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タナハは迸発す、ヴェーダの残穢

#クロムキャバリア #ノベル #ACE戦記外典 #エルネイジェ王国

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#エルネイジェ王国


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メサイア・エルネイジェ
以下は執筆時の参考資料として扱ってください。

●メサイアについて
ヴリトラ・クロムジェノサイダーに乗っています。
重火力武器の仕様制限にイライラしています。
「ぶっ放してぇのですわ〜! むきー!」
扱いは脇役でOKです。

●ギガス・ゴライアについて
ブリュンヒルデ社が開発したエルネイジェ王国軍の決戦用スーパーロボットです。
障害を正面から突破し、蹂躙する事で敵の戦術を破綻させ、戦域を支配するという野心的な設計思想を持ちます。
凄まじい戦闘力を持つ一方、コアユニットの気性は極めて凶暴で、搭乗できる者すら殆どいません。
事実上グレイグの専用機となっています。
戦闘力の高さはこの凶暴性にあるとされています。
エネルギーの消耗が激しく、連続稼働時間は通常のキャバリアと比較して短くなっています。
安定した運用には専用の設備と専門の教育を受けた整備士が必要となります。

●大きさ
通常のキャバリアが子供に見えるほどに大型です。
シールドファンダーより一回り以上大きな体格をしています。
大きさをキャバリア=人だとした場合、シールドファンダー=ゾウさんとなります。

【攻撃兵装】
●ゴライアスファング
顎です。
アダマンチウム製の装甲も噛み砕く破砕力を有します。

●ゴライアスクロー
敵を強引に薙ぎ倒し、踏み潰すための手足の爪です。
脚部にはアンカーが備わっており、格闘戦時や砲撃戦時に安定性を向上させます。

●クラッシャーテイル
尻尾です。
ロケットブースターの加速を得て打撃するとシールドファンダーも一撃で大破させる威力を発揮します。

●ビームキャノン
両腕に搭載した荷電粒子砲です。
速射性に優れた扱い易い火器です。

●メガビームキャノン
背部のロケットブースターと一体化している大口径荷電粒子砲です。
威力は高いものの、一射ごとに充填が必要です。
射角は正面に限定されます。

●デストラクションバスター
顎に内蔵した超大口径荷電粒子砲です。
一点突破用の収束モードと広域殲滅用の拡散モードの切り替えが可能です。
その絶大な威力はヴリトラのジェノサイドバスターを遥かに凌駕します。

●機体全身
巨大で重い機体そのものが格闘武器となります。

【防御兵装】
●アダマンチウム装甲
機体全体を覆う超重剛性金属の装甲です。
腐食に強く、放射線を遮断する特性を持ちます。

●ハイパーパルスシールドジェネレーター
背鰭状のバリア発生装置です。
機体を中心に球状のパルスシールドを展開します。
このパルスシールドは攻撃にも転用可能で、周囲を吹き飛ばすパルス爆発を生じさせます。
しかし使用後は一定時間再展開不能となります。

【機動力・運動性】
●ハイパーイオンロケットブースター
背中に搭載した大型ブースターです。
これにより高速機並の瞬発力を獲得しています。
先端にはメガビームキャノンを搭載しています。

●運動性能
大きく重い機体を滑らかに動かすだめ、各関節部に補助駆動系を搭載しています。
尻尾は能動的質量移動による姿勢制御をサポートする役割を持ちます。
これによりこの大きさのキャバリアとしては高い運動性能を獲得しています。

●戦闘力の根源
強力な兵装を装備しているギガス・ゴライアですが、戦闘力の高さの根源は凶暴性にあるとされています。
凶暴性を抑えて扱いやすくなった輸出仕様では、各兵装の調整以上の戦闘力の低下が確認されています。

●政治的価値
決戦用スーパーロボットに位置付けられた本機を欲する勢力は、西アーレスにおいて少なくありません。
そのため外交の材料とされる場合もあります。

●輸出仕様
凶暴性と性能を抑えられています。
皇王専用仕様と比較して戦闘力は劣りますが、機体に元々備わる機能は全て搭載しています。

●設計者にすら恐れられた
ギガス・ゴライアの設計者は強力過ぎるが故に恐怖を抱き、設計データを抹消しようとしました。

●隠されたもう一つの設計思想
設計者は機械神(巨神)に対してコンプレックスを抱いていました。
スーパーロボットという分類もこのコンプレックスに起因します。
「技術は常に前に進み続けている。新しいキャバリアが古いキャバリアに劣る事などあってはならない」
「機械神も人の被造物。なれば我々にも同じものが作れない道理はない」
そこで機械神を超えるキャバリアを作り出そうとしました。
結果として生まれたギガス・ゴライアは、『強力過ぎる性能を持ち、搭乗者を機体自身が選別する』という機械神を定義する条件の一部を皮肉にも満たしていました。

●他の機体との戦闘力の比較
インドラ、ヴリトラ、サラマンダーと一対一で戦闘した場合、ギガス・ゴライアが圧倒します。

リヴァイアサンと交戦した場合、水中戦ではギガス・ゴライア側が非常に不利です。
浅瀬での戦闘ならリヴァイアサンを陸地に引き摺り上げて撃破します。

ベヒーモスと交戦した場合、ギガス・ゴライアは射程外から一方的に砲撃を受けます。
堅牢な防御を持つギガス・ゴライアですが、ベヒーモスのハイパーレールガンや対艦ミサイル、ギガンティックバスターに連続して被弾すれば耐えられません。
内部に入り込めばギガス・ゴライアに勝機があります。

●メタ的な視点での戦闘力
仮にエルネイジェ王国を舞台とするシナリオシリーズがあった場合、ラスボスとなります。


ソフィア・エルネイジェ
ソフィアの父が乗っているキャバリアのオブリビオンマシン化が判明するノベルをお願いします。

アレンジその他諸々歓迎です。
書き易いように書いて頂ければ幸いです。

●今回の主役
『黒い嵐』ことエルネイジェ皇王のグレイグ(ソフィアの父)とギガス・ゴライアでお願いします。
ギガス・ゴライア無双です。
機体の見た目は以下の通りです。
https://tw6.jp/gallery/?id=202851

●何人合わせ?
ソフィア
メサイア
エレイン
以上3名です

●ソフィアについて
インドラ・ナイトオブリージュで出撃します。
「シールドファンダーの出現速度に撃破速度が追いついていない……このままではイザナミの元に辿り着くなど……!」
脇役でOKです。

●時期
帝都櫻大戰の第二戦線攻略中です。
クロムキャバリアにイザナミが出現してアダム・カドモン長官が救援に来たアレです。

●場所
エルネイジェ王国のランベール侯爵領にあるロータス・プラントと呼ばれる施設です。
ここは王国軍の主力キャバリアの一機『シールドファンダー』を生産している重要な施設の一つです。
プラントの周囲には大規模な工業地帯が広がっています。
工業地帯の外には市街地があります。

●始まり
突如としてロータス・プラントから無数の幻朧桜が溢れ出し、エンシャント・レヰス『イザナミ』が出現しました。
そしてイザナミを蝕む『冥府の蛆獣』によって引きずり出されたシールドファンダーが破壊活動を始めます。
市街地への侵攻を阻止するべく、王国軍と聖竜騎士団が事態の収拾に当たります。
そこへアダム・カドモン長官も現れました。
その場にいるのは正規軍と聖竜騎士団なので人心統一は問題ないでしょう。

●地主からの注文
しかしランベール侯爵家当主『セルジュ・ランベール』から直々に要請が通達されました。
「皆様もかねがねご存知の通り、当施設は国益に極めて大きく寄与する施設でありますからな。したがって施設への被害は最小限に抑えて頂きたく。くれぐれもよろしく頼みますぞ」
ランベール侯爵家、しかも当主本人からの要請は王国軍も聖竜騎士団も無視できません。
事実としてロータス・プラントと周辺の工業地帯は経済や国防において重要な役割を担っています。

●手こずる聖竜騎士団と王国軍
ですがシールドファンダーは頑丈な機体です。
重火力兵器が使用できないと撃破が間に合いません。
王国軍と聖竜騎士団は次第に押し返されてしまいます。
そんな矢先に友軍の増援が接近してきました。
ですがソフィアはレーダーに表示された識別信号を見た瞬間に驚愕しました。
「ギガス・ゴライア……!?」

●皇王グレイグ・エルネイジェ参戦
突然オープンチャンネルに太い男の声が響きます。
「手こずってるようだな? 父ちゃんが手伝ってやろうか?」
ソフィアはその声をよく知っていました。
「父上……皇王陛下!?」
「ようソフィア! なーに遊んでやがる!」
「あら〜! お父様ですわ〜!」
「なんだあ? メサイアもいたのか? 元気そうだな!」
声の主は、エルネイジェ王国の皇王『グレイグ・エルネイジェ』だったのです。
グレイグは専用機の大型スーパーロボット『ギガス・ゴライア』に乗っています。
「これは皇王陛下! まさかお越しになられるなんて!」
これにはエレインも驚きました。
「よう金ピカ! ん? 誰だっけかな?」
「アイディール侯爵家のエレインですわ!」
「そうか! 知らねえ名前だな!」
「んなっ!?」
エレインはショックを受けました。

●グレイグはややこしい話しが分からない
そこでメサイアはとある事に気付きました。
「んんん? お父様のゴラちゃん、オブリ――」
「皇王陛下! どうしてこちらへ!?」
ソフィアが慌てて大声で遮りました。
エレインも気付いていたのですが黙っています。
「妙ちくりんな奴が現れたって聞いてな! 遊びに来てやったぜ! どいつをぶっ飛ばせばいいんだ? そいつか?」
「お待ちを! 状況を説明します!」
ソフィアはカドモン長官やイザナミの事を説明しました。
「なるほど! 分からん!」
ソフィアは頭痛がしました。
「ソフィアよお……お前は話しが長えなあ? マリアそっくりだ。どいつをぶん殴ればいいかだけ教えろ!」
「イザナミを倒せば恐らく――」
「よおし聞いたなゴライア! 突撃だー!」
「陛下!? お待ちを!」
ギガス・ゴライアは攻撃を始めてしまいました。

●ギガス・ゴライア無双
シールドファンダーは次々に撃破されていきます。
しかし周辺施設への被害も拡大していきます。
そんな事はお構いなしに攻撃を続けるグレイグをソフィアが止めようとします。
「陛下! 施設への被害は避けるようにとの要請が!」
「要請だあ? どこのどいつが?」
「ランベール侯爵家当主のセルジュ卿からです!」
「知らねえな! 俺は皇王様だぞ? 俺に指図できるのは女皇王様だけだ!」
ギガス・ゴライアの大暴れは止まりません。
「お父様ばっかりずるいのですわ〜! わたくしもぶっ壊しますのよ〜!」
メサイアもジェノサイドバスターをぶっ放し始めました。
「メサイア! お止めなさい!」
「いい壊しっぷりじゃねえか! さすが俺の娘だな!」
ギガス・ゴライアが動くたびに、シールドファンダーのスクラップが山のように積み上がっていきます。
そしてプラント周辺の施設も薙ぎ倒されて爆発炎上していきます。

●ソフィアは頭痛が痛い
イザナミが倒された頃には、辺り一面は瓦礫の山と化していました。
「がははは! もう終わりかあ!?」
「おほほほ! やはり暴力ですわ〜!」
嵐が去った後のような光景の中に立つギガス・ゴライアとヴリトラを見て、ソフィア達は唖然としました。
「ランベール家はご愁傷様ね。ま、交通事故だと思って諦めることね」
エレインは内心同情していました。
ランベール家が被るであろう損失はそれはもう悲惨な規模だったからです。
「なんという事を……!」
ソフィアは目眩がしました。
瓦礫の山が出来上がってしまった事に対してもですが、それ以上に厄介な事実が判明したからです。
「ところでソフィア殿下。わたくしの見間違いでなければ、皇王陛下のギガス・ゴライアは……」
エレインが秘匿通信で話しかけてきました。
「ええ」
新たに発覚した大問題にソフィアは大きな溜息をつきました。
皇王が駆るギガス・ゴライアは、オブリビオンマシン化していたのです。

だいたいこんな感じでお願いします。


エレイン・アイディール
以下は執筆時の参考資料として扱ってください

●エレイン
ゴールドブリンガー・ナイトに乗っています。
ランベール家に恩を売る好機だと考えています。
「ランベール家のピンチにライバルのアイディール家の女が駆け付ける。如何にも民衆が好みそうな美談だわ!」
脇役でOKです。

【グレイグの詳細】
●グレイグ・エルネイジェについて
エルネイジェ王国の皇王です。
「俺は皇王様だぜ?」
ソフィア達の実父になります。
「戦争ってのはこうやるんだ! 父ちゃんが手本を見せてやろう!」
軍務上での階級は大将です。
ギガス・ゴライアを駆り、各戦線を好き勝手に渡り歩いています。
グレイグが戦った後は嵐が過ぎ去ったかのように破壊し尽くされることから、黒い嵐の渾名でも呼ばれています。

●年齢
46歳です。

●外見
筋骨隆々の大男です。
最盛期のシュワちゃん位のマッチョです。
黒い短髪です。
赤い目をしています。
全身には傷跡が沢山刻まれています。

●性格
大胆不敵で交戦的。
大食らいで大酒飲み。
戦う事が大好きです。
長話しは聞けません。
気に入らない事は暴力で解決します。
「どいつをぶん殴れば解決するんだ?」
元は女遊びも大好きでしたが、現女皇王のマリアと出会ってからぱったりと止めました。
「あいつに出会ってから、他の女が全部灰色に見えるようになっちまったんだ」

●口調
品性が無く粗暴です。
一人称は俺だったり俺様だったり(お前、呼び捨て、だろ、だよな、じゃねえのか?)
適当でOKです。

●過去の経歴
元はバーラントのとある貧困街出身です。
戦争孤児、ストリートギャング、囚人を経て軍に徴兵されました。
軍を除隊してからは傭兵となり、戦場で瞬く間に名を上げていきました。
荒々しい戦い振りは暴力的と言う他無く、グレイグが通った後はまるで嵐が去った後のように荒れ果てるほどです。
その事から『黒い嵐』との渾名が付けられ、エルネイジェ王国の皇王になった今でもその渾名で呼ばれています。
後に戦場にて現女皇王のマリア・エルネイジェと交戦。
激戦の末にマリアに敗北しました。
「あの負けはとてつもなく悔しかった。腑が煮え繰り返るかと思ったぜ」
「だけどな……あいつを、マリアを見た瞬間、世界がばーっと明るくなったんだ。花畑みたいによ」
それを切っ掛けにマリアに一目惚れしてエルネイジェ側に寝返りました。
「あん時の俺は思った。この女は絶対俺のものにしてやるってな」
その後紆余曲折を経てマリアと結ばれます。
「ま! 俺があいつのものになっちまったんだがな! がははは!」
マリアが女皇王に即位した際に皇王の座に就きました。
「王様ってのも悪くねえぞ! 美味い飯が腹いっぱい食えるからな!」
その後ソフィア達が爆誕しました。

●ソフィア達への認識
立派に育ってよかったと思っています。
「マリアに似て良かったな! 俺に似てたら最悪だったろ! がははは!」
放任主義です。
「好きに生きろ。俺はそうする」
ですがまだ子供扱いしている節があります。
「マリアの跡を継ぐまでは可愛い可愛いお姫ちゃまだからな!」

●ギガス・ゴライアとの相性
「俺好みだ! 最高だぜ!」
力押しを設計思想に持つこの機体を非常に気に入っています。
自身と機体の凶暴性を相乗させる事で性能を引き出しています。
ギガス・ゴライア側もグレイグをパイロットとして認めています。

●世間の評判
全ての層から暴君という認識で共通しています。
血筋を重んじる貴族からは『王になった野良犬』とか『狂犬の王』とか『武器を持った獣』とか『エルネイジェの恥部』とか『人の皮を被ったオーク』とか散々な言われようで疎まれています。
下級貴族からは、実力さえあればならず者ですら玉座に就けるエルネイジェドリームの実践者とされています。
市民からは品性の無さを批判する声も少なくありません。
王国軍内での評判は様々ですが、黒い嵐の渾名と共に畏敬を集めています。

【その他色々】
●セルジュ・ランベール
王国内でアイディール侯爵家と双璧を成す貴族、ランベール侯爵家の当主です。
常に落ち着いた物腰の初老の紳士です。
ロータス・プラントとロータス工業地帯はランベール家が管轄しています。
「いやはや……こうも完膚なきまでに破壊されてしまっては困りましたな。さて、ソフィア皇女殿下。此度の顛末はどうなされますかな?」
ブリュンヒルデ社の上役でもあります。
融和政策と専守防衛を推進している人物です。
覇権主義を掲げて軍拡を推進する王室派勢力とは対立しています。

●セルジュ卿の思惑
周辺施設に甚大な被害が及ぶ事を想定した上で、ロータス・プラントの異常をグレイグにリークしました。
狙いはグレイグに工業地帯を破壊させる事です。
これにより市民の批判の矛先を王室勢力に向け、被害を受けたランベール派閥には同情的な世論を醸成します。

●ロータス工業地帯が破壊されると
同工業地帯は非常に大規模な雇用を抱えています。
破壊されれば労働者の生活が困窮する事は間違いありません。
セルジュ卿はそれを見越し、労働者の生活の保証と工業地帯の再建でランベール派閥への支持を集めます。

●ブリュンヒルデ社
西アーレス一帯に影響力を持つ複合企業体です。
エルネイジェ王国の防衛産業と密接に結び付いており、キャバリアの生産の大半を請け負っています。
ヴェロキラ、シールドファンダー、ストームイーグル、クレイシザーなどのエルネイジェ王国軍のキャバリアは同社が開発しました。
ギガス・ゴライアを開発したのもブリュンヒルデ社です。
インドラを始めとする機械神の部品製造も行っています。
アイディール家とランベール家はブリュンヒルデ社に強い影響力を及ぼしています。

●アダム・カドモン長官について
乗るキャバリアの指定は特にありません。
ヴェロキラかシールドファンダー辺りがよろしいかと思われます。
その他の機体でもOKです。



●恐れ
 それは存在してはならないキャバリアであったのかもしれない。
 己の中にある『怪物』が形をなしたかのような造形。
 恐るべき巨体。
 体躯に秘められた凶暴性は制御などできようはずがない。
 視界に映るもの全てが破壊の対象であり、区別などない。あるのは己か他か。ただそれだけなのだ。
「――……これほどとは」
 データが弾き出す、その機体の破壊性の高さに生みの親でもある設計者は恐れを抱く。
 己の才能に、ではない。
 本当に己が生み出したのかと疑うほどの凶悪なる性能を有したキャバリアに、である。

「だがしかし……! これで! これで漸く!」
 そう。
 彼は常々思っていた。
 このクロムキャバリアには機械神と呼ばれるキャバリアが存在している。
 圧倒的な性能。
 明らかに現行の技術では再現できない科学文明の介入を感じさせるほどであり、キャバリアの祖としながら後進の追従を許さぬ破格。
 何故、と常に彼は説い続けてきた。
「そうだ。漸くなのだ。技術は常に前に進み続けている。新しいキャバリアが古いキャバリアに劣ることなどあってはならない」
『エルネイジェ王国』だけではない。
 このアーレス大陸の外にさえも、あの機械神の如きキャバリアが存在している。

 過去に一度『エルネイジェ王国』と『バーラント機械教国連合』の争いに介入してきた『憂国学徒兵』……『ハイランダー・ナイン』と呼ばれた存在もまた機械神の如きキャバリアを有していた。
 青い騎士の如きキャバリア『熾盛』。
 そして、そのデッドコピー『熾煌』。
 たった九騎。
 そう、ただの九騎だけで彼等は自国を防衛しながら、他国の戦争に介入していたのだ。
 それを支えていたのは、人機一体たるパイロットの類まれなる『エース』としての技量と機体の性能が噛み合っているという厳然たる事実のみ。

「巫山戯るな。たった一騎で他国の戦争に介入するなど。馬鹿げた事実だ。こんな巫山戯た話があるものか」
 彼は常に思っていた。
 機械神の如き旧きキャバリアも、人の被造物であるというのならば、己たちに作れぬ道理はない。それも後進は常に旧きものを一新することができるのだ。その権利を有しているのが、後の世に生まれた者の特権ではないのか。
 だが、現実は違う。
 己が作り上げた、設計し続けたキャバリアはいずれもが機械神を超えない。
 何故だ?
 何故超えないのだ?
 何が違うというのだ?

 理解できない。
 だが、それも終わる。
 伝説は御伽噺へと解像度を下げ、さらに進歩した文明が御伽噺を荒唐無稽なる法螺話へと失墜させる。
 それができるだけのものを己は作り上げたのだ。
 設計者である彼をして恐れたもの。
「さあ、産声を上げるんだ。『ギガス・ゴライアス』! 君の産声であらゆる旧きものを一掃してみせるんだ。それが君に与えられた使命であり、意義なんだ――!!」

●過去
 それは暴風のようであった。
 視界にあるのは全て灰色。
 どんなものだって色があるとは思えなかった。つまらない、と思っていたのならばそうなのかもしれない。
 己には学がない。
 だが、力がある。
 腕っぷしというものがある。
 かつて、アーレス大陸のさらに向こう側にはたった一人の男がキャバリア操縦技術だけで国父にさえなったという。
 そういう小国家が存在しているのだと傭兵連中の間では伝説になっていた。
 その者は、幼少……つまりは、己よりも幼くも唐突に現れ『エース』として正しく目まぐるしい活躍をしたのだという。
「どんな奴だったんだろうな」
 今の己とキャバリアにて対峙したのならば、どちらが勝つのか。
 挑んでみたいと思うのと同時に、負ける気などなかった。
 他大陸であっても轟く勇名|『憂国学徒兵』《ハイランダー・ナイン》の『フュンフ・エイル』。
 その人が生きているのならば、対決して見たいと思ったのだ。

 だが、結局のところ伝説というものは伝説に過ぎないのだ。
 過去に在りし者と今生きる者との間に横たわる溝は時間だけだ。その時、その場所に己がいないのならば意味のないことであった。
「『再来』なんて言われるのは正直気に食わねぇけどな!」
 そう、誰かの『再来』など無意味な称号である。
 己は己でしかない。

 戦災孤児であり、自らで生きるしかなかった幼少期がある。
 徒党を組んだこともあったが、結局自分についてこれる者がいなかった。それが幸いであったか不幸であったかはこの際どうでもいい。
 ヘマをした、という事実だけが己の肉体に刻まれている。
 囚人としての鬱屈とした日々は、懲罰機とも言えるキャバリアを与えられてから一変した。
 まるで動く棺桶のような旧式のキャバリア。
 乗っているのと、乗っていないのとでどれほどの違いがあるのかも解らぬ性能のものであったが、己の腕っぷしは性能を無意味なものとした。
「生きるのに必死だなんていうのは、当然のことだよな。生きていれば、誰だって必死になる。なにせ、自分が死ぬかもしれねぇなんて現実は直ぐ側をかすめていくんだからよ!」
 それは己が娘に語る寝物語であった。
 まさか、自分が人の親になるなど思いもしなかった。
 仮に子が出来たとしても興味は湧かなかったかもしれない。
 
 己は俗に言う『エルネイジェ・ドリーム』というものを掴んだらしい。
 そんなもんに興味などない。
 己が興味があったのは、あの女だけだった。いや、そういう粗暴な言い方は、彼女に対してだけはふさわしくない。
 己が敗北し、『黒い嵐』などと渾名されていたのが恥ずかしくなるほどの負けっぷりであった。
 そう、己が敗北したのだ。
 負け知らずであった己が、ただの井の中の蛙であったことを知らしめられたのだ。
「それはもうお前のお母ちゃんは、マリアはすんごかったんだよ。いや本当に。あの負けは途轍もなく悔しかった。腑が煮えくり返るかもと思ったぜ」
「でしたらどうしてなのです」
 娘はなおのこと、寝物語にそんな物騒な過去を語る父に尋ねずには居られなかった。
「そりゃ、簡単なことだぜ? お前にもいつか、そんな男が現れるかもしれねぇ。俺にとってのマリアのような男が。そうさ、俺はあいつを見た瞬間、世界が……こう、ばーっと明るくなったんだ。花畑みたいによ」
 その瞳は、巷に噂される父の渾名とはかけ離れたような色を見せていたように娘には思えただろう。

『王に成った野良犬』
『狂犬の王』
『武器を持った獣』
 まあ、ここまでいいい。
 だが、これ以上は幼き娘の耳に届いていないといいと思うのは、そう渾名される父以外の親しき者たちが願うことであった。当の本人は何を言われても動じなかっただろう。
 市井の者からどのように言われようと、たくましき父は猛々しいままに娘にとっては秘めたる憧れであったのだろう。
 故に、寝物語に斯様な物騒な話も聞くことができる。
「あん時の俺は思った。この女は必ず、絶対俺のものにしてやるってな! ま! 知っての通り、俺があいつのものになっちまったんだがな! がははは!!」
「ちちうえ、あにうえがおきてしまいます」
 盛大に笑う父に、娘は双子の兄が漸くにして寝静まったのにまた起き出してきては、妙なことを言い出しやしないかと思ってむくれる。
 あれは幼い娘にしてもちょっと厄介なアレであった。
 が、父はあまり気にした様子もなかった。

 そう、父は王なのだ。
 だが、この国において王とは女皇王の下につく地位である。そう、『エルネイジェ王国』とは女系の王国なのである。
「おっと、そうだったな。ま、あいつにも言っていることだが、王様ってのも悪くねえぞ! 美味い飯が腹いっぱい食えるからな!」
 まあ、王たる父は放任主義であった。
 時折こうして思い出したかのように父親をやるような大雑把さはあったが、娘は嫌いではんかった。
 父の腕の中はとても安心する。
 傷だらけの体であったが、それが歴戦の勇士である証明でもあり、誇らしかった。
 抱かれるのならば、このようなたくましき腕の中がよいとさえ幼くとも思えたのだ。
 うとうとと視界が狭まっていくのを娘は自覚したかもしれない。
 その様を見て、父である男――『グレイグ・エルネイジェ』は、また笑ったのだ――。

●帝都櫻大戰
「『シールドファインダー』……!?」
 それは唐突な出来事であった。
 あまりにも予期せぬ事態であったことは言うまでもない。
 小国家『エルネイジェ王国』、ランベール侯爵領『ロータス・プラント』に突如として出現したのは、王国軍が誇る主力キャバリア『シールドファインダー』であった。
 巨象の如き体躯。
 防衛能力に長けた機体であり、その装甲と電磁障壁たるパルスシールドは無類の堅牢さを誇っていた。
 加えて、防衛能力以上に迫る敵に対する火力の高さもまた比肩するキャバリアを探すことが難しいものである。

 そんな『シールドファインダー』が、何故か『ロータス・プラント』に出現し、自国領内を襲っているのだ。
 原因は分かりきっている。
 エンシャント・レイス『イザナミ』の身を覆う巨大な蛆虫の如き『冥府の蛆獣』によって大地からオブリビオンマシン化した『シールドファインダー』が出現し続けているのだ。
 無論、出現した『シールドファインダー』がオブリビオンマシンであるなどと理解できるものは『エルネイジェ王国』に多くは存在しない。
 故に唐突。故に突如として引き起こされた異常事態。
「鎮圧部隊を……いや、それよりも強制停止システムは!」
『ロータス・プラント』に詰める国民たちは『シールドファインダー』が暴威を撒き散らす姿を見上げ、叫ぶ。

 そんな混乱の最中、この『ロータス・プラント』を預かるランベール侯爵家当主『セルジュ・ランベール』は慌てふためく施設に詰める者たちを一喝する。
「動揺するでない!」
 普段は落ち着いた物腰の紳士である。
 初老と言っていい年齢を重ねてにじみ出る重厚たる声に彼等は背筋を伸ばす。
「……動揺すれば命を落とす。その命散るのならば戦場。それこそが『エルネイジェ王国』に生きる者の散りざまであろう」
「……ハッ!」
「案ずるな。すでに王国軍に応援要請をしておる。それに『聖竜騎士団』にもな。お前たちは直ぐに避難せよ」
「わかりました! セルジュ侯爵もどうか、御身を!」
「わかっておる。さあ、往くのだ」
 振り返る『セルジュ・ランベール』は爆炎の向こうに地鳴りの如き『シールドファインダー』の足踏む音にさえ動じていなかった。
 彼にとって『シールドファインダー』は恐れるに足りない存在であった。
 いや、正確に言うのならば、『もっと恐ろしいものを知っている』のだ。
「さて、見せて頂きましょう。皇女殿下。真に貴方様の掲げる覇権主義が多くを、自国の民を守るに値するのかを――」

●幻朧桜。
 周囲には薄紅色の花弁が舞い散る。
 それは『エルネイジェ王国』においては奇異なる光景であった。
 見ることが出来ても春先の光景であっただろうし、今は正しく初秋。残暑厳しい季節である。どう考えても狂い咲きと呼ぶには異様な光景であった。
 そのさなかに爆炎が巻き起こり、巨大なるオブリビオンマシン『シールドファインダー』が地鳴りを響かせ、『ロータス・プラント』と呼ばれる『エルネイジェ王国』の工業地帯を破壊しつくさんとしているのだ。
 今まさに巨象は、変電施設を破壊せんと、鼻型砲塔であるノーズビームキャノンをもたげた。瞬間、その二連装砲塔が鋼鉄の切っ先に寄って貫かれ、爆発を引き起こす。
 そう、それは白い雷の如き速度で踏み込んできたキャバリア『インドラ・ナイトオブリージュ』のナイトランスであった。

 そう、『インドラ』とはソフィア・エルネイジェ(聖竜皇女・f40112)の駆るキャバリアであり、一騎当千にして『エルネイジェ王国』にて奉ぜられている機械神の一柱である。
 すでに複数の『シールドファインダー』がソフィアによって撃破されている。
 だが、彼女の顔には焦りが生まれていた。
「『シールドファインダー』の出現速度に撃破速度が追いついていない……このままでは『イザナミ』の元に辿り着くなど……!」
 そう、猟兵である彼女だけに理解できること。
 このオブリビオンマシン『シールドファインダー』の出現は、エンシャント・レイス『イザナミ』にまとわりつく『冥府の蛆獣』が大地より引きずり出していることに起因しているのだ。
 これを止めるために彼女は『聖竜騎士団』と共に立ち向かっているのだが、撃破すれども『シールドファインダー』は大地から出現し続けているのだ。
 厄介な能力と言わざるを得ない。

「むきー! ちまちまちまちまちまちまと! でっけぇ上に鬱陶しいのですわ~! ぶっ放してぇのですわ~! むきー!」
 回線の奥では『ヴリトラ・クロムジェノサイダー』を駆る末妹メサイア・エルネイジェ(暴竜皇女・f34656)の癇癪にも近しい声が聞こえている。
 確かに彼女の癇癪も理解できないわけではない。
 だが、ここで重火力兵装を使用することはできない。
「どうかご理解を。メサイア皇女殿下。此処はランベール家の所轄。加えて『エルネイジェ王国』の工業、その産業を支える要所なのです。此処はどうか」
「その通りでございます。皆様もかねがえ御存知の通り、当施設は国益に極めて大きく寄与する施設でありますからな。したがって施設への被害は最小限に抑えて頂きたく。くれぐれもよろしく頼みますぞ」
 エレイン・アイディール(黄金令嬢・f42458)は通信にて入ってきた『セルジュ・ランベール』の言葉に舌打ちしそうになった。
 だが、堪えたのは偉いとエレインは自負するところであった。
 そして、同時にこれは好機であると思えた。

 彼女のアイディール家はランベール家と関係が良好とは言えない。
 派閥としては対極。
 融和政策と専守防衛を推進しているランベール派閥と覇権主義を掲げる王室勢力の旗頭たるアイディール派閥とは相容れぬ立ち位置であるのだ。
 だからこそ、エレインは己が乗機『ゴールドブリンガー・ナイト』の中でほくそ笑む。
 そう、これはランベール家の窮地である。
 であるのならば、己は聖竜騎士団員としてではなくアイディール家としてランベール家に音を売ることができる。
 対立している家同士であるが、だからこそ国難に派閥の隔てりを越えて相手を救うというのは民衆が好みそうな美談にいくらでも仕立て上げられるという算段があったのだ。
「承知しております、ランベール卿。ですが……」
「だが、それでもやらねばならない。諸君らはただ助けを待つだけのものではないのだから」
 その声にソフィアは頷く。
 己が乗機に追従するようにして現れた機体……それは帝都櫻大戰の折に小国家『グリプ5』にて他世界の存在……特務機関DVIDEの長官『アダム・カドモン』の駆るキャバリア『セラフィム・ゼクス』であった。
 おそらく、クロムキャバリア各地を襲ったエンシャント・レイス『イザナミ』の脅威から救うために世界各地を転戦しているのだろう。
 彼の言葉にはひどく力強い響きがあった。
 次々と現れる『シールドファインダー』。
 その脅威は言うまでもない。遅々として進まぬ掃討戦。それはいつしか消耗戦にすり替わっていたのだ。
 だからこそ、王国軍の士気も徐々に下がっているのがソフィアには目に見えていた。
 これを解決する術は陣頭にたつソフィアに委ねられていたが、しかし『アダム・カドモン』の言葉は人心掌握に長けているがゆえに、あまねく兵士たちの心に染み渡るようにして広がっていく。

「必ず戦いは終わる。諸君らの健闘こそが、自らの窮地を救うものになるのだ」
 その言葉は王国軍の士気をもり立てるものであった。
 だが、ソフィアは気がついていた。
 これだけではダメだと。
 消耗戦の様相を呈したオブリビオンマシンの出現。
 これは士気だけではどうにもならない。引きずり出されたオブリビオンマシンが『シールドファインダー』でなければ、もっと上手くことが運んだのかも知れない。
 しかも、出現した場所が悪かった。
『セルジュ・ランベール』の横槍がなくとも、この地域の重要性は語るべくもない。
「一手……いえ、二手も三手も封ぜられたと言ってもいいでしょう……」
「ぶっ放してしまえば、全部壊滅ですわ~!」
「殿下、それを言うなら解決です」
 ソフィアはメサイアとエレインのやり取りに軽い頭痛を覚えた。
 夏のバカンスでも、この頭痛はなくならないだろうと嫌な予感ばかりが冴えわたる。

 いや、それだけではない。
 己の背筋を走る感覚。
 怖気にもにた感覚にソフィアは目を見開く。
 瞬間、『インドラ』のセンサーに反応するものがあった。
 ソフィアは己の頭痛が酷くなるのを自覚したかもしれない。それはレーダーに表示された識別信号。
 その信号が示すものは一つしかない。
「『ギガス・ゴライア』……!?」
「手こずってるようだな? 父ちゃんが手伝ってやろうか?」
 オープン回線にて響き渡る声。
 どこか野太く、その粗野たる声色をソフィアはよく知っていた。聞き間違えるわけがない。
 そして、何より。
 巨象の如き『シールドファインダー』を凌駕する圧倒的な体躯を持つキャバリア『ギガス・ゴライア』の威容が、その存在感を何倍にも引き上げていたのだ。
「父上……皇王陛下!?」
「よう、ソフィア! なーに遊んでやがる!」
 これを遊び、といえるのは『エルネイジェ王国』広しと言えど、彼だけであったことだろう。
『シールドファインダー』闊歩し、工業地帯という要所での気を配らねばならぬ要因ばかりが散在している戦場。
 これを遊び、と言える豪放磊落たる物言い。
 そう、『エルネイジェ王国』皇王にしてソフィアたちの実父『グレイグ・エルネイジェ』その人である。
 かつては傭兵上がりの『黒い嵐』とも呼ばれるのと同時に『エルネイジェの恥部』であるとか『人の皮を被ったオーク』であるとか散々な言われようの皇王。
 しかしながら、その実力は折り紙付きである。
『エルネイジェ王国』においては、語るべくもなく周知されていることである。
 その品性のなさは批判の対象であるが、畏怖と共に敬意もまた獲得する一角の人物であることに変わりはないのである。

「あら~! お父様ですわ~!」
 メサイアはコクピットの中でぴょんこと飛び跳ねる。
 彼女の気質の多くは、この父にして有りといえるだろう。それほどまでに父娘の気質は似通っていた。
「なんだあ? メサイアもいたのか? 元気そうだな!」
「元気モリモリですわ~! ストゼロでエンジン全開でしてよ~!」
「その割には、どうにもしょっぱい戦い方をしているみてえじゃあねえか!」
「だって、お姉様がビーム使ってはダメっていうのですわ~!」
「なに、ビーム禁止だとお!?」
 二人は久方ぶりに会った気まずさやギクシャクした所がまるでなかった。
「メサイア、お前のお姉ちゃんはケチくせぇな!」
「ぶっ放してぇのですわ~!」
 そのままでは、グレイグは「おうおうぶっ放せ」と言い出しかねないとエレインは察して、回線に割り込む。

「これは皇王陛下! まさかお越しになられるなんて! それも専用機『ギガス・ゴライア』での出陣とは! その御威光、威容に敵は……」
「よう金ピカ! すげぇな、その色! ん? いや、誰だっけかな?」
 父娘の、それも王族の会話に割って入るのは無礼千万である。だが、エレインには打算があった。
 他の貴族連中であれば、そう取られるものであるが、グレイグは見ての通り大雑把な性格である。
 咎められることはない。
 それになにか言われてもエレインは戦場における緊急時の具申であるとして、押し通したことだろう。それくらいできないで貴族の娘はやっていられないのである。
 いや、それ以上に!

「アイディール侯爵家のエレインですわ!」
「そうか!」
 ちょっとホッとした。
 まさか、王室派閥の筆頭たるアイディール家の娘の名を忘れているかもしれないという懸念は一言で解決した。
 だが、次の瞬間、その懸念はエレインの頭上から銀タライのように降り落ちた。
「知らねえ名前だな!」
「んなっ!?」
 衝撃が走る。
 エレインは呆然としてしまう。
 え、本当に? 本当に王室派閥最大のアイディール家の己を知らない? 冗談? 王室ジョーク?

 そんなエレインの黄金のプライドに亀裂が入りそうになってはいるが、今事態は逼迫しているのだ。
 悠長に己の名を知らぬことを説いただしている暇などない。
 覚え目立たくというのならば、戦場で功を立ててこそである。
 それがエルネイジェ流と言えば、そうであった。
 加えて、まだオブリビオンマシンの蠢動は終わらない。
 だが、『ギガス・ゴライア』がこの戦場に来た以上、勝負は決したと言ってもいい。

 巨躯を誇る『シールドファインダー』以上の巨躯を保つ『ギガス・ゴライア』は、その巨大さを最大の武器としている。
 アダマンチウム製の装甲は、あらゆる砲火を、その厚みでもって退ける。
 まるで怪獣の王。
 そう形容せざるを得ない圧倒的存在感。
 だが、この怪物を扱える者は『グレイグ・エルネイジェ』をおいて他にはいない。
「さあ、行くぜえ! ハイパーパルスシールドジェネレーター、全開! 派手にやるってぇのは、こうやるんだよ!!」
 咆哮と共に『ギガス・ゴライア』の全身を覆うパルスシールドが放電するようにして、周囲に迫った『シールドファインダー』をまるで赤子の手をひねるように吹き飛ばすのだ。
「パルスシールドを攻撃に転用……!? なんてメチャクチャな……!」
「皇王陛下! おやめください! それは、『ロータス・プラント』への被害が大きすぎます!!」
 ソフィアの制止をグレイグは聞こえないふりをした。
 というか、そもそも聞こえないふりですらない。もとより彼にあるのは0か1かである。つまり、破壊するか、しないか、だけなのだ。

「なんだよ。みょうちくりんな奴らが現れたって聞いたんだぜ? 遊びに来てやったのに、そりゃないぜ、ソフィア」
「お待ちを! どうか状況をご説明させてください! エレイン、メサイア! 戦線を支えなさい!」
 ソフィアの必死の言葉にグレイグは漸くに止まる。
 そもそもパルスシールドを攻撃に転用した時点で、一定時間『ギガス・ゴライア』は無防備になってしまう。
 その巨大さ故に随伴機がいなければ、攻撃の的にされてしまうだろう。
 だからこそ、ソフィアはグレイグを押し留める。

「んだよ。マリア見てえな感じ出して」
「現状、『ロータス・プラント』にて無数の所属不明なる『シールドファインダー』が無人にて戦闘状態を引き起こしております。これの鎮圧に王国軍と聖竜騎士団にてあたっております故、皇王陛下の『ギガス・ゴライア』は後退をお願いしたいのです。御身の代わりはございません。そして、何より『ギガス・ゴライア』は……!」
「んんん? お父様のゴラちゃん、オブリ――」
「『エルネジェ王国』における最大戦力の一角! これを無闇に動かすのは他国への牽制の意味もあります。容易に動いたと知れるのは、付け入る隙を与えるものでございましょう!」
 メサイアの言葉をソフィアはさらに声を張り上げて遮った。
 エレインもまたソフィアの意図を汲んでいた。
 彼女も『ギガス・ゴライア』の特異性に気がついていたのだ。
 しかし、それは今語るところではない。
 だからこそ、ソフィアの説得で以て『ギガス・ゴライア』が後退することを望んだのだ。そうであればいい、という希望であった。か細い希望のようにエレインには思えてならなかったが、それでもと縋る思いであった。
「ですから、皇王陛下……!」
「なるほど!」
 一瞬、ソフィアは表情が明るくなる。
 だが、エレインがそうであったように、その表情は急転直下、下落することになる。
「わからん!」
 頭痛がひどくなったような気がした。
 ソフィアはこめかみを抑える。
 ああ、と吐息を漏らす。出来るとは思っていなかった。
 父であるグレイグを止めることができるのは、母だけだ。その母が不在。
 であるのならば、娘として、皇女として彼を止めることなどできはしないのだ。

「父上……どうか、お願いいたします。これは皇女ではなく娘として……」
 家族の情に訴える。
 それしかない。もう手札がそれしかソフィアにはないのだ。
「ソフィアよお……お前の話は長えなあ? マリアにそっくりだ。そんなところまで。とりま、どいつをぶん殴ればいいかだけ教えろ!」
 轟、とグレイグの気迫にソフィアは目をつむるしかなかった。
 選択肢はなかった。
 ここで父が暴れるのならば、『シールドファインダー』、『イザナミ』以上の脅威になることは明白だった。
 ならば、と彼女は賭けに出る。
 そう、事態の早期決着である。
 これによって父が周囲に甚大な被害を与える前に、戦う敵を霧散させてしまえばいいのだ。
 グレイグは不満が残る戦いになるだろうが、後のことは母に任せるしかない。
「……『イザナミ』を倒せばおそらく――」
「よおし聞いたなゴライア! 突撃だー!」
「陛下!? お待ちを! 陣形を整え、『ギガス・ゴライア』には、火力支援を……!」
 だが、止まらない。
 止まるわけがないのである。
 ソフィアにはわかっていたはずだ。父の気質というものを。

 だが、それでもどうしようもないことが世の中には存在しているのだ。
 地震、雷、火事――グレイグである。
 彼の『ギガス・ゴライア』は周囲への被害などまるで気にもとめないというかのように火砲をぶっ放す。
 クラッシャーテイルが翻り、その巨大さとロケットブースターの加速に寄って重装甲を誇る『シールドファインダー』がパルスシールドごとひしゃげて潰れる。
 さらにビームキャノンが荷電粒子の光条を解き放つ。
 たちの悪いことに、速射性が備わっている。まるでハリネズミの如き弾幕である。
 それだけではない。
『ギガス・ゴライア』の恐るべき点は、これだけの火力を発揮しながら、まだ半分にも火器を展開していないのだ。
「陛下! どうかそれ以上は! 施設への被害は避けるようにとの要請が!」
「ああん? 要請だあ? どこのどいつが?」
『ギガス・ゴライア』の顎部が展開する。
 口腔に備わったのは、超巨大荷電粒子砲の砲口であった。
 それはまるで轟雷の咆哮を予感させる光を湛え始めていた。
 ソフィアは必死だった。今でさえ、『ロータス・プラント』への被害は看過できない所まで来ているのだ。
 なのに、グレイグは『シールドファインダー』を一掃することにこだわり始めている。
 いや視野狭窄と言ってもいい状態なのだ。

 なのに、戦いともなれば野生じみた本能で、どこか冷静さも兼ね備えているのだ。
「ランベール侯爵家当主、セルジュ卿からです!」
「知らねえな! 俺は皇王様だぞ?」
「こんな時ばかり地位をひけらかすのはおやめください!」
「俺に指図できるのは女皇王様だけだ!」
 ぐ、とソフィアは黙るしかなかった。
 まだ、『ギガス・ゴライア』だけならば、と縋るような思いであった。
 だが、ソフィアは思い出したのだ。
 此処にはエルネイジェの誇る暴走超特急機関車がいるのだということを。
 嫌な予感は背筋を走って彼女の頭蓋を揺らす。

「お父様ばっかりずるいのですわ~! わたくしもぶっ壊しますのよ~!」
 そう、メサイアであった。
 末妹であろうと彼女は忖度が出来ない上に、空気を読まない。
 あらゆるものをぶち壊して進むという気質を色濃く受け継いだのは、メサイアにほかならない。
 故に彼女の駆る『ヴリトラ』の口腔に備わった荷電粒子砲……ジェノサイドバスターは『ギガス・ゴライア』と競い合うようにしてぶっ放されたのだ。
 凄まじい熱量を持った光条が交錯し、『シールドファインダー』を蒸発させ、余波だけでも機体が頓挫するほどであった。
 甚大な被害が広がっていくのは言うまでもない。
「メサイア! おやめなさい!」
 どうにか制止できるメサイアから、とソフィアは思った。
 だが、その様を見て大喜びのグレイグの笑い声が聞こえる。まるで幼い我が子を褒めるような口ぶりであった。
「いい壊しっぷりじゃねえか! さすが俺の娘だな!」
「なんて呑気なことを無責任に!」
「俺あ、放任主義だからな! カワイイ娘には旅をさせよっていうじゃあねえか! がははは!」
 その笑い声と共に周囲には破壊が巻き起こる。
 爆炎が上がり、爆発が炸裂する。
 破壊の音だけがソフィアの頭の中を反響し、ぐわんぐわんと視界が揺れる――。

●焦土
 結末から言えば、『ロータス・プラント』は甚大なる被害を被った。
「いやはや……」
『セルジュ・ランベール』は困ったように呟いた。
「……こうも完膚なきまでに破壊されてしまっては困りましたな」
 彼の視線の先には畏怖の対象が今もなお、その暴威を振るっていた。
「さて、ソフィア皇女殿下。此度の顛末はどうなされますかな?」
 王室の権威は未だ失墜せず。
 それはソフィアがいるからである。だからこそ、此度の事件を彼は最大限に利用するつもりであった。
 もとより、彼の手の者がグレイグを誘引したのは言うまでもない。
 王族による工業地帯の破壊。
 これによって市井の批判は王室へと集中するだろう。
 なにせ、こちらは被害者なのだから。
 当然、世論は同情を生み出す出すだろう。
 あくまで王室を孤立させる。その土壌を今回は得たのだ。であるのならば。『ロータス・プラント』の被害は安いものであると言える。

「がははは! もう終わりかぁ!?」
「おほほほ! やはり暴力ですわ~!」
 まだ嵐はやまない。
 出現した『シールドファインダー』の尽くが破壊され、瓦礫を山のように積み上げていた。
 ソフィアは唖然とするしかなかった。
 頭痛が痛むようであった。何を言っているのかソフィアはわからなかった。
「ランベール家はご愁傷さまね。ま、交通事故だと思って諦めることね」
 エレインは内心同情していた。
 彼女ですら、そう思うほどの被害規模であったのだ。
 敵対している派閥の筆頭に対して、気味がよいとさえ思えぬほどの暴虐の如き破壊。
 それをもたらせてしまう『ギガス・ゴライア』はまさに災厄そのものであった。

「なんということを……!」
 ソフィアは己のめまいを抑えて、息を吐き出す。
 そう、『ロータス・プラント』の被害は甚大。それに対しても頭痛の種が増えたとも言えるが、それ以上に厄介な事実が残っている。
 それを自覚せねばならない。
 エレインの秘匿回線が開く。
「ソフィア殿下。わたくしの見間違いでなければ……いえ、そうであってほしいと思うのですが、もしや……」
 エレインの声に緊張が走る。
 それはソフィアもまた動揺であった。
「ええ」
「皇王陛下の『ギガス・ゴライア』は……」
 頷く。
 もう疑いようがない。
 如何に、普段から奔放にして獣の如き父であったが、此処までではなかったはずだ。いや、そうであって欲しいというのは切実であるが。
 だがしかし、許容できぬ振る舞いを父はしていたのだ。

 そう、グレイグが駆る怪獣の王『ギガス・ゴライア』は。
「こちらでも確認いたしました。『ギガス・ゴライア』は、オブリビオンマシン化しています……」
 大きな、大きな溜息が吐き出されていた。
 オブリビオンマシン。
 猟兵にしか認識できぬ世界の敵。
 その脅威が、悍ましくも己が父の乗機とすり替わっていたのだ。
 いつ、如何なる手段で?
 わからない。誰にもまだ解明できていないことなのだ。
 だが、純然たる事実がソフィアには突きつけられていた。
 オブリビオンマシンは搭乗者の思想を歪める。狂気にも似た感情は止められない。

 危惧すべきことは多くある。
 父が、まだ破滅の狂気をねじ伏せているのか、それとも抗っているのかはわからない。
 けれど、その進みが遅々たるものであったとしても、破滅は近づいてきているのだ。
「……対策を取らねばなりません」
 ソフィアは事態の収束を見てなお、これから山積する問題に酷く頭を悩ませることになるのだった――。

●黒騎士
 一騎の黒きキャバリアが、事の顛末を見守っていた。
 そのコクピットに座すのは、黒い短髪の男だった。筋骨隆々と言えばそうであるが、若く壮健なる肉体が、未だ錬磨の途上にあることを知らしめるようであった。
『黒騎士』とも呼ばれるキャバリアのアイセンサーが『ギガス・ゴライア』を捉えていたが、しかし、男の黒い瞳が捉えていたのは『インドラ』であった。
 いや、その搭乗者であるソフィアを見つめていた。
「どうなるかと思ったが……一先ずは、といったところか。しかし」
 彼は笑むでもなく、己が体躯をかきむしる。
「やってくれるな『ノイン』。あれは俺の得物だ。俺のものにすると決めた女だ。それを横からかっさらおうなど……」
 ぎりぎりと音がなるほどに握りしめられた拳。
 そこには怒りが満ちているように思えた。

「二度目はないぞ。例えお前が相手であろうとな」
 揺らめくようにして『黒騎士』の機体が周囲の風景に溶け込んで消える。
 暴威がもたらした風は、強く吹く。
 遠く、遠く、世界の果てまで、その風は戦乱の息吹を伝える――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年10月25日


挿絵イラスト