ヘリオス無き晴天よ、光線の帳下りぬ満天よ。
陽を介さない虚空のパノラマは、在るが儘の宙を望めた。
人知を超える彼方の天体群は一見して粒の輝きに過ぎず、されど肉眼で仰ぐ一面を彩り鏤めるのなら。
数多がそれを、星夜と認識した。
――嗚呼、夜の楽園を抱く者よ。神の祝福育みし異形よ!
――其の金生る身から禁為る実をどうか、我等に!
――英知を、栄光を、授け賜え!
|星夜の竜《アダム》よ、金の林檎を頂けるのならば。
我等は望む侭に|星飾る贄《イブ》を捧げましょう。
――――――ッ、クゥァアアアアアアアア!!!
星月夜に透徹の咆哮が響き渡る。
大地に重厚な衝撃を与えた波は、美しいと畏怖する程に枝葉を踊らせた。
宵を畏敬の輝きで照らし、異端な一等星と存在する。
あれだ、あれこそは。
●『星喰い』
「――わたくしの、片翼を」
見開くオリオ・イェラキ(緋鷹の星夜・f00428)の瞳より、一筋の煌めきが零れ落ちた。
微動だにせず彼方を視る顔は酷く硬く。瞬間現実に気付き、此方へ戻って表情を整える。
「申……し訳、ございませんわ。少し、驚いてしまって」
指先で一粒を拭い微笑むと、ダークセイヴァーで異端なる神の出現を予知した事を告げた。
「それに、名は在りませんわ。姿は極大の竜を模る異形……仮に、『星喰い』と呼びましょう」
形容するならば、銀河をドラゴンの型に凝縮し入れた何か。
獰猛なる輝きを鏤めた明媚なオブリビオンには、特徴的なものが有るのだそう。
「かの身に生える、黄金林檎の樹。――それが、人々を狂わせた」
夜に瞬く、魅惑の果実。その一点で根を張る先の狂猛を忘れさせてしまうらしい。
「異端の神竜に生る黄金を視ただけで、民の恐怖は崇拝へと変貌しましたわ」
誰が噂したか、主張したのか。事実など微塵も無く憶測と理想が飛び交い妄想を育んだ。
あれを食べたら、全知を得られる。不治の病が治る。この辛い日々から、生まれ変われる。
『星喰い』に魅入られた人里は欲望に彩られ強欲が争い貪欲が理性を蹂躙した。
「人々はあれを『アダム』とし敬いますの。神の林檎を持つから、そんな無意味な連想の果てで」
仕立て上げられた欲深き者達が乞う時に、それは伝えるのだ。
――星の輝きを抱く者を差し出せと。
「『アダム』が望むから、贈る者を『イブ』と。生贄と云う現実から目を逸らす、都合の良い名付けですわ」
星の輝きとは、外見の美しさに留まらず。心の裡に秘めた、純なる輝きも糧にする。
何人もの罪無き民が差し出された。欲に縁無き人を攫い、無関係な旅人も捉え贄とした。
彼等を煌めく品で飾り付け、林檎の対価として捧げ続ける。
「輝くものたちを喰らい尽くした果てに、何の価値も無くなった地を捨て去る。残るのは、虚しさと絶望だけ」
そして巨竜は、次の|星贄《えもの》を得る迄常夜に身を隠す。
「今日、再び『アダム』が出現しますわ。欲に目が眩んだ者達が用意した『イブ』を求めて」
この機会だ。このチャンスしか『星喰い』を討てないと、夜色のオラトリオは訴えた。
「皆様には『イブ』若しくは生贄の護衛として捧げられる場へ潜んで頂きますわ」
但し注意してほしいと、猟兵達に真剣な眼差しを向ける。
「あれは狡猾な竜。潜伏者が強敵と気付いた時点で、出現はしないでしょう。……流れを説明しますわ」
先ず無害な旅人等を装い、里の者達に捕らえられた生贄と成って森中の祭壇へ捧げられる。
其処へ用心深い『星喰い』が獲物の確認に使いを寄越してくる。奴等は猟兵にとって然程脅威ではない敵だ。
「ですが、簡単に倒してしまえば強き者と判断されますわ。大事なのは、弱きを演じる事」
手下とてオブリビオンであれば斃さなければならない。けれども、狩る者だと悟られてもならない。
「哀れな生贄のフリをしながら、倒してくださいませ。偶然を装うも、やっとの思いで退けるのも良いかと」
先兵で手古摺る姿を見せつけ、現れた『星喰い』を討伐する。
「里の住民達に対応は要りませんわ。元凶を倒せば、憑いた欲が消え時期に落ち着くでしょう」
元より、アレに何の意味もない事に彼等自身で気付かなければならない。
ならば猟兵達のするべき事は唯一つ。
「狩りを。例え相手が油断をしたとしても気を付けて下さいませ。あれは……とても、強い」
武運をと願いを込める指先の、オリオン座を描いたグリモアが一層輝いた。
周辺が星流れる軌跡を描き、風景を満天の輝きが支配する常夜へ塗り変えていく。
「どうか。……どうか、」
最後の言葉は、転送の瞬きに消えていった。
あきか
あきかと申しますよろしくお願いします。
●執筆について
プレイング受付開始のご案内はマスターページやタグにて行っています。
お手数ですが確認をお願いします。
●シナリオについてのお願い
各章とも冒頭文が詳細な案内になります。
追加される文章をご確認頂いてからの参加をお願い致します。
●一章
祭壇に捧げられた哀れな生贄を演じます。
捕まったりするシーンは在りません。描写は生贄として捧げられた後からになります。
戦場は森の木に囲まれる開けた場所となります。
出現する敵は猟兵一人に付き1~2体程で簡単に倒せるでしょう。
ですが、ボスが何処かで視ています。
幸運を演出したり、必死の抵抗を装う等で弱い贄であると見せかける必要があります。
また、複数参加の場合のみ生贄の他に周囲に潜伏する護衛として参加する事も出来ます。
身を隠しながらばれないように生贄を護ってください。
生贄は最低1人必要です。勿論全員生贄もOKです。
●二章
ボス戦になります。純戦です。
相手は猟兵を脅威ではないと判断し油断していますが、元々強敵である事は留意下さい。
●期間限定ルール
闇の救済者戦争の⑱『ケルベロス・フェノメノン』で入手した|小剣《グラディウス》の研究が進められています。
この研究の進行度は、ダークセイヴァー戦後シナリオの成功本数に比例します。
第1章 集団戦
『もく』
|
POW : じめじめ、うつうつ
【闇】【湿気】【周囲の幸福】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD : もくー
全身を【ふわふわとした雲】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
WIZ : おいしいー
【不安】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【自身の分体】から、高命中力の【幸福を喰らう雲】を飛ばす。
イラスト:lore
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「きっと、きっと私が用意した『イブ』を気に入って下さる。林檎は私のものだ!」
「何を言う、俺が捕まえた『イブ』こそ『アダム』に相応しい!」
欲に侵された者達の騒音が歪に飛び交う。
理性はとうに朽ち果てた。彼等の思考に有るのは至高の果実を手に入れる事のみ。
今日こそは、この星夜こそは。待ち望んだ黄金を手にしてみせる。
我々は幸運だったのだ。今宵は里へ数多の光彩が訪れた星降る夜だったから。
捕らえるのは簡単だった。瞳の色彩、身の美しさ。透き通る声だって、素晴らしい。
この煌めきだ。これこそ『イブ』として差し出せる。
――さあ、『アダム』よ! 我等に奇跡の輝きを!
『イブ』が顔を上げる。
此処は深い森に囲まれながらも、開けた場所。仰げば満天の星が広がっていた。
連れてこられた先は石造りの簡素な祭壇だった。多少の灯りと、花が添えられている。
手向けの彩りは住民達が残した最後の良心か。それにしても、皿上のご馳走になった気分だ。
それと。『アダム』に献上するからか、星の模様がとても綺麗な薄布も羽織らされている。
本来この里は優しい夜を描く織物を紡ぎ栄えていたのだろう。だが今は、この有様だ。
自分たちの誇りや宝すら、躊躇なく差し出してしまう。奴が齎す狂った輝きのせいで。
後は逃走防止か、片足に鈍色光る枷が填められ鎖が祭壇と繋がっていた。
ただこの束縛は脆そうだ。引き千切るのは簡単だが――、来る。
ふわり、ふわ。もく。もく。
予感と同時に、それらは姿を現した。
一瞬、夜の一部かと錯覚しかけたが動く異質さで即座に敵と認識する。
奴等も倒すべきオブリビオンだが、あまり攻撃的ではない雰囲気を感じ取った。
偵察と、未知の存在が迫る事で『イブ』に不安と恐怖というスパイスをかけようとしているのだろうか。
何より彼が喰らう大事な星に、傷を付けては不味いのかもしれない。
ふわふわ、もくもくと。先兵が近付いてくる。
更に、猟兵達は眼前と別の気配が在る事にも気付いていた。
まるで夜が、空の星々が――自分を観ているような。
降り注ぐ視線が、未だ姿を見せない存在を音無く知らしめている気がした。
●マスターより
周囲は森で囲まれていますが現場は開けておりそれなりに広いです。
生贄は片足が祭壇と細い鎖で繋がっており、立って数歩動ける程の長さで猟兵なら簡単に壊せます。
民達は生贄を捧げた後一旦撤収してますので場にはおりません。
基本的に生贄達は森中の別々の場所で捧げられており、同行者以外の猟兵と連携はできません。
また、複数参加者で護衛をされる方はプレイングに護衛と明記するか★を入れて下さい。
記載が無い方は生贄と認識します。
ブラミエ・トゥカーズ
吸血鬼の姿でないのであっさりと”招き”入れられられましたね。
吸血鬼の姿では警戒されるので過去、自身が吸血した少女に人格ごと変化
かつて吸血鬼《病》に捧げられた少女
結局その村は焼き尽くされたが
特に抵抗はしない
普通に攻撃されれば普通の人間レベルで回避する
生贄なので酷い怪我はさせられないだろうとは考えている
したところで再生するので問題ない
抵抗の振りをしてナイフなどで自傷し、血をまき散らす
相手が飽きて去るか、体力が尽きるふりをする
血を浴びた敵が離れたら闇と湿度を利用して血に含まれる自身《ウイルス》を活性化
状態異常力強化を乗っ取り自滅的病殺を狙う
このような役は嫌なのですけどね。吸血鬼《ブラミエ》さん。
●変貌
星夜の祭壇に、可憐な一人が捧げられた。
宵の仄灯りは『イブ』を包む繊細な織物を照らし、細やかな煌めきを鏤める。
鮮やかを纏う生贄は華奢な娘だった。周囲を見渡す仕草も、足枷に触れる繊指も弱々しく。
しかしその中身が――ヒトとは限らない。
「吸血鬼の姿でないのであっさりと”招き”入れられましたね」
それでも呟く声色や意志は、今は少女のもの。
ブラミエ・トゥカーズ(《妖怪》ヴァンパイア・f27968)と云う、御伽噺の吸血鬼が居る。
伝承に象られた旧き致死性伝染病は嘗て吸血した者に人格ごと変化する術を持っていた。
旧き病たる魔では警戒されるだろうと、過去|吸血鬼《病》に捧げられた少女へ自身を創り代える。
『余』の中で遺り巡り続ける血の記憶通り、違わず今己はあの時の『私』だ。
そして彼女は再び、今度は竜に捧げられる。
特に抵抗はしない。されるが侭、流れに身を任せた。
幼き双眸に、異質な夜空の一部が映り込む。
下調べと近付く異物の陰気な湿気を感じ人間の本能で後退する。
生贄なので酷い怪我はさせられないだろうとは考えているが、唯の人からして未知は先ず恐怖だろう。
まぁ、万が一傷を付けて来るのだとしても。
(したところで再生するので問題ない)
刹那、ブラミエの意思が介入する。例え人格が少女であっても、仕事はプラン通りに実行できる。
台本通りに迫るオブリビオンへ抵抗してみせた。割れた石畳の欠片を拾いナイフの如く振り回す。
不慣れな手付きを装い自身も傷付ける。撒き散らした血を見た先兵達が動揺する素振を見せた。
贄が自傷した事は想定外なのだろう。奴等は体力尽きたように倒れる娘を気にする事無く撤退していく。
其の身に『イブ』の血痕が付いたのも、全てが吸血鬼幻想が齎す演目である事にも気付かない儘。
異変はそう間を置かず貌を出した。
手下共の動きが不規則になり、明らかに苦しむ仕草が見受けられる。
血潮に宿るは人の遺志。闇より深く、湿度を憤怒で超越し獲物を蝕む。
変貌したのは姿形に留まらず、病の化身が|自身《ウイルス》を活性化させ捕り付く先を支配する。
狙われた獲物は乗っ取られた事にすら気付けなかった。
自滅的病殺と云う状態異常で朽ち逝くもく達を、倒れ伏す少女の傾く視界が捉え続ける。
此処で終わりではない。この先だ、『アダム』が来る迄演技は続けなければならない。
「このような役は嫌なのですけどね。|吸血鬼《ブラミエ》さん」
独言が星夜に溶ける。もう一度贄とされるのは、矢張り良い気分ではない。
結局あの村は焼き尽くされた。だがこの先喰い尽くされる記憶が新たに刻まれる事は無いのだろう。
その証明を、少女が血を捧げた吸血鬼自らがするのだから。
成功
🔵🔵🔴
南平岸・月斗
アダムの召喚に生贄必要だったっけ?
「いやあちらは同名の別人なのだが? 全く風評被害も甚だしい」
あ、そうなの? 僕ならコスト踏み倒して出すけど
「そういうとこだぞ」
で、生贄かぁ
どっちがやる?
「いや私が生贄はおかしい。弱い贄でなければ」
でもアダムって試合だとコストとして生贄になることも多いし慣れてるかなって
「お前の素っ頓狂なコンボが原因だろう!?」
(しばらく揉める)
よしわかった! じゃんけんだ! 3回勝負!
「望むところだ、吠え面かくなよ」
(ストレート負けしたアダムが簀巻きにされて祭壇へ)
「いややはり考え直せお前!」
|生贄《コスト要員》は黙っててねー
(物陰に隠れ除去系のカードでもくを追い払いながら)
●フィールドの伏せ|カード《ドラゴン》を攻撃した場合に発動
――ああ、本当に私達は運が良かった。この『イブ』ならきっと『アダム』も満足するだろう。
嬉しそうな一団が生贄を捧げ終え、去っていくのを潜伏者は静かに見送った。
それから、潜む者……つまり南平岸・月斗(電波デッキの使い手・f29828)が祭壇に視線を移して。
「いややはり考え直せお前!」
じたばたと大きな体を動かすも、見事な簀巻きで身動きできないドラゴンの|咆哮《抗議》を聞き届け。
「|生贄《コスト要員》は黙っててねー」
カードを切る手際の如くすっぱりと一蹴した。
話は少し前に戻る。
グリモア猟兵の話を聞いた月斗が己のデッキから徐に一枚ドローした。
《ADAM,The Dragon God》の名を冠したものは主が意思に応え、カードは竜神へとチェンジする。
『アダムの召喚に生贄必要だったっけ?』
発動し顕現した相棒に問いかけると、問われた方はブレスが出そうな大口から溜息を吐いた。
『いやあちらは同名の別人なのだが? 全く風評被害も甚だしい』
嫌な偶然だとアダムはぼやく。そう、此方も彼方もアダムだ。実に紛らわしい。
『あ、そうなの? 僕ならコスト踏み倒して出すけど』
更に相方はカードデュエリストらしい思考で流れを判断している模様。生贄=コストである。
『そういうとこだぞ』
ただ長い付き合いなもので、詳細なツッコミもせず軽くに留めた。
『で、生贄かぁ。どっちがやる?』
己より小さくいかにも適任な人間がさも当然に選択肢を作ってきた。
えっと見下ろすドラゴンが数十秒見つめても黒い瞳に謀りは見られない。
『いや私が生贄はおかしい。弱い贄でなければ』
ようやっと正論を出せたと思ったが、相手に大したダイレクトアタックにもならなかった様子。
『でもアダムって試合だとコストとして生贄になることも多いし慣れてるかなって』
やっぱり生贄=コスト論が固い辺り、彼は生粋のプレイヤーである。
純粋に言ってるのだけは理解した。が、納得するわけにはいかない。
『お前の素っ頓狂なコンボが原因だろう!?』
からの揉める事暫し。
『よしわかった! じゃんけんだ! 3回勝負!』
『望むところだ、吠え面かくなよ』
そんな回想を得て、現在に至る。
結果知ったるストレート負けのレッテルは、ぎちぎちに縛った簀巻きに現れていた。
一応弱い贄を意識しているらしいが、納得いかないは全身全霊で訴えつつ。
先兵が近寄り『イブ』となったアダムに触れようものなら、物陰から月斗が除去系カードを使用し追い払う。
さも身じろぐドラゴンの巻き添えにした体を装うバディの|連携《コンボ》は完璧だった。
これで一旦ターンエンドだ。相手の次を待つことにする。
成功
🔵🔵🔴
アリス・フェアリィハート
アドリブ連携歓迎
【SPD】
気が付くと…
祭壇に
生け贄として
捧げられてて
『…ここは?』
辺りを不安げに見回し
不気味で
暗く静まりかえった光景に
思わず
慌てて
UCで分身ちゃんを喚び
分身『ん…アリスぅ…喚んだぁ…?』
(分身も辺りの不気味な光景に言葉を失い)
分身『…な、何でこんな気味悪いトコに喚ぶのよぅ!?』
『だ、だって…怖くて、心細かったんだもんっ…><』
(本体・分身共に、「フリ」じゃなくて本当に怖がってる模様)
分身ちゃんに
鎖を外して貰い
森を進み
分身『アリス…くっつき過ぎ…☆』
『は、早く出口を探そう…?』
敵に遭遇したら
慌てて
【ハートのA】達を展開し
【誘導弾】をでたらめに
【一斉発射】しつつ
2人して一目散に逃げ
●チェシャーキャットのいない夜
目覚めに優しい声は降らず、身を乗せる硬い石床の冷たさで現実を認識する。
アリス・フェアリィハート(不思議の国の天司神姫アリス・f01939)が気付いた場所は夜の森だった。
「……ここは?」
夢の終わりはハッピーエンドに程遠く、新たな物語が少女の頁に追記される。
ここはどこ? 見渡す限り不思議よりも不可思議な絶佳が星明りに照らさて。
なぜここに? 揺り籠は石造りの祭壇だった。添える花に繋がる鎖、否応なしに理解する生贄の事実。
アリスは判決を聞く事無く刑を執行され、ドラゴンに捧げられるのだ。
辺りを不安げに見回し何度自身を確認しても、悪夢から覚める様子はない。
不気味で暗く静まりかえった光景に思わずピナフォアドレスの純白を握りしめる。
この侭では心が恐怖に泣いて、心細さの海に気持ちが沈んでしまいそう。
慌てて少女は彼女を喚んだ。トゥイードルより見分けのつかない、私と同じ分身ちゃん。
祭壇の上で鏡写し。目覚める姿もおんなじだった。
『ん……アリスぅ……喚んだぁ……?』
何者でもないメアリーアン。けれどあなたを映したサーヴァント。お揃いの青い瞳が見つめ合う。
呼んだ貴女は何故かとても不安そう、漸く分身も辺りの不気味な光景に気付いて暫し言葉を失った。
『……な、何でこんな気味悪いトコに喚ぶのよぅ!?』
思わず身を寄せる同じ見た目。そしたら向こうもそれ以上の勢いでしがみ付く。
「だ、だって……怖くて、心細かったんだもんっ……><」
人気のない深い森の奥。満天の星が頭上にあっても静けさと闇は色濃く周囲を包み込む。
本体・分身共に、『フリ』じゃなくて本当に怖がってる模様は容易く見て取れた。
早くここから抜け出そう、兵隊達が来るかもしれない。
首を刎ねろと叫ばれずとも不安が二人を囃し立てる。
分身が枷を外し、手を取り一緒に祭壇を飛び降りた。行こう一目散に森を進む。
『アリス……くっつき過ぎ……☆』
怖くて恐くて寄り添うアリス。胸中の薔薇を同じ色に塗り替えたくて繋ぐ手にも力が籠る。
「は、早く出口を探そう……?」
言葉は最後まで隣人に向けられなかった。跳ねる心が警戒の鐘を高らかに鳴らす。
星月雲のマークを描き、招かざる異物がやってきた。
あれが|此処《夜の国》の兵士なのか。アリスとアリスちゃんの心は、大荒れだ。
慌てて展開するハートのA。でたらめに一斉発射するのなら、誘導弾とて暴れ狂う。
来ないで来ないで心が叫ぶ。結果を確認せず二人は一目散に逃げていく。
後に残るは散乱する赤きスートの騎兵札、それと先兵だったものの残骸だけ。
アリス達は猫も笑わぬ森の中を逃げ続ける。
けれど気を付けて。星夜の国の王様が、見ているよ。
成功
🔵🔵🔴
ウィズ・ザー
SPD
久々に聞いたフレーズだぜ。贄
まー、暫くダラけていたら良いよなァ?
生贄の台の上で寝そべりリラックス。この間に体の一部の影を伸ばして置く
近くに他の生贄の人が居れば取り敢えず拘束を尾の刃で切り払う
「よー、其方さんも生贄?」ライトでラフな口調で世間話振るぜ
1人だったら敵を待つ
敵が来たら驚いたフリして尾の武器振り回して切り付けたり触手の先に生やした爪で引き裂いたり無駄な抵抗始めてみるぜ。
「ぅお、全然効いて無ェ?!」
これ、訓練に無茶苦茶良くね?攻撃に対し無敵だろ?いやいや邪念は置いとこう
「核は何処だよ……、ここかァ!」
焦ってる風見せかけて、一撃入れるフリと同時に闇顎で喰らう
偶然倒せた風一丁上がりィ!
●闇蜥蜴の影尾斬り
とある平凡な青年は今、複雑な境地に立たされていた。
偶然訪れた里で捕らえられ、無慈悲に生贄だと捧げられてしまって。しかも。
「よー、其方さんも生贄?」
ライトでラフな口調で世間話を振ってくる、大きなトカゲがお隣さんだった。
彼(?)も『イブ』なのか確認すると大口を歪ませニィと笑われる。
「贄なァ……久々に聞いたフレーズだぜ」
言うが早く、生贄の台の上で寝そべりリラックス。何とも気儘な様子を見ると緊張の空気が解れていく。
「まー、暫くダラけていたら良いよなァ?」
気を緩ませる人の子は気付いていない。
ウィズ・ザー(闇蜥蜴・f11239)は望んでこの場に居る事を。
祭壇より垂れる長尾を伝い体の一部である影が伸ばされ、星明りの夜に溶けていった事も。
そして一陣の風が枝葉を揺らす音に紛れて、隣人の拘束をさり気無く尾の刃で切り払った事にもだ。
「――ぁア。お前、鎖切れてねェか?」
指摘で漸く彼が自由に気付き、慌てて祭壇を降り逃げ出そうとするも足止めて気遣う視線を寄越してくる。
構わず行きなと眼孔持たない窪みを緩ませたら、短い謝罪と感謝を置いて去っていった。
これでいい。1人だったら気兼ね無く敵を待てる。
欠伸が出そうな頃に手下共はやってきた。急いで噛み殺し鎌首を擡げる。
試しに未知が来たと口を開け威嚇してみたら、もくーと敵がふわふわした雲に変化した。
なので驚いたフリして尾の武器振り回して切り付けたり、触手の先に生やした爪で引き裂いたり。
如何にも必死ですな無駄な抵抗を試みたところ。
「ぅお、全然効いて無ェ?!」
正に雲をつかむ感覚か、手応えが無い。相手は全く動かなくもなってしまったが……ふと脳裏に過る妙案一つ。
(これ、訓練に無茶苦茶良くね? 攻撃に対し無敵だろ?)
闇色に染まる仮初の身を更に使いこなす練習台に欲しい。が、いやいや邪念は置いとこうと切り替える。
今すべき事は標的に逢う為の前振りなのだから。
そろそろ遊びは終いと、潜む影が蠢き先兵達へ狙いを定める。
「核は何処だよ……、ここかァ!」
焦ってる風見せかけて、雑な尻尾の薙ぎ払いは狙い違わず僅かに掠るだけで終わった。
そう、狙い通り。入れた一撃はブラフに過ぎず、本命は同時に死角から影が伸び触れたその一点のみ。
払う風に押され体制崩したもくの護りは解除された。傍らに闇顎、即座に敵へ喰らいつく。
(偶然倒せた風一丁上がりィ!)
出かけた声を既の所で押し留め、奪われ果てるオブリビオンを横目に蜥蜴は再び寝そべった。
疲れ切った贄を演じ、腹ン中で嗤ってみせる。
顔に出すのは『アダム』の前でだ。
影彩るグールドモニターは星夜に長き尾を揺らし、次の獲物を待ち望む。
成功
🔵🔵🔴
グラース・アムレット
【花色龍】
目には目を
ドラゴンには龍の神様を
護衛を務めようかと思っていたのですが仁さんが贄役に不安(?)を覚えてそうなので一緒に贄となります
生贄を綺麗な物で飾ることもあるんですねぇ
煌めく布で飾られた仁さんは神々しいですね
星喰いも気に入ってくれるのではないかしら
星々を身に纏っているみたいで少し感激します
私はメイクで少し幼く、そのままの心で育った娘となります
魔術絵本を抱えて、飾った感激をそのままにこにこと表情に浮かべて
「おはなしにでてくる星空みたいね、おとうさま」
雲を見て
主人公が絵筆塗料で世界を彩っていく絵本を開いて
「お月さまや、にじもあるといいかしら」
月や虹が飛び出して雲を穿ち払っていく攻撃を
青梅・仁
【花色龍】
えっ
えっ
俺も贄役なの……?
嘘、ドラゴンには龍神ぶつけようってこと?
……グラースちゃんの頼みなら仕方ないなぁ
ほんとにこんなおじさんで贄役成り立つのかね
随分ここはちゃんと贄を飾るのなあ……
俺は贄なんざもらったことないから分からんけど
グラースちゃん綺麗だなとか思いつつ
警戒は怠らない
贄としては旅人の親子を演じる
「頼む、俺は死んでも構わない!でも、娘は!娘だけは見逃してくれ……!」
「この子は何もわかってないんだ!だから今逃がしたって問題ないだろう!?」
露骨な抵抗もしない
……“露骨”じゃなきゃバレねえだろ?
雨に助けられるなんて幸運そのもの、そうだろ?
自分達の強化も兼ねて『呪詛』『浄化』強めてUC
●花色描く龍の彩雨
「随分ここはちゃんと贄を飾るのなあ……」
身に纏う星を鏤めた織物を一つの眼で眺め、青梅・仁(鎮魂の龍・f31913)は緩くぼやいた。
本日晴天瞬く星の下、捧げられた竜神は見事な布帛に飾られて少々居心地悪そうに息をつく。
何故こうなったかなんて、今更異を唱える事もないのだが。
「生贄を綺麗な物で飾ることもあるんですねぇ」
己を見て感嘆するグラース・アムレット(ルーイヒ・ファルベ・f30082)と少し前の記憶が重なり脳裏に蘇る。
転送前、方針を話し合う最中のこと。
『えっ、えっ。俺も贄役なの……?』
青天の霹靂だと怨嗟の海より生れし竜神は狼狽えた。
恐る恐る聞き返しても、晴天の笑顔を浮かべる人間は貌色変えず主張も違えない。
曰く『目には目を、ドラゴンには龍の神様を』と。数秒かけ、言葉を飲み込む。
『嘘、ドラゴンには龍神ぶつけようってこと?』
最終確認でもやっぱりいい表情が返ってきた。
この流れ、激しい海流よりも逆らえない。
(……グラースちゃんの頼みなら仕方ないなぁ)
何よりつい応援したくなる彼女のしたい事なら、叶えてあげたくなってしまう。
潮時かと、戸惑いの表情を気の抜けた顔に塗り替える。
『ほんとにこんなおじさんで贄役成り立つのかね』
最後に僅かな不安要素を一つ零せば、それならとグラースは人差し指を立てて提案一つ。
『護衛を務めようかと思っていたのですが仁さんが贄役に不安(?)を覚えてそうなので一緒に贄となります』
えっ、俺だけが贄になる予定だったの?
とは聞けず、仁が了承を告げ現状へと繋がっていく。
今でも、キャンバスに描かれた色彩でも観るような眼差しを唯見守っている。
「煌めく布で飾られた仁さんは神々しいですね」
お互い同じ布を羽織っているのでお揃いだよとも言えず、ずっとされるが侭だ。
「星喰いも気に入ってくれるのではないかしら、星々を身に纏っているみたいで少し感激します」
彼が竜神たる証にもなる脚だって星夜のクロースに相性が良い。星明りに鱗が煌めき、連なる天の川を連想させた。
芸術家としてかデザインに感動する彼女へ、気に入る云々はおじさんも込みなのかと尋ねるのは憚られる。
代わりに、眼帯が通る耳裏を指でかいた。
「俺は贄なんざもらったことないから分からんけど」
人それぞれならぬ神其々。手の込んだ食卓だと結論抱き改めて相手を正面から見下ろす。
今宵は作戦の為少し幼いメイクを施し、丹念に織られた鮮やかな一枚を羽織り見上げる琥珀に星を映した人が居る。
グラースちゃん綺麗だなとか思いつつ、その一瞬だけ贄の扱いに一理あると感じたかは……神のみぞ知るのだろう。
一つ確実なのは、このやり取りの間も警戒は怠らない事。その成果は、すぐに訪れた。
緑色の片目がすっと細くなるのを合図に、二人の空気が一変する。
数体の偵察が祭壇へ近づいた時其処に居たのは、和やかに会話していた猟兵達ではなかった。
「頼む、俺は死んでも構わない! でも、娘は! 娘だけは見逃してくれ……!」
幼い娘を星布に包み、自らの背に隠して己は必死の形相で先兵に訴えかける。
その雰囲気は正に贄として捧げられた哀れな旅人の親子であった。
悲痛な色に彩る顔も、震える指先すら紛い物の父親とは到底思えない。
一方で護られている方はゆっくりと顔を出し、場の緊張に沿わない笑みを描いてみせた。
「おはなしにでてくる星空みたいね、おとうさま」
魔術絵本を大事に抱えて、飾った感激をそのまま言葉に出してにこにこ笑う。
幼い心のまま無垢に育った娘を演じ、未だ何色にも染まらない貌が雲を見て無邪気に告げた。
そんな我が子を庇う親は更に沈痛な面持ちを魅せつける。
「この子は何もわかってないんだ! だから今逃がしたって問題ないだろう!?」
声を枯らさんばかりに叫ぶ。まるでそれしか術がないかのように。
我々は力など持たない弱きものだと知らしめるように。実際、物理的に露骨な抵抗もしない。
そう。
(……“露骨”じゃなきゃバレねえだろ?)
神は裡にてニヒルに笑う。鎮魂の龍は既に場へ起源を招いていた。
ぽたり。オブリビオンは身に水滴の付着を認識した。黒い粒が、白い雲に映える。
雨か? もく達の意識が天を向く。変わらず今宵は快晴だ、今この空間に自身達以外の雲は無い。
では何故――潮の香りがする?
「雨に助けられるなんて幸運そのもの、そうだろ?」
低く、水滴より小さな呟きは敵に降り注ぐ黒雨に掻き消えた。
晴れ渡る星空から、怨嗟の海の水を含んだ雨が降る。天の瞬きを乱反射して煌めく呪詛が敵を討つ。
狐の嫁入りではない。星夜を着飾る竜神様の贄入りだ。
であるならば。
「お月さまや、にじもあるといいかしら」
突然の痛みに驚く兵達を変らぬ微笑みで眺めるグラースが、徐に絵本を開いてみせた。
主人公が絵筆塗料で世界を彩っていく物語を、ゴッドペインターが現実に昇華させる。
彩ってあげましょう、黒い雨を。この夜に、極彩色の虹と月を塗り足そう。
属性魔法が込められた塗料が本から飛び出して、花色の月が陰気の月を穿ち払っていく。
虹は雨と混ざり合い、鮮やかな彩雨と成って親子の命を救う祝福と為った。
二人が描く奇跡は互いの力にもなり、色鮮やかな光景はやがて静かな夜へと舞い戻る。
嗚呼、なんて運が良かったのだろう。近付く脅威は去りました。
そして次に来る存在も――自分達の|幸運《実力》で退けなくてはならない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
鵯村・若葉
【171】
どんな存在も信仰あれば神となる
ええ、良く存じております
贄の役目はこれで二度目ですからご心配なく
不可視の鎧で傍にいて頂けるなら心強いです
攻撃を仕掛けるタイミングは檍原様にお任せします
――哀れな贄を救う“幸運”の演出、楽しみにしていますね
使いが来たら『演技』
恐怖で声が出ない振りを
不安の感情も幸福を喰らう雲も多少は甘んじて受け
そこで初めて声を出す
「っ……嫌、です、怖い、しにたくない、いやだ、なんで、なんで自分なんですか、たすけて、だれか……!」
救いを求め祈りながら、只管弱い印象付けを
檍原様の攻撃を合図に
奇跡が起きたかのように【星銀神光】
自分を贄とできるのは|邪神《あの方》だけ、ですから
檍原・颯汰
【171】
護衛で参加
若葉さんは二度目――というか存続中な気配も感じつつ
彼に言われた“幸運”の演出が出された課題みたいだなぁと苦笑
僕は認識阻害、迷彩、闇に紛れるを使って戦闘鎧を作り、中に入って護衛
若葉さんの死角を補うように少し大きめにしておこう
雲の動線も邪魔しない
雲たちの摩擦に応じトラウメンヴァッフェで作り上げた黒霧を発生させていく
猟兵は、エデンに忍び込んだ蛇みたいなものかなぁ。それとも監視しているドラゴンが蛇かな?
まあどちらでもいいか
ルシファーよろしく光もたらす役者が敵味方問わず揃ってるしね
役は一つ、先ずは僕が貰おうかな。蛇は弱声に反応し唆すもの
あたかも雲や黒霧から発生したかのように電撃攻撃を
●神の所在、蛇の在処
創造主はアダムに「その実を食べてはならない」と告げた。
神が禁じたのだ。きっとあの果実は主が制限する程素晴らしいモノに違いない。
それが手の届く所に有る。黄金に輝いてる。あれが正しく神の林檎だ、そうに違いない。
我々はそう信じている!
「……どんな存在も信仰あれば神となる」
祭壇上で鵯村・若葉(無価値の肖像・f42715)は己を捕らえた民の言葉を思い返していた。
疑心を滅す鬼気迫る眼差し、己の精神状態が異常と認識できない歪められた表情も。
(ええ、良く存じております)
狂信と呼ぶ精神の枷に縛られた者達は、皆一様に植え付けられた信念を盲目に育て続けた。
結果花開くのは救いや幸福とはかけ離れたものばかり。それでも、人は黄金を求め続ける。
『ワカバ』は呪い帯びる息を常夜に逃し、空を仰いだ。煌めく満天の星は唯只管に美しい。
異端さえ居なければ、此処は絶景の安息地だったのだろう。
異形が来て、歪な価値をばら撒いた。発芽した|種《狂気》は人の思考を侵攻し至高の信仰で夜を濁らせる。
果てが、これだ。自らの脚に嵌められた枷をじっと見下ろす。
繋げられた鎖の如き傲慢な支配は断たねばならない。その為に彼『等』がすべき事は一つだ。
縛め連なる先を辿り、途中で逸らした視線が何もない筈の空間を一瞥した後視界を閉ざす。
「――哀れな贄を救う“幸運”の演出、楽しみにしていますね」
近くで待機する頼もしい彼に贈った言葉を、もう一度小さく呟いた。
交わされる筈のない視線を受けとめて、夜より黒い瞳が静かに揺らぐ。
『贄の役目はこれで二度目ですからご心配なく』
里へ潜入する前、常の血色が良いと言えない顔はそう告げて行った。
二度目――というかむしろ存続中な気配も感じつつ。
檍原・颯汰(ダークネス「シャドウ」のアリスナイト・f44104)は戦友と別れ際のやりとりを思い出していた。
石造りの祭壇には『イブ』になった同行者がいて、自分はその近くで潜伏し護衛する役を担う。
此処迄の流れは、予定通りだ。
『不可視の鎧で傍にいて頂けるなら心強いです』
揺るぎない信頼が述べた通り、颯汰は予め作成した認識を阻害する戦闘鎧の中に入って闇に紛れている。
若葉さんの死角を補うように少し大きめにしておこうと、少し前の意志を有言実行したサイズは丁度良い塩梅だ。
迷彩も星空と森に調和しこれなら雲の動線も邪魔しないだろう。……それにしても。
「言われた“幸運”の演出が出された課題みたいだなぁ」
彼から贈られた言葉を今一度噛み締め、シャドウは緩く苦笑する。
さてぼやくのも此処迄か、カスタマイズしたイマジネイション越しに先兵達の侵入を確認した。
『攻撃を仕掛けるタイミングは檍原様にお任せします』
そう言って囮になった玲瓏なる声色の期待に応えたいから。
「任せてね、若葉さん」
夜に混ざるダークネスは悪夢の影を構え、機会を伺う。
訪れた『アダム』の使者が祭壇の『イブ』へゆっくり近付いていく。
不規則に迫るオブリビオンを灰色の瞳が映し捉え――瞬間、顔面をより蒼白にさせた。
余りに自然と移り変わる恐怖の『演技』。開けた口は浅い呼吸を繰り返し、音を発するには至らない。
恐れに声が出ない振りを見事に再現した。さて一度目は何時だったかなんて、今は些末な事だが。
不安の感情を与える事に成功したと錯覚するもく達が、今度は贄の幸福を奪う為に触れて来る。
「っ……嫌、です、怖い、しにたくない、」
多少は甘んじて受け入れ、そこで初めて声を出す。悲壮をたっぷりブレンドした嘆きが宵闇に響いて散った。
「いやだ、なんで、なんで自分なんですか、たすけて、だれか……!」
救いを求め祈りながら、只管弱い印象付けを。
怯える贄を装って、鎖が伸びる限界まで後退していく。もう駄目だと両手で顔を覆いさえした。
到達点は逃げ場のない終着か――否。
何時の間にか、黒い霧が存在している。誘い込まれたのだ、171が作り上げた罠に。
雲たちの摩擦に応じ発生したトラウメンヴァッフェが闇夜に溶け込み、悪夢が標的を捕らえている。
死へと導く、呪いのように。
「猟兵は、エデンに忍び込んだ蛇みたいなものかなぁ」
影を操るシャドウが呟く。疑問は己の力に向けられない為、不可視が解かれる事は無い。
蛇は誰かと颯汰は問う。それは『アダム』の餌場を荒らす者達か。
「それとも監視しているドラゴンが蛇かな?」
里の民を狂わせ林檎を欲させた竜か、何にせよ。
「まあどちらでもいいか」
星夜の楽園で上演されるグラン・ギニョル的な舞台では、狩り尽くした者こそが一等の輝きを浴びるのだ。
「ルシファーよろしく光もたらす役者が敵味方問わず揃ってるしね」
演出の中で浮かぶもく達は永遠に気が付けない。
先兵達が纏う黒霧は、絡み付く蛇のようだ。
「役は一つ、先ずは僕が貰おうかな」
それは弱声に反応し唆すもの。更ける森に、一瞬の閃光が走る。
あたかも雲や黒霧から発生したかのように放たれた電撃攻撃は侵入者達に不運な罰を与えた。
更に刹那の輝きが、彼への合図となる。
「その罪、穢れ、そして命――頂戴します」
貌を隠す掌の下、呟く声は裁きの煌きに掻き消えた。
奇跡を装う星銀の光に撃たれ消え逝く敵を、若葉は指先の間から覚めた眼差しで見届ける。
「自分を贄とできるのは|邪神《あの方》だけ、ですから」
彼の神は此処に居らず、蛇は不可視の裡より獲物を喰らう。
一つ目の課題はクリアした。二つ目は、楽園の主だ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
シホ・エーデルワイス
目を覚ますと石造りの祭壇に立てられた十字架へ磔にされていました
体には青バラと蔓を美しく飾る様に這わせて十字架の磔台へ拘束
他の住人が捧げたイブよりアダムに気に入ってもらえるようにと
装飾を加えたといったところかしら?…念入りね…
オブリビオンの影響とはいえ
人が己の欲望を満たすために他人を陥れる行為は
何度目の当たりにしても悲しいものです…
こんな事はもう終わらせないと!
私に聖痕を刻んだ宿敵の思索卿が滅んだ今
聖痕が疼く事は無いけれど
こうして磔にされていると疼いている様な気がしてしまいます
感傷に浸っていると敵が近づいて来る
私は死を覚悟したように目を閉じて敵の好きにさせる
そして瀕死になったら【死命】が発動
私は瀕死のふりをしたまま
光学迷彩で目立たなくした枷の鎖が周囲にある物を持ち上げ
敵を殴って気絶攻撃
そして
後には磔にされたままの|贄《イブ》が独り残されます…
※十字架の磔台へ青バラと蔓で美しく飾る様に拘束されている描写を細かく希望
○Crucifixion garden
星下の深き緑の中へ、青藍と純白の欠片達が夜風に攫われ呑まれていく。
花弁と羽根は森奥に造られた一つの儀式場より運ばれてきたようだった。
『アダム』に狂わされた者達が、恩恵を得たいが為に作り込んだ密なる樹々に囲まれるこの場所は。
満天の星に照らされ花瞬く、青い庭園を思わせた。
精工に彫られた石材の模様が見事な祭壇で、紺青の花が鮮やかに咲き誇っている。
周囲に藍の絨毯を生み出す程花弁を舞わせる大輪は皆、蔓を伸ばした薔薇達だった。
絡み付く自然の装飾は人口の舞台に調和し、宵闇に溶ける事の無い存在感と美しさを引き立てる。
花々は場の中央へ向かうにつれ数を増やし、石造りの中心には粋を集めて。
美麗な花浅葱が連なり華開く礎は今宵の為に拵えたのだろう、大きな十字架の形をしていた。
これらが唯のオブジェであれば夜にも映える麗しの庭園であった。で終われただろう。
けれど、今此処は異端を招く為の場であった。花めく空間で何より目を引くものが其処に飾られている。
織職人が編み込んだボタニカルのように覆う蔓草で、一人の『イブ』が青花の儀式場に磔けられていた。
シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)は閉じていた瞼をゆっくり開けていく。
意識を失う前と違う芳しい花の香りが目覚めを手伝い、次第に意識も回復する。
が、解放されたのはどうやら思考だけのようだ。広げる両手に揃えた脚、何方も束縛の感覚がし動けない。
唯一、顔の自由が効くようなので青い瞳が制限された視界を確認して状況を整理する。
我が身は幾重もの蔓草に拘束され、匂いの元である青薔薇達が祭壇近くに灯された淡光を受け細やかに煌めく。
風が銀糸を揺らす度、舞い飛ぶ青の花弁が周囲を染め。其処にひとひら、オラトリオの白が交じり墜ちた。
現状を把握したか、瞼を伏せ息を吐く。
(他の住人が捧げたイブよりアダムに気に入ってもらえるようにと、装飾を加えたといったところかしら?)
星柄が見事な織物を作る者達だ。林檎の為とこれだけのものを用意するのは難しくなかったのだろう。
だとしてもだ。念入りね……と消え入る程度の音が一言口許から零れ落ちる。
本来彼女を飾り付けた華麗な装飾技術は、生贄を神に捧げる為等に使われるものではなかった筈だ。
だがこの有様だ。彼等は変わってしまった――オブリビオンの影響とはいえ。
「人が己の欲望を満たすために他人を陥れる行為は、何度目の当たりにしても悲しいものです……」
遠い記憶は曖昧でも、誰かを助けたいと強く想う純粋さは彼女の心に強く根を張る。故に幾度も己を捧げてきた。
その決意は、葛に囲われた胸元にも秘めている。
(私に聖痕を刻んだ宿敵の思索卿が滅んだ今、聖痕が疼く事は無いけれど)
こうして磔にされていると疼いている様な気がしてくる。消せない過去が、未だにシホの気持ちも搦め捕るのだ。
感傷に浸っていると敵が近づいて来るのを察知する。
幸福を喰らう雲が、湿った空気を撒き散らしながら闇を纏ってやってきた。
遠慮なく距離を詰める者共へ、拘束されたシホは身構える事も逃げる事すら叶わない。
元より白い翼迄薔薇と蔓草が這い縛られているのだ。念入りの縛めに捕らわれ動けぬ聖者はされど、静かだった。
死を覚悟したように目を閉じ、蒼花に彩られた磔刑のオラトリオが星空に見守られ執行を待つ。
じめじめ鬱々した雲達の好きにさせた。抗わず、争えず身を捧げ続け羽根とエーデルワイスの花弁が飛び散る。
命を毟り取られる感覚が、心の奥に沈むいつかの想い出に繋がる気がした。
息が浅くなり、今が曖昧になる。それでも意志は固く、青い双眸に瞬く星と同じ光が消える事は無い。
瀕死に成って迄戦う理由がシホには有る。この手が届き救えるものがあるのなら、苦難を恐れず立ち向かう。
その為ならば。
(――この身を捧げて戦います)
決意を誓った瞬間、場の空気が一変した。
発動する奇跡が死の安息を否定し、宿命の人形に新たな死命を与えていく。
全ては不可視で行われた。傷無き身体に純白の見事な翼へ生え変わろうともオブリビオンが認識する事はない。
彼女は瀕死のふりをしたままだ。しかしもう、反撃の手筈は整っていた。
真なる姿と成った咎人は、罪悪感を具現化させた鎖に捕らわれている。それも瞬時に、光学迷彩で夜に溶かした。
目立たなくした枷の鎖を操り周囲にある物を持ち上げ、気付く様子が微塵も無い先兵達を殴りつける。
「この鎖は私が咎人である事の証であり、私を安易に死なせない為の枷……」
呟く声も、何が起こったか等も奴等は理解する前に散らされて。暗い森へと風に運ばれ消えていった。
そして、青き花園にひと時の静寂が戻ってくる。
後には磔にされたままの|贄《イブ》が独り残され、嵐の再来を待つばかり。
磔台を飾る花達は星夜に照らされ一層鮮やかだった。
大成功
🔵🔵🔵
鏡島・嵐
うーん。目的達成のためとはいえ、生贄に仕立てられるんはやっぱぞっとしねえな。猟兵じゃなきゃ、絶望して我を忘れてるかもしれねえ。
勿論、戦うんだって怖い。相手がどんなに弱くても、だ。
(空を見上げて)……なまじ星が綺麗なんが皮肉だな。
星空は好きなはずなのに、見てるとイヤな気持がふつふつ湧いてきやがる。
ともあれ、降りかかる火の粉は払わねえとな。
本気を出すわけにはいかねーから、UCは最低限、ささやかな幸運を纏うだけにとどめておく。
いつもはスリングショットを得物に使うけど、今は素手で立ち向かうようにする。
直接殴るんは全然慣れてないし、手を痛めるし怖ぇけど、ここはじっと我慢だ。
(蒼褪めた顔で、震えながら)
●意志貫く鳥の勇気
澄み渡る夜空の下、鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は祭壇の上で『イブ』の証を纏い座り込んでいた。
星柄の織物はとても綺麗だ。足枷に繋がれた状況でなければ、素直に感動できるのに。
「うーん。目的達成のためとはいえ、生贄に仕立てられるんはやっぱぞっとしねえな」
長い息を逃し、気の進まぬ雰囲気を着込んで辺りを見回す。
斎場は広いが周囲は深い森に囲まれていた。天も背高い木々に押し上げられ、いつもより遠くに感じられる。
複雑に交差する枝葉を格子模様と錯覚するなら、鳥籠の中に居る気分だ。
他に人の気配は無く、来るのは恐ろしい怪物達だと云うのなら。
「猟兵じゃなきゃ、絶望して我を忘れてるかもしれねえ」
だからこそ、彼は猟兵だ。此処に居て逃げもせず先兵を待っている。
(勿論、戦うんだって怖い。相手がどんなに弱くても、だ)
眼を閉じ、羽織を握りしめる。無彩の闇に意識を逃しても心理の整理が付く筈も無く。
だったらと開けた視界と意思はなるべく高みを目指した。常より彼方に感じる光景は、変らず煌いている。
「……なまじ星が綺麗なんが皮肉だな」
星空は好きなはずなのに、張り詰める緊張が心を包み上手く感動へと繋がらない。
「見てるとイヤな気持がふつふつ湧いてきやがる」
ヨタカも飛ばない宙を気持ちと共に塗り替える事が出来るのなら。
『アダム』を討てば、己が識る星夜を取り戻せるのだろうか。
「ともあれ、降りかかる火の粉は払わねえとな」
視界の端に目線より低い雲が流れて来た。敵の来訪に身構え、懐に隠したメダルを確認する。
正しき者には恵みの花を。祈りを込めて、忠義貫く犬の祝福を自身に張り付けた。
(本気を出すわけにはいかねーから)
UCは最低限、ささやかな幸運を纏うだけにとどめておく。後は己を奮い立たせる為にも、左手を握り込む。
いつもはスリングショットを得物に使うけど、今は素手で立ち向かうようにする。未だ、間合いは遠い。
今自分がどんな有様かだなんて存分に理解していた。蒼褪めた顔で、震えながら奴等を待ち構える。
漸く眼前に来たオブリビオンへ、先ずは一撃拳を叩きつけた。
(直接殴るんは全然慣れてないし、手を痛めるし怖ぇけど)
ここはじっと我慢だ。恐怖に懸命に抗う嵐の、ありのままでいる事こそが次へ繋がる道となる。
あくまで一般人の自己防衛を装って、不義の者には裁きの枷を。
若き渡り鳥が必死の抵抗で恐るべき雲達を払い散らしていく。
何とか、終わった。幸いにも、大きなダメージを受けずに済んだ。
未だ心音が鼓膜を乱打する。荒ぶる息を整え、震える身を抑え込む。
今一度、これからが本番だ。絶望のエンドを打ち砕き、心安らぐ星空を再び望む為にも。
成功
🔵🔵🔴
第2章 ボス戦
『星喰い』
|
POW : 連星
【硬化した鋭利な牙や金針水晶の角】で装甲を破り、【箒星描く尻尾の一振り】でダウンさせ、【星屑を纏うブレス】でとどめを刺す連続攻撃を行う。
SPD : 金星林檎
【身に生やす大樹】から無限に供給される【黄金林檎の流星群】を、レベル分間射撃し続ける。足を止めて撃つと攻撃速度3倍。
WIZ : 極星光
かつて喰らった「【煌めきを抱いたモノ達】」の魂を纏い、2倍ダメージ・2回攻撃・自動反撃を有した【星彩のオーロラ】を装備する。
イラスト:須田デジタル
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠オリオ・イェラキ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
先兵を退けた猟兵が、里で成果を待つ民達が皆等しく空を見上げていた。
一切の雲が消えた晴れ渡る夜だ。永遠の現実が満天の星を湛え広がっている。
美しい情景だ。とてもきれいなほしのよる、が。
ぐにゃりと、歪んだ。
ずんと、肺へ何かが一気に詰め込まれた感覚に襲われる。
天から得体の知れない衝撃が重力に似た負荷を伴い降り注いだとでも云うのだろうか。
上手く呼吸ができない。平衡感覚がおかしくなる。此処は、何処だ?
瞳に映るのは絶佳の景色のみだ。星が瞬いている。息苦しい程に、気が狂いそうな位に。
身体は宙に投げ出されでもしたのか。視覚を支配する煌めく景観が凝縮されていく。
一点に、ひとつに。かたちに、なって。
――――――ッ、クゥァアアアアアアアア!!!
第二派が鼓膜と脳髄を激しく揺さぶり、意識が地上に戻ってくる。
咆哮が天高く響き、地を薙ぎ払う。静寂の森も木々をしならせ悲鳴を上げた。
空に、夜を詰め込んだ竜が居る。銀河の翼を広げた異端が『イブ』の元へ降りて来る。
一等星より輝く角を携えて、黄金実らせる樹を硬き鱗で覆う身に根付かせやって来る。
嗚呼、あれこそが。我等の望みを叶えるものだと彼方の民が狂喜した。
常夜の星を抱く者よ。神の林檎育みし『アダム』よ。
さあ、時は来た。
異形な流れ星が楽園に堕ちていく。
『星喰い』が、祭壇の前へと来降した。
●マスターより
ボス戦です。
基本的に同行者以外の猟兵と連携はせず、森の各地で戦う流れになります。
二章からの参加も歓迎します。星喰いを発見し駆けつける流れになります。
ボスは初手に一瞬の酸欠を伴う衝撃波を出します。ダメージは0ですが数秒程行動不能になります。
『一章からの参加者』が居る場合はボスが油断しているため出しません。そのまま攻撃を開始できます。
『二章からの参加者』のみは何らかの奇襲や防衛等の手段を講じると衝撃波を回避できます。
続いて猟兵が使用するUCと同じ属性の攻撃を行います。
対策をしない場合重症になる可能性があります。
●プレイングボーナス
全力で戦うとボーナスが付きます。
ブラミエ・トゥカーズ
変化したまま尋ねる
貴方がアダムと呼ばれる竜ですか。本当のお名前は何というのでしょうか?
変化したまま半分くらい喰われる
残った部分から吸血鬼の姿で再生
どうだ?余は美味かったか?
正面から貴族然として剣を持って挑む
角で吸血鬼の形が破壊される
尾で体が四散してそこら中に飛び散りダウンする
ブレス前の吸気に混ざり敵体内へ
出された餌を迷いなく喰うのは知性の足りぬ生き物であれば当然であるな
これだから人間に追いやられるのだよ
余や貴公のような知恵のない生き物はな
敵体内にて再生
貴公の血、一滴に至るまで竜であるかな?
吸血鬼体が内部で吸血を含む暴力
腹の中から刺されるのは鬼の役目であるが、竜相手なら許されるであろうよ
●一寸先のツェペシュ
祭壇に捧げられた『イブ』の元で、絢爛の夜空が『アダム』と成りて牙を剥く。
極大の竜が見下ろす人の子は正しく神性と生贄の図だ。中身は何方も得体が知れないものだが。
夜の森を軋ませ凶星が迫る。贄を捉えた口は常識を超え、首を裂いて尚開き異形を示す。
捕食者の口腔は異様な程美しい星空だった。少女が見上げる先、その総てが異端の宙に覆われる。
「貴方がアダムと呼ばれる竜ですか」
終末が夜の帷として降り征き、彼女の顔が星爛に消えていく。
「本当のお名前は何というのでしょうか?」
――――。
眼界満ちる綺麗な銀河と脳髄に何か響いたのが最期の記憶だった。
咀嚼に赤を撒き散らし、喰い残した半分を視た星喰いが――異変に気付いた。
蠢く残骸、その全てが紅い液体と化しひとつに集まっていく。
集結した血色の水溜りはやがて黒く立ち昇り、ひとりの吸血鬼を形成する。
「どうだ? 余は美味かったか?」
再誕した姿こそ、ブラミエそのものだった。警戒する竜を眺めながら、血溜りより剣を引き抜く。
命滴る切っ先を真直ぐ相手に向けてみせた。言葉に続き、視覚でも挑発する。
すぐに怒りの咆哮が鼓膜を貫き、見開く緑眼の視界が針水晶の金色で埋め尽くされた。
凄烈な角の一撃が白い肌に食い込み狩猟貴族を吹き飛ばし、ヴァンパイアの形を破壊する。
樹に激突した身に間髪入れず獰猛な箒星が叩きつけられた。尾の重圧が猟兵ごと周囲の木々も薙ぎ倒す。
四散するヒトガタが斎場を鮮血で染め上げるも尚怒れる竜は飽き足らず、大きく開けた喉奥に恒星を宿して。
光集める最中血飛沫が吸気に混ざった事等気付かず、放たれた星屑のブレスは祭壇を消し飛ばした。
「出された餌を迷いなく喰うのは知性の足りぬ生き物であれば当然であるな」
星光の双眸が淀む。滅した筈の声が、身の内から聞こえてくる。
『星喰い』は身に孕む天河より異物の創生を認識した――瞬間。
異常な咆哮が夜天高く轟き、竜の形が不気味に歪む。
体内で|西洋妖怪《ヴァンパイア》が再生し、異端に裡から牙を突き立てた。
「貴公の血、一滴に至るまで竜であるかな?」
暴れ狂いだした四肢が深緑を破壊するも、暴威の主が齎す純粋な暴力が止む事は無い。
刺咬し星を砕き夜を吸い尽くす。人が恐れ伝えた吸血鬼は違わず脅威を振り撒いた。
「腹の中から刺されるのは鬼の役目であるが、竜相手なら許されるであろうよ」
伝承する恐怖が、現存する恐慌を串刺しにする。
歪に蠢動していたドラゴンが、一際激しく脈打った後弾けて星屑と化し消えていく。
残ったのはブラミエ唯独り。優雅に口許を拭おうとして……一つ咳込んだ。
掌に視線を落とす。吸血したモノは歪む煌きを付着させている。
成程怪異同士の喰い合いは、双方形振構わぬ痕を遺したと言う訳か。
「これだから人間に追いやられるのだよ。余や貴公のような知恵のない生き物はな」
星夜に御伽噺の吸血鬼が薄く呟く。見据える空は、変らず壮麗であった。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・フェアリィハート
アドリブ歓迎
【SPD】
このドラゴンさんが
『星喰い』さん…
ここからは
私自身が
頑張らなきゃ…!
【勇気】を振り絞り
立ち向かい
自身の翼で飛翔
【空中機動】等で
【空中戦】も行い
立体的に立回り
攻撃等
【第六感】【心眼】【残像】
【通常攻撃無効】
【結界術】【オーラ防御】で
防御・回避
UC発動
焔の蜘蛛糸領界発生
ヴォーパルソードを手に
【ハートのA】も展開
剣から【斬撃波】を放ち
【なぎ払い】【切断】で
斬りつけ
【ハートのA】からの
【誘導弾】の【一斉発射】
【弾幕】を
発動中のUCとも組合せ
林檎の流星雨を
相殺等しつつ
持てる力で
全力で以て
『星喰い』さんに攻撃
ダメージ等
UCの蜘蛛糸の露で回復
『確かに私は…まだまだ未熟な身です…けど!』
●金星と踊る蜘蛛糸上のアリス
全速力でぴゅーっと走っても、お星さまはずっと見ていました。
聞こえてきたうるさい声にふり向くと、おおきなドラゴンがやってきたからさあ大変!
分身のアリスちゃんはウサギ穴にぴょんと消えました。
のこったのは、アリスだけ。
「このドラゴンさんが、『星喰い』さん……」
小さな姫君の晴眼いっぱいでも映しきれない巨躯が、目前に迫ってきていた。
竜と呼ぶには絢爛で、星とするには禍々しい。小びんを味見しなくても、小人に成った気分になる。
恐いは十分食べたなら、次は勇気を振り絞って立ち向かう番だ。
「ここからは、私自身が頑張らなきゃ……!」
尊きハートを奮い立たせ、オラトリオが翼を広げ飛翔する。
轟音伴い突き抜けてくる彗星を紙一重で回避し、小柄な体は木々の間を抜け立体的に飛び回った。
後方で樹が爆散する。弾け飛ぶ欠片はオーラの結界で無効化し尚も空中で立ち回る――が。
「……!」
刹那、直感に従い身を捻った。僅差ですれ違う黄金の軌跡を逆に辿れば竜の鋭い視線とかち合った。
夜をあしらう怪物の背に金生る樹が生い茂り、民が求める林檎が鈍く輝きアリス目掛けて放たれる。
あれは恵み等ではない、唯の兵器だと認識する間も少女は深夜を逃げ回った。
星夜の森に不気味な地響きが木霊する。見失った可憐な『イブ』は何処だと『アダム』が探していた。
ならば空からと広げた翼が――紅蓮の糸に絡め捕られる。
「全てを灼く紅蓮の星焔の蜘蛛糸」
何時の間にか、周囲に焔の蜘蛛糸が張り巡らされている。発生した領界上に、アリスが降り立つ。
その手に空色の光焔を纏い輝く剣を、傍らに華麗を鏤めた空翔ぶハートを携えて。
「全てを癒す銀なる星の蜘蛛糸――それらの領界を……!」
詠唱完了と激高した咆哮が同時に響き、姫英雄の剣が齎す斬撃波と金の流星群が交差する。
衝撃に立ち昇る砂塵から虹や星花飾るジュエルが飛び出した。メルヘン抱く変幻自在の弾幕が敵へと導かれる。
蜘蛛の巣に囚われた星喰いはされど、追撃時よりも速度を上げた林檎射撃で応戦してきた。
無限に供給される流星雨の相殺戦。それを縦糸の上で見据える猟兵が機を伺う。
横糸に付いた露をひと掬い、口に含んだ。グリップを握り込み、王様への一本道を駆け抜ける。
気付いたドラゴンが標的を少女へ集中させるも、頼もしいエース達が再展開され援護を放つ。
防ぎ切れない僅かな果実弾を受けようと。持てる力で、全力で以て、オブリビオンに挑みかかる。
「確かに私は……まだまだ未熟な身です……けど!」
絶望の終焉を破壊する為に。強き志で、斬りつけなぎ払う。
星喰いを構成する銀河が切断され、紅い糸より敵を灼滅する焔が燃え上がる。
大地を揺らす絶叫。ドラゴンの身体が弾け、星の煌きを遺し何処かに消えていく。
帰ってきた静かな星の夜を見上げアリスはぺたりと座り込む。
疲労と恐怖がハートに残るけれども、一つ成し遂げたと――姫君は小さく息をついた。
大成功
🔵🔵🔵
鏡島・嵐
こっからが本番、だな。
星の海を渡り、星を喰らう竜……口にするんもおっかねえ。いったい何人の贄を喰らってきたのか、想像もしたくねえや。
でも、ここで止めてみせる。
これ以上、おれの好きな星空を、穢させはしねえ……!
(懐からスリングショットを取り出し)
まともに攻撃を受けるのはマズいよな。
〈第六感〉を活かして攻撃の前兆を〈見切り〉、〈オーラ防御〉も組み合わせて、受けるダメージは最小限に。可能なら〈目潰し〉〈マヒ攻撃〉で牽制しつつ、隙を窺う。
相手の二度目のUCに合わせて、こちらもUCを使用。相殺して、強化されねえようにする。
隙が見えたら、その時こそ〈限界突破〉した一撃を〈スナイパー〉ばりの精度で叩き込む。
●あの一番星を撃ち抜けるなら
狂った夜空から放たれた衝撃を吐き出し、息を整える。
見上げた先を睨む嵐は胸元を握り、震える手も一緒に抑え込む。
「こっからが本番、だな」
此処迄成し遂げた。覚悟もした。そして望み通り今、眼前に異端が居る。
「星の海を渡り、星を喰らう竜……口にするんもおっかねえ」
降臨した『アダム』は彼方の恒星より輝く目で『イブ』を照らす。
ドラゴンの型に切り取られた星雲は夜の森で何より鮮やかだった。
異形の身に浮かぶ星々が、命の如く煌めいている。
「いったい何人の贄を喰らってきたのか、想像もしたくねえや」
心音が鼓膜を激しくノックする。逃げようと、弱気が急かす毎秒の恐怖に抗う為拳を強く握り込んだ。
「でも、ここで止めてみせる」
不退転の決意を口にし手を懐へ。
取り出す手製のスリングショットは、彼の勇気を象徴していた。
「これ以上、おれの好きな星空を、穢させはしねえ……!」
渡り鳥は地に縫い付ける枷を壊し獲物を構える。
此処からは、猟兵の戦いだ。
雰囲気の変化を感じ取った星喰いが即座に嵐を敵と認識する。
歩み寄る脚を止め、太い尾を大地に叩きつけ低く唸るドラゴンが輝き始めた。
酷く、綺麗な光だ。異端の体内に巡る星達が歪な瞬きを連ね極彩色のオーロラを生み出す。
嘗て飲み込んだ星贄達の燦めきが神性の糧と成り異様さと絢爛さを増していく。
嫌な予感は厭と言う程感じ取れた。
「まともに攻撃を受けるのはマズいよな」
獰猛が放つ鋭利な視線が獲物を狙い定めている。
犀利な爪先が地に沈むのと、小麦色の耳がぴくりと動くのは同時だった。
巨体から想像できない速さで襲い掛かり、雄叫びが喉を裂き怪物の口腔と化して祭壇を齧り抉る。
それを紙一重で見切った鳥は近くの枝へ跳んで避け、着地後すぐY字型の棹を敵に向けた。
ブレる照準に己の心を叱責する。此処で外せばきっと後悔するから。
意を決し撃ち出した弾丸は『アダム』の片目を砕いてみせた。轟く叫喚に手応えを感じた、瞬間。
「って、ちょっ!?」
死角から振りかぶった自動反撃の尾が猟兵諸共樹を薙ぎ倒す。
とっさに展開された金糸彩る青色のオーラで大半を防ぐも、受け身から体を起こす際に痛みを感じた。
右か、利き腕でないならまだ戦える。奮い立たせるんだ、果てを超えようとも。
星喰いが、再び星達を瞬かせる。――この時を、彼は待っていた。
「……幻遊びはお終いだ」
竜と人の境に魔鏡が顕現し、彼方の庭園に映し出された逆転の幻像が極星の光を相殺する。
消えるオーロラに驚く隙を嵐は見逃さなかった。ずっと窺っていたのだ。
「――!」
左手でフレームを握り締め弾ごとポーチに噛付いた。限界迄顔を引き、唯一点に集中する。
勇敢なスナイパーは残った一等星を渾身の一撃で撃ち抜いた。
僅かな煌めきを遺し異端が星夜に融けていく。静かな森に、嵐が好きな星空が戻ってきた。
満天の星々は変わらず彼を照らし、瞬いている。
大成功
🔵🔵🔵
檍原・颯汰
【171】
「夜」は安らかな方が好きかなー
でもそれは陽光があっての感想だね
常夜の世界で燦めくものは必要なのかも
でもそれはこの世界の人々が持ち・齎すもので
竜の煌めきも黄金林檎も不要だと思うなぁ
星の明度を落とし、捧げる者の破滅を呼ぶ
さっきは敵からも未視認だったから、潜んだままがよければ戦闘鎧を解除した時に一旦身を隠す
星喰いにUC
『星喰い』の精神世界はどんな感じだろう
先程のように夜を詰め込んだものだろうか? それとも…
若葉さんは陽動をありがとう
トラウメンヴァッフェを纏わせ雷鳴の破壊を
内部から攻撃して、じっとしていられないくらいの電撃の嵐を
早々に星喰いの力を削ぎたいな
リアル側でも適宜電撃攻撃していくよ
鵯村・若葉
【171】
……民の歓喜の声が聞こえた気がします
彼らは正気に戻ったその時、自らの罪に耐えられるのでしょうか
何にせよあなたを放置する理由にはなりませんが
確かに夜が安らかなものであるというのは陽を知るからこそなのかもしれません
けれどこの輝きは強すぎる
過ぎたるは猶及ばざるが如し、そうでしょう?
竜の精神世界には自分も興味があります
檍原様、後で教えてください
『贄血』を自らに塗り、UCで更なる煌めきを
自分に攻撃が向くよう『誘惑』を試みる
彼の邪魔はさせません
『空中機動』も含め動き回り、相手の動きを止めさせず狙いも定めさせない
――動き回る『イブ』はお嫌いで?
電撃と流星の嵐に紛れ
『武器に呪詛を纏』い、剣を突き刺す
●シュレディンガーに是非を問う
目映い実を実らせた異端が、夜を連ねてやってくる。
星を織り込む布を纏った『イブ』の元へ『アダム』と崇められた異形が迫るのを、颯汰は静かに眺めていた。
(「夜」は安らかな方が好きかなー。でも、それは陽光があっての感想だね)
星夜の森は昏く深い。だからこそ光は一層引き立って輝き、闇を恐れる者達を照らしている。
例えその耀きが、歪だったとしても。
「常夜の世界で燦めくものは必要なのかも」
呟きは竜の唸り声を交えた息吹に消えた。捕食者は祭壇に到達し、俯く贄へと首を伸ばしていく。
その図は星夜に相応しき神々しさを纏った主へ、信徒が祈りを捧げている風にも見えた。
オブリビオンが人々の心を弄び支配する世界で力無き民が救済の光芒を求め続ける。
でもそれは。
(この世界の人々が持ち・齎すもので、竜の煌めきも黄金林檎も不要だと思うなぁ)
どんなに羨望し渇望する煌きがあろうと、本当に望む燦めきかは自身で判断し己の力で選ばなければならない。
唯々与えられる不明の眩しさは彼等を真に導く星の明度を落とし、捧げる者の破滅を呼ぶだけだ。
――それに、若葉が信仰するのは眼前の怪物ではない。
(さっきは敵からも未視認だったから)
シャドウは戦闘鎧を解除し一旦隠密を行う。蛇のように、音も無く身を潜ませた。
彼方の星空と、間近の星夜の二つに照らされた星贄が口を開く。
「……民の歓喜の声が聞こえた気がします」
『イブ』の冷静な声色に、『アダム』は喰らおうとする姿勢で動きを止めた。
獰猛極める口腔に生えた鋭利な牙が数m先にあろうと、祭壇上の人間が動じる事は無い。
「彼らは正気に戻ったその時、自らの罪に耐えられるのでしょうか」
気にかけるのは妄信に侵された人々の未来。ほんの僅か、若葉の心を染める何かと似た彩を感じた気がして。
「何にせよあなたを放置する理由にはなりませんが」
静かに立ち上がり、羽織っていただけの織物が地に落ちる。
貌を上げ灰色の双眸が異端の神を映した。
「確かに夜が安らかなものであるというのは陽を知るからこそなのかもしれません」
嗚呼、眩しい。星々瞬く夜空が今、手を伸ばせば届きそうな位置に居る。
「けれどこの輝きは強すぎる」
淡々と告げる『ワカバ』の言葉を理解したオブリビオンが、鋭い視線に輝きを変えた。
此奴は弱い獲物ではないと。猟兵と、認識される。
「過ぎたるは猶及ばざるが如し、そうでしょう?」
竜は嘶き己の敵へ凶牙を振り下ろす――が、それも彼に後数ミリの所でぴたりと止まった。
ドラゴンの星彩煌めく身体に一瞬、影が交じる。
颯汰が創り出したシャドウペルソナは星喰いの裡へと侵入を果たし、奥へと入り込む。
「『星喰い』の精神世界はどんな感じだろう。先程のように夜を詰め込んだものだろうか? それ、と、も」
木陰に身を隠す本体の動きもまた、停まった。
繋がる先で分身精神体が星を、無限の宙を視ている。
其処は上下左右も、表も裏も、地も重力も、正常も異常も何もない。何も、なにも。
己の|人格《ペルソナ》は此処に居る。でも、認識できない。肯定と否定が重なって、輪郭が維持出来なくなる。
ばらばらになって、星屑に成って。でもどうして、吸収されない。
やっぱり自分は不味かったのだろうか?
「檍原様」
答えが、彼の名を呼んだ。
「若葉、さん」
リアルに意識が切り替わった先で、色白の肌に赤を垂らした顔が安堵している。
どうしてと叫びかけた口は黒手袋に包まれた人差し指に止められた。
「あなたが潜んでいて良かったです。あれを」
逸れる視線を黒い瞳が追いかける。二人が存在を消す傍で、巨躯が獲物を探している。
周辺の樹は無残に薙ぎ倒され、所々に金の実が突き刺さっていた。
「あの実は速射する銃弾でした。本体が動かない時は更に早い」
「それなら、じっとしていられないくらいの電撃の嵐で内部から攻撃しようか」
171の僅かな誤差は埋まるのが早い。手短に状況説明し、即座に状況判断を行える。
でしたら自分は陽動を。小瓶を手に立ち上がる彼へ、颯汰が短く礼を告げると視線がかち合った。
「竜の精神世界には自分も興味があります。檍原様、後で教えてください」
言い残し、若葉は戦場へと駆けて行く。
先に受けた傷口からと、自らに塗る贄血の香り。そして。
「祈りましょう――我々の勝利を」
異端の夜を猟兵の夜にも塗り替える。やわらかな星銀の光が若葉を更なる煌めきで飾り付けた。
誘い込む甘美と惑わす耀きはすぐさま星喰いを捉え、惹き寄せる。
林檎の流星群が放たれた。止まって狙い定めるのなら、森の奥へ。木々を飛び交い空中機動も含め動き回った。
咆哮に怒気を感じ取る。それでいい、呪言士は振り向きとっておきの呪いを吐いてみせる。
「――動き回る『イブ』はお嫌いで?」
星嵐夜に響き渡る怒号と黄金の雨音が激しくなる戦況を報せてきた。
「陽動をありがとう、若葉さん」
再び陰から、シャドウが動く。漆黒色の悪夢を纏って颯汰は瞼を閉じる。
開いた先で自身を失いかけたあの宙が広がっていた。でももう、大丈夫。
呼ばれる名を持って、揺蕩っていた世界から目覚めたのだから。
疑問をかき消す雷鳴が轟き、竜を内側から破壊していく。
「早々に星喰いの力を削ぎたいな」
痛みに暴れ出しても尚手を止めず、中でも外でも適宜電撃攻撃を重ねてみせた。
竜が元を辿ろうにも、黒聖者の誘惑と妖星より齎される呪詛が阻んで影を発見できない。
「彼の邪魔はさせません」
もう此処には『イブ』も『蛇』も存在しなかった。
『アダム』を討つ者の名は――猟兵だ。
流星の嵐に紛れ、若葉が一振りの剣を手に星喰いへと駆け抜ける。
迎え撃たんとする異端の身は颯汰の電撃に貫かれて。
星空に向け絶叫する竜の逆鱗へ、呪詛を纏った刃が突き刺された。
一瞬、ドラゴンは形を不気味に歪ませた後……星屑と化し消えていく。
これで終わったのだろうか。並んで見上げる空は、二人が知る穏やかな星々で満ちていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ウィズ・ザー
アレが星喰い。身体の大半が顎になってやがるわ。しかし…あの様子じゃ死体は消えそうだな。金針水晶の素材は余す所無く使いてェ所だが…
「仕方無ェ…喰うか。」
技能は全てフル活用。闇霊の装に変化、敵を囲む形で無限に湧き出す狼型の影の分体を使用し【空中戦・悪路走破】でデコイとして、敵の攻撃を使い闇を派手に撒き散らす【範囲攻撃】
自身やデコイに気を取られた間に闇で地面覆い、やがて敵を包む形で空を覆う。薄い皮膜は林檎の弾を通すが本体までは通らない
「手前が光ってりゃ問題無いとでも?残念、今は夜だぜ」
闇は常に『傍らに。』
闇顎使用。丸ごと喰らい付く【2回攻撃、属性攻撃、魔喰、竜殺し】
魔力、生命力余す所無く吸収するぜ。
●神喰石竜子
闇に這う長尾が反応する。森の奥で星が舞い飛ぶ一部が視えた。
そう間を置かず、寝そべるウィズの頭上で煌きが集い夜が歪み巨躯が顕現していく。
成程、と理解した。
「アレが星喰い。身体の大半が顎になってやがるわ」
狂暴さを象徴する牙は凡そ口と呼べる場所に在るだけでは飽き足らず、喉を超えても生え連なる。
その隙間から銀河が覗ける異様さも、異端と呼ばれる一端なのだろう。
「しかし……あの様子じゃ死体は消えそうだな。金針水晶の素材は余す所無く使いてェ所だが……」
眼孔無くとも視線が残念そうに竜の頂を見上げ、次いでゆっくりと体を起こす。
「仕方無ェ……喰うか」
言うが早く、闇色の水大蜥蜴は影に溶ける。
喰らおうとしたドラゴンが見たのは、『イブ』の居ない祭壇と空になった枷だった。
「――俺は此処だぜ? |同類異物《ジャバウォック》」
背後からの声に星喰いがぐにりと首を曲げ、恒星の双眸が同音異物を捉える。
夜風が揺れる毛並みを撫でていく。暗い鱗は闇霊の装に映え変わり一匹が一頭へ形態を替えた。
双つの星を、肆つの銀球が出迎える。否、二対四眼が――沢山居る。
地を染める闇夜からドラゴンを囲む形で狼型の影の分体が無限に湧き出し、一斉に飛び掛かった。
迎え撃つ竜が鱗燦めく尾を振り抜いて、一部を吹き飛ばしても闇蜥蜴の影達は絶え間無く。
木々や祭壇が抉れ崩れた悪路も足場に突撃し、果ては枯枝の翼を広げ空をも跳んでみせる。
彼等の集中範囲攻撃に『アダム』が咆えた。瞬間、異形の樹に生る実が酷く輝いて。
民が渇望した神の林檎はガトリング砲の弾と化し周囲の闇霊を撃ち抜いた。
「クカカ、やるじゃねェか!」
群れの何処かでウィズが嗤う。敵の攻撃は次々と分体を爆散させるも猟兵は上機嫌だ。
何故なら一斉攻撃は罠で、写し身の大群は総てデコイだから。
この囮達は撃たれる為に在る。撃墜された影が闇を派手に撒き散らす。星夜に、戦場に。
奴の周辺全てに。
林檎雨に少々借り物が削られたがまァいい。
敵が自身やデコイに気を取られた間に蜥蜴は闇で地面を覆い尽くす。
奴が異変に気付くも、もう遅い。夜より深い影がドラゴンの周囲に立ち昇り、敵を包む形で空を覆う。
囚われた竜が暴れても、出鱈目に飛ばす黄金が薄い皮膜の向こうに消えるだけ。
されど本体は通るべからず。怒れる星喰いが眩い輝きを湛えても、ウィズの彩は照らされない。
「手前が光ってりゃ問題無いとでも? 残念、今は夜だぜ」
闇は常に『傍らに。』
此処はもう、魔喰者が口の中だ。
竜殺しの顎が獲物に丸ごと喰らい付く。闇が魔力を吸い、影が生命を腹に収める。
やがて包み蠢く闇が徐々に収縮し、一匹の大蜥蜴のみが場に残った。
夜空を仰ぐ体制で何度か口と喉を動かし飲み込む仕草。が、上手くいかない様だ。
諦めて吐き出すと金針水晶らしき欠片が一つ転がり落ちた。どうやら奴も尻尾を切ったらしい。
土産かなと低く笑い、ウィズもまた星夜の影に融けていった。
大成功
🔵🔵🔵
シホ・エーデルワイス
真の姿は一旦解除し
磔状態で星空を眺めながら待つ
敵の強大さに恐怖は感じるけど
星空が好きな私は星空を纏ったような竜の姿を美しいとも感じます
しばし見つめた後
微笑を浮かべて死を覚悟したように目を閉じます
次の瞬間には敵の角で串刺しにされ
尻尾の一振りで磔台ごと破壊されながら宙に吹き飛ばされ
ブレスを吐く口で食べられそうになるけど
吹き飛ばされた瞬間に【死命】が発動
残像を囮にし
自身は光学迷彩を纏って目立たなくなりつつ敵の背後に回り
枷の鎖を周辺の構造物を経由して巻き付かせた上で
敵を捕縛
敵が金星林檎のUCで反撃するなら
私は両手を広げ脱力状態になり【贄証】で受止め撃ち返す
極星光のUCで枷の鎖を外そうとするなら
【終癒】で纏った魂を吸収
囚われた方々の魂
解放させてもらいます!
衝撃波は事前にオーラの結界術で周囲の空気ごと纏っておき防御
聖銃を連射モードにし追跡誘導弾によるスナイプで
敵の頭部部位を貫通攻撃し破壊
戦後
星空を眺めながら
敵も含めた犠牲者の魂に祈りを捧げます
どうか安らかな眠りを…
○磔刑の庭で祈りを
世界を覆う夜の帷は変わらず満天の星を鏤め耀きに満ちている。
聖者は未だ十字架に磔けられ、星空を眺め来るに任せていた。
やがて彼女を飾る花達が、荒い風に吹かれ怯えたように揺れ身を散らしていく。
真なる姿から捧げるものへ戻ったシホもまた、羽根先に迄伝わる異様さを認識していた。
もうすぐ此処に。『イブ』を飾った青の花園に『アダム』が訪れる。
星屑が流れ落ち一点へと集合する。切り取られた瞬きは硬い鱗と成り、輝く双星が双眸と化す。
異端の視線が降りかかる。只敵の強大さに恐怖もあれど、竜の姿を美しいとも感じていた。
好きな星夜が、目の前に来てくれたような気がして。
しばし見つめた後、大切な思い出を銀髪に飾る娘は微笑を浮かべて死を覚悟したように目を閉じた。
瞼が覆う暗闇の向こうから、苛立ちを含んでギラつく輝きが近付いてくる。
尽く、食事に失敗しているのだろう。されどすぐ近くに居るのに喰らい付く様子が無い。
静寂が場を掠める、次の瞬間。
「――っ」
どす、と鈍い音が腹部に響いた。急激な熱を感じ、同時に込み上げるものを我慢出来ず吐き出した。
見開く瞳が赤に塗れる金針水晶を見下ろす。辿る先は『アダム』の頭部だ。飴細工の様に角が伸びて、腹を。
無慈悲に先端が紅い飛沫を伴って引き抜かれる。硬化している筈の凶器が靱やかに戻っていく。
痛みよりも無意識に、口内に溢れる鉄の味を持て余しながらも見つめる先で。
至近距離に来る絢爛の流星が視界総てを染め上げて――全てを、吹き飛ばした。
呻き声等最早破壊の轟音に呑まれ些末と始末される。尻尾の一振りで磔台ごと薙ぎ払われ、残骸が宙を舞う。
突き抜ける夜空に、血の珠と折れた羽根が鏤められた。蹂躙された青の花弁が命の如く散っていく。
無惨に投げ出された『イブ』は四肢に力無く、壊れた人形同然に成ろうとも尚追い打ちせんと竜が口を開く。
混濁する意識の中、シホは風前の灯火に昏く揺れる瞳で眼下を見ていた。
走馬灯の前兆が現状をスローモーションに彩り、天高く飛んだ身体が限界点に到達する浮遊感だけを感じている。
もう、脳髄が拒否しているのか。それとも此れが己の使命と覚悟をしているのか。痛覚は無かった。
唯重力が星空に浮かぶオラトリオを掴んで引き摺り墜としてゆく。星屑の輝きを詰め込んだ、彼の口腔へ。
嗚呼、あの光に照らされたら終に安息が訪れるのだろうか――いいえ。
マリオネットは死命を受け続ける、今もずっと。
「どうせ許されないというのなら……」
か細い声が、放たれたブレスの中に消えていく。
とどめを刺した生贄を素の侭喰らい付いて咀嚼数回、ドラゴンが違和感に気付き動きを止める。
確かに贄を齧った筈だが喰い応えが無い、零したかと周囲を見回そうとした時……次の不快感に気付いた。
オブリビオンの周りに、星光を受けて鈍く輝く鎖が張り巡らされている。
周辺の構造物を経由して巻き付く枷達は皆、星喰いに絡み付き捕縛の術となっていた。
背後に気配がする。動き難い首を巡らすも異端の神を束縛したモノの元を辿れない。
索敵する一等星の瞳が視界の端に揺れる銀糸を発見次第噛付いたが『それも』残像だった。
なら本体は何処か。……探す視線に一瞬、異彩を放つ何かが片隅に見えた気がする。
いや、違いない。夜の森が一部動き人型に揺らめいた。
異形が発する星の光すら屈折させ誑かすものを纏い潜んでいた存在が、光学迷彩のヴェールを払う。
傷一つ無くされど己の罪悪感に拘束された咎人が、星夜の下に姿を現した。
「串刺しにされ、薙ぎ払われ、何度死に近付こうとも私の宿命は決して私を開放しません」
罪は生きて償い続けろと云うのなら、幾度手折れ儚くなろうと私で在り続ける。
今も嘗ても、誰かを救おうとする志の侭に。さあ、もう一度。
「この身を捧げて戦います!」
激高する竜が天高く咆える。来臨時の一撃が来ると察したシホは枷の鎖を操り身を包む。
可視化するオーラ結界で周囲の空気ごと纏って肺を護り、物理的な衝撃を受けるに留めた。
黄金の林檎が降るなら鎖の守りを解除し両手を広げ有るが侭受け入れ、反撃の弾に代え撃ち返す。
やがて業を煮やした星喰いが身動き取れぬ状態を打破しようと身に新たな輝きを発し始めた。
咎人の瞳に僅かな極光が映り、聖者は眉を落とす。あれは罪無き者達の煌きだと直ぐに理解する。
今、手の届く所に苦しむ命があるならば迷い等無かった。彼等を|竜の盾《オーロラ》とされる前に。
抜き出した白と黒の二丁聖銃を連射モードに変更、照準はドラゴンの頭部その一点へ。
鋭き爪が繰り出されようと、尾が再び身を討ち再度紅に塗れようとトリガーを引き続ける。
「囚われた方々の魂、解放させてもらいます!」
十字の発射炎を光らせた追跡誘導弾によるスナイプは銀河を越え、敵の頭部を撃ち抜いた。
巨躯が消え、小さな煌き達が天へと昇っていく。
静かに融けゆく輝きと星空を眺めながら、満身創痍のシホはそれでも胸の前で手を組んだ。
苦痛や負の感情を和らげる優しき温かな光も空へ。敵も含めた犠牲者の魂に祈りを捧げる。
「どうか安らかな眠りを……」
呟く声は、僅かな花弁と共に夜空へ流れていった。
大成功
🔵🔵🔵
南平岸・月斗
「ハッ、貴様が『アダム』か!イヴを求めてきたところ悪いが、我こそが真なる『アダム』なのでな!」
気合十分だね!今回は思う存分ビートダウンしよう!
「上等だ!」
『|決闘《デュエル》!』(唱和)
「奴の攻撃は連続攻撃だ!加えて守備貫通を持っている!」
だがそれは効果の発動を伴う!《対抗呪文》を発動!相手の効果の発動を無効にする!
「効果の発動を無効化したことで、我が竜覚醒条件はクリアされた!」
ゲーム外よりこのカードをフィールドの《竜神アダム》に重ねて竜覚醒!《竜神皇帝アダム・カイザー》!!
「我が効果を発動!我らの3回目のエンドフェイズを迎えるまでの間、貴様は効果を発動することができない!」
僕のターン!
星喰いに破壊無効効果を付与する《最低限の盾》を、こちらにはバトルに勝つ度追加攻撃できる《無双の剣》をそれぞれ装備!
これで無限攻撃コンボが成立!バトルだ!
「終わりだ、偽りのアダムよ!」
「しかし、私にもいるのだろうか、イヴたる存在が」
言われてみれば、確かに……。
アダムがいて、イヴがいないって妙だよな……?
○🔵🔵をコストに発動
バトルゲーマーが待つ星空のフィールドに。否、未だ此処は奴の領域か。
「ハッ、貴様が『アダム』か!」
夜を歪ませ不明の法則で顕現する異端の神に、同じ呼び名を持つ竜神が咆えた。但し簀巻きで。
気持ちが先走り、彼が拘束を思い出したのは敵の金針水晶が不気味に瞬く時だった。
「アダム!」
月斗の叫びと衝突音が交差する。異様に伸びた角で祭壇が破壊され、千切れた拘束具が宙を舞う。
彼の相棒は多少傷付くも既の所で脱出していた。
「イヴを求めてきたところ悪いが、我こそが真なる『アダム』なのでな!」
夜より深い黒と猛き情熱を赤と染めるドラゴンが声を張り上げる。
星夜に響く宣戦布告を聞きながら、カードの主は傍へと駆け寄った。
「気合十分だね!」
勿論だ、そう返すべく相方を見た瞬間――視界の端より流れ来る箒星に気付く。
「月斗!」
即座にプレイヤーを抱え尾の直接攻撃を回避するも『アダム』の手番は終わらない。
開けた大口に輝き集める最後の一撃は、普通の青年が受けたら一溜りもないだろう。時間が無い。
守備表示となり庇うアダムの隙間からカードを挟む指先が出るのと、ブレスの発射は同時だった。
閃光と轟音が夜の森を激しく揺らす。土煙が落ち着く先で、一人と一体が息を吐く。
「エルダーフェンリル……」
複製キャバリアを盾に威力減らせたと、多少赤を滲ませ笑う顔に相方は色々言いたくなるものの。
これで、星喰いのターンは終了した。今度は此方のゲームでやり返す。
「今回は思う存分ビートダウンしよう!」
「上等だ!」
デュエリストとキーカードが揃い、高らかに唱和する。
『|決闘《デュエル》!』
例え相手が異世界の神であろうと、宣言すれば此方のものだ。
デバイスから手札をドロー、勝負所で引きを外すなんて未来は彼の構想に存在しない。
結果は勝負師の表情が如実に物語っていた。次にあえて、ターン終了を告げる。
「奴の攻撃は連続攻撃だ! 加えて守備貫通を持っている!」
先程辛酸を嘗めた攻撃が来ると相棒は注意を促すが、もう此処は彼の盤面上だ。
今こそ、カードデュエリストの本領が発揮される時。
「だがそれは効果の発動を伴う!」
全ての事象をカードゲームのルールに落とし込み、制約が場を支配する。
明言一つでドリルの如く迫る金針水晶の角が動きを止めた。
構わず月斗がカードを出し、展開してみせる。
「その効果にスタックし《対抗呪文》を発動! 相手の効果の発動を無効にする!」
繰り出す呪文が即座に『アダム』の行動総てを葬り去った。
攻撃出来ず驚く相手の前にアダムが飛び出し、威風堂々たる姿で不敵に笑う。
「効果の発動を無効化したことで、我が竜覚醒条件はクリアされた!」
竜神の背後で、とびきりのエンドカードを手にした人間もまたいい顔をしていた。
コンボ偏重主義が創り出す必殺の一枚が、解き放たれる。
「ゲーム外よりこのカードをフィールドの《竜神アダム》に重ねて竜覚醒!」
発動したカードと《Adam, the Dragon God》が合わさり一つの光に包まれた。
それは灼熱の炎を伴い星夜の何より強く煌めいて、森を照らしていく。
「《竜神皇帝アダム・カイザー》!!」
掌を光球に向け青年が叫んだ瞬間、輝きが弾け|幾つもの星を抱く《最高レアの》ドラゴンが召喚された。
新たに場へ出された|竜神皇帝《カード》は、傷一つ無い神々しき姿で異形と対峙する。
唸る異端の神はあの輝きが喰いたくなったか双眸を歪に光らせる。――だが、おかしい。
何故身体が動かないと藻掻く『アダム』に、アダムが笑って魅せる。
「我が効果を発動! 我らの3回目のエンドフェイズを迎えるまでの間、貴様は効果を発動することができない!」
場に《Adam,the Dragon Kaiser》が有る時点で、勝利への道は既に出来ていた。
行動を封じられた者が可能なのは、相手に手番を返す事だけ。
「僕のターン!」
流れを完全に掴んだ月斗が更に二枚のカードを表示させる。
「星喰いに破壊無効効果を付与する《最低限の盾》を」
相対する竜にはサレンダーなど許さない、徹底的に攻戦し尽す宣言を。
「こちらにはバトルに勝つ度追加攻撃できる《無双の剣》をそれぞれ装備!」
共に戦う竜には漆黒の鋭利さを誇る、約束された勝利の力を与えた。
覚醒されしドラゴンが大剣を構え、鍔に飾る黄金と彼の双眼が鮮やかに耀く。
「これで無限攻撃コンボが成立! バトルだ!」
夜を塗り替える翼を広げたアダム・カイザーが相棒の声に応えオブリビオンに斬りかかった。
見事な一閃、追加効果が発動。更なる一太刀も次が永続に続き敵を蹂躙する。
「終わりだ、偽りのアダムよ!」
星喰いを夜空の星々より細切れにする迄、斬撃は止まらなかった。
奴は倒した。気配が何処かへ融けた感覚もしたが、勝利と言って良いだろう。
残ったアダムに近付く月斗が、星夜を仰ぐ様子に気付く。
「しかし、私にもいるのだろうか、イヴたる存在が」
相棒の呟きに一瞬面食らうも、すぐ納得した顔で同じく空を見上げた。
「言われてみれば、確かに……。アダムがいて、イヴがいないって妙だよな……?」
彼等の疑問に、答える者は今は居ない。
ただ、応えるように満天の星から一つが輝き流れていった。
大成功
🔵🔵🔵
グラース・アムレット
【花色龍】
……まあ、かつては圧し潰されそうな「夜」を過ごしたこともありましたね
敵の遠吠に、静寂に、孤独に
捧げられた『イブ』たちも、絶望の夜を過ごしていたのかも
仁さんも偶にあったんですか
「夜を越えた証」の言葉は嬉しく、微かな微笑みにとどめ
戦闘では魔術絵本と絵筆を手に、かつて『イブ』と呼ばれた魂たちにも向けてUC
絵の具は絵本から顕現するページを使いましょう
敵の威力減衰に、『イブ』のヴェールを被る前のことを顕現できたらと高速詠唱
贄にと捧げられた星たちの個性はそれぞれ。
あなたの心身の美しさを、豊かな感情宿る瞳の色彩を、透き通る声を褒めてくれた、優しくやわらかな思い出。
可愛がってくれた家族、誰かとの繋がりを紡ぎ続けた生き方、声は時に響き渡る唄に。
無念に残した彼らにとって、あなたがたはいつまでも心の一等星となっているはず。
星彩のオーロラを剥ぐように、思い出の色を描き続けるわ。
「桜風」のエフェクトを攪乱に使い、属性攻撃をのせ放って攻撃手の支援を
UCと共に色の魔法を使ってオーラ防御かつ拠点防御で手堅く
青梅・仁
【花色龍】
いやあよく吠えるこって
贄が多くて歓喜しているのか?
――俺はお前さんよか、民の歓喜のが悍ましく思うけどな
どちらの歓喜もここでお終いにしようぜ
グラースちゃんは、今も夜が怖い時はある?
おじさんもね、偶にはあんのよ
……きっと、力持たない『イブ』はもっと怖かっただろう
それに寄り添えるのは、グラースちゃんがその夜を越えた証なのかもね、なんて
グラースちゃんが魂達に呼びかけてくれている間に攻撃を向かせる訳にはいかない
『オーラ防御』で自身の防御を高めてから『挑発』して攻撃を引き受ける
この世界に朝はこない
だからこそ、その煌めきが民には良く見えた
それだけ
――お前さんは神に非ず
だからこんな“親子”さえ喰らえない
グラースちゃんの支援を受け、飛び掛かるように星喰いへ
嘗ての贄をまだ使い潰すというなら、俺達が『神罰』をくれてやろう
その魂はお前さんには過ぎたるもの
喰らうことさえ、本当は赦されやしない
魂達が苦しんだ分、とまでは行かないだろうが
喰らい、利用しようというその姿勢は罰されるべきだ(『居合』+UC)
○花降る夜に、星命が昇る
星夜の彼方で異端の咆哮が響く。衝撃が、森と猟兵達の脳髄を揺さぶった。
「いやあよく吠えるこって。贄が多くて歓喜しているのか?」
深い闇の奥から伝わる異音は不気味な波紋を広げ、未知の恐怖を引き起こさんとする。
隣で織物を握り締めるグラースに気付き、仁が再び口を開いた。
「グラースちゃんは、今も夜が怖い時はある?」
唐突な質問に『娘』は顔を『父』に向け、一つと二つの視線が交差する。
不思議がっていた眼差しはそっと伏せられ、思案顔へと彩を変えた。
「……まあ、かつては圧し潰されそうな「夜」を過ごしたこともありましたね」
未だ、敵の遠吠が木霊する。しかし一旦それが止むと、真夜中の静寂が辺りを包んだ。
生物がいない夜に一人きり。心弱き者が孤独と云う強大な怪物を妄想し怯える姿は想像に難くない。
「捧げられた『イブ』たちも、絶望の夜を過ごしていたのかも」
独りぼっちの終宵を耐えたとしても、迎えに来るのは救いではなく『アダム』による終焉だ。
そう考えるだけで、心の奥が圧迫されるような気がする。
「おじさんもね、偶にはあんのよ」
思案の合間に、柔らかな声が暖かな小雨と成って降ってきた。
顔上げた先の龍神はのらくらと夜空を仰いでいたが、思考の海へ助け舟を寄越してくれたのだろう。
「仁さんも偶にあったんですか」
そう返したら、彼の目線は緩い速度で地へと沈む。
何処か別の場所を視る様な瞳に、一瞬だけ海面が映った。
「……きっと、力持たない『イブ』はもっと怖かっただろう」
ゆっくりと緑の虹彩が動き改めて二人は向き合う。
ほんの僅か気の抜けた顔と、微かに薫る彼の氣が音の無い気遣いを滲ませて。
「それに寄り添えるのは、グラースちゃんがその夜を越えた証なのかもね、なんて」
星明かりと祭壇の灯りに照らされた笑みは、控え目に寄せる波の様に優しかった。
「夜を越えた、証」
受け取った言の葉を一度だけ呟く。新しい色彩が得られた気がして、嬉しくなる。
返事は淡い微笑みにとどめたが、二人の頭上で瞬く星と同じ位に煌いていた。
花色龍の穏やかな空間が、未知の予感と胸騒ぎに塗り替えられていく。
来る。今度は演技や謀りの要らない、純粋なる力と覚悟を以て戦う時間だ……が。
その前にとグラースはお互いに掛けられていた羽織を取り、埃を払い出す。
「グラースちゃん?」
えっこれから戦闘だよね? と言いたげな視線を受けてもマイペースに織物を畳んでいる。
「これもきっと、里の人達にとって大切なものですから」
何度見ても綺麗だと思った煌めく布は、本来はもっと幸せな事に使われる筈だったのだ。
例え『イブ』を飾る物として使われようと、無惨に喰い千切られて。そして。
「……不要となって棄てられるモノじゃねえか」
鎮魂の龍が出した答えに元奪還者は頷いた。異端に差し出してやる物等一つも無いと瞳が語る。
これでよしと纏め終え、次に彼女がゆきちゃんと蒼き守護を喚び招く。
現れたふわふわんの霊獣に託せば、任されたと言わんばかりに仄かな蒼炎を灯し場を離れた。
見送る花色の視界が不意に陰る。龍が突然放たれた強い光の前に出て、匿ってくれたらしい。
先兵来た時と同じく仁の背から顔を出せば――あれか。あれこそが。
常夜に巣食い、数多の星を喰らってきた他称の神竜が畏れに満ちた輝きを放っている。だが。
「――俺はお前さんよか、民の歓喜のが悍ましく思うけどな」
彼等の正気を貪り、偽りの信仰を植え付け熟した哀れな奴隷達の崇拝はさぞ美味かったのだろう。
狂った楽園が演奏するアン・ディー・フロイデは此処で指揮者諸共止めなくてはならない。
「どちらの歓喜もここでお終いにしようぜ」
返答は、極彩色の衣を纏った『アダム』が尾を撓らせる光景だった。
森を揺らす破壊音に祭壇と枷の残骸が飛び散り、数秒遅れて二人分の異なる着地音が少し離れた地を叩く。
短い言葉で互いの無事を確認し、ゆっくり振り向こうとする巨躯を見据えた。
「あの極光は、もしかして」
「『イブ』か」
獰猛極まるドラゴンを模った異形は、色鮮やかな瞬きに覆われている。
それがゴッドペインターには個々の煌きを無理やり編み込んだ、ちぐはぐな色取りに見えた。
零した疑問に龍神が応える。違わず、あのオーロラは奴を強化する術なのだろう。
今も尚、星贄達は捧げられ続けていた。
抱く魔術絵本と手にする絵筆を握緊めグラースが口を開き、提案される方針を聞き届けた仁は静かに頷く。
最後に琥珀と緑の視線が重なり小さく笑い合ってから、猟兵達は強き意志を眼に宿し異端と対峙する。
最初に動いたのは翠玉色の鱗を連ねた脚鰭だった。神化衣も靡かせ、空気の海を泳ぎ行く。
夜を遊泳する姿に潮の香りと確かな水音が交じり始め、彼の氣が一瞬薄い水膜を描いた。
動き回る挑発者を追う星喰いだが、ふと視界の端に違和感を認めたか意識が逸れる。
やや遠くで静かな色彩が空中に多彩な魔法陣を描き始めていた。
狡猾な『アダム』はソレが不味いモノだと認識し画人へ首を向けるも、守護者が眼界を遮る。
立ちはだかる『父』を睨みつけたオブリビオンは低く唸り声を上げ、排除すべく暴れ出した。
攻守の騒然とした雰囲気が広がる中、『娘』は飛び出す絵本から彩り豊かな絵の具を取り出していく。
高速詠唱が紡ぎ出す奇跡は開いたページから望みの色を顕現させ、色彩の魔法陣を描き切る。
発動対象は『アダム』、だけではない。グラースの瞳は星喰いが被るヴェールも映していた。
かつて『イブ』と呼ばれた魂たちにも向けて、心を込めた色を解き放つ。
「あなたのお気に入りの色はどれ?」
贄にと捧げられた星たちの個性はそれぞれ。だから、囚われ使い尽くされる彼等一人一つに呼び掛けた。
星夜に咲いた万華の陣が戦場へと溶け出し、広がる彩が異端の極光に触れた端から静かな花色へと染めていく。
接続されたと、星喰いが認識した。神竜は再び人間を睨み付けるも龍神が標的の変更を赦さない。
ただ少々圧されてきていた。神気を練り上げ守り高めても少しずつ傷が増えていく。それでも。
(グラースちゃんが魂達に呼びかけてくれている間に攻撃を向かせる訳にはいかない)
恨まれぬように人を護る龍がいる。勝手な信仰が起源でも、そうあれかしと彼なりに生きるのなら。
星夜を泳ぐ仁の軌跡は海の氣香る神秘を描いていた。遺る流れから怨嗟が滲み出し、異形を囲う。
「この世界に朝はこない。だからこそ、その煌めきが民には良く見えた」
夜を照らす灯りを受け、水飛沫纏う魚の鱗が星と一緒に瞬いていた。
好く晴れた星空の下、決して混ざる事の無い輝きを抱いた二柱が相対する。
「それだけ。――お前さんは神に非ず」
鎮魂の龍が告げた言葉は傍らに小さな渦潮を喚び、激しい流れの中心から一振りの太刀を浮上させる。
迷わず掴み、刀身を引き抜く。鞘は同じ渦から元気良く飛び出た少年の霊魂が受け取った。
銀ノ波を構え、不退転の意志を込め一つ眼で睥睨する。
「だからこんな“親子”さえ喰らえない」
輝く神性を、煌めく信仰を否定する。
お前は唯の――化け物だ。
激高の咆哮と潮騒より激しい衝撃音がぶつかり合う。
仁の守護で集中していられるが、僅かな余波がグラースの身体に望まぬ赤線を走らせた。
それでも。服が紅に滲んだって構わず、揺らぐ極光へ変わらぬ想いを届けていく。
「あなたの心身の美しさを、豊かな感情宿る瞳の色彩を、透き通る声を褒めてくれた、優しくやわらかな思い出」
異形の中で散る淡い星屑をかき集め、もう一度個の意思として芽吹かせる為に。
「可愛がってくれた家族、誰かとの繋がりを紡ぎ続けた生き方、声は時に響き渡る唄に」
朧げになっても彼等の中で煌めき続ける彩を探り、示し、融けた心を呼び覚ます。
「無念に残した彼らにとって、あなたがたはいつまでも心の一等星となっているはず」
異端に吞まれても決して失われなかった大切な色を見て、どうか自分を思い出してと強く訴えた。
すると、不思議な事が起こった。まるで絵本の頁を捲り場面が次へ移るように。
星喰いを包む極星光の端っこが千切れ、ひとつの小さな輝きに変化した。
それをきっかけに次々と極彩色の一枚布が解れ――全てが淡く光る花弁と化していく。
夜風が吹いて、色とりどりの欠片達が百花繚乱の嵐と成って奪還者の方へ流れていった。
反逆の導き手が星贄達の思い出を描き続け、星彩のオーロラが剝がれていく。
一方敵も異変を感知し、これ以上『イブ』を奪われるものかと『アダム』は今度こそ標的へ鋭い爪を振りかぶる。
だが振り下ろすより先に彼女から数多の春彩る欠片達が解放され行動を妨害された。
溺れる程に乱れ舞うエフェクトは命の花弁を隠し敵を撹乱するが、刹那画人は桜風の向こうに歪な輝きを見る。
次の瞬間残る極光を尾に集めた竜の自動反撃で薙ぎ払われるも、とっさに使った色鮮やかな守りで重症は防いだ。
ただ暫く脚が動きそうにない。けれども、奴のヴェールは破けたのだから。
「仁さん、後はお任せしますね」
『娘』が送り続ける桜花乱舞から『父』が飛び出し、星喰いへ大きく斬り掛かる。
一太刀浴びせた妖剣士はひと時気遣う視線で背後を見やるも、すぐに前方の敵へと向き直った。
「嘗ての贄をまだ使い潰すというなら、俺達が『神罰』をくれてやろう」
怨嗟に沈めた刀の切っ先を向け、決して緩くない音色で龍神が厳かに言い放つ。
「その魂はお前さんには過ぎたるもの。喰らうことさえ、本当は赦されやしない」
銀の刃文が波打つ様に妖しく燦めき、信仰の根源たる海より招いた深き念が刀身に込められて。
其処へひらりひらりと、静かな彩を乗せた支援の桜花が舞い落ちていく。
「魂達が苦しんだ分、とまでは行かないだろうが……喰らい、利用しようというその姿勢は罰されるべきだ」
花色に染まる抜き身を小吉から受け取った鞘に一旦納め、腰を落とし構えを取る。
柄を握る最中、相手を伺う。綻びばかりの極光を纏わせ怒り狂うドラゴンが天に咆えた。
巨星が飛び掛かり、開く異形の牙連ねた大口が迫るも冷静に。
華彩る海流の軌道を描く居合斬りが、異端の怪物に罰を与えた。
朽ちた祭壇にもたれ掛かるグラースへ、仁が寄り添う。
静かになった夜の森では僅かな海水を浴び星明りをきらきら乱反射させる花弁が風と戯れていた。
ふと。二人は春彩の合間で桜風とは違う欠片達が煌めきだした事に気付く。
嗚呼、彼等が。
花が星へと巡り、輝きは夜を超え――遥か彼方へ流れていった。
●ニュクスの楽園
猟兵達によって巣を壊された異端の神竜は、星屑となって夜の彼方へ解けていった。
滅したのだろうか。少なくとも今此処に、彼の気配も眩い威圧感や狂った認識も存在しない。
間もなく里の民達に植え付けられた黄金のまやかしも朽ち果てるだろう。
後は彼等次第だ。
満天の星が、明け無き世界を細やかな光で照らし続けている。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵