●特務機関DIVIDE本部
「協力してくれる住民のためにチャリティーイベントを開催する」
そんな告知がケルベロス達に通達され、特務機関DIVIDE本部はいつになく浮足立った雰囲気に満ちていた。
「なあ、お前何やるん?」
「あー、俺焼きそばの屋台やってみたいと思ってさっき申請してきた」
「早ッ」
そんなケルベロス達の会話がそこここで展開されている。
「でもさー、チャリティーイベントって何やるん?」
告知を真面目に聞いていなかったのだろう、一人のケルベロスが首をかしげると、その相棒とも言える仲のいいケルベロスがぽかり、と一人目の頭を叩いた。
「あのな、決戦都市の決戦配備とかデウスエクスの被害地域の復興とかでDIVIDEの|予算《かけい》は火の車なの。その資金調達で世界各地でイベントやってるってのは基本中の基本だろうが」
「それは、まぁ」
その話はよく分かる。戦争というものは常に予算との戦いである。対デウスエクスの決戦配備も無料ではないし、デウスエクスに破壊された街を復興するにも予算は必要。
だからこそ、時折チャリティーイベントを開催して近隣住民と交流し、所持金に余裕のある人から資金提供を受ける、といった活動も必要とされていた。
いや、ただ資金提供を受けるだけならほかにいくらでも手段はある。しかし、敢えてチャリティーイベントを開催するのにはほかに理由がある。
それはデウスエクスの攻撃に疲れ、人々が生きる希望をなくさないため。
ケルベロスという超人集団との交流はそんな人々に生きる希望をもたらす。
ケルベロスがいるから今生きていられる、ケルベロスが戦ってくれるからいつかきっとデウスエクスの脅威はなくなる、そのためには少しでも力になりたい、そんな住民の心はケルベロス、いや、DIVIDEにとって不可欠なものであった。
「とにかく、今回は特に派手にやるらしいってこった。なんか、最近協力してくれる猟兵も参加するそうだぜ」
「おお」
猟兵といえばケルベロス達に協力して戦ってくれる心強い味方。一般市民は見分けがつかないのか猟兵もケルベロスと呼んでいるが、いずれにせよここぞという時に頼りになるのが猟兵である。
「だったらなおさら盛り上げないとな」
先ほど殴られたケルベロスが楽しそうに笑う。
「みんなで最高のイベントにしようぜ」
「ああ」
そう言葉を交わし、二人のケルベロスはこつん、と互いの拳をぶつけ合った。
「ところでこの資料を見てくれ。こいつをどう思う?」
突然、殴った方のケルベロスが資料を開いてもう一人に見せる。
「すごく……飯テロです……」
「飯テロなのはいいからさ、お前は何の屋台をするんだよ」
「えぇ……」
広げられた資料はチャリティーイベントの会場図だった。
見た感じ、所狭しと様々な食べ物の屋台が並んでいる。
「どうも今回のチャリティーイベントはグルメフェスにするみたいだな。ステージまで作って格付けチェックまでやるみたいだぜ」
じゅる、とケルベロスの一人が口元を拭う。
「……俺、一般参加していい?」
「駄目だ駄目だ、ちゃんと自分の担当料理決めて登録してこい!」
そんな会話を繰り広げながら、ケルベロス達は廊下を歩いて行った。
●グリモアベース
「というわけで……祭りだァー!!」
そう、声高らかに叫んだのはいつものごとくハーゲル・アポステル(歌って踊れる天才ハッカー・f37296)だった。
いつもの黒に蒼白い光のラインの入った衣装ではなく、ホロドレスのデザイン変更で法被姿となったハーゲルに周りの猟兵は「またか……」と呟く。
ハーゲルのテンションが高いのはいつものことである。これくらいのテンションを維持していないとライブストリーマーなど務まらないのだろう。
それはそれとして、ハーゲルは楽しそうに猟兵たちの前にスクリーンを展開する。
「今回はケルベロスディバイドでのお祭り」
「チャリティーイベントな」
ハーゲルの言葉に早速突き刺さるツッコミ。
鋭いツッコミにハーゲルがこほん、と咳払いをして訂正する。
「今回はケルベロスディバイドで開催されるチャリティーイベントのお手伝い。DIVIDEのお偉いさんが『猟兵も来て一緒に楽しまないか』と打診してきた」
へえ、と呟く猟兵たち。
猟兵たちもケルベロスディバイドの事情は分かっているので、この打診も何故か納得できる。ケルベロスや猟兵が希望として支持されているのも恐らくはこういった活動が支えているからだろう。
ハーゲルが説明を続ける。
「今回のチャリティーイベントは前夜祭、後夜祭含めて3部構成。前夜祭は全世界に生放送されるらしいからオレも参加したかったなァ……」
「お前は! 自分の仕事を! 全うしろ!!」
再度ハーゲルに突っ込みが入るが、ハーゲルは「だってオレ、ライブストリーマーだよ? 配信には出たいじゃん……」と拗ねている。
「とにかく、前夜祭はステージもあるしイベントの見どころをみんなに伝えるのもいいね。もちろん、他の人と一緒に楽しんでもいいよ」
さらにハーゲルはスクリーンに会場図を展開する。
「しかも今回はグルメフェスだって! 世界各地の珍しい料理やご当地B級グルメ、めったに食べられない高級食材も出るみたいだよ!」
これはもう行くしかないじゃん、と言い、ハーゲルは空中にすっと指を走らせた。
空間が切り裂かれ、チャリティーイベント会場への道が開かれる。
「この先に行くも行かないもキミたち次第。だけど折角のお祭りだからさ、楽しんできなよ」
そうだ、猟兵だからと言って常に戦わなければいけないという法はどこにもない。
猟兵とて感情のある戦士なのだ。楽しまなければ心が持たない。
とはいえ、ハーゲルが持ち込む案件の多くは猟兵たちを楽しませるものが多く、「こんなに楽しんでいいのか」と思うのも事実。
その思いで猟兵がハーゲルを見ると、ハーゲルはにっこりと笑ってサムズアップしてみせた。
「オレだって世界が大変な時はみんなの協力仰ぐって。それに、生きてるなら楽しんでナンボじゃん、楽しめるうちにたっぷり楽しむといいよ」
その言葉に背を押され、猟兵たちは歩みを進める。
ケルベロスディバイドの、ひと時の平和を楽しむために。
蒼井 刹那
戦争(しか出さない)マスターが通常シナリオを、出したァー!?!?
しかもこいつ、3章とも日常のシナリオで飯テロする気満々だぞ……?
はいどうもこんにちばんは、蒼井 刹那です。
今回はとうとう戦争以外でのシナリオを提出させていただきました。3章構成のシナリオやるの、実は初めて……(そりゃ戦争しか出してなかったらな)
それはさておき、今回はケルベロスディバイドでのチャリティーイベント(グルメフェス)です。食べ物がたくさんあります、むしろ食べ物しかありません!
プレイングで料理名が出たらその料理を(屋台が)出します! 第1章のステージだったら格付けチェックします! とにかく飯テロを書かせろ! 飯テロマスターに、オレはなる!
今回の章構成をざっくりと説明します。
第1章:前夜祭(生放送あるよ!)
第2章:イベント本番(屋台を巡ってグルメを堪能しよう!)
第3章:後夜祭(飲めや歌えやの大騒ぎ!)
第2章、第3章に関しましては前の章が終了したら断章という形で改めて状況を説明いたします。それを参考にプレイングを書いていただければと。
第1章に関しましてはオープニングで言及がありました通り、ステージがるのでそこで格付けチェックをするもよし、本番の見どころや気になる屋台を紹介していただいても構いませんし、早速屋台を回っていただいても構いません。
とにかく、グルメフェス(グルメフェスって言っちゃってるよ!)を楽しんでください!
第1章 日常
『前夜祭全世界生放送』
|
POW : 他の参加者と一緒に夜通し浮かれ騒ぐ
SPD : ステージに上がり、当日への期待を盛り上げる出し物をする
WIZ : イベントの見どころを簡潔にまとめ、紹介する
イラスト:del
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
エリザベス・ナイツ
ハルんと一緒に
服装:浴衣イラスト(今年のもの)を参照ください
◆行動:屋台巡り
隣行く着物の裾を指先でつまみながら、二人で祭り会場を散策。
山車や出店を見て回りながら、イベント本番で訪問するお店の目星をつけます。
「ねっ、ハル…?本番前に軽くなにかどう?ちょっとだけおなかすいちゃった…」
お茶所へと立ち寄って、お団子と一緒にお茶を一服。
縁台に横座りに腰を下ろして、人々の雑踏をぼんやりと眺めます。ハルの掌の上に掌を重ね、指を絡ませて。
「この平穏がいつまでも続けばいいのに。ねっ、ハル」
彼の指先が、柔らかな声音が私を春の日の様な温もりで包んでくれる。束の間とは言え、私はこの陽だまりの中をあなたと共に往きたいの
ハル・エーヴィヒカイト
エリザ(f40801)と参加
彼女に合わせる形で着流しを着用
▼屋台巡り
「俺達もケルベロスだからこうして楽しむ側に回るのは少し申し訳ない気持ちになるな」
などと話しながら二人祭り会場を散策する
様々な世界をめぐり戦う猟兵でもある。上もその辺りを汲んでくれたのだろう
あまりこういった楽しみに慣れていない俺は彼女に促されるまま店を巡る
「あぁ構わないよ。なにか軽いものを頂いていこうか」
彼女と団子を食べながら一息つく
繋いでくる手をしっかりと握り返しながら
「そうだね。毎日お祭りだとそれはそれで大変だろうけれどね?」
もちろんこの一時に終わりは来る。けれど何度でもこんな時間を過ごすために、俺は決意を新たにしよう
ひらり、ひらりと金糸で蝶の刺繍が施された濃紺の浴衣が広場に揺れる。
長い金髪がまるでその刺繍の蝶が飛ぶ軌跡のように流れ、それを見たハル・エーヴィヒカイト(閃花の剣聖・f40781)はほう、と息を漏らす。
隣を歩くエリザベス・ナイツ(もう一つの月・f40801)の浴衣姿はいくらハルがエリザベスのことを最愛の人と思っていてもそれだけでは足りないと思わせるほどに美しかった。
ああ、私にもっと美しい言葉が紡ぎ出せれば|エリザベス《最愛の人》をもっと適切に表現できるのに、という思いがハルの胸を過る。
そんなハルの着流しの裾を、エリザベスがちょい、と摘まむ。
「ねっ、ハル…?本番前に軽くなにかどう?ちょっとだけおなかすいちゃった…」
ハルの耳を優しくくすぐるエリザベスの声。
ああ、そうだなとハルも頷いた。
今、二人はチャリティーイベントの会場を回っている。
前夜祭ということだが、周囲の屋台は予行演習とばかりに様々な料理を店先に並べ、前夜祭に訪れた人々――一般市民も猟兵もケルベロスも関係ない――の目を楽しませている。
焼きそばやたこ焼きと言った、日本のお祭りの定番からケバブやタコス、生春巻きやフライドチキンなど外国の定番料理も数々並ぶ屋台村に、ハルは「さてどうするか……」と考えた。
幼いころに故郷を滅ぼされ、唯一生き残ったハル。そんな彼がケルベロスとして目覚め、戦い続けたのは必然だった。戦い続けなければ、生きていけなかったから。
それでも、エリザベスと出会い、傷ついた人々を癒す彼女に惹かれ、共に生きるようになってどれほど時間が過ぎただろうか。
それでも、ハルの傷はまだ癒えきっていない。このような人々が楽しむ場所で同じように楽しむことに対して罪悪感を抱いてしまう。
だからこそ、エリザベスはハルを誘った。
楽しんでいいのだと。ただ戦い続けるだけが生きることではないと。
勿論、ハルがかつて故郷を滅ぼした死神に対して復讐心を持っていたものの、さまざまな人々との出会いでその心を捨てたのは知っている。今のハルは復讐のために生きるケルベロスではない。
それでも、心の底にまだ残っている傷を癒したくて、エリザベスはハルを誘う。
「俺達もケルベロスだからこうして楽しむ側に回るのは少し申し訳ない気持ちになるな」
そんなことを言うハルに「上の人が楽しんでこいと言ったのですから」とエリザベスは笑って言ったものだ。
だから、ハルは少々すまなさそうな顔をしながら、エリザベスはそんなハルの心をほぐそうとしながら、イベント会場を歩いていた。
「ねっ、ハル」
再び、エリザベスがハルを誘う。
ああ、と頷き、ハルはエリザベルの白い手を握った。
「何にしようか。この後で色々食べるなら、まずは軽いものがいいか」
「そうね……。あっ、あのお店はどうでしょうか」
エリザベスが屋台村の一角を指さす。
その店は軒先に縁台を備えた一軒のお茶所だった。
店の焼き台には炭火で炙られた団子が甘い香りを漂わせ、その横に置かれた壺にはどろりとした黒い液体がなみなみと注がれている。
お茶所を担当するケルベロスが程よく色づいた団子を壺の中に入れると、中から金茶色の輝きに満ちたみたらし団子が姿を現す。
ほう、とハルが声を上げる。
金茶色の輝きを放つみたらし団子はとても美しかった。
これを口に運ぶエリザベスはきっともっと美しいだろう。
そう思い、ハルは「あの店にしよう」と頷き、エリザベスの手を取ってお茶所へと向かった。
はむ、とエリザベスがみたらし団子を口に運ぶ。
五つ刺さった団子の、一つ目を口に入れ、エリザベスが嬉しそうに笑う。
それを見て、ハルもみたらし団子を口に運んだ。
まず、たれの甘じょっぱい甘味が口いっぱいに広がり、そして香ばしく焼かれた団子が口の中で熱くとろける。
「ふふ、おいしいですね」
ぺろりと唇に付いたたれを舐めたエリザベスが悪戯っ子のように笑った。
「ああ、おいしい」
縁台に座った二人は会場を行き来する人々をぼんやりと眺め、互いのことを考えていた。
デウスエクスに襲われ、疲弊する街であっても、平穏な時間は存在する。
いつまでもこんな時間が続けばいいのに、と二人は同時に考えた。
――その平穏のために、ハルは戦ってくれている。でも――。
ふと、エリザベスは考える。
もし、ハルが自分の前からいなくなってしまったら、と。
そう考えた瞬間、エリザベスは言いようのない不安に駆られ、思わず手を伸ばした。
縁台に置かれたハルの掌に、自分の掌を重ねる。
指を絡ませ、ハルの手の温もりを感じ取る。
「この平穏がいつまでも続けばいいのに。ねっ、ハル」
自分に言い聞かせるように、エリザベスはハルにそう声を掛けた。
ハルがいなくなるなんてことはない。どこに行ってもハルは私の側に戻ってきてくれる。
そんなエリザベスの不安をかき消すように、ハルが優しくエリザベスの手を握り返す。
ケルベロスとして戦っているのに、その手はとても優しく、力強いものだった。
「そうだね。毎日お祭りだとそれはそれで大変だろうけれどね?」
ハルの優しい声が、柔らかな日の光のような声が、エリザベスを優しく包み込む。
私はどこにも行かないよ、ハルがそう続けた気がしてエリザベスはハルに視線を向けた。
じっとエリザベスを見ていたハルの金の瞳と、エリザベスの緑の瞳が交差する。
――大丈夫、ハルはずっと一緒にいてくれる。
そんな安心感が、エリザベスの心を駆け巡る。
束の間の平穏かもしれない。それでも、私はこの陽だまりの中をあなたと共に往きたい、という思いがハルの中へと流れ込んでいく。
ああそうだ、とハルも頷いた。
もちろんこの一時に終わりは来る。けれど何度でもこんな時間を過ごすために、俺は決意を新たにしよう、とハルはもう一度エリザベスの手を握った。
いつか、終わりのない平穏がこの世界に訪れると信じて。
そうしたら、愛しいエリザといつまでも幸せに生きていられるから、と。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リリエッタ・スノウ
DIVIDE職員さんに和ロリの浴衣(24年度浴衣)を着せられてお仕事に。
むぅ、なんだかヒラヒラしてちょっと動きにくいね。
お仕事の内容をよくわかっておらず、うろうろしていたら気になる屋台があって目の間に張り付くよ。
んっ、ちっちゃいナノナノがいっぱい出てくるよ。(ナノナノの型を使ったベビーカステラ屋さんにくぎ付けに)
手際よく焼いていく姿を見ていたら、お嬢ちゃんもやってみるかい? と生地を流し込むところまでお手伝いをさせてもらったよ。
出来上がったカステラを食べてみたら、とってもふわふわで美味しかったよ。
※アドリブ連携大歓迎
DIVIDE職員に着付けてもらった浴衣を身に纏い、リリエッタ・スノウ(ちっちゃい暗殺者・f40953)はイベント会場を楽しそうに歩き回っていた。
最近流行りの和ロリ、というのだろうか、フリフリのレースがあしらわれたミニ丈の浴衣はリリエッタをそれはそれは可愛らしく彩っている。
大輪の牡丹の花があしらわれた紺色の浴衣に夜空を思わせるレースリボンの帯、頭にはちょん、と黒い狐面が飾られたリリエッタは「ちっちゃい暗殺者」の名に恥じぬ様相でイベント会場に溶け込んでいた。
「むぅ、なんだかヒラヒラしてちょっと動きにくいね」
暗殺者として超一流の技術を叩き込まれたリリエッタ、しかし仕事の際は基本的に動きやすい衣装でいることが多いため、このレースひらひらの浴衣は少々動きにくいようである。
それでも、仕事は仕事、とリリエッタは楽しみながらも視線鋭く会場を見回す。
実際のところ、「リリエッタはお祭りを楽しんでおいで」と言われたのだがその意味をよく理解しておらず、リリエッタは会場の見回りこそ仕事、とばかりに不審者はいないか、と目を光らせている。
――と、リリエッタの目が会場の一角で止まった。
それは屋台村にある一軒の屋台。
他の屋台に比べて何やら特殊な機械を使っているような気がして、リリエッタは気になっていた。
これは、もしかして屋台を装った不審者? などと思いながら、リリエッタはその屋台の目の前に張り付く。
暫く屋台の前に張り付いていると、甘い香りが漂い始めてくる。
きゅる、とリリエッタの腹の虫が鳴った時だった。
ぽぽぽぽーん、とリリエッタの目の前、屋台のアクリル板で囲まれた場所に無数のふっくらとしたクリオネ状の生物――ナノナノが姿を見せた。
キツネ色に染まった無数のナノナノ、それは甘い香りを漂わせながらリリエッタを誘う。
「むぅ、不審者はナノナノを作ってる」
これは取り締まりだ、とリリエッタが空腹を覚えながらも違法ナノナノ屋、もといベビーカステラ屋を監視していると、ベビーカステラ屋の主人が楽しそうに笑ってリリエッタを手招きした。
「お嬢ちゃん、ナノナノ焼きに興味があるのかい?」
そう問われ、リリエッタは思わずこくん、と頷く。
「そうかそうか、それならお嬢ちゃんも試してみるといい」
ベビーカステラ屋の主人がリリエッタに粉つぎを手渡す。
おっかなびっくり、リリエッタがベビーカステラ屋の主人の説明を聞きながら不審な機械――ナノナノの形をしたベビーカステラの鉄板に生地を流し込み、パタンと閉じる。
「しばらく待ってな」
ベビーカステラ屋の主人に言われ、リリエッタがこくんと頷き、待つこと数分。
再び甘い香りが漂い、ベビーカステラ屋の主人は鉄板を開いた。
ころころとアクリル板の仕切りの中に転がっていく無数のナノナノ焼き。
その一つを手に取り、ベビーカステラ屋の主人はそれをリリエッタに手渡した。
「お嬢ちゃん、食べてごらん。おいしいよ」
焼きたてほやほやのナノナノ焼きは、リリエッタには少し熱かったが、口に入れるとふわりと甘い香りが口中に広がり、小麦粉の甘みが優しくリリエッタを誘う。
「……おいしい」
あっと言う間に一つ平らげ、リリエッタはもう一度アクリル板の仕切りの中のナノナノ焼きを見た。
「おお、お嬢ちゃんいい食いっぷりだねえ! まだまだあるからどんどん食べな!」
リリエッタの食べっぷりが気に入ったのだろう、ベビーカステラ屋の主人が紙袋にたっぷりナノナノ焼きを入れ、リリエッタに手渡す。
「これは手伝ってくれたお礼だ。もし、腹が減ったらまた遊びにおいで」
うん、とリリエッタは紙袋を抱きかかえ、会場の見回りに戻った。
時々紙袋に手を入れ、ナノナノ焼きを手に取り、口に運ぶ。
ベビーカステラ屋の主人の愛情がたっぷりと詰まったナノナノ焼きはその味付け以上に甘く、優しい、温もりの味がした。
大成功
🔵🔵🔵
シン・クレスケンス(サポート)
◆人物像
落ち着いた雰囲気を持つ穏やかな青年。
窮地でも動じず冷静な状況判断で切り抜ける。
◆行動
探究心や知識欲が旺盛(どの分野でも)。
遠い世界の美しい風景を見たり、変わった体験をするのも好き。
UDC『ツキ』や精霊『ノクス』を伴って出掛けている。
意外とアクティブで、スポーツやキャンプをする姿も。
魔術研究のフィールドワークも兼ねている時も。
料理が得意な為、そういった場面でも活躍出来るかと。
家庭料理、フルコースからお菓子作りも。和洋中から多国籍まで幅広い。
食いしん坊でグルメなツキも納得の味。
◆口調
・シン→ステータス参照
(※使役は呼び捨て)
・ツキ→俺/お前、呼び捨て
だぜ、だろ、じゃないか?等男性的な話し方
「大抵の事はこなせますので、何でもお申し付けください」というのがシン・クレスケンス(真理を探求する眼・f09866)のモットーである。
落ち着いた雰囲気を持ち、誰に対しても柔らかな物腰で接するシンはDIVIDEでも変わらず、様々な人間やケルベロスに頼られていた。
今回も、「焼きそば屋台の担当がいきなり腹痛を起こしたので代わりに店番してくれ」と頼まれ、快く引き受けたところであった。
たすきで着流しの袖が垂れないように縛り付け、シンがコテを両手に持つ。
「さて、焼きますか」
焼きそばの作り方は理解している。鉄板の上で豚肉を焼き、キャベツを焼き、麺を焼いてソースを絡める。お祭りでは定番の軽食で、子供たちにも大人気の一品。
手際よく、シンが焼きそばを焼いていく。
その後ろで闇色の狼が大人しく蹲り、梟の精霊がテントの骨組みを止まり木に止まっている。
「はいはい、ツキもノクスもあとで食べさせてあげますから」
動物に人間の食べ物を与えるのは本来なら動物の健康を害するものなので望ましくない。それはシンも理解していることである。
しかし、ここに控えている|一頭と一羽《ふたり》の仲間は動物というよりもUDCと精霊である。実際に消化しているのかは怪しいところではあるが、せっかくなので味わってもらいたい、というのがシンの願いであった。
とある術を求めて旅をするシン。それに付き従い、苦楽を共にする|狼《ツキ》と|梟《ノクス》。
いつか別れの時は来るかもしれないが、それまでは得た経験を共有したいと。
シンはそう思い、コテで焼きそばを返し、ふっと笑った。
成功
🔵🔵🔴
第2章 日常
『特務機関のチャリティーイベント』
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POW : 周りの人々を巻き込み、全力で楽しむ
SPD : 事前に計画を立て、スムーズに会場を見て回る
WIZ : 派手な宣伝を行い、人々の注目を集める
イラスト:del
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
いよいよ|チャリティーイベント《グルメフェス》が始まり、会場は活気に満ち溢れていた。
前夜祭の内に大量に料理を作り、捌いたことで屋台担当のケルベロス達も調理から会計までの手順はばっちり、大量の客が来てもびくともしないだろう。
とはいえ、祭りは誰もが浮かれてしまい、何が起こるか分からないのがお約束である。
屋台担当のケルベロスも、警備担当のケルベロスも、果ては客として会場に来た猟兵も、些細なトラブルを見逃さないように目を光らせている。
願わくば、何事もなく全員が腹いっぱい料理を楽しめるイベントにならんことを。
印旛院・ラビニア(サポート)
・境遇的なものもあり、思考や嗜好は成人男性のものです(恥ずかしい境遇なのでバレないよう振る舞います)
・基本的にはヘタレで気弱、慎重な面がありますが、物事がうまくいったり周りに煽てられるとイキり散らかして墓穴を掘ることもあります
・なんだかんだで人がいい
・統制機構の効率化された食事やGGOのアイテム合成で簡単に作れる食事に慣れてるせいか手料理への美味しいもの判定はガバガバ
・GGO以外の世界は色々珍しがり興味を持って見てくれる
猟兵に迷惑をかける行為はしません。例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。えっちな展開はコメディ目であれば許容
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
試作機・ノクス(サポート)
「今、向かうであります!」
レプリカントのクロムキャバリア×ブラスターガンナー
似非軍人のような口調で話します。
キャバリアとレプリカントで同一存在だと主張しており、キャバリアの体もレプリカントの体も自分の身体と認識しているように動きます。
一人で戦闘する際は簡単な作戦をたたて、行動しますが、他に作戦を立てている人がいれば、その作戦に全乗っかりで行動します。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
|チャリティーイベント《グルメフェス》が始まり、会場は料理やステージを目当てにした客でごった返していた。
そうなると屋台担当のケルベロス達は勿論、グルメフェスに招待された猟兵たちも各々会場を回って様々な料理に舌鼓を打ちながら、それでも客同士の喧嘩や思いもよらないトラブルが起こらないように目を光らせている。
しかし、悲しいことにこのような祭りの場では羽目を外してしまう人物も存在するもので。
「おらぁ~、酒持って来いってんだ酒!」
このように、酒に溺れくだをまく男が周囲の客に絡み始めていた。
「あらら……。大変なことになってるね」
ざわざわと遠巻きに酔っぱらいを眺める客を掻き分け、覗き込んだのは真っ白な兎耳が特徴の印旛院・ラビニア(エタらない人(仮)・f42058)。今回は美味しいものが食べられると聞き、ケルベロスディバイドに訪れていたが、まさかというか、予想通りというか、トラブルが発生してしまい、せっかくの兎耳がしょんぼりと垂れている。
それでも手にした焼きたてのたい焼きは美味しくいただき、ラビニアは野次馬の輪を掻き分けて、一歩内側へと踏み込んだ。
「それなら私もお手伝いしましょう」
男に一歩近づいたラビニアの隣に、一人の女性レプリカントが歩み寄り、立ち止まる。
同じく騒ぎを聞きつけて駆けつけた猟兵、試作機・ノクス(レプリカントであり、クロムキャバリアである・f41412)である。
ノクスはレプリカントであるがゆえに人間と同じ食事を摂ることはなかったし、このグルメフェスの会場に来たのも祭りを楽しむというよりは祭りで不届き者が出ないように見守るためだった。だからこそ、ここで騒ぎ始めた男にお仕置きするために駆け付けたのである。
「あ、手伝ってくれるの?」
たい焼きの最後の一口を飲み込んだラビニアが隣に立つノクスを見て心強そうな笑みを浮かべる。
こくり、と頷いたノクスに、ラビニアは「よーし」と両手を叩いた。
「それじゃ、やっちゃうよ?」
同時に地面を蹴る二人。
流石に酔っぱらい相手に本気でユーベルコードを使えばオーバーキルにもほどがあるのでほどほどに。
ラビニアが『|豪華なる協力者《スパダリサポーター・ゴウカクン》』で劫禍を呼び出す。
「とりあえずあいつを縛り上げるの手伝ってくれないかな?」
そう、人の姿になった劫禍に指示を出すラビニア。
劫禍もそれを快諾し、ラビニアの肩を抱き寄せ、耳元に口を寄せる。
「ラビ子の願いだ。ここは聞いてやろう」
そう囁き、劫禍が一気に男に肉薄する。
それに続けとノクスも『リモート・レプリカント』で自身のキャバリアを呼び寄せる。
とはいえ、キャバリアで男を攻撃すれば大変なことになる。
しかし、それでもノクスがキャバリアを呼び出したのにはちゃんとした理由があった。
キャバリアの方のノクスがむん、とボディビルの各種ポーズを取り囲む野次馬に向けて披露する。
おお、と沸き上がる歓声。
キャバリアのボディビルポーズという珍しい出し物が始まった、と人々の注目がそちらへと集まっていく。
その隙に劫禍とノクスは酒瓶を手に暴れる男に掴みかかった。
まずは劫禍とノクスが男にタックル、地面に転がしたところでラビニアが手際よく男の着流しから帯を奪い取り、拘束する。
「さて、一丁上がり」
「ラビ子の指示がうまかったからだ」
男の拘束を終えた劫禍がラビニアを抱き寄せアプローチ、それを押しのけようとするラビニア。
それを尻目に、ノクスはキャバリアのノクスの隣に立ち、野次馬改め観客に一礼した。
「皆様、お騒がせしました。そしてこれが私と私の演目であります。是非ともごゆるりとお楽しみください」
観客たちはもう騒ぎがあったことを覚えていない。
ひとまず、トラブルは一つ片付いた、とラビニアもノクスもほっと息を吐いたのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ハル・エーヴィヒカイト
エリザ(f40801)と参加
▼出し物
エリザはどうやらケルベロスの歌姫として仕事をこなすようだ
ならその出し物が無事に終わるように、彼女の歌を聞きながら会場の警備を請け負おう
[心眼]で会場を見渡し問題があれば即時駆けつけ対応する
UCは戦う意思だけを斬ることが出来るが必要な場面以外では使わない
▼終了後
引き続き彼女とゆったりと祭りをめぐる
賑わいを楽しみつつ必要なお酒や食べ物を買って、二人で落ち着いた場所に移動
乾杯しながらゆったりと過ごす
静かながらとてもやさしい笑顔を向けてくる君に俺も出来る限りの笑顔で返す
「なら共に守っていこう。これからも大好きな人々を眺めてこんな風に笑っていられるように」
エリザベス・ナイツ
※ハルと一緒に
●出し物
私で大丈夫かな…。でも、頑張ってみる――。
ステージ上に上がり、UCを発動して、歌姫衣装に早着替え。光が織りなす幻想の銀世界の中、歌と舞いとを披露します
●終了後
焼き鳥や、おでん、お酒を購入して、人々の雑踏を離れて郊外へ。人の少ない場所で、ハルと乾杯するよ?
草の大地に腰を下ろして、そっと夜空を見上げるの。お酒を飲みながら、色々な事を語らうんだ。
「ねぇ、ハル…。私ね、きっと――人間の事が好きなんだ。ああやって笑っている人たちを間近にして。心からそう思えたの…」
あなたの瞳を上目遣いにじっと見つめて。そう、あなたを好きだと思えたから、きっと私は人を愛し続けることが出来る。
会場に設営されたステージ、その袖でエリザベス・ナイツ(もう一つの月・f40801)は両手でマイクを握り締めていた。
「私で大丈夫かな…。でも、頑張ってみる――。」
今回、エリザベスは歌姫としてステージで歌を披露することになっていた。
誰にでも優しく、いつも笑顔で傷ついた人々を癒すエリザベス。歌を披露することで人々が笑顔になるのなら、と快く引き受けはしたが、それでも大勢の前で歌うことに恐怖がないわけではない。
うまく歌えるか、人々を笑顔にできるか、その不安がエリザベスの胸を締め付ける。
そのエリザベスの登場を、ハル・エーヴィヒカイト(閃花の剣聖・f40781)は観客席の周りを警備しながら待ちわびていた。
愛しいエリザベスの歌が聞けるのはハルにとっても幸せのひと時。もしかすると今、不安と緊張で押しつぶされそうになっているだろうがそれでも俺は君の歌を楽しみにしているよ、とハルは独り言ちる。
やがてステージの照明が落とされ、スポットライトに照らされたエリザベスがしずしずとステージ中央に向かっていく。
艶やかな浴衣姿のエリザベスに、観客席からはおお、という感嘆のため息が波打っていく。
――と、ステージの照明が一斉に光り輝き、ステージにスモークや銀紙の紙吹雪が巻き上がった。
同時、エリザベスが観客席に向けて指を鳴らすような仕草を見せる。
その次の瞬間、エリザベスの姿が変わった。
艶やかな浴衣姿から、煌びやかな紫のステージ衣装に。
スパンコール煌めく、ビスチェにレオタードを合わせたような衣装。ただそれだけでは単に露出度が高いお色気衣装になってしまいかねないが、エリザベスはそこに上品な薄紫のショールを腕にかけ、まるで羽のようにはためかせていた。
再びどよめく観客席。
遠目からだが、そのエリザベスの姿を見たハルもほう……と感嘆のため息を吐いた。
エリザベスが歌い、それに合わせて腕や足を動かすたび、衣装のスパンコールやショールが煌めき、揺らめいて幻想的な雰囲気を会場全体に漂わせる。
澄んだ歌声が会場を満たし、人々の心に染み渡っていく。
警戒のために会場を巡回していたハルだったが、その必要はないと思わせるほどの力でエリザベスの歌声は人々の心を掴んでいた。
立ち止まり、ハルもエリザベスの歌に耳を傾ける。
エリザベスの歌は観客全てに向けられたものであったはずだが、ハルには自分一人に向けられた愛の歌だ、と感じさせるものだった。
「お疲れ様、エリザ」
コンサートが終わり、控室から出てきたエリザベスを迎え、ハルはエリザベスと共に会場外れにある郊外の草原に訪れていた。
ここに来る途中で会場の屋台で焼き鳥やおでん、酒などを購入し、暫くぶらりと会場を回った二人だったが、この草原は会場の外ということもあってか周囲に人の気配はない。
グルメフェスの喧騒が風に乗ってかすかに聞こえてくるが、とても静かで満たされた場所だった。
「ありがとう、ハル。私……うまくできたかな」
不安そうに呟くエリザベスに、ハルは酒の入ったカップをそっと差し出す。
「とてもよかったよ。皆、エリザの歌声に聞き入っていたし、俺も――そうだな、ここがすごく温かくなった」
そう言い、ハルは自分の胸に手を当てる。
エリザベスの歌声はとても温かかった。まるで歌声だけで人々を癒せるのではないかと思えるほどの天使の歌声……は、ハルの過大評価だろうか。
いや、そんなことはない。エリザベスの歌は確かにデウスエクスとの戦いで疲弊した人々、いや、ケルベロス達を含めたあらゆる人々の心を癒していた。ほんのひと時の癒しかもしれないが、それでも明日戦う勇気を人々にもたらしてる。
ハルもまた、それを感じ取っていた。
いつまで続くか分からない戦いであっても、いつかは自分たちの勝利で終わるのだ、という思いが炎を灯す。
よかった、とエリザベスが呟き、微笑む。
黄金の夕陽がエリザベスを照らし、神々しさすら感じさせる。
酒の入ったカップを両手で包み込み、エリザベスは胸の内を語る。
「ねぇ、ハル…。私ね、きっと――人間の事が好きなんだ。ああやって笑っている人たちを間近にして。心からそう思えたの…」
ステージから見えた観客席の人々や、その外の会場を歩く人々の笑顔。
とても幸せそうな笑顔に、エリザベスは確かにそう思った。
この笑顔を守りたい、と。
エリザベスの言葉に、ハルも力強く頷く。
「なら共に守っていこう。これからも大好きな人々を眺めてこんな風に笑っていられるように」
エリザベスの柔らかな笑顔に負けず劣らずの、精一杯の笑顔を返す。
――ああ、俺はこの笑顔を守りたい。誰よりも、強く。
それはとてもとても大切な君だから。もし君が後ろ指を指されることになったとしても、俺だけは必ず君を守る、そんな誓いがハルの胸を過る。
酒の入ったカップを持ち上げ、ハルは再び笑顔を見せる。
「乾杯しよう。俺たちのこれからを祈って」
「ええ、私とハルの未来が祝福されたものになることを祈って」
こつん、と二つのカップがぶつけられる。
沈み切る最後の夕陽がカップと、酒を照らし小さな煌めきを生み出す。
空に瞬き始めた無数の星々の下で、ハルとエリザベスはささやかな宴会を始めた。
――いつかこんな日が当たり前に来ますように。
二人の願いは同じだった。
重なり合った願いが、夜空に吸い込まれていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リリエッタ・スノウ
引き続き、和ロリの浴衣を着てお仕事。
今日はケルベロスとして振り込まれていたお給料をDIVIDEの職員さんが小銭にして持たせてくれているらしい。
今日も今日とて不審者がいないかと見回っているともくもくと雲を作っている人がいるね。
むぅ、ああやって雲をいっぱい作って雨を降らせようとしてるのかな?
怪しいことをしていないか観察していると……可愛らしい袋に雲を詰めていってるね。
みんながお金を渡して受け取ってるみたいだから、リリも証拠を押さえるために買いに行くよ。
んんっ、とってもふわふわで口に入れたら溶けちゃうね。
甘い綿菓子を食べて目を丸くしています。
お空の上にはこんなに甘いものがいっぱい浮かんでいたんだね。
祭りもたけなわ、ステージからは美しい歌声が響き、屋台村では様々なかぐわしい香りが漂うイベント会場を、リリエッタ・スノウ(ちっちゃい暗殺者・f40953)はとことこと歩いていた。
前日と同じくフリフリレースのあしらわれた浴衣姿で、手には可愛らしい巾着が下げられている。
「おかしなことがないか見回りに行ってくる」とDIVIDE職員に話したら、職員が「じゃあこれを持っていきな」と渡してくれたのだ。
祭り会場に移動する途中で中を確認すれば、中身はパンパンに膨れたカエルのがま口。カエルの口にあるらっきょう玉をパチンと弾くと中にはぎっしりと小銭が詰まっている。
そういえば、「ケルベロスのお給料を小銭に変えておいたから楽しんでおいで」と言われたような気がしたが、楽しむとは、いったいどういうことだろうか。
こんなにもたくさんの小銭をどうすればいいんだろう、と考えながらリリエッタが会場を歩いていると、様々なケルベロスがリリエッタに「ちょっと食べていくかい?」と声をかけてくる。
ん、と頷いて手近な屋台に近づくとリリエッタにタコ焼きが渡される。
がま口を開いて小銭を取り出し、店主に渡し、リリエッタはたこ焼きを頬張りながら周りを見回した。
このたこ焼きはこの会場にいるかもしれない悪い人を油断させるため、そう自分に言い聞かせながらソースと青のりの香りにはむはむとしていると、視界に一つの屋台が入ってきた。
その屋台は「雲」を作っていた。
店主が何かを機械に入れると、機械からもくもくと雲が湧きあがってくる。
それを器用に集めて、屋台の店主は大きな雲を作っていた。
「……む」
怪しい、とリリエッタの本能が囁く。
「むぅ、ああやって雲をいっぱい作って雨を降らせようとしてるのかな?」
雲が集まれば雨が降る。この屋台の店主は雲を作って雨を降らせ、イベントを台無しにしようとしているのだろうか。
それはいけない。しかし昨日のようにとても美味しい何かを作っているのかもしれない。
まずは証拠を集めなければ、とリリエッタは最後のたこ焼きを飲み込み、ごみを近くのごみ箱に入れてから屋台に近づいた。
屋台の店主はカラフルな雲を作っては次々に可愛らしい袋に詰め、客に渡している。
なるほど、あの雲をたくさんの人に売って広い範囲で雨を降らせようとしているのか、とリリエッタも証拠を確保するために小銭を握り締めた。
「おやお嬢ちゃんもわたあめが欲しいのかい?」
屋台に近づいてきたリリエッタに、店主が笑いながらそう声をかけてくる。
ん、とリリエッタは頷き、店主に小銭を渡した。
「はい、毎度あり」
リリエッタが渡された袋には可憐な花の絵が描かれていた。
その袋を開けると、ふわふわの雲がみっしりと詰まっている。
「うわー、このわたあめ、花の香りがしておいしい!」
不意に、そんな声が聞こえてきて、リリエッタは声の方を見た。
浴衣姿の女性が二人、袋から雲を摘まんでは口に運んでいる。
この雲、食べられるんだ、とリリエッタも試しに雲を摘まんでみた。
ふわふわとした雲を口に運ぶと、ふわり、と口から鼻にかけて甘い花の香りが通り過ぎていく。同時に、口の中に入った雲はあっという間に溶け、柔らかな甘みを残して消えてしまう。
「この雲、おいしい」
思わず目を丸くして呟く。
雲って食べられるんだ、という思いとこの店は食べられる雲でみんなを楽しませているんだ、という思いがリリエッタの中で広がっていく。
「お空の上にはこんなに甘いものがいっぱい浮かんでいたんだね」
雲って雨を降らせるばかりじゃないんだ、と思う。
雨は冷たい。いろんなものを流し去ってしまう。
そんなイメージがリリエッタにはあったが、この甘い雲はそんな思いを覆すほど優しかった。
勿論、そんな雲もあるのだろう。しかし、こうやって人に幸せをもたらす雲もあるのだとリリエッタは初めて知った。
「ありがとう」とリリエッタは思わず呟いていた。
こんなおいしい雲を、ありがとう。
みんなを楽しませてくれて、ありがとう。
お祭りって、こうやって楽しむものなんだ。
ふわふわの雲を口に運びながら、リリエッタは見回り再開、と屋台村の中を歩きだした。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『後夜祭に行こう』
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POW : 地元の特産品を使った料理をいただく
SPD : SNSでイベントの感想を探す
WIZ : 他の参加者と楽しく歓談する
イラスト:del
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『これにてチャリティーイベント、グルメフェスを終了します』というアナウンスが流れ、係員に誘導され祭りを楽しんでいた地元住民が名残惜しそうに帰っていく。
しかし、本当の祭りはこれから。
グルメフェスを盛り上げたケルベロスと猟兵たちの宴が今、始まる。
「よっしゃー! 肉焼けたぞ肉!」
後夜祭用に密かに保管されていた様々な肉が屋台村に持ち込まれ、ケバブやバーベキュー担当のケルベロス達がテンション高く焼き上げていく。
他にも地元住民が「普段戦ってくれているお礼に」と持ってきてくれた様々な地元料理や酒、スイーツもテーブルに並べられていく。
地元住民との交流も大切だが、ケルベロス同士の交流は今後の作戦に関わるほど重要。
だからこそ、ケルベロス達は全力で楽しむ。
さあ、君もこの宴に参加してひと時の平和を楽しもう。
香久山・ルイ
【暮綯】
やあ、お祭りって楽しいね。
久しぶりに球磨川くんと一緒に回れたよ。
僕はほぼほぼ観客に徹してたから、今からケルベロスや猟兵のみなさんにジュースでも配って歩こうかな?
七不思議の試験管から自販機の怪異のアクジキジハンキさんを出して、ユーベルコードでルーレットもしちゃおうか。
後夜祭もお祭りだからね。楽しくやろう。
※自販機の怪異はお釣を食べてしまいます。品揃えはご随意に。
アドリブ連携○
球磨川・マコト
【暮綯】
へえ、ここってこういうイベントもするんだ。
香久山くんとゆっくりしたのは本当に久しぶりだ。
僕はまだ猟兵になってから戦いには出ていないけれど、こういう形の労いがあるのはいいですね。
あ、怪談本が肉と聞いて勝手に飛んでいったんですけど……やれやれ、食い意地張ってる怪異ですね。人が多いから、見失わないようにしないと。【|影の追跡者《シャドウチェイサー》】に追っておいてもらいますか。
突然自販機が現れて、みなさん戸惑っていますから、僕が見本になりましょう。
普通の自販機と変わりませんよ。お釣が食べられちゃうだけで。
アドリブ連携○
「へえ、ここってこういうイベントもするんだ」
夜の帳が下りたグルメフェスの会場を歩きながら、球磨川・マコト(怪異博物館・f44828)は隣を歩く香久山・ルイ(七不思議を追う永遠のこども・f44609)に声を掛けた。
「お祭りって楽しいね。久しぶりに球磨川くんと一緒に回れたよ」
ルイは楽しそうに金魚の入った袋をくるくると回している。その琥珀色の瞳が真っすぐマコトを見て、「キミはどう?」と問いかけている。
もちろん、とマコトは黒い髪をさらりと揺らし、笑んで見せる。
「香久山くんとゆっくりしたのは本当に久しぶりだ」
ルイはいつも興味を持ったもの――人ならざる脅威に対して無言でその調査に出かけてしまう。だから常に行方不明扱いで、親友であるマコトはよく「本当に居場所を知らないのか?」と問い詰められてしまう。そんな困った親友だが、マコトはそんなルイを少し羨ましく思うところもあり、「そのうち帰ってきますよ」とのらりくらりとかわしている。
そんなルイがふらりと戻ってきたかと思えば「ケルベロスディバイドのお祭りに行こう」と誘ってきたのだ。それを断るほどマコトは無粋な男ではない。
二人並んで仲良く祭りを回り、様々な料理に舌鼓を打ち、閉会と思いきや突然始まった後夜祭。
どちらから誘うとでもなく、二人は後夜祭も楽しもう、とケルベロス達が後夜祭用にととっていた肉を焼き始めるのを遠めに眺めていた。
――と。
『肉だァー!!』
真の懐から一冊の本が飛び出し、いい色に焼けた肉に突撃した。
とある文豪がしたためた作品が意志を持ち、「喰らうもの」として怪異化した怪談本、「情念の獣」。文豪が手に負えないと怪異の専門家として活動するマコトに託したものだが、完全にマコトの制御下にあるわけではないらしく、おいしいものを見かけるとこうやって突撃してしまう。
仕方ない、とマコトは苦笑して|影の追跡者《シャドウチェイサー》を召喚する。
これもマコトが従えている怪異ではあるが、「情念の獣」に比べれば従順で、マコトの指示に従い「情念の獣」が肉以外のもの、例えば他のケルベロスや猟兵をうっかり捕食しないように監視に向かう。
そんなマコトを見て、ルイがくすくすと笑う。
「キミも大変だね」
「もう、ある意味幼稚園だよ」
そんな軽口を叩き合うが、それが不愉快ということは全くない。
二人とも気心知れた友であり、仲間であり、共に歩む親友だから、これくらいの軽口はむしろ心地よい。
笑いながらも歩いていると、ルイはふと足を止めて周りを見た。
「そういえば、食べ物はたくさんあるのに飲み物が少ないかな」
このような祭りの場であれば大量の肉と酒が定番だろう。勿論、酒が苦手な人物もいるだろうからソフトドリンクも大量にあるとなおいい。
よし、とルイは七不思議の試験管を取り出した。あらゆる七不思議を自在に操ることができるルイの秘蔵の試験管。
この場にふさわしいのは、と考え、ルイは一つの怪異を呼び出す。
「アクジキジハンキさん、出番ですよ」
その声に応じるように、ルイの隣にぽん、と一台の自販機が現れる。
「!?」
周囲にいたケルベロスや猟兵が、突然現れた自販機に目を丸くする。
出現した瞬間を目撃していなかったものは「あれ、こんなところに自販機なんてあったっけ」という顔をする。
「僕はほぼほぼ観客に徹してたから、今からケルベロスや猟兵のみなさんにジュースでも配って歩こうかな?」
そう言い、ルイはポンポンと自販機を叩いた。
『なんですか、ごはんの時間ですか』
自販機から、声が響く。
ざわざわと遠巻きに自販機を眺めるケルベロス達を尻目に、マコトが小銭の詰まった財布を手に取る。
「突然自販機が現れて、みなさん戸惑っていますから、僕が見本になりましょう」
そう言いながら、自販機の小銭投入口に小銭をチャリン。
マコトが選ぶのは「牛たんサイダー」。
ゴトン、と取り出し口に牛たんサイダーの瓶が落ちる。
次の瞬間、
『お釣り、いただきますね』
と、自販機が宣言した。
「はい、どうぞ」
慣れた様子でマコトが頷き、取り出し口から牛たんサイダーを取り出す。
自販機はというと小銭投入口がまるで人の口のようにもぐもぐと動き、何かを咀嚼するような様子を見せる。
「このアクジキジハンキさんはお釣りを食べるんです。それ以外は何の害もありませんよ」
ルイが周囲に説明すると、アクジキジハンキに興味を持ったケルベロス達が小銭を手に集まってくる。
チャリン、ゴトン、『お釣り、いただきますね』、「なんかキンキンに冷えたコーンポタージュが出てきたんだが!?」
そんなやり取りが繰り返されていると。
不意にアクジキジハンキが笑った――ような錯覚を、一同は覚えた。
アクジキジハンキの金額表示の7セグディスプレイが「4444」を表示している。
『大当たり~!』
テンション高く、アクジキジハンキが声を上げる。
『当たりが出たら、もう一本。え、いらない?お金に貪欲なことで有名な私からのサービスが!?い・ら・な・い!?』
突然のことに何が起こったのかと顔を見合わせる一同にアクジキジハンキが放った言葉がこれである。
なるほど、当たり付きだったのか、と納得した一人のケルベロスが取り出し口に手を伸ばすと何本ものジュースがころころと飛び出してくる。
『せっかくのお祭りですからね、私もサービスしますよ。あ、でも私にもお肉、いただけないでしょうか』
……どうやら、アクジキジハンキも肉が焼けるいい匂いに釣り銭以外のものも食べたくなったらしい。何しろアクジキジハンキである。当たり前である。
仕方ないですね、とルイが近くの屋台から牛串をもらい、アクジキジハンキの小銭投入口に近づけると、アクジキジハンキは嬉しそうにもぐもぐと食べていく。
『ええ、この脂のとろみ、赤身の歯ごたえ、美味ですねえ……』
満足げにアクジキジハンキは呟き、ぽん、とキンキンに冷えたビールを吐き出した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
徳川・家光(サポート)
基本的に、必要性が無い限りあまり目立たないようにしています。でも頼られると嫌と言えず、人前に出ることにめちゃくちゃなれているので、必要になればそこそこの「コミュ力」技能でそつなく対応します。
土木系の力仕事は「羅刹大伽藍」、スピード勝負なら騎乗技能+名馬「火産霊丸」を召喚し、活用します。
異世界の文化が好きで、自分なりに色々調べており詳しいのですが、ときどき基本的な知識が抜けていたりします。
嫁が何百人もいるので色仕掛けには反応しません。また、エンパイアの偉い人には会いません(話がややこしくなるので)。
普段の一人称は「僕」、真剣な時は「余」です。
あとはおまかせ。よろしくです!
はぁ、疲れた、と徳川・家光(江戸幕府将軍・f04430)はグルメフェスが終わり、後夜祭が始まった会場を歩いていた。
家光が疲れていたのには理由がある。実はグルメフェスの最中、会場外に置かれていた資材が崩れ、それを『|羅刹大伽藍《ラセツダイガラン》』でロボに変形し、片付けていたのだ。祭りの最中の出来事とはいえ、客に不安を与えるわけにはいかないと家光はじめ数人のケルベロスが即座に対応したため、この事故はごく一部以外誰も知らない。
とはいえ、肉体労働を行ったわけでそれなりに疲れるし、せっかくのグルメフェスだからおいしいものを食べて元気を補充したい、と家光はお忍びで後夜祭会場を回り、様々な料理を口にし、差し出された酒を楽しんでいた。
「おう、兄ちゃん、ちょうど肉焼けたぜ!」
肉焼き担当のケルベロスが、通りがかった家光に笑顔で牛串を差し出す。
「ありがとうございます」
牛串を受け取り、家光がそれを口に運ぶ。
焼きすぎず、生すぎずの程よい焼き加減で焼かれた牛串、肉は最高級の和牛だろうか。程よく霜が降った赤身の肉は一口噛むと口いっぱいに肉汁を迸らせ、脂の甘みが洪水のように押し寄せてくる。
こんないい肉を隠していたなんて、と思いつつも家光は牛串を楽しみ、次に差し出された清酒を呑む。
辛口の清酒が口の中の脂を流し、喉を通り、疲れを吹き飛ばしていく。
いやあ、働いた後の肉と酒はいいなあ、と次の料理は何にしよう、と考えた家光だったが、とあることに気付く。
後夜祭。夜の帳は降りかけている。つまり――。
「あ、帰らないと」
エンパイアの江戸城にはたくさんの|嫁《大切な人》が家光の帰りを待っている。
名残惜しいが、大切な人が待っているなら帰らなければ男が廃る。
しかし、後夜祭で出される料理はとても美味だったため、家光は大切な人にお土産を持って帰ることにした。
冷めてもおいしく食べられて、皆で楽しめる料理といえば。
「これ、貰ってもいいですか」
家光が選んだのは焼きそばだった。
一度に大量に焼けるし、多少冷めたところで温め直せばすぐに食べられる。肉のように冷めて温め直して固くなることもない。それに、大皿料理を皆で突くのはとても幸せなひと時となる。
焼きそばは普段も簡単に作れるが、祭りの屋台で作られるものは少し特別感がある。
この祭りの余韻を皆で楽しもう、と幾つものパックに詰められた焼きそばの入った袋を手に、家光は意気揚々と帰路に就いたのであった。
成功
🔵🔵🔴
リリエッタ・スノウ
んっ、何も問題起きなかったね。無事に任務完了だよ。
アナウンスと同時に部屋に戻ろうとしていたらDIVIDEの職員さんに呼び止められて席に座らされたよ。
むぅ、なんだかどんどんお肉がリリの前に積まれていくね。
神器の魔力に代わるせいか、見た目以上に大食いな幼女が小さな口でずっともぐもぐしているのをみんなに見られているよ。
流石にお腹がいっぱいになってウトウトしていたら
屋台の景品で残っていた巨大ぬいぐるみに抱き着いてぐっすりお休みモードになっちゃったよ。
※アドリブ連携大歓迎
「んっ、何も問題起きなかったね。無事に任務完了だよ」
無事にイベントが終了し、後夜祭が始まった会場をリリエッタ・スノウ(ちっちゃい暗殺者・f40953)後にしようとしていた。
リリエッタとしてはこの祭りを|楽しむ《守る》ことができたから満足だったし、夜の帳が下りて、いい子は布団に入る時間が近づいている。暗殺者としての用件がない限りは「いい子」として振舞っているリリエッタには少々おねむの時間が近づきつつあった。
しかし、DIVIDEの宿舎に戻ろうとしたリリエッタを他の職員が呼び止める。
どうしたの、別の仕事? とリリエッタが職員に近づくと、職員はリリエッタの手を引き、一つのテーブルの前に座らせた。
何が起こるんだろう、と座ったリリエッタの前にこんがり焼かれた肉の皿が置かれる。それも、リリエッタが食べやすいように一口大にカットされ、切り口から肉汁が溢れている。
「リリエッタちゃん、お疲れ様。しっかり食べて休んでね」
皿を置いた職員がそう言い、リリエッタが周りを見ると肉を焼いていたケルベロスがぐっ、とサムズアップしてみせる。
美味しいぞ、という声が聞こえた気がして、リリエッタはフォークを肉に刺し、口に運んだ。
口の中で溢れる肉汁、歯で噛みちぎられる赤身の筋肉繊維は硬すぎず柔らかすぎず、程よい弾力でどんどん肉汁と旨味を染み出していく。
「んっ、おいしい」
あまりの美味しさに、ついつい手が出てさらに山盛りに積まれた肉がどんどん減っていく。
リリエッタはリリエッタで、肉が埋め込まれた「■■■の心臓」への魔力供給となっているようで底なしの食欲を発揮している。
「おお、いい食いっぷりじゃねえか!」
肉焼き担当のケルベロスが嬉しそうに笑い、皿に次々と肉のおかわりを置いていく。それをリリエッタが片端から平らげていく。
そんなリリエッタの食べっぷりを、周りの大人たちは微笑ましく眺めている。
しかし、そんな底なしの食欲もいつかは底に届くもので、リリエッタの胃袋は美味かつ大量の肉に満足し、幸せな眠気をリリエッタにもたらしていた。
「くぅ……」
フォークを手にしたまま、リリエッタがうとうとと舟をこぎ始める。
おやおや、とケルベロスの一人がリリエッタの手からフォークを受け取り、代わりに大きなぬいぐるみをその手に抱かせる。
ここまでおねむになってしまったなら大人が宿舎に連れて帰らなければいけないだろう。それまではこのぬいぐるみに抱き着いていれば安全だろう、という配慮だったが、リリエッタには効果てきめんだったようだ。
屋台の福引で残った巨大ぬいぐるみだったが、リリエッタに抱きしめられて心なしか幸せそうな表情をしているように見える。
リリエッタも幸せそうな寝顔でぬいぐるみに抱き着き、むにゃむにゃとしている。
このような子供が、これからも幸せに眠れるように、とケルベロス達は願った。
そして、いつか本当にそんな日が来るように戦うのだ、と心に誓うのだった。
大成功
🔵🔵🔵
エリザベス・ナイツ
ハルと一緒に参加します――。
アドリブ◎
◆格好は、ハロウィン衣装そのままに。
二人で郊外で少しゆっくりできたから…今度は地元の方たちに混ざって、私たちもわいわい出来たらいいね、ハル…!
地元のケルベロスさんも含めて、みんなでお酒で乾杯したいな。
お酒は、ちょこっと高級な葡萄酒をお願いして。あとあと…チーズを使っお料理をなにか頂きましょう?
お酒を囲みながら、みんなの思っている事、一人一人の悩みや想い、それから夢。――みんなが抱えている生の感情をね、聞いてみたいんだ。
歌を最後にお披露目するね?
みんなで歌いましょ。
…ハル、あなたも一緒に歌ってくれなきゃ嫌よ?
せっかくの宴なんだから、思い切り楽しまなくちゃ?
ハル・エーヴィヒカイト
引き続きエリザ(f40801)と参加
アドリブ○
エリザ以外と話すとき一人称は私
二人だけの時間をゆったり過ごした後は後夜祭の賑わいを楽しもう。
猟兵として楽しむ側に回らせてもらったが二人もケルベロス、現地のケルベロスと親睦を深めるのも大事だろう。
エリザはなかなか遠慮がないな。おかげで中々いい品を提供してくれたようだ。
この分の借りは今後の働きで返すとして、今は皆と乾杯と行こう。
歌か……あまり得意ではないというか、歌うこと自体機会がなかったけれど、君が望むならそうしよう。
ただこういう場だから、それとは別に皆で楽しめる歌もあったほうがいいかもしれないな。
ミニコンサートの後のひと時を近くの草原で過ごした後のエリザベス・ナイツ(もう一つの月・f40801)とハル・エーヴィヒカイト(閃花の剣聖・f40781)は後夜祭が始まったイベント会場に戻ってきていた。
二人でかけがえのない時間を過ごし、次は地元のケルベロスとの交流を、と思いイベント会場に戻ってきた二人は多くのケルベロスに囲まれ、様々な話に花を咲かせる。
今までの戦いであった出来事やこれからの願い、近隣住民の差し入れの話や気が早くも次のイベントの予想など――。
エリザベスが笑顔で声をかけると皆嬉しそうに応え、隣に立つハルを羨望の眼差しで見る。このような素敵な女性に想われて、お前は幸せ者だぞ、と。
ハルも、一応はエリザベスに無礼な言葉が掛けられないように注意を払いつつも会話に参加し、ケルベロス達の生の声を聞いていく。
皆、戦いに明け暮れる日々であっても希望を失わず、|未来《あす》への希望を持って歩いていることに二人は感銘を受けた。
勿論、二人も戦いの日々に絶望しているわけではない。いつか来る平和な未来を信じているが、それでも不安はあったのだ。
――もしかして、この戦いに終わりはないのではないか、というほんの小さな不安が。
しかし、ケルベロス達と言葉を交わして、そんな小さな不安は吹き飛んでしまった。
他のケルベロスも、実は同じような不安を抱えてはいたかもしれない。それでも仲間と未来を信じれば、そんな不安は軽く吹き飛んでしまうのだ。
少し喉が渇いた、とエリザベスがルイに声をかけ、小銭を手渡す。ルイが笑って隣のアクジキジハンキに受け取った小銭を投入する。
『あらあ、仲睦まじいことで。私、そういう方々大好きですよ。では、お二人の幸せを願って』
ゴトン、とアクジキジハンキが1本の瓶を吐き出す。
ルイがそれを取り出し、エリザベスに手渡す。
「アクジキジハンキさんの大盤振る舞いです」
そう言いながらルイが手渡したのは近辺でも少々高級なことで有名な葡萄酒。
アクジキジハンキがにっこりと笑ったような錯覚を、エリザベスとハルは覚えた。
『その葡萄酒にはチーズを使ったお料理が似合いますかもねえ』
そんなアクジキジハンキのお節介に、エリザベスがくすりと笑う。
「ですって、ハル。せっかくだから、いただいてみましょうか」
「ああ、そうしよう」
エリザベスの見事な手腕に心の中で賞賛を送りながら、ハルは近くの屋台からカマンベールフォンデュを受け取ってくる。
皮のようにチーズ本体を包み込む白カビ部分の上部をめくると、中はとろりととろけた熱々のチーズが待っている。
そこに黒コショウを少し挽き、添えられているフランスパンや野菜をディップして食べるという料理であるが、こんなものまで用意するとは屋台担当のケルベロスは本当に用意周到である。
フォンデュ用のフォークに思い思いの食材を刺し、二人は交互にそれをチーズに浸す。
やけどしないように気を付けながら口に入れると、とろとろのチーズに包まれた食材がその旨味を最大限に引き出されて口の中に広がっていく。
「おいしい!」
カマンベールフォンデュに舌鼓を打ちながら、二人は葡萄酒も口に運ぶ。勿論、その前に乾杯も忘れない。
――エリザはなかなか遠慮がないな。おかげで中々いい品を提供してくれたようだ。
エリザベスが葡萄酒を手に入れなければこのようなカマンベールフォンデュを肴にすることもなかったかもしれない。それだけで、エリザベスには頭が上がらない、とハルは苦笑する。
――この分の借りは今後の働きで返すとして、今は皆と乾杯と行こう。
別にエリザベスが厚かましい女だとは思っていない。そうではなく、自分とは違って他人との交渉が優れているのだ、と純粋に尊敬しているのだ。
尤も、エリザベスはエリザベスでハルのことを「何があっても自分を守ってくれる、たとえ世界が敵になったとしても自分の味方でいてくれる大切な人」と尊敬しているのだが、ハルはそれに気付いているのか。
そんな、ただの絆という言葉では測り切れない深いつながりを持つ二人を、ケルベロス達は決して茶化すことなく、腫れ物に触るような扱いもせず、敬意をもって接している。
近すぎず遠すぎずの距離感が心地よく、二人は葡萄酒といくつかのチーズ料理を楽しみながらケルベロス達と談笑していた。
「そうだ」
突然、エリザベスが両手を叩いて声を上げる。
「どうしたんだい、エリザ」
ハルがそう尋ねると、エリザベスはにっこりと笑ってウィンクする。
「歌を最後にお披露目するね?」
そう言い、エリザベスがハルの手を引く。
「みんなで歌いましょ」
祭りの締めくくりにふさわしい出し物。
エリザベスに手を引かれ、ハルも苦笑する。
「歌か……あまり得意ではないというか、歌うこと自体機会がなかったけれど、君が望むならそうしよう」
何を歌う? とハルが尋ねると、エリザベスはとある歌を口ずさんだ。
それは、ハルも遠い昔聞いたことがあるわらべ歌。
エリザベスのハミングに、周りのケルベロス達も懐かしそうに声を合わせていく。
とても無邪気で、誰もが知る懐かしい歌。
イベント会場に歌声が広がっていく。
エリザベスの歌声に合わせ、ハルも歌詞を口ずさむ。
多くの仲間と歌う、希望の歌。
それはイベント会場を満たし、ケルベロス達の心を満たし、そして世界を満たしていくのであった。
大成功
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試作機・ノクス
「ふぅ、多少はトラブルがありましたが、無事に終わったでありますね。
エッ、この肉を私にでありますか?
イエ、私は食べなくても……いや、逆に失礼でありますね。では少しいただくであります。」
あまり食事でエネルギーを補給することは無いですが、構造上は可能。少しお肉をいただきます。
食べつつ、他のケロベロスや猟兵と会話をします。
アドリブ・連携は歓迎です。
「ふぅ、多少はトラブルがありましたが、無事に終わったでありますね」
後夜祭が始まり、試作機・ノクス(レプリカントであり、クロムキャバリアである・f41412)はそう安堵の声を上げた。
イベント本番では酔っぱらいを制圧する、といったトラブルがあるにはあったがそんなものは祭りでは必ず発生するお約束、むしろノクスの知る大きなトラブルはこれだけである。
実際のところは会場の外で資材が崩れたらしいが、それは話が広がる前に対処され、問題のもの字にすらなっていない。
ノクスとしては今日の自分の役目は終わったようなものだが、せっかくだからこの祭りの余韻を少し楽しもう、と思っていた。
そんなノクスに、ずい、と牛串が乗った皿が差し出された。
「お疲れさん。レプリカントだからってなにも食えねえわけじゃないというなら食ってみないか? トブぞ」
そんな、まるで違法薬物の取引を行うかのような発言をするケルベロスを、ノクスが見る。
「エッ、この肉を私にでありますか?」
驚いたようにノクスが声を上げる。
確かにノクスはレプリカントだが、食物の消化・分解機構がないわけではない。普段はその必要を感じることがないため食物を口に入れることは滅多になかったが、差し出されたなら口にする。
とはいえ、ノクス的には今回のイベントには警備のために来た、という意識がある。
食べていいのか、と自問し、すぐにそれを肯定する。
「イエ、私は食べなくても……いや、逆に失礼でありますね。では少しいただくであります」
「逆に失礼」と言ったのはあくまでも言い訳である。実際のところ、あまりにもおいしそうに焼かれた肉に食欲を覚えていた。
そんな、食欲の魔力を秘めた牛串を手に取り、ノクスが一口食べてみる。
「おいしいであります」
いくらレプリカントであっても食べ物を摂取する機能があるなら味覚もある。
口に運んだ牛串は、今まで口にしたことのある料理の中で一番の味がした。
何故か心がほぐれていくような感覚を覚え、これが幸せなのかと実感する。
あっと言う間に牛串を平らげ、ノクスは牛串を提供してくれたケルベロスに感謝の言葉を告げ、ぶらぶらと会場を歩き回った。
その中で何人かのケルベロスに声を掛けられ、また、ノクスからも声をかけていく。
今日のイベントの感想や明日からの意気込みを交わし、新たな戦いの日々に向けて士気を高めていく。
そういった意味では、今日のイベントは近隣住民を励ましただけに終わらず、ケルベロスや猟兵たちも励まされる結果となった。
明日からも頑張ろう、必ず平和な日々を取り戻そう、そんな思いが会場に満ちていく。
いつしか響き始めた歌声を背に、ノクスは「頑張るであります」と呟き、決意を新たにするのであった。
大成功
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