●最高だよなキマヒュ
「絶対、ぜええっったい帰りません! 帰りませんったら帰りませえーん!!」
キマイラフューチャーの救世主の一人、黒聖者さんこと『黒教の教祖』はものすごっくめちゃくちゃ頑なに拒んでいる。何をって? 元の世界への帰還である。
『コンコンコン! コンコンコン!』
彼女の周りにはコンコンコンで出した様々なアイテム、それこそゴッドゲームオンラインのレアアイテムやら換金アイテムやら入手不能なコスチュームやらがとにかく溢れんばかりに積み上げられ、もはや近づくことも叶わない状態であった。
彼女だけが、なぜかシステム・フラワーズのコンコンコンを完全な形で扱えるのだ。まるで彼女のために作られたシステムのようである。一介のゲームプレイヤーでしかなかった彼女の帰りたくないという主張も頷ける。
憐れ、無限の欲望の具現化アイテムに押し流されていくキマイラフューチャーの住民たち。
サイバーポップな街の一角が埋もれかけたそのとき、一陣の風が吹いた。
怒涛のアイテムたちは組成分解されただのデータへと戻って消滅した。
大魔術詠唱儀式『テニス』だ。
テニス・フォーミュラ『宮本・武蔵』
彼も教祖と同じく、帝都櫻大戰において神王サンサーラ降臨による世界危機に際し、キャンピーくんの能力により強力な共闘者として送り込まれた存在である。
ところが。戦争は勝利に終わったものの、彼らをこの世界に残したまま、キャンピーくんはどこかへと姿を消してしまったのだ。このままでは彼らは元の世界へ戻れない。
だが、システム・フラワーズを完全開放できる黒教の教祖と、この際限のない超膨大なプログラムを制御できる宮本武蔵が手を組めば『帰還プログラム』を組むことができる、そう武蔵は指摘した。
結果が冒頭のアレである。
「私は一生ここに住みます!! このキマイラフューチャーこそが私のいるべき場所だと知ったのです!」
「ーーたしかにこの世界は命のやり取りもなく、住民たちも満ち足りている様子。永住したくなる気持ちはわからぬでもない」
己を鍛えあげ武を極めてこその宮本武蔵にとってはだいぶ物足りなくはあるだろうが。
宮本武蔵は黒教の教祖へと語りかける。
「我らはいっときの戦いのために召喚された者。元の世界に戻るのが道理である」
「嫌です!!」
即答だった。
●ハッピーハロウィンナイト
グリモア猟兵の恋澄・クララ(コズミック綺羅星・f01432)はお手上げポーズで猟兵たちを迎えた。
「黒聖者さんが『帰りたくない』と断固拒否しておりまシテ、大絶賛・暴走中☆」
「皆さんでナントカ、黒聖者さんを説得するなり何なりで大人しくして頂いて、プログラム制作に同意させて欲しいのデス」
あとは彼女の機嫌をなだめつつ街中をコンコンコンしながらシステムに干渉していく。
「ちょうど街中はハロウィンシーズン真っ盛り☆ 特にネオンサインなどもハロウィン仕様となっており雰囲気もバッチリ! 真夜中ならではのハロウィンを楽しめると思いマス☆」
お菓子を出したり仮装をしたり。一緒にハロウィンを満喫してしまうのもありかもしれない。
そうしてシステムがフル稼働したところをーー!
「超プログラムを制御して組み直し『帰還プログラム』を完成させるのデス!」
『宮本武蔵さんとのテニス勝負で!』
テニス!? テニスナンデ!?
やっぱり最後はテニスなんだね。
複雑な表情の猟兵たちを、クララは「頑張って下さいネ☆」と笑顔で送り出した。
OHAGI
こんにちは、初めまして。『OHAGI』です。
キャンピーくん、どこに行ったの!?
さて、キマイラフューチャー世界へ助っ人に来た黒教の教祖さんと宮本武蔵さんを、キャンピーくんの能力を使わずにそれぞれ元の世界へ帰還させる方法が見つかったので、皆さんにお手伝いをお願いします。
●第1章
帰りたくないと駄々をこねて暴れている『黒教の教祖』を説得したり抑えたりなだめたり、なんとかして大人しくさせて下さい。彼女が同意してくれるよう働きかけましょう。
●第2章
黒聖者さんはまだご機嫌斜めかもしれません。
ちょうど良いことにハロウィンシーズンですので、ハロウィンの装飾に彩られた真夜中の街を彼女と楽しみつつ、コンコンコンしながら回って下さい。
宮本武蔵さんも同行してるかもしれません。声をかけてみるのも良いでしょう。
●第3章
テニスです。
プログラム最終調整に欠かせない『テニス』です。
テニス・フォーミュラ『宮本・武蔵』とテニス勝負をして頂きます。頑張れ!
このシナリオで得た🔵が「299個」を超えると、帰還プログラムが完成し、黒教の教祖をゴッドゲームオンライン、宮本武蔵をアスリートアースにそれぞれ帰してあげることができます。
今回はオープニング公開直後からプレイング募集を開始します。
それでは皆さんハッピーハロウィン!
第1章 冒険
『絶対に帰りません!!!』
|
POW : 暴れる教祖を力ずくで抑える
SPD : 逃げる教祖を追い詰める
WIZ : ゴッドゲームオンラインの話題で説得する
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
エリー・マイヤー
家族、友達、ペット、黒教信者の同胞たち。
思い出の街に、思い出の品。
故郷に残してきた物は、いくらでもあるでしょうに。
まさか、そうした心残りを、全て諦めると仰るのでしょうか。
欲望を尊ぶ黒教の教祖が、欲しいものを諦めると。
なんと情けない教祖でしょう。
仮にも教祖を名乗るなら、もっと傲慢で欲深くあって頂きたいものです。
世界を繋げて行き来可能にするとか。
GGOにコンコンコンを輸出するとか。
武蔵さんをテイムしてペットにして持ち帰るとか。
もっと壮大な欲望を見せて頂かないと。
とか、それっぽいこと言って適当に煽ります。
物が溢れて通れない場合は念動力で対処です。
…まぁ、帰りたくないという気持ちは、わかりますけどね。
オニキス・ヴァレンタイン
さすが教祖様! 自ら楽園を知り、黒教の教えをさらに深めんとする貪欲さ! 敬服いたします。
──あの、宮本・武蔵とか言いましたか。
教祖様が欲望のままに形作ったアイテムの数々を消し去るとは不届き千万ッ! 今すぐ跡形もなく潰し……へ? あの者を潰してはいけない? 何故です? 我々黒教は『自ら積極的に戦い、勝ち取り、己の手で「欲望による進化」を肯定する者』。
欲望を叶える為に、たとえ相手が強者であれど挑み勝ち進化を続ける、それが我々では?
わたくしは黒教の司祭として生まれ出たAI。貴方様の教えが全てなのです。
この身が滅びるまでお仕え致します。どうか貴方様の欲望のままに使い潰して下さいませ。
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。
まぁまぁ、教祖様。このいつでもコンコンコンをあげますから帰りましょうよ。
『え?』
え?
ああ、|これ《精巧にできたシステムコンコンコンの贋作》?なんか作ったらできちゃった☆
そっかー、嫌かー、まぁ汝が為したいように為すがよいが私の信条だししょうがないにゃぁ……(にっこり)私も為したいように為すから❤
教祖様がイケナイんだよ、欲望を肯定する教義で私を誘惑なんてするから。
|技の出を認識しずらい無拍子《認識阻害、早業先制攻撃》で|唇を奪って濃厚なキスをしちゃうぞ♪《盗み、欲望解放》さぁ教祖様?私と|”なかよし”《魂の契約、人造生命の創造》しーましょ❤
御形・菘
はっはっは、妾の統べるキマフュで随分と好き勝手しておるではないか
度が過ぎたやらかしを起こす前に、妾が出張るとしよう!
…まあ表向きはノリ良くいくが、マジであまりにも危険だと思うのだ
無限の欲望を叶えられる力を持っていても、それを好く使えるかは別だからのう
少なくとも今の時点ではだがな?
てなわけで、駄々こねて暴れる教祖ちゃんは妾が叱って物理的に抑え込むぞ
はーっはっはっは! 全力で抗うがよい!
キマフュで最強最高の邪神である妾相手に、手を抜く余裕などないぞ!
実際は殺気を叩き込んで無力化するつもりだがな
左腕をブチ込むだとかは当然絶対NG、右手でコツンとする程度だ
悪でも強者でもない者を妾がボコるわけなかろう?
白斑・物九郎
ほー、おたくが黒聖者っスか
先の戦争はお疲れさん
キマヒュは俺めの地元ですからな
礼は言っとかねえでもねっスよ
●説得
はー、ニャんだかレアそうなアイテムを山ほど積み上げましてからに
でもよ、おたくホントに帰らねーでイイんスか?
パねえ武器とかギャンカワなコスをゲットしたトコで、GGOに帰らねえコトにゃ、試し斬りできる手頃なモンスも出て来なけりゃ、見せびらかしたトコでガッツリ羨ましがってくれる周りのプレイヤーだって居ねえワケじゃニャーですか
それに何より
レアドロップってのは、アタリ付けた狩場に張り付き続けた末にゲットしてこそのモンなんじゃねっスか?
ワンクリックでポコポコ拾える高レアにどんな価値があるんですよ?
ミシェル・アンジェラ
お任せプレ。
*知る人ぞ知るクエストキャラです。クエスト攻略者にはサポートキャラ(魔喰部位扱いの分身)が配布されます。教祖様が攻略済だったかはお任せします。
*攫われる∞。クエストで攫われます。プレイヤーキャラにも攫われることもあります。
あの人が黒教の教祖様ですか……うう、あの怖いひとたちのボスかぁ……今回は地下室に監禁されないといいなぁ(遠い目
えとえと、教祖様が元の世界に帰るように説得すればいいんですよね?ど、どうすれば……そうだ!
げんきになぁれ❤(投げキッス)
残念ですがここはGGOではないので課金はできません、なので帰りましょ、ひっ!しまったこれ理性もなくなるやつだった、に、逃げ、あーれー
●キマヒュのとある街角
猟兵たちが到着した時、黒教の教祖の周りはコンコンコンで出されたレアアイテムが積み上げられ、ちょっとした防壁ができていた。さながら籠城である。
キマイラフューチャーの住民たちは遠巻きに見守ったり、配信したり、欲しい物をリクエストしたりしている。
宮本武蔵は近くの建物の上で座禅を組んでいる。住民に危害が及んでいないことを確認し、しばし静観の構えのようだ。
「……まぁ、帰りたくないという気持ちは、わかりますけどね」
ぽつりと呟いて、エリー・マイヤー(被造物・f29376)は積まれたアイテムたちを念動力で移動させ、道を作る。
「ほー、おたくが黒聖者っスか。先の戦争はお疲れさん」
道から顔を出したのは猫キマイラの白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)だ。両手をポケットに突っ込み尻尾を揺らしながら、ふらりと黒聖者の元に歩いてきた。
「キマヒュは俺めの地元ですからな。礼は言っとかねえでもねっスよ」
ぶっきらぼうに礼らしきものを言いつつ、壁と化したアイテムを見回す。
「はー、ニャんだかレアそうなアイテムを山ほど積み上げましてからに」
うず高く積まれたレアアイテムをぽんぽんと叩く。これらを換金すれば億万長者は間違いなしだ。ただしゲームの中でならの話。
「パねえ武器とかギャンカワなコスをゲットしたトコで、GGOに帰らねえコトにゃ、試し斬りできる手頃なモンスも出て来なけりゃ、見せびらかしたトコでガッツリ羨ましがってくれる周りのプレイヤーだって居ねえワケじゃニャーですか」
ここにはアイテムの希少性を知るプレイヤーも真価を発揮できるモンスターもいない。
「それに何より……レアドロップってのは、アタリ付けた狩場に張り付き続けた末にゲットしてこそのモンなんじゃねっスか? ワンクリックでポコポコ拾える高レアにどんな価値があるんですよ?」
耳が痛い。チートで入手したアイテムなど真っ当なゲームプレイヤーにとっては唾棄すべき代物だ。苦労した末に手に入れた達成感。喜び。ゲームを始めたてのあの頃の懐かしい感情が思い起こされる。
「おたくホントに帰らねーでイイんスか?」
金の瞳が黒聖者をジッと見る。その瞳にジリッと後退しつつ、しばし逡巡し覚悟を决めるように黒教の教祖は懸命に答える。
「い、いいのです。この世界であれば私は皆さんのお役に立てるのです。私の力で皆さんを幸福にできる、溢れる欲望のままに自由に振る舞い生きることが出来る。こここそが黒教信者にとっての楽園に他なりません!」
己の欲望を肯定しその欲望のままに振る舞う。それが黒教の教えである。
「さすが教祖様! 自ら楽園を知り、黒教の教えをさらに深めんとする貪欲さ! 敬服いたします」
ズザザッと黒聖者にすがり感激の涙を流すのは、ゴッドゲームオンラインのNPCであり黒教信者のオニキス・ヴァレンタイン(八月のヴァレンタイン・f41830)。
「あなたも黒教の民なのですね、よく参られました。共にこの世界を黒教の聖地としましょう」
彼の勢いに少々引きながらも、オニキスの肩に手を添え聖人の微笑みを浮かべる黒聖者。祈りを捧げるように彼女を見上げるオニキス。
傍から見れば宗教画が如き光景である。が、ふいにオニキスの表情に不穏な影が浮かぶ。
「──あの、宮本・武蔵とか言いましたか。教祖様が欲望のままに形作ったアイテムの数々を消し去るとは不届き千万ッ!」
オニキスの背後にグリード・サインが浮かび、今にも宮本武蔵へ食ってかからんと、黒教聖典を広げる。慌ててオニキスを制止する黒聖者。
「今すぐ跡形もなく潰し……へ? あの者を潰してはいけない? 何故です? 我々黒教は『自ら積極的に戦い、勝ち取り、己の手で「欲望による進化」を肯定する者』。そうでしょう? 教祖様」
さすがNPCである。ブレない黒教信者。しかし教祖の中の人はいたって普通の少女なのである。プレイヤーとしても、共闘した仲間を手にかけるなどあり得ないマナー違反行為だ。
「欲望を叶える為に、たとえ相手が強者であれど挑み勝ち進化を続ける、それが我々では?」
そう、黒教の教えとしては恐らくこれが正しい在り方。
「わたくしは黒教の司祭として生まれ出たAI。貴方様の教えが全てなのです。この身が滅びるまでお仕え致します。どうか貴方様の欲望のままに使い潰して下さいませ」
片膝をつき頭を垂れる黒教信者を前に、黒聖者は戦慄を覚えた。
「まぁまぁ、教祖様。このいつでもコンコンコンをあげますから帰りましょうよ」
ぴょこっと現れた少女。アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の|混沌魔術師《ケイオト》艶魔少女・f05202)
「え?」
思わず振り向く黒聖者。
「え? ああ、|これ《精巧にできたシステムコンコンコンの贋作》? なんか作ったらできちゃった☆」
そんな簡単に作れるんですか? コンコンコンて!?
にわかに怪訝な表情に変わる黒聖者。
「そっかー、嫌かー、まぁ汝が為したいように為すがよいが私の信条だししょうがないにゃぁ……」
アリスが意味深に微笑む。
「私も為したいように為すから❤」
黒聖者の顎に妖しげな仕草で手を添える。
「教祖様がイケナイんだよ、欲望を肯定する教義で私を誘惑なんてするから」
アリスの顔が近づく。
「あの人が黒教の教祖様ですか……うう、あの怖いひとたちのボスかぁ……今回は地下室に監禁されないといいなぁ」
物陰から様子を伺っているのはミシェル・アンジェラ(生贄の|少年《男の娘》・f42023)だ。
知る人ぞ知る、頻繁にさらわれるクエストNPCである。クエスト攻略するとサポートキャラ(魔喰部位扱いの分身)が配布される。ちなみに一部のプレイヤー|性癖を破壊《欲望開放》してしまい、プレイヤーにもさらわれる。罪深いNPCである……。
「(えとえと、教祖様が元の世界に帰るように説得すればいいんですよね? ど、どうすれば……そうだ!)」
「|技の出を認識しずらい無拍子《認識阻害、早業先制攻撃》で|唇を奪って濃厚なキスをしちゃうぞ♪《盗み、欲望解放》 さぁ教祖様? 私と|”なかよし”《魂の契約、人造生命の創造》しーましょ❤」
『げんきになぁれ❤(投げキッス)』
アリスの欲望全開攻撃とミシェルのユーベルコードが同時に展開された。
結果、ミシェルの誘惑がアリスにかかるという恐ろしい展開に。
「残念ですがここはGGOではないので課金はできません、なので帰りましょ、ひっ!」
ミシェルへにじりよるアリス。なんと言うことでしょう。男の娘の魅力に汚染され一時的に理性を失いミシェルを追いかけるアリス。逃げるミシェル。
「逃げ、あーれー」
キマヒュの住民はポカンと眺めたり、ここぞとばかりに配信したり。
あわや誘惑の危機から逃れた黒聖者であったが、二人を遠目に見ながら『理性なき欲望は怖い』とちょっとだけ思った。
「はっはっは、妾の統べるキマフュで随分と好き勝手しておるではないか」
御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)が現れると人垣が自然と割れる。キマヒュにおいて彼女を知らぬ者はいない、人気配信者のひとりである。
「(……まあ表向きはノリ良くいくが、マジであまりにも危険だと思うのだ。無限の欲望を叶えられる力を持っていても、それを好く使えるかは別だからのう)」
少なくとも今の時点ではだがな? 度が過ぎたやらかしを起こす前に、妾が出張るとしよう!
ーーそうなのだ、今回は宮本武蔵がフォローしていたから良いものの、黒聖者による無限の欲望はコンコンコンを完全開放できる。それはこの世界をも滅ぼしかねない強力な力でもある。何より彼女のだだこねで溢れかえるアイテムがその片鱗を見せている。
菘は内心で心配しながらも山盛りアイテムを一瞥し黒聖者をギロリと睨む。
「駄々こねて暴れる教祖ちゃんには、どうやらお仕置きが必要なようだのう」
蛇に睨まれた蛙がごとく、ぴえっと怯える教祖ちゃん。ゲームではこのような場面など幾度もあったはずだ。恐れず果敢に立ち向かったかもしれない。しかしここはゲーム世界ではない。
「はーっはっはっは! 全力で抗うがよい! キマフュで最強最高の邪神である妾相手に、手を抜く余裕などないぞ!」
黒教の教祖はコンコンコンで迎撃のためのアイテムを慌てて出していく。この武器は防具は強化アイテムはあのラスボスに通用するのか? そもそもこれらアイテムはGGOの物であり、役に立つとは限らない。いや、使えるわけがない。
攻略法などないのだ!
『邪神』菘の殺気は高まり『|ラスボスレッドゲージモード《ラスボスレッドゲージモード》』へと突入する。強烈な一撃がやってくる!!
装備アイテムを抱え身体を固くする黒聖者に、ラスボスの拳が触れる。
『コツン』
頭を小突かれた。拍子抜けして顔を上げる黒聖者に菘が困ったように笑う。
「悪でも強者でもない者を妾がボコるわけなかろう?」
だが、覚悟すると良いぞ。もしも妾のキマヒュをおぬしの力で危機にさらした時は、今度こそ本気で殴るぞ?
脅しでもなんでもない、明らかな警告であった。
「家族、友達、ペット、黒教信者の同胞たち」
青い髪をなびかせ、一歩一歩、黒聖者に近づく女性がいた。
「思い出の街に、思い出の品」
黒聖者の前に立ったのは、冒頭でアイテム壁を動かし道を作ったエリー。一連の騒動を眺めていたが、頃合いであろうと黒聖者に向かい合った。
「故郷に残してきた物は、いくらでもあるでしょうに。まさか、そうした心残りを、全て諦めると仰るのでしょうか」
無表情で淡々と話すエリー。しかしそこには薄っすらと呆れが混ざっているようにも見え。
「た、たしかに、あちらに残してきたものはあります。それでもこのコンコンコンがあれば彼らを呼び出すことだって」
コンコンコンと壁を叩く。出てきたのは想い出が詰まったアルバムデータである。さらにコンコンコンと叩けば家族の姿をしたフィギュアが。抱き枕が。ボイスレコーダーが。
「生き物は出せないんですよ、教祖様」
申し訳なさそうにキマヒュ住民がなだめる。そうでした、ね、と壁に手をつきガクリと膝をつく。
ここはGGOではない。ログアウトすれば日常に帰れる。そんな当たり前がここでは出来ないのだ。
なんとなくゲーム世界の延長だと思っていたことに彼女はやっと気づいたようだった。
「欲望を尊ぶ黒教の教祖が、欲しいものを諦めると。なんと情けない教祖でしょう」
黒聖者の変化に気づきながらもエリーは敢えて、彼女をさらに煽るように顔を覗き込み。
「仮にも教祖を名乗るなら、もっと傲慢で欲深くあって頂きたいものです」
例えばーー。
世界を繋げて行き来可能にするとか。
GGOにコンコンコンを輸出するとか。
武蔵さんをテイムしてペットにして持ち帰るとか。
「それはさすがに……アリかも?」
武蔵をペットにする姿を想像して、少し顔を赤らめる黒聖者。
「もっと壮大な欲望を見せて頂かないと」
一瞬フッと小さく笑うエリーがいた。
「ーーふむ、どうやら落ち着いたようだな」
座禅を組んで騒動を見守っていた宮本武蔵は、さてと立ち上がった。
とうに日は沈み、見下ろすサイバーポップな街並みはハロウィンのネオンサインが輝く夜の景色に変わっていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 日常
『真夜中を遊ぶ』
|
POW : 派手に楽しむ
SPD : 効率的に楽しむ
WIZ : のんびり楽しむ
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ハッピー☆ハロウィンミッドナイト
普段から騒々しく陽気なキマイラフューチャーの街ではあるが、今夜はいつもとはまた違った趣きの賑やかさを見せている。
真夜中とは思えないほどに、大通りには多くの住民たちが繰り出しており、おのおの思い思いの仮装姿で練り歩き、配信したりしている。
街中のいたるところにはハロウィンモチーフのネオンサインが輝き、ぽっかりと現れた暗闇には墓場を思わせる休憩スペースが用意されていた。
実際のところハロウィン当日には少々早い。それでも、道沿いには露店が並び、ある者は深夜に店を開いて食べ物や飲み物を用意し、またある者はムーディでメロウな音楽を鳴らし、踊りやパフォーマンスを披露している。
どれもハロウィンミッドナイトに相応しく、騒ぎすぎず、真夜中のハロウィンを楽しくゆったりと過ごせるように配慮されていた。
「皆、我らのために用意してくれたのだな」
護衛を兼ねて、黒教の教祖と共に深夜のキマヒュの街中を歩く宮本武蔵。
黒教の教祖は街中の所々をコンコンコンでシステムへ干渉して回る必要がある。
そしてシステムが完全起動したら、帰還プログラムを組み、二人は元の世界に帰るのだ。
「正直、今も帰りたくない気持ちはあります。ここで皆さんの願いを叶え、黒教の教えを広めたいと思っています」
黒聖者は少しだけ膨れつつ、壁をコンコンコンしていく。
「「しかしここは彼らの世界」」
二人の言葉が重なった。
だからこそ住民たちは、キマイラフューチャー世界を救ってくれた功労者にせめて楽しい想い出をと、フェスティバルを前倒ししてくれたのだ。
その気持ちが嬉しいから。街を歩きながらせめてこの時間を楽しもう、そう考えるのである。
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。
ハロウィンミッドナイトね。ハロウィンといえばコスプレ。サキュバsゲフンゲフン小悪魔リトルレディのコスプレ衣装と簡易更衣室をコンコンコンして教祖様と|着替えさせ愛《欲望解放》したいわね❤
え、時間かかりすぎ?女の子のおめかしには時間がかかるのよ?コンコンコンで衣装とかメイクとかとっかえひっかえしたりね、けっして|コンコンコン(意味深)《魂の契約》してたわけじゃないのよ?(まぁ、普通に断られる可能性もあるけれど)
着替え終わったらトリックオアトリートして回りましょ♪
あらあら小悪魔リトルレディなトリックを期待する子もいるみたいね、どうしようかしら?(くすくす
オニキス・ヴァレンタイン
ハロウィンといえば仮装!
少し早いですが、僕もサロメの衣装(肌が見えない様にベールを重ねた踊り子の服)で教主様のお供を致しましょう。
へっ? 何故サロメですって? 白い聖者の首が欲しいからですよ。
教祖様は何の仮装をなさるのですか? 教祖様は何を着てもお美しいです。
屋台でキマヒュらしい近未来な光るドリンクを飲んだり光るサングラスをしながらお祭りを楽しみます。
もちろん、仮装したキマヒュの子供たちに出会ったらチョコレートや飴等のお菓子を配りましょう。
お菓子を愛する欲望は大変正しいですし、教祖様や黒教聖典(アイテム)にイタズラされては困りますからね!
アレンジ・アドリブ歓迎
過激派黒聖者・教祖様全肯定bot
エリー・マイヤー
どうやら、わかってくれたようで何よりです。
楽しみですね。
教祖さんに手綱を握られ、四つん這いでのし歩くイケメンテニス犬。
冗談はさておき、ハロウィンですか。
トリックオア、なんて年頃でもないですが…
郷に入りてはなんとやらですね。
白い布を被り、念動力でふわふわと浮遊。
古典的な幽霊スタイルで、食べ歩きといきましょう。
……歩いてないから食べ浮きですかね?
まぁ、なんでもいいです。
この世界なら、食べるのが苦痛な物は出てこないでしょう。
帰る前に、できるだけ食いだめしておきたいところです。
ついでに保存食も持ち帰れたらいいのですが…
あ、教祖さんも歩き疲れたらいつでも言ってくださいね。
浮かべて運びますよ。
御形・菘
お主には皆との交流を楽しんでもらいたいものだ
個人的な事情は知らんが、GGOで教祖なんてスゴい役職やっとるのだからコミュニケーション好きであろう?
あえて比較対象のことは言及せんが、キマフュの者たちの総合的な良い人度は相当高いからのう
コンコンコンで物欲は満たすのもよいが、皆とフェスティバルを楽しんでくれ!
それはそれとして、お主にはコンコンコンも楽しんでもらいたいぞ
本来のコンコンコンは同じ場所では同じ物しか出てこんからな
狙わずに無心で試してレア度が高いのを出せるかのう?
はっはっは、妾と対戦してみるか? 制限時間内にイイ物を出した方が勝ちとかな
なんなら観衆にジャッジしてもらい皆で楽しもうではないか!
●汝、ハロウィンを満喫せよ
カボチャやコウモリ、お化けモチーフなネオンサインが彩る真夜中のキマイラフューチャー。
皆が作り上げた愉快で心地よいハロウィンの街をコンコンコンして回る黒教の教祖と護衛役の宮本武蔵。
「真夜中とは思えぬ賑わい、これもまた風流なり」
宮本武蔵はキマヒュ住民からサインを求められらば快く応じ、配信やパフォーマンスにもファンサを送る。武の達人とはいえ有名人はやはり違う。
「ハッピー❤ハロウィンミッドナイト」
教祖に声をかけたのはアリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の|混沌魔術師《ケイオト》艶魔少女・f05202)。
「ハロウィンといえばコスプレよね」
ウィンクして微笑みかける魅惑の小悪魔少女。
「その通り、ハロウィンといえば仮装!」
NPCの過激派黒聖者であり、もはや教祖様全肯定botなオニキス・ヴァレンタイン(八月のヴァレンタイン・f41830)も気合の入った仮装で教祖様を出迎えた。
「ええ、少し早いですが僕もサロメの衣装で教祖様のお供をしましょう」
オニキスの仮装は『サロメ』の登場人物である王女サロメになぞらえ、肌が見えない様にベールを重ねた踊り子の姿になっていた。ベールをひらめかせくるりと舞ってみせる。
「何故サロメですって? 白い聖者の首が欲しいからですよ」
あのヨカナーンの首の如く。相変わらずブレない黒教信者である。彼はこういうキャラなのだと教祖もわかってきた。
「とても似合っていますよ」
「お褒めにあずかり光栄にございます。して教祖様は何の仮装をなさるのですか?」
たしかにハロウィンであるなら何か仮装をすべきである。そこの宮本武蔵は置いておいて。
「迷っているなら、わたしにまかせて欲しいな❤」
アリスは教祖にコンコンコンでコスプレ衣装と簡易更衣室を出してもらうと、ささっと教祖を連れて更衣室の中へ。
「サキュバsゲフンゲフン、小悪魔リトルレディなんてどうかしら。ミッドナイトだもの、少し大胆にいきましょう❤」
ねえ、教祖様。|着替えさせ愛《欲望解放》しましょ?
「え、時間かかりすぎ?女の子のおめかしには時間がかかるのよ? けっして|コンコンコン(意味深)《魂の契約》してたわけじゃないのよ?」
これも似合うわねこちらはどうかしら? コンコンコンで衣装を出しては試着を繰り返し。あれやこれやと着飾ってメイクも施して完成!
ジャッとカーテンを開けアリスが教祖を更衣室から連れ出す。
黒聖者の衣装は、赤と黒を基調した少々露出高めのゴスロリ小悪魔。蠱惑的でいてなかなかに可愛いデザインである。
「教祖様は何を着てもお美しいです」
涙を流し感動に震えるオニキス。教祖様もまんざらではない様子。可愛いは正義なのだ。
「さあ、着替え終わったらトリックオアトリートして回りましょ♪」
黒教の教祖のコスプレ姿に、否応なく沸き立つキマヒュ住民たち。
「(あらあら小悪魔リトルレディなトリックを期待する子もいるみたいね、どうしようかしら?)」
一部住民をチラリと見てくすくすと笑うアリス。
さあ、ハッピーな街へと繰り出そう。
過激派黒聖者オニキスは、さっそく屋台でキマヒュらしい近未来な光るドリンクを飲んだり、光るサングラスをしながらお祭りを満喫しているようであった。欲望に従え。黒教の教えを体現している。
仮装したキマヒュの子供たちに出会ったら、チョコレートや飴等のお菓子を配っている。
その姿は黒教であってもやはり聖者ーー。
「お菓子を愛する欲望は大変正しいですし、教祖様や黒教聖典(アイテム)にイタズラされては困りますからね!」
微妙に違った。
「トリック・オア・トリート♪ お菓子はない? ならば悪戯よ❤ それともあなたがお菓子になってみる?」
くすくすと、アリスもアリスでユーベルコード『|アリスのトリック・オア・トリート《アリスズトリック》』でハロウィンを楽しんでいる。
街を歩きながらコンコンコンしていると、見知った顔にも出会う。
訂正。白い布を被り、念動力でふわふわと浮遊する古典的な幽霊スタイルであったため、初めは誰だかわからなかった。
食べ歩きをしている姿でエリー・マイヤー(被造物・f29376)であることに気づいた。
「……歩いてないから食べ浮きですかね? まぁ、なんでもいいです」
相変わらず淡々とした口調ではあるが、郷に入りてはなんとやら。トリックオア、なんて年頃でもないですが、とふわふわ浮きながら屋台やコンコンコンの食べ物を食べて歩……浮いている。
「この世界なら、食べるのが苦痛な物は出てこないでしょう。帰る前に、できるだけ食いだめしておきたいところです」
ついでに保存食も持ち帰れたらいいのですが……と呟いたところ。
「保存食ですか。それでしたら」
黒聖者はコンコンコンと壁を叩き、様々な保存食を出してエリーに渡す。
「ええと、お礼のようなものです。システムが出した品物ではありますが」
あなたの一言で最後の決心がつきましたので。
「わかってくれたようで何よりです」
保存食を白い布の中に仕舞いながらエリーは無表情で頷く。
そして教祖の耳元で囁いた。
「楽しみですね。教祖さんに手綱を握られ、四つん這いでのし歩くイケメンテニス犬」
教祖の顔がボッと赤くなる。
「そそそそ、それは、た、楽しみではありますが! 背徳的倒錯的で実に美味し……はっ!」
想像してしまったようで、あわあわと墓穴を掘っている。
「あ、教祖さんも歩き疲れたらいつでも言ってくださいね。浮かべて運びますよ」
「は、はい、ありがとうございます……っ」
悶える教祖を横にふよふよ浮きながら食いだめを続けるエリーであった。
「お主、黒聖者の服も良いがその格好も似合うではないか」
キマヒュの国民的配信者である御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)も街へと繰り出していた。
実際のところ教祖を心配して来てくれたのかもしれない。面倒見のよい邪神なのである。
うむうむとコスプレ姿をひと通り眺めると、賑やかな街を見渡して言う。
「個人的な事情は知らんが、GGOで教祖なんてスゴい役職やっとるのだからコミュニケーション好きであろう?」
コミュニケーション好きかと問われれば、少なくとも嫌いではない。悩める人々の声を聞き、黒教の教えを説きそして導く。
欲望を抱かずにいられない人間の本質を彼女は尊いと感じそして愛している。
「あえて比較対象のことは言及せんが、キマフュの者たちの総合的な良い人度は相当高いからのう。お主には皆との交流を楽しんでもらいたいものだ」
菘は胸を張ってキマヒュの代表として彼女と向かい合う。
コンコンコンで物欲は満たすのもよいが、皆とフェスティバルを楽しんでくれ!
「もちろんそのつもりです」
菘のキマヒュを想う気持ちに笑顔で返す。
「それはそれとして、お主にはコンコンコンも楽しんでもらいたいぞ」
はへ?
「本来のコンコンコンは同じ場所では同じ物しか出てこんからな」
菘が壁を叩いて出てきたのは塩むすび。ほらな、と渡して見せる。そう聞いています、と塩むすびを頬張る教祖。
「さて、狙わずに無心で試してレア度が高いのを出せるかのう?」
「狙わずに、ですか」
自分に出来るだろうか? 願った物が欲しい物がそのまま欲しいだけ出てきてしまう。
「はっはっは、どうだ妾と対戦してみるか? 制限時間内にイイ物を出した方が勝ちとかな。なんなら観衆にジャッジしてもらい皆で楽しもうではないか!」
ゲーマー魂がふつふつと湧いてくる。
「いいでしょう。その勝負のりましょう!」
黒教の教祖も楽しげな表情を浮かべる。
かくしてハロウィンミッドナイトパーティーにおいて、急遽『コンコンコンでレア物だせるかな』大会が開催されるに至った。
菘と教祖だけでなく、飛び入り参加もOK!
大会の様子はキマヒュ全土に生中継される。制限時間は日の出まで! よーい、スタート!!
参戦者たちは、街のあらゆるところをコンコンコンしていく。キマヒュ住民であればある程度はどこでなにが出るかは知っている。だが、コンコンコンで干渉し続けたシステムはいつもとちょっと様子が違うようだ。
「あれー? レアカードが出るはずなんだけどな」
「激辛ト・ウ・ガ・ラ・シ! 辛ッ辛ッ」
まさに宝探し。運試しだと参戦者は増える一方。
アリスやオニキスも楽しげにコンコンコンしている。あの宮本武蔵もコツンとしては謎アイテムを入手していた。
黒聖者はというと、適当な場所をコンコンコンして出てきたのは、リード付き首輪。
「い、今だけは心を無にしなくては……!」
白い布を被った幽霊が小刻みに震えている。
空が白んできたところでゲームは終了。
優勝は、何に使うのかどんな効果があるのかもわからない謎アイテムを出した宮本武蔵に贈られた。
最後はハロウィンから多少ズレてしまったが、誰もが共に笑い楽しく愉快に過ごしたキマイラフューチャーのハロウィンミッドナイトとなったのだった。
ーーシステム・フラワーズは完全開放しました!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『宮本・武蔵』
|
POW : 二天一流「燕返し殺し」
【ふたつのラケットの間に生じる超魔力球】が命中した敵をレベル×10m吹き飛ばす。
SPD : 二天一流「ホーミングファントム」
【二振りのテニスラケット】から発射した【無数のテニスボール】を、レベル回まで跳弾できる。跳弾回数に比例して命中率・致死率が向上。
WIZ : 二天一流「五輪の極み」
【刺青型ユーベルコード「五輪書」】に封じた【地水火空風の5属性の都市破壊級魔術】と合体し、あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になる。ただし解除時にダメージを全て受ける。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●さあ、テニスの時間だ
街中は相変わらずハロウィンモチーフに溢れている。祭りの賑わいはそのままに。いや、それ以上の熱気がいまキマヒュを覆っていた。
天気は快晴。太陽は頭上から少し傾いている。ミッドナイトフェスティバルから十分なインターバルをおいて、つまり睡眠タイムを設けた上で『それ』は開催されることとなった。
場所はキマイラフューチャー、レクリエーションエリア・スポーツ公園のテニスコート……の予定であったが、行われるのは通常のテニスの試合ではない。
完全に稼働したシステム・フラワーズの野放図ともいえる無茶苦茶な能力を利用し、テニス・フォーミュラ『宮本・武蔵』が正しくコードを編むことにより帰還プログラムを組み上げる。ーー大魔術詠唱儀式『テニス』が行われるのである。
半端な場所では周囲も巻き込まれかねない。
よって急遽、全方向バリアを張った『フラワーズ・スタジアム』が空中に用意された。もちろんコンコンコンで。
無観客試合でありそこは少々残念であるが、キマヒュといえば『配信』。大量のドローンと命知らずの配信者によって試合の様子はキマヒュ全土に生中継される。
黒教の教祖はというと、巨大モニター前に用意されたパブリックビューイングで、コスプレ衣装のままポップコーンを手に、近くをコンコンコンしてはシステム・フラワーズを稼働させながら、見事な|スポーツ観戦《他人事》の構えであった。
「テニスのルールはよく知らないのですが……え、知らなくても問題ないのですか? テニスであってテニスではない? はあ」
首を傾げながらポップコーンをポリポリと食べる。ハニーキャラメル味でとても美味。
そして宮本武蔵はテニスコート横のベンチに座り、二本のラケットの張り具合とグリップの感覚を確認していた。『五輪書』が刻まれた刺青も万全の様相である。
武蔵は立ち上がり、コートへと歩み出す。
「此度の試合、帰還プログラムのためではあるが、スポーツマンとして正々堂々と全力で戦うことを誓おう。とはいえ効率化も必要であると考える」
アドバンテージサイドに立ち、二本のラケットを手に宣言した。
「我はシングルであるが、猟兵側は複数人同時でもお相手いたそう。コートはダブルスとする」
サイドラインはダブルス仕様で。とはいえ余りに大人数だとコート内に入れなそうだが。
「もちろん、シングル対決も大いに歓迎する」
ーーいざ、尋常に勝負!
エリー・マイヤー
こうして武蔵さんとテニスをするのは、何度目でしたか。
オブリビオン相手なら、勝てば滅ぼすのが常ですが…
平和に済むなら、それが一番ですね。
他の世界のご歴々にも見習ってほしいところです。
さて、ボヤいてないでテニステニス。
【念動アーツ】により体とラケットを強化。
超音速の飛翔でボールを逃さず捕え、純粋な腕力でもって叩き返します。
燕返し殺しは念動力で威力を相殺。
例え私自身が吹き飛ばされたとしても、ボールだけは返します。
私は最悪飛んで戻れますし。
そう、ボールが増えたり時空が歪んだりはしません。
とてもオーソドックスなテニスです。
|観客《教祖さん》はテニス初心者みたいですからね。
分かりやすい方がいいでしょう。
●オーソドックスにいきましょう
「こうして武蔵さんとテニスをするのは、何度目でしたか」
ドローンが上空を飛ぶ、特設テニスコートに立った一人目はエリー・マイヤー(被造物・f29376)だ。宮本武蔵とは幾度と刀……いやラケットを交えた『テニス』経験者である。
『ーーお主との対決もこれで幾度目か、エリー・マイヤー。お主の球筋、その膂力、強烈なスマッシュ。この身体がふたつのラケットが覚えているとも』
武蔵もかつての試合を思い、笑みを浮かべる。
「オブリビオン相手なら、勝てば滅ぼすのが常ですが……平和に済むなら、それが一番ですね。他の世界のご歴々にも見習ってほしいところです」
『全ての道はテニスに通ず。お主もわかってきたようだな』
相変わらずですね。エリーは心の中で呟く。
「さて、ボヤいてないでテニステニス」
『では始めようか』
互いにコートの位置につき|試合開始《プレーボール》となった。
エリーはラケットを握り直し、ユーベルコード『|念動アーツ《サイ・アーツ》』で身体とラケットを強化する。
デュースサイドであるエリーがサーブを放つ。圧倒的な念動力を纏ったラケットから撃ち出される高速ボールは真っ直ぐにコートを捉え、武蔵を襲う。
威力こそは超テニス球であるが、テニスのルールに則った軌道。
「そう、ボールが増えたり時空が歪んだりはしません。とてもオーソドックスなテニスです。|観客《教祖さん》はテニス初心者みたいですからね。分かりやすい方がいいでしょう」
観戦している黒教の教祖がテニスのルールを知らないことを考慮して『本来のテニス』をと、エリーのはからいである。
『承知した』
武蔵もエリーの考えを汲んで、ルールを踏襲したテニスで応える。
エリーの念動力により超絶強化された重いサーブを二刀流ラケットで受け止め、大魔術を練り込んだ
レシーブで返す。
ボールの軌跡は魔術式と化し宙へと放たれる。
ふたつのラケットの間に生じる超魔力球がエリーのコートを襲う。【二天一流「燕返し殺し」】である。
そのまま受けては吹き飛ばされる。エリーは念動力で威力を相殺し打ち返す。
魔術による強烈なスマッシュを繰り出す武蔵。
それをエリーは超音速の飛翔でコートを駆け抜けボールを逃さず、そして純粋な腕力でもって叩き返す。
武蔵とエリーのオーソドックスでありながら、超級の速度と威力で繰り広げられるテニス。
二人のラリーが続けば、テニスコートの上空に浮かぶ魔術式は魔法陣の形へと変化していく。
ーーゲームセット!
どちらの打球であったか。ラケットに捉えられずコートを抜けてバリアに突き刺さった。試合終了を告げる声がどこからか聞こえる。
『善き試合であった。本来に立ち戻り全力で戦う試合もまたテニスである』
武蔵は満足そうに汗を拭い、上空の魔術式を指し示した。
『テニスにより組み換えられたシステム・フラワーズのプログラムを世界が読み取れるよう編み上げた、いわばコンパイラ魔法陣である』
つまり、これから帰還プログラムが本格的に組まれる、らしい。
「そうですか、お疲れ様でした」
エリーはそっけなく返すと次の選手にバトンタッチするのであった。
大成功
🔵🔵🔵
御形・菘
はーっはっはっは! 実に素晴らしい!
これだけの観客を集める企画を行うのは中々の労力だと分かるぞ、スタッフの皆には感謝しかない!
そして、だからこそ! 妾は最高の試合を繰り広げ、皆を熱狂させようではないか!
妾も両手にラケットを持ち、シングル戦を申し込もう
精度の右、パワーの左で、真っ向勝負だ!
はっはっは、そして我が身を機械へと変え、高速戦闘モードだ!
妾は決してテニスが得意な方ではないが、ボールを相手コートに打ち返せばラリーは続く!
元より力は十分、そして球に追いつく速度は得た!
都市破壊すらできる魔術だって避け切って、徹底的にボールを拾い続けてやろう
そして! 観客たちを感動の渦に巻き込んでくれよう!
●キマヒュの邪神さま!
「はーっはっはっは! 実に素晴らしい! これだけの観客を集める企画を行うのは中々の労力だと分かるぞ、スタッフの皆には感謝しかない!」
モニタービューイングに御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)が映し出される。大人気の邪神配信者がスタッフへ労いの言葉をかけるとキマヒュ住民たちが応えるように沸いた。
「そして、だからこそ! 妾は最高の試合を繰り広げ、皆を熱狂させようではないか!」
テニスコートの上で両手にラケットを持った菘は、ネットを挟み試合相手である武蔵に向かい立つ。
「妾もシングル戦を申し込むぞ、宮本・武蔵」
『お主も二刀流テニスか。うむ、楽しみだ』
菘の二刀流は、精度の右、パワーの左。
「では、真っ向勝負といこうぞ!」
かくして二刀流テニス対決が始まった!
「妾は決してテニスが得意な方ではないが、ボールを相手コートに打ち返せばラリーは続く!」
ならば! ユーベルコード『|機械仕掛けの花の神|《デウス・エクス・ワラワ》』でその身を機械へと変え、高速戦闘モードと化す。
「元より力は十分、そして球に追いつく速度は得た!」
『その闘志や良し! 我も全ての力をもってこれに臨むのみ!』
菘のコートに武蔵の打球が炸裂する。【二天一流「五輪の極み」】、都市破壊級魔術と合体した武蔵が放つ究極テニス球である。こんな技をモロにくらうわけにはいかない。
メカ装甲形態となった大蛇の下半身は超魔球が纏う魔力を花弁に変え、それらが舞う中でパワーの左腕がラケットを振るう。
花弁を散らし美しく力強い邪神の姿に観客の声援も大きくなる。それは菘にさらなる力を与える。
武蔵が力を力で打ち返せば、花弁で相殺させながら今度は精度の左腕でラインギリギリを攻める。
コートを駆け武蔵はこれをレシーブする。
「さすがはテニスを極めし武士! だが妾も負けてはいないぞ!」
菘もまた高速球に食らいつく。武蔵の高速の打球を徹底的に拾い続ける。
舞い散る花弁と飛び交うテニスボール。
二刀流テニスプレイヤーによるラリーは続いた。
観客たちは、白熱した試合に息を呑み、長いラリーのすえに点が入ればおおいに熱狂し、さらなる声援を惜しまなかった。
二人のラリーによって膨大なエネルギーの渦は規則正しく魔術式に置き換わり、システム・フラワーズのプログラム言語へと変換されていく。
魔法陣は回転しながら重なりあい、美しい紋様へと変化しつつある。
ーーゲームセット!
コート上のふたりはネットを挟み立ち、熱い握手を交わすのだった。
大成功
🔵🔵🔵
オニキス・ヴァレンタイン
怪我をしないように屈伸や回施運動で筋や関節をほぐします。準備運動はしっかりとしないとですね!
もちろん、宮本武蔵というお方が教祖様に無礼を働いた事実、忘れてはおりませんよ、ええ。ええ。
相手のボールをよく見てグラウンドクラッシャーを応用した重い一撃を打ち返します。
(技能:視力、カウンター、矢弾の雨)
教祖様の御前、負ける訳には参りません!
超魔力球に吹き飛ばされぬ様、オーラ防御し、根性でボールを武器受けします。
嗚呼、教祖様がポップコーンを美味しそうにお召し上がりにッ!喉に詰まらせないようにお飲み物も飲んで頂きたく!
テニス配信、再放送はありますか!?
教祖様のお姿を録画し手元に残して置きたいのです!
●オニキスは負けません!
「盛り上がっておりますねえ」
コート脇で念入りに準備運動をしているのはオニキス・ヴァレンタイン(八月のヴァレンタイン・f41830)。黒教の教祖さまを敬愛してやまないNPCキャラである。
怪我をしないように屈伸や回施運動で筋や関節をほぐしている。
なにせ相手はテニス・フォーミュラ『宮本・武蔵』である。
「もちろん、宮本武蔵というお方が教祖様に無礼を働いた事実、忘れてはおりませんよ、ええ。ええ」
黒教の教祖に対しては相当の過激派であるオニキス。ちなみに彼の言う無礼とは、暴走した教祖がコンコンコンで出しまくったアイテムを魔術で消したこと。あの時、武蔵がアイテムをなんとかしなければキマヒュの街は大変なことになっていたのだが。
コートに立ち武蔵を睨みつけるように見据える。
あの黒聖者か。武蔵も彼の刺すような視線には覚えがありなるほどと頷いた。
『その鋭い眼差し、相対するには悪くない。思う存分戦うとしようぞ』
なにを言うかと思えば。不遜の輩が。
「教祖様の御前、負ける訳には参りません!」
かくして因縁の(?)試合が始まった。
どのような相手であっても手加減はしない。それがスポーツマンシップである。
武蔵の超魔球【二天一流「燕返し殺し」】がふたつのラケットから打ち出される。無策で命中すればスタジアムの外まで吹き飛ばされかねない。
超魔球に対抗するには。
オニキスは視力を活かし、よく見ながらボールをラケットの中央に受ける。高威力の技はボールを捉えながらもそのまま後方へと引きずられる。
オニキスは踏ん張りながら、同時にオーラ防御で全身を守り、根性でボールを武器受けすることで、吹き飛ばされるのを防ぎきった!
そしてユーベルコード『|グラウンドクラッシャー《アトカタモナク》』を使用する。
カウンターで武蔵の重い一撃を、矢弾の雨として打ち返した。
技能を駆使した渾身のレシーブである。
グランドクラッシャーをのせたオニキスの矢弾の魔球は武蔵を唸らせた。鋭い矢が地形を破壊する威力を伴って雨のように降り注ぐのである。
武蔵は高速で分身しつつ打ち返す他なかった。返球はひとつに重なりやはり超魔球と化す。
パワーとパワーのぶつかり合いとなった。
コートは軋みスタジアムは衝撃で振動する。無観客試合で本当に良かった。
「教祖さまがこの場にいらっしゃらなくて何よりでございます」
教祖の身を案じるオニキスの視界内にチラリと、ビューイング前の観客を映したスタジアムモニターが入り込んだ。
オニキスの顔がギュインと振り向き、目はモニターに釘付けとなる。
そう、ポップコーンを頬張る教祖が映ってしまったのである!
「嗚呼、教祖様がポップコーンを美味しそうにお召し上がりにッ! 喉に詰まらせないようにお飲み物も飲んで頂きたく!」
こうなるともはや試合どころではなくなってしまう。武蔵もここまでとして、試合終了となった。
「テニス配信、再放送はありますか!?」
中継用のカメラを捕まえガシガシと振る。その様子はもちろん生中継でキマヒュ全土に配信されている。観戦していた教祖はポップコーンをポロリと手から落とし『何をやっているのですか!?』と中継モニター越しに困惑顔である。
「教祖様のお姿を録画し手元に残して置きたいのです!」
オニキスの訴えがスタジアムにこだまする。
ーー帰還プログラム完成まで、あともう少し。
大成功
🔵🔵🔵
オニキス・ヴァレンタイン
※青丸がもう少し必要のようでしたのでプレイングを投げましたが、他の方がいらっしゃるようでしたらお気軽に流してください。
教祖様に恥をかかせてしまうとは……! 切腹してお詫び申し上げます!
その前に、教祖様をGGO世界にお返しすべく、テニスを終わらせなければなりませんね!
皆様、お見苦しい様子をお見せして申し訳ありませんでした。死合を続けましょう!
来たボールはオーラ防御で防ぎカウンターで打ち返します!
SPD【千里眼射ち】を応用して、ボールを矢に見立てて打とうと思います。(技能:心眼、視力、矢弾の雨)
僕、視力には自信がありまして。
貴方の欲望も見て差し上げましょうか、宮本武蔵さん?
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。
妖刀『薄墨爛漫桜』をラケットに武器変形。
|体感時間を引き伸ばすほどの集中力で自身の才能を最大限に引き出すゾーンに入る。《瞬間思考力、戦闘演算、集中力、パフォーマンス、高性能を駆使する、心眼、降霊》
|多重次元屈折現象《多重詠唱結界術》で無数のテニスボールを残らず打ち返すわ。|イレギュラーバウンド《化術》を誘発する回転をくわえてね。
しかし、あれね、これテニスっていうかテニヌよね。せっかくだしあの漫画の|再現技《物真似》もしてみようかしらね?薄墨爛漫桜に|設定《欲望解放》すれば大体のことはできるしね。
●アリスの絢爛テニヌ!
先程まで試合が行われていたコートにボールを突く音が響いた。
スナップのきいた手首で跳ねたボールを巧みに突いてはキャッチを何度か繰り返す。
アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の|混沌魔術師《ケイオト》艶魔少女・f05202)である。
淡いピンクのフリルをあしらった可愛らしいスコートを纏った彼女はその手を止めた。
柔らかく艷やかな唇が紡ぐ詠唱。
「ーー刀型東方妖怪、妖刀『薄墨爛漫桜』。無数の結界刃で形成された刃は変幻自在、そして薄墨色の刃片が舞う姿は桜吹雪の如し」
少女の周囲を薄墨色の刃片が舞いながらテニスラケットの形へと姿を変えていく。
ユーベルコード『|妖刀『薄墨爛漫桜』《ウスズミランマンザクラ》』と武器変形の合わせ技で妖刀をラケットへと変化させたのである。
「さあ、宮本・武蔵さん、テニスしましょ」
『よかろう、次の相手はお主か』
武蔵は頷くと、ふたつのラケットを構えアリスに向かい合う。
アリスは集中力を高め己を覚醒させた。周りにとってはほんの僅かな時間であったが、彼女は「体感時間を引き伸ばすほどの集中力で自身の才能を最大限に引き出すゾーンに入った」のだ。
相対する武蔵だけは、その行為の真の意味を正しく読み取っていた。
『(瞬間思考力、戦闘演算、集中力、パフォーマンス、高性能を駆使する、心眼、降霊ーーなるほど、これほどの能力を持つ者か)』
アリスは軽やかにトスを上げた。細腕は鋭く振り抜かれ、妖刀ラケットから放たれるサーブは剣豪の太刀筋が如き軌道を描きながらワンバウンドで武蔵へ迫る。
『我が目指すは究極至天のテニスなりて!』
ふたつのラケットは一瞬にして倍々と化し千手観音もかくやと思いきや、それは武蔵の神速が魅せた残像であった。【二天一流「ホーミングファントム」】!
アリスのサーブを捉えた二振りのラケットから無数のテニスボールが打ち出される。平行世界のあらゆる可能性を同時に存在させる。大魔術師『宮本・武蔵』が修行の末に編み出した技のひとつである。
そしてアリスもまた混沌を操る魔術師であった。
無数に放たれたボールを|多重次元屈折現象《多重詠唱結界術》で余すことなく打ち返す。
ラリーが続けば続くほどにボールが増えていく。そこへアリスは|イレギュラーバウンド《化術》を誘発する回転をも加えていた。
コートを埋め尽くすほどに増えたボール、しかも不規則なバウンドが混ざっている。さすがの武蔵も取りこぼしが出てきてしまう。対するアリスもボールが増えすぎて、全てを打ち返すことは難しくなっていた。というより面倒になってきた。
「しかし、あれね、これテニスっていうかテニヌよね。せっかくだしあの漫画の|再現技《物真似》もしてみようかしらね? 薄墨爛漫桜に|設定《欲望解放》すれば大体のことはできるしね」
な、何をする気だ!?
「ーー舞い上がれ薄墨爛漫桜。汝よ混沌の渦となり武蔵の打球をすべてアウトにせよ」
アリスの周囲に発生した薄墨桜色の渦に、武蔵のラケットから打ち出された無数のボールは悉く吸い上げられ、そしてラインの外へと落ちていった。
「これもなんとかファントムだったかしら?」
とんでもない数になっていたボールが音もなく消えていく。観客は思わず安堵した。なぜなら、無数のボールによって試合がまったく観えないだけでなく、コートやスタジアム、バリアにまでボールが大量にめり込んでいたからだ。
「スタジアムが落ちるのでは?」
だが、その心配はなくなった。平穏は守られた。たぶん。
●帰ってきた男
スタジアム上空の魔法陣は幾重にも回転しながら光り輝き、その中央には幾何学紋様が刻まれたスフィア『帰還プログラム』が浮かんでいる。
『このままでも充分に機能するだろう。万全を期すならばごく僅かな綻び、バグを取り除き完璧な紋様に整える術も施したくはあるが……』
ふたつのラケットをひょいひょいと動かしながら、空中のプログラムの出来栄えを確認している宮本・武蔵。
「完成とは言い難い、そう言うことですか?」
背後から話しかける者がいた。試合はすべて終わりコートには武蔵しかいないはずであったが。
振り返るとそこにはあの男が立っていた。
『お主は、オニキス・ヴァレンタイン』
「まだ終わっておりませんでしょう」
コートに佇む黒き聖者オニキスのおでこには『懺悔シール』が貼られていた。
試合途中でモニターに映る黒教の教祖に向かって中継カメラを振り回したあと、モニタービューイング席にいる黒教の教祖の元へと飲み物を手に馳せ参じたオニキス。もちろん教祖さまはご立腹であった。とても恥ずかしかったと。しこたまお叱りを受けた。
「教祖様に恥をかかせてしまうとは……! なんという失態! 切腹してお詫び申し上げます!」
くうぅ、とハンカチを噛み締め涙するオニキス。
黒教の教祖は大きな溜息をついて、オニキスのおでこにペタンとシールを貼った。
『切腹はやめてください。私が嫌です。欲望に忠実であることは好ましいですが、今はあなたの成すべきことを成してください。まあプログラムが完成しなくても私は構いませんが!』
ふんすとそっぽを向く教祖。しょげるオニキスをチラリと見やり、ぽそりと呟いた。
『テニスをしているあなたは格好良かったですよ』
言い終わるとすたすた席に戻り、オニキスが差し入れたハロウィン仕様のドリンク「こうもりベリージュース」をずずーっと飲んだ。
『何を突っ立っているのです。はやく試合に戻りなさい』
ーーそうでした。教祖様をGGO世界にお返しすべく、テニスを終わらせなければなりませんね!
『たしかに! 試合はまだ終わっていなかったな』
そうであったと武蔵はフッと笑った。
オニキスはひとつ咳払いのあと、ドローンや中継カメラに向かって宣言する。
「皆様、お見苦しい様子をお見せして申し訳ありませんでした。死合を続けましょう!」
死合。
『(先程の対戦時とはまた違う殺気にも似たこれは……)』
武蔵はオニキスの気合を感じながらサーブを打つ。オニキスは常に目を閉じている。そういうNPCキャラであると聞いている。しかし。
ーー視られているーー。
オニキスはオーラ防御で武蔵のサーブの威力を削ぎ、カウンターで打ち返す。
二刀流バッグハンドでこれを返そうとした武蔵は、しかし瞬時に【二天一流「ホーミングファントム」】に切り替え無数のボールへと変化させた。
閉じた双眸から感じるもの。
『心眼か……否! それだけではないな!』
ユーベルコード『|千里眼射ち《センリガンウチ》』。
「僕、視力には自信がありまして」
放たれた無数のボールのすべてを千里眼で見通す。オーラを纏い迫りくる脅威を悉く跳ね返し矢弾の雨と化すカウンター攻撃。
武蔵も二天一流で応戦する。オニキスは同時に打ち込まれるボールを正確に捉えカウンターで翻弄していく。
「貴方の欲望も見て差し上げましょうか、宮本武蔵さん?」
『フッ、我の欲もなかなかに深くおよそ果てというものを知らぬ。お主に見通せるかな?』
「まあ、テニス、ですよね」
『そうだな』
二人のテニスにより『帰還プログラム』スフィアは究極の幾何学紋様へと至った。
「……完成、しましたか」
『うむ、一部の隙もない寸分の狂いもない、完璧な術式と言えよう。これでかの教祖も我も元の世界に戻ることができるであろう』
宮本・武蔵は空中からゆっくりとスフィアを手元に移した。それは誰が見ても美しい球体であった。
ーー帰還プログラムが完成しました!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵