【鱏秋祭】~イェーガーヴィネット・Side『バルタン』
バルタン・ノーヴェ
【JV】と旅団企画【鱏秋祭】のコラボを発注しマース!
【鱏秋祭】とは! 飛空戦艦ワンダレイの有志による、共通の舞台設定でMS様を指定せずに個人ごとにノベル発注! という内容の旅団企画デース!
いわゆるオムニバス形式デスネ! よろしればよろしくお願いしマース!
★希望タグ
#ワンダレイ秋祭り
★舞台設定
飛空戦艦ワンダレイ内の共有スペース(甲板、神社、廊下、ホール等、適切なスポットをお選びください)の一角を借りて秋祭りデース!
★タイトル
おまかせします。【鱏秋祭】~、みたいな形だと統一感があると思います。
★内容
秋の夜長にプラモデルを作る。そんな出店をワンダレイの一角にオープン!
ようこそワンダレイへいらっしゃいマセ、ナイアルテ殿!
ご指導ご鞭撻と物販の提供をご協力いただければ幸いデース!
ここで『プラモーション・アクト』の知名度アップのチャンスタイムでありますな!
通りすがりのワンダレイのメンバー(400人くらい猟兵がいるので、不特定な誰かが来るでしょうたぶん)に喧伝するため、ワタシも『五月雨模型店』のショーケースに飾る用のプラモデルを作って見せて、集客しマース!
創るプラモデルはせっかくなので飛空戦艦ワンダレイを希望しマスガ、可能デスカナ? 難しかったらアドリブでおまかせしマース!
HAHAHA!
●ようこそ飛空戦艦ワンダレイへ!
グリモア猟兵であるナイアルテは一度訪れたことがある旅団、飛空戦艦ワンダレイの壮麗なる姿を見上げて、何度見ても壮麗な戦艦であることに心動かされている様子だった。
そんな彼女の両手に下げられた紙袋。
そして、その手前には手押し車にたくさんの段ボールの箱。
外からは何が入っているのかは伺い知れない。
ただのお土産である、というわけではないだろうということだけがわかる。
「ようこそワンダレイへ。いらっしゃマセ、ナイアルテ殿!」
そんな彼女を出迎えたのは、バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)だった。
秋の夜長にぴったりな浴衣を身にまとった彼女はいつもの三つ編みをアップにまとめ上げ、美しい色合いの浴衣を身にまとっていた。
フリルのついた現代風らしい浴衣。
たなびくように揺れる帯。
肩を出した襟元から覗く肌の色白さが際立つようだった。
そんな彼女にナイアルテはいつものように頭を下げた。
「お招き頂きありがとうございます」
「オヤ、ワンダレイを見ても驚かれないのでありマスな?」
「はい、一度水着コンテストの折に少しだけ。ですが、何度見ても宇宙も深海にも対応するどころか、世界間さえも移動できてしまうとは思えません。いえ、失礼しました……」
彼女は手にした紙袋を掲げて見せる。
その紙袋を見てバルタンは目を輝かせる。
「Oh! それが!」
そう、ナイアルテが飛空戦艦ワンダレイに訪れたのは他ならぬバルタンの招致に寄るものであった。
手にした紙袋こそが目的のブツであった。
別に怪しいやり取りではない。
だが、紙袋から取り落とされたのは白い粉の入ったパウチであった。
「……」
「……ち、違います! 違うんです! これは!」
ナイアルテは絶対に誤解されたと思ったのだろう。いや、誤解されたも何も無い。現行犯逮捕である。
まさかの即お縄。
ここが空港管理局であったのならば、別室に連行される類の光景であった。
「ナイアルテ殿……」
バルタンの視線が痛い!
ナイアルテは慌てて手を降ってパウチ……いや、これパウチっていうか、ジップロック?
「ベビーパウダーです! このベビーパウダーと瞬間接着剤を混ぜて使うことでちょっとした隙間埋めなどが処理できるんです! 本当なんです!」
「Oh~……なるほどデース。早とちりしたでありマース! てっきり……」
「そんなわけないじゃあないですか! 本日はバルタンさんにプラスチックホビー制作のお手伝いで参ったのです。危ないものは……ないわけではないですが、扱いを誤らなければ、これほど便利なものはないものばかりですから」
そう、バルタンがグリモアベースにて大量の箱を背にニコニコしていたのを見かけたのは残暑厳しい頃であった。
彼女は少し悩んでいた。
そう、初秋に差し掛かった頃、バルタンが所属する旅団拠点である飛空戦艦ワンダレイにて『鱏秋祭』が行われるのだ。
この『鱏秋祭』は平たく言えば秋祭りである。
その出店のアイデアをバルタンは欲していたのだ。
そこにグリモアベースにてニコニコしているナイアルテに相談した所、それはぜひとも協力させて欲しい、させてください、させて!! と猛烈にぐいぐい来たのが彼女なのである。
「それにしても大所帯でありマスな! これが全部?」
「はい、プラスチックホビーです!」
手押し車の段ボール箱を覗けば、そこには多くのパッケージに収められた未組立状態の模型の箱がぎっちり詰まっていた。
そればかりではない。
そうしたプラスチックホビーの作成に必要な工具一式が揃っている。
「これで出店の物販はバッチリデース! ここは多くの団員たちに『プラモーション・アクト』……通称『プラクト』の知名度アップのチャンスタイムでありますな!」
「私の積みも減っていくはずですしね!」
「もしや、これは私物でありマスか?」
「ぎくっ」
ぎくっ、と口で言う人初めてみるかもしれない。
ナイアルテは誤魔化すようにバルタンに紙袋を手渡す。それはバルタンから依頼されていた品物である。
確かにバルタンは秋祭り、『鱏秋祭』にて秋の夜長にプラモデルを作る。そんな出店を飛空戦艦ワンダレイの一角にオープンさせるつもりであった。
だが、出店の主、発起人であるバルタンがプラスチックホビーの一つも作らぬというのは、締まらない。
であるのならば、何かを作らねばならない。
考えるまでもない。
『鱏秋祭』が飛空戦艦ワンダレイにて行われるのならば、シンボリックなプラスチックホビーが必要だ。
バルタンは思い切って飛空戦艦ワンダレイのプラスチックホビーを作ろうと心に決めたのだ。
「デスが、こう言ってはなんでアリマスが……ワンダレイ、ひどく特徴的な外観をしているでアリマス。世界広しと言えど、そんなプラスチックホビーがあるのでアリマスか?」
バルタンの疑問は尤もである。
その言葉にナイアルテは頷く。
「ないです」
「エ――ッ!? え、いや、えー!? ナイアルテ殿! ワタシ、ちゃんと発注いたしましたヨネ!?」
「はい。確かに」
バルタンとは裏腹にナイアルテは特に取り乱していなかった。
そう、彼女とて一端のモデラーである。その前に猟兵であって欲しいものであるが、この場合、モデラーであることが重要なのである。
そう、このような格言が模型界隈にはある。
『なければ作る。作れば出る』
――と。
一瞬、ん? となる格言である。
誰が最初に言ったかは定かではない。
だが、事実でもある。
商品化に恵まれない多くのモデル。欲しい! けれどない! ならどうする?
作っちゃえばいいじゃん!
なのである。
ナイアルテは確かにバルタンの希望した飛空戦艦ワンダレイの模型を用意できなかった。
だが!
一から共に作る材料を提供することはできる。
即ち、彼女がバルタンに手渡したのは、プラスチック材各種、パテ各種、接着剤各種! そして、あると便利な工具!
所謂、フルスクラッチである。
無ければ作る。
その心意気をナイアルテはバルタンの瞳の奥に見たのである。
「ま、まさか、これは……そういうことなのデスカ!?」
「そういうことなのです。ご安心ください。一度、ワンダレイを訪れたことのある私は、この飛空戦艦の外観を知っていました。特徴的な戦艦の形状、そして、普段の戦いから見せるバルタンさんのユーベルコード……これらがあれば、フルスクラッチも余裕のヨッチャン烏賊であると!」
「余裕のヨッチャン烏賊!?」
「駄菓子の話です。忘れてください」
「気になりマース!? 聞き流さないデース!」
「いえ、聞き流していただかねば、時間がございません」
くわ、とナイアルテの瞳が見開かれ、爛々と輝いている。
やる気に満ちた瞳であった。
その気迫にバルタンは、頷くしかなかっただろう。いや、乗りかかった船である。
折角のお祭りである。
ここで無茶しないでいつ無茶するというのだ。
「わかりましたでありマース! HAHAHA! フルスクラッチなにするものぞ、でありマース! カモン、バルタンズ!」
バルタンの瞳がユーベルコードに輝き、秘密のバルタンズ(シークレット・サービス)が飛び出す。
『バルバルバル♪』
「ナイアルテ殿! まずは何をすればよいでありマスカ!」
「図面をご確認ください。こちらが私が目視でもって得た三面図です。内部構造は秘匿事項でありましょうから、外観をつぶさに、とはいきませんでしたが……」
「充分デース! ふむ、まずはプラスチック板のカットデース!」
「デザインナイフをお持ちください。力を大きく加える必要はございません。まずは軽くひと撫でするように……」
バルタンは手にしたデザインナイフの刃先の鋭さと薄さを認める。
そう、確かにデザインナイフは切れ味鋭いが、刃が薄いのだ。力加減を謝れば、先端がすぐに掛けてしまう。だからこそ、数度に分けて刃を走らせなければならない。
ナイアルテの用意した三面図からプラスチックの板材にトレーシングペーパーにて図面を書き写し、デザインナイフで切り出していく。
飛空戦艦ワンダレイは、その姿を見ればマンタ型の空中戦艦であることがわかる。
その形状は独特なものであり、外套を広げたような形状でもあったことだろう。だが、平面ではない。
そう、柔らかな曲線膨らみが存在している。
これを表現するために役立つのがパテである。
俗にポリエステルパテと呼ばれる盛り付けに適した主剤と硬化剤を練り合わせることで硬化するパテを用いて切り出したプラスチック板に重ねていく。
「防毒マスクもどうか装着を! 有害な匂いもございますし、何より削った後の粉塵を吸い込むのは健康被害的にもよろしくございません!」
「了解デース!」
バルタンとミニバルタンズは防毒マスクを装着してパーツを整形していく。
紙やすり、スポンジヤスリなどを用いて形状を出していくのは根気のいる作業であった。
だが、徐々に出来上がっていく飛空戦艦ワンダレイの形。
それを見れば、心が踊る。
「ワンダレイ・アンカーも、ワンダレイ・チェインもしっかり再現したでありマース! 鎖を削り出すのは、ひどく大変でありマシタが……」
「素晴らしいです……! まさかここまで!」
眼の前には塗装まで終わった飛空船感ワンダレイのフルスクラッチ・モックアップが台座の上を飛んでいる。
この素晴らしきバルタン作のモックアップは、きっと『鱏秋祭』の出店の目玉となって、多くの旅団員たちの目を引き、足を止めさせただろう。
「ワタシが作りマシタ!」
むふー、とバルタンは連日の突貫作業によって目にクマを作ってしまっていたが、しかし、その出来栄えは素晴らしいものであった。
出店のケースの中に、キラリと輝く小さなワンダレイは、誇らしげにキラリと輝く――。
成功
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