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あいつこそが音楽の天使様

#サイキックハーツ #ブレイズゲート

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#サイキックハーツ
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#ブレイズゲート


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●音楽の天使選抜試験
「♪あ~~ああ゛~~~」
 上腕二頭筋のたくましい男性が、メイド服に身を包み、お立ち台に立って、できる限りの高音で歌を歌っていた。
 ここは洞窟の中。男性のダミ声が反響し、耳を塞ぎたくなるようなヤバい状況に陥っている。
 男性が指定の曲を歌い終えると、ラジオからドラムロールを口でやる音が聞こえ始めた。
『ダラララララ……ジャン。3点です』
「くっそふざっ、うわッ!?」
 ぱかっ!
 お立ち台の上面が割れて、男性は地下牢へと落ちていく。
 それを見、悲しい顔でただただ祈る女性が一人。『暫定クリスティーヌ』、と呼ばれている者だ。
「誰か……助けて……!」

●グリモアベースにて
「よく集まってくれたね。サイキックハーツ世界で、事件だよ」
 紫の髪に、紫の狼耳。地獄化した尻尾を持つグリモア猟兵、シュミテル・エランドが端的に告げる。
「お前たちはブレイズゲートを知っているかい? ダークネス……じゃあない、オブリビオンだったね。オブリビオンが作り出したダンジョンだと思ってもらえばいい」
 つまり敵陣だ、とシュミテルは付け加えた。
「ブレイズゲートが新たに出現してね。お前たちにはそこの主であるオブリビオンを倒し、ブレイズゲートを消滅させてもらいたい」
 そのブレイズゲート周辺では、すでに人々がさらわれる事件が多発している。ブレイズゲートを消滅させなければ、被害はますます広がることだろう。
「ブレイズゲートの主は、六六六人衆59位、オペラ座の怪人。二桁台の強敵だ」
 オペラ座の怪人は、サイキックハーツ世界の小説『オペラ座の怪人』のモデルになったダークネスだ。
 生きていた頃は、巨大密室『オペラ座』を展開して殺戮劇を繰り広げていたようだが。
「人さらいにちょうどいい手下を得たみたいでね。誰かれ構わず劇に上げるんじゃあなく、今はどうやら『クリスティーヌ』役に適した人材を選んでいるところらしい」
 選抜に落ちた人々も、すぐには殺されず、群衆役に使うため今は地下牢に入れられている。まだ殺されていないということだ。
「そこでお前たちには、劇が始まる前にブレイズゲートを進み、オペラ座の怪人を見つけて討ってもらいたい」
 シュミテルは、手書きの地図を広げた。ブレイズゲートの大まかな形が描かれている。
「入り口すぐに手下たちが溜まっていてね。侵入者を発見し次第襲ってくるだろう。その手下は……、フライングメイド服、だ」
 どこか言いにくそうにしながらも、シュミテルは説明を続ける。
 フライングメイド服は、その名のとおり、メイド服型の飛行する眷属だ。メイド服を着せられた者は操られてしまう。そうして周辺から人をさらっているようだ。
「フライングメイド服は、まあ、雑魚だよ。群れてはいるが、蹴散らしてくれ。問題はそのあとだ」
 シュミテルが眉間にぎゅっとシワを寄せる。
「お前たちの技能が試される。その技能で、一定値以上を叩き出さないと、オペラ座の怪人は現れないんだ。その技能とは――技能『クリスティーヌ』」
 言っておいて、ちょっと恥ずかしかったらしい。シュミテルの目がちらちらと泳いだ。
「そっ、その技能についてはよく分からん! 予知に出たんだ、僕が作った技能じゃあないッ! とにかくッ、奥に進むと技能『クリスティーヌ』を判定するお立ち台があるから、その上で技能『クリスティーヌ』を披露してくれ! 質問は受けつけんからな!!」
 ぜぇぜぇ。
 少し息を整えてから、シュミテルは続ける。
「お立ち台の近くにいる『暫定クリスティーヌ』の点数は73点。それより高い点数の技能『クリスティーヌ』を披露すると、オペラ座の怪人が現れるという予知だ。あとはオペラ座の怪人を叩いてくれ」
 ごほん、と大げさに咳ばらいをすると、シュミテルはまっすぐ猟兵たちを見た。
「じゃあ、まとめるよ」
 ブレイズゲートへと赴き、まずはフライングメイド服の群れと戦う。
 その後、お立ち台の上で技能『クリスティーヌ』を披露し、73点以上を出す。採点基準は謎だが、説得の一種だと捉えるといいだろう。
 高得点を出すとオペラ座の怪人が現れるので、戦って倒す。強敵なので心してもらいたい。オペラ座の怪人を倒せばブレイズゲートは消滅するため、事件解決だ。
「速やかに解決すれば、捕まっている人々も無傷で助けられると予知されているよ。逆に放っておけば、大量殺戮劇が始まっちまう。人々の命はお前たちに懸かってるんだ。頼む、人々を無事に救ってくれ」
 実直にまっすぐに、シュミテルは頭を下げるのであった。


あんじゅ
 マスターのあんじゅです! 堅物人狼のシュミテルと行く、ひとつめの依頼のご案内です。
 今回の依頼は、サイキックハーツで、新たに出現したブレイズゲートに対処をするというものです。
 プレイングには、何をどうしたいか具体的にお書きください。セリフや心情を入れていただくのも大歓迎です! 技能は、技能名だけではなく、それを使ってどうするのかをお書きくださいね。
 もしプレイングに歌詞を入れる場合は、歌詞の著作権を守っていただくようお願いします。

 1章は、眷属・フライングメイド服の群れとの戦闘です。弱い敵ですが、たくさんいますのでご注意ください。

 2章は、謎技能『クリスティーヌ』の披露です。ぶっちゃけ、MSが納得するなら何でも大丈夫です。監視カメラがあり映像と音声で判定されますので、ビジュアルで勝負してもOKです。皆様の独自解釈で『クリスティーヌ』してください。コツとしては、勢いがあると高得点が出やすいです。

 3章は、六六六人衆59位オペラ座の怪人との戦闘です。二桁台ということで普通に強敵ですが、2章でクリスティーヌと認められた方は、その点を活かせば戦闘でめちゃくちゃ優位が取れます。

 本依頼も一生懸命取り組ませていただきます。皆様のご参加をお待ちしております!
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第1章 集団戦 『フライングメイド服』

POW   :    メイドネックハンギング
【首への巻き付き】でダメージを与えた対象を【メイド服の強制着用】で捕縛し、レベル秒間、締め付けによる継続ダメージを与える。
SPD   :    強制着衣
【メイド服を着るのに相応しいエスパー】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
WIZ   :    万能メイド服
自身の装備する「【メイド服(というか自分自身)】」を変形させ、防御力・回避率・状態異常抵抗率・回復力のいずれかを10倍にする。

イラスト:オリヤ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『|メイメイメイ……《着てほしいわぁ……》』
『|メイドォ……《わかるぅ……》』
 フライングメイド服たちがささやき合う、ブレイズゲート入り口付近。
 と、一着のフライングメイド服が猟兵たちの侵入に気づく。
『メイドおおおおお~~~~!!』
 その鳴き声が響けば、フライングメイド服たちがわれ先に猟兵へと襲いかかってきた。
 自分を着てほしい、その一心で。
アズロ・ヴォルティチェ
めいめいめい……?
……あなたたち、着てほしいって言ってるの?
ごめんね?わたくし絵画で影で絵の具だから。似合わないと思うよ…って、
そんなの関係なさそうだね…!?

肉体を紺碧の絵の具に変異させて、ゲートごとメイド服達を飲み込むよ。
首への巻き付きは首の無いわたくしには通用しない、メイド服を着せることも、絵の具の体には出来ない。
…はず。
戦場全体に溢れかえったわたくしからは逃げられない。
飛んで逃げようとしてもいいけど、上空だって戦場の内。飲み込めるんだよ。
言ったでしょ?
わたくしは影、普遍的無意識領域の底の底、塗りたくられた静謐。故に、それは広く、深く───あなたたちを包み込む。

───救いを見せてあげる。



 ブレイズゲート入り口内部は、洞窟のようだった。集団で飛んでいたフライングメイド服が、次々と猟兵へ襲いかかってくる。
『メイメイメイッ!』
「めいめいめい……?」
 紺碧の髪の、星月夜のように美しい少年が、こてっと首を傾げた。
 しかしその姿は仮のもの。彼はアズロ・ヴォルティチェ(『紺碧のヴォルティチェ』・f44735)、ダークネス「シャドウ」である。
 飛来したフライングメイド服に、アズロは尋ねる。
「……あなたたち、着てほしいって言ってるの?」
『メィッ!?』
 フライングメイド服たちは驚いた。
 なにせ今までそんなことを言ってもらったことがなく、強制的に自分たちを着せていたのだから。
『メイメイ、メイドォ……!』
『『『メイドォ……!!』』』
 フライングメイド服たちの期待が、否が応でも高まる。
 が。
「ごめんね? わたくし絵画で影で絵の具だから。似合わないと思うよ」
『『『めいぃ~~~……』』』
 脱力し、パサリパサリと地面に落ちていくメイド服たち。
 と思いきや、八つ当たりするかのように勢いづいて襲いかかってくるではないか!
『『『メイドおおおおお!!』』』
「って、そんなの関係なさそうだね……!? だったら……!」
 バチャッ
 美少年が、紺碧に溶けた。
 いや、この絵の具こそが彼の本当の姿。
「わたくしは影、|普遍的無意識領域《ソウルボード》の底の底、塗りたくられた静謐。故に、それは広く、深く――あなたたちを包み込む」
 絵の具はボコボコと増殖し、体積を増やしていく。ユーベルコード【|大いなる静謐《グランデ・クイエーテ》】である。
(首への巻き付きは首の無いわたくしには通用しない、メイド服を着せることも、絵の具の体には出来ない。……はず)
『メイドォ!!』
 怒り狂ったメイド服が、それでも巻きつき攻撃を仕掛けてきた。巻きついた箇所が首! 着てもらえればそれでいい! そんな気概が伝わってくる。
 絵の具に巻きつき、そのままメイド服自身をかぶせることには成功した、が……
『フラ……、イングググ……!』
 アズロはまだ、まだまだ膨れていく。
 ついに、着せられたメイド服をすっかり飲み込んだ。
『メイッ……!?』
 それを見た別のフラインドメイド服が、上へと逃げを打つ。
「逃げようとしてもいいけど、上空だって戦場の内。飲み込めるんだよ」
 増えに増えたアズロが、天井まで追い詰めたメイド服たちを、ごぽりと飲み込んだ。
『メ゛ッッ……』
 そこには――
 救済があった。
 怒っていたのが嘘のように、紺碧で塗り潰された、どこまでも続く静謐。
 その中でメイド服たちは、幸福を感じた。それはこの上なく、言い表せないほどの。
「……言ったでしょ?」
 わたくしは影、|普遍的無意識領域《ソウルボード》の底の底、塗りたくられた静謐。故に、それは広く、深く――あなたたちを包み込む。
 魂の奥底までをも包む、アズロの救済。それは心の、魂の、個の死。
 その場に残されたのは、紺碧に染まったメイド服たちだった。
 ほかのメイド服たちが奥から飛んできた。何があったかと話しかけるも、堕ちたメイド服たちは、わけの分からないうわ言を繰り返すばかり。
『|めい、めいどぉ《しずかで、しあわせなの》……』
『メ……、メイッ……』
 無事なメイド服たちが恐怖を感じたそのとき、ピチャン、と水音がした。
 メイド服が振り返ればそこには、紺碧の絵の具、アズロがいた。
「――救いを見せてあげる」

大成功 🔵​🔵​🔵​

儀水・芽亜
フライングメイド服とはまた……。私の「審美眼」で見てもなかなか凝った作りですが、まあいいです。灼滅してしまいましょう。

衣服なら燃えますよね。神楽鈴を鳴らして、「先制攻撃」の「全力魔法」炎の「属性攻撃」「範囲攻撃」を乗せた時限発火で、着実に燃やしていきましょう。さあ、盛大に燃えてください。
メイド服が近づいてきたら、「軽業」で距離を取り、捕まえられる前に「カウンター」で鴇色の炎弾を連射します。

飛ぼうが人を襲おうが、所詮布きれは布きれ。燃えてしまえば、後には何も残りません。
邪魔者を焼き尽くしたら、そのまま奥へと進みましょう。この程度の敵に手間取っているわけには行かないのです。



「フライングメイド服とはまた……」
 短めの緑の髪、神秘的な月の瞳を持つ、しかしどう見ても事務員の格好をした女性が、少し困惑気味に進み出る。
 かつて一線級の能力者であり、今は銀誓館学園の事務員を務める儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『|夢可有郷《ザナドゥ》』・f35644)だ。
『メイッ!?』
 その制服姿に、メイド服たちが反応する。なにせメイド服もまた制服、ならば着てもらえるかもしれない!
 当の芽亜は、メイド服たちとは対照的にローテンション、というか冷静だ。
「私の審美眼で見てもなかなか凝った作りですが、まあいいです。|灼滅《スレイ》してしまいましょう」
『メ゛!?』
 メイド服たちが一斉にざわっとした。彼らはオブリビオン、一度は|灼滅《スレイ》された服なのだから。
『メ……、メイドおおおおお!!』
『『『メイドおおおおお!!』』』
 今度こそ、|灼滅《スレイ》される前に着せる! メイド服の群れがわれ先にと飛んできた。
 しかし芽亜はいたって冷静である。カードを取り出し、
「衣服なら燃えますよね。|起動《イグニッション》」
 その言葉を唱えると、神楽鈴『Papagena』が右手に握られた。
 鈴を吊るした輪を三連、芯棒に連ねた形の『Papagena』。手首のスナップでシャンと鳴らせば、鴇色の炎弾がいくつも放たれる。
『メイドッ!?』
 着弾したメイド服がそこから燃え始めた。だが、だがまだ飛べる……!
 フライングメイド服たちは燃えながらも、芽亜に着てもらおうと団子状態で突っ込んでくる、が。
「あなたたちに、再びの眠りを」
 シャン。
 芽亜が『Papagena』を鳴らすと、瞬間、メイド服たちが鴇色に炸裂した。
 芽亜のユーベルコード【|時限発火《ジゲンハッカ》】である。
 固まっていたメイド服たちはひとたまりもない。炸裂がいくつも重なり、大爆発となった。
「さあ、盛大に燃えてください」
 ごうごうと燃え盛る空中のメイド服たち。
 しかしその炎の奥から、着火覚悟で追加のメイド服たちが飛び出してきた。
 炎のメイド服を、ひらりと軽く避ける芽亜。攻撃姿勢のまま無防備をさらすメイド服に、芽亜はシャンと鴇色の炎弾を見舞う。【|時限発火《ジゲンハッカ》】だ。
 襲いかかってくる次のメイド服にも、その次のメイド服にも、芽亜は着実に【|時限発火《ジゲンハッカ》】を仕掛けていく。要所で鈴を鳴らすその動きは、流麗な神楽舞によく似ていた。
 最後に芽亜は、シャン、と小気味よく『Papagena』を打ち鳴らす。
 ごぅん!!!
 狙われ続けた芽亜を中心にして、鴇色の大炸裂が起こった。
 ――果たしてその場には、芽亜だけが立っていた。その身に焼けた跡などひとつもなく。
 【|時限発火《ジゲンハッカ》】は、芽亜の任意の炎を消去できる。炸裂の際、芽亜にかかる炎だけをすべて消したのだ。
「飛ぼうが人を襲おうが、所詮布きれは布きれ。燃えてしまえば、後には何も残りません」
 その言葉のとおり、炸裂のあまりの威力に、メイド服たちは灰すらも残さずに焼滅した。
「この程度の敵に手間取っているわけには行かないのです」
 芽亜は顔色ひとつ変えず、奥へと進む。洞窟のような内部に、革靴の音が反響する。
 目指すはブレイズゲートの主、オペラ座の怪人。
 しかしその前に、謎技能『クリスティーヌ』による判定が立ち塞がるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スリサズ・シグルズ(サポート)
『主基幹機構、戦闘機関起動します』
 ウォーマシンの戦場傭兵×鎧装騎兵、21歳の男です。
 普段の口調は「普通(私、~殿、言い捨て)」、覚醒時は「秘匿システム権限人格(私、貴様、言い捨て)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!




「ミッションAスタート。ターゲット確認、交戦開始」
 ウォーマシンのスリサズ・シグルズ(シグルズシリーズ・f11317)は、夕凪重工12.7mm機関銃を手に、フライングメイド服の群れへと近づいていく。
 この程度の敵、戦略を弄するまでもない。
『メイッ!』
 スリサズを見つけ、さっそくメイド服たちが飛んできた。
 最も速かった一着が、首への巻きつき攻撃を仕掛けたが、
「…………」
『メ?』
 スリサズは特に苦しむでもない。なにせウォーマシンなのだ。
『メ、メイドォ!』
 気を取り直して、メイド服は自分をスリサズに着せる。が。
『メ……、イ、ド……ッ!』
 身長にして250cm超、装備でガッシリ体型のスリサズ相手に、メイド服はパッツンパッツン限界状態になる。
「……損傷、その他ダメージ等無し。反撃を試みる」
 ザンッ!
 サイエナジーの力場刃が、限界まで伸びきった布をやすやすと斬り裂いた。
 それは自身へ向いた攻撃でもあるが、自身を斬るほどスリサズの技術は拙くない。だがもし、力場刃が身体に触れたとして、スリサズの超重装甲はびくともしなかっただろう。
「敵装甲、ほぼゼロと確認」
『『『メイッ……!!』』』
 メイド服たちは、それを見て――歓喜した。スリサズには、着てもらえる!
『『『メイドーーーーー!!』』』
「殲滅開始」
 ガガガガガガガ!
 夕凪の機関銃が鉛の雨を吐きだす。スリサズのユーベルコード【3点バースト射撃】によって、大幅に攻撃力を吊り上げたそれは、固まって突っ込んできたフライングメイド服たちを、蜂の巣を通り越して細切れにした。
「ミッションAオーバー。ミッションBスタート」
 布きれが舞う中を、スリサズはただ奥へと駆けだす。
 『オブリビオン滅すべし』。胸の奥の最優先命令に突き動かされるように。

成功 🔵​🔵​🔴​

陰日向・千明(サポート)
「異世界のスマホってのは、こうやって使うンスよォ……!!」
◆口調
・一人称は「うち」、二人称は「あんた」、くだけた敬語をつかう
◆性質・特技
・マイペースで合理主義
・雨女
◆行動傾向
・特権階級者の車に轢かれ、事故を揉み消された恨みから黄泉返った女子高生。地元を鎮守する竜神の力を借りて受肉している
・他人より自己の利益を優先し、その世界の秩序や慣習にとらわれない傾向にあるが、なんだかんだで弱者は放っておけない
・神器化したスマホで霊界通信サービス「天孫(あまそん)」にさまざまな道具を注文して、あらゆる苦難を乗り越える
・死への恐怖心がなく、傷ついてもなお前進する様相はまさしく屍鬼
・切り札は誤発注したキャバリア



「死んでも死にきれなかったメイド服、っスかー……」
 ブレザーに身を包んだ、短めヘアのJK、陰日向・千明(きさらぎ市の悪霊・f35116)は同情の眼差しをメイド服たちに向ける。
 千明とて一度死んで黄泉返った存在。つまりは怨霊であり、確かにJKではあるが、実年齢は今年で|二十歳《ハタチ》を迎えてしまった……。
「成仏しきれないってトコは、マジに|理解す《わか》るっスよ……」
『メイドォ……』
 よよよ、と泣く動作をするメイド服。
「あっ、うちが泣かせたっスか!? わーごめんっス! 服でも生きてンスもんね!」
『メイド……』
 ……優しい。もしかしたら、千明ならメイド服を着てくれるかもしれない……!
『メ、メイドォ!』
『『『メイドォ!!』』』
 さっきまで泣いていたメイド服のみならず、大量のメイド服が一気に千明に襲いかかった。
「なンスかァァッ!? おぶぶぶぶ!」
 首を絞められ、メイド服を強制的に着せられる。何着も何着も重ね着され、千明はみるみるマトリョーシカのように膨れ上がっていく。手から神器のスマホも放してしまった。
(し、仕方ないっス……、変身、するしか……!)
 カッ!
 神気が溢れ、同時に布の裂ける音が響く。
 そこには、人々から忘れ去られた旧き竜神が鎮座していた。千明が、ユーベルコード【|竜神化生「×××××さま」《ドラコナイゼーション・アンネームド》】で変身したのである。
 竜神の胴とJKの胴では太さが違う。メイド服たちは物理的に“やぶれた”のだ。
 しゅうしゅうともとのJK姿に戻り、息をつきながら千明はスマホを拾う。
「誰も見てないっスよね? 「この姿」は正気度ロール入るっスからねー……」
 ブレザーから布きれをつまむと、ちょっと申し訳なさそうにぺこっと頭を下げてから、それを手放し、千明は奥へと走り出すのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

日留部・由穏(サポート)
由穏と申します。
これでも太陽神の生まれです。
いかなる世界であれ、オブリビオンの影に未来を曇らされる人々がいるのならば、私が手を出さない道理はありませんね。
太陽は、照らすべき者のために存在するのですから。
好き:芸術全般、各世界の学習、人々の観察
使命:人々の明るい未来を守る
【発言】ご隠居太陽神、敬語、優しい、いつも穏やかな笑み、怒りや恨みや後悔の感情が乏しく時に人を理解しきれないこともある、自らの負傷を気にしない
【戦闘パターン】視力+暗視+マヒ攻撃+光線銃で銃撃戦、アート+式神使い+アイテム折り紙で撹乱、催眠術も併用し折り紙式神を猟兵やターゲットに思わせ誘導などなど
その他何でもさせてどうぞ



「「「おかえりなさいませ、ご主人様」」」
「おや。メイドさんのお出迎えとは、豪華ですね」
 ビシッとそろってお辞儀をするメイドの列に、青年はにこにこと応じた。
 緑の作業着に長い白衣、黒いマフラー、そして陽だまりの琥珀髪。どこか食えない笑顔を浮かべた“好青年”。日留部・由穏(暁天緋転・f16866)である。
「ではご主人様……申し訳ありませんが……」
「はい」
「「「メイド服をご着用いただきます!」」」
「わぁ」
 メイドたちが由穏に襲いかかった。
 といっても、彼女たちはこの世界の一般人、エスパーである。
 ダンスを踊るように由穏はひらりひらりと避け、優しい声で質問をする。
「あなたたちは操られているのですか?」
「は、はいっ……! 助けてください……!」
「おや」
 ひらり、白衣とマントが優雅にたなびき、メイドの攻撃が空を切った。
「話ができるのですね。もしかして、目を閉じるくらいの自由はありますか?」
「えっ、あっ、できます……危ない!」
「大丈夫ですよ」
 メイドの攻撃を軽く避け、由穏はユーベルコード【|私の光《カミノヒカリ》】を発動する。太陽神としての権能を。
「さぁ、目を閉じていてくださいね? 太陽を直視するのは、お勧め致しかねますから」
「はいっ……!」
 メイド服に操られている女性たちは次々に目をつぶった。
 由穏がより深く笑う。
 するとその場が眩い光に包まれ――フライングメイド服だけが沈黙した。
 【|私の光《カミノヒカリ》】は、由穏の要求に従う者には何も起こらず、要求が理解不能ならば体力を奪い去るユーベルコード。メイド服には“目”がないため、服たちは体力を根こそぎ奪われ、一瞬のうちに全滅したのである。
「目を開けていいですよ。それはもうただのメイド服です。お似合いですよ、皆さん」
 どう反応していいか分からない褒め言葉を残して、由穏は散歩を楽しむように、奥へと歩き出すのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『びっくりドッキリ技能対決』

POW   :    溢れんばかりの情熱をぶつける

SPD   :    凄まじいまでの器用さを発揮する

WIZ   :    知恵と工夫で乗り切ってみせる

イラスト:del

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 洞窟のようなブレイズゲート内部。脇が浸水しており、舟でも移動できそうだ。幸い、歩いていける足場は続いている。
 と、広くなっている場所に出た。
 中央には、赤いビロードで飾られたお立ち台。その傍にはメイド服を着た女性と、古めかしいラジオ。お立ち台の周囲には、四台の監視カメラがあることが分かるだろう。
 ラジオと監視カメラは遠隔のサイキックで動いている。電波はもちろん、サイキックを追うことも難しそうだ。
 お立ち台の上面には切れ込みが入っており、ぱかっと開くだろうことが予想できる。
 猟兵たちの到着をカメラで見たのか、ラジオから声が聞こえてきた。
『ようこそ、音楽の天使選抜試験へ。君が私の音楽の天使、クリスティーヌですか? 君がクリスティーヌだと証明してください! ああ、よく見えるようにその台の上で頼みますよ』
儀水・芽亜
音楽の天使、ですか。天使というほど純真ではありませんが、フリッカースペードとして落選するわけにはいきません。
素直にお立ち台に上り、竪琴を取り出します。

「楽器演奏」「歌唱」で主に向かいて新しき歌をうたえを一曲。
奇をてらわず、自分の歌声で真っ向勝負です。
オペラ座の怪人が審査しているなら、オペラティックな方がいいでしょう。
インカムとアリアデバイスを通し、このユーベルコードの一番の基本である、ソプラノで歌い上げます。
聞こえましたか? いかがですか、私の音楽は?

これで落とされるようなら、聞く側の耳が腐ってます。



「音楽の天使、ですか」
 儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『|夢可有郷《ザナドゥ》』・f35644)は、オペラ座の怪人の指定どおり、お立ち台へと上った。
「天使というほど純真ではありませんが、フリッカースペードとして落選するわけにはいきません。|起動《イグニッション》」
 カードから竪琴『Playland In Sleeping』が現れ、芽亜の腕におさまる。インカム『夢+夜』は耳に、アリアデバイス『ムジカ・マキナ』は首に装着された。
 そうして、芽亜の細い指が、竪琴の弦をはじく。
 明るい前奏の終わり、芽亜がスッと息を吸った。そして――
「♪|Cantate Domino canticum novum《主に向かいて新しき歌をうたえ》」
 わっと広がる音圧。
 ソプラノの澄んだ歌声が、天上の響きを宿していた。
 芽亜のユーベルコード、いや、ユーベルコードになるほど高められた純粋な歌。聖歌【|主に向かいて新しき歌をうたえ《カンターテ・ドミノ・カンティクム・ノウム》】である。
「♪|Cantate omnis terra. Alleluja《全地よ、主に向かいてうたえ。アレルヤ》」
 それは淡々としたメロディーかもしれない。古くから伝わる聖歌なのだから。
 だがその歌声はどうだ。
 その場を満たし、胸に響き、主への喜びで染め上げる。
 暫定クリスティーヌの女性は、手を組み、膝を折った。
 ラジオからは何も聞こえてこない。聞き入っている。
「♪|Psallite Domino in cithara, in cithara et voce psalmi《琴に合わせて誉めうたえ、琴に合わせ、楽に合わせ》」
 竪琴の和音も、上へ上へと昇るベクトルを奏でる。
 芽亜の歌声は、決して強弱や抑揚で揺さぶるようなものではない。
 旋律は平凡であり平坦。
 芽亜はただただ技術の高さで、周囲を圧倒していた。
 オペラ座の怪人が審査をしているのだからと、オペラティックに歌ってはいるが、そんなことはまるで些事かのように。
 あまりに澄んでいて、聞く者の脳がからになるようなソプラノが、インカムとアリアデバイスで増幅され、天上の喜びを何度も何度も頭に、胸に、叩きつけてくる。
 暫定クリスティーヌは大粒の涙を流していた。これまでの自分を、理由もなく悔いずにはいられない。
「♪|Notum fecit Dominus, alleluja, salutare suum, alleluja《主は示された、アレルヤ、主の救いを、アレルヤ》――」
 アレルヤの祈りが、美しく伸び、豊かなままゆったりと……曲が締めくくられた。
 しん、とした。
「聞こえましたか? いかがですか、私の音楽は?」
(これで落とされるようなら、聞く側の耳が腐ってます)
 芽亜は静寂の中でも自信に満ちて立ち、結果を待つ。
 ふいにラジオから拍手が聞こえた。あざけるような色など微塵も感じられない、ただ芽亜を讃える拍手が。
『ブラバー。間違いありません、君が音楽の天使です』
 短い称賛。あの歌に、一体何をつけ足す必要があるだろうか。
「ありがとうございます」
 ぺこりとお辞儀をして、芽亜はお立ち台から下りた。
 と、よろよろと暫定クリスティーヌの女性が立ち上がり、お立ち台へと向かうではないか。フライングメイド服に操られているのだ。
「え、え、な、なに……?」
『君はクリスティーヌではありません』
「キャアアアアッ」
 ぱかっと開いたお立ち台から、女性が落ちていく。
 だが芽亜は、それをあえて見送った。
 下にいる者たちが女性を受け止めようとするのが見えたのと、|一般人《エスパー》は戦場から離れていたほうがいいと判断したためである。
『音楽の天使。すぐに会いに行きます』
「そうしてください」
 こうして芽亜は見事な歌声で、真っ向から勝負をし、音楽のひとつの頂点から心をもぎ取ってみせたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キノ・コバルトリュフ(サポート)
キノキノ、キノが来たから
もう、大丈夫だよ。
キノノ?キノだけじゃ心配だって?
マツタケ!キノには星霊の仲間がいるから大丈夫!!
トリュフ!!キノ達の活躍を見せてあげるよ。
シメジ?キノが苦戦はありえないけど、その時は一発逆転を狙っていくよ。
キノキノ、みんなよろしくね。



「キノノ? この上で歌を歌えばいいの?」
 でっかいコバルトブルーのキノコ笠をかぶった「キノコつむり」の女の子、キノ・コバルトリュフ(|キノコつむり《🍄🍄🍄🍄🍄》の星霊術士・f39074)が、ひょいとお立ち台に上がる。
 星霊バルカンのバルくんと、星霊スピカのスピちゃんも一緒に台にのぼった。
「キノキノ、キノはキノだよ、よろしくね!」
 キノがその場でくるりと回れば、紺色のスカート――菌糸服から毒の胞子が舞う。
 周囲にエスパーがいれば、ただでは済まなかっただろう。
「キノキノ、じゃあ歌うね! ♪キ~ノコ、キノキノ、キノキノコ~♪」
『ふむ……さほど上手な歌ではありませんね』
 ラジオから、オペラ座の怪人の辛口評価が聞こえてくる。
「シメジ? それなら、みんなで歌ったらもっと楽しくなるかも! エリンギっ!」
 掛け声とともに、キノは「キノコスイッチ」をぽちっとした。
 説明しよう。キノコスイッチとは、押すとどこかでキノコが生える謎のスイッチである。
 ポポポポポン、と洞窟の壁にキノコが生えていく。
 ポン、という音がラジオの先からも聞こえた。
「マツタケ! みんなで歌おう! ♪キ~ノコ、キノキノ、キノキノコ~♪」
 常人にはキノコの声は聞こえないが、キノには聞こえているのだろう。
『……おお! なんと荘厳な合唱でしょウ!』
 オペラ座の怪人の様子がおかしい。
『よくよく見れば、その可憐な姿、そしてこの天上の歌……!! ああ、君こそまさに、まさに音楽の天使ィィーーー!!』
「トリュフ! やったぁ!」
 星霊たちとともにキノがジャンプすれば、また毒胞子が散る。
 ともあれ、キノは無事に試験を突破したのだ。
『あぺ、あぺぺぺ、あぺあぺ』
 オペラ座の怪人は無事ではないかもしれない。

成功 🔵​🔵​🔴​

シン・クレスケンス(サポート)
◆人物像
落ち着いた雰囲気を持つ穏やかな青年。
窮地でも動じず冷静な状況判断で切り抜ける。

◆行動
探究心や知識欲が旺盛(どの分野でも)。
魔術の研究者でもあり、魔術とそれに通じる学問や技術に特に目がなく、それらの品や事象の情報を仕入れてはUDC『ツキ』と精霊『ノクス』を伴い、各世界を飛び回っている。
ツキ曰く、ワーカホリック。

意外とアクティブで運動能力も高く、スポーツや野外活動をしている姿も。

コンピュータを使っての情報収集の他、柔和な雰囲気と人当たりの良さで対人の情報収集や説得に回ることも。

◆口調
・シン→ステータス参照
(※使役は呼び捨て)
・ツキ→俺/お前、呼び捨て
だぜ、だろ、じゃないか?等男性的な話し方



「クリスティーヌ、ですか」
 スリーピースのスーツに身を包み、スマートフォンに指を走らせているのは、UDCエージェントのシン・クレスケンス(真理を探求する眼・f09866)だ。
 同行している闇色の狼型UDC、ツキがぶっきらぼうに尋ねた。
「前のヤツらは歌ってたぞ。お前も歌うのか?」
「そうですね。一度は正攻法を試してもいいでしょう」
 シンは落ち着き払った様子で、お立ち台に上がる。
 そして一礼し、歌い出した。ゆったりとした子守歌を。もう、誰も歌う者のない歌を。
 歌い終えると、古びたラジオから拍手が聞こえた。オペラ座の怪人だ。
『よい歌でした。技術はありませんが、温かな歌ですね』
「では?」
『いえ、君は50点です。今の歌では、音楽の天使にはほど遠い』
「でしたら、もう一度チャンスをください。変身してみせましょう」
『ほう』
 シンはスマートフォンをタップする。
『……おお! その姿、その歌声……!』
 シンの姿は何も変わっていないが、オペラ座の怪人は歓声を上げた。
 ツキが怪訝そうにシンの周りをぐるりと回り、眉根を寄せた顔をシンに向けてくる。
「おい、どうなってんだ。姿も変わってねぇし、歌も歌ってねぇだろ」
「オペラ座の怪人には、実際のクリスティーヌ役の映像を見ていただいています。監視カメラをハッキングして、ね」
「ハッキングだと?」
「ええ。この古いラジオ、旧型もいいところの監視カメラ。オペラ座の怪人は機械類に弱いとあたりをつけました。思った通りでしたね」
「はぁ……チマチマしたとこ見てんのな、お前は」
「褒め言葉だと受け取っておきましょう。そろそろ歌が終わりますね。――いかがでしたか? “僕”の歌は」
『素晴らしい! 君こそ音楽の天使です!』
「ありがとうございます」
 そう言って微笑むと、シンはお立ち台の上でお辞儀をするのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『59位オペラ座の怪人』

POW   :    ファントムダスト
【ミュージカル「オペラ座の怪人」の登場人物】を召喚し、武器憑依・範囲治癒・魅了の踊り・眠り粉散布・針剣攻撃・話し相手のいずれかを行わせる。
SPD   :    まぼろしのガルニエ宮
レベル×1体の【オペラ座の怪人の多重分身体】を召喚する。[オペラ座の怪人の多重分身体]は【音楽】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
WIZ   :    麗しきクリスティーヌの慟哭
【召喚した女性型のマネキン】から大音量を放ち、聞こえる範囲の敵全員を【意識朦朧】状態にする。敵や反響物が多い程、威力が上昇する。

イラスト:東

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『ああ、君こそ我が音楽の天使、クリスティーヌ!!』
 小舟に乗って奥から、マントの男性が出てきた。
『クリスティーヌ……がたくさんいるようですね。いいでしょう。私はすべてのクリスティーヌを愛してみせましょう! さあ、君と私の殺戮劇の開演です!』
 小舟から悠々と上がり、六六六人衆59位、オペラ座の怪人は大仰に両手を広げるのだった。
シン・クレスケンス(サポート)
◆人物像
落ち着いた雰囲気を持つ穏やかな青年。
窮地でも動じず冷静な状況判断で切り抜ける。

◆戦闘
射撃(愛用は詠唱銃だが、様々な銃器を使い分けている)と魔術による広範囲攻撃が主。
魔力の操作に長け、射撃の腕も確か。
作戦次第では、闇色の武器を召喚(UC【異界の剣の召喚】)して前衛を務めることもある。

◆特技
・情報収集
・機械の扱いにも魔術知識にも精通している

◆UDC『ツキ』
闇色の狼の姿をしており、魂や魔力の匂いを嗅ぎ分けての追跡や索敵が得意。
戦闘は鋭い牙や爪で敵を引き裂き、喰らう。

◆口調
・シン→ステータス参照
(※使役は呼び捨て)
・ツキ→俺/お前、呼び捨て
だぜ、だろ、じゃないか?等男性的な話し方



『オペラには良質のコーラスが必要です、このように!』
 オペラ座の怪人がマントを広げると、洞窟のようなブレイズゲート内に怪人の多重分身体が大量に現れた。二百体はゆうに超えているだろう。
「これは……骨が折れそうですね」
 こんな状況でも動じず、冷静に作戦を練っているのはシン・クレスケンス(真理を探求する眼・f09866)だ。
 と、同行している狼型UDC、ツキが獰猛に笑って言う。
「これ、全部喰っていいのか?」
『そう簡単に、この舞台を崩せると思わないことです! ♪アアアーーー!』
『『『♪アアアーーー!!』』』
「ぐっ!?」
 一瞬目の前が白くなる。体全て、そして脳を揺さぶるコーラスが響き渡った。
『さあクリスティーヌ! 共に歌い、殺し合いましょう!』
「こっ、こんなん食らい続けてらんねぇぞ!」
 ツキがグラグラしながら叫ぶ。ダメージが深いのはシンも同じだった。
 さすがは六六六人衆59位。
 そこでシンは一計を案じた。
「次は僕の歌をお聞かせしましょう。先ほどの歌は声出しのようなもの。次は本気で歌います。ご清聴願えますか?」
『先ほどが本気ではないと……!』
『『『ええ、クリスティーヌ! もちろんですとも!』』』
 しん……とする。
「ツキ。もうあの音は飛んできませんから、好きなだけ喰らってください」
「本当か! ビュッフェだな!」
 ツキの鋭い牙と爪が、怪人たちを切り裂いていく。切れば切るほど、ツキの命中力と威力が増す。ユーベルコード【|猟犬の嗅覚《セントハウンド》】の効果だ。
『クリスティーヌ! 歌はまだですか!? いつまで黙っていれば!?』
「もう少しです、まだ黙っていてください」
『クリスティーーーヌ!! グハッ!!』
 二百体分の威力を乗せたツキの爪が本体を捉え、鮮血が舞う。
 強敵を相手に、有効打を叩き込んでみせたのだ。ツキの力に、シンの頭。ふたつ揃えば敵などない、そう証明するように。

成功 🔵​🔵​🔴​

北条・優希斗(サポート)
『敵か』
『アンタの言う事は理解できる。だから俺は、殺してでも、アンタを止めるよ』
『遅いな』
左手に『蒼月』、右手に『月下美人』と言う二刀流を好んで戦う剣士です。
自らの過去を夢に見ることがあり、それを自身の罪の証と考えているため、過去に拘りと敬意を持っております。その為オブリビオンに思想や理想があればそれを聞き、自分なりの回答をしてから斬ります。
又、『夕顔』と呼ばれる糸で敵の同士討ちを誘ったり『月桂樹』による騙し討ちを行なったりと絡め手も使います。
一人称は『俺』、口調は年上には『敬語』、それ以外は『男性口調』です。
見切り、残像、ダッシュ等の機動性重視の回避型の戦い方をします。



「ダークネスのオブリビオンか」
 それは|全能計算域《エクスマトリックス》で救えなかった者の末路。
 二刀流の剣士、北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)は、左手の刀「蒼月・零式」をギュッと握りしめる。
 蒼月はある娘の涙から生まれた魔刀だ。闇に堕ちた娘――そして救えず殺した罪――。ダークネスを前にすれば嫌でも思い起こしてしまう。
『君も私の美しい舞台を邪魔しようというのですか?』
 オペラ座の怪人は、大仰に悲しんでみせた。
「演技はいい。アンタはなぜ、舞台にこだわるんだ?」
 怪人は、目をぱちくりとさせる。優希斗が真面目な様子なだけに、なんだか肩透かしを食らった気分だ。
『それを知ってどうするのですか? それと、“美しい”舞台ですよ、私がこだわるのは』
「アンタのことを分かりたいんだ。なぜ美しい舞台にこだわる?」
 戦うでもなく、それどころか、敬意を払うような優希斗の言葉に、怪人は眉根をひそめた。
『……理由など、遠い過去に捨ててきましたよ。それよりも!』
 怪人がマントをバサッと広げれば、二百体を超える怪人の多重分身体が現れるではないか。
『この美しい舞台を、君も味わい、喜びのうちに昇天なさい! ♪アアアーーー!』
『『『♪アアアーーー!!』』』
「ぐっ……!」
 二百人のコーラスが、優希斗の脳を揺さぶる。
 ぐらぐらしながら、しかし優希斗が思うのは怪人のことだ。
「捨ててきた……ね。そんなふうにフタをして、アンタが本当に浮かばれるとは思えない。手荒だけど、教えてもらうよ」
 そう告げるや、優希斗の影が無数の鬼灯に形を変え、一斉に放たれた。優希斗のユーベルコード【|影技《エイギ》・|夢幻深傷心《ムゲンシンショウシン》】である。
 鬼灯に触れた分身の一体が、ガクリと膝をついた。
『い、イヤ……見ないで……笑わないで、ボクの顔を見て笑わないで……!』
「そうか、その仮面は……。それでアンタは、美しさにこだわっているのか」
 トラウマに囚われている分身を、残像を残すほどの速さで優希斗の蒼月が斬る。
 その間にも、周囲の分身たちが次々とトラウマに落ちていく。
「……俺は、アンタの歌は綺麗だと思うよ。だから、その歌で誰かを殺すというのなら、俺はアンタを止める」
 優希斗は真っ直ぐに怪人を見据えた。そして静かに、両手の刀を構え直すのだ。
「アンタが望んだ美しさが、これ以上穢れないようにね」

成功 🔵​🔵​🔴​

ギュスターヴ・ベルトラン(サポート)
よう、お出ましだな?
…ソレが怨嗟による存在であっても、殺す事に歓びを得る存在であっても
人の間に悲しみと苦しみが広がる以上は…神敵必滅、躯の海に叩き返す

■行動
柄が悪くとも信心深いため、戦う前に【祈り】を捧げる事は忘れない
敵の主義主張は聞き、それを受けて行動する。行動原理を理解しないままの行動はしない
連携相手がいるならば相手のフォローに、居ないなら全力で敵をシバきに行く
戦場によっては屋内でも空が飛べるタイプの魔導バイクを乗り回す
「公序良俗に反することはしてねえぞ」と言うし実際にそうするタイプ

■攻撃
主武器:リングスラッシャーと影業
近距離攻撃が不得意なので敵とは距離を取って戦う

アドリブ連帯歓迎



「オペラ座の怪人とはなあ」
 なんだか柄の悪い態度にサングラス。しかし黒いカソックに首からロザリオを下げ、手を組んで祈る姿は、紛れもなく神徒のそれだ。
 ギュスターヴ・ベルトラン(我が信仰、依然揺るぎなく・f44004)を見て、さすがのオペラ座の怪人も戦意をひそめる。
『神の徒よ。話し合いで済むのであればそれが一番でしょう?』
「おう、その通りだぜ」
『では……彼女に任せるとしましょう』
 怪人がマントを開くと、そこから女性が現れた。
『初めまして、わたくしはジリー。この者は、生まれたときから顔の右半分がシワくちゃなのです。神の試練ですわ』
「初めましてだ、ジリーさん。オレはギュスターヴ。なるほどな、それで仮面か」
『ええ。彼は幼い頃から見世物小屋で、醜い、醜いと罵られ、愛されずに育ってきました。しかしそこから逃げ出し、今、クリスティーヌを愛そうとしているのです。どうか彼の愛を、遮ってやらないでくださいまし』
「うーーむ……」
『貴方は愛を妨げるとおっしゃるのですか?』
「悪いが、ソレを愛と呼ぶわけにはいかねえな。今、そいつは人をさらって、理想を押しつけてるだけじゃねえか」
『それは……』
「だが、よっく分かった。あれだ、怪人は焦ってんだな。自分を認めてほしくてよ」
『なっ……!? なんですって!?』
 怪人が驚き、怒りをあらわにする。
「ほれ、図星だから怒るんだろ? オレがちょいと力を貸してやるよ。――絶えず祈りなさい。どんなことにも感謝しなさい」
 ギュスターヴが膝を折り、祈る。光が、全方位に放たれた。ギュスターヴのユーベルコード【|七つの罪源、滅するは《セプテム・ペッカータ・モルターリア》】である。
 その温かな光に包まれ、怪人は言葉にならない感情をおぼえた。
 光は、愛であった。怪人がどうしたって得られなかったもの。怪人の目から、知らず涙が零れ落ちる。
『これは……?』
「よぉく考えてみな、それが何なのか。ちぃとばかし待っててやるぜ」
 ギュスターヴは適当に腰かけ、棒つきのアメ玉を取り出して口に放り込んだ。
 さて、この子羊は歩いてきてくれるだろうか。光のほうへ。

成功 🔵​🔵​🔴​

キノ・コバルトリュフ(サポート)
キノキノ、キノが来たから
もう、大丈夫だよ。
キノノ?キノだけじゃ心配だって?
マツタケ!キノには星霊の仲間がいるから大丈夫!!
トリュフ!!キノ達の活躍を見せてあげるよ。
シメジ?キノが苦戦はありえないけど、その時は一発逆転を狙っていくよ。
キノキノ、みんなよろしくね。



『本当に、先ほどのクリスティーヌですか……?』
「キノノ? 音楽の天使って言われたよ!」
 元気に答えるキノコつむりのキノ・コバルトリュフ(|キノコつむり《🍄🍄🍄🍄🍄》の星霊術士・f39074)に、オペラ座の怪人は怪訝な顔だ。
『ふむ……もう一度歌っていただけますか?』
「シメジ! いいよ! ♪キ~ノコ、キノキノ、キノキノコ~♪」
『その! 能天気な歌! 私を騙しましたね……!? 歌というのはこのようなものをいうのです!』
 怪人が女性型のマネキンを召喚する。
 マネキンは大音量で、わっと歌を発した。確かに美しい歌だが、それは洞窟に反響し、音の攻撃となってキノのブレインキノコを揺さぶる。
「キノノ~~~ッ!?」
『まったく、そんな粗末な歌で私を騙そうとは!』
 クラクラしているキノを、怪人は怒りをこめてロッドで殴った。
「キノッ!」
 ドカッと飛ばされ、キノはしたたかに岩壁に打ちつけられる。
 その衝撃で、猛毒の胞子が大きく舞った。
『さあもう一曲……うん? おや……? なん、と、美しイ……まさに天使ィ……!』
 またしても怪人の様子がおかしい。マネキンを放って、ふらふらとキノに近づいてくるではないか。
 なるほど、とキノの賢いブレインキノコが閃いた。今なら、また騙せそうだ。
「エリンギ! 一緒に歌おう?🍄」
『ああァ、もちろんです我が音楽の天使ィ!』
「マツタケ! じゃあ大きく息を吸って~🍄」
 バフッ
 キノはここで胞子を大放出。
『ハイィ! すぅぅ~~~~~カハッ!』
 オペラ座の怪人が派手に喀血した。猛毒を肺いっぱいに吸い込んだのだから。
『はっ、私は何を……まっ、また騙しましたね!?』
「トリュフ! 作戦って言ってほしいな♪」
 血をぬぐいながら、距離を取るオペラ座の怪人。しかし肺へのダメージは、歌を使う彼にとってかなりの痛手だ。
 それを狙って、言葉巧みに誘導したキノの、まさに作戦勝ちであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

儀水・芽亜
六六六人衆の|二桁《ハンドレッドナンバー》と言うには、どうにも所作が軽い。
まあ、いいです。歌を聴く耳は持っている様子。もう一度私の歌を聴いていただきましょう。竪琴で「楽器演奏」しつつ「歌唱」。
「全力魔法」「音響攻撃」音の「属性攻撃」「範囲攻撃」「催眠術」「浄化」「郷愁を誘う」でアンチウォーヴォイス。

その顔の半面故に闇堕ちしたとはいえ、六六六人衆の二桁まで登り詰めるのにどれほどの血を流してきたか。その全てを思い出せますか?
さあ、戦いを終わりにしましょう。
『オペラ座の怪人』の戦意を奪えたら、「早業」で竪琴から鋏に持ち替え、反応される前に、一息に首を「切断」します。

他の生き方もあったでしょうに――。



(六六六人衆の|二桁《ハンドレッドナンバー》と言うには、どうにも所作が軽い)
 猟兵たちに苦戦するオペラ座の怪人に眉をひそめるのは、儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『|夢可有郷《ザナドゥ》』・f35644)だ。
 しかし芽亜の疑念ももっともである。ブレイズゲートの中でなければ、都市ひとつは血に沈めているような相手なのだから。
「まあ、いいです」
 被害がないというのならば、それに越したことはない。
 それに、どうやら歌を聴く耳なら持ち合わせている様子だ。
「もう一度私の歌を聴いていただきましょう」
 芽亜は竪琴『Playland In Sleeping』を構える。
『おお、我が音楽の天使! この殺戮舞台で、私と|殺《あや》め合いましょう!』
 オペラ座の怪人が歓喜の声を上げ、大仰に腕を広げてみせた。すると、怪人の多重分身体が大量に召喚されるではないか。その数、二百超。
『『『♪ああクリスティーヌ! ♪クリスティーヌ!!』』』
「ぐっ……!?」
 体が引きちぎられそうな、圧倒的な男性三部合唱。もとの声量が二百倍になっているのだ。さらに、同一人物だからこその、完璧なハーモニー。
 芽亜が息をつけば、喉奥に血の臭いを感じる。内臓がやられたのだろう。このままではまずい。
 芽亜もまた竪琴を奏で、声を張り上げた。
「♪さあ、爪牙を収めましょう――」
 インカム『夢+夜』と、アリアデバイス『ムジカ・マキナ』が、その歌声をより強く拡散する。
 が。
『『『♪歌え!! ♪音楽の天使、クリスティーヌ!!』』』
 大音量によって芽亜の歌はかき消され、衝撃が芽亜の全身を襲った。
「カッ……」
 そのあまりの威力に、芽亜は吐血する。
『どうしました? 我が音楽の天使。君の歌はこの程度なのですか?』
「――いいえ」
 ふらついた体を、地面を踏みしめて耐える。
 芽亜は、オペラ座の怪人をじっと見据えた。
「オペラ座の怪人。ここが舞台だというなら、歌の掛け合いをしましょう。どちらが最期まで立っているか、勝負です」
『ほう……。いいでしょう、|即興《エチュード》で合わせてさしあげましょう。君からどうぞ?』
「どうも。では」
 芽亜は短く息を整える。すでに体力の底が近い。
「♪さあ、爪牙を収めましょう」
 しかし、それを感じさせない、極上の歌声が響いた。
『『『♪たとえ爪牙を失っても、私には歌がある!』』』
「♪刃は鞘の中、銃砲は蔵の中」
 芽亜の口の端から血が流れ、視界が霞む。だがそれでも歌う。歌い続ける。
『『『♪たとえ刃を、銃砲を失っても、私には歌がある!!』』』
 芽亜が大きくぐらついた。
「――♪偃武の心で、平和を築くのです」
 だが芽亜は歌を手放さない。
 芽亜が歌いきった、その瞬間。
 ふっと怪人の多重分身体が消え失せた。すべて。
『なっ……!?』
「猟兵との戦いには慣れていないようですね、オペラ座の怪人」
『どういうことですか!? えい! なぜ!? 力が発動しない……!?』
「そうでしょうとも」
 芽亜は口の中の血を吐き捨て、怪人に向き直った。
「今の歌は、すべて聴くとあなたのユーベルコードを封じます。どういうことか、お分かりですね?」
『……だから、|掛け合い《・・・・》を提案した、と? 私にも攻撃をさせる代わりに、君の歌を、すべて私に聴かせるために?』
 にっと芽亜が笑う。
 そして竪琴を構え、痛む腹に力を入れて、再び声を張った。
「♪どれほどの血を流してきたか! ♪その全てを思い出せますか!」
『うぐっ……!』
 ユーベルコードを封じられた怪人に、芽亜のユーベルコード【アンチウォーヴォイス】が刺さる。【アンチウォーヴォイス】の効果で、怪人の胸に、戦うことへの疑問が湧き上がってくる。
『うぅ……私は、私はなぜ……?』
「その顔の半面故に闇堕ちしたとはいえ、六六六人衆の二桁まで登り詰めるのにどれほどの血を流してきたか。その全てを思い出せますか?」
『ですが……私は……ッ! 私は、美しくならなければッッ!!』
 苦悩を叫び、大きくかぶりを振る怪人。
 芽亜の手には、いつの間にか竪琴ではなく、大きな鋏が握られていた。裁断鋏『Gemeinde』である。
 そして、さいなまれる怪人が反応するより速く、
「さあ、戦いを終わりにしましょう」
 シンッ
 芽亜は一息に、彼の首を切断した。
 軽く飛んだ頭が、ころころと地を転がる。
 遠く離れた自らの体を見て、怪人は大きく目を見張った。
 そして、すべて失ったことを悟ったのだろうか。ふっと、その目から力が抜ける。
『…………。……私は……、僕は、認められ……たかった……』
 ようやくだ。
 ようやく怪人は、戦意もプライドも、何の邪魔もなく見つめることができた。
 彼自身を。
 殺すことでしか、存在意義を保てなかった彼が。自分で、自分を否定していた彼が。彼自身を認められたのである。
 それは、芽亜の【アンチウォーヴォイス】によってもたらされた奇跡。
「……もっと早くに気づいていれば、他の生き方もあったでしょうに」
『本当に……ハハ、アハハ……。……ありがとう。君こそ、私の天使です』
 そう言って、オペラ座の怪人はゆっくりと消えていく。その顔は、安らかであった。
 彼が完全に消えたのを見届け、芽亜は小さく目を閉じる。一人くらいは、改心した彼を思う者がいてもいいだろう。
「おやすみなさい。よい夢を」

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年12月05日


挿絵イラスト