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宿る力は未来のために~アメリの里帰り

#ブルーアルカディア #ノベル #猟兵達の秋祭り2024

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アメリ・ハーベスティア



エミリロット・エカルネージュ




「お父さん、お母さん、ただいまなのです!」
 元気よくそう声を上げたアメリ・ハーベスティア(キノコ好きの「よいこ」な地竜の末裔・f38550)は、懐かしい我が家の扉を開けては、久方ぶりに両親と再会を果たすのだった。
「まあ、アメリ……お帰りなさい!」
「元気にしてたか? 随分とたくましくなったようだな」
 二年前のアルカディア争奪戦の際に、『マグナ聖帝国』に侵攻されたブルーアルカディアにある浮遊大陸のひとつであるスーパーよいこランド。
 このままではいられないと、大切な故郷を守るために立ち上がったスーパーよいこの一人であるアメリが旅立ち、その壮行会が開かれてからもう数年が経っていた。
(「ふふ、アメリちゃんもご両親も嬉しそうだね」)
 感動の再会を果たす親子の様子をそっと後ろから見守っていたエミリロット・エカルネージュ(この竜派少女、餃心拳継承者にしてギョウザライダー・f21989)もまた二年前の壮行会に参加し、アメリを励ました一人。特にエミリロットはアメリの持っている能力を見抜き、こうして猟兵としてたくましくなるまで成長するのを、教え導いてきた偉大な先輩で友人なのだ。
『アメリ、感動の再会もいいけど、エミリロットも紹介してあげないと!』
「あ、そうだったのです! お父さん、お母さん、こちらはエミリちゃん……アメリが壮行会からとってもお世話になった猟兵の先輩でお友達なのです」
 グリフォン型特機のラングリフがフォローするようにそう告げると、アメリは抱擁を交わしていた両親へとエミリロットを紹介する。
「初めまして。ボクはエミリロット・エカルネージュ……アメリちゃんにとって猟兵の先輩になるのかな? アメリちゃんはとっても優秀で、頑張り屋で、ボクもいつも刺激をもらってるんだ。立派な猟兵として活躍してるから、どうか安心してほしいんだ」
 エミリロットの丁寧な挨拶とアメリの現状を耳にし、両親はほっとした表情を浮かべる。
「こんなに頼もしいお友達が出来て……それにアメリが役に立っていると聞いて安心したよ」
「ええ、ええ。何もない家だけどゆっくりしていってね?」
 アメリの両親――父親のジャンと母親のエマがエミリロットへと微笑みかけ、アメリの生家へと招き入れるのだった。

「猟兵としてたくさんの世界を渡っていく中で、様々なキノコとの出会いもあったのですよ。はい、これはときひらだけと言って、見た目も綺麗ですが、いろんな料理に使えるのです」
「この前、異世界で大きな戦いがあって……その際にもボクとアメリちゃんで料理して、キャンピーくんっていうその戦争の功労者に振舞ったりして」
『うん、アメリのキノコ料理は世界を救うんだよ!』
 ピンク色の美しいきのこを取り出しては、アメリが母親に渡すと、エミリロットとラングリフがそれにまつわるエピソードを語る。
「まあ、スーパーよいこランドだけでなく、世界も守っているの?」
「それに異世界か……見たこともないキノコがたくさんでアメリも毎日退屈しないだろうな」
 その他にもアメリの鞄からはこの辺りでは見慣れないキノコが続々と登場し、両親も感心したように土産話にも耳を傾けている。
「それじゃあ、久しぶりに帰って来たアメリに大好きなキノコ料理を作ろうかしら」
「お母さん、ありがとうなのです。でもアメリの成長したところを見て欲しいので、料理はアメリが作るのですよ。エミリちゃんと一緒に!」
「もし良ければ、ボクの餃子もぜひ食べてもらいたいな!」
 二人は顔を見合わせてにっこり微笑む。
「あら、いいの? それじゃあお言葉に甘えようかしらね」
「アメリとエミリロットさんの料理、楽しみだな」
『そうだ、アメリのお父さん。また僕モデルのメカグリフォンのチョコプラモ作って欲しいな!』
 昨年のバレンタインでアメリが配っていた精巧なチョコプラモは猟兵たちの記憶にも残っているだろう。それを作ったジャンへとラングリフはおねだり。よしわかったと約束を取り付けては、ご機嫌で二人と一緒にキッチンへと向かうのだった。
「素敵なご両親だね」
「アメリのキノコ好きを伸ばしてくれた優しくて大好きな両親なのです」
 素直でよいこなアメリが優しい両親のもとですくすく育ってきたのだろうことがわかり、エミリロットもほっこりとした気持ちになる。エミリロットには過去の記憶はないが、優しく教え導いてくれた老師が親代わりなので、家族の温かさは知っている。
「じゃあボクは薔薇餃子を作るね。見た目も華やかだしこういう日にぴったりかなって」
「はい! きっと喜んでくれると思うのです。そういえば、エミリちゃんは今日のお洋服も薔薇餃子風なのです」
 猟コレの時に披露した、白地に赤の差し色が美しい中華風ドレス。薔薇や赤竜のモチーフもあしらわれたエミリロットにぴったりの一着。
「ふふ、そうなんだ。エミリちゃんのご両親に会うし、薔薇餃子にもぴったりだから着てきたんだよ」
『うん、似合ってる!』
「なんだか楽しくなりますね。それで、アメリは各種燻製とときひらだけのクリームチーズパイを作ります」
 そうして二人で和気あいあいと会話をしながら料理を進める。
 エミリロットはときひらだけと魔獣肉を混ぜた餡を、薔薇餃子の名にふさわしく包んでいく。ほんのりとピンク色をした餃子の皮を三枚ずらして並べ、その上に餡を棒状に並べ、手前からくるくると包み、さらにそれを端から巻けば、まるで薔薇の花びらのよう。ときひらだけのピンク色がその美しさを更に引き立てている。
 アメリは壮行会の時にも教えてもらった燻製を各種きのこで作っていく。燻している間に、ときひらだけを使ったクリームチーズパイの準備をし、ホットサンドメーカーで焼き上げていく。
「出来たのです!」
 そうしてアメリとエミリロットが完成した料理を運べば、ジャンとエマもその出来栄えにびっくり。
「あらあら、とっても綺麗ね」
「これは薔薇餃子。アメリちゃんに聞いたところだと、ここでは餃子はないみたいだけど……ボクは餃子の大地の力を操る餃心拳の伝承者。日夜美味しい餃子の研究もしてるんだ」
『エミリロットの餃子は一級品だよ!』
 全員が席に着けばまずは薔薇餃子を目で堪能してから味わうことに。
「ああ、キノコと肉の旨味がしっかり感じられて、ジューシーな味わい……」
「見た目も可愛らしいのに味もしっかり美味しいわね」
 二人も口々にその美味しさを誉め、初めて食べる薔薇餃子を夢中になって食べている。
「お口にあったのなら嬉しいよう!」
「エミリちゃんは餃子の大地の力で敵と戦うのです。とってもかっこいいのです。アメリの憧れなのです」
「そういうアメリちゃんもキノコの力で大活躍だよね。この前も……」
 今度はアメリが作った料理を食べながら、アメリがいかに猟兵として活躍しているかをエミリロットが熱く語って。その話を両親は嬉しそうに聞いているのだった。
 しばらく楽しい食事と歓談が続き、そういえば、とエマが話を切り出した。
「ちょうど今、近くで収穫祭のお祭りをやっているのよ。久しぶりに行ってみる?」
「いつもの秋祭りですね。スーパーよいこランドらしい秋祭り……エミリちゃんとランちゃんも行ってみますか?」
 アメリにとっては馴染みのある秋祭りも二人には新鮮かもしれないとアメリはそう二人を誘う。
『他の世界とは違うのかな? 行ってみたいよ!』
「うん、ボクも興味があるよ」
「では早速行くのです! あ、その前に……食器はちゃんと片付けるのです」
 よいこなアメリは使った食器をきちんと洗ってから、秋祭りに向かうのだった。

「スーパーよいこランドの秋祭り……キノコがいっぱいだあ!」
 エミリロットがそう発言するのはもっとものことで。秋祭りの会場には、きのこ型のランタンがぶら下がり、子どもたちはきのこ型の帽子をかぶってお祭りを楽しんでいる。
「キノコ料理もたくさんあるのです。ここのキノコは力がみなぎるのです」
 あのマグナ聖帝国も目をつけた、この地に自生する不思議なきのこ。アメリは他と区別するためにヒアウィーきのこと呼んでいるのだが、これは食べるだけでなく、大きな種類になるとジャンプ台にもなるという。
「あ、エミリちゃん。あそこでどれだけ高くジャンプできるか競うんです。挑戦してみますか?」
 アメリが指差した先には、カラフルな巨大きのこ。アルカディア争奪戦の際にも猟兵が利用したという大ジャンプが出来る巨大きのこでのジャンプ大会はどうやらここではお馴染みのようだ。
「あれもお祭りの一環なの? そうだね、猟兵を代表してやってみようか!」
 他のよいこたちを見ていれば、助走をつけ、巨大きのこで大きくジャンプをして上への高さを競うようだ。エンジェルの少女が翼を羽ばたかせ、その高さを計測している。
「よーし、じゃあ行くよ!」
 エミリロットも助走をつけ、ダッシュとジャンプの技能も活かしてカラフルきのこを力強く踏みつけると、華麗に跳躍してみせる。
「わーすごいですー」
 エンジェルの少女が空中でぱちぱちと拍手している。
「はい、一番いい賞品だよ」
 高さごとに賞品が違っているようで、エミリロットは天使核を動力としたきのこ型のオルゴールをもらい、目を輝かせる。
「すごいね、ブルーアルカディアの技術が結集してる!」
『これは記念にもなりそうだね』
 その後はたくさん出ているきのこの屋台を巡り、本場のヒアウィーきのこを食べ比べ。
 串焼きにマリネ、きのこ鍋。見たことがある料理もあれば、珍しいものまでいろいろだ。中でもきのこ型のパンの中にきのこたっぷりのシチューが詰まっているものはこれからの季節にもぴったりでとても美味しかった。
「それにしてもなんでここのキノコはこんなに力がみなぎるのかな?」
 食べていると確かに力を感じたので、エミリロットはそもそもの疑問を口にした。
「アメリにとっては、これが昔からの当たり前なのでよくわからないのですが……よそでは同じようなものを見ないので、ここだけが特別みたいなのです」
 アメリも猟兵になってから、たくさんのきのこと出会い、そしてそれらを研究してきた。薬膳や漢方になるきのこもあるが、このヒアウィーきのことは、また違うものだ。
「そっか、ここにしかない特別なものなんだね。大切にしていかないといけないね」
「でも、ここではわりとどこにでも生えていて、栽培は難しくないのです。エミリちゃんもお土産に持って帰っていいのですよ」
「え、ほんと?」
 確かに生育場所にはこだわらないようで、わりとどこにでも生えている。あの戦争の時も猟兵たちがたくさん食べてもなくならなかったので、刈り尽くされるという心配もないようだ。
「乾燥させたら長期保存も出来そうだよね。餃子にも隠し味として入れてもいいし、力がみなぎるならほんとにスーパーアイテムだね」
 そう言ってエミリロットは辺りに生えているきのこをそっと手に取った。
「あっ……!」
 その時、エミリロットの中に大きな力が流れ込んできたのを感じた。
「どうかしたのです?」
「これがスーパーよいこランドのキノコのご当地パワーって言うのかな?」
「エミリちゃんも感じましたか? 実はアメリも先程からいつもと違うものを感じていたのです」
「アメリちゃんも? じゃあやっぱり……」
 スーパーよいこランドのご当地ヒーローでもあるアメリも同じものを感じていたと聞き、確信を持つエミリロット。
「気のせいかとも思いましたが、アメリも里帰りしてから、いつも以上に力を感じていたのです……」
「うん、ボクらご当地ヒーローになったし、確かサイキックハーツの彼らは、自分のご当地以外のご当地パワーも取り込み、身に付ける術を持っていたんだったかな?」
「じゃあ、エミリちゃんの中にスーパーよいこランドのご当地パワーが取り込まれたのですね?」
 アメリが丸眼鏡の奥の瞳を輝かせながらそう訊ねる。
『すごいや!』
 ラングリフも嬉しくなって鉄の翼をはためかせている。
「ふふ、そうかも。これからもいろんなご当地の力を手に、世界を守っていかないとね」
「はいです!」
 アメリの全てはここから始まった。大切な故郷を胸にこれからも前に進んでいくのだ。
(「それがベアトリクスさんとの誓いでもあるのですから」)
 大好きな友と共に訪れた里帰りは、またひとつアメリを大きく成長させたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年11月15日


挿絵イラスト