向きは人々の健康と幸福を支える製藥会社。
 市民は勿論、一部のヘビースモーカーな構成員に対する厚生も充実しており、組織としては健全と云って良かろう。
「まぁ俺に色々実験したがるけどね! 開発のアホ共は!!」
 ……内部関係者でないと見えぬ面もある。多少の祕密はある。
 とまれ、今は非人道的化学実験に手を染めるシノノメ医工を止めねばならぬと騷擾の渦に向かった漣と梓は、小聲のお遊びをして後、眼前の光景に翠眉を顰めた。
「何これカオスじゃん……!」
「んあー、めんどくせー事になって」
 其は恐怖と狂氣の渾沌。明確な敵を見出せぬが故の|恐慌《パニック》。
 共に逃げて來た筈の友が暴走し、止める術もなく傷付けられる者――彼もまた傷口に染む骸の雨によってユーベルコードの覺醒臨界に至り、数秒前まで友情に結ばれていた者と血を流し合う。それが何十人!
 硝子に隔てた緋瞳に驚愕の色を搖らす漣と、首を傾げざま白い項頸へ手を遣った梓は、片や息を呑み、片や息を吐いて――其の一瞬で戰術を共有した|樣子《よう》だった。
「引き付けるのは任せて」
「じゃバケモノは俺の専門って事で」
 仔細を言わずとも合わせられる程には組み慣れた。
 ここからは其々が得意を預るだけだと進路を分けた二人は、先ずは漣が高所に躍り上がって仕掛けた。
「こういうときはやっぱ――コレでしょ!」
 芙蓉の一朶の如き掌指がAbbandoneのフレットを駆け走り、刹那、彩を帯びた音色が響き渡る。
 漣を中心に放射状に広がった旋律は、更に高音のロングトーンを緯糸に潜らせて錦を織り成し、混亂にある者の耳を忽ち引き付けた。
「もう大丈夫、心配はいらない。待ち望んだヒーローのお出ましだ」
 玻璃のように澄んだ佳聲は、しかし砂を灼いたように情熱に滿ちて、聽く者を魅了しよう。
 恐怖も狂氣も、市民を蝕む諸有る異常を淨った漣は、ライブは全員で作るものだと高らかに呼び掛けた。
「雨に打たれ続けた此処はもう晴れの舞台になる。觀客席は用意済み――あとは聲援を送るだけ」
 其は力強い旋律で届けられる、反抗の歌。
 漣が奏でる音樂に耳を傾け、彼と瞳を合わせた者達は、逃げ惑う足を止め、軈て凛然と向き合い始める。
「うん、イイ感じだ。……そっちはどう、梓?」
 亂れに亂れていた音が「整った」と安堵を得た漣が、視線を遠くに投げた時。
 彼の視線を受け取った梓は、手でガブガブする所作を返事にした。

「食べっ……!? NG、NG!」

「えぇー? んんー、じゃ食うのもってかフリもアウト? ……だよねぇー」
 ガブガブ、ダメ絶対。
 ブンブンと首を振る漣を距離を隔てて認めた梓は、正直「めんどくせーです」と思ったが、漣センセが「いけません」って言うなら立派に守るよいこ組の子なので、ちょいダルながら影を搖らして犬を放つ。
 千切れ気味の影から疾り出した漆黑の警察犬は、濡れた舗装路をジグザグと駆けるや間もなく異形を圍み、互いを傷付け合う者達を個に分けて分斷した。
「はぁい! ケーサツですよ! 手ェ上げて伏せろ!」
『……警察……ケーサツ……けい、さ……』
「るせェ! 伏せねぇなら伏せさせる!」
 警察手帳を開いて見せつつ、公僕に從わぬ者は下僕に――動きを緩慢にさせて制圧する。
 梓が足元から更に延伸させた黑影を縄状に巻き付ければ、拘束された者の耳には漣が紡ぐ音色が届き、時を経ずしてスヤァ……と寝息を立てよう。
 捕縛から催眠まで流れるような連携を成功させた二人は、またも仕草のみで会話し、

「そうそう、その調子!」
「はぁーい、サクサクお仕事シテキマース」
「食べない梓、えらい!」
「あーコレ味見もダメっぽい? ぽい」

 爽やかなサムズアップと、諦めたように|閃々《ヒラヒラ》と飜る手。
 莞爾たる笑顏と、ちょっぴり物足りなさそうな苦笑。
 通じ合っているのか擦れ違っているのか微妙だが、この間に暴走は着実に収まって行くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

水心子・真峰(サポート)
水心子真峰、推参
さて、真剣勝負といこうか

太刀のヤドリガミだ
本体は佩いているが抜刀することはない
戦うときは錬成カミヤドリの一振りか
脇差静柄(抜かない/鞘が超硬質)や茶室刀を使うぞ

正面きっての勝負が好みだが、試合ではないからな
乱舞させた複製刀で撹乱、目や足を斬り付け隙ができたところを死角から貫く、束にしたものを周囲で高速回転させ近付いてきた者から殴りつける
相手の頭上や後ろに密かに回り込ませた複製刀で奇襲、残像で目眩まし背後から斬る、なんて手を使う
まあ最後は大体直接斬るがな

それと外来語が苦手だ
氏名や猟兵用語以外は大体平仮名表記になってしまうらしい
なうでやんぐな最近の文化も勉強中だ



「もし骸の雨が思いの儘に操れるなら、|篠突黎明《シノツクシノノメ》は企業間抗爭で優位を取れる」
 自らの土地を汚染から守りつつ、競合他社の勢力下に被害を齎す事が出來る。
 濃度を調節してオブリビオンを発生させ、市民を騷擾に陥れる事が出來る。
「……骸の海を直接投与して生み出した兵士を送り込むより手輕という訳か」
 慥か「こすぱ」と云ったか、「たいぱ」と云ったか。
 とまれ、効率や利権を重視して生命を踏み躙る行爲は「見逃せぬ」と雨の中を走った水心子・真峰(ヤドリガミの剣豪・f05970)は、最も混亂している国境付近に至るや、太刀の下緒に通された飾り玉に觸れた。

「恐怖にある者達よ。奇し癒しの御業に拠り、暫し微睡みへ――」

 真峰は数多の戰場を駆けた実戰刀。其に宿った魂。
 本体はもう研げぬほど|繊細《きゃしゃ》になってしまったが、藍晶石の飾玉を触媒に顕現する神氣は灼たかで、玲瓏と光れる緑と靑の螢火を一帯に放った途端、暴れる者も恐れる者も、市民を一樣に眠らせる。
「夢寐にある裡に事を収めよう。この國を悪魔の実験の舞台にはさせない」
 己を中心に半径158m圏内を螢の癒しに滿たし、移動した先でまた人を眠らせる。
 次に覺醒めた時には雨も上がっていようと、漸う閉される瞼と訣れた真峰は、雨滴をものともせず駆け走るのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

カイム・クローバー
一年?それで店の軒先に傘が大量に売られてるワケだ。
機械の身体だもんな。錆びちまったら一大事だ。安くない金額が羽を付けて雨雲の向こう側に飛んで行っちまう。
(店主が逃げ出した店の軒先に置かれた傘を広げて)
……おいおい、穴が空いてるじゃねぇか。これで売り物だって?ハッ、こりゃどうやら――今日もズブ濡れ確定みたいだな。

(広げた傘を【怪力】で高く空に放り投げて)
二丁銃でUCと【クイックドロウ】。暴走した人間?
今日の俺はどうやらツイてるらしい。UDCじゃあ足を撃つのも一般人相手じゃ避ける必要がある。優しく、優しく寝かしつけてやらなきゃならない。
存外大変なんだぜ?無力化するってのは。
こっちじゃ、機械仕掛けの足だ。修理すりゃ事足りる。
アンタらにとっちゃアンラッキーかもな?ま、安心しな。修理費用はシノノメ医工がしっかり持ってくれるってよ?

空の薬莢が雨で濡れた地面に転がって。
ガンスピンして銃を収め、上を見上げず、傘を片手でキャッチ。
…ま、無いよりはマシか。暴徒に潰される寸前の店を救った報酬代わりさ。



 諸有る女を振り向かせる男とて、雨には“降られる”。
 ロンドンスモッグ宛ら灰色に烟る雨霧の下、濃紺のコートを頭に被って小走りに來たカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は、ふと目に留まった|軒庇《ひさし》に身を潜らせると、雨粒を払いながら溜息した。
「この雨が一年? それで傘が店先に大量に売られてるワケだ」
 |相應《それなり》の商売になるだろうと聲を張ってみせるが、店から返事は無い。客の気配も無い。
 暴走した市民の襲撃を恐れて逃げ出したか、カイムは蛻の殻となった店内に一瞥を呉れつつ、そのまま話を続けた。
「機械の躰だもんな。錆びちまったら一大事だ。安くない金額が羽を付けて雨雲の向こう側に飛んで行っちまう」
 蓋しこの男。
 輕口は勿論、表情や仕草にも富んでいる。
 ヒラヒラと動かした繊指を宙へ運びざま、其を追った視線を更に上へ投げた彼は、どんより曇った灰空の向こうは、嘸かし儲かっているだろうと皮肉を嚙み殺すと、店先に竝べられた傘をサッと取り出して広げた。
「……おいおい、穴が空いてるじゃねぇか。これが売り物だって?」
 とんだ古物商もあったものだと悪態を投げてみせるが、店は依然として閑寂――。
 隱れているなら文句のひとつふたつは返って來ようが、流石、賢い店主と客は避難が出來ていると、そと口角を持ち上げて無音を確かめたカイムは、我が前方にこそ降雨でない音を拾うと、飄々苦笑して云った。
「ハッ、こりゃどうやら――今日もズブ濡れ確定みたいだな」
 斯くは言うものの、彼は雨に降られるのは|慣れている《・・・・・》。
 Ich bin doch nicht aus Zucker. ――砂糖ではあるまいに、濡れるのを恐れる性分でも無いと、音の方向に向かって爪先を進めたカイムは、獸のように四つ脚で迫る人間を捉えるや、広げた傘をそのまま高く空に放り投げた。

「Singin' in the Rain. ――ならぬ、Dancin' in the Rainって處か」

 とまれ愉しもうぜ、と紅唇が繊い月を模ったのはこの瞬間。
 曇天に傘が躍る中、オルトロスなる双魔銃をホルスターから拔いたカイムは、鋭く銃聲を哮ると共に閃々と紫雷を迸り、美しい彈道を描いた銀の銃彈で|機械化義体《サイバーザナドゥ》を次々と撃ち拔いた――!
「今日の俺はどうやらツイてるらしい。機械仕掛けの足なら、修理すりゃ事足りる」
『ゲァアアッ!!』
「……唯だアンタらにとっちゃアンラッキーかもな? 水溜りへスライディングとは同情するぜ」
『ズゥ――ッ!!』
 9mmでは逃げられる。
 .45ACPでは死んでしまう。
 だから40口径で――|否《いや》、一般人相手じゃ足を撃つのも避ける必要があると、何かと規制の多いUDCアースと注文の多いUDC組織を揶揄ったカイムは、研ぎ澄まされた銃撃で義体の関節部を破壞し、暴走状態にある者達の機動力を|鹵掠《うば》っていく。
「ま、安心しな。修理費用はシノノメ医工がしっかり持ってくれるってよ?」
 而して輕口の多いこと|夥《おお》いこと!
 雨で濡れた地面に狂氣が蹲い、次いで空の藥莢が轉がる中、くるくるとガンスピンして銃を収めたカイムは、|浮《フワ》、|浮《フワ》と落ちてくる傘を片手でキャッチ。仰ぎもせず傘を手に迎えられるのは、然う、當初の座標から一歩も動かずいたからに他ない。
 蓋し相變わらずの襤褸傘だと、雨雫を許す穴を見たカイムは溜息しよう。
「……ま、無いよりはマシか」
 何せ文句を言うにも店主が居ない。
 ならば暴徒に潰される寸前の店を救った報酬代わりにと、去り際にクイと傘を持ち上げて挨拶したカイムは、まだ眠らぬ者が居るとばかり|周圍《あたり》の獸聲悲鳴に耳を澄ますと、家政婦よろしく|寝かしつけ《・・・・・》に向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『武装医師団』

POW   :    患者を発見、治療を開始する
【蛇型手術用ロボットビースト】と合体し、攻撃力を増加する【大型殲滅用レーザーメス】と、レベルm以内の敵を自動追尾する【注射器ミサイル】を射出する【ランチャー】が使用可能になる。
SPD   :    汚染を確認、該当区域を閉鎖する
【致死濃度の超高水圧消毒液ブレード】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を行動の自由を奪う閉鎖区域にし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    市民よ、健康であれ
戦場内に「ルール:【健康でない者は治療する】」を宣言し、違反者を【完治が認められるまで出られない隔離病棟】に閉じ込める。敵味方に公平なルールなら威力強化。

イラスト:ヒミコ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵が市街地や国境付近に集まった市民の恐慌を収める中、三機のヘリコプターが空港に着陸する。
 救急医療用のヘリか――否、「SIP」=Shinonome-Iko Pharmaceuticalと記されたシノノメ医工所属の機体には、件の企業に所属する医師や研究者が複数人乗っていた。
『骸の雨による過剰汚染を確認。既に該当区域は閉鎖されている』
『人間がオブリビオンと化す飽和値を測定する』
『サンプルの取得を急ごう』
 防護マントに身を包み、マスク越しにくぐもった聲を交わす者たち。
 人工降雨機によってこの國に「骸の雨」が集められる中、注射によってでなく、降雨という操作可能な自然現象を以てユーベルコードに覺醒める者達が現れた事に胸を躍らせた医師団は、早速、オブリビオン化した人間を“回収”すべく街に出る。
『オブリビオン・シーディング計画が今回の事故で中斷される可能性は』
『否、これは事故でなく現象の発芽に過ぎぬ』
『実験は順調だ』
 予測していた暴走であり、混亂であり、期待通りの結果であるとは複数人の見解。
 この実験が成功すれば、注射を打たずとも改造生物が生まれ、輸送せずとも兵士を、それも敵対する地から生み出す事が出來るとは、凄まじい院内権力鬪爭にある上層部が描く戰略図。
 院内勢力は勿論、「|篠突黎明《シノツクシノノメ》」グループの企業間抗爭にも大きな一手となると顏を見合わせた武裝医師団は、先ずは空港内で暴れる者達の制圧に掛かった。
『患者を発見し次第、“治療”を開始する』
『善良なる市民よ、健康であれ』
 生け捕りが可能なら檻に入れ、サンプルとして持ち帰る。
 殺すしかないなら、死ぬまでの耐久性や生命力をデータに取る。
 医師とは名乗りつつ生命を研究素材としか見ぬ「死神」の群れが、目下、悪魔の実験を完成させようとしていた。
儀水・芽亜
人を人とも思わぬ人非人どもが雨空から降りてきましたか。
いいでしょう、生命を弄んだ罪科を支払っていただきましょう。

「先制攻撃」で「全力魔法」眠りの「属性攻撃」「範囲攻撃」「結界術」のサイコフィールド。
死神どもが動き出す前に、先手を取って眠らせます。
|眠り《ヒュプノス》は|死《タナトス》の兄弟。それを思い知っていただきましょう。
効果範囲外からの水流を避けつつ、眠った敵の首を裁断鋏で落とし、地形の変化には「環境耐性」「足場習熟」「毒耐性」で適応します。
効果範囲内が一通り片付いたら、敵群に突撃してサイコフィールドを再展開。一気に眠らせましょう。

医は仁術。あなた方に医を語る資格はありません。



 雨は天より零れて大地に干渉する。
 或る|地球《ほし》では緑を芽吹かせ、或る|地球《ほし》では神祕の力を持つ詠唱銀を降り注ぐ――。
 而してこの|地球《ほし》では「骸の海」なる有害物質を含んだ雨が生命を脅かしていると、行く先々で|恐慌《パニック》を鎮めて回った儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『|夢可有郷《ザナドゥ》』・f35644)は、時に、驟雨に紛れるブレードスラップ音に烱瞳を結んで云った。
「――人を人とも思わぬ人非人どもが雨空から降りてきましたか」
 急ぎ空港に向かい、ヘリが医師団を降ろす間に先回りする。
 連中が諸々の裝備を整えてサンプルの回収に出る――その瞬間に夢の力を解放した芽亜は、長い長い滑走路に鴇色の陽炎を疾らせると、間もなく敷地内全体を幻夢のバリアで囲繞した。
「いいでしょう。生命を弄んだ罪科、聢と贖って頂きます」
『これ、は――』
 防護マントのフードの奧、医師達がドームを成す陽炎を視認するが|遅刻《おそ》い。
 我が魔力を惜しみなく解き放った芽亜は、大きな穹窿を描く結界を展開するや強力な睡眠の氣で滿たし、死神たちを|華胥《ねむり》の淵に|誘《いざな》った。
「此處は私の世界。如何なる勝手もさせません」
『……何、だ……!? 噴煙状の麻酔藥か……それとも……っ!』
「|眠り《ヒュプノス》は|死《タナトス》の兄弟。それを思い知って戴きましょう」
『エスタゾラムか、オキサゾラムか……ダメだ思考が沈む……!』
 睡眠慾は人間の三大欲求の一つにて、易く抗えるものでは無い。ユーベルコードなら尚の事。
 医師団は有害物質や藥物に対抗する用意はあったが、芽亜が操る夢の力を遮る裝備は無し――間もなくガクリと膝を付く。
 せめてと高濃度消毒液を噴射するものの、影響範囲を塗り変えるには|相應《それなり》の時を要そう。
 その時にこそ侵襲した芽亜は、裁断鋏『Gemeinde』の鋩を迫り出しながら接近し、遂に睡魔に屈服して|頭《こうべ》を垂れる――而して晒された首を鋭く斬り落とした!
「医は仁術。あなた方に医を語る資格はありません」
 目下、ごうろり轉がる首は悲鳴も叫べまい。
 眠らせて摘む事で一切の言を封じた芽亜は、今際の反抗として浴びせられる毒撃を耐性で凌ぎつつ、また次なる標的を目指して疾る、走る、驟る!
 未だ止まぬ雨の下、綺羅と閃く裁断鋏が|水潦《みずたまり》を赫々と染めていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キノ・コバルトリュフ
キノキノ、火力が足りないんだって?
だったら、焼き舞茸はいかが?

キノ!バルくんどんどん焼いていくよ!!
トリュフ!バルくん、いい焼き加減だね。
キノも奉納の舞いを頑張っちゃうよ!
マツタケ!!おいしく焼けたかな?



『報告。覺醒者と思しき人間を発見』
『オブリビオン・シーディングの觀察対象であるか、確認を要する』
 刻下、ユーベルコードを行使する者と邂逅したシノノメ医工の医師団は、その稀有な力に驚きつつも、興味深げに兵裝と鹵獲機を展開する。現時点では第三者の介入に気付いていない|樣子《よう》だ。
 蓋し彼等は間もなくして「人爲的に生み出された|改造生物《オブリビオン》」でなく、「世界に選ばれた猟兵」の實力を知る事になろう。
「キノキノ? 雨と毒の匂いに……これは、檻……?」
 被っているのか生えているのか、とまれ、大きなキノコの笠を傘にして現れたるは、キノ・コバルトリュフ(|キノコつむり《🍄🍄🍄🍄🍄》の星霊術士・f39074)。
 雨は好きだし、毒もわりかし得意なほうと、雨に打たれる空港の滑走路にやって來た佳人は、然し正面の獸檻の如きが人間を収容する|囹圉《ひとや》ではあるまいと小首を傾げる裡、医師や研究員に圍まれた。
『問診開始。覺醒者ならば回収する』
「タケ(えっ)!? キノは収穫できないよ?」
『これより戰鬪データを取得する』
「ナメコ(やばば)、採取されちゃう!」
 キノが喫驚を兆した刹那、医師団が擧ってシリンジ型ランチャーを構え、蛇型ロボを放つ。
 忽ち延伸する手術用アームを颯ッと回避し、同時に射出された注射器ミサイルを菌糸で編んで防禦したキノは、濛々と爆炎が噴き、致死濃度の毒霧が|罩《たちこ》める戰場を華麗に立ち回った。
「トリュフ(それなら)! バルくん、一緒に全部焼いていこう!」
『!! 烟るほどのこれは、胞子……!?』
「香りマツタケ、味シメジ! 焼くと美味しい、椎茸、舞茸、エリンギ!」
『周辺の温度上昇を確認……ぉぉおおおお!!』
 星靈バルカンがクルクルと踊るに合わせ、キノもワンピースの裾をひらり、くるり。猛然と渦を成す炎に毒胞子を混ぜ、奉納の舞を捧げる。
 忽ち膨れ上がるその火力は、今しがた異能に目覺めた者の比では無く、環状になった神火の大渦が広がるや、檻を烈しく灼やした!!
『ッ……なんという……!!』
 ユーベルコード製の収容空間を焼くには、其を上回るユーベルコードを放つしか無い。
 目下、花顏を炎の色に照り上げる佳人に凄まじいパワーを見た医師団は、恐怖と感動が身を震わせる――奇妙な感覺に時を止めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シモーヌ・イルネージュ
メガコーポの連中がご到着だ。
医師とは言いつつもやってることは捕獲調査だな。
患者ではなくサンプルとしか見てないみたいだね。
そもそも今回の病気をばらまいたのも、あの連中なんだろうな。

ならば、この街で好き勝手にやらせる訳にはいかないね。
奴らはデータを採りに来たんだから、徹底的に邪魔してやろう。
カチコミだ!

黒槍『新月極光』で戦おう。
UC【神速疾駆】を発動。水の勢いをまとって、医師団の中を駆け回ろう。
水に消毒液も混じるだろうから、連中諸共、消毒してやるよ!
きれいさっぱり、現場ごと洗い流してしまおう。



「大方データを採りに來たんだろうが、重役出勤とは羨ましいね」
 こちとら現場を駆け回って來たと、降頻る雨の中に現れたるは芙蓉の一朶。
 氷原の如き銀髮に露を乗せ、しとと濡らしては束にする――雨は玲瓏の花を美しく魅せるも、シモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)が滴るほど溢れさせたのは、艶でなく鬪爭心だった。
「病気をばらまいた始末をつけに來た風でも無し……医師とは言いつつ、やってる事は捕獲調査か」
『! 聽覺器官の異形化を確認。ユーベルコードに覺醒したか確認する』
「へぇ、アタシもサンプルとして回収するか、それとも消毒するか。いずれにせよ徹底的に邪魔してやる」
 致死濃度の超高水圧消毒液ブレードを構える医師団の正面、黑槍『新月極光』を携えて対峙するシモーヌ。
 連中が一斉に消毒液を噴射した瞬間、|水潦《みずたまり》を蹴って躍り出た佳人は、|瑤々《ゆらゆら》と極光の煌きを湛えた穂先に水流を纏わせ、急速前進ッ! 僅か一足で最高速15,700km/hに達するや、降り注ぐ消毒液ごと彈き返して槍を衝いた――!!
「カチコミだ!!」
『ッ、ッッ――!』
 輝ける穂先は楔となってブレードを斷ち、水流は渦を成して医師団を突き飛ばす!
 錐揉みして倒れた連中が猶も消毒液を撒いて地形を染めるが、この間にシモーヌは極光を搖らして一閃ッ、刃の如く|波濤《なみ》を立てた水流を放射状に疾走らせ、消毒液を押し流した!!
「いくら何でもやり過ぎだ。この街でこれ以上好き勝手はさせない」
『強力な異能の発露に比例した反発が觀察される。消毒が必要だ』
「言って呉れるね。こっちこそ諸共消毒してやるよ!」
 畢竟、連中こそ病の塊。
 ならばキレイさっぱり、何もかも洗い流してしまおう。
 猶も水圧を強め、遠距離から消毒液を散布しに掛かる医師団に烱瞳を結んだ佳人は、広い滑走路をジグザグと疾走して連中を翻弄しつつ、力強く踵を蹴ってはスピードを活かして高々と飛躍し、骸の雨も消毒液も混ぜた水流を一文字にひと薙ぎ! 医師団を蹴散らすと同時、その進路上にあるヘリを斬ッッッと|打切《ぶったぎ》った!!
「先ずは一機!」
『ッッ、帰る|手段《あし》が……!!』
「這って帰るか? それとも――」
 忽ち爆ぜる黑炎烈風を背に着地するシモーヌ。
 その雄姿が赫と黑に切り出された瞬間、地に蹲う者達は安い好奇心を恐怖に變えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウルスラ・ロザーノ(サポート)
いつもテンション高いとは言われるなー、確かに誰に対してもフレンドリーな対応しようと心掛けとる
といっても銀誓館の学生時代から能力者をしてきたんでな
救えるもんはできるだけ救う、でも倒すべき敵は必ず討伐すべしっちゅー方針や

戦法はヒット&アウェイ型、戦場全体を広く利用して戦うで
基本は中距離
レーザービット射撃やナイフの蹴り込みで牽制しつつ、
エアシューズで、地上は高速で駆け回り、空中も地形とか足掛かりに利用して軽業のように跳ね回るよ
敵からの攻撃は、すべて見切って受け流したりの回避で凌ぐよ

攻め込む機会を見つけたら奇襲を仕掛けるで
一気に接近して、蹴撃やその斬撃波を叩き込む!
サッカーボールのシュートは必殺技や!



『予想外の事態発生。本団の被害甚大』
『果して覺醒直後にこれほど力の制御が出來るのか、疑問を呈する』
 損耗は大きくとも、淡々と被害状況を確認する武裝医師団。
 防護マスクから零れるそれらの語を捉えたウルスラ・ロザーノ(鈴振り燕・f35438)は、片眉を上げて云った。
「先刻も“報告”って云うてたけど。それ、どっかと通信しとるやろ」
 未だ学生と間違えられる瑞々しさを湛えた彼女は、その学生時代から戰場を駆けた銀誓館の能力者。
 誰に対してもフレンドリーな彼女ならでは、隣同士で交わす物言いではあるまいと洞察したウルスラは、厚く覆われた雲を指差して訊ねた。
「専用ネットワークが落ちている現状、衛星通信で繋がる先は……実験の首謀者やろか?」
『默祕を徹底』
「……救えるもんはできるだけ救おう思てんやけど」
 仕方ない。
 この街の市民を救う事に尽力しよう。
 目前の医師団を倒すべき敵と認めたウルスラは、一斉に消毒液を散布しに掛かる連中をレーザービット射撃で牽制すると、自身は広い滑走路に閃光を刻んで高速移動し、水撃が描く放物線を巧みに躱しながら攻撃の機を窺った。
「回線そのまま開いとき!」
『ッ、迅い!』
 刻下、ギャッとエアシューズから火花を迸った佳人は、素早く方向転換すると同時に急加速!
 連中が構える噴射ブレードを腕ごと折り畳むよう橫面から強襲し、切り込んでは強烈なバックフリップで躯を跳ね上げた!
「いち、にー、さーん! ……とアイスショーならここがハイライトやろ?」
『ずァッ!!』
「最後こそ派手にキメたる!」
 刹那、ここが一番の見どころと蹴り上げるはヘリコプター!!
 次々に轉がる連中を縫うようにスライディングしたウルスラは、機体の腹に潜り込むや強烈なキックで機体をブッ飛ばし、
「実験は失敗やって聞かせたるとええわ!」
 と、靨笑ひとつ。
 間もなく爆ぜる衝撃を以て連中の度肝を拔くのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

一ノ瀬・漣
【煙響】

なぁにが治療だよ
都合の良いよーにモルモットにしてるだけじゃん…!
回収もデータ収集も絶対、微塵もさせやしないからね

物理的に、には思わず吹き出し笑い
梓ー
もしオレがぶっ倒れたら介抱して?
ふふ、ありがとー
ん。頼りになるぅ
満面に笑んで

先制攻撃でUC
早業ピック捌きで速弾き楽器演奏かましながら
狙われてる人が多いポイントを中心に全力魔法で【Fix You】
同時に【Livin' On A Prayer】

これから起こる惨劇を知ってるなら尚のこと
はいそーですか、って敵の思い通りにさせるわけないじゃん?
どんな状況だって諦めない
誰一人傷つけさせやしない
無駄無駄ァ
オレのこの想いがある限り、|防壁《これ》は壊れないよ

情熱的なシャウトを交えながら
みんなを鼓舞せんと声を届かせる
オレたちが居るんだよ?負けるわけないっしょ!

ふふ、梓がいてくれるから
こんなにも臆することなく全力尽くせる
ライブの時だって
ここまでドーパミンと音に塗れて溺れることなんてない
――ああ…気持ちいーなぁ…
なんて、今は不謹慎かな
歌いきったら崩れ落ちる


都嘴・梓
【煙響】

わあ、うちの相棒おこじゃん
んでも怒ってもレンって丁寧だよね
俺ならもう頭齧ってるよ
そう、物理的に

ん?
いーよぉ。思いっきり歌って?
倒れる前に受け止めたげる
だって俺だよ?

…うーん
なんかさぁ、|うち《Defin∃Ёarth》のがマシ―…おっと
やだぁウッソ♡うちはクリーンが売りだもん!ね!

なぁんて冗談はここまで
さて貴方方にプレゼントを差し上げるUC
きっと見たことも無くて
感じたことのない体験をさせてくれる
“イーター”ってェ、お前ら見たことある?
ふふ、せっかくだから“喰われる”恐怖…ぜひサンプルに取ってきなよぉ!ね!

UC

遠慮は知らない
容赦は初めからしなぁい
情け?売り切れでぇす

漣の歌が響く限り俺はどこまでも奴ら追い立てて何としても喰らう
何でか?
決まってんじゃん

|おまえたちは此処に来ていない《・・・・・・・・・・・・・・》を現実にする
行った?気のせいかも!
この名前、誰でしたっけ?
忘却は人間の最大の武器ですから

喰って喰って喰って呑んで
タネも仕掛けもなく影すら消して見せましょ

漣は倒れる直前で受け止める



「治療。上手いこと言ったもんだね」
 其は医師が病者に対して行う行爲そのものを指し、快癒や延命の結果が治療になる訳では無い。
 この法律上の規定を都合よく解釈した結果、現況のような実験や殺戮行爲が医師主導で行われているとは、司法の番人たる都嘴・梓(|嘯笑罪《ぎしょうざい》・f42753)の言。
 冷嘲的な溜息を咽喉に押し込む彼の隣、一ノ瀬・漣(Pour une infante défunte・f44080)は瞋恚を露わに、早くもAbbandoneの六弦に|繊指《ゆび》を添えていた。
「なぁにが治療だよ……サンプル回収とかデータ収集とか、モルモットにしてるだけじゃん……!」
 医師団が持ち出す手術具や檻を認めるなり、吃ッと|疾視《にらみ》つける赫い星眼。
 その|鋭利《するど》さを見た梓は、我が相棒のメロスばりの|激怒《おこ》に瞠目すると同時、|邪智暴虐《ディオニス》に劃然と対峙する彼の正しさを「良い」とも思った。
「レンって怒っても丁寧だよね」
「だって、これじゃ餘りに……」
「俺ならもう頭齧ってるよ」
「えっもう? 物理的に?」
「うん」
「はやいよー」
 モグモグと大仰に咀嚼して見せる梓に、思わず吹き出す漣。
 ニホニウムの平均寿命くらい速いと諧謔を零した彼は、蓋しこのスピードに倣うべきと先制!
 巧みなピック捌きでギターを速彈きし、流麗なイントロを奏でながら梓にひとつ頼み事をした。
「梓ー、もしオレがぶっ倒れたら介抱して?」
「ん? いーよぉ。倒れる前に受け止めたげるから、思いっきり歌って?」
「ふふ、ありがとー。頼りになるぅ」
「だって俺だよ?」
「ん。信じてる」
 無防備になる身を預けられるのも相棒なればこそ。
 ふくふくと滿面に咲みを湛えた漣は、自ら紡いだ五線譜の階段を駆け上がるよう佳聲を張ると、燿くような和音を一帯に澄み渡らせた。
「――もう大丈夫。そう、きっと大丈夫」
 オレを、オレ達を信じて欲しいと、一縷と搖らがぬ覺悟を音にする。
 夢幻の色に煌く旋律を幾重にも紡ぎ、半径156m上に万彩の防壁を築いた漣は、己と敵対する者にはその根源から破壞する灼滅の旋律を、己が支える者には不撓の旋律を奏で、望むべき未來を導くべく力いっぱい歌い上げる。
「これから起こる惨劇を知ってるなら尚のこと。はいそーですか、って思い通りにさせる訳ないじゃん?」
 どんな状況だって諦めない。
 誰一人傷つけさせやしない。
 ユーベルコードの併用、更には三属性を備えた攻守一体の戰法は凄まじい効果を齎すと同時、術者に相應の|力源《リソース》を要求するが、漣は倒れても構わないと情熱的なシャウトを交えて歌い続ける。
 而してその優れた異能の発露を「埒外」と認めた武裝医師団は、こちらも全力、全兵裝を展開して前進した。
『想定外の患者を発見。ユーベルコードの解析・分解に掛かる』
「無駄無駄ァ。オレのこの想いがある限り、|防壁《これ》は壞れないよ」
『生存状態での確保は困難か。死の安寧を与える事も選択肢として挙げよう』
「始末するにも安樂死気取りって。オレたちが居るんだよ? ――負ける訳ないっしょ!」
 今は咽喉が裂けるほど歌い、肺腑が灼けるまで皆を鼓舞しよう。
 傍らに梓が居る心強さもあろうか、一縷と臆することなく気力を振り絞った漣は、額に汗して歌う、唄う、謡う!

「ね。レンったらステキな歌をプレゼントして呉れるね」
 お陰で勇気りんりん、お腹ぺこぺこ。
 いい具合にアンパンのヒーローと彼に救われる子供達の二役が出來ると笑った梓は、濡れた滑走路に水飛沫を彈きながら全力疾走ッ! たばしる雨より速く駆ける。
 間もなく照準を結ぶ注射器ミサイルを着彈寸前で躱し、レーザーメスの射線を巧みに潜った彼は、ロボットビーストの手術用アームと擦れ違った瞬間に関節部を摑むと、そのまま腕を異形化して捕食に掛かッた!
「扨て、|貴君方《あなたがた》にもプレゼントを」
『ッ、右舷アーム機能停止。バランスが崩れる……!』
「きっと見た事も無くて、感じた事のない体験をさせてくれる――“イーター”ってェ、お前ら見た事ある?」
『……イー……ター……??』
 この時、蛇型機獸と合体した医師が見たのは、美しくも残酷な|悪食歎美《epicurean》の相貌。
 梓の|魔喰部位《モンストルム》に捕われた機械の右腕は、みるみるうちに吞み込まれたかと思うと、ユーベルコードごと取り込んだ異形の怪腕として元々の主に襲い掛かった――!
『!! 最新の医療具が!』
「ふふ、せっかくだから“喰われる”恐怖……ぜひサンプルに取ってきなよぉ! ね!!」
『ッッ、ッ――!!』
 遠慮は爲まい。
 容赦も爲まい。
 情け? |劈頭《はな》から「|売り切れ《out of stock》」だと嫣然と咲んだ梓は、漣が紡ぐ玲瓏の音色を耳に鼻歌交じりで牙を突き立て、奧齒に擂り潰し、舌でよぅく味わった|爾後《あと》に嚥下する。
 ユーベルコードを吸収して我が|栄養《モノ》とするなど、医師団にとっては垂涎必至な異能であろうが、鹵獲も殲滅も不可能な脅威を前に、治療用兵裝は損耗を余儀なくされよう。
『ロボットビーストの複数合体を要請。物量で制圧する』
『必ず実験結果を論文にし、オブリビオン・シーディング計画を成功させる』
「うーん、なんかさぁ、|組織《うち》のがマシ……――おっと、やだぁウッソ♡ うちはクリーンが売りだもん! ね!!」
 Defin∃Ёarthはきれいだよ?? いいね???
 我が組織に|後暗《うしろめた》いところは無いし、今の発言も、何なら今の状況も無かった事にしようと花唇に弧を描いた梓は、喰って、喰って、喰って、呑んで――|手品《タネ》も仕掛けも無く、影すら消そうと悉くを屠る。
 何故か。
 もう決まっている。
「|おまえたちは此處に來ていない《・・・・・・・・・・・・・・》」
『そんな、|豈夫《まさか》、その樣な事が』
「行った? 気のせいかも! この名前、誰でしたっけ? ……って。忘却は人間の最大の武器ですから」
 これは現実の改変か? ――否、これが現実。
 実際、サンプルを回収していなければデータも取れていないと、距離を隔てた梓と漣が視線を結んで咲み合う裡、医師団は反証も立てられずに滑走路に轉がっていく。
 人間を捕える檻が壞れ、生命を弄ぶ手術具が次々と飲み砕かれる――その痛快な光景を見た漣は、快哉を叫ぶように佳聲を強く、靭く、繊指の痺れて動かなくなるまで歌おうと音樂に身を委ねた。
「――ああ……気持ちいーなぁ……なんて、今は不謹慎かな」
 ライブの時さえ、これ程のドーパミンと音に塗れて溺れる事は無い――。
 疲労に勝る昂揚を感じつつ崩れ落ちた漣は、然しガクリと折れた膝を水溜に沈める事なく、咄嗟に差し入った梓に支えられる。
「……梓……」
「ん、おつかれ」
「うん……」
 ――噫、矢張り|相棒《かれ》は約束を違えない。
 相棒の腕の強さに意識を繋がれた彼は、腦裡に揺蕩う恍惚か法悦にも似た音の|反響《リフレイン》に、慥かな勝利の音色を聽くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
“治療”だって?感染の第一段階に進んだ患者ってのは耳からおかしくなるらしい。カルテに書いておいた方が良いんじゃないか?お待ちかねの貴重な発見だぜ?

馬鹿にしたように笑いながら。
穴の開いた傘から滴る雨は僅かに肩を濡らす程度に留まる。
実験、ね。お気に入りのサンプルは見付かったかい?
消毒液を躱して――寸断されるのは俺の替わりに穴の開いた傘。
行動の自由を奪う閉鎖区域。連中にとってはさしずめ実験室、もしくは治療室といった所か……それで――ハンデはもう良いのかい?

このUCは、下らない実験に対する|反逆の意志《UC》ってトコか。
魔剣を【怪力】で振るい、右手の銃撃を【クイックドロウ】。
Hey!生意気な患者に振り回されてるぜ、アンタら!研究と勉強以外は苦手か?これじゃあ何時まで経っても|善良なる市民《俺》は健康になれそうにねぇな!!

『善良なる市民よ、健康であれ』だっけか?
じゃあ、アンタらは健康である必要はなさそうだ。
(すっかり濡れそぼった前髪を掻き上げて、空を見上げて)
さて。残りはこのうっとおしい雨、か。



『覺醒がこれ程とは……我々の治療が効かない』
『骸の雨の濃度を誤ったか? 今一度、実験条件を確認せねば』
 興味深い。だが恐ろしい。
 探求心が煽られる。然しこれ以上は躊躇われる。
 雨下の空港に降り立った医師団は、滑走路に集結した猟兵に次々と兵裝を破壞され、その埒外と云うべきユーベルコードに圧倒されていたが、二機のヘリコプターが炎上した際に現れた男は、連中の興奮と逡巡を更に搔き立てた。
「――お気に入りのサンプルは見付かったかい?」
 パラパラと雨音を彈く傘ひとつ。
 雫の滴る生地より覗くは、カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)の麗顏。
 穴の開いた部分から零れる雨滴がポツポツと肩を濡らす中、それ以上に濡れる連中に滑稽な微咲を浮かべた彼は、傘を持つ逆の手を|項頸《うなじ》へ遣りつつ云った。
「で、これが“治療”だって? どうも感染の第一段階に進んだ患者ってのは、耳からおかしくなるらしい」
 硬質の|繊指《ゆび》を耳の裏に留めるのは、誇張と|戯弄《からかい》の爲。
 新たな患者の登場に医師団が橫一列に竝ぶ中、カイムは構えもせず輕口を重ねた。
「カルテに書いておいた方が良いんじゃないか? お待ちかねの大発見だぜ?」
『更なる感染者を確認。該当区域を閉鎖した後、消毒を開始する』
「――ハッ、貴重なサンプルを|黴菌《ばいきん》扱いか」
 ブレードの噴射口が向けられると同時、開いた傘に身を匿して前進する。
 間もなく散布された消毒液が無数の放物線を描く中、それらを素早く潜って接近したカイムは、正面で振り降ろされるブレードに対して傘を閉じざま水平に構え、|听《ギン》ッと十字に嚙み合わせた!
『罹患者、いや市民よ落ち着け。この閉鎖空間での行動は制限される』
「へぇ、そりゃ差し詰め実験室……若しくは治療室といった処か」
『我々は感染状況を診る必要がある』
「成程。それで――ハンデはもう良いのかい?」
 治療とは名ばかりの殺戮行爲とは、ブレードを受け止めた傘が寸斷されるのを見れば判然る。
 傘では抗衡するのが精一杯と、目下の不利を甘んじたカイムは、次いで魔剱を拔いて渾身一閃ッ!
 大事な|報酬《かさ》を|駄目《おじゃん》にした医師を水平一文字に薙ぎ払い、消毒液に塗れた地面を鮮血に塗り変えた!!
「――実験、ね。|口駄《くだ》らねぇし、気に入らねぇ」
『ぜ、ァ!!』
「俺の|反逆の意志《ユーベルコード》を見せて遣る。精々データを取ればいい」
 そちらが望んだものだと、魔剱が閃いた直後に哮るは鋭い銃聲。
 水溜に飛び込んだ雨滴が王冠を成して波紋を広げる――その一瞬より迅く銃口を結んだカイムは、連中の腦天めがけて次々に鐵鉛を撃ち、一人、また一人と沈めて地面に赫い血溜りを作っていく。
 一人に|一彈《ひとつ》、順番に平等に鉛を沈めていく銃の腕は、最早、感動より恐怖を煽ろう。
『な、なんと精確な射撃……これが汚染による感覺の先鋭化……いや、分からない……!!』
「Hey! 生意気な患者に振り回されてるぜ、アンタら! 研究と勉強以外は苦手か? これじゃあ何時まで経っても|善良なる市民《俺》は健康になれそうにねぇな!!」
『記録を、戰鬪データを……グワーッ!!』
 カイムの|人間《ひと》であろうとする信念が銃爪を引き、猟兵であろうとする矜持が銃彈を沈め、ユーベルコードを行使する覺悟が死神を撃ち拔く。而して死に|反逆《そむ》く。
 地面に橫臥わる傘の傍にごろごろと死神を轉がしたカイムは、激痛の聲を絞る者達に言の葉の雨を降らせた。
「……慥か『善良なる市民よ、健康であれ』だっけか? じゃあアンタらは健康である必要はなさそうだ」
 蓋し傘を手放した彼も降られたもの。
 すっかり濡れそぼった繊指を櫛代わりに、束になった前髮を搔き上げたカイムは、徐に空を見上げて呟いた。
「扨て。残りはこのうっとおしい雨、か」
 この國に雨が降り続いて、もう一年。
 そろそろ止むべきだと、濡れた紅唇は固い決意に結ばれていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『いつかハレバレ』

POW   :    有害物質をことごとく吸引する

SPD   :    風を起こし、大気中の有害物質を吹き飛ばす

WIZ   :    有害物質の成分を解析し、中和を試みる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 降頻る雨の中、|実験体《サンプル》の回収に訪れたシノノメ医工所属の医師団は、空港を出ることなく壞滅した。
 滑走路に集まった猟兵の尽力によって、彼等は一切のサンプルを得る事なく、戰鬪データを記録する事も叶わなかった上、更にはヘリコプターも三機のうち二機を失う大損失を負う事となった訳だが、然し、まだ問題が解決した訳では無いとは、勝利を得た筈の猟兵の神妙な表情が示していた。
「……|爾後《あと》はこの雨をどうにかしなくては」
「噫、この國に集められている雲を始末しないと、人々はずっと汚染の影響を受けてしまう」
 一同が揃って見上げるは、未だ雨を降らせる鉛色の空。
 この國の上空には、シノノメ医工が管理する何機かの『人工降雨機』がプログラミングによって巡航しており、隣國の工場から排出される有害物質が集まるよう操作されている。
「この雲を蹴散らせば良いんだが……ここからユーベルコードが届くだろうか?」
「幸いにしてヘリコプターが一機残っている。これを使うのも手かもしれない」
 飛翔能力を持つ者、超遠距離攻撃が出來る者など、其々の能力は樣々。
 雨を降らせている雲を蹴散らすと同時、人工降雨機を破壞する事が出來れば、シノノメ医工が進めているという「オブリビオン・シーディング計画」も頓挫させられるだろう。
「――よし、いこう!」
「そうだな。手分けして片付けるとするか」
 互いに烱瞳を結び合わせた猟兵らは、雨の中、最後の仕事に取り掛かるのだった。
儀水・芽亜
では、暗黒の雲を晴らすと致しましょう。
驟雨の弓に矢をつがえ、「全力魔法」光の「属性攻撃」「範囲攻撃」「衝撃波」「対空戦闘」「破魔」「浄化」「矢弾の雨」で光輝の雨。
普段は矢が分裂して地上に降り注ぐのですが、今回は逆に、分裂してから上空へ向かうよう調整をかけました。
人工降雨機まで届けばいいのですが。

さあ、私の矢よ、高く遠く、天を駆け上りなさい!

雲を破り、一矢が人工降雨機を貫けば、この雨の國にも日差しが照らす時が来るはずです。

異形化した方々は元に戻られたでしょうか?
「浄化」のヒーリングヴォイスで、骸の海が抜ければいいのですが……。
共にあってくれる方々がいればきっと大丈夫ですよね。



 高濃度に有害物質を含んだ“汚染雲”は、高度2,000km付近を流れている。
 重く厚みのある其は形を變えても隙間を見せず、その上空で雨の種を撒く人工降雨機を隱し続け、長雨に苦しむ人々にこの國で何が起きているのかを知らせずにいた。
「――では、暗黑の雲を晴らすと致しましょう」
 鉛色の空を一度仰ぎ、交睫しては視線を手元に――弓射の用意に掛かる芙蓉一花。
 儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『|夢可有郷《ザナドゥ》』・f35644)は繊手に持ちたる『驟雨の弓』に矢を番えると、その鏃を眞直ぐ上に向けて云った。
「普段は分裂させた矢を地上へ降らせるのですが、今回は逆に、分裂してから上空へ向かうよう調整して……」
 地を這う不淨を滅する光矢を、此度、穢れたる天めがけて放つ。
 魔力を込めて弦を引き、キリキリと締められるように反る弓が次第に玲瓏を帯びる中、芽亜は一点注視して一射ッ! ひやうと弓鳴して矢を疾らせた!
「さあ、私の矢よ、高く遠く、天を駆け上りなさい!」
 芽亜の弓撃は、大地に降り注いでは半径160m圏内の全ての敵を駆逐する高威力を誇る。
 この矢が描く放物線を限りなく直線にした芽亜は、金彩の瞳を眇めて視る先、垂直に飛んだ矢が大気を裂き、雲を貫き、放射状に広がった破魔の波動がポッカリと曇雲に穴を開ける|樣子《さま》を聢と捉えよう。間もなく覗いた空から太陽の光が注ぎ、灰色の景色に彩が戻った。
「――見えました。あれが人工降雨機ですね」
 薄明光線が帯となって零れる「|天使の梯子《エンジェル・ラダー》」の向こう、天使でなく黑い鐵塊が|羽根《プロペラ》を回して飛ぶのを認めた芽亜は、更にもう一矢! 今度は上空を巡航するドローンをズバリ射拔いた!!
「先ず一機。こうして人工降雨機を撃墜していけば、この雨の國にも陽差が照らす時が來る筈です」
 人々に笑顏が戻れば……と、行く先々で会った街の住民を思い起こした佳人は、ここで|不圖《ふと》、異形化した者達は元に戻ったかと思いを巡らす。
「私のヒーリングヴォイスで、骸の海を淨えれば良いのですが……直ぐには向かえずとも、共に在ってくれる方々がいれば、きっと大丈夫ですよね」
 先にガソリンスタンドに誘導した者達に、今すぐにでも癒しの歌聲を届けたいが、ここは仲間を信じよう。
 芽亜は佳聲を紡ぐ花唇をきゅっと引き結ぶと、また雲を掃うべく弓を引くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロエ・ボーヴォワール(サポート)
「カネならありますわよ~!」
◆口調
・一人称はわたくし、二人称はあなた様。典型的なお嬢様風
◆性質・特技
・好奇心旺盛にして仕事熱心
・実はゲテモノ料理好き
◆行動傾向
・ボーヴォワール社の持て余した圧倒的カネの力にモノを言わせ、万事解決を目指す
・法すらカネで買い取る自由奔放すぎる性格であるが、ノブレスオブリージュの精神に則り他者の為ならば才と財を惜しまない(混沌/善)
・猟兵としての活動は異世界を股にかけたボーヴォワール社の販路開拓と考えており隙あらば自社製品を宣伝し、「実演販売」に抜かりはない
・教養として体得したシンフォニアとしての技術をビジネス話術にも応用する
・細かい仕事は老執事セバスチャンに一任


キノ・コバルトリュフ
マッシュルーム!みんな出ておいで!総力戦だよ!!
キノキノ、みんながいて心強いね。
シメジ?何体か足りないような?
急用があってこれなかったの?
エノキ、仕方ないね。
マイタケ、来てくれたみんなで楽しんじゃおう!



 目下、人工降雨機は高度2,000m付近に流れる層積雲の上を飛んでいる。
 この|畝雲《うねぐも》とも呼ばれる雲を畑代わりに、空飛ぶ死神はドライアイスやヨウ化銀といった「雨の種」を撒き、有害物質を含んだ雨を延々と――もう一年も降らせていた。
「非人道的な実験はお仕舞いに致しましょう。全く以てナンセンスですわ」
 |傱々《つかつか》と雨下の滑走路に歩み來たるは、クロエ・ボーヴォワール(ボーヴォワール財閥総裁令嬢・f35113)。
 長雨による酷い湿気も何のその、金髮の縱ロールを豊かに搖らして現れた凄艶は、帝王の稟性を燿わせる翠瞳に一機のヘリコプターを映すと、次いでその烱瞳を眼眦へ寄越した。
「――セバスチャン。わたくしが何をしようとしているか、お分かりですわね……?」
 云えば、クロエが濡れぬよう傘を差していた老執事が恭しく礼をする。
 我が主の金蓮歩をヘリコプターの搭乗口まで嚮導した彼は、傘を閉じるや操縦席に乗り込み、慣れた手付きで離陸準備に掛った。
「出発なさい。民草を苦しめる悪しき技術、撃墜して差し上げますわ」
 世界こそ違うが、クロエも謂わば巨大企業の御令嬢。
 総裁の座を繼ぐべく素養を身に着けた彼女ならでは、自社の技術や己の才は人々の爲にこそ使うべしと、間もなく飛び立つヘリの中でシノノメ医工の遣り口に訣別を示したクロエは、ぐんぐん高度を上げて雲を拔け、雲上を巡航する人工降雨機を捜索し始めた。
「……御嬢様、あちらに」
「成程、ドローン型の降雨機ですわね」
 燕尾服とロマンスグレーが似合う老執事が繊指に示す先、四枚翅を旋回させて飛ぶ機体を認める。
 直ぐさま豪奢な扇子を構えたクロエは、大きく腕を振って風を起こすと同時、美しくも逞しい聲を張り上げて云った。

「さぁ、參りましょう!」
「キノキノ、みんな出ておいで! 総力戰だよ!!」

 義氣凛然と美聲を重ねたのは、キノ・コバルトリュフ(|キノコつむり《🍄🍄🍄🍄🍄》の星霊術士・f39074)。
 先の武裝医師団に採取、いや収穫……いやいや鹵獲されそうになった処をうまいこと切り拔けたキノは、今度はヘリに積載され……いや自ら乗り込み、諸悪の根源たる人工降雨機の撃墜に掛かる。
 佳人は石突にキノコの飾りのついた魔導杖を一振り、無骨な機内の床に光の魔法陣を描くと、その白皙を玲瓏と照り上げつつ、鈴振るような佳聲で祕呪を詠唱した。
「マッシュルーム(全員集合)! スピちゃん、グラりん、フェニくんも、おいでおいで!」
 星靈なる魔法存在を次々に召喚し、繊手に持てる杖の先に攻撃対象を示して見せるキノ。
 術者は星靈と生命力を共有し、彼等が傷付くほどダメージを負う事になるのだが、キノは構わず――これ以上サンプルとして人々が命を弄ばれぬよう、喚べる限りの精鋭を集めんとする。
 ……したのだが。
「シメジ(あれれ)、バルくんが居ないね? ――|先刻《さっき》いっぱい遊んだから? エノキ(なるほど)、仕方ないね」
 魔法陣から飛び出るや、お気に入りのポジションであるキノ笠に乗った星靈スピカが言う事には、バルくんこと星霊バルカンはお昼寝を滿喫中。先に戰った事もあるし、ここはそっとしておこう。よく休んでね。
「マイタケ(それじゃ)、來てくれたみんなで頑張ろう!」
 然して集まった星靈達も頼もしいもの。
 クロエが颯ッと雲を掃うに合わせ、今や鮮明に暴かれた撃滅対象を見据えた彼等は、一斉にバックドアから飛び立つやドローンを強襲! 可愛らしくも強靭な爪撃と嘴撃、そして突進の連続攻撃で四枚翅を破壞した!!
「キノキノ、みんながいて心強いね。これで雨も止んでくれる筈!」
 雨を好むキノコとて、太陽なくして生きられぬ。
 況や人間に於いてをや。
 星靈の連携攻撃によって力なく墜落するドローンを瞳に追ったキノは、交睫して後、漸う視線を上空へ――頭上より燦々と降り注ぐ陽光を眩しそうに見上げるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シモーヌ・イルネージュ
ずっと雨というのは気分が落ち込むね。
やっぱり天気は晴れがいい。
残っている人工降雨機を掃除して青空を取り戻そう。

まずはサイバーアイ起動。遠【視力】を強化して、上空の降雨機の動きを観察しよう。
降雨機の狙撃なら銀槍『狼月天穿』でやろう。ロケットも付いてるから飛距離は十分だろう。

UC【退魔祝福】を発動。【戦闘演算】も使って一撃必殺を狙おう……おっと、意外と難しいな。
【電撃】も籠めて、少し的が外れても当たるようにしよう。

すばしっこい敵だから、ゲームみたいでおもしろいな。



「――|散々《さんざ》散らかしてくれたからな。掃除するか」
 本來なら連中に片付けさせるのが|道理《すじ》であろうが、連中を片付けてしまったから仕方ない。
 木端微塵になったヘリの破片を爪先でチョイと小突いたシモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)は、これらの残骸を濡らす雨を辿って空を仰ぐと、|交睫《まばたき》ひとつして烱瞳を絞った。
「で? この厚ぼったい雲の上に降雨機が飛んでいると……視てみようか」
 重たそうに流れる暗い雲に隙間は無し。
 その機影は肉眼では餘程捉えられぬが、シモーヌは|高性能義眼《サイバーアイ》の虹彩をカメラレンズのように動かして|遠視《とおみ》を利かせると、間もなくして鉛色の雲を透過した先、赤色灯を明滅させるドローンを捕捉する。
 其と同時に対象の高度や速度を割り出した佳人は、白銀の短槍を構えるや角度の調整に掛かった。
「飛距離は……まぁ十分だろ。ロケットエンジン付いてるし」
 随分輕く云ってのけるが、實際、2,000m超も離れた標的を狙撃する腕は「ある」。
 銀槍『狼月天穿』の鋩を天に結ぶや退魔の氣に滿たしたシモーヌは、ロケットエンジンが煌々と焚く白熱に佳顏を輝かせながら射放ッた!
「地を穢すものよ、魔を祓う槍に|刺貫《つらぬ》かれよ。――祝福あれ」
 目下、繊手を離れた銀槍が空へと翔け走り、先ずは厚い雲の壁を吹き払う。
 暗雲に飛び込むやブワッと大穴を拡げた槍は正に“天穿”――忽ち零れるレンブラント光線を更に昇った銀槍は、黑い機影めがけて遂に鋭鋩を突き立てた!!
「……おっ、意外と難しいと思ったけど、|命中《あた》った」
 一撃必殺! 中央のフライトコントローラーを破壞し、猶も餘る衝撃を以て機体を空中分解させる。
 キラキラと太陽光を抱いて零れる破片を目視した狙撃手は、会心の一撃に咲んだのも束の間、次の瞬間には別なる機影を捜して天蓋を見渡し、雪嶺の鼻梁を一点に結ぶ。
「|先刻《さっき》のより巡航速度が迅いな……少し的が外れても当たるよう、今度は雷撃も加えるか」
 |宛《まる》でゲームみたいで面白いと、シモーヌは超高難度の狙撃を愉しんでいる|樣子《よう》。
 自ら開けた雲の大穴より零れる陽光に照々と花顏を輝かせた彼女は、眩しそうに双眸を眇め、
「ずっと雨というのは気分が落ち込むからね。やっぱり天気は晴れがいい」
 然して人々の心も晴れようかと、再び魔を祓う銀槍を空に向け、大掃除に精を出すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
雨は嫌いじゃない。壁の薄いお粗末な――だが、お気に入りの酒場で雨音を聴きながら酒の入ったグラスを傾けるのは悪くない。
そういう日は大概、客が来ない。静かな空間にグラスの中で溶ける氷の音は一層、耳に心地良いんだ。
ま、最もそれが続いて一年だってんだから、流石に辟易するだろう。

この辺で一番高いビルの屋上を目指そう。
どうせなら『綺麗に映る』方が良い。
魔剣を構えて。――雨だって晴れるさ、なんて帷の奴、出発間際に言ってくれるぜ。
それが依頼内容だってんなら――OK。|Black Jack《俺》が引き請けた。

UCで人工降雨機ごと雨雲を【焼却】。
熱を伝播した光が大気中の雨を通り抜けて、果てまで掛かる|虹の橋《ビフレスト》の完成だ。
晴れ晴れとした空と掛かる虹に目を向けて。やっぱり空はこうでなくちゃな。満足げに笑う。
さて、後はあのヘリコプターが無事なら…ヘリごとシノノメの技術や薬なんかを【盗み】で頂いておくか。
ほら、俺がぶっ壊した分、払って貰わなきゃいけないだろ?

ヘリがぶっ壊れたなら――またタダ働きになりそうだ



「――雨は嫌いじゃない」
 其は大地を潤しては命を芽吹かせるし、悲哀に呉れる涙を隱しもすれば、襤褸の傘さえ売り出せる。
 生憎その襤褸も無くしてしまったが、降られた処で男前が上がるだけだと、濡れた艶髮をその儘に|堂々広《だだっぴろ》い滑走路を走ったカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は、空港内で最も高いコントロールタワーへ。航空管制室の保守用階段を颯爽と駆け上がった。
「雨の日は、大概、俺のお気に入りの酒場には客が來ない。ほぼ貸切だ」
 壁の薄いお粗末な|酒肆《バー》とて、雨音を聽けると思えば小粋なもの。
 靜かな空間でグラスを傾け、酒精に轉がされる氷の音色などは一層、耳に心地良いのだと――行きつけの飲場で聽く音を思い起こした彼は、然し其を搔き消す|驟雨《あめ》を仰ぐと、片眉を持ち上げて云った。
「ま、|降雨《これ》が続いて一年だってんだから、流石に辟易するだろう。――|散鬱《うさばらし》するか」
 ――君達が行けば雨だって晴れるさ、なんて。
 帷の奴は言ってくれたものだ。
 蓋し依頼人が晴天を望むなら、注文通りに履行するのが便利屋だと魔剱を構えたカイムは、刹那に迸る黑銀の炎を紅く赫く――本來の眞紅の色に燃え立てると、これを大きく振りかぶった。
「――OK。|Black Jack《俺》が引き請けた」
 然う告げて|直後《のち》、天に向かって膂力いっぱい魔剱を振るう。
 神殺しの剱に纏える終末の炎は、鉛色の天蓋に斬撃一筋を疾らせるや厚ぼったい曇雲を焼き払い、蹴散らし、宛ら天を劃つように赫々と燿いながら、その奧に潜める靑空を暴いていく。
 同時に人工降雨機も視認したカイムは、生き物のように渦を巻く赫炎が間もなく其を丸呑みに――跡形も無く機体を焼き尽す|樣子《さま》を捉えた。
「どうせなら『綺麗に映った』方が良い。――|機体《ゴミ》を取り除けば、ほら、|虹の橋《ビフレスト》の完成だ」
 |一流の挿絵画家《アーサー・ラッカム》も斯くは描けまいと、口角を持ち上げて仰ぐは天に架かる穹窿。
 空いっぱいに伝搬した熱が光を帯びて大気中の雨を通り抜け、涯の無い橋を渡す美景を認めたカイムは、雨上がりは斯くあるべしと塊麗の微笑を浮べて云った。
「晴れ晴れとした空に掛かる|彩虹《にじ》。これなら街に居る面々も気付くだろう」
 敢えて街に戻って告ぐ必要も無いと、帰路は飄々と階段を降りた彼は、途中、降雨機の撃墜の爲に空を飛んでいたヘリが滑走路に戻って來るのを見て、つと思いつく。
「無事に戻ったか……それなら、先方の技術や藥なんかを頂いておくか」
 慥か『オブリビオン・シーディング計画』と云っていたか。
 連中の乗ってきた機体には実験資料や処置法があるだろうし、情報は勿論、藥品も多く備えていようと進路をヘリに結んだカイムは、今しがた着陸した仲間達と交代して乗り込む際、小気味良いウインクを挟む。
「ほら、俺がぶっ壞した分、払って貰わなきゃいけないだろ?」
 こいつがぶっ壞れていたならタダ働きになる処だったと、仲間の丁寧な操縦に感謝したカイムは、代わって操縦席に座ると、悪戯に操縦桿を動かしてみせる。然う、ヘリごと頂戴する|意《つもり》だ。
「――ハ、悪くない報酬だ」
 今にも飛び立ちたいくらいだと、窓越しに拔けるような靑空を仰ぐカイム。
 然して空もまたそんな彼を待つように、燦々と陽光を輝かせて笑うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年12月17日


挿絵イラスト