17
夜籠りの空っぽミュージック・ボックス

#UDCアース #呪詛型UDC

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#UDCアース
🔒
#呪詛型UDC


0




 眠らない街。夜通し街灯も、ビルの窓や看板の明かりもおぼろに輝いて、通りには絶えず人が行き交う。
 この国の都市部では珍しくない光景だが、そんな街も最終電車が発つ夜半頃ともなれば、次第に喧騒も消えてうらぶれた静けさが漂うようになる。

 騒がしさと入れ替わりに、闇に紛れていた異形の獣達は目を覚ます。
 不運にも箱の中に捕らわれ、眠り際を失った人々は聞くことになるだろう。
 いびつな響きを抱く、異形達の遠吠えの声を。

●夜夜中を越えて
「夜更かしが得意なヒト、ちょっと手伝ってくんない?」
 いま流行りの『呪詛型UDC』の事件なんだケド。三寸釘・スズロクはそう付け足した。

 現代日本、とある都市。繁華街に立ち並ぶ雑居ビルのその一つにUDCが潜んでいる。
 それらは、自らのテリトリーに知らず迷い込んだ人々を突如として襲い、常人には理解できない呪詛を吐き狂わせながら、やがて喰い尽くしてしまう。後に残るのは、空っぽのビルだけ……語られた予知はそんな内容であった。
「UDCが狙う対象が、真夜中過ぎにそのビルの中に留まっている人間……てコトらしいんだよ。厄介なのが、UDCが動き出すとそのビルは『閉じる』。呪詛の力で、以降コトが済むまで一切出ることも入ることもできねえ密閉空間になってるワケ」
 ゆえに、猟兵達にはあらかじめビルに潜入し、ビルが閉じてから罠が起動する瞬間――予測では、早くとも丑三つ時まで――をひたすらに待って欲しいということだった。

 グリモアベースの背景には、雑多な建物が並ぶ街の景色が映っている。スズロクは一点を指差した。
「これこれ、このビルだ。幸いっつーか、このビルん中にカラオケボックスがある。ずっと気を張ってんのはしんどいし、待つ間のヒマ潰しにはちょうどイイかなって? ……あ、カラオケって知ってる? なんか、好きな歌とか歌える店で……」
 まあ詳しいコトは各自調べてくれ、と他世界出身の猟兵達への説明を早々に投げて続ける。
「ムリに歌ったり盛り上がってなくてもいいぜ。なんせ真夜中、ぶっちゃけ寝てたっていい……ケド、異変だけ見逃さないようにしてくれな」

 これから現地へ飛べば既に夜半間近。そのカラオケ店や、ビル内の居酒屋などの店舗内には、従業員や客の姿がまばらにあるようだ。だが、猟兵達の力でもって強引に外へ逃がそうとすればUDCに気取られ、連中の尻尾をつかむチャンスを失う可能性がある。
 事前に避難させられないタイミングでの状況開始となる事について、グリモア猟兵はごめんな、と述べた。当然、呪詛の発動後に彼らを守らなければならない場面も出てくるだろう。

「……あーそうだ、戦いになったら人形遣いサンはちょいと気をつけた方がいいかもしんない。それと、犬が好きなヒトもかな」
 男が気怠い目を少し悲しげに細め、夜の色のグリモアは暗く輝いた。


呂色
 ご無沙汰しております。
 他世界にも挑戦せねばと思いつつUDCアース好きみたいです。
 宜しくお願いいたします。

●第1章:カラオケボックスでの日常パート。
 普通にカラオケを存分に楽しんでいただいてもよし、他にも武器の整備とか、室内でできることであれば趣味や別の仕事を持ち込んだりとか関係ないことをしてもよし。
 行動例にとらわれず、春先の気怠い夜を自由にお過ごし下さい。能力値の指定も不要です。
 また、お一人参加の方で「相部屋可」とプレイング内に記載していただけた方同士で、キャパの範囲内でですが共同描写にしてみたいなと思ったりしております。
 全く初対面の相手とルーム内で数時間過ごす羽目になっても大丈夫な挑戦者の方はご一考のほどを。団体様もお待ちしております。

●第2章:雑居ビル内での冒険パート。
 ほんのりホラーっぽい雰囲気になると思います。
 2章以降から参加の方も、既に建物内に居たというテイになります。

●第3章:「ヒトガタクライ」との集団戦となります。わんわんお
 2章の状況により、個々の戦闘場所等が変わってくる形になります。

●各章の導入で、プレイング受付日時を提示させていただく予定です。
 お手数ですがご確認をお願いいたします。のんびりな感じになると思います。
48




第1章 日常 『深夜のカラオケボックス』

POW   :    カラオケに来たんだから歌うしかないだろう、朝まで何曲歌えるかな。

SPD   :    もう眠いよ、コーヒー飲むか。ついでにドリンクバーで適当に混ぜたオリジナルドリンクを作って楽しもう。

WIZ   :    軽いカードゲームやボードゲームを持ってきたよ、誰かやらない?

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ワンオペバイト店員、市原・奏時の日常
 雑居ビル内にあるカラオケルーム「歌缶」。築15年ほどの、このビルが建てられた当時から、3階と4階の2フロアに店を構えるマイナーチェーンカラオケ店だ。そこそこに年季の入った設備は掃除こそされているもののリニューアルの手は入っておらず、若干の劣化や型落ちの感は拭えない。
 今日は平日だが、歓送迎会の時期だというのに会社員の飲み団体もなく、春休み中らしき学生達やヒトカラ常連がぽつぽつと入っているのみだった。
 飲み物はアルコール以外はドリンクバーがメインで、こんな時間では食事の注文も軽いものばかり。受付で一人たたずむ彼も春休み中の学生バイト。暇だが大型店より気楽でいいと、猫背でスマホを弄っていた。
「……なんか……今日静かだなぁ」
 いつものコトであるはずだが、何となしに口をついて出た。ただでさえ春は眠い。SNSを眺めたり、ここでのバイト代をどう使うかを巡らせたりして眠気を散らそうとしてみても、不意にまぶたが落ちてしまう瞬間がある。
 するとどこか遠くから、音楽が聞こえる。カラオケなのだから当然、客のいる部屋からの……いや違う? 妙に鮮明で、金属を叩くような高く硬質な、あの音は……?

 まどろみの中に引きずり込まれかけていた青年の意識を、ドアベルの音が叩き起こした。

======
 第1章のプレイングは、3/21(木)午前8:30以降から受付させていただきます。
======
花菱・真紀
相部屋可

【コミュ力】【時間稼ぎ】
いやぁ、まさか依頼でカラオケにくるとはな。
俺は現役大学生だからわりとカラオケ行く機会とかあるからいつもの感じで楽しめばOKか。

折角カラオケに来たんだから歌わないとな!
流行りの曲からアニソンまでたまに歌うマニアックな曲は俺の趣味!
俺は人の歌聴くのも好きだぜ気に入った曲ならレパートリーに加える時もあるしな。

ドリンクバーとかくるとどうしてもやっちまうのがオリジナルドリンク作りだよな…まぁいろいろ試してきたからだいたいの組み合わせは試してんだけど…今日は普通に美味いのしとこう。


アイ・エイド
相部屋可!初対面でも同じ依頼に参加する者同士、仲良くやろうぜェ!!
ソロでもOKだ!そこら辺は任せるぜ!

つーかオレ、カラオケ来んの初めてだわ。物珍しさからキョロキョロしてんなァ…
ところでとあるカラオケに通い続けると勇気が上がって男女問わず漢になるらしいが…?

ま、とりあえず寝ちまわないように注意する!
やっぱドリンクバーは定番ッ!何種類か混ぜて飲んでるぜ!
やっぱ最終は全混ぜだよなッ!?絶対に合わないと分かっててもやる!
…こういうのはノリと勢いなんだぜ?

勇気ってこういうこと…なのか?
ハッ!心なしかイカツイ顔立ちに…?
(*変わらず女顔です)


無明・緤
【相部屋可、ぼっちでも泣かない】
普通にカラオケを楽しむ

おれ知ってる、この棒持って歌うんだろ
ニャーン!(パワフルな歌唱を披露。巧さはPOWで判定)
他の人が歌ってる時は
ソファを跳ね回り楽器で盛り上げて一緒に楽しむ

んで、ドリンクバーといったらアレだよアレ
オリジナルドリンク作るしかねー!
ジュース全種類混ぜたら美味そうじゃないか?

おれの分とは別に、連れ(人間に擬態させた絡繰人形)に渡した
もう一杯は手を付けず部屋に置いとく
呪詛の罠が起動する丑三つ頃、前兆感じたら
すぐさまドリンク蹴倒して従業員呼び「綺麗にしてくれ」とごねて
【時間稼ぎ】して引き留め。部屋に匿って側で守るつもり

悪いな、この【恩返し】はあとでする



●カオスドリンクづくりは通過儀礼のようなもの

「いやぁ、まさか依頼でカラオケにくるとはな」
 こなれた様子で選曲の端末を手に、まずは流行りの定番曲を、とピピッと予約していくのは眼鏡ヘアピン男子の現役大学生、花菱・真紀(都市伝説蒐集家・f06119)。はいよ、と横に座ったアイ・エイド(腐れ人狼・f10621)に端末を回す。
「ヘェ、カラオケってこんなんなってんのかァ」
 初カラオケだという白衣の青年は受け取った端末を物珍しげに眺めて、オレが歌えそうな曲あんのかな~、とくるくる画面を切り替える。
「おれ知ってる、この棒持って歌うんだろ!」
 黒猫ケットシーの無明・緤(猫は猫でしかないのだから・f15942)はマイクを両手で持ちニャーン! と発声練習。彼の傍らには、人間に擬態させた絡繰人形が行儀よく座る。
 深夜の任務だろうがなんのその、な若い男子学生ノリの三名は3階手前、受付とドリンクバーが近い部屋に陣取っているようだ。

「なァところで、とあるカラオケに通い続けると、勇気が上がって男女問わず漢になるって聞いたんだが……?」
「いやソレ、コレがこーなってこうなるやつのハナシだな!? あとそれヒトカラじゃないとダメなやつ」
 アイが神妙な面持ちで訪ねた内容には、真紀が思わず手で拳銃の形をつくり、コメカミに突きつけて撃つようなジェスチャーをしながらツッコミを入れる。
「勇気か。勇気ってのは大切だよな」
 緤はしみじみと言ってひげを撫でながらマイペースに選曲している。初対面でいきなりカラオケというシチュエーションも人によっては中々勇気の入りそうなものだが、この猟兵達には特に差し障ることではないらしい。早速曲がかかり、身体に伝わる振動とともに軽快なベース音が響き始めれば尚のこと。
「それじゃ、盛り上がって行きますか!」
 真紀がマイクとドリンクを手に立ち上がれば、アイと緤もグラスをうぇーい! と掲げ、宴は始まった。

 定番曲からアニソン、少しマニアックな曲まで多彩な持ち歌を披露する真紀に、持ち前のノリの良さ、言い換えると持ち前のやかましさで合いの手など入れて盛り上げていくアイ。緤は身軽にソファの上をぴょんぴょん跳ね回りながら、リズムに合わせタンバリンを叩く。
「おっ、採点機能なんてあるじゃん、やってみようぜ!」
「任せろ、おれが最高得点叩き出してやる」
 マイクを取った緤が一曲パワフルに歌い上げた、その結果は……?
「……51点ンン!? ニャンだと!? どんな判定してんだコレ!」
「わっははは、確かにちょっと古い機種だし偶にヘンな採点するけどなー」
 実は機械に強い3人でもある。採点のアルゴリズムについてああだこうだと議論しながら、やーでも実際ちょいちょいハズしてたカナー? マジで? 声は力強かったけどね? つーか今の曲イイね俺も覚えよ、などと言い合って、ひとしきり歌って笑って気がつけば皆、ドリンクのグラスは空になっていた。カラオケでドリンク切れは死活問題、揃ってドリンクバーへ補給に行くことにする。
「ドリンクバーと言ったらアレだよアレ、オリジナルドリンク作るしかねー!」
「混ぜるのは定番だよなッ!」
「やっぱ、こういうのあるとどうしてもやっちまうよな」
 多数の種類のドリンクを前にはしゃぐ二人を微笑ましげに見守る真紀。ゲテ料理チャレンジャーな彼は、このテのものは一通りの組み合わせを体験済みらしい。
「全種類混ぜたら美味そうじゃないか?」
「だな、最終は全混ぜだよなッ!」
 ああ~と何か言いたげな真紀の視線をよそに果敢に攻める二人。メロンソーダ、100%オレンジ、コーラ辺りまでは無難に飲めそうだが、そこに中国健康茶、乳飲料系やホットのココアなんかが混ざってくると一気にカオスの様相を呈し始める。
「ん、緤、そんな飲むのか? ……もしかしてその人形の分、なんてことは」
 緤は絡繰人形に自身をドリンクバーのカウンターの高さまで持ち上げさせて、2杯分のドリンクを作っていた。尋ねる真紀に彼は首を振り。
「いや、コレは後で使おうと思ってな」
「……ウッ」
 突如後ろで上がった呻き声に、二人は振り返る。ノリと勢いのままに全混ぜドリンクをひとくち味見したアイが口元を押さえうつむいていた。得も言われぬ匂いと、掴みどころのない味が口から脳を侵食するようだ……絶対ヤバイことになるとわかっていても、なぜヒトは行動を起こさずにいられないのか――。
「勇気ってこういうこと……なのか? ……ハッ! 心なしかイカツイ顔立ちに……?」
 どうにか飲み込んだ彼が、若干目を潤ませながら何か天啓を得たように顔を上げる。
「いや、にゃいにゃい」
「大丈夫大丈夫変わってない。つーかあんた達ソレ飲めよ全部!」
 そうして、彼らの賑やかな夜は更けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

三岐・未夜
【冬星】

夜更かしだいすき
るり遥に呼ばれた

普段あんまり大声出す方じゃないけど、激しめの曲とか腹の底から声出して歌うとすっきりするよねー
人の歌聴くのもすき
るり遥が歌おうとしないの知ってるけど遠慮なくマイク回そー
歌いませんってツラなんて知りませーん
るり遥の歌声だいすきなんだもん、歌わせたい

るり遥、るり遥歌って
るり遥
ほらジンガ初めてみたいだし!
呼んだるり遥が歌わなきゃ!ね?
(期待にぶんぶん賑やかに振られる尻尾)
(歌ってくれると疑わない顔)

帽子で顔隠しちゃったらこれ以上追撃はしないでおくよ

(そっと鞄から出て来るトランプ)
ね、被った
あははっ、ばか、ばかだ……!
何でよりにもよってスピードにしたの……っ!


松本・るり遥
【冬星】
未夜。ジンガ。集合。

カラオケは聴き専派。声や選曲に知らずのうちに篭る感性を聞くのが好きだ。未夜の張った声とか、いつもは握り締めてる衝動、って感じすげえ良いと思う。
ベテルギウスとダリア?あるよ。ジンガ歌うか?聴きたい。

いや俺は歌わな
俺は別に
いや

えええい未夜もジンガも一緒に歌えよ!?合いの手とかサビとか覚えやすいのいれっから!混じれ!

数曲歌ったらもー知らね!帽子を顔に被って脱落!
歌い疲れたら?トランプと人生ゲームどっちがいい(鞄から出てくる)(ダブるトランプ)(噴き出す)よし、奇数と偶数と絵札に分けて3人スピードしようぜ。
あ?うわ待っ、待て待てこれ絵札持ちが圧倒的有利じゃん!!!


ジンガ・ジンガ
【冬星】
俺様ちゃん、今まで歌やカラオケとは縁の無いジンセー送ってきたモンで
知ってはいたけどさァ、本日初体験ってヤツなのよねェ
うっっっわ、えっ、これ全部歌の名前!?
すっげ……これ全部ここで歌えンの?
こないだ、るり遥に教えてもらったヤツもあんの?
あるんだ。……うん、後で歌ってみたい、かも

未夜のるり遥コールに、タッチパネルから顔を上げ
二人の顔を交互に見て

るり遥歌うの?
歌うの?
……歌わねェの?

混じっていいなら混じるわ
一人で歌うより楽しいな、コレ

わかんないトコたまに手伝ってもらったりしつつ
何曲か歌ったら、ちょっと疲れた
あ、トランプ?やるやる!
――バッ、おま、なんでソレ気付かなかったのよォ!?



●箱の中で瞬く、冬の大三角

「うっっっわ、えっ、これ全部歌の名前!?」
 それが見られるのは今や、マイナーでちょっと古いカラオケ店ならではかも知れない。凶器になりそうなレベルの厚さと重さを誇るいわゆる「歌本」のページを、ジンガ・ジンガ(塵牙燼我・f06126)はびゃーーっと勢い良くめくってみせた。
「すっげ……これ全部ここで歌えンの?」
 本日がカラオケ初体験、キラキラと目を輝かせる羅刹の青年に、この部屋の招集者、松本・るり遥(サイレン・f00727)はドリンクのストローをくわえたまま、ぴろりとピースサインを作って肯定を返す。
 激しいピアノのイントロが雷のように降ってきて、一番手は三岐・未夜(かさぶた・f00134)が歌い始めた。目元を厚く前髪で隠し、どちらかと言えば大人しい青年という印象の未夜だが、腹の底から叫ぶような歌声は力強く苛烈だ。
 黙っていてよ、此処にいてよ――普段は内に握り締めている衝動を爆発させるような彼の歌に、るり遥は聴き入る。歌声や選曲にはいつもは見えないような、あるいは本人さえ気がついていないような感性が篭るもので、それを聞くのが好きだと、音楽と声の持つ力をよく知る彼は思う。ジンガも歌本から顔を上げて、ビリビリと響く未夜の歌とリズムに、自然に体が揺れた。
「……なァるり遥。こないだ、るり遥に教えてもらったヤツもあんの?」
「ベテルギウスとダリア? あるよ。ジンガ歌うか? 聴きたい」
 そわそわとした様子で訊ねるジンガに、コレの方が便利だよとタッチパネルの端末を渡しながらるり遥が答える。
「……うん、後で歌ってみたい、かも」

 歌い終えた未夜から、ハイ、とマイクがるり遥に手渡された。と言うか押し付けられた。
「いや、俺は歌わな……」
「るり遥」
「俺は別に」
「るり遥歌って」
「いや……」
「るーりーはーるー」
「るり遥歌うの?」
 さらに呼ぶ声が飛んできた方を見れば、ジンガも選曲の手を止めてじっとこちらを見ている。
「ほら、ジンガ初めてみたいだし!」
「……」
「歌うの?」
「呼んだるり遥が歌わなきゃ! ね?」
 未夜の期待の眼差し、その向こうで大きな尻尾がぶんぶんとこれ以上ないほど暴れているのも見える。
「……」
「……歌わねェの?」
「えええい未夜もジンガも一緒に歌えよ!?」
 二方面からの圧には勝てなかった。
「俺様ちゃんも混じっていいの?」
「混じれ! 合いの手とかサビとか覚えやすいのいれっから」
 しょうがないな、言いつつ未夜は2つ目のマイクのスイッチをONにする。るり遥に歌わせられるならまあいいか。彼の歌声が聴きたい。
 合間にジンガへのレクチャーなど挟みつつ、気心知れたトリオのセッションは心地よく響いていく。

「……はいおしまい! もー知らね! 俺はもー脱落!」
「「えー!」」
 数曲歌った所で、るり遥はキャスケットで顔を覆って隅っこの方に撤退した。コレ以上強いるのは不本意と、満足気な未夜がお疲れ様と彼を労う。
 ならばと今度はジンガが歌うのは『ベテルギウスとダリア』、速く刻むビートとギターサウンドが彼に似合っている――曲がかかれば、撤退していたるり遥もススッと復活して聴き入りつつサポート体勢に。
 何とか歌いきったジンガだが、どこか腑に落ちない表情だった。どうしたとるり遥に問われれば、
「ンー、一人で歌うより三人で歌う方が楽しーな。あと、ちょっと疲れた!」
 と言ってけらりと笑う。
「結構時間経つけど、まだ動きそうにないねー」
 未夜もけほけほと咳き込みながら、急に酷使された声帯をいたわるようにドリンクを流し込んだ。
「なら、トランプと人生ゲームどっちがいい?」
 るり遥が用意周到に、暇つぶしグッズをカバンから取り出しテーブルに並べる。しかしそこへ、未夜の手によっておもむろにトランプがもう1セット追加された。
「被った……ッ」「ね、被った」
 折角のこのダブルトランプを3人で有効活用するにはと導き出された答えは3人スピード。ジンガが奇数の札、るり遥が偶数の札、未夜が絵札を取っての、本気の高速バトルが繰り広げられ……るかと思いきや。
「……あ? うわ待っ、待て待てこれ絵札持ちが圧倒的有利じゃん!!!」
「バッ、おま、なんでソレ気付かなかったのよォ!?」
 驚いた声をあげるるり遥とジンガに、速攻で手札を片付けた未夜がテーブルに突っ伏して震えながら笑う。
「あははっ、ばか、ばかだ……! 何でよりにもよってスピードにしたの……っ!」
 ダブルトランプ以降ほとんど笑いっぱなしの3人は、いわゆるランナーズハイ状態に突入してしまったかもしれない。
 それでも3人で楽しめるのなら何だっていいし、3人なら何だって楽しめると。誰が言うでもなく、ちょっぴり不毛な3人スピードと賑やかな声はもう暫くの間続いていたようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アイリス・ブラックバーン
【SPD】

「…お邪魔、するわ…ね…」

大きなカバンを持ち店内に入り、軽く受付を済ませてまずドリンクバーへ直行
炭酸系のドリンクを適当に数種準備して入室
一人で席に大きく腰掛け持ち込んだドリンクを一つ一気に飲み干す
カラオケ機器の音量を0にした後、カバンを物色し中に入った銃器の点検を始める
無言で愛銃の分解、点検、組み立てを一通りこなして来るべき敵との遭遇に備える

銃の点検が終わった後は炭酸が抜けきってシロップ水のようになったドリンクを苦い顔をして飲みながら眠気を誤魔化し時を待つ



●戦士は、ただ目的の遂行のために

 急に学生の団体客が増えたなぁ、とバイト店員は客室の方を見やる。するとそこへまた、ドアベルが鳴り新たな客の影が現れた。
「いらっしゃいま、せ……!?」
「……お邪魔、するわ…ね……」
 大きなカバンを持って入店してきたのはアイリス・ブラックバーン(ブラックバーンの申し子・f04509)。決して派手な印象ではないが、メリハリのある体格の良さと、どこかミステリアスな空気を纏う彼女は年頃の青年を軽くどぎまぎさせながら、手短に受付を済ませると奥へと姿を消していく。何かの選手? それともあのカバンは肺活量の居る楽器でも入っているのだろうか。バイト青年は想像を巡らせるが、その立ち居振る舞いが死地を超えてきた人間の、戦士のそれであるということ、――ましてや、彼女が内に凶暴な魔を飼っていることなどは、彼には知る由もないだろう。

 いくつかのドリンクを淹れて部屋に入ったアイリスは、腰を下ろすなりそのグラスを次々とあおり、一気に飲み干していった。ぐびり、と強い炭酸が喉を抜けていく。
 大きく息をついた後、リモコンを取り、流行りのアイドル曲らしきミュージックビデオを流していたカラオケの音量をゼロに。
 静かになった部屋の中でカバンから取り出したのは、彼女の得物、無骨な愛銃達だった。
 禍々しい雰囲気を醸し出す拳銃『Handsome Devil』。テーブルに拡げた布の上にテキパキと分解していく。一つ一つの部品を丹念にチェック、軽く掃除やスプレーなどを施した後、再度組み立てる。何度か動作を確認。問題なし。同様にアサルトライフルと、グラップリングガンも分解と点検を行った。部屋の中には、他の部屋から漏れ出るくぐもったノイズと、カチャ、カチャリ、金属の擦れる硬質な音だけが流れ続ける。
 そうして一通りの点検を終えたアイリスは、残っていたドリンクを再びあおった。すっかり炭酸が抜けてしまい、キレのない甘ったるさだけを喉に残していくそれを顔をしかめながら飲み下す。ある種、眠気覚ましには丁度良いかも知れないなどと思いながら、彼女はただ座して、その時が訪れるのを待った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

八坂・操
【相部屋可】

深夜に突如閉じる雑居ビル! 閉鎖空間で巻き起こるスプラッター! うーん、何ともB級映画の匂いがするね♪ 操ちゃんそういうの大好き☆
ま、呪詛型ってのは最初から割れてるんだし、いきなりでっかいビルの怪物になって『実はこの出入口は口で、ビルは巨大なサメだったんだよ!!』なーんて超展開もなさそうだから安心だね☆

しっかしカラオケかー……操ちゃん持ち歌あんまりないんだよね……と、言う訳で!
「操ちゃんオススメ映画の時間だ☆」
歌わなかったり、武器の手入れする人連れて、のんびり映画鑑賞しよう! 別に見なくても時間は潰せるしね♪
「大丈夫、無難なロードムービーさ♪ リラックスには打ってつけの名作だよ☆」


リリィ・アークレイズ
昼寝かまして正解だったな
今日はオールでも別に構わないぜ!

つっても暇なことには変わりねェしな…
歌う…ってのもなんかな。オレ聞き専だし
……なんだよ、別に歌うのが恥ずかしいんじゃねーよ、こっちみんな

…じゃ、新しい相棒のご機嫌取りでもするか
初仕事の前に拗ねられちゃ困るからよ
(ごろごろと黄色い手榴弾をテーブルに広げてメンテナンスします)
『YELLOW LEMON』だ
触っても良いけどよ、間違ってもピンは抜くなよ?
皆して犬のエサみたいになりたくねーだろ

あと腹減るからピザ頼むわ
ドリンクはコーラ!忘れんなよ!
カロリー摂っとかねェと後々面倒だからな
準備は怠んなよ?

あ、ピザとコーラ追加な

【アドリブ、相部屋可です】


マディソン・マクナマス
【SPD使用】相部屋可

何があるかもわからんし、今のうちに対UDC軽機関銃の分解清掃をやっとくかね。
持ち込んだ大量の缶ビールを消費しながら、問題の時間までの間を、丁寧に銃口内の煤を落とし、駆動部にグリースを差し、銃身にできたバリをヤスリで削って過ごす。
金を貰って暇を潰す。いいね、待機時間ってのは傭兵にとって実に有意義で充実した時間だ。
気を張ってる訳じゃないが、身に染みついた癖でね。10mmマシンガンは常に手の届くところに置いて、すぐ動けるようにイスには浅く座っとくよ。
とは言え周りに壁を作ってる訳でもない。歌う奴がいたら音楽に合わせて身体を揺らすし、お喋りには適度に相槌を打つくらいするさ。



●映画のお供には、ジャンクフードと火薬の香り

 怪異に備え、武器の手入れを行っている猟兵は他の部屋にも居た。
 ただしこちらの部屋では、陽気なカントリーミュージックとエンジン音、軽快な皮肉の応酬。そんな諸雑音と共にテレビモニターに映像が流れている。緑がかった空と白い雲、終点の見えない道路がどこまでも続き、気怠げな運転手が気難しい助手席の相棒をなだめながら、薄汚れたジープを転がしている。
「その映画、ドンパチとかあんの?」
「大丈夫、無難なロードムービーさ♪ リラックスには打ってつけの名作だよ☆ もしかして狂気マックスな感じのやつの方が好みだった? けどドンパチなら、この後イヤってほど見られそうだしね♪」
「はっは、違ェねえな」
 映画マニアな八坂・操(怪異・f04936)が持ち込んだDVDを作業BGMにして、二人の傭兵達、サイボーグ少女のリリィ・アークレイズ(SCARLET・f00397)と、ソファに浅く腰掛けたグラサンケットシーのマディソン・マクナマス(アイリッシュソルジャー・f05244)がそれぞれの得物を検めている。テーブルの上は銃器の部品や弾丸、手榴弾等々が整然と並び、まさしくマフィア物映画のようなハードボイルドな光景が作り出されていた。
「しっかし、今日は昼寝かまして正解だったな。オールでも構わねえが……いつまで待ちゃいいんだか」
「折角カラオケだし歌ってもイイんだよ? 操ちゃんは持ち歌あんまりないんだけどね」
「いやオレも聞き専だし……なんだよ、別に歌うのが恥ずかしいんじゃねーよ」
 視線を感じてかリリィがこっちみんな、と憤る。マディソンはくつくつと笑いながら、
「金を貰って暇を潰す。いいじゃねえか、待機時間ってのは傭兵にとって実に有意義で充実した時間だ」
 言って缶ビールをかっ喰らう。床には彼が持ち込んだ缶が大量に置かれ、すでに何本か空になっているようだった。
「おまけにこんな若いお嬢さん達と相席できるとはな、役得ってもんだ」
「オッサンよぉ、作戦前にそんな飲んで大丈夫か?」
「こんなもん、俺には水と変わらねえよ」
 軽機関銃のバレルの煤をロッドで取り払い、銃口にライトを当てて中を見、またロッドを差し……その丁寧で繊細な彼の作業の様子からは、確かに酔いは感じられなかった。加えて傍らにはいつでも撃てるようにと10mmマシンガンが置かれている。ソファに浅く掛けているのもすぐ動けるようにするためで、決してケットシーだから深く座るとテーブルに手が届かない、などと言うことではないようだ。
「コレ、かわいい色の手榴弾だね☆」
「ああ、『YELLOW LEMON』だ。触っても良いけどよ、間違ってもピンは抜くなよ?」
 皆して犬のエサみたいになりたくねーだろ、と言って笑ったリリィの眼の前に並べられていた手榴弾の一つを、操が手にとってまじまじと眺める。パイナップルやアップル、そしてレモン、その形状から果物に例えられることの多い手榴弾だが、リリィの新しい相棒は彼女が改造した特別製、名前の通り色まで鮮やかな黄色だ。

 そんな最中、ドアがノックされ、トレーを抱えたバイトの青年が急に入ってきた。
「失礼しまーす、こちらご注文のマルゲリータピザとコーラになりま……ヒィイイ!?」
「あっ……」
 部屋の中の物騒すぎる光景を目撃した青年は、驚いてトレーを取り落とし……あわや大惨事となる所で、入口近くに居たリリィがトレーごとピザの皿と、コーラのグラスを空中でナイスキャッチ。
「あっぶねーなオイ! こっちに溢れたらどーすんだ」
「も、申し訳ありませ……!!」
「あーえっと、操ちゃん達は何て言うか、サバゲー愛好家? みたいな感じのアレで~♪」
 コワクナイヨー? と操が詰め寄ってにこにこと宥めれば、青年はどうにか落ち着きを取り戻して――なぜか別種の恐怖を植え付けられたような目をしていたが――受付へと戻っていった。
「ったく……つっても一般人だし仕方ねーか。取り繕うのがめんどくせーけど」
「まあ、取り繕う必要もないんじゃないか? 可哀想だがあの青年は巻き込まれるのが確定しちまってる。後でUDC組織にとっ捕まって、記憶操作の処理が入るだろ」
 銃身のバリをヤスリで削ったカスをフッと吹いて、マディソンが応える。
「確かに、仮に今から警察とかに連絡しようとしたところで無理そうだね☆ もう、このビルは、『閉じてる』みたい」
 スマートフォンを手にした操が楽しげに。画面のアンテナ表示はいつの間にか圏外になっていた。
「あーそっか、んじゃ遠慮しなくていいな」
 ピザを頬張りながら、内線電話で再びピザとコーラを追加オーダーするリリィ。電話の向こうからはマニュアル通りの受け答えをしながらも、「えっ、あの子まだ食うの……?」と「えっ、またあの部屋行かないといけないの……?」と動揺する青年の表情がありありと浮かぶような声色が聞こえていた。
「深夜に突如閉じる雑居ビル! 閉鎖空間で巻き起こるスプラッター!」
「うおっ、急にどうしたアンタ……」
「何ともB級映画の匂いがするね♪ 操ちゃんそういうの大好き☆」
 突如ガバッと立ち上がって、テンション高らかに声を張り上げる操。
「ま、このビルがいきなりでっかいビルの怪物になって『実はこの出入口は口で、ビルは巨大なサメだったんだよ!!』なーんて超展開はなさそうだから安心だよね☆」
 おいおいそれは映画の見過ぎだろう、……などと言う慣用句は同席の二人からは上がってこない。何しろ猟兵達の見ている世界は、映画よりも小説よりも奇なる世界だ。ビルになるサメのオブリビオン、空から降る無数のサメのオブリビオン、いつか目の当たりにする時が来る……のかも知れない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アイ・リスパー
【相部屋可】
「わぁ、これがカラオケボックスですかっ!
初めて来ましたっ!」

実験体として生まれ育った研究施設にはなかったカラオケボックスを見て
思わず色々なところを見回してしまいます。

あんまり歌をうたう機会もなかったので自信はありませんが……

「この任務の事前調査としてUDCアースの動画で流行りの歌をいくつも覚えてきました!
レパートリーなら任せてくださいっ!」

【チューリングの神託機械】を発動。情報処理能力を向上させ、声帯の音程コントロール能力を最大限まで高めて歌います。
採点機能のアルゴリズムも解析し、高得点が出るような歌い方をしましょう!

「かはっ……」

能力の代償に吐血しながらも、歌い続けるのでした。


伊美砂・アクアノート
【相部屋可】いっえーぃ! どうせカラオケにいるならテンション上げてこーっ! あ、ボクはあんまり歌に自信は無いし、歌いたいヒトがいるなら、どんどんマイクを渡すよ。 きしし、まぁ、ダラダラしててもどうせこの後で仕事だしなー。あ、じゃあ、とりあえず唐揚げとポテトを注文でー。あと何か食べたいヒトー?ラーメンとかもあるっぽいよー? ピザもいいなーと思いつつ、フロントに電話したり、ドリンクバーのジュースを持ってきたりします。みんな疲れてきたら、逆にマイクを握って何曲かバラードを歌ったりするよ…ずっとハシャいでても大変だし。 あ、そろそろ手洗いに立つ時は1人で行かない方がいいかもー? それともホラーは平気?



●交錯する、赤と藍の歌

「あれ……? 伊美砂さん、ですよね?」
「あ、アイさんだー、奇遇だねーっ」
 猟兵の世界は全体を見れば広大だが、人同士の繋がりだけを見れば案外狭いところもあるらしい。アイ・リスパー(電脳の妖精・f07909)と伊美砂・アクアノート(さいはての水香・f00329)は過去に別の事件で顔を合わせていて、グリモア猟兵でもあるアイの予知した事件解決にアクアノートが出向いたこともある。
 そんな二人が今度も事件のためとは言え、カラオケで同席することになる、奇妙な縁のめぐり合わせだ。
「わぁ、これがカラオケボックスですかっ! 初めて来ましたっ!」
「そうなんだ、それじゃどうせだし思いっきり楽しもうか! テンション上げてこーっ!」
 部屋の中をキョロキョロと見回すアイに、マイクのスイッチを入れて声にエコーを掛けながら拳をつきあげるアクアノート。今の彼女はテンション高めなボクっ娘(?)人格が主導権を握っているようで、部屋には二人の楽しげな笑い声が咲いた。

「この任務の事前調査として、UDCアースの動画で流行りの歌をいくつも覚えてきました! レパートリーなら任せてくださいっ!」
「おおっ、やる気満々だねー。どんどん歌って歌って!」
 そこは特に任務じゃないんですがというツッコミをする者は不在だ。マイクを受け取り、早速選曲にかかるアイ。その間にアクアノートはフードメニューを開いて、フロントに注文の電話を掛けた。
「唐揚げとポテトひとつずつー。あと、アイさん何か食べたいものあるー? ラーメンとかもあるっぽいよー?」
「深夜のラーメン、ですか……!」
 何だかとても背徳的な響きだ。いや、ピザとか他のメニューもカロリー的に十分背徳的かも知れないが。とりあえず唐揚げとポテトをシェアすることにする。
 曲のイントロが掛かると、アイはなぜか電脳空間への接続を開始した。ユーベルコード『チューリングの神託機械』――万能コンピュータの演算能力で以て、最適な歌声をアウトプットするため。何かベクトルがズレているような気もするが、本気だ。
 あどけない少女の声色ながら、それは針の穴に糸を通していくように精密に正しい音程を保ち、おまけに採点のアルゴリズムまで解析して声量の調整などされたのでは、採点機も敵わず最高得点を叩き出した。
「おおーっ、すごいねえ」
「やりました……! ……かはっ……」
「ちょちょ、大丈夫?」
 歌い終えると同時咳き込むアイ。笑顔で顔を上げて、ちょっと負荷がかかるんです……なんて言いながら口の端から若干赤いものがこぼれている。カラオケの最高得点の代償としては些か重すぎるものを支払っているらしい。
「ま、まだ歌えますから……!」
「いやいや、無理はしない方がいいよーこの後仕事なんだし。ちょっと休んで……あんまり自信ないけど、ボクも歌おうかな」
 甲斐甲斐しくドリンクを勧めつつ、きししっと笑うアクアノートがマイクを取る。テンションに反して彼女の選曲は落ち着いたバラードだった。
 歌い出すと彼女の横顔が、すっと大人びた顔つきに変わったような気がした。彼女が多重人格者であることはアイも知っている。歌声に混じる不思議な、どこか心地よいゆらぎは、それ故のもの? 興味深げに観察しながら、アイはアクアノートの歌にしばし聴き入った。

 その後もまたユーベルコードを使って歌おうとするアイを諌めたり、フードを二人で摘んだりしてまったりと時間は過ぎて行った。
「あ、ドリンクがなくなっちゃいました……私、取ってきますね」
 アイが立ち上がって部屋を出ようとすると、アクアノートも連れ立って。
「ボクも一緒に行くよ。……そろそろ、1人にならない方がいいかもー? って。それとも、ホラーは平気?」
 声色を低くして問いかけるアクアノートに、アイはぴゃっっと身を強張らせる。
「ほ、ほらーですか? 現れるのはオブリビオンであって、幽霊といった類のものではないですから……」
 赤い瞳を震わせる少女に、さぁ~どうかな~? ともう一つの声は悪戯っぽく答えながら。二人が扉の外に去って、空っぽの部屋だけが残った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ワン・シャウレン
鞍馬(f02972)と行くとしよう。

いや、わしも来たのは初めてじゃ。
名前くらいは聞いたことがあったがのう。
なるほど、歌う場所というだけあって音響や防音を意識した造りじゃな。

む、わしからか?
そうは言うてもこの世界の曲にさほど馴染みは…
お主の方がまだ知っとるもの…と分かったわい
それなら……これ、かの

と、適当にうろ覚えで選びつつ
何やら真面目に歌います。

タンバリンの合いの手に
(ぐ…!なにやら落ち着かぬ。というかなんでどや顔なんじゃこやつ)
と苛々ゲージ溜めつつ終わるまでは律儀に我慢

段々勝手が分かって来ると調子に乗って技術アップに夢中…もとい時間潰しに努めて


鞍馬・景正
◆同行
ワン嬢(f00710)と共に。

からおけぼっくす――。
ほう、UDCアースは真に面白いもので溢れておりますね。
我が故郷のサムライエンパイアと較べていつも驚かされます。

◆行動
入室後、始めて見る空間や設備は実に興味深く観察。
ワン嬢の分析には成る程と首肯し感心。

……ワン嬢は「からおけ」の経験は御座いますか?
宜しければ如何なるものか実演をして頂きたく――。

歌って頂けるなら暫しその吟唱に耳を傾けつつ、鈴を嵌め込んだ楽器のようなもの(タンバリン)で合いの手を挟んで参りましょう。

剣師が屋敷に来て能楽を披露された時はよく同じようにして盛り上げたものです。

しかしワン嬢、顔ばかりか声も良いとは流石ですな。



●異文化交流・ガチモードな時の合いの手は程々にの巻

 腰に刀を差し、武士然とした長身の羅刹の青年、鞍馬・景正(天雷无妄・f02972)が個室の扉を開き、傍らの美しい少女――だが稼働年数だけを見れば、此度の作戦に集った猟兵達の中では一番の年長者となるミレナリィドール、ワン・シャウレン(潰夢遺夢・f00710)を中へと通す。
「こちらが『からおけぼっくす』なる施設ですか。ほう……UDCアースは真に面白いもので溢れておりますね」
 景正はこじんまりとした部屋に敷き詰められたソファや選曲端末などを物珍しげに、また興味深そうに眺める。
「我が故郷のサムライエンパイアと較べて、いつも驚かされます。……ワン嬢は『からおけ』の経験は御座いますか?」
「いや、わしも来たのは初めてじゃ。名前くらいは聞いたことがあったがのう」
 言いながらワンも、窓がなく仄暗い室内を見回し、壁に手を触れてその性質を分析する。
「歌う場所というだけあって、音響や防音を意識した造りじゃな」
「成る程」
 景正が感心したように頷く。実直に物事をみる二人の新鮮な視点からは、斜陽のカラオケボックスも趣きある観光名所であるかのようだ。

「ワン嬢、宜しければ『からおけ』が如何なるものか、実演をして頂きたく」
 腰を落ち着けると景正は、折り目正しくワンへと座礼しながら言う。
「む、わしからか?」
 そう言われても、ワンもUDCアースの曲に然程詳しいというわけではなかった。二人して小さな選曲端末のゴチャッとした画面をむむむと覗き込み……これはからおけ専用のすまほなのでしょうか、いやそれは少し違う、などと途中挟みながら。膨大な楽曲の中からどうにか、うろ覚えながらワンが知っている曲を探し当てた。
 曲が掛かると、ワンはテレビモニターの正面に構え……妙に真剣な面持ちになって歌い出す。透き通るような彼女の歌声と、それが部屋中に反響し増幅されて耳に入ってくる感覚に、景正はおお、と感嘆する。
 ふと彼がモニターの方を見ると、何やら下の棚に鈴を嵌め込んだ楽器のようなものが置いてあることに気がついた。そっと手に取ってみるとやはり、いわゆる神楽鈴に近い音の鳴る、伴奏用の楽器だと察する。
 ならばと景正は、ワンの歌うのに合わせてその楽器、タンバリンを鳴らし始めた。ワンはちょっと驚いて彼へ振り向いた。
(……剣師が屋敷に来て能楽を披露された時は、よく同じようにして盛り上げたものです)
 故郷での思い出を懐かしんで、フフ……とほのかに笑みを浮かべながら青年は合いの手を続ける。……しかしこの楽器、思いのほか主張が強いものだ。歌の妨げになることが多く、この世界でもカラオケにおけるタンバリンの是非については度々論争が起こっている。
 ワンも例に漏れず、そのしゃりしゃり音に気を取られそうになるのでぴきぴきと怒りを溜め込みながらも、何とか歌い続けていた。
(というかなんでどや顔なんじゃこやつ)
 まさか彼が思い出に浸っているとは知らず、また景正もワンが時折ちらりと向ける目線には、疑いのないまなこで力強く頷きと合いの手を返すのみだ。ワンには曲が終わるまでの時間が、とてつもなく遠いもののように思えた。

「しかしワン嬢、顔ばかりか声も良いとは流石ですな」
 歌い切って心なしかちょっとぐったりしているワンに、照れもせず景正は言う。恐らくお世辞を言えるようなタイプではなく……本心からの言葉なのだろう。
 何だ彼だ、思い切り歌えるのも気分の良いもので。若干時間潰しの目的を忘れかけつつ、二人は『からおけ』の魅力に存分に引き込まれていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

明日知・理
四・さゆり(f00775)と

カラオケが初めてだと言うこのお嬢さんに、色々教えたり
「殴り…まあ棍棒みたいな形してるしな」
一緒にドリンクバー行ったり
「中々攻めたオリジナルドリンクを作るなお前は…」
小腹が空いたら弁当とかお菓子を二人で摘まんだり
「…カラオケに弁当を持ち込んだのは初めてだ…」
…少々戸惑いつつ。夜なので胃に優しめなおかずを詰めてきた

「…まあ誘ったのは俺のほうだしな。
…だがお前も歌ってくれよ?」

…さゆりの歌声は初めて聴いたが、綺麗だった。結構好き、かもしれない
本人には言わないけれど

カラオケに飽きたら適当に駄弁ったり

―――
(▼備考
理の歌唱力:とてもうまい(落ち着いて優しい低音))
アドリブ歓迎


四・さゆり
アドリブ大歓迎
【明日知・理(f13813)】と一緒よ。


マコ、マコ。なんでも飲んでいいと聞いたわ。
ぜひ混ぜましょう。
コーヒーとコーラ、どちらが強いか気になってたの、
あんたにも作ってあげる。


劇物ドリンクもおかしも、マコのお弁当も持ち込んだのだから、
確か、丑三つ時、だったかしら
眠気なんて皆無よ。たぶん

…、わたし、歌は歌うけれど、
からおけ、は初めて。

これが、マイク、ね。
知ってるわよ。…殴りやすそうな形状ね。
それと、なあにその機械。
そう、曲を選ぶのね、ええと。

‥‥マコ、先に歌いなさいよ。
聞いててあげるから。

‥‥ふぅん、相変わらず良い声ね。
あんたモテるんじゃなくて?

あら、ひとりだけの観客って贅沢、ね。



●今日の二人の夜宿り

「マコ、マコ。なんでも飲んでいいと聞いたわ」
 ドリンクバーの機械の前で、ラインナップを物色する二人。
「ぜひ混ぜましょう」
 眼帯の大人びた少女、四・さゆり(夜探し・f00775)もカラオケ初体験にして、通過儀礼を識る者の一人であった。
「コーヒーとコーラ、どちらが強いか気になってたの。あんたにも作ってあげる」
「中々攻めたオリジナルドリンクを作るな、お前は……」
 傍らの無愛想な青年、明日知・理(花影・f13813)は困惑した表情を浮かべながらも、特に止めるでもなく彼女の好きにさせている。彼もそのドリンクの味が気になる所ではあるらしい。
 グラスの中に2種の黒い液体が注がれ混ざっていく。一見ではどちらが入っているのかわからない、しかし炭酸とカフェインと、人を選ぶ感じの味のハーモニーで目覚まし効果はきっと相乗されている、そんな闇色のドリンクが出来上がった。

 部屋のテーブルの上、理が作ってきたというお弁当が広げられて、そこに先程の劇物チックなドリンクがそっと添えられる。
「……カラオケに弁当を持ち込んだのは初めてだ……」
 メインは鶏のさっぱり煮とだし巻き玉子、副菜にほうれん草のごま和え、きゅうりの浅漬けと、あさりの炊き込みご飯もある。バランスの整っていながら真夜中に食べても胃に優しい、気の効いたメニューだ。
「おかしもあるわ。……確か、丑三つ時、だったかしら。これだけ揃えていたら、眠気なんて皆無よ」
 たぶん。さゆりの眠た気な眼で言われるとやや説得力に欠けるが、確かに二人の部屋に備えられた兵糧は一晩の篭城に申し分ない。カラオケも存分に楽しめるというものだ。

「これが、マイク、ね。知ってるわよ」
 腹拵えのあと、早速さゆりが手に獲ったマイクのスイッチをかちりとONにして、先端を軽く叩くと部屋にぼんぼん、とくぐもった音が響いた。
「……殴りやすそうな形状ね」
「殴り……まあ棍棒みたいな形してるしな」
 ぶんぶんとマイクを素振りしている少女にも理は動じない。確かにそれで殴られたら痛いだろうが、少女がいつも振り回している赤い得物――今日も、彼女の座る隣に立てかけられている赤い傘。あれの方が危険度としてはかなり高いだろうと、選曲端末をいじりながら青年は思う。
「なあにその機械」
「……これで曲を選ぶんだ」
 暗に好きな曲を入れるよう促して、彼女へと端末を向ける。しかしさゆりは暫し悩んだ後。
「……マコ、先に歌いなさいよ。聞いててあげるから」
「……まあ誘ったのは俺のほうだしな。……だがお前も歌ってくれよ?」
 気恥ずかしさからか後ろ髪を掻きながら理が答えると、少女は楽しそうににっこりと笑った。

 彼の歌声は、その普段のぶっきらぼうな態度や鋭い眼光と裏腹に、非常に優しく落ち着いた声色だ。やはり内にある人柄は声に現れるものなのか。
 劇物ドリンクの用意は正解だったのかも知れない。もしこの低音で子守唄でも歌われようものなら、簡単に眠りに落ちることができそうだ。
「……ふぅん、相変わらず良い声ね。あんたモテるんじゃなくて?」
 料理もできるし。彼の歌を評するさゆりのつんとした態度は、対抗心なのかはたまた。
 約束通りに、次はさゆりの歌う番だ。カラオケは初めてでも、歌は歌う、と言っていた彼女の歌声を理は初めて聴いた。
(……綺麗だ)
 結構好き、かもしれない。そう思ったが、本人には言わないでおく。
 観客がたったひとりだけのリサイタルは、歌い手と聴き手を交互に替えて続いていく。それはきっと代えがたく贅沢な一時だ。

◆◆◆

 猟兵も、そうでない者達も、また闇に潜む者達も……それぞれの音で、箱の中を満たしていく。
 そうして、時は満ちた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『人喰いビルの真相』

POW   :    無敵に吶喊。邪魔するものは踏み砕いて進みます。

SPD   :    上手に身を躱し、罠を作動させず。或いは解除して進みます。

WIZ   :    魔術的な罠を探知、解除しながら進みます。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●箱の中に、呪詛が満ちる

 最初に猟兵達が気がついたのは、頭の中に奇妙に混じってくる音の存在だったかもしれない。
 それは、オルゴールの音だった。メロディを成さない一音一音が、途切れ途切れに聴こえてくる。
 呼吸を止めじっと耳をそば立てれば、その音をつないでいる声の正体が見えてくる。
 長くか細く響く、それはどうやら犬の遠吠えのようだった。

 次に暗闇が生まれた。
 テレビモニターが点いていた部屋はまずそれがブツリと落ちて、選曲端末も、続いて部屋の明かりも、廊下の明かりも次々と消えていった。
 ――バン! バン! 真っ暗な中で、何者かが部屋の扉を叩いている。どこかで叫び声が上がる。
 扉のガラスがはめ込まれていた辺り。強く叩きつける音とともに、何も見えないはずの空間に白い小さな手のかたちが張り付いた。

======
 第2章では、ビル全体を探索し、呪詛を放っているUDC達を捜し出すことになります。
 途中ニアミスがあるかも知れませんがまだ戦闘にはなりません。

 猟兵達には事前にビルの各フロアの情報および見取り図と、手持ちの小型フラッシュライトが支給されているものとします。使用は自由です。
 猟兵の持ち物の電子機器等は問題なく使用可能です。

◆雑居ビルのフロア情報
 築15年くらい。エレベーターはなし。
 地上5階+地下1階。
 B1:居酒屋1軒(営業中)と、ビル内の設備管理室
 F1:フライドチキンチェーン店(時間外につき閉店)
 F2:アンティークドールカフェ(時間外につき閉店)
 F3/F4:カラオケルーム「歌缶」(営業中)
 F5:貸事務所と倉庫

 プレイングで、どこを目指して移動するか(あるいは移動しないか)の指定をお願いします。
 指定がない場合はダイスを振ります。
 移動した先がほぼそのまま、3章での戦闘開始場所となります。

 ビル内には従業員や客など、数は少ないですが一般人が残っています。奇妙な音と遠吠えははビルのどこに居ても聴こえていて、その影響を受けパニック状態のため、保護する場合は何らかの手段で落ち着かせる必要があります。
 また、各部屋の扉がなぜか普通には開かなくなっていたり、「バラバラになった人形のパーツ」が床に落ちていたりどこかから急に飛んできたりします。殺傷力はありません。

 他、ビル内の損壊等を考慮する必要はありません。自由にどうぞ。
 1章で相席した方と共に行動しなければならないというルールなども特にありません。
 「暗闇の中でどのような反応・行動をとるか」ということにも重点を置きつつプレイングをかけてみていただければと思います。

◆第2章のプレイングは、3/28(木)午前8:30以降から受付させていただきます。
======

♪ ♪ ♪
花菱・真紀
いやー歌った歌った!さてお仕事の時間だな。
人形のパーツが転がってるってことだから安易だが2Fのアンティークドールカフェの方に調べに行ってみるぜ。
先ずは【情報収集】かまずネットでドールカフェのサイトとかあったら調べてみるか。
それ以外にもビルに関する情報を集めてみるか。ネットもだけどこの場の状況もな。
後はそうだな【第六感】を信じて進む。かなぁ?
もしビルに残ってるひとを見つけた場合は【コミュ力】と【言いくるめ】でひとまず落ち着いてもらえればいいんだけど。

アドリブ連携歓迎


アイ・エイド
お仕事開始だぜ!
カオスリングに封印出来そうなモンを探して封印出来たら
オーラをレーダー代わりに地縛鎖使いつつ、見取り図と照らし合わせながら探すぜ!

反応が強いとこに原因達がいるだろうし、逆に弱いとこを知っときゃァ、一般人の避難場所に適しそうだしな!
この情報はスマホ使って他の猟兵にも伝えとくぜ!

一般人と遭遇したら
安全な場所で放置だな
ユベコで恐慌状態を解除させて自主的にその場へ向かってもらう
無理なら催眠術で説得だ!

行動的にオレの近くは危険だからなァ…

ふっふーん!!UDC怪人と正体が分かってて挑むモンに怖いモンはねェ!!

…え?怪人の仕業だよな?エ?ソウダヨナァ?!

【第六感】【追跡】【情報収集】【催眠術】


無明・緤
【SPD】
まず電話で従業員に連絡を試みる
自分の号室と名前告げ
迎えに行くと提案して落ち着かせたい
皆で行動すれば大丈夫だと【鼓舞】

扉は同室の猟兵が居たら開ける手があるか聞き
無いなら体当たりで脱出

人形にライトを持たせて道先照らし
黒猫の身を活かし影に潜んで
罠に警戒しつつ従業員室を目指し進む
1、2回わざと人形に受けさせ相手の攻撃手段を見たい

従業員と合流したら客のいる部屋聞き
対従業員と同様【鼓舞】し保護
守りきれない時はおれの【捨て身の一撃】で【時間稼ぎ】して逃がす

実はおれ結構怖がりでさ
強がってても尻尾は太くなってる
あっ触るのはよせって!

謎の人形パーツが気になるんで
「F2:アンティークドールカフェ」を目指す



 箱の中が闇に包まれる、その少し前まで遡る。
 どこかから、か細く聴こえてくる金属を叩く音と、オオォーー……ンと耳鳴りのようにソレを繋いでいるけものの遠吠えの声。
 カラオケやカオスドリンクを楽しみながらも、異変の前兆に人一倍警戒していた緤はその耳をピクリと動かすと。反射的にテーブルの上に跳び、彼の絡繰人形の前に置いてあったドリンクのグラスをガシャン! と蹴倒した。
「うわっちょ、何してんだ緤!」
「あー、悪い、急に妙な音が鳴り出すもんだから驚いただけだ」
 アイが仰け反る横へするりと降りて、従業員を呼ぶべく内線電話へと手を伸ばす。そうは言うが、予めドリンクを用意していた辺り、従業員を保護するための方便だと同室の二人も気付く。
 ……が、彼の黒い尻尾はブワッと逆立ってだいぶ太くなっている。異変に驚いたというのは強ち嘘ではないのかもしれない。
「やっぱコレ聴こえるよな? いよいよお仕事の時間ってことか。いやー歌った歌った」
「あっ、触るのはよせって! ……あ、店員さん? 302号室だが、悪いが飲み物をこぼしちまった。片付けに――」
 真紀がマイクを置いて大きく伸びをする。アイは膨らんだ緤の尻尾に触れようとしてとがめられ、にへっと笑った、その瞬間。
 ブツリ。モニターの電源が落ちて……部屋の電気も消える。ビル内の電気系統がまとめてやられてしまったのか、緤が今しがた従業員と話ていた内線電話もぷつりと切れてしまった。

「……間に合わなかったか。おれはあの従業員を迎えに行ってくる」
「途中まで一緒に行くぜ。俺は2Fのドールカフェを調べようと思って」
「避難場所になりそうな場所も知っとかねェとな!」
 ビルの情報を探す真紀と、支給された見取り図を開くアイの顔をそれぞれスマホのバックライトが照らす。
 カギがかかっているでもないのに、誰かが向こうから押さえつけているような重さの扉に緤が体当りしてこじ開け、三人は部屋を脱出する。
「……なんだ? 人形の……足?」
 開いた扉になにかが当たったらしき感触に、緤の絡繰人形がライトを向ければ、そこには小さな人形のパーツが落ちていた。アイが拾い上げる。
「コレ自体はUDCオブジェクトってェワケじゃなさそうだナァ……けど、使えそうだぜ」
 アイが人形のパーツに自らの指輪を翳すと。UDCの残滓とでも言うべき黒い靄が、すうと指輪へ吸い込まれていく。続いて彼の提げていた鎖がゆらゆらと揺れ始めた。
「アンティークドールカフェ、『Coffre à jouets』は、ドール持ち込みと撮影可のカフェ兼ドールショップ……特に怪しい噂なんかは見つからないな」
「ふーん……けどよォ、今、店の出口……階段の方に近づくにつれて、反応が強くなってんだよなァ」
 それも下の方からだ。ドールカフェが怪しいという見立ては、概ね当たっているように思えた。

 その時、男が廊下の先から悲鳴を上げながら走ってきた。声からもわかる、受付に居たワンオペバイトの青年だ。その肩に……人形の手だけが、しがみついている。
 それをみとめた緤が、ライトを構えている絡繰人形に駆け上ると、跳躍し青年とすれ違いざま、その手を払い落とした。
「! おい、あんた大丈夫か?」
「あ、あ、に、にんぎょうが……かお、が……」
 真紀がそっと肩を掴んで止める。青年は立ち止まったがその顔は恐怖に目を見開いて、うわ言のように何かを呟くばかりだ。
「落ち着けって言っても無理か、ココは……こいつの出番、つまり、毒は使いようってことだ!」
 アイが何やら物騒な内容で声を張り上げると、闇の中に音もなく霧が漂い始める。すると虚ろだった青年の目に、わずか光が戻った。そのままその場にへたり込む。
「店員さん、大丈夫か? ……どこか痛む所は?」
「あ、302号室のお客さん……」
 内線で呼ばれていたことで、無意識に部屋の方に逃げてきていたらしい。緤の声を聞いてようやく正気を取り戻したらしい彼は、痛みはとの質問に首を横に振った。
「この状況はおれ達がどうにかする。……他に客がいる部屋は?」
「え、ええと……今日はやけに、沢山入ってきてて」
 彼から見れば、潜入のため店に来た猟兵達と一般客の見分けはつかないようで。
「ああ、でもカラオケ店のこの階と、この上の4階の反応は薄いみたいだぜ。ココでじっとしてんのはアリじゃねェかな」
「そうか。なら……なるべく他の客と一緒に固まっていてくれ」
「このライト使う? 俺らスマホもあるし大丈夫だから」
 真紀がライトを手渡すと、青年は少し安堵したように頷いた。

「おれも2Fに行くか……アイはどうするんだ?」
「そうナァ……2Fも怪しいけど、4Fより上の方からも何か、妙な気配があるんだよなァ」
「俺も調べててちょっと気になったんだよな。5Fの倉庫……大手のアパレル系の小売店が契約してるらしい」
 それならとアイは二人と別れ、5Fへと向かう。
「ふっふーん!! UDC怪人と正体が分かってて挑むモンに怖いモンはねェ!!」
「何だよUDC怪人って」
「……え? 怪人の仕業だよな? エ? ソウダヨナァ?!」
 廊下に妙な緊張感のなさを響かせながら。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

アイ・リスパー
伊美砂さんと行動

「ひゃあっ、な、なんですか、この音はっ!?
あっ、電気が消えてっ!
な、何かが扉を叩いてますっ!?」

心霊現象が怖くてパニックになり、伊美砂さんに抱きつきます。

「え、ほ、ほんとに探索するんですか?
あっ、待って、置いてかないでくださいーっ」

ホロディスプレイとキーボードを出して、監視カメラをハッキング。
建物内の状況を伊美砂さんと共有しつつ探索します。
直接戦闘は伊美砂さんにおまかせします。

「怪しいのは、アンティークドールカフェ……ですかね?」

びくびくと怖がりつつ、伊美砂さんに隠れるように探索を行います。

アドリブ大歓迎
心霊現象が苦手なので思いっきり怖がらせてください


伊美砂・アクアノート
【アイ・リスパーさん f07909と同道】さぁって、此処からはオレ達がお姫様の騎士さん達だぜ…っと! オルタナティブダブルで分身。ショットガンを持つ前衛のオレと、マシンピストルを手に後方警戒する我輩で役割分担するのである。【第六感5、暗視5、視力5、鍵開け5】で探索。リスパー嬢の反応や挙動を観察しつつ、進行ペースを調整するのである。…怖がってるお嬢ちゃんの手前、揺るがず堂々と振る舞おうか。我輩、これでも一回りも年上であるしな。 開かぬ扉はショットガンのスラッグ弾でドアノブを吹き飛ばす。…恐怖で眠れぬ夜を過ごしたコトはあるかね? 大丈夫さ、少なくとも今は独りじゃあない。いずれ悪夢は醒めるモノさ



「ひゃあっ、な、なんですか、この音はっ!?」
 突如聴こえてきた遠吠えの声と、それに混じり不協和音をつくるオルゴールの音。アイはびくりと身を震わせる。一体どこから、と音源を探り、じっと室内を見回す内に、モニターがブツリと消える。続いて、部屋をほの暗く照らしていた明かりまでも。
「あっ、電気が消えてっ!」
 そして、廊下を何かがバタバタと駆けて行く音、直後――バン! バン!! 扉が大きく振動し音を立てる。
「な、何かが扉を叩いてますっ!? い、伊美砂さんんっ」
 起こる現象に逐一悲鳴を上げていたアイは、じりじりとアクアノートの方に近寄って行き、ついに彼女にがばっと抱きついた。と言うより、しがみついたと言う方が的確かもしれない。
「始まったらしいな……さぁって、オレ達も探索開始といこうか」
 アイを支えながらスッと立ち上がり、フラッシュライトを点灯するアクアノート。彼女の先程までのテンションの高さはどこかへ去っていて、逞しさ溢れる男勝りな口調と態度へと変わっている。
 個室を出るべく、何者かがバンバンと叩き続けている扉へ厭わず近づくと、ドアノブへと手をかける。だが動かない。
「こいつは……こじ開けるか。少し下がってな」
 依然震えながらびったりと密着していたアイにライトを持たせ、そっと手で制して離れさせる。そしてショットガンを構えると、ドアノブへ向けて撃ち放った。
 バァン!! 大きく破裂音を響かせながら、強力なスラッグ弾がドアノブ周辺と壁の一部を大きく抉り、その衝撃で扉もギィ……と開く。
 アクアノートは警戒を解かず再度ショットガンを構えるが、先程まで扉を叩いていたと思しき存在の気配もどうやら、破裂音と同時に消え失せてしまっていた。

「え、ほ、ほんとに探索するんですか? あっ、待って、置いてかないでくださいーっ」
 様子を伺いながら廊下へ出ようとするアクアノートを、アイがわたわたと追いかける。
「全く、此処から本番なんだぜ。……心配すんな、オレ達がお姫様の騎士さん達だぜ……っと!」
 言ってアクアノートの姿が揺らめいた、と思うと次の瞬間に彼女は、二人に増えていた。オルタナティブ・ダブル――彼女の中に棲む人格を、分身として現すユーベルコードだ。
「後方の警戒は我輩に任せるのである」
 『アクアノート』から妙に老成したような物言いの『彼女』へとマシンピストルが渡され、アイを護るような形で前後に布陣する。
 アイはまだ少しびくびくと身を縮こまらせながらも、堂々と振る舞う彼女達に連れ立って廊下へと進み出た。自分より一回りも下の少女のそんな様子を、アクアノート達は優しい瞳で見守る。
「監視カメラから、建物内の様子を探ってみましょう」
 震える声ながら、自らも任務を遂行すべく。アイはホロディスプレイとキーボードを展開した。
 電気が消えると同時に沈黙してしまっていたビル内のカメラだが、アイが電脳からアクセスを試みれば、それらは一時的に目を覚まし、ホロディスプレイに各階の映像を映し出す。
「暗い……暗視モードに切り替えます」
 カメラに備え付けのライトが、暗闇を照らす。ナイトビジョンでぼんやりと室内の輪郭が浮かび上がっていき――アイが2Fのカメラ映像に画面を切り替えた瞬間。ギョロリと大きな2つの目、アンティークドールの顔が、ディスプレイに大写しになった。
「きゃあああああ!!?」
 思わず飛び退いて後ろに倒れそうになったアイを、後方のアクアノートが咄嗟に掴んで支える。
「どうした!?」
「お、おおお人形さんの、顔が……!!」
「……何も映っておらんではないか」
 カメラの映像にはドールカフェの一室らしき部屋が映し出されている。動くものは居ない……だが、本来なら綺麗に並べられているであろうレンタル用のドール達が、何故か床にばらばらと転がっているように見えた。
「そんな、い、今確かに……」
「ふむ、どうやら2Fは怪しそうだ、ということか」

 暗闇の中、ライトの明かりを頼りに身重に階段を降りる三人。
「恐怖で眠れぬ夜を過ごしたコトはあるかね?」
 急に問うアクアノートに、アイは首をかしげる。少なくとも今日の夜は――いや既に夜半も大分過ぎているが――きっと眠れそうにない。
「大丈夫さ、少なくとも今は独りじゃあない。いずれ悪夢は醒めるモノさ」
 そして、その悪夢を醒ますのはオレ達だ。力強く励ますその言葉に、アイもぎゅっと拳を握って、大きく頷いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アイリス・ブラックバーン
【SPD】

「時間…ね…」

カバンは部屋に置いて装備だけを携帯し、F2を目指す
敢えてライトを使わず暗闇に目を慣らしてから移動を開始する
光学迷彩装置を起動させて【目立たない】ように移動
道すがら一般人を発見した際は迷彩を解き、己の仕事と今起きている事件の事情を説明してカラオケ店へと避難してもらう
鍵のかかったドアや開かない扉等は銃撃で破壊する

アンティークドールカフェ内では己自身の【第六感】を頼りに探索
光学迷彩も使用し、視覚情報ではまず見つからないようにして進む
何者かの敵意を感じ取った場合は【早業】と【クイックドロウ】で銃を即座に構えて狙う



「時間……ね……」
 奇妙な音にも、急に暗闇に包まれたことにも動じない。アイリスは閉じていた目を開き、速やかに行動を開始した。
 ライトは点けないまま、今しがた念入りに整備されたばかりの得物達をホルスターへ仕舞い、あるいは構えて。そうしていると次第に、光のない暗闇にも目が慣れてくる。戦場傭兵としての研ぎ澄まされた感覚も伴って、アイリスは明かりなしでも周囲の状況をある程度把握することができた。
 さらにアイリスは光学迷彩装置を起動する。暗闇に紛れていることに加えて迷彩を纏い、およそ何者の視界にも彼女の姿は捉えられない状態となっているだろう。

 廊下へ出たアイリスは、周囲の状況を探りクリアリングしながら静かに移動する。途中ひとつの個室を通り過ぎようとした所……中から女性のすすり泣くような、か細い声が聴こえて来るのに気がついた。
 どうやら個室の内側で、ドアに張り付いているらしい一般客だ。
「開けて……開けてよぉ……! なんで、誰かぁぁ……」
 やや古めの建物である所為か、此処のカラオケの個室の扉は外開きだ。その扉のドアノブを……小さな人形の手が掴んで、開けさせまいと閂のごとく張り付いている。
「……! 今、助ける。危ないから、下がって」
「! だ、誰……!?」
 声に驚いてのことだったようだが、部屋の中の女性の気配がじり、と扉から遠ざかったことを感じた。アイリスは素早く拳銃を抜いて、人形の手を撃つ。小さな手ははじけ飛んで、
 アイリスが一応と光学迷彩を解き、部屋の中の女性へ現在置かれている状況を説明する。異形がビルを襲っていること。自分達が、それを排除しに来た者であること。扉が開いて人と話したことで幾分か落ち着いた様子の女性だったが、その混乱した不安げな表情はよく見えなくてもわかった。
「この階で動かずに、じっとしていて」
 ライトを置いて去ろうとするアイリスに、女性はすがる。
「待って……! 妹が、いるんです、ドリンクバーに行ってて……」
「……大丈夫」
 他の猟兵達も動き出していることは、音と気配で感じていた。道すがら、出会う者が居るだろう。
 女性を宥めたアイリスは、眼光を細め再び闇に溶ける。向かう先は、強い『敵』の気配が濃厚に流れてくる、2Fのドールカフェへ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ワン・シャウレン
引き続き鞍馬(f02972)と

どうやら本番のようじゃな
(前座に本気になっていたのはさておき)
誘っておるの
いや、相手からすれば威嚇が嵌ろうか

ともあれ探索開始
見取り図は記憶しておる
わしも鞍馬も暗視に難儀はしないようじゃが
仔細を見る必要あればライトも使うかの

場所はF2
潜むに事欠かぬであろうし

一般人を見つければ優しく声掛け落ち着かせよう
下手に動く方が危険、と静かになるまで動かぬよう伝え

順当に呪詛の強いと感じる、音のより明瞭な方へ行くべきかのう

扉は押す引く色んな角度でずらす持ち上げる降ろす等や
仕掛けあればチャレンジで開けに
パーツが飛んで来たらキャッチ

お仲間と言われるのもやや心外なんじゃが…
まぁ悪食じゃの


鞍馬・景正
ワン嬢(f00710)と引き続き。

さ、て。
それでは参りましゲェホ(歌いすぎて咽喉掠れた)

(水を一杯)

◆行動
ワン嬢の推測に首肯しつつ。
ここは既に戦場と心得るべきですな。

ワン嬢の案内に従いつつ先頭に。
暗闇は【暗視】である程度問題なし。

道中一般人が不安がっていたら、暫しご辛抱頂くようお願いしましょう。
今この怪異の元を斬りに行くところ。数刻の内には終わりましょう。

◆探索
F2到着後、ワン嬢の導かれる通りに参りましょう。
自分の【第六感】も働けば具申。

危険があれば咄嗟に【かばう】事ができるよう警戒。

しかしワン嬢、凄いものですな。ここにはワン嬢のお仲間が沢山……(無惨に壊された人形を見つけて真顔になり)



 カラオケ店廊下にて、泣き喚く一人の若い女性をワンと景正がつかまえて宥めていた。
「姉君の居る部屋は近いようじゃな。戻ったら、二人離れず静かになるまでじっとしておるのが良い」
「今暫しの、ご辛抱です。今この怪異の元を斬りに行くところ。数刻の内には終わりましょう」
 落ち着いた二人の声に、ライトをひとつ渡された女性はこくりと頷くと、元いたらしい部屋へと戻っていく。
 その間も、ビル中に鳴る奇妙な音は一向に止むことはなく。それは遠吠えする獣が一匹だけではなく、建物のあちらこちらに何匹も何匹も潜んでいる、ということのようであった。
「……誘っておるの。いや、相手からすれば威嚇が嵌ろうか」
「ええ、ここは既に戦場と心得るべきですな……我々もそろそろ、参りましゲェホげほ」
 急に咳き込む景正。あの後、彼もワンと共に時間いっぱい歌っていたらしい。喉が枯れるほどに。
「『どりんくばー』が近くにあったのは僥倖でございました」
 ワンに早うせい、などとなじられつつ水を飲む。水道から一杯分の水は汲めたものの、ビルが閉じられているとなれば、これもいつ出なくなってもおかしくない状況だった。

 ワンの記憶した見取り図に従い、案内のもと景正が先に立って進む。こちらも夜目の効く二人は明かりを持たず、2Fのドールカフェへと辿り着く。
 閉店中の店は施錠されている筈だったが、既に誰か猟兵がこじ開けたのか、ロック部分が破壊され開いていた。
 ドールカフェもロビーから奥へ入ると、開けたカフェスペースと、幾つかの個室スペースに分かれているようだ。ワンは耳を澄まし、呪詛のより明瞭に鳴っている方を探る。暗闇の中では、音の情報は非常に大きなものとなっていた。
「しかしワン嬢、凄いものですな。ここにはワン嬢のお仲間が沢山……」
 入り口からいきなり大小様々、何体ものドールが各々にポーズを取り、客人を出迎えている。受付のカウンターや棚や、置かれたソファの上に至るまでドールが座っていて……
 だがその時、何か物体が動く気配。
「……ワン嬢!」
 咄嗟にその気配とワンとの間に割って入り、景正が手刀を払う。バチッと手に弾かれて床に落ちたのは、小さなアンティークドールの頭部だった。
「……!」
 景正はドールのパーツが飛んできたと思しき先を見据える。ほんの一瞬だけではあるが、闇の中、金色に光る『4つの目』がこちらを見ていた、ような、気がした。
 がさがさと走り去るような音を、ワンは耳ざとく追った。
「……あの一番奥の部屋に入ったようじゃな」
 言いながら、落ちたドールの頭部を拾い上げる。その首元は明らかに、無理矢理に食いちぎられたような切断面をしていて……その顔から前頭部にかけて、大きな歯型がいくつもついていた。
 よく見れば周囲には大人しく座っているドールだけでなく、床に手足や頭をなくした人形たちのパーツが転がっている様を目の当たりに、景正は絶句する。
「……」
「お仲間と言われるのもやや心外なんじゃが……まぁ、悪食じゃの」

 ―― グルルルルルゥウ…………!!

 人間達を追い詰める筈だった自分達がいつの間に追い詰められている。もはや気配を隠す必要はなくなったとでも言いたげに、突如奥の部屋から低く響く唸り声。
 二人の猟兵達は身構え、ついに暗闇の中に潜む者達と対峙する。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

八坂・操
【SPD】

お、閉じたなら探索のお時間だ♪ ヒヒヒッ、暗いビルの探索なんて、ホラー映画の鉄板だね♪ 操ちゃんそういうの大好き☆

とりあえず、操ちゃんは一階のチェーン店を探索しようかな? わんちゃんが居そうな場所と言ったら、やっぱり飲食店だよねー♪
開かない扉は【鍵開け】して、【聞き耳】を立てながら【暗視】でゆーっくりと探索しよう☆
「閉店してるチェーン店に転がるバラバラ人形……ヒヒヒッ、良いねーこの雰囲気♪ 操ちゃん大好き☆」
保存してあるお肉とかは無事かなー? お腹すいたわんちゃんが勝手に食べて、肉片が転がってたりしない? 駄目だよー、お店の人が困っちゃうよー?
ま、最後の晩餐には丁度良かっただろうね♪


マディソン・マクナマス
【SPD使用】

まずは支給されたライトを10mmマシンガンの銃口の下に括りつけて、即席のアンダーバレルライトにするか。これで銃を構えたまま敵を照らせるな。

ビルの構造は事前に頭に入ってる。
追加の酒が欲しいし地下の居酒屋に行きたい所だが……錯乱してる素人連中を宥めるスキルもねぇし、取りあえず端から攻めっか。
各部屋をクリアリングしながらF5に向かう。部屋には入らずライトで中を照らして、明らかに人じゃねぇものが動いたら躊躇わず射撃。やばいと思ったら即座に蒸気爆発手榴弾を放り込む。
開かない扉は蝶番を【破壊工作】して開ける。
錯乱した奴がいたら戦闘の邪魔にならんように、銃床で殴打して【気絶攻撃】だ。


リリィ・アークレイズ
電気代を払い忘れた…ってわけじゃ無ェよな
それとも帰れってか? どっちにしろ此処に居る理由はねーや
…ハッ!うるせェな。ノックなら『優しく』がマナーだろ!
(ドア蹴破って外へ。手には電灯とLEMON)

じゃ、オレは一階に降りるぜ
小腹も空いたし摘まみ食いがてら……なんだよジョークだって
どうせ開いてねェだろ(忍び込めたら摘まみ食いします)

…ッ! …なんだマネキン…か? 修理屋なら他当たれよ
(左眼を瞑り『BLACK ONION』を瞬時に構えます)
オイオイ、暗闇怖くて軍人が務まるかよ
だが警戒はしとけ。首バッサリ殺られても知らねェぞ
…義眼の右眼だけだったら暗くても平気だけどな。ずっとはキビィ

【アドリブ、連携可】



「……電気代を払い忘れた……ってわけじゃ無ェよな」
 テレビモニターに流れていた映画(2本目)が突如強制的に打ち切られ、暗くなった部屋には一瞬の静寂ののち、リリィの声が響いた。
「それとも帰れってか? どっちにしろ此処に居る理由はねーや」
 言ってテーブルの上の装備をあるべき場所へと収めていく。「YELLOW LEMON」はその手に。
「おっ始まったね、探索のお時間だ♪」
 先程までよりもさらにウキウキとしてすら聴こえる操の声色。何者かが、扉をバンバンと叩いているのにも一向に気にした様子がない。
「……ハッ! うるせェな。ノックなら『優しく』がマナーだろ!」
 リリィも怖気づくことなく問答無用、無礼な来訪者の音へめがけて思い切り足癖悪く蹴りを繰り出すと、バァン! と扉は勢いよく開いた。叩く音も止み、扉の外には何の気配もない。
 マディソンはその様子にやや呆れ笑いを零しながら、素早くフラッシュライトを10mmマシンガンの銃身の下に取り付け、アンダーバレルライトにする。
「操ちゃんは一階のチェーン店を探索しようかな? わんちゃんが居そうな場所と言ったら、やっぱり飲食店だよねー♪」
 飲食店、と聞いてリリィが反応した。
「……俺も一階だな、小腹も空いたし摘まみ食いがてら……」
「さっきあんなにピザ食べてたのに、まだ食べるんだね!?」
「……ジョークだって。オッサンどうするんだ?」
「あ~、追加の酒が欲しいし地下の居酒屋に行きたい所だが……」
 恐らく居酒屋には従業員と客、何人かを保護する必要が出てくるだろうとマディソンは見当をつける。そういうことは得意な者に任せたい。
「取りあえず上の端から攻めっかな」
「そっか、じゃ、Good Luck」
「いってらっしゃーい♪」
「また後でな」
 マディソンは5F目指し上階へ、操とリリィは1Fへと降りていく。

「ヒヒヒッ、暗いビルの探索なんて、ホラー映画の鉄板だね♪」
「楽しそうだな~……首バッサリ殺られても知らねェぞ」
 周囲警戒しながら軽口を叩くリリィ。義眼の右眼は暗闇の中を見通すこともできるが、長時間となれば消耗もする。クリアリングは慎重に、だが素早く。
 操はと言えば、操ちゃんそういうの大好き☆ とはしゃいでは居るものの、目はしっかりと暗い周囲へ凝らされ、耳は呪詛の音の方へとそば立てられていた。
 かくして1F、フライドチキンのチェーン店ロビー前へと来た二人だが、客側の入り口は当然すべてシャッターが降りていた。リリィの想像通りだが、摘まみ食いは諦めていないのか、どこかから侵入できないかとしっかり周辺を探すと従業員用の勝手口と思しき扉を発見する。
 操がイヒヒッと笑いながら、特殊合金製の糸をするりと鍵穴に滑り込ませると。少し古い型のシリンダー錠はややあって解錠した。
 誰も居ない筈の店内には、闇の中明らかに何者かの気配がある。閉店する前から密かに隠れていたとでも言うのか。だがあちら側にとっても、この場所へやってくる者の存在は少々想定外であったらしい。
「……ッ!」
 侵入するなり、奥の方から飛来してきた物体へ向け、リリィは左腕を突き出す。サイボーグである彼女の左腕、がしゃりと前腕部が開いて黒い自動式拳銃が現れた。
 バァン! 発射された弾丸は飛来物を貫き砕く。ばらばらと落ちるそれは、成人男性と同じくらいのプラスチック製の腕だった。
「なんだ、マネキン……か? 修理屋なら他当たれよ」
 足で残骸を横に寄せて、リリィは店の厨房内へ入っていく。ライトで照らすと、他にも赤い服を来た胴と足……白髪とヒゲの優しげな壮年男性を模した等身大の人形の、頭部パーツが床に転がっていた。
「閉店してるチェーン店に転がるバラバラ人形……ヒヒヒッ、良いねーこの雰囲気♪ 操ちゃん大好き☆」
 操の声を背に、リリィは一直線に冷凍庫へ。開くとそこは調理前の冷凍された肉と、デザートメニュー用のカップアイスなどが保管されていた。
「お、アイスあるな、ラッキー」
 さも当然と言うようにくすねていく。深夜に食べるアイスは妙に美味なものだ。
「保存してあるお肉とかは無事かなー?」
 操も冷凍庫を覗き込むが、今しがた取られたアイス以外は特に荒らされているような様子はなかった。
 代わりに、先程転がっていた人形には明らかに、歯型がついていたり……欠けているパーツがある。
「わんちゃん達、これを食べてたのかなー? ヘンなもの食べるんだねー?」
 最後の晩餐になるなら、もうちょっと良いものを食べた方が良かったのにね♪ と投げかけた先……バックヤードへ続く通路の方に、金色の4つの目が、二人の猟兵を見ていた。

 各部屋をクリアリングしながら5Fへと向かうマディソン。ある猟兵からの連絡通り、3Fと4Fには人形のパーツが所々に落ちてはいるものの、敵らしい気配はなく安全と言えそうだった。
 辿り着いた5Fにあるのは貸事務所と倉庫だ。まずは貸事務所の扉のガラス窓部分から、ライトで中を照らす。すると、叫び声が上がった。
 ガタガタッと駆け寄ってくる音、そしてすぐに扉のカギが開いて男が飛び出して来る。明らかに一般人だと、ぎょっとするマディソンに彼は身を屈めすがりついてくる。
「おい、静かに――」
「なあ! あんた、ケーサツ!? た、助けてくれ!」
 彼は不運にも、こんな時間まで事務所内で残業していた個人事業主なのだが、暗闇の中呪詛を聴き続けすっかり錯乱してしまっているようだった。
「隣の倉庫から、ずっと音が聞こえるんだ……! あそこには、マネキンくらいしか置かれてな――」
「ええい、静かにしろ!」
 大声で喚き散らす男の首脇を狙い、マディソンは銃床を叩きつけた。がくりと頭を落として男は一瞬で静かになる。
「……待て、マネキンだと?」
 廊下の奥の、倉庫の入り口……気づけば扉が開いていて、その影からこちらを覗く者がいる。
 10mmマシンガンが火を吹いた。タタタァン! と響く音と共に、扉と壁に穴が開く。扉が揺れるが、手応えはない。寧ろ、気配は濃くなっていて、
「コイツは……」
 やばいかもな。マディソンは手榴弾に手をかける。部屋の中から、一際大きく呪詛の遠吠えが響いてくる。それも、相当の数の。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

松本・るり遥
【冬星/B1】
(居酒屋、正直真っ先に行きたいけど……)
へ。
…………お見通しかよ。流石
助けに行く。
からあげよく噛んで食えよ

勇気がない。何でだよめっちゃ怖えよ二人は平気かよ俺が三人分ビビってんのか
俺を真ん中に挟んで進んで欲しい(ビビり半ギレ)

《救助活動、鼓舞》大丈夫、助けに来た
『死にたくねえよな』と【Immortals.】も乗せて混乱を治癒。
個室に避難させて、【想い出語り】で複製した俺の軍事ライト置いておく。光度は強い方が安心するだろ。人も集まれば自然と恐怖も柔らぐと思う
ついでに音楽機器を生成。暴れん坊将軍のテーマとか流す。不安な時に絶対いいと思う。

よく噛んで食えよな(怖くて食ってる場合じゃない)


三岐・未夜
【冬星】

停電したら、狐火で照らして見取り図確認するよ。

えっと、営業中は此処と地下の居酒屋かー。んじゃ地下だよねるり遥。行こ、ジンガ。
るり遥がどう動きたいかなんて考えなくても分かるよー大丈夫大丈夫。

居酒屋で一般人の救出。
あっ、でも唐揚げの残りは食べる!(口に詰め込んでカラオケを出る)

うっわぁ……完っ全にホラゲーの登場人物になった気分……。
まあ、るり遥のライトもあるし、僕も狐火あるし、真っ暗よりはマシかな。
ほらるり遥、しっぽ掴む?怖くないよ。

一般人もパニックしてるみたいだし、【誘惑、催眠術】で大人しくして貰って、【おびき寄せ】で避難誘導するよ。

……あ、ジンガいいなー僕も食べたい。
チーズ揚げ!すき!


ジンガ・ジンガ
【冬星】
見取り図を改めて確認しつつ
唐揚げもぐもぐ
ちゃんと二人の分も残しとくわよ

そーね、るり遥は地下キボーっしょ、わかるわかる
聞かなくても知ってるゥ
さて、居酒屋行きますか

夜目(【暗視】)利くし
【聞き耳】しつつ警戒行動とりましょ
危険や異変はこまめに報告
必要なら【見切り】迎撃
開かない扉は【鍵開け】通じるか試す
……るり遥、ヘーキ?
ダイジョブじゃんよ、だって三人一緒だもん

落ちついた一般人ちゃんには、軽くオハナシ聞くなりして【情報収集】しとこ

ついでに、テーブルの上に残ってたオツマミとか
勿体無いから【盗み】食いしまショ!
はァーっ、刺身うめー!
あ、勿論油断はしねェじゃんよ

んァ、未夜も食う?
チーズ揚げとかスキ?



 冷え冷えとした暗闇を、未夜の狐火がぼうと照らし出した。部屋は闇に包まれる前の、光の時間をわずか取り戻す。
 三人は各々に見取り図を再度確認した。雑居ビルの中で、夜通し営業しているのは猟兵達の待機場所であるカラオケボックス『歌缶』と、地下一階、隠れ家的な個人経営の居酒屋『ひびき』。巻き込まれた一般人が残っているとすればその2箇所だと想定された。
「んじゃ地下だよねるり遥。行こ、ジンガ」
「……へ?」
 るり遥が声を発しようと口を開きかけた、それに先回りして未夜が言う。驚いて図面から顔を上げたるり遥と、二人との視線がぶつかる。
「そーね、るり遥は地下キボーっしょ、わかるわかる」
 ちょっと冷めてしまった唐揚げをもぐもぐと頬張りながら、ジンガも立ち上がり肩を回し。
「…………お見通しかよ。流石」
「るり遥がどう動きたいかなんて考えなくても分かるよー。大丈夫大丈夫」
「聞かなくても知ってるゥ!」
 音も光もなくても、伝わる感覚は何と呼ぶのだろう。狐火が照らす中を三人はゆらりと動き出す。
「あっ、でも唐揚げの残りは食べる!」
「……よく噛んで食えよ」
 頬袋に食料を貯め込むげっ歯類的な状態になった未夜に、るり遥はふっと目を細めた。

 非常灯すら点いておらず先の見えなかった廊下を、るり遥の持っていた軍事用タクティカルライトの痛いほどの白光が照らし出した。進むのに支障はないがそれでも彼の足は重い。
 時折パキパキと、家鳴りにしては大きな、何かの割れるような音。バタン、バタン、と何かが壁に打ち付けられるような音があちらこちらから反響して聞こえてくる。
「うっわぁ……完っ全にホラゲーの登場人物になった気分……」
 未夜は詰め込んだ唐揚げを飲み込んで、鳴る音に耳をぴくりと向ける。
 ジンガも両手を頭の後ろにやって気を抜いたような姿勢でいるが、ライトの向いていない方の廊下の先へ目を凝らし、怪音に混じる気配を注意深く探っている。しかし傍らの友が、キャスケットの下に表情を沈めている様子に気がつくと。
「……るり遥、ヘーキ?」
「……」
「ほらるり遥、しっぽ掴む? 怖くないよ」
 未夜も声を掛ける。
「…………何でだよめっちゃ怖えよ二人は平気かよ俺が三人分ビビってんのか???」
 急に捲し立ててから未夜の尻尾をぎゅっっと掴んだ。
「……ダイジョブじゃんよ、だって三人一緒だもん」
 未夜を先頭に、ジンガが後方警戒をしながらるり遥の背を押すような形で一列になって進む。猟兵であれば難なく、閉じられた箱の外側へ脱出できるであろう1Fの入り口を通り過ぎて地下へと。
 そこで、ガシャン!! とグラスの割れるらしき音がした。続いて人の怒鳴る声。
『やめろ! やめてくれ!!』
 二人の間で小さくなっていたるり遥が、駆ける。居酒屋入り口の引き戸は、中の客が怪異を入れないようカギを掛けてしまったらしく動かない。ジンガが仔細ヒミツの七つ道具を取り出して、慣れた手付きでそれを解錠する。
 踏み込んだ三人、一際大きく燃やす狐火と、ライトの光が店内を照らす。だがその時、錯乱した客が投げたグラスが不意にこちらへ飛来した。
「うわっ、危なっ」
 すんでのところでジンガが身を捩りそれを避ける。ガシャアンと壁に当たり割れ落ちるそれを見て、るり遥がひゅっと息を吸った。
「なあ、お前ら死にたくねえよな? 死にたくねえよなぁ!!?」
 呪詛も怪音もかき消す叫び声が響く。

 錯乱して取っ組み合いになっていた若い男性客二人、カウンターの内側で伏せて震えていた店主、個室で隠れて泣いていた、男性客の片方の連れらしき女性客……各々に恐る恐る、三人へと顔を向けてくる。
「……大丈夫、助けに来た」
 今度は落ち着いたるり遥の声。
「もう怖くない、怖くないよ」
 未夜が狐火を揺らせば、怯えた目の彼らは明かりにすがるように三人の周りへと集まった。ひとところに集まっていた方が良いと、そのまま個室に誘導する。
 何があったのかとジンガが彼らに問うと、
「わからない……何が起こったのか。暗くなって、音を聴いていたら急に苦しくなって、もう何も、よくわからなくなって……」
 るり遥が震える男性客の背を摩り宥めつつ、タクティカルライトと音楽機器を複製し個室内に置く。
「って、ジンガまた何食ってんの」
「だって勿体無ぇし……はァーっ、刺身うめー!」
 彼はフットワーク軽く、店内のテーブルに無事に残っていた料理の皿をかき集めて来たらしい。
「あ、ジンガいいなー僕も食べたい」
「んァ、未夜も食う? チーズ揚げとかスキ?」
「すき!」
「…………よく噛んで食えよな」
 音楽機器から、なぜかデデデーン! という馴染み深い時代劇ドラマのテーマ曲を流して気を紛らわさなければこの状況をやり過ごせない程のるり遥には、二人へそう言うのが精一杯だった。
 そんな彼らの様子に助けられたか、個室内には小さいながら笑いが起こる。そして何かに気づいた様子で、女性客がおずおずと話し始めた。
「……そういえば暗くなる直前に、なにか大きな物音と……犬が吠える声が聞こえた気がするんです。店の外の……廊下の奥の方から」
「この階の奥にあるのは……」
「ビルの設備管理室」
 恐らく、この暗闇を作り出した犯人達はそこに居るのだろう。此処でじっとしているように、と不安げな大人達に言い含めて、三人は再び廊下へと飛び出していく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

明日知・理
四・さゆり(f00775)と。

…声にも表情にも出さなかったが。それなりに驚いた。
平静を取り戻すように一度深くため息を吐く。
「…さて」
行くか。

探索はさゆりと共に人手の足りない所へ、一般人の保護を優先に。
UDCである黒妖犬――シスにも手伝わせる。(仲:悪い)
人形の一部に眉根が寄る。…人形も、痛いだろうに。
一般人に接触したらまずは怪我の確認、必要があれば医術を。…と言っても、応急手当くらいだが。
「…おい、暴れるな。俺たちはお前の味方だ」
尚も錯乱する様なら手でも握って落ち着かせる。
一般人を伴って移動する際は出来る限り庇いながら進む。…怪我でもされたら、寝覚めが悪い。


アドリブ歓迎


四・さゆり
アドリブ大歓迎
【明日知・理(f13813)】と一緒よ。


‥‥だれよ。勝手に、
真っ暗な画面に、わたしの顔が映った。

扉を叩いたのは、誰
マナーを教えないといけないみたいね。

ドアを蹴破って進みましょう
マコ、早くなさい。


わたしは探検がしたいのだけれど、
無愛想な顔したお人好しが、横に居るの。
付き合うわ、人の足りないとこに行きましょ。

一般人の保護は、マコがするでしょう。
だって、うるさいのは嫌い。騒ぐのなら殴るわよ。
大人しく、して。

わたしはあたりの警戒を。
さて、シス。
遮るものはわたしたちが払いましょう。

かわいい手足がわたしたちを襲っても、壊さぬよに。

かわいいお人形だもの。
‥‥ええ、殴らないと気が済まないわ。



 ――ぷつり。モニターの電源が落ちて、黒い画面にマイクを持ったさゆりの顔が反射して映し出された。
「……だれよ。勝手に、」
 さゆりが文句を言い終わらない内に、すとんと部屋の明かりも落ちる。もう、何も見えなくなった。
 異変は続き、バン! と何者かが個室の扉を強く叩いたような衝撃と音。
「…………」
 突然の事に理も声をなくし、少女が座っている筈の方へと目を向ける。
「……扉を叩いたのは、誰」
 急に歌を止められて不機嫌だ。と思った。
「マナーを教えないといけないみたいね」
 彼女が立ち上がった気配に、理も跳ねた心拍数を整えるべく大きく息を吐く。部屋を出ようとさゆりがドアノブに手をかけるが、開かない。がちゃがちゃがちゃ、と何度か乱暴にノブを回してから。
「……マコ、早くなさい」
「……さて」
 行くか。促されて扉の前へ、そして思い切り蹴り飛ばす。ガァン!! と響く音は扉の向こう側に居た何かの気配ごと勢いよく散らして、道は開いた。

 ある猟兵達により、ビル内の情報が同行の猟兵達の端末へ送られてきていた。それによれば3F、4Fは恐らく安全度高め。2Fと5Fが怪しい。こちらから何名か2Fへ行く。
 ならば最終的に5Fに行くとして、まずは現在4F、この階に残っている一般客の様子を見て行こうと、これは理の意向であった。
「わたしは探検がしたいのだけれど……付き合うわ」
 お人好しね、となじりながら仏頂面な傍らの青年の顔を見上げる。
 と、方針を決めたそばから、同階の廊下の奥で悲鳴があがった。数人の若い男性の声だ。二人はライトで廊下を照らしながら走る。
「――来い」
 理が短く呼べば、彼に宿るUDC――彼がシスと呼ぶ、大きな闇色の妖犬が音もなく傍らに現れた。
「嫌だ……!! 助けて……!!」
 騒いでいる若者達は一人がうつ伏せに倒れ、助けを乞い叫んでいる。残る二人は彼を助けることもできず、ただ怪異に怯えてしゃがみこんでいるといった様子だ。倒れている青年は……ずるり、と何故か足元の方へと引き摺られる。そちらにあるのは、用具入れの倉庫の入り口だけの筈だが。
「シス!」
 理が命じれば、黒妖犬は即座に、だがどこか不機嫌そうに飛び出していく。近づいてみれば、倒れた青年の足には、華奢な女性のものを模ったらしい白い腕が――腕だけが、青年の足を掴み引き摺っている。
 UDCの影響を受けたものであると、近しい存在のシスには判別できた。噛み付くと、びくりと震えてその腕は急に力を失う。
 邪魔をするな、そう言うかのように、新たな人形のパーツがどこかから投げつけられ飛来する。だがそれは警戒していたさゆりに見つかった。赤い傘がふわりと浮いてぱっと咲き、空中で払い落とされる。
 その間に理は青年達に駆け寄って、彼らの無事を確認する。
「何だよアンタ! ヒィッ、寄るな! 何だよあの犬、何が起きてんだ!」
「……おい、暴れるな。俺たちはお前たちの味方だ」
 バタバタと手を暴れさせながら喚く青年の腕をそっと掴んで、理が宥める。
「騒ぐのなら殴るわよ。大人しく、して」
 少女に鋭い目でキッと見下ろされて、青年はヒッと萎縮する。理は倒れていた青年も助け起こして怪我の有無を問うが、幸い大事はないようだ。
 彼らは自力で個室の扉をこじ開けたものの、廊下で何者かに襲われたということのようだった。理はこの階の部屋に固まって、留まっているようにと告げて部屋へと送る。

「シス、それ、壊してはだめよ」
 さゆりの声で、シスは少し考えてから、咥えていた人形の腕を床に置いた。もう腕は動かなかった。
「……人形も、痛いだろうに」
 食いちぎられたようなその腕の切断面に、理も眉を顰める。さゆりは先程傘で払い落とした、小さなドールの足パーツを拾い上げた。つやつやとした、少し汚れた赤い靴を履いた足。愛らしい少女のドールの姿が思い浮かぶ。
「……ええ、殴らないと気が済まないわ」
 幼気な人形達をずたずたにして、自らの遊び道具としているその存在を、殴らなければ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 集団戦 『ヒトガタクライ』

POW   :    あれもおいしそう
【口から人形の手足を離す事】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【対象を噛み砕く為の鋭い牙】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    とおぼえオルゴール
対象のユーベルコードに対し【オルゴール音の混ざった歪な遠吠え】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
WIZ   :    ごりごりがりがり
戦闘中に食べた【人形の手足】の量と質に応じて【全身が錆に覆われ】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●明けない暗夜を終わらせて

 ――クロ、ヨル、おいで。
 ああ、またおもちゃをこんなにボロボロにして……
 取り合いしちゃダメだよ、仲良く――

 …………
 クロも、ヨルも、オルゴールも、動かなくなっちゃった。
 ――修理屋さんに直してもらおう。

 ――――

 空っぽの箱の中に入ってきた、たくさんのおもちゃ。
 全部、欲しい。全部、ぼく達のもの。
 遊ぼう。遊ぼう。遊んで、遊んで、鳴いて、吠えて、食い千切って、噛み砕いて。
 そうすればまた、ご主人に会える。きっとまた、褒めてくれる。

 ♪ ♪ ♪

 その姿は、双頭の黒犬。闇の中に4つの金色の目が、ギラリと光っている。
 おおよそ中型犬ほどの大きさだろうか。奇妙なのは首がふたつあることだけでなく、その身体が金属や木片でツギハギにされていることも挙げられる。
 本来尻尾が生えているべき場所には、手回しオルゴールのハンドルらしきものが取り付けられ、彼らの思いに触れて、キィキィと錆びついた音を立てて揺れた。
 骸の海を経て、それらは無数の群れとなり――
 オブリビオンとして得た能力のみならず、元来の動物としての鋭い感覚、俊敏性、獰猛さに加え、当てられたツギが生み出す歪な頑強さを持って、猟兵達を襲うだろう。

 大好きな『人形』の手足をそれぞれの口にくわえて。
 箱の中のすべての『ヒトガタ』が、動かなくなるまで――彼らの遊びは終わらない。

======
 第3章、集団戦です。
 前述の通り、それぞれ2章で移動した地点での戦闘となり、基本的に他の階への移動などは発生しません。
 可能な限りではありますが、同場所の戦いをある程度まとまったリプレイとして書かせていただこうと思っています。
 ソロ描写をご希望の方は、お手数ですがその旨をご記載ください。

 一応、2章で場所を指定していた方同士はほぼ同時に現着、指定がなかった方はやや遅れて到着する、という状況で考えていますが、あくまで描写の目安でそれによる有利不利は発生しません。
 また、猟兵達の行動によりすべての一般人の安全は確保された状態となっています。
 プレイングでは戦闘行動と、心情などに注力していただければと思います。

◆第3章のプレイングは、4/4(木)午前8:30以降から受付させていただきます。
======

 ♪ ♪ ♪
八坂・操
【SPD】

わぁ、双頭の黒犬なんて格好良い♪ 特に無理矢理くっ付けた歪な造形とか、操ちゃん好きだよそういうの☆
だけど残念! 人の味を覚えた動物は、また人を襲う前に殺さないといけないんだよね♪

……だから、彼女を呼ぼう。
「……ヒヒッ」
【/\/\>】……腕が六本、足が一つ。異形具合はこちらもそう変わらない。
既にここは箱の中。はてさて、閉じ込められたのはどちらだろうか。
後は彼女の自由の時間。牙を向かねば無害なそれ。躾のない獣に待ちはない。故に……襲い、襲われるは自然の道理。
「食事も遊戯も、もうおしまい」
例えそれを打ち消したとしても、強敵が消えたと安堵せずにはいられない。
さて、もう一人がそれを逃すかな?


リリィ・アークレイズ
ハッ、ツギハギワンちゃんか!
(アイス平らげる)
マネキン咥えて散歩ってか? それよりオレ達と遊ぼうぜ!
おっと近づくんじゃねェ、奥で固まってろ
お手!おかわり!(ショットガンで「吹き飛ばし」「2回攻撃」)

使うユーベルコード、
魔術じみたモンじゃ無ェ
武器のリミッターを外して銃弾、爆破の威力をデタラメに上げるだけだ
ただ銃撃つだけでオレの身体が後ろに吹っ飛ぶんだぜ
笑っちまうよな
んで、そのじゃじゃ馬達を扱う為に大量のカロリーが必要ってわけだ
それじゃあ、その顔に風穴空けてやるぜ!

パーティーは終いだ、あばよワン公!
(吹っ飛びながら大量にばらまいていたLEMONを最後一斉起爆させます)

【アドリブ、連携大歓迎です】



 ビル1階、フライドチキンチェーン店の厨房内。
 リリィはカップアイスの残りの塊にスプーンをざくりと刺して掬い、ぺろりと平らげると、先に操が声を投げかけた通路へと素早くライトを向ける。そこに、そいつらは居た。正面を向く首と、少し傾いた首とが、各々の金の眼にライトの光を反射させぎらりとこちらを見ている。
 それぞれの口には、店のマスコットである等身大の人形からもぎ取られたであろう手足のパーツを咥えていた。
「わぁ、双頭の黒犬なんて格好良い♪ 特に無理矢理くっ付けた歪な造形とか、操ちゃん好きだよそういうの☆」
「ハッ、ツギハギワンちゃんか! マネキン咥えて散歩ってか?」
 通路の奥に重なる影はニ体、三体、いや、床のタイルをかしかしと擦るいくつもの足の爪の音からは、まださらに奥に居るだろうか。急な客人への警戒半分、遊び相手の登場に期待半分、品定めをするようにギョロギョロと動く目線と、荒い息遣い。
「暇してんなら、オレ達と遊ぼうぜ!」
 リリィがショットガンを構えるのを合図に、通路から飛び出してくる双頭一体。彼女の肢体に内蔵されている金属の匂いを嗅ぎ取ったのか。『人形』と認識したか、自らと同じ『ツギハギ』と、親近感を持ったかは定かではないが、咥えていた足をボトリと落として、大口を開けリリィへと飛び掛かる!
「おっと近づくんじゃねェ、お手!」
 そう言いながらも彼女が差し出すのは右脚。ダァン!! 展開した橙色のショットガンから、至近距離で放たれた散弾により、頭の一つが肉片となり撒き散らされる。
「……おかわり!」
 厨房のカウンターに凭れるように背を軽く打ち付けつつ反動を堪えると、間髪入れずもう一発、その黒毛の身体が地に落ちる前に胴に命中し、黒犬は前足の一本も彼女へ触れることなく押し戻されて床を滑った。

 一瞬の内に一体が撃たれたのを皮切に、通路から次々と黒犬達が飛び出してくる。
「……ヒヒッ」
 躊躇なく牙をむき出しに襲う黒犬を目の当たりに、操が小さく笑い声を漏らす。いや、それは正しくは操の声ではなかったかもしれない。
 一度人の味を覚えた動物は、また人を襲うようになる。残念だが、殺さなければならない。
 ――だから、『彼女』を呼ぼう。
 『/\/\>』の封が崩される。異形には異形を、呪詛には呪詛を。
 ズ、ズ……と操の影が蠢いて現れたのは、彼女に似た長い黒髪の女性……しかし、肩から伸びる腕は三対六本。そして下半身は、足ひとつの大蛇だった。
 現れた『彼女』――カンカンダラは長い前髪の間からニタリ……と笑う口を覗かせて、天井すれすれの位置から黒犬達を見下ろした。途端、ざわつき始める黒犬達。ギャン、ギャウン! 警戒をあらわに、カンカンダラへ吠える。あるいは身体を竦ませ、人形の手足を噛み砕いた口からぼたぼたと涎が垂れて床を汚した。
 錯乱したように数体がカンカンダラへ走り、その蛇の胴へ牙を立てた。
 傍らでワンピースを静かに揺らして佇む操の表情は、前髪に隠れてよく見えない。だが確かに、笑っていた。どろり、部屋の中の禍々しい空気が、一層濃度を増す。よくも、傷つけたな。ああ、ああ、恨めしい――
 箱の中に、呪詛が満ちる。犬達に逃げ場所はなかった。
 噛み付いた犬達が黒い泡を吹いてのたうつ間に、再び弾丸が襲う。リリィの右腕の拳銃が硝煙を上げている。早撃ち用の銃でも、リミッターを外したその威力は、頭をふたつ安々と貫いて大きく風穴を開けるほどだ。ピザとコーラとアイスで摂取したカロリーが、ここに来て大いに有効活用されている。
 食うか食われるか、随分と遅い時間のディナータイムは、猟兵達が圧倒的な制圧力で以て決した。
「食事も遊戯も、もうおしまい」
「ああ、パーティーは終いだ、あばよワン公!」
 ばら撒かれていた『YELLOW LEMON』が一斉に起爆する。呪いにその身を縛られた黒犬達は為す術もなく炸裂に巻き込まれ、人形のパーツごと、有機物と無機物の混ざる塵屑となった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

花菱・真紀
人形を食べているのか…でもこれがいつ人間になるか分からないな…人形は人を形どったものだし人間だって『ヒトガタ』には変わりない。

UC【エレクトロ・レギオン】使用。
誘導につかい敵にまとわりつかせ気を引かせる。
【クイックドロウ】【援護攻撃】【スナイパー】で敵の二つある頭を狙って攻撃。

【第六感】や【戦闘知識】による【見切り】によって攻撃を回避。

猫も好きだけど犬もわりと好きなんだよなぁ…でもこの姿のまままと悲しいよ。
だから、ちゃんと倒してやらないと。

アドリブ連携歓迎。


ワン・シャウレン
鞍馬(f02972)と

幽霊の正体見たり…というべきか
見ればなんじゃ、こやつらも哀れを誘う姿
叱る飼い主までは蘇れなんだがその不幸かの
まぁその悪食、こちらに来る時に忘れたでなくば飼い主のせいやもしれんが…

良いじゃろ。代わりに遊んで、叱ってくれる

数が多いなら纏めて相手出来るようにせんとのう。
水霊駆動を起動。
格闘戦、その延長と補助に使うが主じゃが飛び道具にするも難しくはない。
集まって来るようなら纏めて蹴り抜いてくれよう。
カウンターやフェイントも織り交ぜいなすことも重視して。
確実に減らしていくとしよう。

お仲間は心外とは言ったがこやつらにもそう見えるなら
餌には恰好かの
その際は周りが倒し易いように立ち回ろう


鞍馬・景正
随分と面妖な獣ですな。絡繰りと繋ぎ合わされたような……。

如何なる事情があるかは分かりませんが、それならそれで斬る手に迷いもないというもの。
参りましょう、ワン嬢。

◆同行
ワン嬢(f00710)と共に。
同地点にいる他猟兵との連携も歓迎。

◆戦闘
抜刀しながら出方を伺い。
銜えた人形の一部を離す瞬間が恐らく攻撃に出る機であろうと【見切り】、その時を待ちましょう。

ワン嬢の死角を補う形で立ち回り、飛び掛かって来れば【乗打推参】にて咽喉を抑えて床に縫い付けて無力化。
そのまま我が【怪力】で首を折るか、脇差で切り留め、二体目以降にも備えましょう。

獣相手とて、組討(【グラップル】)は応用できるというもの。


伊美砂・アクアノート
【SPD】【アイ・リスパーさん f07909と同道】・・・怪奇現象だとしても、頭部を撃ち抜けば止まるでしょう……多分。止まらなかったら、止まるまで撃ち続けるだけよ。【2回攻撃6、暗視5、かばう5】 アイさんを庇うように、分身と共に前に出る。…ショットガンが装弾数25発、マシンピストルが拡張マガジンに33発。全弾打ち込めば、流石に無傷ってワケにはいかないでしょ…! 後ろに攻撃が行きそうな場合、身を挺して庇う。…へへ、大丈夫ですか姫…ってね。 …本当に恐いのは、闇でも夜でも死でも痛苦でも無いのさ。この世界の中で、私は孤独であるという単純な事実が、最も恐ろしい。だからヒトは、誰かと一緒に居たいのさ。


無明・緤
遊ぼうぜ
夜が明けるまで

己のからくり人形を【操縦】し
敵の攻撃を引き受ける囮に仕立てよう
人形の手足の一本位くれてやってもいい
手柄がなきゃご主人に顔向けできないだろ
ただし、一本だけだ

食いついてきたら、口が人形の手足で塞がっている間に
UC【エレクトロレギオン】召喚
闇の中でも見える四つの金眼が的だ
呼び出した全てに一斉攻撃を指示、敵に食われる前に使いきる

どうだ、すげえだろ?と悪ガキの笑み
オモチャは多いほうがいい
最後まで楽しい夜にしよう

遠吠えを放つ気配があればその辺の人形を拾い
そら、取ってこい!と【鼓舞】して
遠くへ放ると見せかけ【フェイント】で注意をそらす
共に戦う誰かのUC発動を邪魔させぬよう【時間稼ぎ】だ


アイリス・ブラックバーン
「…犬…?にしては…悪趣味な格好、ね…。悪いけど…その命≪タマ≫、殺≪ト≫らせてもらう…」

腕に付けた腕時計型の小型装置「ライトニングムーバー」に手をかけ、ボタンを押しUC【リターナー】を発動
短時間だけ自身の体感時間を引き延ばし、スローモーションのように動く世界の中、【ダッシュ】【ジャンプ】【スライディング】を組み合わせ複雑に移動しながら敵に対し高速での攻撃を仕掛ける
【早業】で銃を引き抜き、『Handsome Devill』と『Still Ill』の二挺持ちで【クイックドロウ】の【二回攻撃】を複数の敵へ繰り出す

「…全部ぶち壊してあげる、手加減はしない


アイ・リスパー
伊美砂さんと同行

ビクビク震えながらアンティークドールカフェに入り
謎の怪奇現象に悲鳴を上げている所に犬たちが現れます。

「伊美砂さんっ、な、なんかあの犬、身体が継ぎ接ぎで……
きゃ、きゃあっ、顔が二つっ!?」

まるでお化けのような犬の姿を見て、思わず悲鳴を上げてしまいます。

伊美砂さんに犬の攻撃から庇ってもらいますが、
私も戦いをサポートしなくてはっ!

【チューリングの神託機械】で情報処理能力を向上。
【マックスウェルの悪魔】の炎の矢で攻撃します。

「それを遠吠えで打ち消されるのは計算済みです!」

遠吠えで炎の矢を消された直後に【アインシュタイン・レンズ】を放ちます。

アドリブ大歓迎
思いっきり怖がらせてください



 2Fアンティークドールカフェ、『Coffre à jouets』。銘打たれた通り、レトロで上品な家具類の上に、店のコレクションである大小様々な人形達が行儀よく座っている、はずの場所だった。今はそれらの大部分は、猟兵達のライトが照らす以外は闇の中に沈み、照らし出された人形達も定位置から転がり落ちていて、無残に四肢をもがれている。
 双頭の犬達は店の物置を、自分達のお気に入りの人形の隠し場所にでもしていたのだろうか。だが猟兵達の侵入する気配を嗅ぎ取った彼らは、そのお気に入りを各々引っ掴んで飛び出してきた。それだけではなく、各個室から、受付のカウンターの裏から、化粧室から。闇の中から異形達が次々と姿を現す。彼らの好きな人形が大量に置かれたこのフロアには、本丸と言うべき数のヒトガタクライがその身を潜めていた。
「幽霊の正体見たり…というべきか」
「随分と面妖な獣ですな。絡繰りと繋ぎ合わされたような……」
 ワンと景正を先頭に、受付ロビーに順次到着していた猟兵達は敵の群れの動くのに合わせ散開する。
「……犬……? にしては……悪趣味な格好、ね……」
 カウンター裏に潜んでいた一体に即座反応したのはアイリス。腕時計型の『ライトニングムーバー』に手を伸ばすとカチリ、起動した。アイリスの世界に数秒だけ、訪れるバレットタイム。
 銀の瞳が細められる。気配の方へすかさず走り出し、雑貨が置かれたテーブルを軽快に駆け上がりカウンターに肉薄する。猟兵達のライトに照らされる、空中に漂う塵のひとつの細かな挙動までも、彼女にはスロー再生の映像で鮮明に捉えることができた。
「悪いけど……その命≪タマ≫、殺≪ト≫らせてもらう……」
 ――バン!! 奇襲を掛けようとカウンター裏から飛び出した筈の一体の黒犬は、いつの間にか立場逆転、テーブルの上から狙っている銃口に気づいたときには、既に銃声の鳴り響いた後だった。
「伊美砂さんっ、な、なんかあの犬、身体が継ぎ接ぎで……きゃ、きゃあっ、顔が二つっ!?」
 相次ぐ奇妙な現象と、目を凝らした先に見えた怪物たちの群れに、アイはアクアノートの影に隠れながら悲鳴をあげる。
「怪奇現象だとしても、頭部を撃ち抜けば止まるでしょう……多分」
「止まらなかったら、止まるまで撃ち続けるだけよ」
 二人のアクアノートはアイを護るように進み出ると、それぞれの得物を迫り来る群れへ向けて構える。
 赤いレーザーが黒犬の小さな額を捉えた瞬間、ダダダッ! と放たれる銃弾がそれを弾き飛ばした。片割れを失ってよろけながらも、もう一方の頭をこちらへグルリと向けて突進して来る。すると今度は、ヒートシールド付きの大型ショットガンが強烈に火を吹いて、残りの頭ごと吹き飛ばすと今度こそ動かなくなった。

 ロビーに続々と集まってくる異形達に対し、こちらも数で対抗と、真紀は機械兵器の群れを喚び出した。犬達とほぼ同じ目線の小さな機械の無数の兵士達は、物陰と闇に紛れて犬達へと纏わりつく。それに気づいた犬達は咥えていた樹脂製の手足をべきりと噛み砕いて、飲み込んだ。すると彼らの身体はみるみる、赤黒い錆に覆われていく。
「人形を食べているのか……」
 目を見張る真紀の視線の先で、より強靭になった黒犬の顎と牙が、機械兵器の一体を噛み砕くのも見えた。あの牙が人間に向けられればひとたまりもない。人形とは名の通りヒトを形どったもの、この狂気の空間の中で、意志を手放し動くことを諦めてしまった人間は『ヒトガタ』と認識され、あのように喰われるのだろう。
 機械兵器は次々と襲われ機能停止させられていくが、それは真紀の想定通りだ。対UDC仕様の拳銃を素早く抜き放ち両手でグリップ。足を止めてしまった黒犬のふたつの頭を、弾丸が冷静に、的確に撃ち抜いていく。
「猫も好きだけど、犬もわりと好きなんだよなぁ……」
 黒犬達についている色違いの首輪を見れば、元々は愛玩犬であったのだろうと想像がついた。銃を構える真紀の表情には悲痛が浮かぶ。
「……でも、この姿のままだと悲しいよ」
 ――だから、ちゃんと倒してやらないと。
「……全部ぶち壊してあげる、手加減はしない」
 それは果たして同調か、ただ仕事を遂行する彼女の冷徹な人格が望んだというだけの言葉なのか。アイリスがフロア内の物陰を使って犬達へ接近すれば、両手の『Handsome Devil』と『Still Ill』が、咆える。加えてアクアノート達のマシンピストルとショットガンは銃弾の数の暴力を振るう。機械兵器に気を取られて猟兵達から一時でも目を逸らせば、黒犬達は即座に弾丸の雨に貫かれた。時折流れ弾や跳弾が、カフェスペースを区切る間仕切りの薄いガラスをパリン! と粉砕し、ソファに置かれたクッションを破裂させ、中の羽毛やらビーズを舞い上がらせる。
「あ、あわわ……私も戦いをサポートしなくてはっ」
 あっという間に戦場の様相を呈したフロアに鳴り響く音の嵐に、アイは耳を押さえながらも精神を集中させる。万能コンピュータへアクセス、カラオケで最高得点を勝ち取った演算能力は、此度は敵を討つために。展開されたプログラムは、周囲の熱を収束させ炎を纏うひとつの矢を作り出す。
 明々と輝く矢は一時的に、部屋を明るく照らし出した。異変を察した黒犬達は、危険を仲間に知らせるかのように、高らかに遠吠えを始める。それはこのビルが闇に閉ざされたときに猟兵達が聴いた、オルゴールの音の混じる奇妙な声だった。
 遠吠えのために足を止めれば、また幾許も無い内に誰かの銃弾がその頭を撃ち抜いてしまうのだが、一体が放った遠吠えは次々と、伝染するように黒犬達を焚き付けフロア中に響き渡った。アイの作り出した炎の矢は、犬達の吐く呪詛の力に、集めた熱を奪われ消失していく。
「それを打ち消されるのは計算済みです!」
 強く燃やした炎はいわば事前準備、その影で展開されていた重力レンズが、炎の矢が作り出した光を集めていた。アイが腕を払うと、光線がカッ!! と部屋を薙ぎ、障害物ごと黒犬達を焼いた。
 熱を帯びた風が一帯を吹き抜ける。頭を一つ失くした一体が、一矢報いんとアイの声を頼りに迫った。ショットガンを構えた方のアクアノートが、咄嗟に割り込む。飛びかかった黒犬の口に銃身を突き立てようとするも間に合わず、彼女の細腕に牙が深々と刺さった。
「……ッ!!」
 もう一人のアクアノートが即座にそれを撃ち排除する。アイが青い顔をしながら、アクアノートの『本体』へ駆け寄って。
「い、伊美砂さんっ……」
「……へへ、大丈夫ですか、姫……ってね」
 彼女は痛みを堪えながら、笑っていた。
「……本当に恐いのは、闇でも夜でも死でも痛苦でも無いのさ。この世界の中で、私は孤独であるという単純な事実が、最も恐ろしい」
 だからヒトは、誰かと一緒に居たいのさ。どんな人格で居ても気丈に見える彼女が語る意外な言葉に、涙目のアイは傍らで、強く頷いた。

「あちらは随分と、派手にやっておられますな」
 景正達はガンスリンガー達の射線と流れ弾を避けて、カフェスペースの奥へと移動していた。あれだけの弾丸の雨も追いつかない程、2対の目は闇から湧いて出ているかのように続々と現れた。
「おれ達も遊ぼうぜ、夜が明けるまで」
 緤が絡繰人形を操りけしかける。彼の猫の手には糸は括られていない。代わりにアンテナとなる猫のひげがぴくりと動いて、電波を介して彼の人形へと命令が送られていた。
 先ごろまでヒトに擬態させていた彼の戦闘傀儡『法性』は、楽しげに踊るように、黒犬達の前へ立ちはだかる。急に眼の前に現れたご馳走に、黒犬達はキィキィと尻尾を鳴らしながら殺到した。法性は軽快にそれらを躱す、だが、一度だけあえて避けずにその牙を己の腕に喰い付かせた。
「人形の手足の一本位くれてやってもいい……手柄がなきゃご主人に顔向けできないだろ」
 ただし、一本だけだ。彼がにやりと笑って呟く間にめぎ、と音がして、傀儡の左腕が肘の関節からもぎ取られる。反動で傀儡は大きくふらりとのけぞりながら、それは文句一つも言うことはない。
 狩った獲物を双頭で取り合いながら、夢中になって貪り食う黒犬。他の犬達は諦めず法性を追いかけている。その様子を、ワンは御空色の瞳に陰を落として見つめた。
 ガラクタのパーツと、よく似た顔は兄弟犬だろうか、それら同士の首が接がれたその姿の痛ましさ。彼らの元の飼い主が、既に骸の海をさまようものとなっているのか、彼らが過去となった事を悼みながら未だ現世に生き続けているのかすらも、猟兵達に知る術はなかったが。いま共に在れていないことは不幸だと。
「……まぁその悪食、こちらに来る時に忘れたでなくば飼い主のせいやもしれんが……」
 もう一つの『ご馳走』の存在に気がついたか。何体かの異形達が、ワンへとターゲットを変更して飛び掛かろうとした――だがそれは叶わず、横合いから躍り出て伸びた景正の手が、ぐわとその首根っこのひとつを掴む!
「御首級、頂戴する」
 そのまま床へ、羅刹の豪腕で叩きつける。掴んでいた方の首は血泡を吹いて動かなくなり、もう一つののたうち暴れる首は、抜いていた脇差で素早く斬った。彼らがこのような姿になった経緯もまた、今の猟兵達の知る所ではない。なればこそ景正には、現世の人々を害しようとする異形を斬ることに迷いはない。
「参りましょう、ワン嬢」
「……良いじゃろ。代わりに遊んで、叱ってくれる」
 タン! と床を蹴った機械人形は、くるりと宙返りして、傍らに置かれていた豪奢なラウンドテーブルの上に降り立つ。緤と彼の絡繰の働きを見れば、黒犬達の気を惹く『ご馳走』役の存在は良策とみえた。
「わしは手足の一本も、やるつもりはないがの」
 宿した精霊達の生み出した水が、無重力の中を泳ぐようにワンの周囲をぷかぷかと漂う。彼女へ再び牙を向いて跳躍してくる黒犬達へ、舞うように、しかし鋭く脚を振り抜けば、その水は弾丸にも匹敵する圧を持って犬達を撃ち抜いた。
「ええ、ですが……その術はあまり、多用されませんよう」
 戦友の身体に掛かる負担を思い憚りながら、景正は彼女の死角になる方へ目と刃を光らせる。
 
 緤はと言えば、絡繰人形に集ってくる隙だらけの黒犬達を無数の機械兵器で迎え撃っていた。100以上の兵器達が一糸乱れぬ動きで、闇の中に浮かぶ異形の金の眼に狙いを定めブラスターを一斉に撃てば、対象は一瞬で蒸発する。
「どうだ、すげえだろ? オモチャは多いほうがいい」
 得意げに笑うケットシーの青年は絡繰人形と機械兵士達をデコイにしながら、フロア内の家具の上を軽快に渡り犬達を翻弄していた。
 その時、フロアの向こう側から高らかに遠吠えの声が上がった。共鳴するように、緤の周囲の犬達も次々に吠え始める。
「……!」
 ワンの纏う水霊が、その歪な吠え声に混ざる呪詛の力に反応するように震えた。
 咄嗟に緤が、倒れた黒犬が落としていた人形の足を拾い上げ、投げるまねをする。
「取ってこい!」
 その動きを見た犬達は思わず吠えるのを止め、緤の手の先を追って首を回した。だが、緤の動きは見せかけだ。存在しない標的を闇の中に探して、犬達はクゥーン? と戸惑いの声を上げる。すかさず、景正の刀が静かに閃いて、その首が二度と遠吠えすることはなくなった。
「生前の習性を未だ忘れられないのも、悲しいものよの」
 ワンの掌底から放つ水霊が余所見をする黒犬を弾き飛ばす。
 異形に成り果てても、家族と共に楽しく過ごした日々の記憶がわずかでも残っているのなら、それを思い出させてやることがせめてもの手向けになるだろうか。
「最後まで、楽しい夜にしよう」
 緤が片腕をなくした傀儡を繰る。おもちゃ箱に巣食う闇が全て晴れるまで、人形達は踊り続ける。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

三岐・未夜
【冬星】

うっわ、……悪趣味……
まあ、さっきまでのホラーよりずっとマシだよね
なんてったって物理的に倒せるし

ジンガ前に出るなら、んー……とりあえず、るり遥の近くにいよっかな、僕
(……だって、この前みたいなの、もう二度とごめんだし)

設備管理室の機械ダメにしそうなんだけど……とりあえず水の矢で【属性攻撃、2回攻撃、範囲攻撃、援護射撃】!
念の為【操縦、誘導弾、誘惑、おびき寄せ】で敵だけに当てられるよう努力はする

ざわ、と尻尾の毛が逆立った
るり遥の、知らない人格
『優しくない』るり遥じゃない
彼奴ならこんな戦い方しない
……あれ、誰……?

面白そうに笑ったその顔に、何だかぞっとした
……あとでるり遥に聞くことが出来た


松本・るり遥
【冬星】

(お前ら
遊んで欲しいのか
ただの犬なのか)

未夜、ジンガ
悪い
俺今回、役立たずかも

未夜の傍ら身を屈め、Nonsenseで「伏せ」だ「ハウス」だ言って細やかな援護射撃こそすれど
友がいる事で怯えは少なく、罵倒を吼える憎悪も、「ただの犬」には湧き難い
ああ、向いてねえ

俺の中の、近接戦を好む人格
『未練のない』俺を呼ぶオルタナダブル
こいつ身と命を削るような戦い方だから見てるこっちの心臓に悪いんだけど

(分身が、カッター1本で斬り進む)
(人形を素手で奪い、開いた口に刃を突き込むような
命の危機に自ら飛び込むような)
(傷を負いつつ役目が終われば
未夜とジンガに視線を向け、一瞬面白げに笑って消える)


どした二人とも


ジンガ・ジンガ
【冬星】
未夜ー、るり遥ヨロシク~!
俺様ちゃんは前でわんちゃんのお仕置きタイムでェーす!

準備運動に羅刹旋風
いい障害物があれば【地形の利用】
【逃げ足・ダッシュ】しつつ【フェイント】で体勢崩し
【だまし討ち・2回攻撃】狙い

敵の攻撃は【見切り】回避
フェイントかけて同士討ち狙いで【敵を盾にする】

前へ飛び込んできた別人格に
本能的に警鐘が鳴る
……おい
『この』るり遥、じんがの知らねェヤツだぞ

生き急ぐようなソレに嫌な汗が背を伝う
俺様ちゃんも他人のコト言えねェけど
それでも、お前がソレをしちゃいけないことは分かる

なるべく彼の別人格が傷付かぬよう
奴に敵の牙が向かぬよう立ち回り

……あァ、無理
じんが、たぶん、あいつ嫌いだわ



 三人の猟兵が地下1階、設備管理室へと静かに侵入する。
 小規模ながらビル全体の電気設備や、消防設備などが纏められている区画だ。いくつか置かれている配電ボックスが狭い通路を作る。内一つの蓋が開いていて、時折バヂッと音を立てて火花を吹き、暗がりをチカチカと照らしていた。何かが焦げた臭いと、闇の中に複数、潜んでいる気配。
 ジンガが室内へ進み出ると、カツンと足に当たるものがある。異形達がどこかから持ち込んだのか、人形から千切り取られたらしい小さな腕だった。
 瞬間、暗闇の奥に動く金色。ジンガの後ろからるり遥がライトを向けると、双頭の黒犬が4つの眼でこちらを見ていた。ひゅっと空気を吸う音と共に光が揺れる。まるで隠れんぼをしていて鬼に見つかったかのように、それはガラクタ製の尻尾を不器用そうにゆらゆらと振りながら、ワン! と一声鳴くと駆け出して配電ボックスの裏へ身を隠した。
「うっわ、……見た? 今の……悪趣味……」
 未夜の狐耳がしゅんと下がっている。双頭だけでなく人工物でツギを当てられているというのは、明らかに何者かによって手を加えられた姿だ。だがその挙動からは、ヒトのような知性は感じられない。多少歪められているが、行動原理はただの犬のものなのだろうか。
「まあ、さっきまでのホラーよりずっとマシだよね。なんてったって物理的に倒せるし……」
「未夜、ジンガ」
 ん? と呼ばれた二人が振り返る。
「……俺今回、役立たずかも」
 悪い、とキャスケットの下で低く呟くるり遥。
「んんー? ダイジョーブダイジョーブ! わんちゃんのお仕置きタイムは俺様ちゃんにおーまかせー」
 二人は援護ヨロシク~! と、何時も調子を崩さないジンガは軽いトーンで言って、二振りのダガーを抜くと両手それぞれでクルクルと回してみせた。
 彼が前に出てくれるならと、未夜は少し考えてからるり遥と共にやや下がった位置で、妖の力を呼ぶ。
(……だって、この前みたいなの、もう二度とごめんだし)
 前髪の下で目線はそっとるり遥に向ける。彼は、未夜達のよく知る彼は、暗闇や敵を恐れていても、仲間の傷つく代わりに自らを危険に晒すことを、無意識下にできてしまう人間だから。

「はーいわんちゃん達、隠れんぼはオシマイよ?」
 ゆらり、銀の眼の羅刹が駆ける。配電ボックスの裏に居る者との気配の探り合い。踏み出した一瞬呼吸を止め、素早く方向を切り替える。獣の俊敏さに対抗できる闘争本能と感覚を、ジンガも持っている。背後を獲るのはこちらだ。
「見~つけた!」
 ザン!! 一度のアクションで2つの首からどす黒い飛沫が噴き上がる。室内がにわかにざわついて、潜んでいた気配達が鮮明になった。
 ジンガを狙う新手には、未夜の破魔矢が飛んだ。意志のあるように黒犬達の上を過ぎて、犬達がそれを追おうとすれば矢は途端雨となり降った。纏う水の浄化の力が、異形達を腹に溜まる呪詛ごと打ち払う。
「……ッ、伏せ! ……ハウス!!」
 破魔矢を操る未夜の陰で、るり遥も必死に声を張り上げていた。目だけはしっかりと異形を睨みつけているのに、口から湧き上がるのは、本来力を発揮する筈の罵詈雑言と言えるようなものではなかった。寧ろ犬達には馴染みのある響きであったようで、声を聞いて駆け回る様がどこか嬉しげに見える程だ。
(……ああ、向いてねえ)
 相手が人語を介し、悪意や何らかの思想に満ちたモンスターであったなら遣り様はあったのに。今は二人が傍に居ることにもつい甘えてしまう。るり遥の心境を知る由もなく、猛攻の網を掻い潜った一体が、入口付近の未夜とるり遥へと迫った。
「……!!」
 咄嗟に狐火が呼び出される、その前に二人の前に躍り出た者があった。黒犬はその脛に思い切り牙を立てる。未夜が驚いて振り返るが、るり遥はちゃんとそこに居た。分身か、と一先ず安堵する。だが。
 ――カチ、カチ、カチ。
 ゆっくりと硬質な音が鳴って、もうひとりのるり遥がカッターナイフを逆手に、足元の異形にずぶりと突き立てた。ギャウウン!! と双頭が鳴いて、噛む。そのるり遥は自らの身体を庇うそぶりもなく、ただ何度も、刃を突き立てた。
 未夜の尻尾の毛がざわ、と逆立つ。
 ――あれ、誰?
 常なら戦闘の際に現れる『優しくない』人格のるり遥とは戦い方も、纏う空気も違う。当のるり遥の『本体』も、脂汗を浮かべて別の自分の姿をハラハラと見つめているようだった。
 異様な空気にジンガも気づき、纏わりつく犬達をいなしながら振り向くと、その分身は敵前へ正面から突っ込んでいく所だった。手近な黒犬の顔のひとつに掴みかかって、咥えている人形を無理矢理に奪い取る。自由になった牙が刺さるのも厭わずに、口に手ごと刃を付き込む。一切の守りを捨てた彼の暴虐は、敵も己も傷だらけにしていく。
「……おい、……『この』るり遥、じんがの知らねェヤツだぞ」
 慌てて未夜が破魔矢を集め、急激にテンションを落としたジンガが、それでも『彼』の周りの黒犬を払いにかかる。背筋に冷たいものが走る。以前会った『優しくない』「時雨」ではない? 人のことは言えないし、猟兵の戦いには多少の無茶も必要とされる場面はある。だが、あれの戦い方は根本的に、何かが。
 ややあって室内の気配は一つずつその数を減らし、やがて4つだけになった。黒い血溜まりの中で立ち尽くした傷だらけのるり遥は、ぐるりと振り返り。未夜とジンガにそれぞれ一瞥をくれたあと、にか、と笑って消えていった。
 ――あァ、無理。
 友の顔で笑う男を不気味だとは、二人も思いたくはなかったが。

 二人はライトを持って少し震えている方のるり遥を無言で見ると、彼はきょとんと二人を見返した。
 弁明によれば、あれは『未練』を欠落した人格のるり遥だと言う。
「……じんが、たぶん、あいつ嫌いだわ」
 信ずる友へ向けるが故の、それは素直な言葉だ。密室、暗闇、閉じられた空間の中で人々は、良くも悪くも普段見えていないものが見えてくる。
 彼らが箱の中に見つけたものが幸であるか不幸であるか、今はまだ未来だけが知っている。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

明日知・理
【四・さゆり(f00775)】と。


…此処には、お前たちの大好きな主はいないよ。
遊び疲れただろう?主とまた、遊びたいんだろう?
だから、ほら。今は…おやすみ。

▼戦闘
さゆりを最優先にかばう
刀で攻撃を出来る限り受け流し、直撃を避ける

さゆりと息をあわせ連携を意識
俺が使用するユーベルコードは『buddy』
赤い眼の大きな黒犬を模したUDC が俺の体を覆って一つになる
この犬の大きな牙を彼らの葬送の一助とする

(護りたいものがあるから力を行使してきた。
後悔はない。今までも、これからも。覚悟してきたことだ。
ただ、
時折…ひどく、疲れる。
だがそんな弱音は、…俺には赦されない。)

アドリブ歓迎


四・さゆり
アドリブ大歓迎
【明日知・理(f13813)】と一緒よ。


あら、マナーを教えると言ったけれど
躾が必要だったみたいね

‥‥おまえは、許してあげない


あら、マコ。あんたそんな姿にも成れるの?
ふふ、可愛いじゃない

さあさ、礼儀知らずの躾の時間ね
ぶん殴ると決めたの、わたし

許さない

わたし、傷をえぐるのは得意よ
マコの牙が貫いた部位へ、
傘を振るいましょう

マコが庇うのなら、その隙にわたしが攻撃するわ
呼吸を合わせて、
難しいことじゃないもの、マコ、となら

ふふ、赤が咲いて、
綺麗よ、あんた


ね、当てもない旅って、疲れるでしょう
本当に会えるかもわからないのに、探すというのは

ねむりなさい。その先で会えるように、
願ってあげるから


アイ・エイド
もーいーかいッ!隠れ鬼は終わりだッ!!ちゃっちゃと片付けてこっから出させてもらうぜェ!

第六感で相手の攻撃を見切り、出来るだけ最低限のダメージで済むように
オーラ防御しながら、相手や相手の攻撃に纏われた狂気を視るぜッ!

纏っているカオスリングのオーラを濁らせて相手と同程度に狂化する!
オマエらは犬だし、オレはオマエらと同じくらい狂化したっつーわけだから、オレとヒトガタクライは同じ人狼だよなァ…?
んじゃ、【狂い満月】を発動させる!!
光で怯んでる内に
痺れ毒を塗った鋼糸を操って相手を締めあげとく!

アドリブ&絡みお任せ


マディソン・マクナマス
参ったぜ、嬢ちゃん達と離れるべきじゃなかったな……全部殺し切るには弾が足りるか分からねぇ。

とは言え、俺が死んだら気絶させた兄ちゃんも道連れだしな、他の猟兵が来るまでの【時間稼ぎ】に注力すっか。
ワンコロ相手に追いかけっこは勝ち目がねぇ、その場に対UDC軽機関銃を設置して、近づいてきた奴から制圧射撃で迎撃だ。
処理しきれなくなったらUCを発動して足止め。無効化対策に、即座に【2回攻撃】でもう一発UCをぶち込む。
リロードしてる暇がねぇ。弾が切れたら敵に軽機関銃を投げつけて、10mmマシンガンに持ち替えて戦闘継続。
噛みつかれようが引きずり倒されようが諦めねぇぞ、【零距離射撃】で一匹でも多く殺してやる。



 5F、倉庫へと続く廊下。投げられた手榴弾がカン、カン、と転がって――倉庫入り口で炸裂する。ギャン! と高い鳴き声が聞こえた。異形が怯んでいるその隙に、マディソンは廊下の床に対UDC軽機関銃の二脚を展開し置く。膝立ちに構え、サイトを覗く。
「参ったぜ、嬢ちゃん達と離れるべきじゃなかったな……」
 炸裂後の煙が収まる前に、倉庫入り口の扉が大きく開き、中から堰を切ったように闇色が溢れ出した。
 ズガガガガガァン!! 軽機関銃が猛烈に火を噴いてその音を廊下中に響かせる。撫ぜるように、一文字を描くと波のように押し戻される異形の群れ。
「全部殺し切るには弾が足りるか分からねぇ、――チャールズ・パーネルの魂よ、守り給え」
 続けてフラッシュバンと、スモークグレネードのピンを抜き投げた。後ろを向き耳をふさぐ。一呼吸の後、世界がネガポジ反転したように真っ白に染まり、同時に劈くような破裂音。異形の犬達も、頼りにしているのはその視力聴覚と嗅覚。光と音と煙で、七竅ならぬ十四の竅をすべてふさがれ気絶するもの、方向感覚を失って壁に激突するもの。そこを再び軽機関銃の銃弾の嵐が襲った。
 それでも尚、闇は湧いて出てくる。この階の犬達が咥えている手足は小さな人形のものではなく、等身大のマネキンのものだった。猟兵が見つけた情報によればこの倉庫はアパレル関連の企業が使っているもののようで、2Fのカフェに次いで、犬達のお気に入りの武器庫のように扱っている場所らしかった。廊下には倒れた犬達が落としたマネキンの四肢が散らばり重なっていく。
「リロード……ッ、してる、暇がねぇ!」
 撃ち切ってしまった軽機関銃を身体全体で持ち上げて、新たな群れへと全力で投げつける。傍らに置いていた10mmマシンガンを拾い、向かってくる者へ向けまた、撃つ。
 彼の後方には気絶した男が居る。ここを突破させては、あの男はヒトガタと認識されその鋭い牙を突き立てられるだろう。ついに肉薄してきた一体を、銃口間近の炎と熱で焼いて貫く。
 諦めねぇぞ。諦めるわけにはいかねぇ。マディソンのサングラスの奥で、眼光が光る。次の一体へ照準を定めた、その時――階段を駆け上がる音と。頭上を飛び越えていく小さなアンプルのようなものが見えた。
 パリン! と薄いガラスが犬の顔にぶつかって割れて、シュゥと泡立つような音。異形は急に苦しみ痙攣し始めた。
「うわっ、煙たッ!? すんごいコトになってんな此処!」
 アンプルを投げたのはアイ・エイド。その後に続いて理とさゆりが駆け上がって来る。理は気絶している男の傍へしゃがみ呼吸を確認しながら、この間一人で防衛の陣を布いていたマディソンへと声を掛けた。
「……大丈夫か、あんた」
「……。助かったぜ」
 味方の到着に安堵し、流石に肩で大きく息をするマディソン。しかし戦いはまだ終わっていないと、廊下の奥へ再び目を向けた。
「アレがUDC怪人かァ!? ……怪人じゃねェじゃねーか! 怪犬だな!?」
「あら、マナーを教えると言ったけれど……躾が必要だったみたいね」
 漸く相対した、ビル内の怪奇を引き起こしていた者達の正体。異形の獣達は相手の数が増えたことに気付き、じり、と後ずさって、こちらの様子をうかがいながら倉庫の扉の中へ滑り込んでいく。逃げると言うより、こっちで遊ぼう、と誘っているようにも見えた。

 攻守逆転、最後の手榴弾が扉の隙間から、倉庫内に投げ込まれる。バン!! と炸裂するのを確認して、猟兵達が堂々踏み込んだ。
「もーいーかいッ! 隠れ鬼は終わりだッ!! ちゃっちゃと片付けてこっから出させてもらうぜェ!」
 アイの声が響く。倉庫の中にはあちこちに、ホコリ避けのビニールはほとんど破かれたマネキンのストックが倒れている。
 入り口付近に居た何体かは手榴弾の炸裂に怯んだようだが、それでも2対の金の目が幾つも幾つも、取り囲んで見ていた。そして一斉に、彼らへと襲いかかる!
 理がさゆりを背に隠し、闇に紛れる妖刀で飛びかかって来る牙を受け流し、薙ぐ。アイはカオスリングからオーラを迸らせて、犬達を跳ね返しながらそれらを観察した。程度の差はあれど、UDC達が等しく孕んでいる狂気。深淵から漏れ出すようなその力を、アイは自らに徐々に同調させていく。
 ――ケンカもよくするけど、兄弟といつでも一緒にいられるようになった。頑丈な装甲も着いて、新しい尻尾も生えた。遊びだって狩りだって、なんだって上手くやれる! ――なのにどうして、だいすきなご主人だけ、どこにも、いないの? どうして? どうして? どうして?
 明けない夜を遊び続けるヒトガタクライ。狂気に触れたアイの、狼の耳と尻尾の毛を逆立たせる。そして箱の中に、光が満ちた。
 満月の魔力が異形達を照らし、その正体を顕にする。犬達は月に向かって吠えようとするも、呻るばかりで上手く、声が出せない。
「……此処には、お前たちの大好きな主はいないよ」
 遊び疲れただろう? 主とまた、遊びたいんだろう?
 骸の海で、あるいは輪廻の巡る先で。何れにしろ、少なくとも此処には彼らの主が訪れることはない。だから。犬達が月の光に怯んでいる間に理は、彼の中に棲む、忌むべき相棒を再び呼び覚ます。
「―――"Thys"」
 月の光も全て吸い込んでしまいそうな黒に、理の身体は取り込まれる。緋色の眼がぎらりと浮かぶ。突如現れた、金の眼の異形達の何倍も大きな黒犬の姿を恐れるように、何体かがギャン! ギャン! と吠えた。
「……あら、マコ。あんたそんな姿にも成れるの?」
「…………」
 可愛いじゃない、とさゆりは笑う。瞳の色が違っていても、彼がさゆりを見るときの目は変わらない。
 だがその視線がひとたび標的に向かえば、UDCの持つ獰猛さが彼の身体を突き動かす。葬るべきもののために、護るべきもののために、牙を立てろと!
「さあさ、礼儀知らずの躾の時間ね。……ぶん殴ると決めたの、わたし」
 ふたりの間に流れる空気が、声に出さずともぴたりと導線を伝える。巨大な黒犬が一体の異形に大きな牙で深々と噛み付いて、乱暴に投げ上げる。さゆりの目の前に飛んできたそれを赤い傘が叩き落として、さらに黒犬が牙を立てた傷へと強く、突き刺した。ぱっと赤い花の咲くように、飛沫が散ってさゆりのレインコートを汚す。
「ふふ、……綺麗よ、あんた」
 雨雲色の瞳は、今にも稲妻を走らせそうに昏く、鋭さを秘める。こんなものでは気が済まない。気分良く歌っていたのを邪魔されたことも。ドアを乱暴に叩いたことも。可愛い人形達を乱暴に扱い壊していることも。――おまえたちを、許さない。
 アイが先程も使用した麻痺毒を、鋼糸での拘束と共に流し込んで異形達をその場に縫い止めると、マディソンがマシンガンの残りの弾を撃ち尽くす勢いでばら撒き仕留める。
 一つ、また一つと闇が晴らされる。吠える声が消えていく。箱の中に満ちた呪詛が、ほどかれていく。

「ね、当てもない旅って、疲れるでしょう……本当に会えるかもわからないのに、探すというのは」
 さゆりが傘の飛沫を払う。最後の一体が倒れ伏し、動かなくなった。
「ねむりなさい。その先で会えるように、願ってあげるから」
 傍らでUDCとの融合を解いてひとがたに戻った理も、横たわる彼らへおやすみ、と呟くように言う。やがて黒い塵とも、煙ともつかないものが異形達の身体から立ち上り、ガラクタのパーツも首輪も全て連れて、霧散していった。
 アイが欠伸をしながら大きく伸びをする。マディソンが窓のブラインドの隙間を広げて外を見ると、街はまだ、夜の静けさの中――だが、東の空がわずかに瑠璃色を帯びていた。

 猟兵によってきれいに呪詛が取り払われたビルは、やがて開いて、外の者達を受け入れた。救急に偽装して夜通し待機していたUDC組織の職員達が雪崩込んできて、一般人を手早く連れ出していった。猟兵達も各々に、数時間ぶりの箱の外の空気を吸うこととなる。
 異形達は深い眠りにつき……現世には直に夜明けが訪れる。

 ♪ ♪ ♪

 ――数ヶ月後の、未来。

「ねー今度、南口のビルの方のカラオケ行ってみない? ビル全部改装して、すっごい綺麗になったらしいよ」
「あーボヤ騒ぎがあったとこだっけ? あそこのドールカフェ、ちょっと行きたいなって思ってたんだけどなくなっちゃったんだよねぇ……」
「そこね、今度はペット同伴できるカフェができたんだって」
「へぇ~」

 信号待ちの間に流れてくる女子高生達の声を聴きながら、市原・奏時はかつてのバイト先のことを思い出す。小火の為にビルは封鎖、バイトもなくなってしまった。改装が済んでからも何となく足が遠のいていたが、また、次の大型連休にバイトを入れようか。それとも、今度は客として行ってみるのも良いだろうか。
 歩き出す彼の背には、真新しいギターケース。
 空っぽの箱の中は今日も人々の集う場となって、それぞれの音で満たされていく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年04月15日


挿絵イラスト