【鱏秋祭】~舞うはゴールデン・テール
●ようこそ飛空戦艦ワンダレイへ!
マンタ型の飛空戦艦ワンダレイは、ちょっと不思議な空中戦艦。
グリモア猟兵であるノインは秋風が吹くワンダレイの共有スペースを興味深げに眺めて歩いていた。何かアイデアが降って湧いてくるかも知れないと思ったからだ。
いや、彼女のアイデアというのは基本的に碌でもないものである。
猟兵のナマモノ同人誌を降らした実績があるので、考えつくのは大抵騒動の元になりそうであった。
「なるほど興味深いです」
そんなノインにとある猟兵が声を掛けてきたのは、共有スペースの神社……神社!?
そう、神社がワンダレイにはあるのだ。
ノインはちょっと目を丸くした。
そこにあったのは縁日かと見紛う出店の列。
いや、ワンダレイの艦内を見てきたのだから、今更であるが。
「ノイン……お祭り楽しんでる?」
そうした出店の一角にてメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は軽く手をあげてノインを呼び止めた。
彼女が座っている眼の前には平べったい水槽がある。
水が張られ、涼やかな雰囲気だった。
「これは? 一体なんなのでしょうか? 何かが泳いでいる、というのはわかるのですが」
アクアリウム?
そんな彼女の疑問にメンカルは頭を振る。
「……これはゴールデンフィッシュガジェット掬い……略してGFGS……」
「略したら更にわけがわからなくなります。ジーエフジーエス……いえ、それよりもあまりゴールデンではなくないでしょうか?」
彼女の疑問も尤もであった。
そう、眼の前の水槽には赤や黒といった金魚を模したであろうガジェットがゆらゆらと動いている。
「……それは言わないお約束」
しっ、とメンカルが指を立てて周囲を見回す。
変な小芝居が入った。
ノインは首を傾げる。して、この屋台は何をするのか。
いや、ガジェット掬いなのはわかる。が、できるものなのか?
「ルールは簡単……5点分のガジェットを掬ったら景品だよ」
「ふむ。色が違うのは何か特色が?」
「掬いやすさだね。赤はおとなしいから1点。黒は不規則な動きだから2点。そのぴちぴち暴れてるの金は5点だよ」
はい、とポイを手渡されてノインは考えるまでもなく速攻でポイを水槽に突っ込んだ。
考えなしにもほどがある。
が、ノインには考えがあったのだ。
「……お」
「秘技『尾びれはずし』……!」
ポイをガジェットの腹の下に素早クスライドさせ、水の抵抗を極限まで下げ、金色のガジェットが暴れる不規則さに見事に合わせて斜めにポイを跳ね上げさせる。
暴れる、というのならば、その起点はいつだって推進力を得る尾びれのパーツ。
そのパーツがポイを破いてしまう。
であるのならば!
そう、斜めにポイを入れてガジェットを一瞬で水中から跳ね上げさせれば良い。
金色のガジェットが宙を舞う。
一気に5点を獲得したノインはご満悦である。いや、どや顔である。
「この子がいいです」
「……え、調子悪いから……」
「この子がいいです」
「新品なら……」
「……わかりました」
仕方ないな、とメンカルは新品のガジェットから金色の小型魚ガジェットをノインに手渡す。
「水槽に入れて観賞用にするなら、二年くらい保つから……」
「壊れたら修理してください」
よほど気に入ったのだろう。
ノインはメンカルにそう願う。そんなにか、とメンカルは思ったが、自分の作ったものが其処まで気に入られるのならば、それはそれで開発者冥利に尽きるな、と思うかもしれない。
「それじゃあ、他の出店も楽しんでね……」
そう言ってメンカルは何度も頭を下げるノインを見送る。
秋風が心地よかった――。
成功
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