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今はまだ帰れぬ|猟犬《ケルベロス》

#クロムキャバリア #アダム・カドモン #影の城の国 #プレイング受付中

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●『影の城の国』その後
 猟兵と異世界からの協力者の尽力により、|超古代種族《エンシェント・レヰス》『イザナミ』による侵攻を辛くも食い止めた『影の城の国』。復興へ向け歩みだしたこの国に、再び脅威が迫ろうとしていた。

 この国最大の病院である『総合病院』の一室で、彼は治療を受けていた。アダム・カドモン。別世界で特務機関『DIVIDE』の長官を務める彼はキャンプ・フォーミュラ『キャンピーくん』に乞われ、自身のキャバリアを駆って『影の城の国』の救援に駆けつけた。そして激闘の末、彼は半ば相打ちになる形で『イザナミ』を倒したのだった。
 ユーベルコードの後遺症で戦争前後の記憶が曖昧なカドモンの元に、小柄な年配の女性が訪れた。傍らには側近の男性が付いている。
「初めまして、アダム。私はアガサ・ハートフィールド。『影の城の国』の首相です。今回は国民を代表してお礼と、今後の我が国の防衛について、お話を聞きに来ました。」

●動乱の海
「みんな、『イザナミ』を倒してくれて、『影の城の国』を助けてくれてありがとう。」
 グリモアベースに集まった猟兵たちに頭を下げるリット・バルトシーク(キャバリア乗りの吸血鬼・f41435)。
「今オレの地元は復興の真っ最中なんだけど、カドモン長官のアドバイスで『|決戦配備《ポジション》』を都市計画に組み込んでる最中なんだわ。そこを突いて敵襲が来る。」
 グリモアが海岸線を映し出した。
「元々『影の城の国』には島全体に強力な認識阻害魔法が張り巡らせてあって、知覚もレーダーも無効化していたんだけど、『イザナミ』がその魔法を破った。で、魔法を掛け直すのに1年くらいかかるんだけど、その隙に『サーモン・マシン』とかいうオブリビオンマシンが攻めてくるんだ。
 こいつら一応空中戦もできるけど、本来は水中戦メインのオブリビオンマシンなんだよ。ただ、ウチの守備隊も水中戦は割と得意な部類なんで、協力すればヨユーで勝てる。問題はその後。海の上を走るクソデカバイクが襲い掛かってくる。」
 頭の上にクエスチョンマークを浮かべた猟兵たちに、リットも不本意だと言いたげな顔で話を続ける。
「オレも何言ってるか分からないけど、マジでそんな感じのオブリビオンマシンが出てくるんだよ!信じてくれよ!」

●時代は動き出す
「で、オブリビオンマシンを倒したらカドモン長官と一緒に守備隊の新人兵を鍛えて欲しいんだ。ほら、この間の戦争がきっかけで守備隊の志願者が増えんたんだよ。」
 リットがグリモアを起動する。
「そうそう、カドモン長官も助っ人として参加してくれるんだけど、本調子じゃないからユーベルコードを使った疑似|決戦配備《ポジション》はクラッシャーとジャマーしか使えない。そこだけ覚えて欲しいかな。」
 猟兵たちを送り出したリットがふと呟く。
「『影の城の国』は外の世界に背を向けることで平和を保ってきた。でもそれも終わりなんだろうな。」


武炎鉄
 こんにちわ、武炎鉄です。18作目は帰還シナリオが出始めたので、まずは責任を取ってカドモン長官から。
 なお本作は『帝都櫻大戰⑫〜島に|猟犬《ケルベロス》がやって来た』の続編ですが、前作を読まなくても何とかなるようにしています。

●登場人物
 アガサ・ハートフィールド:ダンピールの女性。外見は60代だが実年齢はもっと上。『影の城の国』の首相。
 キャスパー・リューベン:従属種ヴァンパイアの男性。外見は40代だが実年齢はもっと上。守備隊の『南部方面部隊第1小隊』で隊長を務める。カドモンに心酔している。
●アダム・カドモンは決戦配備ポジションに対応した2種類のユーベルコードを使います。使う際はプレイングで指定してください。
●クラッシャー:ガトリングストーム/ジャマー:洗脳電波
●第1章は海の向こうから押し寄せる『サーモン・マシン』の群れと戦います。詳しくは断章にて。
●第2章は海の向こうから攻めてくる『万輪戦艦『ケルベロスホイール』』と戦います。詳しくは断章にて。
●第3章は守備隊の新人パイロットを訓練します。
●プレイングボーナス:アダム・カドモン及び守備隊と連携して戦う(第1章・第2章)
●連絡事項はタグでお知らせします。
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第1章 集団戦 『サーモン・マシン』

POW   :    イクラ・ボム
レベル分の1秒で【口からイクラ型の爆弾 】を発射できる。
SPD   :    ヒレ・ウィップ
【振り回した尾ビレ 】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
WIZ   :    ボディ・ラッシュ
【水流を纏った高速の 】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【仲間のマシン】の協力があれば威力が倍増する。

イラスト:moti

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●|猟犬《ケルベロス》、再び

 |地獄の番犬《ケルベロス》を思わせるフォルムのキャバリアが格納庫に佇んでいる。これがカドモンのキャバリアだ。『イザナミ』との戦いで大破したものの、守備隊の整備部隊が部品を回収して修復を続けていたのだった。
「修復は完了しましたが、完全にという訳にはいきませんでした。」
 整備部隊の責任者が頭を下げる。
「いや、これだけ直っていれば問題ない。」
 操縦席のカドモンが調整をしながら返答をした。彼は首相官邸での会議に参加した後、その足でここを訪れたのだった。
 安堵したのもつかの間、敵襲を告げるアラートが格納庫に鳴り響く。
「アダム・カドモン、出撃する!皆も続け!」
ハル・エーヴィヒカイト
アドリブ連携○

▼ポジション
クラッシャー

▼行動
オブリビオンマシンということはあれもキャバリアなのか
どこまでがオーバーフレームでどこからがアンダーフレームなのだろう?
いや、いい。今は捌いていくだけだ
事態を解決して長官にはちゃんと帰ってもらわなくてはならない

巨神キャリブルヌスに[騎乗]
UCを発動し長官の支援攻撃の合間を縫うように
殲禍炎剣に捕捉されないよう地上や低空を超高速で駆け、サーモンを斬り裂いていく
敵の尾ビレ攻撃は[気配感知]と[心眼]で捉え[見切り]、機体や剣では直接受けずに[結界術]で[受け流し]て回避する



●キャバリアにも色々ある

 川を遡上するかの如く海岸線に押し寄せる『サーモン・マシン』の群れを見たハル・エーヴィヒカイト(閃花の剣聖・f40781)。このタイプのキャバリアとの戦闘は初めてだったらしい。
「オブリビオンマシンということはあれもキャバリアなのか。どこまでがオーバーフレームでどこからがアンダーフレームなのだろう?」

 キャバリアの基本構造は上半身の『オーバーフレーム』と下半身の『アンダーフレーム』から成り立っているが、これに当てはまらないタイプのキャバリアというものが少なからず存在する。その場合、汎用性が著しく低下する代わりに特定の状況下での対応力が非常に高い。この『サーモン・マシン』の場合で言えば、水中戦に特化した性能を有している。

「いや、いい。今は捌いていくだけだ。」
 とりあえず『巨神キャリブルヌス』に搭乗し、剣を構えるハル。その上をガトリングガンで『サーモン・マシン』の群れを制圧しながらカドモンのキャバリアが飛んでいく。
 事態を早期解決して、カドモンには早いところケルベロスディバイドに帰ってもらわなくてはいけない。その為にハルは再び『影の城の国』を訪れたのだった。

 空から降るガトリグガンの弾幕を縫うように、キャリブリヌスが海面ギリギリを飛翔する。
「羽ばたき、舞い踊れ剣。そして散れ、|天翼崩陽刃《てんよくほうようじん》ッ!」
 キャリブルヌスがユーベルコードの光に包まれ、6枚の剣翼を具現化させる。超音速で駆け抜けるすれ違いざまに放たれた斬撃は『サーモン・マシン』を膾のように切り刻み、嵐のような刃羽の弾幕は海中に潜むオブリビオンマシンを貫いていった。
 1体の『サーモン・マシン』が舞い踊るように尾びれを振り回す。しかし気配を察知したハルは冷静に尾びれの軌道を見切ると、結界を発生させて受け止めた。そして他の『サーモン・マシン』に向けて投げ飛ばした。

 交戦中、敵機に違和感を覚えたカドモンがあることに気づく。
「これは……無人機か!」
 パイロットがいないのであれば遠慮せずに戦ってもいい。猟兵と守備隊は一層攻勢を強めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シル・ウィンディア
ポジション:クラッシャー

アダム・カドモン長官、がんばるなぁ…。
修復が完全じゃないなら、少し下がって!前はわたしが立つからっ!
後ろから、指揮と援護射撃をお願いっ!

そう言って、スラスター全開で前線に突入だね。
突入しつつ、右のロングビームライフル、4門のカルテッドキャノン、左前腕部のビームランチャーの一斉発射で敵機を一気に撃つ抜く。

近接間合いに入ったら、左手にビームセイバーを抜いて、バルカンで牽制しつつ、両断していくね。
…なんかお料理している気分かも?

セイバー攻撃後は、後退しつつ詠唱開始。
扇状に発射するようにしつつ、エレメンタル・ファランクスを撃つよ。
まとめてもってけーーっ!!



●空の蒼、海の碧

 空から舞い降りるように、流線型のキャバリア『レゼール・ブルー・リーゼ』が交戦現場へ到着した。乗り手であるシル・ウィンディア(青き流星の魔女・f03964)は守備隊の旧式量産型キャバリアに混じり、前線で奮戦する未知のキャバリアを見た。
「アダム・カドモン長官、がんばるなぁ……。」
 確実に『サーモン・マシン』を仕留めていくカドモンだが、病み上がりである本人のコンディションも、修復されたばかりの乗機の調子も万全ではないことを、歴戦のキャバリア乗りであるシルは見抜いていた。

 カドモン宛てに通信が飛ぶ。
「カモドン長官、こちら猟兵のシル・ウィンディアです。私が前線に出るので、長官は援護射撃と指揮をお願いできますか?」
「了解した。」
 その言葉と同時にカドモンが少し後退し、ガトリングガンを構えた。
「全機、一時後退!猟兵に道を開けるんだ!」
 カドモンの指示に、それまで交戦中だった守備隊が隊列を組むかの如く動いた。

 入れ替わるように、スタスターを全開にした『レゼール・ブルー・リーゼ』が右手のBSロングビームライフル『エトワール・フィラント』、左手のBS-Aビームランチャー『ヴォレ・ブラースク』、そしてBS-S高出力ビームキャノン『カルテット・グレル・テンペスタ』から一斉射撃を放ちつつ突っ込んでくる。
 守備隊は直前の指示のおかげで一斉射撃を回避することができたが、『サーモン・マシン』はその多くが一斉射撃の直撃を受け、撃破された。

 『サーモン・マシン』の群れの中心部へ突入した『レゼール・ブルー・リーゼ』は右手にBXビームセイバー『エトワール・ブリヨント』を構え、次から次へと『サーモン・マシン』を一刀両断、切り裂いていく。
。時折、水流を纏った『サーモン・マシン』が群れ成して突っ込んでくることもあるが、BS-B頭部ビームバルカン『エリソン・バール改』で牽制してから水流ごと斬り捨てるのだった。
「…なんかお料理している気分かも?」
 今回のオブリビオンマシンの見た目が見た目なだけに、だんだん魚を捌いている気分にもなる。

 レーダーに複数の敵影が確認された。沖合からこちらに向かってくる増援を確認したシルに、カドモンから通信が入る。
「一度島の守りを固める。君も戻ってきてくれ。」
「了解しました。」
 後退の姿勢に入りつつ、ユーベルコードの詠唱を始める。
「闇夜を照らす炎よ、命育む水よ、悠久を舞う風よ、母なる大地よ…。我が手に集いて、全てを撃ち抜きし光となれっ!!」
 『レゼール・ブルー・リーゼ』全砲門から、扇の如く広がる魔力射撃が放たれる。そして海面を打ち付けるガトリングガンの射撃の雨もまた、海面に降り注ぐ。
 シルのユーベルコード『エレメンタル・ファランクス』は増援ごと『サーモン・マシン』の群れを焼き尽くした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガラノー・ヘミングウェイ
クラッシャー:ガトリングストーム
鮭か……梶木のウォームアップにはピッタリだな。
奴らが上陸する前に仕留める。使う武器は銛とやや力不足だが……装甲の隙間を狙って、UCを打ちこみゃ話は違うだろ?

そういう訳で俺は生身で行こう。きゃばりあ……はダメだ。動きの勝手が分からんし、かさばっていけねえ。
長官にゃ、奴らを逃がす事無く網に囲うようにして貰おう。
サメの機動力と爆弾の速度……どっちが早いか賭けようじゃあねえかよ。
連中の鱗が勝つか……俺の銛打ちとしての腕が勝つか……梶木共以外に負けたくはねえが……もしも負けたらその時はその時だ。潔く沈むとしよう。
掛け金は俺の命。対するは奴らの命。随分とフェアな勝負だ。



●鮭よさらば

 戦況を見るように、沖合に現れた黒い影。それは三角形の背びれを持ち、水の抵抗を極限まで減らすザラザラとした肌に覆われ、鋭い牙で獲物を屠る海の悪魔。そう、サメだ。
 獣人戦線において『サメ』が新たな猟兵として覚醒したという報と時を同じくして、サメ獣人であるガラノー・ヘミングウェイ(サメの戦闘猟兵・f44711)はクロムキャバリアに降り立った。彼女にとって未知の世界であるクロムキャバリアではあるが、海を吹き渡る潮風は似たようなものだった。

「鮭か……梶木のウォームアップにはピッタリだな。」
 生身で海中を移動していることが幸いしてか、ガラノーの存在はまだ『サーモン・マシン』に気づかれていない。
 獣人戦線にもキャバリアは存在し、その中には水中戦に対応したものも存在するが、ガラノーはあえて生身で戦うことを選んだ。大型で移動に不便なことと、生身で動くのと操縦では勝手が違うことが主な理由だ。
 手にした愛用の銛は、キャバリア相手ではいささか力不足のようにも思われるが、装甲の隙間を狙えば十分勝機はある。獣人戦線においては潜水艦とも互角に渡り合ったこともある彼女からすれば、『サーモン・マシン』もUボートも変わらないのである。

 ガラノーが一度海面に浮上する。
「おーい!長官ー!聞こえるかー!」
 ガラノーの声を聴いたカドモンがキャバリアで接近する。
「長官、奴らを逃がす事無く網に囲ってくれないか?」
「網……なるほど、やってみよう。」
 カドモンが再浮上するのを確認し、ガラノーもまた再び海に潜った。

 上空からガトリングガンの雨が降る。弾丸を回避しようとする『サーモン・マシン』の群れだったが、それは罠だった。一方向に追い詰められ、密集する『サーモン・マシン』。その中にガラノーが突入する。
「サメの機動力と爆弾の速度……どっちが早いか賭けようじゃあねえかよ。」
 ガラノーの姿を確認したいくつかの『サーモン・マシン』が口からイクラ型の爆弾を発射する。ガラノーは器用に回避しながら、1体の『サーモン・マシン』に目を付けた。
「梶木共以外に負けたくはねえが……。」
 真っすぐに銛を構え、トップスピードで『サーモン・マシン』に突撃するガラノー。彼女の体がユーベルコードの光に包まれる。『サーモン・マシン』が身をひるがえすより早く、彼女の銛が腹部にあった僅かな装甲の隙間を貫いた。急ぎその場を離脱するガラノー。
 攻撃を受けた『サーモン・マシン』が彼女を追うより早く、腹部に蓄えられたイクラ型の爆弾が爆発する。それこそ1個や2個の話ではない。数百個の爆弾が連鎖的に爆発するのだ。さらに周辺には網に追い込まれたように他の『サーモン・マシン』が群れていた。それらも巻き添えを喰らい、さらに誘爆が繰り返される。

 カドモンは海面に大きな水柱が立つのを見た。そして新たな仲間が仕事を成し遂げたことを確かめたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エリー・マイヤー
できれば早いとこ自分の世界に帰って欲しいんですが…
他所の世界にお節介してるのは、我々猟兵も同じですか。
強く言えませんね。

まぁ、今はお仕事に集中しましょう。
サイキックエナジーを放出し、【念動フィールド】を形成。
敵の放つボムを、念動力で優しくキャッチします。
衝撃を与えなければ、起爆しないでしょう。
たぶん。
で、そのまま念動力で敵にボムを叩きつけて反撃です。
…信管の位置わかりづらいですねこの爆弾。
180度反転すれば、いい感じに起爆するでしょうか。
あ、ポジションはジャマーでお願いします。
洗脳電波で、敵の防御・回避の妨害をよろしくです。

しかしふざけた見た目ですね。
いえ、水中戦なら有用なのでしょうけど。



●猟兵も人のことは言えない

「できれば早いとこ自分の世界に帰って欲しいんですが…他所の世界にお節介してるのは、我々猟兵も同じですか。強く言えませんね。」
 愛機『アレクサンドラ』の操縦席でぼやくのはエリー・マイヤー(被造物・f29376)。彼女もまた、出身はクロムキャバリアではない。彼女は破壊と荒廃の世界『アポカリプスヘル』にて作られたフラスコチャイルドだ。

「長官、こちら猟兵のエリー・マイヤー。ジャマーで敵の防御と回避を妨害できますか?」
「こちらアダム・カドモン、了解した。今より30秒後、戦場全体に洗脳電波を発射する。守備隊は各機電波遮蔽シールドを展開せよ!」
 30秒。それが長いか短いかは人によるが、エリーには十分な時間に思われた。
「今から私の独壇場です。」
 『アレクサンドラ』の機体が青いユーベルコードの光に包まれる。それと同時に、戦場全体に|念動フィールド《サイ・フィールド》が形成される。この場所にいる限り、エリーの前に敵はない。
 |念動フィールド《サイ・フィールド》の形成完了と同時にカドモンが洗脳電波を発射する。電波を受信した『サーモン・マシン』の群れは狂ったように水面へ飛び跳ねた。

 獲物を仕留める漁師のように『サーモン・マシン』の群れを攻撃する守備隊。その仇を取ろうというのか、1体の『サーモン・マシン』がエリーに向かって大量のイクラ型爆弾を放つ。だが、それもエリーの念動力の前ではただのボールに等しい。エリーは念動力でふわりとイクラ型爆弾をキャッチすると、クルクルと回し始めた。
「…信管の位置わかりづらいですねこの爆弾。」
 彼女は信管の位置を探していた。念動力に特化している分、透視は不得手なのだ。
 一通り回したところで、今度はイクラ型爆弾を『サーモン・マシン』に投げ返す。叩きつけられた爆弾はその衝撃で爆発を起こし、『サーモン・マシン』を破壊した。

「しかしふざけた見た目ですね。いえ、水中戦なら有用なのでしょうけど。」
 この戦いが終わったら鮭を食べに行こう。そう思ったエリーであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『万輪戦艦『ケルベロスホイール』』

POW   :    二連装バスターキャノン
【グラビティエネルギーチャージ】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【二連装バスターキャノンから戦略級破壊光線】で攻撃する。
SPD   :    突撃
【巨大車輪を全力回転させる事】によりレベル×100km/hで飛翔し、【全長(500m以上)】×【スピード】に比例した激突ダメージを与える。
WIZ   :    護衛キャバリア部隊出撃
召喚したレベル×1体の【量産型オブビリオンマシン】に【飛翔型車輪と射撃兵装】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。

イラスト:良之助

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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアレフ・フールです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●蹂躙する車輪

 猟兵たちと守備隊の活躍により、『サーモン・マシン』もかなり数を減らしてきた。全滅まであと一息といったところで、守備隊本部から通信が飛び込んできた。
「こちら本部、レーダーに大型の機体を補足!周囲には護衛のキャバリアも多くいるようです!」

 その頃、沖合では異形の戦艦が海の上を爆走していた。スクリューの代わりに大きな2輪のタイヤで海上を陸地の如く駆ける巨大なバイクを彷彿とさせる姿。それがいかなる原理で動いているのかは誰も知らない。
 周囲には護衛の『サーモン・マシン』が並走するように泳いでいる。それも1機や2機ではない。数十機に及ぶ群れだ。
 この戦艦の名は万輪戦艦『ケルベロスホイール』。それが進む先に異世界の|猟犬《ケルベロス》が待っているなど、いかなる偶然なのだろう。
エリー・マイヤー
サーモンのボスがドッグとはこれいかに。
なんとも、奇怪な組み合わせです。
いえ、どうせ壊すので何でもいいのですけれども。

引き続き、ポジションはジャマーで。
長官さんには洗脳電波で敵の行動の妨害をお願いします。
その隙をついて、【念動フュージレイド】で敵を攻撃です。
サーモンなんてハチの巣にしてやりますよ。
サーモンなのにハチとはこれいかに。
失礼、どうでもいいですね。
そんな感じで護衛の数を減らしつつ、敵艦に向けて低空飛行で接近。
フォースセイバーで叩き切ります。
敵の砲撃は、サイキックウィングによる高速飛行で回避です。
まぁ、そもそもアダムさんのジャミングでまとも当てられないかもしれませんけど。



●パンにサーモンを挟んではちみつソースをかけてみれば

「サーモンのボスがドッグとはこれいかに。なんとも、奇怪な組み合わせです。」
 『ケルベロスホイール』の姿を確認したエリーがぼやく。確かに鮭と犬に脈絡はない。
「いえ、どうせ壊すので何でもいいのですけれども。」
 気を取り直し、『アレクサンドラ』の操縦桿を握り直した。とりあえずオブリビオンマシンを破壊すればいい。話はいたってシンプルだ。

 守備隊本部から通信が入る。
「こちらで分析したところ、どうも『サーモン・マシン』はあの大型オブリビオンマシンから発信された電波を受けて動いているようです。」
「ということは、あの大型オブリビオンマシンを破壊すれば周囲のオブリビオンマシンも停止するのか?」
「その可能性はあります。」
「ならば皆、大型オブリビオンマシンを狙うぞ!」
 カドモンの号令に、守備隊が続く。

「長官、もうしばらく洗脳電波を継続できませんか?」
 エリーからカドモンに通信が入った。
「ちょうどこちらからも妨害できないか試そうとしていたところだ。継続しよう。」
「ありがとうございます、では。」
 『アレクサンドラ』が高く舞い上がる。
「ハチの巣にしてあげます。」
 エリーの言葉と同時に出現した弾丸が護衛の『サーモン・マシン』の群れを貫く。洗脳電波による妨害で、やはり防御や回避行動はとれないようだ。
「サーモンなのにハチとはこれいかに。」
 自分で言っておいて疑問に思うのもどうかと一瞬考えたが、すぐに邪念を振り払う。まずは護衛の『サーモン・マシン』を減らし、本体の大型オブリビオンマシンを叩くのだ。

 海面ギリギリのところで飛行し、『ケルベロスホイール』に気づかれぬよう接近する『アレクサンドラ』。洗脳電波の影響なのか、『ケルベロスホイール』は敵機の接近に気づいていないようだ。それよりも遠くにいるカドモンと守備隊を脅威と判定したのか、そちらに向けて二連装バスターキャノンが放たれた。
「守備隊は総員回避!本部、例の物は出来ているか!?」
「はい!」
「ではいくぞ!『ディフェンダー』発動!」
 カドモンの号令で『影の城の国』全域に電磁バリアが張られた。それは二連装バスターキャノンから放たれた戦略級破壊光線を見事に防ぎ切った。
「隙あり、ですね。」
 攻撃直後の隙を突き、BXフォースセイバーで二連装バスターキャノンの片方を斬り落としたエリー。だがこれはまだ序章に過ぎなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ハル・エーヴィヒカイト
アドリブ連携○

▼ポジション
クラッシャー

▼心情
あれもまたケルベロス……本当にそうか?
周囲をサーモンが泳いでいるのは異様な光景だ
同じケルベロスとは認めたくないものだな
なので速やかに沈んでもらおう

▼行動
長官は後方から援護を
私はキャリブルヌスに[騎乗]して海面ギリギリでの[空中戦]を行う

敵がUCを繰り出す予兆を[心眼]で[見切り]
友軍には暗闇と閃光に注意してもらうように通達
「星剣を使う」
[集団戦術]で混乱がないように連携してこちらの後方、私の視界外に後退してもらってUCを発動
敵の光線、周囲の光、エネルギーをすべて取り込み、視界に収まった敵艦とサーモンの群れを纏めて薙ぎ払う



●『ケルベロス』の定義

「あれもまたケルベロス……本当にそうか?」
 『ケルベロスホイール』の威容に思わず疑問を呈するハル。二連装バスターキャノンを備えた超巨大バイクが『サーモン・マシン』を従えて海の上を激走する姿は確かに疑問を呈したくなる。『ケルベロスホイール』のどこにケルベロス要素があるのだろうか。とは言えこのまま放置しておくと『影の城の国』に被害が及ぶのも事実。
「なので速やかに沈んでもらおう。」
 こちらの|猟犬《ケルベロス》がやることはシンプルだ。

「長官、こちら猟兵のハル・エーヴィヒカイト。援護射撃をお願いしたい。」
「了解した。守備隊はライフルを構えろ!猟兵を援護する!」
 『キャリブルヌス』が海面スレスレを飛ぶ。途中護衛の『サーモン・マシン』が襲い掛かるも、カドモンと守備隊による援護射撃により片っ端から撃ち落された。
 不意に嫌な予感がして、カドモンは片方が切り落とされた二連装バスターキャノンを見た。砲身の奥にかすかに光るものが映った。
(これは、発射準備か!?)
「破壊光線発射の予兆あり!全軍、警戒せよ!」
 カドモンの通信を聞いたハルもまた、敵の破壊光線への対抗策を練っていた。
(敵の主な攻撃がが光線なら、こちらもに打つ手はある。)
「長官、こちらも『星剣“グランシャリオ”』を使う。守備隊には一度後退して暗闇と閃光に注意するよう呼びかけてもらえないか?。」
「了解した。全軍『キャリブルヌス』から下がって暗視スコープ及び対ショック装備を展開!」
 カドモンの呼びかけに、混乱することなく後退する守備隊。そして前へ出るハル。

 『キャリブルヌス』の手に白き鋼で作られた剣が現れた。星の輝きを放つそれこそが『星剣“グランシャリオ”』、光を束ねて魔を砕く星の聖剣である。
「星剣解放――薙ぎ払え、|七星極光《しちせいきょっこう》!」
 『キャリブルヌス』の周囲が闇に包まれる。いや、『星剣“グランシャリオ”』が全ての光を吸収しているのだ。そうとは知らぬ『ケルベロスホイール』が戦略級破壊光線を放つ。しかし、光線もまた光ならばグランシャリオが吸収する。
「はあっ!」
 取り込んだ光を全て星光の斬撃に変換し、『ケルベロスホイール』へ叩きつけるハル。その斬撃は周囲の『サーモン・マシン』もろとも『ケルベロスホイール』の後方タイヤに穴を開けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

シル・ウィンディア
番犬にケルベロスホイールを当てるって、なんというか…。
まぁ、何はともあれ、降りかかる脅威は払いのけるのみっ!

推力移動で加速してからの空中機動で空中戦を行うよ。
高度には注意してっと…。
敵の護衛キャバリアには、全射撃武装からの一斉発射で範囲攻撃を仕掛けるね。

…とはいえ、このままじゃ本体にダメージを与えられないから、射点を確保したいところ。
アダム・カドモン長官にはクラッシャーを要請。
大きいものを撃つ射点確保まで戦線の抑えをお願いしますっ!

そして使うは、ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラスト。
たっぷり詠唱して全力魔法で敵をまとめて薙ぎ払うよっ!
全力全開、遠慮せずに持ってけー!!



●鮭と車輪と番犬と
「番犬にケルベロスホイールを当てるって、なんというか…。」
 シルもまた『ケルベロスホイール』の威容に面食らっていた。海面を疾走する巨大バイクに無数の鮭が並走しているのも大概だが、その鮭に飛翔する車輪がくっついているのもまた信じがたい光景だ。
「まぁ、何はともあれ、降りかかる脅威は払いのけるのみっ!」
 気持ちを切り替え、目の前の敵に向かうシル。

 宙を舞う『サーモン・マシン』が守備隊に向けてイクラ型爆弾を射出する。ある者は防御し、ある者は回避し、ダメージを抑えつつ反撃を試みる。しかしながら、空中戦に対応してない守備隊のキャバリアでは限界がある。
 空を飛ぶ『サーモン・マシン』に対抗すべくシルは空中戦を挑む。『サーモン・マシン』より高く、しかし『|殲禍炎剣《ホーリーグレイル」》』の餌食にならないように、高度を調整しながらの戦いである。
 全武装の砲門を海面に向け、一斉射撃を試みる。レーザーの雨あられが降り注ぎ『サーモン・マシン』を貫く。これにより護衛のオブリビオンマシンは大分数を減らした。
(…とはいえ、このままじゃ本体にダメージを与えられないから、射点を確保したいところね。)
「長官、こちら猟兵のシル。射点確保まで戦線の抑えをお願いしますっ!」
「了解した。守備隊は私と共に猟兵の援護に当たれ!」
 『サーモン・マシン』の群れにガトリングガンの雨が降る。その隙を見てシルは確実に『ケルベロスホイール』を捉える場所へ飛ぶ。
「闇夜を照らす炎よ、命育む水よ、悠久を舞う風よ、母なる大地よ、暁と宵を告げる光と闇よ…。」
 その合間にもユーベルコード行使の為に必要な詠唱を行う。彼女が使おうとしているユーベルコード『ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラスト』は詠唱に費やす時間を増やせば増やすほど威力が増す特性を持つ。それ故に最大出力で撃ち出そうとすれば、それ相応の時間が必要なのだ。

 『レゼール・ブルー・リーゼ』の前に青い六芒星が浮かび上がる。準備は整った。
「六芒星に集いて全てを撃ち抜きし力となれっ!全力全開、遠慮せずに持ってけー!!」
 6つの光の奔流が一つとなり、雷の如く『ケルベロスホイール』を貫いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

皇・絶華
機神搭乗
おお、さっちゃん
バイク型のケルベロスブレイドが出てきたぞ!
「主様の居た世界の万能戦艦でしたっけ?というかでっか!しかもバイクとかこれ作った奴何考えてるんだ!?」
バイクが好きでバイクの楽園を作りたかったとかかもな?(のほほん

とはいえケルベロスブレイドに挑むとは中々新鮮だな
「違うんじゃないですか主様…?」
【戦闘知識】
周囲の敵機の陣形と能力
万輪戦艦の機体構造を把握

【空中機動・念動力・第六感・弾幕】
UC発動
超高速で飛び回りながら
「ってあれまで飛んだぁ!?何なんだこの戦艦!?」
おお、速さも凄い様だぞさっちゃん
念動光弾の弾幕を転移を繰り返して打ち込み
【二回攻撃・切断】
次元切断で空間ごと切り裂く!



●そんなケルベロスがいてたまるか

 戦闘続く海域に新たに1機の黒いキャバリアが飛来した。皇・絶華(影月・f40792)の駆る『連環神機『サートゥルヌス』』である。
「おお、さっちゃん。バイク型のケルベロスブレイドが出てきたぞ!」
 はしゃぐ絶華に『さっちゃん』もといサートゥルヌスが問う。
「主様の居た世界の万能戦艦でしたっけ?というかでっか!しかもバイクとかこれ作った奴何考えてるんだ!?」
 『ケルベロスブレイド』とは異世界のケルベロスたちの故郷の名であり、同時に彼らが保有していた超弩級万能戦艦の名でもある。『季節の魔力』とデウスエクスたちの神殿を利用して作られたそれは文字通りの最終兵器であり母艦でもあった。
 なお余談ではあるが、この名を命名したケルベロスが猟兵としてこちらの世界に来ているらしいという目撃談がある。
「バイクが好きでバイクの楽園を作りたかったとかかもな?」
 のほほんと答える絶華。
 『ケルベロスブレイド』には一輪バイクの姿をしたサーヴァント『ライドキャリバー』が存在していた。『ヘリポート』を経由してこちらの世界に来訪した彼らの多くが猟兵として覚醒したという。
「とはいえケルベロスブレイドに挑むとは中々新鮮だな。」
「違うんじゃないですか主様…?」 
 現物の『ケルベロスブレイド』を見たことがある者なら『ケルベロスホイール』とは全くの別物であることに気付けるはずだが、絶華もさっちゃんも『ケルベロスブレイド』の現物を見たことがないので勘違いしたままである。もっとも、さっちゃんは『何となく違う』と感じているようだが。

 戦場において、まずは状況を把握せねばなるまい。周囲の敵機とその陣形、そして何より『ケルベロスホイール』の構造を把握した絶華がユーベルコードを発動させる。
「さっちゃん!お前の力を見せる時が来たぞ!」
「承知致しました主様!…お前らに見せてやる…時空を統べる俺こそが最強って事をよぉ!」
 相変わらずユーベルコードを発動すると昔に戻るさっちゃんであるが、時間を巻き戻せる能力があるので仕方ない。
 時空切断で『サーモン・マシン』を膾にしつつ、『ケルベロスホイール』の横っ腹に攻撃を加えるべく猛スピードで接近するさっちゃん。しかし向こうも黙ってはいない。急なドリフトで進行方向を変更すると、車輪を全力で回転させ猛スピードでこちらへと向かってきた。そして
「ってあれまで飛んだぁ!?何なんだこの戦艦!?」
 『ケルベロスホイール』の巨体が飛翔した。さっちゃんのみならず、カドモンも守備隊の皆も絶句している。
「飛べたのかアレ……。」
 守備隊の皆の気持ちを代弁するように、カドモンがぽつりと呟いた。

「おお、速さも凄い様だぞさっちゃん。」
 ただ一人冷静に、この状況を若干楽しんでいる節すらある絶華。彼は彼で念動光弾の弾幕を転移し、ついでに『サーモン・マシン』を撃ち抜いていた。
 巨体でさっちゃんごと絶華を押しつぶそうとする『ケルベロスホイール』。だが、絶華はそこに勝機を見た。
(下部分がガラ空きだ!)
 BX鎌剣『ハルペー2』から二撃の時空切断が繰り出される。それはシャーシ部分に確実な傷を与えたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ガラノー・ヘミングウェイ
なんだ、やたらとデカい二輪車……チッ、梶木じゃあねえか……だがまあ、来たからにはやるしかねえか。
安煙草を吹かしながら、銛とオールの確認でもしておこう。銃の残弾もな。

大嵐でも起こして、辺り一面を海に変えちまおう。そうすりゃあ、あのバカみたいな二輪車もしばらく動けねえ……と考えてえもんだ。後は俺の独壇場って所か?
サーモンには銛でも刺すか、オールでぶん殴るか。網で雁字搦めか。
ただ、多少の漏れは長官殿に任せるとしよう。あくまでも足止め。

あぁ、そうだ。俺は独り言がかなり多いぞ。無線中だろうが、なんだろうがぶつくさ言ってると思うが……あまり気にするな。
唐突に球団がどうとか言い出しても無視するなりしとくれ。



●海と猟兵

 その頃、ガラノーは倒した『サーモン・マシン』の影に隠れ、一時休息を取っていた。キャバリアに乗って戦う猟兵や守備隊とは違い、彼女は生身一つで戦っているのだ。疲れも溜まろうというものだ。
 戦場において過度の疲れは、肉体の動きを鈍らせるだけではなく、判断を誤らせることがある。獣人戦線で数多の戦場をかいくぐってきた彼女はそれをよく知っているのだ。
 安煙草を吹かしながら、愛用の銛とオール、そして銃弾の残量を確認をするガラノー。と、彼女の頭上を『ケルベロスホイール』が飛んでいった。
「あんなデカブツが飛ぶのか……。」
 一瞬呆然とするガラノー。だが、『ケルベロスホイール』が陸地に近づきつつあることに気づき、慌てて追いかける。彼女の頭上には同じく『ケルベロスホイール』を追いかけるカドモンのキャバリアが飛んでいる。

 カラノーのオールにユーベルコードの光が宿る。
「ここからは俺の独壇場だ。」
 オールを海面に突っ込み、かき混ぜる。すると海面に大渦が現れ、その渦は次第に高さを増し、天に届くほどの巨大な竜巻へと変化した。それと同時にそれまで晴れていた空が曇天に覆われ、どこからか強い風が吹き、巻き上げられた海水が雨の如く降り始めた。
「天候が急変した!?」
「『気象台』によると今日は1日ずっと晴れの予報だぞ!?」
 突然の出来事に混乱する守備隊へ、カドモンが冷静さを取り戻すよう呼びかける。
「この天候は恐らく猟兵がユーベルコードを発動させたものと思われる。まずは時化に乗じて護衛を叩くぞ!」
 こうなれば彼らも理解が早いもので、複数名で『サーモン・マシン』を囲み、各個撃破していく。カドモンもまた、海面を制圧するかの如くガトリングガンを連射した。

 さて肝心の『ケルベロスホイール』だが、こちらも予想外の嵐で身動きが取れなくなっていた。その隙にガラノーが艦橋に向かって船壁をよじ登る。
「誰が動かしてるか知らねぇが、乗組員がいるならそいつらを叩けば止まるだろ。」
 少なくとも、今まではそうだったのだ。だが――。
「おかしい。人っ子一人いやしねぇ。」
 甲板にも艦橋にも人の気配がない。侵入者である自分を迎撃する仕組みがあってしかるべきなのだが、それすら存在しない。
 そして船の中枢たる操舵室へ辿り着いたガラノー。ライフルを構え、部屋に突入した彼女が見たものはバリアに守られた巨大な四角い箱――超高性能コンピュータの姿だった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

エリー・マイヤー
これだけの攻撃を受けて、まだ沈まないとは…
なんというしぶとさでしょう。
冥府の番犬の名を冠するだけのことはありますね。

とはいえ、そろそろ墜ちて頂きたいところです。
サイキックウィングで飛び回って砲撃を回避しつつ、【発電能力】。
曲がりくねり何度も襲い掛かる雷で、敵艦の機能を麻痺させます。
ついでに、周囲のサーモンも巻き込んで一網打尽です。
そのまま隙を見て近寄って、フォースセイバーでぶった切る方向で。
ポジションはクラッシャーを要請します。
敵が消耗しきった今こそが攻め時です。
影の城の国を守るために。
そして、長官さんの早急な帰還のために。
最大火力で、敵艦を沈めにかかりましょう。



●再戦の蒼

 『サーモン・マシン』のみならず『ケルベロスホイール』もまた無人機であったという報告は猟兵と守備隊に瞬く間に共有された。
「あれほど巨大な戦艦をコンピュータによる自動制御で操縦していただと?しかも大量の護衛も同時に指揮していたとなると、相当な演算力を持つことにになるが、それに伴う消費電力もまた莫大になるはず。どうなっているんだ?」
 疑問を呈するカドモン。アース系世界の中でも高い技術力を持つ『ケルベロスディバイド』においてもこんな『怪物』を作り上げることは不可能に近い。『クロムキャバリア』ならそれが可能なのか、或いは他の世界の技術が混入しているのか。

 その頃、エリーは『ケルベロスホイール』に再接近していた。
「これだけの攻撃を受けて、まだ沈まないとは…なんというしぶとさでしょう。冥府の番犬の名を冠するだけのことはありますね。」
 その高い防御力に感心するエリー。頑丈さで言ったらSSWの宇宙戦艦ともいい勝負ができるだろう。
「とはいえ、そろそろ墜ちて頂きたいところです。」
 『アレクサンドラ』の光翼が一際大きく輝いた。

 『ケルベロスホイール』から放たれる砲弾と『サーモン・マシン』のイクラ型爆弾を紙一重の所で躱すと、『アレクサンドラ』の手がユーベルコードの青い光に包まれた。そしてサイキックの雷が全てを一掃するように放たれる。
 バリアをすり抜けた過剰な電力を受け、『ケルベロスホイール』を操っていた高性能コンピュータの回路がショートした。それと同時に『ケルベロスホイール』の動きが止まる。エリーはその隙を見逃さず、BXフォースセイバーで一気に前方のタイヤを切り裂いた。
「こちら猟兵のエリー・マイヤー。クラッシャーを要請します。」
 カドモンの元にエリーから通信が入る。
「敵が消耗しきった今こそが攻め時です。『影の城の国』を守るために。そして、長官さんの早急な帰還のために。最大火力で、敵艦を沈めにかかりましょう。」
「了解した。守備隊は全軍最大火力でかかれ!本部、アレは使えるか?」
「こちら本部、いつでもいけます!」
「ではいくぞ!|決戦配備《ポジション》クラッシャー発動!」
 島内では新たに設置された砲台が海上の『ケルベロスホイール』に狙いを定める。そして、大きな砲撃音を立て、砲弾が放たれた。

 カドモンのキャバリアからガトリングガンの弾丸が雨霰の如く蹂躙するように海に降り注ぐ。守備隊のキャバリアが『サーモン・マシン』を粗方沈めたところに、砲弾の飛来音が聞こえた。
「全員離れろ!」
 砲弾は狙い通り『ケルベロスホイール』に着弾し、爆発は猟兵との戦闘でダメージを受けた船体を真っ二つに割った。巨体に見合った水飛沫を上げ、船が沈んでいく。

「やった…のか?」
「勝ったんだ、あのデカブツに勝てたんだ……。」
 実感の湧かない守備隊に、カドモンが声を掛ける。
「ああ、これは『影の城の国』全員の勝利だ。君たち全員で国を守ったんだ。」

 エリーは歓喜の輪から少し外れ、『アレクサンドラ』のコックピットで煙草を燻らせていた。
「仕事終わりの一服はまた違いますね。」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『新米パイロット育成計画』

POW   :    まずは体力。多彩な運動メニューで基礎体力を身に付けよう!

SPD   :    ここは技術。シミュレーターでキャバリアを操縦してみよう!

WIZ   :    やはり知識。機体性能や戦術等を教えていこう!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●長官の特別授業

 『ケルベロスホイール』撃破から数日後、カドモンの姿は守備隊の訓練所にあった。何人かの猟兵の姿も見える。彼らの前には整列する守備隊の新人兵と南部方面部隊第1小隊隊長を務めるキャスパー・リューベンの姿があった。
 『イザナミ』の侵攻以降守備隊の入隊希望者が増加し、それまでの教官だけでは指導が回らなくなった結果、各部隊の隊長が持ち回りで教官役を務めることになったのだ。
「本日は『特務機関DIVDE』のアダム・カドモン長官閣下及び猟兵の皆さんが特別講師としてお前たちに訓練を付けてくださる!心してかかるように!」
 キャスパーの言葉に「はい!」と元気の良い返事がこだました。

「ところで閣下、この訓練が終わったら島を離れるというのは本当なのですか?」
 訓練の準備に入る新人兵たちを見やりながら、キャスパーがカドモンに尋ねる。
「ああ。この世界にはまだまだ戦乱に苦しむ人々がいる。本来なら私も元の世界に帰るべきなのだが、どうしても彼らを見捨てることができなくてね。ハートフィールド首相にはすでに許可をもらっている。」
 カドモンは既に遠く、大陸を見ているようだった。
シル・ウィンディア
教官役かぁ…。なにしようかな?
わたしの知識だと、空戦戦闘になるからなぁ…。
やっぱり、シミュレーターがいいかな?

ということで、基本的な動きとかを確認させてもらうよ。
そこで気になった事とかをアドバイスしつつ…。

それだけじゃ面白くないよね?
せっかくだから実戦型のシミュレーションもやってみる?
相手はわたしとレゼール・ブルー・リーゼ。

4機1チームでかかってきてね。
連携戦の教習でもあるから、これ。

シミュレーターだけど高度には注意しつつ高速機動。
推力移動で加速して空中機動。
三次元で立ち回る機体を相手にどうするか楽しみだね。

射撃武器を使って間合いを取りつつ、うかつな動きなら撃ち抜くよ。
ほら、甘いよっ!



●新型キャバリア開発の噂

「教官役かぁ…。なにしようかな?わたしの知識だと、空戦戦闘になるからなぁ…。やっぱり、シミュレーターがいいかな?」
 という訳で、シルの姿はシミュレータールームにあった。
「でもウチの国のキャバリアってみんな水陸両用型じゃないですか?空中戦の演習を行ってもそれを使えるキャバリアがないですよ。」
 新人兵の1人が疑問の声を上げる。周囲を海に囲まれた『影の城の国』では海上や海中での戦闘に対応したキャバリアを多く配備しており、最高戦力である『エビス』ですら水陸両用型なのだ。
 だが、同席したカドモンが意外なことを話し出した。
「そのことだが、現在新型キャバリアの開発計画が動き出している。それは陸空両用型だ。」
 『新型キャバリア開発』の言葉に沸き立つ新人兵たち。なるほどそれなら今回の訓練も無駄にはならない。

 シミュレーターを起動し、各々が画面に映し出されたキャバリアを動かす。
「まずは基本的な動きを見ていくよ。」
 シルとカドモンが手分けをしながら新人兵の動きを見ていく。走る、飛ぶ、基本的な武器――ライフルにビームナイフ――の使用、防御、回避、いずれも新人兵らしく、どこかぎこちなさが残る。
「近接攻撃を回避するならもう少し引き付けてからの方がいいかな。」
「ライフルを構える時はもっと脇を引き締めるんだ。」
 シルとカドモンのアドバイスにより、多少なりとも様になってきた新人兵たち。そこにシルが一つの提案をした。
「せっかくだから実戦型のシミュレーションもやってみる?」
 猟兵と模擬戦ができるというまたとない機会に、新人兵たちは再び沸き立った。

「みんな、準備はいい?」
「我々はいつ来ても構わない。」
 シミュレーターで再現された空間に、シルの『レゼール・ブルー・リーゼ』とカドモンのキャバリアが浮かぶ。
 新人兵は4機で1組のチーム、対するシルとカドモンは新人兵チームを1機で相手するレギュレーションとなっている。まずシルと新人兵チームの対戦だ。
「連携戦の演習でもあるからね、これ。」
 実際の戦闘では即席でチームを組むことがままある。この演習では即席の連携力を鍛える目的もあるのだ。

「ここはシミュレーターだけど、実戦では|殲禍炎剣《ホーリーグレイル》に落とされないよう、飛行高度を考えてね。」
 自身も高度を気にしつつ飛行をするシル。
「地上から援護射撃頼む!」
「そんなこと言っても、弾当てるの難しいよ!」
 下から飛んでくる弾を空中機動で軽やかに回避しつつ、ビームナイフを持ったキャバリアを軽くいなすシル。この辺はもう戦闘経験の差が如実に出ている。
 BS-B頭部ビームバルカン『エリソン・バール改』とRSアサルトライフル『ブレシュール』で間合いを取りつつも、隙や迂闊な動きをする新人兵に容赦ない攻撃を加えるシル。なお、これでも手加減しているのだから歴戦の猟兵というのは恐ろしい。
「ほら、甘いよっ!」
 青い奔流が最後の1機を貫く。新人兵側の4機が全てキル判定されたのは、演習開始から10分経過したかどうかのタイミングだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ハル・エーヴィヒカイト
アドリブ連携歓迎
長官に対しては敬語

何度か話させてもらったことで長官の説得そのものはもう諦めている
今は彼の目下の心配を解決することに全力を尽くそう
もっとも帰りたくなったときのため帰る手段については続報がないか確認しておきたいが

さて、シミュレータでの訓練か。機体の情報はそのまま使えるようだ
それでははじめようか
キャリブルヌスに[騎乗]しての殲禍炎剣に捕捉されない程度の限定的な[空中戦]。
新兵相手の訓練だ。一度サーモンの群れを相手に見せた戦闘機動を再び見せて、相手の動きを[見切り]指導を行いながら対応する形で[カウンター]を撃ちこんでいこう
得物が剣だけだからと侮るな。[斬撃波]や[念動力]による刀剣射出などの遠距離攻撃も備えている

相手を追い詰めても油断はするな。相手は切り札や奥の手を備えているかもしれない
真の姿、キャリブルヌス・エクセリオンも開放して敵戦力の急な変化に対する経験も積んでもらおう


エリー・マイヤー
教官ですか。
サーモンやケルベロスの比ではない難問ですね。
私はキャバリアについては素人ですし、戦法とか割と直感でやってます。
念動力のお手本は見せられますが…
吸血鬼による魔法文明の国だと、サイキッカーもいなさそうですよね。
ん-…

仕方ありません、こういう時は人頼みです。
長官さんの訓練をお手伝いする方向で行きましょう。
低空を飛び回っていい感じに回避する的とか、想定外の強敵とか。
そういう感じの仮想敵が必要なら、お任せください。
あるいは、雑用に回ってもいいです。
重機が必要な作業でも、念動力で何とかできます。
演習用特別コースの設営とか、キャバリアの運搬とか。
なんかいい感じにこき使ってくだされば。



●結局帰らぬ|猟犬《ケルベロス》

「教官ですか。サーモンやケルベロスの比ではない難問ですね。」
 エリーは頭を悩ませていた。正規の教育や訓練を受けたことがない彼女にとって、戦闘やキャバリアの操縦は直感に頼っている部分が多い。それでも猟兵として上手く立ち回れているのは、創造主たる彼女の父と愛機『アレクサンドリア』が優秀であることの裏返しであるのだが。
 彼女の最大の能力である念動力についても、サイキッカーに類する能力者や種族がいない『影の城の国』では伝授する相手がいない。
 さてどうしたものか。考えながら廊下を歩いていると、カドモンが声を掛けてきた。
「エリー。君に少し手伝ってほしいことがあるんだが、いいかな?」

 一方その頃、ハルはカドモンの説得を諦めていた。何度か説得を試みたのだが、その度に『それでもこの世界の人々を見捨てられない』と返されてしまうのだ。
 ケルベロスディバイドにおいて、DIVIDE長官であるカドモン不在でもデウスエクスに対処できているのは上層部不在の緊急事態に備えたマニュアルと、現場の奮闘のおかげである。カドモンもそれを理解しているからこそ、安心してクロムキャバリアに滞在できるのだが。
「『ヘリポート』を利用しての帰還は難しい、か。」
 DIVIDE本部から送られてきた報告書に目を通し、ハルは溜息をついた。『異世界のケルベロス』たちがケルベロスディバイドへやって来た時に使われたのが『ヘリポート』である。これをクロムキャバリアへ繋ぐことができれば、カドモンの帰還に使えるかもしれないと研究が行われていたのだった。
「仕方ない、こちらでも帰還手段の捜索を継続しよう。」

「すげー!あのキャバリアもかっこいいな!」
「記録映像見たけど、バッタバッタと切り伏せてるの強くね?」
「カドモン長官との連携マジで推せるんだけど。」
 シミュレーターに映し出されたハルの愛機『キャリブルヌス』を見た新人兵たちがはしゃいでいる。これから|決戦配備《ポジション》を利用した市街地防衛戦の演習を行うのだ。制限時間までフィールドの奥にあるプラントを守り抜けば新人兵チームの勝利。逆に、プラントを落とされるか新人兵チームを全滅させられればハルの勝利となる。
「呑気なものですね。まぁ死ぬ訳ではないのでいいでしょう。にしても、シミュレーターのプログラムが間に合ってなかったって酷い話ですね。」
 『アレクサンドリア』がプラントの前に陣取る。今回エリーはカドモンに頼まれ、|決戦配備《ポジション》の代役をすることになったのだった。

「それでは皆、準備はいいか?」
 カドモンが皆に問う。
「それでは始め!」
 ここに猟兵対新人兵、防衛演習の火蓋が切って落とされた。

 |殲禍炎剣《ホーリーグレイル》に捕捉されぬ程度の高度で飛行を行うキャリブルヌス。それを見た新人兵が相談を始めた。
「確かあのキャバリア、剣に特化してたよな?」
「なら『スナイパー』発動!相手の間合いに入るより先に、遠距離から射抜くぞ!」
 入ってきた通信に合わせ、エリーがキャバリアサイズの念動ジャベリンを作り出す。その数161本。ハルはミサイルの如く降り注ぐ念動ジャベリンを時に回避し、時に受け流し、時に切り捨てる。エリーも本気で狙っているのだが、相手は歴戦の猟兵。その辺のオブリビオンを相手するのとは訳が違うのだ。
 だが、ハルもまたエリーの腕前に感心していた。
「流石に猟兵のユーベルコードだ、その辺のサーモンとは速度が違う。」
 もし1発でも命中したら大ダメージは免れないだろう。空中機動を駆使し、念動ジャベリンを躱しきったハル。その動きはまるで、これから空を飛ぶであろう新人兵たちの手本となる動きだった。

 剣を構え、急降下するキャリブルヌスに慌てる新人兵たち。
「わっ!もうこっちまで来た!」
「とにかく撃とう!」
 ライフルを連射する新人兵たちだが、やはり動揺が出るのかまともに当たらない。
「落ち着け、ビームナイフを使うんだ。」
 ハルの通信に冷静さを取り戻す新人兵たちに、ハルは近接戦の指導を始めた。
「筋は悪くない、だが腕の振りが甘い!」
「突きの速度が足りない!」
「カウンターはこう!」
 新人兵の攻撃を全ていなし、カウンターで返すハル。
「やっぱ猟兵ってすげーなー……。動きに無駄がないっていうか、洗練されてるっていうか。」
 遠くからその様子を見ていた新人兵の呟きに別の新人兵が返す。
「でも接近戦しかしてないね、遠距離攻撃はできないでしょ?」
 狙撃用ライフルを構え、ハルを狙う新人兵。だが、ハルはそんなこともあろうかと別の手を用意していた。
 ハルが驚異的な一振りで斬撃波を放った。斬撃波は障害物を破壊しながら新人兵たちの元へと突き進む。
「ディフェンダー起動!」
 新人兵の合図でエリーが念動バリアを展開する。新人兵たちの周りに張り巡らされた161層のバリアは確かに斬撃波を防いだが、ハルはさらに別の手を展開していた。斬撃波は囮であり、本命は念動力で動かされた剣による奇襲攻撃なのだ。
「あ、後ろ。」
 思わずエリーが声を出す。
「え?」
 振り返った新人兵を飛んできたハルの剣が貫いた。
「戦場において侮りは禁物だ。」

「参ったな、もうここまで来るなんて。」
 プラント前に陣取る新人兵のリーダーがぼやいた。
「けど思ったより時間かかってますね。」
 別の新人兵がシミュレーター内のタイマーを確認しながら話しかける。
「何ていうか、その場で指導しながら戦ってますよね。」
「とは言え、今の所全機撃破だもんなぁ。」
 頭を悩ませるリーダーの心境を知ってか知らずか、レーダーにキャリブルヌスの機影が映し出された。
「敵機確認!ここまで来たら作戦通りやるしかないぞ!」
 リーダーの声に気勢を上げる新人兵たち。その声を聞きながら、エリーは別の事を考えていた。他の猟兵の戦い方をまじまじと見る機会などあまり無かった彼女にとって、今回の演習は新鮮なものだった。ハルの戦い方は参考になる部分も多く、新しく気づいた点もいくつかあった。
(カドモン長官が私を誘ったのは、これを見越してのことなのでしょうか?)
 エリーの取り留めのない思考はリーダーの声に中断させられた。
「ジャマー発動!」
 その声と同時にアレクサンドリアからサイキックエナジーを含んだ冷気が周辺に放たれる。冷気は新人兵たちを避け、キャリブルヌスの手足を凍り付かせる。
「動きが止まったぞ、今だ!」
 キャリブルヌスを囲み、ライフルの一斉射撃を行う新人兵たち。その様子をハルはコックピットで悠然と眺めていた。
「相手を追い詰めても油断はするな。相手は切り札や奥の手を備えているかもしれないぞ。」
 その言葉と同時にキャリブルヌスの装甲が展開され、光の翼を広げる。機体に纏わり付いていた氷が熱で溶け、剥がれ落ちる。その様子を新人兵もエリーも、身動き一つできずにただ見守るのみ。
「これがキャリブルヌスの真の姿『キャリブルヌス・エクセリオン』だ。さて、時として敵勢力はこのように急激な変化を遂げる場合がある。その場合、君らならどう対処する?」
 剣戟を繰り出しながら問うハル。その猛攻に耐え切れず、答えを出す前に倒れていく新人兵たち。
「残るは君だけか。」
 プラントの前に立ちはだかるのはリーダーの機体ただ1機。キャリブルヌス・エクセリオンが空に舞い上がるのを見た彼の声が戦場に響く。
「クラッシャー発動!」
 念動ヴォーテックスによる竜巻の如き念動力の奔流がキャリブルヌス・エクセリオンに襲い掛かる。だがハルも負けじとユーベルコードを発動させる。
「羽ばたき、舞い踊れ剣。そして散れ、|天翼崩陽刃《てんよくほうようじん》ッ!」
 キャリブルヌス・エクセリオンの光翼から嵐のような刃羽の弾幕が放たれ、手にした光の剣から繰り出されるすれ違いざまの斬撃が念動力の本流を切り裂く。そのままプラントに向かって突撃しようとしたハルだったが、ビームナイフを構えたリーダーのキャバリアがとてつもない速さで正面から突っ込んでくるのは流石に予想しておらず、反応が一瞬遅れた。
「おりゃああああああああああ!」
 ビームナイフの刃がキャリブルヌス・エクセリオンの装甲にほんの少し、かすり傷を付けた。と同時にタイマーのアラーム音が演習終了を告げる。

「勝者、新人兵チーム!」
 カドモンの声が通信機越しに響く。歓喜に沸く新人兵だが、カドモンと共に演習を見ていたキャスパーの「お前たちこのスコアで喜べると思うな」と釘を刺す声に静まり返ってしまった。
「君らはまだまだ伸びしろがある。キャリブルヌスのデータは残しておくから、訓練に使うといい。」
 ハルがフォローに入る。と、エリーがハルに通信を入れた。
「もしよろしければ、今度は私と戦ってもらえませんか?」
「ああ、いいだろう。私も先程の戦いで君の本気を見てみたいと思ってね。」
「今度は猟兵同士の模擬戦を見学だ。皆も得るものがあるだろう。」
 カドモンの声はどこか嬉しそうだった。

●謎の光
 演習が終わり、愛機と共に『影の城の国』を出たカドモンは宵闇に染まる海の上を飛んでいた。向かう先は戦乱今だ止まぬ大陸。そこには彼の力を必要とする人々がいる。
 不意に、海の底から謎の光が放たれ、カドモンとそのキャバリアを包み込む。一瞬、己の中に何かの力が湧きだすような感覚が生じたが、すぐに消えてしまった。
 夜明けは、まだ来ない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年12月13日


挿絵イラスト