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#サイキックハーツ #ノベル #猟兵達の秋祭り2024

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#猟兵達の秋祭り2024


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此原・コノネ



レーヴクム・エニュプニオン




●季節の移ろい
 酷暑というのならば、今年の夏はそう表現されるものであった。
 だが季節というのは移ろうものである。
 であるのならば、日々が過ぎていけば暑さも和らいでいくものなのだ。
 徐々に、緩やかに。
「いや、嘘でしょ」
「昨日の今日で、これとは……」
 此原・コノネ(精神殺人遊び・f43838)は武蔵坂学園の年長たる灼滅者たちの嘆きを見た。
 いや、コノネ自身も急に寒くなったので体がびっくりしているなーって思った。

「長袖? 半袖? どっちがいいかしら」
 コノネは服装に困った。
 秋祭りに行こうと思っているのだ。
 朝晩は冷えるから長袖がいい。けれど、日中は日差しがまだ強いから半袖がいい。
 中途半端なのだ。
 七分袖であればいいのだけれど、コノネは和装を好む。
 昔から人の工夫というものは多くあるものだけれど、これだけ朝晩と日中の寒暖差が激しければ、どうしようもない。
「うん、仕方ないから長袖にするのよ」
 思い切って長袖。
 季節を先取りしたみたいだけれど、そういうのも悪くない。
「帰り道は気をつけるんだよ」
 武蔵坂のおにーさんやおねーさんたちは、そう言って心配してくれる。

 でも安心して欲しい。
 いつまでも子どもじゃあないのだ。まだ子どもだけれど。
「いってきまあす」
 それに自分一人じゃないだろうなっていう予感だけがあった。
 その予感は直ぐに当たることになる。
 秋祭りで見知った背中を見つける。あの独特な服装、見間違えるわけがない。

「レーヴクムおにーさん!」
「ん? やあ、コノネちゃん。君も秋祭りに?」
 声をかけられて振り返ったのは、とっても寒そうな服装をしたレーヴクム・エニュプニオン(悪夢喰い人・f44161)であった。
 日中は平気でも、日が暮れると急に気温が下がる。
 彼の服装はいわゆる露出の多いものである。故に、夏場は汗ばみ日焼けして大変であるが、気温が下がってくれば一気に寒さが襲ってきて体温が奪われていく。
 まだ秋だからいいけれど、これからの季節はどうするつもりなのだろう?
「うん。でも、レーヴクムおにーさんは、寒そうね」
「そりゃね。いきなり気温が下がったからね」
「大丈夫なの?」
「多分数日したら慣れるよ」
「それより着込んだ方が早そうなの」
「いいかい、コノネちゃん」
 レーヴクムは頭を振る。
 ひどく悲しげな雰囲気だったのは、気の所為。

「ファッションは気合と慣れが必要なこともあるんだよ」
「ふーん?」
 コノネはよくわかんないって顔をしていた。そりゃそうだ。
「そうだ、コノネちゃん綿あめ好きかい?」
「綿あめ? うん、好きよ。りんご飴も好き。こういうお祭りで買ったほうがなんだか美味しいって思うの」
 世にはりんご飴専門店なんてものもあるらしいが、コノネはこういう雑多な……飾らない感じの物のほうが好ましく感じる。

「まあそうだよね。綿あめ自体がどうこうじゃあなくって、袋とか含めてお祭りって感じするものね」
「そうなのよ。あら、くじ引きもあるのよ。あれってそうでしょう?」
 示す先にあるのはくじ引き屋であった。
 紐が束ねられて垂らされている。
 景品が吊るされるようにして見せつけられているものだから、射幸心が刺激されてしまってたまらないものがあった。
 レーヴクムだけじゃあなく、コノネもどうやら同じだったようだ。

 既視感。
 いや、記憶違いだろう。レーヴクムはそう思った。
「折角だからやってみない? 運試しっていうじゃない」
「うん!」
「おじさん、二人ね」
 はいよ、とくじ引き屋のおじさんに代金を支払って垂れている紐を見る。

 こういうのはフィーリングが大切なのだ。
「これ!」
「じゃあ、ボクちゃんはこれかな」
 互いに一緒に引っ張る。
 紐の先の景品が持ち上がり、カランカランと鐘の音が響き渡る。
「おおあたり~!」
「わ、当たっちゃったね。これは……へぇ、獏かぁ」
「獏?」
「そう、夢を食べる妖怪ってやつだよ。動物じゃあないほうね? ははぁ、なるほど。不思議生物プラモデルかぁ。ボクちゃんにぴったりかも! コノネちゃんは?」
「あたしはこれ。なにこれ?」
 よくわからない、とコノネは自分が景品としてもらった箱をレーヴクムに突き出す。

「ふむ? ああ、艦船プラモデルかぁ。船だよ、船。わかるかな?」
「お船? そうなの?」
「ふたりとも大当たりだよ。すごいな。同時に引いてどっちも大当たりなんて」
「これがそうなの?」
 コノネは不思議そうな顔をして首を傾げる。
 なんともよくわからない。
 けれど、なんとなく既視感が在るような気がした。
 それが何なのかは説明できないけれど。

「コノネちゃんのは『渋い』ねぇ」
「ふーん? よくわからないけれど」
 大当たりなら嬉しい。
 そんなふうにコノネは笑う。それを見てレーヴクムも、やったね、と笑い合う。
 それはいつかの日にあった情景であったんかもしれないけれど。
 今の二人には知る由もない――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年10月12日


挿絵イラスト