帝都に、ことさらに傷ついた影朧「春告の紅白」が現れます。
影朧は皆、多かれ少なかれ傷つき生まれる「弱いオブリビオン」ですが、その中でもこの影朧は特にはかなく、弱く感じられます。
人々に忘れ去られた美しい紅白梅が咲く神社と神職の影朧……余程の辛い「過去」が具現化したのでしょう。
聞けば、想い人への約束を果たせなかったことが原因とのこと──その無念が影朧化し、この世に無念を残してしまったようです。
本来は穏やかで友好的な存在でしたが、戦闘力は無いながらも寂しさから無意識に人を惑わす結界を作る「敵」となってしまいました。
「今年も梅が咲いたよ。皆、何処へ行ってしまったんだい?」
その身を取り巻く紅白の丸い生き物は彼の式神。
残る力で影朧化してしまった今、残念ですがもはや退治する以外に手はありません。
その影朧は、叶えられなかった「何か」を叶えようと、雑踏でごった返す帝都の只中に現れました。
約束の思い人にせめてもの記念の贈り物をしたかった……大切な「果たせなかった執着」があり、それを叶えるために、目的地へと進んでいるのです。
通常ならば、帝都を脅かす影朧は即座に斬るのが掟です。
が、ひとたび無害となったなら、帝都桜學府の目的である「影朧の救済」を優先するべきでしょう。
猟兵である皆さんが選択するべきは、影朧を救済し消滅させることです。
●第一章
帝都に突然現れた影朧との戦闘です。
倒して即座に死ぬわけではありませんが、もう長くはありません。
が、無害となった傷つく影朧は、「果たせなかった執着」を果たすために歩き始めます。
●第二章
目的地で、影朧の「執着」を果たさせてあげましょう。
約束した相手に、記念になるような素敵な贈り物がしたかった……その無念を晴らしてあげることが勝利条件となります。
執着を果たした影朧は、光りながら消滅します。
「春告の紅白」さんを無事に成仏させられるかどうか、それは猟兵の皆様の気遣いに掛かっています。
どうか安らかなる時を与えてあげられるよう、皆様のご協力を宜しくお願い致します。
ロミナ毅流
猟兵の皆様、お疲れ様です! ロミナ毅流です。
戦後シナリオ、やや切ないお話となっております。
果たして「春告の紅白」さんは無事に光となって消滅することが出来るのか……猟兵の皆様の優しさ、心遣いが大いに関係してくるシナリオ展開となっております。
相手は弱っている影朧ということですが、決して油断召されませぬよう……!
第一章は戦闘、第二章は日常のフレームとなっております。
特に第二章ですが、「春告の紅白」の記念品と共に、猟兵さんも何か記念の贈り物を選ばれるというのも良いかもしれませんね。
日頃お世話になっている方への感謝の気持ちを思い出してご参加いただければ幸いです。
やや湿っぽい展開になるかと思いますが、皆様の心情表現楽しみにしております、宜しくお願い致します!
第1章 ボス戦
『春告の紅白』
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POW : おやおや、どうして私の所に集まってくるんだい?
全身を【紅と白のもちもちした式神が覆って防御状態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD : 封じの式神
【紅色のもちもちした丸い式神】【白色のもちもちした丸い式神】【紅白の梅の花びら】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : 惑わしの梅
戦場全体に、【過去の思い出の幻覚を見せる紅白梅】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「月舘・夜彦」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ルーシア・オオワンダー(サポート)
(改変・連携・アドリブ歓迎、NG無し)
私は…海に漫画を描く週間猟兵ファングの漫画家。
海が無くても…水場なら、どこでも描ける。
私自身は…物静かであまり積極的に絡まないタイプ…
戦時は…主人公やアシスタントを召喚して後方から漫画を描いているか支援が専門。
マンガが本職だけど…意外と彼らは戦える。
日常や冒険なら…マンガの力を借りたり、売ってたりしてるかもしれない。
でも気を付けて…いつ私が封印した承認欲求が爆発するか分からないから…
天玲寺・夢彩(サポート)
夢彩は桜の精で學徒兵の悪魔召喚士!
名前で呼ぶ時は「さん」とか「くん」みたいに呼ぶよ。
軽業みたいなアクロバティックな動きが得意だから、翔んだり跳ねたりよく動き回るよ!
足場が無いなら結界術で作るかな。
UCや技能はその時に使えそうな物を使用だよう。
道徳違反はしないもん。
あとはお任せ!
[基本]
一言でいうなら春の大嵐。
見た目年齢はほぼ変わってない。
天真爛漫なムードメーカーで無自覚トラブルメーカー(ギャグ仕様)。
※空気はよめる。
[真の姿]
よりエレメンタルな精霊。お姉さんな雰囲気、でもやっぱり性格は極端に変わらない。
奇想天外な事も楽しんじゃう位にはメンタルは凄くタフ。
《連携アドリブok.ギャグ系は大歓迎》
しくしく、しくしく。
春告の紅白がほろほろと涙を零しながら、そろりそろりとやってくる。
弱っているとはいえ、彼は立派な|影朧《オブリビオン》……猟兵としては滅してやらなくてはならない。
せめて苦しまぬようにとは思ったのだが、あちらが攻撃をしてくるのであれば、反撃は致し方なし。
ルーシア・オオワンダー(海に漫画を描く女・f42799)は、ペンを片手に思案していた。
(儚く散る影朧……その生涯、生き様、これを記さぬ手はない)
人の思いや記憶を劇的に描けてこそ、真の漫画家ではないだろうか? ルーシアが得意なジャンルかと問われると答えは難しい部分もあったが、題材にするには悪くない。
そもそも猟兵としてペンを握るからには、こうした場面にも積極的に挑んで勉強していかなければ。
さて、どのペン先がいいかと次の思案を始めた。
天玲寺・夢彩(春の大嵐少女・f22531)もまた、影朧を前に思案している。
とはいえ、こちらは楽観的だ。
いつもにこにこ明るく無邪気な自由人なだけあって、こうした場面でもタフメンタルで向かっていく。
何やら考え事をしている体のルーシアを見て、やや不思議に思い声をかけてみる。
「キミはこの状況、どう見るかな? 夢彩はちゃちゃっと出来る限り早く片付けちゃいたいと思うんだけど」
「……そうだね、出来る限り長引かずに、小気味良く纏めたいところ。短編で勢いよく場面を切っていくのがいいかな」
「うん? よくわからないけど何となく伝わったよ! テンポよく決めたいってことだね、それなら難しくないよ」
春告の紅白は封じの式神を展開して猟兵達を翻弄しようとする。
【紅色のもちもちした丸い式神】【白色のもちもちした丸い式神】【紅白の梅の花びら】をルーシアと夢彩に向かって放ち、命中した対象の攻撃力を減らす狙いだ。
全て命中するとユーベルコードを封じる効果があるようで、これをまともに食らうわけにはいかない。
ルーシアは華麗に封じの式神を避け、ペンにインクをたっぷり含ませると……。
『死んでもペンは手放さないのが漫画海賊』
ユーベルコード:漫画海賊船アシスタント号を召喚するべく描画をはじめた。
【Gペンとトーンナイフ】で武装し【過労死した漫画海賊】の幽霊をざっと描けば、なんと600体程になった上に船でどこからともなく波に乗りやってくるではないか!
……波はどこから来たのかって?
『春の嵐に飲み込まれちゃえ!』
夢彩が放つユーベルコード:|春嵐麗舞《シュンランレイブ》が【エネルギー充填】した【霊式波・春姫】から【淡く光り輝く、まるで舞う巨大な春色の大嵐】を巻き起こしたのだ。
これに対抗すべく、春告の紅白も惑わしの梅を放出する。
戦場全体に、【過去の思い出の幻覚を見せる紅白梅】で出来た迷路を作り出す技だ。
迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
「わ、わあ、どうしよう~!」
夢彩が慌てだすが、ルーシアは動じない……というよりも、こんな展開になろうとも、変わらずペンを走らせ漫画を描いているのだ。
「私に任せて! こちらは地の利を生かす!」
素早くペンを動かして描くは大放水、迷路の隅々まで水を流してしまおうという作戦だ。
(過去に描いたことがある……鉄砲水の如く打ち付ける大波……あれをもう一度今、描ければ!)
「! なんかすごい勢いで描いてる!?」
ルーシアのペンさばきに夢彩は驚くばかりだ……否、驚いているだけではない。
過去の幻惑、幼かったころの自分を見せつけられていたが、持ち前のメンタルできっぱりと断ち、現在に意識を集中させているのだ。
「出口が一つなら、その一点を大河が探してくれる」
「なぁるほど、頭いい~! よぉし、夢彩も負けないんだから!」
活路を見出したルーシアの勢いに、夢彩も力を加えて春嵐麗舞の流れを整えていく。
『見惚れて吹き飛ばされないように、ね!』
描かれた水と、光り輝く春色の大嵐が迷路を瞬時に駆け巡り、その先頭に漫画海賊の乗った船がヨーソロと漕ぎ出していくではないか。
そして、出口に待ち受ける春告の紅白に向かって突撃していく!
「ひいいいいいいい!」
あっという間に漫画海賊の大群と春色の大嵐に飲み込まれた春告の紅白が悲鳴を上げる。
二人の力が合わさることで、見事影朧に大ダメージを与えることに成功したのだ。
「ほぇ~、漫画ってすごいんだねぇ!」
「! ありがとう、漫画の可能性を信じてくれて」
「キミの描いたこれまでの漫画、どこかで読めたりする?」
「ああ、ここに単行本『GAN PARTS』の用意がある! 何ならサインを入れてもいい」
「本当!? やったあ!」
夢彩の飾らない褒め言葉に、ルーシアの承認欲求が満たされる。
ずぶ濡れになった上に漫画海賊にボコボコにされた春告の紅白は、春色の大嵐により敵対心を大きく削られてしまい、動けずそのまま力を失くしていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
藍沢・瑠璃(サポート)
【性格】
自分に自信がなくて基本的にネガティブな思考ですが臆病というわけではなく意外と思い切りはいい性格をしています。
強い相手には相応にビビりますが弱そうな相手(集団敵)には基本的に強気です。
普段は敬語で一人称は「ボク」です。
【戦闘】
ボス的にはビビりつつもなるべく油断させて隙に怪力を生かした接近戦で圧倒しようとします。基本は接近戦しか能がありません。
集団的では一転して強気になって敵陣に突っ込んで格闘で蹂躙したり怪力で(文字通り)ちぎっては投げして戦います。
基本的に接近戦しか能がありません。
『うぅ…なんでボクばっかこんな目に…』
春告の紅白がそろりそろりと迫ってくる中、藍沢・瑠璃(ヤドリガミのゴッドハンド・f37583)はその恐怖に呻いていた。
あちらも半泣きであるが、瑠璃も泣いている。
「うわあん、来ないでえええ」
「しくしく、しくしく……」
思い人の姿を探し歩き回る春告の紅白は、既に影朧となって現世を彷徨う存在に成り果てていた。
見た目は整った神職姿の一人の男であるのだが、その存在は弱った影朧であり、油断は出来ない。
(ボクだって泣いてるよ! 心の中は大雨だよ!!)
どうしてこんなことになってしまったのか。
とはいえ、早さはないにしても相手の足が迫ってくるのが想像以上に怖かったので、半ば自棄になりながら瑠璃は春告の紅白に対峙することになった。
こちらも猟兵という立場であるから、オブリビオン相手に逃げ惑うだけではない。
逃げている間に少し相手の出方を様子見していたのだが、どうやら積極的には攻撃技を出してくる気配がなさそうだ。
その様子からして、想像していたよりも弱っていることがわかる。
(これなら何とかなるかも……?)
じりじりと互いに距離を置いてにらみ合うような形になって、瑠璃が先に動きを仕掛けた。
「ええええええい!」
基本的に瑠璃の攻撃スタイルは接近戦だ。
というより、その他のスタイルを知らないと言っても過言ではない。
相手の隙をつき思い切って懐に飛び込む、その後にユーベルコードを繰り出して一気に畳みかけるのが定石となっている。
「おやおや、どうして私の所に集まってくるんだい?」
春告の紅白は咄嗟に全身を【紅と白のもちもちした式神が覆って防御状態】に変える。
あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けなくなってしまう。
ほぼ無敵とはいえ、動けなくなってしまうのはかなりの痛手であったようだ。
瑠璃が足元を狙い攻撃することで、春告の紅白を横倒しに倒れさせる。
その足元を掴んで……びったんびったん!
おおよそ150t近くにもなる力でもって、振り回しや周囲の地面への叩きつけを行ったのだ!
「うわあああん、これで静かになれええええ!」
春告の紅白は折角防御態勢を取れたと思ったのに、もちもちした式神たちごとびたんびたんと地面や壁にたたきつけられて、たまらず目を回してしまう。
無敵に近い状態と言えど、その凄まじい衝撃に耐えられるものではなかった。
「ひいいい……!」
「ぜえはあ……こ、これでもうボクに近付いてこない!?」
是非もなし。
春告の紅白は技を維持する力もなくなってしまい、そのまま地面に突っ伏して気絶してしまった。
(や、やった……何とかこれで逃げられる~!)
瑠璃は周囲に目撃者が居ないことを確認すると、その場から脱兎の如く逃げだした。
そのスピードは恐ろしく早く、普段からこの速度で動けていれば……と思う程であった。
成功
🔵🔵🔴
ステラ・カガミ(サポート)
『よろしくね。』
人間のシンフォニア×サウンドソルジャー、20歳の女です。
普段の口調は「年相応の少女口調(あたし、~くん、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、偉い人には「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。
踊り子兼歌姫なので歌ったり踊ったりすることが大好きです。
明るく好奇心旺盛な性格で、自慢の歌と踊りで旅費を稼ぎながら世界を回っています。
戦闘では歌や踊りを使っての援護に回ることが多く、ユーベルコードもそれに準じた使い方をします。
描写NGはありませんので、あらゆる用途で使って頂いて大丈夫です。
リカルド・マスケラス(サポート)
『正義のヒーローの登場っすよ~』
装着者の外見 オレンジの瞳 藍色の髪
基本は宇宙バイクに乗ったお面だが、現地のNPCから身体を借りることもある
NPCに憑依(ダメージはリカルドが請け負う)して戦わせたりも可能
接近戦で戦う場合は鎖鎌や鎖分銅の【ロープワーク】による攻撃がメインだが、プロレスっぽい格闘技や忍者っぽい技もいける
遠距離戦では宇宙バイク内臓の武装による射撃攻撃やキャバリアによる【結界術】
その他状況によって魔術による【属性攻撃】や【破魔】等使用。
猟兵や戦闘力のあるNPCには【跳梁白狐】で無敵状態を付与できる。
基本的にチャラい上辺ですが、人々の笑顔のため、依頼自体には真面目に取り組みます
「えっなにこの人……泣きながら近寄ってくるんだけど……!?」
ステラ・カガミ(踊り子兼歌姫・f14046)を前に、神職の影朧がそろりそろり、しくしくとやってくる。
「しくしく……しくしく……」
春告の紅白は過去の未練から、消えられずに影朧化してしまった存在なのだが、すっきりと綺麗な見た目に反して、挙動があまりにも不審に感じられ、ステラはたじろいでしまう。
余程の何かがあったのだというのは何となく伝わってくるのだが、いかんせん泣きながら近付いてくる、体躯もそれなりにある成人男性となると、そこに影朧のオーラを纏われてしまっては恐怖の対象でしかない。
とはいえ、襲い掛かってくる様子でもなく、じりじりと歩み寄ってくるだけで、今のところ気配以外の脅威は感じられなかった。
影朧としては非常に力の弱い状態であるとステラは判断する。
時を同じくして、その様子に出くわしてしまったのは……リカルド・マスケラス(希望の仮面マスカレイド・f12160)。
「ややっ? 何やらお困りの猟兵さんがいらっしゃる様子?」
「あっ、そこのお兄さん! この状況どうするべきだと思う?」
「うーん、猟兵としてはやっぱり、見過ごせない敵、だとは思うっすね~」
「そうよね……でも特に何かしてくるでもないみたいなの」
ふむふむ、と、リカルドは改めて状況確認をする。
神職の影朧、春告の紅白は影朧としては非常に弱い気を放っているが、積極的な敵意を持っているというわけではなさそうだ。
しかし、影朧となってしまったものを救う手段はたった一つ……消滅させるしかないのだ。
「こんなに弱ってる影朧を見るのは初めてっすねえ、普通ならこんなふうに会話させてくれる隙すら貰えるわけはないのに」
「そうなのよ……あたしとしても、手酷いことはしたくないんだけど、やるしかないかしら……」
二人は顔を見合わせ、春告の紅白を改めて観察した。
綺麗な着物、上品な佇まい、しかし影朧と化してしまった何かが彼を縛り付けているのだ。
猟兵としては、彼を縛り付けるものから解放させる義務がある。
ひとまず対話が可能かどうかを試してみることにした。
「しくしく……」
「あの、お話を伺っても?」
「! 私の姿が見えているのですか……ということは、ひいッ、消されてしまう!?」
「お、落ち着くっす! とりあえず事情を伺いたいっすよ、状況次第では力になれるかもしれないっす」
春告の紅白は猟兵二人を前にして一瞬怯えるも、敵意がないことを示されて一層しゅんとしてしまった。
「私には思い人が居たのですが……その者との約束を果たせず、病に倒れこのような姿に」
「ああー……なるほどね、影朧化するにはよくある話だわ」
「とはいえ、こうなってしまうと、こちらに倒す以外に出来ることがあるっすかね?」
ひいっ、と逃げ腰になる春告の紅白。
無理もない、本来であれば出会った瞬間から狩られる側の存在になってしまったのだから。
「どうか約束を……あの日の約束の詫びをさせてほしいのです……」
ふむ、猟兵二人は春告の紅白の事情を伺うと、約束の詫びとやらを手伝い成就させてやることにした。
「痛いのは嫌です……」
春告の紅白は周囲に現れたもちもちした式神を纏い、ほぼ無敵の状態で動けずにその場にうずくまってしまった。
「この状態を攻撃するっていうのも、なんか心が痛むわね……」
とはいえ、約束は果たさなければならない。
ステラは手にしていた手袋を外すと、ユーベルコード:デュエリスト・ロウを発動させる。
【手袋】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える技だ。
簡単に守れるルールほど威力が高くなるこの技であれば、労せず祓うことが出来るのではないかと考えたのだ。
「さて、何を宣言したらいいかしらね……」
ステラはほんの少し考えたあと、口にする。
「じゃあ、未練に縛られ過ぎない」
「うおおお!?」
身に纏った式神の効果を貫通させ、春告の紅白にダメージを与える。
「んじゃ自分も、準備するっすかね」
リカルドもユーベルコード:|雪狐氷葬落地《フリージング・デッドエンド》を発動、掴んだ対象を【三角絞めと共に凍結】させ、【氷】属性の【ヘッドシザースホイップ】で投げ飛ばす。
「うわーッ!?」
どさり、と春告の紅白の体躯が凍り付いた状態で地面に落ちる。
こちらも式神の効果を貫通し、ダメージを与えた。
二人の攻撃は決して全力ではなかったが……弱っている春告の紅白には十分なダメージとなったことだろう。
「ううっ……あの日の……約束を……この未練を晴らさなければ……」
「あーあ、やっぱり完全消滅には至れないわね」
「そうっすねえ、本格的な手助けが必要になってしまったっす」
よろよろとその場から歩いてどこかへ向かおうとする春告の紅白。
彼が未練を晴らすには、もう少し猟兵達の力を必要とするようだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アズロ・ヴォルティチェ(サポート)
「青は、お好き、ですか?
……なーんてね!
わたくしはシャドウ、紺碧のヴォルティチェ。
碧き静謐を、奇跡を、あなたにも見せてあげよう。」
青色の狂気、奇怪な跡、異常色彩、紺碧の静謐。
それは影であり、精神を塗り潰す機会を伺ってい見ている。
ただ人間に対する愛情は形こそ異常だが持っている為に"穏健派"のシャドウとして存在を許されている。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
基本的にルールや倫理を守りますが、敵には何をやってもいいと考えています。
草柳・華穂(サポート)
草柳・華穂(くさやなぎ・かほ)、ウサギ等動物の能力を移植された強化改造人間。
悪の秘密結社から脳改造寸前で脱出し復讐のため戦っていたわ。
悪い奴らに容赦は要らない、特に邪神とか邪教団とか手加減をする理由がないわね
まあ、容赦しなさ過ぎてダークヒーロー扱いになったんだけどね、後悔は無いわ
戦闘では蹴り技を主体とした戦い方をすることが多いわ
色々な動物が入っているけど、メインはウサギだからね脚力はちょっとした自慢よ
「青は、お好き、ですか? ……なーんてね! わたくしはシャドウ、紺碧のヴォルティチェ。碧き静謐を、奇跡を、あなたにも見せてあげよう。」
アズロ・ヴォルティチェ(『紺碧のヴォルティチェ』・f44735)はただ描く為に、ただ塗り潰す為に、ただ彼は紺碧で塗り潰す。
相手が誰で、どんな理由があろうとも、容赦はしない。
……とはいえ、目の前に歩み出てくるのは、弱りに弱った影朧。
勿論、手加減をするつもりはなかったが、相手にも影朧になるだけの理由があったのだ、と考えて少し気分がブルーになりかけた。
草柳・華穂(クラッシュ・バニー・f18430)は、ウサギ等動物の能力を移植された強化改造人間である。
彼女にもさまざまなバックグラウンドが存在しているが、影朧となった春告の紅白とは異なるベクトルの理由である。
しくしくと泣きながら歩み寄ってくる神職の影朧に何があったかは知らないが、影朧となってしまったからには浄化させてやるしか手段も目的もない……華穂は油断せずに攻撃態勢を取った。
「どうか……どうかあの日の約束を……大切なあの人との約束を……果たさせていただきたいのです……」
泣きながらやってくる春告の紅白は、惑わしの梅を発動させる。
戦場全体に、【過去の思い出の幻覚を見せる紅白梅】で出来た迷路を作り出す技である。
迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
急に現れた迷宮を前に、アズロと華穂は戸惑った。
「青色の狂気、奇怪な跡、異常色彩、紺碧の静謐。それは影であり、精神を塗り潰す機会を伺ってい見ている」
しかし、迷路自体には罠等の攻撃的な仕掛けはないようで、アズロが分岐点の目印を描いてくれたので、二人は何とかこの迷宮を抜け出すことに成功出来た。
「それにしても、この影朧……積極的に攻撃を仕掛けてくる様子はないみたいね」
出口に至る道に辿り着いて一息、華穂は今一度様子を見る。
待ち構えていた春告の紅白は変わらずしくしくと泣き続けていた。
積極的な敵意がないとしても、相手は影朧だ、油断は出来ない。
通り抜けた先で改めて戦闘態勢に入る、アズロと華穂。
何があっても問題ないよう、華穂が前に立ち防御態勢を取ると、そのままユーベルコード:|E・D・M《エマージェンシー・ディフェンス・モード》を発動させた。
『……(緊急防衛機構を発動します)』
全身を【防御用オーラで覆った姿】に変え、あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない状態になった。
春告の紅白が攻撃態勢に入ったとしても、これで完全防御が出来るし、その間に対策を練ることも可能になるだろう。
……と思ったのだが、相手側も全身を【紅と白のもちもちした式神が覆って防御状態】に変わり、あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない状態になっていた。
迷路を抜ければ攻撃に転じてくると思っていたのだが、その目論見は無情なまでに外れてしまった……。
勿論、猟兵側は受け身だけではない。
『静謐を望むのは当然だよ。さあ還ろう、|静かな《青死の》世界へ』
アズロはユーベルコード:|静謐の青《シレンツィオ・アズーロ》を発動させる。
視界内の任意の対象全てに【紺碧の絵の具】を放ち、物質組成を改竄して【現実を拒絶し静謐を求める発狂侵食】状態にする技だ。
本来、対象が多いと時間が掛かってしまうのだが、相手は春告の紅白ただ一人。然程時間はかからず紺碧の絵具が春告の『紅白』を『紺碧』にすぐさま塗り替えて、発狂侵食を始めた。
「うわあああああああああああ!? たすけて、助けてくださいいいいいいい」
本当に影朧化した存在なのかと疑ってしまう程に、弱っていた存在はアズロの攻撃に悲鳴を上げて更に大声をあげて泣く。
(……あいつ、本当に影朧なのか?)
アズロは想定外のリアクションに驚くものの、発動した|静謐の青《シレンツィオ・アズーロ》を撤回するでもなく、様子を見た。
「攻撃、してこないわね……悪い奴に容赦は要らないと思っていたのだけれど」
「弱りすぎて、攻撃態勢を取れる状態ではないのかもしれない」
そのまま『紅白』が『紺碧』に呑まれていくのを見つめるアズロと華穂。
これはこれで、悲しい結末の一つになってしまった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 日常
『贈り物選び』
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POW : 楽しい物を選ぶ
SPD : 便利な物を選ぶ
WIZ : 癒やせる物を選ぶ
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
影朧となってしまった春色の紅白の無念を晴らすべく、「あの日の約束」の成就を助けて手土産を選ぶことになった貴方。
普段お世話になっている仲間や特別な思い人等へ、この機会に贈り物を選んでみてはいかがでしょうか?
素敵なものが選べれば、きっと春色の紅白も思いを成し遂げ消えることが出来る筈──。
アズロ・ヴォルティチェ(サポート)
「青は、お好き、ですか?
……なーんてね!
わたくしはシャドウ、紺碧のヴォルティチェ。
碧き静謐を、奇跡を、あなたにも見せてあげよう。」
青色の狂気、奇怪な跡、異常色彩、紺碧の静謐。
それは影であり、精神を塗り潰す機会を伺ってい見ている。
ただ人間に対する愛情は形こそ異常だが持っている為に"穏健派"のシャドウとして管理の元行動している。
絵に描いたような美少年に見えるがこれはいわゆる疑似餌、罠です。
静謐を好み、静かで穏やかな死を救いと認識し歪んだ人類愛でもって狂気と死を齎す存在。
ただし討伐されると救済が行えなくなる為討伐されないように猟兵として他者と協力する。
会話は可能だがその思想を変える事は出来ない。
国栖ヶ谷・鈴鹿(サポート)
◎
ハイカラさんの天才発明家&パテシエイルの多才なパーラーメイド。
お手製の二挺銃の扱いと、小回りの利くフロヲトバイの紅路夢、空鯨型航空巡航艇ヨナ、ワンオフのスーパーキャバリア阿穹羅と、守護稲荷きこやんの護法術、ハイカラさんの後光のパワーを駆使した、発明と天性の才能を武器に明るくも自信に溢れた心持ちで挑みます。
「あの日、私はあの方と、逢瀬の約束をしていたのです……とても素敵な、可憐な方です」
春色の紅白は、弱った体を最低限に維持させつつ、猟兵達に語る。
寂しい思い出話だ。
「約束を取り付けるには、難のある立場のお方でした。日々それはお忙しくしており、時間を確保されるのもとても大変そうになさっていました。ですが、私のために短いながらも、時間を要してくださいまして、やっと逢瀬の約束を取り付けられたのです」
相手方の難しい事情を語りながら、どこか遠い目をしつつそれでも涙を静かに零しながら、続ける。
「約束は、街通りにある大きな橋が傍にある柳の木の下、時刻はあちらの指定通りの午九つ……丁度職務の休憩を充ててくださったのでしょう、私はそわそわと指定よりもずっと早くから柳を見つめる位置についておりました」
冷静に考えると単なる不審者と言えなくもないが、春色の紅白にとってはとても真剣な話なのだろうと、猟兵達は話の腰を折らずに聞きに徹する。
「そしてやってきた、午九つに、あの方は現れなかった……そこから半刻を過ぎた頃でしょうか、あの方の使いと申される方が私のところへやってきて、一通の文を手渡し去って行ったのです」
それは──猟兵達は察するに余りある感情で、春色の紅白を見た。
とても寂しそうな表情で、俯きながらまた涙を零している。
「文には走り書きのような字で、簡単ながらも思いの籠った謝罪の言葉がありました。どうしても会うことが出来ないこと、今回に限らず今後会うことがなかなか叶わぬこと……末尾にも重ねて詫びの言葉が記されていて、私はその場で卒倒しそうになりました」
否、実際に倒れてしまったのだと続ける春色の紅白の顔色は、当時の記憶を言葉にしてしまったせいか大層青ざめており、今にも消えてしまいそうであった。
「それからしばらくして病に臥せった私は……結局あの方に返信の文一つ届けることも叶わぬまま、こうして約束に囚われた影朧になってしまったようなのです」
嗚呼。
ある意味よくある話ではあるが、実際にそれを体験した当人から語られるというのは、非常に心痛極まるものがある、と猟兵達は苦い顔をする。
「それは……気の毒だったとは思うが、どうにもならない事情が互いにあったんだろう?」
アズロ・ヴォルティチェ(『紺碧のヴォルティチェ』・f44735)は、人型を保たせながら問う。
「そう、だな……そのような事情の中では、やむを得ぬ流れかと」
国栖ヶ谷・鈴鹿(命短し恋せよ|乙女《ハイカラさん》・f23254)も、心なしかオーラを弱めて聞き入っていた。
「頭の中では理解しているのです……ですが、感情と体はそうではなかった。私はどうしてもあの方に、お手を煩わせてしまったことを詫びたかった。そして、どうしてそのような悲しい決断に至ったのかを心解いて差し上げたかった……」
個人の頑張りだけではどうにもならない場面ではあったとは思いつつ、アズロも鈴鹿も同情心で春色の紅白に心寄り添ってあげたいと考えている。
「あの日、お渡ししたい対のものでもあれば、お付きの方にお願い出来たでしょう……もっと気の利く自分であったならと、悔いて止まないのです」
「なるほど、思いを品に乗せてというのは理解出来る。だが、その思いが重すぎるようでは却って迷惑にならないだろうか?」
「そうだな、とはいえ贈り物を迷惑がるような間柄という気もせん。何等か『たられば』で考えたくなるのもわからなくはない」
アズロ、鈴鹿共にこの話を聞いてしまったからには、春色の紅白の思いを成就させ消滅を助けるために、街中にある雑貨店を目指しストリヰトを進み歩いていく。
カランコロン、と軽やかなドアベルの音が鳴り、小さな雰囲気ある雑貨店に辿り着いた一行。
──春色の紅白の姿は他のものには見えていない様子なので、アズロと鈴鹿が二人で訪れたように思われている。
「これは驚いた。外観からわからないくらい、広い店内にこんなにもすごい品揃えになっているとは」
こうしたものには疎そうなアズロは、鈴鹿の感嘆にそういうものなのかと感心している。
「いらっしゃいませ、どのようなお品をお探しですか?」
小柄な店員が早速、アズロと鈴鹿を見て声を掛けてくる。
春色の紅白は、二人の後ろにひっそりと佇んでいた。
「そうだな、想い人と対で持てるような、小さな飾り物が良い。出来れば柔らかめの紅白色で」
「蒼じゃないのか……」
蒼も綺麗だけれど、先程の話を聞くに、やはり思いを伝えるのであれば差出人が一目でわかるものが良いだろうと鈴鹿は気を遣ったのだ。
贈り物とはいえ、ただの飾りであるよりは便利な物を選ぶのが良いだろうと、アズロと鈴鹿は狙いを一つにして店員と様々な品を見極めていく。
「こちらなど、いかがでしょう? 飾り物にも使えますし、こうすれば……ほら、便利でしょう?」
「なるほど、こういう使い方が出来るのはいいな」
「ああ、これなら俺でも嬉しいな。普段使いにもいい」
神職姿の男には少々ハイカラなデザインではあるが、だからこそ記憶に残るのではないかとアズロも鈴鹿も納得の選択をした。
店員にそれを頼んで包んでもらっている間、控える春色の紅白とそっと対話をする。
「こんな感じで、良かったか?」
「はい……はい、ありがとうございます……お二人のおかげで、少し気が楽になったように思います」
「そいつは良かった、ぼくとしてもいい買い物が出来たと思うよ」
店員から品を受け取り、カランコロンと扉を鳴らして店を出る。
「して、結局何を買い求められたのでしょうか……?」
春色の紅白の手に、アズロと鈴鹿から手渡されたのは、一対の紅白兎の香立て。
薄紅の兎、白磁の兎。支え合うようにすると、桜の棒香を刺して立てることが出来る。
「2セット、二人で持てるように買ったぜ」
「春のように柔らかな色合いの兎で紅白……これなら、あんたのことだと一目でわかるだろ?」
「! ……そのような気遣いまで……ありがとうございます……!」
「これを贈れるよう、返信の文を書くといい。俺達が何とか届けられるよう尽力してみよう」
確実に届くかどうかは、わからない。
しかし、約束の相手が相当迷惑に思っていなければ、考えだけは伝わるはずだ、そう願いたい。
「それでは、何卒宜しくお願い致します……」
空中で影を墨のように操り器用に文を綴る、春色の紅白。
大切な人へ思いをしたためるその姿を、アズロと鈴鹿は尊いと思った。
文と香立てを預かり、柳の君を求めて……サクラミラージュを駆ける猟兵二人と、朧影が一人。
やっと辿り着いた立派な庭園構えの屋敷で、柳の君は優しく出迎えてくれた。
少し、焦燥しているようにも見える……聴けば、やはり春色の紅白の件が頭から離れずにいたのだという。
「これを、預かっています。春色の紅白さんから、貴方へ」
「あちらも随分と気にされていたようだ、どうか上手く行かなかった約束をこれで清算と出来れば良いのだが」
「ありがとうございます、嗚呼、随分とご迷惑をおかけしてしまいましたね」
聞けば、柳の君側も多忙が故に体調を崩してしまっていたのだという。やっと動けるようになった頃にはもう、春色の紅白との連絡は取れなくなっていた……先に倒れてしまったからだろう。
「素敵な贈り物まで……あの方の優しい笑みを見ているようです」
「!」
「どうか、息災であってくださいとお伝えし──あの、そちらにいらっしゃるのは……」
「私のことが見えるのですか、柳の君?」
「ああ、ああ、春色の紅白様……!」
微かに残っていた気配が、ほんのりと色づくように春色の紅白を照らす。
最後の力か、何らかの奇跡祝福か──アズロにも鈴鹿にも出来ない力が、約束の逢瀬の二人を包む。
この先、猟兵達の力は不要であろう。
こうして春色の紅白は約束への未練を解き、影朧となってしまった経緯を清算出来たのだった。
成功
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真宮・律
【調和の絆】で参加
弟子で子供のように世話している朔兎と買い物にきた。件の高貴な人達は・・・大丈夫のようだな。一度別れて出会った嬉しさは俺もわかるしな。
俺も一度死んだし。朔兎、そんな顔するな。俺もこの世界に戻ってきたからこうして朔兎と買い物できるんだ。
今回は家のリビングに飾る花瓶を買いに来た。後新しいクッションもな。俺と朔兎の訓練でうっかり花瓶割ってしまったし、クッションは純粋に数がたりない。三色菫の模様に白地の花瓶、ベージュとピンクと水色のクッション。朔兎もセンスいいからたすかるぞ。大荷物になるが、朔兎なら持てるだろ。
後はシベリアでも食べていこう。え?紅白が羨ましい?朔兎も言うようになったな。
源・朔兎
【調和の絆】で参加
彼の高貴な雰囲気の影朧は愛しい人と出会えたようだな。部外者が立ち入ったら野暮だよな。
師匠・・・律さんが一度死んだ話は聞いてるけど、俺だったら耐えられなかっなあ。響さんも奏さんもよく耐えたなあ。うん、律さんがもう死ぬようなことはないと思う。置いていかれたら俺も困るし。
ああ、律さんの訓練中にリビングの花瓶割ったし、クッションは純粋に俺と星羅の分がない。センスは律さんのを信頼してるから、選ぶのは任せるぞ。意見求めたら応えるけど。荷物は持てる!!
帰りはシベリア!!いいなあ。うん、紅白の雰囲気がいいな、と思って。俺も憧れるんだ。律さん、笑わないでよ!!
【調和の絆】
真宮・律(黄昏の雷鳴・f38364)と源・朔兎(既望の彩光・f43270)は、春色の紅白が約束の君との思いを形に込める様子を見て、ほっと胸を撫で下ろしていた。
先の猟兵二人が手助けをしている様子は、周囲の猟兵達も気にしていたところであった。
「それにしても、驚いたなあ……あんな風にドラマティックな想い合いが出来るような相手がいるっていうのもすごいね」
「影朧になってまで思いを成就させたいと願っていたのだから、それは大変だっただろう」
二人は春色の紅白の顛末を伺いながら、自分たちの買い物という目的を忘れてはいない。
(弟子で子供のように世話している朔兎、彼には悲しい思いをさせてはいけない)
律は半歩先を進みながら、これまでのことを考えていた。
妻と娘を庇って魂人となった律の話は、朔兎の知るところではあるのだが……やはり、死という概念は恐ろしいものだろうと思う。
律は決して死に囚われているわけではないが、辿る道を間違えればあのように、未練の塊となって彷徨うことになるのかもしれないのだ。
春色の紅白の辿った未練の道は決して最良ではなかっただろうけれど、あれを基準にしていいわけでもない。
オブリビオンの事情がどうあれ、自分たちはそれを狩る猟兵なのだから。
朔兎は少し先を歩く律を見上げる。
端正な顔立ちで穏やかな人……とても『死んでいる』とは思えぬ存在感が確かにそこに在る。
(俺だったら耐えられなかっなあ。響さんも奏さんもよく耐えたなあ。うん、律さんがもう死ぬようなことはないと思う。置いていかれたら俺も困るし)
じっ、と見つめる視線に気付いたのか、律は振り返って僅かに笑う。
「朔兎、そんな顔するな。俺もこの世界に戻ってきたからこうして朔兎と買い物できるんだ」
「うん……そうだね!」
今日は二人で調度品の買い足しに来た。
家のリビングに飾る花瓶、新しいクッションも。
訓練中にうっかり朔兎が割ってしまった花瓶は律が綺麗に掃除してくれたし、朔兎にも怪我はなかった。
クッションは数が足りていなかったので、この機会に買い足しが出来ればと思っていたところだ。
「俺と星羅の分、揃えてくれるんだよね」
「ああ、三色菫の模様に白地の花瓶、ベージュとピンクと水色のクッション。丁度良いものが見つかりそうでよかった」
サクラミラージュで雰囲気のあるインテリアの店を探したのは律。
他の店の広告も併せて見て、ここがいい、と指さし決めたのは朔兎。
電話で事前に連絡をしたところ、在庫の問題もなさそうで取り置きを願っておいたのだ。
「センスは律さんのを信頼してるから、選ぶのは任せる!」
「朔兎もセンスいいからたすかるぞ。大荷物になるが、朔兎なら持てるだろ」
実際の品は店頭で確認して、きちんとしたものを選んで決めるつもりだ。
花瓶は大事に律が持つとして、クッションなら軽いが、嵩張るものを朔兎に任せるのは少しだけ心配ではある、いざというときは【歌声】の力を借りれば問題はないだろうけれど。
チリン、とドアベルが軽快な音を立てる。
スタイリッシュなスゥツの店員が案内を受けてくれて、コーナーを見せてくれた。
様々な装飾のある花瓶の並びには、律も朔兎も同時にほぅ、と思わず息を呑んだ。
芸術のことは詳しくないが、素敵な調度品が綺麗に揃っている場面を見るだけでもモノの良さは伝わってくる。
「部屋の雰囲気からして、あまり派手過ぎるものは浮いてしまうかな、朔兎はどれがいいと思う?」
「うーんと……割っちゃったやつに近いのがいいんじゃないかな、これみたいなやつ」
なるほど、と律は微笑む……聡い子だ。
朔兎の目利きに同調して、更に同じ色と似た形のものの中から、一つ手に取って決める。
やはりこうした品は実際に手に取ってみるのが大事だな、と律は思った。
手の中に、確実な重みが伝わる──手触りの感触も、その冷たさも実在することの証だ。
三色菫の模様に白地の花瓶を丹念に選び、店員に気に入りの一点を包んでもらう間に、次の目的であるクッションを選ぶ。
「すべすべのと、ふかふかのと、どっちがいい?」
「使うのは朔兎なのだから、そちらで決めて構わないよ。色も気に入りのものがあればそれで」
クッションは中身が大事だ、外装はカバーを掛けてしまえばなんとでもなる。
ここは実際に使う人間が選ぶべきだろうと思って、全面的に朔兎に任せることにした。
部屋にあるものと似たサイズのもので、カバー色はそれぞれ朔兎と星羅のイメージである、ベージュとピンクと水の模様。
こちらも店員に声がけをして、大きな袋に入れてもらった。
持ち手のあるこの袋であれば、朔兎でも持てるだろう。
会計は律がスマートに行って、良い買い物が出来たと朔兎と二人、店を後にする。
再びチリン、とドアベルが鳴り、出入り口を閉じるともう外は別世界だ。
(この辺りには確か、レトロな喫茶店もいくつかあったな。少し休憩していくことにしよう)
「朔兎、少しお茶してから帰ろうか」
「いいの!? やったー! 俺、シベリア食べたい!」
「シベリアか、なかなかに渋いセレクトだね。何か思うところがあった?」
「うん、紅白の雰囲気がいいな、と思って。俺も憧れるんだ。……律さん、笑わないでよ!!」
「紅白が羨ましい? か。朔兎も言うようになったな。」
春色の紅白が微かに残していった、柔らかくも物悲しい空気。
影朧に影響されたのか、心癒せる調度品選びを無事に終えると、喫茶店へゆるりと脚を向ける。
濃い紅色の餡と、柔らかな白のスポンジの層が美しい甘味を味わいながら、平和なひとときを過ごす猟兵二人にも、きっと優しい風が訪れることだろう。
大成功
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