ひたり。ひたり。
内に湖を抱いた洞窟の足場を、揺らめく群青が滑って行く。零れた夜闇のようなそれは、湿った香りを孕んで緩やかに立ち上がった。
辛うじてひとと呼べるような外見のそれが、瞬きを一つするごとに一人ずつ増える。やがてそれは、洞窟の通路を塞がんばかりに数を増やした。
粘り、滴る前髪の隙間から、それは仄かに青い目を覗かせる。
視線はまっすぐに、洞窟の入り口へ据えられていた。
「皆さん、帝都櫻大戰へのご参加、お疲れ様でした」
神臣・薙人(落花幻夢・f35429)は、グリモアベースへ集った猟兵達にそう言って一礼した。
「皆さんの中には、冬桜護の事をご存知の方もいらっしゃるかと思います」
その広報活動に協力した者も、先の大戰で共に戦った者もいるだろう。
かつて冬桜護はなり手が少なく、人手不足に喘いでいた。しかし、広報活動や大戰での活躍を目にした事で、少しずつではあるが冬桜護になりたいと志願する若者が現れ始めたのだという。
「その、冬桜護志願者の、実地訓練に協力して欲しいという依頼が、こちらへ持ち込まれたのです」
話を持って来たのは、桐原澪という十代後半の冬桜護だ。豪雪地帯の雪山にある幻朧桜の調査を任務とする彼女に、一人の志願者が同行を申し出たという事らしい。
「志願者は松尾朋子さんという、こちらも十代の女性です」
朋子は帝都桜學府で、武術と勉学を修めた學徒兵だ。光線銃を武器としており、ユーベルコヲド使いでもある。得意とするのは、スクワッド・パレヱドによる援護だという。
「松尾さんは将来有望なユーベルコヲド使いなのですが、実戦経験がまだありません」
冬桜護は、その名の通りの極寒の雪の中から厳しい山脈、火山地帯など、およそ危険な場所なら何処へでも巡回に赴く。いかに成績優秀な帝都桜學府の學徒とはいえ、一人前の冬桜護となるには地道な訓練と現地経験が不可欠なのだ。
「皆さんに行って頂きたいのは、桐原さんが巡回を担当している雪山の一つです。正確には、その雪山にある洞窟なのですが」
澪と朋子は、転送先で猟兵達の事を待っている。雪深い山の中で、二人きりでいる少女達を見付けるのは、難しい事ではないだろう。
「お二人と合流した後、皆さんには幻朧桜がある洞窟に向かって頂きたいのです」
巡回する幻朧桜へは、洞窟内の地底湖の脇を抜けなければたどり着けない。しかし、洞窟の中には影朧の群れが巣食っているようだ。
「皆さんには、お二人と協力しつつ、この影朧の群れの討伐をお願い致します」
実戦経験の無い朋子をうまくフォローしつつ、澪とも力を合わせれば、影朧の群れに遅れを取る心配は無いだろう。
影朧のいる場所と幻朧桜の生えている場所は離れているため、戦闘に際して幻朧桜の事を気に掛ける必要は無い。
「影朧の群れを退け、幻朧桜の安全を確認すれば一件落着、と言いたいところなのですが……皆さんには、もう一つお願いしたい事があります」
地底湖を抜けた先にある、広い空間。そこに幻朧桜は佇んでいる。静かに咲くその桜の膝元で、花見を楽しんで欲しいのだという。
豪雪地帯、しかも洞窟内での花見は、なかなかに厳しいものがある。だが、それが哀しい魂を鎮めるために必要な儀式である事を、知っている者もいる筈だ。
迷える魂達に礼を失さないためにも、華やかに楽しく宴会を行って欲しいのだと薙人は言う。
「最後になりましたが、現地はとても寒い場所です。暖かい格好をして行った方が良いかもしれません」
どうか、お気を付けて。
薙人はそう言って、掌にグリモアを浮かべた。
牧瀬花奈女
こんにちは。牧瀬花奈女です。サクラミラージュの戦後シナリオをお届けします。このシナリオは二章構成となります。
各章、断章追加後からプレイングを受け付けます。
●一章
集団戦です。洞窟内で、冬桜護とその志願者と協力しつつ、影朧を退治して下さい。
戦闘場所の環境に適応した場合・戦闘に不慣れな冬桜護志願者をうまくフォローしながら戦った場合はプレイングボーナスが付きます。
●二章
日常章です。幻朧桜の膝元で花見(宴会)を行って下さい。この章のみ、プレイング内でお声掛けを頂いた場合、神臣・薙人がお邪魔します。話し相手が欲しい時等にどうぞ(後述の澪・朋子もお声掛けがあれば登場します)
●冬桜護・冬桜護志願者について
桐原澪(きりはら・みお)
十代後半の冬桜護です。武器は退魔刀。
使えるユーベルコヲドは強制改心刀。
過去のシナリオにも登場した事がありますが、未読でも全く問題ありません。
(タグ: #桐原澪はかえりたい )
松尾朋子(まつお・ともこ)
十代半ばの冬桜護志願者(學徒兵)です。武器は光線銃。
使えるユーベルコヲドはスクワッド・パレヱド。実戦経験はありません。
●その他
再送が発生した場合、タグ及びマスターページにて対応を告知致します。お気持ちにお変わり無ければ、プレイングが戻って来た際はそのまま告知までお待ち頂ければ幸いです。
第1章 集団戦
『『夜香影』群青』
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POW : 真ニ非ズ
【対象の全身を完全模倣し、適応させた異能 】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【独自に再現した対象のユーベルコード】で攻撃する。
SPD : 真ニ有ラズ
【UC『真ニ非ズ』 】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【思考、記憶、経験、対象が対象である要素】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ : 真ニ在ラズ
合計でレベル㎥までの、実物を模した偽物を作る。造りは荒いが【自らの体を作り替え、対象の完全再現模倣体】を作った場合のみ極めて精巧になる。
イラスト:100
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
雪山に転送された猟兵達を最初に襲ったのは、強烈な寒気だった。ぶるりと身を震わせて辺りを窺えば、黒いロングコヲトを羽織った少女が二人、こちらへ向かって手を振っている。
「皆さん、ご協力ありがとうございます。私は冬桜護の桐原澪です」
ざくりと雪を踏み締めて距離を詰めた猟兵へ、澪はぺこりと頭を下げる。その拍子に、一つ結びの三つ編みにした長い黒髪がロングコヲトの背を叩いた。
隣に立っているのは、澪より少し年若い、黒髪を短く切り揃えた少女だ。
「冬桜護志願者の、松尾朋子と申します。ご指導、よろしくお願い致します」
白い息を吐きながら語る表情は、至って真面目だ。
二人と共に雪山を進み、洞窟の中へ入る。その途端、猟兵達は全身に殺気を感じた。
「うわあ……早速ですね」
澪がすらりと佩刀を抜く。
洞窟の中には、群青色の影朧が無数にうごめいていた。体を動かす度に粘性を帯びた液体が滴り、耳障りな音を鳴らす。
仄かに漂う香りは、この影朧のものか、はたまた洞窟の奥に咲いているという幻朧桜のものか。
影朧達の目がこちらを捉え、ずるりと身の形を変える。先程までは群青の粘液といった体であったそれらは、辛うじてひとと呼べる姿へと変化していた。
こちらの姿を、模倣しているのだ。
「きっ……来ます!」
朋子が光線銃の銃口を影朧に向ける。
猟兵達は影朧を迎え撃つべく、それぞれの武器を手にした。
グッド・モーニング
※オーバーコート着用
サクラミラージュ…先日の騒動の中心でしたね
無事で何よりでございます
不思議の国も皆様に助けていただいたことですし
ここは一つ、恩返しに参りましょう
とはいえ、僕も
戦い慣れているとは言い難い
共に頑張りましょう
『優しさ』を以て声掛け
澪様は前衛寄り
朋子様は後衛寄りでしょうか
ならば、僕は補助を担当しましょう
UC発動
無数のナイフを敵に浴びせることで動きを牽制
味方が畳み掛ける隙を作り出します
UC再現での反撃に対しては
朋子様、お願いします
スクワッド・パレヱドの勢いを以て
敵の攻撃を弾き返してください
敵に隙ができたら
澪様が懐に飛び込むことも叶うでしょう
どうぞ、存分に退魔刀を振るってくださいませ
●
粉のような雪を孕んだ風が、洞窟内に吹き込んでオーバーコートの表面を撫でて行く。グッド・モーニング(奇怪なカフェ店主・f44606)はゆるりと首を動かし、ポップアップトースターの形をした頭部から細かな雪を落とした。寒気は強いが、着込んだオーバーコートは十全にその役割を果たしてくれている。
ここサクラミラージュは、他世界をも巻き込んだ騒動の中心だった。その大戰が無事に終わった事に、グッドは胸中で安堵の息を吐く。
彼の住まう不思議の国も、大戰に尽力した猟兵達により助けられた。
「ここは一つ、恩返しに参りましょう」
明るい声でそう言って、グッドは影朧と対峙する澪と朋子の傍らへ移動する。ひとの形を模倣した群青は、こちらを窺うように青い目を瞬かせた。
「僕も戦い慣れているとは言い難いですが、共に頑張りましょう」
「はい! よろしくお願い致します!」
優しく声を掛けるグッドに、朋子がしゃんと姿勢を正す。その両手が握っているのは、光線銃の銃把だ。
「ありがとうございます。超弩級戦力の方にご協力頂けるなんて、心強いです」
瞬き一度の間だけグッドへ視線を向けた澪は、鞘から抜いた退魔刀を構えていた。
澪様は前衛寄り。朋子様は後衛寄りでしょうか。
二人の持つ武器から、グッドはそう判断する。
「ならば、僕は補助を担当しましょう」
ふわりとオーバーコートの裾が広がり、無数のナイフがグッドの周囲に舞った。刃が銀にきらめいて、粘った群青の体を次々に切り裂いて行く。前に寄っていた影朧の一部がたたらを踏んだ。
ナイフの襲撃を逃れた影朧達が、一斉に体の形を変え始める。耳障りな音が幾度か鳴って、影朧はグッドの形を完全に模倣した姿となった。しかし、いかに形を真似ようとも、頭部のポップアップトースターに残る使用者の痕跡までは写し取れていない。
「朋子様、お願いします」
スクワッド・パレヱドの勢いを以て、敵の攻撃を弾き返してください。
そう頼めば、朋子は大きく頷き、全身に闘気を纏った。短い呼吸の後に繰り出された突進は、影朧達を後退させるに十分な勢いを持っている。
影朧達が怯んだ隙に、澪が退魔刀を閃かせた。
「どうぞ、存分に退魔刀を振るってくださいませ」
グッドはそう言って、オーバーコートの裾を再び翻らせた。
大成功
🔵🔵🔵
葛城・時人
相棒の陸井(f35296)と
「や、桐原、こないだぶりー」
あの後ちゃんと帰れた?とか聞いてから
松尾さんにも挨拶と名乗りを
「俺達は猟兵だよ。宜しくね」
固くなってるけど出来るだけ緊張ほぐしたいな
「誰でも最初は怖いけど、大丈夫」
その為に頼もしい先輩も猟兵も居るんだよって笑顔で
全員に白燐奏甲を
「攻撃力上がるのと敵の視覚阻害だよ」
後、ほの光るから洞窟の備えにも
ほら、こっちからは見えるけど影朧からは見えない
陸井の縛が難なく縫い留める
「サンキュ、相棒!」
これで落ち着いて戦えるはず
完縛のは易々倒せる
抜け出る不届き者は錫杖で突いたりしつつ
護りながら実地訓練
こういう地道なコトが大事なんだよね
「っし、しっかりやろ!」
凶月・陸井
相棒の時人(f35294)と
「先日はありがとうな、桐原さん」
相棒共々戦争中も助けて貰ったからな
そのお礼もしたかった所だし
志願者の訓練も、勿論手伝うよ
「猟兵の凶月陸井だ、宜しく頼む」
緊張を解すのは相棒がしてくれたけど
松尾さんは敵の殺気のせいか
肩に力が入っているように見える
「松尾さん。一体ずつ確実に、だよ」
時人の支援を受けながら
俺は確実に敵を文字で縛っていく
「時人も、支援助かるよ」
能力者の頃から変わらない俺達の戦い方
それを見てもらいながら
戦いにも慣れて行ってくれたらいいな
「さ、冷静にいこうか」
後は相棒とすり抜ける敵の対処
誰かに教えながらの戦いも
なんだかいい物だよ
「実際、大事な事だよな。良い戦いだ」
●
洞窟の中には、湿った香りが薄く漂っていた。歩を進めれば、群青色の粘液めいた姿の影朧達と、それらと相対する澪と朋子の姿が見える。両者の距離は少し開いているようだ。
「や、桐原、こないだぶりー」
葛城・時人(光望護花・f35294)は、澪の背中へ努めて明るく声を掛けた。じりと後退した澪が三つ編みを跳ねさせながら振り向いて、ぱっと表情を明るくする。
「先日はありがとうな、桐原さん」
凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)の謝意に、澪はいえいえと首を軽く振った。
「こちらこそ、ありがとうございました。またお会い出来て嬉しいです」
「あの後ちゃんと帰れた?」
時人の問いに、澪は口元を綻ばせて頷く。
「はいっ。お陰さまで、浮島になってた部分も元の山へ戻りましたし、私も無事に宿舎まで帰れました」
二人と親しげに言葉を交わす澪の姿を、朋子が目を瞬かせて見ている。手にある光線銃を見て、陸井は彼女が冬桜護の志願者だと察した。
「猟兵の凶月陸井だ、宜しく頼む」
澪には、先の大戰で相棒と共に助けて貰った恩を感じている。そのお礼も出来ると思えば、陸井にとって志願者の実地訓練を手助けする事に否がある筈が無かった。
時人もその思いは同じだ。目線を朋子へ移して眦を緩ませた。
葛城時人だよと名乗った後に、隣の陸井に目配せをする。
「俺達は猟兵だよ。宜しくね」
「松尾朋子と申します。よろしくお願い致します」
朋子の受け答えはしっかりしているが、表情も動きも何処となくぎこちない。体が固くなっている事を、時人の目はしっかり捉えた。
「誰でも最初は怖いけど、大丈夫」
その為に頼もしい先輩も猟兵も居るんだよ。
優しく笑む時人の言葉に、朋子の緊張が解れて行く。陸井は相棒の言葉がもたらした結果を前にして、目元を緩めた。
しかし、光線銃を持つ肩には、まだ力が入っている。
「松尾さん。一体ずつ確実に、だよ」
「は、はい!」
柔らかな呼び掛けとそれに対する返事を合図として、時人は|白燐蟲《ククルカン》を呼び出した。純白の羽毛と翼を持つ蛇が、その場にいる四人を護るように周囲を舞う。
「攻撃力上がるのと敵の視覚阻害だよ」
後、ほの光るから洞窟の備えにも。
細かな光の粒を散らしながら舞い飛ぶククルカンを見て、朋子が助かりますと笑顔を浮かべた。
輝きに反応して、粘る音と共に影朧達が模造品を作り上げようとする。しかしククルカンの光に邪魔をされ、うまくは行かないようだった。
「ほら、こっちからは見えるけど影朧からは見えない」
時人が錫杖を構える間に、陸井は煤竹の軸を持つ筆を取り出す。記す戦文字は『縛』の一文字。滑るように宙を躍った文字が影朧達の体を波打たせ、動く意思を奪って行った。視覚を光で阻害されている影朧達に、それを避ける術は無い。
「サンキュ、相棒!」
「時人も、支援助かるよ」
錫杖の銀鎖を鳴らす時人へ、陸井は戦文字を記しながら笑む。
互いを助け合い、その背を護り合う。それは、能力者の頃から変わらない陸井達の戦い方だった。
それを見てもらいながら、戦いにも慣れて行ってくれたらいいな。
そう願う陸井の筆が、最後の戦文字を書き上げる。これで、視界内に存在する影朧の動きは全て縛った。
「さ、冷静にいこうか」
陸井が柔らかな眼差しを向けると、朋子はしゃんと姿勢を正して光線銃の引き金を絞った。動きの止まった影朧が、一体ずつ確実に葬られて行く。
縛りから抜け出ようとする不届き者は、時人が錫杖で突き、陸井がガンナイフの銃弾を叩き込んだ。
「こういう地道なコトが大事なんだよね」
「誰かに教えながらの戦いも、なんだかいい物だよ」
朋子を護りつつ、その成長の機会を奪わぬよう気を配る。普段とは違う戦いだが、二人にとってそれは快いものだった。
「っし、しっかりやろ!」
しゃん、と錫杖の鎖が躍る。刺突の合間を縫って、ガンナイフの弾丸が飛ぶ。
「実際、大事な事だよな。良い戦いだ」
目を細めた陸井の視界の端で、朋子の光線銃がまた一体の影朧を撃ち抜いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
浅間・墨
ロベルタさん(f22361)
…初見なのに挨拶の間すら与えていただけませんか…。
仕方がないので影朧達を倒してから挨拶をしますね。
そして松尾さんに経験を…でしたね。どうしましょう。
私が影朧達を惹きつけている間に倒して戴きましょうか。
見切りと野生の勘と第六感で影朧達の挙動を極力把握します。
行動を把握した上で私は囮として戦おうと思っていますよ。
松尾さんが遠距離武器で狙い易いように戦闘を行いますね。
ロベルタさんには松尾さんのお傍に居て貰おうと思います。
銃の扱いにも長けているロベルタさんなら教えられるはず。
初めは戦場の雰囲気を知ることが大事だと考えました。
なので私は松尾さんが撃ちやすい環境を作ろうと思います。
『国綱』の一振りに破魔の力を籠めて【雪駆】を使用します。
粘度のある液体は火気厳禁な気がしたので冷気属性の剣技を。
保護すべき幻朧桜を台無しにする可能性は潰しておきましょう。
…それに液体の身体に物理斬撃は効果が薄い気もします…。
ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)
今回の影朧は粘着質みたいだから愛剣で斬るじぇ。
それと松尾ねーの援護の為に傍に居ようと思うよ。
松尾ねーの背中と周囲は僕が護るじょ。うぇ~い。
「大丈夫だよ。何時ものよーにすればOKだじぇ」
墨ねーには銃撃のコツを…って言われたけど…。
ちゃんと基本はできてるし言うことはないねぃ。
斬った張ったの空気に慣れたら大丈夫だと思うじぇ。
…でも緊張はしてるみたいでぎこちないねぃ?
だから松尾ねーにリラックスする一言を言おうかな♪
久々に使う愛剣に破魔の力を宿して【軍神の剣術】使用。
あくまで松尾ねーのフォローと連携を基本行動にするよ。
松尾ねーの邪魔とか集中の阻害には十分注意するねぃ。
桐原ねーにも気を払ってフォローをするじぇ♪
●
影朧はその数を減らしつつも、まだ洞窟内を這いずっていた。澪と朋子の様子には少しばかり余裕が窺えるが、互いの距離が縮まっているせいで挨拶を交わす隙が見付からない。
浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)は、まっすぐに切り揃えた前髪の下で、ほんのり眉尻を下げた。
「初見、なのに……挨拶の間すら……えて、いただけません、か……」
途切れ途切れにか細い声で呟く墨の隣で、ロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)は刀身に魔術をあしらったショートソードをくるりと回す。
「他にも猟兵は来てるみたいだけど、まだ影朧は残ってるねぃ」
脅威が完全に去っていないのであれば、ゆっくり話すいとまが無いのも仕方がないかもしれない。
影朧達を倒してから挨拶をしますね。
墨はひっそりとそう決意して、黒呂塗の鞘に収まった大刀の柄に手を掛けた。冬桜護志願者である朋子は、懸命に光線銃の引き金を絞っている。彼女に経験を積んで貰うには、どうすれば良いか。瞬き二度の間ほど考えて、墨はロベルタへ顔を向けた。
「ロベルタさん……松尾さ、の……お傍に、居て下さい……」
ロベルタは銃の扱いにも長けている。放つ弾丸こそ違えど、教えられる事はある筈だ。ロベルタは碧眼を瞬かせて、にっこりと笑みを形作った。
「おっけーだじぇ~♪ 松尾ねーの背中と周囲は僕が護るじょ」
元気いっぱいな返事を合図として、二人は洞窟内を駆ける。影朧と対峙する澪と朋子の傍までたどり着くのに、呼吸を二度ばかりするだけの時間しか要さない。
墨は二人に軽く一礼して、影朧の群れと自分達の間を何度か軽く行き来して見せた。
自分が影朧を惹き付けている間に、朋子へ敵を仕留める経験をさせて欲しい。その意図が伝わったのか墨には分からなかったが、影朧の元へ走る彼女を止める声は無かった。
短く息を吐いて感覚を研ぎ澄まさせ、影朧の動きを肌で察する。鞘の中で大刀の刃が冷気をまとった。
ロベルタは朋子の傍に立ち、にこりと笑顔を見せる。
「大丈夫だよ。何時ものよーにすればOKだじぇ」
「はっ、はい!」
抜刀の音が響き、墨の斬撃が影朧の魂を裂いた。冷気を宿した一撃が、次々に影朧を弱らせて行く。
朋子が光線銃を構え、一体ずつ確実にとどめを刺す。その動きに、ロベルタはぱちりと目を瞬かせた。
銃撃のコツを教えて欲しいと墨には言われたが、実際に朋子が光線銃を扱う動きに修正すべき点は見付からない。基本はきちんと出来ているのだ。
斬った張ったの空気に慣れたら大丈夫だと思うじぇ。
そう結論づけて、ロベルタは愛剣に破魔の力を宿した。影朧が姿を写し取ろうとするも、墨の斬撃がそれを阻む。
朋子が再び光線銃の狙いを定めた時、ロベルタは周囲の空気がぴりと張り詰めたのを感じた。これまでの猟兵達との共闘で少しは戦いに慣れたのだろうけれど、今日が初めての実戦である事に変わりは無い。ぎこちなさがまだ抜け切らないのも、無理からぬ事だった。
墨は変わらず、敵陣の中で冷たい刃を閃かせていた。影朧の大半は、墨に意識を持って行かれている事だろう。
「墨ねーが気を惹いてくれてるから、大丈夫だじぇ♪」
殊更に明るく言って、ロベルタは動きの鈍った影朧を横合いから切る。とどめを刺したのは、朋子の光線銃だ。鉄芯でも入っていたかのような背筋が、微かに弛緩している。ロベルタは緩く口角を上げて、新たな影朧へと剣を振るった。少々古めかしい黒いリボンが、銀髪の上で躍る。
冷気を籠めた斬撃を繰り返しているせいか、墨は白い小袖越しに寒さを感じた。けれどもそれで動きが鈍る事は無い。
粘度のある液体には、火を近付けない方が良いような気がしたのだ。それに、距離はあるとはいえ、保護すべき幻朧桜の事も気に掛かる。
それから。
「液体の……体に、物理攻撃は……効果……薄、気も……」
ぽつぽつと呟く間にも、影朧達は魂を冷気で傷付けられて行く。澪や朋子が己が武器を振るいやすいよう、ロベルタも立ち位置には気を配っていた。
墨が気を引いた影朧の背に、ロベルタが斬撃を見舞う。こちらの形を模倣しようとした群青の頭部を、朋子が光線銃で撃ち抜く。
やがて全ての影朧が姿を消した時。
洞窟の中には、本来あるべき静寂が満ちていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 日常
『桜幻想譚』
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POW : 花見を楽しむ
SPD : 花見を楽しむ
WIZ : 花見を楽しむ
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
影朧達が洞窟内から姿を消した後、猟兵達は幻朧桜の元へと向かった。
少し狭まった道を抜け、数歩進むと、今度は大きな地底湖が見えて来る。少しだけ差し込む光を受けて、その水面は濃い青を抱いているように思えた。
その湖の脇を通り抜ければ、一本きりで佇んでいる幻朧桜はすぐそこだ。
はらりと薄紅の花弁を舞わせる幻朧桜の周りを、澪が朋子と共にぐるりと回る。再び猟兵達の前で足を止めた時、二人は自らの武器を腰へ戻していた。
「ここにはもう、影朧の姿はありません。皆さん、ありがとうございました」
澪が深く頭を下げ、朋子もそれに倣う。
「巡回を終える前にもう一つ、お願いがありまして……ここで、お花見をして欲しいんです」
「華やかに、楽しくお花見をする事で、魂を鎮める事が出来るんだそうです」
澪の言葉を朋子が引き継ぐ。洞窟内は冷えるが、花見をしている間に体は暖まって来るだろう。
幻朧桜を見ながら食事やお喋りを楽しむのも良し。幻朧桜を背にして、その花弁が舞う様を眺めつつ、地底湖の景色を楽しむのも良しだ。
さて、どのようにして楽しく過ごそうか。
猟兵達は、湿った香りのする空気を吸い込んだ。
グッド・モーニング
桜の樹はたった一本で、ここに
寂しくはないのでしょうか
…いえ、きっと心配はいりませんね
添う者が――冬桜護がいる限りは
僕は、温もりを届けるために在る者
今日は花見という形で
自分の役目を果たしましょう
魔法のトランクから取り出すはキャンプ用具
何時でも何処でも、調理の用意はできています
コーヒーを淹れて皆様に配りましょうか
澪様、朋子様。そして、薙人様も
お嫌いでなければどうぞ
お砂糖はいくつがお好みでしょうか
お腹が空いていらっしゃるのであれば
トーストならすぐに用意できますよ
バター、ハニー、目玉焼き乗せなど
お好みに合わせて、何なりと
ふと桜を見上げ
先の影朧達に、思い馳せ
いずれ生まれておいでなさい
この温かな世界へと
●
地底湖の脇を抜けたその先で、幻朧桜は一本きりで咲いている。
グッド・モーニング(奇怪なカフェ店主・f44606)はその桜を見て、ポップアップトースターの形をした頭部をそっと動かした。
寂しくはないのでしょうか。
たった一本でこの地にある桜の樹に、グッドはふとそんな思いを抱く。けれど洞窟内に響く軽やかな足音を聞いて、すぐにそれを打ち消した。
「……いえ、きっと心配はいりませんね」
添う者が――冬桜護がいる限りは。
自らは温もりを届けるために在る者だと、グッドは自認している。今日は花見という形で、自分の役割を果たすつもりだった。
魔法のトランクから取り出されるのは、キャンプ用具。洞窟の足元にシートを敷いて簡易的な竈を組めば、すぐさま調理の用意が整う。
「わ、凄いですね!」
コーヒーの準備をしていると、朋子が目を輝かせてやって来た。その後に澪が、それから薙人が続く。
「お嫌いでなければどうぞ。お砂糖はいくつがお好みでしょうか」
穏やかな声で言うグッドに、三人がわあと控えめな声を上げた。コーヒーを注いだカップを順に手渡すと、皆がその温もりに目元を緩ませる。
「お砂糖、一つ頂けますか? あ、松尾さんはどうします?」
「私は二つ頂きたいです」
冬桜護とその志願者のやり取りに、グッドは身の内が温まる思いがした。ソーサーに添えたスプーンの傍へ、それぞれ一つ二つと角砂糖を載せて行く。
「薙人様は、お砂糖は必要でしょうか」
「みっつください……」
答える声が些か小さいのは、寒さ故だろうか。言われた数の角砂糖を渡すと、ふわと頬が綻んだので、場の空気は好ましく思っているようだ。
「お腹が空いていらっしゃるのであれば、トーストならすぐに用意できますよ」
バター、ハニー、目玉焼き乗せなど、お好みに合わせて、何なりと。
そう言葉を継ぐと、少女二人は温かなハニートーストを所望した。軽やかな音と共に焼き上がったそれを、二人並んで食べている姿が微笑ましい。
賑やかな色に染まる花見の光景を前にして、グッドはふと桜を見上げた。
先の影朧達の姿が、心に浮かぶ。
いずれ生まれておいでなさい。この温かな世界へと。
そう願うグッドの前に、花弁がひとひら舞った。
大成功
🔵🔵🔵
葛城・時人
相棒の陸井(f35296)と
「お疲れ様!」
ホント上手くいって良かった
あとは桜を愛でて楽しもうだ
「松尾、桐原、こっちおいでよ」
詠唱兵器庫からデカシートだして
「ほら神臣もー」
桜が咲くトコに神臣来ない訳ないもんね
手を振って呼んでから気づいた
「あ…俺おやつしか用意してないっ」
UCで作る気だったけど
普通お菓子より先に腹ごしらえじゃん
ってたら陸井の用意のいい事
「良かった、サンキュ!ナイス相棒!」
三段重三つも出て来るとは思わなかったけど
お弁当めっちゃ美味しい!
「逆に俺、用意しなくて良かったかもだ」
食事が済んだらリク聞いてUC使うよ
最高の桜景に皆の笑い声
「こんな良いお花見なかなかないよ」
ここに来られて良かった
凶月・陸井
相棒の時人(f35294)と
「時人もお疲れ様だよ」
折角の花見、盛大に楽しまないとな
それに折角だし戦いを乗り切った二人と
勿論、大事な友人にも声をかけるよ
「ほら、神臣くんもお二人もおいで」
相棒の反応がちょっと面白いけど
ちゃんとお弁当は持ってきたよ
「大丈夫。シリルが作ってくれたからな」
妻が皆と楽しんでと見送ってくれた
気合の入った三段重を出しながら
「桐原さんも、シリルがまた会いたがっていたよ」
だから是非料理に舌鼓を打ってあげてくれと伝えて
皆で宴会開始だよ
「ふふ、逆に甘いものはは時人の領分だろ?」
料理を楽しんだら次は勿論甘味だしね
戦闘で張った糸を解すような
今のひと時と甘味は格別だよ
「あぁ、良いお花見だ」
●
地底湖を過ぎた先に佇む幻朧桜は、僅かな光を浴びて小さな影を足元に落としていた。何の脅威にも晒されていないその様を目にして、綿で包まれたような心地が葛城・時人(光望護花・f35294)の中に湧いて来る。
「お疲れ様!」
「時人もお疲れ様だよ」
晴れやかな相棒の笑顔を目にして、凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)も柔らかなものが内を満たして行くのを感じた。
後は、この幻朧桜の膝元で花見を楽しめば良いのだという。
「ホント上手くいって良かった。あとは桜を愛でて楽しもうだ」
そう言う時人は、詠唱兵器庫から大型のシートを取り出した。この場にいる全員が腰を下ろしても、十分に余裕がありそうな大きさだ。
「松尾、桐原、こっちおいでよ」
シートをばさりと広げて、時人は少女ふたりに声を掛ける。冬桜護とその志願者は、口元を綻ばせてシートを洞窟の足元へ敷く手伝いを始めた。
「折角の花見、盛大に楽しまないとな」
シートの皺を伸ばす手助けをしつつ思うのは、陸井も同じだ。折角の花見なのだから、戦いを乗り切った二人とそれから――
「ほら神臣もー」
ひらひら舞う幻朧桜の花弁をぼんやり眺めている薙人へ、時人が手を振って呼び掛ける。振り返ってぱちぱちと目を瞬かせる姿に、陸井は柔和な笑みを浮かべて見せた。
「ほら、お二人もいるし、神臣くんもおいで」
「ありがとうございます」
とことこと近くまでやって来た薙人が、ぺこりと頭を下げる。シートがぴんと張られると、澪と朋子も揃って礼をした。
「お誘いありがとうございます。賑やかで、とっても嬉しいです」
「ご指導に続いてお花見もご一緒出来て、私も嬉しいです」
澪に続いて背筋を正した朋子へ、そんなに固くならなくても大丈夫だよと陸井は笑う。
「あ……俺おやつしか用意してないっ」
全員がシートに腰を下ろした後、時人ははたと気が付いた。ユーベルコードで皆の好きなおやつを作るつもりでいたけれど、おやつは腹ごしらえの後に食べるのが一般的だろう。
慌てて目を瞬かせる相棒の反応に、陸井は思わず小さく笑みを零した。
「大丈夫。シリルが作ってくれたからな」
そう言って取り出したのは、気合の入った三段重だ。皆と楽しんでと見送ってくれた妻の笑顔を思い出し、陸井の胸に心地良い熱が灯る。
「良かった、サンキュ! ナイス相棒!」
三段重が三つも出て来る事は、時人も予想していなかった。けれど、これで皆が美味しい食事を味わえるというものだ。
「桐原さんも、シリルがまた会いたがっていたよ」
「あ、あの時の奥様ですね。私も、またお会いしたいです」
満面に笑みを浮かべる澪の言葉に嘘は無い。それがまた、陸井にとっては好ましかった。
「是非料理に舌鼓を打ってあげてくれ」
その言葉が、宴会の始まりを告げる。
陸井の妻たるシリルーンは、料理の腕が確かだ。それを知っていても尚、時人は口に運んだお弁当の味に頬を緩めずにはいられない。
「逆に俺、用意しなくて良かったかもだ」
「ふふ、逆に甘いものは時人の領分だろ?」
料理を楽しんだ後は、勿論甘味の出番だ。
澪と朋子も、箸を運ぶ姿はまだあどけなさの残る少女の顔をしている。薙人も一口一口、噛み締めるように料理を味わっているようだ。
やがて食事が終わり、時人がユーベルコードを使う準備を整える。
「みんな、何食べたい?」
「俺にはみたらしを頼むよ」
OK、と陸井の前へみたらし団子が運ばれると、澪と朋子から歓声が上がった。二人が水羊羹を頼む後ろから、小さくぷりんと呟く声が聞こえたので、それも作って渡す。
幻朧桜がはらはらと散る中で、明るい笑い声が響いた。
「こんな良いお花見なかなかないよ」
ここに来られて良かった。
心底からの思いを口にして、時人は自分もお菓子を口に入れる。
陸井にとっても、戦闘で張った糸を解すような、今のひと時と甘味は格別だ。
「あぁ、良いお花見だ」
目を細めた陸井の前で、幻朧桜がまたふわりと枝を揺らした。
大成功
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浅間・墨
ロベルタさん(f22361)
「こち…こそ…改…て…どう…です…」
桐原さんと松尾さんのお二人へ簡単に挨拶をしておきます。
幻朧桜の方に戦闘の影響がなかったようで…よかったです。
さて。
幻朧桜を拝見する前に温かい飲み物の準備でもしましょうか。
洞窟内で火を扱うと色々と危険なので洞窟の入り口前で準備を。
この気温ですし身体を温めるために少し熱めのお茶にしましょう。
そしてお代わりの分も考えて湯を沸かしておきましょうか♪
場所が場所なので茶請けはありませんがせめて美味しいお茶を。
色々な場所で桜を拝見しましたが洞窟内の桜は初めてでした。
どこで観ても素晴らしく凛々しい趣を醸す桜ですね♪
お茶を飲みながらじっくりのんびりと桜と皆さんを観ています。
「…本…に…よい桜…ですね…」
ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)
「やほー。改めて、どうもーだじぇ♪」
澪ねーと朋子ねーにできなかった挨拶するじょ。うぇーい♪
墨ねーはお茶の準備するみたいだけど僕は幻朧桜へ向かうよ。
洞窟内に生息する朧桜は観たことなかったはずだから楽しみ。
「……おぉー…洞窟の幻朧桜って…すげーじぇ…」
想像してたよりもずっと幻想的で凄く圧倒されちゃったじぇ♪
今まで幻朧桜はみてたけど別の意味で凄いねぃ。これ…。
墨ねーのお茶を飲みながら幻朧桜をずっと見てるよ。
…あ。そうそう。朋子ねーに言うことがあったんだった♪
悪いことじゃないよ。それに反省を促す内容でもないじぇ。
射撃の筋がいいことと良く周囲を観てることを褒めたかったの。
冬桜護の詳しいことは解らないけどいい冬桜護になると思うじぇ。
「頑張ってね♪ 朋子ねーは大丈夫だじぇ!」
●
協力の礼を述べる澪と朋子へ、浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)はふるりと首を振って、ゆっくりお辞儀をした。まっすぐ切り揃えた髪が、動きに伴って揺れる。
「こち……こそ……改……て……どう……です……」
か細い声は洞窟内で緩やかに跳ね返り、澪と朋子の耳へと無事に届いたようだった。小さく息を吐く墨の視界に、薄紅の花弁がひとひら入り込む。洞窟内の幻朧桜は戦闘の影響を受けていない。改めてその事実を認識し、墨は胸の奥が緩やかに解れて行くのを感じた。
「やほー。改めて、どうもーだじぇ♪」
まだ挨拶できてなかったからするじょ、とロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)は弾けるような笑顔を見せる。
「お二人とも、ご協力ありがとうございました」
「初めての実戦でしたが、とても良い経験になりました」
順に頭を下げる澪と朋子の姿を見て、墨とロベルタは目線を交わしてまた少し唇の端を持ち上げた。
後は、この場で花見をすれば良いのだったか。
墨は幻朧桜を見る前に、温かい飲み物の準備をしようと決める。洞窟内で火を使うのは危険と判断し、入り口前まで引き返す旨を身振り手振りでどうにか伝えた。
洞窟の入り口付近には、吹き込む雪が周囲を白く染めている。墨は手早く火の支度を済ませて、お茶を用意した。この気温ならば、身体を温めるためにも熱めの方が良いだろう。
――お代わりの分も考えて湯を沸かしておきましょうか♪
ふっと口元を綻ばせて、墨はまた薬缶を火にかける。
墨とは反対に、ロベルタは幻朧桜の元へと向かっていた。洞窟内に生息する幻朧桜を見るのは初めての筈で、それを目に出来る事が心を躍らせる。
幻朧桜は、それから十歩も進まぬうちにロベルタの前へ姿を見せた。
「……おぉー……洞窟の幻朧桜って……すげーじぇ……」
仄かな光を浴びて佇む桜の姿は、それそのものが発光しているかのように思える。はらと花弁が舞う様も、思わず溜め息を零してしまいそうだ。
「今まで幻朧桜はみてたけど別の意味で凄いねぃ。これ……」
ロベルタが目を細めた時、墨が薬缶とお茶を持って洞窟内へ戻って来た。
場所が場所なので茶請けはありませんがせめて美味しいお茶を。
目線と切れ切れの言葉でそう告げて、墨はこの場にいる全員にお茶を注いで回る。湯気を立ち上らせるお茶は、湯飲み茶碗を手にしているだけで身体を芯から温めてくれた。
熱いお茶を一口飲んで、墨は幻朧桜を見上げる。洞窟内で花開く桜を見るのは、墨にとっても初めての経験だった。
「どこで……ても、素晴らしく……凛々しい趣を醸す桜、ですね♪」
飲んだお茶が体を内から温めて行くように、穏やかな気持ちが胸の内に広がって行く。そろと窺う皆の様子も、お茶と桜の双方を楽しんでいるように見えた。
「……あ。そうそう。朋子ねーに言うことがあったんだった♪」
惹き付けられたように見ていた幻朧桜から、ロベルタはぐいっと視線を外した。目を向けられた朋子が、ぱちぱちと瞬きを繰り返す。
「なっ、なんでしょうか。どこか至らない点が……」
「悪いことじゃないよ。それに反省を促す内容でもないじぇ」
姿勢を正す朋子へ、まずはそう言って緊張の糸を解した。
「射撃の筋がいいことと良く周囲を観てることを褒めたかったの。冬桜護の詳しいことは解らないけどいい冬桜護になると思うじぇ」
「そ、そうでしょうか……」
少し染まった頬は、お茶の温もりによるものか、ロベルタの言葉に背を押されたからか。どちらであっても、好ましい反応である事に変わりは無い。
「頑張ってね♪ 朋子ねーは大丈夫だじぇ!」
「あ……ありがとうございます」
墨もこくこくと頷き、また幻朧桜へ目を向けた。ふわと舞う花弁が、少しだけその量を増したような気がする。まるで、年若い少女の前途を祝うかのように。
「……本……に……よい桜……ですね……」
神秘の桜と、その下に集う仲間達と。墨はその両方に笑顔を見せて、もう一度お茶を一口飲んだ。
大成功
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