ピルグリメイジの呪詛
●カース
呪いあれ。
誰かが誰かを呪う時、そこにある感情は憎悪だけだろう。
「その血筋に呪いあれ。末代まで続く呪いあれ。その穢れた血脈に呪いあれ」
かつて、人類が人造竜騎を持って百獣族の女子供に至るまで殺し尽くした大罪の時代があった。
騎士達が駆る人造竜騎は、聖なる決闘の枠組みに収まらぬ殺戮を行った。
非道そのものである。
人の性質を示すものであり、変えようのない業がそこにはあった。
「貴様は許さぬ。いいや、貴様だけではない。貴様の血脈に連なる全ての生命に罰を、呪いを! 未来永劫、時代が、世界が異なろうとも、貴様の面影が世界に映し出される限り、その身に呪いを!」
百獣族は憎しみと怒りに染まった瞳で辺境騎士『スカルモルド』を睨めつけた。
それは謂れのない復讐ではなかった。
その怒りは正当なるものであった。
オブリビオンとなった百獣族は、己を過去滅ぼした張本人の血筋に当たる人間の子孫を見つけ出した。
それが辺境騎士『スカルモルド』であった。
「……体が、重い……!」
「そうだ。それこそが我らが呪い。我ら百獣族『ワイバーン』こそ、空の強者。その誇りこそが、我らを聖なる決闘へと導き、正々堂々たる戦いによって強敵との戦いを繰り広げてきたのだ……だが! 貴様の祖先は! 騎士『スカルモルド』は!!」
怒りに震える声が響く。
『獣騎ワイバーン』は、その雄々しき翼を震わせた。
「あろうことか、鉄の礫を放つ武器を持って我らを滅ぼしたのだ。弓ならば射手の技量と頷ける。魔法ならば、培ってきた技と頷ける。だが、騎士『スカルモルド』は!!」
バハムートキャバリアにおいて、ハンドカノンとは原始的な銃として残ってはいるが、しかし、現在においては騎士道に反する武器であると考える騎士も多い武器である。
しかし、『獣騎ワイバーン』の怒りをそこまで買う理由は一体なんなのか。
辺境騎士『スカルモルド』もまた同様であった。
理由がわからない。
彼等を打倒したという怒りだけではない怒りが、『獣騎ワイバーン』からは伝わってくるようだったのだ。
「……何故、と問うことを許してもらえるかい」
「無論、血脈たるお前は知る必要がある。非道たる貴様の祖先は、騎士『スカルモルド』は、鉄の礫を放つ武器を本来ならば戦う力持たぬものたちにすら持たせ、戦列に加えていたのだ。聖なる決闘とは、正々堂々たる戦い。戦う力を持つ者のみに許された行為。それを戦う力持たぬ者さえ駆り立て、あろうことか、我が血族の全てを鏖殺せしめたのだ。その行い、許しがし!」
そう、戦う者同士だけであったのならば、まだ己が力が及ばぬと解することもできただろう。
だが、過去において騎士『スカルモルド』は、戦えぬ者さえ戦いに引き出し、その罪過を広げたのだ。
そのような行いは今日の騎士道にさえ悖る邪悪。
故に『獣騎ワイバーン』は怒り狂い、復活を遂げた瞬間、嘗ての騎士『スカルモルド』の血脈たる辺境騎士『スカルモルド』と百獣族の呪いを掛けたのだ。
その呪いは彼の生命を奪うだけにとどまらない。
彼の周囲にある者、土地、全てを汚染して蝕んでいくのだ。
「我が祖先の罪過に、その怒り……確かに申し開きもない。けれど!」
そう、けれど、である。
ならば己だけでいいはずだと。
百獣族の呪いは彼のみならず、領民、領地すらも巻き込んだもの。
「故に悔いて死ぬがいい。そして、何も守れぬまま、我らが無念を知るがいい。そうでなければ、悔恨すら許さぬ」
「待ってくれ……! ならば、僕だけで……頼む……! せめて……!」
翼が羽ばたき『獣騎ワイバーン』は辺境騎士『スカルモルド』にトドメを差すまでもなく飛び立ち、項垂れ呪いに肉体を蝕まれる彼を捨て置く。
そうすることで、己達が味わった屈辱、怒りを思い知らせるように――。
●バハムートキャバリア
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。バハムートキャバリアにおいて復活した百獣族……『獣騎ワイバーン』によって呪いを掛けられた辺境騎士『スカルモルド』の呪いを解くために、向かってはいただけないでしょうか」
ナイアルテの言葉に猟兵達は顔を見合わせる。
一体どういうことなのだ、と。
そう、百獣族はバハムートキャバリアにおけるオブリビオンである。
過去、バハムートキャバリアにおいて人間たちは百獣族たちを女子供まで徹底的に虐殺し、ただの一人も残さず殲滅した。
その非道を悔いた人類は、今は騎士道でもって身に宿る凶暴性を律している。
オブリビオンとして蘇った百獣族の怒りは正当なるものであろう。
しかし、その咎は過去の人間にあるものだ。
「かつての人類……『獣騎ワイバーン』を殺した張本人である人間の子孫である辺境騎士『スカルモルド』を見つけ出し、彼と彼が守る辺境の地を憎しみのままに呪ってしまったのです」
その呪いは、人間のみならず土地さえも汚染して蝕むものである。
このままでは辺境の地に住まう人々まで、まるごと呪いに蝕まれることになる。
幸いにして、この呪いは掛けた本人である『獣騎ワイバーン』を打ち倒せば解呪することができるようである。
「ですが、『獣騎ワイバーン』までの道程は酷く険しいのです」
ナイアルテは『獣騎ワイバーン』が座す場所までの道程が、巨大な岩が浮遊する巨山の頂きであることを理由にあげる。
巨山の頂きを目指す道程は困難であるが、如何なることか巨大な岩が浮遊し、時折落石して道程を進む者を阻むのだという。
加えて、配下として復活した『獣騎スライム』たちの群れが猟兵達を襲うだろう。
まるで強大な試練のごとき道程である。
だが、それでも、この道程を踏破できなければ、『獣騎ワイバーン』と戦う資格すらないというのだろう。
厳しい戦いになることは言うまでもない。
しかし、呪いを解呪できなければ、辺境騎士『スカルモルド』のみならず、辺境の土地すらも蝕まれてしまう。
ナイアルテは、頭を下げ猟兵達を送り出す。
過去より連なる因縁。
これを断ち切るためには、如何なる正当な怒りであっても阻まねばならぬのだ――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
新たなる世界バハムートキャバリアにて起こる百獣族の呪い。
人のみならず大地すらも蝕む呪いを解くために、呪をかけた『獣騎ワイバーン』の元へと向かい、これを打倒して解呪するシナリオになります。
※全ての百獣族(獣騎)は、例えスライムのような異形種族でも、会話によるコミュニケーションが可能です。彼らはいにしえの聖なる決闘に則り、正々堂々と戦いを挑んできます。
●第一章
冒険です。
予知によって呪をかけた『獣騎ワイバーン』の住処は、巨山の頂きと判明しています。
ですが、そこに至るまでには巨山を登らねばなりませんし、また浮遊する無数の巨岩が時には落石となって皆さんを襲うでしょう。
この道行きを阻む超自然を乗り越え、巨山の頂きを目指しましょう。
●第二章
集団戦です。
未だ浮遊する巨岩が多数存在する巨山の道程にあって、『獣騎ワイバーン』の配下である『獣騎スライム』たちが皆さんの道を塞ぐように待ち構えています。
これらを蹴散らし、進まねばならないようです。
●第三章
ボス戦です。
呪いの主である『獣騎ワイバーン』との戦いになります。
彼の嘗て得た屈辱と無念、そして怒り。
憎しみに駆られて襲いかかってくる『獣騎ワイバーン』ですが、みなさんが騎士道に則り、正々堂々と高潔に戦う姿を見せれば、もしかしたら彼の心を動かすこともできるかもしれません。
それでは、鋼鉄の咎が脈々と血潮に流れ続け、その因果応報たる呪いが大地さえも蝕む世界。その因縁を断ち切り、解すために戦う皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『行く手を塞ぐもの』
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POW : 力ずくで障害物をどかす
SPD : 迂回路を見つけ出し、通り抜ける
WIZ : 精霊に呼びかけ、風を鎮める
イラスト:みささぎ かなめ
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
眼の前にそびえるのは巨山。
その頂に座すのは『獣騎ワイバーン』である。
おそらく、そこに座すのは呪いによって苦しむ辺境騎士『スカルモルド』と、彼が守護する辺境の地が蝕まれていく様を一望することができるからであろう。
巨山の周囲には多くの巨岩が浮遊している。
障害物となることは言うまでもないが、巨岩は時折落石となって頂への道を転がり落ちていく。
それはあまりにも危険な道程。
しかし、この程度の道を駆け上がることもできぬ者に『獣騎ワイバーン』は相対するつもりはない。
己に戦いを挑む者は、強き者でなくてはならない。
戦えぬ者、弱き者。
そうした者たちと剣を交えることも、命のやり取りをする理由すらない。
そう、聖なる決闘とは王を戴くための戦い。
ならばこそ、戦いとは常に強者との戦いであったのだ。弱者を戦列に引き立てるなど、あってはならぬ卑劣。
故に『獣騎ワイバーン』は巨山の頂に座し続ける。
空の強者たる己が血族。その誇りと共に、遥か高みから呪いに満ちた大地を睥睨し続けるのであった――。
村崎・ゆかり
因果応報か。親の報いが子に返る、ね。一度死んでも、恨みは忘れられなかったのか。
それに正々堂々と向き合わないと、いけないようね。蒔いた種は刈り取らなきゃ。行こう、『クラリモルド』。
これ、飛んでいったら簡単だけど、それじゃ認めてくれないんでしょうね。ちょっと頑張りますか。
式神の偶神兵装『鎧装豪腕』を顕現させて、落石を「怪力」で「受け流し」、時に「盾受け」させて、落石を防ぎながら進んでいくわ。
落石の隙間が見えたら、縮地法で短距離転移。今回は戦闘行動は無し。
落石が止まないわね、全く! 浮遊してる巨岩も邪魔。
それでも、これを乗り越えないと『聖なる決闘』に出る資格は無い。
もう少し頑張りましょう。
「因果応報か」
村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は、バハムートキャバリアにおけるオブリビオン……百獣族による呪いの惨状を知る。
人のみならず、大地までも蝕む呪い。
それほどまでに百獣族の怒りと怨みは強烈なものであるのがうかがえるだろう。
そして、その呪いは嘗ての人間の祖先より子孫である今を生きる人間にも及ぶ。
親の報いが子に返る。
それは正当なる怒りであり、報復であるのだろう。
「一度信でも、怨みは忘れられなかったのか」
百獣族たちにとって、その怒りは尋常ならざるものであったのだろう。
どこまで言っても感情の話である。
理屈で詰めようとも、その感情は一手であらゆる理屈道理を覆す力を持つものである。
「それでも正々堂々と向き合わなければならないようね。蒔いた種は刈り取らなきゃ」
ゆかりは呪いの主『獣騎ワイバーン』の座す巨山の頂きを見上げる。
道程は容易ではない。
如何なる自然現象か、頂上へといたる道程には巨岩が浮遊している。
ただ浮いているだけであるのならば障害物程度のものでしかなかっただろう。だが、その巨岩は時折、重力を思い出したかのように落下し、落石となって巨山を踏破しようとする者へと襲いかかってくるのだ。
「これ、飛んでいったら簡単だけど……そうもさせてくれないのが厄介なところよね」
飛んだら飛んだで、また面倒なことになりそうだとゆかりは考えながら息を吐き出す。
兎にも角にもがんばらねばならないのだ。
式神である『鎧装剛腕』を顕現させ、落下してくる巨岩を受け止め、弾く。
「弾けないわけじゃない、と。重さは普通の岩石。まあ、大きさで変わるんでしょうけど……落下してくるのを認識できれば!」
ゆかりは巨山の頂を目指す道程にて次々と転がり落ちてくる巨岩を受け止め、受け流す。
だが、山肌を跳ねるようにして、それも不規則な軌道で落下してくる巨岩に対処するのは難しい。
「足を止めるのは悪手ってやつね、なら!」
ゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。
落石は不規則。
だが、間断なく襲いかかってくるわけではない。
その一瞬に縮地法(シュクチホウ)を以て、ゆかりは巨岩との距離を詰める。
薙刀の間合いに迫る巨岩の『鎧装剛腕』で弾き、さらにユーベルコードたる術式でもって距離を詰める。
「落石が止まらない……どころか、近づく度に増えてないこれ! 全く! 邪魔!」
苛烈なる頂きへの道程。
なるほど、とも思う。
この程度の試練すらも乗り越えられぬ者は、『獣騎ワイバーン』にとって相対する値しないとでもいうのだろう。
こんなことが嘗ては多く繰り返されていたのだ。
聖なる決闘。
王を戴くための戦い。
ならば、ゆかりは自分が資格持つ者であると示すためにも、この迫りくる巨岩を切り抜けなければならない。
「もう少し頑張りましょう」
根気が必要ならば、やるまでである。
ゆかりは、その瞳に不屈の闘志を燃やし、ユーベルコードによって巨山の頂きを目指すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
エリアル・デハヴィランド
●WIZ
呪い…か
半妖精に生まれた身としては生まれながらにして呪われているようなものだが、奇しくも私は「家柄」に守られて人間として育てられてきた
同胞が「忌み子」として世から疎まれる中、安全な外野から唯見ているだけであった私も同様に呪われて同然の身だ
だからこそ、その赦しを得る贖罪も兼ねてキャメロットより出奔して旅に出た
まぁ色々あってガラの悪い半妖精の口車に乗って今に至っているが、それはそれで楽しいものだ
人質だが戻って来る約束をしているのでこうして此処に居るのだが、ここは半妖精ならではの|祝福《ギフト》を持ってして風の精霊に語りかけ、吹き下ろされる強風を鎮めて貰う
一歩一歩確実に巨山の頂きを目指そう
愛という結晶が、子という形であるのならば、何故人間と妖精族の間に生まれた子――即ち、半妖精は『忌み子』と呼ばれるのか。
言うまでもない。
その美しき姿は、否応なしに人の凶暴性を暴き立てるからだ。
人は美しいものを求める。
それを手に入れたいと思う。
己がものとして、他者の目に触れさせたくないと思う以上に誇りたいとも思う。
すでに矛盾をはらんだ感情は、とめどない凶暴性によって拍車をかけられ、いさかいへと発展していく。
その現況となってしまうのが半妖精。
であるのならば、エリアル・デハヴィランド(半妖精の円卓の騎士・f44842)は己という存在もまた呪いであると思えたのだ。
「生まれながらにして、な」
奇しくもエリアルは『家柄』という城壁に守られてきた。
半妖精ではなく人間として。
己が同胞といえる存在は、そこにはない。
本来ならば忌み子として疎まれるはずだ。だが、家柄はそれを守ってくれた。
「それが私にとっては……違うのだな。私だけがのうのうと安寧の中にいた。外を見ていることしかできなかった。ならb,あこの私も同様に呪われて当然の身だ」
そう考えるのにさしたる時間はかからなかっただろう。
今、ここに百獣族の呪いに冒された者がいる。
辺境騎士『スカルモルド』。
身を蝕む呪いは、一歩たりとて動けぬことを示していた。彼の呪いを放置していれば、いずれ大地をも蝕むだろう。
「貴殿は此処で休んでいるといい」
「……ゴホッ……でも」
「でも、ではない。その身では徒に死すだけだ」
エリアルは、これもまた己が身に宿った罪、原罪とも言うべきものへの贖罪を兼ねているがゆえにわずかに気後れする思いもあっただろう。
もとより、今の己は人質だ。
ガラの悪い半妖精の口車に乗ってしまったという経緯もあるが、それはそれである
人質故に戻って来る約束をしているのだが、まあ、なんとかなるだろう。
「さて、巨山を登れ、と。しかし、あの浮遊している巨岩が厄介だな」
浮かんではいるがいつ落石となって襲ってくるかわからない。
不規則、無秩序。
眼の前の道程は如何なるトラブルをも呼び込むだろう。
だが、己は半妖精である。
地に満ちる精霊たちの声に耳を傾ける。
風の音、落石が地面を叩く音。
そうした音や自然現象の多くに精霊たちは宿っている。
「教えてくれ。正しき道筋を。迫る巨岩の道行きを」
語りかければ、答えが返ってくる。
吹き下ろされる強風がエリアルを避けるようにして吹き下ろし、巨岩の落ちる軌跡を教えてくれる。
「……ありがとう。では、往くとするか」
エリアルは頂きを見上げる。
その先に『獣騎ワイバーン』がいる。
辺境騎士『スカルモルド』に百獣族の呪いを掛けた、呪いの主。
急がねばならぬ道程ではあるが、一歩をおろそかにしては頂きへの道も拓けぬだろう。
エリアルは一歩一歩を確実にするために精霊たちと語らいながら、呪いの主が座す巨山の頂きを目指して歩み続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ファルシータ・フィラ
今回はショタですか?ショタですわね!?
え?違いますの?しかし違ったとておねショタは成立しますわ!!
ご褒美ご褒美♪
さて
妄想とて想いは力になるのです
恩讐が幾星霜積み重ねればいかなるモノとなるか
『異邦人』たる我々に何が出来るのか……
それでもせめて向き合う時間を創りませんと
ティタニアの出番はもう少し後にしましょうか
わたくしをただのお嬢様と思っていたら大間違いですわ
アクティブに参りましょう
ダッシュ、ジャンプなどを駆使してクライミング
落ちてくる岩は【リモート・フォートレス】で主砲発射!
そういえば鉄の礫はダメでも精霊力のビームは大丈夫なんですよのねこの世界
ふしぎ
まぁ基本は身体能力でクリアしていくとしましょう
ファルシータ・フィラ(アレキサンドライト・f44730)はハッスルしていた。
なんなら涎もちょっと口の端からこぼれていた。
なんで?
「今回はショタですか? ショタですわね!?」
違います。
そういうんじゃないです。
「え? 違いますの? しかし違ったとておねショタは成立しますわ!!」
何かいらんものと交信しているのではないかという疑惑が湧き上がるファルシータの言動。
おねショタとは。
この際細かいことは言わないでおこう。
ファルシータの尊厳に関わるやもしれぬ。
しかし、ファルシータ自身は特に気にした様子もなく、巨山の頂きを見やる。
「妄想とて想いは力になるのです」
良いように言い換えても無理である。
スタートがすでに間違った明後日を向いているからである。
「いいえ、そんなことはございません。恩讐が幾星霜積み重なればいかなるモノとなるか」
そのとおりである。
強すぎる感情は因縁を呼び込む。
いつだってそうだ。
だからこそ、世界を救う猟兵は一個人のために動くことはない。
いつだって彼等が戦うのは世界の危機のためである。
多くを救うために世界を救う必要があるのだ。
「『異邦人』たる我々に何が出来るのか……できることは多くないでしょう。それでもせめて」
彼女が見るのは辺境騎士『スカルモルド』である。
彼は『獣騎ワイバーン』の呪いによって動けない。
それほどまでの呪詛なのだ。
彼には、この事態をどうにかする力はない。
確かに彼の祖先は許されざる大罪を犯したのだろう。けれど、その罪過が問われるのは、過去の人のみである。
そして、彼は今を生きている。
祖先の大罪を悔いて騎士道にて心を律しているのだ。
罪を濯ぐためには、今しばらくの時間が必要だというのならば。
「わたくしたちが、そのための時間を作りましょう。わたくしをただのお嬢様と思っていたら大間違いですわ!」
いや、ただのお嬢様という認識すらなかった。
むしろ、只者ではない雰囲気しかない。悪い意味でも、良い意味でも。
「さあ、いきますわよ!」
巨山の頂きを目指すファルシータを襲うのは、空中に浮かんだ巨岩の落下である。
転がり落ちるようにして迫る岩を脳波コントロールされたアードフォートの砲撃で難なく吹き飛ばす。
砕けた巨岩の破片が飛び散る中、ファルシータは巨山を駆け上がっていく。
それにしてもバハムートキャバリアは不思議な世界だと彼女は思った。
鉄の礫……重火器は騎士道に悖ると言われるが、精霊力のビームは良しとされている。どこに明暗を分けるのか。
もしかしたのならば、『獣騎ワイバーン』の語るように戦わぬ力を持つものさえも戦いに駆り立てることのできる容易さが問題なのかもしれない。
「ふしぎ。まあ、それはさておき」
ファルシータは頂きを見やる。
まだ随分と遠い。
けれど、駆け上がるのに不便はない。なら、目指す先へと邁進していく。
それだけの力が彼女にはあるのだ。
「眼の前まで迫れば、とやかく言うこともないでしょう。どうぞ、お待ちになっていたくださいましね」
そう言ってファルシータは迫る巨岩を粉々に打ち砕くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
黒髪・名捨
【心境】
「呪い…ねぇ。」
まあ、正直オレも寧々もあんま他人事とはいえねぇ事情だわな。
(正体不明の呪いで記憶喪失&呪いで蛙化した龍神)
【行動】
グランゼドーラに乗れたらこんな山道一発なのによぉ
(寧々のいうこと聞かない&送迎は趣味じゃない戦闘にのみ呼べとばかりに帰宅。そして寧々は頭の上で寝てる)
【行動】
判定:POW
『ダッシュ』で一気に駆け抜ける
『悪路走破』はお手のモンだ。
落下してきた巨石は『覇気』をまとった『頭突き』で破壊したり『衝撃波』飛ばして吹き飛ばす
ちっ、巨大な落石で道がふさがってやがるな
『肉体変異』で右手を『鬼の手』に強化し、≪神無≫で殴り壊す
俺の前に道はない。俺の通った後に道ができるのさ
呪い。
百獣族の呪いは個人だけではなく、住まう人や大地さえも蝕む。
他者を巻き込むことこそを目的としたような呪いであり、それを厭うものにとってはこれ以上ないほどの責め苦であろう。
もしかしたら、『獣騎ワイバーン』は辺境騎士『スカルモルド』がそうであると理解していたのかも知れない。
いずれにせよ、その呪いを放置しておくわけにはいかない。
しかし、『獣騎ワイバーン』は巨山の頂に座して動く気配を見せない。
「呪い……ねぇ」
黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)は、自身も己の頭の上に居座る蛙『寧々』にもまた他人事とは思えなかった。
彼等もまた呪いに関する事柄を持ち得る猟兵たちであったからだ。
名捨は記憶喪失という呪い。
『寧々』は蛙化という呪いを受けた龍神である。
故に彼等は辺境騎士『スカルモルド』に対しては同情的であったかもしれない。
加えて、猟兵として捨て置くこともできない。
「しかし、また面倒な場所に陣取ったもんだなぁ……『グランゼドーラ』に乗れたら、こんな山道一発なのによぉ」
「仕方あるまいて。自身は送迎の手段ではないと言い張るのだからの」
麒麟キャバリア『グランゼドーラ』は、そう言って憚らぬ。
戦闘時のみにて呼び出せと言われているのだから、一体どちらが主かわからぬ。
しかも『寧々』は名捨の頭の上に居座って寝ているのだ。
もしかして、一番この中で真面目なのは自分なのではないかと名捨は考える。
「だがまあ……こんな道を駆け上がるのはお手のモンだ」
みなぎる覇気。
そう、『獣騎ワイバーン』の座す巨山には如何なる理屈からか巨岩が空中に浮いているのだ。
しかも、それが不規則に落下してくる。
道を阻む障害としては最悪の部類であった。
この程度で怯むものは戦うに値しいないとでもいいたいのだろう。
だからこそ、名捨は一気に駆け出す。
迫る巨岩の落石。
これを躱しながら、疾走る。けれど、それも限界があるだろう。
躱しきれぬ巨岩が名捨の眼前に迫っている。
「『寧々』、頭からちょっと降りろ」
「なんじゃ、お前様。もうちっと静かにできんのかえ」
「無理!」
名捨は己が頭蓋を以て迫る巨岩を打ち砕く。
凄まじいまでの石頭であった。
これも功夫のなせる技と言われたのならば、きっとそうなのだろう。
「どんなもんよ! ……って、われた巨岩が道を塞いでやがるか……だが、この程度!」
名捨は、さらに道塞ぐ巨岩を鬼の手に変貌した右手でもってユーベルコードの光を放つ。
「俺の前に道はない」
振りかぶった拳の一撃が巨岩を粉砕する。
そればかりか、振り抜いた拳の衝撃が道を押し広げるようにして巨山の岩肌をえぐり取るのだ。
「俺の通った後に道ができるのさ」
証明するように名捨はえぐった山肌を駆け上がっていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
UC発動中
スカルモルド…またあの名前をきくことになるとはな
「彼の乗ってる人造竜騎もセラフィムの名前ついてるのかな?」
ま、聞いてみれば分かるだろ?
その為にもワイバーン殴りに行くぞ!
【情報収集・視力・戦闘知識】
登る岩山のルート解析
更に浮遊している巨岩の位置把握
【念動力・スナイパー・弾幕】
念動光弾で落ちてくる岩を迎撃
また落石も警戒
落ちてくるってことは山を転がって落石にもなるって事だよな?
滅茶苦茶やべーじゃねーか!
「ご主人サマとメルシーなら余裕だぞ☆」
常にどこから岩石が来るかを読み続け安全なルートを見出しつつ厳しいのは迎撃を続ける
飛ぶのも有りだろうが…騎士道的には微妙だよなぁ…面倒くせえ…!
辺境騎士『スカルモルド』。
その名はいくつかの世界で聞くところであった。
如何なる由縁かはわからぬ。
しかし、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は耳にしたことのある名前を持つ辺境騎士が『獣騎ワイバーン』の呪いに掛っていると知り、座す巨山の頂きを見上げる。
「『スカルモルド』……またあの名前を聞くことになるとはな」
『彼の乗ってる人造竜騎も『セラフィム』の名前ついているのかな?』
カシムは『メルシー』の言葉に肩を竦める。
それは知るところではない。
なら、知っている者に聞くしかない。
「ま、どの道、今は無理なんだろうな」
彼の視線の先には、呪いによってうずくまる辺境騎士『スカルモルド』の姿があった。
「……くっ、この身さえ、動けば……!」
「おー、ま、無理すんなって。後で聞きてーこともあんだし。そのためにも行くか」
『えいおー☆』
カシムは辺境騎士『スカルモルド』を背に巨山へと足を踏み出す。
「って、おわー!?」
『ご主人サマ、よそ見してたら大変だぞ☆』
二人の眼前に落ちるのは、巨山の周囲に浮かんでいた巨岩の落石であった。
とっさに『メルクリウス』の光弾で打ち砕いたからよかったものの、そうこうしている内に、さらに落石が続くのだ。
「めちゃくちゃやべーじゃねーか!」
『でもご主人サマとメルシーなら余裕だぞ☆』
「なんでも加減ってもんがいるだろうが!」
カシムは『メルクリウス』と共に山肌に踏ん張るようにして落石の一撃を打ち払い、駆け上がるようにして迫る巨岩を念動光弾でもって撃ち抜く。
砕けた岩石の破片が装甲にぶつかって、不快な音を立てる。
「チッ……こんなこと続けてたら登るどころじゃねーな……なら!」
カシムは浮遊する岩石が不規則に落下してくる軌道を見やる。
規則性はない。
あるのは、予測不能なる落石ばかりだ。だが、速度に優れたる『メルクリウス』ならば、見てから動くことができる。
『迎撃ー☆』
迫る巨岩を念動光弾が砕きながら、カシムは一気に最短距離を駆け上がっていく。
本来の『メルクリウス』の機能を使えば、飛ぶこともできるだろう。
「だが、こういうのはよ!」
カシムはこのバハムートキャバリアという世界について考える。
この世界に息づき騎士道は百獣族にも通じるものである。
であるのならば。
「飛ぶのは……微妙なんだろうなぁ……面倒くせぇ!」
『本音☆』
「しゃーねーだろうが! 七面倒な回り道をさせやがるんだから!」
カシムは毒づく。
がしかし、おそらくこれが正解なのだろうと思う。
制限を前に嘆くよりも前に進む。
騎士道というのならば、それに倣うしかないのだ。
「ぐだっても何も良いことはおきねーからな! いくぜ!」
『らじゃー☆』
二人は気を取り直して、巨山の頂を目指すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
燮樹・メルト
まぁ、気持ちはわかる。
被害者だから、何をしても良いかは別。
ちょっとこの世界、なーんか違和感パないし、ちょっと探り行ってみようか?
MICOちゃん、道中アクションステージだけど、頑張ろうね。
(自分のキャバリアに語りかけて、山頂を目指す)
ツボのゲームよりは楽かな?
MICOちゃん、UCを使って、一気に突破するよー?
高速で飛翔しつつ、自動防御機能をサイキックで伝達して防御しつつ、進路上の落石を壊して進む。
よしよし、MICOちゃんの勝手がつかめてきてる。
一緒に頑張ろうね!
感覚的に、思ったように動く手足のように、空を自由に翔る。
女神型キャバリアの自由さに次第に自分の体をシンクロさせて。
復讐は、奪われた者の権利である。
奪われたのならば、奪い返さねばならない。
そのままになんてしていられない。
このバハムートキャバリアにおいて百獣族とは、人類によって滅ぼされた種族である。
それも完膚なきまでに。
誰一人残らなかった。
ただの一人も見逃されることはなかった。
人類の凶暴性は、ここまで行き着くのかと思わせるほどの徹底的な虐殺。
それは後の人類の子孫たちをして後悔させ、懺悔させた。
「まぁ、気持ちはわかる」
燮樹・メルト(f44097)は思う。
オブリビオンである百獣族は被害者だ。
奪いつくされた者たちだ。
「でも、だからって何をしても良いかってのは別」
メルトはこの世界に違和感を感じていた。
人間の凶暴性然りである。
本当に人間が百獣族を虐殺するほどの凶暴性を持ち得ているのか。理性をなくすほどの衝動をもっていたのか。
歴史を語るのは勝者のみである。
だからこそ、彼女は違和感を感じていたのかも知れない。
「『MICO』ちゃん、道中アクションステージだけど、頑張ろうね」
メルトは己が乗騎であるジャイアントキャバリアに語りかける。
そう、今から彼女たちが目指すのは、巨山の頂きである。
そこに『獣騎ワイバーン』……辺境騎士『スカルモルド』に呪をかけた張本人が座しているのだ。
しかし、その道程は険しい。
試練とも言うべきものなのか、それとも、この程度の道程を踏破できぬ者など相手にしないとでも言うかのようだった。
「上等だよね。それに、壺にはまってツルハシだけで山登りするよりは、難易度低いでしょ! でも、ユーベルコード使うのはやむなし」
メルトの瞳がユーベルコードに輝くと同時に、彼女のジャイアントキャバリア……フェイスガードの奥が煌めく。
巨山の山肌をスキャンする。
駆け上がるために必要な地面の設置具合や、ルートを即座に算出する。
空中に浮かぶ巨岩の落下も不規則であるが、落下してきてからでも対処可能である。
それほどまでにメルトの駆るキャバリアの性能が向上しているのだ。
「システム、世界、適合、オルガノン、調和」
その言葉と共にメルトは『MICO』の推力でもって山肌を駆け上がっていく。
高速による飛翔。
さらには自動防御機能をサイキックで伝播することで、落石の衝撃をものともしないのだ。
「よしよし、馴染んできたよ。勝手が掴めてきた!」
ユーベルコードによる性能の底上げ。
メルトは己の感覚がダイレクトに『MICO』の機体の外側まで広がっていくのを感じただろう。
人機一体とも言うべき挙動でもってメルトは落石を難なく躱して山頂を目指す。
可憐なるキャバリアは、まさしく彼女の写し身。
その奇蹟のような適合率と共にメルトは難関とも言うべき地形をも軽々と飛び越え、徐々に頂きへの道を踏み越えていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メサイア・エルネイジェ
●塩沢家
大変ですわねぇ
そんな呪いはわたくしがぶん殴ってお解呪して差し上げますのよ〜!
でっけぇお山ですわねぇ
こちらのお天辺におワイバーンがいらっしゃいますの?
お山のお大将ですわ〜!
ヴリちゃん!スカイルーラーでひとっ飛びですわ〜!
ふわふわ浮かんでるお岩!これは急に飛んでくるやつですわ!
こんな時は!エルネイジェ流回避術でひらりと躱して…ん?
この香りは…お酒ですわ〜!
しかも超極上ですわ〜!
あちらの御方からしますわ!
そのお酒わたくしも飲みたいですわ〜!
独り占めはいけませんのよ〜!
死角?
ございませんわ
わたくし無敵でしてよ?
死角じゃなく資格?
聖なるお決闘?
では早く参りますわよ〜!
運んで差し上げますわ〜!
シャリス・ルミエール
●塩沢家
その非道の一端を担った妖精の私には、何も申し上げる事はできません
私に課せられた使命はその贖罪なのかも知れません
強く誇り高い騎士に聖杯の神酒を振る舞うという使命…二度と悲劇が起こらないよう、人々の心を騎士の道に留め続けるために…
聖なる決闘あるところに騎士あり
私は私の使命を果たしましょう
ですけど……あわわ!
聖なる決闘に立ち会う前に落石でぺちゃんこになってしまいそうです
アリコーンが居てくれたら良かったのですけど、今は傷付いていて……
はい?
お酒ならこちらの聖杯に…
ですがいけません!だめです!
聖杯のお酒を口にするには資格を示して貰わないと!
運んでいただけるのですか?
ではありがたくお言葉に甘えます
辺境騎士『スカルモルド』を襲った百獣族の呪い。
それは嘗ての彼の祖先が冒した罪の因果応報。
しかしながら、その呪いは彼のみならず彼の周囲にいるものを、そして大地すらも蝕む。
それほどまでに強烈な呪いなのだ。
確かに、嘗ての人類はそれほどの怒りを買う非道を行ったのだ。
そして、その一端を、元凶となる一因を作り出したのは妖精族であった。
「私には、何も申し開きすることがございません。そして、何かを申し上げることも」
シャリス・ルミエール(聖杯の乙女・f44837)は、辺境騎士『スカルモルド』の身を苛む呪いに胸を痛めた。
何より、これに対して自分ができることはない。
だが、使命が己にはある。
贖罪という使命。
強く誇り高い騎士に聖杯の神酒を振る舞うという使命……二度と悲劇が起こらないよう、人の心に騎士道があらんことを、過去の業を忘れぬようにととどめ続けるために。
「なんだか良い香りがするのですわ~!」
「えっ」
シャリスの頭上に飛ぶのは、黒き竜であった。
「人造竜騎……!?」
「あらあら~ふわふわ浮かんでいるお岩をひらりと躱しておりましたら、なんだかすんごく良い香りがしましてよ~お酒ですわ~!」
そう、この声は黒き機竜『ヴリトラ』を駆るメサイア・エルネイジェ(暴竜皇女・f34656)であった。
彼女もまた辺境騎士『スカルモルド』の呪いを解くために『獣騎ワイバーン』が座す巨山の頂きを目指していたのだ。
ぶん殴って解呪できるのでは? と彼女は思っていたが、どうやら事はそう簡単ではなかったらしい。
殴ってお解呪。
これは『エルネイジェ王国』の常識であった。嘘である。メサイアの常識は非常識であったから。
「それにしてもでっけぇお山ですわねぇ。おワイバーンがいらっしゃると聞いたのですが、ご存知なくって~?」
「え、あ、あわわわ……!」
シャリスは、聖なる決闘に赴く騎士を見つけんとして、逆に黒き機竜に見つかってしまったのだ。正確に言うのならば、酔いどれ皇女に、である。
「落石でぺちゃんこになってしまう前に、黒き竜が……!」
「ヴリちゃんは良い子ちゃんですのよ~! むむ、そのお酒、超極上ですわね~!?」
メサイアの嗅覚は鋭かった。
アルコールに関しては、犬より鋭敏であった。
そのため、シャリスが抱く聖杯……それ自体に興味がなくても、その内に秘めたる神酒の味わいというものに対しては人一倍敏感であったのだ。
「こ、こんな時に『アリコーン』がいてくれたらよかったのですけど……」
己を守護する存在をシャリスは思う。
だが、今は傷ついて戦えない。
であるからと言って彼女が誇り高き強き騎士を求めることをやめるわけがない。
危険であっても彼女はためらわず踏み込んできたのだ。
「わたくしも呑みたいですわ~!」
なのに、めちゃくちゃ呑んべぇ皇女に見つかってしまったのだ!
オブリビオンと対峙するより、ずっと危険な気がする!
「いけません! だめです!」
ぴしゃりとシャリスは言い放つ。
「なんでですの~? 独り占めはいけませんのよ~!」
「聖杯のお酒を口にするのは、資格を示してもらわないと!」
「死角? ございませんわ!」
「ほら、やっぱり!」
「ですが、わたくし無敵でしてよ?」
「え、あ、え? 無敵?」
「わたくしとヴリちゃんに敵う者なんていなのですわ~並み居る敵は全部千切ってはぶん投げてジェノサイドバスターしてきたのですわ~!」
とんでもない暴力の気配にシャリスは、自分が求める『強く』という第一条件が当てはまってしまったことに驚愕する。
眼の前の『ヴリトラ』を駆る皇女は、確かに『強い』のだろう。
だが。
「し、しかし、この巨山の頂に座す『獣騎ワイバーン』との聖なる決闘を制さねば……」
「では早く参りますわよ~!」
がし、と『ヴリトラ』のマニュピレーターがシャリスの体を掴み上げる。
「運んで差し上げますわ~!」
「では、ありがたくお言葉に甘え……ってきゃわあああ!?」
メサイアは迫りくる巨石の落下を凄まじい速度で上昇し、躱して頂上を目指す。
そう、シャリスの悲鳴なんてメサイアはもう聞こえていない。
だって、お酒が待っているのだ。
オブリビオンをぶっ飛ばしてお酒。まっすぐ飛んでお酒。ぶっ飛ばしてお酒。まっすぐ飛んでお酒。
もうそれしか頭にないメサイアの飛翔を止められるものなど、存在しない。
シャリスの悲鳴が、巨山に木霊した――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アルマ・フィーリア
【POW】
恨みも怒りも判る、けど民を、「力なき者」たちをただ己の怨嗟を晴らす為に巻き込む事が、その矜持に適う行いだとはボクには思えない…………止めなきゃ!
アルマ・フィーリア、そしてその乗騎『ドラグリヴァーレ』!いきます!
確かにボクは6歳で、過去の記憶もないけれど
騎士として、百獣族と向き合い、彼らの怒りを受け止めなければならない事はこの魂が「憶えて」います!それに……大丈夫です、ドラグリヴァーレは頑丈ですから!
竜首展開!魔法を放つ『鋼竜装ドラグヘッド・バレト』と魔法剣を展開する『鋼竜装ドラグヘッド・ブレイド』で巨石に真っ向から立ち向かいます!場合によっては再生力頼みの……強行突破です!
百獣族の呪いは怒りの発露であった。
生命奪われ、誇り踏みにじられ、大切なものたちをも奪われた。
その怒りは筆舌に尽くしがたいものであったことだおる。
理解を示すことはできる。
怨みも、怒りも、理解できるところのものであった。
けれど。
「民を、『力なき者』たちを、ただ己の怨嗟を晴らすために巻き込むことが、その矜持に適うい行いだとはボクはどうしても思えない……」
アルマ・フィーリア(鋼竜石の妖精・f44795)は、乗騎『ドラグリヴァーレ』の中で呟く。
その言葉が『獣騎ワイバーン』に届くことはない。
今から届けなければならないのだ。
問いかけるためには、巨山の頂きへと向かわねばならない。
しかし、その道程は険しい。
巨岩が空中に浮かび、登らんとするものを蹴落とすが如く落下してくるのだ。
この程度の道程を踏破できぬ者は、相対する価値などないと言っているようだった。
「それでも……止めなきゃ! アルマ・フィーリア、『ドラグリヴァーレ』! いきます!」
大地を蹴った瞬間『ドラグリヴァーレ』が飛翔する。
落下してくる岩石を躱す。
無駄に力を消費はできない。
わかっている。
アルマは自分自身が未だ幼く、過去の記憶すら持ち得ない身であることを。
けれど、騎士として百獣族の怨みに、怒りに向き合わなければならない。
怒りは受け止め、怨みには理解を示さなければならない。
どんなに記憶がなくても、欠けたるものがあるのだとしても、己の胸から湧き上がる思いがある。
魂が『覚えて』いるのだ。
「それに……大丈夫です、『ドラグリヴァーレ』は頑丈ですから!」
迫る岩石を打ち砕きながらアルマは飛翔する。
確かに装甲を岩石が傷つけることはない。
己が乗騎は強固な装甲を持っているのだ。だが、落下する岩石は傷をつけずとも、『ドラグリヴァーレ』の体勢を崩す。
飛翔がままならない。
「なら!」
アルマはコクピットの中で叫ぶ。そして、巨山の頂きを睨めつける。
「竜首展開!『鋼竜装ドラグヘッド・バレト』!!」
更に魔法剣が展開し、砲撃を落下してくる巨岩に叩きつける。
砕いて、砕いて、拓くしかない。
己たちに降り注ぐ巨岩は、全てが百獣族の怨みと怒りであるようにも思えてならなかった。
今を生きる人類にとっては謂れのない怒りであるかもしれない。
なぜなら、彼等を殺した人類はもういないのだ。
けれど、それでもと思うのが騎士道である。
どんな理屈を前にしても、関われば情が湧く。
その情が優しさだというのならば、百獣族の怒りや怨みにも寄り添う。そうやって贖罪を行わなければならないのだ。
「……どんな怨みも、怒りも……真っ向から受け止めます! そして! 強行突破です!」
アルマは叫ぶ。
その叫びに応えるようにして『ドラグリヴァーレ』は咆哮するように砲撃を放ち、その魔法の一撃が巨山の頂きをかすめるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
エリー・マイヤー
虐殺の首謀者をぶん殴りたい。
そこまでなら、わからなくもありません。
ですが、唆された民衆や、その子孫まで根絶やしに…
と言われると、理解の外ですね。
果たして、私が薄情なのか、敵の憎しみが強すぎるのか。
まぁ、どうでもいいことですね。
お仕事お仕事。
【念動レビテーション】により重力を相殺。
念動力で軌道を微調整しつつ、軽やかに跳んで山道を超えます。
無重力下なら、巨岩が落ることはないと思いたいですが…
浮いてる理由もよくわかりませんし、警戒はしときましょう。
当たりそうな場合は、念動力で軌道を逸ら…
いえ、自分を念動力で動かした方が効率的ですか。
跳ぶなり浮くなり曲芸飛行するなりして、適当に回避しましょう。
嘗て人類が百獣族に行った虐殺。
それは凄惨たるものであったことだろう。
女子供など関係ない。人の凶暴性を持って、あらゆるものを殺し尽くす。
人の業とは、ここまで行き着くのか。
そう思わせるほどの所業。
今を生きる人類は、そうした祖先たちの過去の行いを酷く恥じる。そして、騎士道でもって己たちの心を律しているのだ。
「虐殺の首謀者をぶん殴りたい」
なら、とエリー・マイヤー(被造物・f29376)は思う。
そこまでならわからなくもないことだと思ったのだ。
怒りはぶつけねばならない。
身に溜め込んだところで、良いことなど何一つない。
ましてや、生命が奪われているのだ。生命は回帰しない。戻ってこない。
どんなに復讐を果たしたとしても、生命で生命を贖っても、失われた生命は戻ってこないのだ。
その事実に虚しさを覚える者もいるかもしれないが、何故、奪われた側が怒りを抑えなければならない。
ましてや、それを美徳などと。
「ですが、そそのかされた民衆や、その子孫まで根絶やしに……と言われると、理解の外ですね」
エリーにとって、それは一線を超えたものであった。
もしかしたら、とエリーは自分が薄情なのかとも思ったし、百獣族の憎しみが強すぎるのかとも思う。
どちらにしても、百獣族の呪いは、大地さえ蝕んでいくのだ。
「なら、どうでもいいことですね。どちらにしたって。お仕事お仕事、と」
エリーの指先がユーベルコードに輝く。
示すは、巨山の頂きへの道程を阻む浮遊する巨岩。
時折落下し、落石となって降り注ぐ岩。
それをエリーの念動レビテーション(サイ・レビテーション)は、念動力で引力を相殺し、落石を浮かせているのだ。
そう、今、この場においてエリーが巨山の頂きを目指す道程は無重力。
軽やかな足取りでもって彼女は浮遊する岩を蹴って上昇していく。
「しかし、この岩……どのような理屈で浮いているのでしょうか? 精霊力、というやつですかね?」
エリーにとって、この道程は気安いものであった。
むしろ、観察や考察を深める余裕すらあったのだ。
とは言え、警戒を怠ることもない。
頂に座す『獣騎ワイバーン』がこの程度で試練とは言わないだろう。
きっと同じ百獣族をけしかけてくるはずだ。
「百獣族は適当に回避とはいかないでしょう……であるのなら、この道程だけは適当に躱していかねば」
力は温存するに越したことはない。
ふわりと飛ぶエリーは、巨岩を掌で押しのけて頂きを見やる。
未だ『獣騎ワイバーン』の姿は見えない。
影すら見えぬ頂き。
そこにて未だ憎悪の炎がくすぶっているのだろう。
世界すら蝕む強い憎悪。
これを如何にかしなければ、世界が滅びる。
「世界を救う。そこに一個人の怨恨、憎悪は興味の外……」
オブリビオンがいるのならば滅ぼす。
エリーの中にあるものは、それだけだ。故に、彼女は曲芸の如き浮遊でもって巨山の道程を飛ぶのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
ああ、この雄叫び、帰ってこられたって気がします。
いやまぁ、そう思っちゃう時点でわたしも大概だとは思うんですが!
それでも思っちゃうんですから、しかたないですよね。
またステラさんといっしょできるのは嬉しいですし!
って、え?
この世界ってそんななんですか?
そんなに音楽に感動してもらえる世界なんですね!
わたしこの世界で歌姫とか呼ばれちゃいます?
わたしの演奏を聴けーっ! とか言ってもおっけーになっちゃいます!?
うん。
変わらずやべーステラさんに安心……ちょちょちょちょ!?
復帰初戦なんですから、ネコ持ちやめてください!?
岩危ないですから!当たりますから!
あーもう。解りました!行きますからー!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の!
香りがしまぁぁぁぁすっ!!
はいメイドです!
それにしてもブリュンヒルド様に続いてスカルモルド様ですか
というより、スカルモルド様の系列が悉く何かに冒されているのはどういうことなのでしょう?
というわけでルクス様
この世界なら何しても勝てそうなルクス様
さくっとスカルモルド様を助けに行きましょう
この世界はエイル様に繋がる深い何かがありそうなので!
さくっとさくっと【メイドズ・ホワイト】にて!
いかな巨山とて私のエイル様への愛の前には無力!!
そこの勇者!『うわ、やべー』とかいう顔しない!
ほら、遅れてますよハリアップ!(首根っこ捕まえて
今の私に踏破出来ぬ道(物理)無し!!
開口一番。
「|『エイル』様《主人様》の! 香りがしまぁぁぁぁすっ!!」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の雄叫びを聞いたルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は、ようやくにして己の居場所に戻ってきたような気がした。
帰ってこれた、というのが正しいのか。
いやまあ、なんていうか。
ステラのやばーな感じも、そう思っちゃう時点でルクス自身も大概であるな、と自身で思うところがあったのかもしれない。
いつもなら、うるさっ! と思うところであったが彼女はうんうんと腕組して頷く。
「それでも、そう思っちゃうんですから仕方ないですよね」
ならしかたない。
とは言え、ステラのテンションはルクスの思う以上のものであった。
「はいメイドです」
へいおまち、位のノリでメイドであることを主張すな。
「それにしても『ブリュンヒルデ』様に続いて『スカルモルド』様ですか。というより、『スカルモルド』様の系列が悉く何かに冒されているのは、どういうことなのでしょうか?」
不治の病。呪い。
それは似て非なるものであるのか。それとも真に同じなのか。
いずれにしても、ステラは巨山を前にしてルクスの肩を、ぽむと叩く。
「というわけでルクス様。この世界なら何しても勝てそうなルクス様。さくっと『スカルモルド』様の呪いを解くために行きましょう」
「え? この世界ってそんななんですか? そんなに音楽に感動してもらえる世界なんですね!」
多分ステラとルクスとでは認識に齟齬がありそうであるが、概ねそんな感じとステラは説明を省いた。
「わたし、この世界では歌姫とか呼ばれちゃいます? 私の演奏を聴けーっ! とかいってもおっけーになっちゃいます!?」
「いえ、この世界には『エイル』様に繋がる深い何かがありそうなので!」
カーテシーを決めながら言うとことではないが、ステラにとって大切なのは、いつだって主人様のことばかりであった。
宣言と共に煌めくはユーベルコード。
今の彼女はやべーメイドではなく、何でも出来る超有能スーパーメイドである。
本当に?
疑いの眼差しがあるかもしれないが、しかし事実ステラのスピードと反応速度は爆発的に増大しているのだ。
如何に巨山にて降り注ぐ落石道程であろうと、今のステラにとっては踏破できぬ道程ではないのだ。
「いかな巨山とて私の『エイル』様への愛の前には無力!!」
「うん。相変わらずやべーなステラさんに安心……」
「そこの勇者、うわやべーとかいう顔しない! ほら、遅れてますよハリアップ!」
ルクスの首を捕まえてステラはルクスを引っ張ってずんずか巨山を駆け上がっていく。
「ちょちょちょちょ!? ネコ持ちやめてください!?」
「構いません! 今の私に踏破できぬ道無し!!」
「岩、岩来てます! 危ないですから! 当たりますから!」
「いいえ、当たりませんとも! 今の私に不可能など! 落石の一つや二つで止められると思わないことですね!」
ルクスは、あーもーとため息を付く。
首根っこを掴まれるのは嫌だが、ここで文句を言っても始まらない。
それどころか、ステラの勢いに乗らねば、こちらがおいていかれるだけだ。
なら、諦めるしかない。
いつものことだし、これからもそうなのだろうなという未来は予測できてしまう。
「解りました! 解りましたから! 行きますからー!」
だから、首から手を離して、と迫る落石の中でルクスは叫ぶのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ハロ・シエラ
私や私の兄弟姉妹達も戦う力の無い内から戦場に出ていましたが、そうしなければ速やかに全滅するだけと言う事情がありました。
今回は異世界の遠い昔の事、私にはどのような事情でそうなったのかは知る由もありません。
意趣返しと言う事かも知れませんが、何にせよ戦えない者を巻き込むのを放ってはおけませんね。
さて、ここは浮遊する岩の下を進むしかありませんね。
なるべく速く移動して切り抜けるしかありません。
どの岩が落ちてくるかは無意識に感知した僅かな音や空気の震えが第六感を通じて教えてくれます。
回避するか、目の前に落ちて転がってくるならユーベルコードで破壊して切り抜けます。
まだここで立ち止まる訳には行きませんからね。
自然界で人は弱い生き物である。
そして、世界が違えば時として人は最底辺の種族でもあった。
隷属を強いられ、徒に殺される。
もしくは状況が生きることを許さないこともあるだろう。
ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)の行きてきた世界は、常に戦わなければ明日を望むことすらできない世界であった。
自分がそうであったように、兄弟姉妹のいずれもが戦う力整う前に戦場に放り出される。
そうしなければ、人間という弱者は全て滅びるほどに弱い存在だったのだ。
事情があった、と説明するのならば、簡単なことだっただろう。
『獣騎ワイバーン』は言った。
戦う力のないものまで戦列に駆り立てた罪。
それは聖なる決闘にて、王を戴くバハムートキャバリアにおいては、真に許し難き所業であったのだろう。
そこに嘗て在りし騎士『スカルモルド』の事情を加味しないのであれば、である。
しかし、百獣族を悉く滅ぼしたのもまた事実なのだ。
この世界の遥か遠き過去。
「私にはどのような事情でそうなったのかは、知る由もありません。意趣返しということかもしれませんが」
見上げる巨山。
その頂にて百獣族の呪いをかけた『獣騎ワイバーン』が座す。
彼がしたことは、戦えぬ者までも、大地さえも呪いに蝕むという怒りに駆られたての報復であった。
「何にせよ、戦えない者を巻き込むのを放ってはおけません」
ハロが戦う理由はそれだけでよかった。
見上げる先には巨岩が浮かぶ奇妙な光景。
不規則に巨岩が落石し、己に迫ってくる。
これを躱しながら巨山を登らねばならぬのは、至難の業であった。
「ですが、この程度を踏破できぬ者には挑む資格なし、といいたいのでしょう。ですが」
それでも往くのだ。
ハロはそう決めたのだ。
ならば、ためらう理由もない。
大気の震え、音、第六感。
自らの持てるすべてを持って、自然の中で行きていくのはハロにとっていつものことだった。
弱者として生まれたからこそ、周囲の環境に過敏になる。敏感になった感覚は、経験則によって危機察知能力を高める。
弱者が生き抜くということは結局のところ、如何にして危機から逃れるかというところに集約される。
「まだここで立ち止まる訳には行きませんからね」
転がり落ちてくる巨岩。
それを真正面に捉え、ハロは己が拳を叩きつける。
ユーベルコードに煌めく瞳。
己が拳が叩きつけられた巨岩は一瞬にして粉々になって己が背後に落ちていく。
止まれない。
駆け上がっていくしかない。
道は結局、ただ一点にしか繋がらない。
この百獣の呪いを解くためには、迫りくる脅威の全てを排除するほかないのだ。
「なら、いつもどおりです」
ハロは巨山の天頂を見上げ、その道程の一歩を着実なものとして登っていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
薄翅・静漓
『スカルモルド』は先祖の罪を受け入れた
呪いがなくとも、きっと彼は罪を償おうとするでしょう
彼もまた茨の道を選ぶ人なのだと思うから……
過去という礎を踏みしめて
それでも私達は生きていかなければならない
だから、往くわ
真紅の疾風を纏い、巨岩を回避して駆ける
感じるのは強大な怒り
百獣族の憎しみが渦巻いている
たとえ誇り高き騎士であろうとも
呪いを振りまく存在に成り果てたというのなら
どこかで止めなくては
百獣族の呪いは強大な呪いであった。
術者が呪う者だけではなく、その者に近しいものにも呪いは伝播し、大地にまで波及していく。
全てを蝕む呪いは、いずれバハムートキャバリア世界そのものを飲み込んでいくだろう。
それは猟兵として捨て置くことのできぬものである。
そして、辺境騎士『スカルモルド』は、呪いによって動かせぬ身。
彼は祖先が過去にて冒した大罪の咎を受け入れようとしている。
それは仕方のないことであった。
彼が大罪を冒したわけではない。
だが、百獣族の怒りを買うほどの所業を過去に祖先が行ったということを、酷く恥じていた。故にこれが罰だというのならば、潔く受け入れるつもりだったのだろう。
だが、『獣騎ワイバーン』の怒りは、それだけにとどまらなかった。
それほどの怒りなのかと薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は思ったかも知れない。
呪いがなくとも『スカルモルド』は罪を償おうとするだろう。
「あなたもまた茨の道を選ぶ人なのね……」
呪いに喘ぎながらも辺境騎士『スカルモルド』は頷く。
「騎士道とは、罪を冒さぬこと。されど、この身に流れる血がすでに罪に穢れているというのならば、それを濯ぐことこそ連綿と紡がれてきた血脈の使命そのもの、だから……」
「そう」
なら、と静漓は彼に背を向ける。
その青い瞳が見上げるのは巨山。
頂に座すのは『獣騎ワイバーン』。呪いの主である。
倒さねば、辺境騎士『スカルモルド』の呪いは解けぬ。
そして大地にまで波及する呪いを止めるためには、やはり『獣騎ワイバーン』を打倒する必要がある。
変えられぬ過去がある。
それでも己達は行きていかねばならない。
例え、過去を踏みつけにしてでも前に進まねばならないのだ。
「往くわ」
ユーベルコードの煌きと共に真紅の疾風を静漓は纏う。
迫るは巨岩。
落石の軌跡は不規則極まりない。
だが、静漓は一歩踏み出した瞬間、落石を難なく躱していた。
一歩踏み出す度に、彼女の肌に突き刺さるのは強烈な怒りであった。
百獣族の憎しみが周囲に渦巻いているようだった。其れほどまでに彼等は怒り狂っている。
それを鎮めるためにも静漓はためらいなく危険な道程を疾走るようにして巨山を駆け上がっていく。
「たとえ誇り高い騎士であろうとも、呪いを振りまく存在に成り果てたというのなら」
そう、百獣族たちは嘗ては聖なる決闘を行い、正々堂々と騎士道を邁進していた。
死せる怒り、己が血族を悉く滅ぼされた怨み。
そうしたものが、彼等を歪ませ、他者を呪う存在へと堕したというのならば、止めなくてはならない。
その決意と共に静漓は降り注ぐ巨岩を蹴って、さらに高く飛ぶ。
頂に座す者は、この身を差す憎悪よりも深き憤怒を抱えているだろう。
世界を滅ぼすほどの怒り。
失った哀しみを誰かに理解してほしいと願いながら、しかして誰かもまた同じ哀しみを得よと叫ぶ心がある。
誰も彼もが強くはあれない。
けれど、静漓は思う。
そんな哀しみと憎しみの連鎖こそ、誰かが止めねばならない。
その勇気を持って踏み出さねばならないのだと、茨の道を往くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ジェラルディン・ホワイトストーン
アドリブ歓迎
……因果応報、ってか。
やられたことへの恨みつらみってのは理解るし、やり返すんなら上等だと思う。
けど、まあ。
それで関係ねぇ奴等を巻き添えにするってんなら、そいつらが抗っても文句はねぇだろ?
そっちも今、仕返ししている真っ最中なんだからよ。
落石から身を守るために精霊に呼び掛けて、迫る巨石を超次元の竜巻に変換する。
俺一人くらいなら防ぎ切れるだろう。
あとはさくさくと飛行して、道を駆け上がって行く。
卑怯卑劣を毛嫌いするんなら、正面から突破してみせるのが一番効くだろうさ。
無差別攻撃、数の暴力、大いに結構じゃねぇか。
それを蹴散らし返り討ちにできるから、騎士様なんじゃねぇの?
百獣族の呪いは正当なる怒りの発露である。
彼等が嘗て全ての血族を虐殺された怒りは、今を生きる人間においても己の所業ならずとも慙愧の念に絶えぬものであった。
故に騎士道。
心に据えるは、律するための真芯。
懺悔すべき者なき後悔は、彼等に騎士道という寄る辺を示した。
だが、オブリビオンとして再び世界に現れた百獣族たちの怒りが、それで収まるわけがない。
「……因果応報、ってか」
ジェラルディン・ホワイトストーン(シャドウエルフのタイタニアキャバリア・f44830)は巨山の頂きを見やる。
そこに座し、睥睨しているのは『獣騎ワイバーン』である。
呪いの主であり、嘗て空に在りてはかの獣騎に匹敵する者は数えるほどしか存在していなかった。
その『獣騎ワイバーン』に挑戦するためには、巨山を駆け上がらなくてはならない。
それだけであったのならば容易い。
だが、空中に浮遊する巨岩。
これが不規則な落石となって道を阻んでいるのだ。
これほどの試練を課して尚、『獣騎ワイバーン』たちの怒りは鎮まるところをしらないだろう。
「やられたことへの怨みつらみってのは理解るし、やり返すんなら上等だと思う。けど、まあ……」
ジェラルディンは思うのだ。
報復は、恩讐の彼方にて復讐者の心を慰めるものである。
けれど、それで他者を巻き添えのすることの是はどうなる。
人のみならず、大地をも蝕む呪い。
正当性あれど、世界の悲鳴に応える猟兵にとっては、語るべくもない。
「抗っても文句はねぇだろ? そのつもりで、てっぺんに居座ってるんだからよ」
ジェラルディンは不敵に笑む。
迫る落石。
精霊に呼びかけ、その瞳がユーベルコードに煌めく。
「そっちも今、仕返ししている真っ最中なんだからよ!」
クライシスゾーンと化した超次元の竜巻。
それは迫る落石すらも巻き込みながら、竜巻へと変換していく。
「俺一人ならどうとでもなるさ」
竜巻の中を飛び、さらに巨山の斜面を駆け上がっていく。
強行突破もいいところであるし、力技であることも理解していた。
だが、これでいい。
どんなに困難な試練が己を待ち受けるのだとしても、真っ向からこれを打ち破っていく。
無差別攻撃に、数の暴力。
大いに結構である。
むしろ、ジェラルディンにとっては足りないくらいだ。
物足りない。
そう言ってもいい。
この巨山の脅威は酷く厳しい。されど、高揚してもいる。
困難であればあるほどにジェラルディンは情熱を燃え上がらせるだろう。
「大いに結構じゃねぇか。並み居る試練を蹴散らし、返り討ちにできるから、騎士様なんじゃねぇの? いや、そうだろ!」
己の母が語る寝物語があったかもしれない。
己の父が語る騎士道たるやがあったかもしれない。
多くの愛は、今もジェラルディンの中に息づいている。
世の中辛いことばかりだ。現実はクソだ。
もやもやすることばかりだ。
けれど、それもこれも全てが己に課せられた試練だというのなら。
「上等だよ。全部ぶっ飛ばしてやる――!」
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『獣騎スライム』
|
POW : メルティングジャンプ
【飛びつき体当たり】を放ち、命中した敵を【自身の体】に包み継続ダメージを与える。自身が【敵に密着】していると威力アップ。
SPD : 液体獣騎
肉体の一部もしくは全部を【スライム】に変異させ、スライムの持つ特性と、狭い隙間に入り込む能力を得る。
WIZ : スライム魔法陣
空中に描いた【魔法陣】から【大量の溶解液】を出現させ、命中した対象の【耐久力と機動性】を奪う。
イラスト:key-chang
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
浮遊し、不規則に落下してくる巨岩。
その厳しくも険しい巨山の頂きを目指す道程を駆け上がる猟兵達の前に現れたのは、百獣族の一団であった。
「コレヨリ先ヘハ行カセヌ」
『獣騎スライム』たちは、その粘体たる体躯をもって、頂きへの道を阻むように展開していた。
未だ周囲には浮遊する巨岩。
不規則に落下してくるのは当然であり、また同時に『獣騎スライム』たちは、その念帯の如き体躯でもって獣騎でありながら、姿を液体のように変化させながら猟兵たちへと襲いかかってくる。
彼等にとって巨岩の不規則な落石軌道などあってないようなものであったのだ。
「コノ程度ノ試練ヲ跳ネ除ケラレズシテ、『獣騎ワイバーン』ノモトヘト向カオウナド!」
「我ラガ呪イ、ソノ憎シミノ深サ、思イ知ルガイイ!!」
彼等の怒りと共に迫りくる巨岩の落下。
そしてユーベルコード。
いずれもが容易く踏破できるものではない。
だが、戦えぬ者たちのために戦うのならば、己たちにもまた矜持があることを猟兵達は示さねばならない。
例え、百獣族の怒りが正しくとも。
それでも誰がために戦う時にこそ、百獣族たちが嘗て胸にいだいた聖なる決闘へ赴く誇りは輝いたのだと。
怒りに我を忘れた嘗ての騎士たちに報いるためには、その怒りを受け止めて尚、打倒して進まねばならぬのだ――。
エリアル・デハヴィランド
●POW
やはりそう簡単に往かせてはくれないか…
我が名はエリアル・デハヴィランド
円卓の騎士の末席にして、此度の聖なる決闘に挑みし者なり
この程度の試練を跳ね除けれずと申されたが、『騎士道の誓い』に則り気高き貴君らとの聖なる決闘を申し受ける!
出でよ、|人造竜騎《ライオンキャバリア》レナード!
落下する巨石を躱しながらの召喚術をもってして人造竜機に搭乗し、獣騎スライムと正対
陸戦に特化されたライオンキャバリアならではの軽快な機動力をもってして、不規則に浮遊する巨石を足場としながらスライムの飛びつきを回避
水気を帯びる不定形な本体には呪文による炎が有効だが、包み込む瞬間に露呈する核へ剣を突き立てて決着を付ける
容易な道程ではないことは、はじめから分かっていた。
巨山の頂に至る道ならぬ道に立ちふさがる『獣騎スライム』たち。
その意思は復讐に彩られていた。
「やはりそう簡単に往かせてはくれないか……」
エリアル・デハヴィランド(半妖精の円卓の騎士・f44842)は、立ちふさがる彼等の姿を見上げる。
体高5mはあろうかという巨体。
鋼鉄の巨人。
百獣族のみに嘗ては許された変形。
聖なる決闘に挑むための姿。
「我が名はエリアル・デハヴィランド。円卓に騎士の末席にして、此度の聖なる決闘に挑みし者なり」
名乗り上げるエリアルを前に『獣騎スライム』たちは怒りに塗れた人見ながらも、その真正面から己達をい見上げる騎士に己が体躯を震わせ告げる。
「ソノ名乗リ、シカト受ケ止メタリ」
「しかしながら、此度の試練を跳ね除けれずと申されたが、騎士道の誓いに則り、気高き貴君らとの聖なる決闘を申し受ける!」
エリアルの言葉と共に現れるは|人造竜騎《ライオンキャバリア》である。
「我が乗騎『レナード』と共に、いざ、尋常に!」
「勝負!」
互いの誇りだけが、そこにあった。
例え、怒りにまみれようとも、復讐の機会であろうとも。
それでもここにあるのは騎士のみ。
故に降りしきる巨岩は、雑音に他ならぬ。
されど、その雑音を言い訳に使うことは両者には必要なかった。
ここには誓いがある。
「我ガ一撃、受ケヨ!」
粘体の体躯は、伸縮自在にて伸び、エリアルが駆る『レナード』へと迫る。
互いの間合いを瞬時に詰める歩法は、『獣騎スライム』の得意とするところである。なにせ、その体躯は粘体。
鋼鉄の巨人となりても、その性質は健在なのである。
しかし、『レナード』もまた負けじ劣らじと巨山の岩肌を蹴って飛ぶ。
その姿は雄々しく、また勇猛果敢なる騎士道を邁進する姿であったことだろう。
「巨岩ヲ足場トスルカ!」
「然り。この程度、できずとて何が騎士か」
「ナラバ、我ガ体躯ニ包マレ、ソノ装甲ヲ溶カシ落トシテクレヨウゾ!」
『レナード』を囲うようにして飛び込む『獣騎スライム』の体躯。
それこそがエリアルにとっては窮地であり、また同時に好機であった。
薄く広がった鋼鉄の体躯。
ならばこそ、そこには体躯の奥に隠されていた『獣騎スライム』のコア、核というものがある。
それをエリアルは見定め、包みこまれる瞬間に剣の一撃を叩きつけたのだ。
「……捨テ身、己ガ身ヲ省ミヌ、カ」
「騎士の本分は戦えぬ者を護ること、なれば、この身さらすことに如何程のためらいがあろうか」
「……見事、ナリ」
「其方の技もまた、見事」
核を砕かれ、溶け落ちるようにして沈む『獣騎スライム』を見やり、エリアルはさらに巨山を邁進していくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
黒髪・名捨
【心境】
「今度は戦闘だ。いい加減アレにも手伝わせろよ。」
(寧々「やむをえんのぅ。」)
浮遊する岩石が邪魔だが、条件は向こうも同じはずだ。
一気に行くぞ。あと今回はオレを射出するなよ!!
【行動】
(寧々「フリじゃな。」)
「フリじゃねーよ。」
寧々が呼んだグランゼドーラに『二人乗り』で『騎乗』する。
寧々の『運転』は荒いのが難点だがな…。
≪咆光≫を発動…戦場を爆速で『存在感』ある『残像』を残す飛翔
オレは浮遊する岩石を勉強中の『幻影使い』の『仙術』でグランゼドーラの幻に変化させ、敵を『おびき寄せる』
今がチャンスだぞ。
縮退砲で幻影におびき寄せられたスライムたちをまとめて薙ぎ払う。
「おい、『寧々』、敵さんだ。いい加減アレにも手伝わせろよ」
巨山の中腹にて待ち受けるのは『獣騎スライム』たちであった。
未だ周囲には巨岩が浮遊しており、落石も重なる状況にあって、敵の対処もしなければならない。
もとより『獣騎スライム』は体高5mの体躯を持つ鋼鉄の巨人である。
故に黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)は己の頭の上で寝ぼけ眼の蛙『寧々』に呼びかけた。
これが己たちの麒麟キャバリアの求めた戦いであるはずだ。
「やむをえんのぅ」
「なんでだよ。なにもやむなしなことなんてないだろ。あいつの望んだ戦いだぞ!?」
「それもそうか。であれば」
「あ、あとな!」
「なんであるか、お前様」
「今回はオレを射出するなよ!!」
「フリじゃな?」
「フリじゃねーよ!」
そんな夫婦漫才めいたやり取りを『獣騎スライム』は待ち構えていた。
この間に名捨たちを攻撃することもできただろう。
だが、彼等は待っていたのだ。
「微笑マシイガ、良イカ」
「呆れられてるじゃねーか!」
「そうかのぅ」
そうだよ、と名捨は頭をガリガリ掻きむしって、現れた乗騎『グランゼドーラ』に乗り込む。
「やい、漸く出番ってやつだ。今まで渋ってた分、働いてもらうからな!」
ツーンとしている麒麟キャバリア。
それもそのはずである。
この麒麟キャバリア『グランゼドーラ』は名捨ではなく、『寧々』を王質ありと見定めたキャバリアなのだ。
「なんとか言えよ!」
「まあまあ。お前様。では、行くぞ!」
その言葉にアイセンサーが煌き、名捨は益々持って、おい! と叫びそうになる。
が、その言葉が吐き出されるより早く、『グランゼドーラ』が戦場を駆け抜ける。
『寧々』のキャバリアの動かし方は、荒っぽすぎる。それが難点であった。
「凄マジキ踏ミ込ミ。ダガ!」
迫るは『獣騎スライム』。その身が一瞬で広がり、『グランゼドーラ』を取り囲む。
飲み込まれれば、装甲が溶かされ、フレームまで侵食されるであろう。
だが、瞬間『グランゼドーラ』は咆光(ホウコウ)し、一瞬で己を取り囲む『獣騎スライム』の体躯から距離を離す。
本来ならば、それで躱せるものではない。
なのに躱せたのは、『グランゼドーラ』が残像を残すほどの速度で飛翔し、敵に誤認させたからだ。
おびき寄せる、というのならばそうなのだろう。
敵の攻撃を誘発させ、ミスを誘った。
これによって『グランゼドーラ』は絶好の間合いを。『獣騎スライム』は、一撃を空振りに終わらせてしまったのだ。
「今がチャンスだぞ」
「わかっておるよ。それでは、この切り札。食らってもらおうぞ!」
瞬間、『グランゼドーラ』の口腔より出現した縮退砲の一撃が『獣騎スライム』の体躯を吹き飛ばしいながら、その核たる部位をあらゆる防護を無に帰すかのような一撃でも貫通するのだ。
「さあ、止まってなどおられぬ。目指す頂きまで一直線じゃ!」
「オレ、何もしてねーな。まあ、いいか」
名捨は、そうつぶやきコクピットから射出されなかったことに僅かな安堵を覚えるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
エリー・マイヤー
【凍結能力】により冷気を放出。
敵を凍らせて動きを制限しつつ、物理攻撃を通るようにします。
スライムだろうがなんだろうが、凍ってしまえばただの固体です。
衝撃を与えれば、容易に砕けることでしょう。
敵の攻撃は念動力で止めるなり逸らすなりして対処。
大岩は、むしろ念動力で積極的に落として敵に叩きつけます。
先程、この程度の試練と仰いましたが…
果たして、今のアナタ達に跳ね除けられるのでしょうか。
私は、騎士道も嫌いではありません。
騎士が相手なら、名乗るのもやぶさかではありません。
|騎士が相手なら《・・・・・・・》。
恨みに呑まれ、抵抗できない弱者をいたぶった。
その時点で、私はアナタ達を騎士とは認めません。
怒りは視界を狭めるものである。
どうあっても感情というものを持ち得る知性体であるのならば、その激情に翻弄されるのまた必定であったことだろう。
故に騎士道がある。
心を律する真芯。
それなくば、感情は激動のように波浪となって理性すらも押し流してしまう。
嘗ての人類は、凶暴性を律することができなかった。
今もそうであるとも言える。
だがしかしである。
「……グ、ク、ク……」
『獣騎スライム』の体躯が凍りついている。
その粘体の如き体躯は、獣騎へと変形しても健在であった。
柔軟な体躯は、鋼鉄の巨人でありながら、水のような性質を持ち得ていた。
あらゆる隙間に入り込むこともできたし、また自在に体躯を伸縮させることもできた。
けれど、今や『獣騎スライム』は、その体躯を凍結させ、巨山の中腹にて動きを止めていた。
「……我ガ、体躯ガ、コウモ容易ク、封ジラレル、トハ……」
「スライムだろうがなんだろうが、凍ってしまえばただの固体です。如何に伸縮自在であり、変幻自在であろうとも」
冷気が満ちている。
ユーベルコードの輝きを宿した、エリー・マイヤー(被造物・f29376)は視線を凍結して動きを止められた『獣騎スライム』へと向ける。
「冷やすのって難しいんでしょね……」
彼女より放たれているのはサイキックの冷気。
凍結能力(クライオキネシス)によってエリーは『獣騎スライム』の体躯を凍結させてしまっていたのだ。
容易いことではない。
だが、エリーは『獣騎スライム』を一手、ただの一手で封じていたのだ。
攻勢に出ることもできない。
動きを止めるのみならず、『獣騎スライム』は己の体躯の奥にある核にさえ凍結が到達せんとしていることをしている。
そればかりかエリーは周囲に浮かぶ巨岩を持って、凍結した『獣騎スライム』へと叩きつけ砕く。
「凍ったものは衝撃を与えれば砕ける」
「見事……タダノ一手デ、ココマデ……!」
「ああ、先程。この程度の試練とおっしゃいましたが……どうでしょう。これもこの程度の試練と申されますか?」
今の彼等には成す術もない。
故に彼等は項垂れるようにしてエリーの前に凍結した駆体をさらしているのだ。
「イイヤ、申シ開クコトモナイ」
「でしょうね。私は、騎士道も嫌いではありません。騎士が相手なら、名乗るのもやぶさかではありません。|騎士が相手なら《・・・・・・》」
エリーはヒビ割れていく『獣騎スライム』を見上げる。
その瞳は伏せられていた。
最早見るまでもないと言わんばかりであった。
彼等は嘗ては高潔なる騎士であったのだろう。
だが、今は違う。
怨みに呑まれ、抵抗できない弱者を呪いによっていたぶった。
その時点で、エリーにとって、過去彼等が高潔であろうと、騎士であろうと関係はない。
「私は、アナタ達を騎士とは認めません」
怒り、憎しみ。
それらの呑まれ、哀しみを広げる者に騎士を名乗る資格なし。
そう告げるようにエリーは凍結した『獣騎スライム』たちを背に巨山の頂へと踏み出す。
背後で、氷結が砕ける音がしたが、彼女は最後まで振り返ることはなかった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
早速次の試練ってわけね。いいでしょ、付き合いましょ。
転がってくる岩は『鎧装豪腕』に任せて、スライム獣騎と相対。
騎士を名乗りたいなら、一対一で来なさいな、全く。
「全力魔法」無の「属性攻撃」「範囲攻撃」「精神攻撃」「封印術」で六魂幡。
あたしの纏うマントが戦場一帯に広がり、スライム獣騎達を呑み込んでいくわ。包み込まれたら、その存在は骸の海へ還ることも出来ず消滅する。
巻き付けたマントを圧縮して、中の相手を消滅させる。
気をつけるのは、地面の隙間に潜り込んで、あたしの直近へ出現する相手だけ。
「地形耐性」で、地面のひび割れに留意する。
全部片付いたかしら? それじゃあ、ワイバーンのところへ行かせてもらうわ。
目指すは巨山の頂き。
その中腹に待ち受けるのは『獣騎スライム』たちであった。
その体躯は鋼鉄。
獣騎とは、百獣族が変形した姿である。鋼鉄の巨人と見紛う体高5mはあろうかという巨体。
加えて、種族の特徴である粘体としてのスライムの力。
変幻自在に姿を変える体躯に村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は警戒する。
「早速、次の試練ってわけね」
「然リ。我ラガ障害。コレヲ退ケラレヌモノニハ、コレヨリ先ヘ行ク資格ナシ」
広がる体躯。
まるで網目のように粘体の体躯がゆかりを阻む。
加えて、周囲に浮かぶ巨岩。
落石は今も続いている。ハッキリ言って面倒な状況だ。
「いいでしょ、付き合いましょ」
彼女の傍に浮かぶ『鎧装剛腕』が落石を防ぎながら、迫る『獣騎スライム』と相対するゆかり。
「騎士を名乗りたいなら、一対一で来なさいな、全く」
「正々堂々。我ラト汝ノ力ノ差デアレバ」
これが妥当だとでも言うかのように『獣騎スライム』たちは、その体躯を広げてゆかりをと囲まんとする。
「だとしてもよ! 我は命ず。喰らえ、喰らえ、六魂幡。あらゆるものを巻き込み、欠片一つ残さずこの世から消滅させよ。我は命ず――」
六魂幡(リッコンハン)によって、彼女が纏う黒外套が戦場に広がっていく。
迫る『獣騎スライム』たちの体躯すらもすっぽりと覆う外套は、その内側にて肉体、精神、魂魄をも巻き込み消し去る。
「同胞ノ反応ガ消エタ、ダト?」
「ええ、この外套の内にて存在できるものはなし。どれだけあなたたちがスライムとしての特性を持っているのだとしても……!」
ゆかりは地面を蹴って宙に飛ぶ。
眼下の大地。
亀裂疾走る地面から『獣騎スライム』が粘性の体躯を持って迫っていたのだ。
そう来ることは予測できていた。
だからこそ、ゆかりは宙に飛び、迫る『獣騎スライム』の一撃を外套に絡め取る。
「スライムみたいな体躯、その特性を知っているのならば、当然来るわよね」
「ヌッ……!」
「骸の海に還ることなく消滅しなさいな。その怒りも憎しみも、哀しみも」
消さなければならないものがある。
解消しなければならないものもある。
どれだけ怒りと憎しみを抱えていても、それが推進力になっても行き着く先さえも定めていないのならば、迷い続けるばかりだ。
それは悲しいことだ。
ゆかりは黒外套で『獣騎スライム』を包み込み、その内側にて消滅させる。
頂きを見やる。
そこに呪いの主『獣騎ワイバーン』がいる。
「ここは全部片付いたわね……それじゃあ、呪いの主のもとへ行かせてもらうわ」
怒りと憎しみが連鎖となって呪いを生むのならば、誰かが断ち切らねばならない。
そうしなければ、いずれ世界すらも滅ぼすのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
ハロ・シエラ
試練、ですか。
岩の次はスライム……いえ、次ではなく加えて、と言うべきですかね。
良いでしょう、私は騎士でもなんでもありませんが受けて立ちます。
まずは岩を回避しながらスライムの相手をします。
複数の大きなスライムを相手取れば、如何に上手く立ち回る事が出来てもその内追い詰められてしまうでしょう。
何と言っても彼らはその肉体全てをほぼ液体のように変えてしまえます。
ある程度攻撃を受ける事は覚悟の上でギリギリまで引き付けましょう。
スライムと言う種の特性は分かりませんが、きっと剣で斬っても効果は薄い。
だとするなら、炎を使わせて貰います。
何もかも全てを焼却し……この試練、乗り越えせていただきます!
「試練、ですか」
ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)は巨山の中腹にて待ち受ける『獣騎スライム』の姿を認める。
空中に浮かぶ巨岩。
その落石が道を阻んでいたが、加えて百獣族の相手もしなければならない。
単純に敵を倒して進めばいい、ということではないのをハロは理解していただろう。
状況は何も変わっていない。
巨岩はあいも変わらず不規則に落石をもってハロの行動範囲を狭めてくる。
更に『獣騎スライム』は、その体躯を広げる。
粘体であるスライムとしての特性を鋼鉄の巨人……獣騎へと変形しても持ちえているのだ。
「此処ヨリ先ヘハ、チカラナキ者ハ、進ムニ能ワズ」
「良いでしょう、私は騎士でもなんでもありませんが受けて立ちます」
「ソノ意気ヤ良シ」
広がる粘体の体躯。
鋭く伸びた『獣騎スライム』の体躯が槍のようにハロを襲う。
まるで槍衾である。
しかも、敵は体高5m級である。体格の差もある。
「……手数が多い」
今は粘体の槍を上手く躱せている。
だが、それも手詰まりになるだろう。巨岩の落石もあるのだ。これによって徐々にハロは敵の攻撃を躱すスペースが狭まってきていることを知る。
不規則な巨岩の落石が厄介だった。
「自身の体躯の特性を充分に活かし、さらには状況も利用していますか」
「然リ。我ラガ特性ヲ理解シタノナラバ!」
注ぐような槍の体躯。
ハロは見据える。
スライムという種の特性をハロは充分には知らない。
けれど、これまでの攻勢で見えてきたものがある。
『獣騎スライム』の体躯は粘性。
水分……を多く含んでいるのだろうが、固体でもない。伸縮自在なのは、あの槍の攻撃を見れば分かる。
己が剣で切り払っても、即座に形を変えて襲いかかるところから見て、斬撃は効果が薄い
「であるのならば……」
「ナントスル!」
「何もかも全て焼却し……この試練、乗り越えさせていただきます!」
煌めくはユーベルコードの輝き。
ハロの瞳が煌めく。
手にした剣に宿るのは、魂まで焼き尽くすかのように立ち上る炎。
そう、これが彼女のユーベルコード。
「炎……!」
「ええ、逃げ場はありません、何よりそこは……私の間合いです!」
フレイム・スローワー。
剣に宿った炎が振り抜かれた瞬間、斬撃が『獣騎スライム』に叩き込まれる。
ただの斬撃では、その粘体によってまた形を取り戻すだろう。
ならばこそ、ハロは炎で持って『獣騎スライム』の体躯……その水分を全て蒸発させるのだ。
「オオオオオッ!?」
「その体躯の特性上、ほとんどが水分……なら、蒸発させてしまえば!」
焼き切るようにしてハロの斬撃が『獣騎スライム』の体躯を蒸発させ、そのコアを捉える。
ひび割れるようにしてコアが砕けて、残された体躯がブルブルと震えながら地面に落ちて動きを止めたのを見やりハロは、さらに巨山の頂きを目指して進むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アルマ・フィーリア
巨石には遠くからの『ドラグヘッド・バレト』による魔法砲撃や『ドラグヘッド・ブレイド』での魔法圏での斬撃で対応!
……そっちがボクに怒りや憎しみをぶつけるというのならそれは甘んじて受ける!けれど……あなた達がただ民を呪い、騎士を苛み、その様に己の留飲を下げる事だけを望んでいるというのなら……!!
UC!なぜか頭に浮かんだ謎の|呪文《起動コード》を唱え……全ドラグヘッド展開!『■■■-07D 竜騎咆哮』を!!その内に淀み魂を蝕む「悪意」を!ドラグリヴァーレの咆哮で!全部吹き飛ばします!
そっちが少しは落ち着いたのなら……改めてその「試練」を受けて立ち!ボク達の意地と決意を示すまでです!行きます!
迫る巨岩。
それは空中に浮かぶものであったし、時折重力を思い出したかのように落石となるものであった。
この状況下で『獣騎スライム』の相手をしなければならないのは困難であった。
『獣騎スライム』は鋼鉄の巨人へと変形している。
だが、その特性は変形しても受け継がれている。
不定形に形を自在に変え、攻撃を交わし、いなすのだ。
「我ラノ怒リヲ、憎シミヲ知ルガ良イ!!」
槍衾のように迫る『獣騎スライム』の一撃を受け止めた『ドラグリヴァーレ』に巨岩が迫る。
その巨岩を魔法砲撃が打ち砕き、巨岩の破片が雨のように降り注ぐ中、アルマ・フィーリア(鋼竜石の妖精・f44795)は叫ぶ。
「……そっちがボクに怒りや憎しみをぶつけるというのなら、それは甘んじて受ける! けれど……」
「ナラバ、ナントスル!」
「あなた達がただ民を呪い、騎士を苛み、その様に己の溜飲を下げることだけを望んでいるというのなら……!!」
「ソレノ何ガ悪イトイウノダ! 我ラガ味ワッタ、苦シミ、哀シミ、怒リヲ!!」
同じように味わせる。
因果応報である。
嘗ての人類はもういない。
復讐すべき敵がもういないのだ。だが、その血脈が世界に息づいている。
許せるわけがない。
許されて言い訳がない。
例え、人類が己たちの祖先が行った業に悔恨するのだとしても、それで何が救われるというのだ。
生命は回帰しない。
どれだけ祈り捧げたとて、戻って来る生命などないのだ。
「ユエニ、我ラガ、貴様タチヲ呪ウノダ!!」
強烈な怒りにアルマは圧倒される。
これほどまでに強烈な怒りに彼等は支配されていたのかと。けれど、アルマは思うのだ。
世界は怒りや哀しみだけではない。
人の感情がそれだけでないように、世界には多くのものが溢れている。其れを護りたいとおもうから。
「……これ……呪文……?」
アルマの頭に不意に浮かぶは起動コード。
「■■■-07D 竜騎咆哮(ドラゴニックロアー)……?」
瞬間、ドラグヘッドが開口する。
口腔に湛えられたのはユーベルコードの輝き。
機体の各部より露出した首より放たれるのは、魔力込められし咆哮。
「その内に淀み他m恣意を蝕む『悪意』を!『ドラグリヴァーレ』の咆哮で! 全部吹き飛ばします!」
炸裂する咆哮。
その一撃は『獣騎スライム』たちの心に巣食う悪意を吹き飛ばし、体躯をも岩肌にたたいつける。
「グッ……!」
「少しは落ち着いた……のなら、改めてその『試練』を受けて立ちます」
「……騎士トシテ、カ」
「あなた達が己をまだ騎士だと思うのなら! これは、ボクたちの意地と決意を示し合うこと!」
アルマは立ち上がった『獣騎スライム』と相対する。
そう、示さねばならない。
この世界には憎悪と怒りばかりではないことを。
己が胸に抱く騎士道こそが、人の心にある凶暴性を制して、正道へと進むことを。
アルマの咆哮と共に『ドラグリヴァーレ』もまた、吠えた――。
大成功
🔵🔵🔵
シャリス・ルミエール
●塩沢家
酷い目に遭いました…
気を取り直して…こほん
黒翼の機竜を駆る者よ
神すら羨む美酒を求めんとするならば、騎士の正道に従い試練を克服してみせなさ…
待ってください!
鉄の礫を無数に放つ武器なんて騎士の戦いに相応しくありません!
ミサイル…?
脚に備えた六本の鉄の槍のことですか?
槍は騎士に愛された武器の一つ
投擲は技巧を示す手段に…なんですか今の動きは!?
絶対必中の投擲武器で一方的に攻撃するなんて騎士の戦いじゃないです!
|虐殺砲《ジェノサイドバスター》!?
だめー!そこれこそ鋼鉄の咎そのものです!
いいですか?
騎士の戦いというのは正々堂々たる…話しを聞いてくださーい!
なんて乱暴な…
でも正々堂々とはしてますね…
メサイア・エルネイジェ
●塩沢家
おワイバーンをぶっ飛ばしてお酒をいただくのですわ~!
そこをどいてくださいまし~!
岩がお邪魔ですわね!
でもスカイルーラーのヴリちゃんならヒラリとお回避ですわ~!
ガンポッドでお反撃ですわ~!
いけませんの?
騎士道精神に反する?
わたくしお姫様ですわ~!
仕方ありませんわねぇ…ではミサイルですわ!
これからは逃げられませんのよ~!
ダメですの?
ではジェノサイドバスター!丸ごと消し飛ばしますわ~!
いけませんの?
あれもダメこれもダメでイライラしますわ!むきー!
なら暴力ですわ~!
ラースオブザパワー!
水っぽくても関係ございませんわ~!
飛びついてきたところを掴んでぶん投げて差し上げますわ~!
強制下山ですわ~!
「おワイバーンをぶっ飛ばしてお酒を頂くのですわ~!」
酒のためならば巨山の険しき道を往くことさえ厭わない。
酒。美酒がそこにあるのならば!
それが酒愛ずる姫君の矜持とも言えることは、メサイア・エルネイジェ(暴竜皇女・f34656)にとって、語るべくものではなかった。
むしろ、全人類全てが己と同じように酒を愛していると信じて疑わなかった。
お酒が嫌いな人なんていないでしょう?
メサイアにとっては、それが普通のことだったのだ。
ただまあ、酒に掛ける情熱というものが、彼女は人一倍強いのだ。
そんなメサイアの駆る『ヴリトラ』に抱えられて巨山の頂きを目指したシャリス・ルミエール(聖杯の乙女・f44837)は、その麗しき尊顔を蒼白にしながら、胃から込み上げてくるものをこらえていた。
「酷い目に遭いました……」
ハッキリ言って災難があっちからやってきたようなものである。
しかしながら、聖杯を持つシャリスにとって、このようなトラブルというものは、ある種必然であったかもしれない。
故に彼女は持ち直した。
「……こほん。黒翼の機竜を駆る者よ。神すら羨む美酒を求めんとするならば」
「お岩がお邪魔ですわね! ですが、ヴリちゃんスカイルーラーなら、あ、ヒラリっと!」
ぐるん、と機体が横ロールした瞬間、抱えられたシャリスはまた顔面蒼白になる。
下手なジェットコースターよりも急に加速して、急に回転するのだ。
ひねりがシャリスの三半規管というものを試していた。
このままでは乙女の尊厳がヤバい。
だが、シャリスはこらえた。こらえたのだ!
「うっ……騎士の正道に従い試練を克服してみせなさ」
「なんだか敵っぽいキャバリアがおりますわね! きゃわ、なんかネバネバした感じで投網みてーになってやがりますわ~! しゃらくせぇのですわ~!」
瞬間、『ヴリトラ』のガンポッドが弾丸をばら撒く。
投網のように体躯を変えた『獣騎スライム』がたまらずに体を伸縮させて後退した。
「鉄ノ礫……! 卑怯ナリ! 正々堂々タルヲ示セ!!」
「待ってください! それは騎士の戦いにふさわしくありません!」
「いけませんの?」
はて? とメサイアは首を傾げた。
ガンボットの牽制射撃から一気に敵を殲滅しようとしていたのに、シャリスの言葉と『獣騎スライム』の言葉にメサイアは動きを止めていた。
止めれば止まる。
暴走機関車であるメサイアにしては珍しいことであった。
「騎士道に反するのです!」
「はて?」
「駄目です!」
「わたくしお姫様でしてよ~? でもまあ、仕方在りませんわねぇ……ではミサイルですわ!」
炸裂するミサイル。
脚部に配されたミサイルは、シャリスから見れば槍のストックのようにも見えたことだろう。
あれのことならば、とシャリスは納得した。
が、放たれたミサイルの挙動を見て目を丸くする。
「な、なんなのですか!? 今の槍の動きは! ひとりでに動いて、飛んで……魔法ではありませんよね!? あれは!?」
「ターゲットロックしておりますので、絶対命中ですわ~!」
おほほのほ。
メサイアの高笑いと共に爆発が『獣騎スライム』を襲う。
その光景にシャリスは別の意味で顔面蒼白である。
「い、一方的に攻撃するなんて騎士の戦いじゃないです!」
「ミサイルのダメですの? では、ジェノサイドバスターですわ~! ここら一帯を丸ごと消し飛ばしますわ~!」
「|虐殺砲《ジェノサイドバスター》!? だめー!」
「なんですの~さっきからダメダメとダメ出しばかりして。まるでお姉様ですわ~!」
イライラしてきたメサイア。
でもちょこっと自分の姉上のことを思い出してお尻がビクっとしてしまう。
尻叩きをされたことを思い出したのかも知れない。
「それこそ鋼鉄の咎そのものです! いいですか? 騎士の戦いというのは正々堂々たる……」
「もう面倒ですわ~! むきー! もう全部暴力! 暴力で解決ですわ~!」
煌めくユーベルコード。
メサイアは堪忍袋の緒が切れた。
いや、我慢出来なかったと言ってもいい。
空より地上に立つ『獣騎スライム』へと突撃し、絡みつくであろう体躯を『ヴリトラ』のファングバイトが噛みついて持ち上げる。
粘体だろうがなんだろうが関係ないのだ。
掴めば、投げる。
それが憤怒の剛力(ラースオブザパワー)!
「強制下山でしてよ~!」
どっせい、と『獣騎スライム』を投げ放つ『ヴリトラ』。
その腕の中でシャリスは目を見開く。
話を聞いて欲しい。
このメサイアという姫はやんごとなき身分の者なのだろう。だが、あまりにも粗暴がすぎる。
聖杯の乙女よ。
そなたが抱かれし機竜を駆る者は、ただの王族である。ただし、『エルネイジェ王国』の!
「あとはお酒まで一直線ですわ~!」
「なんて乱暴な……でも正々堂々とはしてますね……」
巨山の岩肌を投げ飛ばされて転がり落ちていく『獣騎スライム』を見やりながらシャリスは、まあ……いいか、とちょっと考えることを放棄して抱えられたまま、さらに頂へと運ばれていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
燮樹・メルト
【決闘】
きちんと妨害してくるんだ。
試験とかダルいしやむわー。
でもさ、今は受けておくよ。
仮想敵としては、ちょうど良いサイズ感だしね。
UC発動、接近する敵を拒絶する反射フィールド、どこまでの威力か、集束すれば、強靭な盾の打撃に匹敵する掌打、拡散させれば広域のつゆ払い、大体コツはつかめてきた、ドンドンおいで。
騎士の試練や贖罪、メルトは直接それに関わるよりも、この世界の謎について興味がある。
それに『MICO』ちゃんが、キャバリアの世界にきたがってる、何か理由があるなら、メルトもロケーション撮影がてら、回ってみたいしね。
もっと映えるバトルも撮りたいしね!
周囲に依然浮かび続ける巨岩。
いつまた落石となって襲いくるか解らぬ状況にあって待ち受けるのは『獣騎スライム』たちであった。
体高5mの鋼鉄の巨人となっても、スライムとしての種族特性は変わりない。
あの巨体で粘性の体躯でもって迫られば、逃げ道など内容に思えた。
「きちんと妨害してくるんだ。試験とかダルいし、やむわー」
燮樹・メルト(❤️🩹やわらぎ🧬ちゃんねる💉・f44097)は、未だ学生の身分である。
試練、試験。
それから連想されるのは、いつだって面倒事ばかりであった。
まだ猟兵として事件解決に向かっていくほうが、まだ試験の大変さとしては上であるように思えたのだ。
世は面倒事だらけ。
さらに異世界に来ても試されるっていうのだから、やむなし。やむやむ。
「でもさ、今は受けておくよ」
「ナラバ、尋常ニ!」
正々堂々。
怒りと哀しみに塗れても『獣騎スライム』たちは、騎士としての戦いを望んでいる。
メルトは頷く。
それに、と思ったのだ。
面倒ごとついでに自身の駆るジャイアントキャバリア『MICO』の敵……仮想敵としては、ちょうどよいサイズなのだ。
「いくよ、『MICO』ちゃん」
煌めくユーベルコードの輝き。
バイザーの奥の瞳がきらめいて、機体の周囲に指向性の偏位相リフレクターにより敵を拒絶反射フィールドを生み出す。
粘性の体躯を槍のように偏位させた『獣騎スライム』の一撃が、フィールドに阻まれる。
「ヌ……見エヌ盾ダトデモ言ウノカ!」
「理屈は色々あるけれどさ、護るばかりじゃないよ」
メルトの言葉に応えるように『MICO』が踏み込む。
腕部、そのマニュピレーターに集約されたリフレクターが反射フィールドを伴って、まるでナックルガードのように形成される。
掌底の一撃が『獣騎スライム』の体躯を打ち上げる。
粘体であるが故に、打撃は通じないはずでる。
衝撃は粘性の体躯に伝わらないはずなのだ。だが、『MICO』の拳に集約されたフィールドは反射性。
であるのならば、打ち出した掌底は、触れずとも『獣騎スライム』の体躯を吹き飛ばすのだ。
「なるほどね。大体コツはつかめてきた、ドンドンおいで」
「……舐メルナ!」
迫る『獣騎スライム』の槍。
その悉くを弾き返しながら、メルトと『MICO』は掌底の一撃を『獣騎スライム』に叩き込んでいく。
騎士の試練、贖罪。
自分にとって、それは関わるよりも世界そのもの謎に興味がある。
加えて、己が駆るジャイアントキャバリア自体が、この世界に来たがっている。
何か理由があるのならば、とメルトは思うのだ。
「それにメルトもロケーション撮影がてら、回ってみたいしね」
もっと、もっと映えるバトルを撮りたい。
欲望に素直になることが、やむへの特効薬。メルトは、そう信じている。
そこに怒りも哀しみも介在しない。
ただただ、己の欲求に素直に。
その一撃は、『獣騎スライム』をかち上げ、さらなる頂きへの道を示すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
この世界のスライムさんは、あんまり可愛くないんですね。
どっちかというとごっつい感じです。
でもやっぱりスライムなんですねー。
不定形で『女の子の敵』的な感じは変わってないです!
でもでもー。
と、いうことはスライム特製を持ってるってことですよね。
ふつうなら苦戦しそうなヌルドロ系ですけど、
液体って音波とかとーってもよく通すんですよ!
知ってましたー?
ということで、わたしにとっては演奏を聴かせるのにはバッチリの相手です!
なにを演奏してあげちゃいましょうかー♪
ステラさん、どの楽器がいいですか?
せっかくなのでステラさんのリクエストにお応えしちゃいますよ!よ!
そろそろわたしの演奏が恋しい頃ですよね♪
ステラ・タタリクス
【ステルク】
ん~……不治の病、呪い……これらが真に同じとするならば
自身を『潔斎者』と呼ぶアハト・スカルモルド様は
『時系列的』にはどこにいるのでしょうね?
何となくハイランダーナインに『ヌル』様がいる理由が分かりそうな感じですが
ともあれまずは獣騎スライムを
何かスライムが鎧を着ているようですね
思わずルクス様をスライムの中に放り込みたい衝動に駆られますが
それは我慢しまして
ええい、ルクス様の演奏は既にその段階ではないのです!
液体に音波はよく効くというか、既に物理!
あっ、私は演奏無くても全然平気ですのでお気遣いなく!
というかフォルいらっしゃい!
音波が効くなら【ヴォワ・アンジェリク】で
仕掛けるとしましょう!
辺境騎士『スカルモルド』は、百獣族の呪いに冒された。
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の知る『アハト・スカルモルド』は不治の病にかかっていたし、またそのクローンと言われていた『ラーズグリーズ計画』の子らの一人『アハト・ラーズグリーズ』もまた同じく不治の病に冒されていた。
『アハト・ラーズグリーズ』は、病ではなく地下帝国『バンブーク第二帝国』の侵攻の折、有毒装甲から発せられる毒素でもって死亡が確認されている。
そして、『アハト』というハンドルネームで『UDC-influence』としてつくる作品そのものが呪われていた者もいる。
いずれもが呪いや不治の病といったものに苛まれている。
形は違えど、通じるものがあるというのならば、自らを『潔斎者』と呼んだ『アハト・スカルモルド』は。
「『時系列』的には、どこ、なのでしょうか?」
『憂国学徒兵』――『ハイランダー・ナイン』と呼ばれた者たち。
彼等の中に相応しくない者がいると嘗ての『ノイン』は言った。
『ヌル・ラーズグリーズ』。
彼女がいる理由。
それが今まさにステラの中で繋がりかけた瞬間、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)の声で現実に引き戻された。
「この世界のスライムさんは、あんまり可愛くないんですね。どっちかっていうとごっつい感じです」
ルクスは、眼の前にて道を阻む『獣騎スライム』を認めて、しきりにその体躯が可愛らしくない、むしろ、鋼鉄の巨人とも見紛うほどの巨体であることに息を吐き出していた。
だがしかし、スライムである所の特性を『獣騎スライム』は携えている。
粘性の体躯。
粘体であるが故に不定形。
あらゆる形に変形し、伸縮自在。
「でもやっぱりスライムなんですねー」
でもやっぱり、とは?
「不定形で『女の子の敵』的な感じは変わっていないです!」
言いがかりである。それもとんでもない風評被害ってやつである。
もしも、『獣騎スライム』が何故か服だけを溶かすとか、なんかこう触手ばっかりで手足とかをいい感じに締め上げてくれるとか、そんな漢字であったのならば、確かにルクスの語る所の女の子の敵であったのかもしれない。
だが、バハムートキャバリアにおける『獣騎スライム』は騎士である。
「不埒ナ、視線ヲ感ジル」
「スライムですからね! でもでもーということは、スライム特性は変わらないってことですよね!」
「まあ、鎧を着たスライム、と形容できますね。思わずルクス様を中に放り込みたい衝動がございます」
「なんですか、その衝動!」
「我慢しておりますので」
そういう問題かな?
「もう! 聞いて下さいよ。液体って音波とかとーってもよく通すんですよ! 知ってましたー?」
知ってますけど、とステラは返したいと思ったが、空気を読んだ。
なにか嫌な予感がした。
「ふふん、ということで、わたしにとっては演奏を聞かせるのにはバッチリの相手ってことです! ああ、何を演奏してあげまちゃいましょうかー♪」
「『獣騎スライム』様、お逃げください。二次被害でとんでもないことになります」
「二次被害ってなんですか! 音楽は癒やしですよ! あの人達が憎悪と怒りに塗れているっていうのならば、荒んだ心には音楽がしみるんです!」
「違います。ルクス様の演奏は、すでにその段階にないのです! 液体は音波よく効くというか、すでに物理でぶっ飛ばす感じです。あっ、私はえんそうなくてもぜんぜんへいきですのでおきづかいなく!」
一気にまくし立てステラは『フォルティス・フォルトゥーナ』を呼び寄せる。
「えー、ステラさん。そんなこといって、そろそろわたしの演奏が恋しいくせに! せっかくなのでステラさんのリクエストにお応えしちゃいますよ! よ!」
「結構です! フォル! その天使の歌声、ヴォワ・アンジェリクにて道を切り開きなさい!」
「あー! なんで先にやっちゃうんですか!」
『フォルティス・フォルトゥーナ』より放たれた衝撃波が、『獣騎スライム』をふっとばし、ルクスは演奏する暇もなく、道が開かれたことに憮然とした表情をする。
ステラとしては会心の一撃であった。
だが、忘れてはならない。
そう、今此処で会心の一撃を出すべきではなかった。
ルクスの演奏欲の高まり、その頂点に達する時……そう、真の強敵との戦いが、待ち受けているのだということを――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ファルシータ・フィラ
スライム……!
女性に絡ませると|あんなこと《ピー》や|こんなこと《ピー》になってしまう女の大敵!
ですがわたくしとしては、スライム×スカルモルド様を提案しますわ!!
え?騎士道?何の話?
完全なる趣味の世界ですが?
わかりました、真面目にやります
頂上への道半ばにして障害
ならばなぎ倒していくが乙女の信条!!
乙女関係ないとか言ったの、誰ですか!!
というわけでティタニア、ここで出番です!
騎士形態で参ります
わたくし、Mっ気はないのでスライムプールはご遠慮願いますわ
接近は許しません
【フェアリー・リング】で一閃
弾き返しつつ、ファータ・バラージで追撃
スライム部分よりは鎧のようなキャバリア部分を破壊していきます!
ファルシータ・フィラ(アレキサンドライト・f44730)はまたもや、顔がその、ちょっとアレな感じになっていた。
言うまでもない。
ちょっとヤバい感じのアレである。
言葉を濁しているのが、優しさだと思っていただきたい。
「スライム……!」
『獣騎スライム』を見やるファルシータの瞳は、ピンクだった。
いや、琥珀色の瞳の中になんか、こうハートマークがありそうな感じの瞳の色をしていた。
「女性に絡ませると|あんなこと《ぴー》や|こんなこと《ぴー》になってしまう女の大敵!」
風評被害がひどい。
スライムへの偏見此処に極まれリってやつである。
スライムとはもっと強敵なのだ。雑魚敵でもなければ、こうピンクな感じの妄想でよくある感じになるモンスターでもないのだ。
それにバハムートキャバリアの『獣騎スライム』は怒りに塗れていても、騎士なのだ。
正々堂々を望み、それに応えるだけの真摯さも持ち合わせた種族なのだ。
「ですがわたくしとしては、スライム×スカルモルド様を提案させていただきたいのです! 恥辱に塗れる美青年。アリでは!?」
「何ヲノタマッテイルノダ……?」
困惑が強い『獣騎スライム』。
ファルシータの妄想は止まらない。
辱めを受けた騎士『スカルモルド』を優しく手厚く看護する自分。
これもアリでは!? とファルシータは止まらなかった。
「騎士道ニ殉ジルツモリガナイノナラバ!」
広がる『獣騎スライム』の体躯。
痺れを切らしたというか、なんていうか。
「今は完全なる趣味の世界の話をしておりますのですが!」
いいから真面目にやって。約目でしょ。
「そうでした。真面目があるから不真面目がある。真面目にしている普段とのギャップ! これもまた!」
いいから。
「ふ、がっつくではございませんか。ならば、頂上への道半ばにして障害。それが『獣騎スライム』だというのならば、なぎ倒していくが乙女の信条!!」
乙女関係なくない?
というかもうファルシータは乙女というのは、そのって感じの醜態をさらしまくっているように思えてならない。
「乙女ですから! というわけで出番です、『ティアニア』!」
打ち鳴らした瞬間、騎士型へと変形した人造竜騎『ティタニア』がファルシータをコクピットに収め、シールドランスを構える。
「イザ!」
「わたくし、Mっ気はないのでスライムプールはご遠慮願いますわ」
あると思ったか、スライムプール! ない! ないから!
「接近は許しません! 受けて頂きましょう。これよりは妖精の領域。踏み入れるには相応の代償をいただきますわよ!!」
迫る『獣騎スライム』を一閃する横薙ぎの一撃。
そして、その鋼鉄の駆体を覆う鎧をエレメンタルキャノンの斉射が打ち砕く。
「こうしてはおられませんの。疾く、退いて頂きましょうか!」
ファルシータは、更に迫りくる『獣騎スライム』を前に、さらなる進撃と共に巨山の頂きを目指すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ジェラルディン・ホワイトストーン
アドリブ歓迎
お前らが獣騎スライムか。
なるほど、柔らかさを活かした戦法は便利そうだな。
ならこっちも、そっちが用意した地形を利用させてもらおうか。
流儀もアンタらに合わせるぜ。ジェラルディン・ホワイトストーンだ、行くぞ!
魔法陣を描いている隙に一気呵成に攻めるとしようか。
落石を混ぜた超次元の竜巻に、時空を揺るがす魔力を込めて攻撃に転用するぜ。
暴風が溶解液を吹き飛ばし、獣騎たちを絡めとる。
動きが鈍ったなら、そこに竜巻で巻き上げた落石を叩きつけてやるよ。
岩を避けるってんなら、やっぱ直撃すりゃ痛ぇんだろう?
それとも衝撃が効くのかね? 何にせよ、お望み通りの正面突破だ!
くらいな、ストーン・ブラスト! ってな!
「コレヨリ先ヘハ行カセヌ」
巨山の中腹にて待ち構えていたのは『獣騎スライム』たちであった。
彼等は『獣騎ワイバーン』の配下にして、同じく人類への怒りを持つ百獣族であった。
言うまでもない。
彼等の怒りの源は過去の人類の所業である。
呪いは確かに大地をも飲み込むであろうが、しかし、彼等の怒りを考えれば、それもまた無理なからぬことであっただろう。
しかし、ジェラルディン・ホワイトストーン(シャドウエルフのタイタニアキャバリア・f44830)はむしろ好戦的に受け止めていた。
「お前らが『獣騎スライム』か。なるほど、柔らかさを活かした戦法は便利そうだな」
「我ラガ体躯ヲ便利ノ一言デ片付ケルカ!」
「そりゃそうだろ!」
粘体の体躯。
それは伸縮自在であり、機動にも用いることができるであろうし、また変幻自在たる体躯は鋭い槍のような一撃を己に叩き込むこともできるだろうとジェラルディンは理解していた。
だからこそ、油断はならない。
そして加えるのならば、今の地形である。
未だに巨岩が宙に浮かび、落石となって降りしきるのだ。
この状況は、高所にて構える『獣騎スライム』たちにとって有利なる立地であるとも言える。
だが、そんなことなどジェラルディンにとってはハンデにすらなりはしないのだ。
「流儀もアンタらに合わせるぜ」
「ナラバ、名乗ラレヨ」
「ジェラルディン・ホワイトスートンだ、行くぞ!」
「来ルガ良イ、我ラ『獣騎スライム』、汝ヲ打倒シテクレル!」
一気に跳ねるようにして宙を舞う『獣騎スライム』。
広がるは魔法陣。
光を伴って描かれるそれを見上げ、ジェラルディンは嫌な予感がした。
そう、その魔法陣は腐食させる溶解液を噴出させるための初動。
であるのならば、ジェラルディンの瞳がユーベルコードに輝く。
「先手を譲るほど、驕ってはいねぇんでな! 一気呵成に行かせてもらう!」
生み出されるは超次元の渦。
落石を巻き込みながら変換された超次元の渦は、時空を揺るがすほどの魔力を込められて一気にクライシスゾーンを形成する。
「超次元ノ竜巻、ダト……!?」
「その魔法陣から放つのは、アンタらにとっては必殺の一撃だろう。だってんならさ!」
巻き上げた落石ごと超次元の竜巻が『獣騎スライム』へと叩きつけられる。
「クッ……!」
「躱すかよ! やっぱり、粘体の体躯とは言え、超次元の竜巻は怖いと見える……それに、衝撃はどうやら効くようだな!」
ジェラルディンは真正面から『獣騎スライム』へと踏み込む。
胸に騎士道を抱くもの同士であるというのならば、ジェラルディンが出来ることは多くはない。
いや、これしかないとも言えただろう。
「お望み通りの正面突破だ! 道を開けな! ストーン・ブラスト! ってな!」
巨岩を巻き込んだ超次元の渦が『獣騎スライム』を真正面から吹き飛ばし、その勢いに乗ってジェラルディンは巨山の頂へと駆け上がっていく。
時間はかけられない。
今も尚、呪いに苦しむ者がいるのならば、疾く解呪してやらねばならない。
その心と共にジェラルディンは並み居る『獣騎スライム』を蹴散らしていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
薄翅・静漓
自らを試練と称し、「打ち破れ」と言うのね
ならば――『結界領域』を展開して、正々堂々と勝負しましょう
騎士のやり方ではないかもしれない
けれど、これが私の知る真剣勝負
落石をかわしつつ、ダッシュ
痛みと苦しみを知りながら、何もできないまま終わりたくない
その想いが私を加速させる
でも、彼らの想いだって負けていないのでしょう
スピード勝負――接近の瞬間
アスリート魂を込めた『水精の剣』を一閃
浄化の刃で示すのは私の心
怒りと憎しみを知る覚悟を見せるわ
「コレヨリ先ヘ進ミタクバ、我ラヲ打チ破ッテモラオウカ」
勇気あることを。
憎しみと怒りに押し流されぬ強さを示せというように『獣騎スライム』たちは巨山の中腹にて待ち構えていた。
「自らを試練と称し、『打ち破れ』というのね」
「然り」
そう、薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は『獣騎スライム』が己の前に立ちふさがりながらも、怒りに塗れてなお、自らを試練と称したことを知る。
彼等の中にも騎士道は未だ息づいている。
怒りと哀しみに我を忘れながらも、しかし正々堂々たるを望んでいるのだ。
ならば。
「勝負しましょう」
結界領域(ケッカイリョウイキ)が周囲に広がっていく。
そう、静漓の結界は真剣勝負に相応しいフィールドを形成する。
この結界の内部にあっては、あらゆる物質は想いのう良さによって加速させ、駆け引きで持って減速させる。
疾さが戦いの根本となる領域に覆いながら、静漓は真っ直ぐに『獣騎スライム』を見据える。
「コレハ」
「騎士のやり方ではないかもしれない。けれど、これが私の知る真剣勝負」
そう、静漓にとっての真剣勝負とは、こういうものだ。
彼女が経験してきた多くの事柄。
その中にあって、最も心が燃えるもの。
このようなやり方は、『獣騎スライム』たちにとっては望むものではないのかも知れない。
静漓自身の独りよがりと言われてしまうかもしれない。
けれど、静漓は眼の前の『獣騎スライム』たちの怒りや苦しみ、そして痛みを知りながらも何も出来ないまま終わりたいとは思えなかったのだ。
なにか報いたい。
その心が、想いこそが静漓を加速させる。
「想イ……」
「そう、この結界の内にあっては、想いの強さこそが疾さに結実するもの……あなたたちの想いだって負けてはいないでしょう。なら……」
「イザ、尋常ニ」
「……勝負よ」
互いの視線が交錯する。
想いの強さは加速。
であるのならば、駆け引きは減速。
己が力を持って敵を打ち倒すことを是とするのならば、その駆け引きこそが最も想いの足かせとなることは言うまでもない。
だからこそ、静漓は己の心を燃やす。
疾さを求め、『閃光』のように駆け抜けていく背中を思う。
あの疾さは、何もにも代えがたいものだ。
だからこそ、示さねばならない。
憎しみや怒りだけではないのだと。世界にはもっと……そう、楽しいことも喜ばしいこともあるのだ。
怒りと憎しみで塗りつぶすのは、あまりにも悲しいことだ。
「我ラガ怒リト憎シミトニ相マミエル覚悟ガアルノナラバ!」
「ええ、示すわ」
静漓の手にした『水精の剣』が煌めく。
それは一瞬の交錯。
「これが、私の覚悟よ」
「……ソノ覚悟、己ガ身ヲ滅ボストシテモカ」
「ええ。あなた達の憎しみと怒りに応える。それでも滅びないと私は言えるもの」
静漓は背にて崩れ落ちる『獣騎スライム』の最期の言葉を聞き、振り返らずに巨山の頂へと駆け上がっていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
…彼奴らが獣騎とかいう奴か
ある意味お前に似てるな?
「似てないぞ☆というか逆だぞ☆あの子達はキャバリアに変身してるのであってメルシーはキャバリアが変身してるんだぞ☆」
まぁいい…それなら…戻れ
「畏まり☆」(銀髪少女が白銀の機神に
名乗りを上げるんだったな
僕は天才魔術盗賊のカシムさんだ!しくよろ!
「界導神機『メルクリウス』だよ☆メルシーって呼んでね☆」
【情報収集・視力・戦闘知識】
獣騎達の陣形と落石の状況を解析
獣騎の機体?構造を分析
特に致命傷となる部位を確実に捕捉
【念動力・武器受け・空中戦・見切り】
念動障壁展開
ルーン魔術発動
|i《氷》・|h《霰》・|z《守護》
落石と溶解液を凍結させるルーン
飛び回りながら回避し避けれないのはルーンと念動力の障壁で防ぐか迎撃
【二回攻撃・切断・電撃】
鎌剣で手足を切り裂きつつ電撃を流し動きを止め
【属性攻撃・弾幕・スナイパー】
UC発動
属性は凍結属性のミサイル
打ち込み凍結させる…が
全て致命を避け不殺徹底
お前らは聖なる決闘をやりたいんだろ
なら…其処に殺しがあったらダメだろうが
道を阻むは『獣騎スライム』。
彼等の体躯は体高5mはあろうかという鋼鉄の巨人。
例えるのならば、人型戦術兵器と同じくする規格であるとも言えただろう。
「彼奴らが獣騎とかいう奴か」
百獣族が変形して至る聖なる決闘におけるフォーマル。
それが獣騎である。
「ある意味お前に似てるな?」
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)の言葉に『メリクリウス』――『メルシー』は抗議共似ない声を上げる。
「似てないぞ☆ というか逆だぞ☆ あの子達はキャバリアに変形しているのであって、メルシーはキャバリアが変身してるんだぞ☆」
何処に違いがあるのかとカシムは思ったが、ならば、こう言うべきだろうと思い直す。
「……なら、戻れ」
「かしこまり☆」
『メルシー』の姿が同じく体高5m級の戦術兵器たる姿へと戻る。
白銀の機神『メルクリウス』の姿に『獣騎スライム』たちは立ちふさがる。
「サゾ名アル獣騎ト見受ケルガ」
「おっと、まずは名乗りを上げるんだったな。なら、名乗ってやろうじゃねーの。僕は天才魔術盗賊のカシmうさんだ! しくよろ!」
「界導神機『メルクリウス』だよ☆ メルシーって呼んでね☆」
「奇ッ怪ナ、名乗リデアルガ」
いざ、と構える『獣騎スライム』。
互いの力量を見定めるかのようにジリジリと距離が詰まっていく。
周囲には浮かぶ巨岩が不規則なタイミングで落ちては落石となって転がり落ちていく。
言うまでもなく、高所に陣取っている『獣騎スライム』の方が有利であるといえるだろう。
だが、同時に『獣騎スライム』は魔法陣を描き、溶解液を『メルクリウス』の頭上から放つのだ。
「溶解液……装甲を溶かすつもりか! 高所に陣取ってるのは、厄介だがよ!」
「しかも、駆体が粘性っていうのがね☆ でも、絶対コアとなる部分があるはずだから☆」
「てなればよ!」
念動光弾によってお溶解液を打ち払いながら、しかし、溶解液の飛沫が『メルクリウス』の装甲に飛び、その一点が溶け落ちていく。
威力は申し分ないと考えていいだろう。
「念動障壁はどうしたい!」
「障壁も溶かすみたい☆」
「じゃあ、避けるしかねーってやつだろ……けどよぉ!」
ルーン魔術を発動する。
氷、霧、守護。
それらを意味するルーンが溶解液を凍結させ、飛び回りながら『メルクリウス』は『獣騎スライム』との距離を詰める。
「受けろよ!」
鎌剣の一閃が『獣騎スライム』の四肢を切断する。
だが、電流を流しても『獣騎スライム』の切断された体躯が切り離されても意志を持つようにして『メルクリウス』へと掴みかかる。
「我ラノ体躯ヲ舐メルナ!」
「チッ、厄介なことを……! なんてな!」
カシムの瞳がユーベルコードに輝く。
超高速で放たれた弾丸。
魔法に込められたのは凍結の力。
放った一撃が『獣騎スライム』の切り離された四肢へと激突し、その体躯を凍りつかせていく。
「……ッ! 我ガ手足ヲ……!」
「凍結してしまえば、その不定形な体躯の特性は使えねぇだろ!」
「見事……トドメヲ……」
「やるかよ。お前らは聖なる決闘がやりたいんだろ。なら、其処に殺しがあったらダメだろうが」
そう言ってカシムは戦闘力を奪った『獣騎スライム』を捨て置き、巨山の頂へと迫る。
呪いの主を打倒する。
それこそが最速の道なのだ。
無駄に多くを打倒する必要ないとカシムは思い、敵の待つ頂へと足を踏み入れるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『獣騎ワイバーン』
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POW : ワイバーンテイル
【尻尾】で虚空を薙いだ地点から、任意のタイミングで、切断力を持ち敵に向かって飛ぶ【衝撃波】を射出できる。
SPD : ワイバーンスパイク
【飛竜の翼】によりレベル×100km/hで飛翔し、【装甲の厚さ】×【対象との速度差】に比例した激突ダメージを与える。
WIZ : ワイバーンブレス
【口腔】から、着弾地点で爆発する【火炎弾】を連射する。爆発は敵にダメージを、地形には【炎上】効果を与える。
イラスト:もりさわともひろ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「来たか」
巨山の頂に座す『獣騎ワイバーン』は、もはや頂きを上り詰めた猟兵達を睥睨することはなかった。
そこにあったのは勇士への称賛。
確かに怒りに我を忘れるほどの憎悪がある。
だが、それでも騎士として相対する猟兵という強敵を前にして、わずかでも怒りを忘れたようであった。
「此度の試練を乗り越えるだけの力量を持つ者であるというのならば、我が全力を持って答えねば、それこそ不敬である。我は汝らに敬意を払おう。だが……」
『獣騎ワイバーン』の体躯より迸る重圧。
やはり怒りが抑えられない。
人類。
己が同胞たちを、百獣族の全てを殺し尽くした者たちの末裔。
最早、復讐の相手はこの世にはいない。
理解していても、絶え間ない怒りの感情が『獣騎ワイバーン』の体躯を支配していく。
滅ぼさねばならない。
呪わねばならない。
人類の悉くを、呪い殺してやらねばならない。
「仁義も正道にも悖る……この怒り、憎しみ……しかして、復讐とはかくも甘美なるか。我が胸には、騎士道あれど、薄暗い歓びが満ちている……!」
怒りは正当性を持っている。
だが、行き過ぎれば、正当性すら失うだろう。
故に、『獣騎ワイバーン』は、強烈なる憎悪に翻弄されるように、その力を発露し、猟兵達を迎え撃つように巨山の空にて嘗て在りし飛翔する姿を見せつけるのだった――。
村崎・ゆかり
人類があなたたちを滅ぼしたのは、もう過去のこと。この世界の人たちはそれを悔いて、『騎士道』を作ったわ。もう同じことを繰り返さないようにと。
それでもまだ足りないというなら、あなたこそ『騎士道』に外れた悪鬼に過ぎない。
あくまで呪いを解かないつもりなら、相対し討滅する。それだけ。
「全力魔法」「召喚術」「仙術」で金蛟剪!
竜には龍。七匹の|虹色の龍《レインボウドラゴン》を剪の刃の間から召喚するわ。
四方から、「空中戦」「死角攻撃」で襲いかかりなさい。
突撃には、『鎧装豪腕』で「盾受け」「受け流し」。あたしばかり相手にしてると、虹色の竜に食い散らかされるわよ!
さあ、大人しく骸の海へ沈むのね。
巨山の頂きにて、飛竜の翼が羽ばたく。
鋼鉄の翼は風を受けて、その巨躯を更に高く舞わせるようであった。
それこそが『獣騎ワイバーン』。
百獣族の中にあっても空中戦において比類なき力を発揮する種族。
雄々しき羽ばたきは、地を這う者を逃さず、爪牙の一撃は鋭く射抜くようでもあったと言われている。
それほどのものであっても、憎しみに囚われ怒りに我を忘れて呪いを振りまく。
「人間があなたたちを滅ぼしたのは、もう過去のこと。この世界の人達はそれを悔いて『騎士道』を作ったわ」
村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)の言葉に、されど『獣騎ワイバーン』は怒りに胸を焦がすようであった。
確かに彼にも騎士道はあったのだ。
だが、今や彼の心を支配しているのは怒りと憎悪ばかり。
理屈では理解しているのだ。
「それでもだ。如何に人類が騎士道を掲げようとも、その根底にある性根とも言うべきものは拭えぬ」
「もう同じことは繰り返さないようにと心を律しているのよ」
「誰が保証する。その正しさを。人の凶暴性を律することができるか? この世界は騎士道によって悪しき者が一人とていないと言い切れるか? 言い切れまい。何処まで行っても人は人なのだ」
「まだ足りないと?」
「然り。我らの怒りを鎮めようとも、過去は変えられぬ。過去の人類が冒した大罪は贖えぬ!」
「そう、あなたこそ『騎士道』に外れた悪鬼に過ぎない。あくまで呪いを解かないつもりなら、相対し討滅する。それだけ」
構えたゆかりに『獣騎ワイバーン』は、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
そう、何処まで行っても平行線だ。
奪われた者と奪う者。
そして、此処には奪われた者しかいない。
奪ったものはすでに生命失い、この世にはいないのだ。
ならば、誰が贖えるだろう。
故に世界を護る戦いをしなければならない猟兵であるゆかりは構え、その瞳で見据える。
迫るは『獣騎ワイバーン』の遥か上空よりの一撃。
「我、この剪の託宣によりて、俗世と仙界の境を切り裂かん。現れ出でよ、幻獣の王にして魔獣の王! 疾!」
構えるは、華麗なる鋏型宝貝。
帯びる霊力によって生み出されるのは虹色の光。
否、虹色の七竜である。
放たれた竜たちは、一斉に『獣騎ワイバーン』と激突する。
互いに絡み合うようにして空中戦を繰り広げ、その火花散る戦いは、巨山の上にて華散らすかのようであった。
「受けよ、我が天空よりの一撃!」
迫るは、巨体の突撃。
砲弾のように一直線にゆかりに迫り、その一撃を『鎧装剛腕』で受け止めたゆかり、衝撃が身を打つ痛みに呻くだろう。
「くっ……あたしばかり相手にしていると……!」
七竜が『獣騎ワイバーン』に迫り、その装甲を切り裂く。
「虹色の竜に食い散らかされるわよ! さあ、大人しく骸の海に沈むのね!」
その言葉と共に『獣騎ワイバーン』は、鋭き光の輝きの中で、ゆかりの言葉通り装甲を傷つけられるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
黒髪・名捨
【心境】
「復讐という名の甘美に騎士道を曇らせた…か。」
獣騎ワイバーン、破れたりッ!!
【行動】
敵は強敵。
真面目に行くぞ。寧々、グラゼン(注:略すなの念)
『化術』で『18歳変身』した寧々と引き続きグランゼドーラに『二人乗り』で『騎乗』
寧々の『運転』で攻撃を回避しつつ、回避不可の攻撃はオレの『覇気』で形成した『オーラ防御』で受け止めダメージを最小限に抑えるぞ。
よし、『仙術』でグランゼドーラの右手を『鬼の手』に『肉体変異』
苦情は受付ねぇ。
<神壊>で全力で殴るぞ
せめて祈ろう。汝の魂に救いアレッ!!
復讐を果たす。
それは奪われたものにとって、最大の目的であろう。
それさえ遂げられるのならば生命などいらぬ。そう思わせるほどのカタルシスがあるというのならば、知性宿すが故に得られる甘美な歓びは、薄暗いものであったはずだ。
奪い、奪われる。
そのさなかにあるのはいつだって哀しみと怒り。そして憎しみばかりである。
こんな因果応報が連なって、いつの世にも争いは絶えないのだ。
「だが、それでも我が身を包むのは歓びなのだ」
『獣騎ワイバーン』が吠え猛る。
尾が振るわれ、巨山の頂きの周囲に斬撃波が現れる。
それは、駆け上がってきた黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)の駆る『グランゼドーラ』に放たれる。
凄まじい猛攻。
苛烈なる嵐のような斬撃波が『グランゼコール』を翻弄する。
しかも、躱せど躱せど斬撃波は次々と遅し掛かってくるのだ。
「復讐という名の甘美に騎士道を曇らせた……か」
なら、名捨は『獣騎ワイバーン』を睨めつける。
「『獣騎ワイバーン』、破れたりッ!!」
「未だ我は空の覇者。この巨山の頂きよりも高き空にありて、汝らを迎え撃つ者。であるのならば!」
振るわれる尾。
放たれる斬撃波の攻勢は苛烈を極めた。
『グランゼドーラ』の装甲が切り裂かれ、オーラの防御をも切り裂く一撃が機体を揺らす。
「強敵……真面目に行くぞ、『寧々』、『グラゼン』」
「略すなと申しておるが」
「それだけ余裕がないってこった。余裕綽々で戦えるほど、あれは甘くはねぇよ!」
『寧々』の操縦によおって『グランゼドーラ』は『獣騎ワイバーン』の放つ斬撃波をなんとか致命傷を避けて躱してはいるが、装甲が徐々に削られている。
「お前様、覇気でもっとどうにかならんのかえ」
「できるっていいてーところだが、ダメージを最小限に抑えるのがやっとってところだ……奴は強敵だって言ったろ!」
ジリジリと追い詰められていく『グラゼドーラ』。
「このまま我が尾、ワイバーンテイルの斬撃にて細切れにしてくれようぞ!」
迫る斬撃波の嵐。
このままでは言葉通り削られて細切れにされてしまう。
「なら、やるっきゃねーよな!」
名捨の瞳がユーベルコードに輝く。
己が鬼の手。
それを『グランゼドーラ』の右腕にて変異させる。
如何なる仙術か。
その鬼の手と化した『グランゼドーラ』の右腕が『獣騎ワイバーン』の斬撃波にて寸断される。
「お前様!」
「鬼の手に変異したのなら! できるはずだ!」
寸断された右腕。
だが、その拳は握りしめられている。
そして、名捨の仙術で再現されたマスドライバーが寸断された右腕を弾丸として乗せるのだ。
「わが拳に……砕けぬものなど……――なしッ!!!」
気合一閃。
神壊(シンカイ)でもって放たれた寸断されし右腕。
砲弾と化した一撃は、『獣騎ワイバーン』へと叩き込まれ、その身を吹き飛ばす。
「せめて祈ろう。汝の魂に救いあれッ!!」
名捨の一撃は『獣騎ワイバーン』を吹き飛ばし、その衝撃が巨山の空を覆っていた雲をも吹き飛ばすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
エルセ・リーリャ
そうか、君は悪魔で復讐を是とするんだね。
正直ボクには君達の憎しみは分からない。
ただ敵として君を倒す。それがボクの存在理由だから
堂々としているからわかりやすいね。ちゃんと見えるよ君の勇士が故にこそボクにとっては格好の標的に過ぎない。
狙いは一点、姿を晒しているから時間も十分暗殺なんて狙う必要もないくらい。
矢を最大出力で放ちその眉間を撃ち抜く!
受けたら軌道変更なんてする暇もないだろうし矢を放ったら即座に避けるよ。
貴方はここで終わりだよ。その復讐心もね・・・・
『獣騎ワイバーン』は、己を殺した人間の子孫に呪いをかけた。
それは子孫のみならず、周囲の人間を、大地をも巻き込むものだった。
怒りは嘗ての騎士道を汚すものであったし、また憎しみは怒りに焚べるものであった。
燃え上がる怒りは、世界すらも焼く炎へと成長していく。
「そうか、君はあくまで復讐を是とするんだね」
エルセ・リーリャ(星を穿つ射手・f44388)はロングボウを構え、巨山の頂きから空を舞う『獣騎ワイバーン』を見上げる。
「然り。この怒りは正当なるもの。殺された怨み、我が同胞を殺し尽くされた怒り。哀しみ、苦しみ……その全てが我を突き動かすのだ。しかし、我は知る。復讐とは、斯くも甘美なるものであるのかを」
そう、復讐は正義である。
正しき復讐は、正義の側にこそある。
『獣騎ワイバーン』は、己が正しいという歓びに酔いしれるようにして鋼鉄の巨人へと変じた体躯、その鋼鉄の翼を羽撃かせ、エルセへと一直線に迫る。
「正直、ボクには君たちの憎しみは解らない」
理解できない。
過去の来歴の全ては消去されている。
自身の記憶も曖昧。
何処に寄るべを持つべきなのか。
自身を認識する名前すらも正しいものなのかもわからない。
だが、今手にしたロングボウ『ガーンディーヴァ』こそが彼女にとって最も正しきものであった。
「ただ敵として君を倒す。それがボクの存在理由だから」
「ならば、我が敵として打倒されるがいい!!」
鋼鉄の翼によって加速した『獣騎ワイバーン』がエルセへと迫る。
巨山の頂きよりも高き空より飛来する鋼鉄の駆体。
それをエルセはユーベルコード輝く瞳で見つめていた。
集中――わずか十秒。
だが、されど十秒である。
その集中によって導き出されるのは、殲滅弓『ガーンディーヴァ』の矢の軌跡。
つがえられた矢がユーベルコードの光を伴って引き絞られる。
「見えるよ、君の勇姿が」
故に、とエルセは狙いを違えない。
そう、己が矢は星を射抜く。
どれだけまばゆく輝くのだとしても、それが標的であるのならば、射抜く。
出力の上がっていく矢。
放たれる矢と『獣騎ワイバーン』の突撃は軌道を変える必要などなかった。
互いに全力の一撃。
最大出力に到達した矢と『獣騎ワイバーン』の体躯が激突するのに時間はいらなかった。
閃光のように迸るユーベルコードの激突。
明滅する光が巨山の頂きを照らし、雷鳴の如き轟音を響かせる。
「貴方はここで終わりだよ。その復讐心もね……」
エルセは、頂に立ち、己の真横を失墜していく『獣騎ワイバーン』の姿を流し見る。
振り返ることはない。
その必要はなかった。
星を射抜くのが己の矢であるのならば、落ちる星の行方を見るまでもない。
それが、千里眼射ちたる所以。
その何恥じぬ未来はもう見えている――。
大成功
🔵🔵🔵
シャリス・ルミエール
●塩沢家
過去は消せない…罪も怒りも憎しみも…
私に出来る事は人を導く事だけ…
なので…まずはこの人を正しい騎士道に導かないと…うっぷ…
いいですか?さきほどのような武器を使ったら聖杯のお酒はあげませんからね?
聖杯の神酒を求める者よ
聖なる決闘を経て力と誇りを示しなさい
さすれば聖杯の乙女、シャリス・ルミエールの名の元に、聖杯に口づけする赦しを与えま…
だめー!
先手必勝ではありません!
ちゃんと名乗りを上げてから!
聖なる決闘とはただ勝利すればよいというものではありません
騎士の誇りを示すこと…相手を敬う気持ちや礼節を尽くす事も大切なのです
ああ!だめって言ったのに!
でもワイバーンも火炎弾を吐いているので止め難い…
メサイア・エルネイジェ
●塩沢家
おワイバーンですわ~!
やっと見付けましてよ~!
ぶっ飛ばして美味しいお酒をいただくのですわ~!
わかっておりますわ
ガンポッドもミサイルもジェノサイドバスターも使いませんのよ
お先手必勝ですわ~!
ヴリちゃんキーック!
ってこれもいけませんの!?
おシャリス様はお話しがなげぇですわねぇ…
お姉様みたいですわ
わたくしメサイアですわ!好きなものはお酒ですわ!
こちらはヴリちゃんですわ!
ちゃんと挨拶しましたのでお決闘開始ですわ~!
今度こそヴリちゃんキー…んぎゃー!
火を吐いてきましたわ!
そちらばっかりズルいですわ~!
ヴリちゃんも火を吐くのですわ!
ジェノサイドフレア!
みんな燃えてしまえばよろしいのですわ~!
過去は変わらない。
過去は消せない。
過去は拭えない。
罪も怒りも憎しみも、全てはなかったことにはならない。
だからこそ、因果応報という言葉があるのだ。
どんな物事にも因果がある。
人は、その業から逃れることはできない。
現世に生きるのならば、苦しみと哀しみが常につきまとうものである。
けれど、と思うのだ。
シャリス・ルミエール(聖杯の乙女・f44837)は聖遺物である聖杯を抱えて強く思う。
例え、苦しみ哀しみと言った負の感情が人につきまとい、その心を苛むのだとしても、それでも苦しみと哀しみを得なければ、喜びも楽しさも得られないのだ。
『獣騎ワイバーン』が、復讐を得て薄暗い歓びを得たように。
けれど、それが間違っていると。
そんな歓びばかりでは、いずれ世界すらも巻き込んで全てを苛むだけだと。
「私に出来ることは人を導くことだけ……」
できることは多くはない。
けれど、やれることはあるのだ。
「まずは、この人を正しい騎士道に導かないと……うっぷ……」
台無しである。
シャリスは己を抱える黒き機竜『ブリトラ』を駆るメサイア・エルネイジェ(暴竜皇女・f34656)を見上げる。
うっぷ、となっているのは乙女の危機であるが、この際捨て置く。
それよりも大事なことが彼女にはあるのだ。
「いいですか? さきほどのような武器を使ったら聖杯のお酒はあげませんからね?」
「わかっておりますわ。ガンポッドもミサイルもジェノサイドバスターも使いませんのよ」
「本当にわかっております?」
「もちのろんですわ~! あのやっと見つけたおワイバーンをぶっ飛ばして美味しいお酒をいただくのですわ~!」
お酒のためならば急に賢くなる者がいるように、メサイアもまた酒愛ずる姫君。
酒のためならば、どんなペナルティも甘んじて受けようってもんである。
「そういうわけで、絶対勝つのですわ~!」
飛翔する『ヴリトラ』に『獣騎ワイバーン』は即応する。
空戦において『獣騎ワイバーン』に勝てる百獣族は限られていた。空こそが彼の戦場。むしろ、得手とするところであった。
「この我を前にして空で勝利を宣言するなど、片腹痛いわ!」
シャリスは抱えられながら、凄まじい速度に臓腑が、こう、乙女なじゃない感じになりかけていたが、己が聖遺物の力を引き出さんとする懸命さがあった。
「聖杯の美酒を求める者よ。聖なる決闘をヘて力と誇りを示しなさい。さすれば聖杯の乙女、シャリス・ルミエールの名のもとに、聖杯に口づけする赦しを与え……」
荘厳な雰囲気が漂う。
胸に抱く聖杯が輝きを放とうと明滅していく。
だが、メサイアは聞いちゃいなかった。
お酒を求める心は、他のどんなものをも蔑ろにする。
それ以外何もいらんのである。
「お先手必勝ですわ~! ヴリちゃんキーック!」
「だめー!」
「なんですの!?」
シャリスの言葉に『ヴリトラ』が空中で急制動をかけて、さらにシャリスの乙女な臓腑に負担をかける。
胃の内包物が大変である。
「ってこれもいけませんの!?」
「先手必勝ではありません! ちゃんと名乗りを上げてから! 聖なる決闘とはただ勝利すればよいというものではありません。騎士の誇りを示すこと……相手を敬う気持ちや礼節を尽くすことも大切なのです。良いですか、騎士とはほまれを示すもの。其れ故に多くの敬愛を得るのです。他者から恐れられるばかりの騎士に人はついてはきません。良いですか、人は強き力に憧れを抱きます。が、心に優しさを宿すからこそ、その佇まいに心打たれるのです。他者の規範たる。其れを示すのが騎士なのです、ですから」
「おシャリス様のお話はなげぇですわねぇ……お姉様みたいですわ」
ミニマムお姉様ですわ。
でもまあ、そうしないとお酒がもらえないっていうのならば、メサイアは名乗ることにした。
なんだかんだ言っても、お酒をもらうためなら正当な対価を払わねばならないと思ったのだ。口からドバドバアルコールを出すことができるけれど、わきまえるところはわきまえねばならないのだ。
「わたくしメサイアですわ! 好きなものはお酒ですわ! こちらはヴリちゃんですわ!」
「我が名は百獣族ワイバーンが一騎『アハト』! 決闘の作法は未だ拙いが、しかし!」
交錯する二騎。
空中で放たれる炎。
その苛烈さをメサイアは知るだろう。
「んぎゃー! 火を吐いてきましたわ~|! そちらばっかりズルいですわ~!」
「卑怯と謗るか。されど、これこそが我がユーベルコード! 我が体躯の練磨の果てにて得た力なり!」
「なら、こっちも火を吐くのですわ~! ヴリちゃん、滅亡の火焔(ジェノサイドフレア)ですわ~!」
『ヴリトラ』の口腔より放たれる炎の熱線。
その一撃が『獣騎ワイバーン』を打つ。
「ああ! だめって言ったのに!」
「なんでですの~? ちゃんと、おワイバーンと同じ炎ですわよ~! あ、それ、みんな燃えてしまえばよろしいのですわ~!」
シャリスは、メサイアの言葉に頭を抱える。
でも、『獣騎ワイバーン』もまた同じ炎を使う。
なら、止めがたい。
シャリスは頭を抱え、どうしてこうなったのだと天に叫ぶのだった。
「ああ、私はどうしたら……――!」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
薄翅・静漓
百獣族の怒りは正当なもの
それを否定すること、今の私にはできないけれど
その呪いが齎すのは悲しみと憎しみの連鎖
ここで――断ち切らせてもらうわ
『騎士道とは、罪を冒さぬこと』と彼は言ったわ
けれど相反する気持ちが両立するならば
その騎士道も薄暗い悦びもあなたの真実なのでしょう
善と悪に心は揺れる
誰もが強くあり続けられないことも、分かっている
私があなたのようになる可能性だってある
それでも、あの光を『しるべ』としたからには
あの子に恥じない自分でありたい
怒りと憎しみに立ち向かいましょう
加速し、速度差を縮め
激突をかわし、光の矢で撃ち抜くわ
怒りを否定することはできない。
それは正しい怒りだからだ。奪われたものが、さりとて奪い返すこともできずに怒りの声を上げている。
『獣騎ワイバーン』は、怒りに燃えるようであった。
赤熱する装甲。
猟兵との戦いによって、その装甲は傷つき始めていた。
だが、空に在りて舞う姿は、嘗ての雄々しき戦姿そのものであったことだろう。
違うのは、そのアイセンサーに宿る怒りと憎悪である。
薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は、『獣騎ワイバーン』の怒りを否定することができないでいた。
けれど、
「その呪いがもたらすのは、悲しみと憎しみの連鎖」
「誰も彼もが、その連鎖に組み込まれているのだ。己だけが連鎖から逃れているなど、ありえぬのだ!」
空を飛翔する『獣騎ワイバーン』の声が聞こえる。
静漓は、巨山の頂にありて、その姿を見上げる。
払われた暗雲。
どこまでも青空が広がっている。こんなにも美しい青空の下であるのに、繰り広げられているのは戦いばかりであった。
こんな悲しさが、世界に広がっていく。
百獣族の怒りは正しい。
「けれど、この悲しさは違う。だから、ここで――断ち切らせてもらうわ」
騎士道とは罪を冒さぬこと。
清廉であれかし。
だが、相反する感情が天秤のように並び立つのならば、『獣騎ワイバーン』の心の内に湧き上がる薄暗い歓びもまた、彼の真なのだ。
人の心が悪性と善性を持ち、揺れ動き良心となるのならば。
「誰もが強く在り続けられないことも、わかっている。私があなたのようになる可能性だってある」
もしも、と静漓は思う。
『獣騎ワイバーン』のように己もまた奪いつくされたのならば、今のように思えるだろうか、と。
きっと思えないかも知れない。
「ならば、理解できるはずだ。復讐とは甘美なるもの。己が正しき側にあるのだという意識ばかりが肥大していく。これに抗えぬのだ!」
迫る『獣騎ワイバーン』。
どこまでも広がる青空。
煌めくユーベルコードと共に静漓めがけて鋼鉄の翼を羽ばたかせ迫る。
「それでも、あの光を、しるべ(シルベ)としたからには」
鋼鉄の翼の先に静漓は、よく見知ったものの姿を幻視した。
「あの子に恥じない自分でありたい」
『閃光』のように駆け抜けたものがいる。
間違っても、正そうとしたものがいる。
人の心の輝きは曇るだろう。けれど、磨くことでまた再び輝くのだ。
残穢の如き業がこびりつくのだとしても、人は何度でも磨き濯いでいく。
そうやって放たれた光の輝かしさを静漓は知っている。
「怒りと憎しみに立ち向かいましょう」
静漓の身より放たれる光。
悪魔の加護を纏い、一瞬で『獣騎ワイバーン』との疾さが埋まる。
敵の一撃は疾さに寄るもの。
だからこそ、静漓は互いの疾さを埋め、空にて光の矢を引き絞り、放つ。
「あの子に追いついてみせる。それが、私の」
しるべ。
放たれた光の矢と『獣騎ワイバーン』は交錯し、静漓は入れ替わるようにして大空を背に怒りと憎しみという残穢に塗れた魂を見下ろすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
ふっ……求められました。
ついに天の声さんにも演奏を求められましたよ!
求められたからには演奏するのが音楽家の心意気ですよね(どやぁ
って、ワイ……バーン?
この子ワイバーンなんですか?
なんかステラさんのとこのフォルさんっぽい感じですね。
あ、ま、まさかこの子も咥えてぶらさげる系の子だったりしますか!?
それは拒否です!のーせんきゅー!
こうなったら近づかれて咥えられる前に墜とすしかありません!
って、え?
待って待って待って!ここでフォルさんですか!?
前門のフォルさん、後門のワイバーンとか、バンジーフラグ立ってません!?
もーいやです。紐なしはいやなんです!
どっちもわたしの全力全開で墜としますー!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
さて……ここからが本番
いえ
私の敵はどっち!?
私的にはワイバーンと騎士道あふれる戦いをしたいのですが
背後からのルクス様の圧がすごい!?
演奏する気でいらっしゃいます??
たまには演奏しないかわいい勇者で居ませんか?
獣騎ワイバーン様
あなた様の行動を批判も否定もするつもりはございません
ですが、あまりにも……人間臭い
怒りのあまり、あなた様が『人間』のようになっている
悪い事ではありません
しかしやはりその怨嗟の連鎖を繋げるわけにはいかないのです
フォル!!【アン・ナンジュ・パス】で仕掛けますよ!
空での戦いならば互角に持ち込めるはずです!
後は……一緒に|滅び《力尽き》ましょうか
ルクス様の演奏でフフフ
「ふっ……求められました。ついに!」
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は勝ち誇った顔をしていた。
演奏。
それは楽器を奏でること。
言うまでもないことである。しかし、ルクスはこれまで自身の演奏を褒められたことはない。いやまあ、オブリビオンと戦う以上、その破壊音波魔法みたいなところのある演奏は大変に役立てられるところであったが。
多くの場合、苦情とか出禁を申し渡されたりと散々な目にあってきたのだ。
けれど、己の演奏を求めるものがいる。
そのたった一つの事実がルクスの尊厳を回復させたのだ。
どやぁって顔をするのもまあ、仕方のないことであったのかも知れない。
そんな回復しきったルクスの顔とは裏腹にステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の顔は青ざめていた。
ここからが本番なのだ。
巨山の頂に座す『獣騎ワイバーン』。
これを打倒さねば騎士にかけられた呪いは解けぬ。
だが、今のステラは後門のルクス、前門の『獣騎ワイバーン』なのである。
ステラの敵は二人。
そもそもルクスを敵って認識してる時点で詰んでるようなもんである。
「求められたからには演奏するのが音楽家の心意気ですよね!」
どや!
じゃない、とステラは思った。
「あの、私的には『獣騎ワイバーン』と騎士道溢れる戦いをしたいのですが」
ルクスの圧がすごい! とステラは脂汗が出る思いであった。
演奏する気だ。
めちゃくちゃやる気を出しているではないか。
「たまには演奏しない、かわいい勇者でいませんか?」
「だって、演奏してって言われたらしないと」
ね、とルクスはこんなときだけ美少女面を押し出してくる。
「決闘の最中に問答するとはな」
そんな二人に落ちる影。
それは巨山の頂よりも高く飛ぶ『獣騎ワイバーン』の姿であった。
「『獣騎ワイバーン』様。あなた様の行動を批判も否定もするつもりはございません。ですが、あまりにも……人間臭い」
「この我を人間と同列に語るか」
「ええ、怒りを覚え、しかして胸に抱く騎士道に悖る行いに懊悩しつつも、果たされる復讐に歓びを覚える。それが人間の業でなくなんだというのです。怒りのあまり、あなた様が『人間』のようになっている」
「悪しき人間と同じと語られること、それ自体が我が怒りである!!」
「悪いことでは在りません。しかし、やはりその怨嗟の連鎖は繋げさせるわけには行かないのです!」
「あのー、なんか蕁麻疹でてきたんですけどぉ」
シリアスアレルギー。
ステラの物言いもそうだったが、空気が、とルクスは思った。
しかも、ワイバーンと来た。
なんかこう、あれだな、とルクスは思った。
嫌な思い出がフラッシュバックしてきたのだ。
「この子もフォルさんみたいですよね。あ、ま、まさかこの子もくわえてぶら下げる系の子だったりしますか!? それは拒否です! のーせんきゅー!」
「最早問答無用。誹り受けて、黙ってはいられぬ!」
羽ばたく鋼鉄の翼。
その速度は凄まじいものであった。
空にありて、その戦いぶり、勇猛さは百獣族の中においても上位。
その『獣騎ワイバーン』の突撃が二人に迫っていた。
ルクスは大慌てである。
「フォル!!」
ステラの声に応えるようにして『フォルティス・フォルトゥーナ』が飛翔する。
しかもルクスを嘴の先にくわえて。
「いやー!! まってまってまってくださーい! ここでフォルさんとか聞いてないです!」
「ふふふ……一緒に|滅び《力尽き》ましょうか。ルクス様の演奏で……ふふふ」
ステラは悲壮な笑みと共にルクスを『フォルティス・フォルトゥーナ』のくちばしに咥えて飛ぶ。
ルクスの悲鳴が聞こえている。が、止まらない。
「前門のフォルさん、後門のワイバーンとか、バンジーじゃないですか! これって紐なしバンジーじゃないですか!」
「でしたら、落ちる前にがんばりましょう」
「もーいやです。紐なしはいやなんです!」
思いっきり息を吸い込んで、ルクスはバグパイプから渾身の演奏を解き放つ。
それは巨大な衝撃波となって巨山の上にて炸裂する。
音は全方位。
そして、防ぎようのない速度で『獣騎ワイバーン』を打ち据え、ルクスは高所での酸欠と相まって、演奏できたことに満足するようにして気を失うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アルマ・フィーリア
ボクが、「アルマ・フィーリア」と人造竜騎「ドラグリヴァーレ」が相手だよ
だから……その怒りも、恨みも、全部……ボクらにぶつけて来い!
距離が離れれば『ドラグヘッド・バレト』での魔法砲撃、近距離戦なら『ドラグヘッド・ブレイド』の魔法剣で応戦するよ!
そして足を止め、相手のUCの突撃を誘い(止まっていればその分向こうの突撃に有利だからね)
……『鋼竜装ミラースケイル』展開!正面から受け止め、更にドラグヘッド数本で相手に食らいつき、残りで至近距離からのUCを!その魂と矜持を蝕む甘い「毒」を、吹き飛ばす!!
……そして改めて決闘を挑むよ。だから名乗って欲しい。あなたという個の『名』を。ダメなら、ボクらが勝ったらでもいい
獣騎の力を振るうワイバーン族の戦士、スカルモルドの罪を告げる者。
……『あなた』の名を、その怒りと無念を、終わってしまった過去にせず、彼らがこれからも背負っていくためにも。
聖なる決闘において、名乗ることは己の出自、血族が如何なるかを示すことである。
戦いにおいて勝者と敗者とが決定づけられるのは、必定である。
故に勝者は己が打倒したものの名を知らねばならぬ。
敗者は、己を打倒したものを名を持って讃えねばならぬ。
決闘は何処まで言っても、結局のところ、コミュニケーションの延長線上にしかないのだ。
己が信義のため。
己が忠義のため。
騎士道とは、かくあれかし。
故に、アルマ・フィーリア(鋼竜石の妖精・f44795)は己が乗騎『ドラグリヴァーレ」とともに巨山の頂に立つ。
見上げるは空。
そして、舞う『獣騎ワイバーン』を見上げる。
「ボクが、『アルマ・フィーリア』と人造竜騎『ドラグリヴァーレ』が相手だよ」
「名乗るか、忌まわしき妖精族よ。貴様たちが人類に与しなければ、哀れに思うことがなければ、斯様なことは起こらなかったのだ。それを知って尚、我の前にて名乗るか!!」
激昂。
その怒りは尤もなことであるとアルマは身を打つ怒号を肌で感じていた。
「だから……その怒りも、怨みも、全部……ボクらにぶつけてこい!」
「どの口が語るか!!」
煌めくユーベルコード。
一閃とも言うべき疾さでもって『獣騎ワイバーン』の突進が『ドラグリヴァーレ』を打ち据える。
魔法砲撃も、魔法剣も間に合わないほどの圧倒的な速度。
足止めすらできない。
それほどまでに苛烈なる突撃であったのだ。
激突の轟音が響き渡る。
それは『ドラグリヴァーレ』の装甲をひしゃげる音であったはずだ。
だが、そのアイセンサーの煌きは未だ潰えず。
煌々と輝く光が、そこにはあったのだ。
「この一撃を止めるか!」
「受け止めると言ったよ! だから!」
そう、機体の前面に張り巡らせた『鋼竜装ミラースケイル』が『獣騎ワイバーン』の突進を受け止めていた。
だが、その代償は大きい。
全てのミラースケイルが脱落していく。
それほどまでの衝撃だったのだ。
「次はない!」
「いいや、させない!」
距離を取らんと再び鋼鉄の翼を羽撃かせた『獣騎ワイバーン』をドラグヘッドが食らいつき右葉にして迫り、絡みつくのだ。
「……改めて決闘を挑むよ。だから名乗って欲しい。あなたという個の『名』を」
これは決闘だ。
少なくともアルマにとってはそうだ。
『獣騎ワイバーン』にとっては、そうでなかったのだろう。
忌まわしき妖精族と謗る言葉には怒りが滲んでいた。それは当然だろう。わかっている。
けれど、それでも。
「獣騎の力を振るうワイバーン族の戦士、『スカルモルド』の罪を告げる者……『あなた』の名を、その怒りと無念を、終わってしまった過去にせず、彼等がこれからも背負っていくためにも」
「そんなものなどない。彼奴らに未来など!」
「それでも!!」
その真摯なる言葉に『獣騎ワイバーン』は思わずのけぞった。
身を逃すための行動であったかも知れない。だが、それでもアルマの気迫の圧されたのだ。
「我が名を知るがいい。忌まわしき者よ。これを貴様への手向けとする! 我が名は『アハト』。ワイバーンの騎士。『アハト』である!!」
羽ばたく翼。
のが連とした瞬間、アルマの瞳が輝く。
「騎士『アハト』、あなたに捧ぐ。そして、その魂と矜持を蝕む甘い『毒』を吹き飛ばしてくれるよ! 吼えて!『ドラグリヴァーレ』!!」
瞬間、炸裂するのは凄まじき咆哮。
衝撃波がほとばしり、空へと『獣騎ワイバーン』の体躯が吹き飛ばされる。
それは、薄暗い歓びを吹き飛ばす、竜騎の咆哮だった――。
大成功
🔵🔵🔵
ファルシータ・フィラ
さて
頂上まで来たわけですが
お相手はあなたですの?
細部は違えど同じ飛竜型
気が合いますわね?
空のデートにでもお誘いしたかったのですが
そういう感じでは無くて残念ですわ
敵同士が相対したならば在るのは戦いのみ
ファルシータ・フィラ、推して参りますわ!
飛竜形態で間合いを計りつつ
牽制はファータ・レイで
獣騎ワイバーン、復讐は楽しいですか?
いえ、咎めているわけではありません
あなたの怒り、憎しみ、無念――呪詛
それらの成り立ちはあまりにも正しくて
しかしその復讐は滅び以外の何をもたらすのでしょう?
ならば今を生きるわたくし達は抗うしか
勝つしかないのです!
そこです!
【オーバーブースト・マキシマイザー】!
決めてみせますわ!
衝撃に空中で身を翻し、体勢を整える『獣騎ワイバーン』。
猟兵たちのユーベルコードは空戦に優れたる獣騎でもってしても、拮抗していた。
その技量、力を『獣騎ワイバーン』は認めるところであった。
「だがしかし、人類の業とそれとは違う話である!!」
怒りが再燃する。
胸にいだいた憎悪。
呪いを持って全てを憎む心を晴らすためには、やはり甘美なる復讐の歓びがなければならない。
一度味わえば、己が正しき側にいるために力をふるい続けるだろう。
『獣騎ワイバーン』は囚われていた。
その心に満ちる歓びに。
「空のデートにお誘いしたかったのですが、そういう感じではなくて残念ですわ」
ファルシータ・フィラ(アレキサンドライト・f44730)は己の乗騎『ティタニア』とともに飛翔する。
空の戦場。
天を覆っていた雲は、戦いによって晴らされていた。
どこまでも広がる蒼天。
この美しき空のもとにて行われるのは復讐の戦い。
「相対したのならば在るのは戦いのみ。ファルシータ・フィラ、推して参りますわ!」
一瞬で加速する。
互いの速度に違いはない。
それほどまでに高速戦闘が繰り広げられていた。
空中で交錯する二騎。
激突する火花は、互いに衝撃を与えることだろう。
「ワイバーン族の騎士『アハト』。我が速度についてくるか、人造竜騎が!」
「無論ですわ!」
「ならば、この歓び満ちる我が体躯を捉えてみせよ! いいや、捉えられるものか!」
さらに上がる速度。
空中での激突に『ティタニア』の体躯が空中で体勢を崩す。
瞬間、『獣騎ワイバーン』が空中で翻り、真っ向から突進してくるのだ。
「……『獣騎ワイバーン』、復讐は楽しいですか?」
「語るべくもない! この歓びこそが! そしられる謂れなど!」
「いえ、咎めているわけではありません。あなたの怒り、憎しみ、無念――呪詛。それらの成り立ちはあまりにも正しくて、しかし、その復讐は滅び以外の何をもたらすのでしょう?」
「それ以外いらぬ! 我らは滅ぼされたのだ。滅ぼされたものは戻らぬ! ならば!!」
それを同じように味わせる。
それこそが彼等の復讐の意味なのだ。
取り戻すことなどできぬというのならば、己の胸に満ちる怒りを晴らすことだけが、最後に残されたものなのだ。
「ならば、今を生きるわたくしたちは抗うしか、勝つしかないのです!」
そう、復讐は何も生まぬという。
けれど、その復讐が怒りを晴らす。
ならば、復讐に抗するものができることもまた、唯一つ。
「そこです!」
煌めくユーベルコード。
落ちた速度を補うユーベルコード、オーバーブースト・マキシマイザーによって『ティタニア』が加速し、互いの速度の差を梅る。
「決めて見せますわ!」
放たれる互いの武装。
炸裂した爆発が、空中で散華する――。
大成功
🔵🔵🔵
エリー・マイヤー
理不尽な暴力に全てを奪われる。
その恨みは、察するに余りあるものなのでしょうが…
だからって、かつての人々と同じ道を歩もうとするとは。
皮肉なものですね。
まぁ、なんにせよ止めるので、どうでもいいのですが。
周囲をサイキックエナジーで覆い尽くし、【念動ルーム】を構築。
敵のあらゆる動きを減速し、行動を妨害します。
尻尾なんて振らせはしません。
振れたとしても、その遅さではろくに狙いもつけられないでしょう。
ついでに周囲の岩に念動力で干渉。
敵に向けて投擲し、そのまま加速して弾丸として利用します。
減速した状態ですし、防御・回避も満足にできないはずです。
敵が減速に慣れて対応し始める前に、撃てるだけ撃っときましょう。
爆発さ散華のように青空に生まれる。
それは『獣騎ワイバーン』と猟兵たちの戦いの軌跡であった。
「理不尽な暴力に全て奪われる。その怨みは、察するに余りあるものでしょうが……」
エリー・マイヤー(被造物・f29376)は、見上げる頂きの先にて舞う『獣騎ワイバーン』の姿を認める。
その身に宿した怒りは凄まじいものだ。
世界そのものを呪うかのような怒り。
正当性しかない怒りだ。
滅ぼされたから、呪う。
滅ぼされたものは戻ってこない。であるのならば、飲み込めというのか。飲み込めるものではない。
吐き出さねば、それを見ぬままに生きることなどできやしない。
ましてや『獣騎ワイバーン』はオブリビオン。
過去から今に滲み出ただけなのだ。
「だからって、かつての人々と同じ道を歩もうとするとは。皮肉なものですね」
今の『獣騎ワイバーン』は薄暗い歓びに満ちている。
復讐という正しさ。
正当性に酔いしれている。
虐げることの大義名分を振りかざす悦楽。
それは人の業である。
「まぁ、なんにせよ」
止めるだけだとエリーの瞳がユーベルコードに輝く。
空を覆うは、サイキックエナジー。
圧倒的な物量とも言えるエナジーに『獣騎ワイバーン』はようやくにして悟るだろう。
「これは……!」
「そう、もう、この空の全ては私の手の上です」
エリーは見つめる。
空を。
こんなにも青い空の下で行われているのは復讐のための戦い。
振るわれる尾から放たれる斬撃波は、すでにエリーには届かない。
ここはもう空ではない。
「念動ルーム(サイ・ルーム)……その斬撃は、私には届かない」
たしかに放った斬撃はエリーを狙っている。だが、遅々として進まないのだ。
「何故だ……我が斬撃が、いや、身体自体がこうも遅い……!?」
「これが私のサイキックエナジー。此処においてあなたの動きは、疾さとは言えない。であるのならば」
エリーは周囲に浮かぶ巨岩を念動力で持って掴み上げる。
言うまでもない。
この空間において速度は彼女の掌にある。
掴み上げた巨岩が放たれる。
空間の速度を落とすのが彼女のユーベルコードではない。
速度を自在に操ることのできることこそが、本領。
故にエリーの放った巨岩は加速し、凄まじき衝撃と共に『獣騎ワイバーン』を打ち据え、失墜させるのだ。
「防御もできないでしょう」
「くっ……まさか、この空の戦場で、この我が……!」
「減速に慣れてきましたか……さすが、というべきなのでしょうが」
逃さぬ、とエリーは無数の巨岩を操り、速度操る空間にて一斉に『獣騎ワイバーン』に叩きつけ、その装甲をひしゃげさせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ジェラルディン・ホワイトストーン
アドリブ歓迎
来たぜ、獣騎ワイバーン。
……お前、スカルモルドの祖先の名前を覚えてるんだってな。
なら、アンタの名は何て言う?
試練だと割り切って立ち塞がったスライムたちはともかく、騎士道を謳うアンタが名乗らないのは手落ちだろう。
言えよ、己の誇りを。
アンタらの憎しみは関係ねぇ、怒りも墓ん下の当人に吐き捨てとけ。
罪だ咎だ御託はいい、今やり合うのは、俺たちだろう!
正々堂々ぶつかってやるからよ、気概を見せてみろ!
ジェラルディン・ホワイトストーン、征くぜ!
とまあ意気込むのは良いが……相手は飛竜。
空中戦じゃ分が悪そうだし、『メルセデス』の精霊力で押し通すのも、俺の技量じゃまだ不安がよぎる。
となりゃ……死中に活を求むってな!
アイスレイピアを構えて、UC詠唱!
凍結攻撃で火炎弾を防ぎながら、覚悟を決めて突っ込む!
多少、いや結構爆発ダメージは負うだろうが……こちとら新参の未熟者だ。
気合いで補うしかねぇだろうよ!
失敗したらその時だ。
上手くいくなら、ワイバーンの顔に剣先を突き刺してやるさ。
どうだった、今生の戦はよ。
「来たぜ、『獣騎ワイバーン』」
ジェラルディン・ホワイトストーン(シャドウエルフのタイタニアキャバリア・f44830)は、巨岩に打ち据えられながらも体勢を整えた『獣騎ワイバーン』の眼の前に立つ。
その瞳にあるのは、未だ復讐の炎を宿す獣騎であった。
復讐の炎は、その体躯より尋常ならざる力を発露させていた。
「……お前、『スカルモルド』の祖先の名前を覚えているんだってな。なら、アンタの名は何ていう?」
ジェラルディンにとって、名は知るべきものであった。
己が胸にある騎士道。
それに則るのならば、名乗ることは最も大切なことだったのだ。
己が打ち倒すべき敵の名。
それを知らずして剣を交えることはゆるさr内。
故に、ジェラエルディンは告げる。
「騎士道を謳うアンタが名乗らぬのは、手落ちだろう」
「ヌ……」
「言えよ、己の誇りを」
其処に憎しみも怒りも関係ない。
あるのは騎士道。
清廉なる意志こそが、そこには宿る。
たしかに彼等の怒りは知るべきものであろうし、吐き出されるべきものである。
が、此処にあるのは騎士。
「アンタらの憎しみは関係ねぇ。怒りも墓の下の当人に吐き捨てとけ。罪だ咎だ御託はいい。今やり合うのは俺達だろう!」
ジェラルディンは己の乗騎と共に一歩を踏み出す。
激情が溢れている。
戦いに際しては、正々堂々とぶつかる。
それが騎士の戦い、本分。
「気概を見せてみろよ! ジェラルディン・ホワイトストーン、征くぜ!」
「ならば、名乗ろう。我が名は『アハト』、ワイバーンの騎士『アハト』である。我が名を知るのならば、空にて敵うべくもないと知るがいい!」
吹き荒れる炎。
それは吐き出された怒りであったかもしれない。
炎の弾はタイタニアキャバリア『メルセデス』へと襲いかかる。
凄まじき熱量。
加えて、空を飛翔する速度は、多くの猟兵たちの攻勢を受けたとは思えぬ速度であった。
「くっ……まだまだ力を残してやがるか……!」
炎は『メルセデス』の装甲を焼く。
精霊力だけでは同仕様もない熱量なのだ。
押し通せない。未だジェラルディンの技量では、という不安が胸をよぎる。
だが、怖気づいてどうする。
眼の前の怒りに怯えてどうする。
己は吐き出せと行ったのだ。そして『獣騎ワイバーン』、『アハト』はそれに答えたのだ。
なら、己がすべきことはなんだ。
「意地を通すってことだよなぁ!!」
踏み込む。
手にしたアイスレイピア。その輝きが煌き、炎の中に在りて、その熱を肌で感じながらディラルディンは咆える。
「永久に解けぬ凍結。冷たき貫き通す穂先。氷りて穿て」
永遠細剣(アイシクル・レイピア)。
その輝き、切っ先と共にジェラルディンは炎を切り裂く。。
「我が炎を切り裂くだと……!?」
「死中に活を求むってな! こちとら新参の未熟者って自覚はあんだよ! なら、アンタを超えるためには!」
そう、気合である。
それしかない。
失敗したときのことなど考えない。したらしたでおしまってだけのはなしだ。
だったら!
咆えるしかない。
「貫けよ! その怒りは、その怨みは、その憎しみは! えぐり穿つ!!」
放たれた切っ先の一撃が『獣騎ワイバーン』の頭部、そのフェイスガードを砕く。
「……どうよ、今生の戦はよ」
ジェラルディンは己が肌を熱する炎と共に頂に膝をつく。
だが、悪くない。
そう、悪くない。
身に抱えた想いは吐き出せばいい。そうすれば、と『獣騎ワイバーン』を見上げる。
「腹ん中の、煮凝りみてねぇな感情も、スッキリだろうが――」
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
まぁ…そりゃ恨みはあるよな
それでもまぁ…お前らを殺った奴らはもうどこにもいない
此奴らは確かに子孫だが悔いて教訓としている…つっても納得できるわけねーよな
だがそれでも…騎士道とか聖なる闘いを通すっつーなら付き合ってやる
僕は天才魔術盗賊のカシムさんだ
「界導神機『メルクリウス』だよ☆しくよろ☆」
【情報収集・視力・戦闘知識】
敵の動きと攻撃の癖
そして致命となる部位を解析
一つ聞きたいんだが…光学迷彩とか透明化とかは聖なる闘いだと邪道なのか?
まぁ今回は使わねーけど
【空中戦・念動力・弾幕・属性攻撃・スナイパー】
UC発動
速足で駆ける者
竜眼魔弾同時発動
超絶速度で飛び回り念動光弾と炎の追尾弾丸の怒涛の弾幕を展開しながらの猛攻
【二回攻撃・切断】
其処から更に迫り鎌剣による連続斬撃を叩き込む
翼や爪を切断して無力化を行う
尚致命となる部位は裂けて絶対に殺さない
聖なる決闘っつーならよ…其処に殺しがあったらいけない
殺し合いなら…手段は選んでいられないからだ
だってそうだろ…皆死にたくねーんだよ
生きたいなら…あらゆる手を尽すさ
「まぁ……そりゃ怨みはあるよな」
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は思う。
百獣族の呪い。
人類が呪われても仕方のないことであったはずだ。
女子供に至るまでの徹底した虐殺。
これを行った人類の子孫たちは酷く後悔したし、懺悔したのだろう。
だが、懺悔した相手はもういない。
贖罪の機会は、彼等自身の手で失わているのだ。
どうしようもないことだった。
だからこそ、現世に蘇った百獣族たちの怒りは正しい。
「でもよ……お前らを殺った奴らはもうどこにもいない。此奴らは確かに子孫だが、悔いて教訓としている……つっても納得できるわけねーよな」
殺されたものが、何故許さねばならぬ。
悔いたのならば、許せというのか。
赦すことすら、己たちの手の中にないのか。
怒りはみなぎるだろう。
やるせない思いばかりが募るばかりであろう。
「だがそれでも……騎士道とか聖なる決闘を通すっつーなら付き合ってやる」
カシムは『メルクリウス』の中で頷く。
何処まで行っても、結局彼等は百獣族なのだ。人間とはちがう。
如何に怒りに塗れていたとしても、復讐に喜びを見出すのだとしても、それでも彼等は、『獣騎ワイバーン』は猟兵との戦いを通して、嘗ての清廉さを取り戻そうとしている。
怒りはどこまでも人を愚かにする。
嘗ての人類が、凶暴性に塗れ、突き進んだように。
「僕は天才魔術盗賊のカシムさんだ」
「界導神機『メルクリウス』だよ☆ しくよろ☆」
「我が名は『アハト』。ワイバーンの騎士。なれば」
名乗り上げ、傷つきながらも『獣騎ワイバーン』は未だくすぶる怒りを抑えるのではなく、吐き出すようにして炎を噴出させる。
凄まじい熱量である。
これほどの熱量を放つ『獣騎ワイバーン』のちからは、言うまでもなく苛烈。
嘗て、空に在りて無類なる力を発揮したというのも頷けるものであった。
飛翔した『メルクリウス』が空をかける。
その速度もまた『獣騎ワイバーン』と比するものであったことだろう。
激突する度に火花が散る空中戦。
「戦いに邪道もクソもねーって思っていたが!」
それでもカシムは機体の姿を消さなかった。
これが聖なる決闘、正々堂々たるを求めるのならば、やはり己が力は邪道であろう。故に、真っ向から鎌剣でもって爪と牙とを迎え撃つ。
火花散り、空中で体制を整えながら、『メルクリウス』が反転し『獣騎ワイバーン』へと迫る。
「速いね、流石に☆」
「まだやれんだろ、メルシー!」
「任せてご主人サマ☆ メルシー本気出しちゃうぞ☆」
煌めくユーベルコード。
神機解放機構『界導神機』(メルクリウスフルバースト)迸る速度。
加速していく機体。
振るう鎌剣の軌跡が閃光のように走り、『獣騎ワイバーン』へと襲いかかる。
牙と爪とに激突して散る火花。
そのさなかにも連撃が迸る。
「聖なる決闘っつーならよ……其処に殺しがあったらいけない。殺し合いなら……手段を選んでいられないからだ」
カシムは呟く。
「だってそうだろ……皆死にたくねーんだよ。生きたいなら……あらゆる手を尽くすさ」
「その手段の中に、悪逆非道があってはならぬ。無道たる人間には、それがわからぬ。それゆえに!」
人は過ちを犯す。
道ならぬを知らぬものに道を説いたところで、何の意味がある。
だからこそ、嘗ての人類は咎を背負う事になったのだ。
打ち合う最中に、『獣騎ワイバーン』は思うだろう。
怒りの裏側には、どうしようもない悲しさだけが満ちている。
どの道、世界にはこんな悲しさが満ちていく。
「ならば、滅びるべきなのだ!」
「それでも生きてーって思ってしまうんだよ。人間ってやつはさ!」
だから、業は巡る。
他者の生命を食らって生きるものであればこそ、業からの解脱は至難。
因果応報の行き着く先は、その道行きは、潔斎の時を待つのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
燮樹・メルト
神さまっているのかな?
介入が中途半端でおかしいんだよ、妖精へのペナルティ、バルバロイによる代理執行、違和感が多すぎる。
ちょっと事情把握で状況のステイをお願いしたいけど、無理よな。
一度決着をつける。
【聖罰】
怒りで我を忘れるほどの怒りと呪い、オルガノンに搭載された神聖力とサイキックの力を解放、衝撃の送還をしつつ、UCパニシング・オルガノンで直線上に神聖なる送還を放つ。
拒否するものにはダメージを、そうでないものはあるべき場所への帰結を。
自動防御システムでいなしつつ、ワイバーンの憎しみと共に、この刻まれた復讐と呪いに終止符を。
騎士として誇りある終わりを。
やっぱ、慣れないわ、ヤンなるね。
はるか昔。
バハムートキャバリアには神に選ばれし種族による聖なる決闘があった。
王を戴くための戦い。
神への信仰を持って獣騎へと変形する種族。
彼等は存在する神への信仰でもって、王を決定する。
だが、そこに介入したのは、信仰持たぬ人類。
彼等は架空の生物『バハムート』を信仰することで、人造竜騎を鍛造せしめた。
たどる歴史は、後に語られる悔恨の歴史である。
「本当に神様っているのかな?」
燮樹・メルト(❤️🩹やわらぎ🧬ちゃんねる💉・f44097)は、やむわー、と呟いた。
もしも、本当に百獣族の信仰する神がいたのならば、人類の凶行を止められたのではないかと思うのだ。
獣騎へと変形する力を信仰で与えることはできても、人類の凶行を止めることはできなかった。
介入、というのならば、あまりにも中途半端なのだ。
なのに、妖精族へのペナルティはある。
そして、百獣族のオブリビオンとしての復活。
そこにメルトは違和感を覚えていた。
「ちょっと状況をステイしてほしーんだけど、無理よな」
メルトは、またやむわー、と呟いた。
どうしたって戦わなければならない。
空を見上げる。
戦いによって、曇天は晴れ渡り、蒼天が続いている。
「こんなにも空は青いのに」
戦わなければならない。
でも、そうしなければならない。
何もまだ知らない。知らないままに死ぬことはできない。
「だったら、やるしかないよね、『MICO』ちゃん! 決着をつける!」
『獣騎ワイバーン』は怒りと憎しみを吐き出し、徐々に元の清廉さを取り戻さんとしている。
だが、何処まで行ってもオブリビオンなのだ。
この世界に存在する限り、世界の破滅は免れない。
故にメルトの瞳がユーベルコードに輝く。
「システム、空間、断罪、オルガノン、葬送」
空間認識能力の発露。
己たちの周囲に疾走る斬撃波。
その速度は言うまでもない。
光輪が機体の周囲に解き放たれた瞬間、『MICO』の駆体が弾けるようにして襲い来る斬撃並みを躱す。
「我が一撃を躱すか!」
「伊達じゃないんだよね、やむけど……やむなしってやつ!」
煌めくユーベルコードが集約されていく。
『MICO』の腕部が胸部の前にて組み合わさっていく。
それは祈りを捧げるかのような姿であったことだろう。
いや、事実祈りを捧げているのかもしれない。
眼の前のオブリビオンは、『獣騎ワイバーン』は迷っている。
怒りと憎しみとに翻弄され、嘗て在りし騎士道に、その正道に戻らんという意志が猟兵たちのユーベルコードによって灌がれてきたのだ。
なら、とメルトは思う。
「元あるべき場所に帰結するんだよ。それが」
刻み込まれた復讐と呪い。
終止符を打つのならば、今しかない。
そして、それが訪れるのは、騎士として誇りある終わり、その間際にしかない。
「パニシング・オルガノン(バニシング・パニッシャー)!」
組み上げられた『MICO』の腕部から放たれる光。
あらゆるもの切断する一撃が『獣騎ワイバーン』の翼を切り裂き、爆発に飲み込む。
失墜する体躯を見やりメルトは息を吐き出す。
「やっぱ慣れないわ……ヤンなるね」
生きるとは、常に業を抱くこと。
人の身に原罪ありき。
なら、とメルトは己が見にもまた同じものが流れることを理解して、やむわー、と息を吐き出して、青空を見上げるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ハロ・シエラ
騎士道から来る怒りが、もはやその騎士道を塗りつぶそうとしているのでしょうか。
復讐に喜びを感じる、そのお気持ちは分からないでもありません。
ですがそれがあなたの本当の望みなのですか?
騎士道に則って戦うのが望みなら、私もそれに全力を尽くしましょう。
怒りに飲まれるのなら……やはり全力で戦います。
まずはユーベルコードで私も竜の力を振るいます。
飛翔し、火炎弾を回避しつつ接近しましょう。
炎上した地形なら、氷の属性攻撃を乗せたブレス攻撃で和らげる事が出来るかも知れません。
敵は装甲を纏っていますが、生き物の形である以上どこかに関節などの隙間はあるはず。
そこに鎌をねじ込み、切断してみせます!
切り裂かれた鋼鉄の翼が羽ばたく。
最早翼ではない。
片翼となっても、それでも『獣騎ワイバーン』は飛ぶ。
切断された翼の根本から噴出するのは血潮めいたものであったが、オーラのようでもあった。
そう、それが憎しみ。
怒りを骨子として憎しみがオーラの翼となって『獣騎ワイバーン』は飛翔する。
吹き荒れるような怒りは、体躯の奥底から吐き出されるべきものであると知らしめるように、炎となって巨山の岩肌を舐め尽くすようであった。
その炎の中にて、ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)は、対象的な蒼天を見上げる。
こんなにも青空が広がっているというのに、『獣騎ワイバーン』は怒りに満ちている。
その翼は、怒りのままに羽ばたくものではなかったはずだ。
「騎士道から来る怒りが、もはや騎士道を塗りつぶそうとしているのでしょうか……」
慟哭の如き咆哮が轟く。
ああ、とハロは吐息を漏らす。
あの『獣騎ワイバーン』は、復讐に歓びを見出していた。
その気持はわからないでもない。
けれど、とハロは思うのだ。
こんなにも美しい青空にて、それが『獣騎ワイバーン』の望むものなのか、と。
「それがあなたの本当の望みなのですか?」
「その望みを燃やし尽くしたのもまた人間なのだ!」
「それでもあなたは、復讐に喜びを見出した。それもまた偽らざるものでしょう」
けれど、怒りに翻弄され、憎しみにかられて飛ぶ空は、彼をもう止めることはできない。
なら、とハロは剣を掲げる。
「騎士道に則って名乗りましょう。ハロ・シエラ。私もまた全力を尽くしましょう……怒りに呑まれるのなら……やはり、全力で戦いましょう」
互いに交錯するしかない。
並び立つ事は許されない。
猟兵とオブリビオン。
互いに滅ぼし、滅ぼされる間柄でしかない。
けれど、交わるのならば、そこに想いがある。
吹き荒れる炎を受けながら、ハロは己が呪いの力を利用して軽鎧を纏う姿へと変貌する。
手にした短剣、『サーペントペイン』が大鎌へと変貌する。
背より翼が出現し、飛翔する。
ドラゴノート。
それがハロのユーベルコードであった。
「竜の力を……この一撃は、痛いですよ!」
巨山の頂きを蹴ってハロは飛ぶ。
肉薄した『獣騎ワイバーン』の姿は痛々しいものであった。
怒りに塗れ、戦うことしかできない。
呪いを掛け、嘗ての清廉さは濁り、汚れた。
けれど、その残穢を拭うのはユーベルコードの輝き。
「まだそこに、あなたの騎士道があるのなら! 私は……!」
踏み込む。
ハロの構えた大鎌の一撃は、『獣騎ワイバーン』の装甲を切り裂く。
振るわれる爪の一撃をいなしながら、空中で身を翻してハロは一閃のもとに『獣騎ワイバーン』の腕部を切り裂く。
どれだけ強固な装甲に覆われていようとも、生物として動くのならば、どこかに隙間がある。
関節などが良い例だ。
ハロの一撃は、狙い過たず『獣騎ワイバーン』の腕部の関節を滑るようにして入りこませ、切断したのだ。
「……あなたの魂の残穢、ここで注ぎ、禊としましょう。その鋼鉄の体躯から、開放されて、今再び!」
この青空の元を飛べるようにと、ハロの一閃は『獣騎ワイバーン』へと叩き込まれるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
エリアル・デハヴィランド
●POW
積年の大怨に詛呪の裁きを…か
獣騎ワイバーンよ、昂然たる空の勇士よ
貴殿の底知れぬ恨みは察するに余る
されど、私とて円卓の騎士の末席
因果の応報とはいえ、復讐に囚われ罪なき民も巻き込むのであれば見過す事は出来ない
本来ならばスカルモルド卿が此処に立つべきだろうが、今は巨山の頂に登る事も叶わぬ身
故に決闘代理人として聖なる決闘を申し込む!
決闘は正当性のみで決まらず
罪咎の懺悔のみで決まらず
ただ、結果のみが真実!
共に聖なる決闘の向上を述べ、いざ尋常に勝負!
相手は自由自在に空を駆けるが、こちらは陸戦に秀でるライオンキャバリア
山頂の僅かな足場を頼りに【みかわし】の防戦を強いられるが、好機は何れ到来する
獣機に僅かな隙が生まれた時が…その時だ
プルガトリウムを構えながら【ジャンプ】し、狙うは【急所を見抜く】事で見つけた逆鱗
如何に強固だろうとも『浄罪の聖槍』を突き入れ、内部より焼却し尽くす
人造竜機の紋章として称えられし空の勇士よ
復讐の憎悪を滅却し、高貴なる魂に戻られた貴殿の最期を見送ろう
それが私からの贖罪だ
積み重なるのは、年月だけの怨み。
詛呪は裁き。
それは復讐者の理である。
だが、同時に怨嗟に塗れた騎士道に正道はない。あるのは、取り戻すことのできない後悔ばかりである。
嘗ての人類がそうであったように、失われた生命は回帰しない。
戻らない。
どのようなことをしても、生命で贖ったとしても、戻ってはこないのだ。
だからこそ、『獣騎ワイバーン』は怒り狂った。
「『獣騎ワイバーン』よ、昂然たる空の勇士よ」
「いいや、最早我は、勇士ではない。ただの復讐者。騎士道とは相いれぬ業持つ者」
エリアル・デハヴィランド(半妖精の円卓の騎士・f44842)の言葉に『獣騎ワイバーン』は頭を振る。
腕部と鋼鉄の翼は切断されている。
だが、その傷口から溢れる赤黒いオーラが翼と腕部の代わりを果たすように煌々と禍々しい輝きを放っていた。
それが怨嗟。大怨。
エリアルはそれを知るだろう。
「貴殿の底しれぬ怨みは察するに余る。されど、私とて円卓の騎士の末席。因果の応報とは言え、復讐に囚われ罪なき民を巻き込むのであれば見過ごす事はできない」
「王戴かぬ騎士、か。されど」
そう、されど。
我が身を包む怒りは、幾度の残穢、潔斎の時を得て尚燃え盛るようであった。
「本来であれば、『スカルモルド』卿が此処に立つべきであろうが、今は巨山の頂に登ることも叶わぬ身」
そう。
これ因果と応報とであるというのならば、此処に立つべきは如何なる困難を持ってしても『スカルモルド』が来るべきであったのだ。
いや、とエリアルは気配に振り返る。
巨山の頂きへの道筋は並々ならぬもの。
されど、人造竜騎なしで辺境騎士『スカルモルド』は踏破してきていた。その息は切れ切れである。
呪い得て尚、彼は此処まで来た。
だが、戦える身ではない。それは『獣騎ワイバーン』も理解するところであろう。
彼は殺されるつもりで来たのだ。
己の生命でもって、他者への呪いを無きものとしてもらおうとでもいうのだろう。
愚かである。
「だが、愛おしきことである」
「……『獣騎ワイバーン』よ、なればこそ、決闘代理人として私は貴殿に聖なる決闘を申し込む!」
互いの瞳が交錯する。
そこにあるのは、怒りだけではなかった。憎悪でもない。
かといって、嘗て在りし騎士のほまれもない。
「決闘は正当性のみで決まらず。罪咎の懺悔のみで決まらず」
ならば、何が決するか。
言うまでもないことだ。
「ただ、結果のみが事実!」
翔るは、黄金と蒼。
ユーベルコードの煌きと共に互いの力が発露する。
咆哮が轟く。
「我が名は、エリアル・デハヴィランド。いざ、尋常に!」
「ここにワイバーン族の騎士たる『アハト』が受けよう……勝負!」
ここに嘗ての残穢は関与を許さない。
何処まで行っても辺境騎士『スカルモルド』は、踏み込めない。
かの罪は、かの咎は、彼が拭うものではない。
拭えない。
彼の祖先が冒した大罪は、子孫たる彼が濯いではならない。
それは、騎士道に悖るのではない。人道に悖る。
故に、互いに代理人。
奪われた生命と、今を生きる生命との決闘。
虚空より放たれる斬撃波に『レナード』の装甲が切り裂かれる。
空戦より放たれる一撃は鋭く、陸戦たる己の乗騎は躱しようがない。けれど、とエリアルは己が乗騎を信じる。
乾坤一擲たる一撃。
「穿つは肉体に非ず……受けよ、浄罪の聖槍(プルガトリウム)を!!」
放たれる一撃は、浄罪の炎と込められし、聖槍の一撃。
それは『獣騎ワイバーン』の負の感情――怒り、憎しみを穿つ。
失われていく禍々しきオーラ。
鋼鉄の翼はなく、失墜していくしかない。頂きと空。交錯する瞬間に『獣騎ワイバーン』は見ただろう。
人造竜騎『レナード』を駆る騎士の瞳を。
「人造竜騎の紋章として讃えられし空の勇士よ。その名は讃えられることだろう。復讐の憎悪を滅却し、高貴なる魂に戻られた貴殿の最期を見送らせていただこう」
それが、とエリアルは失墜していく嘗ての空の勇士を見やる。
霧散し、消えゆく駆体。
「それが、私からの贖罪だ」
残穢は払われた。
その名は、潔斎行路を往く。
いつしか、その魂に再びの清廉たるが輝くように――。
大成功
🔵🔵🔵