Defense reaction
それは、防衛機制であった。すなわち、過度なストレスに対処するために人間に備えられた、無意識的な心の働きである。今ならいざ知らず、かつての未成熟な心身を持った十二歳の織畑・つむぎ(羞恥心バロック・f43531)にとって、自身の精神の均衡を保つための、一つの選択。それが前述の防衛機制、というわけである。
事後承諾、金銭による等価交換、合意。
あれは……そう、黄昏時、家への帰路の出来事を今でも克明に思い出すことができる。急いで帰ろうとしたわけではない、が、何となく普段と違う道で帰ろうとしただけだ。
「……えっ」
――ガッ……! ガサガサザリッ……ドッッ!!
「かッ……は……?!」
不意に、つむぎの手ががっしり掴まれた。そして有無を言わさず草藪に引っ張り込まれる。
声を上げるまもなくそのまま、地面に押さえつけられ、馬乗りされる。押さえつけられた拍子に頭を打ってしまい、組み敷かれた衝撃も相俟って意識が朦朧とした。
「あぁ〜〜……今から俺たちでよってたかってお前を犯しまくるから暴れんなクソガキがよ」
「はいこれ決定事項ね」
「あ……いやっ」
――ドスッ!!
「う゛ッ!?」
身長140センチにも満たない、同年代の少女に比べても華奢で小柄なつむぎに対して、凶行に及んだ浮浪者と思しき男は80キロはあろうかという肥満体質の50代の男、それも一人ではなく六人だった。彼らが全体重かけてのし掛かってくれば、無力な少女は一溜まりもない。
大の大人が六人で一人の少女に群がり、地面に押さえつける。制服も、子供用のブラに下着までビリビリに破かれて、それでもジタバタともがき、声を上げようとしたつむぎを、足で全体重をかけて踏み抜いた。
「メスガキ性処理道具が調子にのってんじゃねえよッオラァ!」
「あがぁっ!? やだァッ?! ッ――ン、やべでッぐだざひいいっッいぎっ!?」
体罰、鉄拳制裁。社会的な弱者が少女に対し影響を与えるにあたって、「殴って言うことをきかせる」は禁忌でありながら、コミュニケーションの一手段として極めて有効であると言える。言葉・文字・表情の巧拙を暴力という手段で無視する。言葉が通じないんだ、ということをカラダでわからせるわけである。
怖い。恐ろしい。次に言葉でわからない相手には、つむぎはただ怯えて竦む様子、哀れみを買い情に訴える手段を選ぶ。
男たちはそれに絆される様子もなく、「顔はやめろよ」「早く順番決めましょうよ、ボコりたい人は一番最後で」などと手前勝手な都合を並べ立てている。よもや、単に性欲を処理したいとホームレスの徒党が通りがかりを適当に選んだから、という理由を、つむぎが知る由もない。当然、理性や愛情なんて欠片もない。唯一感じ取れるのは、股間の肉棒を反り立たせているホームレス男性たちが裸で居て、その全員が劣情籠った目で見てきている事実、それに対する純度百パーセントの恐怖のみである。
――グイッ、ぐにっ!
意地汚く、べたべたと手垢で汚すように、肉付きの薄い体を揉みしだく。
指の動きは余りにも拙いが、その程度の刺激にもつむぎは身を捩り、鼻から抜けるような喘ぎを漏らしている。無論快感ではなく、恐怖に息をロクに吐けないだけであったが、男たちの興奮を助長するには十分であった。
とりわけ畸形の男が、成人並どころか勃起せずとも膝ほどまである、異様に太く、長い逸物を、四肢を地面に押さえつけられ剥き出しになっているつむぎの股ぐらへあてがった。外見は酷く醜く、社会的地位も底辺と言えるほど低い。ただ性器だけが異様なほど雄大。それは彼にとって誇りでもあり、それで処女を奪われるつむぎは幸せなのだと盲信していた。
「フゥー、フゥー! 逃げたり抵抗したり通報なんてしようものなら、マジで蹴り殺すからなマジでなぁ!」
「……はっ、ぁ……ッ」
垢だらけでとてつもない悪臭を放っている浮浪者とは対照的に、つむぎは無垢でほのかに石鹸のような甘い香りが漂っていた。
「返事しろやぁッオラッ!」
――ボグッ!!
男は、そんなつむぎの秘処を、思いっきり靴先で蹴り上げた。まるでサッカーボールを蹴り上げるが如くである。
「ひっぎい゛ぁア゛ぁ?! は、ひぃい゛ぃ゛!!」
体をエビ反りにさせ、ガクガクと痙攣し、苦悶の叫び声を上げる。
痛みに股ぐらは緩み、痛苦の証として生暖かく黄色い液体を吐き出した……が男たちはそれを興奮しているのだと判断したようだ。それは大きな勘違い。愛撫といった下準備も無しに突き入れられてしまえば、痛い! としか思えないのは道理だろう。理性なき男たちにはそれもわからないのだが。
「いだぃい゛だぃ゛ぃいいッ!!」
やはりというか一切の躊躇なく乾いた股ぐらへ一息に突き刺してきた。苦痛で真っ白に染まる視界の中で、自分の臓器が掘削された感覚がつむぎの中で確かにした。
「ッああ……!」
涙を流して破瓜の痛みに悶える。足が震える。舌を突き出し喘ぐ。
――ズリュリュロロロ……!!
「んぶっ!? ……ぉえッ」
びきびきに膨張した赤黒い先端、ぷくりと腐ったような先走りの穢滴を貯めた鈴口が苦しげな吐息で包まれ、さらにその奥へと突入してきた。つむぎが大口を開けて息を吐いた瞬間目掛けて、別の男が怒張を喉奥へ貫くよう突き出したのだ。苦く、しょっぱく、饐えた腐臭のする恥垢、粘つき生臭い先走り、生々しい亀頭の弾力、その全てが予感させる汚辱。精神的な死にも等しい屈辱感であった。
――ぶぢゅるっ! ……ぐぽ!
股間に後頭部が押し込まれる要領で、縮れた陰毛につむぎの鼻先が埋まった。口腔をゴリゴリ削り取る勢いで掘削前進しながら、長大な肉槍が目指すのは喉の奥。顎を突き出したつむぎの喉元には、陰茎の形がはっきり浮き上がっている。
陰茎を頬張ったまま身じろぎし、何とか酸素を取り込もうと抵抗する。
「たまんねェッ! コイツは最高の肉便器だぜ」
「一旦抜いてろ、でるっ」
――びゅるっ、びゅるるる〜〜っ!!
「ふごっ……ふぐっ……ごっ……! おっプ?! ご、ぐぅ……ッ?!」
呼吸困難で失神する直前、ずロロロと一度引き抜いてべたんと顔に乗せる。当初は薄汚かったものの垢を食道でこそぎ落とされてか、血色の良い薄桃色を取り戻した肉槍は、雌を征服した証としてヌラリと粘液のコーティング鎧を纏っていた。
「げほっ、ごほっかはっ!! ぁあがっ……いっぎ……! ィひっ!? い……い、あ……出されてっ!? や、やだっ! 私……もう来てる、危ない日なのにっ!」
「当たり前だろハナから孕ませる気なんだよ。おい、体を上げてくれよ。尻にぶち込んでやりたくてウズウズしてるんだ」
「今度こそ喉奥でフィニッシュするう……」
「私は髪を使わせてもらいますよククク」
「俺たちで腋やら胸にぶっかけてやるぜ。大人だから順番を守るんだよなぁ。あっそうだ手コキもしてくれよ」
もはや体を押し付けておくことも不要だった。男たちは欲望に身を任せてつむぎを前後上下から挟んで、思い思いに犯したい箇所を蹂躙し始める。
まず宛がったのはエレナの肛門だった。膣よりもさらに狭い不浄の穴に、ぐいぐいと欲望を捻じ込もうとしている。
「ぎぎゃ……や゛……ぁ゛だぁあッ」
視界が真っ赤に染まる。頭の中でぶちぶちと嫌な音が反響する。とっくに痛みの限界は振り切っており、無意識のうちに目の端からは涙が溢れて止まらない。堪えきれない激痛に反応して流れる、肉体の反射反応的な涙だ。精神がどんなに強くできていたとしても、抑えられるものでは決してない。
同時にこの助けのこない一方的な肉欲蹂躙の宴が、代わる代わるにされ続け、膣内射精を含めた輪姦凌辱を数時間の間も行われることを示唆していた。
――ぼぢゅぼぢゅ!! びゅるるる!! パァン……ッ! ぷしゃあぁあっ!!
無遠慮な射精。体内外へのザーメンコーティング。尻に、薄い胸板に平手を振り下ろす。乳首を思い切り噛む。桃色の髪をちぎらんばかりに引っ張る。股が裂け骨が軋み筋肉がはち切れんばかりに強引に抽送する。幼さしかない瑞々しい肌に、自分の痕跡をこれでもかと刻む。膣が、肛門が、喉が、手に髪に腋にまで、同時に犯され、絶え間なく少女へと苦痛を運ぶ。
ふと気づいた時、自身が中途で気絶したのだと覚醒と同時に気付かされた時、つむぎは秘穴に一円玉がねじ込まれていることを同時に実感した。
「……なんて、いってた……かな」
『これで君を買わせてもらったからな』である。
彼女は、強制的に注入された快楽の坩堝に在って、自身の境遇を正当化する。暴力はキモチイイ。強姦はされてキモチイイ。キモチイイが正しい。もっと犯してほしい。売春になる。この硬貨が、証。自らあの男たちに身を捧げたのだという、証明。
「ぁは……こんなに簡単なこと……」
どうして気づかなかったのだろう。
歯型と、痣と、てらてらとした粘液に覆われ、全裸で幽鬼のように彷徨い歩いて、どこをどう辿ったのかもわからない。
自分より下のモノには、何をしてもいい、それが社会であり、彼らに買われた己はまさしく最低最下層の住人に違いない。
頭を下げてお願いしても聞き入れられなかった。逃げられないのだ。どれだけ心を強く保とうとしても、彼らの性処理道具であるという事実は一生変わらない。ならば、また赴くのが、こちらから出向くのが、きっと正しい。
全身が疲れ切っているハズなのに、一度吹っ切れてしまえばその迷いが嘘のように軽やかな足取りで、自ら裸体を晒して股ぐらを開いていた。
「昨日の私から買われたのは、孕ませる権利ですから。ちゃんと妊娠するまでここに来ることにしました」
……自分の口は何を言っているのだろう。この人たちは何を言っているのだろう。わかりきったことをいちいち確認したがるなんて、馬鹿馬鹿しい。この馬鹿みたいに疼いている股を、早く埋めてほしいのに。
「今日も私を買ってくれてありがとうございます」
そう、そうだ。それでいい。裸でここに来たんだから何をされても合意の上ってことだよな、という売り言葉に買い言葉で。操を売る対価ではなく、孕ませる気でもらったあの一円玉を握りしめながら。裸体にサインペンで直接書かれた文言は、どれもこれも読むに値しない下劣な羅列だが、かろうじて読めそうなのは……自身の価値を書き記した一出産一円の文字。
「はやく……シて」
つむぎの目は桃色の光に染まっていた。ホームレス男たちと彼女の影が、今宵もまた一つになって、辺りに淫靡な匂いを振り撒くだろう。もはや少女の芳しさは一端も感じ取れはしない。
淫らな光で怪しくギラつく瞳。この光は、現在に至るまで消えていない。今でもあの草藪に行けば、ホームレス相手に一円売春を繰り返している彼女の姿がそこにある。全裸で、嘘のように見窄らしくなり、その胎に二度の受胎を済ませた母親に姿を変えて、なお、変わらずにいる。
わからないのはそれが誰との子なのか、あのホームレスたちの名前も、よく知らない。
はっきりしているのは、防衛本能が働いたのか、今のつむぎは幸せだということだ。牝として、淫売婦として、母として、爛れた幸せを噛み締めている。
成功
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