暴け!悪役令嬢の秘密!
●
「一般庶民のパンがないですって? おーっほっほ、パンがなければお菓子を食べればいいのですわ!」
「わ、ワルイザ、そう言うことではなくてだね?」
見事な金髪縦ロールとキラキラと輝く宝石のような蒼い目を備え、豪華なドレスを纏った美少女が、手を口に添えた典型的なお嬢系高笑いを響かせる。そんな姿に、傍らの気弱そうな紳士はおろおろと困惑した様子を隠せない。
「つまりそのだね、我が領地は不作が続き、経済的にも苦しい状況が続いておるのだ。そんな時に、領主である君が、毎晩のように豪華なパーティを開いたり、宝石商やドレス商人を呼び寄せたりしていては、皆がどう思うかと……」
「叔父様のお説教はもうたくさんですの! わたくしはそんな面倒なことどうでもいいのですわ! だってこのワルイザ・ニクマレンコこそがこの領地の領主! 一番偉いのですわ! 偉いから何でも許されるのですわ! おーっほっほ! 文句があるなら宮殿へいらっしゃいと皆に伝えなさい!」
ワルイザと名乗った少女は優雅にドレスを翻し、けたたましく笑い声を響かせながら奥へと消えていく。彼女の背中を見送り、紳士はがくりと肩を落とした。その姿に、紳士の従者らしきものたちがいたわしげに声を掛ける。
「ワルイザ様にも困ったものです。先代様、つまりワルイザ様のご両親が生きておいでの頃はあんなではありませんでしたのに」
「ただ一人の血縁たる叔父君のラグロー伯のご忠言も聞き入れないようでは、この先が思いやられますな……」
重い空気が流れた室内に、その時、慌てた様子で一人の兵士が走り込んできた。
「た、大変です! またもあの盗賊騎士が、我ら騎士団の駐屯地を襲い……!」
「何、まただと!?」
「はっ、折悪しく、ワルイザ様が今宵開かれるパーティの警護のために騎士たちをみな引き上げさせていたもので、駐屯地はもぬけの殻。そこへ乗り込まれて一切合切を奪い去られてしまいました! まあ人がいなかったわけですから、幸いと申しますか当然と申しますか、人的被害は皆無でしたが……」
「ええい、そんなことを言っているのではないのだ! 盗賊騎士ごときに好き勝手されては我が領地の名誉が! 誇りが!」
地団太を踏む側近たちに、ラグロー伯は神経質そうな細い指を額に当て、重い吐息を付くのだった。
「これもまたワルイザが原因か……なんとしたものか……」
●
「えっと、みんな、新しい世界が見つかったって話は聞いたかしら? バハムートキャバリア、剣と騎士道と英雄譚の世界よ。あたしも早速、そこでの事件を予知したの」
ふわふわと無数に浮かぶシャボン玉の向こうから、ユメカ・ドリーミィは猟兵たちに話しかけた。
「何ていうか……困ったちゃんのお嬢様が人々に迷惑をかけているみたい。いわゆる悪役令嬢って言うのかしら? でもこの世界では、単に迷惑をかけているってだけでは済まないわ。そんな悪質な領主は騎士道に背いているから許せない、ってことで、
百獣族がこの領地に攻め込もうとしているというのよ」
ユメカは困惑したように眉根を寄せ、猟兵たちを見回す。
「たとえお嬢様が悪人だとしても、百獣族がお城に攻め込むなんてことになったら、住民の皆さんも戦いに巻き込まれて大騒ぎになってしまうわ。それに、そもそも……」
ユメカの目の前のシャボン玉が一つ、頼りなげに揺れてパチンと儚く割れた。
「……お嬢様は本当に悪人なのかしら? 予知ではそこまでは見通せなかったの。だから直接確かめてもらうしかないわ。もちろん、本当に悪い子だったらきっちり懲らしめないと。その場合は、変な話だけど、百獣族と一時的に共闘、なんてことにもなるかもね。……でも、もしかしたら……ううん、あとは全部想像でしかないわね。ということで、みんなには彼女──ワルイザお嬢様の正体を見極め、この事件の解決をお願いしたいのよ」
ユメカはキュッと唇を引き結び、強い光を宿した瞳を輝かせて拳を握り締めた。
「そしてもう一つ──。この地には、ワルイザお嬢様に逆らう、謎の盗賊騎士がいるようなの。その名は──」
その名は!
「その名は……!」
そう、その名は!!
「仮面レディ!!」
なんて?
「仮面レディ! 仮面に素顔を隠した謎の盗賊騎士なのよ! かっこいいわね!」
そうかなあ!?
「とにかく、その仮面レディのアジトの近くまでみんなを転移することができるわ。まずこの仮面レディに接触し、この領地の実体を探ってみるのがいいでしょうね」
●
「おーっほっほ! さあ一般庶民の皆さん、このお金で当座をしのいでくださいませ!」
「おおっ、仮面レディ様!」
「仮面レディ様だ! いつもありがたや!」
その頃、領内のさびれた村で、やせ細った人々にお金を配って歩く謎の一団があった。そう、その集団こそ、謎の盗賊騎士、仮面レディとその部下たちなのだ!
「おーっほっほほ! 礼には及びませんわ! もちろんこんなことはただの急場しのぎに過ぎないことはわかっています。けれどもう少しの辛抱なのですわ!」
仮面レディは大きくのけぞって甲高い笑い声を響かせる。大きなつば広帽子がその拍子に崩れ、見事な金髪縦ロールヘアが流れ出た。
「あら、はしたない。では、ごめんあそばせ!」
仮面レディはウマに拍車をかけると部下たちと共に颯爽と走り去っていく。そのマスクの下で、月に照らされ、蒼い宝石のような瞳がキラキラと輝いていた。
●
猟兵たちはこの領地に隠された秘密を暴き、迫りくる
百獣族の侵攻に備えてほしい。
まずは仮面レディのアジトに乗り込み、彼女から話を聞くことができる。
続いて百獣族の軍勢を退けながら城に乗り込み、最後には倒すべき敵との戦いになるだろう。
天樹
こんにちは、天樹です。
新世界・バハムートキャバリアのシナリオをお届けします。
人々に迷惑をかけまくる悪役令嬢の秘密を暴き、迫りくる百獣族の脅威から人々を救ってください。
第一章は盗賊騎士「仮面レディ」のアジト近くの土地です。周囲は呪いに蝕まれ、簡単には近づけませんが、それは同時にこの難所を乗り越えたものは真の勇者であるという証となり、仮面レディも敬意を抱いてくれる条件となるでしょう。
呪いへの対抗策はそれほど詳細でなくとも構いません。どちらかというと、仮面レディに対してどんな対応を取り、何を聞き込み、調べようとするのか、そちらのほうが大切かもしれません。
なお、第二章と第三章はおそらくお一人ずつの個別リプレイになりますが、一章に関しては状況説明の部分が大きいため、もしかしますと複数の方をおまとめでのリプレイになる可能性もあります(まだ不確定です)。ご了承くださいませ。
では皆様のご参加を心よりお待ちいたします。
第1章 冒険
『呪われし大地』
|
POW : 気合と根性で呪いの汚染に耐える
SPD : 最短経路で呪いの地を突破する
WIZ : 聖遺物を用いて土地に染み付いた呪いを弱める
|
おお、この地こそは恐るべき呪いの大地!
こんなところにアジトを構えていればこそ、この領地の騎士団も盗賊騎士たちを捕まえることができないのだ。
だが、猟兵たちならばこの苦難を乗り越えることができるに違いない!
さあ進むのだ、そして仮面レディと出会い、彼女と語り合ってほしい。
この領地の抱えた問題点とは何なのか。
領主一族の現状とは。
悪役令嬢ワルイザ・ニクマレンコはどんな少女なのだろうか。
そして仮面レディの正体とは一体……!?
建依・莉々
「むふー、仮面レディ! なにそれカッコイイ♪ ぜったい、配下にしてもらう♪」
気合い十分、怪力で呪いごと開墾しつつレディのもとへ! いや、そんな脳筋では「むふー♪」しか喋れない怪力キャラ扱い、華麗なレディの配下にはふさわしくない。ここはもう一つの特技・化術で燕に化けて、呪いの地を上空から最速で突破、知恵に溢れ情報収集に長けた腹心キャラをアピールしよう! ねぇねぇ、なんてご挨拶しようかな? 真面目? かわいく? それともカッコよく「翼は蒼き輝きと共に。椿黒のリリ、御前に」とか〜♪ ・・・あ? うるさい外野(部下達)は一蹴しておくね♪
ん? 大丈夫、瞳を合わせ共に高笑えば語り合える、分かり合えるよ♪
「むふー、仮面レディ!? なにそれカッコイイ♪ ぜったい、配下にしてもらう♪」
黒曜石のような瞳を輝かせ、ふんす! と鼻息荒く意気込んだのは、建依・莉々(ブラックタールのどろんバケラー・f42718)。
かっこいいというセンスなのか……そうか……と地の文は若干愕然とするが、なにせ莉々は12歳。「そういうお年頃」のど真ん中なので仕方がないのだ!
そして莉々には、思いついたことを即時実行できるだけの能力があったのだからもう止まらない。
「呪い? 何それ美味しいの? とにかく! わたしの前に立ちふさがるものは全部! ブッ飛ばしちゃうんだから!!!」
握りしめた拳に漲る万夫不当にして一騎当千の剛力! 莉々はその拳をぐるんぐるんぶん回すと、本当に──
殴った!
呪いを!
って、呪いを殴った!?
もし呪いに口が利けたら「ナンオラー!?ザッケンナコラー!?」と喚いたに違いない。でもそういうものなのである。莉々のパワーは呪いなどぶん殴るのだ!
まあ理論的な説明をすれば、莉々の放った凄まじい拳圧が空間を歪め、そこに充満していた呪いの要素を破壊したとかなんかそういう感じである!
かくして莉々は見事に呪いの大地を突破し、今しもなんか難しいっぽい会議を開いているらしい仮面レディ一味の元へと踊り込んだのだ。
「仮面レディ様、やはり、どう読み返してもこの古文書の意味がつかめません……鏡文字でもあぶり出しでもないようですし……」
「諦めてはなりません、皆さん。引き続き調査を続けるのですわ。もう一歩でこの古文書の謎が解けると思うのですわ……」
今しも眼前に古色蒼然とした一枚の羊皮紙を広げ、深刻な話をしていた仮面レディ一味の前に、突如! アジトの窓を突き破り壁を粉砕して、黒い弾丸が現れる!
「こんにちは! 部下にしてください!!」
「きゃあ!? っていいますか部下って何ですの!?」
「あっ履歴書とかいるんですか!? しまった、それは忘れちゃった!」
「いや履歴書って何ですの!?」
さしもの仮面レディも思わず動転せずにはいられない! ものっそい勢いで風のように現れた小さな少女がいきなり部下にしてくれとか言い出したのだから!
だが、その少女、莉々は、勢い込んで叫んだ後、ふと何かに気づいたように細い首を捻ったあと、いっけなーい! とでもいうように手で額をぺちんと叩いた。
「あ、やば。このやり方じゃちょっとただの脳筋っぽくて、華麗な仮面レデイ様の配下に相応しくないですね。うーん、今のナシでお願いします! じゃ、ちょっとやり直してきまーす!」
「やり直しって何ですのー!?」
おお何たることか、莉々はせっかくぶち抜けてきた呪いの大地を……わざわざ引き返したのだ! 呆気に取られている仮面レディを置いてきぼりにして! えっそこからやり直すの!?
「ふっふっふ、パワーだけじゃないことを仮面レディ様にお見せしちゃうんだから! ──『
りりぃ変身、地を駆けろ』!!」
七色の光が虚空に満ち、黒い影が空間に溶けだすように形を変えて、莉々の姿が、今、変わる! 凛然と翼はためかす、俊敏にして高速のその姿は──燕だ!
「もとい、今回に関しては『快鳥りりぃ空を飛べ!』ね! じゃあ、いっきまーす!!」
翼をひとうち、風を巻いて大気を斬り裂き、高空遥かに舞い上がった莉々は、そこから一陣の旋風と化して呪いの大地の上空を一瞬にして飛翔!
再び仮面レディの元へと舞い来たったのであった。
「翼は蒼き輝きと共に。──椿黒のリリ、御前に」
ドヤっとした顔を隠しその身を恭しく傅かせた莉々が、威風と品格備わった姿で仮面レディの前に首を垂れる。かっこいいけど周囲にはさっき散らかした窓ガラスや壁の破片とかがブチ撒かれたままである。
「いえですから……なんでわざわざやり直しを……あなたは一体……」
「あれ、こっちのパターンはお気に召しませんでしたか、仮面レディ様? では可愛いパターンで、もう一回やり直しを……」
「やり直しはもういいのですわ!?」
莉々を止めようとあわてた仮面レディの視線が、ふと眼前の古文書に止まり、そこから釘づけされたかのように動かなくなった。
「……これは!!」
「ど、どうかしましたか、仮面レディ様!? やっぱりやり直します!?」
「だからそれはもういいのですわ!? そうではありません、貴女、先ほど、窓と壁をぶち破って入っておいででしたわね?」
きっとなった仮面レディの声に、莉々はびくりと肩を竦める。
「あ……これはその、つい情熱の迸りが若さゆえのあやまちというか」
「何を言っているかわかりませんが……あなたは何らかの手段で、呪いの大地の呪いを突破してきたのですね? その影響が……このように!」
と、仮面レディが指示した古文書。
そこに記された文字と図形が、なんとしたことか、見る間に形を変えていくではないか!
「え…‥これ、何の仕掛です?」
「おそらく、この古文書自体にも呪いの影響が降りかかっていたのでしょう。遥か太古、百獣族の掛けた呪い……我が領地全土を痩せさせ、荒れさせてしまった呪いが。……ですが、あなたのなんかよくわからないパワーのおかげで、その呪いは解かれました。真の古文書の姿が今明らかになったのですわ。あなたのおかげです」
仮面レディは感激したように莉々の手を取り、ぎゅっと握りしめる。その仮面の奥の蒼い瞳が、喜びに潤い、滲んでいた。
「よくわかんないですが、じゃあ、わたし、仮面レディ様の部下にしていただけるんですね!」
「いいえ、部下などとんでもない」
きっぱりと言い放った仮面レディの意外な言葉に、一瞬莉々は目を丸くする。だが、すぐそのあとに、仮面レディは悪戯っぽく微笑んで、続けたのだった。
「あなたは部下ではなく、わたくしの大切なお友達になりましたわ。どうかこう名乗ってくださいませ──そう、仮面レディ・ツヴァイと!」
「仮面レディ・ツヴァイ!! かぁっこいいいいぃぃ!!!」
……そうかなあ。
大成功
🔵🔵🔵
播州・クロリア
…仮面レディという御方、既視感があるような…
いずれにせよ仮面レディと面会して最終的な目標を
伺わないと
それにしてもこの呪いは百獣族の呪いというやつでしょうか?
滅ぼされた恨みは理解できますが無辜の民を呪うことは許されません
仮面レディは百獣族をどうお考えなんでしょうか?
この呪いが百獣族のものであってもなお味方とみているなら
距離を置くべきかもしれませんね…
(目を閉じ、すっと手を真横にピンと伸ばすと{絢爛の旋律}で『ダンス』を始め、終わった後に【蠱の一念】を発動する)
呪いのリズムと同調することで『ハッキング』を行い
無効化した結界を『結界術』で展開します
これでアジトへ向かうことができるでしょう
「……仮面レディという御方、なんというか……どこかとても既視感があるような……」
播州・クロリア(踊る蟲・f23522)は眉根を寄せ、腕を組んで考え込む。
だがそんなことはないだろう、仮面レディと言えば、見事な金髪縦ロールを靡かせ、蒼い宝石のような瞳を煌めかせた、おーほほほと響く高笑いが特徴的な少女なのだ。そんな厳しく難しい条件にぴったり該当するようなキャラクターなど存在しまい。
「いえめちゃくちゃ見た覚えがあるのですが!? しかもつい最近!?」
えーそうかなあ。
「……と、とにかく。いずれにせよ仮面レディと面会して、最終的な目標を伺わないと」
クロリアはきゅっと唇を引き結び、決意を新たにすると、眼前に広がるひび割れた大地を打ち眺めた。
幾千幾万の太古から一滴の雨さえも降ったことのないのではないかとも割れるほど渇き果てたその荒野には、単に旱魃の影響というだけでは理解しがたい、重く黒い空気が淀んでいる。どろりと蕩けて滴り落ちるのではないかと感じられるほどに濃密な、そして毒々しい大気はまさに呪い。呪いそのものがその大地に充満していることを雄弁に物語っていた、
「これが呪い……噂に聞いた以上です。ですが私の為すべきこと、為しうること、為さねばならぬことは常にただ一つ。──舞うことのみ」
クロリアは静かに手を差し伸べ、姿勢を整えると、己の中に満ちる調べを感じ取るままに、そのしなやかな肢体を泳がせ始めた。
悍ましき呪いの大地に対し、クロリアが見せたのは、清澄にして厳かな鎮魂の舞であろうか。それとも、命の煌めきと希望の輝きを込めた躍動するダンスであっただろうか。
いや、さにあらず。
クロリアの選択は、情念渦巻く中に慟哭と激昂を込めた──前衛的なコンテンポラリーダンスであったのだ。
いつもの優雅で華麗な舞ではなく、あえて大地に沈み、あえて闇の中に蠢くようなその舞を続ける中で、クロリアは感じ取る。呪いの大地の中に満ち満ちた、激しい怒りと悲しみ。悲嘆と怨念を。
(ああ、わかります、伝わります、あなたたちの古く悠久なる呪いが。理不尽に滅ぼされた怨みの念が……)
クロリアの魂は大地に広がる深い呪いと、今や完全に同調していた。彼女の意図したものはただひとつ。
(──これが、呪いのリズム──!)
クロリアはその舞の中で呪詛に満ちる毒々しいエネルギーの流れを感じ取り、これを把握していたのだ。あまりにも強大にして執拗な呪いに対しては、まともに反発するよりも、その流れの中に入り込みコントロールする。それがクロリアの策であった。
無論、それは恐るべき危険を伴う。一歩過てば、呪いの中に取り込まれ、自らも呪いの一部と化してしまったであろう。それを凌いだのは、そそり立つほどの怨念の奔流をただ受けるのではなく、あくまでも舞という所作の中に受け流したクロリアの天性の才であった。
これぞ名付けて──『
蠱の
一念』。
呪いのリズムを解析したクロリアはかくしてその流れを制御し、呪いの大地を踏破するこのに成功したのだった。
「──どなたですの。先ほどから、このあたり一帯の呪いが異質な変化を遂げているのを感じていましたわ。それを為したお方、あなたですわね?」
大地を渡った先で、クロリアは凛と立つ少女の強い視線に出迎えられる。
黄金にそよぐ髪、輝く蒼い宝玉の瞳。おお、彼女こそまぎれもない、盗賊騎士・仮面レディだ!
「仮面レディさん、あなたにお会いするために参上しました。この大地の謎を解くために」
「謎を解いて……どうなさるのです?」
仮面レディの声に、クロリアは微かに首を傾げる。
「後で決めさせていただきます。あなたのお力になるか、それとも──距離を置くべきか」
二人の間で空気が軋むような緊張感が高まった。ぴしりとガラスがひび割れるような透明で固い空気の中で、仮面レディは唇を開く。
「つまり、わたくしの話を聞きたいとおっしゃるのですわね?」
「いえ別に?」
「……はい?」
おお、なんというどんでん返しか! このクロリアの意外な返答に、仮面レディはあんぐりと顎を落とさずにはいられない!
「え、だって、じゃあ何でここまで……」
目を白黒させている仮面レディに、クロリアはそっと手を差し伸べた。
「踊りましょう」
「……はいぃ!?」
おお、なんという突拍子もない展開か! このクロリアの斜め上の返答に、仮面レディは相手を二度見三度見せずにはいられない!
だがクロリアは大真面目であった。彼女はいつだって真剣なのである、特にダンスに関しては。
「踊りましょう、言葉は飾れるもの。言葉は偽れるもの。けれど舞は嘘を付きません。心の中をすべてさらけ出すものです、ダンスの一挙手一投足は。私は舞の中に真実を見ます」
「よ、よくわかりませんが……ええと、じゃあ一曲お相手を……」
まだ頭の上に盛大にクエスチョンマークを浮かべつつ、仮面レディはクロリアの手を取ったのだった。
クロリアと仮面レディは手を取り合い、舞う。
仮面レディのダンスは手慣れているばかりではなく、高度に洗練され、優雅にして気品さえも感じさせるものだった。……まるで、いずこかの大貴族の令嬢ででもあるかのように。
その舞の中で、二人は語り合う。
「……この大地の有様、これが
百獣族の呪いなのですね?」
クロリアの言葉に仮面レディはステップを踏みつつ静かに頷く。
「そう、これこそはかつて領地を汚染した呪いの姿です。この呪いのために、この領地の土地は痩せ、荒れ果て、満足な作物も生育できず、家畜の餌となるような草木も生えづらくなっているのですわ。」
「なんということでしょう……百獣族が滅ぼされた恨みは理解できますが、だからといって無辜の民を呪うことは許されないはずです」
クロリアの慨嘆に、仮面レディはそっと、しかし力強く拳を握った。決意の表れのように。
「そう、すべては人々を救うことが先決なのですわ。そのためには何としてもこの呪いを打破し、大地に潤いを取り戻さねばなりませんの。ですが、何とか土地を改良しようにも、この大地は渇き果て、河は枯れ、湧き水は潰れて、満足な水利にさえ恵まれないのですわ……せめて水さえ何とかなれば」
なるほど、とクロリアは小さく頷いた。
仮面レディの舞の中には、虚飾を示すような何のためらいもなく躊躇もなく、紛れもない真実の輝きだけがあったのだ。
(どうやら、彼女が真に人々を救おうとしているのは事実のようですね……)
大成功
🔵🔵🔵
サラ・ドラケイ
アドリブ歓迎
私は木皿の聖遺物から「水」を魔力具現化。加護付きの水遊び歩き。呪いを弱めながら進みます。
あなたが噂の仮面レディですか?。
私?私は水底の妖精。人攫い担当 サラ・ドラケイです!(仮面レディの名乗り口上を期待して見つめる【寵姫の瞳】)
……どうやら真なる盗賊騎士のようですね!(口上のノリで、騎士の心を持つ抵抗者か盗賊かを判断して)
さて名乗りの通り私は
人攫い担当。人攫いの助力は要り様ですか?。あと、ちょっとした水害もできますよ。(にこにこ)
皆さんも得意分野がおありでしょう?。
「うわー。乾いちゃってますねえ」
サラ・ドラケイ(水底の妖精・f44796)は、大きな瞳を丸くし、目の前に広がる広大な荒野を見つめた。
その目に映るのは、ひび割れ死の大地と化した荒涼の世界。淀み濁った大気がどろりと泥のように垂れこめ、近づくものを飲み込んで己が一部へと変えてしまおうとするかのような明確な敵意の塊ともいえる世界だった。そこにこれまでも今も命はなく、これから存在することさえ許さない。死と絶望に飾られた暗黒の楽園──。
「私の「水」──魔力を具現化したこの水でなければ、一瞬で地面に吸い込まれちゃってた感がひしひしと。あー怖い怖い」
軽く言いながら、サラは鮮やかに歩みを進める。渦巻く瘴気の中、漂う狂気の中へと。
そう、その小さな身の回りに漂い煌めくものは、この死の大地に存在するはずのない「水」の領域だった。
サラの繊手に掲げられているものは一見ただの小さな木皿に過ぎぬ。だが、その浅いはずの器からは、無限に清冽な清水が滔々と湧き溢れ、重力さえ無視してサラの周縁に舞っていた。あたかも意志持つ悪戯好きな踊り子のように。誰が知ろう、その木皿こそはサラの誇る「聖遺物」に他ならぬことを。尽きせぬ悠久の水を駆使するサラの至宝であることを。
広大なる呪いの大地のただなかから見れば、小さなサラの体の周りに浮かぶ水の舞い手たちは微かで儚い水滴に過ぎぬかもしれぬ。だが同時にその水滴は、確固とした命の輝きであり、ゆるぎない意志の現われを示すものでもあった。
「水……この大地に水が
……!?」
その大地の尽きる果て、黒い陽炎の彼方から飄然と歩み進んできたサラの姿を見つめ、口々に驚きの声を上げるものたちがいた。
彼らの存在を認め、サラはにっこりと可憐な笑みを浮かべる。
中に一人、遠目にさえわかるほどの存在感を示すものを見つけて。
腐った大気の中でさえ輝く黄金の髪、そして透き通る蒼い宝石のようなその瞳。
サラはその相手に悠然と歩み寄ると、──おもむろにピシッと掌を自分の胸に当てた! 指先まで見事にそろった見事な姿勢だ!
「──初めまして皆さん、私は水底の妖精。人攫い担当、サラ・ドラケイです!!」
サラはふぁさっと紺碧のツインテヘアを靡かせ、派手に鮮やかにポーズを決める! 水の踊り子たちはタイミングを合わせその周囲でキラキラとさんざめき、スポットライトのごとく、サラに輝きを集中させた!
「え……これはご丁寧に……え、ヒトサライ……?」
何が何だかわからず呆然としている一団を尻目に、サラはくるりと手のひらを返し、恭しく向かい合う相手に差し伸べた。金髪碧眼の仮面の美少女に。
「──あなたが噂の仮面レディですか?」
二人の間に漂う視線が互いに絡み合い、しっかりと結びつく。
一瞬の間も置かず、相手は派手にふさふさとした縦ロールを靡かせて、天空高く響けよとばかりに鈴を振るような笑い声をあげた!
「おーっほほほほ! 聞かれて名乗るも烏滸がましいですが、いかにも私こそはこの領地にその人ありと知られし華麗オブ華麗なる盗賊騎士! 愛と優雅のぉ……かめぇーん・レディ!! ですわっ!!」
サラに負けず劣らずビシッと見えを切る仮面レディ! 二人の間にはなんかよくわからないキラキラでピカピカな時間と空間が広がる!
「おおう……これは想像以上に濃ゆいお方でしたねえ……しかし、これでわかりました」
サラはこくんと細い顎を頷かせた。
このひとときのやり取りの間だけでも、分かったことがある。
まず、彼女は──テンションが高くノリがいい!
(一見ただのアホの子ですが……この死の大地でテンアゲできるって言うだけでも、実はかなり意志が強いと見ます!)
そしてサラの挨拶に一瞬の間も置かず同じような口上で返した!
(頭の回転が速く、即断即決できる度胸がありますね!)
さらに、なによりも──愛を謳った!
(そこ! そこ大事です! やはり心に愛を持たなければスーパー騎士ではありませんからね!)
「……どうやらあなたは真なる盗賊騎士のようですね!」
「そういうあなたも、騎士の魂をお持ちの方と見ましたわ! この呪われた大地を乗り越えてこられたのですもの! お見事ですわ、おーっほっほ!」
「ありがとうございます、おーっほっほ!」
「「おーっほっほっほ!!」」
なんだろうこの空間。
「えー……こほん。それはさておきまして。先ほどの名乗りの通り、私は
人攫い担当。人攫いの助力は要り様ですか?」
話を切り出したサラに、仮面レディはきらりと瞳を輝かせた。
「……できればこの領地の人々をみな保護していただきたいところですが、さすがにそれは無理でしょうし……そうですわね……領主ワルイザの元を訪れる豪商たちを一時保護……攫っていただいても? さすがにそろそろ怪しまれ、何をしているか感づかれそうですの」
「それは容易ですが。感づかれるって? 何か特別なことをしているのですか?」
「……商人たちは……」
仮面レディは一瞬声を切り、けれど意を決したように言葉を紡いだ。
「領主ワルイザに宝石やドレス、芸術品を
売っているのではありませんの。──ワルイザから
買っているのですわ。ええ……ワルイザは……自分の所持する先祖代々の貴重な宝物を少しずつ切り売りして、領民に分け与える資金を作っているのですわ。でも、それが露見してしまえば、ワルイザが悪徳令嬢であるという噂が消えてしまいます。それは避けたいのですわ。ワルイザは愚かな悪人と思わせていなければなりませんの、少なくとももうしばらくは」
「へえ……」
一瞬呆気にとられたサラは、ニコッと微笑みを浮かべて仮面レディを真っ直ぐ見返した。
「それがあなたの『得意分野』ってわけですね。──悪い人のフリをすることがね、ふふっ」
大成功
🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
とりあえず縛って転がそうぜ!
スピーダッして全力ダッシュ!アジトに強襲!縄でふん縛って抵抗させる間もなく確保ですぞ!いいでござろう?賊でござるよ?
早速取り調べでござる
なぜお前さんは盗むんだ、しかも自分ちの倉庫から…それを配って回るなんて
答えろよ、質問はすでに…『拷問』に変わっているんだが?
まあ何かする気は(今の所)無いでござる、ぶっちゃけ悪役令嬢を縛りたかっただけでござるが?ウヒョー!
高貴なる血の者が縛られて乱暴されるシチュ良いよね!そういうのしたかったんだ!
予想は叔父が実は何らか黒幕だったなど…オッズで言うと3~4ぐらいかな?頭鉄板にはし難いね!
面倒な状況の時は何もかも全部焼けばいいから
「悪役令嬢ワルイザの母です……すべてをお話しします。すべての元凶はあのナントカって言う叔父さんで」
カメラの前で神妙に語り始めたエドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)に、眼前の仮面レディは顔を朱に染めて怒鳴りつけた。
「雑! 雑ですわなんですのそのエミュ!? っていうかそんな雑に真相を語ろうとしないでくださいませ!? っていうかカメラって何ですのー!? ああツッコミが追いつきませんわ!!」
その口調はまさに鬼気迫り威厳と迫力に満ちていたが、エドゥアルトは動じない。だって仮面レディは怒鳴るしか何もできないから。
何故ならば、──彼女は今、部下たちと共に、しっかりと縛り上げられて床に転がっているのだ。
「雑と言われてもまあ真相なんてそんなもんでござろう? そうじゃないというのなら、さあキリキリとすべてを
自供するでござるよオラオラ」
「くっ、この仮面レディがそんな脅しに屈するとでも!?」
じたばたする仮面レディだが、彼女の身を縛めているのはエドゥアルトの放った流体金属であり、そう簡単にほどけはしない。いかなる形状も自在に意のままとなるその流体金属がロープ状となり、仮面レディの自由は奪いつつも、本人にはあまり痛くしないような絶妙のラインで拘束しているのである! そう、うまく彼女の体の美しいラインだけがくっきりと浮かび上がり、しかし体には傷をつけたり痛がらせたりはしないというその緊縛はまさに芸術!
ちなみに部下たちはどうでもいいので普通にきつく縛っている!
「ふうん……どうしても吐かないっつぅんならよぉ……わかるでござるな?」
「ど、どうするというのです!? 薄い本みたいな展開にしようとでも!?」
仮面レディの鋭い眼光に、けれどエドゥアルトが怯むはずもない!
「ふっふっふ。この流体金属くんはレディたんを拘束したでござる。つまりレディたんのボディラインを完全把握したのですぞ! これをひな型にすれば──1/1仮面レディトルソーの完成ですぞ!」
「えっトルソー!? 複製人形とかではありませんの!?」
「ドールは……見つめられてるみたいで恥ずかしいし……」
「変なとこに恥じらいポイントが!?」
「そのトルソーにウワキツな衣装を次々と着せ続ける姿を目の前でじっくり見せつけるでござる! あっはっは! 似合わねえ! とか、うわ……エッッッッ……とか」
「なんですのこのわたくし本人には全く影響がないのに微妙かつ確実に尊厳破壊されてる感は!?」
「さあそれが嫌ならとっとと事情を全部話すでござるよ! いや別にトルソールートでも拙者は一向にかまわんが」
なんという非道なエドゥアルトの策略であろうか! しかし仮面レデイもまたそんなことでは退かない!
「ええい、ならば……これまで語られた部分も含めて、このシナリオの背景設定を全部語ってあげますわ! もうそれだけで二重説明などで文字数が埋まってしまってまともなリプレイにはならなくてよ! それでもいいんですの!?」
「いやそんなメタな逆襲する奴があるか! ……だがメタ合戦で拙者に勝てると思うなよ?」
なんというかそこは張り合うべき部分なのだろうか? という疑念がわくが、だがエドゥアルトは決断的に──上方へ鋭い視線を送ったのだ!
「……えっ何見てるんですの? 天井しかありませんわよ?」
「これまでの他PCさんのリプレイを見てるんでござるけど」
「いやなんですのそれ!? って言うか上見れば見えるんですの!?」
「だって画面の上の方スクロールすれば見えるじゃん?」
「そんな馬鹿な!?」
「とにかく、これで、ここまでに語られた情報は拙者も把握しましたぞ! これで二重説明は避けられますな!」
エドゥアルトのなんというデタラメな生態であろうか。もうこうなれば仕方がない。仮面レディはがっくりと肩を落とし、重い唇を開いた。
「……やむを得ません、申し上げましょう。あなたの言うとおり、令嬢ワルイザの叔父──ラグロー伯の陰謀がすべての始まりだったのですわ……ラグロー伯が、おとうさ……ワルイザの両親を毒殺した、あの事件が!」
仮面レディは淡々と語り始めた。
両親の葬式の夜、哀しみを紛らすために、ひとり城の庭園に出たワルイザは、その木陰で謎の密談を偶然聞いてしまったのだ。それこそは、ラグロー伯が手下から、今回の毒殺事件についての報告を受けている場面であった。
「おお拙者の予想ビンゴですな! しかし叔父さんは何でそんなことを? 言っちゃ悪いでござるがこの領地、荒れ地ばっかりで、無理に簒奪するようなうまあじもないでござろうに」
「おっしゃる通りですわ。けれど、そこに、この古文書が意味を持ってくるのです。あなたも他の方のリプレイでご覧になったでしょう、秘密の古文書を。これには、領地に隠された莫大な財宝について記されているのですわ」
つまりラグロー伯の行動はその莫大な、隠されし財宝目当てのものであった。
それを知ったワルイザは咄嗟に考える。このままでは自分の命も危ないかもしれない。しかしここで騒ぎ立てても証拠がない。ラグロー伯はこれまで善良の仮面をかぶり、周囲からの信頼も厚く、小娘である自分一人の証言が左右できないほどの重鎮であったのだから。
「ならば……逆に愚かな悪徳領主となり切って見せよう、とワルイザは考えたのですわ。始末するほどもない小娘と思わせ、さらに愚かな姪の面倒を見るいい叔父としての自分の株を上げることもできますから、ラグロー伯も急にはワルイザに手を出さないでしょう。さらに、奇矯なふるまいをする変人と思わせれば、ワルイザも陰で行う様々な行動を誤魔化すこともできそうですから。すべては財宝を見つけ出し、呪われたこの領地を楽園へと変えるために……」
「ぐう」
「いや寝てますの!?」
「あっごめん話長かったんで……まあ後でちゃんと読んどくでござるから(読まない)。……つか叔父さんが悪党だってわかれば、後は大体流れで何とかなるんじゃね? みたいな」
「やっぱり雑ですわ!?」
「……にしても、緊縛拘束されて転がってる美少女がシリアス話してんのってなかなか面白い絵面ですなぷーくすくす」
「誰のせいだと思ってんですの-
!!!???」
大成功
🔵🔵🔵
ルエリラ・ルエラ
【アドリブ改変・連携歓迎】
仮面レディ…いったい何者なんだ…!
私も仮面エルフとかやったら人気がさらに出るかも?
ラララサメタンク~♪どこもキャタピラでへっちゃらだ~い♪
というわけで、[サメタンク]に乗りながら、呪い対策として[芋煮ポーション]を飲みながらお邪魔するよー
なるほど、なんか大変そうなのは見ただけでわかったよ
パンがなければ芋煮を食べればいいじゃない。というわけで【どこでも芋煮会の会場設置】発動!さ、皆芋煮をお食べ。話はそれからだよ
UC効果で敵意も大体なくなったと思うのでフレンドリーにいくよ
仮面レディはどの芋煮が好き?…違った
なんでこんなことしてるのーとか正体はー?とかド直球に聞いちゃうぞー
「まったく……大変な一日でしたわ。まあ、あの猟兵という方々は信じるに足るお方とは見ましたが……おかげでわたくしたちのアジトはボロボロですわ!」
「おいたわしや、仮面レディ様……ですがもう少しで修繕が終わります! 頑張りましょう!」
とんてんかんてん。
仮面レディとその部下たちは、度重なる猟兵たちとの邂逅ですっかり半壊状態になってしまったアジトを頑張って修復していた。猟兵たちと理解し合えたのはいいが、なんか妙にハプニングが巻き起こっているのは気のせいだろうか。
まあそれは済んでしまったこと。金づちの音が甲高く響いていく中、ようやくアジトの修理が終わろうとした、……その時。
「♪いー、は芋煮のいー。もー、は芋煮のもー♪」
どこからともなく能天気な鼻歌が聴こえてきた。それも……異様な地響きを伴って!
「こ、これは一体!?」
「か、仮面レディ様! またなんか嫌な予感がします!」
「ふ、フラグを立てるのではありませんわ!?」
だが仮面レディの危惧もすでに遅し。
次の瞬間に──。
「にー、は二度とエルフの森は焼かせないよ、のに―♪」
「いやそこは芋煮のにではありませんのってきゃああああ
!!!???」
どんがらがっしゃん。
すさまじい勢いでアジトに突っ込んできた謎の重厚なる金属の塊が、木っ端みじんにアジトを叩き潰したのだ!
おお、その姿! ぱっくりと開いた口の中には、逆らうものみな飲み込み噛み砕かんと言わんばかりに鋭利な牙を並べたて、煌めく鋼の外皮は大地を駆け空を飛び海を征き天地をしろしめす! その姿こそは!
「サメですわー!?」
「そ、そんな馬鹿な!? 海はおろか河も小さな池さえもないこの乾ききった大地にサメ!?」
驚愕する仮面レディたちの前に、その鋼のサメの背から一人の姿が躍り出た!
「へロー私だよ!」
「いや誰ですの!?」
仮面レディは思わずツッコまずにはいられない! なにせその少女は仮面をつけているのだ……後頭部に!
「むっ、この私にして私たる私オブ私に対して誰とはご挨拶だけどまあいいや。私こそは謎のヒロイン、超絶天才美少女エルフこと仮面ルエリラだよ!」
「かめんるえりら」
「仮面ルエリラ・仮面ルエラだよ!」
「いみわかりませんわ!? といいますかはっきりお名前を名乗っておいでですが仮面をつけた意味は!?」
「かっこいいからだよ! でも私の超絶美少女の素顔を隠すのももったいない! だから頭の後ろに仮面をかぶったってわけさ! ああ自分の天才ぶりが怖いなー!」
ということでまあそれはルエリラ・ルエラ(芋煮ハンター・f01185)であった。ルエリラは瓦礫と見したアジトの惨状を見回しながら、慈悲深い口調でしみじみと呟く。
「それにしても……うん、なんか大変そうなのは見ただけでわかったよ。基地がこんなにひどい有様になって、可哀そうにね」
「いやあなたがやったのですわー!?」
「えー私じゃないよ? そう、あえていうなら……運命がいたずらをしたんだね……誰も責められない……悲しい事件だったね……」
「すみませんが正気を疑ってもよろしくて?」
「む、どうやら気が立っているようだね。無理もない、お腹が空いたときには誰でも怒りっぽくなるものさ。そんなときには……」
と、ルエリラはここぞとばかりに用意のものを取り出す。どんな文脈からでも「それ」につなげることができる彼女の思考は、確かにある意味天才と言っていいかもしれない。
「──さ、芋煮をお食べ」
「もう何が何だかわかりませんわ……」
全ての気力を吸い取られたかのようにがっくりと仮面レディは肩を落とす。だが、そんな彼女たちの鼻腔を馥郁たる香りがくすぐった。とろりと蕩ける直前の絶妙に煮詰まった芋をメインに据え、芳醇な肉と清冽なネギや玉ねぎがこの世のものならぬハーモニーを奏でるような絶品なる香り。
おお、それこそ芋煮、この世のすべての真実ともいえる思考にして究極の味!
ルエリラ自身がいかに素っ頓狂でも、彼女の芋煮の味だけは紛れもない美味佳肴であることを如実に示す香りであった。
「……まあ、確かにお腹が空いていたのは確かですし……ご厚意はありがたくいただきましょう」
顔を見合わせ、仮面レディと部下たちは大人しく芋煮を口にする。その口中に広がる濃厚でコクがありつつも過度にもたれない味付けは、疲れた仮面レディたちの体の奥深くにじんわりと広がり、内側から優しく温めていくのだった。
「うんうん、悲しい出来事があったからこそ、それを乗り越えるために頑張っているみんなで一緒に食べる芋煮の味は深く胸に染みるんだよ……」
満足げに椀をよそっていくルエリラ。まあアジトぶっ壊したのはルエリラなんだけどね!
「さあワルイザもどんどんお替りするといいよ」
「ええ、ありがとうござ……ななな何をおっしゃるの!? わわわわたくしはワルイザなどという名ではありありありませんことでございますですのわ!?」
「言葉遣い変になってるよ……」
慌てて椀をひっくり返しかける仮面レディを、どうどう、とルエリラはなだめる。
「もちろんワルイザがワルイザじゃないって言い張っても自由だよ。でも、その椀の中を見てごらん!」
「お、お椀を!?」
「その芋煮の味に自分を偽って素直に美味しいと言えるのかい! 何もかもさらけ出し芋煮にすべてを捧げてこその芋煮会なんだよ!」
「そ、そうだったのですね……わたくしが間違っていました……! 確かに私は──ワルイザ・ニクマレンコその人ですわ……!」
仮面を外し潤む涙をぬぐう仮面レディ、いやワルイザ!
そう、盗賊騎士仮面レディの正体は、悪徳令嬢ワルイザ本人だったのだ! なんという衝撃の瞬間か! 彼女のこの意外な正体を予想できた人はいるのだろうか!(棒読み)
っていうかそんなあっさり口車に乗せられていいのだろうか!
「まあ考えてみれば領民のみなさんや宮殿の皆に露見するわけではないのですから、部外者である猟兵さんに素顔を晒しても別に問題ないのですわよね」
……そういえばそうなのだった。
「うわあびっくりした。適当に賢いっぽいこと言ってみただけだったのに。まあ適当に言うことが全部真実を言い当てるのも天才エルフならではだね!」
いやわかってなかったんかい。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『獣騎スライム』
|
POW : メルティングジャンプ
【飛びつき体当たり】を放ち、命中した敵を【自身の体】に包み継続ダメージを与える。自身が【敵に密着】していると威力アップ。
SPD : 液体獣騎
肉体の一部もしくは全部を【スライム】に変異させ、スライムの持つ特性と、狭い隙間に入り込む能力を得る。
WIZ : スライム魔法陣
空中に描いた【魔法陣】から【大量の溶解液】を出現させ、命中した対象の【耐久力と機動性】を奪う。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
では、ここまでに明らかになった事実を列挙してみよう。
1・仮面レディの正体は、なんと驚くべきことに、悪徳令嬢ワルイザその人であった!
2・仮面レディ、いやワルイザは、古き呪いのために荒れ果てた領地で困窮する人々を救おうとしている。そのための鍵が謎の古文書である。
3・古文書の謎を解けば莫大な財宝が手に入ると伝えられている。そして、それを狙って、ワルイザの両親を暗殺したのが叔父であるラグロー伯であった。
4・ワルイザはラグロー伯の目をごまかすために、昼は愚かな悪徳令嬢のフリをし、夜は盗賊騎士・仮面レディとして人々に生活の支援をしていたのだ。
正体を明かしたワルイザと猟兵たちが、これまでのこと、そしてこれからのことについて語り合っていた時である。突如、彼女の部下の一人が、蒼白な顔で駆け込んできた!
「仮面レディ様! いえ、ワルイザ様、大変です! バ……
百獣族が城へ向かい、進軍を開始しました!」
「な、なんですって!?」
思わず立ち上がったワルイザと猟兵たち。彼女たちの向けた視線の向こうでは、地響きを立て、砂埃を上げて、怒涛の如く百獣族の大群が領地に進撃していたのだ。
「百獣族たちはこの地を治めるニクマレンコ一族に既に義はないと判断し、粛正に来たのでしょう、汗顔の至り、忸怩たる思いですわ。ですが、我が一族の不徳の責を領民の皆さんに背負わせるわけにはまいりません」
「では、どうなさるおつもりですか!?」
部下の切羽詰まった声に、ワルイザは静かな、しかし決意に満ちた笑みを浮かべた。
「──百獣族の将に面会し、理解を求めますわ」
「そ、そんな! 危険です!」
「ですがそれしか術はありません。……猟兵の皆さん、出会って早々のお願いになりますが、──『わたくしを百獣族の将の場所まで連れて行っていただく』ことはできませんでしょうか」
第二章は集団戦となる。しかし、単に敵軍を蹴散らし無双すればいいわけではない。敵軍の中をワルイザを守りながら突っ切り、先陣まで無事に送り届けることが求められる!
播州・クロリア
情報が出揃いましたね
全部ワルイザさんからの情報にはなりますが信じましょう
理由?一緒に踊ったからです
ラグロー伯をどうするかの前に百獣族が来ましたか
彼らの気持ちは痛いほどわかりますが
今は共に踊った仲間のために戦います
まずは{舞狂人形}にワルイザさんと共に搭乗し彼らを待ち受けましょう
そして{渦流の旋律}で流れる水のように彼らの攻撃をかわし
【蠱の翅】で一気に敵軍勢を駆け抜けて将がいる場所まで向かいます
できますね?舞狂人形
(答えるかのように{舞狂人形}は直立し祈るようなポーズをした後{渦流の旋律}で『ダンス』を始める)
よい動きです。また腕を上げましたね
これなら大丈夫でしょう
教える身として嬉しい限りです
「そうです、いいキレ、上手ですよ。そこでもう少し情感を込めるともっと良くなるでしょう」
播州・クロリア(踊る蟲・f23522)は相手のダンスを見終わると満足そうにうなずき、ぽんぽんと優しく相手の装甲を撫でた。
──装甲?
然り、装甲である。なぜならその相手は、見上げるほどに巨大なキャバリアであったのだから。
キャバリアはそんなクロリアの声に、機嫌よさげな低い唸り声と輝く瞳で応えた。それはあたかも、巨大な猛獣が唯一心を許す飼い主に対する反応のようでもあった。
「……いえ、あの、どこからどうツッコんでいいのかわからないのですが猟兵さま?」
そんなクロリアに、おずおずと、しかし焦りを隠すこともできない様子で傍らの少女が声を掛けた。輝く金髪縦ロールと蒼い瞳を備える彼女こそは、この地の若き領主であり、その裏で仮面レディとして活躍していたワルイザ・ニクマレンコである。
そしてクロリアとワルイザの視界、やや先の方には、呪われた大地を真っ直ぐ駆け抜けて漆黒の嵐のように領内へとなだれ込んでいく恐るべき大軍勢──
百獣族の大侵攻の凄まじい光景があった!
「お願いしをしております身で申し訳ございませんが猟兵さま、一刻も早く百獣族たちの将の元へまいりまして話し合いを……」
「ええ、もちろんわかっています。しかし」
クロリアは慌てる様子なくワルイザの懸念に応えた。
「急がば回れと言います。そしてダンスは回るもの。ゆえに、急ぐときはダンスをするのです」
「なんて?」
「急がば……」
「いえほんとに二度おっしゃらなくてもいいのですわ!? と言いますかお言葉の意味が!?」
「つまり」
クロリアはけろっとした表情で言葉を継ぐ。
「あの大群の中を突破していくには
この子の──『舞狂人形』の力が必要です、そしてそのためにはダンスの練度をもう一段上げる必要がありました。ゆえに今、お稽古をしていたのです」
「お、お稽古ですの……?」
「ええ、この子は本当に教え甲斐があります……たった一度教えただけで砂が水を吸うように吸収していく……ふふふ……この子は天才よ……恐ろしい子! ふふふふふ!」
「猟兵さま!? お気を確かに!?」
劇画調白眼になって顔に効果線が入り始めたクロリアを、慌ててワルイザが引き止める。はっと我に返ったクロリアはコホンと咳ばらいをすると、ワルイザを手招いた。
「……失礼を。ではそろそろ参りましょうか」
言葉に応じ、キャバリア「舞狂人形」は片膝をつき、その手の平の上にクロリアとワルイザを乗せると、コクピットハッチを展開する。
「さあ、
開演ですよ、舞狂人形。Let‘s Dance!」
コクピットに収まったクロリアの号令と共に、舞狂人形は一瞬胸に手を当て、祈るような姿を見せたのち、流麗な動きで百獣族の大軍勢の中に踊り込んだ!
「百獣族さんたち、あなた方の気持ちは痛いほどわかりますが……けれど見過ごせません。舞狂人形、勇壮なる鼓舞の舞い!」
大軍の百獣族たちに敢然と対峙し、クロリアの言葉の響くところ、舞狂人形は轟然とその身を翻しステップを踏む。大きく展開した両腕が鮮やかな軌跡を描き、相手のキャバリアたちを右に左に叩きつけ、蹴り抜いて投げ飛ばす!
「続いて清冽なる流水の舞い──渦流の旋律!」
百獣族たちも黙ってやられるままではいない、猛り狂ってその矛先を舞狂人形に向け、次々と襲い来る。だが、舞狂人形は先ほどとは一転、静かに滑らかに滔々と流れゆく大河の流れのようにその身を変じ、暴虐なる攻撃を華麗に捌き、受け流していく。
そしてその背に、透明な翅が翻り、風をはらんで羽ばたいた!
「さあ、一気に翔びますよ──『
蠱の翅』!!」
「す、すごいですわ。これがダンスの力……人形さんの中に溢れる、大いなる調和の力を感じますわ」
敵軍の頭上を飛翔していく舞狂人形のコクピットの中でワルイザは感嘆する。
「相手の暴威をリズムとして感じ、己の内なる衝動と和してその動きを読み切ることで千変万化の戦況に対応する、これこそが舞の秘めた力なのですわね!」
「まあおおむね。でもそれだけではありません」
クロリアは微笑みながら答えた。
「ダンスはあくまでも自己の表現、魂の躍動そのものを現すためのものであり、結果として戦闘に寄与することはあるでしょうけれど、私としてはダンスをただ戦闘の手段とは考えたくないですね」
「なるほど……でも」
と、ワルイザはやや顔を翳らせて尋ねた。
「なぜあなたはこうまでしてくださるのでしょう。私の申し上げたことはすべて……私の側からだけの主張です。もしかしたら私は虚偽を申し上げているのかもしれませんわよ?」
けれど、クロリアの瞳には真っすぐで純粋な光が宿り、煌めく。
「だって、一緒に踊ったじゃありませんか」
「……それだけの理由で?」
目を丸くするワルイザに、クロリアはこくりと、力強く頷いた。
「先ほども言ったように、言葉は嘘をつきますが舞は嘘を付きません。そして今も言ったように、ダンスは心の、魂の発露です。だから私はあなたを信じました──あなたにも感じられるでしょう、この子の……舞狂人形の心が。私と共に舞の中に光を見ようとしているこの子の心が。それと同じです」
クロリアの言葉にワルイザは心打たれたかのように瞳を輝かせ、前を向き直す。
その瞳に映るのは、ひたすらに一途に、ただ前。百獣族軍の先陣。そして、自分と、この領地の未来だった。
大成功
🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
わかった
やれ!流体金属君!!
安易に敵軍を蹴散らしてェ~!ならどうするよ?護衛対象をゴリゴリに強化すれば良いって事ジャン!
という訳で流体金属君をニクマレンコ氏にシュゥゥゥゥッ!超!エキサイティン!!
二体融合により革新者へ!ニクマレンコ氏ならぬメタルマレンコ氏爆誕でござるよ!
は?合体UCを他人に発揮させちゃ駄目だよって?拙者の勝手だろ…
全身鈍色テッカテカでイヨッ!輝いてるヨ!今なら金属と流体の両方の特性でスライム如きの体当たりや取りつきなど跳ね返したり軽く蹴散らせるでござるよ!
そんな感じなんで将の所へ行くといいでござる、拙者はスライム共を火炎放射器で焼いてるからさ!ヒャッハー!汚物は消毒だァ!!
高く響く硬質の音が木霊する。鋼を打ち付けるような澄んだ音が。
いや、それは比喩ではなかった。事実、鋼の音なのだ。鋼の、それは──足音であった。
「こんなにも時間がかかってしまいましたわ……」
静かに漏れたその声は、ワルイザ・ニクマレンコのものに他ならないはずだった。この地の領主であり、その一方で仮面レディとして姿を隠し人々のために戦っていた少女である。
だが、おお。なんということか。見事な金髪縦ロールを翻していたはずのワルイザの姿は、今や、全身が白銀に輝き艶めく光に覆われている! そう、彼女はその美しい総身を──金属の被膜で覆われているのだ!
「うむうむ。ニクマレンコ氏は正しかったでござる。そして拙者も間違っていなかった」
「いや一から十までトンチキな間違いだらけですわ! なんですのこれはー!?」
エドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)の思慮深げなセリフに対し、食い気味にワルイザは猛り狂う。まあいきなり全身をメタル漬けにされてしまうのは、多様性の時代とは言え若干特殊性癖気味であるかもしれない。
「気味どころか特殊性癖そのものではありませんの!?」
「失敬な、拙者は何も、高貴な美少女をツルテカの金属に変化させて人格を否定しモノとしてしまうという尊厳破壊に伴う興奮たまらんわーしかもそれは命の美しさではないけれど同時に間違いなく元の美しさを保持しているこの矛盾いいよねとかいうような尖った人間ではござごーーっほごほごほ……ですぞ」
「めっちゃ詳しい!? って言うか今咳に紛らせて否定したんですの肯定したんですの?」
「もちろんごーっほほごほごほ……定したんでござるが?」
「雑!? 誤魔化し方が雑ですわ!?」
「というかですな、そういうのは不可逆な破滅的な部分がいいんであって、ニクマレンコ氏のそれは拙者の流体金属君を合体させただけですぞ。なんで、ちゃんと元に戻れるんで問題ネーでござる。チッ」
「了承なく合体させるのはどうなんですのっていう正論の前にその舌打ちはどこに掛かってるんですの!?」
たまらずに詰め寄ってきたワルイザをふとしげしげと見つめると、エドゥアルトはいきなりその両肩をガシッと両手でつかんだ。
「ふえぇっ!? な、なんですの!?」
「静かに……そのまま……もう少しこう、角度をでござるな……そこだ!」
「え。ええええ!?」
おお、何が起きたというのか! まさかいきなりのロマンス展開が!?
んなわけはなかった。エドゥアルトはメタルワルイザの顔をじっと覗き込んでいた……いや、正確にはその頭を、さらに言えば頭のてっぺんをだ!
「なんだよぉぉぉ!!! キャバリアかよぉぉぉ
!!!!」
そして急にわけわからないことを叫んで血涙と共に慟哭した! いかにエドゥアルトがエドゥアルトであると言っても、こうまで素っ頓狂なことをするものであろうか! この行動は一体!
「いや、ニクマレンコ氏が今メタル化してメタルマレンコ氏になってるでござるので」
「勝手に人の家名をメタル化しないでくださいまし!?」
「なので、そのメタルヘッドね。そこに上手く映り込まないかなーって思ったんでござる」
「何がですの?」
「前のリプレイのスカートの中」
「お母様のお腹の中に正気を忘れてきたんですの!?」
「でもさー、前のリプレイだと最後の方キャバリアに乗ってたからさー! さすがに拙者でもキャバリアの
関節ちらりをローアングルで眺めて興奮する癖はねえでござる。……いや待てよ女性型ならそれもアリなのか? そう、本来ならば隠されているはずの大事な部分がたまたま見えてしまうエロス……むう新しい扉がオープン……」
「どんな奇天烈な癖に目覚めようとご勝手ですがわたくしの頭をそれに使わないでくださいまし!」
ぜえはあとメタルの息を弾ませたワルイザはもう涙目だ。まだ戦いが始まってないのに。
「まあ仕方ないでござるな。とにかく、その流体金属君でコーティングしているので、メタルマレンコ氏はそのまま敵軍のど真ん中を突っ走ってくれていいでござる。フォーミュラ級とかでもない集団敵ごときの攻撃なんざ通しゃしねえですぞ」
「そ、それはまあ……ありがとうございますわ……それであなたは?」
「うさ晴らしをしていくでござる」
一応礼儀としてワルイザは辞儀をすると、相変わらず甲高いメタルの靴音を響かせて走り出す。
そしてその背後では、なんかもうヤケになったような様子のエドゥアルトが火炎放射器を振り回し、何が起こったのかわからない哀れな無数の百獣族たちを、こんがりローストスライムにしていったのだった。
「ちくしょーせっかくのナイスパンツアイディアが! 八つ当たりファイヤーを喰らええ! 汚物は消毒だァ!!」
「グワーッ!? えっ、なんで俺たちこんなに恨まれてんの!? っていうか、汚物なのはどっちだー!??」
そんな悪夢のような光景を見ながらワルイザはしみじみと思う。
「……やっぱり、人間って一回怒られないといけないのではございませんかしら?」
大成功
🔵🔵🔵
建依・莉々
「パワーのツヴァイ! 見参ッ!」
ノーキン? バルバロイ語ですか? よく分かりません。
お揃いの衣裳でレディに背を預け、力任せに吶喊します。にしても、数多いよね? うー、めんどくさい! よし、フラグたてよう!
「レディ、ここはツヴァイに任せて、先に行って。大丈夫、後で必ず追いつくから。」
皆をジャイアントに前方にスィング、お星様にした後、獣機たちを鏖殺します。
「核もとれてない原生生物めが! 真の液状生物の力、思い知れ!」
装甲の隙間から力任せに侵入。で、核をちゅるん、と。んー、生牡蠣を食べる要領? おかわり無制限だよね? どんどん喰べて、戦力無限アップ♪
ちょっと(食)休んだら、追いかけるから。待っててね
それは、あたかも地平線の彼方までも埋め尽くしているのではないかと思われた。
砂塵を巻き上げ、大地を踏み割り、ニクマレンコ領内を怒涛の勢いで進軍していく、
百獣族の大軍勢は。
それはあまりにも圧倒的にして絶望的な光景。おお、領内の領民たちは、このまま百獣族の爪牙に掛けられ壊滅してしまうのを待つだけの運命なのか。
いや、そんなことはない!
「おーっほっほっほ! かめぇぇん・レディィ! ここに見参ですわッ!!」
美しく響く高笑いと共に、マントを翻し颯爽と現れたものこそ、貧民の味方、盗賊騎士にして救世主たる美少女、仮面レディ! そして、今宵は彼女ばかりではない!
「そう、今夜は私とあなたでダブルレディですもんね──おっほっほっほ!」
第二の高笑いが芸術的にハモったコーラスめいて響き渡る! その主こそは!
「かめぇぇんレディィィ・ツヴァイィィッッ!!! 見参ッッ
!!!!」
髪色こそ暗黒にも勝り深く艶めく漆黒ながらも、仮面レディと同じマントとマスクを身に付けた第二の戦士! 仮面レディツヴァイなのだ!
ではそのプロセスを説明しよう!
仮面レディことワルイザ・ニクマレンコと深い絆で繋がれた建依・莉々(ブラックタールのどろんバケラー・f42718)は、ワルイザから借りた仮面レディのスペア衣装を急いでまとうことで、仮面レディツヴァイに変身するのだ! ちなみに本来の莉々はちっさいのでちょっとぶかぶかのはずだが、形状を変化させることで何とか体形を合わせている!
「技のレディ! そして私はパワーのツヴァイ! 二人そろえば敵はありません!」
「その通りですわ! さあ参りますわよツヴァイ!」
二人は頷きあうと、勇躍、黒雲のごとき百獣族の大群の中へと共に飛び込んだ。
同時、仮面レディの腰間から白銀の閃光が迸る。美しくも鋭利なる
刺突剣が抜き放たれたのだ! 一条の剣閃が舞うところ、スライムたちの体躯には次々と風穴が空く! 彼女のあまりの剣速に真空状態が起き、それがスライムと言えども多大な傷を与えるのだ。
「ふわああ、カッコいい……私もレイピア使えればよかったなあ。でも私は
素手喧嘩の方だからなあ……」
うっとりと友を見つめる莉々に、仮面レディはウインクを送った。
「ツヴァイ、あなたにもあなたのレイピアはあるはずですわ。さあ、想像力を解き放って!」
「えっ? ……あ、そうか!」
一瞬首を捻った莉々は、己の手を見る。その指先を。固く握りしめたその拳の、人差し指と中指の二本が揃って伸ばされた。
「これぞ名付けて! ツヴァイレイピア―ッ!!」
轟然!!
おお、空気を斬り裂き空間を引き裂いて唸った莉々の二本貫手がスライムたちにまともに叩きつけられ、次の瞬間、爆音と共に敵を弾き飛ばしたのだ! ただでさえすさまじい莉々の超パワーが二本の指にピンポイントに凝集された結果、その威力は敵キャバリアの装甲を容易く撃ち砕き粉砕する!
「ただの力任せじゃねーか!? しかしなんて力だ、この脳筋娘!」
スライムたちは二人の仮面レディの攻勢に僅かにたじろぐ。
「ノーキン? ちょっと何言ってんだかわかんないですね。やっぱ
百獣族は
野蛮言語ってことかな!」
「あー! 貴様! それは差別発言だぞ!?」
「うるさいそもそも侵略して来る奴が権利語るな!!」
至極もっともなド正論と共に、莉々のツヴァイレイピアが連続で炸裂する! それも左右の手での連撃だ! 素手ならではの間断なき連環の連続攻撃に、無数のスライムたちもまとめて天空遥か彼方にブッ飛ばされる!
一方、仮面レディもまた鮮やかにして華麗な手並みで次々とスライムを葬っていく。
だが……。
いかんせん、あまりにも数が違い過ぎる。
「くっ、こんなところで時間を浪費するわけには参りませんのに……」
仮面レディはマスクの下で臍を噛む。そう、目的はここで雑魚を相手に戦うことではなく、あくまでも、敵軍を突破して百獣族の将のところに行きつき、話をすることなのだから。
むむ、と莉々は眉根を寄せる。こうなれば!
「うー、めんどくさい! よし、フラグたてよう!」
「ふらぐ……?」
きょとんとした顔の仮面レディに、莉々はにこっと微笑を送った。
「レディ、ここはツヴァイに任せて、先に行って。大丈夫、後で必ず追いつくから!」
「……わかりましたわ。あなたを信じます、ツヴァイ。必ず後でお会いしましょう!」
仮面レディは微かに心配そうな視線を残したが、しかし決断的に身を翻す。今は案じる時間もためらう時間も惜しい、それは二人ともよくわかっているのだ。
「うん、じゃあ、ちょっと我慢してね?」
「はい?」
聞き返す間もなく──
莉々は仮面レディの両足を掴み超高速の大回転を開始したのだ! そのあまりに威力に、砂塵が巻き上がり旋風が吹きすさぶ!
「ちょ、え、えええええ
!!!!????」
「そーれ、飛んでけー
!!!!!」
十分に加速をつけた莉々は、そのまま仮面レディを敵軍の頭上を越え遥か前方へと超特大フライハイ!
「シリアス展開じゃなかったんですのぉぉぉぉぉ
!!??」
そんな声を後に曳きながら、仮面レディはきらりんとお星さまのごとくに天空へと消えていったのだった。
「うわ、お前……引くわー……友達だろ、あれ」
「フッ、これぞ絆と友情のレディ大車輪! さあ残るはお前たちだけよ!」
ニヤリと笑うと、おお、何たることか、莉々の体がどろりと溶けた。これぞ、ブラックタールたる彼女の本領!
ぎょっとする百獣族たちの反応もしかし遅い! 次の瞬間、ぬるっと蕩けた莉々の体が、ねじ込まれるように敵の装甲の隙間から入り込んだのだ!
悲鳴を上げるスライムたちの核を次々と莉々は捕食し、その力を無尽蔵に増加させていく。破壊と殲滅の宴がここに始まったのだ。
「あははは! 核もとれてない原生生物めが! 真の液状生物の力、思い知れ!」
「グワーッ!? お前、それは差別発言だぞーッ!?」
大成功
🔵🔵🔵
ルエリラ・ルエラ
【アドリブ改変・連携歓迎】
財宝!!!フフフ、シーフの血が騒ぐね…
私は1割でいいからね。なーんて冗談冗談!でも変わった変なものあったら貰えると嬉しいなー
颯爽と『メカ・シャーク号(ビーストタイプ)』をポーチから出して準備!
さ、ワルイザ!私の後ろに乗りなー!これで敵陣を突破するよ!
【リミッター解除】!でサメ度をあげて蹂躙だー!映画のサメパワーがついたメカシャーク号に敵はいないんだよ!ヒャッハー!ほらほら、逃げまとえー私とワルイザこそが恐怖の対象だぞー!
ふふ、どうかなワルイザ。サメの乗り心地は。酔ったら芋ポあげるから安心してね
ワルイザも仮面つけてサメグルミを着たら、さらにイカすから今度着てみるんだよ
「なるほどー、これが財宝の在処を示した古文書なんだね!」
「ええ、その通りですわ。財宝がどのようなものかはわかりませんけれど、その古文書があればきっと我が領地に新たな希望の光をともすことができ……きゃああ!? 何故猟兵さまがいつのまにか当たり前のように古文書を持ってらっしゃるんですのー!?」
なんか当然至極っぽい顔でいつの間にか古文書を手中にしているルエリラ・ルエラ(芋煮ハンター・f01185)の姿に、ワルイザ・ニクマレンコは素っ頓狂な悲鳴を上げた。
「えっ芋煮食べたいって?」
「どう空耳してもそうはなりませんわ!? そんなことより、そ、それは我が領地にとってとても大事なものなのですわ! い、いえ、もちろん猟兵さまを疑っているわけではありません。きっと深いお考えに基づき、今後の戦略を練るため、そしてわが領民を救うための深遠な方策を考えていてくださったのでsy」
「いや面白そうだったから」
「フォローが!? 私の必死のフォローが食い気味に台無しにされましたわ!?」
絶望的な表情を浮かべるワルイザに、ルエリラは、え? 九九は八十八でしょ? とでもいうような不思議そうな顔をして見せた。
「いやだってさ。これは古文書じゃん?」
「はあ……」
「そして私はシーフじゃん?」
「いえ存じませんわ!?」
「シーフの前に古文書なんて出したら、そりゃシーフの血がシーフ! シーフ! って騒いだって仕方ないじゃん?」
「あれっそうなんですの!? 抗いがたい原初の本能に導かれた的なアレなんですの!? といいますかシーフってそう鳴きますの!?」
「えっ何言ってんのさ。高貴なエルフは本能になんか支配されないんだよ」
「……もう……何がなんだか……」
力尽きたようにがっくりと肩を落とすワルイザ。彼女は何も悪くないと思う。賢明な読者諸氏もきっとそう思われることだろう!
そんなワルイザの細い肩をぽんぽんと叩き、ルエリラは古文書を差し出した。
「まあ別にこれそのものが欲しかったんじゃなくて、ちょっとシーフろうと思っただけだから。ほらこれ」
「私の知らないうちに世界ではシーフが動詞になっていたんですのね……」
半分生気を失った目で、それでもワルイザは古文書を受け取り、もぞもぞと開いてみて……。
「ニセモンじゃねーかですわー!!!」
ばしぃ! と地面に叩きつけた! その画面には「お宝はもらったよルエリラ1世」の落書きが!
「まあ私シーフだし……シーフと言えばお宝をすり替えるものだし……」
「いつの間にそんな常識改変が!?」
「一個だけじゃないよーほらほらー」
とルエリラが袖を振ると、ばらばらと古文書のダミーが雨あられのようにこぼれ出た! 転がり撒き散らかされた古文書がそこかしこに散らばる!
「きゃーっ!? どれが本物だかわからなくなりますわー!?」
金髪縦ロールを天まで逆立てて血管切れそうにしているワルイザに向かい、ルエリラはついと細い指をさす。
「えっ何言ってんのさ。本物の古文書はワルイザの懐だよ」
沈黙が支配する。ワルイザはストップモーションのようにぎこちなく自分の懐に手を入れると。
──そこから一巻の古文書を本当に取り出した。
「……本物ですわ……」
「最初からずっとそこだよ。私は別に本物の古文書を取ったなんて一言も言ってないよね? ──大体さ、人のものを勝手に取ったらどろぼうじゃん?」
「シーフじゃなかったんですのーーーーー
!!!????」
もう咽喉が駆れそうなワルイザのツッコミの叫びが果て無い荒野に轟いたのだった……。
「まあそれはさておき。さあ早くあの敵軍を突っ切らないとね?」
「えっ今から本筋に戻るんですの? ……わたくしもう……疲れましたわ……」
「む、それはいけないね。そんな時にはこれだ! じゃかじゃん! メカ・シャーク!!」
他人事のように一人元気なルエリラは颯爽と鋼のマシンを呼び起こす。それこそは絶対無敵にして熱き血潮の最強、元気が爆発して完全勝利を約束された大いなる牙! メカ・シャークだ!
「さ、ワルイザ! 私の後ろに乗りなー! これで敵陣を突破するよ!」
ワルイザの返事も聞かばこそ、ルエリラはメカ・シャークの後部座席にワルイザを放り込むと、さかさまになった彼女がもがいているにも構わず、全速力でメカ・シャークを爆走スイッチオン!
猪突猛進の勢いで大地を疾走するメカ・シャークは、並みいる百獣族軍団をなぎ倒し、みるまに死屍累々屍山血河を築いていく!
「さあサメ度をあげて蹂躙だー!」
「サメ度is何!? ですのー
!!!??」
「ふははははは! 映画のサメパワーがついたメカ・シャーク号に敵はいないんだよ! ヒャッハー! ほらほら、逃げ惑えー! 私とワルイザこそが
恐怖の対象だぞー!」
「私までサメになってたんですの!?」
そう、サメ映画の概念を現実化する、それこそがルエリラの恐るべきユーベルコード『リミッター解除』の効果だ!
そしてサメ映画の概念とは即ち! 世界はサメで満ちているということに他ならない!!
おお、なんということか! 気が付いたら、メカ・シャークに登場したルエリラとワルイザすらも徐々にサメっていくではないか! ワルイザに至っては、仮面とマントを付けた、何だそれなサメの姿に!
「うん、ナイスシャークだよ!! かっこいいなあサメ仮面!!! いや、ワルイザメ
!!!!」
「百獣族の呪いよりよっぽど呪いですわぁぁぁ
!!!!???」
砂嵐を巻き起こし去っていくメカ・シャークのシルエットから、ただワルイザ……もとい、ワルイザメの悲鳴だけが、荒れ果てた大地にもの悲しく響いていくのだった……。
大成功
🔵🔵🔵
サラ・ドラケイ
アドリブ歓迎
水底の妖精、ドラケイを知っていますか。人を水底の地下世界へと攫う、妖精あるいはドラゴン。そして――
ワルイザさんには囚われの姫様になっていただきます。
まぁまぁちょっとした小休憩ですよ。ワルイザさんを水クッション式水牢を魔力具現化して閉じ込めましたら。
多頭多腕の、5つの竜頭ハイドラキャバリアで水牢を抱え進みます。
餌が必要ですね。「ワルイザさんには、私達の乳母になっていただきます。そうして世に蔓延るワルイザファミリー、止めたくば奪ってみなさい」
【水底の狩場】発動。
ここは「水辺」、水底の妖精の狩場。「水」を制したものが勝つのです。
具現化した水で溶解液を包み込み、水上戦に持ち込み進みます。
「うーん、先頭までにはまだ結構あるようですね。ずいぶんいますねえ、
百獣族の軍勢……」
キラキラと光る水柱を目に当てて、サラ・ドラケイ(水底の妖精・f44796)はつぶやいた。
「そんな遠くまでお見えになりますの?」
驚いたように問うのはワルイザ・ニクマレンコ。この地の領主にして、仮面レディを名乗り、豊かな未来を取り戻すために秘かな活躍を続けていた少女だ。
「ああ、望遠鏡の原理です。対物側と接眼側の水の屈折率を変えて上手くレンズのようにして……まあそんなことよりですね、これ、まともに行ったら相当時間かかってしまいますね」
「それは……何とかなりませんかしら。ぐずぐずしていたら百獣族が領内に乱入し、領民の皆さんも多大な被害を免れ得ませんわ……!」
必死な面持ちで訴えるワルイザに、しかし、サラは心配ご無用とばかりにとんと胸を叩き、にっこりと微笑んで見せる。
「大丈夫、私にいい考えがあります」
「それはなんか妙なフラグっぽいセリフなのではないかという気もしますが、して、そのいいお考えとは!?」
「ワルイザさんを」
「わたくしを!」
「エサにします」
「……はい?」
目を丸くしたワルイザにそれ以上言葉を続けさせる暇も与えず、サラは真紅の瞳を煌々と輝かせると、舞うように優雅にその手をひらめかせた。と見るや、描き切った虚空の中に生まれた水滴が、あたかも意志持つ蛇のように、あるいはそう……龍のように尾を引いて渦を巻いていく。
その水流は天空目掛けて登り上がったと見えた次の瞬間、逆落としに落ちかかった! 他ならぬ、ワルイザ目掛けて!
「え、えええええっ!?」
身をかわす間もあらばこそ。水の龍はそのままごくんとワルイザを飲み込んでしまったではないか!
「きゃーっ!? エサってそういう意味ですのーっ!? ……って、あら、声が出ますわ……息もできますの……?」
パニックになりかかったワルイザだったが、自分の状況を確認してきょろきょろとあたりを見回す。その光景に、サラはくすくすと笑みを漏らした。
「はい、大丈夫ですよ。それは魔力を具現化した水の牢……いえ、水のスイートルーム。普通の水ではないので呼吸も発言も可能、さらに水のクッションを備え居住性も抜群!」
「ふかふかですわ!」
「水の高い保温性により冷暖房完備!」
「ちょうどいい温度ですわ!」
「適度な水圧によるマッサージ効果で体もすっきり!」
「どんどん健康になっていきますわ!」
「さあ今すぐお電話を! ……って、ワルイザさんも大概ノリがいいですね?」
「……つい謎のテンポに乗せられてしまいましたわ……でも、これで一体どうなさいますの?」
ワルイザの言葉に、サラは真っ直ぐに敵陣を指さした──。
「ふふふ、うふふふふふ! さあ世に蔓延るワルイザファミリーのお通りです! 止めたくば奪ってみなさい!!」
大気が切り裂かれる悲鳴が聞こえるほどの勢いで荒野を驀進して行くのは悪夢かそれとも幻影か! 神秘のヴェールに隠された伝説の中にしか存在せぬはずの、それはあまりにも異形なる恐るべき姿──
多頭妖蛇に他ならぬ!
そう、これこそがサラの代名詞にして切り札、禁断の人造龍騎、ハイドラキャバリアだ!
そのハイドラの頭の上に仁王立ちしているのはサラ! 水の流れでコネクトし、コクピット外から操作しているのだ。
そしてハイドラが五つの頭でしっかりと保持しているのは、まさに水の牢──ワルイザの姿がその中にはっきりと見える!
「何っ、あれは確かこの地方の領主ではないのか!?」
「ワルイザファミリーとは一体!?」
闖入者の異様な姿に思わずどよめく百獣族たち。その彼らに対し、サラは言い放った!
「ふっふっふ。ワルイザさんには私たちの乳母になっていただきます。つまり! これから領主の館はハイドラの卵で一杯になるのです!」
「な、何ィ!?」
「何ですってっ!?」
「いやワルイザさんまで驚かないでください……とにかく、
百獣族たちの敵視する『架空の神』──ハイドラでこの大地を埋め尽くされたくなければ、ワルイザさんを奪うことですね」
「おのれ人間どもめ許さぬ! 皆の者、掛かれっ!!」
憤怒の形相で一斉にハイドラに襲い掛かり、ワルイザの水牢を奪おうと試みるスライム獣騎たちの勢いはまさしく修羅にして悪鬼! 触れるものみな喰らい尽くし引き裂かんと見えるほどの凄絶な攻撃が叩きつけられる!
おお、だが。
スライムどもがいかにその粘体をうねらせ、くねらせて虚空を圧し猛威を振るおうとも、ハイドラに通じるはずはなし!
なぜならば──。
「水辺にあって我がハイドラに勝るものなし。そう、ここはすでに……『水底の狩場』なのですから」
周囲に目を向けるゆとりあらば気づけたかもしれぬ、サラの恐るべきユーベルコードの発動により、ハイドラの周辺の地形が刻々と水辺へと変えられていくことが。
だがスライムたちはそれを見落とした。巨大なキャバリアが鎌首をもたげて進撃する、その頭上に立つサラと、ハイドラが抱えるワルイザの姿に、──視線を上方誘導されていたために。そして、サラの煽りに乗せられていたために。
「ふふ、敵の集団が長大ならば、あえて引き付け、一か所にまとめてしまえばいいのです。そうすれば突っ切る距離は短くて済むというだけの話。さあ、もう少しで先頭につきますよ、ワルイザさん」
サラの語りにワルイザは頷き、最後の戦場へ向かう覚悟を新たにするのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『獣騎トロウル』
|
POW : ツインアームハンマー
【岩の弾丸】を浴びせつつ対象に接近し、【両腕振り回し】で攻撃する。同時に、敵の攻撃は【腕】でパリイ可能になる。
SPD : トロウル無敵装甲
狙った対象1体を殺すか凶器「【左腕に装着したロックスピア(岩槍)】」を手放すまで不死となり、対象への殺傷力と追跡力も3倍になる。
WIZ : ハイパーナックル
【棘の生えたハンマー状の右腕】が命中した敵の【背骨】を叩き割る。高所から攻撃する程命中率上昇。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
かくして──
ワルイザ・ニクマレンコと猟兵たちは、
百獣族の軍団を突破し、その先頭までたどり着いた。
「古文書の謎が解き切れなかったことだけは心残りですが、そんなことを言っている場合ではありませんわね……しかし、『気高き心が開かれたとき、その奥底深くより大いなる宝は目覚める』とはどういう意味なのでしょう……」
だが、僅かに遅れたか! 百獣族はすでに城門近くまで迫ってきていた!
そして、なんたることか……!
「城門が閉められていますわ! 避難民の皆さんがこんなにいますのに、それを締め出して!!」
城門前には多くの民衆が百獣族から逃れようと押し寄せていたが、領主の城は跳ね橋を上げ、固く門を締め切って、冷酷にも、一人たりとも入れぬと言わんばかりの構えだ! 城の堀は水が枯れているとはいえ、深く険しく、とても足弱の女性や老人、子供が渡れる状態ではない。
「叔父様! これはどういうおつもりですの、人々を避難させてくださいませ! 人は──人こそはこの大地の本当の宝なのですわ!」
必死に叫ぶワルイザの声に、城壁の上から僅かに覗かせたのは、ラグロー伯の神経質そうな顔だった。だが、仮面をかぶったままのワルイザを見、ラグロー伯は怒鳴り返す。
「う、うるさい! 百獣族がそこまで来ているのに城門を開ける馬鹿がいるか! む、貴様、仮面レディだな! 盗賊騎士ごときに指図されるいわれはない! そもそも、何が宝だ! こんな荒れ果てた領地や瘦せこけた領民が宝であるものか! そこで我らが逃げるまでの時間でも稼いでおれ!!」
ワルイザは長い睫を震わせ、悲しみに満ちた瞳で相手を見つめると、決意を込めて自らの仮面に手を駆けた!
「弱き人々を護るために危地に赴くことこそ騎士の義務。それをお忘れとは情けない……。ならばその目でしかとご覧あそばせ! わたくしこそが領主、ワルイザ・ニクマレンコその人ですわ!!」
ラグロー伯も、城兵たちも、そして無論民衆も、宙に舞った仮面に一斉にどよめく!
「わ、ワルイザ……!? そんな馬鹿な
!!??」
「か、仮面レディ様の正体はあの悪徳令嬢だったのか!?」
「しかし、今のお言葉……あれがワルイザ様の真意だったのか……!」
そこへ──巨大な影が差す。
見上げるばかりの逞しい巨躯を誇る、それこそは百獣族の将、獣騎トロウルの姿だった!
「ふむ……。この地は愚かなる領主による暴政が支配しているとの話であったが、どうやら多少実情は異なっていたようだな。そこなる令嬢、貴公には真なる騎士の誇りと気高さを見た。無論、我が一族の怨みを忘れることはできぬが、その高貴さに免じ、軍勢をもって蹂躙はせぬ。正々堂々、一対一の決闘を申し込もう!」
トロウルは断ずると、ワルイザの隣に並び立つ猟兵たちに視線を移し、にやりと笑むのだった。
「古来、決闘には代理人を立てることも正式に認められておる。気高き心の令嬢よ、そこなるものたちに代理人を頼むのも自由であるぞ」
いよいよ百獣族の将トロウルとの決戦だ!
猟兵たちはワルイザの決闘代理人としてトロウルと戦ってほしい!
播州・クロリア
自ら仮面を捨てるとは
ラグロー伯はもう終わりでしょう
残るは百獣族ですね
ではワルイザさんに代わりこの播州・クロリアが決闘の相手となります
ワルイザさんはお気になさらず
共に踊りリズムを共有したのです
一心同体といっても過言ではないはず
だからこれは私の決闘でもあります
({舞狂人形}に搭乗する)
言わずとも理解できているようですね
さすがは舞狂人形
彼らの思いを受け止め
そして我らの思いで跳ね返し
証明するのです
この地を守り抜くことを
(直立し左足、右足の順に大地を踏みしめるように力強く足を繰り出し、左腕、右腕の順に押しのけるように勢いよく腕を伸ばすと{岩石の旋律}で『ダンス』を始めるとUC【蠱の砦】を発動する)
「では、ワルイザさんに代わり──この播州・クロリアが決闘のお相手仕りましょう。この大いなる舞台の幕開け、お任せ願います」
獣騎トロウルとの恐るべき決闘に対し、開口一番、軽やかな足取りで進み出たのは、舞姫、播州・クロリア(踊る蟲・f23522)だ!
彼女は、城の窓から青ざめた顔を震わせているラグロー伯の姿を認め、冷たい軽蔑を込めてちらりと見やると、言い放つ。
「窮地に陥って簡単に「仮面」を脱ぎ捨てる……ラグロー伯ももう終わりですね。人々のために「仮面」を脱ぎ捨てたワルイザさんとはまさに雲泥の差。ならばあとは
百獣族のみです」
「ほう、貴公か。先ほどの戦いは見せてもらった。その異形なるキャバリアの主だな。少女と言えど相手にとって不足なし、掛かってくるが良い」
トロウルは山岳を思わせる巨大な体躯の頂に輝く瞳でクロリアを見据え、不敵に言い放った。決して相手を侮ることもなく、それでいて豪も揺るがぬ自信に満ちた、堂々たる武人の姿である。
「クロリアさま、ここまで連れてきていただただけでも十分ですのに、その上さらにそんな危険なことをあなたにお任せするわけには……」
ためらうワルイザに、クロリアは太陽のように莞爾と微笑んで見せる。
「ワルイザさん、私はあなたと踊り、リズムを共有しました。つまりあなたは私のダンスパートナー。パートナーは一心同体であるべきもの。ならばあなたの敵は私の敵、あなたの決闘は私の決闘です。ご心配なく。……そうですね、『舞狂人形』?」
手を掛けたクロリアの語りに、巨大なる異形のキャバリア『舞狂人形』は謳うような調べを奏でる。それは既に戦を見据えた獣の美しき血の光!
「理解できているようですね、さすがは舞狂人形。では──開幕です!」
小さな身を風のように翻しクロリアはキャバリアのコクピットへと搭乗する。祈るようなワルイザの視線を背中に受け、舞狂人形は今、大気を震わせる
咆哮を上げて起動した!
今ここに、古来より伝わる神聖なる
決闘の火蓋が切って落とされたのである!
「遠慮はせぬ! 参るぞ!!」
獣騎トロウルは相手の様子を見るなどと姑息な真似はせぬ、その巨躯と剛力を活かし、初手から強襲に打って出る! トロウルの手に取られた無数の巨岩が、まるで小さな石ころを弄ぶかのように軽々と飛礫と化して舞狂人形の元へと降り注いだ! その様はまさしく世界最後の日に荒れ狂う暴風の如しだ!
そしてそのいきなりの全力は、クロリアと舞狂人形に対し、最も有効な戦法でもあった。クロリアは相手の動きを読み、リズムを感じ、それと共鳴して敵の動きを見切る。ゆえに、クロリアに対しては、動きを読む間も与えもせず最大の破壊力をぶつけるのが最適解!
だが!
「恐るべき相手! そう、ダンス……例えばバレエは、古来、確かに計算に基づき構築された動きでした。その意味では相手にリズムを読ませないあなたの攻撃は正しい。ですが……ダンスは常に進化しているのです」
クロリアは動ぜず、舞狂人形に指示を出す。
「舞狂人形、インプロヴィゼーション!」
その声に応じ、舞狂人形はその巨体をくねらせ、さざ波のようにそよ風のようにそよがせて、次々と巨岩の投擲を回避していく! そう、これこそは
即興舞踊、計算に頼らぬ本能と直感とセンスから滔々と湧き出る、ダンスの新たなウェーブだ!
「やるな、見事! だがこれはどうか!『ツインアーム・ハンマァーッ』!!」
獣騎トロウルは大地の底から響き渡るような唸る声を上げると、その鋼の両腕を烈風のように振り回しつつ舞狂人形に浴びせかける! 恐るべき円の動きから生み出される破壊力は天地も覆さんばかりだ! さらにその回転は相手の攻撃を弾き返す、まさに攻防一体の恐るべき技!
まともに受ければ舞狂う人形も無傷ではすむまい。だが、……クロリアの教えを受けた舞狂う人形の挙措に僅かな隙もなし。
「左……右……!」
静かに念じるようにクロリアはささやく。その声のもと、舞狂人形は足を踏み出し腕を舞わせた。勢い良く、されど無粋な力任せではなく、制の中に満ちた剛の強さを感じさせながら。
空間をひしゃげ押し潰すほどの勢いで叩きつけられたトロウルの鋼の腕を、舞狂人形は──おお、巻き込むように取り押さえた! それはトロウルの『円』の動きをも超えた、三次元的な舞──『球』の動きと化して! これぞ武にして舞の極みだ!
「何っ!?」
驚愕するトロウルに、クロリアは語り掛ける。
「あなた方の古き想いは受け止めました。されど、今を生きる私たちの想いも譲るわけにはいかないのです。──『
蠱の砦』!!」
瞬時、舞狂人形の背から三対の脚が飛び出す。鋭い爪を生やした蟲脚は、凄絶な威力をもって、動きを止められ姿勢を崩されたトロウルに叩きつけられた!
蟲の脚は身長の数十倍もの跳躍力を生み出すもの。それがキャバリアのスケールで唸りを上げた時、さしもの巨大なる獣騎と言えども持ちこたえることはできなかった。強烈な衝撃はトロウルの体内を破壊しながら通過し、その背面の装甲が吹き飛ぶ!
「ぐおおおおっ
!!??」
苦悶の呻きを上げ頽れるトロウルに、クロリアは静かにつぶやくのだった。
「これが証明です、私たちがこの地を守り抜くという誓いの」
──一方、その凄まじい戦いの中で、まだ気づいたものはいなかった。
キャバリア同士の激突の衝撃で、微かに大地が悲鳴を上げたことに。
大成功
🔵🔵🔵
サラ・ドラケイ
アドリブ歓迎
水の妖精が絡んだ事件の死因は溺死が多いものですね――
渇いた大地もまだまだ受けて止めてくれそうですね。城の堀もあることですし。
その決闘、私のハイドラキャバリアと共に受けて立ちます。
背骨を叩き割られようともリジェネレート、自己再生しまして。
そちらが岩の武装、大地に纏わる何かがあるように。
私のハイドラキャバリアもまた水の精霊力特化型。人造竜騎標準の飛翔を持ちながら、空でキャバリアを溺れさせるほどの水生成。
魔力制御、魔力具現化、魔力系技能をフルに【水底の水球】(水球サイズとX倍の個数はお任せ)を叩き込みます。
水球の過剰分は適度に散らして大地に潤いを、堀に水を満たしましょう
「その決闘、私のハイドラキャバリアと共に受けて立ちます」
凛とした声で宣したのはサラ・ドラケイ(水底の妖精・f44796)。彼女の声と同時に、周囲に浮かぶ清冽な水泡たちが踊るようにうごめき、きらめいた。
「水の異形なるキャバリア使いか──よかろう、獣騎の名において、我としてもその存在、見逃すことはできぬ。いざ、正々堂々と雌雄を決しようぞ!」
獣騎トロウルは雲つくほどの鋼の巨体を揺らがせ、進み出る。その超重量に、大地が悲鳴を上げ、乾ききった大地にさらなる罅が走った。
その光景を見、サラはやれやれと首を振る。
「潤いが足りなすぎますね、この大地には。そしてあなたも、怒りっぽいのは水分が足りていないのでは? 心にも常に潤いを、といういい言葉があるでしょう。──まあ私が今考えた言葉ですが」
「我ら一族の潤いを奪ったのは人間たちである。爾来、我らの心はまさしくこの大地のごとく、常に乾いている、乾ききっているのだ。人間たちのためにな! さあもう戯言は無用、いざ勝負!」
韜晦するサラの言葉にも動じず、獣騎トロウルは巌のような腕をガツンと両胸の前で鳴らし、臨戦態勢に入る!
「あなたたちの事情は存じています。しかし水はいかなる乾いた大地にも沁みとおっていくもの。水の妖精として水の力、お見せしましょう!」
サラもまたハイドラに騎乗し、起動する。多頭の異形なるシルエットが咆哮を上げ、大気を圧してその威勢を示した。
片や鋼の巨大なる魔人、片や多頭を蠢かして猛る妖蛇、ここに、
聖なる決闘にしてはあまりにも異様なる魔獣決戦の火蓋が切って落とされたのだ!
ハイドラはその複数の頭を鞭のように振るい、大気を切り裂く鋭さでトロウルに肉薄する。激しく火花が散り、激音と共に、ハイドラの無情なる妖牙がトロウルに突き刺さる!
だが、それは未だ装甲表層だ。トロウルはその鉄塊そのものの腕をがっきと組み合わせて不壊の盾と為し、牙を急所深くまでは届かせぬのだ。
逆に──その身に何本もの蛇頭を絡ませたまま、おお、なんと、逆に巨体と無双の剛力を利し、トロウルはハイドラを押し込んでいくではないか。
二体の巨魔獣の力比べが大地に悲鳴を上げさせ、濛々と土煙が上がり、地盤が捲れた。
しかしさすがにシンプルな力比べにおいてはトロウルに利があったか。トロウルの目が爛と輝き、その腕のパワーケーブルが盛り上がったかと見るや、──トロウルはハイドラを大きく投げ飛ばした! 領主の城すら崩壊させんばかりの大震動が大地に走る!
「……っ!」
その衝撃に一瞬視界を奪われたサラは、相手の巨体が視界から消えていたことに気づく。
同時、ハイドラが高く吠えた。
多頭のハイドラに死角はない、すべての方向を同時に睥睨することが可能なのだ。
だが、その時、ハイドラが吠えたのは。敵の姿を捕捉し、サラに教えたのは。
──天空であった!
「上──!」
おお、何たることか──! トロウルはその巨体をもって、天高く跳躍していた! 巨大なるボディに有り余る溢れるばかりのパワーは、山のような巨躯すらも天に舞わせることを可能とせしめたのだ。
裁きの雷かと思われるほどの勢いで、トロウルはその勇壮なる拳を、天高くから大地のハイドラ目掛けて──真っ直ぐに振り降ろした!
「ハイパァァ・ナックルゥゥゥッ!!」
世界が砕ける音がした。
……いや、それは。その、あまりにも非情にして乾ききった音は。
拳を叩きこまれたハイドラの
背骨が叩き折られる音であった。
「ああっ、サラ様!」
両手を胸の前に組んでサラを見守っていたワルイザの悲痛な叫びが響き渡る。
勝利を確信したトロウルが腕を差し上げようとした時。……しかし。
その腕を──蛇頭が捉えた!
「なんだと!?」
「水の流れは無形にして無窮。水を砕くことは誰にもできません」
サラの声が響くところ、見よ。
あたかも水を切っても打っても意味なきがごとくに……砕かれたはずのハイドラのフレームが癒着し、再結合し、以前の姿を取り戻していくではないか! そう、この不死身たる
自己再生こそがハイドラの恐るべき能力であったのだ!
「おのれっ!!」
力づくでハイドラの頭を振りほどき、トロウルは再び空へと跳躍する、しかし。
「あなたの跳躍はお見事。しかし私たちは、跳ぶのではなく──翔ぶのです」
サラの言葉すら風に乗って消える前に、ハイドラはその異形の姿を上天遥かに飛翔させていた……トロウルより高く!
「大地に潤いを、世界に水を、そしてあなたには敗北という名の救いを」
サラの詠唱が響き、ハイドラの周囲に生まれ行くのは水球──いや、あまりにも巨大なるそれは水の塊とさえ言えぬ、あたかも、一つの海が天空に現出したに等しい! 聳え立つほどのキャバリア、獣騎トロウルですらも飲み込み潰すに十分以上なほどの!
「『――水底の水球』」
それは絶対にして決定的なる宣言。天そのものが落ちかかるほどの大質量の水が、あまりにも鮮烈に、そしてあまりにも美しく──。
すべてを飲み込み、消し去っていった。
……トロウルは最期まで無言であった。
彼は何を思っただろうか。自分たちの心と同じように乾いていると言った大地を、一時的にだが水が覆う光景を見ながら。……豊かで慈悲深い水が、乾いた景色を彩ってくれた光景を見ながら。
鋼のマスクの下のその顔を見ることはできず、マスクに感情が浮かぶことはない。
それでも。たとえそれが、水の屈折で歪んだだけかもしれないとしても。
「……ちょっとだけ笑ってくださったように、私には見えましたよ、トロウルさん」
大成功
🔵🔵🔵
建依・莉々
「代理人? 何を言ってるのかな? 仮面レディがそんなことする筈ないじゃない!」←期待に満ちた輝く瞳
そう! 誇り高き仮面レディは、正々堂々立ち向かって、そして華麗に勝利するの♪(レディの泳ぐ瞳は見えていません) でも、やっぱりチョットだけ心配だよね。ここはコッソリ隠れて、レディの闘いを手助けしましょう!
こっそり獣機の足下に、影のように薄く延びて張り付き文字通り足を引っ張ります。攻撃の隙を作ったり、逆にレディが攻撃をかわせるように。そしてレディの大技に合わせて、思い切り地面に叩きつけてやります。
バレたら? 「わたしはツヴァイなんだから! レディと一心同体なんだから! だからこれは、一対一よ?」
「そこなるものたちに代理人を頼むのも自由であるz」
「はあ? 何を言ってるのかな?」
建依・莉々(ブラックタールのどろんバケラー・f42718)は食い気味に獣騎トロウルの言葉を遮った!
「何をって……いやだから代理人をだな……?」
「舐めないでよ? こちらにおわすお方をどなたと心得るの!? 恐れ多くも気高く誇り高き孤高の盗賊騎士にして人類の自由のために戦う戦士! 百獣族狩りの女!(1カメ2カメ3カメ) 仮面レディ! なのよ! ねえレディ!?」
「えっアッハイ!?」
いきなり話を振られ、ワルイザは慌ててさっき投げ捨てた仮面を拾い直して再装着! 再び仮面レディが現出した!
「そんな仮面レディが、代理で戦ってもらうなんてするはずないじゃない!ねえレディ!?」
「あれっそうなんですの!? いえ確かにこれはわたくしの問題であって皆様に負担をお掛けするような立場ではないのは重々承知ですがつまりそのシナリオの流れがですわね!?」
「もー、ダメよレディ、そんなメタなこと言っちゃ」
「あなたがそれ言っちゃうのかなーですわ!?」
レディの言葉をコホンと小さな咳払い一つでシャットダウンし、莉々は改めて獣騎トロウルの巨大な姿に対し人差し指をずいと突きつけた!
「きっとあなたは、レディと戦うのが怖くて、代理人と戦ってもいいぞ俺様は度量が広くて寛大だからな的なことを言い出したんでしょう! このズルっこ!!」
「待て今度は我がターゲットなのかこの全方位爆撃娘は!?」
「でも残念ね、レディは代理人なんかに逃げるような卑怯な人じゃないんですから! 誇り高き仮面レディは、正々堂々立ち向かって、そして華麗に勝利するの♪ ねえレディ!」
「え……まあその……はい……」
莉々の言い方はともかく、本人が戦うべきだよね―的な主張はド正論である上、仮面レディことワルイザも他者に重責を負わせるような子ではないため、下手に逆らえない! 言い方はともかく!
「……まあ当人がいいなら我もそれでいいのだが……構わぬのだな?」
「ももももちろんですわ! さあ掛かってらっしゃいませ! おーほっほほほ! ……えーん……」
仮面の下の涙をぬぐえ。
ともかくも仮面レディ対獣騎トロウル──すなわち、全長10mほどにもに及ぶ巨大キャバリアに猟兵でもない女の子が生身で挑むという、なんか変な趣味に目覚めそうなバトル、いや
聖なる決闘は開始されたのだ!
「もうヤケですわ! レディレイピア―!」
ひゅんひゅんと風を切ってレディのレイピアが抜き放たれる! 無論レディの剣術自体は本物であり、雑魚百獣族程度なら相手はできる。しかし何と言っても相手はこの軍団の将である獣騎であり、それに加えて。
トロウルもすっかりその気になっていた!
「うむ、その勇気見上げたものよ。ならば我も手加減などしては帰って礼を失するというもの! 全力で相手をしよう!!」
「ぜ、全力でですの……?」
「いつでも全力全開である! 本気とかいてマジと読むくらいのガチンコである!」
「……も、もちろんそう来なくてはいけませんわ! おーっほっほ……えーん……」
レイピアを構えるレディに、獣騎トロウルは本気でその巨大な鉄腕を振り上げて一気に叩き潰そうと向かってきた! 大人げない!
だが、仮面レディ危うしか!? と見守る民衆が手に汗を握った瞬間。
「ぬ、おおおおお!?」
何が起こったのか! トロウルの山のように巨大な体がぐらりと揺れたではないか! それも大きくバランスを崩し、なんかこう、誰かがちょこんとつつきでもすればひっくり返りそうなくらいに!
「……ちょこん、ですわ」
そこにレディが渾身の一撃を加えたものだからたまらぬ! さしもの巨体を誇るトロウルも、凄まじい勢いででんぐりかえった!!
「ぐあわああああ!」
悲鳴を上げるトロウルと、大歓声を上げる民衆たち!
「おお、仮面レディ様が……ワルイザ様がやったあ!」
「さすが仮面レディ様! さすかめ!」
そんな歓声の中、こっそりと会心の笑みを浮かべるものが一人。
(ふっふっふ、陰からそっと親友の手助けをする私……カッコいい……!)
そう、よく見れば、大地に薄黒々と延びているのは影ではない。それは、薄紙のように形状を変えた莉々であったのだ。これぞブラックタールたる彼女の本領発揮である。すなわち変形した彼女がひそかに獣騎トロウルの脚に絡みつき、その動きを封じてひっくり返したのだ。
「おのれ、何かわからぬが油断した! だが今度は!」
「そうは参りません!今ですわ!」
起き上がろうとするトロウルと、そこへ追撃のカウンターを叩き込もうとする仮面レディ。しかしまたしても!
「ぐおおっ!?」
急にぐいとのけぞった姿勢になったトロウルの首元に、僅かな装甲の間隙が生まれる。そこへ仮面レディのレイピアが狙い過たず突き刺さった! その凄まじい一撃は、トロウルの内部構造を見事に破壊する!
「ぐ、ぐおおおお!!」
トロウルは首から激しく火花を上げて呻いた。いかに鋼の巨体であっても情報端末が集中する頭部へと繋がるケーブルが破断すればそのダメージは計り知れない。
「今ですわ! はああああ!!!」
勝機と見たレディは集中し、全身に力を籠めていく。そして民衆たちは見た、レディの背後に湧き上がる、大いなる力の波動を!
「おおっ、気のせいか、レディ様の後ろに何か大きなシルエットのようなものが見える!」
「きっとあれはレディ様の高貴なるオーラ! 真の達人のみが纏う闘気というものに違いない!」
民衆も一気に盛り上がった! いやそんな厨二設定で納得しちゃうのか君たち! 無論それはオーラっぽい形状に見せている莉々の姿なのだが!
「レディィィ!! ダァァイナミック!!!」
次の瞬間、仮面レディの裂帛の気勢と共に繰り出されたレイピアの一撃は一直線の斬撃となり、謎のシルエットと共に獣将トロウルに叩きつけられた!
「ぐわあああああ! 見、見事なり、仮面レディィィィ
!!!!」
断末魔の叫びをあげ、獣騎は派手に散ったのだった。
「……でも、これでよかったのかしら。結局あなたの力をお借りしてしまいましたわ」
湧き上がる民衆を見ながら、ふう、と吐息をつく仮面レディに、足元の影、いや莉々がくすっと笑みを漏らす。
「あれ、気づいてた? えへへ」
「……そりゃ気づきますわ!」
「まあ、いいじゃない」
莉々は楽しげに頷く。
「わたしは仮面レディツヴァイなんだから。つまりレディと一心同体、だからこれは、ちゃんと一対一よ? っていうか最後はレディもノリノリだったし」
「そそそれは! まあその……否定はしませんが……」
紅く頬を染めるレディの背中を、お気楽にぽんぽんと叩く莉々なのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ルエリラ・ルエラ
【アドリブ改変・連携歓迎】
おお…コテコテの悪役だラグローの人。ちょっと感動しちゃうね
しばくのめっちゃ楽しみだー
さて、ワルイザの代理は私がやるよ
それはそれとして、トロウルの皆も逃げてきた皆も一旦芋煮食べて休憩しよ。疲れたでしょ。どうせ私が勝ってもトロウルの人が勝ってもラグローの人に未来はないし、皆で芋煮食べながら悪口言ってのんびりしよ
一息ついたら、レッツ勝負!
牽制射撃しながらブーツやシャーク号を使って回避に徹するよ
頃合いを見て〈芋煮ハンドグレネード〉を相手に投げて隙を作って、後方へ
【アインス】でロックスピアを持った手を狙撃。持てなくして不死状態を解除してから、そのままトドメのアインスで貫くよ!
「お……おお……これは凄いね……私は今めっちゃ感動しているよ!」
ルエリラ・ルエラ(芋煮ハンター・f01185)は、いつもの半ジト目を半ジト目のままキラキラと輝かせるという器用な方法によってその身を襲う感動を存分に表していた。
「まるで生の映画を見ているようなものだよ。そう、☆1つ──いや思い切って☆2つくらいあげてもいい映画を!」
「何のことかわかりませんがそこは☆5になりませんの!?」
「そういう面白さじゃないし……クソ映画の方の面白さだし……」
ルエリラはワルイザのツッコミをあっさり流すと、領主の城へ向かってビシッと指を示す!
「そう、あのラグローの叔父さんの人!」
「えっ、わし!?」
いきなり話を振られ、場内に小さく身を竦めていたラグロー伯は思わずその身を乗り出さずにはいられない!
「あんなコッテコテの悪役とかクソ映画でもそうそう見ないレベルだね! 令和の時代にあんなのが生き残っているとかたいしたものだよ!」
「う、ううううるさいわー!」
ラグロー伯は涙目になって叫び返す!
「PBWの悪役なんてわかりやすいくらいわかりやすいような奴でいいんだよって勢いでMSに雑に設定されたわしの気持ちがわかるか! わしだって本当は悲しき過去……とかそういう悪役がよかったのだ!」
「ああ確かにそれはいらないね」
「いりませんわねえ」
言下に切って捨てたルエリラとワルイザの痛撃にラグロー伯は撃沈!
そんな彼を放っておいて、
「さあ、そんなことよりみんなで芋煮を食べようじゃないか。トロウルの人もおいで」
「えっ我!? っていうか我は人じゃないのだが!」
今度は急に話を振られた獣騎トロウルがセンサーアイを激しく明滅させる!
「ワルイザの決闘代理は私がやるけどさ。それはそれとして、百獣族って正々堂々戦うんでしょ?」
「無、無論である」
「でも私たちはここまで急いできてお腹空いてるんだよ。そんな私たちと戦うとかズルいじゃない? トロウルの人はそれで正々堂々戦ったと言えるのかな!? どうなのかな!?」
「人じゃないのだが、む、そ、それは……!」
見よ、ルエリラのド正論にトロウルはたじたじだ! 人じゃないが!
「なら、みんなで一緒に美味しい芋煮を食べてだね。お腹いっぱいになってコンディションを同等にして、芋煮を堪能し終わってから戦うってのが本当の正々堂々じゃないかな? ということでトロウルの人も芋煮食べよう」
「人じゃないのだが……と言うかまずちょっと待って欲しい、だいたい我らは食事できるのか? 今設定を読み返す……ふむ、戦闘時に
獣騎に変身するだけであるから、非戦闘時は大丈夫そうであるな……」
「それは良かった。じゃあ避難民の人もみんなおいで―、芋煮は十分にあるからね。──叔父さんの人にはあげないけど」
「なんでなのだー
!!??」
「そんな美味しい話があると思うのかい? 叔父さんのような人に」
ハブられたラグロー伯に哀しき現在! よかったね、これで哀しき設定が生えてきたよ?
「芋煮ハブられた哀しき過去とかいらんわー!!」
ラグロー伯の悲痛な絶叫を快いBGMにして、かくしてその場の全員によるなんかよくわからない芋煮大宴会が始まったのだった。
「フッ、温かい食事か……胸に染みわたる心地がする。思えばこのような食事はしばらくとったことがなかった……あの懐かしき太古の時代以来かもしれぬな……」
たっぷりと芋煮を口にし、椀を空にしたトロウルがしみじみと漏らすのに、ルエリラは満足そうに微笑む。
「うんうん、満足したかな、トロウルの人」
「人じゃないのだが、フッ、確かにな」
「じゃあ思い残すことはないね?」
「うむ、思いのこs……なんて?」
「アインス」
まさに外道! その瞬間、ルエリラの手から放たれたのはいかなるものをも穿ち貫く必殺必中の一閃、アインスだ!
さしもの巨漢、無敵の装甲を誇る獣騎トロウルも、今は食事中ということで獣騎への変身を解いていたのだからたまらない! ただの百獣族である以上、ルエリラの矢を防ぐことはできぬ! でっけえ体のど真ん中命中である!
「グワーッ!? 卑怯!?」
「うっわあですわ……」
「うっわあだな……」
ワルイザと、城壁から羨ましそうに眺めていたラグロー伯が同時に引くわこれ的な表情を浮かべるにも構わず、ルエリラは涼しい顔で言い放つ。
「卑怯じゃないよ、ちゃんと「芋煮を堪能し終わったら戦う」って私言ったからね。そして満足したかなってしっかり今聞いた。つまりそれは、油断してたトロウルの人が悪いんだよ」
「人じゃないが理論武装整えてから罠に落とすのきったねえである!?」
よろよろとよろけながら、それでもトロウルはなんとか獣騎化を果たす。見上げるばかりの鋼の巨体、本来なら恐るべき戦闘力を発揮するはずの姿だが、しかし。
「くっ……これでは武器が持てぬ……!」
重傷を負った体では十分に力が発揮できず、トロウルは武器を取り落としてしまうではないか。すなわち、ユーベルコードの条件が満たせず、不死が発動しないのだ!
「戦いはいつの世も非情なものだからね。仕方ないね……じゃあとどめの『アインス』」
戦いのむなしさに万感込めて悲しげにつぶやいたルエリラの声が、アインスの矢音と共に鎮魂歌のように戦場に響いたのだった……。
「ぐわああああ! 貴公の方が人間じゃねえであるーーーーー!!」
「えっそりゃ私高貴なエルフだし?」
平然と流したルエリラは、しかしその時、周囲に不思議な違和感を覚えたのだった。それはエルフとしての鋭敏な感覚ゆえか、シーフとしての熟練の経験ゆえか。
「……なんか、この辺の地面、変だね?」
大成功
🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
拙者に願うなら代償が必要でござる…城の前で裸になって民衆の前でおどけて貰おうか!貴様の叔父が!
だってニクマレンコ氏にさせるのは倫理的にちょっとね…まあしたいなら止めないが…
雑に行くぞトロロイモ君!貴様のような奴は殺し慣れておるわ!
トントロ君に視線を向ければなるほどグラビティがスイと出た、イヨーッ!(ポンポン)
0Fで発動する爆発でござる!貴様如き追跡力が上がろうがお手玉のように浮かし続けるなんぞ造作もないんでござるよトロサーモン君!
別に浮かなくても岩槍をねんいりに爆破して不死を剥がしてからころころするんで結果は変わらんぞ鶏モモ肉君!
たまにニクマレンコ氏達をよそ見しよ!
爆破しないよ?ホントダヨ?
「頼み事をするなら何らかの代償が必要なのが世の習いでござるよな。Gff……ならばわかるよねえニクマレンコ氏? つまり城のm」
「ええっ、城の前で裸になっておどけて見せろと言うのですの!? なんということをおっしゃるのでしょう、あなたの血は何色ですの!?」
エドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)の言葉を食い気味に遮り、顔を蒼褪めさせてワルイザは恐怖と羞恥に我が身をかき抱いた! おお、エドゥアルトは可憐な令嬢になんということをいうのであろうか!
「いやそう言おうとしたけどまだ言ってねえ!? どっからそんな妄想力出てきたんでござる!?」
「だってそういう目をしましたわ!」
「どういう目だよ!?」
「『拙者に願うなら代償が必要でござる……城の前で裸になって民衆の前でおどけて貰おうか!』って目ですわ!」
「うわあ拙者の目便利だね! これなら酒飲んでスルメ噛み締めながら目でカラオケ歌えるね! ってそこまでメタ読んでなんでその後のオチまで読まねえんでござる! 拙者はなあ……『叔父さん氏が!』って続けようとしたんだよ!」
「ええっわしが!?」
城の中で顔を蒼褪めさせ、ラグロー伯は恐怖と羞恥に身をかき抱いた! おお、エドゥアルトは可憐なおっさんになんということをいうのであろうか!
「オイオイオイ待つでござるよ、何かその流れだと拙者がおっさんに欲情してるみたいじゃねーか!?」
「ふむ……我らが生きていた太古からはずいぶんと世の中も変わったものだ。これが新しい世の中の多様性というものか。だが安心するが良い、百獣という多種の世界にいてきた我ら、決して多様なる性癖を否定するものではないぞ」
「待てやコラ! 変な納得するんじゃねえですぞトロロコンブ君!!」
さらになんか獣騎トロウルまで口を挟んできてわけわからねえ展開になりそうな状況をこのまま座視するわけにはいかぬ。やむを得ずエドゥアルトは成り行きで代理決闘を行う羽目に相成った!
「えっと、わしが裸で踊らなくてもよいのかな……?」
「なんでそこでちょっとはにかみながら残念そうなんでござるか叔父さん氏!? ヤメロー頬を染めるのをヤメロー!!」
「代理人よ、何なら我は後ろを向いておるが?」
「うるせえトロロイモ君! もとはと言えばホンロウトウ君が余計な口を挟んでくるから話がややこしくなったんでござる! 八つ当たりをさせてもらうでござるよ……オラッ『サイコフォース』ッ!!」
説明しよう! エドゥアルトの怒りが頂点を超えた時、世界を書き換えるほどの
力が生み出され、適当に目につくものをでたらめに爆破するのだ! これ主役にいちゃだめな奴では?
ともあれ、轟然! 爆炎と爆音、爆風と爆煙が吹き上がり舞い踊り、空間をひしゃげ天地をどよもして荒れ狂う! 幾条も立ち昇る火柱はあたかも多頭の龍が吠え猛り暴れ狂う姿のようだ!
「ぬうっ恐るべき力よ! だがその隙見切ったぞ! ──『あーっ、あっちで令嬢が裸踊りしてる』!」
「なんですと!?」
おお、さすが獣騎トロウルもまた歴戦の勇者! 視線を向けた方向に爆発が起きるエドゥアルトの力を読み、視線を誘導したのだ! 危ない! エドゥアルトに隙ができるだけではなく、ワルイザが爆発に巻き込まれてしまうぞ!!
だが──。
「……えっ?」
「あれっ?」
見つめ合うおっさんとおっさん。温もりを信じあう煌めくエモーショナルなスイートタイム。
そう、エドゥアルトの向けた視線の先にいたのは、こっそり城門から抜け出し逃げ出そうとしていたラグロー伯の姿だけであったのだ!
だってワルイザや避難民たちはでたらめな爆発から身を守るために低く身を伏せていたため、エドゥアルトの視界に入らなかったのである!
必然──爆発はラグロー伯のいるその一点だけに集中する!
「ぐわーっ!!??何でわしがーっ
!!??」
ちゅどーん! なつかしの擬音と共にラグロー伯はアフロヘアと化して星の彼方へブッ飛ばされていく。
さらにそれだけではない。城門までも、いやその周辺の地面さえもが大きくひび割れ、揺らぎ、崩れ始めた! エドゥアルトのグラビティの威力に加え、これまでに戦い続けてきた猟兵たちが大地に与えた衝撃が積み重なった結果だ!
「ぐおっ、これは
……!?」
巨体ゆえに地形の影響を受けやすいトロウルの鋼の体が大きくかしぎ、揺らぐ! 一方エドゥアルトは!
「踊ってねーじゃん! 恥ずかしそうに、けれど尊厳破壊された自分自身に陶酔する背徳的な官能に溺れるような禁断の姿してねーじゃん!おのれトントロ君! だましたな!!」
「いやそこまで言っておらぬわ!?」
崩壊していく大地の中をぴょんぴょんと跳びながら更なる怒りを燃やしていた! 地形の利用はエドゥアルトの得意とするところだ!
「オラァ! 過去のバケモンにはもうやり直しなんざ無意味! いつまでも寝てろ! そんな槍でやり直すとかダジャレ言ってんじゃねーでござるよ!」
「だから言っておらぬわー
!!??」
「言いそうな目をした!!」
「うわあ我の目便利だね。これで酒飲みながら目でカラオケが歌え……そんなわけあるかー!」
次の瞬間トロウルの槍はエドゥアルトの爆発により破壊され、同時に獣騎の不死性は否定された!
「イヨーッ……ポン!」
エドゥアルトの恐るべきとどめの詠唱と共に、トロウルに集中したグラビティが、今度こそすべてを破壊しすべてを終わらせる──破局的な大爆発を起こしたのだった。
●
「……見事だ、今の時代の騎士よ……貴公の勝利だ
……!!」
トロウルの断末魔は、しかし。
どこか、永久に呪縛されていた怨念の枷から解放された安堵の意が込められていたのかもしれないように、ワルイザには聞こえた
──そして。
「……こ、これは!?」
巻き起こった大爆発と地盤崩壊の連鎖が、城門を完全に破壊すると──。
その大地の底から、大いなる獣が低く唸るような地響きと、虚空さえも震わせる鳴動が巻き起こり……次の瞬間。
枯れ果てていたはずの堀の底から、激しい勢いで水柱が噴き出したのだ。
「み、水が!?」
「水が……こんなにも!」
呆然とする民衆たちの中で、ワルイザははっと気づいた。
「これが……これこそが、宝……!」
飛沫を心地よくその身に受けながら、彼女はつぶやく。
「この硬い岩盤の底深くに豊富な水源があることをご先祖はご存じだったのですわね。領主と民衆を遮る城門の底に。けれど、その硬い岩盤を砕くには、真上に立つ城門そのものを破壊するしかありません。そう、領主たちが自分の身だけを守ろうとする気持ちを捨てなければ。それが叶った時、水源が──枯れ果てたこの大地にとっての大いなる宝が目覚めると……あの古文書の意味はそういうことだったのですわ」
煌めく水の光が眩しくも美しく人々の目に映る。
干からびていた城の堀に滔々と水が満ちていき、それはやがて干上がっていた川へとつながり、この領地を隅々まで潤していくことだろう。
そしてワルイザは、この生まれ変わった大地を、人々と共に汗水流し、美しい景色へと変えていくに違いない。
それでも、そんな土地にさえも困難な問題が起きた時は……。
きっとまた、あの高らかな笑い声が人々の耳に届くことだろう。
「おーっほほほほ! 仮面レディ! ここに参上ですわっ!!」
大成功
🔵🔵🔵